part1 【前編】 【後編】 part2 【前編】 【後編】 part3 【前編】 【後編】 part4 【前編】 【後編】 の続きです
元スレ
一方通行「イヤだ」part5
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1333556380/
11111号「えー、錯乱したお姉様がゲコ太の幻覚見ながら飛び降り自殺を図ろうとするというハプニングがあったものの
むぎのんとていとくんの尽力により何とか場が収まったので今度こそ解答に移ろうと思います、
とミサカは長々と説明臭い台詞を吐きながら仕切りなおします」
御坂「……」グター
垣根「場はとりあえず収まったかもしれねぇが御坂はピクリとも動かなくなっちまったぞ?」
麦野「何かナナメになってるわクローン以上に目が死んでるわ、形容し難いほど悲惨な状態ね」
食蜂「これはあれ、御坂さんお得意の死んだ魚の物真似じゃないかしらぁ」
一方通行「あァ、超電磁砲がクソ寒ィ駄洒落ブチかます前後でそンな話してたなそォいや。
……確かにこりゃ似てンな、折角だし一枚写メっとくか」パシャ
垣根「……オマエの辞書に『同情』とか『良心』って文字は入ってねぇのか?」
一方通行「ハッ、そンな犬の餌以下のモンは名前と一緒に捨てちまったなァ」
11111号「皆さんそろそろ答えは書けましたね?それではクリップボードをこちらに向けてください、
とミサカは皆さんの手が止まっているのをしっかり確認してから指示を出します」
一方通行「ン」
垣根「ほらよ」
麦野「ほいっと」
食蜂「はい」
御坂「……」
一方通行の答え:3番(美鈴)
垣根の答え:3番(美鈴)
麦野の答え:3番(美鈴)
食蜂の答え:3番(美鈴)
御坂の答え:1番(結標)
11111号「むむむ、お姉様以外は皆同じ答えですか。正直もっと答えが割れると思っていたのですが……
とミサカは想定外の回答に腕組みして顔を顰めます。て言うかお姉様も一応答え書いてたんですね」ムゥ
垣根「割れる要素が一切ねぇだろ」
一方通行「1番のショタコンはさっきヤッたばっかなのにもォ妊娠ってのはあり得ねェし、
2番のおっさンはそもそも男だしなァ」
麦野「質問なんかするまでもなく消去法で3番以外は消えるわね」
食蜂「第一位さんが言ってるように1番のショタコンさんの妊娠はあり得ないしぃ、
2番のおじさんが妊娠してても需要ないのよねぇ」
垣根「需要の問題なのか?」
御坂「皆何言ってんのよもー、ママが妊娠なんてするわけないしー、
パパを裏切ってアイツと関係持ってるなんてそんなこと絶対にあり得ないわよー。
1番の人が超スピードで妊娠したって方がまだ現実味があるわー」
垣根「大丈夫か御坂?錯乱してんのか知らねぇけどパパママ呼びが出てんぞ?」
一方通行「清々しいまでの現実逃避っぷりだなァオイ、豆腐メンタルかよ」
麦野「ま、それもいいんじゃない?辛すぎる現実を無理に直視し続けることもないでしょ」
11111号「しかし現実を直視せざるを得ない瞬間も訪れるわけで……という事で結果発表のお時間です、
とミサカは間髪入れずに答えあわせに突入します」
垣根「いやもう分かりきってるからいらねぇよ答え合わせ」
11111号「そうは問屋が卸しません、分かりきった答えであろうと答え合わせを終わらせるまでがクイズです、
とミサカはオチもなく終わらせようとしているていとくんを嗜めます。
さぁ、本物の妊婦さんは名乗り出てください!」
11111号が勢いよく三人の妊婦(仮)達の方へ向き直ると、
そのタイミングで何処からともなく現れた裏方の妹達がドラムロールを演奏しはじめた。
たかだかこんなお遊びの答え合わせに随分と大掛かりなものである。
この為だけに部屋の外でドラムを構えて待機していた妹達の胸中は如何ばかりか。
デデデデデデデデデデ………デデン♪
「……」ガタ
ドラムロールのフィニッシュに合わせるようにして一人の妊婦が立ち上がると、
その人物はそのまま力強い足取りで一歩前へ進み、胸を張りながら大きく口を開く。
アックア「私が本物の妊婦なのである!!」バァーン
「「!!?」」
正解はまさかの(?)アックアさんであった。
11111号「はぁーい、というわけで本物の妊婦さんはアックア先生でしたー。
皆さん残念でしたね、とミサカは皆して見事に不正解となったレベル5勢を鼻で笑います」プゲラ
一方通行「……はァ!?」
垣根「いや……は?」
御坂「え?」
麦野「おい待てコラ!!」
食蜂「ちょ、ちょっとこれどういう事よぉ!?」
アックア「どういう事も何も、妊娠しているのは私だけなのである!!」カッ
一方通行「うるせェ黙れ!!あり得ねェだろォが!!!」
垣根「待て待て待て!男だろこいつ!てかおっさんだろ!?
技術的に男の妊娠が可能になったって話は聞いたことないわけじゃねぇが、それでもちょっと待てよ!!」
麦野「処女懐胎とかほざいてたじゃないのよ!?あれもマジだってわけか!?ふざけんな!!
つーかこのおっさんも今朝まで普通の体格だっただろうが!!」
食蜂「まだショタコンさんが妊娠してるって方が理解出来るわよぉ……」
結標「ふ、見事に騙されてくれたわね?私の膨らんだお腹は服の中に適当な布を詰め込んでいただけよ!!」
結標が嘲笑を浮かべながら軽くマタニティドレスを捲くると、
服の中から大量の丸まった布切れがドサドサと音を立てて滑り落ちて来た。
どうやら香焼くんが中に入っていたわけではなかったらしい。
犠牲になった香焼くんはいなかったんだね……よかった……
麦野「誰もテメェには騙されてねぇよ!!……ってそういや美琴がこいつの番号書いてたか」ハァ
一方通行「……なァ、今アイツの服ン中から出てきた布切れ、どっかで見覚えがねェか?」
垣根「あぁ……確か香焼くんがあんな柄のシャツ着てたよな……」
食蜂「そういえばあんな生地のズボン履いてたわねぇ……」
麦野「……布切れと化した香焼くんの服がショタコンの服の中から出てきたって事は……」
一方通行「……深く考えンのはやめといた方がよさそうだな」
垣根「花の一輪だけじゃ足りねぇな、菊の花束くらい用意してやるか……」
結標「それじゃ私はそろそろ行くわ、待たせてる人がいるの」クス
うんざりとした表情の一行を尻目に、結標は妖艶な笑みを浮かべると己の能力を使ってその場から姿を消した。
何故香焼くんの服のようなものが結標の服の中から出てきたのか、待ち人とはいったい誰なのか、
香焼くんが結標に何をされ、今現在どういう状況にあるのか、それらは一切不明である。
我々に出来ることはただ香焼くんの無事を祈ることだけだ。
なお、今回もショタコンからの被害を受けずに済んだ一方通行が
ポーカーフェイスを保ったままこっそりと胸を撫で下ろしたのはここだけの秘密である。
何だかんだで彼はショタコンが現れる度に結構心拍数を跳ね上げたりしているのだ。
垣根「つーかショタコンなんざどうでもいいんだよ!!そのおっさんが本物だってのが納得いかねぇ!!」
一方通行「……あァなるほど読めたぜ、ここにいンのは端から全員偽の妊婦で
俺らが選ばなかった奴を本物の妊婦だって言い張る腹だったわけだな?そォなンだろ?」
11111号「む、失礼な、この清く正しいミサカがそんな事をするはずがないでしょう!
とミサカは言い掛かりをつけてきた一方通行から目を逸らしつつ唇を尖らせます」
一方通行「目ェ泳いでンぞコラ」
アックア「私の事はいい、だがお腹の子の存在まで否定するのはやめてもらいたいのである!!」
麦野「だぁまぁれ!!どうせ中に誰も入っちゃいねぇんだろうが!!」
食蜂「そうよぉ!!本当に妊娠してるって言うんなら証拠見せなさいよ証拠ぉ!!」
垣根「だな、テメェが本物の妊婦だってんならそれを証明してみせろ!!」
アックア「しょ、証拠!?まさかこの場で脱げとでも言うのであるか!?」
食蜂「い、言ってなぁぁい!!何で脱ぐなんて発想になるわけぇ!?どこのエロ漫画よぉ!?」
垣根「頭おかしいんじゃねぇかこのおっさん!?証拠ってのはとりあえず診断書とか見せろって話で……」
アックア「やめるのである!!私に乱暴する気であるな!?エロ同人みたいに……ッ」
麦野「くねくね動いてんじゃねぇよ気持ち悪ぃ!!蹴り殺すぞこのクソゴリラが!!!」
アックア「らめぇ、なのである!!!」クワッ
一方通行「オマエもォ二度と喋ンな!!黙って妊娠してるって証明だけしろ!!!」
アックア「……わかったのである。ならば私のお腹に耳をくっつけてみるといい、
きっと新たな生命が脈打っているのを感じるはずである」
垣根「んなキメェ事誰がやるか!!」
アックア「ならどうすれば良いのであるか!!?結局は私を脱がしたいだけなのであるな!?
私の逞しい身体が目当てなのであろう!?」キッ
食蜂「逆ギレしないでよぉ……何なのよこの人……」
アックアが正解の妊婦だという事実にレベル5勢はどうしても納得いかず、
事態が大糾弾会に発展しようとしたまさにその時――
アックア「うぐぅあ!!!」ガク
突如、当のアックアが苦悶の声を上げつつ腹を抱えて蹲った。
アックア「ぬ、ぐぅぅぅぅ……」ガクガク
額に脂汗を滲ませ、ブルブルと痛みに耐えるように小刻みに震えているアックアだが、
不思議とその姿に保護欲を刺激されるとか彼の体調を心配したくなるとか、そういう気分には一切なれない。
だっておっさんやし。
アックア「ぐおおおぉぉぉぉぉ!!!」ブルブル
食蜂「と、突然なぁに?そんな風に蹲っても手心なんて加えないわよぉ?早く妊娠の証拠を……」
11111号「これはいけません、どうやら産気づいたようですね、
とミサカは苦痛に身悶えているアックア先生の状況を素早く察します」
食蜂「へ?」
アックア「じ、陣痛がぁぁぁぁ……」プルプル
垣根「何か言い出しちゃったよこのおっさん!?」
麦野「普通に腹壊してるだけだろ!!」
アックア「生まれるのである!生まれるのである!!」
11111号「あぁまずい、早くアックア先生を分娩室へ!とミサカは裏方の妹達に指示を出します」
一方通行「あ!テメェこのおっさンが本当に妊娠してるかどうか確認させねェまま運び出して
有耶無耶に終わらせる気だな!?」
垣根「させるかよ!!」ガタン
11111号「そんな事を言っている場合ではありませんよ、ここで破水されてもイヤでしょう?
とミサカ最悪の結末を示唆してみます。さぁ急ぐのです裏方妹達、見せ場ですよ!」
食蜂「そ、それは確かにイヤだけどぉ……」
麦野「そもそも妊娠してるわけねぇんだから破水なんざしねぇだろ!!」
11111号「て言うかもうアックア先生が心底キモいのでさっさと片付けたいです。
ぶっちゃけマッチョマンは生理的に受け付けません、とミサカは心情を吐露してみます」
食蜂「そうよね!やっぱり細身の美形がいいわよね!マッチョ同士の絡みなんて暑苦しくていけないわぁ」ウン
垣根「意気投合してんじゃねぇ!!つーか引き止めるの手伝えや!!」
御坂「あ、あのさ、ちょっといい?」
一方通行「あァ!?」
垣根「何だ御坂!?俺らは今忙し……ってあぁしまった!!運ばれて行っちまった!!」
<ヒギィィィィウマレルノデアルー!
11111号「ふぅ、これで一安心ですね、とミサカは胸を撫で下ろします」
一方通行「クソがァ……」
麦野「汚ぇ真似しやがって……」
11111号「いえいえアックア先生マジで妊娠してましたよ?ご不満なら後で証拠をお見せしましょうか?
とミサカは疑り深いレベル5勢に妥協案を提出します」
一方通行「今見せろ今ァ!!時間置いたら証拠の捏造すンだろォが!!」
11111号「ところでお姉様、何か御用で?とミサカは注意を引き付けて時間を稼いでくれたお姉様に笑顔で向き直ります」
御坂「あ、え、えっと、今運ばれていったおじさんが一応正解の妊婦に選ばれたって事はさ、私のお母さんは……」
麦野「あー……」
食蜂「3番の、御坂さんのお母さんは偽の妊婦って事になるのかしらぁ?」
御坂「ど、どうなのよお母さん!?今までのは全部……」
美鈴「んふふふぅ、バレちゃったらしょうがないかー。
そ、お母さんは妊娠なんてしてないわ。ぜーんぶ嘘でした!」
御坂「う、嘘……全部、嘘……」
垣根「……まぁ消去法でこの人選んだけど今思えば結構怪しいところあったよな」
麦野「他二人があまりにも酷すぎたから霞んで見えてたわ」
美鈴「悪気はなかったの、ごめんね美琴ちゃん」ニコッ
一方通行「こンだけ嘘吐きまくって『悪気はなかった』とかどンだけだよ」
食蜂「この黒さは御坂さんに通じるものがあるわねぇ……」
11111号「この方は天然でコレだから恐ろしい、とミサカはお母様の天性の鬼畜っぷりに身震いします」ブル
御坂「ほ、本当に嘘なのね!?それは嘘じゃないのよね!?」
美鈴「嘘じゃないわ、私が美琴ちゃんに嘘を吐くわけないでしょ?」フフフ
垣根「どの口が!!どの口が!!!」
御坂「よ……」
美鈴「よ?」
御坂「よかった……本当に、よかった……」エグエグ
食蜂「普通に泣いた!?」
麦野「溜まってたもんが噴き出しちゃったんでしょうね」
一方通行「うわァ」
垣根「オマエマジ泣きしてる女の子に向かって『うわァ』は流石にねぇだろ……」
麦野「つーか『一番そそる表情は泣き顔』とか何とかほざいてなかった?」
一方通行「安堵の涙なンざクソ喰らえだ」ペッ
垣根「うわぁ……」
麦野「うわぁ……」
御坂「う、うるさい!!泣いてなんかないわよ!!」ゴシゴシ
食蜂「いやそれはちょっと無理があるんじゃないかしらぁ……」
11111号「鏡要ります?鏡要ります?とミサカは必死に涙を拭うお姉様に詰め寄ります」
垣根「もうそっとしといてやれよ……」
御坂「グス……はぁ、でも嘘でよかった……」
美鈴「……本当にごめんね美琴ちゃん、まさかここまで取り乱すだなんて思ってもみなかったわ」
麦野「いや思えよ、実の母親にこんな嘘吐かれたら取り乱すに決まってんだろ」
食蜂「母親が知らない間に妊娠してただけでなく種を仕込んだのは父親じゃなくて自分の想い人だった、
なんてシチュエーションはフィクションでは掃いて捨てるほどあるけど実際に目の当たりにすると強烈よねぇ」
垣根「俺そんなシチュエーションの作品見たことないんだけど、こいつは普段どんなフィクション見てんの?」
一方通行「教えてやろうか?」
食蜂「ちょ!!何であなたはそんな事まで知ってるのよぉ!?」
御坂「もう、本当にこんな心臓に悪い嘘はやめてよ?次にまたこんな嘘吐いたら許さないんだから」ギュ
美鈴「フフフ、ごめんごめん。もう二度と美琴ちゃんには嘘を吐かないわ、約束する」ナデナデ
全てがドッキリだとわかり安堵した御坂は、半泣き状態のまま幼児のように母親に抱きつく。
それを受けた美鈴は『ちょっとやり過ぎたか』と苦笑いしつつ御坂の頭を優しく撫でた。
ちょっとどころではなくやり過ぎていると思うのだが……
御坂「本当に……」ギュッ
美鈴「うんうん……」ギュ
泣き顔を見られたくないのだろうか、御坂は顔を伏せたまま抱きつく腕にぎゅっと力を込める。
そんな御坂を、美鈴は「いつまでも甘えん坊な子だ」と、微笑ましく思いながら優しく包み込むように抱きしめ返した。
それに呼応するように、御坂は更に力強く美鈴を抱きしめる。
御坂「本、当、に……」グググググ
美鈴「……美琴ちゃん?お母さんの事が好きなのはわかるけど、
ちょっと力強く抱きしめ過ぎじゃない?痛くなってきたんだけど」
御坂「本ッ当にぃ……」ミシミシミシ
美鈴「ぐ、ゲフッ!!み、美琴ちゃん!?絞まってる!絞まってるか……ら……?」
ここに至り、御坂美鈴はようやく気付き、そして言葉を失う。
ゆっくりと顔を上げた娘は、御坂美琴の眼は、既に修羅の境地にあった。
御坂「本当に、あんたはぁぁぁ……」メリメリメリ
美鈴「あ゛……美琴ちゃ、ごめ……放しt」
御坂「吐いていい嘘と悪い嘘の区別もつかんのかあああああああああ!!!!!!」メキメキメキメキィ!!
美鈴「ぎゃああああああああああああ!!!!!!」
美鈴の制止も懇願もガン無視し、密かにマジギレしていた御坂は抱きしめる腕に全霊の力を込める。
直後、メリメリメリ、バキ!!というイヤな音と共に美鈴の叫び声は止まり、代わりに彼女は白目を剥いてアワを吹き出した。
それを確認した御坂はようやく美鈴を開放すると、そのまま気を失った実の母親を床に打ち捨てる。
『ジーグブリーカー!!死ねぇ!!』とかアテレコしたくなる光景である。これが人のやることかよ!!
美鈴「」シーン
御坂「ふぅ……」スッキリ
一方通行「何て晴れやかなツラしてやがる……」
麦野「実の親絞め落としてその表情かよ」
垣根「自業自得とは言え普通本気で絞め落とすか?実の親を……」
食蜂「御坂さんがこんな天使のような表情するの初めて見たわぁ……」
御坂「あー、安心したら何だかお腹空いちゃった。ねぇ晩御飯まだ?」
11111号「え?あ、あー、そうですね、そろそろ夕飯の時間ですね、
とミサカは明らかにヤバい状態であるお母様を一顧だにせずに
晴れやかな表情で夕飯の催促をしてくるお姉様に少々薄ら寒さを覚えます」ゾク
垣根「お、おい御坂、オマエの母さん顔色が紫色になってんだがいいのか?」
美鈴「」
御坂「……私には見えないわね」
垣根「お、おぉ……」
11111号「まぁお母様の処置は裏方の妹達に任せるとして、夕飯に行きましょうか、
とミサカは修羅と化したお姉様に気を使いつつ……あ、そうだ忘れてた」
一方通行「あン?」
デデーン♪
『全員、アウトー』
麦野「はぁぁ!!?」
食蜂「な!?どういう事よぉ!?」
一方通行「おいィ!?」
11111号「どういう事も何も、あんたら全員本物の妊婦外したでしょうが。
不正解はペナルティだと最初に説明したはずですよ?とミサカは不満気なレベル5勢を嘲笑います」
垣根「おい待て!俺らはまだあのおっさんが本物だって納得しちゃいねぇぞ!!」
11111号「んなもん知らんがな、ショタコンもお母様も偽者だったんだから消去法でアックア先生でいいだろ、
とミサカは一行を諭します」
御坂「……チッ」
11111号「お姉様ちょっとやさぐれ過ぎではないでしょうか……
とミサカはあからさまにキャラクターがぶっ壊れてきているお姉様の今後を心配してみます」
人物名鑑
御坂美鈴
御坂美琴の実の母親。中学生の娘がいるとは思えないほど若々しく、
また、一目で美琴の関係者だとわかるくらい良く似ている。親子とは言え似過ぎである。一部以外は。
美琴が成長して化粧をしたらきっと見分けがつかないほど瓜二つになるのだろう。一部以外は。
性格は天真爛漫でマイペース、基本的にハイテンションでフリーダムだが娘を想う気持ちは人一倍ある。
今回の一件に関しても作中で本人が語っている通り悪気は全くなく、それどころかむしろ
『最近何だか美琴ちゃんの元気がないし、上条くんとの仲も進展してないみたいだし、
ここはお母さんがいっちょ発破かけてやっか!』というお節介からの行動だったりする。
発破かける方向完全に間違ってますよ奥さん。
勿論本当に妊娠はしていないし黒髪ツンツン不幸体質の男の子と関係を持ったりもしていない。
だからお前らそろそろ上条さんの事許してやれよ。
余談だが、禁書にある数多(not木原くン)の未来設定SSのうち、
美琴の一部位だけは何故か未来に向かっていない事が多い。非常に多い。
クローンであるはずの妹達や打ち止めは立派に成長している事が多いのだが……
11111号「それでは夕飯をお持ちしますのでしばしの間適当にくつろいでいてください、
とミサカは軽く一礼をしつつ奥に引っ込みます」
産婦人科を後にした一行は11111号に誘導され食堂に場を移していた。
「あれ、もう夕食?はやくね?」と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、
実は時刻は既に20時を回っており、いつの間にやら夕食に丁度いい時間帯になっていたのである。
一方通行「よォやく晩飯か……」
垣根「つーかまだ20時過ぎかよ、先長すぎだろ……」
11111号が食堂の奥へ消えて行くのを見送った後、
レベル5勢はうんざりとした表情で壁に掛かった時計を眺めつつ、適当な座席に腰を下ろす。
このふざけた企画が開始されたのは今日の午前9時。まだ企画の開始から11時間少々しか経っていないということになる。
この先睡眠時間などがあるとは言え、あと13時間近くもこの病院で過ごさねばならないのかと思うと
彼らの表情が自然に暗くなるのも道理というものだ。
御坂「ま、まぁ夕飯終わったらもう主要なイベントも無いんじゃないの?」
麦野「そうね、いい加減看護師の業務時間も終わるでしょうし」
食蜂「はぁ、何で私はこんなことしてるのかしらぁ……
普段ならこの時間帯はアロマオイル焚きながらのんびりしてる時間なのにぃ……」
御坂「あれ、あんたそんな趣味あったんだ?」
食蜂「え?えぇ、まぁね。ガサツな御坂さんにはわからないかも知れないけど、アロマっていいものなのよぉ?
美容や健康にも効果があるしぃ、良い香りがするしぃ、リラックス出来るしぃ」
御坂「ガサツで悪かったわね」ギロ
一方通行「リラックス出来ンのはアロマの効果じゃなくてそン時に一緒にBL本読ンでるからだろォが」
食蜂「ぶ!?だ、だから何であなたはそんな事知ってるのよぉ!?本当な私のストーカーなんじゃないのぉ!?」
一方通行「いや、今のは適当に言ってみただけだったンだが……マジで読ンでンのかよ」
食蜂「えっ」
垣根「BL本読みながらアロマて、オマエは気分を昂揚させたいのか鎮めたいのかどっちだよ?」
麦野「締め切った部屋でBL本片手に一仕事やれば匂いもこもるだろうしねぇ、
それ誤魔化すのにアロマの香りが都合いいんでない?」
食蜂「な……ッ!?」
御坂「下品よ麦野さん」
麦野「え、下品って?私は一仕事としか言ってないんだけど美琴ちゃんは何を想像しちゃったのかにゃーん?」
御坂「うぐ……も、もういいってこの流れ!!」
麦野「よくないにゃーん、美琴ちゃんがどんな想像したのかハッキリ聞かせてもらいたいにゃーん」
一方通行「にゃンにゃンうるせェ、歳考えろ」
垣根「妖怪猫娘ならぬ猫バbゲフンゴフン、いや、なんでもない」
麦野「テメェらぶち殺されてぇのか?あ?」ギロ
食蜂「そ、そもそも一仕事なんてやってないわよぉ!!私は純粋にBLが好きなの!汚れた感情なんてぶつけないのぉ!!」
一方通行「絶対嘘だろ」
垣根「もうダメだなこいつ、『純粋にBLが好き』とか声高に宣言しやがった」
麦野「今更ね」
食蜂「何なのよもう!!好きな香りの充満した部屋で好きな物を鑑賞するって言う私の至福の一時を馬鹿にする気ぃ!?」
御坂「馬鹿にはしてないわよ?素で引いてるだけで」
食蜂「何よぉ……御坂さんも読んでみればわかるわよ!BLには真実の愛が詰まってるの!!」
御坂「読まないしわからないわよ」
麦野「あんたやっぱり第五位には何か冷たいわね」
垣根「そもそもBLなんて非生産的なモンに愛は詰まってねぇよ」
食蜂「何もわかってないのねぇ第二位さんは。生産性で愛を語るなんて滑稽だわぁ」ハッ
垣根「別にそこドヤ顔するとこじゃねぇだろ。
つーかマトモな恋愛経験もなさそうなオマエより絶対俺の方が愛について正しい認識持ってるっての」
一方通行「流石、二股かけられた挙句ゴミみてェに捨てられた男は言う事が違うなァ」
垣根「やめろよそういう事言うのぉ!!古傷抉るなよぉ!!!」
御坂「ホフ」
麦野「ッフ」
デデーン♪
『御坂、麦野、アウトー』
垣根「あ゛ぁテメェら笑いやがったな!?昔はあんなに同情してくれたのに!!」
御坂「あぁいや、違うのよ?垣根さんがフラれた事を笑ったんじゃなくて、
今の垣根さんの泣きそうな顔がちょっと面白かったから思わず吹き出しちゃっただけで……」
垣根「何のフォローにもなってねぇ!!!!」
麦野「うっさいわねこのタコ、捨てられた事くらい笑い話として語れるくらいの度量持ちなさいよ」
垣根「あんなフラれ方したらトラウマにもなるわ!!男ってのは女と違ってそういうとこナイーブなんだよ!!」
バチーン!!
御坂「ひぎゃああ!!!」
麦野「おごおおぉぉ!!!」
垣根「ちくしょうめ、何度も何度も触れられたくない過去を掘り返しやがって……」
一方通行「過去と向き合う強さを持てよ」
垣根「うっぜぇ……」
食蜂「第二位さんはそんな目に遭ったのにどうして女に固執するの?
いっそ男に走ればそんな悲劇も生まれないんじゃないかしらぁ?」
垣根「走って堪るか!別の悲劇が生まれるわ!!」
11111号「楽しそうなところを失礼します、お食事をお持ちしました、
とミサカはエプロン装備で皆さんの下へ帰還します」タダイマー
食蜂弄りから垣根弄りへ、流れるような言葉責めを楽しんでいた一行の下に
料理の載ったお盆を抱えた11111号がニタリと微笑みながら戻って来る。
食事なんかいらないからこいつが帰ってこなきゃよかったのに、と結構本気で思ったりする一行であった。
垣根「おい待て今の会話が楽しそうに見えたってのか?頭おかしいんじゃねぇかテメェ」
食蜂「そうよそうよ!皆してBLを馬鹿にするし、もうイジメよこれぇ!!」
11111号「あんたらドMだから問題ないでしょう、
とミサカは何だかんだで満更でもなさそうな弄られ役二人を鼻で笑います」ハン
垣根「テメェの目は節穴か!?どこをどう見たら満更でもなさそうに見えたんだよ!?」
11111号「みさきちとか友達いないから例え弄られる側でも普通に会話出来るだけで嬉しいんじゃないですか?
とミサカは強情なていとくんは置いといてみさきちに振ってみます」
食蜂「ば、馬鹿にしないで!友達くらいいくらでもいるわよぉ!!掃いて捨てるほどいるんだからぁ!!」
麦野「掃いて捨てんなよ友達を」
11111号「ほう、例えば?2,3人でいいんで例に挙げてみてくださいよ、とミサカはニヤニヤ笑いながらつっこんでみます。
ちなみに能力で操った相手や派閥の下っ端とかはなしですよ?」ニマニマ
食蜂「えぅ……えっとぉ……んっとぉ………あ、御坂さん!御坂さんと私は友達よねぇ!?
そうすると友達の友達は友達理論で御坂さんのお友達も自動的に私の友達に……」
御坂「ならないし、そもそも私とあんたは友達でも何でもないわよ。寝言は寝てから言ったら?」
食蜂「ひど!?」
垣根「友達の友達は友達理論って何だよ……」
11111号「と言うかお姉様もぼっちなんでその理論は使えませんよ、
とミサカはよりによってお姉様を友達扱いしようとしたみさきちの人選ミス嘲笑います」ハッ
食蜂「なんだぁ、使えないのねぇ御坂さん……」ハァ
御坂「あ?」
一方通行「常盤台のエースと常盤台の女王のトップ二人が両方ともぼっちとはなァ。
もしかして常盤台ってのはコミュ障の集まりなンですかァ?」
御坂「あんたにだけはコミュ障とか言われたくないわ!!だいたい私はぼっちじゃないわよ!!」
食蜂「そうよ!第一位さんもどうせ友達なんていないんでしょぉ!?やーいぼっちぼっちー!!」
麦野「小学生かテメェは」
一方通行「あのなァ、望ンで独りでいる俺と友達欲しくても作れねェオマエらを同列に語るンじゃねェよ。
俺にとって『友』ってのは俺と同じ感性を持って同じ位置に立てる奴だけだ。
それ以外に友達面されても邪魔なだけだっての」
垣根「ろくなもんじゃねぇ……」
御坂「だから私は友達いるってば!!」
食蜂「フンだ!私だって第一位さんと同じで友達なんかいらないだけだもん!
そもそも常盤台の女王であるこの私に友達として釣り合える人なんていないのよぉ!!
頂点に立つ人間は常に孤独なものなんだから!!」
11111号「そう強がらなくてもいいんですよみさきち、いえ、みさぼっち、本当は友達欲しいんでしょう?
とミサカは悲しげな瞳をしているみさきち改めみさぼっちの核心をついてみます」フ
食蜂「みさぼっち!?」
11111号「確かに今のあなたはぼっちです。ぼっち・オブ・ぼっちです。
これは間違いありません、とミサカは太鼓判を押します」
食蜂「ぼっち・オブ・ぼっち!?」
11111号「しかし!この『笑ってはいけない学園都市』を乗り越えた暁には
他の参加者の皆さんから苦難の24時間を共に過ごした戦友として暖かく迎え入れられる事でしょう!
とミサカは試練を乗り越えた先に待っている輝かしい未来を語ってみます」
食蜂「せ、戦友ですってぇ……」ゴクリ
御坂「ならないし、迎え入れないわよ」
食蜂「戦友なら、きっと私の趣味も受け入れてくれるわよねぇ?」ドキドキ
11111号「えぇ、何せ戦友ですから、とミサカは笑顔で答えます」フフ
麦野「受け入れねぇよそんなきめぇ趣味。つか戦友になんざならないっての」
食蜂「……思えば私には物心付いた時からずっと心を許せる人がいなかったの。
こんな能力を持った私に自分から近づいてくる人なんか滅多にいなかったしぃ、
稀にいても、そいつは私じゃなくて心理掌握の能力しか見てなかったわぁ」
一方通行「おいなンか語りだしちまったぞこいつ」
垣根「あー、長くなりそうだな」
食蜂「私自身、こんな能力だから普通の人間関係を築く事なんてずっと前から諦めてた。
友情も、恋も、自分とは無縁な物だって蓋をして見ない振りをしてきた。
でも私だって!私だって本当は友達と普通にお喋りしてみたいの!恋だってしてみたいのぉ!!」
御坂「ねぇ、晩御飯の献立何?」
11111号「あ、カレーですよ、とミサカはお盆を突き出しながら簡潔に答えます」
垣根「またカレーかよ、前回もだったじゃねぇか」
麦野「いや前回のあれはハヤシライスでしょ?」
一方通行「今回もまたハヤシライス味のカレーじゃねェだろォな……あれ正直かなり不気味で食欲失せるンだよ」
食蜂「多くの人を操って常盤台の女王なんて気取ってたのも結局はそうやって人寂しさを紛らわせてただけよぉ……
でも気付いたの、そんな事しても空しいだけだって、本当のあの子達は私なんか見ちゃいないって!
楽しそうに笑い合う皆が妬ましかった!羨ましかった!!私はただ、私を見て欲しかったのぉ……」
11111号「ちなみにトッピングはトンカツ、ハンバーグ、コロッケ、鮭、未元物質、コーヒー豆の中から
好きな物をお一つお選びいただけます、とミサカは大盤振る舞いしてみます」
御坂「いやいや後半の二つ何よ?明らかにおかしいでしょ?鮭も相当だと思うけど……あ、私はコロッケで」
麦野「わかってないわね、シャケは何にでも合う万能の食材なのよ」
垣根「オマエ絶対味覚障害だって……あぁ俺ハンバーグな」
麦野「あら未元物質は?」
垣根「食わねぇよ!!」
11111号「むぎのんは味覚障害って言うか特異体質だと思いますけどね、定期的に鮭食わないと死にますし、
とミサカはむぎのんの体質の異常っぷりに頭を抱えます。一方通行はどうします?」
一方通行「コーヒー豆で」
垣根「正気か!?」
食蜂「心の空白を埋める為に随分酷い事もしてきたわぁ……
そんな私が今更こんな事言うなんて虫のいい話だとは思ってる、だけど!!」
御坂「いただきまーす」
麦野「はぁ、一日中動き回ってたせいでお腹空いたわ」
垣根「椅子に座ってる時間が長かった分前回の方がまだ楽だったな……」ハァ
11111号「一方通行、今更ですが本当にトッピングはコーヒー豆でよかったんですか?
とミサカは口をしゃくしゃく言わせながらコーヒー豆を貪っている一方通行にドン引きしつつ尋ねてみます」
一方通行「あァー、カフェインが体中に染み渡るわァ……」シャクシャク
垣根「ダメだこいつ、早くなんとかしねぇと……」
食蜂「もし……もしこの企画を乗り越えた時、皆が私を受け入れてくれるんなら!!
損得も打算も抜きで付き合える『友達』が出来るんなら!!私はきっと変わることが……」
御坂「あぁでも普通にカレーね、安心したわ」モグモグ
一方通行「おいむぎのン、そっちにあるソース取ってくれ」
麦野「自分で取れやクソセロリが、こっちは今鮭との対話で忙しいんだよ」
垣根「だからオマエらナチュラルにそういう周りを笑わすようなやり取りするのやめろって……」
食蜂「変わることが……ってちょとっぉ!?何食べてるのよあなた達ぃ!?」ガターン
御坂「え?」モクモク
一方通行「ン?あァ、自己陶酔の自分語りは終わったか?」
垣根「ならオマエも食ったらどうだ?冷めちまうぞ」
食蜂「『冷めちまうぞ?』じゃないわよぉ!!私の話全然聞いてなかったわけぇ!?
罪を犯した美少女が自分の不幸な境遇と本心、弱さを語るって言う最高にポイントが稼げる場面だったのにぃ!!」
麦野「ちゃんと聞いてたわよ?『思えば』の辺りまでは」
食蜂「一番最初の出だしだけじゃないのぉぉぉぉぉ!!!!」
御坂「大丈夫大丈夫、全部聞いてたって。でもまさかあんたの両親がそんな悲しい最後を迎えてただなんてね。
あんたの性格が捻じ曲がった理由もよくわかったわ、これからはもうちょっと接し方を考えて……」
食蜂「両親の話なんて一切してないわよぉ!!性格捻じ曲がってるのはあなた達の方じゃない!!」
11111号「いやまぁむしろ聞かれなくてよかったんじゃないですか?
ぶっちゃけ黒歴史確定ってくらい恥ずかしい独白でしたよ?
とミサカは憤慨しているみさきちをフォローしてみます」
食蜂「うるさいわよもおおおおおお!!!!」
麦野「何かそこまで言われると聞き逃したのが逆に惜しくなってきたわね」
一方通行「おいもう一回語ってくれ、今度はちゃンと聞いてやっから」
食蜂「誰が語るもんですかぁ!!」バンバン
垣根「おいテーブル叩くのやめろ、こっちは飯食ってんだぞ」
11111号「ところでみさきち、晩御飯はカレーなのですがトッピングは何がいいですか?A,B,C,D,E,Fの中からお選びください、
とミサカは空腹で気が短くなっているであろうみさきちを宥めます」
食蜂「空腹は関係ないわよぉ……て言うかABCDEFって何?それぞれどんなトッピングかは教えてくれないわけぇ?」
11111号「えぇ、時間切れです」
食蜂「時間切れ?……まぁいいわぁ、それじゃ私第五位だしぃ、アルファベットの5番目って事でEでお願ぁい」
11111号「Eのトッピングですね?わかりました、少々お待ちください、とミサカはにこやかに微笑みます」
食蜂「ふぅん、皆が食べてるトッピングはコロッケにハンバーグにぃ……
第四位さんのは鮭かしら?外れトッピングもあるのねぇ」
麦野「おいシャケの何が外れだって?」モグモグ
食蜂「焼き鮭とカレーは合わないと思うんだけどぉ……
で、第一位さんの食べてるそれはなぁに?そのコーヒー豆みたいな小さい粒々は?」
一方通行「コーヒー豆だ」シャクシャクモシャモシャ
食蜂「そのまんま!?もはやカレーのトッピング云々以前の問題じゃないのそれぇ!?」
11111号「お待たせしました、みさきちの分のカレーが準備出来ましたよ、
とミサカはコーヒー豆カレーにぶったまげているみさきちに声をかけます」
食蜂「はぁ、どうかマトモなトッピングでありますようにぃ……」
11111号「どうぞ未元物質カレーです、とミサカは未元物質をトッピングしたカレーをみさきちの前に投下してみます」コト
食蜂「いやああああぁぁ!!!何か黒くて丸くて蠢いてるものがカレーの上に乗ってるうぅぅぅぅ!!!」ヒィィィィ
一方通行「ゴホッ」
垣根「ングゥ」
御坂「カフッ」
麦野「ゴファ」
デデーン♪
『一方通行、垣根、御坂、麦野、アウトー』
未元物質カレー<ウゾウゾウゾ
御坂「うわ、な、なんか活きがいいわね」ビク
一方通行「おい垣根、なンだありゃァ?」
垣根「俺が知るか……」
麦野「未元物質ってんだからあんたが作ったんじゃないの?」
垣根「あんな禍々しいもん作った覚えはねぇよ」
食蜂「ねぇちょっとこれ食べれるの!?絶対無理でしょぉ!!?」
11111号「さぁ……多分食べれるんじゃないですかね?
ショタコン先生が香焼くんの為に作っていた料理の一部を分けていただいたものですから
元がごく普通の食材であった事は間違いないですよ、とミサカは自信薄ですが恐らく食べ物だろうと判断します」
一方通行「まァたショタコンの仕業かァ!!」
垣根「香焼くんが出番もないのにどんどん不幸になって行く……」
バチーン!!
一方通行「ごォォああァァァァァ!!!」
垣根「んごふぉぅ!!!」
御坂「はぎゃぅ!!」
麦野「ぐぬあああああ!!!」
未元物質カレー<ビチビチビチ
食蜂「……私食欲無いから晩御飯遠慮させてもらうわぁ」
11111号「む、他の方は文句一つ言わずに食べているというのに……
その協調性の無さが友達の出来ない原因の一つですよ、とミサカはみさぼっちを嗜めます」
食蜂「うるさいうるさいうるさぁい!!食べれるわけないでしょこんなものぉ!!!
て言うか他の人達は普通のトッピングじゃないのよぉ!!」
垣根「一方通行の食ってるもん見てから言えよ」
一方通行「ン?」シャクシャク
食蜂「……普通のトッピングではないにしてもとりあえず食べ物ではあるでしょ!?
私のカレーに乗ってる物体はどう見ても食べられないじゃない!!本当に何なのよこれぇ!?」
11111号「解説してあげてくださいていとくん、とミサカは未元物質のスペシャリストであるていとくんに丸投げします」
垣根「だから知らねぇって!つーかそのわけわからん奇妙な物体を未元物質って呼称するのやめろ!!
俺の品位が疑われるだろうが!!」
麦野「垣根の品位はどうでもいいし最初から最低だと思うけど
とりあえずその未元物質が乗ったカレーは下げてもらえない?近くにあるだけで食欲がガタ落ちするから」
垣根「だから未元物質って呼ぶなって!!」
御坂「でもそれだと食蜂が晩御飯抜きになっちゃってかわいそうじゃない?
上の未元物質だけ取り除いて下のカレーは食べさせてあげた方がいいと思うわ」
食蜂「例え取り除いたってそんなものが乗ってたカレーは食べたくないわよぉ!!
御坂さん優しい振りして私を追い詰めようとしてるでしょ!?」
11111号「ふむ、とりあえずこの未元物質は大不評のようなので撤去しておきましょうか。
食べ物で遊ぶのはいけませんしね、とミサカは未元物質をトングで摘んでポリ袋の中に放り込みます」ポイ
ポリ袋<ガサガサガサガサ
一方通行「……なァ、アレ本当に食材か?何で動いてンだ?」
垣根「明らかに生き物が練成されてるよな……」
11111号「ショタコン先生曰く『愛の力に不可能は無い』そうです、とミサカは投げやりに回答します」
食蜂「うわちょっとぉ、何かあの物体が乗ってた部分のカレーが変色してるんだけどぉ……」
御坂「うえ、気持ち悪……」
麦野「マジで何なんだあれ……」
何故か緑色に変色したカレーを見つめて絶句する一行。
そして黒いポリ袋に封印されてなおゴソゴソと動き続ける未元物質(仮)。
いったい何をどうすればこんなものが出来るのだろうか?(それも台所にあるものだけを使って)
世が世なら結標はパラケルススやサンジェルマンに比肩する錬金術師として名を馳せていたかもしれない。
食蜂「て言うかトッピングだけじゃなくてカレー自体も下げてもらえないかしらぁ?
こんな緑色になったカレー見たくも無いわよぉ」
11111号「グリーンカレーに変身したという事で手を打ちませんか?どうぞ、スプーンです、
とミサカはみさきちにスプーンを差し出しながら妥協案を提示してみます」
食蜂「スプーン手渡そうとしないでよぉ!!手を打つ意味がわからないし
グリーンカレーだってこんなエイリアンの体液みたいな蛍光色はしてないでしょぉ!?」
憤慨する食蜂を肴に一方通行を筆頭とするレベル5上位組みはのんびりと食事を楽しむ。
垣根も御坂も、比較的常識人であるとはいえ根本的には垣根は鬼畜寄りで御坂は腹黒なのだ。
一方通行や麦野、11111号の言動に隠れがちだがこの二人も結構酷い事を平気でやってたりする。
垣根「ん?おいあれ、あそこ」
一方通行「あァ?」
和やかなムードで食事が進む中、不意に垣根は食事を口に運ぶ手を止め食堂の出入り口の方を指差す。
この男、また何か余計なものを発見してしまったらしい。
御坂「何、どうしたの?」
麦野「何かあんの?」
垣根「あぁ、何かいる……」
「……」ジー
どうせろくなもんじゃないとは思いつつも、一行はつい釣られて垣根の指差すほうへと向き直る。
その先に、彼らの事を食い入るように見つめる白いシスター服に身を包んだ少女がいた。
皆さんお待ちかね、禁書会のスーパーヒロインことインさんである。
イン「……」ジー
一方通行「おい、あのシスター……」
垣根「あぁ、間違いねぇ、前回トランザムしながら左右に高速移動してたシスターだ」
食蜂「何それ意味がわからない」
11111号「おや、インさんではありませんか、どうしたんですこんな所で?
入院患者がほいほい出歩いてはいけませんよ、とミサカは勝手に出歩いているインさんを嗜めます」コラッ
御坂「え、入院患者なの?」
11111号「はい、インさんは先日から暴食を矯正する為に短期入院をしているのですよ、
とミサカはインさんの入院理由を守秘義務ガン無視でサクッと説明してみます」
イン「うぅ、お腹が、お腹が空いたんだよ……
私がよく食べるのは頭の中の魔導書のせいであって病気ではないんだよ……
食事を制限するなんて酷いかも……」グーギュルルルルゴゴゴゴゴ
麦野「何かさっきから大地を揺るがすような重低音が響いてるんだけど、これそのシスターの腹の音か……」
垣根「『ゴゴゴゴゴ』はもはや腹の音ってレベルじゃねぇだろ、もうちょっと擬音考えろよ……」
イン「な、何のことだかわからないんだよ……それより何か、食べ物を……」┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨
一方通行「だから腹の音おかしいだろオマエ!?」
あり得ないほど大音量の腹鳴りを響かせながらインさんはフラフラとレベル5勢の下へと歩み寄っていく。
どうやらこのハラペコヒロインは空腹のあまりカレーの匂いに釣られてこの場に表れたらしい。
個人的に度を越えた大喰らいってそれほどかわいい要素ではないと思うんですけど
何でハラペコ属性を持ったヒロインって結構多いんですかね?
貧乏な上条さんが一切の支援なしでインさんの面倒見なきゃいけないなんて可哀想で見てられないよ!
せめて上条さんに人並みの金銭力があればよかったのに!
食蜂「ふぅん、あなたお腹が空いてるのね?なら私のカレー食べちゃっていいわよぉ?」ニコッ
イン「ほんと!?ほんとに食べちゃっていいのかな!?」パァァァァ
食蜂「えぇ、構わないわぁ。美味しいグリーンカレーよ、味わって食べてねぇ?」クスクス
そんなインさんに、食蜂はこれ幸いとばかりに邪悪な笑みを浮かべながら
緑色に変色したカレーをグリーンカレーと偽って押し付けようとする。
あっさり騙され、目を輝かせながら最高の笑顔を見せるインさんだが、この表情を見て罪悪感とかは沸かないだろうか。
普通の人間では考えられない酷薄さである。やはり食蜂も根っこは腐っているのだろう。色んな意味で。
垣根「うわこいつマジひでぇ、何も知らないシスター犠牲にする気だよ」
食蜂「ふっふーん、私は私が一番大事だものぉ、私が助かるためならなんでもするわよぉ」ククク
御坂「てかさ、あんた笑っちゃいけないっての忘れてるでしょ?」
食蜂「へ?」
デデーン♪
『食蜂、アウトー』
食蜂「ああああああ!!!!待ってよぉ!!今の無し!今の無しぃ!!」
一方通行「あンだけ完璧に何度も笑ってりゃ無しにはなンねェだろ」
垣根「むしろ一回しかアウト取られなかった事に逆に感謝するところだな」
麦野「んっとに一人で勝手に笑うの好きねこいつ」
11111号「そんなところまでぼっちを貫かなくてもいいでしょうに、
とミサカはみさきちのぼっちっぷりに呆れ果てます」ヤレヤレ
バチーン!!
食蜂「ひゅるん!!!」
イン「ねぇねぇ食べてもいいんだよね?ね?」
麦野「いいんじゃないかしら?私もそれ食べた人間がどうなんのか興味あるし」
垣根「何気に怖い事言ってるなオマエ」
11111号「では面白そうなので再度未元物質をトッピングしてみましょう、
とミサカはポリ袋から未元物質を取り出しカレーの上に乗せてみます」ベチャ
未元物質<グッタリ
御坂「あ、何かぐったりしてる」
麦野「ポリ袋に突っ込まれてたせいで酸欠になってるんじゃない?」
垣根「やっぱ生き物なんかこれ……」
イン「わぁ、何か見たことない食材がトッピングされたんだよ!美味しそう!」キラキラキラ
一方通行「えェェ……目ェ輝かせてるよこいつ、どンな神経してやがンだ……?」
11111号「空腹のあまり目に映るもの全てが美味しそうに見えているのではないでしょうか?
とミサカは推測してみます。何せ有事の際にはペットの猫ちゃん人まで食おうとするインさんですから」
御坂「人ってあんた……」
食蜂「じょ、冗談が過ぎるんじゃないかしらぁ?シスターさんが人間を食べようだなんてそんな事するはず……」
イン「ちなみにこの中だとあなたが一番美味しそうなんだよ(性的な意味でなく)」ニパッ
食蜂「ひっ!?こ、こっち見ないでよぉ!!」
インさんによる皆さんの評価
一方通行:肉付き悪し、食べるところなさそう。骨はしゃぶれば美味しいかも?
御坂:何となく食べたくない。一方通行ほどじゃないが食べるところ少なそう。
11111号:同上。
麦野:硬そう。食べ応えはあるかも知れないけど今は柔らかいお肉を貪りたい気分。
垣根:純粋に不味そう。
食蜂:一番美味しそう。いただきます。
※本SSにカニバリズムを推奨する意図は一切ありません。
イン「……」ジュルリ
食蜂「ほ、ほらぁ、カレーならいくらでも食べていいから、ね?そ、そんな目で見るのやめてもらえないかしらぁ?」
獣の眼をしているインさんから逃れようと、食蜂は引き攣った表情でカレーを勧めながらジリジリと後ずさる。
彼女の本能が告げていた。『先に目を逸らしたら喰われる』と……
イン「……うん、いただくんだよ」ジー
インさんはあくまで食蜂から視線を外さぬまま、
ゆっくりと未元物質(仮)のトッピングされた緑色のカレーに手を伸ばし、そして――
イン「あむっ」パクリ
一方通行「皿ごと行ったァァァァァ!!?」
垣根「ひ、一口で……」ウワァ
御坂「い、いや今のどうなったの!?ちょっとスローで見せて!!」
麦野「え、何?カレーが消えたようにしか見えなかったわよ?」
食蜂(本当に人間も一瞬で食べちゃいそう……)ガタガタ
垣根「だ、だけど大丈夫なのか?あの物体Xごとまとめて一口で喰っちまったわけだが……」
イン「むむっこれは!!」モグモグ
11111号「どうしましたインさん?とミサカは案の定何か起こってしまいそうな事に胸をときめかせます」wktk
イン「まったりとしてとろとろとして甘くて辛くて苦くて酸っぱくて水っぽくて……」
一方通行「サッパリわかンねェ……」
御坂「それって美味しいの?不味いの?」
イン「まずいんだよ!!とってもまずいんだよ!!!こんなものは豚の餌未満なんだよ!!!!」
インさん、まさかの食べ物食ってマジギレの巻。
あの未元物質(仮)は流石の食いしん坊インさんでも許容範囲を越えていたらしく、
彼女は猛然と両腕を振り上げると烈火のごとく喚き散らしはじめる。
でもしっかり咀嚼して飲み込んでます(皿ごと)。
イン「こんなまずいもの食べたのは生まれてはじめてかも!!キャットフードの方が兆倍マシなんだよ!!
女将を呼んで欲しいかも!!こんなもの作ったファッキン女将は今すぐ処刑して……うぐはぁ!!?」バターン
食蜂「な、何!?どうしたのぉ!?」ビクッ
過激なことを叫び、全身でまずさをアピールしつつバタバタと暴れていたインさんだったが、
突如悲鳴を上げたかと思うと糸の切れた操り人形のごとくその場に崩れ落ちてしまう。
一体彼女の身に何が起きたのか……
11111号「って言わなくてもわかるでしょうに、あの未元物質にやっぱり毒性があったんですよ、
それも鉄の胃袋を持つインさんがぶっ倒れるほどの、とミサカはわかりきった事実を伝達してみます」
イン「」ビクンビクンゲボゲボ
麦野「何か緑色のゲロ吐き始めたわよこのガキ」
御坂「うわぁ……」
一方通行「死ンだか?死ンだか?」
イン「カヒュー、カヒュー……」ゴボゴボゴボ
垣根「大丈夫だ、辛うじて呼吸はしてる」
食蜂「本当に辛うじて、ギリギリ生きてるって感じねぇ」
11111号「お前ら誰か一人くらい助け起こそうとしてやれよ、
とミサカは遠巻きに観察するだけで一切動こうとしないレベル5勢を非難します」
一方通行「ンな事言われてもあのシスター緑色のゲロの海に沈ンでンだぞ?近付きたくねェよ」
御坂「エイリアンの体液みたいで怖いし……」
イン「……」ムクリ
垣根「お?」
麦野「復活した?」
イン「……」フラフラ
食蜂「な、何か様子がおかしくなぁい?」
一行の心配(?)を余所に何とか自力で立ち上がったインさんだが、どうにも様子がおかしい。
起き上がったインさんには先程までの元気一杯な様子など欠片もなく、
感情を感じさせない虚ろな瞳と空っぽの表情で、ただ虚空を見つめ続けている。
その様はまるで魂を抜かれ本物の人形になってしまったかのようだ。
しかし、そんな人形と化してしまったかのようなインさんの口元だけは忙しなく動き続けており、
やがてそこから発せられる声は形を成して一行の耳に届き始めた。
イン「――『書庫』内の十万三千冊により防壁に傷をつけた魔術の術式を逆算……失敗。
該当する魔術は発見できず。術式の構成を暴き、対侵入者用の特定魔術を組み上げます 」
一方通行「な、なンだァ?」ビクッ
垣根「おい、何かやばくねぇかこれ?」
御坂「う、うん……寒気がするって言うか……」
麦野「何だこのザラついた感じ……ムカムカするわ……」
食蜂「な、何よこの子?どうしちゃったのよぉ?」
魔術の知識など一切ない一行だったが、それでもインさんの放つ不穏な気配に何かを感じ取り滝のような冷や汗を流す。
(ちなみに一方通行は過去にステイル君と接触して魔術についてちょっと学びましたがもう忘れました)
よくわからないがとにかくやばい。今すぐ逃げろと本能が告げている。
しかしまるで蛇に睨まれた蛙のように、学園都市の最精鋭達はたった一人の少女の放つ圧力を前に一歩も動けないでいた。
そうこうしている内にもインさんの呪詛のような言葉は続く。
イン「――侵入者個人に対して最も有効な魔術の組み込みに成功しました。
これより特定魔術『聖ジョージの聖域』を発動、侵入者を破壊します」
刹那、虚空を見上げるインさんの眼前に現れた魔方陣から光の奔流が走ったかと思うと、
その光に呑まれた食堂の天井が跡形もなく消し飛ぶ。冥土帰し涙目である。
一方通行「おォォォ!!?」
垣根「ちょ、天井消し飛んだ!?」
御坂「な、何よ今の!!?」
麦野「私のパクリだ!!」
食蜂「そ、そんな事言ってる場合じゃないでしょぉ!?」
イン「……」クル
11111号「うわこっち向いた!?とミサカは咄嗟に一方通行の背後に隠れます。
ミサカを守って!あなたを信じてる!」ササッ
一方通行「おま、ふざけンなコラァ!!?」
イン「コォォォォォォ」
御坂「うわわわわ!?発射準備してる発射準備してるううう!!!」
麦野「垣根ぇ!!どうせなら私の盾になって私だけでも守ってから死ね!!」ガシ
垣根「ちょ、ば、離せアホ!!!洒落になってねぇぞこれ!!!」
御坂「ちょっと食蜂あんたのせいだからねえええええ!!!!」
食蜂「な、何でよぉ!?皆だって面白がってカレー食べさせるの止めなかったじゃないのおおおお!!!」
この期に及んでも一行は仲間割れをやめようとしない。そんな醜い人間達に――
イン「Fire!!」カッ
「「「ぎゃあああああああああ!!!!!!」」」
――神の裁きは、下ってしまった。
人物名鑑
インさん(いんさん)
本名忘れた。DTBの銀ちゃんとは違うしどっかのイカとも違う。
言わずと知れた禁書会を背負って立つメインヒロインである。そこらの短髪とはわけが違うんだよ。
その性格は良く言えば天真爛漫、悪く言えばかなりわがままで、オマケに大飯喰らいで嫉妬深い。
しょっちゅう宿主である上条さんの頭に噛み付いており、上条さんがいい加減プッツンいかないか心配である。
これで見た目が可愛くなかったら腹パンものだが、普通に可愛いのでとりあえずセーフという事にしておこう。
でも噛み付きじゃなくて両手でポコポコ叩くくらいにしといてあげてください。
本シリーズでは初登場時から上条さんをミンチより酷い状態にしたり良くわからんマジキチダンスを披露したりと
一際ぶっ飛んだキャラ付けをされていたが、その酷さは今回も変わらずに引き継がれている。
シスターなのにカニバリズムを肯定するかのような姿勢は流石にどうなのだろうか……
何気にこれまでは彼女自身が酷い目に遭ったことはほとんどなく(代わりに上条さんがとばっちり受けてるけど)
深刻なダメージを受けたのは今回が始めてかもしれない。
―休憩室
一方通行「しかし危ねェところだったな」
垣根「あぁ、全くだ」
麦野「冗談抜きに死ぬかと思ったわ」
御坂「見て、食蜂なんて完全にトラウマになってまだガタガタ震えてるわよ」
食蜂「シスターさんが、シスターさんがぁぁ……」ガクガクガク
垣根「いやでもわかるぜ?俺も未だかつてあれほど『死ぬ』と思ったことはなかったからな」
御坂「いつも傍観者気取ってて実際の修羅場をくぐり慣れてない食蜂じゃこうなるのも仕方ないか」ヤレヤレ
麦野「にしても食べ物の恨みは怖いわね、次からあのシスターには気を付けましょう」
一方通行「あァ……上から降ってきたウニ頭の三下野郎を咄嗟に盾にしたから助かったが、
あンな幸運はそうそう起こりゃしねェだろォからなァ」
インさんの神の裁きにより消し飛んだと思われていた一行だったが、
一発目の閃光でインさんが消し飛ばした天井から偶然降ってきた上条さんを盾にする事で辛うじて難を逃れていた。
(上条さんはインさんのお見舞いの為に病院を訪れており、偶々食堂の真上の部屋にいました)
あんまりだよ……こんなのってないよ、ひどすぎるよ……こんなの絶対おかしいよ!!
御坂「ほら食蜂、熱いお茶でも飲んで落ち着いて?近くでそんな風にブルブル震えられると鬱陶しいから」ス
食蜂「御坂さん酷い!!恐怖で震える美少女に他にかける言葉は無いわけぇ!?
だいたい私は日本茶よりも紅茶が飲みたいの!それくらい気を利かせなさいよぉ!!」
御坂「何?お茶ぶっかけられたいのあんた?」イラッ
食蜂「ぼ、暴力はんたぁい!!」ビクッ
垣根「ホントに一言多いなこいつは」
一方通行「そンなモンにしとけ超電磁砲、これ以上ぴーぴー騒がれてもうぜェだけだ」チッ
食蜂「……私知ってるわよぉ?第一位さんの言葉は辛辣だけど
本当は怖ぁい御坂さんから私を庇ってくれようとしてるんだってこと!
私の事色々調べてたし、第一位さんは私にめろめろなのよね?私の味方なのよねぇ?」チラッ
一方通行「何言ってンのこいつ?」
垣根「そうとでも思わねぇとやってらんねぇんじゃねぇか?味方が一人もいない状況に耐え切れなくなってきたんだろ」
麦野「とにかく何かすがるものが欲しいってか?どんだけメンタル弱ぇんだか」
御坂「一方通行はこの企画に引き込んだ張本人なのにね……」
11111号「ふぃー、ようやく開放されましたよ、とミサカは休憩室に帰還します」ガチャ
御坂「ん?あ、そういえばしばらくいなかったわねあんた」
垣根「何やってたんだ?まぁこっちとしちゃ休憩時間が貰えて有難かったが」
麦野「帰ってこなくてよかったのに」チッ
11111号「いやいや、さっきインさんが食堂焼き払っちゃった事についてこのミサカの管理責任が問われまして、
カエル先生にマジ説教を喰らってきました、とミサカは理不尽なお説教に憤慨します。
ミサカ悪くなくね?インさんが暴走したのミサカのせいじゃなくね?悪いのみさきちじゃね?」プンスカ
一方通行「どォ考えても未元物質トッピングし直したオマエが全面的に悪ィだろ」
食蜂「ふふん、ざまぁないわねぇ。いい気味よぉ」
11111号「さて皆さん、たった今このミサカは理不尽に怒られてきましたが病院勤務ではこの程度日常茶飯事です、
とミサカは医者や看護士の仕事がいかに激務であるかを仄めかします。
医療従事者=勝ち組エリート、とは必ずしも言えないのですよ?」
垣根「だからテメェが説教喰らったのは理不尽でも何でもなくて当然の帰結だろうが」
11111号「些細な事でも医療ミスだの怠慢だのと槍玉に挙げられ、
どんなに難しい手術か、どれ程成功率が低いのかを前もって説明しているにも関わらず
手術に失敗すれば人殺しだの藪医者だのと罵られた挙句訴えられるわ、
奇跡的に成功しても一切感謝されないわ、医者とは常にそんな理不尽と隣り合わせの仕事なのです、
とミサカはていとくんの発言をスルーしつつ昨今の患者のわがままっぷりに憤慨しながら力説します」
御坂「流石にそれは例が極端過ぎるでしょ……」
食蜂「でも結構そういうのも問題視されてるわぉ?モンスターペイシェントって言うんだったかしらぁ?」
11111号「少々極端な例から挙げましたが、小さい事でも、順番待ちが出来ない患者や治療方針に一々難癖つける患者、
看護師に我侭言いまくる入院患者など、病院勤務はとにかくストレスとの戦いなのですよ、
とミサカはどこの病院でも問題になっている世知辛い現実を語ってみます」
麦野「けどまぁ難しいとこなのよね、本当に仕事しねぇ医者もごまんといるわけだし、
患者の方も病院に来てる時点で精神的にかなり切羽詰ってたりするからねぇ」
垣根「何似合わねぇ事言ってんだ麦野?オマエはもっとこう、脳筋っぽいキャラのはずだろ?」
麦野「ぶち殺すぞ」
11111号「でまぁ前置きがちょっと長く重くなりましたが、
今から皆さんには医者がどんな理不尽を受けるかを学んで頂きます、
とミサカは微笑を湛えながらこれからの予定を簡潔に述べてみます」ニタリ
一方通行「そンなこったろうと思ったわ!どォせそンなこったろうと思ってたわ!!」
垣根「おいコラふざけんな!!強制的にこんな企画に参加させられてる今の状況が既に十分過ぎるほど理不尽だろうが!!」
御坂「これ以上どんな理不尽を学べってのよ……」
11111号「そう怒鳴らないでください、何も皆さんに直に理不尽な目に遭って頂こうとは考えておりませんから、
とミサカは露骨に不満気な様子のレベル5勢を宥めます」ドウドウ
食蜂「だぁかぁらぁ、現状既に理不尽極まりない目に遭ってると思うんですけどぉ?」
11111号「あ、何か今の喋り方ちょっと一方通行に似てて酷くムカつきました、
とミサカは舌打ちしながらみさきちの口調に文句をつけます」チッ
一方通行「おい俺に似ててムカつくってのはどォいう意味だ」
食蜂「ほらもう早速理不尽に舌打ちしてるしぃ!第一位さんの喋り方に似てたとか言われてもそんなの知らないわよぉ!!」
麦野「あー、言われて見ると確かに喋り方似てる時があるわ」
垣根「なるほど、フェミニストのはずの俺が何故か第五位に優しくする気になれないのはそのせいか」
御坂「うぅん、喋り方じゃなくて単純にこいつの性格と趣味趣向のせいだと思う」
食蜂「御坂さんもう私の事全否定してない?」
11111号「話を戻しましょう。と言う訳でこれからDVD学習の時間です、とミサカはDVDを掲げながら宣言します」
食蜂「DVD?」
垣根「げぇ!DVD!?」
麦野「どんなわけだよ……」
一方通行「あァクソ、来ちまったかDVD……」
御坂「な、何のDVDよ?それが理不尽さを学ぶことと関係あるの?」
11111号「このDVDの中に理不尽な扱いを受けるお医者様のドキュメンタリーが記録されているのですよ。
それを見て医者という職業の大変さを良く噛み締めてください、
とミサカはDVDをセットしながらほくそ笑みます」ククク
食蜂以外の一行が過去のDVD学習の大惨事を思い出し顔を引き攣らせている隙に、
11111号は鮮やかな手つきでDVDをプレーヤーにセットする。
あ、今更だけどこの休憩室にはテレビとDVDプレーヤーが置いてあったんだよ。
11111号「それでは再生開始、ポチッとな、とミサカは再生ボタンをプッシュします」ポチ
食蜂「ドキュメンタリーって言う事は実際に起こった出来事の記録なのかしらぁ?
そういう重たそうなのは好きじゃないのよねぇ」
一方通行「この企画でそンな笑えそうにねェモンが出てくるわけねェだろ」
垣根「オマエは理不尽に詰め寄られてる医師見て普通に笑ったりしそうだけどな」
11111号「し、お静かに、はじまりますよ、とミサカは茶々を入れる一行を叱責します」シー
11111号に注意を喚起され、一行は仕方なしに口を噤み画面を注視する。
DVDの映像は、何の前振りもナレーションもなく、唐突にベッドが表示されるところから始まった。
とは言え、画面に映っているそれは病院に置いてあるような安っぽいパイプベッドではない。
そのベッドはとてもではないが病院には置けそうにないほど巨大で、
薄っぺらい病院の布団とは比べ物にならないような本物の羽毛布団がかかっており、
おまけにレース生地の天蓋までついている。所謂、お金持ちの家のお嬢様や
ファンタジーの世界の貴族の女性が使うようなお姫様ベッドという奴である。
枕元付近がテディベアをはじめとするファンシーな人形達て埋められているところから察するに、
このベッドの主は小さな女の子か、或いは相当な少女趣味の持ち主である事が伺える。
一方通行「なンだこりゃ?」
垣根「すげぇベッドだな……男は絶対に使えねぇぞこれ」
御坂「んー、女の子としてはちょっとこういうの憧れちゃうかな、ちょっと少女趣味が過ぎる気もするけど」
麦野「いいんじゃない?あんた少女趣味だし」
食蜂「御坂さんは少女趣味じゃなくて子供っぽいだけじゃないかしらぁ?」
御坂「るさいわね……」
一方通行「ンで、この映像はなンだ?このベッドと医者の仕事となンか関係あンのか?」
11111号「え、さぁ……?とミサカは首を捻ります」アレー
垣根「『さぁ?』ってオマエ……」
麦野「どういう事だおい」
11111号「どうやら持ってくるDVDを間違えてしまったようです。
すぐに本物をお持ちしますのでしばしお待ちください、
とミサカはちょっぴり焦りながらDVDを取りに行くため休憩室から退室します」ガチャ
御坂「もういいわよ持ってこなくて……」
一方通行「このDVDどォするよ?止めるか?」
食蜂「別にいいんじゃない?ベッドが映ってるだけみたいだしぃ」
麦野「そうね、わざわざ止めるのも面倒だし、あのクローンがすぐ戻ってくるでしょ」
垣根「しっかし本当に何なんだこれ?ベッドのプロモーションビデオか何かか?
って、おぉ?」
一行がだらだらと画面に表示されているベッドを眺めていると、不意に映像が切り替わる。
切り替わった映像は相変わらず同じアングルでベッドを映し続けているが、異なる点が一つ。
御坂にまで少女趣味と評された豪華なお姫様ベッドの上に、
これまた少女趣味なネグリジェを着た、10歳にも満たないような小さな女の子が横たわっていた。
長い茶髪を持つその少女はカメラからそっぽを向く形で寝転んでいる為、その表情を伺うことは出来ないが、
小さな胸が規則正しく上下に鼓動しているところから察するに、恐らく眠っているのだろう。
食蜂「あら可愛い。けどますます何のDVDだかわからなくなっちゃったわねぇ」
垣根「おいおいおい、まさかロリ系の盗撮動画とかじゃねぇだろうな……」
御坂「垣根さん何かちょっと嬉しそうじゃない?不潔……」
垣根「いい子ちゃんぶってんじゃねぇよむっつりが」ケッ
御坂「だからぁ!!」
一方通行「案外ホラー系かも知れねェぞ?このガキがこっち向いたら顔面血だらけだったりよォ」
垣根「あー、言われてみりゃ確かにそんな雰囲気もあるな」
御坂「こ、怖いこと言わないでよ!?」
食蜂「やーい御坂さんの怖がりぃー」ツンツン
御坂「つつくな!!だいたいあんたも顔が引き攣ってるわよ!?」
麦野「……」
一方通行「どォした第四位?さっきからなァンか静かだけどよォ……
まさかオマエまで『怖ァい』とか似合わねェ事言い出すンじゃねェだろォな?」
麦野「んなわけねぇだろ。ただちょっとこの女の子にデジャヴが……よく見るとベッドも何か……」
垣根「つーかこの世のあらゆる心霊現象より麦野の方が遥かにおっかねぇんじゃねぇか?」
麦野「おいそりゃどういう意味だ?ちょっと詳しく説明してみろ、出来るもんならな」ガッシ
垣根「そういうとこだよそういうとこ!!躊躇なく首に手を伸ばしてくるなよ!!」
御坂「あ、見て!女の子が動くわよ!」
一方通行「おォ?」
御坂の声に反応し一行が再度画面に目を向けると、
画面の中では先程まで静かに寝息を立てていた少女が何やらもぞもぞと体を捩っていた。
寝苦しいのだろうか、それはちょうど赤子が寝返りを打つ際の前兆のようにも見える。
そして一行が画面を見つめる中、少女は予想通り寝返りを打ち、そっぽを向いていた顔をカメラの方へ向けた。
麦野「!!」
垣根「ほう……」
御坂「わぁ……」
こちらを向いた少女の顔は血だらけで……などと言う事は勿論なく、
そこにはロリコンには生唾物の丹精に整った顔が映し出されていた。
少女特有の丸みを帯びた輪郭に健康的な顔色、僅かにつり上がった切れ長の目は気の強さを窺わせ、
きっと普段は可愛らしくもお転婆なお嬢様なのだろうと想像出来る。
何故だか顔を強張らせる麦野の横で、女好きの垣根と可愛い物に目がない御坂が
まるで童話の世界から抜け出してきたかのような可憐な少女の寝顔に目を奪われ感嘆の声を漏らした。
しかしこの少女、何処かで見たような顔の作りだ。それも頻繁に、身近な所で見ている気がする。
無論一行にこんな少女の知り合いはいないのだが、何故か少女の顔に既視感を覚える。
はて何故だろうか、と約一名を除き互いに顔を見合わせた一行は、そこである事に気付いた。
画面の中の少女は、雰囲気こそ全く違うものの、その髪質や顔のパーツとその配置は、
この中にいる誰かさんにそっくりだと言うことに。
一方通行「……」チラッ
垣根「……」チラッ
御坂「……」チラッ
食蜂「……」チラッ
麦野「……」
一方通行「……」チラッ…チラッ
垣根「……」ジッ
御坂「……」ジトー
食蜂「……」ジー
麦野「…………そうだよ!私だよこれ!!小さい頃の!!」
全員に感付かれたであろう事を察した麦野は頭を抱えながら叫び声をあげる。
そう、この少女趣味全開の小物に囲まれた少女趣味全開のベッドの上で
少女趣味全開の服装をして眠っている少女は、在りし日の麦野沈利本人だったのだ。
デデーン♪
『一方通行、垣根、御坂、食蜂、アウトー』
麦野「はぁ!?何吹き出してんだテメェら!?」
一方通行「本当にある意味ホラーだった……」フルフル
麦野「何言ってんだテメェぶっ殺すぞ!?」
垣根「どうしてこんなお嬢様がこうなるんだよ……」クククク
麦野「あ゛ぁ!?何だテメェ言いてぇ事があんならハッキリ言え!!私がどうなったってんだ!?」
御坂「少女趣味が過ぎるなんて言ってごめんなさい、可愛いと思うわよ麦野さん」プークスクス
麦野「半笑いで目ぇ背けながらのそれはフォローしてるつもりなのかしら?
それとも馬鹿にしてんの?多分後者だよなァァァァァァ!!?」
食蜂「この映像おかしくなぁい?何十年も前の映像のはずなのにどうしてカラーなのかしらぁ?」クスクスクス
麦野「テメェここぞとばかりに喧嘩売ってきやがったな!?
いいわよ買ってやるわ!!お前生きてこの病院出れると思うなよ!?」
バチーン!!
一方通行「ばはァァァァ!!!」
垣根「ふぉおおぉぉぉ!!!」
御坂「ぐにゃあぁあああ!!」
食蜂「ぶべらっ!!!」
麦野「何だよ……幼い頃の私が寝てるだけで別に笑う要素ないだろ……」イライラ
一方通行「いやァ、今との対比が重てェわァ……」
垣根「時の流れって残酷だな……この時は歳相応の女の子に見えるのに……」
食蜂「画面の中の第四位さんはこんなに可愛いのに!こんなに可愛いのにぃ!!」
麦野「お前ら三人ちょっと表に出ろ」クイ
御坂「小さい頃の麦野さんかぁ……小麦野さんね」フフフフフ
デデーン♪
『御坂、アウトー』
御坂「あぁぁぁぁ!!!」ビクッ
一方通行「何一人で勝手に下らねェ事言って一人で勝手に笑ってンだオマエ?」
麦野「駄洒落好きねホント」
垣根「小麦野って言った後何でドヤ顔したのオマエ?別に上手くも面白くもなかったぞ?」
御坂「う、うるさいわね!!別にドヤ顔なんてしてないもん!!」
バチーン!!
御坂「やあぁああああ!!!」
食蜂「んー、当時の第四位さんが小麦野ならぁ、今の第四位さんは大麦野ってとこかしらぁ?」
麦野「第一位、ちょっとそっちの窓開けてくんない?このアホ投げ捨てるから」ガシ
食蜂「ひぃっ!?」ビクッ
一方通行「いや流石に殺人の片棒は担ぎたくねェンだが」
麦野「そ、じゃあいいわ。だったら窓ぶち破る勢いで投げるだけよ」グググ
食蜂「やめてやめて下ろしてぇぇぇぇぇ!!!」ヒィィィィ!
『ん、んん……』
垣根「んお?」
麦野「!?」
掴みあげた食蜂を今にも放らんと溜めを作っていた麦野だったが、
その行動は不意にテレビから聞こえてきた幼き日の己の声によって中断された。
見ると、テレビに移った小麦野は可愛らしく身を捩りながら、何やらむにゃむにゃと口元を動かしている。
『んー……ぅー……』
一方通行「寝言か?」
御坂「うぁー麦野さんかーわいいー」
垣根「声若いな……」
麦野「おいもうDVD止めろ、今すぐ止めろ。それと『声若い』とか言ってんじゃねぇ今も若ぇよ」ポイ
食蜂「ぶべ!」ベシャ
食い入るように画面を見つめ感心したように声を漏らす一行に気恥ずかしさを覚えたのか、
或いは単にムカついたのか、麦野は食蜂を床に投げ捨てると複雑そうな顔でDVDを消すよう命じる。
しかし、当然そんな命令を聞くような連中ではない。
御坂は麦野の声など聞こえていないかのような素振りで画面を注視し続け、
一方通行と垣根は面白い玩具を見つけた子供のような目をしながら麦野の方へと向き直った。
垣根「堅ぇ事言うなよ麦野、せっかくなんだからもうちょっと眺めてようぜ」
一方通行「だな、こンな面白そうなモン見逃す手はねェよ」
麦野「あぁ!?ふざけてんのかロリコンどもが!!あと美琴もガン見すんのやめろ!!」イラッ
御坂「えぇー?こんな可愛い小麦野さんから目を背けろだなんて、結局それは無理な注文だと思う訳よ?」
麦野「何言ってんのあんた!?フレンダの生霊でも乗り移った!?」
食蜂(て言うか何でこんな映像があるのかしらぁ?)イタタタタ
麦野「おい何がイタイって?幼い頃の私の少女趣味がそんなに滑稽か?」
食蜂「ちが!さっき第四位さんに投げ捨てられた時に腰打ったのが痛いって言ってるだけよぉ!?」
一方通行「『幼い頃の少女趣味』なンて言ってるけどよォ、オマエ今でもボロボロのぬいぐるみと一緒に寝てンじゃねェか」
麦野「ぬああぁ!?」ビクッ
垣根「オッファ」
御坂「ブフッ」
デデーン♪
『御坂、垣根、アウトー』
麦野「だぁぁぁから笑ってんじゃねぇよテメェらああああああ!!!!」
垣根「いや思ってないっすよ?いい歳ぶっこいてぬいぐるみと寝てるとかマジイテェなぁとか全然思ってないっすよ?」クククク
麦野「ちくしょう死ね」
御坂「あの、馬鹿にしてるわけじゃないのよ?
麦野さんが毎晩ぬいぐるみ抱いて眠ってるところ想像すると自然に顔がニヤケちゃって……」ニヤニヤ
麦野「そのニヤニヤ笑いは完全に馬鹿にしてる笑い方だろうが!!!」
バチーン!!
垣根「くあぁッッ!!!」
御坂「ひいぃったあああああ!!!」
食蜂「ねぇ第一位さぁん、他に第四位さんに関する面白い話は無いのかしらぁ?」
一方通行「あァ?そォだな……」
麦野「第一位、これ以上何か余計な事言おうってんならマジでお前喉ぶち抜くわよ?」
一方通行「……」
麦野の脅しを洒落や冗談ではないと理解した一方通行は、速やかに口を噤むと、目を細め
何も言わずにテレビの方へ顔を向ける。こういうところで判断を誤る男ではない。
そんな一方通行の態度に不満気な食蜂だったが、麦野に一睨みされると肩を抱いて震えながら縮こまった。
散々麦野にシメられた事でこのアホの子もようやく自分の立場を理解しはじめたらしい。
画面の中では相変わらず小麦野がむにゃむにゃと寝言を呟いている。こんな子がどうしてこうなったのやら。
『んふー……むにゃ……』ニコッ
御坂「あ、小麦野さんが笑った」
垣根「何て純真な笑顔だ……どうしてこうなった……」チラ
麦野「こっち見んな。つーかDVD止めろつってんでしょ」
垣根「わざわざ止める必要もねぇだろ、小麦野が寝てるだけなんだしよ」
御坂「そうね、私ももうちょっと小麦野さんを観察してたいかな」
麦野「おい小麦野を定着させんな」
『んにゃ……お父様……』
麦野「!?」
垣根「うわ寝言で『お父様』とか呟きやがった気持ち悪ぃ」
麦野「待て気持ち悪ぃって何だお前」
食蜂「今の第四位さんを見てると『お父様』なんて呼び方想像も出来ないわねぇ……」
麦野「うっさいわねこちとらテメェらと違って育ちがいいのよ」チッ
一方通行「育ちがいい奴はそンな言葉遣いしねェよ」
御坂「このベッドといい『お父様』なんて呼び方といい、麦野さんって本物のお嬢様だったんだ……」
『んー………お父様ぁ……』ムニャムニャ
垣根「また言ってるし……オマエどんだけお父様の事好きなんだよ」
食蜂「第四位さんってファザコンだったんだぁー。やぁーいファザコーン」
麦野「黙れ!!そんな好きじゃなかったわよ多分!!」
御坂「あ、で、でも女の子って小さい頃はファザコンの気がある人が多いって言うし、
私も多分昔は似たようなもんだったわよ?」
一方通行「普通に生活してたらファザコンなンざあり得ねェだろ、
木原くンとか思い浮かべるだけでもミキサーで粉々にして鯉の餌にしてやりたくなるわ」
食蜂「発想が妙に恐ろしいわよ第一位さぁん!?」ビクッ
垣根「まぁあのおっさんが父親代わりだったらまずファザコンにはならねぇだろうな、実際」
『お父様……』クークー
垣根「また……」
『跪いて足を舐めなさい』
垣根「!?」
御坂「!!」
麦野「!!?」
一方通行「……」
食蜂「わぁ……」
『んむぅ……ぐぅ……』スヤスヤ
垣根「……おい今さっきこの小麦野何て言った?跪いて、何?」
麦野「……」
一方通行「足を舐めろ、だとよ」
食蜂「……お父様にぃ?」
御坂「い、いやそれは違うでしょ?偶々連続して寝言を言っただけで、お父さんに向けて言ったわけじゃないんじゃ……」
垣根「父親に言ったんじゃないにしても超が付くほどの問題発言だけどな」
『お父様……この卑しい豚が!』
食蜂「やっぱりお父様に向かって言ってるぅぅぅ!!!」
垣根「はい豚呼ばわりいただきましたぁー!!!」
一方通行「流石の俺も引くわァ……」
麦野「……」
御坂「しょ、所詮寝言だし、気にしないでいいわよ麦野さん、ね?」
垣根「自分の娘がこんな寝言言ってたら自殺考えるわ」
麦野「ち、違う!!これは何かの間違いよ!!私は蝶よ花よと育てられたお嬢様で、決してこんな事言う子供じゃ……」
『ほらお父様、どうして欲しいか言って御覧なさい?鞭?それとも蝋燭?どっちがいいの?
じれったいわね、ハッキリ言いなさいよ!……いいわ、人間の言葉も喋れない豚にはこの×××を……むにゃむにゃ』zzz
麦野「もう喋んな私いぃぃぃぃ!!!!」ガタン
デデーン♪
『一方通行、垣根、御坂、食蜂、アウトー』
一方通行「お父様どンだけドMだよ!?」ゲラゲラゲラ
垣根「すげぇ、オマエすげぇよ麦野、実の親にこんなん言えねぇよ普通……」ククククク
食蜂「何だか『常盤台の女王』なんて名乗ってるのが恥ずかしくなってきちゃったわぁ……
第四位さん、あなたこそ生まれながらの女王様よ、SMのねぇ」クスクス
麦野「るっせぇ黙れカスどもが!!人様の黒歴史見て笑ってんじゃないわよ!!!」
御坂「あの、あー……麦野さんが昔から麦野さんで安心したわ」ニコッ
麦野「フォローになってないわ!!」
バチーン!!
一方通行「いっでェ!!!」
垣根「うおっはぁぁぁぁ!!!」
御坂「うぎ!!?」
食蜂「べむらッッ!!!」
『ふにゃぁ……ん……』スヤスヤニコニコ
御坂「寝顔は天使みたいなのにね……」
垣根「何だろうな、一瞬でこの笑顔が純真に見えなくなっちまったよ」
食蜂「幸せそうな寝顔……さぞいい夢を見てるんでしょうねぇ……」
一方通行「夢ン中でお父様しばき倒してンだろォよ」
麦野「……」
『んふぅ、いい顔よお父様ぁ。もっと鳴いて……ぐぅ』スースー
垣根「……最初はこんな裕福そうな家庭の子が何で学園都市の暗部に堕ちたのか疑問だったが、
これ見てたらなんとなくわかったわ、オマエ堕ちたんじゃなくて下りたんだな?自分から」
食蜂「日の当たる世界では生きられないタイプよねぇ第四位さんは……」
一方通行「しかし爛れた家庭もあったモンだな……実の父親とSMプレイかァ……」
麦野「うるせぇもう放っとけ!!私の過去に触れんな!!」
御坂「あ、えっと、お、お母さんはどんな人だったの?やっぱり麦野さんに似て美人な感じの……」
麦野「……あぁ、母親は……」
『ダメお母様!それは沈利の鞭だよ!!お母様はいつも通りハイヒールでお父様を踏ん付けてよ!!……ふぁ…』zzz
麦野「……そういう人だったわよちくしょうが!!!」ダン
デデーン♪
『一方通行、垣根、御坂、食蜂、アウトー』
一方通行「な、なンて救いようのねェ家庭だ」ケケケケ
御坂「お、お母さん似だったのね麦野さん」プクククク
『むにゃ……ねぇお父様、お馬さんやってお馬さん!
そう、沈利は地べたに四つん這いになって無様な四足獣に成り果てたお父様が見たいの!』ムニャムニャ
食蜂「あぁ、お馬さんやってもらった事があるってそういう……」クスクス
垣根「今よりサディスト入ってねぇかこの小麦野」クククク
『んむ……ねぇお父様、お馬さんはお洋服なんて着t』
麦野「っそぉぉい!!!」ブン
ガッシャァーン!!
垣根「DVDプレーヤーごと叩き壊しやがった!?」
バチーン!!
一方通行「だァおおォォォォォ!!!」
垣根「ッッひょおおぉぉぉお!!!」
御坂「や、あああぁぁああ!!!」
食蜂「むるちッ!!!」
11111号「ふぅ、お待たせしました、とミサカはDVDを抱えて息を切らせながら休憩室に帰還を……
ってうわ!DVDプレーヤーがぶっ壊れてる!何事ですか!?」
食蜂「第四位さんが壊しちゃったぁ」
垣根「チョップ一発でこうも見事に粉々になるのは流石としか言い様がねぇな」
11111号「えー……何やってんですかむぎのん……とみさかは恨みがましい目でむぎのんを見つめます」ジトー
麦野「テメェの置き土産のせいでこうなったんだよ」ギロ
御坂「でも残念だったわね、折角DVD取って来てもらったのに
プレーヤーがこんなになっちゃってたらもう見れないわよね?」
11111号「何嬉しそうな顔してんですかお姉様、この程度想定の範囲内ですよ、
とミサカは懐から新しいDVDプレーヤーを取り出してみます」ヨッコイセ
御坂「ちぇっ」
一方通行「まァどォせ代わりのDVDプレーヤーがすぐに用意されるとは思ってたがよォ……
オマエそのDVDプレーヤーどこに持っててどォやって出したンだ?
懐に入りきるよォなサイズには見えねェンだが」
11111号「ミサカの懐の中が気になるですって?一方通行のえっち!
とミサカは顔を赤らめ胸元を手で覆い隠しながら一方通行から顔を背けます」ジッ
一方通行「もォつっこむのもめンどくせェけど顔色一つ変えずに怖ェくれェの無表情でガンつけてきてンじゃねェか」
垣根「一方通行のえっち!」
一方通行「何便乗してンのオマエ?キモ過ぎてゲロ吐きそうなンですけど」
御坂「あんた……この子、延いては私の事をそんな目で見てたの?最低……この変態!」
一方通行「何こいつマジうぜェ、なンだよ延いては私の事って」
麦野「第一位のロリコン」
一方通行「誰がロリコンだクソボケが!!冗談はオマエの年齢だけにしとけ!!!」
麦野「あ?」
食蜂「第一位さん、御坂さんやクローンさんみたいな起伏のないロリ体型が好みなら男の子相手でもイケるわよねぇ?」
一方通行「イケねェしそもそもロリコンじゃねェつってンだろ!!耳まで腐ってンのかこの腐女子は!?」
御坂「て言うか誰が起伏のないロリ体型よ!?私はちょっとスレンダーなだけでちゃんと女の子っぽい体型してるっての!!」
11111号「お姉様はともかくこのミサカはまだまだ成長過程です、既に成長の目のないお姉様と同一視しないでください、
とミサカはDVDプレーヤーを設置しながらみさきちに向かって舌打ちします」チッ
御坂「だ、誰の成長の目がないって!?あんた私のクローンのくせに……ッ」
11111号「それでは今度こそDVD学習スタートです、とミサカは怒り心頭のお姉様をスルーして再生ボタンを押します」ポチ
地団駄を踏む御坂を尻目に、11111号はさっさとDVDの再生を始める。
テレビ画面に表示された映像には清潔感漂う診察室らしき部屋と、
その部屋の中央で椅子に座っている白衣を纏った少年の姿が映されており、
どうやら今度こそ医療関係のDVDに間違いないようだ。
一方通行「……ン?」
垣根「おいこの白衣の野郎……」
御坂「あ、アイツ……」
が、カメラのアングルが変わり白衣の少年がアップになったところで一行は眉を顰める。
イマイチぱっとしない印象の薄い顔に特徴的なつんつん頭、なんとなく全身から滲み出る薄幸なオーラ。
似合わない白衣を纏った、医者役と思しきその少年の姿形に、彼らは見覚えがあった。
食蜂「この人さっき一瞬見た気が……」
麦野「さっき見たってかさっき消し飛んだわね」
画面にアップで映し出されているその少年は間違いなく、
先程インさんの無差別攻撃からその身を挺して一行を救った上条さんに他ならなかった。
一方通行「白衣似合わねェなコイツ」
垣根「あんまり頭良さそうには見えねぇからなぁ」
麦野「浜面に比べりゃなんぼかマシだけどね」
食蜂「どことなくお猿さんみたいな顔してるわよねぇ」
御坂「あんたらちょっと言い過ぎでしょ流石に……」
一行がアップで表示されている上条さんの容姿をぼろくそに詰っていると、
カメラアングルが再び診察室全体を映すものへと変化し、
同時に無音だった診察室内に『コンコン』とドアを叩く音が響き渡る。どうやら上条さんの下へ患者が訪れたようだ。
上条『どうぞ』
『失礼いたしますの』ガチャ
上条がドアに向かって声をかけると、それに応じて小柄なツインテールの少女がカメラの範囲内に現れる。
一方通行「コイツ……」
垣根「げ……」
御坂「黒子……?」
麦野「そういや今回はまだ見てなかったわね」
食蜂「白井さん?」
一行はそのツインテールの少女にも見覚えがあった。そしてなんかもう、イヤな予感しかしなかった。
上条『ん、おぉ白井じゃねーか、どうしたんだ?』
白井『げぇ、類人猿ですの……どうしてここに……』
上条『いきなりそんな露骨にイヤそうな顔されると流石の上条さんでも傷つくんですが』
白井『はぁ……まぁいいですの、それよりお医者様を呼んでくださいまし』
上条『いや、一応俺が医者なんだけど……』
白井『は?』
上条『は?じゃなくて、俺が医者なんですって。どこか怪我でもしたのか?見せてみr』
白井『ジャッジメントですの!!』ブン
パチーン!!
上条『いっでええぇぇ!!!』
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、アウトー』
一方通行「今なンでビンタされたンだよあのウニ頭……」クククク
垣根「ジャッジメント関係ねぇだろ……決め台詞の無駄遣いしやがって……」
麦野「なるほど、こりゃ確かに理不尽だわ」ケラケラ
バチーン!!
一方通行「はァおおォォォ!!!」
垣根「ぼぶあぁ!!!!」
麦野「ひぅッ!!!」
上条『いててて……何でいきなりビンタすんだよ……』サスサス
白井『やかましいですの!あなたにわたくしの気持ちがわかるんですの!?』キッ
上条『……あの、サッパリわかりません』
白井『ふぅ……まぁお猿さんに人間の気持ちがわかるはずがありませんのね』ヤレヤレ
上条『いくらの上条さんでもそろそろ泣くよ?』
白井『よろしいですか類人猿さん、わたくしが今日遥々ここに来たのは、
この病院で他でもないお姉さまのクローンが働いているという情報を得たからですの』ビシ
上条『ん?あぁ、御坂妹達の事か?それなら確かにここで看護師の仕事を……』
白井『だと言うのに!!お姉さまのクローン目当てで来たというのに!!どうしてあなたが出て来るんですの!?
お姉さまのクローンに診察していただけるのなら、面倒を見ていただけるのなら!
この場で手でも足でも自分からぶち折る覚悟でしたのに!!』
上条『何だその覚悟!?こえーよ!!てかあいつらは看護師だから診察なんてやr』
白井『ジャッジメントですのぉ!!!』ブン
ベチーン!!
上条「ぶふああぁぁぁ!!」
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「だからなンで一々ビンタすンだよ!?」
垣根「そういやこのウニ頭、前回も散々ビンタされてたよな……」ククク
御坂「く……可哀想なのに、笑っちゃいけないのに、耐えられない……」
麦野「前回はウニ頭の方がツインテールを散々ぶん殴ってたし、自業自得じゃない?別に可哀想でもないでしょ」
食蜂「御坂さんのクローンさん目当てで、自分の手足折る覚悟だった、って所には誰もつっこまないのねぇ……」
一方通行「そのくらいは普通にやりそうだしなァ、あのツインテ」
垣根「むしろ『全身麻痺になって一生世話してもらいますのー』とか言い出しても不思議じゃねぇよ」
食蜂「怖いわぁ白井さん……」
御坂「黒子がああなってんの、半分くらいはあんたのせいでしょ……」
バチーン!!
一方通行『かァァァァ!!!』
垣根「うぉっさああぁぁ!!!」
御坂「あぎゃっ!!!」
麦野「に゛ゃあ゛あぁぁぁ!!!」
食蜂「ぎょぷる!!」
上条『何でビンタすんの!?ねぇ何でビンタすんの!?』サスサス
白井『やかましいですの!!乙女の夢を踏みにじった罰ですの!!』キッ
上条『そんな事した覚えは上条さんには一切ありませんが!?』
白井『お姉さまのクローンがいるという情報はわたくしを誘き寄せる為の卑劣な罠だったんですのね!?
狭い診察室にわたくしと二人きりという状況を作り出して、一体何をする気ですの!?』キッ
上条『何かされてるの俺の方だよね!?別にこの部屋鍵もかかってないしお前空間移動あるしいつでも出て行けるよね!?』
白井『ジャッジメントですの!婦女監禁の容疑であなたを拘束させていただきますの!!』キッ
上条『話聞いてください!て言うかもう出てって!?』
ジャッジメントの腕章を見せつけながら手錠を取り出す白井に対し
涙目になりながらも必死に食い下がる上条だったが、いかんせん分が悪い。何せ白井が全く話を聞いてくれないのだから。
白井のあまりにも理不尽な行動に鬼畜で鳴らしたレベル5勢も流石に閉口気味である。
※口を開くと吹きそうなので閉じているだけです。
白井『さぁ観念なさい!ブタ箱にぶち込んで二度と日の目を見られない生活へご招待ですの!!』
上条『そんな招待いらねーっての!!断固として拒否するぞ俺は!!』
白井『問答無用ですの!!』
上条『して!少しは上条さんと問答して!!』
『失礼します。上条先生、少々お話が、とミサカはノックもせずに診察室へ飛び込んでみます』ガチャ
今まさに白井の手にした手錠が上条に向かって振り下ろされんとしていたその時、
不意に診察室のドアが開かれ、画面内にナース服を着用した妹達の一員が現れた。
なにやら書類らしきものを抱えているところを見るとどうやら彼女も仕事中だったようだが、
どれだけ急ぎの仕事だろうとノックくらいはするべきだった。
ノックさえしていれば、診察室の中が尋常でない状況にあると理解する事が出来ただろうに……
上条『お、おう、どうしt』
白井『んはああぁぁぁぁ!!!ナース服のお姉さまあああぁぁぁぁ!!!!』ビクンビクン
『げぇ!!白井黒子!?とミサカは奇声を上げるツインテールの化け物に驚愕し後ずさりします』
白井『ふひいぃぃぃい!!ナース服で後ずさるお姉さまかわいいですのおおおおお!!!』
上条『お、おい落ち着け白井、お前が大声出すから怯えてるじゃねーk』
白井『んああぁぁ!!ジャッジメントですのおおおお!!!』ヒュ
ペチーン!!
上条『ごふぉあ!!?』バターン
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、食蜂、アウトー』
一方通行「結局ビンタすンのかよ!?」
麦野「完全に不意打ちだったわね、叩かれた瞬間目ぇ丸くしてたわ」クククク
食蜂「クローンさんの登場で助かったと思ったのにいきなりビンタされたら驚くわよねぇ」クスクス
垣根「今のビンタが一番威力あったんじゃねぇか?椅子ごとひっくり返りやがったぞ、あのウニ頭」ケケケケ
御坂「黒子……いつか元に戻るといいわね……」
バチーン!!
一方通行「おォァ!!!」
垣根「へあああぁぁ!!!」
麦野「づあッッ!!」
食蜂「ぷぎ!!」
白井『ささ、ナース服のお姉さま、こんな類人猿なぞ放っておいて行きましょう?
向こうでわたくしといい事しましょう?』ガシ
『いやあのやめてください掴まないでくださいホント勘弁してください、
とミサカは涙目で左右に首を振りつつ必死の抵抗を試みます』ヤダヤダヤダ
白井『それでは類人猿さん、御機嫌よう』ヒュン
『たすけt』ヒュン
上条が椅子ごと倒れている間に、白井は怖気を振るうような笑顔でその場に乱入してきた妹達の一員に抱きつくと、
そのまま空間移動をして何処かへと消え去ってしまった。彼女達が一体何処へ向かったのか、
白井の言っていた『いい事』とは何なのか、それらは今以て不明のままである。
11111号「ちなみにこの時連れ去られたのは検体番号00001号のミサカで、
彼女は未だに消息不明のままMNWにも接続してきません、とミサカは補足を加えてみます」
一方通行「……そォか、アイツか」
垣根「空間移動能力者ってのはどうしてどいつもこいつも似たような行動を取るんだ?」
麦野「犯罪に役立ちそうな能力だから欲望の枷が外れるんじゃない?」
食蜂「んー、そういう素質のある人が空間移動能力に目覚めるんじゃないかしらぁ?」
御坂「だから、元を辿ればあんたのせいでしょうが!!」
食蜂「知ーらなーい。私は白井さんが素直になれるようにちょっとしたおまじないをかけてあげただけだもーん」
上条『はぁ……不幸だ……』ヨッコイショ
呟きつつ、画面の中の上条はがっくりと脱力しながらも、よろよろと身を起こす。
度重なる白井からのビンタにより、彼の頬は真っ赤に腫れていた。これが理不尽と戦う医者の姿である。
上条が大きく溜息を吐きつつ椅子に座りなおしたところで、
タイミングを見計らったかのように再び診察室にドアをノックする音が飛び込んで来る。
上条『はいはい、どうぞー』
『失礼するわ』ガチャ
二人目の患者は静かに、しかし鮮烈な印象を周囲に押し付けながら画面内へと現れた。
黒のゴスロリファッションにウェーブがかった髪、それにギョロ目という三つの特徴を兼ね備えたその少女は、
様々な人間や機械でごった返す学園都市という場においても明らかに異質で、一度見たら忘れられそうにない。
少女はざっと室内を一瞥した後、ほとんど足音を立てずに上条の下へ歩み寄っていった。
一方通行「……あれ布束じゃねェか、何やってンだアイツ」
御坂「あのゴスロリ服、普段着だったんだ……」
布束『indeed あなたが医者ね?』
上条『あ、あぁ、まぁ一応……』
ずいと顔を突き出してきた布束に若干及び腰になりながらも、上条はとりあえず素直に頷く。
布束はそのまましばし、内面を見透かすように、或いは値踏みするかのように上条の顔を見つめ続ける。
ギョロ目の三白眼に加えゴスロリ服というちょっとアレな格好をしている彼女にこういう行動を取られると、
はっきり言って相当恐ろしい。なんだか呪われそうな気配すら漂っている。
オマケにこの人、瞬きをほとんどせず、それがまた精神的な恐怖を刺激する。
三白眼の女の子に上目遣いで睨まれると性的に興奮する、呪われるだなんてとんでもない、むしろ御褒美だ、
という奇特な方もいらっしゃるかも知れませんが、そんなあなたはちょっと異常ですので
速やかに当スレを閉じて病院に向かう事をお勧め致します。私は手遅れでした。
布束『……』ジー
上条『え、えっと今日は何の用で……?』
布束『……』ジー
上条『あのー……』
布束『……』ジー
上条『う、うぅ……』サッ
布束の無言の圧力に耐え切れなくなった上条は堪らず目を反らした。数々の修羅場を潜り抜けた百戦錬磨の上条だが、
所詮はギョロ目の三白眼に性的価値を見出せないオールドタイプだったと言う事だ。
そうやって目の前の新境地から目を背ける上条の頬に、布束はそっと手を添える。
上条『うわっと!?な、何だ……?』
布束『……』
突如頬を撫でられたことに困惑する上条を嘲笑うかのように、布束は無言のまま口角を吊り上げる。
なんとなく馬鹿にされているのだと感じた上条は少々不機嫌な顔になり、己の頬に添えられた布束の手をそっと払った。
上条『……あのさ、用が無いなら帰っt』
布束『寿命中断(クリティカル)……』ボソ
上条『へ?』
布束『寿命中断(クリティカル)。私の能力は私と接触した相手のみしか対象に出来ないわ』
上条『は、はぁ……?』
布束『however 一度触れてしまえばどこへ逃げようと必ずその命を絶つことが出来るの』
上条『ちょ、何その能力!?つまり俺もうあんたの匙加減一つで死ぬって事!?』ビクッ
布束『信じる信じないは勝手だけど
AIM拡散力場を記録した相手を捕捉・干渉する能力には色々なバリエーションがあるのよ』
上条『いやいやいやそんな説明別に求めてないから!!何でそんな事すんの!?上条さんあなたに何かしましたっけ!?』
布束『別に何もされた覚えはないけれど……強いて言うなら暇潰しと言ったところかしら』
上条『暇潰しで他人の命握ったんかい!!!………って、よく考えたら俺幻想殺しあるから大丈夫じゃん』ホッ
布束『?』
上条『あーいや、俺の右手には幻想殺しって言うあらゆる異能の力を打ち消す能力が宿ってて、
AIM拡散力場とかも相殺してるらしいから多分その、寿命中断とか言うのも俺には効かないんじゃないかな』
布束『な!?』
上条『あーよかった、本当に寿命縮まるかと思った……』ホッ
布束『……』ジー
上条『そんな目で見られましても……て言うかあんた何しに来t』
布束『寿命中断(物理)!!』ブン
ベチーン!!
上条『へぼあ!!?』グハァ
デデーン♪
『垣根、御坂、麦野、アウトー』
垣根「だから何でビンタなんだよ!?」
御坂「何よ(物理)って……」
麦野「いいビンタだったわね、手首のスナップが良く利いてたわ。
首の据わってない赤ん坊とかに喰らわせたら本当に寿命中断になるかもね」
食蜂「冷静に怖い分析するのやめましょうよぉ……」
一方通行(布束……あンなキャラじゃなかったはずだが……疲れてンのか?)
バチーン!!
垣根「おごおぉぉぉ!!!」
御坂「いやあああぁぁ!!!」
麦野「あぐうぅぅ!!!」
上条『何で今ビンタされたの!?しかもすっげー痛ぇし!!』サスサス
布束『あなた私より年下よね?長幼の序は守りなさい。タメ口は感心しないわ』
上条『……俺、のっけからタメ口とかの比じゃないくらい酷い事されたと思うんだけど』
布束『……』ス
上条『無言で構えないで!?わかった!わかりました!俺が悪かったです!!もうタメ口利きません!!』ヒィッ
布束『わかればいいの。well 私はそろそろ行くとするわ』
上条『はぁ!?本当に何しに来たんだあんた!!?』
布束『タメ口禁止』ブン
パチーン!!
上条『はぼぁ!!』
デデーン♪
『一方通行、垣根、御坂、アウトー』
一方通行「ストレスでも溜まってンのか布束……」ククク
垣根「もうそろそろビンタはやめてやれよ、かわいそうだろ」ケラケラ
御坂「酷い、理不尽過ぎる……なのにどうしてアイツがぶたれてる姿はこんなに笑えるんだろう……」クスクス
麦野「また美琴の腹黒いところが出てきたわね」
食蜂「これは腹黒いって言うかもう普通にドス黒いんじゃないかしらぁ」
バチーン!!
一方通行「きえァァァァ!!!」
垣根「ごべえええぇえ!!!」
御坂「うぃああぁぁぁぁ!!!」
上条『うぅ……ふ、不幸だ……』
布束が診察室から出て行った後、上条は項垂れながら誰に聞かせるでもなくぽつりと呟く。
立て続けに理不尽なビンタを喰らいまくった彼は確かに不幸だと言えるかもしれない。
だがしかし、ちょっと視点を変えると御褒美だと言う見方も出来るのではないでしょうか!?
上条当麻の本当の不幸は彼にマゾヒスト属性が無かった事かもしれない。
上条『くそ、土御門め……何が『楽なバイトがある』だ、騙しやがったな……』
垣根「バイトなのかよコイツ」
一方通行「バイトの医者とか怖すぎるわ」
麦野「そもそも引き受けんなよ」
御坂「て言うか本当に診察受けに来た人がいたらどうするんだろ」
食蜂「診察や治療が本当に必要な人は本物のお医者さんの所に回されるんじゃない?」
上条『あーもう、今からでもこのバイトキャンセルしたり出来ねーかな……
でもここまで酷い目に遭って今更バイト代も貰えず帰るのは……』ウーン
<コンコン
上条『あ、はいどうぞー!……次こそまともな患者でありますように』
<ガチャ
結標『こんにちは』テクテク
一方通行「……ッッ」グ
食蜂「ま、またこの人……」ク
垣根「やべぇ、もうこいつが出てきただけで笑いそうになる……」
御坂「あ、アイツ襲われたりしないわよね……?」
麦野「ショタじゃないから大丈夫でしょ?」
結標『……あなたが医者なのかしら?他にはいないの?』キョロキョロ
上条『あぁうん、俺一人だよ』
結標『……』
上条『えーっと、どんな用件で……』
結標『……どうして』
上条『はい?』
結標『どうしてお医者さんが可愛いショタっ子じゃないの!?こんなの絶対おかしいわよ!!』ブゥン
ペチーン!!
上条『ぶげぁ!!?』バタン
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「おかしいのはオマエの脳味噌だろォがァ!!」
垣根「マジで理不尽の権化だなこのショタコンは……」
麦野「て言うか何で皆して示し合わせたようにビンタ喰らわせてんのよ……」
御坂「い、今までも酷かったけど今のビンタは本当に酷いわね……」
11111号「と言いつつ肩をひくつかせている鬼畜お姉様であります、
とミサカは想い人がシバかれているのを見て爆笑しているお姉様のドSっぷりにドン引きします」ウワ
御坂「は、はぁ!?何言ってんのよ!わ、私は別にあいつの事なんか……な、何とも思ってないし……」
食蜂「わー御坂さんかわいーあざとーいムカつくー」
御坂「あ?」イラッ
バチーン!!
一方通行「ぎゃあァァァァ!!!」
垣根「ほわぁ!!!」
御坂「ひゃぐッ!!!」
麦野「ぐげ!!!」
食蜂「ほむぅ!!!」
上条『何なんだよもうどいつもこいつも!!一体俺が何をしたって言うんだ!?
って今の人もういねぇし!?帰るのはえーよ何しに来たんだよ!?』ウガー
上条『………はぁ、安請け合いなんてするもんじゃないな……医者ってこんなに大変なのか……』ハァ
一方通行「いやオマエ医者の仕事何一つしてねェから」
垣根「サンドバッグになってるだけじゃねぇか」
御坂「お医者さんが患者さんにいきなりビンタされる確率ってどのくらいあるのかな?」
麦野「限りなく0に近いと思うわよ?」
食蜂「て言うかこの人除いたら0じゃないかしらぁ」
上条『もういっその事、鍵かけて居留守でも使っちまおうかな……
どうせろくな患者が来ないだろうしそれでもいい気がしてきた……』
<コンコン
上条『うわっと!?か、患者か?どうする、居留守を……』
<コンコン
上条『……何て、そんなわけにもいかねーよな。バイトとは言え今の俺は一応医者なんだし、
本当に診察や治療が必要な人が来たのかもしれないしな』
<コンコンコン
上条『はいはーいどうぞー!入っていいですよー!』
<ガチャ
『見つけたじゃん、上条……』カツカツカツ
上条『黄泉川先生?どうしたんですか……って何か怒ってません?』
黄泉川『上条……お前学校サボってこんな所で何遊んでるじゃん?』ギロ
上条『サボってって………え、えぇぇ!?が、学校に話はついてるから安心しろって土御門が言っt』バチーン!
言い訳する上条の言葉が終わらぬ内に黄泉川の平手が彼の頬に飛ぶ。どこかで見た光景である。
本日七発目のビンタを喰らった上条は『やっぱりな』とでも言いたげな、
何かを諦めたような暗い表情で黄泉川を見つめ返した。
黄泉川『どうして、学校サボったじゃん?』
上条『……あの、『学校に話はついてる、むしろ社会勉強の一環として学校が推進してるバイトだ』って土御門g』バチーン
黄泉川『どうしてサボったじゃん?』
上条『土御門g』バチーン
黄泉川『どうしてサボった?』
上条『土御k』バチーン
黄泉川『どうしてじゃん?』
上条『土御門に騙さr』バチーン
上条『が、学校に話はついt』バチーン
上条『社会勉k』バチーン
上条『土m』バチーン
上条『t』バチーン
黄泉川『言い訳ばかりするな!!おら!こっち来るじゃん!!』ガシ
上条『いやあああぁぁぁ不幸だあああああああ!!!まだバイト代も貰ってないのにいぃぃぃ!!!』ズルズルズル
理由の説明すらさせて貰えず、散々ビンタを喰らわされた上に『言い訳するな』と理不尽に怒鳴られ、
その挙句に上条は首根っこを掴まれてズルズルとカメラの範囲外へと引きずられて行く。
彼の姿と悲痛な叫び声が完全に画面からフェードアウトしたところでDVDは途切れ、ザーザーと砂嵐のような映像が流れ始めた。
11111号「終わりです、とミサカはDVDを停止させます」ポチ
デデーン♪
『全員、アウトー』
垣根「終わりかいいいぃ!!!」
一方通行「結局医者らしい事何一つやってねェ!!!」
御坂「わかってたのに……こういう流れになるってわかってたのに……ッ」
麦野「ダメね、このフルボッコにする流れは何度見ても耐えらる気がしないわ」
食蜂「人の顔って何度もぶつとあんなに変形しちゃうのねぇ……」
バチーン!!
一方通行「ぬあああァァァァ!!!」
垣根「ぐぎああぁぁあああ!!!」
御坂「やだあああぁぁぁ!!!」
麦野「うおぁあああああ!!」
食蜂「よもぎっ!!!」
人物名鑑
上条当麻(かみじょう とうま)
皆大好き上条さん。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』というあらゆる異能を打ち消すチートな右手と
かっこいい決め台詞(笑)を持つ禁書の主人公。ようやくちゃんと登場したと思ったら相変わらずこんな扱いです。
ちなみに特徴的なウニ頭は天然ではなく、毎日きちんと整髪料を使ってセットしているらしい。どんな判断だ。
基本的にめんどくさがりだが困っている人は見過ごせないというラノベのテンプレート的な性格で、
本SSでも一方通行に酷い事された御坂の為に奮闘したり、他人を気遣うような旨の発言もしているのだが……
part1の頃から何度も、隅っこの方でこっそり被害に遭っており、まるで死んだかのような描写もされていると言うのに
(て言うか実際に『お亡くなりになった』だの『消し飛んだ』だの『世界から姿を消した』だの書かれてるのに)
しばらく時間が経つと何事もなかったかのように五体満足で普通に登場してくる。本SS屈指のホラーキャラである。
しかしpart2中盤からは御坂の尻にそげぶをぶちこんだり白井の顔面が陥没するまでそげぶを喰らわせたりと
それまでの扱いとは一転して、ネジの外れた危険なそげぶマシーンと化す。(一応暴れた後はきっちり制裁も喰らっていたが)
今回、part2での暴走のツケを払うかのように怒涛のごとくビンタを喰らいまくった。まだまだ生温いわ!
白井黒子(しらい くろこ)
酷い名前である。親は絶対ギャグで付けただろこの名前……
御坂の後輩であり彼女の事を敬愛してやまないが、本SSでは禁書原作とは違って元来は品行方正なお嬢様であり、
御坂に対するスキンシップもごく普通のもので、下ネタなども苦手であった。
が、ある日、御坂が白井に慕われていることが面白くない食蜂が遊び半分で白井の思考を弄くり、
その結果彼女はネジの外れた変態淑女へと成り下がってしまう。(ここまで本SSの裏設定)
それからと言うもの、一方通行のイヤガラセに乗じて御坂の下着を盗んだり
おこぼれ欲しさから一方通行に御坂の情報を売り渡したりと本能に忠実にやりたい放題であった。
part2の中盤、上条さんのそげぶを喰らった事で食蜂の呪縛が解け一度はマトモになったものの、
直後に一方通行の能力によって理性を破壊され、結局変態淑女に逆戻りしてしまった。
その後、終盤で再び上条さんのそげぶを喰らってマトモになったのだが、
テンション上がった上条さんにそのまま顔面を殴り続けられ、取り返しのつかないレベルで脳細胞を破壊されてしまい、
変態淑女状態のまま性格が完全に固定されてしまう事となった。本SSにおける最も不幸な人候補である。
まぁ今は幸せそうだし別にいいんじゃね?
布束砥信(ぬのたば しのぶ)
読めないよ下の名前!!奇抜でもいいからせめて読みやすい名前であれよ!!
学園都市最高峰の学校である長点上機学園の三年生。三年生、意外と年長者である。
ウェーブがかった黒髪にギョロ目の三白眼というあまり一般受けしそうにない外見でありながら
普段着に黒っぽいゴスロリ服を着用するという極めて強靭な精神力の持ち主である。個人的にはありだと思いますけどね!
格好はともかく、性格的には本SSでは珍しい常識人枠に所属するキャラであり、
理由はどうあれ絶対能力進化を凍結した一方通行に感謝の念を抱いていたりもする。
若年ながら学習装置を作り上げ、それを用いた妹達への脳内情報の入力の監修を行っていたほどの才女であり、
つまり11111号みたいのが生まれたのはこいつのせい。常識人ぶっててもこいつのせい。
「寿命中断(物理)!!」とか言って上条さんを張り飛ばしていた姿こそが彼女の本性なのかもしれない。
そもそも超電磁砲原作からして「タメ口を利いたから」と言うしょうもない理由で
初対面の御坂にローリングソバットをぶちかますような人である。そんなのが常識人枠とかちゃんちゃらおかしいわ。
誰も覚えてないと思うが、本SSにおいて彼女はお笑い好きでかつお笑いに凄く弱いという設定があり、
今回の笑ってはいけない学園都市の企画にも恐らく嬉々として参加していると思われる。
黄泉川愛穂(よみかわ あいほ)
巨乳でジャージで垂れ目で巨乳でポニテでサバサバ系で巨乳で子供思いな巨乳熱血体育教師。あと巨乳。
警備員に所属しており、レベル3程度の相手なら武器を使わずに鎮圧してしまう程の実力者。
上記した通り子供思いの熱血教師なのだが、それ故に教育が行き過ぎてしまう事もあり、
卑劣な言い逃れをしようとする上条によくビンタを喰らわせている。(禁書原作ではそのような事は一切ありません)
基本的に彼女の出番=上条がビンタされる、と捉えてもらっても構わない。
と言うかpart2の初登場時から本当にビンタしかしてないのでここで解説する事もあんまりない。
上条さんがあまりにも可哀想だと思う方もいるかも知れないが、愛の鞭なので問題はないのである。
11111号「とーちゃくです!とミサカは小ジャンプして一行を振り返ります」ピョン
御坂「もう夜も遅くなってきたってのに何でそんなにテンション高いのよあんた……」
一方通行「俺らが辛そうにしてンのが嬉しくて仕方ねェンだろォよ」ケッ
垣根「んで、ここは……」
DVDを見終わった一行がげんなりとした表情のまま次に連れてこられたのは手術室の隣に位置する小部屋であった。
その部屋の手術室に面した壁際には大きなガラス窓が備え付けられており、
そこから手術室内の様子を眺めることが出来るようになっている。
要は研修医や医学生の為に用意された手術の見学ルームといったところなのだろう。
わざわざそんな所に案内されたということは――
11111号「この部屋の内装を見ればなんとなく察しはつくと思いますが、
皆さんにはこれから行われる外科手術の見学をしていただきます、
とミサカはガラス越しに手術室を指差しながら説明します」
食蜂「え、えぇぇ……外科手術って血が出たりするのよねぇ?私そういうの苦手なんだけどぉ……」
11111号「そんな事では立派な医者にはなれませんよ!とミサカは及び腰になっているみさきちに活を入れます」
麦野「別に医者になる気はねぇっての。まぁ私は血とか内臓とか気にならないタイプだけどさ」
御坂「麦野さんはむしろそういうの好きだもんね……そればっかりは理解出来ないわ」
麦野「えー、なんて言うかこう、血が噴き出したりしてるの見てると興奮しない?」
一方通行「血ィ見て興奮するとかどこの戦闘民族だよオマエ」
垣根「今更麦野の趣味嗜好をどうこう言うつもりもねぇが、
ホルモン屋でスプラッタ映画の話はじめやがった時は流石にどうしようかと思ったわ」
麦野「モツ食べながらモツの話するってのも中々乙なもんだったでしょ?」
垣根「どこがだよ。周囲の客が一斉に出て行くわ絹旗が半泣きになるわ浜面が吐くわの地獄絵図だったじゃねぇか」
御坂「うわぁ……」
食蜂「……私第四位さんとだけは一緒に食事に行きたくないわぁ」
麦野「はぁ?そもそもお前なんざわざわざ食事に誘わないっての」
食蜂「えぇ!?酷いわ第四位さぁん!!私達……ここにいる5人は戦友じゃなかったのぉ!?」
一方通行「まだ言ってンのかそれ」
垣根「違ぇつってんだろアホ」
麦野「んっとにめんどくさいわねこいつ」
御坂「てか元々仕掛け側として出てきたくせに今更何が『戦友』よ?」
食蜂「ひどぉい……」
11111号「みさきちをいじめるのはそんなもんにしといてください、キリがないんで。
それよりほら、そろそろ手術が開始される時間ですよ、
とミサカは時計を確認しつつ手術室へ注意を促します」
言いつつ11111号が手術室の方を指差すと、調度そのタイミングで手術室の大扉が開き、
患者を乗せたストレッチャーが、ナースに扮した妹達により運び込まれて来た。
患者はそのまま即座に手術室のベッドへと移されるが、どうやら意識は無いようで、
その目は固く閉じられており、ぐったりと全身の力も抜けたままの状態となっている。
垣根「なぁ、あの患者……」
御坂「ん……」
患者を視認した瞬間、レベル5の一行は眉間に皺を寄せ、目を細めた。
と言うのも見覚えがあったからだ。その患者に、そのウニのような特徴的なツンツンの髪形に、
その幸薄そうな三下顔に。
上条「」
そう、たった今運び込まれて来た患者は、食堂で彼らの為に犠牲となったはずの上条さんであった。
食蜂「あっれぇ?あの人……」
麦野「……あいつ消し飛ばなかったっけ?何で五体満足で、ってか外傷一つ無い状態で寝てんの?」
一方通行「俺が知るか」
一行が、まるで新品に取り替えたかのように傷一つ無い身体の上条さんを前にして目を丸くしている中、
手術室の大扉が再び開かれ、一人の男が腕組をしたまま室内へ足を踏み込んでくる。
その姿を見た垣根の表情が硬直し、彼は無意識の内に一歩後ずさる。
学園都市のナンバー2、準最強の超能力者であるはずの垣根が、姿を確認するだけで圧倒される存在。
緑色の手術衣を身に纏っているにも関わらず、何故かその上から白い学ランを羽織り、
あまつさえ白い鉢巻まで締めているという謎の服飾センスを持つその男こそは、
超能力者の第七位、学園都市の誇る暴走機関車、削板軍覇その人である。
11111号「あちらが当医院一の名執刀医、削板先生です、とミサカは簡潔に紹介します」
垣根「で、出やがったか、ついに……」
一方通行「あァうン、ご愁傷様垣根くン」
垣根「あ?」
麦野「第七位が出てきたって事はそういう事でしょ?安らかに眠りなさい垣根」
垣根「待て待て待て!!まだそうだと決まったわけじゃねぇだろ!?」
御坂「あ、あの、うん、頑張って垣根さん」
垣根「何その後ろ向きな応援!?何を頑張れってんだ!?」
食蜂「第二位さんのお尻に、第七位さんのすごい○ン○が……」ゴクリ
垣根「『ゴクリ』じゃねぇよ!!その伏字やめろつってんだろうが!!!」
暗い未来を想像しテンパる垣根だったが、当の削板はそんなやり取りをしている一行を見向きもせず、
腕組をしたままベッドに寝かされた上条を一瞥すると、手術の準備をしているナース服の妹達を見渡し、小さく頷く。
削板「よし、手術開始だ!!根性で治すぜ!!」
一方通行「いや技術で治せよ、根性関係ねェだろ」
御坂「治るものなの?根性で……」
麦野「手術前の医者が根性論とか精神論語ってたら嫌過ぎるわ」
垣根「……」
食蜂「どうしたの第二位さぁん?何だか表情が暗いけどぉ」
垣根「話しかけんな。第七位の注意を引かないように空気になってんだよ……」コソコソ
一方通行「おい第七位!ここに垣根がいるぞ!!」オーイ
垣根「テメェ!?」ビクッ
一方通行は大声を出して削板の注意を垣根に向けようとするも、
削板はそんな彼らのほうを見向きもせずナース服の妹達に何事か手術に関する指示を出している。
無視された形となった一方通行が不機嫌そうに舌打ちする横で、垣根は一先ず胸を撫で下ろした。
削板「よし、まずは麻酔だ!!根性入れてブッ刺してやれ!!」
「了解です、とミサカは気を失っている上条当麻の脳天に麻酔注射を突き刺します」セイ
上条「」プス
一方通行「だから根性関係ねェだろ」
御坂「麻酔って頭に刺すものだっけ……?」
麦野「その辺が根性入ってるところなんじゃない?」
削板「根性が足りん!!もっとしっかり根性入れて刺せ!!」クワッ
「……了解です!!とミサカは大声で答えつつ渾身の力を込めて注射を突き刺します!」ハァ!
上条「」ブスリ
削板「よし!ナイス根性だ!!」
垣根「よくねぇよ!いやよくねぇよ!注射針が根元までブッ刺さってんじゃねぇか!!」
食蜂「麻酔注射二本も打ったけどぉ、麻酔薬の過剰摂取ってよくないはずよねぇ?」
11111号「大丈夫ですよ、精々血圧が下がるくらいです、とミサカは些細な問題を笑顔でスルーします」
上条「」ビクンビクン
「先生、麻酔が効いてきたようです、とミサカは患者に人工呼吸器を接続しながら報告します」
削板「おう!メスをくれ!」
一方通行「メス……いよいよ本格的に手術開始か」
食蜂「ほ、本当に切るつもりなのかしらぁ?」
麦野「第七位にメスを使った手術なんて出来んのかねぇ?」
垣根「つーか何の手術なんだこれ?」
御坂「そ、それより何かアイツ痙攣してるんだけど大丈夫なの!?」
11111号「大丈夫ですよ、血圧が下がっているだけです、とミサカは引き続き笑顔で静観します」
一方通行「痙攣するほど血圧下がるってやべェンじゃねェか?」
「どうぞ、メスです、とミサカはメスを差し出します」ス
削板「根性が足りん!!やり直せ!!」
「お受け取りください!メスです!!とミサカは大声を出しながらメスを差し出します」
削板「まだだ!!もっと根性を出せ!!お前はそんなもんじゃないはずだ!!」
「メスです!!!とミサカは声を振り絞ります!!!」
削板「お前が雌なのは知ってる!!それより早くメスを渡せ!!」
「いい加減にしやがれ時代錯誤の白ラン野郎が!!とミサカはメスを逆手に持って削板軍覇に突き立てます」ブン
削板「ぐああああああ!!!」ブス!
デデーン♪
『一方通行、垣根、御坂、麦野、アウトー』
一方通行「あァー、ぶっすりいったなァアレ……」ケラケラ
垣根「刺さるもんだなぁ」ククク
御坂「さっさとメス受け取ってあげないから……」ハハハ
麦野「流石は美琴のクローンだけあって結構平気でエグい事やるわね」ケケケケ
御坂「私のクローンだけあって、ってどういう意味よ?」
食蜂「い、いやちょっと笑ってる場合なのぉ?第七位さんの肩口に思いっきりメスが刺さってるんですけどぉ……」
一方通行「問題ねェ、第七位ならあの程度5秒で治る」
垣根「むしろ刺さった事が驚きだわ、てっきりメスの方が折れるかと……」
食蜂「えぇー……」
バチーン!!
一方通行「なあァァァァ!!!」
垣根「へぶし!!」
御坂「ひぁっ!!!」
麦野「うぎ!!!」
削板「痛い……」サスサス
「おらさっさとメス受け取れや、とミサカは血塗れのメスを削板軍覇に突きつけます」ス
削板「おう……いい根性だったぜ……」ガシ
一方通行「よォやく受け取りやがったか」
垣根「自分の血でてかってるメスを笑顔で受け取るなよ……」
麦野「何で刺されたのに笑顔になってんだ?」
削板「あ、ダメだこのメス曲がってやがる、根性なしだ。使い物にならねーな」ポイ
「お前の身体が無駄に硬いせいで曲がったんだよ……とミサカはメスを投げ捨てた削板軍覇を横目で睨み付けます」
御坂「折角受け取ったのに即効で捨てた!?」
食蜂「まぁ第七位さんの血が付着した時点で使い物にはならないでしょうけどぉ……
それよりメスの根性ってなぁに……?」
削板「そもそもメスに頼るなんざ根性なしのやることだ!!これより徒手による手術を敢行する!!」
「マジで!?……まぁいいや、もう好きになさってください、とミサカは諦めの境地に到達します」
垣根「好きにさせちゃダメだろ!?素手で腹捌く気かよ!?」
一方通行「第七位ならそンくらい普通にやれンじゃねェか?」
御坂「や、やれるやれないの問題じゃないでしょ!?見たくないわよそんなの!!
て言うか手術って素手でやって大丈夫なものなの!?そんなことしたらアイツ死んじゃうんじゃ……」
11111号「なぁに大丈夫ですよ、世の中には心霊手術という素手で患者の体内をいじくる手術があってですね、
痛みも出血もない画期的な手術だそうですよ、削板軍覇もそれを行うつもりなのでしょう、
多分……とミサカは一行を安心させます」
御坂「そんな胡散臭い手術なんて逆に不安なんだけど!?」
麦野「はぁ?痛みも出血もない?何だそりゃ、いいから私に血を見せろよ」
食蜂「どれだけ血が見たいのよ第四位さん……第七位さんの肩から流れてる血で満足しましょうよぉ……
ってあれ、あの人もう血が止まってる……?」
一方通行「言ったろ、5秒で治るって」
食蜂「に、人間じゃない……」ウワァ
垣根「人外萌えとか言い出すんだろどうせ?」
食蜂「言わないわよ!?あなた私を何だと思ってるわけぇ!?
て言うか第七位さんは『人間以外のナニか』であって『人外』じゃないわよぉ!!」
垣根「でもそこの区別はしっかり付けるのな」
御坂「人間以外と人外って何か違うの?」
11111号「『人間以外』ってのはただの罵倒文句ですね、
『オマエ人間じゃねぇ!』とか『このヒトデナシ!』みたいな感じの、
とミサカは無知なお姉様にドヤ顔で解説してみます」フフン
御坂「あぁ、つまりあんたとか一方通行みたいな奴の事ね」
一方通行「なンとでも言え」ケッ
11111号「そう、ミサカ達は所詮単価にして18万円のただの人形ですから……とミサカは寂しげに微笑んでみます。
……でも、お姉様にだけは、ミサカ達の事を人間だと認めて欲しかったです」クゥ
御坂「あぁ嘘嘘!あんた達は人間だから!だからそんな悲しげな顔しないで!!
て言うか妹達全員巻き込んでその設定持ち出すのズルくない!?」
一方通行「もォ妹達全員『人間じゃねェ』みてェな扱いでいいと思うけどな、俺は」
垣根「そうだよな、こいつだけじゃなくて他のクローンどもも嬉々としてこの企画に乗ってるわけだしな……
やっぱクローンども全員ヒトデナシなんじゃねぇか?」
食蜂「となると大本の御坂さんもヒトデナシでいいわよねぇ?」
御坂「良くない!むしろあんたらがヒトデナシよ!!
それで!『人間以外』は良くわかったけど『人外』はどういうものなの!?」
麦野「『人外』って言うのは主に動物や妖怪なんかを指す古語なのよ。
サブカル的にはヒューマノイドなんかも含まれるみたいだけど。
んで『人外萌え』って言うと大体がケモナーの事ね」
垣根「オマエさ、何気にそういうの詳しいよな」
食蜂「……」ジー
麦野「一般常識よ一般常識。第五位はこっち見んな、私はお前の同類じゃねぇから」
御坂「けもなーって何?」
一方通行「ン、一言で言うと動物好きの事だ」
垣根「間違ってねぇけど何か違うだろ……」
御坂「へぇー、動物好きの事をケモナーって言うんだ……なら私もケモナーね」
一方通行「プグッ」
垣根「ホフッ」
麦野「ブフ」
食蜂「ホポショイ」
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、食蜂、アウトー』
御坂「な、何よ?何で笑うのよ!?わ、私動物好きだし、間違ってないわよね!?」
一方通行「あァ間違ってねェ、間違ってねェよ、オマエは立派なケモナーだ」ケラケラ
垣根「やめろ一方通行、立派なケモナーとか言うのやめろ……」クククク
麦野「そう、そうね、立派なケモナーになれるといいわね美琴……」プククク
食蜂「が、学校の皆やお友達にも宣言するといいわよぉ?きっと羨望の目で見られるから」クスクス
御坂「な、何なのよ……私が発電系能力者で動物と触れ合えないから動物好きを名乗るのがおかしいってわけ!?」キッ
11111号「うん何かもうそういうことでいいや、
とミサカは愉快な勘違いをしているお姉様を腹を抱えながら生暖かい目で見つめます」ケケケケケ
バチーン!!
一方通行「おおォォォゥ!!!」
垣根「ひょぐぁ!!!」
麦野「がうぁぁぁ!!!」
食蜂「まそっぷ!!」
※ケモナー:ケモノが好きな人の事。性的な意味で。
御坂「何よ皆して笑って……例え触れ合えなくても私は列記としたケモナーなんだから!!」
一方通行「ハボァ」
垣根「オウフ」
麦野「ケフッ」
食蜂「コポォ」
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、食蜂、アウトー』
一方通行「列記としたケモナーとか言うのやめろ!」ゲラゲラ
垣根「無知って怖ぇな……」ケケケケ
御坂「何よ何よまた笑って!!いいわよ!なら今度私がどれだけケモナーなのかを見せてあげるわよ!!」
麦野「それは人に見せるもんじゃないわ美琴……」ククククク
食蜂「いえ、どんどん見せていくべきじゃないかしらぁ?
御坂さんは動物好き……いや、ケモナーだって言うことをもっとアピールするべきよぉ」クフフフフ
御坂「そっか……発電系能力者って傍から見ると動物を避けてるようにも見えるもんね……
私これが終わったらもっともっとケモナーだって事をアピールするわ!」
食蜂「ゴフ!……う、うん、がんばってね御坂さん、応援してるわぁ……」ククククク
バチーン!!
一方通行「おゥゥ!!!」
垣根「くああぁぁぁ!!!」
麦野「ぬううぅぅ!!!」
食蜂「へぬぅ!!」
後日、友人達の前で動物好きをアピールしようとした御坂は
野良猫に向かって手を伸ばしながら「私ケモナーなのよね」などと口走ってしまい、
その結果、伸ばしていた手を友人の一人に全力ではたかれた上「この変態!」と罵倒される事となるのだが
それはまた別のお話である。
削板「よし、それじゃいっちょ根性入れて手術開始といくか!」コキコキ
上条「」
御坂がケモナーだと名乗りあげている横でいよいよ素手による手術は開始されようとしていた。
無論、削板に心霊手術の心得などない。というか心霊手術そのものが眉唾である。
つまり彼は本気で手刀をメスに見立てて手術を行うつもりなのだ。
まぁ手術室の外には万が一に備えてカエル顔のお医者様がスタンバイしているので
削板が何かやらかしても多分大丈夫だろう。
削板「んじゃいくぞー……うん?」ハタ
削板の手刀が上条の腹部を貫かんとしたまさにその時、
上条と繋がっているモニター心電図からピーピーとけたたましい音が鳴り響き、それに気を取られた削板が動きを止めた。
上条さん危機一髪、と言いたいところだが、モニター心電図のアラームが鳴っているということは……
削板「何で鳴ってるんだこれ?」
「大変です先生!患者の血圧が下がっています!とミサカは患者がかなりまずい状態である事を削板先生に伝達します」
削板「な、なんだと!?」
垣根「麻酔のせいか……」
麦野「麻酔のせいでしょうねぇ」
一方通行「だァから痙攣するほど麻酔打つのはまずいつったじゃねェか」
<ピーーー……
「心肺停止状態です!とミサカは患者の状態が非常によくない事を伝達します」
削板「なにぃ!!?」
食蜂「きた!心肺蘇生シチュきた!!人工呼吸よね!そうなのよねぇ!?」
一方通行「落ち着けこの腐れ脳味噌」
御坂「ちょぉ!?死んだ!アイツ死んじゃった!?」
11111号「ご安心くださいお姉様、すぐに心肺蘇生を行えば十中八九助かりますよ、
それにそっちのモヤシ男だって前回心停止してたのにピンピンしてるじゃないですか、
とミサカはわたわたしているお姉様に気休めを言ってみます」
御坂「気休めなの!?」
上条「」ピー
削板「心臓マッサージだ!急げ!!根性入れろ!!」
「了解です!とミサカは患者の胸部を圧迫します」グッグッ
食蜂「おおぉぉぉい!!そこは人工呼吸でしょうがああああ!!!
心臓マッサージするにしても第七位さんがやりなさいよぉ!!女は邪魔なのぉ!!」ガン
垣根「おい誰かこいつの口塞げ」
一方通行「第四位、オマエボールギャグとか持ち歩いてねェのか?」
麦野「持ち歩いてるわけねぇだろ、ぶっ殺すぞ」
「ふん!ふん!とミサカは掛け声をかけながら心臓マッサージを繰り返します」グッグッ
上条「」ピー……
削板「えぇい交代しろ!そんな根性じゃダメだ、俺がやる!!」
食蜂「きたか……ッ!!」
御坂「あんた人生楽しそうよね……」
一方通行「……第七位の心臓マッサージか」
削板「うおおぉぉぉぉ!!!根性だああああああ!!!」ドン!
上条「ぼふぁああぁぁぁぁ!!!」ブシャァァァ
御坂「いやああああぁぁぁ!!!」ビクゥ
食蜂「血!血を吐いてるうぅぅぅぅ!!!」
一方通行「第七位が全力で心臓マッサージやりゃァこうなるよなァ……」アーア
垣根「よかったな第五位、オマエの望んだ通りになって」
食蜂「望んでないわよこんなのおおぉぉ!!!」ヒィィィ
麦野「あぁぁ、人工呼吸器が吹っ飛ぶほど吐血してる……堪らないわ……」ホォ
削板「根性!根性だ!!」グッグッ
上条「コポッ!クプ!………グフ」ガクリ
削板「ぬん!ぬん!!ぬぅん!!」グッグッグッ
上条「」ビクンビクン
<ピー……………
「……ご臨終です、とミサカ削板先生の肩に手をかけつつ報告します」
削板「く……ちくしょう、何がレベル5だ!!俺は、人一人救えないのか……!!」ガクリ
一方通行「トドメ刺したのオマエだよ」
垣根「そもそも何の手術だったんだ?」
御坂「え、いや、死って、え?」オロオロ
麦野「とりあえず手ぇ合わせときましょうか」ナムナム
食蜂「ご愁傷様ぁ」ナムナム
削板「……すまねぇ、一人にしてくれ」
「……了解です、とミサカは項垂れる削板先生を振り返りつつ退室します」テクテク
削板「……ちくしょう、ちくしょう!!」ドン
上条「」シーン
一方通行「おい名執刀医って設定どこいったンだ?腹割く前に患者が死ンだぞ?」
垣根「患者の死に悔しがってるところだけ見るといい医者っぽく見えないこともないよな」
御坂「いやあの、え、ちょっと、アイツほんとに死んだの!?」
11111号「大丈夫ですお姉様、どうせまた後で何事もなかったかのように出てきますよ、
とミサカはお姉様の肩に手を置きつつ慰めます」ポン
御坂「あ、う、うん、そうよね、晩御飯のときも消し飛んでたしね」ホッ
食蜂「ほっとするところおかしくなぁい?」
麦野「あいつはどういう生き物なわけ?大量のクローンでも用意してあんの?」
削板「くそ、くそ!!ちくしょおおおぉぉぉぉ!!!」
上条「」
ベッドに突っ伏し肩を震わせながら唸る削板。これは演技ではない。
彼は患者を救えなかった事を本気で悔いているのだ。もっと自分に根性があれば、
自分が強ければ、きっとこんな結末は避けられたはずだと。
削板「ちくしょう……すごパだ……」ポツリ
一方通行「ン、今何か言ったぞ?」
垣根「え?」
麦野「何か言ったわね」
削板「第二位、すごパだ……」
垣根「……え?」
デデーン♪
『垣根、すごパー』
垣根「は……はああああああああああああ!!!!!!???」
一方通行「ゴフッ」
御坂「プッ」
麦野「ゴホッ」
食蜂「フフ」
デデーン♪
『一方通行、御坂、麦野、食蜂、アウトー』
垣根「ちょっと待って意味がわからない!!意味がわからないよ!!!」
一方通行「落ち着け、口調がおかしいぞ」ククククク
垣根「これが落ち着いていられるかよ!!!」
麦野「あー油断してたわ、てっきり今回はすごパなしだと思ってたのに」ケケケケ
垣根「つーか今のありなのかよ!?何の脈絡もないじゃん!?」
御坂「ほ、ほら、理不尽と戦うのが医者だってさっきDVDで……」ヒクヒク
垣根「ちょっともうこれ理不尽とかいうレベルじゃないだろ!?」
削板「待たせたな第二位!!さぁケツを出せ!!」
垣根「テメェいつの間にこっちに来やがったあああああ!!!!!」
食蜂「んふぁぁぁぁ!!」ブシャァ
一方通行「……何か腐女子が鼻血噴き出しながらぶっ倒れたぞ」
御坂「ちょ、汚いわねもう……」
麦野「第七位の『ケツを出せ』にノックアウトされたんじゃない?」
削板「はっはっは、いくぞ第二位!」
垣根「おいやめろ!!離せ!!俺が何したってんだあああああ!!!!」
削板「すごい……」グググググ
垣根「ああああああああああああああああ!!!!!!!」
削板「パーンチ!!!!」ヒュッ
満月の夜空に、美しいホームランアーチが描かれた。
人物名鑑
削板軍覇(そぎいた ぐんは)
七人の超能力者の第七位。超能力者として末席に位置するものの、
その席は解析不能な能力を持つ彼の為に設けられた、いわば特別枠のようなものであり、
戦闘能力は一方通行、垣根帝督に匹敵するとも上回っているとも言われる。
解析不能なのはその能力だけでなく、性格も相当ぶっ飛んでおり、
何かにつけて『根性』を引き合いに出す熱血バカ。つーかバカ。ほんとバカ。サヤカチャン!
本SSではとにかくバカの部分だけが強調されており、無邪気に人をぶん殴ったりする怖い人に仕上がっている。
まぁ被害者は主に垣根なので大丈夫だろう。女子供はぶん殴るのは上条さんだけで十分だよ。
ひたすらマイペースで滅多な事では動じず、一度目が会ったら最後、彼の気が済むまで相手をさせられる為、
一方通行や11111号も彼に苦手意識を持っており、それ故イヤガラセの対象となる事もない。
ある意味最強なキャラである。途中で逃げようとするとどこまでも追ってくるらしい。
ちなみにpart1で様々な勘違いが交錯した結果、垣根から心理定規を寝取られたと思われている。
垣根「体中痛ぇ……」
麦野「第七位の野郎は相変わらず滅茶苦茶だったわね」
御坂「病院の壁突き破って飛んでいったのに『体中痛い』程度で済んでる垣根さんも滅茶苦茶だと思うけど……」
食蜂「うぅ、くらくらする……貧血かしらぁ……」
一方通行「オマエも結構洒落にならねェ量の鼻血流してやがったからな、マジキモかったわ」
食蜂「キモいとか言わないでよぉ……」
手術の見学を終えた一行は、吹っ飛ばされた垣根を回収した後、仮眠室へと案内されていた。
そこはベッドと館内放送を告げるためのスピーカー以外には何もなく、
多忙な医者がほんの僅かの休眠を取る為だけに作られた簡素な部屋ではあるが、
それでも彼らにとってはようやく辿りついた安住の地にも等しい場所と言えるだろう。
垣根「があぁぁちくしょう第七位め……能力戻ったら半殺しにしてやる……」
麦野「半殺しで済ますわけ?随分ぬるいわね」
垣根「生かさず殺さず徹底的に甚振ってやるんだよ!」
食蜂「そこから愛が生まれるのよね」キラキラ
御坂「どんな愛よそれ……」
垣根「……第七位の前にこいつ沈めた方がいい気がしてきたわ」
一方通行「同感だ、この腐女子は害悪でしかねェ」
御坂「食蜂がこんなになってんのはあんたのせいでしょうに……」
平穏な一時を噛み締めつつ、一行はベッドでごろごろとしながら雑談を楽しむ。
時刻は既に深夜と呼んでも差し支えない時間帯となっている。ついに、一日が終わろうとしているのだ。
11111号「ところがぎっちょん!そう簡単には終わらせませんよ、
とミサカは腑抜けているレベル5勢の前へ颯爽と姿を現します」ガチャ
垣根「チッ、来やがったか」
食蜂「くぅ、やっぱりまだ何かあるのねぇ……」
御坂「はぁ……まぁこのままあっさり休めるとは思ってなかったけどさぁ……」
麦野「んで、今度は何させられるわけ?ま、大体想像は付くけどさ」
一方通行「深夜の病院ときたらまァやる事なンざ決まってるわな」
御坂「う……ま、まさか、また……」
垣根「あぁ、間違いねぇ……今度こそ枕投げだ」
11111号「違いますよ、あんたどんだけ枕投げやりたいんですか、
とミサカは前回から引き続き枕投げネタを引っ張ってくるていとくんに脱力します」ガク
垣根「何でだよいいじゃねぇかやろうぜ枕投げ」チェッ
食蜂(枕投げ……親しい友人間のお泊り会なんかで行われると言う伝説のスポーツ……)ゴクリ
御坂「何かこいつもちょっとやりたそうにしてるわね……」
11111号「再三言いますが枕投げではありません。んなもんやりたきゃ睡眠時間削って勝手にやってください、
とミサカは枕を抱えているていとくんとみさきちを牽制します」メッ
一方通行「やンねェよ馬鹿、第四位の一人勝ちになる未来しか見えねェだろ」
麦野「私だってやりたくねぇっての。何で寝る前に汗かかなきゃいけないのよ」チッ
御坂「そもそも枕投げするほど広くないでしょこの部屋。布団じゃなくてベッドだし」
垣根「ちくしょう……」
食蜂「……」ションボリ
11111号「はいはい、それでは気を取り直しましょう。
実はこのミサカとした事が休憩室に大事な書類を忘れてきてしまいまして、
これから皆さんにはその書類を取りに行っていただきます、
とミサカは皆さんにやっていただく事を簡潔に説明してみます」
垣根「知らん、自分で行け」
11111号「それじゃ企画になんねーだろアホが、とミサカは不貞腐れているていとくんを罵倒します」
御坂「えっと、休憩室まで行って書類取ってくるだけ?他にしなきゃいけない事とかはないの?」
11111号「えぇ、ありませんよ、とミサカは笑顔で返答します。
ただし、消灯時間を過ぎているため病院内は真っ暗です。転んだりしないように気を付けてくださいね。
それとまぁ病院ですから、幽霊とかゾンビとかなんかそんなんが出るかも知れません、
とミサカは夜の病院の危険性を指摘します」
一方通行「やっぱ肝試し要素は含ンでンのか」
御坂「えぇー……」ヤダナー
食蜂「なぁにが幽霊やゾンビよぉ、そんな非科学的なものいるわけないじゃない」フン
御坂「とか言いつつちょっと震えてないあんた?」
食蜂「は、はぁ?怖がりな御坂さんと一緒にしないでもらえるかしらぁ?
これは、あれよあれぇ……そう、武者震い……」
11111号「ほほう武者震いとな、それは心強い。ではそんな怖いもの大好きなみさきちに朗報です。
深夜の病院には幽霊などの他にも隔離病棟から脱走した精神病患者とか
非合法に製造された戦闘マシーンなどが闊歩していたりするかもしれません、
とミサカは更に危険性を指摘します」
食蜂「ちょ……」
垣根「リアルに危ねぇなおい!?」
御坂「ゆ、幽霊とかよりそっちのが怖いかも……」
一方通行「安心しろ、こっちにゃ第四位がいる」
麦野「どういう意味だテメェ」
11111号「なお、今回は前回の肝試しと違って『驚いたり怖がったりしてはいけない』というルールはありません、
なので精々目一杯怯えて叫んで混乱してミサカ達を楽しませてください、
とミサカは皆さんに笑顔で朗報を伝達してみます」ニッコリ
一方通行「うぜェ……」
垣根「誰が怯えるかバァーカ、幽霊だろうと精神病患者だろうと何でも来やがれ、
今の俺が怖いのなんざ第七位くれぇなもんだ」フン
御坂「どうしてそう自分からフラグ立てちゃうのよ垣根さんは……」ハァ
麦野「実は美味しい役回りだと思ってんでしょ」
食蜂「きっと本当は会いたいけど素直になれないのよぉ。フフ、ツンデレってやつね第二位さん」クス
デデーン♪
『食蜂、アウトー』
食蜂「ほあぁ!!?」ビクッ
垣根「はいはい自爆自爆。学習能力ねぇな、ってのもいい加減言い飽きたわ」
一方通行「つーかこいつは何が悲しくて垣根の絡みなンざ妄想してンだ?」
麦野「まぁ性癖は人それぞれだし、ゲテモノ食いみたいなもんでしょ」
御坂「うぇっぷ、気持ち悪……」
垣根「御坂の反応が正常なのかも知れねぇが、それでも地味に傷つくわ……」
バチーン!!
食蜂「ぺっさぁッ!!!」
11111号「それじゃ皆さん行って来てください、ご検討をお祈りしております、
とミサカは一行を部屋の外へ誘導します」ゴーゴー
11111号に促された一行は渋々と、ある者は欠伸を噛み殺しつつ、ある者は軽く伸びをしながら、
心底だるそうに仮眠室から抜け出していく。そんな彼らの様子を11111号はニマニマと、
いつも通りの悪意が透けて見える笑顔で見送った。
御坂「うわ、ほ、本当に真っ暗ね……」
食蜂「う……これは想像以上に雰囲気あるかもぉ……」
廊下に出た御坂と食蜂の二人があまりの薄暗さに思わずたじろぐ。
無理もない。消灯時間はとうに過ぎているため、当然ながら蛍光灯の明かりは既に消えていて、
頼りになるものと言えば所々に設置された誘導灯から発せられる弱々しい緑色の光のみなのだ。
しかしそのおぼろげな光が逆に夜の病院の非日常性と不気味さを強調しており、
小学生くらいの子供ならこの光景だけでトラウマになってしまうかもしれない。
一方通行「あァクソ、だりィ……」ハァ
垣根「休憩室は確かこっちだったよな?」
麦野「ここからだと結構距離があるわね、めんどくさいわ」
年少二人が雰囲気に呑まれかかっていた横で、一方通行、垣根、麦野の三人は
特段気にすることもなく、ずんずんと廊下を進んでいく。
幽霊や霊魂など一切信じておらず、基本的に怖いものなしで無鉄砲な性格の彼ら三人にとっては
夜の病院の不気味さなど取るに足らない程度のものでしかないのだ。
『薄暗くてムカつくなぁ』とかそんくらいのレベルである。
て言うか一方通行のイヤガラセと麦野の暴力と第七位の理不尽さの方が遥かに怖いよ(垣根談)
御坂「あ、ま、待ってよ」アセ
食蜂「うぅぅ、暗い、転びそう……」ワタワタ
いきなり置いて行かれては堪ったものではない、と御坂と食蜂の二人も慌てて三人に続く。
かくして本日最後のお仕事はスタートされた。
食蜂「……多分この暗闇に乗じて何か仕掛けられてるわよねぇ?
隔離病棟の患者がどうのって言ってたしぃ、何だかイヤな予感がするわぁ……」ハァ
一方通行「つっても進まなきゃどうしようもねェしな、サクサク進ンでさっさと終わらせちまうぞ」
垣根「おう、そんで余った時間で枕投げしようぜ」
麦野「やんねーつってんでしょ、話聞けバ垣根」
御坂「本当に垣根さんは何でそんなに枕投げしたいのよ……」
垣根「オマエらこそ何でそんな拒否るんだよ?一方通行に枕ぶつけたくねぇのか?こんな機会滅多にねぇだろ」
一方通行「おい」
麦野「なるほど、何だか突然やりたくなってきたわ」
御坂「ちょっとくらいならやってもいいかも……」
食蜂「うんうん、やってみたいわぁ」
一方通行「おいふざけンな、俺に何の恨みがあンだよオマエら」
垣根「散々俺らにイヤガラセしといて『何の恨みが~』とかマジで言っちゃうオマエがすげぇよ」
麦野「むしろ恨みしかないわ」
御坂「あ、でもさ、一方通行に枕投げつけて大丈夫なのかな?打ち所が悪いと骨とか折れちゃうんじゃ……」
麦野「骨で済めば御の字でしょ。下手すりゃ死ぬんじゃない?」
一方通行「枕ごときで死ぬかボケ。俺は豆腐かなンかか」
垣根「いや、オマエ結構危ないと思うぞ?特に麦野の投げる枕は凶器だからな……」
麦野「あ?」
御坂「そういえば前回垣根さんは麦野さんの投げた枕一発で昏倒してたわね……」
食蜂「ま、枕投げってそんなに危険なスポーツなの?
私はもっとこう、ほのぼのわいわいやるものだと思ってたんだけどぉ……」
垣根「何ぬるい事抜かしてやがる、ありゃ戦争だぞ」
食蜂「戦争……となるとそこから芽生える男達の友情、そしてそれはやがて愛へと昇華されて……」
垣根「行かねぇよ!」
一方通行「どっからでも妄想に持って行きやがるなこの腐女子は……」
ぐだぐだと会話をしつつも一行は順調に夜の病院を進んでいく。
今回は前回の肝試しの時とは違いグループ分けなどもなかった為、5人全員で行動しているわけだが、
その大人数による安心感からか、一行の足取りは非常に軽い。
人数が多いという事実はそれだけで恐怖感を和らげる効果があるのだ。赤信号も皆で渡れば怖くないという奴である。
しかし忘れてはならない。
恐怖が伝染した末の集団ヒステリーやパニックもまた、大人数であるが故に発生するのだと言う事を。
御坂「でも枕投げかぁ……そう言えば前に黒子と」
麦野「シッ!何か聞こえない?」
御坂「え?」
一方通行「ハッ、来やがったか」
不意に麦野が雑談を制すと、それを皮切りに一行は足を止め周囲に注意を巡らす。
麦野の言った通り、微かではあるが確かに物音が聞こえる。
それは彼らの前方、目的地へ続く廊下の先から響いて来ている。
垣根「何か、来るぞ」
食蜂「うぅ、イヤな音ねぇこれ……」
ひたひたと素足で廊下を歩くような足音が、恐怖を煽るかのように、少しずつ、少しずつ近付いて来ていた。
やがて廊下の先にぼんやりと蠢く輪郭が現れるが、距離が離れている事と薄暗さの為、それが何なのかははっきりしない。
ひたひた、ひたひた、ひたひた、ひたひた。それは徐々に近付いてくる。
一方通行「なンだありゃ……」
麦野「不気味ね。パッと見、人っぽいシルエットだけど……」
御坂「ね、ねぇ、隠れたりした方が……ッ!!?」
一行が対応を決めあぐねている内に、ひたひたという歩行音は突如、
ドスドスという地を蹴り駆ける音へと変貌し、加速度的に彼らとの距離を縮め始めた。
そして暗闇の中迫り来るそれは、ついに近くの誘導灯に照らされ、その姿を露にした。
一方通行「うおォォ!!?」
垣根「なんぞ!!?」
御坂「うひゃぅ!!?」
麦野「気持ち悪うぅぅぅ!!!」
食蜂「何よこれぇぇぇ!!!」
奇妙なポーズで走ってくる帝凍庫クンのあまりのキモさに一行は絶叫し、来た道を脱兎のごとく引き返す。
よくわからないが、アレに追いつかれると何かとんでもなくヤバい気がする。
そんな得体の知れない恐怖感と焦燥感に駆られたレベル5勢は、脇目も振らず奇妙な冷蔵庫から逃げ出した。
暗がりからこんなのが突然走ってきたらそりゃ怖い。
一方通行「なンだよアレちくしょうがァ!!!」
垣根「原型作ったのはテメェだろうが!!」
麦野「つーかもはや冷蔵庫の形してねぇし!!!」
御坂「かわいくない!あれはかわいくない!!」
食蜂「何なのあれ!?本当に何なのぉ!?」
叫び声をあげつつ、一行はひたすら逃げる。逃げ続ける。何故逃げなければならないのかはわからないが、
そうしなければならない凄味が新型の帝凍庫クンからは発せられていた。
しかし、逃げても逃げてもヤツの足音は彼らのすぐ後ろをぴったりとついて来ている。
そればかりではない。先程までは一つだった足音が、今は――
御坂「ふ、増えてるうぅぅぅぅ!!!!」
麦野「どっから沸いて出た!!?」
一方通行「うわァァァァ!!!」
垣根「こんなもん量産すんなよおおおお!!!」
食蜂「て言うか何で追ってくるのよぉ!!? あうっ!!」ズテ
徐々に距離を詰めてくる帝凍庫クンへの恐怖で足が縺れたか、或いは日頃の運動不足が祟ってか、
はたまた別の要因があってか、一方通行と並んで最後尾を涙目で走っていた食蜂が小さく叫び声を上げてずっこけた。
そんな彼女に帝凍庫クン達は容赦なく走り寄って行く。
<イヤァァァァコナイデェェェェ!!
御坂「食蜂!!?」
垣根「振り向くな御坂!!あいつはもうダメだ!!」
<ダ、ダレカ!ダレカタスケテェェェェェ!!
御坂「で、でも……!!」
麦野「しっかりしなさい美琴!ここで立ち止まってあんたまで犠牲になっても第五位はきっと喜ばないわ」
御坂「う、うぅぅ……」
<ヒイィィィィィ……
御坂「ごめん、ごめんね食蜂……忘れないから、あんたの事!あんたの趣味は皆に語り継いであげるから!」クッ
垣根「それはやめてやれよ」
一方通行「ハッ、第五位も最後の最後で役に立ったか。身を呈して囮になるたァな」
垣根「血も涙もねぇなオマエ」
<くぁwせdrftgyふじこlp
麦野「とにかく、帝凍庫どもが第五位に群がってる内にここを離れるわよ」
御坂「うん……」
転んだ食蜂を囮にし、一行はペースを落とさず逃げ続ける。
何やら悲痛な叫び声が背後から聞こえてくるがそれも無視。食蜂は犠牲になったのだ……
―――――――――――――――
―――――――――
――――
垣根「……ふぅ、ここまで逃げりゃ大丈夫だろ……」
麦野「何とか撒けたみたいね」
御坂「あー、怖かった……」
垣根「そういや御坂、オマエ帝凍庫クンの事かわいいとか言ってたじゃん?
なのにさっきのは怖かったのか?」
御坂「デフォルトの帝凍庫クンはかわいいけど、あれは怖いし気持ち悪いわよ。
例えるなら八頭身のゲコ太が走って追いかけて来たような感じの嫌悪感が……」
麦野「さっぱりわかんねぇわ、その例え」
垣根「つーかデフォルトもかわいくねぇよ。ゲコ太も」
御坂「えー……」
垣根「しかしどうすっかな、このまま同じルートで休憩室に向かうとまたあいつらが追ってくるだろうし……」
麦野「遠回りになるけど別の階から回り込んで行くしかないみたいね」
垣根「んじゃさっさと行くか、確かあっちに階段があったはずだ」
御坂「そうね、ここでじっとしてるのは危ない気がするし……」
この場に長時間止まっていればその内帝凍庫クンの群れに発見されてしまうかもしれない。
そんな恐怖に駆られた三人は休憩もそこそこに、疲れた身体に鞭打って移動を再開する。
三人。そう、彼らはいつの間にか三人になっていた。
御坂「……ねぇ、そういえば一方通行は?」
垣根「あ?そういやあの野郎いつの間にかいなくなってんな」
麦野「もやしっ子だしね、多分私達のペースに付いて来れなかったんでしょ」
御坂「んー、途中でバテてその辺に倒れてるのかしら?」
少しばかり怯えつつも御坂は逃げてきた道を振り向いてみるが、とりあえず見える範囲に一方通行の姿はない。
小学生レベルの体力しかないあの男の事だ、ひょっとしたら食蜂と同じように
帝凍庫クンの餌食になってしまったのかもしれない。しかし、それを確かめに行く勇気はない。
垣根「まぁどうでもいいだろ、一方通行も第五位もいない方がむしろ楽だ」
御坂「そうね、逃げてる時はその場のノリでちょっと食蜂の事気にかけてみたりしたけど
あいつがどうなろうが正直どうでもいいし」
麦野「あらやだ腹黒いわこの子」
垣根「黒い部分を隠さなくなってきたな……段々可愛げがなくなってきてるぞ」
御坂「な、何よぅ……私可愛いもん……」
いなくなった二人の事をさっさと頭の外に追い出し、
三人は最初と同じように雑談を交わしながらサクサクと病院内を移動していく。
食蜂はどうでもいいとして、一方通行とはぐれたのは彼らにとってはむしろ好都合であった。
あの外道モヤシときたらこんな状況だろうとおかまいなしに、いや、こんな状況だからこそ、
一緒にいれば途中でこの暗闇に乗じて何かしらのイヤガラセを仕掛けて来たに違いないのだ。
食蜂が突然すっころんだのだって、実は隣を走っていた一方通行が
自己保身の為に彼女の足を引っ掛けたんじゃないかと三人は疑っている。
そのような一方通行の身勝手な行動を警戒しなくてよくなったとあって、三人は知らず知らずのうちに浮き足立っていた。
だから、気付かない――
垣根「階段下るぞ、暗いから気を付けろよ」
麦野「ちょっと薄暗いからって転んだりしないわよ、垣根じゃあるまいし」
御坂「そうね、何の変哲もない階段から突然転がり落ちた垣根さんじゃあるまいし」
垣根「うるせぇよ!!何だテメェら人が折角気を使ってやってんのに!!」
「……」ニタァ
――三人の少女達が、階段を下る彼らの姿をクスクスと笑いながら見つめている事に。
「ふふん、結局油断しまくってるわね。これなら驚かすのも楽勝な訳よ」
「クククク、麦野に垣根……この機会にいつぞやのホルモン屋の恨みを超晴らしてやります」
「かきねは何もしてないけどね」
フレンダ=セイヴェルン、絹旗最愛、滝壺理后。途中で殉職した浜面を除いたアイテムの面々が、
前回から引き続き、此度もまた脅かし役として派遣されていた。
絹旗「何もしてない事ないですよ!垣根の奴は私が麦野のスプラッタ話に気を取られている隙に
私が超丹精埋めて焼き上げていたホルモンを超奪いとったんです!!」
フレンダ「……え、それだけ?結局、垣根はその程度の事で恨まれてる訳?」
絹旗「その程度とはなんですか!食べ物の恨みは超怖いんです!」
滝壺「私はそんなみみっちぃきぬはたを応援してる」
絹旗「超みみっちくないです!!」
滝壺「きぬはた、あんまり大声出さないで、気付かれちゃう」
フレンダ「て言うか既に麦野達見失っちゃった訳だけど」
絹旗「な、なんだってー!」
全く使い物にならなそうな三人組であった。せめて浜面さんがいてくれれば……
ひたひたひたひたひた………
一方通行「……行ったな」
帝凍庫クンの群れが奏でる奇妙な足音が通り過ぎて行ったのを確認し、一方通行はほっと胸を撫で下ろす。
彼は途中でバテて倒れたわけでも帝凍庫クンに追い付かれたわけでもなく、帝凍庫クン達が食蜂に群がっている最中、
ある病室のドアが半開きになっているのを発見し、気付かれない内にそこに飛び込んだのだ。
その後追いかけてきた帝凍庫クン達は病室内で息を殺す一方通行に気付くことなく部屋の前を素通りし、
垣根、御坂、麦野の三人を一直線に追いかけて行った。
恐らく、前方の標的を追いかける為の簡単なプログラムしか組まれていなかったのだろう。
一方通行「隠れた獲物をサーチする機能は流石についてねェみてェだな、所詮は家電製品か」
呟きつつ、そっと部屋の外へ顔を出し周囲を伺う。帝凍庫クン達の足音はもう聞こえないが、
他にどんな仕掛けがあるかわかったものではない。ここからは慎重に行動するべきだろう。
他のレベル5勢とはぐれてしまった今、自分の身は自分で守らなければならなくなってしまったのだから。
一方通行(この先何かに襲われた時のリスクを分散する為にもアイツらと一緒に逃げた方がよかったか?
……いや、俺の体力じゃ逃げてる途中で帝凍庫どもに追いつかれた可能性もある。
ここに退避した俺の判断は間違ってねェはずだ)
事実、彼の判断は正しかっただろう。垣根、御坂、麦野の三人が
無事帝凍庫クンの群れから逃げ切れたのは偏に三人の身体能力が非常に高かった為である。
麦野は言わずもがな、日頃から某ウニ頭の少年と追いかけっこをしている御坂や
暗部で鍛え上げられた垣根の運動能力も相当のレベルなのだ。
もやしっ子の一方通行が無理について行こうとしていれば、恐らく食蜂と同じ末路を辿っていたに違いない。
ひたひたひたひたひた………
一方通行(うおォ!?アイツら戻って来やがった!?)
帝凍庫クンの群れがぞろぞろと引き返してくるのを見た一方通行は慌てて室内に顔引っ込め、再度気配を殺す。
深夜の薄暗い病院を大量の帝凍庫クン達が隊伍を組んで歩いて来る光景は中々にトラウマ的である。
もし隠れる場所のない廊下で鉢合わせしていたら、さしもの一方通行も足が竦んで動けなかっただろう。
一方通行(参ったぜ、こりゃ下手に部屋から出れねェな……)
まぁいい、別に時間制限があるわけでもなし、急ぐ必要もないだろう。
幸いこの部屋は安全なようだし、外の安全が確認できるまで、しばらくここで時間を潰すのも悪くない。
ひょっとしたら自分がここに隠れてる間に他のメンバーが休憩室まで行って書類を取って来てくれるかもしれないし。
そんな淡い期待を抱きつつ、一方通行はドアのすぐ横に腰を下ろすと、だらりと壁に背を預け足を投げ出した。
ウ、ウゥゥ、ゥアァァ……
一方通行「……なンだ?」
瞬間、不意に一方通行の耳が何かの呻く様な、咽び泣く様な、そんな不気味な声を捉えた。
注意して聞かなければ気付かないような微かな声ではあるが、それは間違いなく病室の内側から発せられている。
今まで一方通行は外の様子を伺う事に意識を集中していた為気付かなかったが、
どうやらこの部屋の中にも仕掛けか何かがあるらしい。
ウ……グス、エグ、ウゥアァ……
一方通行(チッ、真っ暗な病室にすすり泣く声たァまたベタ攻め方だなオイ。こンなモンで俺がビビるわけねェだろ)
あまりにもベタで捻りのない脅かし方に一方通行は呆れ、嘲笑うかのように肩を竦める。
御坂や食蜂ならばこの程度の事でも恐怖の対象になったかも知れないが、
彼はこういう普通の肝試し的なノリには滅法強いのだ。
余程想定外のものやおぞましいものが襲ってこない限り、基本的に彼は恐れたり怯えたりする事はない。
とは言え、今からこの部屋で時間を潰そうというのに、その間ずっとすすり泣く声が聞こえるというのも鬱陶しい。
仕方なしに、一方通行はこの声を止めるべく、声のする方へと億劫そうに向かって行った。
ヒック、グスグス……スンスン……
一方通行(そこ、か?)
病室の隅に配置された入院患者用のベッド、どうやら泣き声の発信源はそのベッドの下らしい。
床に四つん這いになるのは抵抗があるが、この際已むを得まい。
若干の躊躇の後、一方通行は身を屈めベッドの下を覗き見る。
香焼「うっく、えぐ、ぅぅっ、うえぇぇぇ……」グスグス
香焼くんであった。
香焼「う、うぅ、うああぁぁぁぁ……」エッグエッグ
ショタコンに連れ去られ行方不明になっていた香焼くんが、ベッドの下で膝を抱えて泣いていた。
香焼「ひぐ、っく、ぐす……」
一方通行(えェーー……)
すすり泣く香焼くんを発見した一方通行は四つん這いのまま硬直する。
当初彼はこの鬱陶しい泣き声を止めるつもりだったのだが、
小動物のように震える着衣の乱れた香焼くんに対し『泣くのをやめろ』と言うのも流石に酷だろう。
そもそも、まるでレ○プされた直後のような状態の香焼くんをどうやって泣き止ませればいいのか、皆目見当が付かない。
一方通行(……どうする?とりあえずなンか声かけるか?)
膝に顔を埋め嗚咽を漏らす香焼くんを心の底から哀れんだ目で見つめながら対応を思案する。
香焼くんがこちらに気付いた様子はない。ならばこのまま何も見なかった事にすると言うのも一つの優しさだろう。
が、やはり彼のすすり泣く声を聞き続けるのは気が滅入るので何とか止めておきたい。
とりあえず適当に話しかけて気を紛らわせれば泣き止むんじゃないか、
そんな安易な考えをしながら、一方通行はベッドの下の香焼くんに声をかけるべく、身を乗り出した。
「やめておいた方がいい」
一方通行「あ?」
刹那、良く通る声が暗闇から響き、一方通行の動きを牽制する。どうやらこの部屋には香焼くんの他にも先客がいたらしい。
突然の事に内心うろたえる一方通行だったが、彼はそれを悟られぬよう平静を装いつつ素早く立ち上がると
声の聞こえてきた方向へと向き直った。
「そこの彼は今酷く不安定な状態なんだ、下手に手を出すのは逆効果だよ」
一方通行「オマエは……」
部屋の片隅、闇と同化するようにしてその男は蹲っていた。
闇の中、一方通行の目に微かに映るのは、肩まで伸びた真っ赤な頭髪に、蹲ってもなお目立つほどの長身。
見覚えがある。それほど深い関わりがあるわけではないが、一方通行はその男を見知っていた。
一方通行「……確か、ステイルつったか?」
ステイル「ふん、久しぶりだね……早速だが、いつぞやの借りを返させてもらおうか」
一方通行が記憶を辿り男の名前を思い出すのと同時、闇に紛れたステイルはすくと立ち上がり、臨戦体勢に入る。
ヒリヒリと焼け付くような敵意がステイルから発せられ、それを受けた一方通行は思わずチッ、と舌打ちを零した。
身から出た錆とは言え、いきなりケンカを売られるのは彼としても予想外の事だったようだ。
能力を封じられ、視界すら満足に利かないこの状況、まともにやり合っては己の不利は明白。
ならばここは逃げの一手で一旦距離を取るか、或いはベッドの下の香焼くんでも人質に取ってみるか、それとも……
ステイル「……と言いたいところだったんだが、今の僕は少しばかり疲れていてね。見逃して上げるよ。
命拾いしたね」
一方通行が打つ手をまとめ終わらぬ内にステイルの敵意は弱まり、彼は再び部屋の隅へ蹲った。
こちらを油断させる為の演技かとも疑った一方通行だったが、そもそも戦うつもりだったのなら
声などかけずに問答無用で襲い掛かって来たはずだろう。
一方通行は声をかけられるまでステイルの存在に気付いてもいなかったのだから。
それをしなかった時点で、ステイルに本気で戦う気がないということはわかる。
一方通行「ハッ、命拾いしたのはオマエだよ。ンで、オマエこンなところで何してやがる?いつからそこにいた?」
ステイル「少なくとも君がこの部屋に入ってくるよりもさきにいたよ。
敵から身を隠すために気配を消していたから気付かなかったのも無理はない」
一方通行「敵だ?」
ステイル「言わなくてもわかるだろう……あの赤毛の化け物だよ」
呟きつつ、ステイルは闇の中で己の体を抱きながら震える。
赤毛の化け物――これは多分、あのショタコンの事で間違いあるまい。
ステイル「……そもそも僕は知り合いの見舞いをする為にここを訪れただけだったんだがね、
途中であの化け物に見つかってしまって、この様さ」
一方通行「この様?……お、オマエ!?」
ステイルは自嘲するように呟くと、煙草をくわえ、それに火を灯す。
その火に照らされて一瞬露になったステイルの姿を見た一方通行は目を見開き、言葉を詰まらせた。
真っ暗な部屋で、距離も離れていた事もあり今まで気付かなかったが、
ステイルは、恐らくあのショタコンと対峙して来たであろうステイルの姿は――
――パンツ一丁(ブリーフ)という艶姿であった。
一方通行「……」
ステイル「……」
一方通行「……」
ステイル「……どうした、笑えよ」
一方通行「いや、笑えねェよ……何オマエ、ホント何?何ですか?
夜の病院をパン一で徘徊すンのが趣味とかいう倒錯した性癖でも持ってるンですか?」
ステイル「だからあの化け物にやられたんだって言ってるだろう!ローブ剥ぎ取られたんだよ!!」
一方通行「あァハイわかったンでちょっと近付かないでもらえませン?キモいンで。
それと煙草もやめてください、煙草の火で微妙に裸体がライトアップされてマジキモいンで」
ステイル「ちくしょう……」
一方通行の物言いに憤慨し、詰め寄るようにして弁明するステイルだったが、
キモいから近付くなと一蹴されてしまい、更にキモいから煙草の火も消せと理不尽な事を言われ、
苦虫を噛み潰して良く咀嚼したかのように苦々しい顔をする。
とは言え、ここは病院なので理由はどうあれ煙草の火を消せと言うのは当然の指摘なのだが。
ステイル「僕だって、僕だって好きでこんな格好してるわけじゃない……
大体、僕一人ならどうにでも出来たはずなんだ……」ブツブツ
一方通行「あァ?何ぶつぶつ言い訳してやがる、女々しいンだよこのパンツが」
ステイル「誰がパンツだ!?それに言い訳じゃなくて事実だよ!
僕一人だったらあの化け物が相手でも問題なく切り抜けられたはずだ!!」
一方通行「ふゥン?じゃァオマエの言い訳を聞いてやンよ。話してみろブリーフ」
ステイル「だから言い訳じゃないと言っているだろう。
それと人の事をドラ○ンボールの登場人物みたいに呼ぶのはやめてくれないか」
一方通行「ブリーフ博士の何が不満なンだ?ブルマの父親だぞ?名脇役じゃねェか」
ステイル「どうでもいいよ!それにブリーフ博士なんてよっぽどのド○ゴンボールフリークしか知らないよ!!」
一方通行「あァもォオマエがドラゴ○ボール大好きなのはよくわかったからさっさと話せ」
ステイル「……君は本当に腹立たしいクソ野郎だな」
完全に馬鹿にする声色の一方通行に、ステイルはビキビキと額に血管を浮かべ、
口の中に苦虫を100匹単位で放り込んだかのような、何とも表現し辛い顔で舌打ちをする。
しかしそれでも彼はめげずに、自分がこのような状態になっている理由を説明し始めた。
ステイル「何度も言うが、僕一人なら本当にどうにでもなったはずなんだ。
何せあの化け物と対峙するのは今日で四度目だったからね、いい加減対策も出来ているさ」
一方通行「ほォ?ンじゃ対策出来てたはずなのに、どォしてオマエは今こンな所に隠れてンだよ?それもパン一で」
ステイル「一々僕の格好を強調するな!!……あまりこういう言い方はしたくないが、
僕が今こんな状況に陥っている要因は、ベッドの下で膝を抱えている彼だよ」
一方通行「香焼くンの事か?」
ステイル「あぁ。僕と彼は、まぁ顔見知りなんだ。それで、僕が化け物に見つかった時、
彼はその化け物に捕食される寸前でね……
流石にそんな状態の知り合いを放って逃げ出すのも後味が悪いだろう?
だから僕は仕方なくヤツと対峙する道を選んだというわけさ」
一方通行「あァ、なるほどな」
香焼くんがどうやってショタコンの魔の手から逃れたのか疑問だったが、これで合点がいった。
彼は自力でショタコンから逃げたのではなく、この男に救助されたというわけだ。
友を助ける為に最悪のショタコンと対峙したステイル。
その代償が今の彼のパンツ一丁に靴下と靴装備と言うなんともマニアックでキモい格好なのだろう。
ステイル「……だけど、僕の魔術は誰かを守ったり共闘したりするのには向いてない。
彼を巻き込まないよう慎重に戦っていたんじゃ勝てるものも勝てないよ」
一方通行「ベッドの下で苦しンでる香焼くンに責任押し付けるとか最悪だなオマエ」
ステイル「うるさいな君は……」
一方通行「まァ大体の事情はわかった。けどよォ、どンな戦い方すりゃァそンな格好になっちまうンだ?
下半身の衣服は破れないってバトル物の不文律が完全に破られてンじゃねェか」
ステイル「そんな不文律は知らないよ……これは、あれだ、あの化け物がだね……
『今日こそはあなたが本当にショタなのかどうか確かめてあげるわ』
とか言いながら服を引っ剥がしてきたんだ……」
一方通行「うわァ……」
ステイル「下着だけは何とか死守したんだが、ルーンを刻んだカードはほとんど服のポケットに入れていたからね。
それを剥ぎ取られた以上はもう戦えない」
一方通行(あのブリーフは自前か……キモいわァ……)
ステイル「仕方なく、万一の時の為に下着に隠していた最後のルーンカードでヤツの視界を封じて
命辛々、彼と二人ここまで逃げてきたというわけさ」
一方通行「下着に隠した最後のルーンカードねェ……そりゃアレか?×××の隠喩だったりすンのか?」
ステイル「違う違う違う!!ルーンカードそのものだよ!何の喩えでもない!!
と言うか絶体絶命の状況で×××出してどうすんだ!?」
一方通行「あのショタコンには効くンじゃねェか?曲がりなりにもオマエ14歳のショタっ子だしよォ」
<14サイノショタ!?ドコ!?ドコニイルノ!?
一方通行「!?」
ステイル「!!!」
ベッドの下<ガクガクガク
部屋の外から聞こえてきた叫び声に一方通行とステイルはその身を硬直させ、
ベッドの下の香焼くんはガタガタとベッド全体が揺れ動くほど激しく震える。
聞き覚えのある声だった。今最も聞きたくない声だった。思い出したくもない声だった。
一方通行「……今の声」
ステイル「あぁ、間違いない。……ヤツだ」
ベッドの下<ガタガタガタガタ
どうやらすぐ近くまでショタコンが来ているらしい。恐らく香焼くんとステイルを探しているのだろう。
そして、先の一方通行の発言を聞かれたと言う事は、既に大体の位置は特定されてしまったと言う事であり、
彼女がこの部屋を調べに来るのも時間の問題と言ったところか。非常にまずい状況である。
一方通行「隠れてやり過ごすのは……」
ステイル「無理、だろうね……あの化け物は相当に鼻が利く、ここまで逃げるのだって一苦労だったんだ」
一方通行「ショタコンが来ねェ内にここを離れるしかねェか……」
ステイル「そうだね、そうしよう……と言いたいんだが、僕も、ベッドの下の彼も、
疲労とダメージでマトモに動ける状態じゃないんだ。とてもじゃないがヤツから逃げ切れるとは思えない。
……なぁ、一つ頼みたい事があるんだが、いいかい?」
一方通行「……なンだ?一応聞いてやる」
ステイル「恥を承知で言うぞ?……もう戦う力の残っていない僕達に代わって……あの化け物と戦ってくれ……
僕達の、仇を取ってくれ……この無念と屈辱を晴らしてくれ……頼む……お願いだ……」
ステイルは身を震わせながら、息も絶え絶えに頼み込む。彼の口角から、たらりと一筋の血が流れた。
ブリーフ一枚という見た目のインパクトに圧倒されていたが、
どうやら彼はショタコンとの一戦で相当なダメージを負っていたらしい。
戦う力は愚か逃げる余力すら残っていない彼にはもう道は残っていなかった。
プライドの高い魔術師の彼が、かつて自分に辛酸を舐めさせた相手に頭を下げ懇願しているのだ。
その心中は察するに余りある。
そして、恥も外聞もかなぐり捨てた、悲壮感すら漂うステイルの願いを、一方通行は――
一方通行「え、イヤですけど?」
一蹴した。
当然である。情に流されて危険を冒すような真似をする男ではない。
むしろ自分が助かる為に他者を平然と蹴り落とす男である。
冷静、冷酷、冷淡、冷血、冷然。それこそが一方通行という男の本質なのだ。
ステイル「こ、この僕がこれ程頭を下げていると言うのに……君には情と言うものがないのか!?
と言うかこの流れで断るなよ!空気読めよ!!」
一方通行「情で腹が膨れンのか?空気読ンだら命が助かるか?
そンなモンに絆されて散って行った馬鹿を俺は過去何人も見て来たンだよ」
※他人事のように言ってますが散らしたのは他ならぬ一方通行さんです。
ステイル「そ、そもそも僕があの化け物に目をつけられたのは君のせいなんだぞ!?
責任を取れよ!責任を!!自分の犯した罪を認知しろ!!」
一方通行「責任とか認知とかどこぞの腐女子が聞いたら発狂しそうな単語使うのやめてもらえませン?
つーか状況わかってンのか?さっきからそンな大声出したら……」
ステイル「何だよ!?誤魔化そうとしても無駄だぞ、君に責任を取ってもらうまで僕は……」
結標「この部屋から声がするわね」ガチャ
ステイル「ほわぁ!!?」ガタン
失態である。すぐ近くまで敵が迫っている事を知っていながら、感情に任せて大声を出してしまった結果がこれだ。
室内は暗く、また咄嗟に身を伏せた為姿を視認されてはいないだろうが、このまま黙って見過ごしては貰えないだろう。
結標「……香焼くんの匂いと、あのうすらデカい赤毛が使っていた香水と煙草の匂いがするわね……
間違いない、あの二人はこの部屋にいる……追い詰めたわよ……」カツカツ
ステイル(く、室内に入ってきたか、化け物め……
おい、このままだと君も危ないんじゃないか?何か手を……)ボソボソ
ステイルは迫り来る結標の恐怖に怯えながら、それでも何とかこの場を切り抜けようと
必死に脳味噌を振り絞り、隣にいた一方通行の手も借りようとそちらに顔を向ける。だが――
ステイル(おい……おい、え!?どこ行ったあの野郎!?)
そこに、既に一方通行の姿はなかった。
ステイル(ひ、一人だけ逃げたのか!?だがどうやって!?入り口にはあの化け物が陣取っていたんだぞ!?
いや……そうか、まだこの部屋にいるな?何処かに隠れて僕を囮にして逃げるつもりか!!
クソ野郎め……どこだ!どこに……)キョロキョロ
「あらあらぁ?」
ステイル「ひっ!?」ビク
一方通行を探すべく、キョロキョロと周囲を見回していたステイルの頭上から、冷たい声が降ってくる。
思わず声を漏らし、恐る恐る頭上を見上げたステイルの目に映ったのは、
世にもおぞましい笑顔を浮かべた化け物の姿だった。
ステイル「う、うわああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「ウフフフフ……ツカマエタ」
―ベッドの下
<ウワァァァァァァ!!
一方通行(動くなよ香焼くン、目と耳を塞いどけ、ここでじっとしてれば大丈夫だ)ボソボソ
香焼(は、はい……でも……)ビクビク
一方通行(今俺らが出てった所でやれる事はねェよ、餌が増えるだけだ。
ステイルには悪ィがこのままやり過ごすのがベスト……わかるな?)
香焼(……はい)
一方通行(よし、しばらくの辛抱だ。それで俺達は助かる)
※この後結局発見されたので仕方なく香焼くんを囮にして逃げました。
人物名鑑
ステイル=マグヌス(すている まぐぬす)
英国出身、若干14歳にしてルーンを極めた天才魔術師。
一人称が『僕』で、冷めてるようで熱く青臭さも目立つ性格など、ショタ的な要素は多々あるのだが
2mの身長が全てを台無しにしている残念ショタ。
本SSでは基本的に結標とセットで登場し、毎度毎度結標の犠牲になっている。
英国出身の14歳の少年が来ると聞いてwktkしてたら煙草銜えた身長2mの野郎が現れた、
となれば結標さんがプッツン行くのも頷ける話だろう。理不尽だけど。
しかし『ショタかどうか確かめてやる』等の発言からもわかる通り、
やはり結標にとって『英国出身の14歳』という肩書きは大きいらしい。
どうやって確かめようとしたのかは不明。何故脱がしたのやら。
今回は元々仕掛け役でも何でもなく、単にインさんのお見舞いに来ただけだったのだが、
途中で結標に見つかったのが運の尽き、香焼くん共々お約束通り犠牲になった。
あぁ素晴らしきかなマンネリズム。
絹旗「それではルールを超確認しておきましょう」
滝壺「うん」
絹旗「今から私達は一人ずつ順番に前方を脳天気に歩いているレベル5の三人組を超脅かしに行きます」
フレンダ「はいはい」
絹旗「ただ脅かしに行くだけでは超つまらないので私達の間でもちょっとしたゲームをする事にしました!」
滝壺「誰が一番あの三人を脅かせるかを競うんだよね?」
フレンダ「んっと、結局麦野を脅かせば5ポイント、垣根は3ポイント、第三位は1ポイントだっけ?」
絹旗「はい、それで最終的に一番獲得ポイントが多い人が一番少ない人に超罰ゲームを下す権利を得る事が出来ます。
ちなみにポイント獲得の基準は対象が悲鳴を上げたかどうかですので注意してくださいね」
滝壺「最高は全員に悲鳴を上げさせた場合の9ポイント、最低は誰も悲鳴を上げなかった場合の0ポイントだね」
フレンダ「結局第三位は小心っぽいから1ポイント獲得は楽そうだけどね」
絹旗「手堅く第三位を狙うか、大穴で麦野や垣根を狙って行くか、
誰か一人に狙いを定めるのか、それとも三人全員に仕掛けるか、どのタイミングで行くのか、
その辺の判断は超自由ですので一番ポイントを獲得出来そうな脅かし方を実行してください」
滝壺「誰から行くのか、順番も大事だよね」
絹旗「そうですね、麦野達は私達三人が脅かしに来る事をまだ知らないわけですから
トップバッターはその油断を突けるという点では超メリットがあると思います」
フレンダ「結局二人目以降は警戒されちゃうから脅かし辛くなる訳ね」
滝壺「もしかしたらこっちが脅かす前に見つかっちゃうかもね」
絹旗「一応二番手以降にも『前の人の脅かしや獲得ポイントを参考に出来る』というメリットがありますが
それでも一番手の持つメリットには超及びませんね」
滝壺「一番不利なのは二番目の人かな?一番目の人の後だからむぎの達も凄く警戒してるだろうし、
不意打ちで脅かす一番目の人のやり方はあんまり参考にも出来ないよね」
絹旗「む、そう考えると確かに二番手は超不利な気がしますね……」
滝壺「だから私は二番目でいいよ」
フレンダ「え、いいの?」
滝壺「うん、秘策があるからね」フフン
絹旗「ほほう、それは超楽しみですね。では私は三番手をもらいましょうか。
超有利な一番手はフレンダに譲って上げますよ」
フレンダ「二人がそれでいいって言うんなら遠慮なく行かせてもらうけど、
結局私が一番多くポイント取っても罰ゲームは手加減なしだかんね?」
絹旗「超構いませんよ、一番の目的は麦野達をきゃーきゃー言わせる事ですし、超思いっきり脅かして来てください」
滝壺「かきねがきゃーきゃー言うのはちょっと気持ち悪い気もするけどね」
フレンダ「結局私のターゲットは麦野だけどねー。くくくく、普段見られない麦野の怯える姿を存分に堪能してやる訳よ」クックック
絹旗「麦野の超あられもない姿を見れる上に5Pもらえる訳ですから、
麦野に悲鳴を上げさせれれば超美味しいですよね」
フレンダ「そんなわけでちょっくら行ってくる訳よ。私が5P獲得してくる所を存分に眺めているがいい!」テクテク
滝壺「がんばってきてね」
絹旗「所詮フレンダですしはっきり言って超期待してないので気楽にやってきてください」
フレンダ「ひど!」
麦野「しっかし垣根は本当に空気読めないわね」ハァ
垣根「は?何だよいきなり」
御坂「どうしたの麦野さん?そりゃ確かに垣根さんは空気読まないし常識も通用しないけどさ」
垣根「あ、ちょっと俺御坂の事嫌いになりそう」
麦野「あのさぁ垣根、私達さっき階段下ったわよねぇ?」
垣根「あぁ?それがどうしたよ?帝凍庫の群れと遭遇しないように別の階から回って行こうって話になったろ?」
麦野「何であんた階段から転がり落ちなかったわけ?」ア?
垣根「……」
麦野「期待してたのよ?あんたが今朝みたいに無様に階段を転げ落ちていく様を。私も、美琴も」
垣根「んなもん知るかボケが!!」
御坂「て言うか私は別に期待してなかったし……」
麦野「ほら見なさい、垣根があんまり使えないから美琴が
『垣根ごときには最初から期待してなかった』なんて言い出しちゃったじゃないの」ヤレヤレ
垣根「腹黒中二ェ……」
御坂「ちょ!?そういうニュアンスで言ったんじゃないわよ!!」
フレンダ(くっくっく、暢気に駄弁っちゃって、結局私がこっそり後ろから迫ってることに全く気付いてない訳よ)ソロソロ
垣根「もうオマエの発言はプラス方向に受け取れねぇよ……」
麦野「今回の企画で一層腹黒さが増したわね」
御坂「麦野さんが私の発言取り上げて変な方向に誘導するせいでしょ!?」
麦野「何の事かしら?」ハテ
フレンダ(爆弾とか使うのは流石にマズイし、
結局ここはシンプルに突然後ろから『わー!』って感じで脅かすのがベストな訳よ。
すぐ近くで麦野の顔も堪能出来るしね!)ウン
絹旗「フレンダのやつ段々距離詰めて行ってますけど、あのまま超単純に後ろから脅かす気なんでしょうか?」
滝壺「向こうは全く警戒してないみたいだし、それも案外悪くない手かも」
絹旗「一番手ならではのやり方ですね。でも超至近距離で麦野を脅かすのは……」
滝壺「うん、多分むぎのは驚いた場合でも悲鳴上げるより先に手が出るよね」
絹旗「もうフレンダが麦野に超ぶん殴られる未来しか見えませんね。とりあえず冥福でも超祈っておきましょうか」ナムナム
滝壺「そうだね」ナムナム
フレンダ(結局ここまで近付けば一息で飛びかかれる訳よ。後はタイミングを見計らって……)コソコソ
御坂「もう!麦野さんのせいですっかり私に腹黒いイメージが付いちゃったじゃない!」プンプン
垣根「そりゃ確かに一割くらいは麦野のせいかも知れねぇが……」
麦野「そうやって他人のせいにする所がまた腹黒いわ」
フレンダ(それにしても……)ジー
垣根「あと腹黒いのとはちょっと違うけど、御坂はすぐ自己保身に走るところあるよな」
麦野「あーそうね、第一位ほどじゃないけど自分が助かる為なら他人見捨てるタイプよね」
御坂「えー……」
フレンダ(麦野め、何てけしからん格好してるのよ!
結局麦野があんな短いスカート履いてるの見たのなんて初めてなんだけど!?)
御坂「何よ、そんな事無いわよ……私は誰かの為に命を投げ出せるタイプだもん!」
垣根「香焼くんの事あっさり見捨てたじゃねぇか」
麦野「垣根や第五位の事もあっさり切り捨てるわよね」
御坂「うぐ……」
フレンダ(結局ちょっとローアングルから見上げたらスカートの中見えそうじゃない?
見えそうな訳よ?て言うか見えるわよね多分……よし、脅かす前にちょっとだけ……)ススス
絹旗「……何かフレンダが超四つん這いになってるんですが、何がしたいんでしょう?」
滝壺「大体想像は付くけどね」
フレンダ(く、暗くて見えない……結局もっと近付いてもっと体勢を低くしないと……)グググ
絹旗「……何かフレンダが超匍匐前進始めたんですが」
滝壺「必死すぎて気持ち悪いよね」
フレンダ(これでもう少し近付けば……)ズリズリズリズリ
絹旗「うわ、匍匐前進なのに超速い……」
滝壺「虫ケラみたいだね」
御坂「な、何か散々私のこと貶してるけどさ!二人とも私の事どうこう言えないわよね!?
そっちだってすぐ自己保身に走るし、麦野さんなんて鬼畜じゃない鬼畜!」
麦野「でも私らは自覚してっからねその辺。別に隠す気もないし指摘されたからって否定もしないし」
垣根「御坂は根本では俺らと似たような性格してんのにそれを偽って優等生面してっから腹黒とか言われんだよ」
御坂「二人とも開き直ってるだけじゃないの!」
フレンダ(ナイス第三位!結局その調子でもっと大声出して麦野の注意を引き付けてて欲しい訳よ!
その隙に私は麦野のスカートの中を……)ズリズリズリ
絹旗「あれもうフレンダ見つかるんじゃないですか?超近付いてますし隠れる場所もありませんし」
滝壺「目的が変わっちゃってるね」
垣根「大体、すぐそうやって他人の事を引き合いに出して
『自分はまだマシだ』ってアピールしようとする辺りも腹黒いんだよな」
御坂「そんなことないもん!そんなつもりじゃないもん!」ウルウル
麦野「おうこら垣根ぇ!!テメェ何美琴泣かしてんだ!?」ア゛ァ!?
垣根「え、俺のせいなの!?」ビクッ
フレンダ(もうちょい、もうちょい………!!!くっそう暗くて見えない!!何!?何なの!?
結局これが輻射障壁って訳!?或いは絶対守護領域!?見えそうで見えないってやつ!?ちくしょおおおお!!!)クネクネ
絹旗「……何かフレンダが超悔しがってるんですが」
滝壺「暗いから中が見えなかったんじゃないかな?」
フレンダ(ここまで来て……あ、そうだ、そう言えば私小型ライト持ってるじゃん。
結局これでスカートの中を照らせば……)カチッ、パッ
麦野「……」
垣根「……」
御坂「……」
フレンダ(見えた!見えたああああああ!!!ひゃっふううう!!!黒!レース生地!!まさか勝負下着!?
え、何?もしかして私の為?結局私の為に勝負下着履いてる訳!?ふああぁぁぁぁ!!!)モゾモゾ
麦野「おい」ゲシ
フレンダ「ハッ!?」ビクッ
垣根「……」
御坂「……」
フレンダ「……」
麦野「フゥレンダァ?なぁにをやってくれちゃってるのかにゃーん?」ググググ
フレンダ「ちょ、やめて麦野!踏まないで!顔を踏みつけないで!!痛い痛い痛い!!
……あ、でも結局こんなプレイもありかも!?」ジタバタ
垣根「うわぁ」
御坂「うわぁ」
麦野「キメェ事抜かしてんじゃねぇぞフレンダァ、私は何をしてたかって聞いてんだよぉぉぉ!!」ゲシゲシゲシ
フレンダ「あぁダメやっぱ痛い!無理!!すいませんスカートの中ライトで照らして覗いてましたぁぁぁぁぁ!!!」
麦野「んなこたぁわかってんだよボケがあああ!!!何でテメェは私のスカート覗いてやがったんだ!?あ゛ぁ!?」グリグリグリ
フレンダ「いだだだだだ!!!け、結局麦野の事が好きだからですううぅぅぅぅぅ!!!!」
垣根「これほど最低なタイミングの告白を俺は未だかつて見た事がねぇ」
御坂(ダメな時の黒子思い出しちゃうなぁ……)
麦野「そ、あんたは私の事が好きなのね?ならさぁ……」ス
フレンダ「ふぇ?」
麦野「私に殺されるんなら本望だよなああぁぁぁぁ!!!?」ググググググ
フレンダ「ぎゃあああああああ!!!!いだいいだいいだいいだああああ!!!!!」
グシャ
垣根「うわぁ」
御坂「うぇ……」
フレンダ「」
麦野「ふぅ……ったくフレンダの馬鹿、小型ライトまで用意しやがって……あぁでもこれ使えそうね、貰っときましょうか」ゴソゴソ
垣根「……使えるのか?かなり返り血浴びてるんだが」
麦野「防水仕様みたいだし大丈夫でしょ、ほら点いた」カチ
御坂「わぁ明るい、これで怖さ半減ね!」ワァ
麦野「じゃあ美琴、このライト上げるからあんた先頭ね」ハイ
御坂「ふえぇ!?そ、それはちょっと……て言うか血が付いてるから触りたくないし……」
麦野「じゃあ垣根でいいわ、ほらライト渡すから先頭歩け」ポイ
垣根「うわ投げ渡すなよ、血が跳ねて白衣に付いたじゃねぇか……」
麦野「ぐだぐだ言ってないでさっさと進め。んで私らの盾になりなさい」
垣根「何で俺の扱いこんなに悪いの?」
御坂「今更じゃない?」
垣根「だからそういう発言がだな……」
フレンダ「」
絹旗「フレンダ超使えねぇ……ライト渡しただけじゃないですか……」
滝壺「期待はしてなかったけどこれほど酷いとは思わなかった」
絹旗「で、次は滝壺さんですけど超大丈夫ですか?はっきり言って状況は超最悪ですが」
滝壺「心配してくれてありがと、でもきっと大丈夫だよ」
絹旗「そういえば超秘策があると言ってましたね、一体どんな事をするつもりなんです?」
滝壺「うん、この子を使うつもりだよ」ヒョイ
「にゃあ」
絹旗「……え、何、誰ですか、このフレンダに超そっくりな小さい子は?」
滝壺「小ささならきぬはたも負けてないけどね。ふれめあって言うんだって。ふれんだの妹さんだよ」
フレメア「二人ともおねえちゃんの友達なんだよね?大体よろしく。にゃあ」
絹旗「ほおぉ、フレンダと瓜二つなのに何故か超可愛い……
ん、あれ?でも滝壺さん、この子どこから連れて来たんです?さっきまでいませんでしたよね?」
滝壺「細かいことは気にしちゃダメだよきぬはた、怒るよ?」
絹旗「何故に!?」
滝壺「ふれめあ、前の方にいるあの人達を脅かして来るんだよ?
ターゲットは年甲斐も無くミニスカートなんて履いてる髪の長い女の人だからね?
上手く行ったらお菓子をあげるよ」
絹旗(何気に麦野のこと超ボロクソ言ってる……)
フレメア「大体わかった。にゃあ」トテテテテ
滝壺「気を付けてね」
絹旗「んー、何の策も無しに行かせましたけど、あんな小さい子で麦野達を超脅かせるんでしょうか?」
滝壺「さっき死んだはずのフレンダにそっくりな子がいきなり現れたらびっくりしないかな?」
絹旗「いや死んではいませんけどね?そんなに超上手く行きますかねぇ……」
滝壺「大丈夫、私はふれめあの可能性を信じてる」
フレメア(髪の長い人を脅かせばお菓子が貰える……)トテトテトテ
麦野「フレンダが出てきたって事は多分絹旗と滝壺もその辺にいるわね」
垣根「だろうなぁ……絹旗はともかく滝壺には注意しとかないとな」
御坂「滝壺さんってあの大人しそうな人よね?見た感じ人畜無害そうだったけど注意が必要なの?」
フレメア(後ろから突然声をかければ大体驚くよね?)ソロソロ
麦野「あれでなかなか強かなのよ滝壺は」
垣根「結構平然と酷ぇ事やらかすからな。腹黒なのか天然なのか判別付け辛ぇとこだが」
御坂「それは天然を装った腹黒ね、間違いないわ」ウン
垣根「何かオマエが言うと妙に説得力あるな……」
麦野「同類か……って滝壺は別にそこまで腹黒かないでしょ」
フレメア「……」ツンツン
麦野「ん、何か後ろから……」クル
垣根「お?」
御坂「え?」
フレメア「にゃあ!」バァ
麦野「………性懲りも無くまた来やがったなフレンダアアアアァァァ!!!!」ズビシ!
フレメア「ふぎゃーーー!!!!!」バターン
絹旗「ふ、フレメアー!!」ウワァー
滝壺「チョップ痛そう」
フレメア「」ピクピク
麦野「ったく、ホント懲りないわねこの馬鹿。二度と起き上がれないようにトドメ刺しとくか……」グッ
垣根「待て麦野、その子フレンダじゃねぇぞ」
麦野「何?」
御坂「うん、さっきの人より一回り小さいわよ」
フレメア「」
麦野「……本当だ、良く見たらフレンダじゃない」ヤベェ
垣根「罪の無い幼女にいきなりチョップぶちかますとか無いわー」アーア
麦野「……罪ならあるわ。フレンダと似てる事よ」
垣根「それを罪と呼ぶのは流石にかわいそうだ」
フレメア「」
御坂「この子大丈夫かな?苦悶の表情で失神してるけど……」
麦野「どうせフレンダの妹か何かでしょ、放っときゃいいのよフレンダの関係者なんて」
垣根「オマエはフレンダに何か恨みでも……あるな」ウン
麦野「えぇ、あるわ。山ほどね」ペッ
御坂「だ、だとしても、この子には直接恨みはないでしょ!?このまま放置はあまりにも酷いんじゃ……」
麦野「いいのいいの、どうせ絹旗達が回収するわよ」
御坂「えー、でもぉ……」
麦野「それじゃ美琴はここに残ってこの子の介抱する?私達は行くけど」
御坂「そ、それはちょっと……うぅ、ごめんね……」
フレメア「」
垣根「おーい絹旗、滝壺、聞こえてるなー!?この子が風邪とか引かないようにちゃんと介抱しとけよー!」
絹旗「……だそうですよ滝壺さん。やっぱりフレメアに超丸投げはダメでしたね」
滝壺「所詮はフレンダの血族か」チッ
絹旗(誰だこの人……)
滝壺「ねぇきぬはた、もう一回チャンスを貰えないかな?」
絹旗「え?」
滝壺「今度は他の人に頼ったりしないで私の力でむぎの達を脅かしてみるから、お願い」ネ
絹旗「んー……まぁこのままフレンダも滝壺さんも0ポイントじゃ私の勝利決定で超面白くないですし……
仕方ないですね、超特別にもう一度滝壺さんのターンという事にしましょう」
滝壺「ありがと。きぬはた大好き」ニコッ
絹旗「いえいえいいんですよ、その代わりしっかりやってくださいね?そろそろ麦野達の悲鳴を超聞きたいので」
滝壺「うん、任せて。こうなったらとっておきを使うから」ス
絹旗「……?何ですかその筒?それが超とっておき?」
滝壺「うん、これは吹き筒って言ってね」
絹旗「ほうほう」
滝壺「筒の片側から息を吹き込んで空気圧で矢を飛ばすものだよ」
絹旗「ほうなるほど……ってそれようするに超吹き矢じゃないですか!そんなもんで何を……」
滝壺「こうするの」フッ!
ヒュー……
垣根「しっかし絹旗と滝壺は中々仕掛けて来ないn」
プス!
垣根「なッはぁ!!?」ガクン
御坂「垣根さん!?」
麦野「ん、どうしたのよ?」
絹旗「うわああぁぁ!!垣根が超ぶっ倒れたああああ!!!」
滝壺「大成功」ワーイ
絹旗「どの辺が!?」
滝壺「え?だってかきねが悲鳴上げながら倒れたよ?」
絹旗「そんなんありですか!?そもそも何で吹き矢が刺さったくらいで垣根はぶっ倒れたんです!?」
滝壺「矢に神経毒が塗ってあったからじゃないかな?クジラが動けなくなる程度の」
絹旗「超猛毒!?て言うか何で超他人事みたいに言ってんですか滝壺さん!?」
垣根「」ブクブク
御坂「か、垣根さんどうしたのよ突然?そ、そんなに泡なんか吹いちゃって、その冗談は笑えないわよ……?」
麦野「落ち着きなさい美琴、垣根は多分絹旗か滝壺にやられたんだと思うわ」
御坂「え……で、でも近くには誰もいないし、攻撃をされたようにも見えなかったけど……」
滝壺「よーし、次はむぎのを狙っちゃおう」スチャ
絹旗「ちょ、正気ですか滝壺さん!?やめましょうよそんな事!もう肝試しでも何でもないじゃないですか!!」
滝壺「くらえー」フッ!
絹旗「あぁ!!」
ヒュー……
麦野「恐らくは暗闇に紛れての遠距離攻撃……それも消音性の飛び切り高い……ッッ!!!」
御坂「麦野さん?」
麦野「……」
御坂「麦野さん!?……そ、そんな、まさか、麦野さんまでやられ……」
麦野「……ごめんごめん、大丈夫よ。でも危なかったわ……見て」ス
御坂「それは……針のような、矢のような……垣根さんもこれに……?」
麦野「多分ね……しかもこれ、毒が塗ってあるわ」ギロ
御坂「毒!?」
絹旗「……麦野超すげぇ」
滝壺「暗闇の中、音も無く飛来する極細の矢を素手で掴み取るなんて……流石むぎの、人間じゃない」
絹旗「って褒めてる場合じゃないですよ滝壺さん!今ので麦野に私達の位置が超バレたんじゃ!?」
滝壺「うん、多分バレた。むぎのが凄い目でこっち睨んでる」
絹旗「睨んでるどころか超こっちに歩いて来てますよ!?どど、どうしましょう滝壺さん!?」
滝壺「任せて、私に考えがある。とりあえず絹旗、この吹き筒ちょっと持っててもらえるかな?」ハイ
絹旗「あ、は、はい……(ネチャ)……何か超粘着質な感触がするんですが……」
滝壺「うん、今きぬはたに渡す前に瞬間接着剤塗ったから」
絹旗「はいいぃ!!?超何やってんですか滝壺さん!!一体何の為に!?
あぁもうくっついてる!手から剥がれない!!」
滝壺「……その状態、傍目にはきぬはたが吹き筒をしっかり握って離さないように見えるよね」
絹旗「な……ま、まさか滝壺さん……」
滝壺「ひょっとしたらむぎのはこの光景を見てきぬはたが吹き矢を吹いたんだと勘違いしちゃうかも知れないね」
絹旗「滝壺さん、最初からそのつもりで……ッ!!!」
滝壺「ごめんねきぬはた。でも私はそんなきぬはたを応援してる」
絹旗「応援とか超いりませんから!謝罪もいりませんから!!これ剥がしてくださいよ!!
濡れ衣着せようとするのやめてくださいよおおおお!!!」
滝壺「うん、でももう遅いみたい」
絹旗「へ?」
麦野「見ぃーっけた」カツカツ
絹旗「ふひぃ!!?」ビクッ
麦野「あっらーん?何持ってるのかしら絹旗ぁ?もしかして吹き矢か何かだったりして?」
絹旗「ち、ちが、超違うんですよ麦野……これは私じゃなくて滝壺さんが……」
麦野「あ゛ぁ?聞こえないわ、はっきり喋んなさいよ」
絹旗「ひいぃぃぃ!!!わ、悪いのは私じゃありません!滝壺さんなんです!!」
滝壺「そうだよむぎの、吹き筒を握り締めてるのはきぬはただし
むぎの達を脅かそうって言い出したのもきぬはただし、
ついでにこの前むぎのがファミレスに忘れていった財布で勝手にパフェを食べたのもきぬはただけど、
悪いのは私だよ。だからきぬはたを責めないで。しかるんなら私を……」
絹旗「滝壺さぁぁぁぁん!!!何かその言い方だと全部私が悪いのに
滝壺さんが超健気に私を庇ってるみたいじゃないですかああああ!!!!
て言うかパフェ食べたの私だけじゃないですよね!?皆超食べてましたよね!?私むしろ超止めましたよね!?」
滝壺「でも最終的には食べてたよね」
絹旗「そうですけど!そ、そもそもそれは今関係ないじゃないですか!!」
麦野「全く絹旗ったらイタズラっ子なんだから……でぇ、その筒いつまで握り締めてるわけ?
まだ私を撃つ気なのか?あぁ!!?」ガシ
絹旗「ちょ!違うんですってえええええ!!!超話聞いてください!!私は騙されたんですよおおおお!!!」
麦野「垣根は別にどうでもいいけさぁ、私まで狙ったのは絶対に許さないわよ!!」ゴリゴリゴリ
絹旗「ぴゃああああああ!!!頭が超割れるうううううう!!!」ミシミシ
麦野「弾けろおおおおおお!!!!!!!」ギリギリギリ
絹旗「うにゃあああああああああああ!!!!!」メキメキメキ
滝壺(きぬはたごめんねきぬはた。仇は取るからねきぬはた。
でもこれできぬはたは不戦敗だから私の一人勝ちだねきぬはた。罰ゲーム何にしようかな)コソコソ
麦野「あ、こら逃げんな滝壺!!……チッ、まぁいいか、とりあえず首謀者の絹旗は制裁したし」ググググ
絹旗「」プラーン
御坂「麦野さん、そろそろ行かない?垣根さんも意識が戻ったわよ」
麦野「ん、じゃあ行きましょうか」ポイ
絹旗「」ベシャ
人物名鑑
絹旗最愛(きぬはた さいあい)
暗部組織『アイテム』の最年少構成員。見た目12歳程度のキュートな女の子。モアイではない。
傲慢で話を聞かない麦野、何考えてるかわからない滝壺、馬鹿なフレンダ、
ダメダメな浜面、比較的マシな垣根などの面子に囲まれ毎日を送る苦労人ポジションである。
マトモな人間ほど酷い目に遭うのはこのSSの宿命か。と言うかアイテムが揃ってダメすぎる。
過去、『暗闇の五月計画』という実験の被験者にされていた事があり、
その際に一方通行の精神性や演算方法の一部を植え付けられている。
実験当時から既に性格が最悪だった一方通行の精神性を植え付けられたのだから
当然絹旗の性格もそれに引き摺られるようにして悪くなりそうなものだが、
出来上がった彼女は何故かとっても良い子に仕上がっていた。合体事故でも起きたのだろうか。
或いは彼女こそ一方通行の切り捨てた最後の良心なのかも知れない。
能力により、攻撃を受けた際には銃弾すら受け止める自動防御が働くはずなのだが
素手の麦野に為す術もなく貫通され締め上げられてしまった。
滝壺理后(たきつぼ りこう)
『アイテム』構成員の一人。基本的にぼーっとしている無表情で天然な癒し系……だったらよかったのにね。
普段のんびりとしているのは周囲、特に麦野や垣根に対し自分は無害だとアピールする為であり、
その裏では常に物事を自分の思い通りに動かそうと権謀術数を巡らせている。『后』の名は伊達ではないと言う事か。
作中垣根に『天然なのか腹黒なのか判別が付き辛い』と言われているが、どう見ても腹黒です。本当にありがとうございました。
天然に見えるのはそれだけ彼女が普段から自分の性質を偽っており、それが上手く行っている為だろう。
猪突猛進な麦野、純真で騙されやすい絹旗、馬鹿なフレンダ、ダメな浜面の四人を
易々と手玉に取る程彼女らの性格を熟知しているが、冷静で頭が切れ周囲をよく観察している垣根だけは警戒しており、
今回吹き矢で真っ先に垣根を狙ったのもその為である。垣根の事ちょっと過大評価じゃね?
能力使用には『体晶』と呼ばれる薬が必須であり、使用する度に身体が蝕まれてしまう為、滅多な事では使わない。
実際、前作で体晶を服用した際には吐血して倒れた……が、ひょっとするとそれすら演技だったのかも知れない。
こんな彼女だが別にアイテムを嫌っているわけではなく、むしろ居心地がいいと思っていたりする。
ツンデレだよツンデレ。うん、そういう事にしておこう。
フレンダ=セイヴェルン(ふれんだ せいう゛ぇるん)
上記二人と同じく『アイテム』の構成員。言動が何か馬鹿っぽく、アイテム内カーストは浜面に次いで低い。
とは言え浜面の扱いが悪すぎるので大して問題も無く、表面的にアイテムは仲良しグループとして成立している。
麦野に対して常道ならぬ感情を抱いており、要は御坂に対する白井のようなもんである。あそこまでは酷くないけども。
毎度毎度『むぎのんかわいい』という旨の感想レスをしてる人は実はフレンダなんじゃないだろうか。
本能に忠実で後先考えず、すぐに周りの事が見えなくなる作中屈指のお馬鹿さん。
アメリカンジョークにおけるブロンド女並に頭が悪い。
常日頃から麦野に過剰なスキンシップを求めており、彼女から良く殴られている。我々の業界ではご褒美です。
馬鹿で変態でどうしようもないように見えるが、性格の捻じ曲がった登場人物ばかりの本SSでは
こんな奴すら比較的マトモに見えてしまうという……どういう事だよほんと。
ちなみに鯖の缶詰が大好きで、誕生日に麦野から貰った鯖缶(105円)を
宝物のように大事にしており、毎日抱きしめて眠っている。食えよ。
フレメア=セイヴェルン(ふれめあ せいう゛ぇるん)
上記フレンダの妹。にゃあにゃあ言ってたらむぎのんにチョップされて轟沈した。
SSにフレメア出すのは初めてなのにこの扱いである。まぁ洗礼みたいなもんだと思って頂ければ……
【後編】に続きます