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第1話

98 : 1[saga] - 2013/09/17 17:27:44.20 GoIyQwV+0 58/360

第2話 呪怨


2011年 8月


~とある墓地~


右京と神戸は仮釈放された元国会議員の瀬戸内米蔵と共に小野田公顕の墓参りに来ていた。

瀬戸内「小野田くんが亡くなって早一年か、俺よりも若いくせに先におっ死んじまうとは…」

神戸「人間の生き死に年齢は関係ないのでしょうね、こればかりは運命としか
言いようがありませんよ。」

右京「運命…ですか、もしかしたらそうだったのかもしれませんね…」

瀬戸内「どうしたんだい杉下くん?何か知っているような顔をしてるが。」

右京「実は…亀山くんが警察を辞める前に妙な事を言ってたのを思い出しまして…」

瀬戸内「妙な事?」


99 : 1[saga] - 2013/09/17 17:28:31.22 GoIyQwV+0 59/360

それから右京は神戸と瀬戸内の二人に以前佐伯家で起きた事件の事を説明した。
その直後、亀山が言っていた奇妙な事と小野田の死の予言についても…

神戸「佐伯…確か練馬区で起きた惨殺事件の犯人ですよね。
犯人は捕まったけどその日の夜に警視庁の拘留所で死んだっていう…」

右京「そうです、それに佐伯俊雄…事件当時9歳の少年も未だ行方不明…
当時警察は少年の行きそうな場所を徹底的に調べたのですがねぇ…」

瀬戸内「なるほど、亀山くんはその俊雄少年の事について、
『この世にはいません、あの子はあの世の住人になったんですから!』と言ったのかい。」

右京「えぇ、僕には皆目見当も付かないので。
よろしければ仏法に御詳しい瀬戸内先生ならご存知ではないかと思うのですが…」

瀬戸内「そりゃアレだな、『亡者』の事じゃねえのかな。」

右京「亡者?」

瀬戸内「生臭坊主の説法になるがね、亡者ってのは何らかの理由で死んでしまい
成仏できずに彷徨う魂のこった。そんな連中が何を思っていると思う?」


100 : 1[saga] - 2013/09/17 17:29:02.58 GoIyQwV+0 60/360

右京「さぁ、何でしょうかね。」

瀬戸内「恨みだよ、連中は生前何か強い想いを現世に残しちまった哀れな連中なわけだ。
そしてそれが…やがて呪いを生む。」

神戸「呪い…ですか?この近代科学が発達した21世紀の時代に呪いだなんて…
前時代的過ぎますよ!」

瀬戸内「呪いに時代なんて関係ねえさ、ただ深い業があればそれでいい。
だからこそ殺人事件なんて血生臭い行為が未だに行われているわけじゃねえか!」

右京「仰る通りです、しかしそうなると俊雄くんは…」


101 : 1[saga] - 2013/09/17 17:29:46.16 GoIyQwV+0 61/360

瀬戸内「仏法ではな、親より早く死んだ子供は三途の川へ連れて行かれて、
石を積まなきゃならんと言われている。だが…もしも…もしもだ。
俊雄くんが生きて亡者となっていたとしたらだ…
恐らくそいつは現世に留まり…より強力な呪い、つまり『呪怨』を生むんじゃねえのかな。」

右京、神戸「「呪怨?」」

右京「初めて聞く言葉ですねぇ。」

神戸「どういった意味なんですか?」

瀬戸内「こりゃ俺が作った造語だからな、辞典になんか載ってねえんだがね。
意味は…強い恨みを抱いて死んだモノの呪い。
死んだモノが生前に接していた場所に蓄積され、『業』となる。
その呪いに触れたモノは命を失い、新たな呪いが生まれる。
つまりだ、呪いの連鎖ってモンは簡単に断ち切れないって事さ。」

神戸「ハハ、もし瀬戸内先生の仰る通りなら殺人現場が呪いの呪いだらけになっちゃいますよ。」

瀬戸内「まぁ…そうかもしれんがね、年寄りの戯言だと思って聞き流してくれや。」


102 : 1[saga] - 2013/09/17 17:31:31.35 GoIyQwV+0 62/360

瀬戸内の参考になるのか微妙な説法も終わり、右京と神戸は警視庁に戻ってきた。
しかし戻って来て早々、何故か内村部長に呼び出された、その訳は…


~警視庁~


神戸「引き篭り少年の更生!?」

中園「そうだ。」

内村「先日練馬署の少年課が奇妙な行動をする少年を補導してな。
親御さんに聞いたところ少年は引き篭りがちらしい、そこで…お前らも一応大人だ。
いいか!その少年を学校に通わせるようにしておけ!!」

神戸「これも僕らの仕事なんですかね…」

右京「頼まれたら何でもするのが特命係ですからね。それでその少年の名前は何と言うのですか?」

中園「確か……鈴木…鈴木信之という中学生の少年だ。」


103 : 1[saga] - 2013/09/17 17:32:04.59 GoIyQwV+0 63/360

それから右京と神戸はその少年の父親が経営する不動産屋に来ていた。
鈴木信之は母親を亡くしており、現在は父親の達也と二人暮らしという事情があったからだ。

達也「いやぁ、すみませんねえ。わざわざ職場の方に来て頂いて…
母親がいればこんな事にはならなかったんですがね。
しかしまさか警視庁の刑事さんが来てくれるとは思いませんでしたよ。」

右京「いえいえ、警察は市民の味方ですから。」

神戸「単に面倒事を押し付けられたとも言いますが…」

右京「それでですが、息子さんの奇行というのはどういった感じに行われているのでしょうか?」

達也「それが…」


104 : 1[saga] - 2013/09/17 17:33:17.52 GoIyQwV+0 64/360

達也は右京たちに息子の信之の家出の奇行について説明した。
信之はここ最近誰とも喋らず、毎日部屋に閉じ籠って何も映らないTVをジッと眺めている、
その光景はまるで何かこの世のモノではないモノを眺めているかのようだと達也は語った。

達也「…という訳なんですが…」

神戸「そう言われましても…僕たちはその手の専門家じゃないので…」

右京「まぁ…まずは信之くんと会ってみましょう、話はそれからという事で…
ところでひとつ聞きたい事が、これは僕の個人的な興味なのですが、
確かこの近所に三年前に佐伯という一軒家で殺人事件がありましたね。
あの物件…売れたのですか?」

達也「えぇ、おかげさまで。しかし何でそんな事を?」


105 : 1[saga] - 2013/09/17 17:34:37.56 GoIyQwV+0 65/360

右京「先ほど表に貼られている中古物件の一覧を見ましたら佐伯家の物件が
売買済になってましたので、どなたが購入されたのか気になりましてね。
ちなみにあの事件に僕も関わっていましたのでその後の状況を聞いてみたくて…」

神戸「すみませんね、細かい事が気になる人でして。
けどそれって事故物件ですよね、中古とはいえよく売れましたね?」

達也「まぁ…そこはどうにかしてといった感じで…けどその後が問題でして。
実は…あまり大きな声では言えませんが…あの物件ですが…あの後入った
家族が…自殺しましてね…
それで売る前に霊能力のある妹の響子にその物件を見てもらったんですよ。」

神戸「妹さん…霊能力者なんですか?」

達也「妹は昔から変なモノが見えるって言ってましたので、それで見てもらったんですけど…
その時妹が変な事を言ったんですよ。
『購入する人間に清酒を飲ませろ、もし吐いたりしたら絶対に売るな!』と…」

神戸「清酒ってどうしてそんな事を?」


106 : 1[saga] - 2013/09/17 17:35:05.01 GoIyQwV+0 66/360

右京「なるほど、清酒には古来から霊的な作用があると伝えられています。
その清酒に霊を移り、その清酒が一瞬にして腐る作用があるとか。」

達也「まぁ……そんな心配はありませんでした!無事に物件も売れましたし♪
それじゃちょっとウチの方へ行きましょうか!」

右京「…」

こうして達也の案内で彼の自宅に案内されたが、右京は彼が案内した場所を見て
驚きを隠せなかった。
何故ならそこは…かつて小林真奈美とお腹の赤ん坊が惨殺されたアパートだったのだから…


124 : 1[saga] - 2013/09/19 21:24:55.54 HkcRUVai0 67/360

神戸「それじゃここって…あの小林一家の元住居なんですか!?」

右京「えぇ、間違いありません。
それにしてもまさか…同じ部屋に住まわれていたとは…」

右京は神戸にこのアパートがかつて小林真奈美の殺害現場である事を知らせた。
その事について達也に尋ねてみたところ返事はというと…

達也「いやぁ、こんな事故物件…誰も入りたがる人間なんかいませんからね…
それなら自分で使おうかなっと思って!まぁ私は幽霊とか信じてませんから大丈夫ですって!」

神戸「そんなモンなんですかね…」

右京「普通の人はこの手の事には敏感なのですが…」

達也「ちなみにウチ引っ越したばかりでしてね、そういえば信之が変になったのも
その頃からだったかな?」


125 : 1[saga] - 2013/09/19 21:25:24.12 HkcRUVai0 68/360

その時だった。


ドンドン  ドンドン


おばさん「ちょっと!いるんだろ!開けとくれよ!!」

達也「あれはお隣さんだ、ウチに何の用事だ?」

中年の女性が鈴木宅の玄関をノックしていた、気になり尋ねてみると…

達也「ちょっとちょっと!何してんですか?」

おばさん「あら鈴木さん!実はねえ今お宅で若い女の悲鳴と赤ん坊の泣き声がしたのがしたのよ!!」


126 : 1[saga] - 2013/09/19 21:26:12.51 HkcRUVai0 69/360

右京「それは本当ですか!神戸くん行きますよ!」

神戸「ハイ!鈴木さんすぐにドアを開けて!」

達也「わ…わかりました!」

達也は神戸の指示通りにドアを開けて家の中に入るが家の中は引っ越し作業の途中なのか、
段ボールやビール缶があちこちに散乱していた。
右京と神戸は急ぎ居間の方に行くが…そこには…


127 : 1[saga] - 2013/09/19 21:26:45.43 HkcRUVai0 70/360

達也「響子!?おい!どうしたんだ!しっかりしろ!?」

達也の妹である響子が白目を向いて気絶していた、その気絶している響子の隣には件の人物である、
達也の息子信之の姿があった。
右京は彼にここで何があったのか尋ねてみた。

右京「キミが鈴木信之くんですね、ここで一体何があったのですか?」

信之「男…男の人が…隣の部屋で…女の人を…包丁で刺し殺していた…」

神戸「なんだって!?」

信之の言葉を聞いた右京と神戸は隣の部屋を確認するが…


128 : 1[saga] - 2013/09/19 21:27:42.00 HkcRUVai0 71/360

神戸「え…何もないですよ?」

右京「そうですね、死体どころか血痕の跡すらありません。とてもじゃありませんが
殺人の現場では…おや、そういえば…」

神戸「どうしました?」

右京「この部屋、小林真奈美が殺害されたのも確かこの部屋でしたね。
まさか二人が見た光景は…」

神戸「ねぇ信之くん、他に何を見たんだい?」

信之「その男の人…女の人のお腹から…赤ちゃんを取り出していた…」

右京「佐伯剛雄も小林真奈美を殺害後に…お腹の中の赤ん坊を取り出していました。
信之くん…まさかキミが見た光景は…」

神戸「とりあえず響子さんを寝かしておきましょう、話はその後で!」


129 : 1[saga] - 2013/09/19 21:28:48.26 HkcRUVai0 72/360

神戸と達也が響子を寝かしつけている間、右京は家の中をいくつか物色してみたがその中で
幾つか気になるモノを発見した。
それは玄関に捨てられていたお札、それに台所に置いてあった一本の清酒であった。

神戸「お札に清酒?こんな物がなんだというんですか?」

右京「このお札…僕は専門家ではないのでわかりませんがこれ…恐らく悪霊退散の
お札じゃないのでしょうかね。
考えてみればこの物件は事故物件です、このようなお札が一枚貼られていてもおかしくはないでしょう。」

神戸「それじゃその清酒は…」

右京「そう!問題はこの清酒ですよ、神戸くんちょっと飲んでみてください。」

神戸「あの…今一応勤務中なんですけどね…まぁ上司の命令って事ならいいですよね。」

達也「ていうかこれウチの酒なんですけど…」


130 : 1[saga] - 2013/09/19 21:29:55.45 HkcRUVai0 73/360

神戸「ゴクゴク………ブッ!!!!オゲェ!ゲホッ!ゲホッ!何ですかこのお酒!?
まるで腐ってるじゃないですか!!」

達也「腐ってるってバカな!?数日前に買った酒ですよ!
その証拠に賞味期限だってまだ日数があるんですから!」

神戸「けどこれ…とてもじゃありませんが…飲めたモンじゃないですよ…
しかしこの腐った清酒がどうしたというんですか?」

右京「この家にはビール缶が散乱していました、少し変だと思いませんか?
ビール派の人間が清酒を飲もうとするのは少し引っかかりますよね。」

神戸「お言葉ですが…ビール派の人間だって清酒くらいは飲みますから!」


131 : 1[saga] - 2013/09/19 21:30:25.99 HkcRUVai0 74/360

右京「勿論その可能性はあります、しかし問題は何故この清酒が数日前から台所に
放置されているのかです!
ビール缶の散乱っぷりからして達也さんは酒豪だと思います。
では何故、数日前に買った清酒を飲みもせずに台所に放置したのか…
もしかしたらこの清酒は本来飲むために買った物では無いのではありませんか!」

神戸「しかし…飲むためじゃないとしたら…そうか!さっき不動産屋で言ってた…」

右京「えぇ、妹の響子さんから言われていた…
『購入する人間に清酒を飲ませろ、もし吐いたりしたら絶対に売るな!』の言葉通り
達也さんは清酒を用意したんですよ!」

神戸「でも…それだと…やっぱりおかしいですよ!
何でその清酒が使われないでこの家にあるんですか?
確かその佐伯家はとっくに売買済にされたって言われてたじゃないですか!」


132 : 1[saga] - 2013/09/19 21:30:58.13 HkcRUVai0 75/360

右京「それは恐らく…達也さん、あなた…響子さんの忠告を無視してあの物件を
売ってしまったのでしょう。」

達也「ハイ…幽霊なんて迷信だと思って…けどこっちだって商売なんですよ!
いくら事故物件だからって都内にある物件を遊ばせとくなんて出来るわけがないでしょ!
それに…一応先方の方には前もって事故物件だと知らせてありますし…」

神戸「そうですね、確かにあなたの行為に違法性はありませんが…」

神戸が言い掛けたその時、先ほど寝かしつけていた響子が起き上がってきた。
だが響子は意識を取り戻したと同時に未だかつてないほどの叫び声を上げた…



響子「「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!??」」



達也「おい響子!どうしたんだ!?落ち着いてくれ!」


133 : 1[saga] - 2013/09/19 21:31:58.65 HkcRUVai0 76/360

響子「う゛がぁぁぁぁぁ!もうダメ!みんな…みんな殺される!?」

神戸「落ち着いて!どうしますか杉下さん?」

右京「響子さん!僕たちの事がわかりますか?この家で何があったのか教えてください!」

右京は錯乱する響子を抑えつけながら尋ねてみるが彼女の口からそれ以上の言葉は出なかった…

達也「刑事さん…俺どうしたら…」

右京「とりあえずこの家を出る事をお勧めします、息子の信之くんと妹の響子さんを連れて
暫くご実家の方へ預けておいた方が良いと思います。
神戸くん、僕らは明日旧佐伯家に行きましょう。」


134 : 1[saga] - 2013/09/19 21:32:50.61 HkcRUVai0 77/360

神戸「まさか杉下さんは旧佐伯家にも何かあると疑っているんですか?」

右京「そう考えるべきだと思いますよ、この状態の響子さんを見ればね…」

神戸「わかりました、それで現在佐伯家に入居している方は何というお名前ですか?」

達也「き…北田…北田さんという夫婦が住んでます!けど刑事さん…私は今朝お伺いしましたが
その時の北田さんは至って普通でしたよ?」

右京「一応念のためにですよ、まあ何事も無ければ良いのですが…」

こうして右京と神戸に見送られながら達也は急ぎ車で家から響子と信之を連れ出したが…
先ほど発狂した響子はコクリ…コクリ…と頷き続け、まるで何かに憑りつかれたかのように
奇怪な行動を取っていた…


135 : 1[saga] - 2013/09/19 21:36:34.96 HkcRUVai0 78/360

翌日、右京はさっそく旧佐伯家に現在住んでいる北田夫妻を尋ねるため家の前にいた。
それから少し遅れて神戸もGT-Rに乗って到着した。

神戸「すみません、お待たせしちゃって!」

右京「大丈夫ですよ、ところで何で遅れたんですか?」

神戸「実は免許書の更新に行ってましてね、ゴールド免許ですよ♪」

右京「はて?キミは以前スピード違反になったのでは?」

神戸「あれは顔認識システムの誤作動だと蒙抗議しましてね…
その甲斐あってゴールドになった訳ですよ!!
ちなみにパンチ穴の開いた前の免許証も記念に貰ったんですけど見ます?」

右京「ドヤ顔は結構、行きますよ。」


136 : 1[saga] - 2013/09/19 21:37:04.01 HkcRUVai0 79/360

~旧佐伯家~


ピンポ~ン


―「はーい!あら?どちらさまで?」

右京「失礼、警視庁特命係の杉下という者です。奥様の良美さんですね。」

神戸「同じく神戸です。実はちょっとお話があるのですが…」

良美「わかりました、どうぞ中へ入ってください。」


137 : 1[saga] - 2013/09/19 21:37:51.46 HkcRUVai0 80/360

右京と神戸は良美に招かれるまま家に入ろうとしたが、右京は家に入る前に庭である物を発見する。

右京「おや、これは?」

神戸「どうしたんですか?先に入っちゃいますよ。」

右京「お先にどうぞ、僕はちょっと気になる事があるので…」

神戸「ハイハイ、わかりました。」



138 : 1[saga] - 2013/09/19 21:38:23.42 HkcRUVai0 81/360

こうして神戸だけが先に家の中に入っていった。
残った右京は先ほど発見した物を調べていた、それは小包の入っていた紙袋であった。
当然ながら中身は入っていなかった、しかし宛先の名前蘭には気になる名前が記入されていた…

そう…名前には……佐伯伽椰子という名前が記入されていたのだから…

右京「佐伯伽椰子!まさか…神戸くん!?」

右京は急いで先ほど家の中に入った神戸の後を追おうとしたが後ろから近付いてきた
人間に肩を叩かれた。

振り返ってみるとその人物は…


139 : 1[saga] - 2013/09/19 21:39:16.42 HkcRUVai0 82/360

神戸「ハァ…ハァ…なんとか間に合ったようですね!」

右京「神戸くん…先ほど家の中に入ったキミがどうしてここに?」

神戸「杉下さん!ここはもう危険です!早く逃げましょう!」

右京「はぃ?」

家の中に入って行った神戸が急に背後から現れた、それだけでも奇妙なのにそれだけでなく
家から逃げろという発言、いつもの右京ならそんな言葉には従えなかったろうが
この時何故かかつて亀山が言ったこの家に絶対に入るなという忠告を思い出し、そのまま立ち去った。


140 : 1[saga] - 2013/09/19 21:40:03.09 HkcRUVai0 83/360

そんな右京と神戸が立ち去る姿を窓越しから良美は不気味な目つきでジッと見つめていた。

神戸「あの…奥さん、どうかなされたんですか?」

良美「いいえ、それよりもお連れの刑事さん遅いですね。」

なんとそこには奇妙な事に、先ほど右京と一緒に出て行ったはずの神戸が、何故か良美と一緒に
居間で彼女に勧められるままお茶を飲んでいた。


141 : 1[saga] - 2013/09/19 21:40:40.81 HkcRUVai0 84/360

神戸「まああの人の事ですから、きっと気になる事でもあるんじゃないのですかね。
あれ?この画用紙…子供の絵ですね?
けどおかしいな?お宅はお子さんいないんじゃ…それにこの絵に描かれている名前…
佐伯俊雄?この名前確か…行方不明になっている少年の名前じゃ!?」

良美「…」

神戸はこの絵について良美に尋ねるが良美は顔を俯かせたまま一言も喋らずにいた。
仕方なく右京を呼びに行こうとしたその時だった。


神戸「台所で…誰か倒れている?」


駆けつけてみるとそこに倒れていたのは一人の男性、上着のポケットから身分証を確認すると
名前は北田洋、この家に住む良美の旦那であった。


142 : 1[saga] - 2013/09/19 21:41:53.73 HkcRUVai0 85/360

神戸「ご主人!しっかりしてください!…ダメだ…もう死んでる…けど何で?」


良美「鬱陶しかったんです…コーヒーの豆がブルーマウンテンじゃないとダメだとか、
卵の黄身を半熟にしろとか…誰と勘違いしたのやら…私はもう良美じゃないのに…」


その時神戸の背後に先ほどまで居間で顔を俯いていた良美が急にやって来ていた。

神戸「そ…そんな事で殺したっていうんですか!?奥さんあなた正気じゃない!」

良美「えぇ…殺しました…このフライパンで頭を叩いて…」


ブンッ



神戸「ぐはっ!?」


ドサッ



143 : 1[saga] - 2013/09/19 21:42:31.01 HkcRUVai0 86/360

神戸は頭を殴られてそのまま床に倒れた。

その良美の背後には白塗りのゾンビのような姿をした少年が現れ、

良美は手を繋ぎ先ほどの居間の方へと戻っていった。

倒れた神戸の手には先ほど居間で見つけた俊雄の絵が固く握りしめられていた…


144 : 1[saga] - 2013/09/19 21:43:04.39 HkcRUVai0 87/360

その頃、先ほどGT-Rに乗り急いで佐伯家を後にした右京と神戸だが
右京は何故あの家から立ち去らなければいけないのかを神戸に尋ねたが返答は…

神戸「すみません…今は言えません…」

右京「やはりキミも同じ事を言うのですね、かつての亀山くんもそうでした。
1階の屋根裏を調べていたと思ったらいきなり2階の屋根裏から現れて、
何の説明もなくあの家から避難しろとの一点張り、一体キミたちは何を見た…
いえ、何を知ったのですか?」

神戸「本当にすみません…今は言えないんです!」

右京「そうですか、ところでキミ…頭から血が出てますが怪我しているのですね。
どこでそんな怪我を負ったのですか?」

神戸「そうか…さっき思い切り殴られたからな…痛たた…」

神戸は手で血を拭おうとした時だった、拭おうとした手には自分があの家で見つけた絵を
握り締めていた事にようやく気付いたのだ。


145 : 1[saga] - 2013/09/19 21:43:53.18 HkcRUVai0 88/360

右京「この絵…佐伯俊雄…あの事件で未だ行方不明の少年が描いた絵ですね。
……恐らく僕がまた北田さんのところに戻ると言ってもキミは反対するのでしょうね。」

神戸「えぇ、断固として阻止させていただきます!」

右京「…では鈴木さんの実家に行ってもらえますか。僕の考えが正しければ恐らく…」

神戸「わかりました、けど期待はしないでください。誰か一人でも生き残ってれば御の字なんですから…」

右京「…」

こうして右京と神戸は鈴木達也の実家に急行した、だが既に手遅れだった…


146 : 1[saga] - 2013/09/19 21:44:34.33 HkcRUVai0 89/360

~鈴木達也の実家~


コンコン コンコン


右京「夜分にすみません、警視庁の杉下という者ですが…」

神戸「ノックしても誰も出ない、かといって車や自転車があるから遠出したとは思えないし…」

右京「止むをえませんね、ベランダから様子を見ましょうか。」

神戸「わかりました!」

しかしその必要はなかった、急に玄関が開いたのだ。
玄関からその出てきた人物は…


147 : 1[saga] - 2013/09/19 21:45:05.90 HkcRUVai0 90/360

右京「信之くん!」

神戸「キミ…まだ無事だったんだね!この家の人はどうなったの!?」

信之「みんな…みんな…死んだ…あの女の人と…子供が…」

神戸「女の人と子供…やっぱりか!」

右京「神戸くん!僕は中に入ります!キミは周辺の警察と達也さんに連絡を!」

神戸「ちょ…ちょっと待ってください!あぁもう!」

神戸の制止も聞かずに家の中に入った右京がそこで見たモノは…


148 : 1[saga] - 2013/09/19 21:45:48.10 HkcRUVai0 91/360

それは…この家の主である鈴木泰二とその妻ふみの死体であった。
二人のの死に顔はまるで何か得体の知れないモノに恐怖し…それから逃げようとした態勢で死んでいた。


右京「鈴木さん!…死んでいる…おや?…そこにいるのは誰ですか!?」

右京は部屋の奥で誰かが動いている気配を感じた、部屋を覗いてみるとそこにいたのは…

響子「…フフフ…ハハハ…」

右京「あなたは…響子さん!大丈夫ですか!響子さん!?」

そう、部屋の奥にいた人物は響子であった。
達也のアパートで発狂した彼女は最早正気ではなく赤ん坊の人形を抱えて狂ったように
あやしていた…


149 : 1[saga] - 2013/09/19 21:46:45.73 HkcRUVai0 92/360

その後、神戸の通報を受けた地元警察が到着。

二人の死因は心臓麻痺によるショック死と診断され事件性は無いと判断された。

生き残った響子と信之だが響子は精神病院に入院させられ、信之も…

父親である達也は何故か行方不明になったために遠縁の親戚に預けられる事になった。

こうしてこの事件は一応の幕が閉じられようとした。

だが…


150 : 1[saga] - 2013/09/19 21:47:23.81 HkcRUVai0 93/360

~特命係~


右京「納得いきません、どうもあの家では佐伯家の事件以来奇妙な事ばかりが起きています。
これは最早事件性があると僕は判断します!」

神戸「杉下さん…いくら僕らが叫んでも上は鈴木一家の事件を事故死と判断して
捜査を打ち切ってますから。
それに…いくら探したって証拠なんか出やしませんよ…」

右京「そして僕が最も気になるのはキミの捜査に対する態度です。
以前の亀山くんもそうでした!あの家で何かがあった直後、キミと同じく
この事件に消極的になってしまった。
彼は警察を辞めるまであの事件について何も語ろうとしなかった、恐らくキミと
動揺の何かを体験したのではないのですか?」


152 : 1[saga] - 2013/09/19 21:48:30.00 HkcRUVai0 94/360

神戸「やっぱり…何か気付いちゃいましたか…」

右京「僕はあの家に入る直前ある小包が入っていた紙袋を発見しました。
そこに書いてあった宛名は佐伯伽椰子、かつてあの家で死んだ女性の名前です。
何故彼女の名前が書かれていたのかはこの際置いておきましょう。
問題は何が入っていたかです、この紙袋…キミが持っていた俊雄くんが画用紙で描いた
絵を入れられるくらいの大きさじゃありませんかね。」

神戸「杉下さん…何が言いたいんですか?」

右京「かつて僕もあの家で彼女の佐伯伽椰子の日記を手に入れました。
その日記は今でも僕の手元にあります、内容は小林俊介へのストーキング行為に
関する記載でした。
佐伯伽椰子、それに彼女の息子俊雄、僕にはまるでこの二人があの家に近付く者たちを
拒んでいるように思えてなりません!」



153 : 1[saga] - 2013/09/19 21:49:32.73 HkcRUVai0 95/360

神戸「杉下さん…あの家に行く気ですね!」

右京「行きます!恐らく…北田さん夫婦にも何か危険が迫っている…いえ…もう何か
起きてしまっていると考えるべきではないでしょうかね。
キミのその頭の怪我…それ、北田さんの奥さんにやられたモノですね。」

神戸「そこまでわかりますか!」

右京「あの家には妻の良美さんしかいませんでしたからね、その怪我の具合からして
彼女はキミを殺す気で襲ったのでしょう。
しかしキミは運よく生き延びた、違いますか?」

神戸「フフ、そこまでわかってしまうとは…けどそれでもあの家に近づけさせませんよ!
それにもう…北田さんたちは手遅れでしょうね。
あの夫婦もきっと…今頃は…」


154 : 1[saga] - 2013/09/19 21:50:22.95 HkcRUVai0 96/360

右京「手遅れ…ですか?」

神戸「えぇ、間違いなく。だからあの家には絶対に近付かないでください!
それとこれから僕の言う事を絶対に守ってください!
もしこれから先に白塗りの少年や女性が現れても絶対に近付いたり話しかけたりしないで!
あと数年…いや2年以内に今よりももっと悲惨な事態が起きます!
それまで絶対にあの家には近付かないで…ください!
そして…これはあまり関係ないかもしれませんがその頃には僕は特命係を辞めているかもしれません…」

右京「いきなり話が変わりましたね、それは何故ですか?」

神戸「実はその辺の事情が僕にもわからないんですよ、おかしいですよね…自分事なのに…
とにかく…絶対にあの家には近付かないで!特にこの2年以内は必ず…」

右京「わかりました、キミの…いえ、キミや亀山くんが言った言葉を信じましょう。」

こうして右京はこの時点での佐伯家の捜査を断念した。
いつもの右京なら構わず捜査をするだろうが、以前亀山が鬼気迫る表情で右京に対して
同様の警告がそうさせたからだ。


155 : 1[saga] - 2013/09/19 21:51:18.51 HkcRUVai0 97/360

それから数か月後…

神戸「大河内さんが僕を呼び出すなんて珍しいですね、どういった風の吹き回しですか?」

大河内「実は先週、城戸充という男が自殺してな…
その男がこんな遺書を残していたんだ。
内容は自分が無実である事、そして神戸…お前の事を絶対に許せないというモノだった。」

神戸「僕を許さないって…まさか…」


156 : 1[saga] - 2013/09/19 21:52:20.46 HkcRUVai0 98/360

大河内「それともうひとつ、これは関係ない話だが遺体があった現場には…奇妙な少年がいたらしい。
その少年は肌に生気が無く…尋ねると妙な奇声を上げていったそうだ。
まるで猫が鳴くような声をしてな…」

神戸「…」

その後特命係が捜査した結果、城戸充の冤罪が判明。
当時その裁判で神戸は嘘の証言をしてしまった事を悔やみ、この事が後々尾を引く結果となった。
その後元警視庁副総監の長谷川宗男により神戸は否応無しに特命係を去る形となった。

更に時は流れ…2年後…



第3話に続きます

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