part1 【前編】 【後編】 part2 【前編】 【後編】 part3 【前編】 の続きです
元スレ
一方通行「そンな実験で絶対能力者になれるわけねェだろ」part3
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1306251545/
―朝、一方通行宅
一方通行「絹旗、ちょっと来い」
絹旗「え、何か超身の危険を感じるので超イヤです」
一方通行「大事な話があンだよ、いいからこっち来い」
絹旗「……まさか超愛の告白とかですか?」
結標「あっくん!!お姉ちゃんという者がありながら!!」ダッ
一方通行「こっから先は一方通行でェす」ベクトルパンチ
結標「へぶぅ!!!」バタン
絹旗(うわ、突進してきた結標に超綺麗にカウンター入れましたね)
結標「あふん……んっ……ぁ……」ビクンビクン
絹旗(何でちょっと気持ち良さそうに超悶えてるんでしょう……)
一方通行「さァて邪魔者は片付いたところでェ……俺の前まで来い絹旗」
絹旗「何なんですか?ついに肉欲を超抑えきれなくなったとかですか?うわぁ超キモい」
一方通行「オマエ当分の間甘いモノ抜きな」
絹旗「超何の御用でしょうお兄様」シュタ
一方通行「なァ絹旗、オマエ確か中学生つってたよなァ」
絹旗「はい、超中一ですが何か?」
一方通行「ちゃンと学校通え」
絹旗「……はい?」
一方通行「そンな若い内から学校にも通わずニートみたいな生活送ってちゃダメだろ」
絹旗「超待ってください、一方通行も超通ってないじゃないですか!」
一方通行「俺は第一位だからいいンだよ」
絹旗「なんですかそれ!」
一方通行「前にも言っただろォ?俺は兄としてオマエに真っ当に育って欲しいンだよ」
絹旗「超余計なお世話ですよ!学校なんて面倒な所、超行ってられません!!」
一方通行「ンな事言っていいのかァ?」
絹旗「はい?」
一方通行「学校に通ってない女の末路は、アレだぞ」ス
結標「んふぅ、あっくんの拳が……うふふ……」ビクンビクン ←コレ
絹旗「……」
一方通行「最近殴ってもあンまり堪えねェンだよなァそいつ……」ハァ
絹旗「が、学校通います!超通います!あんなのになるのは超ゴメンです!!」
一方通行「ン、良い返事だ」
結標「あぁ、お姉ちゃん愛されてる、愛されてるぅ……」ビクンビクン ←あんなの
絹旗「でもどこの中学に超通えばいいんでしょう?元々通ってた中学の学生証も超紛失してしまいましたし……」
一方通行「あァ、それならもォ決めてある」
絹旗「ほう?」
一方通行「常盤台だ」
絹旗「……え?」
一方通行「常盤台中学」
絹旗「と、常盤台ぃ!?」
一方通行「なンだ、不満かァ?」
絹旗「不満と言うか超なんというか……どうして常盤台なんですか……?」
一方通行「有名所で女子校つったら常盤台くらいしかねェからな」
絹旗「何故女子校に超拘るんです?」
一方通行「そりゃオマエに変な虫がつかねェよォにだな、」
絹旗「何ですかそれ!超過保護な兄貴気取りですか!?独占欲超全開ですか!?
そうやって超自分好みに育てて最終的に私を超頂くと言う寸法ですか!?キモいです!超キモいです!」
一方通行「際どい服来て無様なパンチラ晒しまくって男の目ェ引こうとしてるロリビッチが何ほざいてやがる
お嬢様学校に通ってちったァ歪ンだ感性叩きなおせってンだ」
絹旗「だ、誰が超ロリビッチですか!?ていうかパンチラは超晒してませんから!!
このスカートの短さは超計算され尽くしており絶対に中は見えないように……」
一方通行「ぶっちゃけ結構見えてンぞ、それ」
絹旗「嘘ぉ!?」
一方通行「マジマジ、かなりの頻度でワカメちゃン状態だぜ?」
絹旗「そ、それは流石に超嘘ですよね……?」
一方通行「さァどォだろうなァ」
絹旗「……正直、超マジ凹みなんですが」
一方通行「まァとにかく、学校は常盤台で決定だからな
学校指定の制服になりゃァそンな悲劇もなくなるしよォ」
絹旗「……えっと、でも常盤台って超エリート校ですよね?
長い間学校通ってない私がついていけるかどうか超不安なんですが……」
一方通行「それなら問題ねェ」
絹旗「はい?」
一方通行「アレを見ろ絹旗」ス
御坂「……え、何よ?」 ←コレ
絹旗「……御坂が何か?」
一方通行「いいか絹旗、常盤台がどンだけエリート校だか知らねェが、
休日だからって朝っぱらからソファに寝転がってテレビ見てるよォな女がトップに立ってる学校だぞ?
オマエなら楽勝に決まってンだろ」
御坂「ちょ、ちょっとどういう意味よ!?私がこうしてるのはあんたを監視する為であって……」
絹旗「なるほど、超いけそうな気がしてきました!」
一方通行「だろォ?」
御坂「ちょっとおおお!!!」
絹旗「あ、でも常盤台って超全寮制ですよね?という事は私はこの家を超出る事に……」
一方通行「それも大丈夫だ。超電磁砲と同じく第一位の実験に不可欠な存在だ、とでも言っときゃどォとでもなる」
絹旗「ふむふむ……しかし、こんな超半端な時期に入学できるんでしょうか?」
一方通行「おいおい絹旗ァ、オマエの前にいるのは誰だァ?」
絹旗「一方通行……学園都市の超第一位ですね」
一方通行「そォだ。そして俺が声をかけりゃァ第二位の垣根も協力してくれるし
オマエの為だって言えば第四位も動いてくれるだろォよ
つまり、学園都市に七人しかいねェレベル5の半数近くがオマエの為に動くンだ
出来ない事なンざあるわけねェだろ」
絹旗「おぉぉ……麦野が動いてくれるかどうかはともかく、私って実は超凄いコネを持ってたんですね」
御坂「え、ねぇちょっと、何で私省かれたの?」
一方通行「あァ?オマエも協力してくれンのか?」
御坂「う、え、あ……ど、どうしてもって言うんなら、仕方が無いから協力してあげるわよ!
あ、でも勘違いしないでよね!あんたの為じゃなくて絹旗さんの為で……別にあんたの事なんかどうでも」
絹旗(うわぁなんて超わかりやすい……)
一方通行「イヤ、やっぱりいいわ。オマエに借り作りたくねェし、なンかめンどくせェし」
御坂「……」
絹旗(うわぁ超バッサリ)
一方通行「つーわけでまず垣根に連絡取って、と……」カチカチ
御坂「待ちなさいよ!協力してあげるって言ってるじゃない!?
ハッキングやデータの改竄ならあんた達より私の方が得意なんだから!
それで絹旗さんを不正に入学させればいいんでしょ!!?」
一方通行「どうせなら常盤台とのパイプ役になってくれるとかそォいう方面の協力が欲しいンだが……
不正入学させる事前提なのかよ……」
御坂「え、違ったの?」
一方通行「絹旗は真っ当に育てるつってンだろォが、基本は話し合いによる交渉だ」
絹旗「……コネで強引に交渉って超真っ当なやり方なんでしょうか?」
御坂「話し合いによる交渉なんて無理よ無理。転入試験だってあるし、常盤台の審査の難しさは半端無いわよ?
資格無しって判断された生徒は王侯貴族でも容赦なく落とされるって有名なんだから」
一方通行「王侯貴族なンてクソみてェな立場よりもレベル5による推薦の方が遥かにでけェだろォが
それに絹旗自身もレベル4、資格は十分じゃねェか」
御坂「んー、そりゃ学園都市で一番大事なのはレベルかもしれないけどさぁ……」
一方通行「だろォ?ンじゃちょっとばかしお偉いさンの所まで交渉に行ってくるわ」ガチャ
絹旗「……超上手く行くと思います?」
御坂「どうだろ……普通なら上手く行きっこないけど、あいつなら何とかしちゃいそうではあるわね……」
絹旗「確かに、第一位と第二位のタッグが超本気出したら不可能なんて超なさそうですよね」
※常に本気ですが童貞です
むしろ本気だからこそ童貞です
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―夕方
一方通行「戻ったぞォ」ガチャ
絹旗「おや、超お帰りなさい。首尾はどうでしたか?」
一方通行「バッチリだぜ。喜べ絹旗、オマエ明日から常盤台に通えるぞ」
絹旗「超明日から!!?」
御坂「はや!!転入試験とかどうなってんのよ!?」
一方通行「学園都市トップのお墨付きだぞ?そンなモンが必要なはずねェだろ」
絹旗「試験が無いのは超大歓迎ですが、超心の準備が……」
御坂「て言うか本当に交渉で何とかなったわけ?」
一方通行「当たり前だろォが、何せ第一位と第二位が直談判したンだからなァ
首を横に触れる野郎なンざいるわけねェ」
御坂「脅しじゃないの!!何が真っ当な方法よ!?」
一方通行「脅してねェよ、こっち始終敬語で喋ってたンだぞ?」
絹旗「逆に超こえぇ!」
御坂「あんたら二人が敬語で迫ってきたら確かに怖いわね、裏がありそうで」
絹旗「断ろうものなら一族郎党超根絶やしにされてしまいそうな気配がしますね……」
一方通行「失礼な事ほざいてンじゃねェぞクソボケどもが
ほら絹旗、制服も貰ってきてやったから好きなサイズ選べよ」パサパサ
絹旗「あ、どうも。って多!超多いですよ!!」
御坂「全サイズ貰ってきたわけ?もう強奪の域じゃないそれ……」
絹旗「……制服に超変な事とかしてませんよね?」
一方通行「なンだよ変な事って」
絹旗「超擦り付けたり、発射したり、着てみたり……」
一方通行「実の妹が着る服にそンな真似するわけねェだろォが」
絹旗「いえ、実の妹では超ありませんが」
御坂「結局あんたと絹旗さんはどういう関係なのよ……」
番外個体「あ、お帰り第一位!どこ行ってたの?酷いよ、ミサカの事一日中ほったらかしにするなんて」
一方通行「遅くまで寝てるオマエが悪ィンだろォが」
番外個体「ねぇねぇそこの制服何?ミサカへのプレゼント?」
一方通行「着たいなら適当なヤツ持ってって構わねェぞ、オマエと絹旗はサイズ違うしなァ」
絹旗「む、何か私のスタイルに超ケチをつけているようにも聞こえますね」
番外個体「第一位はこういう制服が好きなの?……あ、そういえば妹達も皆制服着てるよね」
御坂「と、常盤台の制服が好きなの?そ、それじゃ私の事も……」
一方通行「いや制服は関係ねェよ、そいつに似合う服着るのが一番だし大事なのは中身だ」ウン
御坂「……」
番外個体「なんだー、せっかくこの制服で第一位好みの女になれると思ったのに」
絹旗「私はむしろ超安心しましたね、制服を着た私に欲情されるのは超勘弁してもらいたいですから」
一方通行「制服だろォが全裸だろォが、オマエの貧相な身体じゃ欲情しねェよチビガキ」
絹旗「超なんですと!?」
番外個体「うひゃひゃひゃ、やっぱり第一位はミサカみたいに女らしい体型をした子が好みなんだね!」
御坂「女らしい体型、かぁ……」ペタペタ
一方通行「まァ体型も服装もよっぽど絶望的じゃなきゃァ気にしねェけどな」
御坂「そ、そうよね、うん!」
番外個体「何だ、つまんないの」
絹旗「ちょっと待ってください、私の体型は超絶望的という事ですか!?これでも脱ぐと超凄いんですよ!?」
一方通行「あァでも結標みたいな服装は流石にどォかと思うなァ
アレは服っつーかサラシだし、もちっとマトモな格好をしてもらいてェモンだ」
絹旗「超無視すんな!!」
結標「やだあっくん、お姉ちゃんと制服プレイがしたいんならそう言ってくれればいいのに!」
一方通行「死ね」
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―翌日、喫茶店
一方通行「つーわけで絹旗が今日から学校通ってンだが」
垣根「おう」
一方通行「上手くやれてっかなァ、心配だぜ……」
垣根「何だかんだでアイツは結構したたかだから大丈夫だろ、なぁ麦野?」
麦野「……いや、そんな話聞かせる為に私を呼んだのか?」
一方通行「『そンな話』だァ?重要な事だろォが!元保護者のオマエは顛末を聞く権利があるし義務もあンだよ!」
麦野「同じ暗部組織のつながりってだけで別に保護者じゃないんだけど……」
一方通行「オマエは『アイテム』の最年長、絹旗は最年少だろ?だったら保護者も同然だろォが!!」
麦野「全く意味がわからねぇわ。つーか帰っていい?これ以上第二位の面見てるのイヤなんだけど」
垣根「ハハハ、そんなに照れるなよ」
麦野「ブチ殺されてぇのかテメエ!?この前あんだけの事やっといて、どこをどう解釈したら照れてる事になんだよ!!?」
一方通行「この前ってなンだ?」
麦野「この馬鹿が私の家に突然押しかけて来て、あろう事か私の脚を舐めようとしたのよ!」
一方通行「……ちょっと意味がわからねェ」
垣根「あぁ!?オマエ麦野の脚の良さがわからねぇってのか!!いくらオマエでも許さねぇぞ!!」
一方通行「そォいう事じゃねェ!!」
麦野「ホント最悪だよ、妊娠でもしたらどうしてくれるっての?」
一方通行「え、妊娠って、オマエらそォいう関係なのか?垣根、オマエまさか……」
麦野「んなわけねぇだろうが!!誰がこんなカスに身体許すかよ!!!」
垣根「安心しろ一方通行、脚を舐めようとした時にちょっと射出しただけだ」
一方通行「うわァ……」
麦野「コイツ叩き出した後にシャワー浴びて着替えて掃除してる時の虚しさときたらもう……」ハァ
垣根「その姿想像したら勃ってきた」
麦野「死ね、苦しんで死ね」
一方通行「まァオマエらの爛れた関係なンざどォでもいいンだよ」
麦野「ふざけんな何が爛れた関係だ!!コイツとそんな関係になるくらいなら一人で×××してた方が遥かにマシよ!!」
一方通行「声がでけェ」
垣根「またまたそんな事言っちゃって、どうせろくに一人遊びした事もねぇんだろ?」
麦野「な……ッそ、そんな事…」
垣根「じゃあオマエ一人でよがりまくってんの?処女なのに?処女なのにビッチなの?」
麦野「だ、誰が……」
垣根「それじゃ処女ビッチの麦野さん、一人遊びのやり方を解説してください」
麦野「うぇあ!?え、えっと……じゃなくて誰が処女ビッチだこのクソ童貞が!!
二度とおっ勃たねぇようにタマすり潰されてぇのか!!?」
垣根「ほう、出来るもんなら……」ゴソゴソ
麦野「ひっ……」
一方通行「だからこンな所で出そうとしてンじゃねェ!!出禁喰らったらどォすンだ!!」
垣根「っと、悪い悪い、麦野見てるとつい、な」テヘヘ
麦野(助かった……)ホッ
一方通行「で、絹旗の事なんだが……大丈夫かなァ、イジメとか受けてねェかなァ」
麦野「どんだけ過保護なのよ、て言うか暗部で鍛えられた絹旗がイジメなんぞに屈するわけないでしょ」
垣根「実際、アイツの戦闘能力はレベル4の中でもかなり高い方だしな、そうそうイジメられやしねぇだろ」
一方通行「わからねェぞ?聞いた話だが常盤台は派閥争いとか結構あるらしいからよォ
派閥に加わらない生意気な転入生をちょっと絞めとこう、みたいなノリになるかも知れねェだろ」
垣根「考えすぎだ、考えすぎ。自慢の妹なんだろうが、アイツのコミュニケーション能力を信用してやれよ」
一方通行「でもよォ……もしアイツが趣味の話とかしようモンなら絶対ドン引きされるぞ?」
麦野「あー、確かにアイツの趣味にはついていけねぇわ……てかさ、」
一方通行「ン?」
麦野「そんな心配なら直接見に行ってくりゃいいだろ」
垣根「その手があったか!!」ガタン
一方通行「いやねェよ、常盤台は男子禁制の女子中だぞ?俺らが入れるわけねェだろ」
垣根「何言ってやがる一方通行!俺とオマエに不可能なんざあるわけねぇだろうが!!」
麦野「え、何でコイツ突然テンション爆上げしてんの?」
一方通行「多分、それだけ女子校に侵入したいンだと思います」
麦野「ふぅん……」
垣根「おっと安心しろよ麦野、これまでもこれから先も一番はオマエだ」
麦野「全然安心できねぇどころかそれ聞いてちょっと死にたくなってきたわ」
垣根「気安く死ぬなんて言ってんじゃねぇぞ!俺がいるだろうが!!」
麦野「いねぇよ、私の心の中にオマエはこれっぽっちも存在してねぇよ」
垣根「……いいだろう、なら俺と言う存在をオマエに刻み付けて……」モゾモゾ
麦野「いい加減にしろ変態野郎があああああ!!!!」
一方通行「おい、話が進まねェからホントそンなモンにしとけ」
垣根「チッ、命拾いしたな麦野……」
麦野「もうやだ帰りたい……」
一方通行「まァ、ここでグダグダやってても埒が開かねェし、何かやろうにも絹旗が心配で手につかねェ
となると、とりあえずダメ元で常盤台まで行って見るのも一興かァ」
垣根「よっしゃそうと決まればすぐ行くぞ!女子校!女子中!新しい出会いが俺を待っている!!」
一方通行「目的は絹旗の観察だからな?そこ間違えンなよ?」
垣根「わぁかってるって!ほら、早く行こうぜ!」
麦野「はぁ、アホくさ……私はもう帰るからな」
一方通行「あァ?絹旗見に行かなくていいのかァ?」
麦野「別に……元気でやってるんならそれでいいわよ」
一方通行「素直じゃないですねェ」
垣根「そんなところも可愛い」
麦野「……言い方変えるわ、第二位と一緒にいたくねぇから帰る」
一方通行「あ、はい」
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―常盤台中学、昼休み
「……それで、ここが音楽室ですの」
「うひゃぁ、超広いですね……」
一方通行の心配を余所に、特に問題も無くそこそこクラスに馴染めていた絹旗は
休み時間を利用し、クラスメートの一人に校舎内の案内を受けていた。
学食、体育館、音楽室、と新しい部屋に案内される度に絹旗は感嘆の声を上げ、
そんな彼女の様子を案内役の白井黒子は微笑ましく思いながら眺めている。
白井が絹旗の案内を買って出た理由は、単に偶々同じクラスになり、偶々席が隣になった、というだけの事だ。
勿論それだけでなく、白井生来の面倒見の良さや正義感、それにこんな半端な時期の転入生への好奇心
などが重なっての結果でもあるが、もしクラスが違えばこれ程親身に世話を焼こうとはしていなかっただろう。
「これだけ超広いと、このままコンサートでも超開けそうですね……」
「実際に開かれる事もありますのよ?下手な施設よりずっと防音性も高いですし」
「ほえぇ……」
白井の言葉に、絹旗は更に目を丸くし、だだっ広い音楽室を端から端まで見回す。
コンサートが開けるほど広々とした豪華な音楽室、その場所を今この瞬間はたった二人で独占している、
その事実が、彼女の心を俄かに高揚させていた。
そんな風に興奮と感動を噛み締めている絹旗の背後で、白井の目が怪しく輝く。
先程、彼女が絹旗の案内を買って出た理由を説明したが、実はもう一つ外せない理由が存在する。
それは――
(くふぅ、堪りませんの……絹旗さんから何故かお姉様と似た香りがしますの……)
彼女達二人は面識が無かった為白井は知らないが、絹旗は白井の敬愛するお姉様、御坂美琴と同棲しているのだ。
似た香りがするというのも当然である。
ここ最近御坂が滅多に常盤台の寮に戻らなくなった為、彼女と触れ合う機会が激減した白井は
どうしようもない程に御坂とのスキンシップに、御坂の成分に飢えていた。
そんな折に現れた、御坂と似た香りを漂わせる可愛らしい少女、
それはもはや飢えた狼の前に無力な羊を突き出すのにも等しいと言える。
絹旗に悟られぬよう、白井はそっと後ろ手で部屋の鍵をかける。
これで逃げられる事は無い。音楽室と言う性質上、先程も言った通り防音も完璧、
外部からの干渉もまず無いだろう。準備は整った。整ってしまった。
「ふひ、ふひひひひ……」
「し、白井?超どうしたんですか?」
突如雰囲気が一変し、不気味な笑みを浮かべながらにじり寄ってくる白井に、
絹旗は困惑しながらも慌てて距離を取る。
しかしそんな行動など空間移動能力者である白井の前には全くの無意味で、
ほんの瞬きの間に、白井は絹旗の眼前まで迫って来ていた。
突如眼前に飛んできた白井の姿に、絹旗は「ひぃ!」と悲鳴を上げ、その場で腰を抜かしてしまう。
「ふへへへ……絹旗さん、あなたに恨みはございませんが、これもお姉様成分を補給する為ですの……」
「お、お姉様成分……?」
腰を抜かしたままズリズリと後ずさる絹旗だったが、白井はそんな反応すら楽しむかのように
ワキワキと両の手を動かしながら少しずつ絹旗へ迫っていく。
窒素装甲の壁などあっさり越えてしまいそうな、そんな気迫が彼女からは滲み出ていた。
(超やられる!?だ、誰か……)
「んふふふふふ……ふ?」
今にも絹旗に飛び掛らんとしていた白井の動きが突如停止する。
思い止まったわけではない、白井の燃えたぎるリビドーは爆発寸前なのだ。止まる理由など無い。
それでは何故、彼女は突然動きを止めたのか?それは白井自身にもわからない。
と言うか、彼女は動きを止めたつもりなど全く無く、欲望のまま絹旗に飛びかかるつもりだったのだ。
にも関わらず、現実として彼女の動きは止まっている。否、体中の感覚がなくなっている。
指一本動かす事は叶わない。それどころか指がそこに存在するかどうかすらわからない。
(な、なんですのこれは!?何が起きているんですの!?)
かつて味わったことの無い感覚に、白井は全身から滝のような汗を噴き出す。
彼女はジャッジメントとしていくつかの修羅場を越えてきた。命の危機を感じた事も一度や二度ではない。
そこで養われた勘が告げている。「オマエはここで死ぬ」と。
―よォ、白黒ォ……
耳元で囁く声がする。何処かで聞いたことのある声だ。何度か聞いた事のある声だ。
―俺の妹に何してくれてンだァ……?
「い、いもう、と……?」
何とか掠れた声を絞り出す。そこで白井はようやく気付いた。
雪のように真っ白い肌をし、血のように真っ赤な瞳をした男が、満面の笑みを浮かべながら
己の頭をガッチリとホールドしているという事に。
笑うという行為は本来攻撃的なモノであり、獣が牙を剥く行為が原点である。
学園都市の第一位、一方通行は静かに、しかし有無を言わさぬ殺気を放ちながら、そこに君臨していた。
何故第一位がここにいるのか、妹とは何なのか、一体自分に何をしたのか、これから何をされるのか、
様々な疑問が電光のごとく白井の頭の中を駆け巡る。
何か言わなければ、どうにかしなければ、確実にこの場で殺されてしまうだろう。それだけの殺気を彼は放っている。
だが、結局彼女の口から零れたのは――
「こ、殺さないでください……」
無様な、命乞いの言葉だけだった。
「ここ、防音性が高いンだよなァ……?」
「は、はい」
「喜べよ白黒ォ……好きなだけ悲鳴を上げれるぞォォォ!!!!」
「ひ、ひいいいいいい!!!!?」
―数分後
白井「マジですいませんでしたの……最近お姉様分が不足していて暴走気味だったんですの……
まさか第一位様の妹さんだなんて……」ボロボロ
一方通行「だ、そォだが、どォする絹旗?許してやンのか?」
絹旗「これだけ超ボロボロの状態見たら『許さん』とは超言えないでしょう……」
白井「ありがとうございます、ありがとうございます絹旗さん」バッ
絹旗「いえ土下座は超しなくていいですから……」
一方通行「オマエは優しいなァ」
絹旗「て言うか何で一方通行が超ここにいるんですか?」
一方通行「オマエが心配だから見に来たンだよ、いやァ来て良かったわ」
絹旗「む……まぁ確かに超危ない所でしたが……しかし一体どうやって?監視カメラなども超あったはずですが」
一方通行「ンなモン全部沈黙させたに決まってンだろ」
白井「ぜ、全部ですの!?何台あると思って……」
一方通行「2000台くらいだったか?まァ俺と垣根の手にかかりゃ楽勝だ楽勝」
絹旗「垣根?垣根も超来てるんですか?」
一方通行「おォ、来てる来てる……って、やべェ、アイツ校舎のどっかに置いて来ちまった」
絹旗「はぁぁぁ!?何を超やらかしてんですかあなたは!!
女子中のど真ん中に垣根を一人で野放しにするって超危険じゃないですか!!」
一方通行「いやァオマエがピンチだと思うと垣根の事気にする余裕なンて無くてよォ」
絹旗「どんだけ超過保護ですか!?キモいです!超キモいです!!」
一方通行「キモいキモい言うなよ、傷つくだろォが……」
絹旗「傷ついてる暇があったら超早く垣根を……」
ドゴォォォォォン!!!
白井「な、何ですの今の爆発音は!?」
一方通行「あァ、遅かったかァ……」
絹旗「……十中八九、垣根でしょうね」
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時間は少し巻き戻り、一方通行達の元へ爆発音が届く少し前。垣根は一人の少女と対峙していた。
薄ら笑いを浮かべる垣根に対し、少女の表情には焦燥の色が見て取れる。
二人を取り囲むようにして見守っている常盤台の生徒達の顔もどこか不安気だ。
「どうした?レベル5の第五位ってのはそんなもんなのか?」
「く、どうして……」
挑発的な笑みを浮かべたままの垣根に対し、対峙している少女―レベル5の第五位、食蜂操祈は
普段の飄々とした態度からは考えられないような憎々しげな表情で彼の事を睨みつける。
レベル5の第五位、その能力は心理掌握(メンタルアウト)。
それは学園都市最高の精神系能力であり、読心、洗脳、念話、意思の再現、思考の増幅など、
大よそ精神に関することなら何でも出来る、精神の十徳ナイフとも言うべき万能の、化物染みた能力である。
しかしそれほどの能力を以ってしても、目の前の男、垣根の顔色一つ塗り替える事すら出来はしなかった。
レベル5の第二位、未元物質。その能力による防御は、精神の干渉すら完全に防ぎ切っている。
洗脳や記憶の読心は愚か、感情の表層を読み取ることすら出来ないのだ。
「じょ、女王……」
食蜂の取り巻きの生徒達は、今にも泣き出しそうな表情で彼女の事を見ている。
正体不明の侵入者に、常盤台最大の派閥の女王である食蜂がこれほどの劣勢を強いられるなど、
一体誰が予想出来ただろうか。
て言うか第一位と第二位が押し入ってくるなんて、そりゃ誰も想像出来ないよ。
「何者なの、あなた……」
「さぁ、何者だろうな?自慢の能力で暴いてみたらどうだ?」
あくまでも正体を明かそうとせずに挑発を続ける垣根に対し、食蜂はその端正な顔を更に歪める。
彼女は、侵入者が現れたという報を配下から聞き、力をアピールして派閥を広げるチャンスだ、
とほいほい出てきた自分の行動を後悔していた。侵入者がこんな化物だなどとは聞いていない。
能力で干渉出来ない相手に遭遇するのは初めてではない。第三位、御坂美琴にも彼女の精神操作は通用しなかった。
しかし、御坂は電磁バリアで精神干渉こそ防げていたものの、その際に痛みを覚えていたし、
能力に抗う素振りも見せていた。しかし、目の前の男は何一つ代償を払わず、
何の労力も無しに、涼しい表情で干渉を防いでいる。
その事から予測されるのは、あまりにも絶望的な答え。
この男は第三位の御坂よりも格上の存在、第二位か第一位であるという事。
食蜂の身体能力は女子中学生のそれと同程度である。能力が通用しない以上、
そんな化物を相手にしては時間稼ぎすら出来はしないだろう。
それでも彼女は諦めず、必死の形相で能力を行使する。
何処かに防御の隙間は無いか、何とか防御をこじ開ける事が出来ないか、必死に穴を探す。
しかし何処にもそんな隙は存在しない。第一位、一方通行、第二位、垣根帝督、彼らの能力は万能過ぎるのだ。
「ところでよ、そろそろこっちから攻撃仕掛けてもいいか?
女に暴力振るうのは趣味じゃねぇが、売られた喧嘩は残さず買う事にしてるんだよ」
言うや否や、垣根はバサリと六枚の翼を大きく広げる。
その翼に、見守っていた少女達の何人かが真っ青になって悲鳴を上げた。
そう、彼女達は覚えていたのだ。大覇星祭をブチ壊し、多くの常盤台の生徒にトラウマを与えたその翼を。
恐怖や混乱はどんな情報よりも早く伝染する。垣根の翼に対する恐怖は瞬く間に広がり、
周囲はあっという間に混沌の坩堝に叩き込まれた。
ここまでの騒ぎになるのは予想外だったようで、垣根も少々慌て、キョロキョロと泣き叫ぶ生徒達の様子を窺う。
(……あれ、第五位は何処行った?)
ふと気付いてみれば目の前にいたはずの食蜂の姿が消えていた。
恐らくは混乱に乗じて距離を取ったのだろう。或いは逃げ出したのかもしれない。
(チィ、まだ口説いてねぇってのに!!)
強気そうで好みだったのになぁ、と垣根は逃がしてしまった獲物を惜しみながら溜息を零す。
それにしても周囲で泣き喚いている女どものなんと喧しい事か、と自分が原因である事を棚上げし、
垣根は一人落ち込み、頭を抱えながら不機嫌な表情を作った。
(……ん、この気配は)
何かを感じとった垣根は、不意にガバッと顔を上げる。
(間違いねぇ、アイツだ、アイツが近くにいる!)
目を輝かせながら翼を広げ、一気に飛び立つ。
その反動で、爆発音と共に校舎の壁や天井の一部が崩れ落ちてしまったが、そんなもの全く意に介さない。
垣根は自分の感覚を信じ、一直線に飛んでいった。
後に残ったのは破壊された校舎と、呆然と垣根を見送る名も無き少女達ばかりである。
―――――――――――――――
―――――――――
――――
(く、どうにか、どうにかしないとぉ……)
垣根が何処かにすっ飛んでいった事など露知らず、混乱に乗じてあの場を離れた食蜂は
今だ焦燥し切っていた。あの男をどうにか撃退しなければ、今まで自分が積み上げたモノが
粉々に砕かれてしまいかねない。そんな焦りが彼女の胸中に渦巻いている。
(……そうだ、侵入者は二人いたはず)
僅かばかり冷静さを取り戻したところで、不意に配下からもたらされた情報を思い出す。
侵入者は二人、さっきの化物とは別に一緒に侵入してきた男がもう一人いるはず。
ならばそいつを利用出来ないだろうか。そいつを操ってやれば揺さぶりをかける事くらいは出来るかもしれない。
僅かでも隙を作れれば勝ち目はあるはずだ。
(試してみる価値はある……かな?)
ニッと口の端を吊り上げ、彼女はもう一人の侵入者を探し始める。
そのもう一人が、更なる厄ネタだとも知らずに。
―――――――――――――――
―――――――――
――――
一方通行「さっきの爆発音は間違いなく垣根だよなァ……」
絹旗「超その通りでしょうね、早いところ探さないと超エラい事になりそうです」
白井「はぁ……まったく、あなた方は何故こうも問題ばかり起こすんですの?」
一方通行「道踏み外しそうになってた白黒が偉そうな口利いてンじゃねェぞコラ」
白井「すいませんでした」
絹旗「あぁもう、いいから一方通行は超さっさと垣根見つけて帰ってくださいよ!」
一方通行「ハイハイ、今アイツに電話すっからちょっと待ってろよ」
「見つけたわぁ」
一方通行「ン?」
絹旗「へ?」
白井「あ、あなたは!!」
食蜂「そこの白いあなたね?常盤台へのもう一人の侵入者というのは」
一方通行「あァ?だったらどォしたってンだ?」
食蜂「フフ、利用させてもらうわ、あっちの男を撃退する為にね」
一方通行「何言ってンだ?」
絹旗「超どちら様でしょうか?」
白井「お、お待ちになってください食蜂さん!!まさかこの方に能力を使う気では……」
食蜂「あらぁ?白井さんのお知り合いだったのかしら?それはお気の毒ね……さて、そっちの白いあなた、」クスクス
白井「いえあの、ちょっと、わたくしの話をちゃんと聞いて……」
一方通行「あァ?」
食蜂「『私の奴隷になりなさい』」キィィィン
一方通行「は?」ペカーン
食蜂「はっ」キュイィィィン
一方通行「なンだコイツ?突然何か能力仕掛けて来やがったぞ?反射しちまったけど大丈夫か?」
白井「ああぁ……やっちまったですの……」
絹旗「超何なんです?何を超やっちまったんです?」
食蜂「ご主人様ぁ!!」ガバッ
一方通行「………はいィ?」
食蜂「何なりとご命令を!!」
一方通行「いきなり土下座とか何やってンのオマエ!?おいィ!どォなってンだ白黒ォ!!」
白井「あー……その方、レベル5の第五位、食蜂操祈と申しまして……」
絹旗「え、超こんなんが?」
一方通行「第五位っつーと、心理掌握だったかァ?」
白井「はい。恐らく第一位様を洗脳しようとして、反射されてしまったのかと……」
一方通行「バカかコイツ!?」
食蜂「はい、私は愚かな女です、ご主人様に使われることしか能の無いダメな女です!
ですからご命令を!何でもいたします!!」
絹旗「えー、あー……超良かったですね一方通行、美人の奴隷が出来たじゃないですか」
一方通行「全く良くねェ!!こォ言うの苦手なンだよ俺は!!」
食蜂「さぁご主人様、ご命令を!」
一方通行「……とりあえず土下座やめろ、立て」
食蜂「え、そんな恐れ多い事……」
一方通行「いいからまず頭上げろ、命令だ」
食蜂「ご主人様……なんとお優しい」ホロリ
一方通行「なにこれめンどくせェ……」
白井「今まで散々威張り散らしてきた常盤台最大派閥の女王とは思えませんの……」
食蜂「ちょっと白井さん、あんまり私のご主人様に擦り寄らないでもらえない?」
絹旗「あ、一方通行以外には超普通っぽいですね」
食蜂「そっちの小さいのもよ!!私のご主人様から離れなさぁい!!」
絹旗「へぇ、そんな口利いていいんですか?私は一方通行の超妹なんですよ?」
食蜂「失礼致しました妹様!!」ガバッ
絹旗「わぁ、超楽しい」ククク
一方通行「おい絹旗、あンまり……お、そォだ」
絹旗「……何か超悪い顔してますね」
一方通行「えっとォ、食蜂つったかオマエ?」
食蜂「ご主人様に名を呼んで頂けるだなんて感激です!何なりとお申し付けください!!」
一方通行「オマエ、なンか常盤台の派閥のトップらしいなァ?」
食蜂「はい、恥ずかしながらそのようなものをさせて頂いております」
一方通行「よし、それじゃ命令すンぞ食蜂」
食蜂「何なりと!」
一方通行「ここにいる絹旗を俺だと思って全てに従え」
絹旗「はいいいい!!!?」
食蜂「Yes, Your Majesty!!」
白井「だ、第一位様、何を……?」
一方通行「良かったなぁ絹旗、常盤台の最大派閥がオマエに従うンだぞ?これでオマエの学園生活はバラ色だ」
絹旗「超茨の道にしか見えませんが!?」
食蜂「妹様、不肖・食蜂、精一杯尽くさせて頂きます」
絹旗「うわぁぁぁ超めんどくせぇぇぇぇ!!!」
一方通行「よし、それじゃ俺は帰る」バッ
絹旗「このクソ兄貴がァ!!テメエ体良く私に超厄介事押し付けたかっただけだろォがァ!!!」
食蜂「さぁ妹様、なんなりとご命令を!!」
絹旗「ちくしょォォォォォォ!!!!」
白井「やれやれですの」ハァ
―――――――――――――――
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――――
麦野「はぁ、結局常盤台まで来ちゃった……何やってんだ私……」
麦野「……まぁ、せっかくだし絹旗の制服姿でもからかってやるか」
ドゴォォォォォン!!
麦野「な、何今の爆発音?……うわ、校舎の一部が吹っ飛んでる!?
って、今飛び出してきたのはまさか!!!?」
垣根「やっぱり近くにいたな麦野ぉぉぉぉ!!!」バサバサ
麦野「ぎゃああああこっち来んなああああ!!!」
―とある研究所前
一方通行「はァ、久しぶりだなァ研究所に来ンのも」テクテク
一方通行「……ホモ疑惑かけられてからどォにも顔出し辛ェンだよなァ」
一方通行「それもこれも木原の馬鹿が全部悪ィンだクソ」
一方通行「……ン、木原?」
一方通行「あァ、木原、木原だ!思い出した、あの刺青のおっさン木原くンじゃねェか!!」
一方通行「そっかァ木原くンかァ……すっかり忘れてたわ、今度会ったら謝っとかねェとな」
一方通行「木原くンの事忘れてたらそら怒られるわァ、アイツ馬鹿みてェに気ィ短ェし」
一方通行「俺がガキの頃もちょォっと悪戯しただけですぐにマジギレしてやがったからなァ」
一方通行「……いや、寝てる隙に顔面に刺青彫ったのはちょっとした悪戯じゃ済まねェか?」
一方通行「あの顔面刺青が原因で研究員干されたらしいしな」ケケケ
「何を一人で笑っているんです?とミサカは不気味な笑みを浮かべている一方通行に若干引きながらも話しかけてみます」
一方通行「ン、おォ、えっと、オマエは……」
10032号「10032号です、とミサカは自分の検体番号を名乗ります」
一方通行「オマエか、久しぶりだな」
10032号「はいどうもお久しぶりです、とミサカは軽く右手を上げ挨拶をします
で、何しに来やがったんですか?」
一方通行「あァ?理由が無きゃ来ちゃいねけェのか?」
10032号「あまり良くはありませんね、正直あまり会いたい相手ではありませんし、
とミサカはここぞとばかりに本音をぶっちゃけてみます」
一方通行「え、なンかやけに冷たくねェ?俺が何したってンだ、最近妹達とは会ってもねェってのに」
10032号「直接会ってはいませんが、あなたの日頃の行いはお姉様や番外個体を通して伝わってきていますから、
とミサカは情報収集に余念が無い事をアピールします」
一方通行「アイツらになンか吹き込まれたのか?言っとくが俺はここ最近普通に暮らしてただけだぞ?
オマエらに嫌われるような真似は何一つやっちゃいねェはずだ」
10032号「何でもロリっ子を拉致監禁して妹に仕立て上げたとか、女子中学生を雌奴隷にしたとか……
いえ、それがあなたにとっての普通だと言うのならもはや何も言いませんが
とミサカは冷ややかな視線を送りながら口を噤みます」
一方通行「随分捻じ曲がった伝わり方してンなオイ!?」
10032号「違うんですか?とミサカは首を傾げます」
一方通行「……違う、とも言い切れねェ」
10032号「帰れ変態がぁ!!とミサカは身の危険を感じて後ずさります」
一方通行「待て、誤解だ誤解!!妹が出来たのも奴隷が出来たのもちゃンと理由があンだよ!!」
10032号「どんな理由があろうと、毎晩妹と近親相姦プレイしたり
雌奴隷とSMプレイしたりしてるような人とは話したくありません」
とミサカは更に露骨に距離を取ります」
一方通行「やってねェから!!なンだその情報!?それも超電磁砲とか番外個体に聞いたのか!!?」
10032号「いえ、今のはミサカの勝手な想像です、とミサカはお姉様達には非が無い事を訴えます
でもどうせヤッてるんだろ?とミサカはジト目で性欲の権化の白モヤシを睨みつけます
一方通行「ヤッてねェよ、俺はまだ童貞だ」
10032号「そのカミングアウトは別にしなくても結構です」
一方通行「それに俺はオマエら一筋だぜ?他の女に心変わりする事なンかあるわけが……」
10032号「運命の相手とやらを探して毎日のように街中をさ迷い歩いていた男が何をほざきますか
とミサカは都合の良い事しか言わない一方通行を軽蔑の目で見ます」
一方通行「……」
10032号「……」
一方通行「………あ、他の妹達は元気か?」
10032号「露骨に話をそらすなよ、とミサカは……
……まぁ話も進みませんしこのくらいにしておきましょうか」
一方通行「そォして頂けるとありがたいです」
10032号「で、実際何しにきたんです?本当に何の目的も無く来たんですか?
とミサカは話を戻しながら首を傾げます」
一方通行「ンー、強いて言えばオマエらの顔見に来たってとこだなァ
最近ろくにオマエらと会えてなかったから俺の中の妹達成分が不足してきてンだよ」
10032号「妹達成分ってなんですか……とミサカは呆れ顔で一方通行を眺めます
て言うかそんなもん番外個体から摂取してくださいよ、アレも妹達の一員ですし」
一方通行「いやァ、アイツは何か違うだろ……」
10032号「ちょっとその言い方は酷くないですか?あんなでもミサカ達の妹分なんですよ?
とミサカは番外個体を差別している一方通行を窘めます」
一方通行「比喩で無く何度も喰われそうになったら流石に態度も変わるわ、正直アイツの近くにいると結構怖ェ」
10032号「それだけ愛されてるんですよ、喜んでください、とミサカは薄笑いを浮かべながら一方通行を慰めます」
一方通行「ノーマルな愛が欲しいンだよ……」
10032号「ノーマルでないあなたがノーマルな愛を求めるなどおこがましいと思いませんか?
とミサカはアブノーマルな性癖を持つ一方通行に指摘します」
一方通行「むしろノーマルな性癖しか持ってねェよ!!」
10032号「さて、折角久々にこっちに来た一方通行を邪険に追い返すのも良心が咎めますし、」
一方通行「咎めるほど良心あンのか?」
10032号「シャラップです、とミサカは痛い所をついてきた一方通行を黙らせます」
一方通行「あ、痛ェ所なンだ」
10032号「とにかく、これからこのミサカが直々にあなたを知られざる妹達の世界へご案内いたしましょう
とミサカは人生最大の優しさを発揮します」
一方通行「なンで世界まる見え風なンだよ」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
―研究所内部
一方通行「妹達の世界を案内って、よォするに妹達を紹介してくれるって事だよなァ?」
10032号「えぇ、その通りです。ぶっちゃけあなた妹達の性格とか趣味とかほとんど知らないでしょう?
とミサカは妹達にも一人一人個性がある事を仄めかします」
一方通行「ン、なンだかンだでゆっくり話した事があンのはオマエと11111号くらいだからな」
10032号「土下座で告白した事はあるのに会話した事はほとんどないってのも凄まじい話ですよね
そういえば結局告白は14000弱で止まってるんでしたっけ、とミサカは過去を振り返ります」
一方通行「超電磁砲が許可してくれねェンだよなァ……そろそろ再開させてくれねェかなァ」
10032号「律儀に約束を守っている所は好感が持てますよ、とミサカは微笑んでみます」
一方通行「そ、そォか?」テレ
10032号「その調子で童貞を守り通して下さい、とミサカは満面の笑みを浮かべます」
一方通行「……ちくしょォ」
10032号「とりあえずこの部屋辺りから行きましょうか、とミサカはドアの前で立ち止まります」
一方通行「……?中からなンか声しねェか?」
10032号「あぁ、多分一人で遊んでるんでしょう、良くある事ですよ、とミサカは溜息混じりにドアノブに手を掛けます
あ、あまり物音を立てないように注意してくださいね?」
一方通行「ン?あァ、わかった」
ガチャ……
(うおォなンだこりゃ……)
部屋の中を覗いた一方通行は、その光景に思わず息を呑む。
それもそのはず、そこにあったのはガンプラの山、山、山……初代から00、ユニコーンまで、
様々なガンプラがスミ入れ、塗装までされた状態で所狭しと飾られていた。
(すっげェ……)
(凄いでしょう?とミサカは小声で一方通行に話しかけます
これ全部、一人の個体が作ったんですよ)
ガンプラの山に目を奪われている一方通行に、10032号が苦笑いをしながら話しかける。
信じ難いことに、数えるのも億劫になる程のこのガンプラの山は、たった一人によって築かれたモノだという。
ざっと見回した所、ガンダムシリーズ以外のプラモデルは一切置かれていないようで、
この部屋の主は余程重度のガンダムオタクである事が窺える。
(奥を見てください、あれがこの部屋の主です、とミサカは部屋の隅で遊んでいる個体を指差します)
(おォ?)
促されるままに部屋の奥に目をやると、そこには両手にプラモを持った一人の妹達の姿があった。
一方通行達が部屋に入ってきた事にも気付かず、彼女はせわしなく両手を動かしつつ、
弛緩した表情で何やらブツブツと独り言を呟いている。
(何やってンだアレ?)
(シッ、耳を澄ませていればわかりますよ、とミサカは静かにするよう注意します)
「会いたかった……会いたかったぞ……ガンダムゥ!!」
(ホント何やってンだ!?)
突如叫び声を上げ始めたその個体に、一方通行は静かに驚愕し、混乱した。
助けを求めるように隣にいる10032号を見るが、彼女は今にも噴出しそうな表情で必死に口元を手で覆っている。
どうやら助けは望めないようだ。仕方なく、一方通行は一人で声を上げている個体に視線を戻した。
「ハワードとダリルの仇、討たせてもらうぞ、このGNフラッグで!!」
(あァ、00、グラハムか……?)
(はい、今日はガンダム00のラストシーンのようですね、とミサカは笑いを堪えながら頷きます)
(今日は……?)
(えっとですね……)
10032号の説明によると、どうやらガンプラで遊んでいるあの個体―13577号は、生粋のガノタらしい。
更にガンダム愛が高じるあまり、毎日あのようにしてプラモ片手に
歴代ガンダムの名シーンを一人で再現して遊んでいるとのことだ。
ちなみに先日はGガンダムの『東方不敗暁に死す』を熱演していたらしく、
研究所中に彼女の熱いシャウトが響き渡ったとか渡らなかったとか。
「やはり私と君は、運命の赤い糸で結ばれていたようだ……」
そうこう説明を受けている内にも13577号の一人ガンダム劇場は続く。
あまりの感情の入りっぷりに一方通行も10032号も噴出さないように堪えるのが精一杯だ。
「そうだ、戦う運命にあった!!」
(ぐっ!?)
(こ、堪えてください一方通行、とミサカは口元を手で覆いながら一方通行を励まします)
厄介な事に、これだけ大声で熱演していながら、
13577号は未だ声が部屋の外まで漏れている事に気付いていないらしい。
それ故、彼女は自分がこんな恥ずかしい遊びをしている事が
研究所中に知れ渡っているなどとは夢にも思っていない。
他の妹達や研究員達も何と声をかけたらいいかわからず、ただ生暖かい目で見つめるばかりなのだ。
ここで噴出して13577号に気付かれてしまえば、彼女は恥ずかしい場面を見られていた事を知り
心に消えない傷を負ってしまうだろう。それだけは避けなければならない。
「ようやく理解した!君の圧倒的な性能に、私は心奪われた……ッ!」
(マズイ、この後のセリフはァ……)
(く、ここは一旦部屋から退室して……)
「この気持ち……まさしく愛だ!!!」
「ぶふゥ!!」
(ちょ、一方通行、何噴出してんですか!とミサカhぐふぁ!!」
「だ、誰ですか!?とミサカはガンプラを隠しつつ慌てて周囲を見渡します!」
ついに耐え切れなくなって噴出してしまった一方通行、そしてそれに釣られるようにして噴出した10032号。
当然、13577号にその存在を察知されてしまう。演技を中断した13577号は慌ててプラモを隠しつつ、
キョロキョロと焦った様子で辺りを見回している。と、そんな彼女と、笑っていた二人の目が合った。
13577号「………10032号、一方通行……?」
一方通行「よ、よォ……」プルプル
10032号「き、気にせず続けてください、とミサカは必死に笑いを抑えながら返事をします」ヒクヒク
13577号「み、見たんですね?見てしまったんですね!?とミサカは顔を真っ赤にして二人を問い詰めます」
一方通行「見てねェ、俺は何も見てねェぞ上級大尉」クククク
13577号「見てるじゃないですかぁぁぁ!!!とミサカは頭を抱えて項垂れます」
10032号「大丈夫ですよ上級大尉、あなたのガンダム愛はイタいほど良く伝わりましたから
とミサカは半笑いで13577号改めグラハム・エーカー上級大尉を慰めます」プププ
13577号「やめて!イタいって言わないで!!あとその呼び方もやめてぇぇ!!
とミサカは手で顔を覆いゴロゴロと床を転げまわります」ゴロゴロゴロ
一方通行「あ、おい、こンなにプラモが積み重なってる場所でそンな風に転げまわったら……」
ゴロゴロ……ドン!
13577号「へ?……うわあああぁぁぁ!!!!」ガラガラガラ
10032号「あちゃぁ、やってしまいましたね、
とミサカは壁にぶつかった拍子に起きたガンプラ雪崩に飲み込まれた13577号に合掌します」
一方通行「あーァ、壁や天井に飾ってたガンプラまで全部落下してきてンじゃねェか
こりゃ飾り直すの大変だぞ」
10032号「さて、13577号の紹介も終わりましたし次行きましょうか、とミサカはドアノブに手をかけます」
一方通行「え、放っとくのかこれ?」
10032号「愛すべきガンプラの山の中で息絶えるのなら彼女も本望でしょう
とミサカは遠い目をしつつ再び手を合わせます」
一方通行「ンー……まァ死にはしねェだろォからいいか」
ガチャ、バタン
13577号「あ……愛が重いです、とミサカは……」ピクピク
一方通行「ンで、次は何号を紹介してくれるンだ?」
10032号「そうですね、お次は……」
「おや、そこにいるのはあくせられーたではありませんか?とみしゃかは手を振りながら近寄りまふ」
一方通行「……あ?」
10032号「は?」
08251号「こんにちは、みしゃかは検体番号8251号のみしゃかでふ、とみしゃかはあいしゃつをしまふ」
一方通行「いやいや……何その喋り方、ホントやめてもらえませン?」
10032号「このスレ潰す気ですか、とミサカは露骨なキャラ作りをしている08251号を窘めます」
08251号「え、舌噛んで上手く喋れないだけなのにどうしてしょんなに怒られてるんでふか!?
とみしゃかは余りにも酷い言い分に怒りを露にまふ!ぷんすか」
一方通行「オマエわかってやってるよな!?そういうのマジで怒られるンだからやめろコラ!!」
10032号「ほら帰れ!帰れ!!とミサカはシッシと手を振ります」
08251号「酷いでふ!みしゃかは本当に……」
「そこまでです!ミサカは颯爽と現れ08251号の首筋に手刀を叩き込みます」シュッ
08251号「かふっ!」パタン
10032号「おぉ17600号、助かりました、とミサカは危ないところを救ってくれた17600号に感謝します」
一方通行「え、今どっから出てきたンだコイツ?」
17600号「なに、ただのステルス迷彩ですよ、とミサカは微笑みながら08251号を肩に担ぎます
それでは08251号を連れて行きますのでこれで」タッタッタ
10032号「いやぁ本当に危ない所でした、とミサカは胸を撫で下ろします」ハフゥ
一方通行「危ない所っていうか完璧アウトだと思うンだが……」
10032号「多分まだギリギリセーフでしょう、とミサカは冷静にジャッジを下します」
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―しばらくして
一方通行「……しかしアレだな、妹達も随分個性豊かになったモンだな」
10032号「お陰様で、とミサカは微妙な笑顔を作りながら返答します」
一方通行「今もう一回最初から告白やり直したら応えてくれる個体いるンじゃねェかな!」
10032号「いるといいですね、とミサカは目を細めながら答えます
まぁその前に告白を再開出来る環境を作る必要がありますが」
一方通行「あー……何とかなンねェかなァ超電磁砲……」ハァ
10032号「まぁまぁそう邪険にしないで上げてくださいよ、お姉様はあれで結構あなたの事を……」
一方通行「ン、あそこにいるのは……」
10032号「聞いちゃいねぇよこのモヤシ」
一方通行「おォーい布束ァー」テクテク
布束「……げ」
一方通行「目が合っただけで『げ』とか言うのやめて貰えますゥ?地味に傷つくンでェ……」
10032号「あなたは過去にそれ以上に布束砥信を傷つけていますけどね
とミサカはすかさずつっこみをいれます」
布束「チッ……久しぶりね一方通行、何か用?」ニコ
一方通行「思いっきり舌打ちかました後に微笑まれても反応に困るンですけどォ!?」
10032号「普通に会話をしてもらえるだけでもありがたく思いましょうよ
とミサカは布束砥信の心の広さを賞賛します」
布束「用が無いなら私は行かせて貰うけど……あまり暇ではないし」
一方通行「待て待て、久しぶりなンだし少しくらい話そうぜ」
布束「えぇー……」
一方通行「そンな露骨にイヤそうにすンなよ」
10032号「まぁそれだけの事をあなたは布束砥信にやってきましたから
とミサカは過去の出来事を振り返ります」
布束「exactly あなたと会話するとろくな目に会わないわ」
10032号「毎度毎度最後は一方通行がズボン脱ぎながら追いかけてますからね
とミサカはオチ担当の布束砥信に哀れみの視線を注ぎます」
一方通行「あァいやうン、その節はホントすいませンでした」
布束「well ……反省しているようだし少しくらいなら付き合ってあげるわ」
一方通行「……『付き合う』?」ピク
10032号「あ、ダメだこいつ、根本的なところはあんまり変わってねぇ
とミサカは地雷を踏んだ布束砥信に合掌します」
布束「え、え?」
一方通行「よし布束、外行くぞ」ガシ
布束「え?いや、ちょっと待ちなさい一方通行!!離して!!」
一方通行「ヤらせてくれ、とか言わねェから、付き合ってくれるンだろ?な?」グイグイ
布束「そういう意味じゃなくて……あぁもう引っ張らないで!!」
一方通行「デート!デート!」グイグイ
布束「wait!私は忙しいんだってば!!」ズリズリ
一方通行「じゃァ10032号、今日は案内ありがとな、今度なンか礼するわ」
10032号「いえいえお構いなく、とミサカは布束砥信と一方通行に向かってにこやかに手を振ります」
布束「た、助けてえええ!!」
一方通行「とりあえず行きつけの喫茶店にでも行ってェ、その後どォすっかな、水族館でも行くか」ニコッ
布束「こっちの予定ガン無視しながらそんな笑顔浮かべないで、ムカつくから
first あなたはまず強引過ぎるところを直しなさい!」
一方通行「え?」ニコニコ
布束「話を聞きなさい!!」
10032号「幸せ過ぎて何も見えない聞こえないという状態のようですね、とミサカは推測します
それにしてもいい笑顔してますねぇ」
布束「く、寿命中断(クリティカル)!!」
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番外編
―とあるファミレス
フレンダ「結局、最近仕事が全然無いわけよ」
滝壺「zzz……」クー
麦野「何か学園都市上層部でごたごたがあったみたいよ?そのせいで仕事を振る余裕もないんだとさ」
フレンダ「ごたごた?」
麦野「何でも理事会のトップ……アレイスターの野郎が乱心したとか何とか……」
フレンダ「結局どういうことなの……」
麦野「私も詳しくはわかんないわ、まぁお陰様で仕事が無くて退屈な毎日ってんだからいい迷惑よ」
フレンダ「ふふん、結局私に身体を任せれば退屈なんかすぐに忘れさせて……」ジリジリ
麦野「はーいそれ以上近付いたら撃つわよー?」
フレンダ「ま、真顔でそういう冗談は止めて欲しいんだけど……」
麦野「だって本気だもの」
フレンダ「……そ、そうだ、退屈を紛らわす為にも偶には女の子らしい話でもしようよ!」
麦野「女の子らしい話だぁ?何すんのよ」
フレンダ「結局ガールズトークってヤツをやってみたいわけよ」
麦野「ガールズトークって言われてもねぇ……」
フレンダ「うん、結局経験豊富な麦野の話を色々聞いてみたいわけよ!」
麦野「………わ、私の話?」
フレンダ「いいでしょー、麦野の恋愛感とか聞いてみたーい」
麦野「私の……」
麦野(……ま、まずい事になったわね、散々そういうキャラ作って来といて、今更実は経験無しです、何て言えないし……)
麦野(かと言って露骨に話題を変えようとすれば不審に思われるだろうし……)
麦野(あぁぁどうしよう………て、適当に言っちゃっても大丈夫よね?何とかなるわよね?)
フレンダ「むーぎの?」
麦野「ハン、期待してるあんたには悪いけど、恋愛感なんてそんな上等なモンは持ち合わせてないわよ」
フレンダ「へ?」
麦野「男なんて所詮性欲を処理する為の道具でしかないわ、
そこそこ顔が良くて私の言いなりになるんならそれで十分、
適当に使い潰して飽きたら次のに取り替える、そんなモンよ」
フレンダ「お、おぉぉ……結局麦野の爛れた考えにゾクゾクくるわけよ
流石は麦野、超経験豊富なのね!」
麦野「ま、まぁね……あんたも顔はいいんだから適当に男引っ掛けてみたら?」
フレンダ「んー、私は麦野一筋だし」
麦野「はいはい」
麦野(な、なんとか誤魔化せたみたいね……
あぁでも何だか取り返しのつかないビッチ設定になっちゃった気がするわ……)
滝壺「むぎの(笑)」
麦野「!!!?……た、滝壺、いつから起きてたの?」
滝壺「『男なんて』辺りからかな」
麦野(全部聞かれたァーッッ!!)
フレンダ「でも麦野みたいな考えも憧れちゃうわけよ
美人で、自信満々で、男を道具扱いできて……いいなぁ」ハァ
滝壺「そうだね(笑)」
麦野「な、何よ滝壺、言いたい事があるならはっきりと……」
滝壺「言ってもいいの?」
麦野「………ほら滝壺、このジャンボパフェ食べたがってたでしょ?奢ってあげるわよ」
滝壺「むぎの大好き」ニコッ
フレンダ「あ、いいなー!ねぇ麦野、結局私も何か奢って欲しいんだけど」
麦野「うるせぇ!!大体オマエが悪いんだよ!!」
フレンダ「何が!?」
麦野「……そうだフレンダ、折角だしアンタの恋愛感とやらも聞かせてもらえる?」
フレンダ「ふえ、私の?」
麦野「ほら、さっきも言った通り私は普通の恋愛感とか持ってないから
その、こ、恋とかするっていうのがどういう感覚かよくわからないのよね
どんな感じなわけ?恋くらいした事あるんでしょ?」
フレンダ「んー、まぁ現在進行形で麦野に恋してるわけだけど、」
麦野「それそれ、どういう風に私を思ってるわけ?」
滝壺「参考にしようと必死だねむぎの(笑)」
麦野「滝壺、こっちのケーキセットも奢ってあげるからちょっと静かにしててね」
滝壺「勿論だよむぎの」ニコニコ
フレンダ「フフン、それじゃご教授してさしあげようかなー」
麦野「もったいぶってねぇでさっさと言え」
フレンダ「結局恋をするとね、その人の事しか考えられなくなるわけよ」
麦野「ふ、ふぅん?」
フレンダ「寝ても覚めてもその人の事だけ!!『次はいつ会えるんだろう?』
『明日は会えるかな?』『バッタリ出会っちゃったらどうしよう?』
何て風に夜も眠れないくらい頭がいっぱいになるわけよ!!」
麦野「寝ても、覚めても、ね……そんな相手やっぱ私には……」
麦野「………ん、待てよ?」
―次はいつ第二位が襲い掛かってくるんだろう?
―明日襲い掛かってくるんじゃないだろうか?
―街中でバッタリ出会ってしまったらどうしよう?
―不安で夜も眠れない……て言うか眠ってる間に襲われたらどうしよう
―第二位怖い、第二位わけわからん……
麦野(あ……私ここ最近第二位の事ばっかり考えてる……)
麦野(……そっか、これが……恋なんだ!)
※違います
フレンダ「……それでね、って麦野、どうかした?」
麦野「あぁいや何でもないわ、うん」
フレンダ「?」
麦野(恋か……私、第二位の事……)
滝壺「むぎの?」
麦野(…………)
麦野「そんなわけねぇだろうが!!!」ガターン!!
フレンダ「何が!!?」
麦野「適当ほざいてんじゃねぇぞフレンダァァ!!何で私が第二位に恋しなきゃならねぇんだ、あぁ!?」
フレンダ「ちょ、意味が!意味がわからないわけよ!!結局どっから第二位の話出てきたの!?」
麦野「あんな変態童貞早漏野郎お断りだっつーんだよクソが!!
フレンダ、テメエ私と第二位をくっつけてどうしようってんだ!!」
フレンダ「結局本当に意味がサッパリわからないわけよ!!!」
滝壺「むぎの、パフェの追加していい?」
麦野「好きにしろオラァ!!」
滝壺「ありがと」ニコッ
麦野「フレンダァァァ!!テメエはお仕置き確定だああああ!!!」
フレンダ「何で!?何でぇぇぇぇぇ!!!?」
滝壺「パフェ甘い」モキュモキュ
―小ネタ
フィアンマ「おいヴェント、少しいいか?」
ヴェント「よくねぇから失せろ」
フィアンマ「ガブちゃんの事なのだが、」
ガブリエル「hjkba獲物sabkjfq」
ヴェント「話し聞けよ……てか何でまだいるんだよ天使!!獲物って何だ獲物って!!」
フィアンマ「うむ、どうやらガブちゃんが久しぶりに『受胎告知』をしたいらしくてな」
ガブリエル「mqvnljh妊娠kjha告知sabjkfa」
ヴェント「は、はぁぁ!?」
受胎告知……ガブリエルが大昔、聖母マリアに「お前妊娠するよ、聖霊の力で神の子宿すよ」って伝えたアレ
フィアンマ「そこでオマエに白羽の矢が立ったというわけだ、光栄に思え」
ヴェント「意味がわかんねぇんだよおおお!!!」
ガブリエル「wktk」ウズウズ
フィアンマ「ほら、ガブちゃんも告知したくてウズウズとしているぞ」
ヴェント「ふざけんな!!大体受胎告知って処女懐胎に対してやったモンだろうが!!
処女懐胎なんざやろうと思って出来るもんでもねぇだろ!!!」
フィアンマ「それについては心配する事は無い」
ヴェント「あぁ?」
フィアンマ「聖書にある聖母マリアの『処女』という記述はそもそも誤訳であるという説があってだな
本来『若い女』と訳すべきところを神秘性を持たせる為に無理矢理『処女』とこじつけた可能性があるのだ」
ヴェント「……何が言いてぇ?」
フィアンマ「つまり受胎告知は別段処女懐胎にこだわる必要は無い、オマエは普通に妊娠すればいい、というわけだ」
ヴェント「………」
フィアンマ「という事でヴェント、やらせろ」
ヴェント「結局そこに行き着くのかよ!!!!
処女懐胎に拘らないんなら産婦人科にでも行って好きなだけ告知してこいよアホどもが!!!」
フィアンマ「ガブちゃんは本物の大天使だぞ?そんなもの街中に連れ出したら大混乱になってしまうだろうが」
ヴェント「何でそんなとこだけ常識的なんだよ!?」
ガブリエル「ajkgq弁当fbjka願dajqb」
フィアンマ「ほら、ガブちゃんもオマエの名を呼びながら懇願しているぞ?」
ヴェント「どんだけ懇願されてもやらねぇよ!!つーかヴェントじゃなくて弁当つったろこの天使!!」
フィアンマ「細かい事はいい、やらせろ」
ヴェント「死ね、テッラとでもやってろ変態おかっぱ野郎が」
フィアンマ「よりによってテッラだと……イヤ待て、そうかテッラか」
ヴェント「おい待て、真に受けんな」
フィアンマ「なるほど、テッラか……」
ヴェント「何考えてんだテメエは!!本気で頭おかしいんじゃないの!!?」
フィアンマ「何を言う!口調だけ抜き出せばテッラは立派な萌えキャラではないか!!」
ヴェント「口調以外は萌えの対極だろうがああああ!!!」
ガブリエル「dfkjgBLsawktksah」
ヴェント「何言ってんのよこの腐れ天使!!そもそもコイツらボーイじゃねぇよ!!」
フィアンマ「あの外見さえどうにかすれば……そうか、俺様が目を閉じていれば……」ブツブツ
ヴェント「……おい、一応言っといてやるが男同士でやっても妊娠しねぇぞ」
フィアンマ「あっ」
ガブリエル「oh……」
ヴェント「馬鹿だろお前ら」
フィアンマ「となると、やはりオマエに妊娠してもらうしか……」
ヴェント「死ね」
フィアンマ「強情なヤツめ……ガブちゃん、今日のところは諦めて貰うわけにはいかんか?」
ガブリエル「fagsa断固拒否dfahig」
フィアンマ「どうあっても受胎告知をしたいそうだ」
ヴェント「何でそんなに告知したいのよ……」
フィアンマ「……こうなっては仕方が無い」
ヴェント「な、何よ?まさかテメエ……」
フィアンマ「あぁ安心しろ、無理矢理犯すような真似をするつもりはない」
ヴェント「……じゃあ何する気なわけ?」
フィアンマ「聖母マリアは聖霊の力により神の子を身篭ったとされている」
ヴェント「……で?」
フィアンマ「俺様の力は未だ聖霊には及ばんが、
それでも本気を出せば誰かを想像妊娠させる事くらいは出来るはずだ」
ヴェント「馬鹿かオマエ!?馬ッ鹿かオマエ!!?出来るわけねぇだろ!!
つーかそんな事に本気出そうとしてんじゃねぇ!!!」
フィアンマ「という事でガブちゃん、想像妊娠に対する告知で我慢してもらえるか?」
ガブリエル「……afhm妥協aczwqlj」
フィアンマ「そうか妥協してくれるのか、ガブちゃんは優しいな」
ヴェント「ほ、本気でやるつもり!?いや出来るとは思わないけど」
フィアンマ「心配するな、オマエを標的にするつもりはない
オマエはいつか俺様が直々に孕ませてやるのだからな、想像妊娠などで済ませるものか」
ヴェント「最悪の宣告すぎて鳥肌が立ったわ」
フィアンマ「さてターゲットは誰にするか……」
ガブリエル「sahmn急cazbhq」
フィアンマ「そう急かすなガブちゃん」
ヴェント(本当に想像妊娠させる事が出来たとしたら最悪の受胎テロだな……)
フィアンマ「……よし、アックアにしよう」
ヴェント「」
フィアンマ「アックアは確か隣の部屋にいたな……とりあえず部屋越しに念を送ってみるとするか」ミョンミョン
ガブリエル「fdakalh期待agasecah」
ヴェント「おい待て!!何で男相手にやってんだ!!?」
フィアンマ「想像妊娠は男でも出来るらしいぞ?」
ヴェント「つーか何でアックアなんだよ!!!」
フィアンマ「この前見たシュワちゃんが妊娠する映画が面白かったからだ
ほら、アックアの筋骨隆々っぷりを見ているとシュワちゃんを思い出さないか?」
ヴェント「ホントにワケがわかんないわ……もういいよ、私に害が無いんなら好きにやれ」
フィアンマ「言われなくてもそうさせてもらう……さぁアックア、妊娠しろ妊娠しろー」ミョンミョン
ヴェント(『アックア妊娠しろ』って言葉だけ聞くと心底気持ち悪ぃな
いや、やってる事も滅茶苦茶気持ち悪ぃけど)
フィアンマ「……ふぅ、俺様の全身全霊の念を送ってみたが、結果はどうだろうな」
ヴェント「知らねぇよ馬鹿」
<prrrrr
フィアンマ「む、電話か……テッラから? もしもし、どうした?」
『あぁフィアンマ、ちょって手伝って欲しいんですがねー』
フィアンマ「何だ、何があった?」
『あのですねー、アックアが突然『酸っぱい物が食べたいのである!』などと言いながら暴れ始めまして』
フィアンマ「ほう、わかった、すぐに向かう」
『急いでくださいね?下手したら殺されてしまいそうなので』
<プツン
フィアンマ「大成功のようだぞ、流石は俺様だな」
ヴェント「本当に想像妊娠しやがったのかよ!?てか何で暴れてやがるんだ!!?」
フィアンマ「マタニティブルーと言うヤツだろう、さて行くぞガブちゃん、待ちに待った受胎告知だ」
ガブリエル「ahgij把握ahlgqkjg歓喜ahfghqdsp」
「いい加減ストーカーどもを何とかしてェンだが」
「あぁ?」
ここはとある喫茶店。いつものように、いつもの席で馬鹿話をしていた一方通行と垣根の二人だったが、
不意に一方通行の漏らした言葉に垣根は口を噤み首を傾げる。
一方通行と彼のストーカー達による奇妙な日常はもう随分長い事続いているのだ。
今まで散々野放しにしておきながらどうして今更?
そもそも何だかんだでストーカー達とのじゃれあいを楽しんでいたんじゃないのか?と疑問に思う垣根だったが、
どうやら一方通行は本気のようで、真剣な眼をしながら真っ直ぐに垣根見据えている。
「何かあったのか?」
「ン、あァ……ちょっと最近なァ……」
一方通行には反射の膜というチートな自動防御能力がある為、自身が肉体的な危害を加えられる事はまず無い。
が、どうにも最近ストーカー達の行動がエスカレートしており、その事で精神的にダメージを受けているらしい。
具体的に言うと、シャワーを浴びているところに乱入されたり、布団の中に潜り込まれたり、
知らぬ間に部屋の至る所に監視カメラを仕掛けられていたり、
風呂上りに着替えようと準備していた服が何故か人肌に温められていたり、という事が起きている。
「まァ結標と番外個体の仕業なンだが……超電磁砲も最近なンか目付き怖ェし……」
「うわぁ……」
一通りの説明を終え、ハァ、と物憂げな溜息を吐く一方通行に、垣根はただただ絶句した。
ストーカーが彼の家に住み付いているのは知っていたが、
まさかこれ程の被害を受けていたというのは流石に予想外だったようだ。
「……オマエ、その状況下でよく間違いを犯さねぇな」
しばしの沈黙の後、垣根はポツリと感想を漏らす。
一方通行のストーカー連中はどういうわけか揃いも揃って見てくれは良い。
性格には難があり過ぎるかも知れないが、それでも一般的に見て美少女と言って差し支えない女性が
シャワーに乱入してきたり布団に潜り込んで来れば、その場のノリで襲い掛かってしまいそうなモノである。
しかし一方通行は今日に至るまで自身の童貞を守り通してきている。その精神力は尋常ではない。
「俺は既にアイツらを女として見ちゃいねェからな」
「……問題発言にも程があるぞオマエ」
垣根は頭を抱えつつ、信じがたい問題発言をサラリと放った一方通行を呆れ顔で見つめる。
好みから外れているとは言え、あれ程の美少女達と同棲しておきながら手を出さないどころか
「女として見ていない」と言い放てるのはこの男くらいなものだろう。
垣根が同じ状況に陥った場合、三日と持ちはすまい。
それだけ一方通行の『運命の相手に童貞を捧げる』という情熱と決意は凄まじいという事だ。
流石は第一位、ろくなもんじゃない。
「で、なンとかアイツらにストーカーやめさせる方法ねェかな?」
「って言われてもなぁ、そんなもんあっさり見つかるならとっくに実行してんだろ」
垣根の言うとおり、真っ当な方法でストーキングを止めさせる方法などまずあるまい。
まずストーカー達というのが学園都市でも有数の高位能力者ばかりなのだ。
最強の電撃使い、学園都市第三位の御坂美琴を筆頭に、レベル5クラスの空間移動能力を保有する結標淡希、
御坂のクローン体であるレベル4の電撃使い番外個体、
更に最近では学園都市最高の精神系能力を持つ第五位、食蜂操祈も参加しそうな気配がある。
そんな能力を持つ彼女達だから、当然家から閉め出そうとしても意味は無い。
皆思い思いの方法で鍵をこじ開けて侵入してくるのだ。
個別に対応しようにも、御坂にはワケあってあまり強気な態度に出れないし、そもそも彼女は話を全く聞かない。
結標は殴っても蹴っても埋めてもいつの間にか回復しているし、これまた何を言おうと聞き入れず、
それどころかどんな言葉もポジティブな意味に脳内変換されてしまう。
番外個体に至っては放っておくと何をするかわからない、危険すぎる。
つまり一方通行の説得や干渉によってストーキングを止めさせるのは不可能だという事だ。
「こっちからアイツらに何をやっても無駄。ようするに、あっちから
自発的に『もうストーカーやめる』と思ってもらわなきゃならねぇわけだ」
「ま、そォいう事だなァ」
「無理じゃねぇ?アイツらオマエにベタ惚れだし」
「なンとかならねェか……一人で性欲処理する暇すらねェンだぞ?」
「うーん……」
真剣に悩む素振りを見せる垣根だったが、その思考は既に「どう考えても無理だろ」という諦めの境地に達していた。
話を聞かない相手、殴っても蹴っても堪えない相手、ほっとくと危険な相手、
そんな三人を相手にどうやってストーカーを諦めさせようというのか。
とは言え、ここは友人として何か一つくらい案を出さねばなるまい。しかし一体どうすれば……
「……そうだ」
「あァ?」
思案に暮れていた垣根に、一つの天啓の如き妙案が思い浮かぶ。
これが上手くいけばヤツらのストーキング理由を根底から覆す事が出来るかもしれない。
なおかつ自分も楽しめる、実に愉快で素敵な案だ。
「一方通行、一個だけ思いついたぞ!」
「おォ、聞かせてくれ」
「女装しろ」
「……はァ?」
ドヤ顔で案を披露する垣根に対し、一方通行は大口を開け、心底ワケがわからないと言いたげな顔をする。
そりゃそうだ、女装とストーカー対策と、一体何の関係があるというのか。
「まぁそんな顔せずに聞けよ一方通行。ただの女装じゃねぇ、女になり切るんだよ」
「意味がわからねェ……オマエやっぱそォいう趣味が……」
「違うっての!いいか、アイツらがオマエをストーキングする理由は何だ!?
オマエを男として見てるからだろう!?オマエに抱かれたいと思ってるからだろう!!?」
「声がでけェ……まァ、超電磁砲以外はそォなンだろォな」
「だったら簡単だ、オマエが女になりゃあいい」
「な、なンだと……」
「別に性転換しろってわけじゃねぇ。ただ、完璧な女装をして、
アイツらにオマエは女だって思いこませる事が出来れば……」
「……アイツらが女の俺をストーキングする理由はねェ、
俺が女なら妹達をどォこォする危険もねェから超電磁砲が俺を監視する理由もなくなる……
俺は、解放されるのか」
「そういう事だ」
「すげェ案じゃねェか!感謝するぜ垣根くゥン!!」
一方通行は身を乗り出し、嬉しそうに垣根の手を取る。
垣根は笑いを堪えながら「良いって事よ」と一方通行を宥めた。
本当の事を言うと、垣根はこの案がそれほど上手くいくとは思っていない。
万が一にも、少しでもストーカーが離れてくれれば万々歳だなぁ、程度だ。
いくら一方通行が女性と見紛うほど端正な顔つきをしており、
男とは思えないほど華奢な身体つきをしているといっても、
冷静に考えて、女装した程度であの目の肥えたストーカーどもを騙すことは出来まい。
ていうかシャワーにまで乱入されたんだから男って知られてるに決まってんだろ。
では何故このような案を出し、一方通行をノせたのか。答えは一つ、
以前のクイズの際、結局見ることの出来なかった彼の女装姿をこの機に見てやろう、と言う算段があったからである。
再三にわたって言って来たが、垣根にそっち系の趣味は無い。彼は生粋の女好きだ。
だからこれは、彼のちょっとした悪戯心だと言える。仲の良い友人への、ほんのちょっとしたからかいなのだ。
「よォし、じゃァ適当に女装に必要そォなモン買って俺ン家に行くかァ」
「オマエの家って……大丈夫なのか?」
「問題ねェ、超電磁砲と絹旗は学校、番外個体は今日一日研究所で調整、
結標は縛って埋めたから夜までは出てこれねェはずだ」
「そうか、それならオマエの家でも良さそうだな」
「てなわけで行くかァ。おっと、ここは俺が奢ってやンよ」
「あ、あぁ」
女装の先に未来があると信じきっているらしい一方通行の笑顔に、
今更ながら罪悪感を覚える垣根であった。
―――――――――――――――
―――――――――
――――
「結構買ったなァ、これで女装の準備は万端ってか?」
「二人連れの男が女物の服やアクセサリ買い漁るって、どんな風に映ったんだろうなぁ……」
大量の衣類や装飾品を買い、一方通行の家へと向かう道すがら、
何か大切なモノを失くしてしまった気がしてならない垣根は顔を顰めつつ項垂れていた。
対する一方通行は、そんなもの些細な問題だ、と言わんばかりの晴れやかな表情をしている。
ギャルゲーを買うことすら恥ずかしくて躊躇していた男が、大した成長っぷりである。
「大事の前の小事ってなァ。よォやくストーカーから開放されるかもって時に、そンな小せェ事気にしてられねェよ」
「買い物はオマエ一人に任せりゃよかったよ……」
と言いつつ、ちゃっかり一方通行に着せてみたい服をいくつか購入している垣根であった。
こうなったら失ったモノの分、一方通行を散々からかって遊んでやろう、と彼は密かに心に誓う。
「……おい、何だこりゃ」
「ン?あァ……」
他愛ない話をしながら一方通行の家に辿り着いた二人だったが、
玄関先に転がっているある物体を見つけた彼らは思わず動きを止め、絶句する。
彼らには急ぐ理由がある。ストーカー達が戻ってくる前に、速やかに事を成さねばならない。
しかし、どうしても玄関先に転がっているその物体を無視する気にはなれなかった。
一方通行の家の前に転がり、蠢いている物体、その正体は――
「もご、もごもご……むぐ……」
「……」
凶悪犯罪者が着るような対能力者用の拘束衣を着せられた上、厳重に手足を縛られ、
口に猿轡を噛まされた挙句目隠しまでされた状態で横になり、ビタンビタンとのた打ち回っている結標の姿であった。
「あっちゃァ、もォ土ン中から出てきたのかァ……」
「この状態で埋めてたのかよ……」
予想以上の結標の厳重な封印っぷりに、「縛って埋めた」としか聞いていなかった垣根は
呆れ顔で一方通行の方へ向き直る。
彼はそんな垣根の視線など気に留めず、参ったな、などと言いながら、がりがりと頭を掻いていた。
一方通行の声が聞こえたのか、雁字搦めの結標は一層激しく、まるで陸に打ち上げられた活きの良い魚のように
ビッタンビッタンと激しく跳ね回る。何ともホラーな光景である。
「……とりあえず、もっかい埋めるかァ」
「しょうがねぇな……」
「もご!?むぐぐー!!」
悲痛な叫び声を上げながら、縛られた結標は再び土の中へ帰って行く。
彼女をその叫び声が聞こえなくなる程度の深さまで埋めると、二人はパンとハイタッチを交わし、
満足気な表情を浮かべながら家の中へと入って行った。
「さて、予想以上に結標の復帰が早ェからな、急いで女装しねェと……」
「だな。さて……」
「……」
「……?」
「……女装ってどォやンだ?」
「俺が知るはずねぇだろ」
さぁ始めよう、と言うところで速攻躓く馬鹿二人であった。
そりゃ普通の男は女装の正しいやり方なんぞ知らんよ。
「……と、とりあえず女物の服着てみりゃいいんじゃねぇか?」
「あ、あァそォだな……色々買ったからなァ、どれにすっか」
時間も限られているので、二人はとりあえず服を選ぶ事から始める。
彼らにとって幸いだったのは、今まさに女装をしようとしている一方通行が、
ホルモンバランスが狂いまくっているお陰で、化粧などを施さなくても女に見えるほど中性的な顔立ちをしていた事、
そしてその為体毛が薄く、無駄毛の処理をする必要が一切無い事である。
本来、女装前にこれらを無視すると、出来上がりがとんでもない事になってしまうので注意が必要だ。
「とりあえず分かりやすく女だってアピールする為にもスカートは外せないよな」
「げ、マジかよ……スカートかァ……」
「何だ、今更怖気づいたか?」
「ハッ、ナメてンじゃねェぞ!やってやろォじゃねェか!!」
全くノせやすいヤツだ、と密かにほくそ笑みながら、垣根は買い物袋をごそごそと漁る。
こんな機会は後にも先にも今だけだろう、さてどんな格好をさせてからかってやろうか……
この時垣根は、自分より序列が上の唯一の存在を、学園都市の第一位、一方通行を
思う存分着せ替え人形にして遊べるという事に、奇妙な高揚感を覚えていた。
「よし、とりあえずこれなんてどうだ?」
「あァ?そいつは……」
「チャイナドレスだ」
「……」
「どうよ?モノトーンに花柄、結構いいと思わn」
「馬鹿かオマエはァァァァ!!!」
「ぶほぁ!!?」
ドヤ顔でチャイナドレスを広げる垣根の顔面を、一方通行は躊躇無く能力を行使してブン殴る。
ほとんど手加減無しに放たれた一方通行の一撃は、垣根の未元物質による防御を貫き、
結果、垣根はきりもみ回転しながら宙を舞い、顔面から床に落下した。
その手に血濡れになったチャイナドレスを握り締めたまま。
「ぐふ……て、テメエ、今の俺じゃなきゃ、死んでるぞ……」
「大丈夫だ、結標も生きてる」
「どんだけだよ、あの変態女……じゃなくて!何で殴られたんだよ俺!?」
血を拭いながら起き上がった垣根はいきなり殴られたことに対し抗議する。
一方通行はそんな彼を、心の底から哀れむような視線で、思いっきり見下した。
そりゃぁ、いくら女装する流れだとは言え、いきなりチャイナドレスなんぞ勧めたら殴られても仕方が無い。
身体のラインがはっきりと出る上に露出度も高めなチャイナドレスは女装で着こなすには難易度が高いのだ。
「このバ垣根が!オマエはチャイナドレスをなンだと思ってやがる!?」
「はぁ?何言って……」
「チャイナドレスの魅力はなンだ!?それはスリットから覗く脚!強調されたボディライン、胸!!
そして露出度の高い服を着ているが故に意識してしまう背徳感と高揚感の間で揺れる上気した表情!!わかるか!?」
「いや最後はちょっとわかんねぇ……」
「チッ、素人が……まァとにかくだ、チャイナドレスを活かすには成熟した女の身体が必要なンだ
枯木みてェに細い身体つきした俺が着てもみすぼらしいだけなンだよ」
「……なるほどテメエの言い分は良くわかる。確かにスタイルのいい女のチャイナドレス姿はすげぇ破壊力だ
だがなぁ……スレンダーな女が着るチャイナドレスにも魅力はあんだよ!!!」
「ンだとォ!?」
「細い手足?薄い胸?結構じゃねぇか!!露出度が高くボディラインがはっきり出るが故に
強調されてしまう未成熟な身体!!コンプレックスを刺激され恥じらう表情!!最高だろうが!!!」
「……どォやら俺とオマエは相容れない存在のようだなァ」
「ハッ、結局はこうなる運命か……いいぜ、これ以上言葉はいらねぇな
続きは拳に語らせようじゃねぇか!!!」
「垣根ェェェェェ!!!!」
「来いよ、一方通行ァァァァァ!!!!」
両雄、激突。
この上なくショボい対立理由で、二人の男は再びぶつかり合う。
彼らは叫び声を上げながら部屋から飛び出すと、学園都市の遥か上空でド派手な空中戦を繰り広げ始めた。
―――――――――――――――
―――――――――
――――
「ハァ、ハァ……おいストップだ、これ以上やったらまァたあたり一面吹っ飛ンじまう」
「あ、あぁ……だな、ぶっちゃけもうチャイナドレスとかどうでもいい……
そもそも俺はスレンダーな女もグラマーな女も両方好きだしな……」
「なンであンなに熱くなってたンだろォな……」
「チャイナドレスの魔力だろ……」
暴れまわって頭が冷えた馬鹿二人はようやく戦闘を終了し、部屋に戻る。
馬鹿な事をしていたせいで時間をかなり無駄に浪費してしまった。早急に女装を進めねばなるまい。
「で、服だが……身体のラインがハッキリ出たり露出度があンまり高ェのはNGだ」
「まぁ男だって事隠すんだからゆったりとした服で骨格とか胸を誤魔化す方向で行くべきだよな」
「……そンだけわかってて、オマエはなンでチャイナドレス勧めてきたンだ」
「軽い冗談だったのにオマエがいきなりマジギレしやがったんだよ!」
「重てェよ馬鹿!」
アレでもないコレでもない、と文句を言い合いながら二人は買ってきた服を吟味する。
途中、メイド服を勧めた垣根が喉に貫手をぶち込まれ悶絶するというハプニングが発生したが、
何はともあれ、二人は順調に候補を絞り込んでいった。
「ン、結構絞れてきたなァ……さて、どれにするか」
「セーラー服にしようぜセーラー服、これ意外と胸とか誤魔化せるし、わかりやすい女物だしな」
「あァ?……まァ候補に残ってるモンだし別に悪かねェが、なンでそンなに必死に勧めてきてンだよ」
「何となくだがオマエには絶対に似合うって確信めいた予感がすんだよ」
「よくわかンねェが……まァこれ以上は時間がもったいねェし、セーラー服にしとくかァ」
服装決定。垣根に手渡されたセーラー服を広げつつ、一方通行は微妙な顔で頷く。
何の変哲も無い、非常にシンプルなセーラー服だ。白地に濃紺色の大きな襟、赤いスカーフ。
長すぎず短すぎない濃紺のスカートに、ご丁寧に紺の靴下まで付属している。
コスプレ用の衣装である為、ちょっと狙い過ぎている感は拭えないが、
女らしさをアピールする、というか女を騙るのならむしろこの位あざとい服の方が適任かもしれない。
「こ、コイツを着るのか……」
「やめとくか?」
「……」
「まぁオマエがストーキング被害を受け続けてもいいってんならやめても……」
「着るよ、着てやンよクソが!!オラ垣根、着替えるからちょっと部屋から出てけ!!」
「あぁ?何でだよめんどくせぇ、別にいいだろ男同士なんだし」
「気分の問題だ気分の!!さっさと出ろ!!!」
「チッ……ったく、わかったよ。着替え終わったら呼べよ?」
「おォ……」
物凄い剣幕で部屋から追い出された垣根は、やれやれと溜息を吐きながら適当に腰を下ろす。
彼はしばしの間、そのままぼんやりと無言で待っていたが、その表情は徐々に歪んで行き、
ついには俯き、クククとくぐもった笑い声を漏らし始めた。
あの一方通行が、学園都市の第一位が、最強の能力者が、今、扉の向こうでセーラー服に着替えようとしている。
その事実が面白くて仕方が無い。これが笑わずにいられるものか。
着替え終わったアイツに何と声をかけてやろう、思いっきり笑い飛ばしてやろうか
声を殺しつつ、垣根はひたすらニヤニヤと笑い続ける。
「……おい、入ってきていいぞ」
「お、おぉ」
入室の許可が出る。どうやら着替えは終わったようだ。
噴き出しそうになるのをなんとか耐え、垣根は気を落ち着ける為に一度、大きく深呼吸をする。
さて、一方通行は一体全体どんな様に成り果てているのやら……
期待に胸を膨らませ、垣根は一気に扉を開いた。
「よ、よォ、どォだ……?」
勢いよく開かれた扉の先に、それはいた。
中性的に整った端正な目鼻立ちに神秘的な純白の頭髪、同じく真っ白な汚れを知らぬ肌、
恥じらっているのか昂ぶっているのか、その頬は朱にそまっており、
燃えるように紅い瞳は不安と羞恥の為うっすらと涙を湛えている。
その『男』が身に着けているのはシンプルで清楚なセーラー服。
コスプレ用品特有のあざとさ漂う一品だったはずのそれが、彼の幻想的な風貌と合わさることで
全く違和感の無いモノになっている。
(に、似合いすぎて笑えねぇ……)
羞恥に震えるセーラー服姿の一方通行を前に、垣根はタラリと一筋の冷や汗を流す。
女装した一方通行を思いっきり笑い飛ばし、一頻りからかってやるつもりだった。
しかしそんなことは出来ない、出来ようはずもない。それほど似合っている、ハマッている。
一方通行とセーラー服の親睦性は垣根の予想を遥かに超越していた。
(てかコイツ、こんなに艶っぽかったっけ……?)
「お、おい黙ってねェでなンとか言いやがれ!」
無言でガン見してくる垣根を不審に思った一方通行が大声を張り上げる。
その声で道を踏み外しかけていた垣根は何とか我に返り、慌てふためきながら一方通行から視線を外すと、
何度か深呼吸を繰り返し、平常心を取り戻そうと努めた。
(落ち着け、一方通行だ、これは一方通行だ……よし、大丈夫、大丈夫だ……)
「おい垣根?」
「あ、あぁ何でもねぇ。すげぇわオマエ、ただセーラー服着ただけなのに女にしか見えねぇよ」
「……ンな事言われても嬉しくねェどころかむしろ凹むわ」
ハァ、と溜息を吐き項垂れる一方通行を、垣根は改めてまじまじと見つめる。
柔らかそうな真っ白い髪、染み一つ無い不自然なほど綺麗な肌、整った顔立ち
そしてやけに似合うセーラー服。もはや男には見えない。
服装だけでここまで印象が変わるのか、と垣根は大口を開け、感心とも呆れとも取れない表情を作った。
「まぁ……ストーカーどもにオマエを女だって思いこませるのが目的なんだから似合ってるに越した事はねぇだろ」
「そォかもしれねェが、セーラー服が似合ってるなンて複雑な心境だぜ」
「次は……声だな」
「声かァ」
さて、完璧な女装をする上での大きな壁となるのが声の問題だ。
わかっているだろうが、これはただ裏声や高い声を出せば良いというモノではない。根本から変えていく必要がある。
タマを抜けば声も女性的になるらしいが、流石にそれは性転換のレベルなので考えないものとする。
男が女っぽい声を出そうとする場合、長期に渡るボイストレーニングと情熱が必要なのだが、
こと、一方通行に関してはそんなものは全く必要ない。
彼の能力によって少々声帯を弄れば、それだけで自由自在に声質を変更する事が可能なのだ。
「あー、あー、アー、ア―、あー……こンなモンでどォだ?」
「んー、今のオマエの外見と合わせるならもうちょい高い感じの方が自然だし、俺好みかな」
「オマエの好みは聞いてねェ」
垣根の意見を参考にしつつベクトル操作で声帯を弄り、声質を微調整していく。
一方通行にしか出来ない、一方通行だからこそ出来る、究極のチートボイスチェンジである。
「あー、ンー、こンな感じ?」
「おう……い、いいんじゃねぇか?」
しばらくの練習の後、一方通行は完璧な萌えボイスを手に入れる事に成功する。
服を着替え声を変えただけなのだが、たったそれだけで彼はほぼ完璧に女性になりきっていた。
女好きの垣根がその透き通るような声に耳を、その神秘的な容姿に目を奪われ、言葉に詰まる程に。
女性にしては身長が高めなのを除けば、今の一方通行は何処からどう見てもセーラー服に身を包んだアルビノ美少女である。
これ以降、諸兄らには一方通行のセリフを全て美少女ボイスで脳内再生していただきたい。
「さァて、次はなンだ?やっぱ喋り方か?女っぽい口調の練習とかか?」
「……確かにオマエの喋り方は荒っぽすぎるが……それはそれでアリだと思うね、俺は!」
「そォか?ンじゃ次はどォする?」
「もう十分女に見えるっつーか女にしか見えねぇが……そうだな、髪飾りでもつけてみるか?」
言いつつ、垣根はゴソゴソと買い物袋を探り始める。
大量に購入したアクセサリ類のほとんどは、垣根が一方通行をからかう為に適当に買ったもので、
ようするに初春さんとかそういうゲテモノな髪飾りなどが大半を占めている。
とはいえ、そんな冗談のようなアクセサリを差し出すことは垣根には出来なかった。
何故かはわからないが、今の一方通行をそんな風に汚してしまう気にはどうしてもなれなかったのだ。
「これなんて、どうだ?」
「ン」
故に垣根は、本気で、それこそ意中の女性に贈り物をするような真剣さで吟味し、そして一つの髪飾りを選び出す。
からかう気はない、笑うつもりもない。ただ純粋に、その髪飾りが似合いそうだからそれを選んだのだ。
垣根に差し出されたその髪飾り、自己主張の激しすぎない、一輪の花を模したそれを、
一方通行は特に疑問に思うことなく受け取り、その顔に若干の恥じらいを浮かべながら髪に装着した。
「ど、どォよ?」
「あぁ……良く似合ってるぜ」
「だから似合ってても嬉しくねェって」
「じゃあ何て答えりゃいいんだよ!?似合ってるモンは似合ってんだよ!!」
「え、あ、そ、そォか……」
突如真剣な表情で声を張り上げた垣根に、一方通行はビクリと驚き、一歩後ずさる。
何故彼がこんなにマジになっているのか、一方通行にはさっぱり理解出来ないし、
当の垣根本人にも理解出来ていなかった。
「あー……で、どォすっか」
「ん、もうそれ以上はいいんじゃねぇか?下手に飾りすぎても逆効果だろ」
「そンなモンか」
今ここに、一方通行の女装は完了した。改めて今の彼の姿をおさらいしてみよう。
男とは思えない華奢な体格、きめ細かく病的なまでに真っ白い肌。
柔らかな白銀の頭髪には一輪の花飾りが添えられており、目鼻立ちの整った端整な顔の中で、瞳だけが燃えるように紅い。
身に纏っているのはシンプルな、しかしどこかあざとさを感じるコスプレ用の白と濃紺のセーラー服だが
神秘的、幻想的なアルビノ風の風貌を持つ彼には、その狙ったようなあざとさが逆にマッチしている。
そして彼の口から溢れるのは、保護欲を掻き立てる透き通るような甘い美声。
美少女(仮)戦士百合子ちゃんの誕生である。
「おい一方通行、感想はどうだ?」
「すっげェ恥ずかしいンですけどォ……ちょっとスカートって頼りなさ過ぎじゃねェ?
なンで女どもはこンなヒラヒラしたモンを平気な顔で履いてられるンだ?」
履いた事のある男ならわかるだろうが、スカートというのは本当に頼りない。
なにこれ下着守る気あんの?女って皆痴女なんじゃね?と思ってしまうほどに。
いやまぁ、聞いた話だから正確な所は私も知らんがね。何か頼りないらしいよ?
何にせよ、スカートの頼りなさに顔を赤らめモジモジとしている今の一方通行改め百合子ちゃんは大層可愛らしいのです。
「こ、この格好でストーカーどもの前に出ンのか……」
「やっぱやめとくか?」
「馬鹿、こ、ここまで来たらやるしかねェだろ!」
「……ちょっともう一回『馬鹿』って言ってみて、拗ねる様な感じで」
「何言ってンだオマエ!?」
「たっだいまー」
「っと、誰か帰って来たみたいだな」
「この声……超電磁砲か」
「一方通行、覚悟はいいか?……っと、俺は隠れてた方がいいかもな」
「ン、お、おォ……」
垣根の冗談とも本気ともつかない発言に動転している間に、とうとう最初の一人が帰って来たようだ。
垣根が女装の為に購入したモノを持って奥の方へ身を隠すのを確認すると、
一方通行は緊張した面持ちでその時が来るのを待ち構える。
(……今更だが俺、とンでもなく馬鹿な事やってンじゃねェ?)
近寄ってくる足音を聞きながら、本当に今更冷静になって自分の行動のおかしさに気付く一方通行であった。
しかしもう遅い。もはや着替える時間などありはしない。
今から彼に出来るのはストーカーが目の前に現れるのを黙って待つ事だけである。
「ちょっと一方通行、玄関先にこんな状態の結標さん置いとかないでよ、怖いじゃない」
ぶつぶつと文句を言いながら、未だ拘束状態の結標を担いだ御坂は一方通行達の元へ向かう。
埋めたはずの結標がどうやらまた玄関先まで戻ってきていたようだ。ホントに何なんだアンタ。
「一方通行、いるんでしょ?返事くらい………」
ご対面。
セーラー服姿の一方通行が視界に入った瞬間、御坂は絶句した様子で目を見開き、担いでいた結標を床に落とす。
一方通行と御坂、二人の間に気まずい空気が流れ、両者とも口を開けないでいた。
ただ、床に転がされた結標の、状況を掴めずにもごもごと言いながら蠢く音だけが室内に響く。
「あ、一方、通行……よね?」
長い沈黙の後、最初に言葉を搾り出したのは御坂だった。
彼女はただその光景に驚愕し、二歩三歩と後ずさりながら、目の前のセーラー服を着た人物に問いかける。
彼女の頭の中は絶賛混乱中である。今まで男だと思っていた相手が、何故かセーラー服を身に付け
更に髪飾りまでしているではないか。その様が滑稽なら、似合わないのなら
「何を馬鹿な格好をしているんだ」と笑い飛ばす事も出来ただろう。
「女装なんて馬鹿じゃないのか」と冷めた目で罵倒する事も出来ただろう。
しかし、彼女はそのどちらも実行出来ないでいる。
一方通行は男のはず、男に決まっている、男だと思って接してきた、男でなければならない、
頭でどれ程そう思っても、今目の前にいる彼は、何処から見ても完璧に一人の少女にしか見えなかった。
「う、嘘、あんた、まさか女だったの!?」
自分がずっと勘違いしていただけで、一方通行は実は女だったのではないか、
混乱した御坂の導き出した結論はそれだった。
その言葉に、反応に、一方通行は女装作戦の成功を確信し、ニッと満足気に口元を歪める。
そう、この御坂の反応こそまさに彼の望んだ、否、望んでいた以上のモノだ。
ここで女性である事を肯定すれば御坂はそれを信じるだろう。そうすれば彼女が一方通行を監視する理由はなくなる。
一人でもストーカーを減らせるのなら、こんな恥ずかしくて死にそうな格好をした甲斐もあったというものだ。
「答えなさいよ、あんた女なの!?」
「……バレちまっちゃァしょうがねェな、ずっと隠してたが実はそォなンだよ」
「そ、そんな、声まで女の子みたいに……」
少女のような甘い美声で女である事を肯定する一方通行を前にし、御坂はただひたすら呆然とする。
レベル5の第三位である御坂にとって、彼女より上位の、第一位の一方通行は、
彼女がわがままを言える、自分の弱さを曝け出せる唯一の相手だったと言っても過言ではない。
それ故、本人は中々認めたがらないが、彼女は明確に一方通行に対して恋心を抱いていた。
だがその想いは、全く予想だにしない形で粉砕される事となってしまう。
一体誰がこんな悲劇的な結末を想像していただろうか。
「嘘、嘘……」
(効いてる、完全に信じ込ンでる、いけるぜコイツは!!)
俯き、ふるふると首を横に振るう御坂を眺めつつ、一方通行は内心でガッツポーズを決める。
これで御坂にはもう彼を監視する理由など残っていない。
何だか予想以上にショックを受けているのが気になるが、とにかくこれでストーカーは一人減った。
一方通行は勝利の余韻に浸りながら、悠々と未だ混乱している御坂に向かって声をかける。
「なァ超電磁砲、見ての通り俺は女だ。わかったろ?もォオマエが俺を監視する理由なンてどこにも……」
「だから……」
「あ?」
「だから何よ!?女だからって何の関係があるわけ!!?」
「はァァ!!?」
勢い良く顔を顔を上げた御坂は、迷いの無い瞳でキッと一方通行の顔を正面から睨みつける。
女だからといって一方通行が他の何かになるわけではない。ならばそれは些細な問題だ。
そう、彼女が一方通行に惹かれた事に性別は関係ないのだ。
女同士だからといって想いを貫いてはいけない、などと誰が決めたというのか。
少しばかりの混乱はあったが、彼女はもう、迷わない。
「そうよ、女だからって、それは何の理由にも……」
「お、おい待てよ、俺が女だって事はつまり、俺が童貞を捨てる恐れはもォねェって事だぞ?
これ以上オマエが俺を監視する理由なンざ存在しねェだろォが!!」
「そんなの知らないわよ!!私はあんたの監視をするって決めたんだから!!!」
「何でだよォォォォ!!!!」
今度は一方通行が混乱する番だった。上手く行きかけていた、後一歩だった、なのに、何だこの状況は!?
一方通行には御坂の考えが全くわからなかった。監視する理由も無いのに監視する、一体何故なのか。
まさか御坂に好意を持たれているとは露ほどにも思っていない彼には、その理由がわからない。
「そ、それよりあんた、そういう服着てると可愛いわね……」
「は!?」
「ちょ、ちょっと撫でたりしてみていい?女の子同士なんだし、構わないわよね?」
「ほあァァァ!!!?」
一方通行は叫び声を上げ、ジリジリとにじり寄る御坂から距離を取ろうとする。
ストーカーを止めさせるどころか状況は遥かに悪化してしまった。どうしてこんな事に……
怯えた目付きで、すがるように垣根に助けを求めようとする一方通行だったが、
奥に隠れた垣根は無言のまま、何かを期待するような目付きで一方通行と御坂のやり取りを眺めていた。
「く、クソがァァ!!」
「あ、ちょっと待ちなさいよ!!」
垣根からの救助は期待できない、そう判断した一方通行は、御坂の脇をすり抜け、外へ逃げようと試みた。
が――
「うおォ!?」
「もごっ!!?」
不幸にもその辺に転がっていた結標に躓いてしまい、思いっきりすっ転んでしまった。
それを見た御坂はニタリと笑いつつ、ゆっくりと転んだままの一方通行へと近付いていく。
「んふふ、いい格好ね一方通行……」
「お、おい落ち着け超電磁砲!!オマエはそォいうキャラじゃねェはずだろ!?」
「なぁに恥ずかしがってんのよ、女の子同士のスキンシップでは良くある事よ」
「そこで止まれェ!!それ以上近付いて来たらこっちもマジで……」
「もがあああぁぁぁ!!!!」
「な、なンだァ!?」
「何よ今の声!?」
突如、大地を揺るがす唸りような声が割って入り、二人は同時に声の聞こえて来た方を振り向く。
するとそこには、先程一方通行が躓いた影響で目隠しの外れた結標が寝転がったまま、
これ以上無いと言う程大きく目を見開き、女装した一方通行を食い入るように見つめている姿があった。
彼女は一方通行と目が合うと、顔を大きく歪ませ、バキバキバキ、と猿轡を一気に噛み砕いた。
「あっくんの女装姿!!!!」
ようやく自由になった口で、結標は歓喜の声を上げる。
一方通行が入っている風呂場に乱入した事がある彼女は、一方通行が男である事を理解している。
それ故、如何に今現在の彼が少女のような変装をしていようと、彼女は一切ブレる事は無い。
「女装ショタアアアア!!!!」
わけの分からない咆哮を上げつつ、結標は着せられていた対能力者用の拘束衣を内側から引き裂き立ち上がった。
もはや人間の為せる業ではない。一方通行の女装姿を目の当たりにした彼女は、何か色々なものを超越してしまったようだ。
「ば、化物かテメエ!?」
「結標さん落ち着いて!!」
「あっくんがセーラー服着てるのよ!?落ち着いていられるわけないでしょう!!」
前屈みになり、だらりと両腕を垂らす結標のその姿は、さながら暴走する某汎用人型決戦兵器のようであった。
危険度はそれ以上の可能性すらある。
「む、結標さん深呼吸、深呼吸して!」
「そんな事言って、あっくんを独り占めする気なんでしょう!?許さないわよ!!」
このまま結標を暴れさせると滅茶苦茶になってしまう、と、御坂はなんとか彼女を宥めようとするが
既に半分暴走状態の結標は一切聞き入れようとしない。まぁいつも通りといえばいつも通りである。
とは言えこれはチャンスだ。今現在御坂は結標に、結標は御坂に気を取られている。
逃げるなら今しかない。そう判断した一方通行の行動は速かった。
御坂と結標、両者が自分から目を離している僅かの隙を付き、彼は部屋の壁を叩き壊しながら
猛スピードで外へと逃げて行く。のんびり玄関から逃げる時間など存在しなかった。
自分の家が半壊してしまったのは痛手だが、止むを得ない損害だろう。
「あぁもう!御坂さんのせいで逃げられちゃったじゃないの!!あっくん、待ってー!!」
「あ、ちょ、ちょっと!!」
既にゴマ粒ほどの小ささになっている一方通行の後を追って、結標は自身を連続転移させる。
かつて自身の転移に抵抗があった事など、もはや忘却の彼方だ。
半壊した家に一人取り残された御坂は懐から携帯電話を取り出すと、後輩へと電話をかけはじめた。
「あぁもしもし、黒子?うん、ちょっと聞きたい事があってね」
「あのさ……女の子同士ってどういう風にすればいいのかな?あんたならやり方知ってるわよね?」
不穏な会話をしながら、御坂もまた一方通行を追って家を飛び出す。
女装作戦は御坂、結標両名を暴走させると言う最悪に近い結果を招いてしまったようだ。
―――――――――――――――
―――――――――
――――
「ま、撒いたか?……クソったれが」
人気の無い路地裏の物陰に腰を下ろし、一方通行は誰に聞かせるわけでもなく独り毒づく。
女装作戦が効果無しに終わると言う可能性は考慮していた。
しかし、まさかこのような暴走を招くとは夢にも思っていなかったのだ。
「どォすりゃいいンだ、こンな格好のまま外に出てきちまったし……」
「おい、一方通行」
「うお!?」
女装したまま外に出てきた事を恥じらっていた一方通行に唐突に声がかけられる。
前でも後ろでも横でもなく、彼の頭上から。大袈裟に驚き、慌てて見上げてみると、
そこにはバサバサと翼をはためかせ、彼の元へ降下してくる垣根の姿があった。
「オマエかよ、ビビらせンじゃねェ」
「悪ぃ悪ぃ、だがなんとか無事みてぇだな」
「そォでもねェよ……」
垣根の言葉に曖昧に答えつつ、ハァと溜息をつき項垂れる。
逃げるのに全力で能力を行使した一方通行はかなり疲弊しており、額に汗を浮かべている。
そこには冷や汗も混じっているであろう事は想像に難くない。
「その格好で外うろつくのもなんだし、とりえずスクールの隠れ家にでも……」
喋りながら項垂れたままの一方通行に近付いていた垣根だったが、不意にその動きが止まり、言葉も中断される。
彼は目を奪われていた。蹲る一方通行の、その姿に。
激しい能力行使により上気した頬、その頬に汗で張り付いた髪、そしてはだけた服から除く白い鎖骨。
えも言われぬ背徳的なエロティシズムが、今の一方通行からは滲み出していた。
ダメだ、一方通行は男だ、親友だ、仲間だ、妙な考えは捨てろ、俺には麦野が……
一方通行の姿をその目に焼き付けながらも、垣根は必死に己の中に芽生えそうな感情を否定する。
認めてはならない。これを認めてしまえば何かが終わってしまう。
自分の為にも、友人の為にも、この衝動に身を委ねるわけにはいかない。
歯を食い縛り、全力を以って抗う。だが――
「……どォした垣根?」
「あ、あぁ……」
一方通行の潤んだ瞳と少女のような声を前に、垣根の中の何かが音を立てて崩れ去った。
垣根は彼に、友人以上の関係を望みたくなってしまったのだ。
「……なぁ一方通行」
しばしの間の後、垣根は静かに切り出す。
「ン、なンだよ?」
「始めて出会った時の事覚えてるか?」
「はァ?なンだこンな時に……」
唐突に昔語りを始めようとする垣根に対し、一方通行は首を傾げ、再び俯く。
彼はまだ、垣根の心情の変化に気付けてはいなかった。
「まァ覚えてるけどよ……そォいやァ、あン時は下手すりゃ殺し合いになってたな」
「それが今やこんな関係だ。……今にして思えば、あの出会いこそ運命だったんじゃねぇか?」
「……?オマエ、何言って……」
突如『運命』などと口にし始めた垣根の真意が理解出来ず、
彼の方に向き直り問い返そうとした一方通行だったが、その言葉が最後まで続く事は無かった。
息を荒げる垣根に、その血走った目に、言葉を失ってしまったからだ。
ここに至り、一方通行はようやく理解した。垣根は間違いなく、己をそういう対象として見ているという事に。
「か、垣根、冗談だよなァ……?」
「冗談に、見えるか?」
「男だぞ俺はァ!!!」
「そんなもん関係ねぇ!!運命の相手が偶々男だった、それだけの事だ!!!」
「ふ、ふざけンじゃ、ねええェェェェェ!!!!!」
轟!と唸り声を上げ、一方通行の操った暴風が垣根に襲い掛かる。
躊躇なく、手加減なしに、全力で放たれたその風は竜巻の如く渦を巻き、垣根の全身を軽々と飲み込み、
まるでボロ屑のように彼を天高く舞い上げた。常人ならばそれだけで絶命しているだろう。
しかしその男は学園都市の第二位、垣根帝督。
翼を展開した垣根は全くの無傷で竜巻を引き裂くと、ペロリと舌なめずりをし、
一気に一方通行の元へ急降下をする。
「一方通行ァァァァァァ!!!」
「ク、ソ、がァァァァァァ!!!!」
ここで暴れると、御坂や結標にも発見されてしまう恐れがある。
そう判断した一方通行は垣根を迎撃する事を諦め、逃げという選択肢を取る事にする。
地面を殴りつけ、瓦礫と土煙で垣根の目を誤魔化し脱兎の如く駆け出す一方通行。
彼らの友情は、ここに完全な決裂を迎えた。
(垣根の野郎、裏切りやがってェェェェェ!!!!)
後ろを振り返る事もせず、一方通行は全力で走る。
空を飛べばあっという間に見つかってしまうだろう。ならば迷路のような路地裏を無様に這い回るしかない。
垣根が敵に回った以上、事態はかつてないほどに深刻である。
(とにかく逃げねェと……だが何処に……研究所?ダメだ、こンな格好で行けるわけねェ!!
どォすりゃいい?考えろ、どォすりゃ……)
考え事をしていた一方通行は失念していた。
いくら路地裏に人通りが少ないと言っても、完全にゼロではないという事を。
それ故彼は気付けなかった。自らの進路上に、一人の男が背を向けて立っているという事に。
一方通行がその存在をようやく知覚したのは、その男の背後から思いっきりタックルをぶちかました後だった。
「ごほああぁぁぁ!!?」
「あァッ!!?」
悲鳴を上げつつ、男は派手にぶっ飛んでいく。
当然である、一方通行は音速を超える速度で突っ走っていたのだ。
おまけに反射の膜もあり、普通なら一方通行にも分散されるはずの衝撃力が
全てぶつかった男に叩きつけられたのだから、その威力は計り知れない。
常人ならずとも、それこそ学園都市トップクラスの耐久力でも持っていない限りは間違いなく挽肉コースだろう。
「やっちまったァ……」
「うおおぉ!!痛ええええ!!!」
「な!?」
足を止め、自分のやらかしてしまった事に頭を抱えていた一方通行だったが、次の瞬間、彼は己が目を疑う事になった。
タックルを喰らい、建造物に突っ込んでいった男が、「痛い」と叫びながらもほとんど無傷で這い出してきたのだ。
あの一撃を喰らってすぐに動けるばかりか大声を上げる余裕すらあるとは、どう見積もってもマトモではない。
「どこのどいつだ!?不意打ちなんて根性のねぇ真似しやがったのは!!」
「……なンで平気なンだオマエ?」
「ん……?まさか、あんたかお嬢ちゃん」
時代錯誤も甚だしい白ランを身に付けたその男は、声を張り上げながら
己に不意打ちをくれた相手を探していたが、その場に一方通行以外の人間がいない事を悟ると
目を丸くし、驚愕の表情を作った。それもそのはず、今の一方通行は可憐な美少女にしか見えないのだから。
「一体何の真似だ?俺に何か恨みでもあったのか?」
「いや、前方不注意でぶつかっちまったンだ、すまねェな」
「なっ、ただぶつかっただけであの威力か!!大した根性だなお嬢ちゃん!!」
根性に何の関係があるのかはわからないが、とにかく男は無事らしい。
ならばこれ以上ここで時間を費やすわけにはいかない。
「で、悪ィが急いでンだ、詫びはそのうちすっからとにかく行かせてもらうぞ」
「あ、おいちょっと待てお嬢ちゃん!!……速ぇな、本当に大した根性だ」
「……それにしても、可愛らしいお嬢ちゃんだったな」
超スピードで走り去る一方通行を、男は心の底から感心した表情で見送ると、
ぽつりと独り言を零した。これまで彼は女と言うものを意識した事がなかった。
女に現を抜かす男など根性なしのヘタレだと心のどこかで考えていた節さえある。
しかしこの時、彼は一目見ただけのあの少女(仮)に、
不意をつかれたとは言え自分を一撃で吹き飛ばしたあの根性に、心奪われてしまっていた。
一目惚れ、初恋、そう言っても間違いではないだろう。
「……だが、女の尻を追うなんざ根性無しのする事だ!」
彼の価値観の根底には根性があるか無いかが大きく関わっている。
無様に女の尻を追い掛け回すなど、彼の根性が許さないのだ。故に彼は去るものを追うことはない。
「またいつか会えるといいな」程度に考え、踵を返し帰途につこうとする。
「ん?これは……」
と、彼は足元に何かが落ちているのに気付く。
拾い上げてみると、どうやらそれは花を模した髪飾りのようだ。
彼はそんなものを身に付ける趣味はないし、辺りに他に人はいない。
となれば、その髪飾りは先程の少女(仮)が落としていったものに違いはあるまい。
「仕方がねぇな」
髪飾りを握り締め、男はやれやれと溜息を吐く。
「これはあのお嬢ちゃんに落し物を届ける為だ。決して女の尻を追い掛け回すわけじゃねぇ!!」
誰に聞かせるでもなく言い訳をし、男は一方通行の走り去って行った方向に向かって、
彼と同等以上のスピードで走り出す。
レベル5の第七位、削板軍覇。世界最大の『原石』と呼ばれ、
正体不明、解析不能、しかし絶大な能力を持つ男。学園都市の暴走核弾頭、ここに参戦
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「見つけたわよ一方通行!!」
「あっくん見つけた!!」
「いたなぁ、一方通行!」
「また会えたな、お嬢ちゃん!!」
「……」
第二位、垣根帝督。第三位、御坂美琴。第七位、削板軍覇。レベル5クラス、結標淡希。
それぞれが一騎当千の力を持つ、学園都市でも指折りの高位能力者達はついに一堂に会し、
第一位、一方通行を追い詰めていた。
だが一方通行は慌てるでもなく、逃げる素振りも見せず、無言で、無表情で、そこに佇んでいる。
諦めたのだろうか?否、違う。
「なァオマエら、ここが何処か分かるかァ?」
一方通行の言葉に、一同は首を傾げる。
彼らは皆、がむしゃらに一方通行を追いかけていただけであり、
今いる場所が何処なのか、何なのか、まるで知らないでいたのだ。
「ここはよォ、本来、絶対能力進化が最初に行われるはずだった場所なンだ」
人里離れた場所にポツンと存在する、だだっ広い開けた空間。外部の人間の干渉などまず有り得ないだろう。
なるほど非道な戦闘実験を行うにはうってつけの場所だというわけだ。
だがそれがどうしたと言うのか?四人はイマイチ一方通行の言わんとしている事が汲み取れない。
「つまりだ、泣いても叫ンでも誰も助けにこねェ!!逃げる場所も隠れる隙間もねェって事だァ!!!」
一方通行の身体がふわりと浮かび上がる。
「俺も覚悟が決まったンだよ……テメエら全員、ここでぶっ潰す!!!」
声を張り上げると同時に、彼の背から真っ黒な翼が放射され、世界を黒く染め上げていく。
ここで潰すという言葉に偽りは無いのだろう。一方通行から四人に向かって明確な敵意が放たれ
そのあまりに強大な力に空間すらも歪み、捻じ曲がっていく。
そんな、限界を超えようとしている一方通行を前に、四人の能力者達は――
(服がはだけてる!!)
(スカートの中見えそう!!!)
(へそが見えた!!)
(何て根性だ!堪らねぇ!!)
命の危機など全く顧みず、ひたすら悶えていた。こいつらもある意味超越している。
「oaiqmvぶっ飛べavphjfgカスどもpheqがァァァayebisjg!!!」
ノイズ交じりの絶叫と共に、四人に向かって漆黒の翼が振るわれた。
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――――
―後日
「はァ……」
「おい一方通行出て来いって!!俺らが悪かったから!!」
「うるせェ!!俺の心の傷がそンな簡単に癒えると思ってンのかァ!?」
あの日、全てをなぎ払った一方通行は家に帰ると、壊れた壁や屋根を直そうともせず
黙って部屋に引き篭もり始めた。友情を裏切られ、妹達との約束も反故にしてしまった彼は
完全に心が圧し折れてしまったのだ。
今現在、部屋の外では垣根をはじめ大勢の人間が彼に向かって声をかけている。
「悪かった」「魔が差した」「二度とやらない」、しかしそんな言葉など、もはや彼は信用出来なかった。
一方通行「もォ頼むから放っておいてくれよォ!!」
御坂「そ、そんな事言わないで、ね?ほら妹達にもお見舞いに来てもらってるから!」
11111号「女装した挙句勝手に傷ついた馬鹿がいると聞いて馳せ参じました、とミサカは……」
14510号「ちょ、黙ってろお前!!一方通行、出てきてください!
ミサカはあなたの顔がみたいんです、とミサカは……」
一方通行「うるせェ!!オマエらも信用できねェンだよ!!!」
14510号「そ、そんな……」
11111号「うわぁ冗談抜きに重症ですね、とミサカは頭を抱えます」
結標「あっくん出てきて!お姉ちゃんが慰めてあげるから!!」
一方通行「死に腐れ!!」
結標「もう、照れちゃって……」
絹旗「本当に超ブレませんね結標は……逆効果なんで超下がっててください」
結標「な、何よぅ、これでも本気で心配して……」
絹旗「あーはいはい……一方通行、超そろそろ出てきませんか?」
一方通行「き、絹旗ァ……」
垣根「おぉ、ちょっと心動いてるぞ」
御坂「もう一押しね、頑張って絹旗さん!」
絹旗「超他人任せですねあなた方……また超一緒に映画を見に行きましょうよ、一方通行」
一方通行「……ごめンな絹旗、ダメなお兄ちゃンでごめンな……」
絹旗「く、超力及ばずですか……」
番外個体「バトンタッチ、次はミサカの番だね……ねぇ第一位、出てきてよ、ミサカ寂しくて死んじゃいそうだよ?」
一方通行「番外個体……」
番外個体「例え女装趣味があってもミサカはあなたの事が大好きだからさ!!
第一位が望むんなら、ミサカが頑張って入れる側に回るから!!」
一方通行「女装の事に触れるンじゃねェェェェェ!!!!」
番外個体「あ、ごめん」
垣根「だいぶ揺らいでたと思うんだが、ダメか……」
御坂「むぅ、強情ね……私達が調子に乗りすぎたのが悪いのはわかってるけどさ」
削板「おい第一位!聞こえるか!!?」
垣根「こら待て、オマエは喋るな!!」
結標「誰よこの暑苦しいの連れてきたのは!?」
絹旗「超気付いたらいました」
削板「よぉく聞けよ第一位!!俺は!!お前が男だろうと一向に構わねぇ!!!」バァーン
一方通行「あああァァァァ!!もォ黙れええェェェェ!!!」
削板「何故だ!!?」
垣根「ちょっとオマエこっち来い」ガシ
削板「待て、どうして俺を掴む?おい引き摺るな!」ズルズル
食蜂「ご主人様出てきてください!!あなたの命令がなければ私は……」
一方通行「ンじゃ命令だ、帰れ!!」
食蜂「Yes, Your Majesty!!」
御坂「何しに来たのよあんた……」
絹旗「まぁ超奴隷ですし、そりゃ帰れって命令されたら超逆らえませんよ」
麦野「ほーら第一位、出て追いでー」
一方通行「イヤだ」
麦野「……だってさ。てか何で私呼ばれたのよ?関わり薄いのに」
垣根「ちいぃ、麦野の魅力でも無理か……ッ」
御坂「あ、はじめまして、第三位の御坂です」
麦野「あぁ……どうも、第四位の麦野よ」
絹旗「何を超暢気に自己紹介しあってるんですか……」
御坂「初対面だし」
麦野「ね」
垣根「なぁ一方通行、俺は本気で反省してんだよ
あんな作戦勧めたのも、その後オマエにあんな言動したのも、どうかしてたんだ」
一方通行「……」
垣根「許してくれとは言わねぇ、ただ部屋からは出てきてくれ!
こんな扉越しじゃなく、直に謝りてぇんだ!俺が出来ることなら何でもする!だから……」
一方通行「何でもするンだな……?」
垣根「あ?……あぁ、勿論だ!!」
一方通行「じゃァ、女装しろ」
垣根「……は?」
一方通行「女装だよ女装!!そこにいる全員の前で女装して少しでも俺と同じ屈辱を味わいやがれ!!」
垣根「……」
御坂「や、やるの……?」
絹旗「超見たいような見たくないような……」
結標「やめてよ、目が腐るから」
番外個体「うひゃひゃひゃひゃ!ミサカは是非見てみたいなぁー」
一方通行「さァどォした垣根、女装なンざ簡単だろォ?それだけで俺は部屋から出てやるンだぜェ?」
垣根「だが断る!!」
御坂「ちょ!?」
絹旗「はい!?」
結標「なっ!」
番外個体「えー」
一方通行「……何のつもりだ垣根ェ!?」
垣根「うるせえ!!テメエこそ何のつもりだよ、いつまでもメソメソ引き篭もりやがってぇ!!」
一方通行「逆切れだァ!?ふざけてンのかオマエ!!」
垣根「ふざけてんのもテメエの方だ!!力ずくでも引きずり出してやるから覚悟しやがれぇ!!!」
一方通行「あァァ上等じゃねェかァ!!!やれるモンならやって見やがれェェ!!!」バタン!
絹旗「あ、超普通に出てきた」
御坂「出てきたわね、あっさりと」
一方通行「垣根ェェェェェェェェ!!!!」
垣根「来やがれ一方通行ァァァァァ!!!!」
結標「男の友情っていいわね」
御坂「何か違う気がするけど……」
番外個体「第一位、頑張ってー」
一方通行「死ねオラァァァァァァ!!!!」
垣根「ナメんじゃねぇぇぇぇぇ!!!!」
こうして、垣根の機転により部屋から飛び出した一方通行は思う存分暴れ回り、
その為、彼の家は周囲一帯ごとぶっ飛んでしまう事になる。
結果、引き篭もる部屋がなくなった一方通行は仕方なくそのまま外に出る事を余儀なくされ、
何だかんだと文句を言い、ふて腐れながらも、ドタバタとした日常は続いて行った。
「そンな実験で絶対能力者になれるわけねェだろ」
―完―
一方通行「さて、そろそろ頃合か?」
垣根「だな。それじゃ恒例の『裏話・没ネタ大公開』のコーナーと行こうじゃねぇか」
一方通行「その名の通り『こンなネタも考えてた』『もっとこうしたかった』
って感じのぶっちゃけトークをするコーナーだ。メタ発言のオンパレードの上笑える箇所も多分無ェから
そォいうのが苦手な野郎はそっとスレを閉じてくれ」
垣根「俺の暴露話に常識は通用しねぇ!次スレのネタがなくなるくらいぶっちゃけまくってやるぜ」
一方通行「……ひでェSSだったな」
垣根「あぁ……」
一方通行「俺らのキャラ、相当無理があっただろ……」
垣根「序盤ボケ役しかいなかったしな」
一方通行「周りのぶっ飛び具合に押されて段々マトモになって行く俺
最終的に俺がつっこみ役になるなンざ誰が予想したよ……キャラ変わりすぎだ」
11111号「童貞なのにつっこみ役とはこれ如何に、とミサカはひっそりとつっこみを入れてみます」
一方通行「だァコラ!オマエは帰れ!!お呼びじゃねェンだよ!」
垣根「そうだ帰れ!俺の出番がなくなるだろうが!!」
11111号「これは酷い、とミサカは隅っこで体育座りをします」
一方通行「で、SSは結構長い事書いてるけど支援絵描いて貰ったのは始めての経験だぜ、それも複数も……」
垣根「ありがた過ぎて涙が出たわ」
一方通行「皮肉っぽく言うンじゃねェよ馬鹿、感謝してますよイヤマジで」
垣根「モチベーションがすげぇ上がったよな、最初の支援絵が投下された時は変な声漏れたくらいだ」
一方通行「エントロピーを凌駕する勢いだったなァ」
垣根「つーか>>702見ろよ!これは男だとわかってても惚れるだろ……」
一方通行「なンだこの色っぽさ……これが俺か……」ゴクリ
11111号「自分自身をオカズにするつもりですか?永久機関の完成ですね
とミサカはナルシストな白モヤシにドン引きしつつもニヤニヤと笑います」
一方通行「うるせェよ!!」
垣根「本編で影薄かったからってここぞとばかりにでしゃばるんじゃねぇ!!」
11111号「なんと酷い事を、とミサカは童貞どもの言い分に体育座りのまま憤慨します」
一方通行「……しかし長かったなァ、こンなひでェSSがよくもここまで続いたモンだ」
垣根「全くだ、1スレで綺麗サッパリ終わらせる予定で始めたってのにどうしてこうなっちまったんだか」
一方通行「最初はとある原作の時間軸をなぞるつもりなンぞ全く無かったからなァ」
垣根「そうそう、インデックス編終わった後に即効でアイテム連中出して
麦野もレギュラー化させる予定だったもんな」
一方通行「第一位~第四位をメインキャラにして良くあるレベル5モノのほのぼのSSにするってのが当初の企画だったンだよ」
垣根「感想で『姫神どうよ?』みたいな事書かれてるのみてなんとなーく姫神編書いた辺りから狂い始めたな」
一方通行「ン。それで『原作の時間軸に沿って行くのもありじゃね?』ってなったンだよな、ネタ考えンのも楽になるし」
垣根「インデックス編でちゃんと魔術に関する説明をして、
インデックス救出までやればよかったなぁ、とか今更思ったり思わなかったりだ」
一方通行「そォすりゃペンデックスに飛び掛る俺を描写出来たりとか、
その後スムーズに魔術勢と絡ませたりとか出来たのになァ……惜しい事したぜ」
垣根「ま、本当に今更だけどな。それにどうやって俺らの力でインデックス救えばいいか考え付かねぇし」
一方通行「偶然通りかかった三下さンがやってくれました、でいいンじゃね?」
垣根「突然竜王の殺息が飛んできて慌てて相殺して、何だかんだで術式破壊して記憶を破壊されるわけか
……不幸にも程があるだろ、流石に同情するぞ」
一方通行「フラグ建築士に同情なンかしてらンねェよ」
垣根「はい」
一方通行「で、俺がジャッジメントに連行された話だが」
垣根「連行されたっつーか勝手に乗り込んだみたいなもんだけどな」
一方通行「レスを見る限り、固法さンの登場を期待してるヤツがやっぱ結構いたみてェだなァ」
垣根「まさか『牛乳買いに行きました』の一言でスルーされるとは思わなかっただろうよ」
一方通行「ぶっちゃけキャラが良くわかンねェンだよ、あの巨乳メガネ……」
垣根「そんでもって、次が御使堕とし編か」
一方通行「まず反射で防げるのか?って話だな。まァ実際は防げねェンだろォが、そンな事言ってたらはじまらねェし」
垣根「この会は特に裏話とかこうりゃ良かった、とかねぇんだよな」
一方通行「垣根の外見が妹達になって俺が暴走しそうになって~って流れは真っ先に思いついた事だしなァ」
垣根「服装は元のままってのを忘れてたのは痛かったな、それを念頭に置いときゃまた違ったんだろうが……」
一方通行「それ覚えてたら、妹達の服来た天井の姿見た時点で俺が発狂するって流れになってたと思うわ」
垣根「しばらく特に語る事もねぇから一気に大覇星祭編まで飛ばすぞ」
一方通行「ここは結構別の流れも考えてたンだよなァ」
垣根「オリアナを追いかけてるステイルと再開ってのが初期の案だっけか」
一方通行「『この高齢童貞が!やっぱりレイプ魔だったンだなテメエ!!』
みたいな感じでステイルを再度ふるぼっこにする流れだったな」
垣根「他にも俺が姫神ちゃんと再会する話も考えてたんだぜ?」
一方通行「姫神がオリアナにやられるシーンを垣根が偶然目撃、ブチ切れてオリアナと戦闘開始って案なァ……」
垣根「血塗れの被害者出たら流石に笑えねぇだろってのと、
シリアス描写が無駄に長くなるからって理由でカットされちまった。
折角俺の見せ場だったってのによぉ」
一方通行「垣根が姫神とフラグ立てるのを阻止する為っていう裏事情もあってだな」
垣根「いいじゃねぇかちょっとくらい……」
一方通行「結局、結標の見せ場を作る為と玉入れ合戦に俺らを参加させる為に本編の流れで落ち着いたわけだが」
垣根「大覇星祭編はもうちょっとじっくりやっても良かった気がするよな、
派手なお祭り騒ぎで美味しいネタも一杯あっただろうし」
一方通行「まァ仕方ねェよ、あン時は大覇星祭二日目以降のネタが浮かばなかったからなァ」
垣根「お次は木原のおっさん編だな」
一方通行「記憶喪失設定でもねェのに俺が木原くンの存在を忘れてるSSって他にあンのかな?」
垣根「道は覚えないわ学習能力ないわ記憶力ないわ、第一位の癖に頭悪すぎだろ本編のオマエ」
一方通行「うっせェボケ、オマエも大概だろォが
でまァ、原作通り木原のクソ野郎に一方的にボコられて新能力発現する俺ですがァ、」
垣根「最初は黒翼出す予定なかったんだよな」
一方通行「そォ、最初に考えてたのは……」
――
「な、何なんだ!?テメエのその……真っ黒な×××はぁ!!?」
「ihbf犯wq」
「アッー!!!」
――
一方通行「って感じの最悪の下ネタ&ガチファックルートだったからなァ」
垣根「射精の勢いで木原が流れ星になる予定だったんだよな、正直酷すぎるわ」
一方通行「昔のスレで使った『股間の幻想殺し』と似たようなモンだな」
垣根「イヤ、二枚くらい上手で酷ぇと思う」
一方通行「良い子の為のSSなンでやっぱりお蔵入りになりましたァ」
垣根「酔っ払った状態で書いてたらそのまま突っ走ってたかもな」
一方通行「またちょっと飛ンで、アイテム編行くかァ」
垣根「麦野のキャラどうするかっての最後まで悩んでたんだよな」
一方通行「絹旗はノーマル、フレンダは馬鹿っぽく、滝壺は腹黒くってのは速攻で決まったンだがなァ」
垣根「決まったっつーかもう昔のスレからのお約束だな、その振り分けが多分バランス取れてる」
一方通行「第四位はなァ……当初の予定通り、本編序盤で出してレギュラーにするンなら
ほぼ原作通りの性格にしとこうと思ってたンだが」
垣根「もう終盤だし、どうせなら印象に残る性格にしようぜって事で口だけのガチ処女って設定になりましたとさ」
一方通行「ヤンデレにして垣根のストーカーにするってネタも考えてたンだがァ」
垣根「その先の番外個体とキャラ被っちまうからやめたんだよな結局」
一方通行「番外個体をヤンデレにするのはそれこそ最初から決めてたからな」
垣根「ま、いいんじゃねぇの?『乙女なむぎのんかわいい』って声多かったし」
一方通行「だな。しかし第四位が出てから一気にオマエの株が下がったよなァ」
垣根「連日ストップ安更新くらいの勢いで下がってったな。それまで比較的マトモな方だったってのによ」
一方通行「無駄に長いシリアス戦闘描写で垣根のかっこ良さをアピールしてェ、」
垣根「その後一気に叩き落す、と」
一方通行「ギャップを演出した甲斐もあってかその後も『垣根が酷い』って声は多かったな、狙い通りだぜ」
垣根「ギャップが無くても酷かっただろアレは……俺は二枚目キャラだっつーのに」
一方通行「二枚目(笑)」
11111号「二枚目(笑)」
垣根「……」イラッ
一方通行「てかよォ、『番外個体かわいい』って言うヤツが異様に多かったのがかなり意外なンだが」
垣根「麦野は結構露骨に可愛く書いてたけど、番外個体はあんまりその辺意識してなかったからな」
11111号「ヤンデレはそれだけ魅力的なんですよ、とミサカはヤンデレの素晴らしさを訴えます」
一方通行「オマエも広義ではヤンデレになンのか?」
11111号「まぁ思いたければそう思ってればいいんじゃないですか?
とミサカは見下した目で自意識過剰な白モヤシを眺めます」
一方通行「死ね」
垣根「だから俺の出番がなくなるから下がってろってのに……」
一方通行「話進めるか。クイズ編についてだが、これホントにネタが無くて苦肉の策だったンだよなァ」
垣根「結局クイズも12問しかやらなかったしな、マジでスレで募集でもかけときゃよかったわ……」
一方通行「ちなみに最初は超電磁砲を優勝させる予定だったンだぜ」
垣根「そうそう、優勝した第三位が『買い物に付き合え』的な命令下して、
その後デート編に突入って流れもありかな、って一瞬考えたんだよな」
一方通行「デート中は白黒が乱入したり番外個体と結標が暗躍したり、
完治した佐天がまた俺にぶつかってきて吹っ飛んだりって感じでネタもちょいちょい考えてたンだが……」
垣根「クイズの内容が思いつかなくて第三位を優勝させるのが難しかったってのと、
極力カップリング的な描写をしたくなかったからって事でお蔵入りだ。残念残念」
一方通行「超電磁砲組再登場はデート編とか抜きにしても結構考えてたンだがなァ」
垣根「投下一回分に出来るほどネタが浮かばなかったから結局出せなかったわけだ」
一方通行「まァどォせ出した所で佐天が俺に吹っ飛ばされるってオチが待ってるだけなンだけどな」
垣根「その内ファンに刺されそうだな」
一方通行「小ネタは飛ばしてェ、次は常盤台編についてですがァ」
垣根「もうちょっと俺を暴れさせる予定だったんだよな最初」
一方通行「そうそう、婚后とか出して戦わせたりするってネタ考えてたな」
垣根「侵入者の俺を排除しようとする婚后、最初は強気な態度に出ていたが、
俺が能力を使って翼を発現させた所で大覇星祭でのトラウマを思い出して泣き叫ぶ
って感じのネタね」
一方通行「無駄に長くなった上に対して面白くもねェからカットカットカット」
垣根「第五位はもうちょっとちゃんと描写したかったんだが、何せ能力と性格の詳細がまだわかんねぇからなぁ」
一方通行「実際能力はどンなモンなンだろォな?個人的にはギアス全種類制限無く使えるようなモンだと思ってるが」
垣根「なんというチート」
一方通行「まァ俺らには効かねェけどな」
垣根「オマエはともかく俺は苦も無く防げるモンなのかね?俺の防御って何処まで有効なんだ?」
一方通行「オマエの能力もぶっちゃけワケわかンねェンだよなァ……
何でも出来るようで何が出来るかわかンねェ、何処までやらせていいのかサッパリだ
でもまァ、第五位の精神干渉くらいは防げるンじゃね?第二位なンだしよォ」
垣根「で、最終会の女装編だが」
一方通行「女装した俺の描写熱心過ぎで気持ち悪ィだろこれ……」
垣根「だがそれがいい。お陰で支援絵も貰えたじゃねぇか」
一方通行「ちなみに最初は第四位と第五位も女装した俺を追いかけてくる予定でしたァ」
垣根「レベル5大集合だな」
一方通行「それと番外個体が俺を貫く為の道具を買いに行ったり、絹旗が『お姉ちゃん』って呼ンだりするネタも考えてた」
垣根「裏で動こうとするアレイスター、何かムカつくからそれを止めようとするエイワス、
アレイスターを病気だと判断して治療に向かう冥途帰し。
みたいな裏シナリオも考えてたよな」
一方通行「全部を詰め込もうとすると滅茶苦茶になりそうだったからなァ、
結局、どうしても入れたかった分だけしか入れなかったわけだ」
垣根「それでもかなり長くなっちまったからな……全部のネタ盛り込もうとしたら更に倍くらいにはなってただろうよ」
一方通行「色々切り捨てたお陰でなンとか最後だけは綺麗に纏っただろ」
垣根「実は最初は仲直りさせずに『その後一方通行の姿を見たものは誰もいなかった』
みたいな感じの一方通行失踪ENDにしようと思ってたんだぜ」
一方通行「つーか投下直前までその終わり方だったからな」
垣根「流石にかわいそすぎるかなーって事でギリギリで書き換えたんだよな、よかったよかった」
一方通行「しっかし、3スレ目からあからさまに小ネタで茶を濁すって事が増えたよなァ」
垣根「ネタが無かったんだ、仕方がねぇよ」
一方通行「それならそれでサクッと終わらせといた方が良かったンじゃねェか?
自分で書いた後イマイチ納得出来ないのに投下しちまうってのがかなり多かったぞ今回」
垣根「感想レスが増えてくると『もっと続けたい』『何でもいいから投下しなきゃ』って気分になっちまうんだよ……」
一方通行「まァそォなンだが……それでもグダグダ練りきれてないネタを投下しちまったのは反省しねェとなァ」
11111号「ご心配なく。練れていようが練れていまいがどうせ大した違いはありませんよ
とミサカは微笑みながら自虐ネタを披露します」
垣根「やめろ、わかっててもそういう事は言うんじゃねぇ」
一方通行「魔術勢はもっとちゃンと出したかったンだがなァ……
あと妹二号とか、出したかったけどネタ浮かばなかったンだよなァ」
垣根「これ以上オマエの家に同居人増えてたら感想の八割が『爆発しろ』になってたと思うぞ?」
一方通行「さァて、裏話はこンなモンにして次スレの予定でも話すとするかァ」
垣根「つってもあんまり考えてねぇんだけどな」
11111号「意外と欝話期待してる人が多いみたいですね、この変態どもが
とミサカは歪んだ性癖を持つ連中を罵倒します」
一方通行「性癖は関係ねェだろ性癖は……」
垣根「欝とかシリアスは書く前の準備が大変なんだよなぁ」
一方通行「どうしても文章力が要求されるからなァ、数冊その手の本を読ンで調子整えなきゃならねェ」
垣根「誤字脱字も許されねぇしな、そういうのがあるとどうしても興が削がれちまうし……
まぁそれでも久しぶりに書いてみてぇけどな、欝モノ」
一方通行「明るい気分で書けるギャグモノが精神的には楽なンですけどねェ」
11111号「ちなみに今こういうの書きたいなぁ、と思ったりしてるのは以下のようなのです
とミサカは参考にいくつか紹介してみます」
・ほのぼの番外通行
・ほのぼのレベル5
・ギャグ系バ垣根
・新約『イヤだ』
・シリアス系座標通行
・一方通行メイン、エログロ欝系
・レベル5一ヶ月一万円生活
11111号「一番やりたいのは一ヶ月一万円生活だったりします、とミサカはぶっちゃけてみます」
垣根「どれをやるにしろ、ネタ補給する為にしばらく間は空くんだがな」
一方通行「ミステリ系とかも書いてみてェンだが、禁書キャラはなンでもあり過ぎてミステリが成立しねェンだよなァ」
垣根「さて、それじゃそろそろ終わりにすっか」
一方通行「だな、もォ話す事もねェ」
11111号「ここまで付き合ってくださって本当にありがとうございました、とミサカは形だけ頭を下げます
ちなみにどんなSSを書くにしても、禁書系ならばこのミサカが出演していると思うので
その辺りを目印にして頂ければ幸いです。欝系なら漏れなく死ぬでしょうが」
一方通行「そンじゃァまた何処かでお会いしましょう」
垣根「これにて終了っと」
―END―