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一方通行「そンな実験で絶対能力者になれるわけねェだろ」
part1
【前編】
【後編】
part2
【前編】
【後編】
part3
【前編】
【後編】
最強とは、一体なんだったのか。
これまで自分が歩んできた道を振り返る度、一方通行はその問いに行き詰る。
学園都市の第一位、たった七人しかいないレベル5の筆頭、絶対能力者に最も近い存在、最強。
大層な肩書きだけはいくつもあるが、その力がもたらしたものは何か、その力で何が出来たか。
学園都市最高峰の頭脳を存分に活用し、並ぶもののない程の圧倒的な力を振るい、もがき抗い続けてきた。
しかしそれでも尚、彼は己の身を置く環境一つ変えることは叶わず、今日まで世界に翻弄され続けている。
最高の頭脳と最強の力、双方を併せ持っているにも関わらず、世界はこんなにも思い通りにならない。
どれほど足掻いても事実は変わらない。今も、昔も、彼にあるのはたった一つ。
彼が童貞だという、その事実だけ――
一方通行「そンな実験で絶対能力者になれるわけねェだろ」 アフター
関連スレ
そンな実験で~part1
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1302781376/
part2
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1304763529/
part3(完)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306251545/
よくもまぁこんなひでぇスレがpart3まで伸びたもんだぜホント
元スレ
垣根探偵事務所
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1309278276/
― 一方通行宅
一方通行(……どォしてこうなった)
結標「ほらあっくん、あーんして?」
番外個体「ダメダメ、第一位はミサカが食べさせてあげるんだから!」
一方通行「やめろ、二人して箸押し付けて来るンじゃねェ……つーか俺の皿返せ」
食蜂「二人ともやめなさいよぉ、ご主人様が困ってるじゃない
それにご主人様の身の回りの世話は私がやるって決めてるんだからぁ」
一方通行「オマエどっから沸いて出た?つーかマジで止めろオマエら、
反射して無かったら今頃俺の顔面ベッタベタだぞ」
絹旗「相変わらず朝っぱらから超うざったいことこの上ないですね、この連中は」モグモグ
御坂「ホントもういい加減にして欲しいわね……」ハァ
絹旗「と言いつつ、御坂も毎日超さり気無く一方通行の隣か対面をキープしてますよね」
食蜂「ダメよォ御坂さん、あんまり私のご主人様に近づいちゃ」
御坂「うっさいわね!アンタの方が新参でしょうが!!ってか何でアンタがここにいるのよ!?」
食蜂「あらぁ?だって私はご主人様に身も心も捧げたんだもの、いるのは当然でしょぉ?」
御坂「みみみ、身も、心も捧げた、ってま、まさか……」ガクガク
一方通行「いや指一本触れてねェから、全反射してっから、俺妹達一筋だから」
絹旗「果たして二万人いるクローン体全部に超求愛してるのが『一筋』と言えるのでしょうか」
結標「隙あり!」グイ
一方通行「むぐゥ!?」ガポ
結標「ふふ、どうあっくん、美味しい?」ニコッ
番外個体「あああもう!ズルいズルい!!ミサカが食べさせてあげたかったのに!」
一方通行「ゲホッ、クソ、いきなり口ン中に箸突っ込ンできやがって……」ゲホゴホ
番外個体「咽てる第一位……」キュン
絹旗「そこ、超キュンとするところではないと思うんですが……」
一方通行「ゴホゴホッ……だ、誰か飲み物取ってくれ……」
番外個体「待ってました!はいどうぞ、ブドウジュースだよ第一位!」スッ
一方通行「おォ……サンキュ……」ゴキュゴキュ
結標「チィィ、先を越されたわ!!」
食蜂「二人とも動きが速いのねぇ……私ももっと頑張らないと、奴隷失格だわぁ」
絹旗「そこは超失格でいいと思います……おや御坂、どうしました?
微妙なポーズでジュース持ったまま固まって超何してるんです?」
御坂「な、なんでもないわよ!このジュースは私が飲む為のものなんだから!
別に一方通行に渡そうだなんて……」ゴクゴクゴク
絹旗「いえ誰もそんな事超言ってませんから、何も超一気飲みしなくても……」
番外個体「どう第一位、美味しい?ミサカの特製ブドウジュースだよ」
一方通行「……ブドウより鉄の味の方が濃いンですけどォ」
番外個体「フフッ」ニコッ
一方通行「………なァ、なンでオマエ手首に包帯巻いてンの?なンで血が滲ンでンの?」
番外個体「聞きたい?聞きたい?」ニタァ
一方通行「怖ェからやめとくわ……」
番外個体「あはぁ……第一位の中にミサカの一部が入っちゃったんだぁ……」エヘヘ
一方通行「恍惚の表情でそンな事言うのマジでやめろ、正直滅茶苦茶怖ェ」
結標「ねぇあっくん、次はお姉ちゃんのジュースも……」スルリ
絹旗「ちょ、何で超服脱ごうとしてるんですか!?」
結標「ジュースを飲ませてあげる為に決まってるじゃない!」
御坂「じゅ、ジュースって……」カァー
食蜂「御坂さん何の事だかわかるのぉ?案外やらしいのねぇ」クスクス
御坂「わわ、わからないわよ!全然知らないわ!!」
結標「さぁあっくん、直に飲んでもいいのよ……?」ジリジリ
一方通行「空気、風、大気……あンじゃねェか、目の前のクソをブチ殺すタマがここに……」ギュオオオ!!
結標「ひでぶ!!?」グシャリ
絹旗「あー、今日はまた一段と超派手にぶっ潰れましたね……
正直超食欲が無くなるので食事時は自重して欲しいんですが」
一方通行「そりゃ結標の大馬鹿に言ってやってくれ」
絹旗「まぁ、ミサワはまだ悦に入って超放心状態ですし、結標は超潰れましたし、
これでようやくマトモに食事が出来ますね」
御坂「まだ余計なのが一人いるけどね」ジトッ
食蜂「御坂さん酷ぉい、私はご主人様のお傍にいたいだけなのにぃ」
絹旗「食蜂はツートップに比べるとまだマシな方ですし、超ギリギリ許容範囲内でしょう
相手にすると超めんどくさいですけど」
一方通行「つーかいつまで奴隷やってンだよ、自分の能力だろォが、さっさと解除しろよ」
食蜂「いくらご主人様の命令でもそればっかりは聞けませぇん」キッパリ
一方通行「ホントに、どォしてこンな事になっちまったンだか……」ハァ
一方通行(俺はただ、ショートカットで大人しめの女の子と
運命的な出会いを果たした上で脱童貞したかっただけだってのに……)
一方通行(気付いてみればストーカーどもに囲まれて一挙一動監視されながら生活する毎日……
妹達に会いに行く事すらままならねェし、運命の相手を探す事も出来やしねェ……)
一方通行(振り回されてばっかだな最近の俺……
マジで、なンとかこの状況を打破出来ねェか?心休まる時間が一切ねェぞ)
一方通行(考えろ……前回は失敗しちまったが、何か方法はあるはずだ)
食蜂「顔色が悪いですよご主人様ぁ、何かお悩みですかぁ?」
一方通行「ン、あァ、オマエらのせいでな……」
食蜂「まぁ、私の為にお心を煩わせていただけるなんて、感激です」ジーン
一方通行「なンでストーカーどもは揃いも揃ってそンなにポジティブなンだ?」
絹旗「そりゃ超ポジティブで脳味噌花畑じゃないとストーカーなんて超やってらんないでしょう」
御坂「本当に、困ったものよね」ハァ
一方通行「何物憂げに溜息吐いてやがンだ、そもそもオマエがストーカー第一号だろォが」
御坂「は、はぁ!?私がアンタのストーカー!?寝言は寝てからいいなさいよ!!」キッ
絹旗「相変わらず超自覚無しですか、そうですか」
一方通行「ある意味コイツが一番救いようがねェ気がするわ」ハァァ
食蜂「ご主人様ぁ、悩み事ならなぁんでも私に吐き出してくださぁい
お手伝いさせていただきますよぉ」
一方通行「イヤだからオマエらが………ン、待てよ」
一方通行(なンで今まで気付かなかったンだ俺は、
第五位の能力利用すればストーカーどもを一掃するのなンざ簡単じゃねェか)
一方通行(流石に第三位の超電磁砲には効かねェかも知れねェが、
結標と番外個体の二人には多分有効だろ、コイツらは防御能力高くねェし)
一方通行(厄介過ぎるこの二人がストーカーやめるだけでも相当楽になるしなァ、試してみる価値はあるな)
一方通行(クソ、なンでもっと早く気付かなかったンだ、
そォすりゃ垣根の口車に乗って女装するよォな事もなかったってのに……)ギリッ
一方通行(まァいい……この作戦、万一失敗してもデメリットはねェし、とにかくやってみるか)ニタ
食蜂「ご主人様ぁ?」
絹旗「何か超あくどい顔してますね」
御坂「どうせまたろくでも無い事考えてるんでしょ?
どうやって妹達の気を引くかとか、運命の相手との出会い方とか……馬っ鹿じゃないの」フン
絹旗「いつの間にか超正統派ツンデレヒロインになってますよね、御坂」
一方通行「……食蜂、オマエに頼みがあるンだが」
食蜂「頼みだなんてそんな事言わずにぃ、いつものように命令すればいいんですよぉ?
跪いて足を舐めろ、とかぁ、散歩に行くから首輪をつけろ、とかぁ」
一方通行「俺がいつそンな命令したよ!?」
御坂「そんな事してたのアンタ……最低よ!」ウゥッ
絹旗「流石の私も超ドン引きなんですが……」ウワァ
一方通行「だからやってねェって!!」
食蜂「フフー、さぁご主人様ぁ、何なりとご命令を」ニコッ
一方通行(コイツ、ホントに洗脳かかってンのか?かかったフリして俺をからかってンじゃ……)
結標「フフフフ、そういうプレイがしたいんならお姉ちゃんに言えばいつでも付き合ってあげるのに……」ムクリ
絹旗「うわ、もう復活しやがりましたよこの女」
番外個体「んー、ミサカはどっちかって言うとSなんだけどさぁ、
第一位の為ならどんな役割でもこなしてみせるよ?」ニタニタ
御坂「げ、こっちも……」
一方通行「ハッ!テメェらそンな事言ってられンのも今の内だ!」ビシッ
結標「え?」
番外個体「どういう事?」
一方通行「やれ食蜂!コイツらが二度と俺のストーカーにならないように意識を改変してやれ!!」
食蜂「Yes, Your Majesty!!」 カッ
結標「え、ちょ、ちょっとそんな!?」
番外個体「ど、どうして!?」
絹旗「おぉっと、ついに超強硬手段に出ましたね」
御坂「てかまぁ、今までやらなかったのが不思議だったくらいだけどね」
食蜂「さぁ二人ともぉ、ご主人様との思い出を忘れて真っ当な人間になりなさぁい」キュイイイン
結標「い、いや、やめてええ!!」
番外個体「な、何でそんな事……やめてよ!ミサカ第一位の事……ッ」
一方通行「ぐ……流石に心が痛ェな……いや、情に流されるな、心を鬼にするンだ……」
絹旗「超ちょっとだけ可哀想な気もしますが、これでこの家の少しは平和になるというものです」ムフー
御坂(よし、二人減る)グッ
食蜂「覚悟はいいかしらぁ?いくわよぉ………」グググ…
結標「いやああああ!!」
番外個体「うあああああ!!」
食蜂「フフフ、存分に苦しみなさぁい、私のご主人様を煩わせた罰よぉ……
……え?あ、あれ、な、何コレ……え?」
結標(あっくんあっくんあっくんあっくんあっくんあっくんあっくんあっくんあっくんあっくんあっくん
あっくんあっくんあっくんあっくんあっくんあっくんあっくんあっくんあっくんあっくんあっくん
あっくんあっくんあっくんあっくんあっくんあっくん……)
食蜂「な、何?何で!?操れない……ッ!?」
番外個体(第一位第一位第一位第一位 第一位第一位第一位第一位 第一位第一位第一位第一位
第一位第一位第一位第一位第一位第一位第一位第一位第一位第一位第一位第一位第一位
第一位第一位第一位 第一位第一位第一位第一位第一位……)
食蜂「い、いや、何なの!?く……せ、制御できない……」
結標「フフフ……まだまだ、こんなもんじゃないわよ私の愛は!!」カッ
番外個体「この程度でミサカの想いを打ち消そうだなんて、片腹痛いねぇ!」キッ
食蜂「う、嘘、そんな!?わ、私の能力が効かないなんてぇ……
あ、いや、思考が、逆流して……いやあああああああ!!!!!」ガクガクガク
一方通行「食蜂!?」
食蜂「うぁ……あ、あっくん……第一位……アルビノ、ショタ……」ガクリ
一方通行「食蜂ォォォォォォ!!!!」
絹旗「超死んだあああああ!!!」ウワァァァ
御坂「い、いや意識失っただけでしょ、何か色々取り返しのつかないことになってそうだけど……」
一方通行「クッソ何てこった、まさかこの作戦も失敗しちまうとはなァ……」
御坂「想いだけで心理掌握跳ね返すってとんでもないわね……私でも結構キツいのに」
一方通行「ハァ、まァた打開策練り直しかァ……気晴らしに散歩でも行って来るかなァ」
絹旗「あー一方通行、凹んでる所超申し訳ないんですが、」
一方通行「あァ?」
絹旗「あちらさん方がマジギレしてるので超どうにかしてください」
一方通行「……え?」
結標「さぁて、流石のお姉ちゃんも今日はちょっと怒っちゃったわよ?
まさか今までの甘酸っぱい思い出を消しさろうとするなんてねぇ?」
番外個体「そっかぁ、やっぱり第一位はミサカの事嫌いだったんだぁ……
それじゃさ、もう第一位を殺してミサカも死ぬしかないよねぇ?」
一方通行「」
御坂「あー……まぁ乙女心を身勝手に弄ろうとしたんだから二人が怒るのも無理ないわよね」
結標「記憶をなくしたまっさらな状態のお姉ちゃんと一からやり直したかったのかもしれないけど、
無許可でいきなりやろうとするのはオイタが過ぎると思うなぁ」ジリジリ
番外個体「ねぇ第一位、天国ってどんなところだと思う?それとも地獄行きかな?
どっちにしたって、第一位が隣にいればミサカにとっては天国だけどね」ニタァ
一方通行「う、く、クソ、やってられっかァァァァ!!!」ダッ パリーン!
絹旗「あ、超逃げた!」
御坂「わざわざ窓割って逃げなくても……」
結標「待ちなさいあっくん!今日はトコトン行くわよぉぉぉ!!!!」ビュン
番外個体「待ってよ第一位!大人しくしてれば痛くないように一発で叩き割ってあげるからさあああ!!!」ダッ
絹旗「……全く、朝から本当に超騒がしいですね」ハァ
御坂「いい加減慣れてきたけどね……って、もうこんな時間!絹旗さん、すぐ出ないと学校遅刻するわ!!」
絹旗「ふぇ? うはぁ本当だ!?超急がねば……あ、食蜂どうしましょう?」
御坂「寝かせたままでいいんじゃない?面倒なことになってそうだし」
食蜂「」
絹旗「御意。それでは超急ぎましょうか」
御坂「鍵は……かけなくていいわよね、家半壊してるし」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
「待ち合わせまで半端に時間空いてるな……どうすっか」
第七学区の一角、暗部の仕事を終えた垣根は携帯電話で時間を確認しつつ、この後の予定を考えていた。
一方通行との待ち合わせ時刻まで後一時間弱。さっさと仕事を終わらせ、
自宅に帰ってシャワーでも浴びてから一方通行と会うというのが当初の予定だったのだが、
予想外に仕事が長引いてしまい、自宅に戻ってシャワーを浴びるにはもう時間が足りない。
かと言って何もせずにただ待つには長すぎる。
さてどうしたものか、と思案しつつ、垣根はとりあえず手持ち無沙汰にその辺を歩き回る事にした。
「本屋かゲーセン辺りで時間潰すか?……いや、汗流してぇな、近くに銭湯でもありゃいいんだが」
「む……そこにいるのは垣根帝督か?」
「あぁ?」
不意に声をかけられ、垣根はピタリと足を止める。
ハッキリ言って、垣根は知り合いが少ない。街中で出会って声をかけてくる相手となると
一方通行くらいしかいないはずだが、声も口調も明らかに違う。
さてそれでは何者か、と首を傾げつつ声の方へと向き直った垣根の視線の先に、
安物のジャケットを羽織った大柄な男が立っていた。
「……やはりそうか、久しぶりだな」
「おぉ、誰かと思ったら駒場じゃねぇか、まだ生きてたんだな」
「お陰様で、なんとかな」
駒場利徳。かつて垣根が盛大な勘違いの末に命を助けたスキルアウトのリーダーである。
軽口を叩きながら挨拶を交わす二人だが、彼らの間にある信頼関係は
勘違いを重ねた上に成り立っているものである。
垣根は駒場の事を清く正しいロリコンで童貞の同士だと思っており、
駒場は垣根の事を超能力者でありながら無能力者の未来を憂う勇士だと考えているのだ。
本当に、どうしてこんな有り得ないような行き違いが生まれてしまったのやら……
「その後どうよ、無能力者狩りしてたクソどもは?」
「随分と鳴りを潜めている。お前のお陰だ、感謝しているよ」
垣根の問いに、駒場は微かに微笑みながら返答する。
無能力者狩りをしていた能力者達は一度垣根の手で一掃されており、
その為今日に至るまで、無能力者達が迫害される事案は大幅に減少しているらしい。
垣根のお陰である事に間違いは無いのだが、勿論これも勘違いの元行われた事である。
「よせよせ、俺は他人に感謝されるような人生送ってきた覚えはねぇよ、
ムカつくクソどもを適当にぶっ潰しただけだっての」
「例えそうであったとしても、やはり俺はお前に感謝している」
「やめとけって、俺みてぇなのに恩義感じてると長生き出来ねぇぞ?」
駒場の謝辞を受けた垣根はくすぐったそうに苦笑いしながら、やれやれと大げさなジェスチャーを取る。
それにしてもこの男、こういう時だけは本当に無駄にかっこいい。
「全ての能力者がお前のような考えを持っていればどれ程良い事か……」
「心配すんな、第一位の一方通行も俺と似た思考を持ってる。
いつか俺達がこのクソ溜めみてぇな世界を変えてやるさ」
そうとも、俺は非童貞になっても童貞を迫害したりするものか、と垣根は心の中で誓いを立てる。
童貞が馬鹿にされない世界。なんと素晴らしいのだろう。
「……その時は、俺も微力ながら力にならせてもらうとしよう。
しかし、第一位も同じ志を持っているのか……やはり捨てたものではないな、超能力者も」
「あぁ、アイツも同士だ。そのうちオマエにも会わせてやるよ」
「それは、楽しみだ」
勘違いの上に勘違いを更に重ね、男達の信頼は更に深まっていく。
無論、垣根の言う同士とは童貞の同士という意味であり、
駒場の言う同じ志とはこの街の未来、持つ者と持たざる者の対立を憂いているという意味である。
この勘違いで成り立った奇妙な関係、決壊したときはさぞ見物だろう。
「見つけたじゃん、駒場ぁ!!!」
「む……」
「ん?」
しばし談笑を続けていた駒場と垣根の間に、突如地を揺るがさんばかりの大声が割って入る。
見ると、遥か遠くから緑色のジャージを着た女性が駒場の名を叫びながら猛烈なスピードで迫って来ていた。
彼女が大地を蹴る度、その豊満なバストが上下に激しく揺れ動く。
身体にフィットするジャージで押さえ付けられているにも関わらず、だ。
「そこを動くなよ!今日こそ捕まえてやるじゃん!!」
「……何だあれ、知り合いか?……しかし、胸でけぇな」
「あぁ、黄泉川と言う名の、俺の事を何かと目の敵にしている警備員だ。あの巨乳は侮れんぞ」
性格の堅い駒場ですら思わず言及してしまうほどの巨乳である。当然、垣根が目を奪われないはずがない。
ゴクリと生唾を飲み干した垣根の脳が、加速的にダメな方向へと回転を始めた。
垣根(あの警備員に協力する→感謝される→さり気無く連絡先とか交換する
→少しずつ関係を深めていく→おっぱいおっぱい)
垣根「ついに俺の時代か……」ニヤリ
駒場「……何を言っている?とにかく俺は逃げる。また会おう、垣根帝督」
垣根「まぁ待て」ガシ
駒場「む、何をする?」
垣根「悪いな駒場……俺の運命の為にちょっと犠牲になってくれ」
駒場「な、何?」
垣根「あの警備員にオマエを引き渡す」
駒場「な、ふざけているのか!?俺は捕まるわけには……」
黄泉川「追いついたじゃん駒場!さぁ、神妙にするじゃん!!」
駒場「く……おい、手を離せ!」
垣根「だが断る」
黄泉川「おっと少年、駒場を捕まえるのに協力してくれたじゃん?感謝するじゃんよ」
垣根「いえいえ、善良な一般市民として当然の事をしたまでですよ」ニコッ
黄泉川「なんとまぁ、今時珍しい好青年じゃん……駒場、お前も更生してこの子を見習うじゃん」
駒場「ぐぬ……何を考えている、垣根」
黄泉川「ふふん、ついにこの時が来たじゃん!
さぁ、たっぷり絞ってやるから覚悟してお縄につくじゃん駒場!!」
垣根「搾り取るだとぉ!?」
駒場「む!?」ビクン
黄泉川「ど、どうしたじゃん少年!?」
垣根「い、いや何でも……それよりお姉さん美人ですね、とても警備員とは思えない」キリッ
黄泉川「ハッハッ、嬉しい事言ってくれるじゃん少年、もしかして私を口説いてるじゃん?」
垣根「そうだ、と言ったら?」ニィ
駒場「……お前、何を?」
黄泉川「おぉっと、面白い奴じゃんよ。その積極性と今日の感謝も込めて、今度食事でもご馳走してやるじゃん」ニカッ
垣根「マジっすか、いや言ってみるもんだな」
黄泉川「それじゃ少年、私は今から駒場を連行するから、連絡先交換しとくじゃん?」
垣根「うっす、俺の携帯番号は………ん、あそこにいるのは……?」ハッ
麦野「あーもう、フレンダの馬鹿、まぁたミスしやがって……イラつくわ……」テクテク
黄泉川「どうしたじゃん少年?」
垣根「……まさか、こんな所で見つけるとはな……やはり運命か」ブツブツ
黄泉川「何言ってるじゃん?」
垣根「あーすいません、ちょっと急用が出来たんでまた今度で」
黄泉川「ん?まだ連絡先交換してないじゃん?」
垣根「いえホント一刻を争うんで、これで失礼します、では」バサァッ
黄泉川「速!?てか飛んだ!?」
駒場「本当に何がやりたいんだ……?」
黄泉川「物凄いスピードでどっかに飛んでったじゃん……腹でも下してたじゃんかね?
まぁいいじゃん、それじゃ駒場、行くじゃんよー」
駒場「ぐ、おのれ……垣根め、一体何故……」
駒場(……奴が考えなしにこんな事をするとも思えん。何かあるはずだ、しかし何が……)
駒場(待て、あいつは最初に何と言っていた?……『まだ生きていたのか』確かにそう言っていたはずだ)
駒場(ただの憎まれ口だと思っていたが……あれが本当に俺が生きている事に対しての驚きだったとしたら?)
駒場(まさか、再びこの街の上層部が俺の命を狙っているのか……?)
駒場(いや、そう考えれば全て辻褄が会う。こうして警備員に俺の身柄を拘束させれば、
暗部といえどもそう簡単に手出しをする事は出来なくなるはずだ)
駒場(そうして俺が拘留されている間にあいつは事態の収束を図ろうというわけか……)
駒場(とすると、突然どこかに飛んでいったのは
俺の命を狙っている者が近くにいたのを見つけ、排除に向かったと言う事か!)
駒場「……また助けられてしまったな、垣根帝督」フッ
黄泉川「なぁに満足そうに笑ってるじゃん?ほら、きりきり歩くじゃんよ」
垣根「待て麦野おおおお!!今日は逃がさねぇぞおおおお!!!」バサバサバサ
麦野「何なんだよテメェはああああ!!こっち来ないでよもおおお!!!」ダダダダ
垣根「ハハッ、照れるな照れるな!やっぱり俺にはオマエしかいねぇよ!!!」バサバサ
麦野「もういやあああああ!!!」ウワァァ
565 : >>1[saga] - 2011/08/07 14:07:12.00 qB8mGc/eo 25/25
終わり
久しぶりに書いてて思ったけど、ほんとアホしかいねぇなコレ……