ほむら「そうよ。知ってるでしょ。まどマギの新作映画」
まどか「そりゃまあ……」
ほむら「前売り券が二枚あるのだけど、よかったら一緒にどう?」
まどか「うーん……」
元スレ
まどか「叛逆の物語?」(ネタバレ注意)
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1382892782/
ほむら「え、あまり乗り気ではない?」
まどか「ごめんね、ほむらちゃんと映画に行くのはいいんだけど……」
ほむら「?」
まどか「まどマギってTVシリーズの十二話で綺麗にまとまってるところがあるでしょ。
それなのに新作エピソードって、今までのイメージが壊れちゃわないか不安で……」
ほむら「大丈夫よ! 去年の総集編だっていい出来だったじゃない! 特にOPとか!」
まどか「ほむらちゃんがそんなに言うなら行ってみようかなあ」
ほむら「(よし、まどかとのデートの約束ゲット)」
ほむら「(総集編は素晴らしい出来だった。わたしとまどかにスポットを当てて構成し直していたところが良かった)」
ほむら「(前回の経験からして、まどかとのデートにこれ以上ふさわしい映画はないはず)」
ほむら「(期待してるわよ……)」
十月二十六日(土) 映画館
まどか「前の上映が終わったみたいだね」
ほむら「そうね」
まどか「ネタバレが怖いからあまりあっちには近寄らないでおこう」
ほむら「(わたしは別に構わないけど)」
ほむら「(……?)」
ほむら「(映画を観終わって出てくる人の表情……)」
ほむら「(何か嫌な予感が)」
シアター内
まどか「今回も色紙貰えたね!」
ほむら「公開当日に来て良かったわね」
まどか「もう開けちゃおう。あ、さやかちゃんと杏子ちゃんだ」
ほむら「(チッ)」
まどか「ほむらちゃんのは?」
ほむら「(……)」
まどか「わー、マミさんと新キャラのなぎさちゃんだ! いいなあ」
ほむら「(今日はついてないわ)」
「口は禍の元と――」
ほむら「(ともあれもう始まる)」
ほむら「(この後まどかと一緒にご飯を食べて、うちに連れ込む予定なんだから)」
ほむら「(いいムード作り、頼んだわよ。新作映画)」
まどか「どきどき」
(上映中)
ほむら「(始まった)」
ほむら「(第一話を踏襲して、二次創作のような都合のいい世界……)」
ほむら「(どうせ幻覚か何かでしょうね……。あ、やっぱり)」
ほむら「(わたしが魔女に? いや、それでもまどかのために行動するわたし、えらい)」
ほむら「(最後はまどかがわたしを救って……)」
ほむら「(これでわたしが円環の理に導かれて終わりね)」
ほむら「(いい感じ。やっぱりまどマギはまどかとわたしのラブストーリーだったということで……)」
ほむら「(!?)」
ほむら「(え、何この展開)」
ほむら「(既に上映時間は残り少ない……今からこんなことやられたら……)」チラッ
まどか「……!?」
ほむら「(ああ、スクリーンの中のまどかと隣にいるまどかが同じ表情を……)」
ほむら「(いや、それでももう一度どんでん返しが!)」
ほむら「(どんでん返しが……)」
完
ほむら「」
まどか「……」ポカーン
帰り道
ほむら「……」テクテク
まどか「……」テクテク
ほむら「(気まずい……。映画が終わってから一言も交わしていない)」
まどか「……」
ほむら「ま、まどか! わたし、お腹が空いちゃった! そこのファミレスで食べていかない?」
まどか「食欲ない」
ほむら「そんなこと言わずに!」
まどか「……」
――
ほむら「(結局ファミレスも三十分で出てしまった……。注文以外言葉を発さずに)」
ほむら「(ええい、ここで弱気になってどうするの! 今日のデートでまどかと行くところまで行くって決めたんだから!)」
ほむら「ね、ねえ。よければ今日はうちに泊まっていかないかしら」
まどか「どうして……?」
ほむら「映画の感想とか色々話したいし!」
まどか「そんなこと言って、変なこと企んでないよね……」
ほむら「そんな! わたしが今まで一度でもまどかを困らせたことがあったかしら」
まどか「いや、正直TVシリーズの第八話あたりではかなり怖かったし」
ほむら「えっ」
まどか「あの映画見た後だともうほむらちゃんのことまともな目で見られないよ……」
ほむら「あ、あんなのただの映画じゃない! わたしはあんなことしないわ!」
まどか「でもほむらちゃんだって映画みたいな状況になったら同じことするんじゃないの?」
ほむら「そんなこと……!」
ほむら「(いや、どうだろう」
ほむら「……」
ほむら「鹿目まどか。あなたはどこまで愚かなの」
まどか「!?」
ほむら「いいわ。百歩譲ってわたしも映画のわたしと同じようなことを考えているとしましょう。
でも、映画のわたしがやったことってそんなに悪いことかしら」
まどか「どういうこと……?」
ほむら「その話をすると長くなるわ。だいぶ冷えてきたし、やっぱり続きはうちでしましょう」
まどか「本当に変なことしない?」
ほむら「神に誓ってしないわ」
ほむら「(何だろう、この薄っぺらい響きは……)」
ほむホーム
ほむら「(何だかんだで来てくれるんだから、わたしとまどかの絆は強い)」
まどか「……」
ほむら「じゃあ話させてもらうわ」
まどか「待って。ほむらちゃんはあの悪魔化? っていうの? いつからやるつもりだったの?
ひょっとして初めから?」
ほむら「初めから、っていうのは流石にないと思うわ。わたしが脚本書いたわけじゃないから正確なコメントはできないけれど、
たぶん悪魔化の決断はあの映画の中で行われたと思う」
まどか「それって、あの場面かな? わたしとほむらちゃんがお花畑でおしゃべりしてるところ」
ほむら「あそこでの会話も大きな原因の一つになってるでしょうね。
まどかが本当は皆と離れ離れになりたくなかった、ということを聞いてしまったから、
わたしはまどかをこっちの世界に連れて帰ろうと思った。ああ、救済で終わってたらイチャラブシーンとして見られたのになあ!」バンッ
まどか「ひっ」ビクッ
ほむら「……失礼。それと、インキュベーターにまどかが狙われているって知ったのと、
魔女になる直前でまどかを狙うインキュベーターへの怒りで色々暴走したのと……」
まどか「結局ほむらちゃんは何がしたかったの!?」
ほむら「わたしはただ、まどかが大事な人たちと一緒にいられるように、そしてわたしがまどかと一緒にいられるようにしただけ」
まどか「後半の方が本音だよね!? やっぱりほむらちゃんはわたし以外どうでもいいってことでしょ。
TV版最終回では『あの子が守ろうとした世界で戦い続ける』とか言ってたくせに、今回その世界を全部壊しちゃうし」
ほむら「落ちついて、まどか。よく考えてみて。そもそも映画のラストでわたしがしたことは何?」
まどか「それは……。
システム、秩序としての円環の理とわたしの人間部分を引き離して、
ついでに円環の理に導かれた人たちを呼び戻して、そのあたりの都合がよくなるように世界を作り変えたんだよね」
ほむら「それで、何か皆にとって不都合が生じたかしら」
まどか「え……。うーん……」
ほむら「美樹さやかたちはもとの日常に戻れたし、何よりまどかも皆と暮らせるようになったし、いいことずくめじゃない」
まどか「そうだけど……。あ、魔女は? 魔女はどうなったの?」
ほむら「それについてはちょっと……。一回映画を見ただけでは判断しかねるわ。
ただわたしがやったことはあなたがさっき説明してくれた通りだから、魔女や魔獣に関してはノータッチ。
魔法少女や魔獣は残っているけれど魔女はもういないってことでいいんじゃないかしら」
まどか「円環の理は機能しているのかな?」
ほむら「それも微妙だけど、まどかが自分の正体に気付いていない間は機能しないのかしら。
それだとその期間にジェムが濁りきると魔女になってしまうことになるけど」
まどか「それなら……!」
ほむら「でも、全体的に見れば状況はTVシリーズの第一話に戻ったわけよ。
最後わたしがまどかにリボンを返すシーンはそういう意味もあったと思うわ」
まどか「あれすっごくキモかったよね」
ほむら「それに考えてみて。あそこでわたしがまどかに導かれていたら、残るのはあの荒廃した地球。
巴マミも杏子もジェムが濁りきるのを待つことしかできない。
何よりインキュベーターはあなたを支配しようと策を練り続けたと思うわ」
まどか「確かにそうかも……」
ほむら「だからむしろわたしはまどかのためにすごく適切な行動をとったとすら言えるんじゃないかしら」
まどか「何かそんな気がしてきた……」
ほむら「ほっ」
まどか「でもね」
ほむら「?」
まどか「ほむらちゃんが作り変えた後の世界で、確実に失われたものがあるよね」
ほむら「え、何」
まどか「わたしのほむらちゃんへの信頼」
ほむら「ちょ、ちょっと! わたしの行動の正当性は今証明したばかりでしょう?」
まどか「いや、記憶ないから関係ないっちゃ関係ないんだけど、救済しに行ったのに腕掴まれたときかなりびっくりしたし」
ほむら「……」
まどか「改編後の世界でも、正直ほむらちゃんの第一印象は最悪だよね。いきなり抱きついてくるとか」
ほむら「……」
まどか「多分あの世界では、わたしとほむらちゃんが仲良くなることはないんだろうなって」
ほむら「いや、それは確かに、ちょっとアレだったかなって思うけど……。
そんなの魔法少女の運命とか希望と絶望とかと比べたら些細な話だし」
まどか「いや、大事なことだよ。実際わたしとほむらちゃんが仲良くやれてたのなんて、
第十話で言えば三週目あたりまでじゃない。本編の時間軸では結構終盤まで不審者扱いだったし」
ほむら「でも最終話でまどかは分かってくれたし」
まどか「その最終話でようやく改善されたイメージがまた最悪になったってことだよ。
ほむらちゃんは世界をどうこうする前に普通の人間付き合いを何とかすべきだよね」
ほむら「うう……」
まどか「それに悪魔化したあとのキャラって正直イタいし」
ほむら「!?」
まどか「衣装からして色々無理しすぎだし、大幅なキャラ変更を行った前科のあるほむらちゃんが
またキャラ変えたとなるとやっぱ中二病っぽいっていうか」
ほむら「……」
まどか「映画の続編があるか知らないけど、後々絶対ほむらちゃんの黒歴史になると思うよ、あれは。
え? ほむらちゃん? 泣いてるの?」
ほむら「そんなこと……ないわ……」
まどか「まあいいや。映画のストーリーも整理がついてちょっとスッキリしたし。
今日は誘ってくれてありがとう。楽しかったよ」ティヒヒ
ほむら「帰るの?」
まどか「うん。もう遅いから。
心配しないでも、映画のほむらちゃんが色々やっちゃったからって、ほむらちゃんに悪い印象もったりはしないよ」
ほむら「本当に?」
まどか「もちろん。また遊ぼうね。じゃ、さような――」
まどか「……」
まどか「あれ、おかしいなー。開かない」ガチャガチャ
まどか「建てつけ悪いのかな。ほむらちゃん?」
ほむら「やっと捕まえた……」
まどか「え? え?」
ほむら「そのドアね、内側からも鍵を使わないと開けられないようにしたのよ」
まどか「そんな。嘘、だよね」
ほむら「ずっとこのときを待っていた……!」ジリジリ
まどか「ちょ、タンマ」
ほむら「マドカァー!」ダッ
まどか「ひぃぃ!」
ほむら「さ、ベッドに行きましょう」
まどか「やだやだー!」ジタバタ
ドサッ
まどか「や、やめて……。何でこんなことするの……?」
ほむら「あなたには分からないかもしれないわね。これは……」
まどか「……」
ほむら「愛よ!!!」
まどか「この、悪魔ーっ!」
まどか「(映画を見た時点で、逃げておくべきでした)」
終わり