part1 【前編】 【後編】 part2 【前編】 【後編】 part3 【前編】 【後編】 part4 【前編】 の続きです
11111号「皆さんお食事の時間ですよー、とミサカは四人分の食事が入った鞄を携えて休憩室に……
あれ?何か皆さんお疲れですね?何かあったんですか?とミサカは首を傾げます」ハテ
一方通行「白々しいンだよ馬鹿、どォせどっかで見てたンだろォが」チッ
垣根「つか空気読めよクローン、まだ一方通行の引き出し開けてねぇだろうが」
11111号「いえ、ちょっとミサカは今後の計画を練り直してたんで本当に見てなかったんですが……
もう引き出しトラップ開放してたんですか、楽しんでますね、
とミサカはレベル5勢のドMっぷりにドン引きします」ウワァ
一方通行「ドMなのは俺以外だ俺以外。つか何だこのコラ写真、いつの間にこンな下らねェモン作りやがった」ペラ
11111号「え、それコラじゃないでしょう?あなたはそういう格好が大好きじゃないですか、とミサカは……」
一方通行「うおォォォォい!!サラッと洒落にならねェ嘘吐いてンじゃねェェェェ!!!」
垣根「オマエやっぱり……」ウワァ
御坂「好きなんだ、そういうの……」ゲェ
麦野「ん、まぁいいんじゃない?趣味は人それぞれだし、似合ってるわよ?」ウン
一方通行「違ェつってンだろォが!!つーか何気に腐ってンな第四位!!」
11111号「冗談はさて置き、そういうの好きなやつが妹達の中にいるんですよ、
その写真はそいつから拝借しました、とミサカは簡単に説明します」
一方通行「おいそいつの番号教えろ、これ終わったら真っ先に会いに行ってやる」
垣根「特殊性癖ってレベルじゃねぇな、そのクローン」
御坂「つくづく私のクローンだと思いたくないわぁ……」ハァ
11111号「そんな……お姉様はミサカ達の存在を否定するのですか!?
とミサカは涙目でお姉様に縋る様な視線を送ります」チラッ
御坂「目の前で目薬差しながらそんな事言われても……て言うかチラ見してるだけじゃないそれ?」
一方通行「チッ、見損なったぜ超電磁砲」
垣根「クローン何て気味悪いモンを受け入れる器の広さは尊敬に値すると思ってたんだがな」
麦野「美琴は優しい子だと思ってたんだけどねぇ」ハァ
御坂「えぇー、何この流れ……」
11111号「しかし一方通行の番がまだだったとは、このミサカとしたことがタイミングを誤りましたか、あいたたた……
とミサカはやっちまった感満載で額をペチンと叩きます。
仕方ありません、出直して来ましょう。存分に殺しあうがいい」
御坂「いやもうご飯置いて行ってよ、お腹空いたし」
麦野「そうね、第一位の引き出しの中身は食後のデザートって事にしときましょう」
一方通行「再三言うけど開けねェよ?」
垣根「オマエに選択肢なんざありゃしねぇよ」
11111号「ふむ、それでは時間も押している事ですし先にお食事にしましょうか。
今回はそれぞれ皆さんの好きな物を用意させて頂いておりますよ、
とミサカはここぞとばかりに出来る女をアピールし好感度をかち上げます」フフン
一方通行「……好きな物、ねェ?」
御坂「逆にイヤな予感しかしないわ」
垣根「まぁ何が来ようと前回よりはマシだろうよ、俺日の丸弁当だったし」
麦野「つか今更何されようがテメェの好感度は上がりゃしねぇっての」
11111号「ほう、これを見てもまだそんな事が言えますか?
とミサカは手始めにむぎのんに向かってお弁当を差し出します」ハイ
麦野「な、こ、これは……」ビクッ
一方通行「まさか……」
御坂「そんな……」
垣根「馬鹿な……」
11111号「そう、鮭弁です。好きな物を用意していると言った事は嘘ではありませんよ?
とミサカは天使のように微笑みます」ニタ
一方通行(うわァ悪ィ顔してンなァ)
麦野「……あんた、やれば出来る子だったのね」パァァァ
垣根「うわぁぁぁあっさり懐柔されやがったよこいつ……」
一方通行「相変わらず安ィ女だな」
御坂「麦野さん……」
麦野「シャケ弁!シャケ弁!」ワー
デデーン♪
『麦野、アウトー』
麦野「はぁぁ!?な、何でだよ!?」
一方通行「そらそンだけ顔が綻ンでたらアウトも取られるわ」
垣根「超が付くほどニヤけてたぞオマエ」
御坂「ほんと鮭好きね……」ハァ
バチーン!!!
麦野「ぐぎゃッッ!!!」
11111号「続いて一方通行、とミサカは呼びかけます」
一方通行「おい、先に言っとくが俺はモヤシは好きじゃねェからな?むしろどっちかっつーと嫌いな方だ」
11111号「大丈夫ですって、モヤシなんて用意していませんよ、とミサカは疑り深い一方通行に苦笑します」ヤレヤレ
一方通行「……ならいいンだがよォ」
11111号「はいどうぞ一方通行、缶コーヒーです、とミサカは一方通行の前に缶コーヒーを一本置きます」トン
一方通行「おい」
11111号「えー、続いて……」
一方通行「待て待て待てェ!!こンだけ!?俺の昼飯缶コーヒー一本!?」
11111号「え、あなたの一番好きな物を用意したはずですが、とミサカは首を傾げます」ハテ
一方通行「あってるけど違ェだろ!!これ一本で腹膨らませろってのか!?」
11111号「はぁ……仕方がありませんね、ではこれもどうぞ、とミサカは缶コーヒーをもう一本一方通行の前に……」コト
一方通行「だから腹膨らまねェって!!固形物よこせつってンだよ!!」
11111号「え、でもあなた普段からコーヒーしか飲まなかったりするじゃないですか、
とミサカは一方通行の日常生活を振り返ってみます」
一方通行「あのなァ……日常と今は違ェだろォが!!この企画がどンだけ体力使うかわかってンのか!?
ちゃンと飯食って回復しとかねェと後々不利になンだよ!!」
11111号「わかりましたわかりました、そう怒鳴らないでください、とミサカは溜息混じりに頭を振ります」ヤレヤレ
一方通行「ホント一挙一動ムカつくなァオマエ」
11111号「えーっと一方通行に渡せそうな物は……とミサカは鞄の中を漁ります。あぁ、これでいいか」ゴソゴソ
一方通行「あン?」
11111号「どうぞ一方通行、ガリです、とミサカは生姜の甘酢漬けをガリガリ体型の一方通行に向かって差し出します」
一方通行「ドストレートに喧嘩売ってきやがったなこの野郎」
垣根「コポォ」
デデーン♪
『垣根、アウトー』
垣根「ガリの昼飯がガリたぁ、なかなか洒落が利いてるじゃねぇか」クククク
一方通行「ぶっ殺すぞオマエ」
11111号「モヤシもありますが、とミサカは鞄の中から袋詰めのモヤシを取り出してみます」ス
一方通行「やっぱ持ってきてンじゃねェかモヤシ!!つーか袋に入ったままの生モヤシなンざ食うかボケがァ!!」
バチーン!!
垣根「あ゛あ゛あぁぁぁ!!!」
11111号「それでは次にていとくん、とミサカは尻を擦っているていとくんに向き直ります」
垣根「……あぁ、俺の番か」
一方通行「結局俺の飯はガリとコーヒーだけかよ」
麦野「モヤシもあるでしょ」
一方通行「うるせェ黙れこの鮭女」
11111号「正直、ていとくんは何が好きなのか知らなかったので
こちらで適当に好きそうな物を用意させていただきました、
とミサカは鞄を漁りながらぶっちゃけます」ゴソゴソ
垣根「そこはちゃんと調べてくれると嬉しかったなー、俺……」
11111号「どうぞ、手羽先です」ス
垣根「……あれか、能力で翼が生えるからそっから連想したわけか……まぁ嫌いじゃねぇけど……
ってこれ生じゃねぇかぁぁぁぁ!!!!」
デデーン♪
『一方通行、御坂、麦野、アウトー』
垣根「前から思ってたけどオマエら俺の不幸笑いすぎじゃねぇ!?そんなに滑稽か!!」
麦野「滑稽ね」
垣根「……即答どうも」
一方通行「いやァ垣根くン羨ましいわァ、俺なンかコーヒーとガリだけしかねェからよォ。
生肉食える垣根くンがホント羨ましいわァ」クククク
垣根「ちくしょう死ね」
御坂「ね、ねぇ、垣根さんの翼も羽むしったらそんな風になってるの?」ドキドキ
垣根「知るかアホ!!何でドキドキしてんだよオマエ!?怖ぇよ!!」
バチーン!!
一方通行「はァゥ!!!」
御坂「ッッつううぅぅぅ!!!」
麦野「がぁおッ!!!」
11111号「はてさて、何か不都合がありましたか?
とミサカはパック詰めされた生の手羽先を差し出しながら愛らしく小首を傾げます」クリン
垣根「不都合だらけだろ!!テメェの中で俺は生の手羽先貪んのが好きそうな人間なのか!!」
11111号「肉食系男子チョーカッコイー、とミサカは棒読みでていとくんを褒め称えてみます」キャー
垣根「何かこのクローン俺には特に厳しくねぇか?」イラッ
御坂「それは垣根さんのキャラのせいだと思うわ」
垣根「最近御坂が俺に冷たい」
一方通行「むしろ登場人物でオマエに暖けェ奴なンていたか?」
垣根「心が折れそうだぜ……麦野、ちょっと慰めてくれ」
麦野「死ね」
垣根「あぁ、予想通り過ぎる反応で逆に安心するわ」ハァ
御坂「罵倒されて安心するって……」
11111号「引くわぁ、とミサカは汚物を見るような目でていとくんを眺めます」
垣根「うっせぇ馬ァ鹿!!つか生の鶏肉なんてどうしろってんだ!!どうやって食えばいいんだよ!?」
11111号「部屋の奥が給湯室になってるんで、そちらで煮るなり焼くなりお好きにどうぞ、
とミサカは手羽先のパックをていとくんに押し付けながら奥を指差します」
垣根「自分で料理しろってか……いやもう今更何言っても無駄だろうからいいけどよぉ……」
11111号「ちなみに調味料は結構豊富ですよ、醤油とか塩とかソイソースとかソルトとかシーウとか」
垣根「醤油と塩だけじゃねぇか!!!もういいから帰れオマエ!!」
御坂「いやいやまだ私の分貰ってないから!!勝手に追い返そうとしないでよ!!」
垣根「チッ」
11111号「ご安心くださいお姉様、仕事はちゃんと果たしますから、とミサカは鞄の中からお姉様の分を……
ん?何やら顔色が優れませんがどうしました?とミサカは鞄を漁る手を一旦止めてお姉様に尋ねかけます」
御坂「いやさぁ……私の分も一方通行や垣根さんの分みたいにネタに走ってるんじゃないかなー、って不安でね?」
11111号「敬愛すべきお姉様に向かってそのような無礼を働くなどとんでもない、とミサカは首を横に振ります。
ちゃんとお姉様の大好きな物を持ってきていますよ」フ
御坂「でも私は麦野さんにとっての鮭、一方通行にとってのコーヒー、
みたいに『これが一番好き!』って食べ物はないわよ?やっぱ垣根さんのみたいに適当に選んだんじゃ……」
11111号「いえいえしっかりあるじゃないですか、お姉様と言えばゲコ太でしょう、とミサカは太鼓判を押します」
御坂「いや食べ物じゃないし……」
11111号「大丈夫、用意しておりますよ、とミサカは鞄の中を漁ります」モゾモゾ
御坂「ゲコ太を!?」ビクッ
垣根「あー、キャラ弁とかじゃねぇの?ゲコ太の」
麦野「それかゲコ太の玩具がオマケに付いたお菓子とかじゃない?」
御坂「あぁ、な、なるほど、それはちょっと嬉しいかも」ワクワク
11111号「惜しい、少し違いますね、とミサカは指を振ります」チッチッチ
御坂「え、じゃあどういう……」
11111号「どうぞお姉様、カエルの唐揚げ弁当です」ス
御坂「ぎゃあああああああああ!!!!!」
デデーン♪
『垣根、麦野、アウトー』
御坂「笑い事じゃないわよちょっとおおおお!!!何よこれえええええ!!!!」ヒィィィィ
麦野「か、唐揚げって言うか、姿揚げね……」クククク
垣根「なかなかロックな形状してんな」ケラケラ
御坂「何よロックな形状って!?て言うかゲコ太関係ないじゃないのおおお!!!!」
11111号「え、ゲコ太食べたかったんですか?流石に引きますよ?とミサカは苦笑いを浮かべながら半歩下がります」
御坂「そういう意味じゃなくてえええええぇぇ!!!!」
一方通行「キャンキャン喚いてンじゃねェよ、想像通りだっただろこンなモン」チッ
垣根「オマエどんだけ想像力豊かだよ」
バチーン!!
垣根「がおああああああ!!!」
麦野「でええぇああぁ!!!」
11111号「それではごゆるりと、とミサカは軽く敬礼しながら退室します」グッバイ
御坂「え、ちょ、待、冗談抜きで私のお昼これ!!?」
麦野「食べてみたら案外美味しいかもしんないわよ?」
垣根「味は鶏肉に似てるってのは良く聞くな。中華料理とかフランス料理では結構メジャーだぞ、蛙」
一方通行「世界三大料理の内の二つが食材として採用してるわけか、そンならまァ不味くはねェンだろォな実際」
御坂「問題はそこじゃないでしょ!?見た目よ見た目!!このグロテスクな見た目!!!」
麦野「食べさせたげようか?目ぇ瞑ってあーんしなさい」
御坂「いーやーだー!!」
一方通行「やめとけ、食いたくねェっつーンなら無理に食わす必要ねェだろ。
後々空腹で体力が切れて不利になンのはそいつの勝手だ」
垣根「とりあえず御坂は置いといて、さっさと昼飯終わらせようぜ。
一方通行の机の引き出しってメインイベントが残ってんだからよ」
麦野「それもそうね、私もシャケ弁冷める前に食べたいし」
御坂「うぅぅ……」
垣根「んじゃ俺ちょっと手羽先焼いてくるわ」
麦野「はいはい」
一方通行「おい垣根、手羽先分けてくれ。ガリやるから」
垣根「驚くほどいらねぇ……」
麦野「さて、私はさっさと食べようかね」イタダキマス
一方通行「あ?今回は鮭と対話しねェのか?」
麦野「え、だって冷めるし」
一方通行「あ、うン、そォですね」
御坂「ね、ねぇ麦野さん、お弁当少しわけt……」
麦野「断る」
御坂「う……ちょっとだけ!本当にちょっとだけだから!何なら私のも上げるから!」
麦野「いくら美琴の頼みでもこればっかりは無理ね、このシャケも私に食べられたがってるし。
て言うかカエル弁当なんざいらんわ」
御坂「うぐぐぐ……」
一方通行(第四位にだけちゃンとした好物が用意されてたのは超電磁砲に弁当分けるのを防ぐ為か……)
垣根「おい給湯室フライパンも鍋も置いて無かったんだけど、どうすりゃいいと思う?」ヒョコ
麦野「生でいけ」
一方通行「クフッ」
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
垣根「笑い事じゃなくてな?マジ困ってんのよ。どうやって調理すりゃいいんだちくしょう……」
麦野「生で行けって生で。本気でやったらドン引きするけどお情けで一回くらい笑ってやってもいいわよ?」
垣根「浜面じゃねぇんだから、んな事やらねぇよ」
一方通行「オマエはホント……かわいそうだなァ……」クックック
垣根「哀れむんじゃねぇ!!」
バチーン!!
一方通行「はおォォォォォ!!!」
垣根「なぁ一方通行、ちょっと給湯室来て一緒に方法考えてくれねぇ?」
一方通行「あァ?何で俺がンな事やらなきゃならねェンだよ……」
垣根「オマエ一応第一位なんだから頭いいし悪知恵も働くだろ。手羽先分けてやるからちょっと手伝え」
一方通行「チッ、しょうがねェな」ガタ
御坂「あ、じゃ、じゃあ私も……」
垣根「オマエはカエル食ってろよ」
御坂「酷くない!?」
―給湯室
一方通行「マジで調理器具全然ねェな……シンクとコンロだけじゃねェか」
垣根「病院だしな……冷静に考えてみりゃぁ鍋とかフライパンは使わねぇだろ普通」
一方通行「休憩中に料理するような医者はいねェよなァそりゃ」
垣根「茶ぁ飲む為の電気ポットと急須、それと湯飲み。ここにあんのはそんだけだ。
せめてアルミホイルでもあればいいんだが……つーか何の為にコンロついてんだ?」ガサゴソ
一方通行「……あ」
垣根「ん、何か見つかったか?」
一方通行「その急須でいけるンじゃねェか?土瓶みてェなモンだろ」
垣根「おぉなるほど、ちょっと小せぇが土瓶蒸しみてぇな要領でやればいいわけか。そうと決まれば早速……」
垣根は小さな急須を土瓶に見立て必死に手羽先を押し込む。少々無理をすれば何とか二本くらい入りそうだ。
途中、ポキポキと手羽先が折れる不快な感触があったがそんな事を気にしている場合ではない。
何とか手羽先に火を通さねば昼飯が抜きになってしまうのだから。
垣根「うし、入った」
一方通行「ンじゃ火にかけてみるか」カチ
手羽先のギチギチに詰まった急須をコンロの上に置き、火をつける。
ほどなくして、チリチリという肉の焼ける音と共に、香しい匂いが漂い始めた。
しかしこいつら、後でその急須でお茶を淹れる人の事とかは考えたりしないのだろうか?
鶏肉の油と臭いがこびり付いた急須なんぞ二度と使えんぞ……
垣根「お、いけそうだな」
一方通行「待て、何か妙な音が……」
急須<ピシピシ
垣根「ん、何だ?何かひび割れるような音が……」
急須<パリーン!
垣根「割れたああああああ!!?」ガーン
一方通行「うおォ!?」ビクッ
そら割れる。安物の陶器で出来た急須を直接火で炙ったら割れるに決まっている。
急須と土瓶では所詮用途が違いすぎるのだ。安物の急須は直火に耐えられる程の耐熱性能は持っていない。
哀れ急須はお茶を淹れるという使命も果たせぬまま、断末魔を上げて砕け散ってしまった。急須ーー!!
一方通行「……」
垣根「……」
一方通行「……割れたな」
垣根「パリーン、だってよ」
一方通行「……フッ」
垣根「クウッ」
デデーン♪
『一方通行、垣根、アウトー』
一方通行「変な間ァ開けるのやめろつってンだろォがァァァァ!!!」
垣根「クソ、割れてんじゃねぇよ根性無しの急須が!!」
一方通行「第七位みてェな事言ってンじゃねェよ馬鹿!どっから登場フラグ立つかわかンねェンだから自重しろ!!」
バチーン!!
―休憩室
麦野「馬鹿二人が仲良くアウト喰らってるわ、ざまぁ」モグモグ
御坂「……」ジー
麦野「……」モグモグ
御坂「……」ジー
麦野「……」
御坂「……」ジー
麦野「……おいやめろ、そんな雨の日にダンボールに捨てられた子犬みたいな目でジッとこっち見んのやめろ。
流石に食べ辛いわ」
御坂「お腹空いた……」ウルウル
麦野「食べればいいじゃん、それ」
カエル弁当<クエヨ ←これ
御坂「無理、生理的に無理。一緒に入ってる白米すら食べたくないわ……」
麦野「目ぇ瞑ってパクッといっちゃいなって」
御坂「いやぁぁ……」
垣根「あー、これで何とかなったな」テクテク
一方通行「あァ、急須が割れた時はビビッたがとにかく手羽先は処理出来そうだな」
麦野「何だ手羽先は何とか出来そうなの?つまんねぇわ」ハァ
垣根「一人だけ普通の弁当だからって調子に乗りやがって」
御坂「調理器具無かったんじゃないの?結局どうやったわけ?」
一方通行「電子レンジがあったからそれに突っ込ンで来た」
麦野「真っ先に気付けよ、電子レンジに」
御坂「……ねぇ、上手く火が通ったら私にも手羽先わけt」
垣根「やだ」
御坂「即答しないでよ!?いいじゃないちょっとだけだからさ……」
垣根「三人で分け合う程の量はねぇんだよ」
御坂「……それなら一方通行の分を抜けばいいんじゃない?元々一方通行は私達三人の共通の敵なんだし!」
一方通行「オマエは回を増すごとに黒くなっていきやがるなァ……」ウワァ
垣根「いや、一方通行がコーヒーとガリだけの昼食を済ますよりも
オマエが飯抜きになるかカエル弁当食うかって葛藤してんの見るほうがネタとして面白ぇし」
御坂「ひどッ!?」
麦野「はぁ……こっちおいで美琴、見てらんないわ」ヤレヤレ
御坂「え?」
麦野「分けてあげるわよお弁当」
御坂「え、嘘!?本当に!?」
麦野「……のバランを」ス
御坂「ちょっとおおおおおお!!!!」
※バラン……弁当の中によく入ってるギザギザのアレ。食べられません。
デデーン♪
『一方通行、垣根、アウトー』
垣根「そんな事だろうとは思ったが……クソッ」
一方通行「持ち上げて叩き落す、基本だがなかなかやるじゃねェか第四位……」ククク
麦野「これを目隠し代わりにすればカエルを食べるのにも抵抗が……」
御坂「何よその完全に間違った優しさ!?例え見えなくてもカエルは食べたくないんだってば!!」キー
バチーン!!
一方通行「ぐぎゃあァァァァ!!!」
垣根「モルスァ!」
麦野「冗談はさておき、分けてあげるからこっち来な」オイデオイデ
御坂「……本当に?」ジトー
麦野「あぁ?疑うんなら分けてやんないわよ?」ギロ
御坂「あぁぁぁごめんごめん!すぐ行くから!」ワタワタ
一方通行「な……まさか第四位の奴本気で分けてやるつもりなのか!?」
垣根「冗談だろ……?麦野が、あの麦野が命の次に、否、命よりも大切な鮭弁を他人に分け与えるなんて事……」ガクガク
一方通行「麻薬常習者が無料で麻薬配るよりもあり得ねェ……」
麦野「お前らさぁ……」
一方通行「こっち見ンじゃねェよ、鮭が伝染ンだろォが」チッ
垣根「鮭が伝染るって何だ?麦野に睨まれると鮭になんのか?メドゥーサの亜種か何かか?つか鮭になったら食われるぞ?」
麦野「ならねぇし食わねぇよ」イラッ
御坂「えっと……」グゥー
麦野「あぁ悪い、今分けてあげるから」ゴソ
言いつつ、麦野は箸で弁当の中身を少し取ると、物欲しそうな目で見ている御坂に対してそれを突き出す。
おぉ、これは……
麦野「はい、あーん」
御坂「うえぇ!?」ビクッ
麦野「何?何か不満なわけ?」アァ?
御坂「じ、自分で食べれるから!ほ、ほら私のお弁当箱の蓋の上にでも置いてくれれば……」サッ
麦野「ダメダメ、これがお弁当分けてあげる条件よん」
御坂「で、でも恥ずかしいし……」
麦野「だからいいんじゃないの」フ
御坂「うぅぅ、ひどい……」
御坂は頬を赤らめわたわたとしながら、少々恨めしそうに麦野を睨み付ける。
初心な御坂にとって『あーん』されるのは相当恥ずかしいらしい。
そんな彼女を、麦野は瞳を嗜虐的に輝かせながら心底楽しそうに見つめ返す。
楽しんでますねお姉さん。
一方通行「おい垣根」
垣根「あぁ、間違いない。百合だ」キリッ
一方通行「何言ってンのオマエ?それよりそろそろ手羽先がいい頃じゃねェか?」
御坂「ほ、ほらほら!あいつらも変な目で見てるし!!」
一方通行「あァ?自意識過剰にも程があンだろこの洗濯板が。洗濯機に生まれ変わって出直しやがれ」チッ
垣根「スカートの下に短パン履いてるようなガキには興味ねぇから安心しろ」
御坂「何か今回私の扱い悪くない!?」
麦野「見てないってさ。ほら、早くしないと分けてあげないわよ?あーん」
御坂「えぅぅ……」
一層顔を赤くし、目を伏せつつもじもじとあざとくも可愛らしく悶えていた御坂だったが、
やがて覚悟が決まったのか「よし」と小さく呟くと、麦野に向かって半歩ほど歩み寄る。
そこでまた逡巡してしまったのか、しばし麦野の顔を見つめ無言の抗議をするが、
麦野もこれ以上譲る気は無いらしく、箸を構えたまま余裕の表情で御坂の動きを楽しげに眺めている。
どうしようもないと悟った御坂は、迷いを振り払うように一度目を強く閉じて瞬きすると、
仕方なしに、おずおずと口を開いていった。
イヤァッッホォォォオオォオウ!
御坂「あ、あーん……」カァー
熟れた林檎のように真っ赤な顔のまま、御坂は大きく口を開き麦野の方へ身を乗り出す。
その目に溜まった涙は羞恥か、屈辱か、或いは興奮か。
いずれにせよ涙目で『あーん』する彼女の姿は見る者の加虐心を刺激し、背徳的なエロティシズムを醸し出していた。
麦野「はい、よく出来ました」
眼前の光景に満足いったのか、麦野は箸を構えているのとは逆の、空いている左手でそっと御坂の髪を撫でる。
男子禁制、完全無欠の百合空間の完成である。
え、第一位と第二位?あぁ、隅っこでコーヒー飲みながら手羽先食ってるよ。
麦野「……」ナデナデ
御坂「……」
麦野「……」ナデナデ
御坂「……」
麦野「……」ナデナデ
御坂「はよ食べさせんかぁぁぁぁい!!!!」キシャー!
麦野「……チッ」
御坂「『チッ』って何よ『チッ』って!?」
麦野「あーはいはい、んじゃ食べさせてあげるからもっかいあーんして」ハァ
御坂「あ……あーん……」パカ
再び御坂が大口を開けたその瞬間、麦野の目が怪しく輝く。
彼女が動かしたのは箸を持った右手ではなく左手であった。え、また?
麦野の目は御坂を見つめたままだと言うのに、彼女の左手は獲物を捕獲する蛇のごとき素早さとしなやかさで
御坂の隣に放置されていたカエルの唐揚げ弁当の方へ伸びていく。は、はやい!
そして弁当のメインであるカエルの唐揚げを正確に摘み上げると目にも留まらぬ速度でそれを御坂の口中に押し込んだ。
その間!実に0.2秒!能力を封じられている今の御坂が対応できる速度ではなかった!
麦野「っそぉい!!」ズボ
御坂「もごぉあ!!?」ゴボッ
デデーン♪
『一方通行、垣根、アウトー』
一方通行「これを狙ってやがったのか……いや、第四位が鮭譲るはずなンざねェってわかってたはずなンだが……」
垣根「つーか前振りが長ぇよ!!」
麦野「はーい美琴ちゃーん、よく咀嚼してねー」ギュー
御坂「んー!んーー!!」モゴモゴ ←吐けないように口を押さえられている
バチーン!!
一方通行「ッふあァァァァ!!!」
垣根「ひええぇぇぇい!!!」
御坂「むーむーむー!!!」モゴモゴ
麦野「はいはい、ごっくんしたら放してあげるからねー」ガッシリ
御坂「…………ゴクン」
麦野「はいおつかれ」パッ
一方通行「……ほぼ丸呑みしたンじゃねェか?」
垣根「骨とかはないだろうし大丈夫だろ」
御坂「……」キッ
麦野「んなに恨めしそうな目で見ないでっての、こうでもしなきゃあんた昼抜きになってたでしょ?
それじゃこの先持たないわよ」
御坂「素直に鮭弁分けてくれればよかったじゃないのおおおお!!!!」ガー
麦野「あぁ?寝言は寝てから言えやガキが」チッ
垣根「うわぁこの人マジ酷ぇ」
一方通行「ンでェ、愛しのカエルちゃンのお味はどォだったよ?」
御坂「え?あぁー………」ンー
垣根「味わかったのか?無理やり口に押し込まれた上ほぼ丸呑みだったろ」
御坂「うん………意外と、ご飯が進みそうな味だったわ」ウン
一方通行「……そォか」
御坂「もういいや、開き直って普通に食べよう」イタダキマス
麦野「あらやだ案外逞しいわこの子」
垣根「やっぱ猫被ってやがったなこの腹黒中二……」
―食後
垣根「さて、それじゃ飯も食い終わったところで」
麦野「いよいよ第一位の引き出しを開けまーす」
一方通行「まだ開けるつもりだったのかよ……」
御坂「て言うか昼休み長いわね……」
垣根「おい一方通行、オマエこんだけ引っ張っといて引き出しの中身がしょぼかったら土下座もんだぞ?」
一方通行「土下座すンのは俺のキャラじゃねェな、オマエがやれ」
麦野「そうね、土下座と言えば垣根ね」
御坂「垣根さんは汚れ役押し付けられる事が多いもんね」
垣根「カエル貪り食ってたオマエほどじゃねぇよ」ケッ
御坂「あんまりそういう事言わないで貰える?デリカシーが無いわね」
一方通行「はァ……ンじゃそろそろ引き出し開けるぞ?いいか?」
麦野「あれ、あんなに嫌がってたのに結局自分から行っちゃうわけ?」エー
一方通行「何不満そうなツラしてンだよ、どォせ開けたくねェつってもオマエらが勝手に開けンだろォが。
なら自分から開けて俺の手で中身を有効活用すンのが最適解だろ」
垣根「わかってんならさっさと開けろよ、いいオチ期待してんぞ」
一方通行「うぜェ」チッ
ようやく一方通行もその気になったようで、ぶつぶつと文句を言いつつも引き出しに手を伸ばす。
と、その瞬間――
一方通行「いって!」ビクッ
垣根「あ?」
御坂「どうしたのよ?」
一方通行「クソ……引き出しの取っ手に画鋲が仕掛けられてやがる……」イテテテテ
御坂「うわ、地味に痛そう」
垣根「ヒュッ」
麦野「エフンッ」
デデーン♪
『垣根、麦野、アウトー』
垣根「ちょ、待って、今俺ほんの少し口元が緩んだだけじゃん?笑ってないじゃん?
ちょっと斬新な呼吸法編み出しただけじゃん?」
一方通行「じゃンじゃンうるせェよ、何だその言い訳」
麦野「おいいいいぃぃ!?垣根はともかく私はちょっと咳しただけだろうが!!!」
御坂「笑ったの誤魔化そうとしたようにしか見えなかったわよ……」
バチーン!!
垣根「んぎゃあぁぁぁ!!!」
麦野「ぐあッったぁ!!!」
一方通行「……ンじゃ開けるぞ」ゴソゴソ
御坂「ん、どうぞ」
垣根「大丈夫か?オマエの筋力で開けれるか?」
一方通行「ぶち殺すぞ」
麦野「いいからさっさと開けろ、これ以上引っ張んな」チッ
一方通行「へェへェ開けます開けますゥ」ガラッ
一方通行「……」ジッ
一方通行「………」ピシャ
垣根「おい何で閉めた」
御坂「え、何?どうしたの?」
一方通行「いや、これは多分出さねェ方がいいと思うわ」ダメダメ
麦野「はぁ?まぁたそんな事言い出しやがるのかよテメェは」
一方通行「いやいやマジで、百害あって一利ねェよこれ、ホント誰も得しねェ事態になるのが目に見えてる」
御坂「だから何が入ってたのよ?」
垣根「一方通行の反応見る限り視覚的な笑いを誘う類のモンじゃなさそうだが……」ハテ
麦野「まだるっこしいわねぇ、さっさと出さないと力ずくで行くわよ?」チッ
一方通行「はァ……どォなっても知らねェぞ?」ガラッゴソゴソ、コト
御坂「え……こ、これって……」
麦野の半ば脅迫じみた発言を受けた一方通行が渋々引き出しから取り出したそれは
手の平サイズの小さなスピーカーのようなもので、その頭頂部に赤くて丸いボタンのようなものがついていた。
そう、前回猛威を振るった『押すだけで誰かがアウトになるスイッチ』である。
早くも登場した最終決戦兵器を前に、四人の間に緊張が走る。
一方通行「ほら出しちまったぞ?どォすンだ?知らねェからな俺」アーア
御坂「み、見なかった事に……って言うのはダメかな?」
垣根「ここまで引っ張っといてそれはねぇだろ」
麦野「そうね、どうせ押したところで垣根辺りがアウトになるのは目に見えてるし遠慮なくドーンと押せばいいのよ」ウン
垣根「おい」
一方通行「まァ前回の流れ的に最初にアウトになるのは垣根だろうなァ。デコイがあると助かるぜ」
垣根「デコイ呼ばわり!?」
御坂「そっか、それなら押しても問題ないわね」ウン
垣根「ひどぉい……」
一方通行「ンじゃとりあえず一回押しとくか。あばよ垣根」
垣根「俺がアウトになる前提で話進めんじゃねぇよ!!」
垣根の抗議もそっちのけで一方通行はスイッチに人差し指を添えると、
一旦そこで止まり、垣根に向かって挑発的な視線を投げかけてからそれを押し込んだ。
ポチリ、という小気味良い感触と共にスピーカーから例の効果音が鳴り響く。酷い装置だ。
デデーン♪
『御坂、アウトー』
御坂「ほええええええ!!!?」ビクゥ
一方通行「オッフ」
垣根「グヘェ」
麦野「ングゥ」
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、アウトー』
御坂「ちょっとぉ!何で私なのよ!!?」
一方通行「クッソォ、完全に不意打ちだったぜ……まさか超電磁砲とはなァ……」ククッ
垣根「結局全員アウトになってんじゃねぇか……」
麦野「く、お約束通り垣根がアウトになってればこんな事には……」
バチーン!!
一方通行「ほぐあァァァァ!!!」
垣根「ほんむ!!!」
御坂「あんッッ!!!」
麦野「っづあァ!!!」
御坂「うぅぅ、痛い……酷い……」サスサス
一方通行「痛ェのは皆一緒だろォが」チッ
垣根「何でオマエらちょっと俺の事睨んでんの?」
麦野「それよりスイッチどうすんの?まだ押す?」
御坂「押さないでよ!?もうイヤよ笑ってもないのにアウトになるなんて!」ビクッ
一方通行「オマエがアウトになるとは限らねェけどな」
垣根「まぁ多分前回と同じように誰がアウトになるかはランダムだろうな、偶々御坂がトップバッターだっただけで」
御坂「……じゃあもう一回押しちゃおっか、私一人だけ理不尽なアウト貰って悔しいし」ウン
一方通行「オマエ今その理不尽なアウトを周囲に押し付けようとしてンだぞ?わかってンのか?」
麦野「まぁいいじゃない、せっかくのスイッチを一回で終わらせるのは勿体無いし。次こそ垣根かしらねぇ?」
垣根「ほざけ、オマエか一方通行だよ」チッ
御坂「それじゃ私が押すわよ?いい?」
一方通行「好きにしろ」
御坂「えい!」ポチ
デデーン♪
『御坂、アウトー』
御坂「何でええええええええ!!!?」
一方通行「プンッ」
垣根「ッキュ」
麦野「コホッ」
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、アウトー』
御坂「何でよ!!どうなってんのよおおおお!!?」
垣根「まさか固定なのか、このスイッチ」クククク
一方通行「薄々こうなるンじゃねェかとは思ってたけどなァ」ケラケラ
麦野「あーあかわいそうに」クスクス
バチーン!!
一方通行「ほああァァァ!!」
垣根「ふがあ!!!」
御坂「いったああああ!!!」
麦野「でええッ!!!」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
11111号「こちらが精神病棟になります、とミサカは先行しながら一行を振り返ります」
昼食後、レベル5の一行は11111号に連れられて精神科の病棟へと案内されていた。
本来体を休める事が出来たはずの昼休みを無為な争いで潰してしまった一行の足取りは重く、
事の発端である垣根すらも心底だるそうな顔をしている。お前馬鹿だろう?
一方通行「はァン、案外普通なンだな精神病棟ってのも」
麦野「患者が逃げ出さないようにそこらじゅうに柵でも備え付けてんのかと思ってたわ」
御坂「世界一技術の発達してる学園都市で流石にそれはないでしょ……」
垣根「閉鎖病棟とかはそんな感じなんじゃねぇの?この病院にあるかは知らねぇけどよ」
11111号「とりあえずお約束通り担当のお医者様に挨拶に行きましょう、とミサカは先導します」カモン
11111号の案内の元、一行は静かに廊下を歩いて行く。内装は他の病棟と変わらないはずなのだが、
精神病棟と言うだけでなんとなく不気味に感じるのだから不思議なものである。
途中、どこかで見た覚えのあるような巫女服の少女がこちらをじっと伺っていたような気がしたが
多分気のせいなので四人は普通にスルーした。
―精神病棟・診察室前
11111号「入ってもよろしいですか?とミサカは診察室のドアをノックします」コンコン
「どうぞぉ、鍵は開いてるわよぉ」
御坂「!? 今の声は……」
11111号が診察室の扉を軽く叩くと、間髪いれずに入室を許可する返事が返ってきた。
その声は思わず聞き惚れてしまいそうな、鈴を転がすような甘い美声だったが、
御坂だけはどうにもその声に聞き覚えがあり、かつあまりいい印象を持っていないようで、
一人苦虫を噛み潰したような顔をする。
が、院長室前の垣根の時と同様、11111号がそんな御坂に慮るはずもなく、彼女はあっさりと扉を押し開いた。
「いらっしゃい、待ってたわぁ」
診察室の中央で、一人の少女が丸椅子に座ったまま一行を出迎えた。
長い金色の髪に長身痩身、しかし出るところはしっかり出ているモデル体型。
そんな大人びた身体つきに似合わずややあどけなさの残る顔立ち。
アンバランスなようで大人にも子供にも見える絶妙なバランスを保った美少女がそこにいた。
「まったくもう、待ちくたびれちゃったわよ?」
御坂「やっぱりあんたか……何でよりによってあんたが精神科医役なのよ」ハァ
「何でってぇ、わかんない?私ほど精神科医に向いてる人材もいないと思うけどぉ?
どんなお悩みも心の病も一発で解決しちゃうわよぉ」
御坂と知り合いらしい少女はころころと笑いつつ近くに置いてあったリモコンを手に取ると、
それを構えながらぺろりと舌を出す。一連の挑発的な動作に御坂は眉間に皺を寄せるが、
彼女のこういった他人を小馬鹿にするような言動はいつもの事なので、すぐに怒りを収める。
むしろ怒って相手のペースに乗せられてしまう事の方が恐ろしい。
垣根「うん?何だこいつ、御坂の知り合いなのか?」
麦野「友達は選んだ方がいいわよ美琴」
「第四位さんったらひどぉい、初対面なのにぃ」プンプン
麦野「あぁ?私の事知ってんのか?」
御坂「あーえっと、こいつは……」
一方通行「……第五位、だろ?確か食蜂つったか」
御坂が答えるよりも先に、一方通行がつまらなそうに少女の素性を吐き捨てる。
そう、このちょっとアホの子っぽい少女こそ、レベル5の第五位、常盤台の女王、食蜂操祈である。
素性を知られていた事に驚いたのか、食蜂は一瞬ビクンと身体を震わせ目を見開く。
が、すぐに平静を取り戻すと、挑発的な笑みを浮かべながら一方通行の方へと顔を向けた。
食蜂「あらぁ、第一位さんに名前を知られてるだなんて光栄ねぇ、感激しちゃうわぁ。
そんなに私に興味があったのかしら?」クスクス
一方通行「ハッ、常盤台には獲物物色する為に何度か足運ンだからなァ。
そン時に俺の(イヤガラセの)標的になンのが怖くてコソコソ隠れ回ってる雑魚が目についてよォ?
あンまり無様なモンだからつい覚えちまったワケだ」
食蜂「ふぅん……ねぇ第一位さん、そんな強気な態度でいいのかしらぁ?知ってるわよ?
今あなた達は能力を制限されてて無能力者も同然なんでしょ?」
一方通行「あァ?」
食蜂「私の能力、心理掌握なら無防備な状態のあなたなんて一瞬で私の奴隷にしちゃう事も出来るのよ?
私は優しいからそんな事する気はないけどぉ、あなたがあんまり反抗的な態度取るんならわかんないわよぉ?」
一方通行「ひゃはははは!!言うねェ!!散々俺にビビッてたクソ格下が面白ェ事抜かしてくれるじゃねェか!!
いいぜェ?オマエごときの能力が果たしてこの俺に通用するのか……」
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
一方通行「あ?……あァーッ!!やっちまったァァァァ!!」
垣根「オマエ、馬鹿だろ?」
11111号「うわぁぁかっこ悪ぅ、とミサカはあっさり挑発に乗った一方通行を嘲笑います」プゲラ
御坂「一瞬漂ったシリアスな空気が台無しね……」
麦野「だっせぇ……」
バチーン!!
一方通行「ごはあァァァァ!!!」
食蜂「……何か毒気抜かれちゃったわぁ」ハァ
一方通行「いってェ……クソ、なかなかやるじゃねェか第五位……」ク
食蜂「えぇー今の私のせいなの?」エー
御坂「気にしなくていいわよ、そういう奴だから」ハァ
一方通行「決めたぜェ……今まではただの雑魚だと思って機会があっても見送ってやってたがよォ、
これからはオマエも俺のイヤガラセリスト入りだ」ギリリ
食蜂「噂で聞くよりずっと理不尽な人ねぇ、やっぱりこの場で私の奴隷にしちゃおうかしらぁ?」
11111号「はいストップ、企画の参加者に対して能力使うのは無しという約束でしょう?収拾つかなくなりますし。
んな事よりぼちぼち研修をはじめてくださいよ、とミサカは話を先に進めます」
食蜂「あ、そう言えばそういう約束だったわねぇ。
んー、勿体無い機会だけど下手な事して私まで能力制限されちゃったらイヤだしぃ、
格上の人達の無様な姿を間近で見学出来るんだからまぁいっかぁ。見逃して上げるわ第一位さん」クスクス
一方通行「はン、命拾いしたのはオマエの方だろォが。言っとくが俺の駒は能力だけじゃねェからな?
このまま続けてたらオマエ死ンでたぜ」
食蜂「またまたぁ、強がっちゃってぇ~」ニヤニヤ
一方通行「あァ?強がりかどォか……」
11111号「一方通行、話が進まないんで後にしてください、
とミサカは懐から何かを取り出そうとしている一方通行を嗜めます」
麦野「つかどっから来んのよその自信?能力無かったらただのモヤシの癖に」
食蜂「とりあえず第一位さんは置いといてぇ、今から患者さんに来てもらうから私が治療する所を見てしっかり学んでね?」
垣根「……いや、能力で強引に治療するの見せられて何を学べってんだ?」
食蜂「大丈夫よ、ちゃぁんとカウンセリングからはじめるから。
能力を使わなくても私ほど他人の心の動きに敏感な人はなかなかいないのよぉ?」
御坂「て言うかそんな都合良く患者さんが来るものなの?」
11111号「その点は大丈夫です、そろそろ予約していた患者さんがいらっしゃる時間ですから。
午後一で精神科に来たのはその兼ね合いもあるのですよ、とミサカは抜かりが無い事をアピールします」フフン
ドア<コンコン
一方通行「ン?」
垣根「患者か?」
食蜂「来たみたいねぇ。どうぞぉ」
ドア<ガチャ
香焼「すいません消したい記憶があるんすけど……」ヨロヨロ
デデーン♪
『全員、アウトー』
垣根「香焼くん!ショタコンにとっ捕まって生死不明になった香焼くんじゃないか!」ゲラゲラ
一方通行「何か生まれたての小鹿みてェにプルプルしてンぞ」クククク
御坂「ぶ、無事逃げられたのね、よかった……」クスクス
麦野「いや無事じゃないでしょ。見なさいよあの顔、すっげぇゲッソリしてるじゃない」ケラケラ
バチーン!!
一方通行「うぼォァ!!!」
垣根「おうあッ!!」
御坂「いぃったあああああ!!!」
麦野「があああああ!!!」
食蜂「すごぉい、皆動物みたいな声が出るのねぇ。私そんな大声出した事ないから同じ人間だと思えないわぁ」クスクス
御坂「うあー、あんたに見られてると思うとすっごい腹立つわ……」
垣根「んっとに出てくる女全員性格悪ぃな」チッ
麦野「お陰で私の性格の良さが際立つでしょう?」フ
一方通行「おい笑わそうとするンじゃねェよ第四位」クッ
麦野「どういう意味だテメェ」
香焼「あ、あの、それで……」
食蜂「あ、ごめんなさいねぇ?どうぞ、こっちに来てもらえるかしらぁ?」オイデオイデ
香焼「は、はい……」ビクビク
垣根「うっわ、何かかわいそうなくらいビクついてやがる」
一方通行「女性不信にでもなってンじゃねェか?」
御坂「何されたんだろ……」
麦野「そりゃナニでしょ?」
御坂「だからそういう下品な……ん、やっぱり何でもないわ」
食蜂「それでぇ、消したい記憶があるって言ってたわよね?えっとぉ……」
香焼「……あ、香焼っす」
食蜂「香焼くん、何があったのかお姉さんに話してもらえるかしらぁ?」
香焼「ひいいいいいいいいいい!!!!!」
食蜂「え、な、どうしたのぉ?」ビクッ
香焼「すいません『お姉さん』とか『お姉ちゃん』とかそういう一人称マジやめてください!!
ごめんなさい勘弁してくださいほんとすいませんやめて!!!」
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、アウトー』
一方通行「やっべェ超トラウマになってンじゃねェか、かわいそうによォ」クククク
11111号「と言いつつ爆笑する外道モヤシです」
麦野「いやぁ今のは外道モヤシじゃなくても笑うでしょ、すっごくいいリアクションだったじゃない」ケラケラ
垣根「マジでなぁ、『姉』って言葉にあそこまで拒絶反応示すのかよ」ゲラゲラ
御坂「……」 ←前回下手すると自分があぁなっていたのかと思うと怖くて笑えない人
バチーン!!
一方通行「おぶァ!!!」
垣根「あおぁぁぁぁ!!!」
麦野「つあぁっ!!!」
香焼「はぁ、はぁ、はぁ……」スーハースーハー
食蜂「落ち着いたかしらぁ?」
香焼「すいません取り乱して……」
食蜂「気にしてないから大丈夫よぉ。それより何があったか話してもらえる?」
香焼「はい……えっと、あの……その……」
食蜂「ん~?」
香焼「う、うぅぅぅぅ……うあぁぁぁぁ………」ガクガクガク
食蜂「……話し辛いみたいねぇ、ならいいわぁ私の能力であなたの記憶を覗かせて貰うから」
香焼「そ、そんな事が出来るんすか?」
食蜂「出来るわよぉ、私凄いんだから」フフン
香焼「じゃ、じゃあお願いします。正直思い出すのも辛いんすよ、ほんの数時間前の事なのに……」ガタガタガタ
食蜂「任せなさぁい。それじゃぁリラックスして、目を閉じて……」
香焼「いやだあああああ!!!暗いのはいやだあああ!!!目隠しはやめてええええ!!!」
デデーン♪
『一方通行、麦野、アウトー』
一方通行「目も閉じれねェたァ、こりゃ重症だなァ香焼くン」クククク
垣根「目隠しプレイか!目隠しプレイを強要されたんだな!?」
御坂「何でちょっと興奮してんのよ……」
麦野「あーダメだ、私こういう不幸な第三者を眺めてるとどうしてもニヤけちゃうわ」クスクス
御坂「何気に最低な事言ってるわね麦野さん……」
食蜂「わ、わかったわぁ、目は閉じなくていいから、開けたままでいいから、落ち着いて、ね?」
香焼「はぁ、はぁ……すいません、ほんとすいません……」ゼーゼー
食蜂「うん、じゃあ目は開けたままで、身体の力を抜いて……」
香焼「いやあああああ!!!力抜いたら入れるんでしょう!?入れる気なんすね!?
やめて!!入らない!!そんなの入らないすからあああああ!!」ガクガクガクガク
食蜂「お、落ち着いてぇ!何も入れないから!ねぇ!?」ビクッ
デデーン♪
『垣根、麦野、アウトー』
一方通行「……入れられたのか」ウワァ
麦野「入れられちゃったんでしょうねぇ」クスクス
御坂「何を!?ねぇ何を入れられたの!?」ビクッ
垣根「ショタコンマジ半端ねぇ……」クククク
香焼「コヒュー、コヒュー……」
食蜂「この子過呼吸起こしかけてる……もぉー、しょうがないわねぇ……」ハァ
いい加減この突然トラウマが暴発する厄介な患者に付き合うのに疲れた食蜂は、
一旦香焼から顔を背け、軽く溜息を吐きながら机の上に置いていたリモコンを手に取る。
そのリモコンは勿論一般的なそれではなく、食蜂が能力を使用する際に媒介とする特別仕様のものだ。
それを手に取ったという事はつまり、彼女はカウンセリングの真似事をやめ、
己の能力を使って一気に治療する方針へ切り替えたということにだ。
まぁそりゃ何が引き金になってトラウマが爆発するかわからない相手のカウンセリングなぞ出来るもんでもないし。
食蜂がリモコン片手に香焼の方に向き直ると、彼は焦点の合わない目で荒い呼吸を繰り返している。
香焼とて天草十字凄教に所属する列記とした魔術師であり、それなりの修羅場を経験してきているはずなのだが、
その彼を短時間でこれほどまでに破壊し尽くした結標は一体どれほどのものだというのか。
食蜂「もう面倒だしカウンセリングで治るレベルでもなさそうだから、能力で一気にやっちゃうわよぉ?」
香焼「こ、この状態から解放されるんなら何でも……」ハァハァ
食蜂は右手に持ったリモコンを香焼の方へ向け、ぺろりと下を出す。
「じゃ、サクッと今日の記憶ごと消しちゃうわね?えい、あなたの精神(ハート)操っちゃうゾ☆」ピピピ
香焼「はう!!」ビクン
何だか気の抜ける掛け声とともに食蜂がリモコンを操作すると、
香焼はびくりと一瞬身体を跳ねさせ、その後すぐにがっくりと全身の力が抜けたかのように項垂れる。
御坂「ちょ、ちょっと大丈夫なの?何だかぐったりしちゃったけど……」
食蜂「大丈夫よぉ、一気に記憶消去したから意識が飛んじゃっただけですぐに目を覚ますわよ」フフフ
香焼「う、うぅん……」
食蜂「ほらねぇ?おはよう香焼くん、気分はどう?」
香焼「え?えっと、あの……え?ここは……?」キョロキョロ
垣根「おぉ、記憶消すのには成功してるみてぇだな」
一方通行「このくれェは朝飯前にやってもらえねェとな。腐ってもレベル5なンだからよォ」
食蜂「だ、誰が腐ってるですって?失礼しちゃうわぁ」プンスカ
香焼「え……っと、ここ、どこっすか?あなた達は……?」
麦野「病院よ病院。本当に何も覚えてないのね」
香焼「病院……?あ、そうか、確か風邪引いたから病院に行こうとしてて……
あ、あれ、でもいつの間に病院に……?それに治療された覚えも……」ンー
御坂「あちゃー、混乱しちゃってるわねやっぱり」
垣根「無理もねぇわな、記憶にすっぽり穴が空いた状態なんだろ?」
食蜂「ちょっと消しすぎちゃったかしら?でも顔色は随分良くなってるしぃ、
どうやらトラウマも無事消せたみたいねぇ」
一方通行「まァ来た時は『今から電車に飛び込みます』みてェな面してやがったからな。
あンだけ絶望した表情は俺でもなかなか拝めねェぞ」
麦野「あら?自殺する直前の人って結構晴れやかな顔してんじゃなかった?」
御坂「どっちでもいいわよ……やめてよそんな会話……」
香焼「えと、よくわからないけど治療してくれたんすよね?ありがとうございます」ペコ
食蜂「気にしないでいいのよぉ?それが私の役割だもの。それよりもう体調は大丈夫?」
香焼「あ、はい……ちょっと意識がぼんやりしてますけど概ねは」
食蜂「うんうん、私の治療は大成功ね。どう?参考になったかしらぁ?」
垣根「なるかアホ」
麦野「こんな治療テメェ以外には出来ねぇよ」
香焼「あれ……でもなんだか全身に虚脱感が……」
一方通行「あァー……」
垣根「トラウマは消せても搾り取られたものまでは回復しねぇよなぁ、そりゃ」
御坂「搾り取られたとか生々しい事言うのやめて……気持ち悪いから……」
麦野「潔癖ねぇ」
一方通行「むっつりの癖になァ」
御坂「誰がむっつりよ!?」
食蜂「えっと、疲労の回復はここじゃ出来ないのよぉ、ごめんなさいねぇ?
帰ってゆっくり休むか、精の付くものでも食べに行くのがいいんじゃないかしらぁ」
香焼「……そうすね、そうさせてもらいます。何だか頭も上手く働きませんし」ガタ
香焼は頭を押さえながら立ち上がると食蜂に向かってぺこりと一礼し、若干フラつきながら診察室から出て行った。
彼がショタコンに様々なイタズラをされたという事実は消せないが、幸い記憶は綺麗さっぱり消えてなくなった。
どうか香焼くんの行く末に幸多からん事を。
食蜂「ふぅー、精神科医のお仕事って大変なのねぇ。能力がなかったらやってらんないわぁ」フゥ
垣根「しかしまさか香焼くんが再登場しやがるとはな……どうやってあのショタコンから逃れたんだ?」
麦野「ショタコンの方がヤり疲れて寝ちゃったんじゃないの?」
<ア、ミツケタワヨ コウヤギクン!
<エ、ダレスカ?
御坂「……ねぇちょっと、部屋の外から何か」
一方通行「……聞こえねェな、何も聞こえねェ」
<ダメジャナイ、ニゲチャ!オネエチャンヲコマラセタイノ!?
<エ、イヤアノ、ホントダレスカ?チョ、イタ、ナンデウデツカムンスカ!?
垣根「今日会ったばっかのガキの為に流す涙なんざ持ち合わせちゃいねぇが……せめて哀れんでやるよ、香焼くん……」
麦野「不幸って重なるのよね」
<サ、ツヅキヲシマショウネー
<ツヅキッテナンノ…チョ、ドコサワッテ…ア、ヌガサナイデ!ヤメテ!ヤメ……アアアアァァァァァ!!!!!
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「あのショタコン飛ばしすぎだろ!!いい加減にしろ!!」
垣根「俺より酷い目に遭ってる奴がいた……」クククク
御坂「何で診察室のすぐ側でやるのよ!?どっか他所でやりなさいよおおお!!」
麦野「せっかく逃げれたのにねぇ……あのガキ、今度は弾が切れるまでやらされるんじゃないかしら」
バチーン!!
一方通行「おォゥッ!!!」
垣根「はいやああぁぁ!!!」
御坂「ひぐっ!!!」
麦野「っづああぁぁあ!!」
11111号「それではここでの研修はこんなもんにして次に行きましょうか、とミサカはドアノブに手をかけます」
食蜂「また無様な姿を見せに来てねぇ、格上の皆さぁん?」クスクス
麦野「うわ、すっげぇムカつくわこの女」イラッ
一方通行「……おい11111号、ちょっと耳貸せ」
11111号「え、ミサカの耳を甘噛みしたいですって?やだ、こんな人前で……
とミサカは真っ赤になって俯きます」チッ
一方通行「思いっきり舌打ちしながらガン飛ばして来てンじゃねェか!いいから黙って耳貸しやがれ!!」
11111号「仕方がありませんねぇ、ちゃんと返してくださいよ?とミサカは耳を取り外して一方通行に……」カチ
一方通行「いやそういう意味じゃ……えェェ外れたァ!?」ビクッ
11111号「冗談です冗談、ただの手品グッズですよ、とミサカは作り物の玩具の耳を弄びます。
こんなこともあろうかと仕込んでおきました」フフン
一方通行「それはそれでどンなこと想定してンだオマエ!?」
デデーン♪
『垣根、御坂、麦野、アウトー』
垣根「何で突然漫才始めてんだよオマエら!?」
御坂「やめてよそういうの!!卑怯じゃない!!」
麦野「クソモヤシが、テメェ仕掛ける側とグルか!?」
一方通行「……俺今マジでちょっと耳打ちしようとしただけだったンだが」
バチーン!!
垣根「びゅああぁぁあ!!」
御坂「あうああぁぁ!!!」
麦野「うぎッッ!!!」
11111号「そんで結局何なんです?とミサカは首を傾げます」
一方通行「あァ、ちょっと考えがあってだなァ。いいか?……で………だろ?だからよォ……」ヒソヒソ
11111号「ふむ、ふむふむ……」
一方通行「……どうよ?」
11111号「なるほど確かに魅力的な案ですね、とミサカは頷きます」
垣根「絶対ろくでもねぇ事企んでんよこいつ……」
麦野「おい案内人が特定の個人に肩入れしてんじゃねぇぞ」チッ
一方通行「安心しろ、オマエらに不都合な話じゃねェよ」
御坂「絶対嘘でしょ……」
食蜂(なかなか出て行かないわねぇ……まぁ面白いもの見れてるからいいんだけどぉ)ニヤニヤ
11111号「しかし一方通行、流石に何の理由もなくそのような理不尽を押し通す事は出来ませんよ?
何度も言いますがミサカはただの案内役ですし、それを実行するには上の許可が必要です、
とミサカは一方通行の案に惹かれながらも実現が難しい事に眉をひそめます」
一方通行「理不尽に俺らをこンな目に遭わせてる癖して今更理由がいンのかよ?じゃァこンな感じでどォだ?」コソコソ
11111号「………ふむ、なるほど……それなら上も納得しそうですね。
しかしあなた次第ですよ?大丈夫なんですか?とミサカは形だけでも一方通行の心配をしてみます」
一方通行「ハッ、俺を誰だと思ってやがンだ?朝飯前だ朝飯前」ニタリ
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
一方通行「うおォォォォい!!!そこは見逃せよ!?今のは見逃せよォォォォ!!!」
11111号「いえそういうわけにも……ミサカ達はあくまでも公正中立な立場ですので」
バチーン!!
一方通行「はがああァァァァ!!!」
食蜂「こんな、お尻引っ叩かれて叫び声あげてる人達が学園都市の誇るレベル5だなんて、
ちょっと信じられないわよねぇ。同じレベル5として情けないわぁ」クスクス
御坂「あんたにはわかんないでしょうけどこれ叩かれるの見た目以上に痛いんだからね?」
麦野「こいつら元々軍用クローンだから無駄に身体能力高いのよね」ハァ
垣根「前回終わった後数日はケツが1,5倍くらいに腫れ上がったまま治らなかったからな……」
食蜂「何それおもしろぉい、今回もそんな風になるの?見てみたいわぁ」プププ
垣根「うぜぇ……」
一方通行「あンまり調子乗ってンじゃねェぞ格下が」ビキビキ
食蜂「えぇー?どうしたの第一位さん、もしかして怒っちゃったぁ?心が狭い人は女の子にモテないゾ☆」ニヤニヤ
一方通行「……どォもオマエには上下関係をキッチリ叩き込ンでやる必要があるらしいなァ?」ギリ
食蜂「さっきも言ったけど能力制限されてるあなたに何が出来るのかしらぁ?
せっかく一度見逃してあげたのにぃ、本当に私の奴隷になりたいのぉ?」
一方通行「俺もさっき言ったはずだよなァ、命拾いしたのはオマエの方だってよォ?
コイツを見てもまァだそンなナメた態度を取ってられるか?」ス
食蜂「え?……なぁッッ!?」
一方通行が懐から己の携帯電話を取り出しディスプレイを点灯させながらそれを食蜂へと突き付けると、
今までずっと余裕の笑みを浮かべていた彼女の表情が一瞬で驚愕へと塗り替えられる。
ディスプレイには一枚の写メが大きく表示されており、その被写体となっているのは間違いなく食蜂本人であった。
勿論食蜂にそんな写真を撮られた覚えはない。恐らくは隠し撮りだろう。
かと言って、別にやけにローアングルで撮られている、とか写真の中の食蜂が下着姿だ、とかそういうわけではなく、
写真そのものはお洒落なサングラスをかけた私服姿の食蜂が白い紙袋を抱えて歩いている、
という何の変哲も無いものだ。察するに買物帰りのワンシーンだろう。
また、その写真はとても隠し撮りとは思えないほど被写体が際立つ絶妙なアングルで撮られており、
一見するとそのままモデル雑誌にでも載せられそうなほど完成度が高い。
ではいったいその写真の何が問題で、食蜂は何に驚愕し、何を恐れているのか。
答えは写真に写った彼女が抱えている紙袋にあった。パッと見ただけでは気付かないだろうが、
よく目を凝らして見ると、写真の中の食蜂が大事そうに抱えている紙袋の中身がうっすらと透けて見えるのだ。
一方通行「この紙袋は19学区でひっそり経営してる本屋で買ったモンだな?
ダメだぜェ?あそこは薄ィ紙袋でしか包ンでくれねェンだからよォ」カチカチ
食蜂「あ、あぁ……」
一方通行は今にも笑い出しそうな表情で食蜂を一瞥すると、
流れるように鮮やかな指使いで携帯を操作し、写真の紙袋部分を拡大した。
一方通行の言う通りどうも紙袋の中身は一冊の本らしく、おぼろげに透けて見える表紙には
乙女チックな絵柄で黒い髪の少年と白い髪の少年が向き合っている様子が描かれている。
これだけでもだいぶアレなのだが、更に目を引くのはその本の帯に書かれたキャッチコピーだ。
真っ赤な文字で、でかでかと
『そう……そのまま飲み込んで。僕の幻想殺し……』
とか書かれてたりする。
どう見てもBL本です。本当にありがとうございました。
※BL:ボーイズラブの略。男性、特に美少年や美青年同士の同性愛を題材とするジャンル。
18禁指定されてなくても平気で性描写が含まれたりする。こわい。
デデーン♪
『垣根、御坂、麦野、アウトー』
一方通行「なかなかいい趣味持ってンなァ……えェ?第五位さンよォ」フ
食蜂「ち、ちが、私じゃないのよぉ!?これはそのぉ……た、頼まれたのよ!!」
御坂「普段女王様気取りで威張り散らしてるあんたが誰の頼みごとを聞くってのよ」ニヤニヤ
食蜂「はう!?」
『食蜂、女としてアウトー』
食蜂「うるさぁぁぁい!!BL本くらいみんな読んでるんだからぁ!!女なら普通よ普通!!」
御坂「いや読まないわよ。てか開き直るな」
垣根「そういや19学区にあったなぁ、エロ本の専門店……」クククク
麦野「寂れてる学区なのにあの辺だけいつも結構人がいんのよね」ケケケケケ
食蜂「だいたいそんな写真いつ撮ったのよぉ!?私達直接会うのは初めてなのにおかしいじゃないのぉ!!」
一方通行「機会があっても見送ってやってた、つっただろォが。数少ねェレベル5だしなァ、
いつ事を構えてもいいように準備だけはしてたンだよ」
バチーン!!
垣根「ぶふうぅぅ!!!」
御坂「ひあああああ!!!」
麦野「ぴゃぅあ!!!」
食蜂「違うの、違うのよぉ……」
御坂(………はっきりとは見えないけど、この本の表紙のモデルって……)ウワァ
垣根「しっかし意外だな、オマエが19学区のエロ本屋の事詳しく知ってるだなんてよ」
一方通行「あァ?そォか?」
麦野「ハン、何だかんだでテメェもエロい事に興味深々なわけね」
一方通行「ンなワケねェだろ、オマエらみてェな薄汚ェ穢れた人種と一緒にすンじゃねェよ。
俺はただその本屋に入ろうとする奴と本屋から出てくる奴を観察してるだけだっての」
麦野「……?何だそりゃ?」
一方通行「意外と面白ェンだぜ?じーっと見てるとだいたいの奴が泣きそうな面になって逃げてくからよォ」
垣根「やめてあげて!本当にやめてあげて!!」
エロ本を買う時はね、誰にも邪魔されず、自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独り静かで、豊かで……
大人になってもエロ本を買う時というのは結構な恥ずかしさというか背徳感が付きまとうものなのだ。
ましてや学生がエロ本専門店に入るのにはどれ程の勇気がいる事か……
だからどうか皆さんはエロ本を買おうとしている人がいた場合は老若男女問わず見なかった振りをしてあげてください。
ガン見するとかホント最悪なんでやめてあげてください。やめろ。
食蜂「よくも……よくも私の秘密を……」ワナワナ
一方通行「あァ?」
食蜂「絶対に許さないんだからぁ!!」キッ
垣根「らしいぞ麦野」
麦野「何で私に振る?」
垣根「え、だって『絶対に許さない』と言えば……」
麦野「もういい黙れ」
一方通行「許さなかったらどォするってンだ?あァ?」
食蜂「わからないかしらぁ?あなたは私の奴隷にして他の皆は記憶の抹消よぉ!!
それで円満解決!私の秘密が外部にバレる事は無いわぁ!!」バッ
声を上げ、食蜂はデスクの上に投げ出されていたリモコンに手を伸ばす。
そう、ちょっと精神的にダメージを受けただけで未だ彼女の圧倒的優位は揺るがない。
思考や記憶の改竄は食蜂の最も得意とするところなのである。
この場にいる全員から今見たものを忘れさせ、一方通行を操って写真を消去すれば
食蜂が下手な変装をしてまでBL本を買ってほくほく顔をしている、という事実はなかった事になるのだ。
一方通行「動くンじゃねェ!!」カッ
食蜂「う……」ビク
だが、食蜂がその能力を振るうよりも先に一方通行から大声が発せられ、彼女は思わず動きを止めてしまう。
今やただの無能力者も同然だというのに、その声には最強の名に恥じない圧倒的な威圧感があった。
動きを止めたままの食蜂が目だけで一方通行の方を向くと、彼は携帯を食蜂に突きつけるようにして構えていた。
一方通行「妙な真似してみろ、この写真が学園都市中に配信される事になるぜェ?」
食蜂「そ、そこまでやる!?あなたどんだけ鬼畜なのよぉ!!」
一方通行「オマエが能力発動すンのにリモコン使うってのは割れてンだ。さァてどォする?
俺がこの写真を配信するのが先か、それともオマエがリモコンで俺を操るのが先か、
一つ早撃ち対決でもやってみるか?あァ?」
食蜂「く、ぐうぅ……」
一方通行は携帯のボタンに手を添えながら食蜂を牽制する。
恐らく、すでにボタン一つで配信する準備は整っているのだろう。
対して食蜂はまだリモコンを手に取ってもいない。どちらが早いかなど火を見るよりも明らかである。
余裕の表情の一方通行と歯軋りをする食蜂、二人はしばし無言で見つめあう。
食蜂「く…………ふふ、ふふふふふ、あは、あっはははははは!!」
一方通行「あァ……?気でも狂ったか?動くなつってンだろォが!」
不意に、食蜂の歯軋りが止まり口角が吊り上ったかと思うと、彼女は天を仰ぎながら大声で笑い始める。
突然の事態に一瞬呆気に取られた一方通行だったが、すぐに我に返り食蜂の動きを牽制する。
しかし食蜂はそれを意にも介さず、しばらく嘲笑するような笑い声を上げ続けた。
一方通行「……おい、いい加減にしねェとマジで配信すンぞ?」チッ
食蜂「ふふふ……あなたには無理よぉ」クスクス
一方通行「無理だァ?何ほざいて……!!?」
一方通行は食蜂の挑発に眉を顰めつつ、脅し代わりにほんの少し指を動かそうとする。
そこに至って、彼はようやく気付いた。己の指が動かない……否、指だけではなく、
腕全体がまるで無くなってしまったかのように何の感覚も無いと言う事に。
突然の異常事態に驚愕して後ずさろうとした一方通行だったが、
足を動かそうとすれば足の、体を捻ろうとすれば体の感覚がそれぞれその瞬間に消え失せ、
彼は瞬く間に表情以外の一切を動かす事が出来なくなった。
一方通行「な!?」
食蜂「んふふふ、いい顔するわねぇ。ダメよぉ第一位さん、思い込みで行動しちゃぁ。
リモコンが無ければ能力を使えないだなんて、私そんな事言ったかしらぁ?」クスクス
一方通行「なン……だと……」
食蜂「時間はかかるし精度もちょっと落ちちゃうけどぉ、
リモコン無しでも人一人操るくらいそんなに難しい事じゃないのよ?
脅えた表情も焦った態度も全部時間稼ぎの為の演技ってわけ、なかなかイケてたでしょぉ?」フフフ
一方通行「テメェ……」ギロ
食蜂「そんな恐ぁい顔してもダァメ、あなたの身体はもう私の支配下なんだから。
意識や記憶まで奪ってない事にむしろ感謝して欲しいくらいよぉ」
一方通行「何が感謝だ……意識そのままで身体の自由だけ奪ったのは俺の反応が見てェからだろ!?」
食蜂「きゃはは、大当たりぃ~。いいわよぉその悔しそうな表情、堪らないわぁ」クスクス
一方通行「……」ギリギリッ
食蜂「さぁて、それじゃぁとりあえず携帯をこっちに渡して貰いましょうか」フフン
優雅に勝利の笑みを浮かべた食蜂は、一方通行のどんな些細な表情の変化も見逃さぬよう
食い入るように彼の顔を見つめながらゆっくりと彼の手にしている携帯に向かって手を伸ばしていく。
食蜂の手が携帯に近付くにつれ、身動きの取れない一方通行の表情は怒りから焦りへ、焦りから怯えへ、
怯えから諦めへと次々に塗り換わっていき、それらの変化全てが食蜂の嗜虐心を刺激し、彼女を多いに満足させた。
本来ならば敵うはずの無い遥か各上の相手を思い通りに支配しているという高揚感と
自分の秘密を抹消する事が出来るという安心感、二つの快楽に食蜂はうっとりと目を細め口元を歪める。
そして食蜂の手が一方通行の握り締めている携帯に触れるかどうかの距離まで近付いたとき、
諦めを通り過ぎ絶望の表情をしていた一方通行は―――
―――ニタリと、嗤った。
一方通行「はいざンねェン、渡しませェン」ヒョイ
食蜂「ええええぇぇぇぇ!!!?」
垣根「ええええぇぇぇ!?」
御坂「えええええええ!!?」
麦野「ええええぇぇ!?」
食蜂の手が携帯に届こうかというその刹那、一方通行は携帯を持っていた手をヒョイと上げた。
これには食蜂だけでなく、今までのやり取りを固唾を呑んで見守っていた他のレベル5勢も驚き、
つーか気が抜け、誰もが素っ頓狂な声を上げた。
食蜂「ちょ、何で?言うこと聞きなさいよこの、このぉ!」ピョンピョン
一方通行「あァうぜェ、跳ねンな、渡さねェつってンだろカスが」
高く掲げられた一方通行の手から何とか携帯を奪おうと、食蜂は必死にぴょこぴょこと飛び跳ねる。
何か馬鹿っぽいが彼女は本気で大真面目である。涙目になるほどに。
食蜂「さっさと渡しなさいってばぁ!!!」ピョンピョン
一方通行「ほォら惜しい惜しい、もォちょいで届くぞォ」グググ
食蜂「く、こうなったらリモコンでぇ……」サッ
一方通行「あァ?」
食蜂「ほら、携帯渡しなさい」ピピピ
一方通行「だが断る」キッパリ
食蜂「何でよもぉぉぉぉぉ!!!何で私の能力が効かないわけぇ!?」
一方通行「まァだ気付かねェのか?簡単なこった、オマエも能力制限されたンだよ」
食蜂「はぁ!?そんな、どうやって……」
11111号「……フ」ニヤリ
食蜂「はあああああ!!あなたの仕業ねぇ!?何でよ!?どういうつもりなのよぉ!?」
11111号「先にも言いましたが、企画の参加者を能力で操るのは無しだという約束だったでしょう?
あなたはそれを破って一方通行に能力を使用し、企画の進行を妨げようとしましたね?
だからミサカは上にそのように報告してあなたの能力を制限していただきました。
それだけの事ですよ、とミサカは簡潔に説明します」
食蜂「そ、そんなの、第一位さんが先に喧嘩売ってきたのが悪いんじゃない!?
それに妨げようだなんてしてないわ!ちょっと携帯のデータを消させるだけのつもりで……」
11111号「あーあー聞こえませーん、とミサカは耳を塞ぎます」
垣根「あー、さっき一方通行がクローンに耳打ちしてたのはこの事か?」
麦野「なるほど、第一位が第五位を挑発する事で能力を使わせて
あの性悪クローンがそれを理由に第五位の能力を制限する、と」
御坂「マッチポンプじゃない……まぁいいけど、私もムカついてたし」
食蜂「いいからはやく私の能力制限解きなさいよぉ!!」
11111号「そんな事ミサカに言われましても……
指示出したのはミサカですけど直接制限してるのはミサカじゃないんでぇ、
とミサカはしらばっくれます。それよりミサカに詰め寄ってる暇なんてあるんですか?」
食蜂「へ?」
11111号「ほらあれ、とミサカは一方通行の方を指差します」ビシ
食蜂「え?」
一方通行「……さて、とォ」ケータイカチカチ
食蜂「ちょ!?ちょっと第一位さん、何やってるのよぉ!?」
一方通行「あ?妙な動きしたら写真配信するって宣言してたよなァ俺?」カチカチ
食蜂「あなたこの上死者に鞭振るような真似するの!?やめましょうよぉ、ねぇ!?謝るからぁ!
もう第一位さんを操ろうとなんてしないし皆の記憶もそのままでいいからぁ!!
そんな写真が広まっちゃったら私が今日まで築き上げてきた女王の威厳が……」
一方通行「なンか言ったか?」ソウシン、ポチ
食蜂「ひぎいいいいぃぃぃぃぃぃ!!!!!」ビクビクビク
デデーン♪
『全員、アウトー』
垣根「何て声出してんだこの女……」クククク
御坂「出せるじゃないあんたも、獣みたいな大声」クックック
麦野「いい気味ね、今回ばかりは第一位に賞賛を送るわ」ケラケラ
一方通行「おい何で俺までアウト取られた!?俺今笑ってねェだろ!!」
11111号「その前にだいぶ笑ってたんで……アウトコールのタイミング逃してた分を今取らせて頂きました、
とミサカは勝ち誇ってドヤ顔していた一方通行を叩き落します」
一方通行「ざけンな!!」
バチーン!!
一方通行「がァおォァァァァ!!!」
垣根「どぉああああ!!!」
御坂「ふぁッ!!!」
麦野「ふぐぅっ!!!」
食蜂「落ち着け、落ち着くのよ操祈……大丈夫、私の改竄力ならこんなのすぐ揉み消して……」
一方通行「さっきも言ったが学園都市全体に配信されたからな?
学園都市中の人間全員一気に記憶改竄しねェと噂レベルで語り継がれて行くと思うぜェ?
それに記憶は操作出来てもデータは消せねェだろ、何度でも配信してやンよ」
垣根「オマエは本当に、ぐうの音も出ないほどの畜生だな」
食蜂「終わった……私の人生終わったわぁ……明日からもう引き篭もるしか……」ガクガク
11111号「さて、それでは今度こそ次に行きましょうか、とミサカは再度ドアノブに手をかけます」ガチャ
麦野「何だかんだでかなり長居したわね」フゥ
御坂「元気出してね、食蜂。私は味方だから」ポン
食蜂「白々し過ぎる慰めはやめて……本気で堪えるわ御坂さん……」
垣根「で、次はどこに行くんだ?」
11111号「えっとですね、次は……」
食蜂「ここで話してないで早く出てってよもう!!それと私の能力制限解除してぇ!!」グスン
一方通行「あァ?何言ってンだオマエ?」
食蜂「はぁ!?何よぉ!!」
11111号「もしや、ちょっと能力を制限されたくらいで企画を妨げた罰が終わったとでも思っているのですか?
とミサカは微笑みながら手を差し伸べます」ス
食蜂「な、何よ!だから企画の進行妨げようとなんてしてないってばぁ!!何なのよぉこの手はぁ!?」
11111号「能力制限をされたレベル5同士、ここから先はあなたも参加者側ですよ、
とミサカは衝撃の事実をぶちまけます」クククク
食蜂「はああああああああぁぁぁ!!!?」
人物名鑑
食蜂操祈(しょくほう みさき)
常盤台の女王として君臨するレベル5の第五位。大人びた容姿だが御坂と同じく一応中二らしい。広がる格差社会。
前回からこっそり白井を影で操っていたりと暗躍していたが、今回になってようやく正式に登場となった。
他人を自在に操るという能力の性質上、いろんなギャグスレで変な性癖を足されたりしている。
ここでは独断と偏見でBL好きという状態異常を付与されました。
普段は取り巻き連中を自身のカリスマや能力で手足のように操り悠々自適の生活を送っているが、
BLに関してだけは何か思い入れがあるのか、或いは操っていたとしても他人の目に触れさせるのがイヤだったのか、
変装してまで自分の足で直接買いに行っていた。それが後にこのような悲劇に繋がるとは……
原作で戦闘描写が無いんで能力に関する制限とかリモコンとかには独自解釈が入っております。
精神科医として登場し無事香焼くんの治療をしたところまでは良かったものの、
能力を制限された状態の他のレベル5勢を小馬鹿にするような言動が目立った為に一方通行の怒りを買う。
その結果は悲惨の一言。能力を制限された上にBL好きという最悪の秘密を学園都市中にバラされ、
挙句この企画に飛び入り参加までさせられてしまう事になった。まさかのレギュラー化です。
19学区の本屋(19がっくのほんや)
どこが人物名鑑なの?というつっこみはどうか堪えて頂きたい。
再開発に失敗した影響で急速に寂れてしまった学園都市の第19学区。
人通りも活気も無く一部の物好きしか寄り付かない、そんな学区の片隅でひっそりと経営されている本屋があった。
基本的に学生ばかりが暮らす学園都市において、エロ本の専門店はここを置いて他にない。
専門店と言うだけあってコンビニやそこらの書店はおろか、ネット通販すら及ばないほどに品揃えが充実しており、
老若男女問わず、無能力者から高位能力者、果ては魔術師までと、利用客は非常に多い。
小ぢんまりとした外観にも関わらず店内はまるで異次元空間のように広いという謎仕様。
また、カウンターに布がかかっており、代金を支払う際に店主と直接顔を会わせる必要が無いのも人気の秘密だとか。
そこまで気遣いが出来るのになぜ中が透けて見えるような薄い紙袋しか付けてくれないのかというと、
それはもう店主の趣味としか言いようが無い。
薄っすらと中が透けて見えるブツを前にした客がどんな対応を取るのかを観察するのが好きなんだとか。
方向性を誤った人間観察である。
なお鞄の持ち込みは禁止となっております。と言うか鞄を持っていると本屋に辿り付く事が出来ないそうな。
先述の通りカウンターに布がかかっている為、誰も店主の姿をハッキリと見た事は無いのだが、
店主には眩いばかりに輝く翼が生えている、だの、全身が発光している、だのと言う噂がある。
――移動中
食蜂「ううぅぅぅぅ……」
一方通行「……」テクテク
垣根「……」テクテク
御坂「……」テクテク
麦野「……」テクテク
食蜂「う゛ううぅぅぅぅ……」
一方通行「……」
垣根「……」
御坂「……クス」
麦野「フフッ」
デデーン♪
『御坂、麦野、アウトー』
食蜂「何よ!?何で私の顔見て笑うのよぉ!!!」
御坂「いやぁ、別にぃ?ただぁ、食蜂がいてくれて心強いなぁ、ってねぇ?」クスクス
麦野「無様だって笑った連中の仲間入りした気分はどうかしらぁ?」ニヤニヤ
食蜂「うるさああぁぁい!!!どうして私の声真似するのよおおおおお!!!」
垣根「麦野はまぁともかく、御坂の黒さが半端ねぇレベルまでキてんな」
一方通行「女って怖ェなァ」
バチーン!!
御坂「つっううぅぅぅ!!!」
麦野「はぐぅあ!!!」
11111号「いやはや、お姉様もむぎのんも仲間が増えて嬉しそうですねぇ、とミサカは微笑みます」ウケケケケ
一方通行「オマエのその邪悪な笑い声は微笑ンでンのか?」
垣根「あ、一個確認しときてぇ事があんだけどいいか?」
11111号「はい、なんでしょう?」
垣根「第五位のシバかれた回数ってどうなるんだ?最後の罰ゲームの事とか考えると、
0回から始まるんだったら有利すぎて面白くねぇだろ」
食蜂「ちょ……」
11111号「あー、そこはとりあえず全員のシバかれた回数の平均を取ろうかと」
御坂「ふーん、まぁ妥当なところね」
麦野「なぁに言ってんの、トップタイから開始でもいいくらいでしょ」
食蜂「ふ、ふざけないでよ!!何なのそれぇ!?
理不尽に途中参加させられた上に罰ゲーム受ける可能性まで植えつけられるわけ!?」
一方通行「いや、理不尽に参加させられてンのはオマエだけじゃねェからな?
むしろ途中まで参加せずに済ンでた事を有難がれよ」
食蜂「私が参加させられる原因になったあなたがそんな事言うの!?信じらんないわぁ……」
一方通行「身の程も弁えず調子ぶっこいてたオマエが悪ィンだよバァァカ」
食蜂「あなたほんっっとに腹立つわねぇ!いいわよ、なら私は全力であなた一人を笑わせにかかるんだから!」キッ
一方通行「あ?何、オマエそンなナメた態度でいいのか?」
食蜂「……何よぉ、今更謝っても遅いわよ!
一番知られたくない秘密はもうバラ撒かれちゃったし、もう私に怖いものなんてないんだから」フン
垣根「開き直りやがったなこの腐女子が」
麦野「つーか立ち直るの早いわね」
御坂「図太いのよ。元々そんな深刻に落ち込むような奴じゃないわ」
食蜂「御坂さん何か私に冷たくなぁい?」
一方通行「はァァ……まァだ自分の立場が理解出来てねェらしいなァオマエは」ヤレヤレ
食蜂「ど、どういう意味よ……」ビクッ
一方通行「オマエよォ、俺が握ってるオマエの弱みがあれだけしかねェなンて本気で思ってやがンのか?」フゥ
食蜂「ふ、ふん!その手には乗らないわよぉ!わ、私にはあれ以上の秘密なんてぇ……」
垣根(あかん、死亡フラグやそれ……)
一方通行「第五位さン、あなた結構絵を描くのがお上手なンですねェ」
食蜂「ごふぉぁ!!?」ビクン
一方通行「ただ男の骨格についてはもう少し勉強した方がいいンじゃねェか?肩幅とか腰回りは男と女で全然違って……」
食蜂「やめて!!そんなアドバイスやめてよぉ!!て言うか何であなたそんな事まで知ってるのぉ!!?」ヒイィィィ
垣根「……」
御坂「……」
麦野「……」
食蜂「……な、何よその目ぇ?違うわよぉ、私はあの、ほら、その……風景画とか?描くのが好きで、ねぇ?」
垣根「……あ、あぁなるほど、風景画、な」
御坂「男の骨格がどうのとか言われてたけど?」
食蜂「……」
垣根(……そこつっこんでやるなよ!スルーしてやる優しさを持てよ!!)
御坂「……」
麦野「……」
食蜂「………」
食蜂「あぁそうよ!あなた達の考えてる通りよ!!描いてるわよ!!買うだけじゃ飽き足らずに!自分で!BLを!!
その為に画材一式買ったりパソコンとペンタブ買ったりしたわよ!!」キッ
垣根「……」
食蜂「いいじゃない!!それで誰かに迷惑かけたの!?
誰かに無理矢理見せたわけでもないしモデルを無理に引っ張ってきたわけでもないの!!
ひっそりと誰にもバレないようにやってたのにそれだけで罪なわけぇ!?」
御坂「……」
食蜂「ふん!笑いたいなら笑えばいいじゃない!!ほら、笑いなさいよぉ!!」
麦野「……」
食蜂「……せめて、笑ってよぉ……そんな『本気でヒきました』みたいな目で見ないでぇ……」グス
一方通行「……」
御坂「……」
麦野「……」
垣根「………ハハッ」
食蜂「!!」
デデーン♪
『垣根、アウトー』
一方通行「垣根、オマエ……」
垣根「言うな一方通行、後悔はしてねぇ。フェミニストなんだよ、俺は」フフ
麦野「少しだけ見直したわ、優しいのね」
御坂「うん……でも私達もちょっとからかい過ぎたみたいね、そろそろやめときましょうか」
食蜂「ちょっと何笑ってんのよぉ!!私の事馬鹿にしてるんでしょ!?そうなのねぇ!?」
垣根「何なのこいつ」
バチーン!!
垣根「ぬぐおぉぉぉぉ!!!」
食蜂「いいわよもう、開き直るわよ。そうです、私はBL好きで自分でもBL絵を描いたりするような女ですぅ!
どう?これで満足かしら第一位さぁん!?」
麦野「んっとに立ち直るのはええな」
垣根「これは立ち直ったっつーのか?自暴自棄になっただけだろ」
食蜂「さぁもう本当に全部曝け出しちゃったわぁ!何かむしろ胸の痞えが取れてスッキリした気分よ!
身体が軽い!もう何も怖くなぁい!!」イエー
御坂「何か見てて痛々しくなるくらいヤケになってるわね……」ウワァ
垣根(つーかまた死亡フラグ立てやがったな)
食蜂「そうよ、前向きに考えればいいのよぉ。もう趣味を隠さなくてもいいんだから……
同じ趣味の人も探せるし、これからは堂々と買い物にいけるし、いい事尽くめじゃない……」グスッ
御坂「食蜂あんた……泣いてんの?」
垣根「そら泣くわ、俺でも泣くわ」
一方通行「よし、じゃァ俺もオマエが堂々と出来るようにもっと手伝ってやンよ」
食蜂「ぴぃ!?」ビクッ
垣根(あー、早速死亡フラグの回収に入りやがった。ご愁傷様)ナムナム
一方通行「そォだな、手始めにオマエの描いた絵を学園都市中の美術館にでも飾って……」
食蜂「やめてええええええええ!!!!!」イヤアアアア
一方通行「あン?画集として本屋にでも並べる方がいいか?」
食蜂「やめて!!本当にやめてぇ!!この街で生きていけなくなっちゃう!!」
御坂「そ、そうよ一方通行、いくらなんでもやりすぎよ!」
麦野「つか、らしくないわよ第一位?そりゃあんたは外道だけど、そこまで他人を追い詰めるような事やってたっけ?」
垣根「確かにな。流石にちょっと『子供のイタズラレベルのチャチなイヤガラセ』の枠には収まらねぇだろ」
一方通行「ン、そォか?……おい11111号、どう思う?」
11111号「そうですね、確かに普段と比べるとかなりエグい事やろうとしてますね、
とミサカはいきなりこっちに話振んなやと思いつつも的確に回答します」
一方通行「そっかァ……」
御坂「帝凍庫クンが学園都市中で売られてるのはまだ笑えるけどさ、
流石にこいつの描いた恥ずかしい絵を街中にバラ撒くのは酷すぎるわよ」
垣根「いや当事者としちゃ帝凍庫クンも笑えないよ?
キモカワ系マスコットとして地味に人気だったりしても全然嬉しくないよ?」
食蜂「恥ずかしい絵なんて風に言わないでよぉ!!」
麦野「めんどくせぇなこいつ!」
一方通行「ンー、なンかなァ、第五位見てっとなァ……」ジッ
食蜂「な、何よぉ」ビクッ
一方通行「こいつ何かすげェいじめてオーラ出してねェ?
だからつい限度を忘れちまうンだよ、俺のせいじゃねェって」ウン
食蜂「と、常盤台の女王であるこの私がいじめてオーラですってぇ!?
出してないわよそんなの!!ふざけるのも大概にしてもらえるかしらぁ!?」キッ
一方通行「……まァいいか。悪かったなァ第五位、危うくやり過ぎる所だったみてェだ」
食蜂「そもそも写真の配信された時点で十分やり過ぎだと思うわない!?」
垣根「いや、そこまでは許容範囲だろ」
御坂「ね、そのくらいなら」
麦野「腹は立つけど泣き叫ぶほどじゃないわ」
食蜂「あなた達は訓練され過ぎなのよぉ!!」
11111号「一方通行に目を付けられた以上、あなたも遠からずそうなるのですよ、
とミサカは暗い未来を仄めかしながらみさきちの肩を叩きます」ポン
食蜂「みさきちって何!?私の事!?」
麦野「食蜂操祈(みさき)だからみさきちってわけ?」
垣根「俺がていとくんって呼ばれたり麦野がむぎのんって呼ばれてるみてぇなもんか」
一方通行「むぎのン(笑)」
御坂「みさきち(笑)」
デデーン♪
『一方通行、御坂、アウトー』
麦野「おい第一位、テメェ定期的に私に喧嘩売ってくるよな?」ガシ
一方通行「離せよむぎのン、暴力はよくねェ」
御坂「やばっ!何かもう笑っちゃいけないって忘れてたわ」ビクッ
食蜂「て言うか御坂さん私の事嫌いでしょ!?そうなのね!?」
御坂「まぁ……うん」
食蜂「……」
垣根「あらやだ否定しなかったよこの子」
バチーン!!
一方通行「ほぐおォ!!!」
御坂「ひゅぐっ!!!」
食蜂「ふーんだ、いい気味よぉ御坂さん」フン ←怖いので一方通行には絡めない
御坂「あ、何よあんた、一方通行止めてあげたのにそういう態度とるわけ?」イラッ
食蜂「そんなの頼んでないもの」ツン
御坂「うわ、あったまきた!あんた笑わせまくってやるから覚悟しなさいよ」ギロ
食蜂「ふぅん、どうやってぇ?友達の少ない御坂さんに
場を盛り上げたり誰かを笑わせたりする事が出来るとは思えないんだけどぉ?」
御坂「あんたには言われたくないわ!て言うか少なくないし!!見てなさいよあんた今すぐ爆笑させてやるから!!」キッ
11111号「ほほう今すぐとな?お姉様、もしや一発芸でもやらかすおつもりですか?
とミサカは期待を込めた眼差しでお姉様を見つめます」キラン
御坂「え、ちょ、一発芸って、それは流石に無茶振りじゃない?」
食蜂「まぁ無理よねぇ、御坂さんに出来る一発芸なんて精々死んだ魚の物真似くらいだものねぇ」
御坂「なんですってぇ!?いいわよ、やってやろうじゃない一発芸!!あんた覚悟しなさいよ」ギロッ
麦野「やっすい挑発にあっさり乗ったわねぇ、この子こんな馬鹿だったかしら?」
一方通行「ふゥン、超電磁砲が何やらかすのかお手並み拝見といこうじゃねェか」
垣根「それより死んだ魚の物真似って何だよ?つかこいつら普通に仲いいんじゃねぇ?」
11111号「んで、何をやるんですかお姉様?とミサカは半笑いでお姉様を見つめます」
御坂「え?えーっと、んーと……」
食蜂「まぁだぁ?」
御坂「う……じゃ、じゃぁ駄洒落でも言います」
麦野「駄洒落って……やめときなさい美琴、今時駄洒落で笑うような10代はいないわ」
垣根「そもそも駄洒落って一発芸なのか?」
一方通行「何言ってンだよ、学園都市の第三位、泣く子も黙る超電磁砲様のとっておきの駄洒落だぞ?」
11111号「きっと芸のレベルにまで昇華された抱腹絶倒間違いなしの駄洒落なのでしょう、
とミサカは録音テープを用意しながら初めて見るお姉様の駄洒落にwktkします」
垣根「ハードル上げてやるなよオマエら……」ウワァ
御坂「覚悟しなさい食蜂!御坂美琴の駄洒落三連発、始まるわよ!!」ビシッ
食蜂「あらぁ楽しみねぇ」
垣根「三連発!?無茶だ御坂!やめろ!!」
麦野「どうしてそう自分から傷口を大きくするような真似するのかしらね」
一方通行「後先考えねェガキはこれだから」ヤレヤレ
11111号「ではお姉様、早速一発目をどうぞ、とミサカは場を仕切ります」
御坂「うん、えっとね、ある所に真っ白い犬がいました」
食蜂「……」
御坂「その犬は全身白くてね、だからあの、尻尾まで白いのよ」
麦野「……」
御坂「……尻尾も白い、尾も白い、面白い……な、なんちゃって」テヘ
垣根「……」
一方通行「……」
御坂「……つ、次行くわ!」
11111号「お姉様、辛かったらやめてもいいんですよ、とミサカは優しい口調でお姉様を諭します」ポン
御坂「うるさいわね今のはほんの序の口よ!ここからなんだから……ッ」
垣根(この空気があと二回続くのかよ……)
11111号「……それでは二発目どうぞ、とミサカはお姉様の意思を尊重して先へ進めます」
御坂「次は面白いから大丈夫よ!あのね、ある所に仲のいい夫婦がいたの」
麦野(駄洒落っつーか小話ね)
御坂「で、その夫婦なんだけどこの不況で二人とも失業しちゃって、その上借金を抱えちゃうのね」
垣根(無駄に設定重てぇな……)
御坂「仕方ないから二人で就職活動頑張るんだけど、どこにも採用されないのよ」
食蜂(……オチの前だけど設定がちょっと面白いわねぇ)
御坂「それで、えっと、二人とも不採用になっちゃってね?その、負債を抱えた夫妻が不採用に……なんてね」エヘヘ
一方通行「……」
垣根「……」
麦野「……」
食蜂(……思ったより面白かったわぁ)
御坂「……」
11111号「お姉様もうやめましょう、ドクターストップです、とミサカはお姉様の肩を叩きます」ポン
御坂「ま、まだよ!まだ私は負けてない!今までのは最後の為の布石なんだから!!」
11111号「いやもうほんと、寒さのあまり皆が風邪引いたらどうするんですか、
とミサカは震えながらお姉様を引き止めます」
麦野「……」
垣根「……」
一方通行「……」
御坂「……最後、行くわね?」
11111号「……もうお好きになさってください。ラストどうぞ、とミサカは投げやりに号令をかけます」
御坂「あのさ、私って常に電磁波纏ってるじゃない?お陰で小動物が寄ってこないのよ」
11111号「お姉様はって言うか発電系能力者全般ですけどね」
御坂「でも私可愛い物が好きでさぁ、小動物見かけると逃げられるってわかっててもつい触りに行っちゃうのよね」
11111号「えぇ、わかりますよお姉様、とミサカは肯定します」ウンウン
垣根(何か優しくなったなコイツ……)
麦野(逆に美琴が惨めに見えるわ)
御坂「でね、この前ほんっとに可愛い子猫見つけて、つい追い詰めて抱きしめちゃったのよ」
11111号「追い詰めてってあんた……とミサカはいい加減フォローのしようもないので普通にドン引きします」
食蜂「……」
麦野「……」
御坂「そしたらなんと、その子猫が寝込んじゃってさー」
垣根「……」
一方通行「……」
11111号「……」
御坂「……あの、終わり……です」
食蜂「……」
麦野「……」
垣根「……」
一方通行「……」
ヒュウゥゥゥゥゥゥ………
誰一人喋る事も動く事も出来ない、ぽっかりとした時間の空白。
廊下に備え付けられた時計のカチカチという音と、窓ガラスを叩く木枯らしの音だけが
しばしの間その場を支配し続けた。
カチ、カチ、カチ、カチ、カチ……
ビュオォォォォォォォ……
御坂「……」
一方通行「……」
垣根「……」
麦野「……」
食蜂「……」
11111号「……」
御坂「だ、ダメ、だった……?」
一方通行「……」
どれ程の時間が経っただろうか。やがて、その空間を作り出した責任を感じたのか、御坂がおずおずと口を開く。
一方通行はそんな彼女を一瞥すると、物憂げな表情を作りながら風に震える窓ガラスにそっと手を沿えた。
一方通行「……今日は……風が騒がしいな……」
御坂「……はい?」
麦野「でも少し……この風…泣いてるわ」
御坂「いや、え?どうしたの?か、風が泣いてる?私のせいなの?」
垣根「急ぐぞ一方通行、どうやら風が街によくないモノを運んできちまったようだ」
御坂「何!?何なの!?私の駄洒落そんなにダメだった!?木枯らし吹くほど寒かった!?」
11111号「急ぎましょう、風がやむ前に……とミサカは流れに乗っかってみます」スタスタ
御坂「何なのよ!?ちょ、待ちなさい!置いてかないでよ!!」
食蜂「どんまい御坂さん」ポン
御坂「何勝ち誇った顔で慰めに来てんのよあんた!?
大体あんたがいじられてたはずなのにどうして最終的にこんな事になってんのよぉ!?」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
―まだ移動中
食蜂「うーん……」
御坂「……どうしたのよ、そんなわかりやすく悩んで」
麦野「大方新しいホモカップリングでも妄想してんでしょ」
食蜂「BLとホモを一緒にしないでもらえるかしらぁ?これだから素人は」チッ
垣根「そんなもんの玄人には死んでもなりたくねぇけどな」
一方通行「つかマジでカップリング妄想してたのかよ、筋金入りだなオイ」
食蜂「え、あ、いや違!してないわよぉ!ちょっとこの企画のルールについて考えてたの!」
11111号「む、ルールですか?ミサカにわかる範囲で良ければお答えしますが、
とミサカは腐れ脳味噌のみさきちに優しく微笑みかけます」
食蜂「……何かだいぶ引っかかる言い方だけどまぁ許してあげるわぁ」
11111号「ド腐れの分際で『許してあげる』などと、いったい何様のつもりですか、とミサカは舌打ちします」チッ
食蜂「何よこの子、本物の御坂さん並に腹立つわねぇ」
御坂「えぇ!?あんたにとって私ってこのレベルなの!?」ガビン
11111号「んで、何です?とミサカは露骨に傷ついた顔をしているお姉様を一瞥してからみさきちに再度微笑みかけます」
食蜂「あ、えっとねぇ、この企画には反則って言うか禁止されてる行為ってあるのかしらぁ?」
11111号「禁止行為ですか?いえ、特に設定されていませんが……
強いて言えば逃げようとしたり頑なに動こうとしなかったり、
と言った風な企画の進行を妨害する行為は控えて頂きたいですね、とミサカは真面目に回答します」
食蜂「へぇ、じゃあさっきの御坂さんみたいに誰かを笑わせようとしたりするのは問題ないのね?」
11111号「えぇ全く。むしろどんどん仲間内で争ってください、
笑った回数が一番多い方はラストに罰ゲームが待ってますし、
とミサカは潰し合いを推奨します」ファイッ
食蜂「ふーん、そっかぁ……」フムフム
御坂「何企んでんのよあんた?言っとくけど、妙な真似したらタダじゃおかないからね?」ジロッ
食蜂「大丈夫よぉ、私は御坂さんみたいに駄洒落考える才能もないしぃ」
御坂「……ごめん、あれは忘れて」
一方通行「忘れられねェだろあれは。心臓凍るかと思ったわ」
垣根「いやいや、即興にしちゃなかなか良く出来てたんじゃねぇか?寒かったけど」
麦野「あんなもんを三つも公開しちゃう度胸だけは褒めてあげていいんじゃない?まぁ寒かったけど」
御坂「ちくしょう……」
一方通行「ちくしょうとか言いやがったこいつ」
食蜂「元気出して御坂さぁん」ガバ
御坂「ちょ、何?何でくっついてくるのよ?離れなさいっての」
食蜂「そう邪険にしないでよぉ、ほらほらぁ」コチョコチョ
御坂「ちょぉ!!?」ビクッ
食蜂「ねぇ?暗くなってないで楽しく行きましょうよぉ」コチョコチョコチョ
御坂「あふっ、や、やめ!ひゃっ!あははは!!!く、くすぐるのやめ、あははははは!!」
デデーン♪
『御坂、アウトー』
御坂「ちょっとおおおお!!!くすぐるのは反則でしょおおおお!!!!」
食蜂「えぇー?でも反則は特に無いって言われたしぃ」
11111号「えぇまぁ……確かに反則ではありませんが、とミサカは肯定します」
垣根「いくら反則じゃねぇつっても常識的に考えてダメだろ……」
麦野「それだけは皆自重してたってのに……」
一方通行「暗黙の了解がついに破られちまったか……」アーア
バチーン!!
御坂「あったああぁぁ!!!」
垣根「大丈夫か御坂」
御坂「うぅ……くすぐりで体力消耗させられた上に引っ叩かれるだなんて……」クゥ
食蜂「んふー、さぁてお次はぁ……」チラッ
麦野「こっち見んな」
食蜂「ねぇ第四位さぁん……」ジリジリ
麦野「こっち来んな」
食蜂「そう固い事言わずに、ねぇ?」ジリジリ
麦野「……最終通告だ、それ以上近付くな」ギロ
食蜂「へぇー?近付いたらどうなるのかしらぁ」ジリッ
麦野「こうなんだよ!!!」ヒュッ
スパーン!!!
食蜂「もげぇ!!?」バターン
11111号「おぉぉ、なんと美しいローキック……
とミサカはみさきちの足を刈り取るような勢いで放たれたむぎのんのローキックに戦慄します」ゾクゾク
御坂「わーいたそー」
垣根「嬉しそうな面してんなオマエ」
一方通行「つかこいつは学習能力ねェのか?下手な事して返り討ちに遭うの繰り返してばっかじゃねェか」
食蜂「う、うぅぅ……よ、よくも……」サスサス
麦野「うん?」
食蜂「よくもマスコット枠からメインヒロイン枠までそつなくこなせるこのスーパー美少女・操祈ちゃんに
『もげぇ』なんて可愛らしさの欠片も無い悲鳴を上げさせてくれたわねぇ!!」キッ
垣根(何言ってんのこいつ?)
麦野「何だったら屠殺される豚みてぇに鳴かせてやろうか?あぁ?」ギロ
食蜂「まったく、第四位さんは言葉遣いに品が無くていやねぇ。歳を取ると女性である事を忘れちゃうのかしらぁ?」
一方通行(まァた挑発してやがる、ほンっとに学習しねェな)
麦野「あ゛あぁ!!?」ビキィッ
食蜂「ほらまたそうやって大声出しちゃってぇ。
そんな風にして他人を威嚇しようとするところが関西のおばちゃん的で……」
麦野「……」ガシッ
食蜂「あれ、ちょっと第四位さん?何で掴むの?痛いんですけどぉ?」
麦野「美琴」
御坂「は、はい?」ビクッ
麦野「あんたもこいつにムカついてるでしょ?私が押さえとくから好きにしていいわよ」グググ
食蜂「な!?」
御坂「……そうね、折角だからこの機会にさっきの仕返しでもやらせてもらおうかしら」ジリ
食蜂「ちょ、ちょっと御坂さん、目が怖いわよぉ?
くすぐるのなんてちょっとしたスキンシップじゃない、そんな怒らなくても……」
御坂「そうね、くすぐるのなんてちょっとしたスキンシップよね。同感だわ」
食蜂「だ、だったら……」
御坂「だから私もあんたとスキンシップがとりたいなーってね?」ジリジリ
食蜂「や、迫って来ないでよぉ!!は、離して第四位さん!さっきの事は謝るからぁ!」ジタバタ
麦野「あんまり動くと絞めるわよ?」ガッシリ
食蜂「くうっ」キュッ
御坂「ほら暴れないの、すぐ終わるから」スッ
食蜂「や、やめッ!」
御坂「それ、私が受けた苦痛をあんたも存分に味わいなさい!!」コチョコチョコチョ
食蜂「いや、ちょっ!きゃはははは!や、やめて!!あははははは!!」
御坂「二度と私達にちょっかい出さないって約束しなさい、でなきゃくすぐり続けるわよ」コチョコチョコチョ
食蜂「あはははははっはぁ!!わ、わかった、わかったから、もうやめ!きゃはははは!!」
デデーン♪
『食蜂、アウトー』
食蜂「はぁ、はぁ、はぁ……」
御坂「ふぅ、こんなもんでいっか。あースッキリした」
麦野「お疲れさん」
食蜂「酷い、酷いわぁ御坂さん……くすぐってアウトにするなんて人間のやる事じゃないわよぉ……」
垣根「この子は本当に何言ってんの?」
一方通行「……こいつ今まで出てきた中でもダントツに頭悪くねェか?」
11111号「まぁ見た目からしてアホの子っぽいですし、とミサカは冷めた目でみさきちを見下ろします」
バチーン!!
食蜂「ごもらッ!!!」
一方通行(叫び声面白ェなこいつ)
食蜂「いったぁー……もう何なのよこれぇ、ちょっと立てないくらい痛いんだけどぉ……」サスサス
御坂「わかったでしょ?叩かれると結構冗談抜きに痛いのよ」
麦野「これに懲りたらもう下手に争いの種になるような事するんじゃねぇぞ?」ギロ
垣根「とりあえずくすぐりは封印な、次やろうとしたら全員から総攻撃喰らうと思え」
食蜂「はぁい……」
11111号「さてさて一悶着終わったところでそろそろ先を急ぎましょうか、とミサカは先を促します」
11111号「いいですか皆さん、これから皆さんにはある入院患者の面倒を見ていただきます、
とミサカレベル5の面々を見渡します」
一方通行「はァ?」
御坂「面倒見るって、治療するって事?」
垣根「おいおい、なんちゃって看護師の俺らに出来る事なんてあんのか?」
11111号「いえいえ治療ではなく寂しがりの患者の遊び相手になってもらうだけですよ、
とミサカは概要を話します。貴様等に看護師としての仕事など期待しておらぬわ」
麦野「そりゃまぁ看護師の仕事なんて出来ねぇけど、やっぱりムカつくわねこいつ」
食蜂「寂しがり屋の患者さんって言うとぉ、お見舞いの来ない独居老人とかそういう人かしらぁ?」
一方通行「なンだ、アレイスターか」
垣根「老人介護なんざやりたかねぇぞ?」
御坂「年寄りの話って長いもんね」
食蜂「おまけに支離滅裂だしぃ、何度も同じ話をするのよねぇ」チラッ
麦野「おい第五位、テメェ何で今私の方チラ見した?」
11111号「あぁいえ、相手は老人ではなくお子様ですよ、とミサカはみさきちの予想を否定します。
て言うかあんたら老人に対して露骨に冷たいですね、もっとお年寄り労われや」ポン
麦野「だから何で私の肩に手を置くんだよ!?」
垣根「お子様の遊び相手だ?んなもんあのショタコンに任せとけよ、一応小児科医だろ」
御坂「それはダメでしょ……」
11111号「残念ながら今から会いに行くお子様は女の子でして、
とミサカはショタコンが使えない理由を端的に説明します」
一方通行「女の面倒は一切見ねェのかあのショタコン……」
食蜂「小児科医がそんな事でいいのかしらぁ」
麦野「つーかショタコンが小児科医の時点でねぇ……」
11111号「まぁ所詮あれもなんちゃって小児科医ですし。
そんじゃ行きますよ、こっちです、とミサカは先導します」カモン
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―――――――――
――――
―入院患者用個室
11111号「はい、こちらが今から皆さんに面倒を見ていただく打ち止めちゃんです、
とミサカはベッドに腰掛けている上位個体をレベル5勢に紹介します」
打ち止め「わーいわーい遊び相手だー!よろしくねー!
ってミサカはミサカは全身で喜びを表現してみたり!」ピョンピョン
11111号「あぁこら暴れるんじゃありません、あんた一応入院患者って設定なんですから、
とミサカはバタバタやかましい上位個体を叱り付けます」コラッ
打ち止め「あ、そっか!……来てくれてありがとう、ミサカのお話し相手になってね、
ってミサカはミサカは布団に潜り込みながら病弱演技をしてみたり」ケホケホ
御坂「別にもういいわよ、そんなあってないような設定……」
垣根「『ケホケホ』って咳してんじゃなくて口で言ってるだけじゃねぇか」
一方通行「つーかオマエら連続で喋ンじゃねェよ、語尾がウザくて仕方ねェから」
麦野「んで、私らはしばらくこのチビクローンの遊び相手になりゃいいわけね?」
食蜂「でもどんな風に相手すればいいのかしらぁ?私子供が喜びそうな事なんて知らないわよぉ?」
11111号「ではルールを説明しましょう、とミサカは懐からカンペを取り出します」ス
一方通行「……ルールゥ?」
垣根「あ、やべぇ、イヤな予感が止まらねぇ」
11111号「えー、上位個体はわがままなお嬢様で、看護師や担当の医師に
様々な無理難題を押し付ける困ったちゃんという設定です。
そんなわけで今から上位個体が皆さんに無茶振りをするので、
皆さんは頑張ってそれに応えてあげてください、とミサカは説明を終えてカンペをぽい捨てします」
麦野「……そういうノリか」
御坂「無茶振りって……」
打ち止め「大丈夫だよ!本当のミサカはいい子だから酷すぎる無茶振りはしないもん!
ってミサカはミサカは不安そうな表情の皆を慰めてみたり!」
垣根「いい子だなぁ」
一方通行「どっかのオリジナルとはワケが違うな」
食蜂「御坂さんにもこんな時代があったのかしらぁ?」
御坂「わ、私は今でも十分いい子だもん!」
11111号「では上位個体、最初はどんな事をして欲しいですか?
とミサカはベッドの上でほくそ笑んでいる上位個体に尋ねます」
打ち止め「んっとねー、ミサカは猫さんが好きなんだけど、病院内にはいないし、
ミサカは発電系能力者だから猫さんと触れ合う事も出来ないの。
だから、誰かが猫さんの物真似をしてミサカを慰めてくれたら、
それはとっても嬉しいなってミサカはミサカは某ピンク髪の主人公風におねだりしてみたり!」
一方通行「猫の真似、なァ……」
食蜂「確か無茶振りって程無茶じゃないわねぇ」
垣根「とりあえず猫の物真似なら麦野が鉄板だろ」
麦野「は、はぁ!?」ビクッ
御坂「あ、よくにゃんにゃん言ってるもんね」
麦野「いやあれは別に猫の真似してるわけじゃなくて……」
一方通行「真似じゃなく素でにゃンにゃン言ってンだったらそっちのが引くぞ?」
麦野「んだとテメェ!?」
食蜂「ふぅん、第四位さんの猫真似かぁ……私も見てみたいわぁ」
麦野「誰がやるか馬鹿!!おら垣根!テメェがやれや!!」
垣根「男が猫の真似しても誰も得しねぇだろ」
打ち止め「ねーまだー?ってミサカはミサカは待ち草臥れて頬を膨らませてみたり」プクー
11111号「あ、言い忘れてましたが誰も無茶振りに応えられなかったり上位個体を満足させられなかった場合は
ペナルティとして全員が尻をシバかれる事になりますので悪しからず、
とミサカは今更重要なルールを伝えてみます」
垣根「な……て、テメェ今更そんなルールを……」
御坂「お願い麦野さん、普段から猫の真似してる麦野さんじゃなきゃ多分打ち止めを満足させられないから!」
麦野「いやだから、あれは猫の真似じゃ……」
一方通行「いいからいっとけ第四位、他の無茶振りは俺らがこなしてやっからよォ」
食蜂「そうよ第四位さぁん、各々の得意分野で助け合っていきましょうよぉ」
垣根「それにこういうのは徐々にハードルが上がっていくもんだしな、最初にいっといた方が得かも知れねぇぞ」
麦野「ああぁぁぁうっせぇ!!わかったわよもう、やりゃいいんでしょやりゃあ……」
打ち止め「お姉さんが猫さんの物真似をしてくれるの?ってミサカはミサカは首を傾げてみる」クリ
麦野「不本意だけどね……」ハァ
11111号「それではむぎのん、どうぞ、とミサカは号令をかけます」
麦野「く……」
どうぞと言われても……と麦野はしばし顔を顰めて逡巡する。
周りの勢いに押されてつい「やる」と言ってしまったものの、冷静に考えると芸人でもないのに
××歳にもなって人前で猫の物真似をさせられるなど、プライドの高い彼女にとっては耐え難い恥辱である。
とは言え今更「やっぱやーめた」とも言い辛い空気が既に出来上がってしまっている。
それに、今麦野がやめてしまえば他の誰も猫の物真似をやれずに
全員で仲良くペナルティを喰らってしまう可能性もあるのだ。
仕方がない、もうどうにでもなれだ。麦野は半ばやけっぱちで、心持ち顔を赤らめながら猫の物真似を開始した。
麦野「……にゃ、にゃーん、にゃぁーん」
一方通行「……ッ!」
食蜂「……!」ギリッ
裏声で甘えた声を出しながら、丸めた手を猫の前足に見立ててもぞもぞと動かす。
一方通行が化け物にでも出遭ったかのように目をひん剥き、食蜂が歯を食いしばって俯くが
だからと言って中途半端にやめるわけにもいかない。打ち止めを満足させるという使命があるのだから。
麦野「にゃんにゃん、にゃぉーん」ゴシゴシ
垣根「……グ」ガシ
御坂「……クッ」ギュッ
鳴き声を上げながら猫が顔を洗う動作を取り入れてみると、
今度は垣根が見たこともないような険しい表情をしながら拳を握り締め、
御坂はぎゅっと目を閉じ震えながら自分の肩を抱きしめていた。
イヤイヤやっているとは言え外野のこの反応は堪える、そろそろ心が折れそうだ。
麦野「んにゃ~ん、ごろにゃー」ヒュッヒュッ
一方通行「ッフォゥ」
垣根「ゴッファ」
御坂「グプッ」
食蜂「ポフッ」
トドメとばかりに虚空に向かって猫パンチを繰り出す。全員が一斉に吹き出した。限界だ。
麦野は猫の物真似を中断し、顔を真っ赤にして四人を睨み付けた。
デデーン♪
『一方通行、垣根、御坂、食蜂、アウトー』
麦野「テメェら何笑ってんだあああああ!!!!」
垣根「いやいやいや!むしろ途中から俺らの事笑わせようとしてたろオマエ!?
何で声真似だけじゃなくて仕草まで取り入れてんの!?いい歳してかわいいアピールしてんじゃねぇぞ!!!」
麦野「してねぇよ!!恥ずかしいの耐えて必死にやってたのに何だテメェ!?」
御坂「ごめん、ごめん麦野さん……でも麦野さんが必死だと思えば思うほど笑えて……」プププ
食蜂「謝ることないわよ御坂さん、はっきり言ってメガトン級の地雷だったしぃ」クスクス
麦野「あ゛ああぁ!!?」
一方通行「怒鳴ってねェであれ見ろよ第四位、さっきまで笑顔だった打ち止めがあの表情だぞ」
麦野「あ?」クルッ
麦野「……何でだよ!?そんな表情になる要素なかったろうが!!?」
一方通行「ガキには刺激が強すぎたンだろォな……ぶっちゃけキモかったし」
麦野「っっるせえボケがああああああ!!!」
バチーン!!
一方通行「ふォぐおおォォォォ!!!」
垣根「いだあああああ!!!」
御坂「あいったああああああ!!」
食蜂「ぺもッ!!!」
11111号「さて、どう見ても上位個体は満足してないので皆さんにペナルティを……」
麦野「あぁ!?ちょい待てあんだけやらせといてか!?」
11111号「あなたが勝手にはりきってやったんでしょう、とミサカは溜息を吐きます。ババア無理すんな」
麦野「ぶっ殺すぞこのクソクローンがぁ!!!」
一方通行「待て11111号、ペナルティの前にもォ一回チャンスをよこせ」
11111号「はい?えー……どうします上位個体?とミサカは判断を委ねます」
打ち止め「え?う、うん、いいんじゃないかな口直しもしたいし、
ってミサカはミサカはもう一回『かわいい』猫の物真似をお願いしてみたり」
11111号「だそうです、よかったですね」
麦野「口直し……」
御坂「お、落ち込まないで麦野さん、私はかわいかったと思うわよ?」
麦野「目ぇ見て話せ」
垣根「とにかく、なんとか首の皮は繋がったみたいだな」
食蜂「でも誰が猫の物真似やるのよぉ?私は無理よぉ?」
麦野「私はもうやんねぇからな」チッ
垣根「あぁうん、オマエはもういいよ……」
御坂「休んでて麦野さん」
食蜂「隅っこで猫パンチの練習でもしてればいいんじゃないかしらぁ?」
麦野「テメェをサンドバッグにして練習してやろうか?あぁ?」シュッシュッ
一方通行「ンなに綺麗なシャドーボクシングする猫はいねェよ」
11111号「ほら早くしてくださいよ、とミサカは足をパタパタやりながら急かします。ハリーハリー」
一方通行「……仕方ねェな、俺が行く」
垣根「えっ」
御坂「な……あんた正気!?」
麦野「はぁ?第一位、テメェ猫の真似なんて出来んのか?」
一方通行「ハッ、俺を誰だと思ってやがンだ?猫の物真似一つやれねェようじゃ学園都市のトップは張れねェよ」
垣根「……猫の真似と序列は関係なくね?まぁやってくれるってんなら任せるけどよ」
食蜂「第一位さんがネコ……第二位さん!タチの準備を!!」カッ
垣根「目ぇ見開いて何言ってんのこの腐女子は」
11111号「一見ドSな一方通行がネコ……ふむ」
一方通行「オマエらちょっと隅っこで死ンどけ」
御坂「ネコ?タチ?どういう意味?」
麦野「同性愛用語で受けと攻めって意味よ」
御坂「えー……」チラ
垣根「おい御坂、俺と一方通行を交互に見るのはやめろ」
御坂「み、見てないし」クク
垣根「半笑いやめろ」
一方通行「まァとにかくだ、俺が猫の真似すっからな?いいか打ち止め」
打ち止め「うん!あなたの猫の物真似なんてレアな物が見れるなんて感激だよ!
ってミサカはミサカは全身で喜びを表現してみたり!!」ワーイワーイ
一方通行「ンじゃァ行くぜ?よォく見とけよ、多分二度とやらねェから」
一方通行は軽く目を閉じ何度か浅い呼吸を繰り返すと、カッと目を見開き打ち止めを見据える。
ペナルティを喰らうか否かは今からの行動次第、否が応にも気合が入ろうというものだ。
一方通行はもう一度、今度は大きく深呼吸をすると、ゆっくりと口を開き猫の真似を開始した。
一方通行「オアアァァァァァン……」
垣根「!?」
御坂「!!」
一方通行「ゴアアアァァァァオォォ……」
麦野(う、上手い……)
食蜂(確かに上手だけどぉ……)
一方通行「アアアアァァァァァウゥゥゥ……」
垣根(何故に発情期の鳴き方……?)
御坂(どうやったらこんな声出るのよ……)
一方通行「オアアアァァァァ……」
打ち止め「か、かわいくなあああああい!!!ってミサカはミサカは涙目で猛抗議してみたりぃ!!!」
一方通行「な、なンだとォ!?」ガン
11111号「お前今のかわいいと思ってやってたのかよ!?
とミサカはショックを受けている一方通行につっこみを入れます」
麦野「受け狙いじゃなかったのか……」
垣根「受け狙いにしても無駄に上手すぎて笑えなかったけどな……」
打ち止め「ミサカは、ミサカはただかわいい猫さんを見たかっただけなのに、なのにどうしてこんな事に……
ってミサカはミサカは枕を涙で濡らしてみたり……」スンスン
御坂「な、何もそこまでショック受けなくても……」
麦野(………私の猫真似そんなダメだったのか……)
11111号「はい、というわけでやっぱり上位個体はどう見ても満足していないので……」
一方通行「あァ!?おい待て、満足してるよなァ打ち止めァ!?」
打ち止め「してないよ!!ってミサカはミサカは猛反発!!」キッ
11111号「ペナルティけってーい、とミサカは判決を下します」
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「こンのクソガキがァ……」ビキィ
垣根「やめろ一方通行、流石に大人気ねぇよ……」
御坂「て言うか打ち止めのせいじゃなくて一方通行のせいよね、これ」
食蜂「それと第四位さんも戦犯よねぇ」ハァ
麦野「私は悪くねぇだろ!!あのチビクローンの判定が異常に厳しいだけだ!!」
バチーン!!
一方通行「ッッはァ!!!」
垣根「くおぉぉ!!!」
御坂「ひぃうっ!!」
麦野「に゛ゃぁ!!!」
食蜂「もきゅッッ!!!」
11111号「さて上位個体、次はどうしましょう、
とミサカは涙目になっている上位固体を撫でながら次なる指示を待ちます」
打ち止め「うぅぅ……じゃあ次はお馬さんをやってもらいたいな、
ってミサカはミサカは気を取り直して新しいお願いをしてみたり」
一方通行「あァ?また物真似か?今度は馬?」
御坂「んー、この場合のお馬さんって言うのは多分お馬さんごっこの事じゃない?」
食蜂「お馬さんごっこって言うとぉ、四つん這いになって背中に子供を乗っけるあれよねぇ?」
麦野「あー、私も小さい頃やってもらった事あるわ」
垣根「オマエは今でも浜面を地べたに直に四つん這いにさせてその上に座ったりしてんだろ」
御坂「食蜂も偶に取り巻きの子にやらせてるわよね」
食蜂「ふふーん、人間椅子は権力者の象徴なのよぉ」
一方通行「そォなのか?なら俺も第一位として人間椅子用の人材でも探してみるか」フム
垣根「やめろこの外道どもが!」
11111号「まぁ今から椅子になるのはあなた方の内の誰かですけどね、とミサカはレベル5勢を見回します」
打ち止め「椅子じゃなくてお馬さんだよ!そんな不健全な言い方はやめて!ってミサカはミサカは訂正してみる!」
一方通行「……椅子でも馬でもどっちでもいいけどよォ、
とにかく誰かが四つン這いになってあのガキの尻に敷かれなきゃならねェわけだよなァ?」
レベル5勢は険しい顔をしながら考え込み、互いに視線をぶつけあう。
基本的にプライドが山のように高い彼らにとって、例え子供の遊びに付き合うという名目だろうと、
他のメンバーが見ている前で四つん這いになるなど屈辱以外の何者でもない。
こいつらは揃いも揃って他人に見下ろされたりするのが大嫌いなのだ。
食蜂「……私はいやよぉ?私は座る専門だもの」
麦野「ここは垣根が適役じゃないかしら?」
御坂「そうね、垣根さんでいいと思うわ」
一方通行「じゃァ今回は垣根に任せるって事でいいか?」
垣根「いいわけねぇだろ何勝手に決めてんだボケども」
麦野「いいじゃんあんたドMだし」
御坂「ね」
食蜂「私達はプライドがあるから人前で四つん這いになるなんてちょっと無理だけどぉ、
その点プライドの低そうな第二位さんなら何の問題もないわよねぇ」
垣根「オマエちょっと調子に乗りすぎじゃねぇか?」ビキィッ
一方通行「ほらこンだけ周りが推薦してンだからもォオマエでいいだろォが」
麦野「民主主義ね、民主主義」
垣根「こういうのは数の暴力っつーんだよ!!」
打ち止め「あ、ちょ、ちょっといいかな、ってミサカはミサカは焦って割って入ってみたり」
御坂「ん、どうしたの?」
打ち止め「あのね、言い辛いんだけど第二位さんの背中に座るのはミサカ的にちょっと抵抗があるなぁなんて思ったりね?
ってミサカはミサカは嫌悪の表情をしながら第二位さんのお馬さんを拒否ってみたり!」
垣根「……」
一方通行「……ングッ」
御坂「クッ」
麦野「コフッ」
食蜂「プッ」
デデーン♪
『一方通行、御坂、麦野、食蜂、アウトー』
垣根「やだ何これ、安心していい状況のはずなのにすっごく心が痛い……」
一方通行「気ィ落とすな垣根、子供ってのは正直だから仕方ねェよ」
垣根「それ慰めのつもりか?違うよね?追い討ちだよねどう考えても」
食蜂「第二位さんは確かにイケメンだけどぉ、なぁんかズレてるのよねぇ」クスクス
御坂「んー、わかるかも。ちょっと近寄り難い雰囲気はあるわよね、悪い人じゃないんだけど……」
垣根「オマエらにゃ言われたくねぇよ!出てくる女全員残念な美人だろうが!!」
麦野「美人だなんて、そんな周知の事実は今更言わなくてもいいわよ」ファサッ
垣根「マジで都合のいい言葉しか聞こえねぇのなオマエ」
バチーン!!
一方通行「ンごォあ!!」
御坂「ぐぎっ!!!」
麦野「いぎいいぃぃ!!!」
食蜂「ぽふぅ!!!」
御坂「でも垣根さんがダメだとなるとどうするの?」
一方通行「つかよォ、俺と第四位はさっき猫の真似したンだから除外でいいだろ。
今回はオマエか第五位のどっちかがやれよ」
食蜂「えぇー、結局失敗したんだからむしろ名誉挽回の為に率先して行くべきじゃないのぉ?」
麦野「おい第五位、テメェ何か調子ぶっこいてるからテメェが行っとけ」
食蜂「えっ」
御坂「あ、それいいわね。あんた序列も一番下だし
私達の前で四つん這いになってもそんなにプライド傷つかないでしょ」ウン
食蜂「つくに決まってるでしょぉ!?気ままに生きてるあなた達にはわからないだろうけど、
私には常盤台の女王としての地位とプライドが……」
一方通行「けどさっきから常盤台の学校裏サイトに『女王の趣味わろた』みたいな書き込みが大量発生してンぞ?
もォ女王としての威厳は取り戻せねェだろォし今更プライド気にしても仕方ねェって」
食蜂「んなぁ!?」
※学校裏サイト:特定の学校の話題のみを取り扱う非公式な匿名掲示板。半ば悪口、陰口の温床となっている。
垣根「能力で強制した主従関係なんざ脆いもんだな」
御坂「て言うか常盤台に学校裏サイトなんてあったの?私知らなかったんだけど……」
食蜂「ちくしょうあいつらああああ!!!今度下着姿で街中歩かせてやるうううう!!!」
垣根(カメラ新調しとくか)
御坂「てことで食蜂、お願いね」ポン
一方通行「よかったなァ打ち止め、今からこの雌豚が上に乗っけてくれるらしいぞ」
食蜂「だぁれが雌豚よぉ!?あなた言っていい事と悪い事の区別もつかないわけぇ!?」
麦野「第一位にんな分別があるわけねぇだろ」
打ち止め「ミサカがやって欲しいのはお馬さんであって豚はお呼びじゃないんだけど……
ってミサカはミサカは冷めた目で拒否ってみたり」
食蜂「うああああもう!!小さくても流石は御坂さんのクローンねぇ!私この子も好きになれそうにないわ!」ムキー
垣根「で、第五位も却下となると」
麦野「消去法で美琴って事になるわね、頑張って」
御坂「げっ」
打ち止め「お姉様はそんなにミサカとお馬さんごっこするのがイヤなの?
ってミサカはミサカは涙目で頬を膨らませながらお姉様を睨み付けてみたり……」
御坂「あぁぁいや、そういうわけじゃなくてね?ただ病院の床に直に四つん這いになるのに抵抗があるって言うか、
こいつらの前で四つん這いになるのがイヤって言うか……」
打ち止め「むー」プクー
御坂「わ、わかったわかった、やってあげるからそんなにふくれないでよ」ハァ
打ち止め「わーいやったー!お姉様大好きー!ってミサカはミサカは大はしゃぎしてみたり!」ヒャッホー
御坂の承諾を受けた打ち止めは、途端笑顔になり枕を高々と放り投げて狂喜乱舞する。
直前までの不機嫌なふくれっ面が嘘のようだ。妹達は基本的に無感情かつ無表情なのだが、
打ち止めだけは普通の人間よりもむしろ感情豊かで、見ていて飽きないほど表情がころころと変化するのだ。
10歳前後という容姿年齢も相まってその姿は非常に愛くるしい。
御坂「あーもう可愛いわねぇあんたは」ナデナデ
一方通行「うわっ自分で自分のクローンに可愛いとか言いやがったぞこいつ」
垣根「昔の自分の写真見てうっとりした表情で『可愛い』つってるようなもんだよな」
食蜂「自覚してないかもしれないけど御坂さんって結構ナルシストよねぇ」
御坂「う、うるさいわねあんたら!そんな穿った見方しなくても普通に可愛いじゃないの!!」
11111号「何せミサカと同じ顔ですから、とミサカはドヤ顔で胸を張ります」ドヤァ
麦野「ぶっちゃけテメェはだいぶ顔違うだろ、性格の悪さがツラに滲み出てんぞ」
一方通行「第四位に言われるようじゃお仕舞いだな」ハッ
垣根「オマエも言えた口じゃねぇだろ」
打ち止め「ねーお姉様早くー、早く四つん這いになってよー!
ってミサカはミサカはお姉様の服の裾を掴んで急かしてみたり」
食蜂「セリフだけ聞くと何だか卑猥ねぇ」
垣根「女に『四つん這いになれ』とか一回くらい言ってみてぇもんだな」
御坂「……」
麦野「引くわー」
垣根「レストランで浜面四つん這いにさせて遊んでるオマエが何言ってんだ!?」
打ち止め「はーやーくー!ってミサカはミサカは待ちきれなくて手足をバタつかせながら急かしてみたりー!」パタパタ
御坂「っと、ごめんごめん、今やってあげるから」
待ちきれず再び不機嫌な表情になりかかっている打ち止めに急かされ、
御坂はまだ若干抵抗を感じながらも、不承不承ベッドの傍らで四つん這いになった。
御坂(何か状況に流されちゃったけど、何で私がこんな事しなきゃいけないのよ……)
その場の空気と打ち止めの可愛さに流されて四つん這いになってみたものの、
マットも敷いていない床に直に四つん這いになっているせいで、床についている手の平と膝は
冷たいし痛いし汚れるしで堪ったもんじゃない。何より他のメンバーの愉快そうな目が心底イヤだ。
御坂はお馬さんごっこを引き受けたことを速攻で後悔していた。
ちなみに彼女の着ているナース服のスカート丈はそこそこ長いので四つん這いになっても安心です。
打ち止め「わーいお馬さんだー!ってミサカはミサカはベッドの上からお姉様の背中にダーイブ!!」ピョン
御坂「ぐえぇぇ!?」ベシャ
御坂の気など知らず、打ち止めは喜び勇んで四つん這いになっている御坂の背に飛び掛る。
そう、彼女は文字通りベッドの上から御坂の背に向けて飛んだのだ。
いかに御坂が同年代の平均に比べて身体能力が優れていようと、
四つん這いになっている状態で不意打ち気味にストンピングを喰らってはひとたまりもない。
御坂は背に受けた衝撃に耐え切れず、叫び声を上げながらべちゃりと床に四肢を投げ出した。
打ち止め「あ、あれ?潰れちゃった!ってミサカはミサカはまさかの事態に慌ててみる!」アワワワ
この幼女、悪意は一切ない。ただ嬉しくて、テンション上がって、
御坂の背に乗るのに思わず高い位置からのジャンプという手段をとってしまっただけなのである。
無邪気さは時として凶器になり得るのだ。
御坂「あいたたたた……」ウゥゥ
そして哀れにも蛙の様に潰され、涙目でうめき声を上げている御坂の姿を見て――
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、食蜂、アウトー』
――外道どもは吹き出していた。
オマケ
常盤台学校裏サイトの書き込み例
お姉さま!お姉さま!お姉さま!お姉さまぁぁあああわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!お姉さまお姉さまお姉さまぁああぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!御坂美琴たんのライトブラウンの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
新訳3巻のお姉さまかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
映画決まって良かったねお姉さま!あぁあああああ!かわいい!お姉さま!かわいい!あっああぁああ!
ゲームも発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!ゲームなんて現実じゃない!!!!あ…小説も映画もよく考えたら…
お 姉 さ ま は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!学園都市ぃぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵のお姉さまがわたくしを見てる?
表紙絵のお姉さまがわたくしを見てるぞ!お姉さまがわたくしを見てるぞ!挿絵のお姉さまがわたくしを見てるぞ!!
映画のお姉さまがわたくしに話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!わたくしにはお姉さまがいる!!やったよ初春!!ひとりでできるもん!!!
あ、ゲームのお姉さまああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあ佐天さぁあん!!シ、妹達!!打ち止めぁああああああ!!!番外個体ぉおおお!!
ううっうぅうう!!わたくしの想いよお姉さまへ届け!!学園都市のお姉さまへ届け!
打ち止め「んっとねー、次はねー……」ンー
御坂の背に跨ったまま、打ち止めは口元に人差し指を当て天井を眺めながら次なるお題を思案する。
一度潰れはしたものの御坂のお馬さんにとりあえず満足いったらしく、今回はペナルティは無いようだ。
ずっと四つん這いで打ち止めを背負っている御坂にとっては十分過ぎるほどのペナルティだろうが。
御坂「ねぇ打ち止め、そろそろ降りてくれないかなー……」
打ち止め「えぇーもうちょっとだけお願いー!ってミサカはミサカは駄々捏ねてみたりぃ!」バタバタ
御坂「あぁもうわかった!わかったからあんまり背中の上で暴れないで!腰痛いから!」
食蜂「腰が痛いだなんてぇ、御坂さんお婆ちゃんみたぁい」
御坂「なぁんですってぇ!?」キッ
一方通行「四つン這いの上背中に幼女乗せた状態(おまけにナース服)で睨まれても迫力の欠片もねェな」
垣根「むしろ加虐心そそられるな」
麦野「可愛いわよ美琴」ウム
御坂「こんな状態で言われても嬉しくないわよ……て言うか二人とも段々私に冷たくなって来てない?」
垣根「まずオマエが俺に冷たいし」
11111号「んで上位個体、次はどうしましょう?とミサカはお姉様の頭に手を置きつつ上位個体に尋ねます」ポン
御坂「ちょ、ちょっと何で私の頭押さえるのよ!?」
11111号「え?……あぁすいません、何か高さが丁度よかったんで、
とミサカは謝罪しながらもお姉様の頭をぽんぽんと軽く叩くのをやめません」ポムポム
御坂「く……なんて屈辱……」ギリッ
打ち止め「よーし決めたよー!ってミサカはミサカは決断してみたり!」
11111号「む、決まりましたか、では言ってやってください、
ドぎついお題でこやつらを絶望の淵に沈めてやりましょう、とミサカは囃し立てます」
打ち止め「ぜ、絶望って、そんな事しないよ!
ってミサカはミサカは人聞きの悪いこと言ってる11111号を睨みながら否定してみる!」
11111号「チッ、つまらん」
麦野「このクローンはマジでどうにかならないわけ?」
食蜂「今私の中で御坂さん超えたわよぉこの子……」
御坂「むしろまだ競ってたんかい!」
垣根「学習装置で性格の矯正とか出来ねぇのか?」
一方通行「布束も匙投げてやがったし、どォしようもねェンだろォよ」ハァ
11111号「まったくこんなに可愛いミサカに対してなんという酷い言い草ですか、
とミサカは頬を膨らませてぷりぷり怒ります」プンプン
一方通行「ぶりっ子してンなよきめェ」チッ
打ち止め「それよりそろそろお題出してもいいかな?ってミサカはミサカは確認してみたり」
11111号「おぉっとそうでした、やっておしまいなさい上位個体、とミサカは号令をかけます」ゴー
垣根「お手柔らかに頼むぜチビちゃんよぉ」
打ち止め「えっとね、この前恋愛ドラマで男の人が女の人に告白してて、それがとっても素敵だったの。
だから男の人が女の人を口説いて告白するところを生で見てみたいな!
ってミサカはミサカは目を輝かせながらお願いしてみたり!」キラン
食蜂「あらぁ随分マセてるのねぇこの子」
麦野「何せむっつりな美琴ちゃんのクローンだからねぇ」
御坂「だからむっつりじゃないってば!!」
打ち止め「むっつりってなぁに?ってミサカはミサカは首を傾げてみる」クリン
11111号「簡単に言うと隠れド変態って事ですよ、とミサカは上位個体に耳打ちします」
打ち止め「えぇ!?お姉様は変態さんだったの!?ってミサカはミサカは驚愕してお姉様の背中から飛び降りてみたり!」ピョン
御坂「違うってのおおおお!!!変な事吹き込まないでよおおお!!!」
麦野「良かったじゃない、お馬さんから開放されて」ポン
御坂「良くないわよ……」
食蜂「御坂さんどんまぁい」ポン
御坂「あんたに慰められると余計腹立つんだって!!」
垣根「つか男の告白が見たいって事はつまり俺か一方通行のどっちかが
やりたくもねぇ告白を誰かにやらなきゃならねぇって事だよな?」
一方通行「そォいうこったろうなァ」
御坂「ここは垣根さんの出番かな?そういうの手慣れてそうだし」
垣根「マジで?そらまぁ慣れてるか慣れてないかで言えば慣れてるけどよぉ」
11111号「慣れの度合いで言えばイヤガラセの過程で妹達を何人も口説き落としてる一方通行も相当だと思いますけどね、
とミサカはイヤガラセの為に女心を弄ぶ外道モヤシを冷めた目で見つめます」ジト
一方通行「なンの事やら。とにかく今回は垣根に任せてもいいか?オマエまだ何もやってねェし」
垣根「オーケー、やってやんよ。女を口説くなんざ朝飯前だ」フッ
麦野「スクール構成員の女に二股かけられた挙句にフられてたけどねー」
垣根「思い出させんなよ……」
11111号「ではていとくん、この場にいる適当な相手を口説いて告白してみてください、とミサカは号令をかけます」
食蜂「相手に迷ったら第一位さん何かお勧めよぉ?」
垣根「おい誰かこの腐女子生ゴミとして捨ててきてくれ」ガシ
食蜂「ちょっと気安く触らないでもらえないかしらぁ?女の子の頭を鷲掴みにするなんて人として最低よぉ?
そんなデリカシーのない事するから二股なんてかけられるのよ」
垣根「……」メキメキメキ
食蜂「あだだだだだ!!ちょ、やめて!!締めないで!!頭割れちゃうからぁ!!ごめんなさいごめんなさいぃぃぃ!!!」
御坂「本当に学ばないわねこいつ……」
一方通行「おい垣根、第五位がこれ以上喋る前にさっさと相手選びやがれ」
垣根「ん?あーそうだな………じゃあ麦野、話がある」
麦野「私かよ……」
垣根「なぁ麦野、俺とオマエも結構長い付き合いだ。この際だからそろそろはっきりさせとこう」
麦野「んな前置きいらねぇっての、どうせお遊びの告白なんだから本題だけ言っとけ」チッ
垣根「そうか……じゃぁ直球で行くぞ?」
麦野「さっさとしなさい」
垣根「よし……麦野!!」カッ
麦野「おぉ?な、何よそんな気合入れた声出して……」ビクッ
垣根「麦野、俺がオマエに伝えたい事は一つだけだ……」ジッ
麦野「……何?」
垣根「ババア結婚してくれ!!」クワッ
麦野「死ね!!!」ヒュッ
スパァーン!!
垣根「げふぉあぁ!!!!」
11111号「ナイス回し蹴り、とミサカは脇腹を押さえて悶えているていとくんを見下しながらむぎのんを褒め称えます」
打ち止め「今の告白はちょっと……ってミサカはミサカはドン引きしてみたり……」
御坂「垣根さん最っ低……女の子に向かってババアだなんて……」
垣根「ゲホ、ゲホ……ち、違う、この場合の『ババア』は褒め言葉でだな……」サスサス
麦野「まだ蹴られ足りねぇか?あぁ!?」ギロッ
一方通行「どンな状況でも『ババア』は褒め言葉にはならねェよ。オマエ本当に女の扱い慣れてンのか?」
食蜂「そこらのチェリー君でももう少しマシな告白出来るわよぉ?」
垣根「……だって俺、どっちかっつーと告白される側だし。告白のやり方とか知らねぇよ!!
大体冗談だろうとオマエらなんざ口説きたくねぇんだよクソッタレが!!」
麦野「何逆ギレしてんの?朝飯前とか言ってなかったっけ?ぶっ殺すわよ?」ガシ
垣根「すいませんちょっと顔がいいからって調子ぶっこいてました、ごめんなさい離して下さい」
一方通行「そらオマエ心理定規にもフられるわァ……」
御坂「垣根さんがこんなにダメな人だとは思わなかった」フゥ
垣根「そんな心底かわいそうな人を見るような目をするのはやめろ!!俺の心が折れるたらどうすんだ!?」
11111号「さてそれでは、当然上位個体は満足していないのでぇ……」
打ち止め「ペナルティけってーい!ってミサカはミサカは手心なしで判決を下してみたり!」
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「垣根みてェなアホに任せたのがそもそもの間違いだったな……」
御坂「皆ごめんね?私が『垣根さんは慣れてそう』とか言って調子に乗せちゃったから……」
麦野「いいのよ、美琴は悪くないわ。悪いのは全部そこの馬鹿よ」
食蜂「本当、第二位さんにはがっかりね。そんな事じゃタチは無理よぉ?」
垣根「うんまぁ……今回は本当にすまん。でも第五位は死ね」
バチーン!!
一方通行「ほォォォォ!!!」
垣根「よおおおおおお!!!!」
御坂「ひゅぐ!!!」
麦野「ッッかあああぁぁぁ!!」
食蜂「もげら!!!」
打ち止め「はぁ、それじゃ次のお題は簡単なのにするから頑張ってね?
ってミサカはミサカは失敗ばかりの皆を溜息混じりに見つめてみたり」
垣根「幼女に同情される程今の俺達は惨めに見えるのか……」
一方通行「オマエのせいだろ」
御坂「でも楽なお題にしてくれるって言うんならそれに越した事はないわよね」
麦野「私は当分垣根を許す気はねぇけどな」ギロッ
垣根「んなに睨むなよ……悪かったって」
打ち止め「んっとね、次はちょっと恥ずかしいけど高い高いをしてもらいたいな、
ってミサカはミサカは上目遣いでおねだりしてみたり」ジッ
※高い高い:主に親が幼児期の子供をあやす際に行う行動。対象の脇腹や脇の下を両手で抱え
バンザイする要領で思い切り頭上に持ち上げる遊び。
偶にそのまま空中にぶん投げたりする親もいるが結構危険なので持ち上げるだけに止めておいた方が無難である。
一方通行「マジで驚くほど楽なのが来たな」
麦野「確かにね、これなら誰でも出来るだろうし失敗する事も無いでしょ」
御坂「ここで本当に楽なお題にしてくれるあたり打ち止めはやっぱりいい子ね、私に似て」
垣根「……オマエ段々麦野に似てきたな」
食蜂「誰でも出来るって言うけど私は無理よぉ?」
一方通行「はァ?何言ってンだオマエ?」
食蜂「だってぇ、私お箸より重たいもの持った事ないお嬢様だもーん。女の子持ち上げるなんて無理よ無理ぃ」
垣根「うぜぇ……そしてムカつく……」
麦野「本気でクソの役にも立たないわねこの女」チッ
御坂「んー、けど実際結構力が要りそうだしさ、やっぱり今回も男性陣の出番じゃない?」
一方通行「いや、こン中で一番力仕事に向いてンのは間違いなく第四位だろ」
麦野「は?私だってか弱い女の子だぞこら」
垣根「か弱い女の子はそんな喋り方しねぇし、そもそもオマエ片手で浜面ぶん投げたり出来るだろ」
一方通行「か弱いって言葉に謝れ」
食蜂「『子』って言葉にも謝った方がいいんじゃなぁい?」
麦野「黙ってろ、もぐぞ」ギョロ
垣根「はい」
食蜂「ひっ」
打ち止め「あ、あの、ミサカも出来ればあなたにやってもらいたいな、
ってミサカはミサカはあの人に意味ありげな視線を送ってみたり」チラッ
一方通行「あァ?俺か?」
食蜂「ご指名みたいね第一位さん」
御坂「ん、じゃあ一方通行、あんたに任せてもいい?」
麦野「まぁ私たち女の子にはちょっときついし、
垣根はさっきみたいにアホやらかすかもしれないし、妥当な所ね」
垣根「女の子?女の子?」
麦野「黙れ」
垣根「はい」
一方通行「……まァいいけどよォ」
打ち止め「えへへへ」
指名された一方通行はめんどくさそうにぽりぽりと頭を掻きつつ、
ベッドの上で微笑んでいる打ち止めの元へ歩み寄る。
さて、特に断る理由もなかったのでそこはかとなくやる気になった一方通行だが、ここで一つの疑問が浮かぶ。
こいつ、打ち止めに高い高い出来るだけの筋力があんのか?
打ち止めは実年齢こそ一歳にも満たないものの、成長を促進されたクローンであるため
だいたい10歳前後の知能と外見を有している。10歳と言えばだいたい小学校4年生程度だ。
そして小学4年生女子の平均体重はおよそ34kgにもなる。これは案外重い。
打ち止めは小柄な方だし痩せ型でもあるが、それでも30kg程度はあるだろう。
余談だが二次元キャラはBMIが17程度だったりする事もザラである。身長160越えで体重40ちょいとかね。
私は声を大にして主張したい。流石に痩せ過ぎだろ!細けりゃいいってもんじゃねぇんだよ!!
絶対あばら浮いてるって!抱きしめたら痛そうだよ!!
……でもけいおん!みたいにやたらとリアルな体重設定されるのもちょっと複雑な気持ちである。
もう少し夢をみたいと言うか……あぁ男ってめんどくさい。
さてこういった二次元キャラにありがちな謎の体重マイナス補正がかかったとしても
打ち止めの体重が20kgを下回っているということは流石にあるまい。
果たして一方通行のようなモヤシにそれだけの質量を持ち上げることが出来るのだろうか?
……無理そうな気がする。
とは言え、人間の瞬間的に発揮できる力というのは案外馬鹿に出来ないものがある。
健常者が持久的に出せる力は概ね0,1馬力程度と言われているが、
瞬間的には1馬力以上の力を発揮する事も珍しくないのだ。
いくら一方通行がモヤシだろうと一瞬たりとも打ち止めを持ち上げられないという事は流石にあるまい。
まぁそれはそれで少し持ち上げたところで限界が来て打ち止めを落っことして大泣きさせるという面白未来が見えるのだが。
一方通行「……とか思ってンだろオマエら?」
垣根「……」
御坂「……」
麦野「……」
食蜂「……」
力を入れやすいように中腰で打ち止めの脇の下に手を回しつつ、
一方通行は背後で複雑そうな顔をしていた他のレベル5勢を横目で睨む。
誰も反論しないところを見るに、やっぱり皆無理だと思っていたらしい。
一方通行「チッ、ナメられたモンだな俺も」
垣根「いやでも実際大丈夫なのか?言っちゃ悪いがそこらの女より非力なんじゃねぇかオマエ?」
御坂「ね、ねぇ、やっぱり代わろうか?持ち上げようとして打ち止め落っことしたりしたら大変だし……」
麦野「女にこんだけ気を使わせるなんて、なっさけないわねぇ第一位」
食蜂「でも本当に細いわよねぇ第一位さん。それにすっごく色白だし、羨ましいわぁ」
一方通行「あァもォ黙ってろオマエら!!学園都市の頂点がガキ一匹持ち上げられねェわけねェだろ!!」
垣根「身体能力と序列は関係ねぇっての」
一方通行「見とけクソどもが、この程度軽くこなして……」
一方通行とて本当は理解しているのだ。打ち止めを持ち上げられるかどうか正直微妙……
いや多分無理なんじゃないかと言う事を。普段の一方通行なら適当な理由をつけて他に押し付けていただろう。
彼は正面から戦って醜態を晒すくらいなら卑劣な手を使うことも逃げ出すことも辞さない男なのだ。
しかし極度の疲労と度重なる格下からの挑発により彼は冷静さを欠いており、
正々堂々と打ち止めを抱え上げて皆を見返してやろうという彼らしくない自己顕示欲に支配されかかっていた。
実際は挑発ではなく本気で気遣われていただけなのだが、そんな事はもはやどうでもいい。
と言うかそっちの方が惨めだ。
一方通行は悪態を吐きつつ打ち止めの方へと向き直り、既に彼女を掴んでいる腕に力を込めようとする。
しかしそこで、彼は気付いてしまった。
一方通行「……ッ!?」
打ち止め「……」
打ち止めの瞳に、怯えにも似た不安の感情がありありと浮かんでいる事に。
一方通行「打ち止め……?」
打ち止め「だ、大丈夫だよ?気にしないで!ってミサカはミサカは気丈に振舞ってみたり」
怪訝そうな顔をする一方通行に対し、打ち止めは慌てて笑顔を取り繕う。
何を隠そうこの状況、一番不安なのは打ち止めなのだ。
ちょっとした下心から一方通行を指名してみたはいいものの、
間近で見るとその腕の細さが、肩幅の狭さが、胸板の薄さが、この上なく心配になってくる。
それでも今更『やっぱり別の人にして』とは言えない。
そんな事をしてしまえば一方通行の自尊心を大きく傷つけてしまう事になるからだ。
打ち止め「大丈夫、ミサカは大丈夫だから、ね?ってミサカはミサカはもう一度念を押してみたり」
だから彼女は『失敗して地面に落とされるかも』という内心の不安を押し殺して懸命に笑う。
幼女にすら気遣われる学園都市最強の姿がそこにあった。
一方通行「……なァ打ち止めよォ」
しばしの間が空き、不意に一方通行が口を開いたかと思うと、
打ち止めの脇の下に添えられていた彼の腕から力が抜け、拘束が緩む。
打ち止め「な、何?どうしたの?ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
一方通行「俺は確かに他人の驚いたり怯えたり泣き叫んだりする姿を見ンのが大好きだ。
けどな、流石にオマエみてェな小っせェガキをいじめて喜ぶ程外道じゃねェンだよ。
泣かれるとウザそうだし」
打ち止め「え?」
先程までのムキになった様子が嘘のように、一方通行は冷静な表情で淡々と言葉を続ける。
どうやら幼女にまで気を遣われるという酷い侮辱を受けた事により、一周回って逆に冷めて来たようだ。
頭に血が上っていたはずなのにある瞬間怒っていた事そのものが馬鹿らしくなって
突然冷静になるという事は現実にも結構起こったりする。
一方通行「全員が思ってる通り、俺の力でオマエを持ち上げられるかどうかは正直微妙な所だ。
オマエがそンな不安そうな面すンのもよく分かるし、はっきり言って俺も不安なンだよ。
だからよォ、もしオマエが俺には任せられねェって判断したンなら俺は大人しく手を引く。
イタズラにオマエを不安がらせるような真似をしようとは思わねェ」
打ち止め「で、でもミサカがあなたを指名したんだし……」
一方通行「ンな事気にしなくていい。もし俺のプライドが傷つく、とか思ってンならそれもお門違いだ。
能力がなけりゃ俺の身体能力が並以下なンてのはとっくに周知だからな」
一方通行は優しげな口調で打ち止めを慰めつつ、彼女の肩にぽんと手を置く。
学園都市の誇る外道モヤシに有るまじき行為だが、本音は『泣かれるとウザそうだし』の部分である。
無理に高い高いしようとして途中で打ち止めを落としてしまえば
泣かれたり騒がれたりして面倒な事になるのは目に見えている。
それに加えて他のレベル5勢は幼女すら持ち上げられない彼を全力で馬鹿にしてくるだろう。
また、よしんば成功してもその反動で一方通行の身体はボロボロになってしまう可能性が高い。どんだけ貧弱だお前。
ちょっと気遣うような事言って適当に他に押し付けるのが得策だ、と冷静になった彼は判断したのだ。
一方通行「だからな、垣根か第四位辺りに任せとけば安全に……」
打ち止め「ううん!ミサカはあなたがいい!ってミサカはミサカは決断してみたり!」
一方通行「えっ」
打ち止め「ミサカはあなたを信じる!あなたにミサカの命を預けるよ!
ってミサカはミサカは一瞬でもあなたを疑った事を恥じながらも迷いを振り切ってみたり!」
一方通行「あァー……でも万が一途中で落としたりしたら痛ェぞ?オマエがそンなリクス負うことは……」
打ち止め「ミサカの事は気にしないで!それにもし失敗しても誰もあなたを責めない!ミサカが責めさせない!
ってミサカはミサカは力の篭った目で真っ直ぐにあなたを見つめてみたり!」
一方通行「えェー……」
作戦失敗。下手に優しい態度を取ったことで打ち止めの健気な自己犠牲精神に火がついてしまったらしい。
まったく、いい子過ぎるのも考え物だ。
打ち止め「さ、いつでもいいよ!ってミサカはミサカは両手を握り締めて準備万端な事をアピールしてみる!」
一方通行「……」
熱っぽい目で見つめてくる打ち止めを前に、一方通行は引き攣った顔でたじろぐ。
出来れば断りたい。垣根辺りに押し付けたい。が、ここまで言わせておいて
今更自分の方から断ると言うのも気が引ける。と言うか断ると問答無用でペナルティを喰らいそうな気すらする。
もう後には引けない。やるしかないだろう。
仕方なく、一方通行は再び身を屈め打ち止めの身体に腕を回すと、一度大きく息を吐き、彼女を正面に見据えた。
一方通行「……いくぞ打ち止め」
打ち止め「うん、どうぞ!ってミサカはミサカは力強く頷いてみる」
一方通行「おおおおォォォォォォああァァァァァ!!!!!」グッ
気合一閃、一方通行は咆哮を上げつつ腕に慢心の力を込める。
今彼は生まれて初めて本気の力を出そうとしていた。たかが幼女を持ち上げる為だけに。
一方通行「ぐああああァァァァァ!!!!」グググ
打ち止め「……」
が……駄目っ……
喉が張り裂けるほどに叫び、額に血管を浮かびあがるほど力を込めても、打ち止めは1mmたりとも浮かばない。
先にも説明した通り、人間が瞬間的に発揮できる筋力というのは相当なもののはずなのだが、
どうやら一方通行の筋力は生きていくのが心配になるほど低いらしい。
一方通行「うおォォォォ……」
打ち止めを浮かべることが出来ぬまま、一方通行の声と腕に込められた力は徐々に弱々しくなっていく。
スタミナひっくいなお前!!
打ち止め「……」
そんなあまりにも情けない一方通行を見て打ち止めは思う。
『自分の為にこれほど真剣になってくれているこの人に恥をかかせるわけにはいかない』と。
このままではこの人が諦めてしまうのも時間の問題だろう。それはダメだ。
この人に幼女すら持ち上げられない貧弱モヤシ野郎などという汚名を着せてしまってはいけない。
その為にも、なんとかして高い高いを成功させなければ……
しかしこの人に自分を持ち上げるだけの筋力が無い事はもはや明白、その上既に彼のスタミナは尽きかけている。
高い高いをされる対象である自分に一体何が出来ると言うのか。打つ手など……
いや弱気になってはダメだ!何とかして成功させるんだ!そして自分もこの人も笑顔で終わるんだ!
でもどうやって……
打ち止め「……!」
その時打ち止めの脳裏に天啓の如き妙案が浮かぶ。
これだ!これしかない!これならいけるかも知れない!!
……しかし、この方法は危険だ。成功すればいいが失敗すれば自分の身が危ない。最悪死に至る可能性すらある。
その上それだけの犠牲を払っても成功率は決して高くは無いだろう。
他に案は思い浮かばないとは言え、果たして本当にこんな分の悪い賭けを実行に移して良いのか?
一方通行「ぐゥ……はァ、はァ……」
打ち止め「!!」ハッ
悩んでいる暇はない。この人はもう限界だ。やるしかない!賭けるしかない!!
自分のわがままでこれ以上この人に絶望を味合わせて良いはずがない!!
打ち止め「……ねぇあなた」
一方通行「……あァ?」ゼェゼェ
脂汗を滴らせ、肩で息をしながらも、それでも打ち止めを離そうとしない一方通行に向かって
打ち止めは柔らかく微笑みながら語りかける。その笑顔はどこか儚く寂しげで、しかし、とても美しかった。
打ち止め「ミサカのこと、離さないでね?ってミサカはミサカは念押ししてみたり」
一方通行「あ?そりゃどォいう意味……」
打ち止め「よいしょっと」
怪訝な顔で問いかけてくる一方通行を遮るようにして、打ち止めはベッドの上で屈み込むと、
両手を下ろして敷布団に密着させた。
打ち止め「いっけえええぇぇぇぇぇ!!!!」バチバチバチィ!!
打ち止めはそのまま全力の電撃を自分の真下にだけピンポイントで放つ。
一方通行「うおォォ!!?」
瞬間、眩い光が打ち止めの真下から放たれたかと思うと、
同時に彼女の小さな身体はまるで跳ね飛ぶように空中に投げ出され、否、空中に射出され、
打ち止めを抱えた一方通行の両手もそれに引っ張られるようにして跳ね上がった。
御坂(あの子……ッ)
11111号(上位個体……!!)
いったい打ち止めは何をやったのか?それを理解できたのは同じ発電系の能力者である御坂と11111号だけであった。
恐らくあの時、打ち止めが自分の真下という極小範囲にピンポイントで放った高圧の電流は
布団とパイプベッドを瞬時にプラズマ化させ、体積を膨張させたのだろう。
そしてその反動で打ち止めは上空へと射ち出されたに違いない。サーマルガンの原理である。
真下で小規模な爆発を起こしてその反動でぶっ飛んだと捉えても良い。
打ち止め(やった、成功したよ……ってミサカはミサカは……)
満身創痍で空中に投げ出されながらも、打ち止めは己の策の成功を確信し満足げな笑みを浮かべる。
これでいい、これで一方通行の腕が自分を放さないまま高く掲げられれば一応高い高いの形は完成する。
その後すぐにベッドに落ちることになるだろうが、それはもう構わない。
ちょっと、いやかなり無理があるが、これで今回のお題は無事成功、大満足という事にしてしまおう。
これであの人の名誉は守られるんだ。あの人も喜んでくれるよね……?
一方通行の事を想いながら、打ち止めは高く高く、際限なく高く上空へと浮かび上がって行く。
そして――
ゴスン!!!
打ち止め「」
天井に、頭からめり込んだ。
一方通行「……」
自身を弾丸に見立てたサーマルガンの原理で射出された打ち止めの初速は実に亜音速にまで達していたのだ。
一方通行の細腕がそんなもの支えきれるはずも無く、彼は当然の如く手を離していた。
というか一瞬で振り切られていた。その為今回に限っては一方通行に非は無いだろう。
打ち止め「」プラーン
垣根「……」
御坂「……」
麦野「……」
食蜂「……」
一方通行「……どォいう事なの」
目の前で起きた事に理解が及ばず、一方通行は焼け焦げたベッドと
天井からぶら下がる打ち止めを交互に見比べながらぽつりと呟く。
しかしその問いに答えられる者などいようはずもない。
その後裏方の妹達が慌しく打ち止めを天井から下ろすのを見届けると、一行は静かに病室を後にした。
人物名鑑
打ち止め(らすとおーだー)
検体番号20001の妹達であり、妹達を統べる上位個体。頭部に立派なアホ毛を持つ。
他の妹達と違って外見年齢は10歳ほどで感情表現も非常に豊か。
天真爛漫を地で行く性格をしており本SS屈指の癒し役である。それ故に扱い辛かったりもするのだが。
理由はともかく一方通行が絶対能力進化を凍結してくれた事に感謝しており、それが切欠で彼に興味を持つ。
持ち前の前向きさで一方通行が妹達に行ってきたイヤガラセのほとんどを好意的に脳内変換する為、
一方通行の事を『妹達と遊んでくれる素敵なお兄さん』だと考えていたりする。脳味噌お花畑ってレベルじゃねぇ。
また、そんな底抜けのポジティブさを持つ彼女である為、一方通行も彼女をイヤガラセの標的とする事はない。
イヤガラセを好意的に受け取られるせいで彼好みのリアクションをとってくれないからだ。
登場人物のほとんどが不幸になる事に定評のある本SSにあって、
これまで永きに渡って大した被害に遭う事なくやってきた彼女だったが、
今回ついに天井に頭からめり込むという深刻な被害を被った。やはり一方通行に関わるとろくな事がない。
口調がとても面倒なので私のSSでは毎回出番が非常に少ないです。
一行が次に案内されたのは研修室という名目の大き目の部屋だった。
その部屋は今まで回ってきた部屋と違って医療器具は見当たらず、また薬品の臭いもほとんど感じられない。
病院の一室というよりはどちらかと言うと大学の講義室に近いイメージだ。
そして今、彼らの前には一体の人形が横たわっている。
11111号「はい皆さん、今からこちらの人形を使って心肺蘇生の訓練をしますよ、
とミサカは人形を指し示しながら簡単な説明をします」
一方通行「……」
垣根「……」
御坂「……」
麦野「……」
食蜂「……」
11111号の話を聞いているのかいないのか、一行は横たえられた人形を黙って見つめる。
心なしか一方通行の目に動揺の色が見られ、他のメンバーは皆一様に肩を震わせている。
一方通行「……おい」
11111号「はいなんでしょう?とミサカは首を傾げます」
一方通行「この人形よォ……」
一方通行は渋い顔をしたまま人形を指差すと、ゆっくりと11111号の方へと顔を向ける。
一方通行「なンで俺モデルなンだよォォォォォォ!!!!」
その人形は、中性的に整った顔立ちに真っ赤な瞳、真っ白い髪と肌を持ち、
黒いシャツとジーンズという一方通行が夏によく着ている服装そのまんまの格好をしていた。
デデーン♪
『垣根、御坂、麦野、アウトー』
垣根「なんだこれ……本物と区別つかねぇレベルだぞ……」クククク
御坂「学園都市の技術の無駄遣いがこんなところにも……」フフフ
麦野「一瞬素で第一位が寝てんのかと思ったわ」ケケケケ
食蜂「精巧な作りの等身大男性型ドール……なるほどそういうのもあるのねぇ、夢が広がるわぁ」
垣根「広げんな、縮めとけ」
御坂「こいつ開き直りすぎでしょ……」
麦野「もうBL趣味隠す気ねぇな……」
バチーン!!
垣根「うおあっはあああぁ!!!」
御坂「ひぃッ!!!」
麦野「ふああぁ!!!」
一方通行「おい答えろ、何なンだこの人形?何で俺がモデルなンだよ……」
11111号「妹達の中にそういうの好きな奴がおりまして、
経費削減の為にそいつから(強制的に)拝借しました、とミサカは……」
一方通行「この企画の為に作ったとかじゃなくて個人の持ち物なのかよこの人形!?怖ェよ!!」
11111号「あ、ちなみに頭髪は本物を使用しております、とミサカは余計な追加情報をお伝えします」
一方通行「ほ、本物ォ!?」
11111号「あなたが切った髪や日々の極僅かな抜け毛を必死に集めたそうですよ」
一方通行「マジで怖ェンだけど!!何ですかァその執念!?」
11111号「ねらい目は風呂場の排水溝だとか、とミサカは更に更に余計な情報を……」
一方通行「やめろ!!やめてくれ!!いつの間に風呂場に侵入したンだよ!?何がそいつをそンなに駆り立てるンだ!?
復讐か!?妹達からかって遊ンでる俺への復讐で呪いの人形でも作ろうとしてンのか!?」
11111号「ご安心ください、本人曰く『健全な愛』らしいです、とミサカは遅すぎるフォローをしてみます」
一方通行「これっぽっちも安心出来ねェ……むしろ寒気がしたわ……」ゾクッ
御坂(黒子に狙われてる時の私みたいな心境なのかな……こいつの場合半分くらい自業自得な気もするけど)
※この一方通行さんはイヤガラセの為に遊び半分で妹達を誑かしたりする外道です。
垣根「健全な愛の持ち主は等身大の人形なんざ作らねぇよ」
食蜂「こんな人形作られるほど愛されてるだなんて、ロマンチックねぇ」
一方通行「オマエロマンチックの意味わかってンのか!?」
麦野「要はこれアレでしょ?ダッチ……」
一方通行「やァめェろォよォ!!そォいう事言おうとすンのマジでやめろよォ!!!
わかっててもそォいうのは言葉に出しちゃダメだろォ!?」
御坂(ダッチ……?)
11111号「大丈夫ですよ一方通行、この人形はあくまで観賞用らしいです、
とミサカは意外と打たれ弱い一方通行を慰めます」
一方通行「か、観賞用だァ?それならまァ……いや良くねェよ!!こンなモンが作られてる時点できめェンだよ!!
つーか『この人形は』って事はもしかして他の用途に使う為の人形もあンのか!?」
11111号「それではそろそろ訓練に移りましょうか、とミサカは聞こえなかった振りをして話を先に進めます」
一方通行「否定しろよ!!そォいう意味深な態度やめろクソがァ!!!」
御坂(黒子は私の人形とか作ってないでしょうね……)ビクビク
11111号「さて怯えてる一方通行は放っといて、心肺蘇生と言えば何だと思いますか?
適当に答えてみてください、とミサカはていとくんに振ってみます」
垣根「あ、俺?あー、心肺蘇生ねぇ……心臓マッサージとかじゃねぇ?」
11111号「何とも退屈で常識的な回答ですね、いつまで常識人の皮被ってんですかこの皮被りが、
とミサカは何の面白みもない返答をしてきたていとくんを罵倒します」
麦野「これだから包茎野郎は」ハァ
垣根「張り倒すぞこの性悪クローンが。つーか何で麦野まで便乗して俺の事罵倒してんの?」
一方通行「まァ実際オマエ仮性人だしな」
垣根「ちっげぇよ馬鹿が!!!こちとらズル剥けだよ!!!浜面と一緒にすんじゃねぇよ!!」
麦野「わざわざ浜面引き合いに出すなよ……知りたくもない情報が二つも増えたじゃないの……」
御坂(火星人……?)
11111号「ではお姉様、心肺蘇生と言えばなんでしょう?とミサカは対象を変えて再度質問してみます」
御坂「え?えっと、電気ショックとか?」
11111号「……お姉様、道端に倒れてる人がいても能力で電気ショックかましたりするのはやめてくださいね?
間違いなくトドメになりますから、とミサカは電気を使った心肺蘇生は極めて繊細である事を仄めかします」
食蜂「ガサツな御坂さんに電気ショックなんてやられたら炭になっちゃいそうで怖いわぁ」
御坂「あんたらこの企画終わったら炭にしてあげようか?」
11111号「ではみさきち、ビシッと答えてください。ずばり心肺蘇生と言えば?
とミサカはお姉様をスルーしてみさきちに問いかけます」
食蜂「簡単ね、心肺蘇生シチュと言えばまずは人工呼吸よぉ!」カッ
11111号「グッド、とミサカは親指を立てます」
一方通行「それが正解なのかよ」
垣根「シチュって何だシチュって」
※シチュ:シチュエーションの略。オタク、主に腐女子が好んで使う傾向があるとかないとか。
食蜂「溺れて水を飲んでしまった友人を助ける為に人工呼吸を施そうとする主人公(勿論両方男)!
近付く唇、男同士なのに何故か高鳴ってしまうハート!そのまま実際に唇を奪ってしまうもよし、
直前で目を覚ましちゃって『な、何してんだよ!?』『いや、これは!!』ってお互い顔を赤くして慌てる展開もよし!
その後は『た、助けてくれようとしてたんだよな?』『あ、あぁ……』みたいな感じで……あぁもう堪らないわぁ!!」ゾクゾク
麦野「うわぁ……うわぁぁ………」
垣根「やべぇ、やべぇよこいつ……乾いた笑いも出てこねぇよ……」
御坂「ちょっと一方通行、あんたのせいだからねこれ……」
一方通行「えェェ……」
11111号「あなたが下手にみさきちの秘密を暴露したせいで
開き直ってオープンな妄想垂れ流し腐女子に成り果ててしまったようですね、
とミサカはみさきちに話題を振った事に軽く後悔をしながら一方通行を非難します」
一方通行「俺は開いちゃいけねェ扉を開けまったのか……」
食蜂「こうなってくると主人公と友人にもっと詳細な設定が欲しいわねぇ……
えっと、主人公は溺れた友人を助けるんだからスポーツ万能で野生的な感じにしてぇ、
対比として友人の方は都会的な……あ、メガネとかありよねぇ、となるとセリフもそれっぽく……」ブツブツ
垣根「どこまで行くんだこの妄想……」
麦野「きっついわねこれ……」
デデーン♪
『食蜂、アウトー』
食蜂「へ?あれ?な、何でぇ!?」
垣根「そらそんだけニヤつきながら妄想垂れ流してたらアウトも取られるわ」
麦野「つかもう人間としてアウトだわお前」
御坂「今世界で一番醜い物はなんですかって聞かれたら食蜂って即答するわよ」
一方通行「理性も知性も無く本能だけで動く人間ってのは醜いモンだなァオイ」
11111号「またあなたは自分で原因作っといてそういう事を……とミサカは一方通行の物言いに呆れ果てます」ヤレヤレ
バチーン!!
食蜂「ごめすッ!!!」
11111号「気を取り直しまして、みさきちの言った通り心肺蘇生といえば人工呼吸です、とミサカは仕切りなおします」
垣根「待て待て待て、ちょっと待て。まさかとは思うが
そのリアルな等身大一方通行人形使って人工呼吸の練習やるとか言い出すんじゃねぇだろうな?」
11111号「ははは、まさかそんな、そんな拷問みたいな事は流石にしませんよ、とミサカは笑って受け流します」
垣根「本当か?本当だな?信じるぞ?」
御坂「あーよかった、それ聞いて安心したわ」
麦野「例え人形だろうと第一位を模した物体に口付けするなんざ死んでも嫌だしね」
一方通行「俺も俺の人形がそンな風に使われるのなンざ御免だけどよォ、なンか微妙にムカつくなァオマエら」
11111号「それでは今から皆さんの内のどなたか一人にこの人形を使って
マウス・トゥ・マウスの実演練習をして頂きます、とミサカは」
垣根「うおおおぉぉぉぉい待てやこらあああぁぁぁ!!!!」
御坂「あんた今『そんな拷問みたいな事しない』って言ったばっかじゃないの!!」
11111号「人工呼吸ではなくマウス・トゥ・マウスですので、とミサカは言い訳してみます」
垣根「同じだよボケがああああ!!!」
御坂「どっちにしろ拷問じゃないのよおおおお!!!」
麦野「ふざけんなクソが!!
こんな第一位クリソツのきめぇ人形でマウス・トゥ・マウスの練習なんてやってられっか!!!」
一方通行(拷問だのきめェ人形だの、地味に傷つくわァ……)
食蜂「はいはーい!誰か一人なら是非第二位さんが実演練習するのがいいと思いまぁす!」
垣根「おい誰かこの腐女子縛って猿轡でも噛ませとけ!!」
11111号「ではていとくんこちらに、とミサカは人形の前から手招きしてみます」オイデオイデ
垣根「行かねぇよ!!何があろうと行かねぇよ!!!
例え今銃で狙われててそっちに行かねぇと死ぬって状況でも行かねぇよ!!!」
11111号「そんなイヤですか……んじゃ一方通行、あなたにしましょう、
とミサカはていとくんを保留にして一方通行に向かって手招きします」
一方通行「はァ!?何で俺にターゲットが移るンだよ!?」
11111号「ほら、人形のモデルはあなたですし抵抗もないでしょう?」
一方通行「大有りだよ馬鹿野郎!何が悲しくて自分の人形と口付けしなきゃならねェンだ!?」
食蜂「第一位さんと第一位さんの人形……双子のアルビノ男子の絡み……ありだと思いまぁす!!」ピキーン
一方通行「オマエいい加減黙ってろォォォォ!!!」
11111号「まぁまぁ良いではありませんか、ファーストキスが自分の人形と言うのも良い笑い話になると思いますよ、
とミサカは一方通行を説得します」
一方通行「痛ェ話にしかなンねェだろォが!つーか人形がファーストキスにカウントされちまうのかよ!?」
食蜂「へぇぇ、第一位さんファーストキスもまだなのぉ?案外初心なのねぇ」
一方通行「あ゛ァ?」ギロ
11111号「えぇ、何せこの男、生粋の童貞ですから。
ファーストキスどころか女性と手を繋いだ事すらありませんよ、とミサカは補足します」
垣根「フッ」
麦野「クス」
食蜂「フフンッ」
デデーン♪
『垣根、麦野、食蜂、アウトー』
麦野「流石……ブレない童貞っぷりね第一位」クククク
一方通行「いやあるから、手ェ繋いだ事くれェあるから。オマエら何笑ってンのマジで」
垣根「え、あんの?オマエどんな顔して女と手ぇ繋いだの?
いつもみたいに眉間に皺寄せた仏頂面で?つーか童貞は否定しねぇのか?」ケケケケ
一方通行「何こいつクッソうぜェ」
御坂「いやでも想像出来ないわ、一方通行が女の子の手を引いてるところなんて……」
一方通行「想像しなくていいわボケ、死ね」
食蜂「第一位さんは色々な初めてをいつか出会う王子様の為にとってるのね、素敵よぉ」キラキラ
一方通行「うわァもォオマエマジできめェなァ!!!こっちに引き込ンだの大失敗だよクソがァ!!!」ゾゾゾ
バチーン!!
垣根「ぴゃあああぁぁ!!!」
麦野「へあッッ!!!」
食蜂「もぺぇ!!!」
11111号「しかしていとくんはダメ、一方通行もイヤだとなると、誰が実演練習をやるんです?
流石に女性陣にこんな人形使わせるのはミサカとしても心苦しいのですが、
とミサカ悲痛な面持ちで呟いてみます」
御坂「どこが悲痛な顔なのよ……」
食蜂「今にも笑い出しそうな顔してるわねぇ」
麦野「心苦しいんなら普通の人形持って来い」
11111号「そいつは出来ない相談です、とミサカは大きく手でバッテンを作ります」ダメダメ
垣根「どうあっても一方通行の人形を使わせたいみてぇだな……」
麦野「誰か一人を生贄に捧げなきゃならないわけね」チラッ
御坂「誰か、一人……」チラッ
一方通行「生贄……」チラッ
垣根「え、ちょっと、君ら何でこっち見てんの?」
食蜂「やっぱり第二位さんがベストじゃないかしらぁ?」
垣根「おま、何言ってんだコラァ!?」
一方通行「っせェな、オマエ汚れ役なンだからこォいう時に動けなくてどォすンだよ?」
垣根「ふざけんな!!大体オマエはいいのか!?人形とはいえオマエの形した物体と俺が口付けする事になんだぞ!?
オマエだってイヤだろうがそんなの!!つーか絵的にやべぇって!!」
一方通行「ンなモンイヤに決まってンだろ。
けど下手にオマエ擁護すっと俺が実演する羽目になりそォだしよォ……
流石に自分の人形で人工呼吸の練習とかそっちの方がNGだわ」
麦野「諦めな垣根、あんたはこういう役回りなのよ」ポン
御坂「ごめんね垣根さん、ごめん、ごめん……」
垣根「謝るくらいならオマエがやれ」
御坂「あぁそれは絶対イヤ。何があってもイヤ」
食蜂「いよいよ生BLが拝めると聞いて」
11111号「では満場一致でていとくんに実演して頂くということで、とミサカは決を下します。決定決定」
垣根「理不尽過ぎんだろうがあああああああ!!!」
11111号「もー、あんまりわがまま言うとこっちも強硬手段に出ちゃいますよ?
とミサカは頬を膨らませながら駄々っ子なていとくんを嗜めます」メッ
垣根「脅しのつもりか!?ふざけんな!例えペナルティ喰らおうがここは譲らねぇぞ!!
どんだけケツシバかれようと一方通行の人形と口付けするよりゃマシだ!!」
11111号「もしもし本部ですか、ていとくんが言う事聞かないんでお仕置き用に至急第七位さんの派遣を、
とミサカはMNWを通して裏方の妹達に最終兵器の出動要請を……」
垣根「いやぁぁぁぁ!!やめてええええええええ!!!!」ヒィィィィ
デデーン♪
『一方通行、麦野、アウトー』
麦野「オカマみてぇな声出してんじゃないわよバ垣根がぁ!!」
一方通行「すっかり第七位恐怖症だなオマエ」クククク
垣根「オマエもあいつにケツぶっ叩かれたんだからわかるだろ!?マジで足腰立たなくなるレベルだったろうが!!」
一方通行「俺は第七位に殴られた瞬間意識トンだから正直よくわかンねェンだよ」
垣根「今だけはオマエの耐久力の低さが羨ましいわ……」
御坂「むしろ何発もあのすごいパンチを耐えてた垣根さんの耐久力が異常なんだって……」
食蜂「第二位さんのお尻に第七位さんのすごい○ン○が何発もぶち込まれたですってぇ?」ピク
垣根「その悪意まみれの伏字はやめろ!!つーかオマエマジで死んで!!」
バチーン!!
一方通行「があああァァァァ!!!」
麦野「っづううぅぅ!!!」
11111号「さてていとくん、第七位さんを召喚するか大人しく人工呼吸を実演するか、
どちらでも好きなほうを選んでください、とミサカは天使のようなスマイルでていとくんに二択を迫ります」ニタ
垣根「救いはないんですか?分かり合う事は出来ませんか?」
11111号「神は死んだ、とミサカはニーチェの言葉を借りてみます」
垣根「…………人工呼吸の方向で」
11111号「その言葉が聞きたかった、とミサカは最高の笑顔で親指を立てます」グッ
垣根「ちくしょう、ちくしょう……」
食蜂「っし」グ
一方通行「小さくガッツポーズしてンじゃねェぶっ殺すぞ」
11111号「ではていとくん、こちらに、とミサカはにこやかに手招きします」カムカム
垣根「ぐ……」
垣根は心底嫌そうな顔で歯軋りをしながらも、第七位という彼にとって最悪のカードをチラつかされた為、
仕方なく11111号に従って横たえられた人形の前へ移動しその場にしゃがみ込む。
それにしても見れば見るほど一方通行そっくりの人形だ。精巧さではオ○エント工業を遥かに凌ぐだろう。
これに人工呼吸をしなければならないのかと思うと想像しただけで酷い吐き気が込み上げて来るが、
それでも第七位に吹っ飛ばされるよりは幾分マシだと垣根は自分に言い聞かせる。
11111号「それではまず気道の確保を行ってください、とミサカはていとくんに指示を出します」
垣根「おう……後頭部下げて下顎持ち上げりゃいいんだよな?」ソロソロ
11111号の指示に従って人形の気道確保を行うべく、垣根は恐る恐るといった様子で
一方通行人形に向かって手を伸ばしていく。必然、身体全体を人形に近付けることになる為、
垣根は少しでも人形から遠ざかろうと必死に身体を捻り顔を逸らしている。そこまで嫌か。
そしてその手が人形の額と顎に添えられた瞬間――
垣根「いって!!」ビクッ
垣根は短い悲鳴を上げながら両手を振り上げるようにして人形から離すと、
そのまま仰け反るようにして尻餅をついた。
御坂「ど、どうしたの?」
麦野「何か仕掛けでもあったか?」
垣根「いや……静電気……」イテテテ
一方通行「クッ」
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
垣根「オマエ俺が痛い目に遭う度に笑うよな?正直結構傷つくんだぞ?」
一方通行「事あるごとにオーバーリアクション取るオマエが悪ィンだよ!!」
バチーン!!
一方通行「っくああァァァァァ!!!」
垣根「しっかし何なんだこの人形、かつて無いほど強烈な静電気喰らったぞ。まだ手が痺れてやがる……」
一方通行「静電気ってレベルじゃねェだろそれ、何だってそンな強力な電気を帯びてンだよ」
麦野「そらまぁ発電系能力者が愛玩用に使ってる人形なんだからそのくらい電気蓄えてても不思議じゃないでしょ」
御坂「い、いや、観賞用でしょ?そうよね?」
11111号「ノーコメントで、とミサカは目を逸らします」フイ
一方通行「……」
食蜂(んー、やっぱりこの人形、普段は御坂さんのクローンがアレな事に使ってるのかしらぁ?
とするとぉ、そんな人形に今から第二位さんが口付けするって事はぁ……)ハッ
食蜂「これって寝取り!?」ピキーン
一方通行「ダメだこいつ、早く何とかしねェと……」
垣根「マジで何とかしろよ、第五位をこっちに引っ張り込んだのもそんなイタい女にしちまったのもオマエなんだからな?」
食蜂「誰がイタい女ですってぇ!?何度も言うけどこのくらい普通よ普通!
男子が二人いたらカップリング妄想をせずにはいられないのが女という生き物なんだからぁ!!」
麦野「勝手に女全体をそんなわけわからん生き物にすんな」
御坂「妄想するのはあんたの勝手だけどさ、せめて口に出すのはやめてくれない?」
食蜂「ふ、まぁ体型からして女らしさの欠片も無い御坂さんと
年齢的に女を捨ててそうな第四位さんにはわからないでしょうけd」
御坂「ふん!!」シュッ
麦野「せい!!」ヒュッ
スパパァーン!!
食蜂「どぅふッ!!!」ビターン
一方通行(前後から同時にローキック入れやがった、おっかねェ……)ウワァ
11111号「愛と友情のツープラトンですね、とミサカは脛を押さえてのた打ち回っているみさきちを眺めながら
お姉様とむぎのんの息のあったコンビネーション技に戦慄します」ゾクゾク
垣根「何度繰り返す気だよこの流れ……」
11111号「それではていとくん、改めて人形の気道確保を行ってください、とミサカは指示を出します」
垣根「……おう」
11111号に従い、垣根は再度人形に向かって手を伸ばす。
静電気を警戒して何度か指先でタップするように人形をつつくが、人形はうんともすんとも言わない。
どうやら先程の一撃で蓄えられていた電気は全て放出されたようだ。
それを確認した垣根は一度安堵の溜息を吐くと、今度こそ人形の額と下顎に手を添えた。
垣根「……うわ」
そのまま速やかに気道確保を行なうと思いきや、垣根は手を添えた状態で身体を硬直させ、
何とも言えない微妙な顔をしながら背後で様子を見守っている他のレベル5勢の方へと振り向いた。
垣根「……」
一方通行「どォしたよ?」
御坂「何よその顔?また何かあったの?」
垣根「この人形、凄く生暖かい……」
麦野「ぐ……余計な報告すんな!」
垣根「あと超もち肌、マジすべすべぷにぷに」
一方通行「あァ?もち肌具合なら俺も負けねェぞ?」
御坂「プフッ」
麦野「グウ」
食蜂「ファッ」
デデーン♪
『御坂、麦野、食蜂、アウトー』
御坂「何張り合ってんのよ!?あんたの肌の調子なんてどうでもいいっての!!」
一方通行「人形ごときに負けるなンざ俺のプライドが許さねェンだよ」チッ
麦野「つーか余計な報告すんなつったばっかだろうがクソ垣根!!」
垣根「報告したくなるくらい手触りがいいんだよこの人形……癖になりそうな自分が怖ぇ……」サワサワ
食蜂「本物の第一位さんはもっと手触りがいいかもしれないわよぉ?第二位さん、是非そっちも触って……」ニヨニヨ
一方通行「オマエは喋ンな」パコーン
食蜂「あだ!!す、スリッパでぶったわねぇ!?履き物で可愛い女の子を叩くなんて信じられない!最低よぉ!!」
一方通行「それがどォした」スパーン
食蜂「ひぎ!!二度もぶったぁ!!」
11111号「では三度目行っときましょう、とミサカは裏方の妹達の刑の執行を命じます」ヤレ
バチーン!!
御坂「うぐぅ!!!」
麦野「あぎゃぁ!!」
食蜂「へむぐっ!!」
垣根「あーすげぇわこの人形、何か触ってると癒される……見た目が一方通行でさえなければ」サワサワ
一方通行「仮にも俺の形してる物体をそンな撫で回すンじゃねェ、きめェからやめろ」
食蜂「あぁ、倒れている美少年をイケメンが好き放題弄ってる……何て素敵な光景なのかしらぁ……」フヘヘヘヘ
デデーン♪
『食蜂、アウトー』
食蜂「ひっ!?」
御坂「あんた、ニヤケすぎ」
麦野「一人で笑ってばっかだなテメェ」
垣根「よし、こうやってれば第五位が勝手に爆死してくれると信じてたぜ」グ
一方通行「狙ってたのか」
垣根「当たり前だ、でなきゃ誰が好き好んでテメェの人形なんざ撫で回すかよ」
食蜂「て言うか私ピンポイントで狙い撃ちされすぎじゃない!?不公平よぉ!!」
11111号「お前の妄想力が異常なだけやがな、とミサカは冷めた目でつっこみを入れます」
バチーン!!
食蜂「へなっぷ!!!」
11111号「前置きはもう十分でしょう、そろそろいっちゃってくださいよていとくん、
とミサカは時間を稼ごうと必死なていとくんの退路を封じます」
垣根「チッ、やっぱり時間稼ぎで逃げ切りは無理か……」
麦野「ほら垣根、逃げ場なんてどこにもないしどうせ誰もあんたを庇ったりなんてしないんだから
もう腹括ってぶちゅっとやっときなって」
御坂「所詮人形相手だし、そんなに過敏になる事ないわよ」ガンバ
垣根「テメェら他人事だと思って……」
一方通行「どっちにしろオマエがさっさとやらなきゃ話が先に進まねェンだよ。
だからさっさとやっとけ、ンでこの人形もさっさと片付けさせろ」
食蜂「息吹き込んでるところはしっかり写メ撮ってあげるから安心していいわよぉ」
垣根「ちくしょう、マジで味方いねぇ……わかってたけど、知ってたけど」
うんざりとした表情を作りながら、垣根は人形の方へと向き直る。四面楚歌とはまさにこの事か。
しかし連中の言う事も一理ある。これ以上時間を稼ごうとすれば本当に第七位が介入して来る恐れがあるのだ。
逃げ場がない以上はさっさと片付けるのが確かに得策だろう。
垣根は肩を落としながら人形の気道確保を行うと、もう一度他のレベル5勢の方へ顔を向けた。
垣根「いいかオマエら!今からこの人形に人工呼吸やるけど絶対笑うなよ!?マジ笑うなよ!?
嫌々こんな事やらされた上に嘲笑われたりしたら俺もう立ち直れねぇからな!!」
御坂「大丈夫大丈夫、笑わないって」
麦野「そうね、笑やしないわ。ただちょっと引くだけよ」
一方通行「俺も被害者だし笑えねェよ……」
食蜂「もうそんな前置きいいから早く早くぅ!」
垣根「携帯構えながら息荒げんのマジでやめてもらえません?あと引くな!引くのもやめろ!!」
11111号「いいからさっさとしてくださいよ、それとも第七位さん呼びますか?
とミサカは脅しをかけます」
垣根「はいはいやりますぅ!やりゃいいんだろ!!」
レベル5勢に促され11111号に脅され、垣根は仕方なく人形へと顔を近づけていく。
一方通行を模した人形へと徐々に近付いて行く垣根の唇。正直絵的にやばい。つーかきもい。
食蜂「接写!接写!!」カシャカシャ
そしてその様子を携帯のカメラで撮りまくる食蜂。腐女子の本領発揮である。
垣根が人形に顔を近づけるのに合わせて彼女もまたギリギリまで人形に近づいて接写している。
垣根「……」ピタ
食蜂「あれ、何で止まるのよぉ?」
人形に口を付ける寸前、不意に垣根の動きが止まり間近で写メを撮っていた食蜂と目が合う。
食蜂「ほら早く早くぅ!焦らしプレイなんて誰も望んでないわよぉ?」
垣根「オマエが行っとけオラァァァァ!!!」ガシ
食蜂「ぶげぇぇぇぇぇぇ!!?」ズキュゥゥゥン
食蜂の態度が気に障ったのだろう。垣根は目の前にあった食蜂の頭を鷲掴みにすると
彼女の顔をそのまま一気に人形の顔面へと押し付けた。なんということでしょう。
食蜂「もごッもごもご!?」
垣根「おらおら存分に堪能しろやぁ!!」ググググ
強制的に人形と口付けさせられた食蜂は必死にもがき抜け出そうとするが、
彼女の頭をしっかりとホールドしている垣根の腕がそれを許さない。
やられ役のイメージのある垣根だが、麦野が規格外なだけで垣根の身体能力も同年代と比べると相当に高い方なのだ。
食蜂「ぷはっ!わ、私のファーストキスがあぁぁぁぁ!!!」
デデーン♪
『一方通行、御坂、麦野、アウトー』
麦野「偉そうな事言ってた癖にテメェもファーストキスなのかよ」
御坂「て言うか人形カウントしちゃうんだ」
食蜂「せ、責任取ってよね第一位さぁん!!」
一方通行「え、俺関係なくね?どっちかっつーと垣根が責任取るべきじゃね?」
垣根「え、俺やだよこんな腐った女」
バチーン!!
一方通行「ふァァァァ!!!」
御坂「ひぃやぁぁぁ!!!」
麦野「ぎにゃぁぁぁぁ!!!」
食蜂「穢された……穢されたわぁ……」ウジウジ
御坂「最初から穢れてんでしょあんた」
食蜂「うるさぁぁい!!!」
垣根「おいクローン、人工呼吸の練習をするのは誰か一人だって話だったよな?
第五位がやったからには俺がやる必要はなくなったよなぁ?」
11111号「むぅ……まさかこんな逃げ方をするとは……とミサカは予想外の事態に困惑します」
一方通行「おいもォいいだろ、俺の人形片付けろよ。気分悪ィわ」
11111号「腐ってるとはいえ女の子に口付けされて気分悪いとか、お前は本当に鬼畜だな、
とミサカは暴言吐きまくりの一方通行に辟易します。
まぁ時間も押してますしここはこんなもんにして次に行きましょうか」
11111号「いいですか皆さん、一流の看護師や医者には目利きも必要です、
とミサカは人差し指を立てながらレベル5勢を見渡します」
一方通行「はァ……?」
垣根「目利き?」
御坂「えっと、何で?」
11111号「昨今は病気でもないのに病院に入り浸る人も多いのですよ。
その為に本当に治療が必要な人が後回しになるというケースも珍しくありません。
ですからこれからの医者には目の前の患者が本当に病気か否かを短時間で見抜く力が必要なのです、
とミサカは力説します」
麦野「はぁ……説得力があるような無いような……」
食蜂「それでぇ、その目利きと私達が今産婦人科の診察室にいる事は何か関係があるのかしらぁ?」
11111号「大有りです。今までの流れでわかるとは思いますが、これから皆さんには目利きの訓練をして頂きます、
とミサカはこれからのプログラムの説明に入ります」
一方通行「いやだからよォ、産婦人科と目利きと関係あンのか?」
11111号「はい。これから三人の妊婦さんに診察室に入ってきて頂くのですが、その内本物の妊婦さんは一人だけです。
皆さんには誰が本物の妊婦さんなのかを当てて頂きます、とミサカは説明を続けます」
垣根「はぁなるほど、妊婦の目利きって事か」
御坂「えっと、それってやっぱり外したら……」
11111号「えぇ、勿論外した方にはペナルティを受けていただきます、とミサカは頷きます」
麦野「んなこったろうと思ったわ」ハァ
食蜂「でも要は当てればいいのよねぇ?だったら簡単よぉ、私に見抜けない嘘なんて無いんだから」フ
垣根「オマエ能力無かったら一方通行以上に無能っぽいのに良くそんな強気でいられるな」
11111号「さて、そろそろ妊婦さん達にご入場頂こうと思いますが、その前に何か質問はありますか?
とミサカは一応確認してみます」
一方通行「本物の妊婦は本当に一人なンだな?全員偽者だったり二人以上本物がいるって事は考えなくていいンだな?」
11111号「えぇ、流石にそこで嘘は吐きませんよ、ゲームになりませんし、とミサカは肯定します。
部屋に入ってくるのは三人で本物の妊婦はその内一人、
皆さんには誰が本物かを当てていただく、それだけの事です」
垣根「ん、まぁ単純だな」
麦野「そのルールに嘘が無いってんならもう聞くことは特に無いわね」
御坂「あ、妊婦かどうかって見た目だけで判断するの?ヒントとかは?」
11111号「いえ、見た目だけでは流石に辛いと思うのでこのミサカから妊婦さん方にいくつか質問をします。
その答えと反応から本物の妊婦さんを見抜いてください。簡単でしょう?
とミサカはこのクイズの難易度が意外と低い事を仄めかします」
食蜂「ふぅん、どうせならこっちから質問させてくれればいいのに。
そうすれば私が一発で偽者を暴けるような鋭い質問をしちゃうんだけどなぁ」ウフフフフ
一方通行「だァれもオマエには期待してねェからちょっと下がってろっての」
御坂「つーかあんた今……」
食蜂「ほえ?」
デデーン♪
『食蜂、アウトー』
食蜂「え?……ええええええええぇぇぇ!?」
垣根「あーあ、ほんっとに馬鹿だなこいつ」
麦野「なぁに一人で笑ってんだか」ヤレヤレ
一方通行「これだから素人は」チッ
御坂「あんたも似たような取られ方よくしてるけどね」
11111号「些細な事でも勝ち誇った顔で嘲笑するのが好きですからねこのモヤシ、
とミサカは溜息交じりに肩を竦めます」フゥ
一方通行「るせェよ些細なことですぐドヤ顔になンのはオマエだろォが」チッ
バチーン!!
食蜂「ぱみゅ!!!」
11111号「さ、それでは妊婦さん達に入室して頂いてもよろしいですかね?とミサカは再度確認を取ります」
一方通行「おォ」
垣根「いつでも」
御坂「うん、大丈夫」
麦野「さっさと終わらせましょ」
食蜂「大丈夫、嘘を見抜くんなら私の十八番なんだからぁ……頑張れ私」グッ
11111号「はい、大丈夫そうなので入室して頂きましょうか。
それではエントリーナンバー1番の方、どうぞ、とミサカは入り口に向かって声をかけます」カモン
「はーい」ガチャ
11111号が診察室のドアに向かって声をかけると、元気な返事と共にドアが開かれ
一人の女性が部屋の中へと足を踏み入れてくる。マタニティドレスを着用し
臨月程に膨れたお腹を重たそうに、しかし愛おしそうに撫でながら一行の前に姿を現したその女性は、
真っ赤な髪をお下げのように左右に結ったその女性は――
結標「よろしくね」ニコッ
これまで散々彼らを苦しめてきた狂気のショタコン、結標淡希その人であった。
デデーン♪
『一方通行、垣根、御坂、麦野、アウトー』
一方通行「出オチィィィィィィ!!!!」
垣根「ダウトオオオォォォォォォ!!!!」
麦野「またテメェかあああああああ!!!!」
御坂「何でいきなりそんなにお腹膨れてんのよ!?数時間前まで普通だったじゃない!?」
食蜂「え、何?誰?皆知り無いなのぉ?」
11111号「あぁそう言えばみさきちは知りませんでしたね、香焼くんにトラウマぶっこんだ張本人ですよ、
とミサカは途中参加のみさきちに懇切丁寧に説明します」
食蜂「あぁ、この人が……」
バチーン!!
一方通行「ふあああァァァァ!!!」
垣根「ひごぉあ!!!!」
御坂「ぴきぃ!!!」
麦野「ふぎゃッ!!!」
結標「もう、胎教に悪いから大声出さないでよね」プンスカ
垣根「いやいや……えぇー……」
麦野「お前の存在が一番胎教に悪いわ」
一方通行「とりあえずこいつは偽者確定だろ」
御坂「うん……お腹があり得ないスピードで膨れてるし……」
垣根「つーか香焼くんどこ行ったんだよ?無事なのか?」
一方通行「あの膨れた腹ン中に入ってンの香焼くンじゃね?」
垣根「正真の意味で食われたのか……」
御坂「怖いこと言わないでよ!?」ビクビクッ
麦野「あながちあり得ないとも言い難いのが何とも……」
食蜂「カニバリズムこそ究極の愛だって主張する人もいるらしいわよぉ?」
一方通行「……ッ」ゾク
御坂「どうしたの一方通行、顔色悪いわよ?」
麦野「青白いの通り越して透明っぽくなってるわね」
一方通行「いやなンか、一瞬別の世界線の記憶が見えた気が……」
垣根「なんのこっちゃ」
結標「……」ジー
一方通行「……こっち見ンなショタコン」
結標「メインディッシュは頂いたし、デザート代わりにちょっと旬遅れのアルビノショタを……」ゴクリ
一方通行「ひィ!?こっちにターゲット移すンじゃねェよ!!」ビクゥ
デデーン♪
『垣根、麦野、アウトー』
垣根「こんなに怯えてる一方通行を見たのは初めてだ……」クククク
麦野「童貞なだけあって貞操の危機には敏感なのね」フ
御坂「一方通行、あんたの犠牲は忘れないわ」ナムナム
食蜂「ダメよ!!第一位さんの最初の相手はかっこいい男の子じゃないと……」
一方通行「オマエら好き勝手ほざいてンじゃねェ!!」
バチーン!!
垣根「おぅふ!!!」
麦野「ばあああぁぁぁ!!!」
結標「大丈夫、やさしくするから、やさしくするから、ね?私に任せて」ジリジリ
一方通行「にじり寄って来てンじゃねェェェェェェ!!!!」
垣根「………何か、どっかで見たような光景が……」ンー
11111号「話進まないんでそんなもんにしといてください、
後であなたの自由に暴れまわってもいい時間を作りますから、
とミサカは狂気のショタコンに制止をかけます」ストップストップ
一方通行「おい待てサラッと爆弾発言すンな」
御坂「て言うか現状で十分過ぎるほど自由に暴れてるでしょこの人……」
結標「む……仕方ないわね、デザートはもう少し後にしてあげるわ。
その代わり時間を置いてお腹を減らす分、食べ放題にしてもらうから!」
11111号「えぇ、えぇ、どうぞお好きになさってください。
では落ち着いたところで次行きましょう、エントリーナンバー2番の妊婦さん、どうぞ、
とミサカは再度入り口に向かって声をかけます」カムヒア
アックア「失礼するのである」ガチャ
デデーン♪
『一方通行、垣根、御坂、麦野、アウトー』
一方通行「だから出オチィィィィィ!!!!」
垣根「これはあかん、これはあかんでぇ……」
麦野「マタニティドレス着てんじゃねぇよ気持ち悪ぃ!!!」
御坂「おかしいでしょ!?何かもう何もかもがおかしいって!!!」
食蜂「何?何でこのおじさんお腹が膨れてるの?怖いわぁ……」
バチーン!!
一方通行「ぱおォォゥ!!!」
垣根「ひょおおおおお!!」
御坂「ひぃったああああ!!!」
麦野「っでええぇぇぇああ!!!」
アックア「あ、動いたのである……」サスサス
一方通行「動いて堪るかァァァァァ!!!」
垣根「よしんば動いたとしてもテメェの内臓だよそれ!!新しい生命であるものか!!」
麦野「愛おしそうな目で腹さするのやめろ!!!何が詰まってんだよその腹ぁ!?」
御坂「……ねぇ食蜂」
食蜂「何?」
御坂「これもあんたの言うBLなの?」
食蜂「違うわよぉ!!BLの世界は清らかなの!清純なの!!
こんなゴリラみたいなむさ苦しい穢れたおっさんの居場所なんてないわよぉ!!」
アックア「穢れたおっさんとは心外である、これから一児の母になる人間に向かって……」
食蜂「黙れぇい!!私はあなたの存在を認めないし許さないわぁ!!」キッ
一方通行「つーか母にはなンねェだろ……」
アックア「まったく近頃の子供は発言が過激なのである。
お腹の子には是非次代を導く優しい子に育って欲しいのである」サスサス
麦野「ニヤケながら腹擦るのやめろつってんだろうがああああああ!!!!」
垣根「キメェんだよボケェェェェェェ!!!!」
食蜂「腹パンすんぞこらぁぁぁぁ!!!!」
御坂「ちょ、落ち着きなさい食蜂、あんたそんなキャラじゃないでしょ!?」
一方通行「あァー、とにかくこいつも偽者確定だな……」
垣根「つか男だしな……」
麦野「て事は次が本命って事ね」
御坂「質問するまでもなく答え丸わかりじゃない……」
11111号「さてそう甘く行きますかね?それではラスト、
エントリーナンバー三番の方、どうぞ、とミサカは声をかけます」
「はいはーい」ガチャ
11111号の声に呼応し、一人の女性が上機嫌そうな様子で姿を現す。
前の二人と同じようにその女性もまたマタニティドレスを着用し、膨れたお腹を抱えている。
しかしそのような状態にあってもなお、いや、そのような状態だからこそ、
彼女は妙齢の人妻が放つような危うい色香に包まれていた。
マタニティドレスも臨月のお腹も、他の二人のような違和感は無い。
誰が見てもごく自然に『色っぽい妊婦さんだ』と認識するだろう。
しかし、そんな彼女を見た瞬間、御坂が目を丸くして金切り声を上げた。
御坂「何やっとんじゃあんたああああああああ!!!!!」
「あん、もう、そんなに大声出さないでよ美琴ちゃん」
御坂「何やってんのよ!?ほんと何やってんのよ……」
御坂が驚愕するのも無理は無い。
茶髪のショートカットという若々しい髪型をしながらもしっかりと大人の色香を持つその女性は――
御坂「何やってんのよお母さぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
御坂美琴の実の母、御坂美鈴なのだから。
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、食蜂、アウトー』
御坂「笑わないでよちょっとおおおおおお!!!」
垣根「知り合いの身内が出てくると妙に面白いから困る」
麦野「てかあんたの母親妊娠してたの?」ククク
御坂「知らない!私そんな話知らないわよぉ!!」
食蜂「でも御坂さんのお母さん若いわねぇ、見ようによっては第四位さんよりも……」
麦野「あ?」ガシ
食蜂「ごめんなさい何でもないんで離してください」
一方通行「ッッ!ッッ!!」ガクガク
11111号「お前はちょっとツボに入りすぎだろ、
とミサカは言葉が出ないほど腹抱えて笑ってる一方通行につっこみを入れます」ビシ
バチーン!!
一方通行「ッッッァッ!!!」
垣根「こぉあ!!!」
麦野「ひゅぐッ!!!」
食蜂「へむ!!!」
美鈴「黙っててごめんね美琴ちゃん」テヘペロ
御坂「え、いや、え?本気?え?」オロオロ
垣根「まぁ他の二人はあり得ねぇし、本物はオマエの母さんで確定じゃねぇか?」
御坂「いやいやでも、え?えっと、お母さん、本当なの?妊娠……」
美鈴「あらら?いつもみたいに『ママ』って呼ばないの?」ニコッ
御坂「ちょ、余計な事言わないでよ!?」
食蜂「えー、御坂さんお母さんの事『ママ』って呼んでるのぉ?」ニヤニヤ
デデーン♪
『食蜂、アウトー』
食蜂「え?あぁ!!?」
御坂「ざまぁ」
一方通行「キャラ壊れてきたなこいつ」
麦野「そらこのタイミングで母親なんか出されたら不安定にもなるわよ」
垣根「しかも母親が知らない間に妊娠してたという衝撃の事実付きで、な」
11111号「いえいえ、まだお母様が偽の妊婦だという可能性もあるのでお忘れなく、とミサカは釘を刺します」
バチーン!!
食蜂「へぶしッ!!!」
御坂「いやいやいや、これはない、いくらなんでもこれはないでしょ……
知らない間に母さんが妊娠してたなんて信じないわよ私。きっと前の二人のどっちかが……」
垣根「でも後はさっきまで普通の体型だったショタコンとおっさんだぞ?どう見てもその二人は偽者だろ」
御坂「うるさい!!きっと何か裏があるのよ!!学園都市の超科学で何か私達の予想も付かないことが行われて……」
一方通行「現実見ろよ超電磁砲、オマエの言ってることは滅茶苦茶だ」
美鈴「んもう、美琴ちゃんもお姉さんになるんだからもっとしっかりしなきゃダメよ?」
御坂「やめてええええええ!!!聞きたくないわよそんな言葉ぁぁぁぁ!!!」
11111号「ともあれ、ようやく役者が揃いましたね、とミサカは三人の妊婦さんを見回しながら頷きます」ウム
麦野「一人妊『婦』じゃねぇのが混ざってっけどな」
アックア「ふむ?誰の事であるか?」
美鈴「誰誰?誰かしら?」
結標「私達三人ともしっかり妊婦やってるわよ?」
一方通行「もォつっこむのもめンどくせェな……」
11111号「さて、見た目だけでこの三人の中から本物の妊婦を探り当てるのはやはり至難ですね、
とミサカは目を細めます。うむ、三人とも甲乙つけ難い妊婦っぷり」
食蜂「……一目瞭然な気がするのは私の気のせいなのかしらぁ?」
一方通行「奇遇だな、俺もだ」
御坂「私の母親の事言ってるんだったら違うからね?絶対違うんだから!!」
垣根「そんなイヤか母親が妊娠したのが」
御坂「そりゃ妊娠してるってのもショックだけど!!
何よりこんな場所でこんなタイミングでアホっぽく教えられたって事実がイヤなのよ!!」
美鈴「黙っててごめんね?驚かせようと思って……」テヘ
御坂「ハッ!さてはあんた偽者ね!?正体を現しなさい!!本物のお母さんはどこ!?」
麦野「落ち着きなさい美琴、何かもうわけわからない事言ってるわよあんた」
11111号「てなわけで先にも言った通り、これから質問タイムに移ります。
ミサカからいくつか質問をしますので、上手いこと本物の妊婦さんを探り当ててくださいね、
とミサカはルールを再確認します」
垣根「だからいらねぇって質問タイム」
御坂「要る要る、要るって、必要です!見た目だけじゃ1番と2番のどっちが本物かわかんないし!」
食蜂「少なくとも2番さんが本物って事はないんじゃないかしらぁ?て言うかぁ、本物は3番の……」
御坂「あーあー聞こえなーい!3番なんていなーい見えなーい!!」
食蜂「えー……」
麦野「現実逃避始めちゃったわね」
一方通行「まァ気持ちはわかるけどなァ。俺も木原くンがマタニティドレス着てそこに並ンでたら多分すげェ凹むわ」
垣根「それは何か違うだろ……」
11111号「準備はよろしいですね?それでは最初の質問をしましょう、
とミサカは現実逃避してるお姉様を尻目に強制的に質問タイムへ移行します」
垣根「いや、だから……」
一方通行「無駄だ垣根、こいつは他人の話を聞き入れるような上等な存在じゃねェ」
麦野「質問タイムが終わるまで目と耳塞いどきたい気分だよ」ハァ
結標「フフ、何でも答えてあげるわ」
アックア「どんと来るのである」
美鈴「お手柔らかにね~」
御坂「……」
食蜂「どうしたの御坂さん、頭抱えちゃって。大丈夫ぅ?」
御坂「ちょっと心の整理してる途中だから、話しかけないで……」ウゥゥ
11111号「んじゃぁ最初の質問に入りますね?とミサカは三人の妊婦さんを見渡します」
結標「いつでもいいわよ」
アックア「うむ、何でも聞いて欲しいのである」
美鈴「これから生まれてくる子の事だもの、ビシバシ答えちゃうわよ」
御坂「……」
麦野「美琴、大丈夫?」
御坂「うん、大丈夫、大丈夫だから……って御坂は御坂は……」ブツブツ
一方通行「大丈夫じゃねェなこれ」
垣根「死んだ魚みてぇな目ぇしてやがる」
食蜂「御坂さんの目が死んでるのは今に始まったことじゃないけどねぇ」
御坂「あ?」ギロ
食蜂「そ、そんな本気で睨み付ける事ないじゃない……」ビクッ
11111号「えーそれでは、初めて妊娠を告げられた時の感想をお聞かせ願えますか?
とミサカは特に面白みもなく当たり障りもない質問から入ってみます」
結標「妊娠発覚の時の感想……そうね、ようやく私の時代が来たって気分だったわ」フ
一方通行「香焼くンの犠牲の上に成り立つ時代かァ……」
垣根「新しい時代は何かの犠牲無しには始まらないって教訓だな」
麦野「黙ってろテメェら……」ギリ
アックア「こちらの場合は全くの寝耳に水だったので発覚した時はとても驚いたのである。ただ……」
11111号「ただ?」
アックア「妊娠を告げられたとき、驚愕と同時に得も言われぬ幸福感に包まれたのも事実なのである」ウム
一方通行「……ッッ」グ
垣根「堪えろ一方通行……」
麦野「一人吹いたら連鎖的にやられるわよ……」
御坂「何か本当に幸せそうな顔してるわねこの人……」
食蜂「正直キモいわねぇ」
美鈴「私は、そうね……ぶっちゃけ『やっちゃったなぁ……』って感じだったかな」テヘヘ
御坂「うおおぉぉぉぉい!!!あんた実の子供の前で何言ってんのおおおおお!!!」ガタン
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、食蜂、アウトー』
御坂「笑うなあああああああああ!!!!」
美鈴「安心して美琴ちゃん、できちゃったのはアクシデントだけどちゃんと産むから」グ
御坂「何笑顔で親指立ててんのよ!!?アクシデントとか言うな生々しい!!!」
バチーン!!
一方通行「ふァッッ!!!」
垣根「ぬがああああ!!!!」
麦野「ぐあああぁぁ!!!」
食蜂「もっぷ!!!」
11111号「しかし不幸な事故とは言えミサカ達もついに姉になるのですね、感無量です、
とミサカは目を閉じ生命の神秘に打ち震えます」ジーン
御坂「黙っとれ!!お母さんが妊娠してるなんて嘘よ嘘!!ぜっっったい嘘だから!!」
一方通行「まだ現実を受け入れねェのか」ヤレヤレ
食蜂「赤ちゃんにお母さんを取られちゃうのが怖いんじゃないかしら?御坂さんも子供ねぇ」
御坂「あ゛ぁ?」ギロ
食蜂「ひぃっ……」ビク
美鈴「あらそうなの美琴ちゃん?でも大丈夫よ、例え新しい子供が産まれても
美琴ちゃんにはこれまで通りたっぷり愛情を注ぐから、ね?」
御坂「そういう事じゃないつってんだろうがああああ!!!!!」
垣根「いい感じにぶっ壊れてきたなこいつも」
麦野「まぁこりゃしゃーないでしょ。同情するわ」
11111号「ではでは次の質問です。生まれてくる子供は男の子と女の子のどっちがいいですか?
とミサカはこれまた初歩的な軽い質問をしてみます」
結標「生まれてくる子供?そんなの男の子に決まってるじゃない」フ
11111号「ですよねー」
麦野「そりゃこのショタコンが女欲しがるわけないわ」
御坂「本当に男の子が生まれたらその子の将来が心配過ぎるけどね……」
垣根「女が生まれても色んな意味で心配だろ」
一方通行「つか『男がいい』じゃなくて『男に決まって』ンのかよ」
結標「当然じゃない!私から男の子以外が産まれるなんて事はあり得ないわ!!」キッ
食蜂「……この人は何かそういう、必ずY染色体を次代に伝えることの出来る新しい人類だったりするわけ?」
11111号「まさか座標移動にそんな使い方が!?とミサカは衝撃の事実に驚愕しながら後ずさります」
一方通行「どう使うンだよ……」
アックア「子供の性別はどっちがいいか?ふむ……いや、性別に拘るつもりはないが……」
麦野「つーか生まれねぇよ」
垣根「オマエは質問に答えなくていいよもう」
アックア「男が生まれようと女が生まれようと、神からの授かりものとして大事に育てるのである」ニッコリ
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、御坂、アウトー』
一方通行「何が神からの授かりモンだ!?もはやオマエの存在が神への冒涜だろォが!!」
垣根「にっこり微笑んでんじゃねぇよ!!何なんだその慈愛に満ちた面は!?
そんな面が出来るのに俺に力いっぱいビンタしてんのか!?」
麦野「ごついおっさん+妊婦服+満面の笑みとか耐え切れるわけねぇだろ……」グフ
御坂「こんなコメディ映画あったわよね……」クッ
食蜂「あの映画もそうだけど、ごっついおじさんが妊娠しても気持ち悪いし需要もないわよぉ!
どうせなら線の細い美少年を起用すべきだと思わないかしらぁ!?
むしろそんな映画作ってください!!登場人物は全部美少年で!!」
バチーン!!
一方通行「ぬぐゥ!!!」
垣根「うぎゃッ!!!」
御坂「うぁっつううううう!!!」
麦野「ぐああああぁぁぁ!!!」
美鈴「男の子か女の子かぁ……うーん……美琴ちゃんは弟と妹どっちが欲しい?」
御坂「私に振らないで……もう怒鳴る気力もなくなってきたわよ……」
食蜂「そこは是非弟で」
結標「なんとしても弟でお願いします」
御坂「何なのよあんたらは……」
11111号「お疲れのようですねお姉様、栄養ドリンクでも用意させましょうか?
とミサカは見る見るやつれて行くお姉様を形だけでも気遣ってみます」
御坂「栄養剤よりも睡眠薬が欲しいわ……もう眠ってやり過ごしたい……」
11111号「むむ、お姉様の精神的な疲労が半端ないようですし、お姉様が倒れてしまう前に手早く片付けましょう。
とミサカは気遣う振りをしながら一気に畳み掛けにいきます」
垣根「畳み掛けるとか言っちゃってんじゃねぇか」
一方通行「そもそも気遣う振りも出来てねェよ」
11111号「く、嘘を吐けない素直な自分がうらめしい……
とミサカは自分の純真さに歯軋りをしながら次の質問に移ります。
子供が生まれたら最初になんと声をかけてあげたいですか?」
結標「最初にかける声?そんなものとっくに決まってるわ」フ
11111号「ほう?」
結標「『いただきます』よ」
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「誰か警備員さン呼んでェー!!」
垣根「ダメだ!こいつマジでダメだ!!ショタコンとかじゃなくて脳が病気だよこの人!!」
御坂「脳じゃなくて心の病気かも!どっちにしろ今すぐ病院に……ってここが病院じゃないの!!」
麦野「生まれたての自分の子供を成長すら待たずにその場で食べる気なのね……どんだけだよ」
結標「……?当たり前でしょう?下半身脱いでる女と全裸の男の子が同じ部屋にいたらやる事なんて一つじゃない」クス
一方通行「うわァァァァ……」ドンビキ
垣根「『クス』じゃねぇよ」
食蜂「赤ん坊すらそういう対象になるなんて……何だか私の中で新しい扉が開きそうな……」
御坂「ちょ、流石にそれは閉じときなさいよ!?もうそろそろあんたの知り合いと思われたくないわ!!」
バチーン!!
一方通行「がおおおァァァァァ!!!」
垣根「ふぃああああああ!!!」
御坂「ぎゃん!!!」
麦野「ぐげッ!!!」
食蜂「きゅん!!」
アックア「生まれてくる子への第一声であるか……
関係をはっきりさせる意味も埋めて『私がママよ』と伝えたいのである」
一方通行「クフッ」
垣根「ゴハッ」
御坂「ウグッ」
麦野「ゲフッ」
食蜂「プハッ」
デデーン♪
『全員、アウトー』
一方通行「オマエ『ママ』じゃねェだろォがァァァァァ!!!」
御坂「100万歩、いや1兆歩譲ってもパパでしょ!?」
食蜂「そんな事言われたら生まれたばかりの子供だろうとトラウマになるわよぉ!!」
垣根「もうこのおっさんマジで黙ってくれねぇかな……喋る度に笑うわ……」
麦野「今更だけど格好がもうズルいわ、ゴリラみてぇな筋骨隆々のおっさんがマタニティドレスて……」
バチーン!!
一方通行「むがああァァァァ!!!」
垣根「ぐえッッ!!!」
御坂「あいッたぁぁ!!!」
麦野「でええええええ!!!」
食蜂「ぺぎら!!」
美鈴「最初にかけてあげる言葉かぁ……一応考えてはいるけどこれってなかなか上手くいかないのよね」
11111号「そうなのですか?とミサカは首をひねります」クイ
美鈴「出産って不安と激痛でテンションがすっごく変な方向に飛んでいっちゃうのよ。
冷静な思考なんてとてもじゃないけど出来ないし、赤ちゃんにかけてあげる言葉なんてその時点でまず忘れちゃうわね」
垣根「噂には聞いてたがそんなに辛いもんなのか?」チラ
麦野「おい何で私の方チラ見した?」
垣根「いや一人くらい産んでてもおかしくねぇかなって」
麦野「喧嘩売ってんのよね?そうなのよね?ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」ガシ
垣根「ごめんねむぎのん、悪気はな……いででででででで!!!ちょ、やめ!ミシミシ言ってるって!!!!
やめろ砕ける!!割れる!!!零れrううぅあああああああああ!!!!!」ギリギリバキバキ
一方通行「男が出産の痛みを味わうと激痛で悶死するって話もあるくれェだし、痛ェンだろォなァ」
アックア「なっ!?」ビク
麦野「『なっ!?』じゃねぇ黙ってろ、テメェからは何も生まれやしねぇから」ポイ
垣根「」ベシャ
美鈴「で、ようやく生まれてお医者様に赤ちゃんを手渡してもらうんだけど、
開放感と安心感からそれはそれでテンションがまた妙な方向に行っちゃって、
結局まともな言葉って出てこないものなのよね」
食蜂「出産って本当に大仕事なのねぇ……偶にBLでも出産シチュってあるけど、ちょっと見る目が変わるかも」
一方通行「おいサラッととンでもねェ事言ったぞこいつ」
垣根「BLで、出産……?つまり、どういうことだってばよ……」フラッ
御坂「男の人が、って事よね……」ウワァ
麦野「流石に理解出来ねぇ世界だわ……」ウエェ
美鈴「ちなみに美琴ちゃんが生まれた時、私は生まれたばかりの美琴ちゃんを優しく撫でながら
『生まれてきてくれてありがとう』って言ったつもりだったんだけど、
実際は潰れそうなくらい抱きしめながら『貴様か!!』って叫んでたらしいわ」エヘヘ
御坂「!?」
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、食蜂、アウトー』
御坂「だから笑うなつってんでしょうがああああああ!!!!」
垣根「無茶言うな!今ので笑わないはずねぇだろ!!」
御坂「逆ギレ!?」
食蜂「生まれた時から面白エピソードに恵まれてたのね御坂さん」クックック
御坂「あんたの顔と脳味噌の面白さには負けるわよ」チッ
一方通行「おォ、やさぐれてるやさぐれてる」ケラケラ
麦野「今回は精神面責めてきてるわねー」
バチーン!!
一方通行「ごォはァァァ!!!」
垣根「ぎやあああああああ!!!」
麦野「ふああぁぁぁぁ!!!」
食蜂「ふもっふ!!」
11111号「まだまだ行きますよ、次の質問です。どんな子供が生まれてくると思いますか?
とミサカは最初の質問とちょっと内容のかぶった質問をしてみます」
結標「どんな子かって?そんなの私とあの子にそっくりのほんわかした美少年が生まれてくるに決まってるじゃない」フフ
一方通行「あの子ってのは香焼くンの事なンだろォなァ……」
垣根「全部終わったら香焼くんに花の一輪でも供えてやるか……」
御坂「し、死んではないでしょ……?」
麦野「腹上死してる可能性は大いにあると思うわ」
御坂「腹じょ……」
垣根(腹上死の意味は知ってんのか、御坂の知識も結構偏ってんな)
食蜂「私の診察受けたあの子よねぇ?普通に自殺してる可能性もあると思うわぁ」
一方通行「とりあえず再起不能なのは間違いねェだろォな」
結標「子供の能力は身体強化とか肉体変化系がいいわね、色んな事出来そうだし」フフフフフ
垣根「もうやだこのショタコン」
麦野「世界の歪みがここにあるわね……」
一方通行「ガンダム来い、この歪みを断ち切ってくれ、俺が被害を受ける前に」
食蜂「変身能力を持った美少年の変幻自在プレイ……」ゴクリ
御坂「こいつはこいつでまた何か道踏み外しそうになってるし……」
アックア「どんな子供が生まれるかであるか?ふーむ、きっと優しくて逞しい……」
アックア「神の子が生まれてくるのである」ニカッ
デデーン♪
『一方通行、垣根、麦野、アウトー』
一方通行「何なンだよ神の子ってのはァ!?」
垣根「普通のガキ生むのすらおこがましいってのに神の子ときたか……」
麦野「マジでクスリでもやってんじゃねぇかこのおっさん……」
アックア「クスリとは失礼な、聖人であり更に聖母の慈悲の特性を持つ私が処女懐胎したのだから
神の子が生まれてくるのは当然の事なのである」ムッ
一方通行「いいからオマエはもォ喋ンな」
垣根「処女懐胎て……嘘吐くにしてももちっとマシな言い分があるだろ……」
アックア「受胎告知もしっかり受けたのである!!」
麦野「うるせえ黙ってろおおおおお!!!!」
食蜂「このおじさん妄想の世界に浸りすぎなんじゃないかしらぁ?」
御坂「あんたが言うか」
バチーン!!
一方通行「がっはああァァァァァ!!!」
垣根「ごおおぉぉおおおお!!!」
麦野「うッッがああああああ!!!」
アックア「あ、また動いた……わんぱくでもいい、たくましく育って欲しいのである」サスサス
一方通行「すいませンホント黙っていただけませンか?」
垣根「俺らが悪かったんちょっと隅っこのほうで静かにしててください」
11111号「アックア先生からはきっと丈夫な北京原人が生まれてくることでしょう。
それではお母様も質問に答えてください、とミサカはいい加減アックア先生がマジキモいのでお母様に話を振ります」
美鈴「そうねぇ、女の子だったらやっぱり美琴ちゃんみたいに可愛くて元気一杯な子が生まれてくるんじゃないかなー」
御坂「……妹かぁ」
垣根「おぉ?現実を受け入れる気になったのか?」
御坂「ん……いやさ、私一人っ子だから、正直言うと兄弟姉妹ってちょっと憧れてたのよね。
多分こんなタイミングで知らされたんじゃなければ素直にお母さんが妊娠したっていうの喜んでたと思うわ……」
美鈴「ごめんねー?美琴ちゃんを驚かせようと思ったんだけど、ちょっと滑っちゃったみたい」テヘヘ
御坂「うん、まぁお母さんがちょっと空気読めなくて
間違った方向に場を盛り上げるのが得意なのは今に始まったことじゃないし」
美鈴「美琴ちゃん酷い!これが反抗期!?」
一方通行「チッ、立ち直りやがったか超電磁砲め……つまンねェな」
食蜂「ちぇー、テンパってる御坂さん見てるのが楽しかったのにぃ」
御坂「腹立つわねあんたら……」
麦野「女が生まれた場合は美琴に似るってのはなんとなく想像つくけどさ
男が生まれた場合はどうなんのかしらね?」
垣根「そりゃやっぱ相手の人に似るんじゃねぇか?」
美鈴「そうそう、男の子が生まれた場合はきっとあの人に似て黒髪のつんつん頭でちょっぴり不幸体質な子が……」
御坂「ちょっと待てえええええええええええ!!!!!!」
美鈴「え?」
御坂「『え?』じゃないわよ!!何!?あの人に似て黒髪つんつん不幸体質ってそれどういう事よ!?
お父さんそんな体質じゃないわよね!?お父さんとの子供じゃないわけ!?
て言うか私ピンポイントで今挙げられた特徴を持った知り合いがいるんですけど!!?」
美鈴「フフフ、心配しなくても美琴ちゃんにもそのうち話してあげるわよ」
御坂「そのうちじゃなくて今話せ今今今ァァァァァァ!!!!!!」
11111号「それでは次の質問に……」
御坂「行かせるかああああああああ!!!!!」
美鈴「いやぁそれにしてもやっぱり若い子はよかったわぁ、何ていうか荒削りだけどパワーがあるのよね」フフフフ
結標「わかるわかる、剥けてないのがいいのよね」ウフフフ
美鈴「いやそれはちょっと」
結標「えっ」
御坂「若い子ってそれもう絶対相手お父さんじゃないわよねぇ!?てかアイツ!?本当にアイツが相手なの!?」
美鈴「激しかったわよ」ポッ
御坂「否定してよおおおおおお!!!!もうヤだぁこんなのおおおおお!!!!!」
垣根「あーあ、折角落ち着いて来てたのにまぁた混乱しちまったよ御坂の奴……」
麦野「普通に半泣きになってるわね、かわいそうに」
一方通行「個人的に一番そそられる表情って泣き顔だと思うンだよ」
食蜂「わかるわぁ、普段気が強くて意地っ張りな子が
追い詰められてしなっとなる瞬間って堪らないわよねぇ(※ただし美少年に限る)」
垣根「オマエらはマジでゴミみてぇな感性してやがるな」
11111号「うーむ、本当はもう少し質問を重ねたかったのですが
どうもお姉様が本格的に限界っぽいのでそろそろ解答に行きましょうか、
とミサカは質問タイムを打ち切ります」
麦野「ほら美琴、質問時間終わるってさ、しっかりしな」
御坂「うぅぅ……お母さんは嘘を吐いてる、お母さんは嘘を吐いてる、お母さんは……」ブツブツ
美鈴「私が美琴ちゃんに嘘吐くわけないでしょ?」ニコッ
御坂「ぎゃああああああああああああ!!!!!嘘嘘嘘嘘おおおおおおおお!!!!!」イヤアアアア
一方通行「フハッ」
デデーン♪
『一方通行、アウトー』
垣根「このタイミングで吹くとかオマエどんだけ外道だよ!?」
麦野「流石の私もこれは引くわ」
一方通行「うるせェ『他人の不幸は蜜の味』は万国共通だろォが」
11111号「まったくこれだから一方通行は!お姉様がかわいそうだと思わないんですか!?
とミサカは実の母親に想い人を寝取られたお姉様を……プッ、ククク、クヒヒヒヒ」プルプル
食蜂「うわぁすっごい笑ってるぅ……」
バチーン!!
一方通行「ぐおォォあァァァァ!!!」
11111号「はい、それではこのクリップボードに本物の妊婦さんだと思う方の番号を書き込んでください、
とミサカはレベル5勢それぞれにクリップボードとサインペンを配布します」
一方通行「ン、まァ一択だろ……」カリカリ
垣根「質問の意味マジでなかったよな」カキカキ
御坂「……」
麦野「どうしたの美琴、手が止まってるみたいだけど?」サラサラ
御坂「……ゲコ太がね、ゲコ太が『おいで』ってお空の上から手を振ってるの」フラ
食蜂「何か変な幻覚見てる……」
一方通行「ぶっ壊れやがったか」
御坂「ゲコ太、今行くねゲコ太……大丈夫、私にはゲコ太がいればそれで……」フラフラ
麦野「ちょ、落ち着きなさい美琴……って窓の方に向かって行くな!!止まれ!!!窓枠に足掛けんな!!」ガタ
垣根「いねぇから!!空の上にゲコ太はいねぇから!!蛙は空飛ばねぇから!!!」
デデーン♪
『一方通行、食蜂、アウトー』
垣根「笑ってないで止めろオマエらあああああ!!!こいつマジで窓から飛び降りようとしてんぞおおおおお!!!」
麦野「ストォォォップ!!正気に戻りなさい美琴!!」ガシ
御坂「は、放して!放してよぉ!!私にはもうゲコ太しかッッ!!!」
垣根「だからゲコ太は空にはいねぇって!!!」
御坂「ゲコ太ァァァァァァ!!!!」ジタバタジタバタ
part5に続きます
結局、ここまで読んでしまった…でも面白くないわ…
ギャグは寒い、痛い、臭い、と悪い意味で三拍子揃ってるし、ただの上条アンチSSと化してる…
もう…これ以上は読めないな…
御免、今度こそ消えるよ…