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第一話「恋とバイト少女と人形」
第二話「新しい部屋にご用心」
第三話「恋と人形のミステリー」
男(いよいよ明日は文化祭なわけだが、オレたち生徒会、及び文化祭実行委員のメンバーは昨日と今日と泊まり込みで作業していた。
怒涛の二日間は忙しすぎたせいかあっという間に過ぎて残すは明日と明後日の本番のみである。
そんでもって今は作業を全て終えたあとの自由時間。
オレは先輩と二人っきりで生徒会室で最後の文化祭の打ち合わせを終えて雑談をしているところだった。
夜の校舎と二人っきりの男女……なんてステキなシチュエーション!)
女「いよいよ明日は文化祭、だね」
男「まあ文化祭準備もずいぶんと長かったですよね。
夏休み頭から今日まで……まあそれも今日までだ」
女「んー、それにしても昨日から泊まり込みだけど、ここの校舎って汚いよねー。
昨日なんか廊下を普通にゴキブリが歩いてたからビックリしちゃった」
男「まあこの学校で改装工事とか色々してるのは、先輩たちみたいな一部の進学クラスの校舎だけですからね。
毎年文化祭は広いからって理由でこのオンボロ校舎でやりますけど……こっちも改装したらいいのに」
女「ある意味趣があると言えなくもないけどね」
男「七不思議の一つや二人つあってもおかしくない、って感じですか?」
女「それは私のコワイ話へのフリなのかな?
頼まれたらいくらでもしちゃうよ、私」
男「なんか今夜は興奮してるんでいくらでも話聞いてもいいかなあ、って気分なんでいいですよ」
女「なに、もしかして私と二人っきりでその上夜の校舎だからってエッチなこと考えてるってこと?
うわあ、やらしいなあ。さいてー」
男「ちがいますよ!
興奮っていうのは明日が文化祭だからですよ!」
男(まあ先輩が言ってることはわりと当たってるんだけど)
女「とりあえずこっから出ようよ。
あんまり夜遅くまで生徒会室使ってると先生たちに怒られちゃうし、こんな密室だと襲われたとき逃げられないし」
男「襲いませんよ。
だいたい僕は紳士ですしね、むしろ先輩のほうが僕を襲うんじゃないですか?」
女「……そうだね。
私も今少し変なキモチかも」
男「……え?」
女「ほんのちょっとだけだよ、本当にちょっぴり。
とりあえず校舎周りぶらぶらしない?
夜の学校ってコワイけどなんだかワクワクするし」
男「もしかして幽霊に会えるかもしれないですね」
女「幽霊は出てこられるとちょっと困っちゃうなあ。
私、幽霊苦手だし。
幽霊が出たら頼むよ、助けてね」
男「まあ、努力はしますよ」
男(今、この状況ならあの時の話をしてもいいかもしれない。
いや……)
女「どうしたの、えらい深刻そうな顔してるけど。
もしかして幽霊、コワイ?」
男「怖くないですよ、っていうかそんなこと今考えてなかったです」
女「じゃあなに考えてたの?」
男「ええっと、ですね…………そうだ、僕の怖い話を聞いてくれませんか?」
女「キミがコワイ話をしてくれるの?」
男「ええ、とっておきのヤツです。
まあそんなに長くないし、サラッと終わる話なんで聞いてもらってもいいですか?」
女「いいよ、私も話を聞いてもらったし。
それに、キミがどんな話をするのか興味あるしね」
男「ありがとうございます」
※
男「これは僕の実話であり、正直今でも思い出すだけで胸が痛くなる話です。
なんで今さらこんな話をしなければならないのか、そんな気持ちすら湧きそうなんですけど。
ていうかなんでこんな話を僕がしなきゃならんのだ、と話したいと言いつつ気分的にはむしろ逆なんですよね。
ああ、すみません。
前置きが長過ぎましたね、このままでは前置きの方が長い話になりかねないのでそろそろ本題へ入ります。
まあ、しかし本当に大した話じゃないしそもそも僕にとっては怖い話であり思い出話であるんですが、はたから聞くとちがう印象を持つかもしれません。
実は僕はですね、ある人が好きになったんですよ。
イヤイヤ、冗談抜きで本当にマジもんの恋ですよ。
あ、ちなみに好きになったのは同じ高校の人なんですけど。
え? カワイイのかって?
そりゃあもうそりゃ、この僕が恋に落ちた相手ですよ、文句無しにカワイイですしみんなからの人気者ですよ。
まあそんなことはどーでもいいんです。
僕と彼女はそこそこ、いや、個人的見解を申し上げればすごい仲がよかったんですよ。
正直に白状すると告白するまでもなく僕は両思いであると信じて疑いもしてなかったです。
だから僕はさっさと告白してその人とお付き合いしたい、そう思っていました。
しかしいざ告白しようとするとこれがなかなか緊張するものです。
僕は結局、彼女に告白しようと決意し実行に移すまでにはかなりの時間がかかったんですよ。
まあそれでも友達とかに相談して最終的に僕は告白することにしたんです。
まあ彼女と接する機会はかなりありましたし、告白するチャンスはいくらでもありました。
まあしかしチャンスがあろうとも僕にはチャンスを生かす力も度胸もありませんでした。
パワプロで言うならばチャンス×ってやつですね……ああ、わかりませんか気にしないでください。
しばらくはやっぱり告白できませんでしたけどまあしかし先にも言ったとおりチャンスはたくさんありました。
だからその何回もめぐってくるチャンスの中で僕はついにその人に告白したんです。
学校帰り、体育館裏に一緒に行ってそこで僕は一世一代の告白をしました。
あの時の感覚は今でも鮮明に覚えています、本当に言葉を一つ一つ出して行くたびに呼吸がどんどん乱れて声が震えましたね。
告白して真っ先に思い浮かべたのは自分がフられる姿でした。
あれほど仲がよくて告白したら絶対にオッケーされると言っておいてなんですが、告白した瞬間の僕は本当にフられる自分しか想像できませんでした。
彼女はなかなか返事をくれませんでした。
僕は頭をこの時なぜか下げて告白したので彼女の表情は見えませんでした。
なにも考えられませんでしたね、ただ早くオッケーなりノーだったり、とにかくなんでもいいから返事をくれという思いしかありませんでした。
ようやく彼女は返事をくれました。
なんて返事をくれたのかって?
なんだったんでしょうね……っと、冗談ですよ。
きちんと答えます、彼女はこう言いました。
「明後日の土曜日に返事をするからそれまで待って欲しい」
間違いなく彼女はこう言いました、このセリフは今でも一字一句間違いなく完璧に思い出せますよ。
まあそんなふうに言われたら僕はそれ以上追求できませんでしたし、今その場で返事をもらうのは無理だと諦めました。
まあその場でフられなかっただけマシ、そう前向きに考えておきました。
そして二日間、僕はひたすら身悶えるような思いで待ちました。
いやあ、本当にもう告白の答えばかり気になってなんにも手につきませんでしたね。
しかし僕も男、いや、漢としてひたすら耐え忍びましたよ。
さあ、いよいよ告白の答えの日です。
僕は指定された時刻の二十分前に学校につきました。
待ち合わせ場所は体育館裏、告白した場所と同じ場所です。
僕は自分の心臓のバクバクする音をかき消すようにひたすらB'zの「恋心」を聞いてました。
しかし、彼女はいつまで経っても来ないのです。
「恋心」が終わってどんどん曲が終わってきます。
でもアルバム最後の曲、「RUN」になってもまだ彼女は結局来ませんでした。
今思えば彼女にメールか電話でもするべきでした。
あの頃の僕にはそれをする勇気がなく、結局夜になるまで学校にいました。
まあ、最後はあまりに悲しくて帰ったんです。
彼女にフられるどころか、学校にさえ来てもらえなかった。
僕はその日、本気の涙で枕を濡らしました。
あの時ほど悲しかったことはたぶん、ないんじゃないかなあ。
ご飯は喉を通らないし、眠れないしで最悪の土日を過ごしました。
もう正直学校行くのやめようかと思いましたね。
ていうか実際に学校に月曜日は行かなかったですね、月曜日はどうしても彼女と会ってしまうので。
まあ結局次の日からは学校行ったんですけど、もし自分がフられたことがみんなに知れ渡ってたらどうしようかな、と思いました。
実際には誰も僕が告白したことは知りませんでした。
で、僕は気持ちをなんとか切り替えようと努力しました。
昼ごはんとかもヤケ食いしようと思いました、気持ちをまぎらわすために。
それで昼飯を購買に買いに行こうとしました。
そしたらですよ、教室に入ってきたんですよ。
買いに行こうとして、彼女が教室に入ってきたんです。
もう不意打ちすぎてビビりましたね。
しかも彼女、まっすぐ僕に向かって来るんですもん。
おいおい、ここでまさかの告白の返事をするのか……色んなやつが教室にいるのに。
そんなことを思ったわけですけどしかし、僕の予想とは裏腹に彼女は昨日僕が休んだ理由を聞いて普通に心配してくれただけでした。
他にはなにも変わったことがなかったんですよ、まるで僕の告白なんてなかったかのように。
いや、まるで彼女は僕から告白されてなんかいないようにさえ見えました。
それから僕は色々と遠回しに彼女に僕のことや僕の告白についてそれとなく聞きましたが、本当に告白の事実なんてないかのようでした。
これってつまりどういうことなんですかね?」
※
女「えっと……もしかしておわり?」
男「ええ、ここから先はどう頑張っても続かないのでこれ以上はないです。
さあ、ぜひ感想を聞かせてください」
女「え? そんなこと言われてもちょっと困るっていうかこれ本当に実話?」
男「ええ、まことに残念ながら実話も実話、完璧な実話です。
ていうかこの話、超怖くないですか?」
女「えっと、どこらへんが?」
男「だってこんなことってありますか?
僕が告白したという事実は彼女の中であたかもなかったかのようになってるんですよ!
いや、というか本当になかったんじゃないのかとすら最近では思ってしまいます」
女「まあ確かに悲しい話ではあるかもね……。
私もキミの立場なら泣いちゃってるかも」
男「本当に新手の男のフる方法なのかなあとすら考えちゃいますね。
……まあ、僕の話はこんなところです」
男(…………反応はなし、か)
女「なんか文化祭前日にする話じゃないねー。
まあ、元気出しなよ」
男「あ、はい。
まあもう過去の話ですから気にしても仕方ないと割り切ってますよ。
さあ、次は気を取り直して先輩の話に行きましょ」
女「そーだね、私の話で気を取り直せるかはわからないけど。
まあでも今回の話で私のコワイ話シリーズはとりあえずは終わりかな」
男「休載しちゃうんですか?」
女「だって、私、一応受験生だよ?
こういう話って考えるの楽しいけどやっぱり受験とかに影響するからさ。
明日と明後日の文化祭が終わればいよいよイベントは卒業式だけになっちゃうし」
男「まあ、確かにそうですね……」
女「だから、これが今のところの私の最後の話。
それじゃ、聞いてね」
第3.99話「消えた告白」 終わり
続きます
続き
女「せっかくだしコワイ話しない?」第四話