男(俺は童貞だ)
男(今日も大勢の女が俺の童貞を狙ってる)
男(まったく……発情したメス猫たちには困ったもんだぜ)
男「俺は絶対に童貞を守り抜くッ!」ダッ
女「待ってぇ~!」
「あっちよ!」 「逃がしちゃダメよ!」 「捕まえるのよ!」
キャー……! キャー……!
ドドドドド……!
元スレ
男「今日も大勢の女が俺の童貞を狙ってる」女「待ってぇ~!」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1381420317/
ドドドドド……!
「あっちよ!」 「あの角を曲がったわ!」 「逃がすもんですか!」
女「みんな、もう少しよ!」
男(ちっ……さすがにこう毎日やってると、俺の行動パターンも読まれてきたな)
男(女性相手に手荒なマネはしたくないが……背に腹は代えられない!)ピンッ
男「えいっ!」ヒュッ
ボムッ!
モクモクモクモク……
女「!?」
女「きゃあっ! なによこれ……爆……弾……?」バタッ
「ううっ……」バタッ 「もうダメ……」バタッ 「眠い……」バタッ
「クラクラする……」バタッ 「うぅん……」バタッ 「あと……少しなのに」バタッ
モクモクモクモク……
男(安心しな)
男(ただの催眠ガスだよ……じきに目を覚ますさ)
男(こっちの方に逃げれば……)タッタッタッ…
スケ番「待ちな! ここは通行止めさ!」バッ
男「!」
男「……だったらどうすれば通してくれるんだ?」
スケ番「ここを通りたきゃ、アタイに通行料を払っていきな!」
スケ番「アンタの童貞をな!」
男「……そうはいくか!」
スケ番「はあっ!」シュッ
スケ番「でりゃあっ!」シュッ
男(くっ……速いな! いいパンチを打ちやがる!)
男(ノックアウトされたが最後、あっという間に童貞を奪われちまう!)
スケ番「アタイはこの辺のワルで一番強いんだ!」
スケ番「アンタの童貞は、このアタイのもんだ!」シュバッ
バキィッ!
男「ぶっ……!」ヨロッ…
男(これは、本気を出さざるを得ないな!)
スケ番「もらったぁ!」シュッ
男「甘いっ!」サッ
ビシィッ!
スケ番「ううっ……」ヨロヨロ…
スケ番「アタイの攻撃をかわすと同時に、一撃入れる、なんて……」ヨロヨロ…
スケ番「つ、次こそは……」ドサッ…
男「悪いな……俺は童貞でいたいんだ」
OL「なかなかやるじゃない」クスッ
男「──む!?」
OL「だけど、ここまでよ!」ザッ
女子大生「私たち三姉妹が」ザッ
女子高生「あなたの童貞を奪うわ!」ザッ
男「お前たちは……スイーツ三姉妹!」
男(この三人まで動き出していたとは……俺もいよいよ有名になったもんだな)
男「なぜ、俺の童貞を狙う!?」
OL「頑張った自分へのご褒美よ」クスッ
男「頑張ったところ悪いが、褒美はやれないな」
OL「交渉決裂ね」
OL「さあ、行くわよ!」
女子大生「ええ、姉さん!」
女子高生「三人で協力すればきっと奪えるわ!」
男(これは手強い相手だ……)
男(まともに相手をしたら、コンビネーションでたちまち童貞を奪われる危険性がある)
男(仕方ない、ここは──)スッ…
男「あ……あ……あ……」ビクビクッ
OL「アハハハッ!」ギシギシ…
OL「あっけなかったわね! ああ~、いいわ~っ!」ギシギシ…
女子大生「早く私に回してよ、姉さん!」
女子大生「この日をどんなに待ちわびてたことか!」
女子高生「ま、私たち三姉妹にかかればこんなものよね!」
女子高生「こいつは一生性奴隷にしましょ!」
男「あぅ……さよなら、俺の、童貞……」ビクビクッ
OL「アハハハ……」ピクピク…
女子大生「次は……私の番……」ピクピク…
女子高生「私たちの性奴隷に……」ピクピク…
男(この幻覚剤……効果テキメンだな)
男(俺の童貞を奪うのは、幻の中だけでやっててくれ)
男「いい夢見ろよ……スイーツ三姉妹!」ザッ…
婦警「ここで会ったが百年目!」シュザッ
男「!」
婦警「さあ、大人しく逮捕されなさい!」
婦警「そして私に童貞を献上なさい!」
男(警察か……。国家権力相手に、ムチャなマネはできない……)
男(公務執行妨害にされちまうからな)
男「分かりました……大人しくします」スッ…
婦警「うふふ、観念したようですね。そういう素直な態度は大事ですよ」
婦警「この手錠で──」チャラッ…
男(今だっ!)バッ
婦警「えっ!?」
ガチャッ! ガチャリッ!
婦警(しまった……私と柱を手錠で結びつけた!)ガチャガチャ…
婦警(しかも、いつの間にかカギをスられて──)ゴソゴソ…
男「署に連絡すればなんとかなるだろ?」
男「それじゃ、さよならっ! これからも俺の童貞と市民の平和を守ってくれ!」ダッ
婦警「ま、待ちなさい! コラ~ッ!」ガチャガチャッ
男「ふぅ~……今日は一段と攻撃が激しいな」
男「ここまで逃げればなんとか……」コソコソ…
女レスラー「見つけたわよ!」ザッ
男「ゲッ、お前は女子プロレスのスター選手!」
女レスラー「さあ、童貞を奪ってやるから覚悟なさい!」グイッ
男「ま、待てっ! こんなコンクリートでパワーボムなんてやられたら──」
女レスラー「ええいっ!」ブオンッ
ドスンッ!
男「うっ……」ガクッ
女レスラー「悪いわね」
女レスラー「これぐらいしないとアンタの童貞は奪えないって分かってたから」
男「…………」ピクピク…
女レスラー「ふふふ、よく眠ってるわね」
女レスラー「さ、気絶しているスキに童貞を──」
女レスラー「!?」
ガシィッ!
女レスラー「さ、三角絞め……!?」
女レスラー「ま、まさか気絶するフリをしてたなんて……」
男「演技はプロレスラーの専売特許じゃないぜ?」グググ…
男「それに、あの程度のパワーボムで失神するほどヤワじゃないさ」グググ…
男「こちとら、生まれてからずっと童貞を守ってるんだからね」グググ…
男「さあ、早くギブアップしろ!」グググ…
女レスラー「な、なんの……これ……しき……」
男(仕方ない。ここで絞め落とさなきゃ、こっちが危ないからな!)
男「童貞パワー全開!」ギュウッ
女レスラー「うっ!」
女レスラー「ううっ……」ガクッ…
男「ハァ……ハァ……」
男「受け身をミスってたら、終わってたな……さすが女子レスラー」
男「手強い相手だった……」
パオ~ン…… ガルルル……
男「今度はなんだ!?」
メスゾウ「パオ~ン!」ドスンドスンッ
メスライオン「ガルルルル……」ダダダッ
男「!?」
男「メスのゾウとメスのライオン!?」
男(そういえばこの近くに動物園があったよな……)
男(檻から脱走して、俺の童貞を奪いに来たか!)
男(戦うか? いや──)
男(さすがにゾウやライオンと戦うのは無理だ! 逃げるしかない!)
男「くそっ……」タッタッタ…
メスゾウ「パオオオ~~~~~ン!」ドスンドスンッ
メスライオン「ガオオォォォォッ!」ダダダッ
男(速い!)
男(だけどゾウやライオンじゃ通れないような、細い通路に入れば!)サッ
メスゾウ「パォォォン……」ショボン…
メスライオン「ガルル……」ショボン…
男(ふぅ、助かった……)
男(動物は好きだけど……だからって童貞をくれてやるわけにはいかないもんな)
スタスタ……
男(えぇと、ここはどこだ?)キョロキョロ
男(ったく……逃げまくってたせいで自分がどこにいるのか分からなくなっちまった)
男(まず自分がどこにいるのか確認しないとな。どこかに地図は──)
「こっちから声がしたわ!」 「捕まえなきゃ!」 「出てらっしゃ~い!」
男「おっと、また俺の童貞を狙う女どもの声が!」サッ
男「俺に安息の時は来ないようだ!」ダッ
キャー……! キャー……!
ドドドドド……!
「どこいったの!?」 「逃がしちゃダメよ!」 「絶対奪ってやる!」
男(まだかなりの数がいるな)
男(催眠ガスや幻覚剤は使っちゃったし……さて、どう切り抜けるか……)
「オ~イ」
男「ん?」
帽子「こっちこっち」クイクイッ
男「!」
男「もしかして、俺を助けてくれるのか?」
帽子「ああ、こっちにいい抜け道があるんだ」
男「ありがとう。適当に逃げまくってたら、道に迷っちゃってさ」
帽子「なあに、ボクについてくれば大丈夫さ」
帽子「さ、ついてきてくれ!」タタタッ
男「よろしく頼む」タタタッ
男「ハァ……ハァ……」
帽子「だいぶ疲れてるようだね。でも、ここまで来れば、もう大丈夫だ」
男「ありがとう……」
男「ところで君は、どうして俺を助けてくれたんだ?」
帽子「そんなの決まってるじゃないか」ス…
男(あれ? 帽子の中の髪の毛、やたらボリュームがあるぞ?)
帽子「君の童貞は、ボク一人だけで奪いたかったからね」スッ…
男「え」
美女「このボク一人だけでね!」ファサッ…
男「な!? お、お前……女だったのか!」
美女「この時を待っていた!」
美女「君が武器を使い果たし、体力をも失ったこの時をね!」
美女「体力満タンの時ならともかく、今の君の童貞なら十分奪える」
男「……やってみろ!」
美女「たあっ!」シュンッ
ガシィッ!
男(しがみついてきた! なんてスピードだ!)
美女「まずはズボンを脱がす!」ズルッ
男「ぐっ!」
男「うっ……」ポロン…
美女「さて、脱がしたズボンとパンツは捨てて、と」ポイッ
美女「ソレとボクのコレが結合すれば、ボクの目的は完遂する!」ズルッ
男「それはどうかな?」
美女「なにっ?」
男「脱げた俺のズボンは……手にすれば武器になる!」サッ
男「せいっ!」ビュアッ
グルグルッ……
美女(しまっ──ズボンがボクの首にからみついて……)
美女「うぐぐっ……!」
男「安心しろ、殺しはしない。ただし、半日ほど眠ってもらう!」ギュウゥ…
グググ……
美女(ああっ……それにしてもこのズボン……)クンクン
美女(なんていい匂い、なんだろう……)ガクッ
ドサッ……
男「ハァ……ハァ……危ないところだった」
男「まさか下半身露出までいくなんて……もう少しでヤられていた」
男「さて……ズボンとパンツ履かないと」モゾッ…
BAR──
ヤリチン「よう」
男「お、君もいたのか」
ヤリチン「たまにはシャレたところで飲みたくなる日もあるのさ」
ヤリチン「ところでどうしたんだ? やけに疲れたツラしてるが」
男「童貞を守るために、女どもから逃れてたんだ」
ヤリチン「へぇ、お前未だに童貞なのか」
ヤリチン「すげえよな……なかなかできることじゃねえよ」
男「いや、そんなことないさ」
ヤリチン「だってオレなんか……」
ヤリチン「中学ん時、あっさりと童貞を捨てちまったもんな」
ヤリチン「そんでもってあれよあれよと、今や経験人数は5000人を超えた……」
ヤリチン「今日もすでに5人とヤッてる……」
ヤリチン「お前と違い、腰を振るしか能がない、しがない負け犬さ……」
男「そんなことないって」
男「俺が童貞を守るのは、あくまでこれが自分の生き方だからに過ぎない」
男「なら君が童貞を捨てたのも、それもまた君の生き方なんだ」
男「そこに優劣はないさ」
ヤリチン「いや、ある!」
ヤリチン「本能のままに生きるのが獣だとするなら……」
ヤリチン「人類はいかに理性によって、本能を抑え込むかに尽力してきた!」
ヤリチン「結果として、人類は地球で最も知的な存在になった!」
ヤリチン「そして、子孫を残すというのは、生物にとって究極の本能!」
ヤリチン「童貞ってのはそんな究極の本能に抗い続けてる──」
ヤリチン「この世で最も理性的で知的な生き物なんだッ!」
男「……そんな大げさなもんでもないだろ」
男「でも、君にそこまでいわれると、悪い気はしないな」
ヤリチン「それに比べてオレは……」
ヤリチン「オレはッ!!!」
ヤリチン「ズルズルと本能に流されるままに、女と関係し続け……」
ヤリチン「今や東日本のヤリチンゲールと呼ばれる始末……」
ヤリチン「お前に比べてなんて情けないことか!」
ヤリチン「ちくしょう!」ダンッ
ヤリチン「マスター、もう一杯だ!」
マスター「さっきから飲みすぎですよ……お客さん……」
ヤリチン「うるさい! 飲まないでやってられるか!」
マスター「どうぞ」スッ…
ヤリチン「ありがと」
ヤリチン「でも、オレはオレなりに新しい道に歩み出そうと思ってるんだがな」
男「へぇ、いいことじゃないか」
マスター「どうぞ、これはオゴリです」スッ…
男「あ、どうも」
男「それじゃ、再会を祝して、飲もう」グビッ
ヤリチン「おう」グイッ
男「ところで、新しい道に歩み出すって?」
男「!?」
男(な、なんだか急にすごく眠くなってきた……?)クラッ…
ヤリチン「オレ……いい加減、女にも飽きてきた頃でさ」
男「え」
ヤリチン「新しいことにチャレンジしてみようかな、と思ってたんだ」
男「睡眠薬か……!」グラッ…
ヤリチン「ご名答」
ヤリチン「お前の童貞……オレがもらってやるよ」
ヤリチン「大丈夫。お前が眠ってる間に、全て終わってるからさ……」ニヤッ
男「うおおおおおおおおおっ!!!」
ヤリチン「!?」
男「俺の童貞は……誰にも奪わせない!」
男「奪わせないぞおっ!!!」
男「たとえ旧友である、君にもな!」
ヤリチン「マ、マスター、これはどういうことだ!?」
マスター「バカな! あの睡眠薬はインドゾウをも眠らせるのに!?」
男「眠らない……寝てたまるか!」
ヤリチン「薬ぐらいじゃ、思い通りにはならないってことか……なんて童貞力!」
ヤリチン「こうなったら実力行使だ!」
ヤリチン「オレはそんじょそこらのヤるだけのヤリチンとは違う!」ズルッ
ヤリチン「正真正銘の“槍チン”なんだ!」ギラッ
男「!」
男(長く、硬く……そして鋭い! これがヤリチンの槍!)
ヤリチン「覚悟はいいな?」
ヤリチン「喰らえッ! ロング・グングニル・タートルヘッド・アタックッ!」
ギュルルルルッ!
マスター「ウォッカ・ファイヤーッ!」
ボワァァァッ!
男「女ニモマケズ」
男「男ニモマケズ」
男「槍ニモマケズ」
男「炎ニモマケズ」
男「己ノ誇リヲ守リ通ス」
男「そういう童貞に──俺はなりたいッ!!!」
ズガァァァンッ!!!
ヤリチン「オレの槍が……ヘシ折れてしまった……!」ガクッ
マスター「無念……」ガクッ
男「…………」
男「お酒、おいしかったよ」
男「さよなら、二人とも」スタスタ…
バタン……
ヤリチン「やっぱり……童貞にはかなわなかった、か」
マスター「フッ……負け犬同士、一杯やりましょうや」
キャー……! キャー……!
女「あっ、こっちにいたわよ!」
「待ってぇ~!」 「逃げないで~!」 「童貞ちょうだいぃ~!」
男「さて、酔い覚ましに少し走るとするか!」
己の生き様を貫くため、本能に逆行し続ける、異質にして孤高の生命体。
この世で最も気高く、儚く、尊ぶべき存在。
人はそれを“童貞”と呼ぶ……。
<完>