1 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 00:51:40.67 IX1T93cJ0 1/33

< 家 >

「…………」

「…………」

「あいつは自分の部屋にいるのか?」

「はい……」

「あいつは未だに働こうとしないのか」

「はい……」

「困ったものだ……どこで育て方をまちがえたのだろうか」

元スレ
父「あいつは未だに働こうとしないのか」母「はい……」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1384444300/

6 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 00:56:54.82 IX1T93cJ0 2/33

「毎日毎日、部屋にひきこもって同じことを繰り返す日々とは、しょうがない奴だ」

「しかし、よくもまあこんな生活に飽きないもんだな」

「このエネルギーを仕事に向けられればいいのだがな」

「ええ……」

「ハァ……」

「ところで部屋の外には、まったく出てこないのか?」

「いえ、そんなことは……」

9 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:00:20.78 IX1T93cJ0 3/33

「時折、出かけることもあるんです」

「なにをしに出かけてるんだ?」

「さぁ……」

「私にはなにも話してくれないので」

「ふ~む」

「なにか高額な商品を買ったりってことはないだろうな?」

「いきなり何十万円の請求、とかがきても困るぞ」

「そういうことはありませんが……」

14 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:04:51.85 IX1T93cJ0 4/33

「ただ……」

「ただ?」

「パソコンでなにかやっているようで……」

「時折、妙な粉を通信販売で購入しています」

「粉?」

「今流行ってるらしい、合法ドラッグとかの類じゃないだろうな」

「私には……分からないです」

「働かない上に麻薬中毒にでもなられたら、大変だぞ」

「ふ~む、仕方あるまい」

17 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:08:39.92 IX1T93cJ0 5/33

「こうなれば、話し合ってみよう」

「あいつももう26だ」

「せめてアルバイトでもいいからやらせんと……話にならんだろう」

「ええ、だけど気をつけて下さいね」

「あの子を刺激したら、どんなことになるか分かりませんから」

「ああ、なるべく穏便に話し合ってみるつもりだ」

「あいつの部屋に行ってみる」スッ

21 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:11:29.58 IX1T93cJ0 6/33

< ニートの部屋の前 >

コンコン

「オイ、話がある」

ニート「!」ビクッ

「開けなさい」

ニート「…………」

「開けないのなら、俺が開けるぞ」

ガチャッ……

27 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:16:01.53 IX1T93cJ0 7/33

< ニートの部屋 >

「久しぶりだな……」

ニート「うぅ……お、お父さん……」

「相変わらず引きこもって、筋トレばかりやってるのか」

「しかも、また大きくなったようだな……身長も体重も」

ニート「うん……身長は205cm、体重は180kgになったよ」ムキッ…

「体脂肪率は?」

ニート「5%を切ったかな……」

「そうか……」

(昔買ってやったダンベルだけで、ここまでになるとは……)

50 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:22:14.11 IX1T93cJ0 8/33

「ところで、母さんの話じゃたまに出かけるらしいが、何をしてるんだ?」

ニート「インターネットを通じて格闘家仲間と交流して、野試合をやってる……」

「野試合?」

ニート「リングの上とかじゃなく、路上で格闘技戦をやることだよ」

ニート「もちろんルールなし、でね」

「勝敗は?」

ニート「今のところ……1628勝0敗、かな……」

「そうか……」

66 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:25:36.55 IX1T93cJ0 9/33

「ところで……」

「通信販売でなにか粉、を買っているそうだが……」

ニート「え、ああ……」

ニート「あれはね……プロテイン」

ニート「筋トレ後や就寝前に飲むと、筋トレの効果が増すんだ」

ニート「ただのタンパク質だから、危ないものじゃないよ」

「そうか……」

79 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:29:15.28 IX1T93cJ0 10/33

「お前の筋トレや格闘技への情熱はよく分かった」

「だがな……」

「本来、お前の年齢なら、せめて自分のプロテイン代や野試合の交通費ぐらいは」

「自分で稼がなきゃならない」

「それは分かるよな?」

ニート「!」ギクッ

ニート「う、うん……」

ニート「分かってる……」

88 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:33:48.69 IX1T93cJ0 11/33

「それに、せっかく鍛え上げた筋肉も──」

「社会のために役立てなければ、宝の持ち腐れだ」

「もう20歳を過ぎたのに」

「筋肉のハリやツヤはまるで10代の少年のようだ」

「自信を持て!」

「お前は絶対に社会や人様の役に立てる人間だ!」

ニート「お、お父さん……!」グスッ

93 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:36:24.34 IX1T93cJ0 12/33

ニート「分かったよ!」ムキッ

ニート「ボク、働くよ」ムキムキッ

ニート「ニート生活で鍛え上げたこの筋肉で、社会の役に立ってみせるよ!」ムキキッ

ニート「ありがとう、お父さん!」ムッキン

「分かってくれて、俺も嬉しいよ」

ニート「よぉ~し、やるぞ!」ズシンッ

「お前の腕力なら、引っ越し業者とかが向いてるんじゃないか?」

106 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:40:25.61 IX1T93cJ0 13/33

< 引っ越し屋 >

先輩「オ~イ、新入り!」

ニート「はいっ!」

先輩「このタンス、一人で運べるか!?」

ニート「任せて下さい!」

ニート「よいしょ」ヒョイッ

先輩「おいおい、あんなでかいタンスを軽々と……すげえ新入りが入ったもんだ」

「すごい力持ちですなぁ」

114 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:44:21.15 IX1T93cJ0 14/33

ニート「そんなぁ~……照れますよ」ギュウ…

メキメキメキメキ……

バキバキバキバキ……!

ニート「あぁっ! しまった!」

先輩(タンスが新入りの両腕に抱き締められて、砂時計みたいな形に……!)

「あわわわわ……」ジョボボ…

ニート「うわぁ~~~~~ん!」

ニート「ボクのせいでタンスがぁ~!」

121 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:47:57.06 IX1T93cJ0 15/33

< 家 >

「そうか……」

「お客さんのタンスを破壊して、お客さんを失禁させて」

「一日でクビになったか……」

ニート「ごめんなさい……」

「いや、いいんだ。仕事に失敗はつきものだ」

「これに懲りず、次の職場で頑張れ!」

ニート「うん!」

131 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:51:19.67 IX1T93cJ0 16/33

< 工事現場 >

監督「今日はこの道路を掘り起こす!」

監督「新入り! おめえはあっちに立って、人や車が来ないようにしろ!」

ニート「はいっ!」



ニート「…………」

ニート「人も車も通りがからない……」

ニート「ヒマだなぁ……」

137 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:54:53.09 IX1T93cJ0 17/33

ニート「そうだ!」

ニート「ボクもちょっと地面を掘ってみよう!」ホリホリ…

ニート「向こうのドリルより、ボクの方がずっと早く掘れてるぞ!」ホリホリ…

ニート「ん?」

ブラジル人「不法入国デース」

ニート「しまった! ブラジルに着いちゃった!」

151 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 01:58:28.98 IX1T93cJ0 18/33

< 家 >

「そうか……」

「勝手に地面を掘った上に、ブラジルに不法入国して一日でクビになったか……」

ニート「うん……」シュン…

「だったらいっそ、ちゃんとした格闘技界でデビューするか!」

「俺のコネで、いきなりチャンピオンと試合をさせてやろう!」

ニート「本当!?」

ニート「ありがとう、お父さん!」

ニート「ボク、絶対世界チャンピオンになるよ!」

167 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:03:39.99 IX1T93cJ0 19/33

< リング >

カァーン!

実況『試合開始です!』

ニート(お客さんが大勢いて、緊張するなぁ)ドキドキ…

ニート(普段やってる野試合とは、全然ちがうや)ドキドキ…

チャンプ「てやっ! でやっ! とうっ!」ペチッ ドカッ パキッ

ニート(やっぱりボク……こんな大舞台は耐えられないよ……)ドキドキ…

チャンプ「だりゃっ! せいっ! うりゃ!」バシッ ビシッ ベチッ

ニート(お父さんには悪いけど……帰ろう!)ダッ

178 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:07:35.13 IX1T93cJ0 20/33

ドゴンッ!!!

チャンプ「ぎゃんっ!?」

実況『お~っと、突然走りだした挑戦者に、チャンプがハネ飛ばされた!』

ズガァンッ!!!

実況『チャンプの全身が天井にめり込んだ!』

ニート「ごめんなさいっ!」ダダダッ

実況『挑戦者、逃げてしまったぁっ!』

解説『これは悪質なひき逃げ事件ですねぇ』

189 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:10:21.75 IX1T93cJ0 21/33

< 家 >

「そうか……」

「満員の観客の前で緊張してしまったか……」

「ちなみに試合は無効試合となり、チャンピオンは全治六ヶ月の重傷だそうだ」

ニート「ごめんなさい……」

ニート「やっぱり人前だとどうしてもあがっちゃって……」

「う~む……」

「だったら……某国の大統領警護でもやってみるか?」

200 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:14:47.09 IX1T93cJ0 22/33

< 某国 >

ニート「よろしくお願いします、大統領」

大統領「ミーはユーには期待してますヨー」

バババッ!

テロリスト「死ねっ! 大統領っ!」チャッ

大統領「ワオ!?」

ニート「むっ!」ササッ

パンッ! パンッ! パンッ!

ニート「ボクに拳銃なんか効かないぞ!」ムキッ

キンッ! キンッ! キンッ!

テロリスト「ゲェッ!?」

212 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:17:31.42 IX1T93cJ0 23/33

ニート「大統領は向こうへ逃げて下さい!」ガシッ

大統領「オ~、パワフル!」

ニート「えいっ!」ブオンッ

大統領「オ~、ミーはフライングしてマース!」ギュウゥゥゥン…

ドゴォンッ!

ニート「あっ……」

ニート(しまった、大統領を約200メートル投げ飛ばしちゃった!)

228 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:21:56.38 IX1T93cJ0 24/33

< 家 >

「そうか……」

「テロリストは退治したが、大統領に大怪我を負わせて」

「やはり一日でクビ、か……」

ニート「うん……」

ニート「せっかくお父さんが紹介してくれた仕事なのに、ごめんなさい……」

「いや……気にするな」

「人間には向き不向きがあるからな」

240 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:23:50.95 IX1T93cJ0 25/33

(う~む)

(並みの仕事では、息子は筋肉を持て余してしまうようだ)

(せっかく恵まれた肉体があるのに、もったいない)

(なにか、息子に見合った仕事はないものだろうか)

(こればかりは、ハローワークに頼んだところでどうにもならんだろうな……)

249 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:26:51.01 IX1T93cJ0 26/33

すると──

テレビ『突然ですが、ニュースです!』

テレビ『高さ数千メートルの巨大な波が、日本に迫っているという情報が入りました!』

テレビ『皆さん、避難して下さい!』

テレビ『避難して下さい!』

ニート「ええっ!?」

「なんだとぉ!?」

(高さ数千メートルの波など、どうしようもないじゃないか!)

266 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:32:26.56 IX1T93cJ0 27/33

「息子よ!」

「母さんを連れて逃げるぞ!」

「少しでも内陸に避難するんだ!」

ニート「…………」

ニート「いや……ボクが波を食い止めるよ!」

「なにぃ!?」

「いくらお前でもそれは無茶だ! 津波は本当に恐ろしい自然災害──」

ニート「だけど……ボクがやらなきゃだれがやるんだよ! お父さん!」

(た、たしかに……)

272 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:35:32.92 IX1T93cJ0 28/33

< 沿岸部の町 >

ゴォォォォォ……!

町長「波がすぐそばまで迫っておる……」

町長「もうダメじゃ……この町は終わりじゃ!」

町民「あんな山のような波……逃げ切れるわけがない!」

「全て滅んでしまうのね……」

子供「うわぁ~~~~~ん!」

自衛隊員「くそっ……俺は己の無力さを呪うぞ!」ガンッ

281 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:39:48.12 IX1T93cJ0 29/33

ニート「でやあああっ!」ダダダッ

町長「あれはだれじゃ!?」

町民「波に立ち向かうようです!」

「ムチャよ! すぐ波に押し潰されて終わりだわ!」

子供「だめぇぇぇっ!」

自衛隊員「引き返すんだ! 命はないぞ!」

ニート(いや……ボクは確信している)ダダダッ

ニート(この波を止めることができるのは……ボクしかないと!)ダダダッ

290 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:42:59.51 IX1T93cJ0 30/33

ザバァァァァァ……!

ニート「うおおおおおおおおおっ!!!」バッ

ガシィッ!

グググ……!

町長「なんじゃと!?」

町民「すごい、両腕だけで巨大な波を押さえている!」

「なんて力なの!?」

子供「すごぉ~い!」

自衛隊員「まさか……波を腕力で食い止めるなんて……!」

303 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:47:31.43 IX1T93cJ0 31/33

ニート「これが──」

ニート「お父さんのお金とお母さんのご飯で作った……」

ニート「ボクの筋肉だァァァァァ!!!」

グンッ!

バシュゥゥゥゥゥ……!!!

町長「な、波が……」

町民「消えた……」

「信じられないわ……!」

子供「すごいや、すごいや! スーパーマンだ!」

自衛隊員「敬礼!」ビシッ

325 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:52:17.25 IX1T93cJ0 32/33

ニート「や、やったぁ……」ドサッ…

町長「なんという若者じゃ……」

町民「ありがとう! 本当にありがとう!」

「私たち、生きてるのね……彼のおかげで……」

子供「ボクもお兄さんみたいなスーパーマンを目指すよ!」

自衛隊員「君はこの町の──いや日本の英雄だ!」



ニート(お父さん、お母さん、ありがとう……)

348 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/11/15(金) 02:57:40.53 IX1T93cJ0 33/33

数日後──

総理大臣「先日の功績を称え、ニート君を我が国公式の“守護神”に任命する」

総理大臣「これからも頑張ってくれたまえ」

ニート「ありがとうございます!」

ニート「ボクは守護神として、色々な災害から日本の人々を守ります!」



「あの子ったら、すっかり立派になって……」ウルッ…

(波を食い止めたことで、息子に責任感が生まれ、いい仕事にも恵まれた……)

(そうか……)

(これが本当の“波浪ワーク”だったというわけか)





おわり

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