浜面「…何を言ってるんだ俺は」
絹旗「本当に何を言ってるんですかこの超浜面は」
元スレ
浜面「一方通行×絹旗とかどうだろう?」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1316089693/
絹旗「何でそんな意味不明なこと言いだしたんです?」
浜面「お前の能力について考えてたら、つい…な」
絹旗「いや、超ワケ分かんないんですけど」
浜面「だって、お前の能力って一方通行と関係あんだろ?暗闇の五月計画ってヤツで―」
絹旗「待ってください。何で浜面がそのこと知ってるんです??」
浜面「え?そ、そう!滝壺に教えてもらったんだよ!!」
絹旗「彼女に教えた覚えはありませんけど」
浜面「墓穴を掘っちまったぜい」
絹旗「どういうことです?そんな超プライベートな情報なんて、暗部経由でもない限り…」
浜面「すまん。その“暗部経由”なんだ」
絹旗「そういう浜面の正直なとこ、超好きですよ」
浜面「告白してくれたわりには目が笑ってないぞ絹旗?」
絹旗「で。誰から私のこと聞きだしたんです?そもそも、なんでそんな情報を聞き出そうと
思ったんです??何でそんな浅はかな思考に辿り着いちゃったんですか?答えてください
超キモくて間抜け面の害虫脳無しバカ面野郎」
浜面(死の気配を感じる)
浜面「この前よ…。俺、お前にコキ使われただろうが」
絹旗「いつものことじゃないですか」
浜面「うるせえ!!確かに俺はアイテムの下っ端要員だが…最近のお前はちょっと勝手すぎたッ!!」
絹旗「まさかとは思いますが…そのストレス発散法として、私の弱味でも握ろうと思ったんですか?」
浜面「そうだ!!だから暗部のヤツ…土御門ってやつに、お前の過去について聞き出した…!!」
絹旗「その対価として何円、その土御門さんとやらに支払ったんです?」
浜面「い…1万円」
絹旗「本当にバカですね浜面」
浜面「正直、今では後悔してる」
絹旗「でしょうね」
浜面「弱味も聞き出せなかった」
絹旗「まあ…浜面のその落胆した顔を見れば分かります」
浜面「ぼったくられた」
絹旗「だって1万円ですもんね」
浜面「俺は学んだよ。一時の感情に任せたらロクなことがないってな」
絹旗「良い勉強になりましたね」
絹旗「で、聞き出せた情報が“五月計画”であると」
浜面「…そうだな。それで、お前の窒素装甲ってのが一方通行の反射を元にして作られたってことを知った」
絹旗「なるほど。だから冒頭のようなイミフなことを言い出したんですね」
浜面「おう」
絹旗「いや、待ってください」
浜面「?」
絹旗「確かに、私の能力と一方通行に関係性があるのは超事実です」
浜面「うん」
絹旗「そこから、一体どういう化学変化が起こって“カップリング”なる概念が生まれたんです??」
絹旗「一体どういう因果関係があって、そんな発想になったんですか??私には超理解不能です」
浜面「自分自身も、何でそんなこと言い出したのか分かんないんだ」
絹旗「アホ面の脳内は常人では理解しきれないということですか。誰かここに第5位でも連れてきてください」
浜面「んなくだらんことで常盤台のお嬢様を呼ぶなっつうの…」
絹旗「冗談です。にしても、イラストが公開されて以来、彼女の人気は超ウナギ登りのようですね」
浜面「みたいだな。なんせ今までは心理掌握って能力名だけで、本名すら分かってなかったんだからな」
絹旗「なんか話がズレてませんか?」
浜面「本当だ」
絹旗「で、話は元に戻るわけですけど」
浜面「なんつーか、つまり魔が差したってやつなんだろうな」
絹旗「は?」
浜面「関係があるから結びつけた、ただそれだけの話よ」
絹旗「それがカップリングになっちゃうんですか」
浜面「魔が差したって言ったろ?そこに明確な理由などねえよ」
絹旗「…そうですね。これ以上考えるのはやめましょう。頭が超痛くなってきました」
浜面「まぁ、言ったのは本当に出まかせだったんだけどよ。実際のとこはどうなんだ?」
絹旗「いや、実際も何もまともに話したことすらないですし」
浜面「そうじゃなくて。共通項をもつ能力者同士、気にはならないのかって聞いてるんだよ」
絹旗「まあ、能力に類似性があるという点においては、全く気にならないと言えばウソになりますが。
かといって、とりわけ一方通行のことを超知りたいというわけでもないですけど」
浜面「実は、ここに一方通行の電話番号とメルアドがある」
絹旗「へ?」
浜面「というわけで、早速やつに電話だ!」ピッ
絹旗「え?ちょ、浜面―」
??『おかけになッた電話はァ、電波の届かないとこにー』
浜面「いきなり居留守かよ!」
一方通行『テメェか。何の用だ』
絹旗「って、わたし無視されてるし」
浜面「今ヒマか?」
一方通行『何の用だって聞いてンだよボケ。くだらねェ用事だったらぶち殺す』
浜面「え、ええーっと、その、何だ、暗部について分かったことがあるんでな!」
絹旗「そんなに必死に要件を捏造してまで、一体浜面は何がしたいんですか…」
一方通行『暗部…?それは今、ここじゃ話せねェのか?』
浜面「あ、ああ。できれば、お前と会ってじっくり話したい内容なんだ」
一方通行『チッ、面倒な野郎だな。俺はどこへ行けばいいんだァ?』
浜面「お!来てくれるか!じゃあ…」
……
浜面「というわけで段取りはついた。今から近くの公園に向かうぞ!」
絹旗「へえ。そうですか。超行ってらっしゃい」
浜面「超行ってらっしゃいじゃねえよ。お前も来るんDA!」グイッ
絹旗「ちょ、ちょっと!無理やり引っ張らないでください!!本当にどうしちゃったんですか浜面!?」
浜面「こ、こら!じたばたすんな…!あっ」
ムニュッ
絹旗「……」
浜面「……」
絹旗「世に言うラッキースケベってやつですね。触ってみての感想は…?」
浜面「そ、その…小さな胸だけど…。柔らかくて気持ちよかった―」
絹旗「バカ正直に答えくれてありがとうございます浜面。もちろん、超死ぬ準備はできてますよね?」
浜面「滝壺のためにも、俺はまだ死ねないんだよォォォォォォォォォォォ!!!!!!」ドドドドトドドドド
絹旗「逃げるんですかバカ面ッ!?」
浜面が外へ逃走してから5分後
絹旗「私としたことが…見失いました。確かにヤツはこのへんで消えたはずなのですが…」
一方通行「ン?テメェは…」
絹旗「!」
浜面(やった!待ち合い場所の公園に誘い込むことに成功ッ!!SE☆I☆KO☆U!)←木の茂みから
浜面(これで絹旗からも逃げられるし、うまく一方通行と鉢合わせさせることもできた。一石二鳥!)
絹旗「え、ええっと…」
一方通行「……」
浜面(くくく…これが俺のストレス発散法さ絹旗ッ!せいぜい一方通行の前で緊張したり取り乱したりして
無様な姿を観察者であるこの俺の眼前にさらけ出すがいい!!俺は、静かにここで見守るとするぜ…!)ワクワク
一方通行「お前…」
絹旗「な、なんでしょう…?」
一方通行「このへんで金髪のアホ面したバカ男を見なかッたか?」
絹旗「!罵倒語を一文に2語も混ぜるなんて、あなた中々できますね!」
浜面(変なとこで共感すんじゃねえよ!?)
一方通行「お前、面白ェな。罵倒の言葉が批難されることはあっても、褒められるとは思わなかッたぜ」
絹旗「どういたしまして♪」
浜面(何これ)
一方通行「しっかし公園には俺とお前の二人ときた。呼び出した張本人はどこにいるンだかァ…」
絹旗「浜面なら来ませんよ」
一方通行「?今何て言ッた?」
絹旗「実は私、浜面の代わりにあなたに謝りにきたんです。彼、来れなくなっちゃったみたいで」
一方通行「ほォ…そうか。まさかのドタキャンですかァ。っつうことは、大事な用ってのも嘘かァ!!」ビキビキ
絹旗「だから空いた時間、私が付き合ってあげますよ」
一方通行「…なンだと?」
浜面(おお。ちょっと予想外だが、これは面白いもんが見れそうだな!)ワクワク
一方通行「っつうか、今気付いた。お前、以前黒夜と戦ッたとき吹っ飛ばされてたヤツだろ?」
絹旗「なんと。覚えててくれたんですね」
一方通行「そりゃあんなマヌケな姿を見せられたらなァ」
絹旗「口の悪さは筋金入りですね」
一方通行「そんな口が悪いヤツと、お前はこれからどこに行こうってワケ?」
絹旗「考えてませんでした。どうしましょう?」
一方通行「…帰る」
絹旗「つれない人ですね。遊具を引っこ抜いて投げちゃいますよ?」
一方通行「投げてもいいがァ、抜いた時点で警備ロボが来るからやめとけ」
絹旗「それもそうですね」
10分後
一方通行「…で、いつまでお前はついてくるんだァ?」
絹旗「いやぁ、私も暇なんで」
一方通行「じゃあヨソにでも行け」
絹旗「うーん」
一方通行「何か理由でもあンのか」
絹旗「強いて言うなら、ちょっと気になったってとこですかね」
一方通行「気になったァ?」
絹旗「この窒素装甲ってあなたの反射を元に作られてんですよ。ほら、この能力です。
窒素でそばにあるこの自動車だって、楽々持ち上げられます♪もちろん投げられます!」ブンッ!
一方通行「…能力を披露するのは勝手だが、人様の車をぶん投げるたぁ、見上げたヤツだなァお前」
一方通行「チッ」
電極にスイッチを入れる一方通行。ベクトル操作で宙に浮いた車を定位置に戻す。
絹旗「おお!傷一つ付けずに着地させた!?」
一方通行「くだらねェことに能力使わせんじゃねェクソガキ!!」
絹旗「何で能力使っちゃったんですか?」
一方通行「そんなにアンチスキルやジャッジメントに捕まりたいかお前」
絹旗「というわけで、これが私の窒素装甲です」
一方通行「あぁ、そう」
絹旗「どうでもよさげな返事ですねェ」
一方通行「無理もねェ」
絹旗「というわけで、これが私の窒素装甲です」
一方通行「二度も言わなくていいから。とりあえず俺とテメェに関係があるってことだけは分かッた。
暗闇の五月計画ってヤツだろ。そンくらい俺も知ってる。だから気になってついてきたッってか」
絹旗「最初はそうでしたけど、今はぶっちゃけその理由はどうでもいいです」
一方通行「どうでもいいのに車を投げたのか」
絹旗「いやぁ、たまに車を投げたくなる時って超ありません?」
一方通行「ねェよ」
絹旗「ある!」
一方通行「ドヤ顔で言われても困る」
絹旗「とにかく。私があなたを気になってる理由…それは―」
上条「お!一方通行じゃん!久しぶりだなー。元気にしてたか?」
一方通行「!」
上条「それと、そちらの方もこんにちは。はじめまして、上条当麻って言います」
絹旗「こんにちは。絹旗最愛って言います。最も愛すると書いて、最愛って言います!」
上条「なんとー!?そりゃ凄く良い名前ですね!」
絹旗「ですよねっ!」
一方通行「おうおう、良い遊び相手が見つかってよかったなァ。じゃ、俺は帰る」
絹旗「ちょ、どこ行くんですか一方通行!?」
上条「…あの、もしかして俺、お邪魔でした?で、デートの途中だったとか…」
一方通行「待て待て待て待てッ!!テメェ何勘違いしてンだ!?これは―」
絹旗「そうですねー。うん、じゃあデートってことにしときましょうか♪」
一方通行「!?!」
上条「や、やっぱりそうだったのですか…。
一方通行、彼女は大切にしてあげるんだぞ。上条さんからのお約束です!」
一方通行「約束も何も、そもそも彼女でも何でもねェんだよこいつはァ!!?
というか、何でお前妙に上から目線なワケ!??」
上条「上から目線だって…?むしろ逆だぜ一方通行。俺は、彼女のいるお前が純粋に羨ましいんだよ」
一方通行「だからそれは―」
上条「くー!上条さんだってモテたいのに!!神様はいつだって不公平だ…
俺にも出会いってやつがほしいですよ。出会いがほしい…!」
一方通行「……」
一方通行(自覚がねェってのは、恐ろしいことだなァ)
上条「というわけだから、そんな照れて否定しなくてもいいんだぞ!このことは誰にも言わないからさ」
一方通行(もうダメだ…バカ女はもちろンだが、このバカ男にも付ける薬がねェ)
浜面(あれ?いつのまにか凄い展開になってる。もしかして全部俺のせい?)←絶賛ストーカー中
上条「じゃあなお前ら!末永く爆発しろよ!」
そう言い残し、二人から立ち去っていく上条当麻。
絹旗「爆発しろとのことです」
一方通行「平然とリピートしてンじゃねェッ!!!!!
どういうことだコラァ!!?なぜあんな嘘をついたッ!?!」
絹旗「いやぁ、そのほうが盛り上がるかなと思いまして。つまり空気を読んだというわけです」
一方通行「俺にとっては最大のKYだッ!!!!!」
絹旗「話を元に戻しますね」
一方通行「ハァ!?戻すってどこに!!?」
絹旗「落ち着いてくださいよ。ほら、私があなたを気になってる理由について、です。
さっき言いかけたじゃないですか」
一方通行「そンなこともあったな」遠い目で
絹旗「それはズバリ、あなたの口の悪さです」
一方通行「あの、本気で帰っていいか?」
絹旗「待ってください!今のは本心なんです!」
一方通行「本心だとしても意味分からンから帰る」
絹旗「実は、私もあなた同様、相当口が悪い部類に入ります」
一方通行「…ほォ」
絹旗「だからですかね。どことなく親近感を覚えるってのはあります。ちなみに、
これも能力による影響だって言われてますよ。証拠に…黒夜の口調だってぶっ飛んでたじゃないですか」
一方通行「俺の攻撃性を取り入れたのが、あいつの窒素爆槍だったか」
絹旗「そうです。お分かりいただけましたか?」
一方通行「分かった。じゃあな」
浜面(まずい!一方通行の野郎、完全に冷めてやがる!これじゃせっかくの楽しい観察タイムも終焉を…!)
絹旗(さーて、どうしましょうか…)
……
絹旗(浜面にやったような手段が、一方通行にも通じるでしょうか?…やってみる価値はありそうですね)
絹旗「一方通行!」
一方通行「ア?だから、もうテメェはお呼びじゃねェんだっつう―」
絹旗「///」ヒラヒラ
一方通行「」
絹旗「どうです…?パンツは極力見えないようにしてるつもりですが…///」ヒラヒラ
一方通行「」
ワンピースの裾をヒラヒラさせる。
浜面(絹旗のヤツなんてことをッ!い、いかん…鼻血がッ!!いいぞ!!もっとやれ!!!)ヨッシャアアアアアアアアアア
一方通行「…オイ、絹旗とか言ったか?」
絹旗「ようやく名前で呼んでくれましたね!」
一方通行「ちょっとこっち来いや」
絹旗「え?ちょ、ちょっと、どこへ…!?」
路地裏へと引きずり込まれていく絹旗
浜面(な!?一方通行の野郎、絹旗に何をするつもりだ!!?
まさか…あのヒラヒラで発情でもしちまったか!?こ、この展開はまずいぞッ!!)
絹旗「一方通行…?」
一方通行「黙ってろ」
絹旗「!?」ガツン
絹旗は壁を背に。顔の真横には一方通行の左手が、その壁へと突き出される構図となっている。
絹旗(せ…迫られてる…!?)
顔を近づけていく一方通行。キスするとも受け取られかねない事態だったが…肝心の相方は顔を背けなかった。
一方通行「……」
一方通行(何でこいつ、顔を背けたり逃げたりしねェんだ…?)
絹旗「…っ」
一方通行(あまりにしつこすぎるから、こんなことでもやりゃァ
ドン引きして逃げていくとか勝手に思ってたが)
……
一方通行(認識が甘すぎたか…?本当に何なンだこの女はよォッ!!?)
浜面(二人をつけてたことがバレたら俺は間違いなくフルボッコだが…今はそんなこと言ってらんねえ!
性欲という悪魔に憑かれた哀れな若人を止められるのは俺しかいねえんだッ!!)
浜面が一方通行と絹旗の前に飛び出そうとした…瞬間だった
??「そ、そこの人!一体何をやってるんですか!?」
一方通行「ンぁ?」
絹旗「はれ?」
浜面(え?誰だ?)
声のした方向へと振り返る3人
初春「じゃ、ジャッジメントです!そこの髪の白い人!今女性に何をしようとしてたんです!?///」
一方通行(あぁ…アレか。つまりレイプだと見なされてると。まぁ状況だけ見りゃそうなるわァな)
佐天「待った待った初春!まだ黒だと決めつけるのは早いよ!」
初春「え?どういうことです??」
佐天「キスされそうだった女性の顔を見てた?普通に受け入れてたように、私には思えたよ?
これって双方が合意ならセーフだよね。まぁ、当たり前だけどさっ」
初春「あ…!そ、そうなんですか!?」
初春は絹旗へと尋ねる。
絹旗「そうも何も、この人わたしの彼氏なんで…!」
一方通行「」
佐天「あちゃー。初春、恥ずかしい勘違いしちゃったね!」
初春「そ、そうだったんですか!!///じゃ、邪魔してすみませんでしたぁぁ…」グスグス
佐天「あーもう。落ち込まない落ち込まない!そんなドジっコ初春も可愛いな♪」ギュッ
初春「こ、こんな状況で抱きつかないでくださいーー!!」
そそくさと、その場から立ち去っていく初春&佐天。
浜面(今のコたち、なにげにレベル高かったな…。い、いかん!俺には滝壺という大事な彼女がッ!!)
一方通行「とりあえずだ、絹旗最愛」
絹旗「おお、今度はフルネームで呼んでくれましたね」
一方通行「どうしても今日、俺から離れる気はねェんだな?」
絹旗「んー、なんか、あなたといると楽しいんですよね」
一方通行「何がそんなに楽しいンだ…??」
絹旗「カオスさが!」
浜面(言い得て妙だな!)
一方通行「…ハァ。勝手にしやがれ」
ついに一方通行は考えることをやめた
一方通行「どっか、行きたいとことかあるか」
絹旗「ついに開き直ったんですか?」
一方通行「お前がそうさせたンだろうが」
絹旗「さも私を原因のように…」
一方通行「つっこまねェぞ」
絹旗「そーですね。じゃあ映画館に行きたいです」
一方通行「そんな見たいモンがあるのか?」
絹旗「どっちかと言うと、この映画を見て、あなたがどういう反応をするのかってほうが気になります」
一方通行「そォか。じゃ、行くか」
浜面(やけに淡々としてるな。まさか一方通行のやつも満更じゃ…)
絹旗「着きました。ここですよ」
一方通行「…随分と辺境なとこに来たもンだな。もっとでかいのかと思ってたが」
絹旗「メディアにバンバン載るA級映画ならともかく、私が好んで見るのはB級やC級モノですからね。
となると、こういう小さいトコぐらいでしかやってないわけですよ」
一方通行「変わってンなお前」
絹旗「マニアに向かって“変わってる”は褒め言葉です」
一方通行「タイトルは何だ?」
絹旗「『マジ怪奇1000%』です」
一方通行「ぶっ飛んでンな」
絹旗「独創的とも言えますね。とにかく中へ入りましょう」
一方通行「そして中には人もいねェな」
絹旗「所詮BC級ですから。私たち以外は4人だけですね」
一方通行「怪奇って言うからには、ホラーものかァ」
絹旗「絶叫系とは限りませんよ。サスペンスの可能性だってあります」
一方通行「そうだな。…ン?あいつは…」
御坂美琴がいた
一方通行(見なかったことにしよう)
美琴「黒子!話が違うじゃない!?私は可愛い動物ファンタジーものって聞いてここに来たのよ!?」
黒子「まぁまぁ。たまにはこういう世にも奇妙な物語も、一興というものですわよお姉さま!」
美琴「まさかあんた、始めから騙すつもりでここに連れてきたのね!?」
黒子「そ、そんな滅相もない!私はただ、お姉さまと仲睦まじく映画を見たかっただけで…!」
黒子(そして暗がりの中で怖がって抱きついてくるお姉さまを…!グフフフフフ!!)
浜面(何か、隣の女の子から邪悪な気配を感じる。マジ怪奇1000%)
映画が始まる
絹旗「そうそう、これはショートストーリーものなので、数10分しかありません。
どうか噛みしめてご覧になっちゃってください」
一方通行「おう」
……
美琴「こ、怖いよおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!」
黒子「お、お姉さまが私の肌にぃ!私の肌にぃ!!」
削板「なんのその!!これしきの恐怖、このナンバーセブンには通用しないぞ!!正義は勝つ!!HAHAHA!!」
一方通行(愉快な劇場だなァ)
そして映画は終了した
絹旗「どうでしたか?」
一方通行「とりあえず、怖ェとは思わなかった」
これまで幾度となく死と隣り合わせの体験をしてきた一方通行にとって、その反応は当然とも言えた。
一方通行「だが、“不気味さ”は感じた」
絹旗「それは興味深い感想ですね。恐怖は感じなかったわけですよね?どういうことです?」
一方通行「最後の殺人。結局、あの犯人は分からンままだったろ」
絹旗「え?犯人はあの共犯者じゃ?」
一方通行「…ありゃミスリードだなァ。あいつが殺したって証拠はどこにもねェし、
第一あれ以上殺人を犯す必要もなかったハズだ」
絹旗「じゃあ誰が…」
一方通行「殺人劇のドサクサに紛れて、他の誰かが犯人たちの意図とは別に殺っちまったか。
あるいはこの世のもンじゃねェ、何かしらの力が働いて死んだとかオカルトめいたもンかもしれねェなァ。
なんにせよ、そのへんは視聴者の想像に任せると言ったとこか」
絹旗「なるほど…。終盤のあの薄気味悪さは、そういうことだったんですね」
絹旗「しかし、本当によく考察しながら見てたんですね!こんな状況下ながら…尊敬します!!」
一方通行「こんな状況下?あぁ、そういや奴らの声を、
途中からシャットアウトしてたンだっけか。そろそろ解除しねェとな」
絹旗「え?もしかして映画を見てる最中ずっと能力を使ってたんですか?電池を消耗させてまでも!?」
一方通行「使用したのは本当に終わりの大事なトコだけだ。
それに、噛みしめてご覧になれって言ったのはテメェだろうが」
絹旗「…そんな些細なことでも守ってくれたんですね。私は、超嬉しいですよ」
一方通行「別に感謝するほどのことじゃねェ。じゃ、解除と」カチッ
美琴「怖かったぁぁぁぁぁぁッ!!もう二度と暖炉のある部屋に行けない…っ!!!」
黒子「お姉さま!!そういうときはいつでもこの黒子を呼んでくださいまし!!」グヘヘヘヘ
削板「Aが最後に死んだのはナゼだ!?どうしてあいつが死ななきゃならなかったんだ!!?
理不尽すぎる!!!この映画に続編はないのか!!?あるなら、ヤツは絶対蘇らすべきだ!!!
俺のスーパーパワーを使ってでもッ!!!!あ!そうか!!念じればいいんだなッ!!?
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!」
一方通行「確かに、これは凄い状況だァ」
浜面(あの絶叫男のせいで全然映画見れんかった…)
映画館を出る二人
絹旗「それにしても、本当に良い反応でしたよ一方通行!」
一方通行「良い反応も何も、ただ思ったことを口にしただけだが」
絹旗「見くびってたわけではないんですが…。正直、一方通行なら一言感想で済ませてもおかしくないと
思ってました。それをあんなに超考察してくれたってのは私にとって、超想定外だったんですね。
…私が映画好きなのは、さっき話しましたよね?」
一方通行「あぁ」
絹旗「これは私に限ったことではないと思うのですが。人ってのは、自分の好きなものを
懸命に見てくれたり、聴いてくれたり、考えたりしてくれるって行為は、やっぱ超嬉しいもんなんですよ」
一方通行「…そういうもンか?」
絹旗「超そういうもンです。あなたは、何か好きなものとかないんですか?」
一方通行「好きなものって…趣味ってことか?」
絹旗「そうですね」
一方通行「考えたこともなかったなァそういうの」
絹旗「これから見つけていけたらいいですね」
一方通行「そう…だな」
絹旗「今日は私のワガママに付き合ってくれて、超ありがとうございました!」
一方通行「ン?そういやもう夕方か」
絹旗「時間の経過は早いですねー」
一方通行「たそがれてやがンのか」
絹旗「そうかもしれませんね」
一方通行「……」
一体どういう心境の変化か。最初はあれだけ絹旗を鬱陶しく、避けようとしてた一方通行だったが。
いざ別れとなると、どうにも素直に喜べない自分がいた。
一方通行(…どうしちまったんだァ?俺はよォ)
絹旗「じゃあ、私はこれで…!」
一方通行「…おう」
そして、同時に一方通行は絹旗自身にも違和感を覚えた。何か様子がよそよそしい…気がした。
と、そのとき。1台の車が絹旗の横を通過した。そして―
バシャンッ!
絹旗「……」ポタッ
一方通行「……」
絹旗「……」ポタッポタッ
あろうことに車が水たまりをはね、絹旗は全身にその水しぶきを受けてしまっていた。
無論、上も下もびしょびしょとなる。
一方通行「お、オイ、大丈夫かー」
絹旗「…あンの車ァ…ッ!!」
一方通行「っ??」
絹旗「待てこらァッ!!!」
絹旗「…はっ」
一方通行「お、おう…」
絹旗「つい、地が出ちゃいました…」
一方通行「…お前が言った言葉は本当だったンだな」
絹旗「そうですね…。キレたりすると、つい…無意識にこうなっちゃいます」
能力に類似性があるため、口調まで一方通行の影響を受けているという話は本当だった。
絹旗「幻滅しましたか…?こんな叫び声だしちゃって…」
一方通行「は、ハァ??」
絹旗「こんな情けない姿も見せてしまうし…最悪です…!」
そう言って絹旗はその場を立ち去ろうとする。
一方通行「オイ!話はまだ終わっちゃいねェぞ!!?」
能力を発動し、一瞬で絹旗まで距離を縮める一方通行。そのまま彼女を抱きとめる。
絹旗「な、何を…!」
一方通行「お前ずぶ濡れなンだろ!?口調や見てくれを気にする前に、まずテメェの体を心配しろ!!
肌を冷やしたまま、家まで直行するつもりだったのかお前は??正気とは思えねェぞ…」
絹旗「…ッ」
一方通行「服に吸いついた水分、とってやるからじっとしてろ」
そう言うと一方通行は、一瞬にして彼女のまとっていた服を濡れる前の状態に戻す。
一方通行「まったくお前ってやつはァ…」
絹旗「…ありがとうございます。それと、…見えました?」
一方通行「…ァ?」
絹旗「透けてて、中が見えたりしましたか…?」
一方通行「……」
そういやブラの輪郭が見えてたような気もするが…。今は余計なことは考えないようにした。
絹旗「取り乱したりして…超すみませんでした。でも、分かってください。女の子として、
あんな口調も見てくれも…あなたには見られたくなかったんです。くだらない女の子の意地ってやつです」
一方通行「…スカートをヒラヒラさせてたのは、どこのどいつだァ?」
絹旗「あのときとは…状況が違うんです。意識してしまってるんですよ」
一方通行「……」
その後、各々の家へと戻った二人だったが…。どうも一方通行の心は“ここに有らず”のようだった。
一方通行「……」
そして、そんな一方通行を陰から覗く女性4人組。
芳川「どう?一方通行の様子は?」
黄泉川「どうも何か、いつもとは様子がおかしいじゃんな」
番外個体「キャハハハハハハ!!何なのあの一方通行の呆けた顔!?超受けるっ!!!」
打ち止め「も、もしかしてもしかして…」
黄泉川「どうした打ち止め?」
打ち止め「もしかしたら恋煩いかも!?ってミサカはミサカは大胆予想してみたり!!」
芳川「あ、あの一方通行が恋煩い…??」
番外個体「最終信号ちゃん、ついに狂っちゃった!?それだけは絶対ないわー。
あんな女心も分からないような男が恋とか、笑わせるのもいい加減にしてほしいよっ!!アハハハハ」
打ち止め「ち、違うもん!一方通行はいざとなったら女の子のことも…ちゃんと考えてくれる、
そんな頼りになる人!ってミサカはミサカは胸を張ってここに堂々と宣言してみる!!」
番外個体「おーおー、必死必死っ!」
黄泉川「二人とも落ち着くじゃん?あんま大声で話してたら一方通行に気付かれるじゃん」
打ち止め「ううー」
番外個体「そんなに言うなら、じゃあ賭けてみるっ?」
芳川「ちょっと番外個体。お金の賭けごとはダメだからね」
番外個体「安心しなさいなー。そんな非常識なこと、いくらミサカでも言わないからっ!」
打ち止め「番外個体がそれを言っても説得力ないかも…
ってミサカはミサカは黄泉川と芳川の心境を代弁してみたり」
黄泉川・芳川「うんうん」
番外個体「どんだけ信用ないのさミサカってー?まっ、いいや。賭けがオヤツなら、問題ないっしょ?」
打ち止め「オヤツ?」
番外個体「そうねー、一週間分のオヤツってことで、ここは一つ!
敗者は勝者にそのオヤツ全部割譲ってことでっ!」
打ち止め「う…地味にそれ結構痛いかもって、ミサカはミサカは素直に思ったことを口にしてみたり」
番外個体「あっれー?でも、要はこれって勝てばいい問題だよね。そんなに最終信号ちゃんは
自分の言葉に自信がもてないのかなぁ?一方通行が女の子のこともちゃんと考えてくれるっていう、
あれは嘘だったのかっ!だよねー!あんな自分勝手な奴がそんな思考できるわけ―」
打ち止め「一方通行はそんな人じゃないもん!いいよ、そこまで言うならミサカだって、
全力でオヤツを賭けてあなたと戦ってみせる!!ってミサカはミサカはここに宣戦布告をしてみる!!」
番外個体「そうこなくっちゃ♪」
芳川「うーん、相手を思いやる気持ちがあったって、それが恋煩いとは限らないと思うんだけど。
二人とも、いつのまにか論点が変わっちゃってるわね…」
黄泉川「まぁ、こういうのもいいじゃん?見てる側はすっげー面白いじゃん♪」
芳川「愛穂って本当に楽天的よね」
同じ頃、この騒動の首謀者HAMADURAは
浜面(結局あいつら、あの後どうなったんだろう…)
ナンバーセブン削板軍覇の妨害により(本人に悪気はないが)映画を集中して見れなかった浜面は
それが癪だったらしく、その後も映画館に残って一人『マジ怪奇1000%』を観賞していたのであった。
浜面(うーむ。変なプライドにとらわれず、尾行を続けてた方がよかったかも)
滝壺「ところでさ、浜面」
浜面「ん?何だ?」
滝壺「今日はどこへ行ってたの?携帯に鳴らしても出てくれなかったし…」
浜面「え?そ、それはだな、つまり…」
浜面(…もし本当のことなんて言ってみろ。間違いなく俺は、
あまりの行動のくだらなさに!!滝壺に幻滅されることになるであろう!!よって言わない)
浜面「く、車だよ車!ヤボ用で手に入れた中古車の改造に忙しくてよ!なるべく低コストで
スピートを出せるタイプにしようと思っててな!そうだ、完成したらお前にも乗せてやるよっ!」
滝壺「…?なんか怪しい気がするけど、まぁいいや。そうそう、絹旗についても聞きたかったんだけど」
浜面「え…?」
滝壺「麦野から連絡があったんだよ。何か絹旗の様子がおかしいって」
浜面「なんと」
滝壺「本人は『何でもないです!』って言ってるみたいだけど、どうも普段とは違うんだって」
浜面「そ、そうか…」
浜面(まさか、本当に仲が進展しちまったんじゃないだろうな?
相手があの一方通行なだけに、そんなことは有り得ねえと高をくくってたが…)
滝壺「私にも麦野にも心当たりがないし、浜面なら何か知ってるのかなって」
浜面「い、いや、俺も何も。たまたま体調が悪かったとかそういうオチだろ?
人間なんだし、たまにはそういうこともあるって!」
滝壺「そういうもんなのかな」
浜面「そうだそうだ!」
滝壺「何か浜面強引」
浜面「俺はいつだってワイルドだぜ?」
滝壺「はいはい」
そして翌日
一方通行「……」
一方通行(…なぜか寝付けンかった。いよいよ重症だなァこりゃ…何が重症なのかは知らねェが)
携帯に目を移す一方通行
一方通行(どうも、あまり気分の良くない別れ方だったなありゃ。
心残りってのはこういうことか…。かといって、俺はヤツと連絡を取る手段もない)
……
一方通行「…まァ、ないこともないか」
Prrrrrrrrrrrrrrrr、ガチャッ
浜面「朝っぱらから誰だよ…もうちょい寝かせてくれや…zzz」
一方通行『…俺だが』
浜面「へ!?一方通行ッ!!?お前からかけるとか、ど、どういう風の吹きまわしだ??」
一方通行『ちょっと頼みたいことがあるンだが』
……
一方通行『…というわけでヨロシクな』
浜面「そ、そりゃ別に構わないが…。な、なあ、お前ホントに何があった??」
一方通行『さァな。自分でも分かんねぇンだ。テメェに分かる道理もねェ。じゃ、切るぞ』
浜面「お、おう」
ガチャッ
浜面「……」
浜面(今の、確かに一方通行だったよな?)
……
浜面(まさか、あいつが絹旗と喫茶店で会えるよう、セッティングを頼んでくるとは…)
浜面「とにかく絹旗にも連絡しねえと」
Prrrrrrrrrrrrrrr、ガチャッ
絹旗『もしもし?…なんだ浜面ですか』
浜面「明らかに今、俺が相手でテンション下がったよな」
絹旗『そりゃ誰だって好き好んで、朝っぱらから浜面ごとき声など聞きたくありませんよ』
浜面「滝壺」
絹旗『…切っていいですかァ?』
浜面「わー!ちょっと待て!お前には伝えにゃならんことがあるんだよ!!」
絹旗『手短にお願いしますね』
浜面「今日の朝10時、いつもの喫茶店で待ち合わせな」
絹旗『え、今日アイテムで何かあるんですか?麦野は何も言ってませんでしたけど…』
浜面「相手はいつもの面々じゃねえよ。一方通行が、お前に会いたいんだってさ」
ガッシャアアアアーン!
浜面「!?ちょ、どうした絹旗!?」
絹旗『す、すみませんイスから転げ落ちてしまいました…。だ、誰が私に会いたいって…??』
浜面「聞こえてなかったのかよ。一方通行だよ一方通行」
絹旗『あの、マジで言ってるんですか?』
浜面「俺も信じられんが、これはマジなんだ」
絹旗『…朝の10時ですよね?』
浜面「そうだぞ」
絹旗『あああー!!どうしましょう浜面!?私、身支度全然整ってませんよ!!?』
浜面「お、落ち着け絹旗!まだ時間は8時だぞ!?十分間に合うじゃねえか??」
絹旗『そういう問題ではなく、心の準備が…!』
浜面「…とにかく、健闘を祈る」
絹旗『ちょ、浜面―』
ガチャンッ
浜面「ふう…」
……
浜面「1つ、分かったことがある」
浜面「(なぜか)良い雰囲気だ」
そういうわけで2時間後
絹旗「……」
一方通行「……」
絹旗「き、昨日はどうも…」
一方通行「お、おう…」
一方通行(何やってんだァ俺は…。呼び出した本人がこれじゃ、示しがつかねェぞ?)
絹旗「あ、あの!」一方通行「あのよォ…!」
絹旗&一方通行「あっ…」
一方通行「そ、そっちからでいいぜ?」
一方通行(ダメダメじゃねェか俺)
絹旗「あ、じゃあ、ええっと。昨日はすみませんでした…」
一方通行「?何で謝るンだ…?」
絹旗「だって…。私、逃げるようにして帰っちゃったじゃないですか。
しかも助けてもらったにもかかわらず。超最悪です」
一方通行「…別に気にしてねェよ。女は女で、何か考えるところがあったンだろ?
だったら、それ以上問い詰める理由、俺にはねェ」
絹旗「超優しいです一方通行」
一方通行「そういう言葉は、俺以外の全人類に言ってやれ」
絹旗「相変わらずそういうところは頑なですね。…で、あなたが言おうとしてたことは何です?」
一方通行「…昨日は楽しかったか」
絹旗「?もちろん超楽しかったですよ?」
一方通行「俺なんかと一緒にいてか?」
絹旗「『なんか』っていうのやめてください。私は“一方通行”といられて、本当に超楽しかったんですから」
一方通行「…変わってンなお前も」
絹旗「また言われちゃいました♪」
絹旗「そうだ。せっかくですし、電話番号とメルアド交換しましょうよ!
これで、あの超浜面を経由せずに一方通行に連絡を取ることができます!!」
一方通行(経由…)
一方通行「そういや俺らって、あいつがいなきゃ、
そもそも黒夜の一件以来、会えたかどうかも分かんねェンだよな」
絹旗「…確かにそうですね。それは認めます。浜面ごときですが、まさに感謝ってやつですね」
一方通行「だな。じゃ、送信するぜ?」
絹旗「はい。超受信します」
一方通行「…前から思ってたが、お前って随分とまぁ独特な『超』の使い回しするよな。
その『超受信』ってのは、『受信』と何が違うんだァ?」
絹旗「つまり、思いっきり受信するってことですよ!」
一方通行「気持ち多めにってか」
絹旗「そういうことです♪」
時は遡り午前9時。視点は浜面へと帰する。
浜面「というわけで、二人には集まってもらったわけだが!」
滝壺「怒ってるわけじゃないけど。何で昨日の時点で言ってくれなかったの?」
浜面「それはすまんかったな…。互いに意識してんなと思ったのが
今日の朝だったんだよ!だから、許してくれな」
滝壺「まぁ、いいけど」
麦野「しっかし、まさか絹旗のヤツが本気で第1位に熱をあげてたとはねぇ…。
正直、それ聞いたときは面喰ったよ」
滝壺「でも、本気の恋なら応援してあげたいよね」
麦野「まぁ…ね。相手が第1位ってのが気に食わないけど、そこは気にしないようにする」
浜面「二人とも良い奴だな」
滝壺「浜面だって同じ考えだからこそ、私たちを呼んだんでしょ?」
浜面「話が早くて助かるぜ!実はとある作戦を立ててきたんだがな…」
……
麦野「却下あああああああああああああッ!!!」
浜面「ど、どうして却下なんだ!?ってか、何で怒ってるんだ!!?」
滝壺「いや、そりゃ麦野が怒るのも無理ないと思うよ…」
麦野「私がマスクかぶって絹旗を人質にとって、それを一方通行が助けるって状況を演出するだぁ!!?
はまづらあああぁぁぁぁぁ!!テメェふざけてんのか!!?そんなに私には悪人がお似合いかぁッ!!?」
浜面「だ、誰もそんなことは言ってねえだろ!?ただよ…二人を一気にくっつけるには奴を、
一方通行をヒーローに仕立てる演出も悪くねえと思ったんだよ…」
滝壺「百歩譲ってその考え方がアリだとしても」
麦野「百歩譲らなくてもナシッ!!!」
滝壺「麦野と絹旗の付き合いは長いんだよ?いくらマスク等使って顔をごまかしたとしても、
声や体格、雰囲気ですぐ麦野だってバレちゃうと思うの。そしたら、その時点でこの作戦は終了だよね。
だって身内が絹旗を捕まえたところで、絹旗自身『何やってんの?』程度にしか思わないだろうし、
そんな状況で一方通行がヒーローに映えるような、緊迫した環境が作り出せるわけがないもんね」
浜面「まことにもって反論の余地もありません。的確な指摘ありがとうございます滝壺様」
麦野「そもそも、何で襲う役があたしなのよ!??テメェが自分でやりゃいい話だろ!!?」
浜面「あのなぁ麦野。俺みたいなレベル0が、レベル4の窒素装甲女を
まともに抑えつけられるとでも思ってんのか?」
麦野「納得」
滝壺「確かに浜面の場合、すぐ逆襲くらって終わりそうだよね」
浜面「悲しいが、まあそういうことだな。同じ理由で滝壺もダメだ。
だから、この役はレベル5の麦野にしか任せられねえと思ったんだよ」
滝壺「私としては、仮に麦野がこの作戦に賛成だったとしても、私は麦野にその役はやらせたくないかな」
浜面「え…?」
滝壺「浜面さ、絹旗のことばかり考えてるけど、それを助けるのは一方通行っていう、
学園都市最強の第1位なんだよ?もし、何かの拍子で麦野が大ケガでもしたら―」
麦野「待って滝壺。その発言はちょっと見逃せないねえ?第1位だから危ないだぁ??
はっ!!私が本気出したら、あんな奴一人くらいひねり潰して―」
浜面「第2位にすら手も足も出なかったヤツが何言ってんだ…」
麦野「……」
麦野「ならもう一回第2位にリベンジさせろおッ!!?今度こそ絶対私が勝つッ!!!」
浜面「落ち着け麦野!第2位の未元物質はもうこの世にはいないんDA!」
滝壺「体の一部分は冷蔵庫に保存してあるって聞いたことあるけど…。とにかく麦野落ち着いて」
麦野「くっ…」
浜面「しっかしありがとな滝壺。もしお前が指摘してくれなかったら、この危ない役、麦野に任すとこだった」
滝壺「今度から気をつけてね浜面」
浜面「けど、これで話はふりだしに戻っちまった。襲うのに適任なやつ、誰かいねえかな」
滝壺「その『襲う』って作戦自体を見直す考えはないんだね」
麦野「そもそも第1位を、ケガするからとかいう理由で引き合いに出してたら、その作戦自体、
実行不可でしょうが。第1位と対抗し得る力をもち、且つこんな見返りもない…リスクしか背負わないような
作戦を引き受けるくらいのとんだお人好し。こんな破格な条件そろえた人間とか、この世界にいるのかよ」
浜面「…いや、待て。第1位と対抗し得る力をもち、且つとんだお人好しの人間が、いた」
麦野「え?マジで?」
浜面「そうと決まれば早速電話だ!」ピッ
Prrrrrrrrrrrrrrrrrrr
……
上条「というわけで、上条さんはここへとやって来たわけですが…」
麦野(なるほど、こいつがいたか)
滝壺(灯台もと暗し)
上条「まずは…皆さんおはよう!麦野さんと滝壺さんは会うの初めてだよな。よろしく!上条当麻です!」
麦野「麦野でいいよ。よろしくね」
滝壺「滝壺です。同じくよろしくお願いします」
上条「あなたがその…浜面の彼女さんですか?」
滝壺「はい。夫がいつもお世話になってます」
上条「え!?浜面!お前、結婚してたのか!?」
浜面「滝壺さんよぉ…。こいつ、あんま冗談が通じねえんだ。極力からかわないでくれな…」
滝壺「ごめんね浜面」
上条「そ、そうかウソだったのか。けど彼女だよな…。くうー!
一方通行といい浜面といい、上条さんはとても羨ましいんですよ」
浜面(何でこいつ、自分がモテてるって気付かねえんだろう)
浜面「ところで、さっきから上条の後ろにもう一人いるみたいなんだが…」
美琴「ど、どうも…」
麦野「だ、だ、第3位!!?」
滝壺「麦野動揺しすぎだって」
麦野「これが落ち着いていられるかあッ!!?第3位ィ!あのときの決着はまだついちゃいな―」
浜面「麦野、頼むから今は黙っててくれ。余計に事態が混乱する」
麦野「はい…」シュン
滝壺「おー、麦野いいコいいコー」ナデナデ
美琴(第4位にこんな側面があったなんて??)
浜面「で、何で超電磁砲までついてきてんだよ上条…」
上条「じ…実はだな」
……
浜面「つまり俺の家まで全速力で走ってたら、それを超電磁砲に見つかってしまったと」
上条「あぁ…。それでワケを話したら、『私も行く!』って言われたんだ」
美琴「だってそうでしょう!?いくら二人をくっつけるためとはいえ、
あの一方通行と対峙させるなんて…。そんな危険なこと、こいつには任せられないわ!!」
上条「でも俺、一方通行に勝ったこともあるじゃねえか。だから、なんとかなるって!」
美琴「当たり前のように言わないの!あのときだって、一歩間違ってたらあんた死んじゃってたんだから…っ」
上条「御坂…」
浜面(すぐ近くにこんな心配してくれる奴がいんのに、自覚がないのが上条当麻なんだよなぁー)
麦野「文句言うためだけに来たんならさぁ、あんたがその役やりゃいいんじゃない?第3位」
美琴「え…」
麦野「それとも何か、過去のトラウマでもあって第1位とは戦えないってか」
美琴「そ、それは…!」
上条「麦野さん!!いや、麦野でいいんだっけか。こいつの過去は、そんな他人が軽く扱っていいほど
薄いもんじゃねえんだ。だから、そこは…理解してやってくんねえかな?」
麦野「な、何ムキになってんのさ…。わ、分かったよ。言わなきゃいいんでしょ!」シュン
滝壺「むぎのん、今日はテンションの落差激しいね」ヨシヨシ
浜面「上条、やっぱこの作戦はいいわ」
上条「え?何言って―」
浜面「今までが今までだ。お前ならなんとかなると思って安易に役をお願いしたが…。もうちょっと、
自分を心配してくれる人間のことも考えろっての。そうまでして、俺はお前に強いたりはしねえよ」
上条「浜面…」
浜面「もっとも、襲う役といっても…そんなに危険なものとは、俺自身思ってないんだぜ。
もし絹旗を抑えつける能力があるんなら、俺が買って出てるさ。今の一方通行が人を殺す、ましてや
それが知人なら尚更。大ケガさせるような真似、やらかすとは思えんからな。そこは…奴を信用してる。
だが、そこの超電磁砲はいまだそれを信じ切れていない。ただ、それだけの話だ」
麦野「第3位…。あんたさぁ、まだ一方通行のことは許してないわけ?」
滝壺(復活が早いのも、麦野の良いところだね)
美琴「私だって…そんなに強情じゃないわよ。あいつ(一方通行)の活躍はこいつ(上条)から
随分聞かせてもらったし、あいつが…今と昔じゃ全然違うんだってことも知ってる。頭じゃ分かってるの。
けど、こいつが万が一にもケガしたら嫌だ…。そんな可能性を考えてしまう時点で、いまだ私は一方通行
のことを完全には信じ切っていない…ってことなのかもしれないわね。そういう自分にも嫌になるけど」
滝壺「じゃあさ、二人で一緒にやればいいんじゃない?」
上条&美琴「え」
滝壺「絹旗と一方通行、二人をくっつけるのがこの作戦の目的だけど…。
別に、そこだけに固執しなくてもいいんじゃないかな。だって、浜面が考えた作戦なんだよ?」
浜面「滝壺…言うようになったな」シクシク
滝壺「今の一方通行が、実際にどういう人間なのかが分かるって点においても、この作戦は
御坂さんにとって…彼を知る良い機会になると思うの。…と、偉そうなこと言ってごめんなさい」
美琴「いや、確かに滝壺さんの言う通りね」
上条「御坂??」
美琴「いつまでも、あいつのことを知らないまま生きるってのもどうかと思ってた頃だから…!」
上条「そっか…。よし!じゃあ、よろしく頼むぜ御坂!」
美琴「ええ!同時に、あんたが無茶しないようキッチリ監視もしておくから!」
上条「やっぱそうなるのね…」
浜面「じゃ、そうと決まれば早速作戦会議だ!」
麦野「張り切ってるところ悪いけどさぁ、もう浜面は作戦立案からクビにして、
参謀は滝壺先生に任せちゃった方がいいんじゃない?さっきから的確なこと言ってんのは彼女なんだし」
浜面「全く反論できないのが悔しい…ッ」
滝壺「大丈夫。私はそんな浜面を応援してる」
それから3時間後の午前11時。喫茶店にて。
一方通行「…そろそろ出るか?」
絹旗「そうですね。ちょうど良い頃合いですし」
一方通行「しかし、まさかお前に携帯のメール機能について教わることになるとはなァ」
絹旗「これで絵文字や顔文字が超打てますね♪」
一方通行「超が付くぐらい、俺が使う日が来れば、の話だがなァ…」
絹旗「じゃあ、私に今度そういうメールしちゃってください!超期待してますから♪」
一方通行「そォかそォか。まぁ考えとくぜ」
一方通行(今日初めて会ったときと比べたら、随分会話がはずむようになりやがった。
こいつが積極的だからってのも、もちろんあるが…。これも慣れってやつなんですかねェ)
二人は喫茶店を出る。
絹旗「さて。この後どうしましょう?ちなみに、私に用事はないですよ」
一方通行「奇遇だなァ。俺もなかったところだ」
絹旗「そうですか!じゃあ、とりあえずは…」
??「き、絹旗絹旗!ちょっとこっちに来てくれないか??」
絹旗「え…?は、浜面??ど、どうしてここに??」
浜面「いいからこっちに来てくれ!大事な話があるんだ!」
絹旗「で、でも…」チラッ
一方通行「ン?俺はここで待ってっから、さっさと行ってこい」
絹旗「あ、はい!すぐ戻りますね!」
……
絹旗「浜面のヤツはホントにもう…。こんなところで一体何の用なんです!!?って、いない…?
変ですね。確かにこっちの曲がり角に来たと思ったのですが…。ちょっと浜面!?隠れてるなら怒りま―」
ガシッ
絹旗「!?」
??「ゴメンな…ちょっと動かないでいてもらおうか」
マスクをかぶった男にいきなり右手を掴まれ、後ろから拘束される形となる絹旗。
絹旗(何のつもりは知りませんが、バカな奴もいたもんですね…。
私が右手から窒素を出せば、その瞬間こいつは一本背負い―)
そこで絹旗は異変に気付く
絹旗(!?窒素が出ない??)
それもそのはず。その手を幻想殺しの右手に掴まれているのだから。
上条(自分でしていて何だけど、結構こういう役って良心にくるもんだな…。マジ、ゴメン絹旗!)
もちろん絹旗は、背後の人物が、内心では謝り倒してることなど知るよしもない。
絹旗(なら、左手で…!)
そう思ってた矢先、今度は左手をも誰かに掴まれる。
絹旗「ッ!?」
??「今ここからゼロ距離で億単位のボルトを流されたら。さすがの“窒素の壁”も、防ぎようがないわよね」
瞬間、絹旗はこれが脅しではないことに気付いた。レベル4として、そしてこれまでの実戦経験からの直感。
この左後方の人物が、麦野と同じレベル5相当であることを瞬時に彼女は読み取ったのだ。
となると、そんな超能力者で電気を扱う人間は、この学園都市には一人しかいない。
絹旗「超電磁砲…?何のつもりですか…!?」
美琴「とにかく、今は私たちの言うことを聞いて」
美琴(ってか正体バレちゃったじゃない!!?せっかく恥ずかしい
思いをしてまでマスクかぶって出てきたっていうのに!!)
もちろん絹旗は、背後のもう一人の人物が、内心では超恥ずかしがってることに気付いていない。
絹旗「…っ」
背後二人の心境はともかく。こうなってしまうと、絹旗もただの“中学生”である。
絹旗(完全に動きを封じられてしまいました。情けない限りです…)
一人が超電磁砲ということは、もう一人もレベル5相当であることは間違いないはず。
そんな二人に後ろから拘束されてるという状況を、改めて認識した絹旗。そして当たり前だが、
どうにもその二人からは友好的な空気は感じられない。話し合ってなんとかなるものでもなさそうだった。
絹旗(…っ!)
それを強く認識したせいか、わずかではあるが自分の体が震えてることに気付く絹旗。
絹旗(本当に情けないですね…。仮にも暗部だった人間が、なんたるザマですか…)
認めたくはなかったが、これはたぶん“恐怖”という感情なのだろうなと…。そう考えざるを得なかった。
……
一方通行「…遅ェな」
絹旗が路地裏に消えて5分が経過していた。まだ5分、と言われればそれまでだが、
どうも先ほどの『すぐ戻ります!』を鑑みる限り、5分というのは少し長いようにも感じた。
一方通行(絹旗…?)
そして後ろのマスクの男が、ここで意味不明なことを言い出す。
上条「おい。ただちに『助けて!』って大声で叫ぶんだ」
絹旗「…え?」
驚くのも無理はない。そんなことをしたら助けがきてしまうではないか。
だとしたら、それは彼らの首を絞めるだけ。なのに、なぜこんな命令を…
美琴「…命令が聞けないようね。なら、ちょっとこっちのほうを見なさい」
抑えられてた体の向きを、わずかにずらされる。そこで絹旗が目にした光景は―
絹旗(!!?麦野!!浜面ッ!?)
道路の端で。二人がうつぶせになって倒れてるのを発見する。そして…。追い打ちがかかる。
上条「まだあの二人には息がある。だが、今すぐ命令が聞けないようなら…。
今ここで、奴らの息の根を止めてやってもいい」
絹旗(そんな…っ!!)
上条(はぁ…。いつまで上条さんは、こんな下衆な悪役務めればいいんでせうか)
美琴(後ちょっとなんだから頑張りなさいよ!)
絹旗(麦野をも倒すなんて、やっぱりこいつら尋常じゃない…っ!!)
絹旗「……っ!!」
絹旗(なぜ二人組があんな命令を下したのかは分からない。その意図も分からない…。けど!!
今はこれに従う他ない!!そうしないと麦野と浜面は…ッ!!それに一方通行なら…!
きっと駆けつけて、そして助けてくれる!!!)
そう信じた瞬間だった
絹旗「一方通行!!!助けてっ!!!!」
一方通行「!?」
一方通行(クソがァ…ッ!!嫌な予感が当たりやがったか!!?)
すぐさま、絹旗が向かっていった路地へと入りこむ一方通行。
一方通行「ッ!」
絹旗「一方通行…っ!」
上条「やっとお出ましか。遅かったぞ」
一方通行「テメェら…ッ!!?絹旗に何してやがるッ!?!」
上条「何してるって、見ての通りさ。で、君はどうするつもりかね。このコを助けるのか?」
一方通行「あぁ??助けるとか助けないとか、それ以前に。とりあえずテメェらの八つ裂きは決定だがなァ」
上条「ひ!?ひいいいいいいいいいいいいっ!!?」
美琴(ちょ、ちょっと!何、地を出してんのよ!?私だって怖いのすっごく我慢してんのにッ!!!)
絹旗(あれ?後ろの人たちから、急に小物臭が…)
一方通行「っつうわけで、覚悟しろや…!!」
ベクトル操作を足にかけ、瞬く間に上条の真横へと出現する一方通行。
上条(相変わらず速ぇなオイ!!?)
美琴(浜面!!早くッ!!)
浜面(言われなくても分かってる!!半蔵特製の、この火薬兼けむり爆弾を喰らえ!!)
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
上条(この爆発は!一方通行が俺らを倒す過程で起こったものだと…絹旗に認識させるもの!!)
美琴(そして、私たちはこの煙に紛れて逃走する!!)
浜面(俺たちの命も助かるし、この爆発の衝撃で敵が吹っ飛んだと絹旗に認識させれば…!)
麦野(作戦はこれにて完了ね!!)
しかし、そうは問屋が卸さなかった。
一方通行「オイオイ…なんだこりゃァ?目くらましのつもりかよ」
上条「!!」
美琴「予想以上に煙が晴れるのが早いっ!!?」
浜面「やっぱ一方通行のベクトル操作はすげえなぁ!さすが第1位!!」
麦野「感心してる場合かよ!?」
浜面「ってか、よく考えたら死んだふりしてた俺らは逃げる必要なかったんじゃね??」
麦野「!しまった!」
美琴(それって作戦前に何度も滝壺さんが言ってたことだと思うけど…。
浜面はともかく、第4位さんもドジっコだったのね…)
上条「お、おい!御坂!!危ねえッ!!!!」
美琴「え…!?」
一方通行「逃がさねえぞオラアァッ!!!!」
マスクをかぶってるため、一方通行には彼女が美琴だとは分からない。彼の攻撃が…直撃しようとしていた。
美琴(…やるしかないっ!!!)
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!!!!!!!!!!!
一方通行「おォ!?」
突然の頭上からの雷に、思わず体を翻す一方通行。美琴はスレスレのところで、直撃を免れた。
美琴(…最大出力の不意打ちなんて、こんな珍芸…おそらく最初で最後でしょうね。
そのまま向かってきても奴にはびくともしなかったでしょうけど。さすが、一方通行も人間ね。
不意打ちで動物のもつ反射意識を発動させて、わずかながらでも体を回避の方向へともっていくことに
成功した…!おかげで角度がずれ、直撃だけは免れたわ…っ。今更ながらゾッとするわね)
一方通行「お前…ッ!?」
そう、一方通行も気付いてしまっただろう。なんせこんな雷クラスの電撃、
この学園都市では一人しか心当たりがないからだ。
美琴(なら、もうこのマスクも用済みね)
マスクを脱ぎ、素顔をさらけだす美琴。9982号、そして10032号のとき以来…。
超電磁砲と一方通行が3度目に対峙した瞬間だった。
一方通行「…テメェ、何をやってやがる」
美琴「……」
一方通行「何をやってンのかって、聞いてんだよ超電磁砲ッ!!!?」
美琴「何するもなにも、あなたが見ての通りよ」
一方通行「…ァ?」
美琴「絹旗さんを襲おうとした。ただ、それだけ」
一方通行「テメェ…」
美琴「だから、私はあなたに罰を受ける必要がある」
一方通行「何を言っていやがる…?」
美琴「あたがそれにふさわしいと思う攻撃を、私にちょうだい。私は…逃げも隠れも、避けもしないわ」
そう言って美琴は両手を水平に広げ、大の字に立つ。
上条「み、御坂!!何やってんだあいつ!!?止め―」
麦野「やめな上条当麻!!第3位の意志を無駄にするつもり!??
そういうのは、一番近くにいるあんたがてっきり理解してるもんだとばかり思ってたけど」
上条「ぁ…」
麦野「そう。最初の、この作戦の趣旨でもあったはずよ。第3位は…この極限状態という状況下で
敢えて自分を逃げられないようにしてる。全てはそんな自分と、一方通行を試すためにね」
上条「御坂…っ!!」
一方通行「はァ…。そうか、そうですかァ。じゃあ、やりたいようにやるが、いいンだな?」
美琴「…ええ」
一方通行「本当にいいンだなァ!!!?」
美琴「…な、何でも、き、きなさい…よっ!!」
美琴(絶対に逃げない…!!)
一方通行「ヒャハハハハハハハ!!!!!!!!」
高速で、無防備な超電磁砲へと近づく一方通行。そして―
一方通行「ひと思いに死ねやコラアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」
美琴「!!!!!」
上条(御坂ッ!!!!)
一方通行「なぁんて、言うとでも思ったか?このバカが」
美琴「へ…?い、痛!」ビシッ
一方通行「あれぐらいで俺が逆上すると思ったら、大間違いだバカタレ。
そんな卑小な自分は、とっくの昔に殺してきたっての」
美琴「今のって…。え?で、デコピン??」
一方通行「お前がふさわしい攻撃って言ったんだろが」
美琴「今のが…ふさわしい、攻撃??」
一方通行「どうせ絹旗を襲った…。いや、襲おうとしたのも、何かくだらない理由のためって、
そんなオチなンだろ?んなふざけたガキにはデコピンで十分だ」
美琴「…どうしてそう思ったの?」
一方通行「かつて。どうしようもねェ腐った野郎に立ち向かい、大勢の命を…テメェの命を
投げ出してでも救おうとした。そんな人間が、悪意をもって何かするはずがねェもンな」
美琴「一方通行…っ」
一方通行「まぁ、それでも…俺が怒ってるってことには、変わりはねェんだけどなァ!!?」
美琴「!!?」
一方通行「こんな茶番に付き合わせやがってえッ!!!覚悟はできてンだろうなお前らァァ!!!?」
滝壺(まー、そうなるよね)←陰から見てた
Prrrrrrrrrrrrrrrrrrrr、ガチャッ
一方通行「お、ちょっと頼みたいことがあるンだけどよォ。とりあえず全速力でいつもの喫茶店の、
すぐ近くの道路のわき道へと来てくれね? ア?抽象的すぎて分からねェだァ?テメェのテレポートなら
何十個場所の候補があろうが、1分もかからずゴールインできるだろうが。じゃ、頼むぜ」ピッ
??「なんて人づかいが荒い暴君なのこいつは…」
一方通行「おォ?10秒もせずにご到着ときたぜ」
結標「2ヶ所目で運よくここが当てられたのよ…。ってか、
人を便利屋みたいに呼んでんじゃないわよ!!?今度は何ッ??」
一方通行「ちょっとこいつらをさァ、…そうだな、近くの公園でいっか。
全員そこまで飛ばしてくれねェか。あァ、俺も含めてな」
結標「あなたらしい全くもって意味不明な展開だけど、どうせその理由を尋ねたところで不毛そうね…。
分かったわ。飛ばせばいいんでしょ?」
一方通行「話が早くて助かるゼ」
結標「あんたは…!調子にのってると、いつか事故装ってコンクリの中へと突っ込ませてやるんだから!!」
一方通行「お前には本当に感謝してる」
結標「言動の不一致が凄まじいわね」
結標「あら。ねえ一方通行。幻想殺しはどうしたらいいの?能力打ち消すせいで、彼は飛ばせないんだけど」
一方通行「お前、公園まで走れ」
上条「俺だけ不幸だああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
一方通行「というわけで、最後に俺もよろしく」
結標「はいはい。勝手な依頼も、これで最後にしてほしいものね」
……
公園にて
一方通行「っつうわけで、絹旗除くお前ら全員、そこで正座」
浜面「結局こういうオチになるのか…」
滝壺「というか、この作戦自体、もともと成功率はゼロに近かったんだけど」
浜面「失敗するの前提でこれやったんか!?」
滝壺「そもそも“暴力的手段”で絹旗と一方通行をくっつけるって考え自体無茶だったから。
私が浜面の原案をかなり弄って、ようやく失敗率が95%に下がったかな?って感じ」
浜面「なんかもう、ホントに申し訳ございません滝壺先生…」
公園の中央で5人が正座させられている光景は、それはそれは異様だった。
子供「ママー。あの人たち何をやってるの?」
母「しっ!見ちゃいけません!」
浜面「あーもう。本当に散々だ」
絹旗「…しかし。浜面はともかく、まさか麦野や滝壺たちまでこんなくだらない茶番に噛んでたとは…」
麦野「いやー、二人の恋を応援してあげよう!!って思っただけなんだってば絹旗!」
一方通行「こ、恋だァ!?」
滝壺「麦野。彼そっち方面に免疫なさそうだから、ダイレクトにそんな言葉発しちゃまずいってば」
絹旗「まあ…そういうことなら、気持ちだけでも受け取っておきます。超ありがとうです//」
一方通行「テメェもテメェで、何照れてンだ??」
上条「いやぁ…。なんというか、疲れたな?御坂さんや」
美琴「なんで爺さん口調になってんのよ…まぁ気持ちは分かるけどさ」
美琴「ねえ、一方通行」
一方通行「ァ?」
美琴「とりあえずさ…今のあんたがどういう人間なのかってのは分かったわ。
それでも、まだ友達という段階までは…いけない。そうなるには、まだ少し時間がかかると思うの」
一方通行「…はっ。そうかよ」
美琴「でも、これだけは言っておく。絹旗さんのために頑張ってたあんたは、カッコよかった」
一方通行「テメェなんぞに褒められても嬉しくねェ」
美琴「その調子で、これからもあんたの周りの人間を…守ってやってね」
一方通行「…おう」
上条(御坂…よかったな)
麦野「ありゃりゃ。なんか良い雰囲気だね。しばらく二人っきりにさせておくか?」
絹旗「あれ!?いつのまにか作戦の趣旨が変わっちゃってる??」
滝壺「まさかの強力なライバル出現。絹旗の運命やいかに」
浜面(麦野も滝壺も楽しんでんなぁ)
一方通行「もういいわ。解散だクソッタレ。お前らの酔狂にこれ以上付き合ってられっか」
麦野「なるほどなるほど。第1位はこれから絹旗とあんなことやこんなことをしたくてたまらないと」
一方通行「第4位だったか…?今すぐテメェの首と体を分離させてやってもいいンだぜ?」
麦野「あぁ!?上等だよ第1位ィイ!!!貴様とはいつか本気でやりあってみたかったのさッ!!!」
上条「さて、じゃあ俺たちは帰るか」
美琴「そうね」
浜面「ちょ!そこで帰るか!?誰かこの人格破綻者たちの争い止めてくれよ!!?」
滝壺「心配しなくても大丈夫。絹旗がなんとかしてくれる」
絹旗「あの、一方通行。今すぐ遊びに行きたいんですが…ダメですか?」
一方通行「チッ。しょうがねェな。第4位、この戦いはお預けだ」
滝壺「ほらね?」
浜面「二人ともラブラブじゃねえか」
……
一方通行「というわけで、ようやく二人っきりになれたなァ」
絹旗「ここまでかかるのに長かったですね」
一方通行「騒がしいってレベルじゃなかったぞアイツら」
絹旗「でも、ちょっと超楽しかったです!」
一方通行「…今日本語おかしくなかったか?」
絹旗「気分が高揚してるとおかしくなっちゃうんですよ!」
一方通行「そォかそォか」
絹旗「では改めまして。どこへ行きます?」
一方通行「そうだなァ…ぶっちゃけあんなことがあった後だ。ぶっとんだ楽しみ方はできねェかもだなァ」
絹旗「ま、そんな気分ですよね。じゃぁちょっと遊ぶ程度にしましょうか。ゲーセンとかどうです?」
一方通行「別に構わねェ。何か好きなゲームとかあンのか?」
絹旗「いえ、ゲームが目的ではないんです」
一方通行「あン?」
一方通行「…まさか、俺がこんなものに触れる日が来ようとはなァ…」
絹旗「あれ。プリクラ嫌いですか?」
一方通行「そうじゃねェが…。なんかこう慣れねェっていうか、俺にとって新世界すぎるっていうか…!」
絹旗「ニューワールドですか?じゃあ私と一緒にそのニューワールドへ突撃しましょう!」
一方通行「お、押すなっての!ちゃんと中に入るからよォ…」
慣れない環境に戸惑いを隠せない一方通行だった。
絹旗「一方通行?もうちょっとこっちへ寄ってください!」ドサッ
一方通行「お、おう…?!」
一方通行(近ェ!ってか肌が触れ合ってるじゃねェか??
…なンでだ?以前こいつに顔近付けたときは、なんとも感じなかったのによ?)
そこで一方通行は、昨日の彼女の言葉を思い出す。
絹旗『あのときとは…状況が違うんです。意識してしまってるんですよ』
一方通行(…俺も意識しちまってるってか?いよいよ病気だなァこりゃ)
一方通行(って今気付いたが)
一方通行「目の前の画面、俺たちの姿が映ってンだな」
絹旗「そりゃ当たり前ですよ。じゃなきゃ、自分たちがどんな顔してるか分からないじゃないですか!」
一方通行「そ、そうだな…」
一方通行「……」
一方通行(俺って、こんな無愛想な顔してたのかァ…?
自分の顔見るってのは、あんま気分の良いもんじゃねェな…)
機械「では撮影します。3、2…」
絹旗「一枚目撮りますよ一方通行っ!」
一方通行「え?ァ」パシャッ
撮られた画像を、目の前で確認する二人。
絹旗「ちょ、一方通行どこを向いてるんですか!?」
一方通行(本当だ…。何で俺、絹旗とは逆方向斜め下向いてンだ)
絹旗「ちゃんとカメラのほうを見てもらわないと困りますよ。それとも、何か見えちゃったんですか?」
一方通行「床に幽霊がいるとは思えねェな」
絹旗「分かりませんよ?プリクラに未練を残して、ここで命を絶った自縛霊だったのかも…?」
一方通行「どんな未練だよ」
絹旗「じゃあ、なぜ幽霊が…」
一方通行「だから幽霊から離れろっての!!単にカメラに注意がいってなかっただけだ!」
絹旗「じゃあ、今度こそはうまく撮りますよ!」
機械「撮影します。3、2、1」パシャッ
一方通行「今度は上手に撮れたンじゃねェか?」
絹旗「確かに目線はいいですけど…。一方通行、もうちょっと笑ってください!」
一方通行「え」
一方通行(俺に… 笑 え 、だと!?)
絹旗「そういう一方通行の顔も見てみたいんです。それに、せっかく一緒に映るんです…」
一方通行「……」
一方通行(…どうやら覚悟を決める必要があるようだなァ)
絹旗「あ、分かりました。もっと密着させればいいんですねっ!」ギュッ
一方通行「お、オイ…!?」
絹旗「男の人って、こういうことすると超喜ぶって聞いたんですが…!」
一方通行「いや、これは…ッ」
確かに、笑顔にはなるかもしれない。だが、その笑いとは純粋な笑顔ではなく…単なるニヤケ顔。
一方通行(そんな情けねェ顔した自分など、見たくねえッ!!!!)
必死に顔に力を入れる一方通行。そして、当然ともいえる結果が生まれる。
機械「2、1」パシャッ
絹旗「……」
一方通行「……」
絹旗「一方通行…。さすがにこれは、顔が引きつりすぎです…」
一方通行「プリクラってのは難しいなァ」
絹旗「次が最後の一枚ですよ一方通行!」
一方通行「も、もうラストかァ…?」
一方通行(マズイ、自分としてもちょっと油断しすぎてた…。次こそはバッチリ決めねェとッ!?)
しかし気合いを入れようとすればするだけ、かえって顔に力が入るだけだった。
一方通行(どうすりゃいいンだァ…??)
絹旗「…一方通行。私はですね、あなたのことを考えながら…映ってましたよ♪さっきから、ずっと」
一方通行「…?」
絹旗「……」
一方通行(何かの…ヒントか?ってことは、何か?俺は俺で、
絹旗のこと考えながら…映りゃァいいのか?そしたら良い顔で撮れるって…)
機械「撮影します」
一方通行(…やるしかねェな。絹旗最愛…か。ヤツは俺にとって…)
3、2
一方通行(大切な…存在―?)
1、パシャッ
二人はゲーセンを出る。
絹旗「今日は超ありがとうございました!」
一方通行「何言ってやがる。もとはと言えば、呼びだしたのは俺だろうが。感謝すンのは俺のほうだ」
絹旗「一方的なのはナシですよ。今日会えるって連絡が浜面からあったとき、私は本当に
超嬉しかったんですから。もっとも、ちょっと急すぎてびっくりしたのも、また事実でしたけどね?」
一方通行「あぁ、確かに急だった。それはすまンかったな。だが、次からはそうはならねェよ」
絹旗「アドレスだって交換しましたもんね。
これで、好きなときに好きなだけ連絡を取り合うことができますからっ」
一方通行「そりゃ言いすぎだっての。風呂入ってるときとか―」
絹旗「私の裸、想像しちゃいました…?」
一方通行「!!?と、突然そんなこと言うンじゃねェ!!想像しちまっただろうがッ!!?」
絹旗「え」
一方通行「あ」
絹旗「…想像しちゃったんですね。一方通行の、エッチ///」
一方通行(くッ…!!!!)
その後。絹旗と別れを済ませた一方通行は…家へと帰宅していた。
一方通行「……」
一方通行(まだ黄泉川と芳川は帰ってねェか)
ふと、携帯の待ち受けを眺める。
一方通行「…俺も、こんな表情できンだなァ…」
プリクラでの、その後の出来事を思い浮かべる。
……
絹旗『一方通行』
一方通行『お、おう』
絹旗『良いです!!これ、すっごく良いですよ一方通行!!』
一方通行『そ、そんなに絶賛するほどかァ?これ』
今までの写真で…最もうまく撮れてることには違いなかったが。そこまで笑顔…というわけでもないはず。
絹旗『自分で自分の表情が分かんないんですか?ほら、ちゃんと見てください!』
絹旗『凄く。優しい目をしてるんですよこれ』
一方通行『そ、そう…なのか??』
どうも、自分ではそのへんの感覚が分からない。だが絹旗がそう言っているということは…
つまりそういうふうに受け止めてもいい、ということなのだろうか。
絹旗『よし!この写真を携帯に転送しましょう!!その前に…落書きですね♪』
一方通行『ラ、落書き…?』
絹旗『撮り終えた写真に、上から自由に落書きできるんですよ!背景だって自由自在です』
一方通行『そんな機能まで付いてたンだな…』
絹旗『本当にプリクラのこと何も知らなかったんですね一方通行は』
一方通行『悪かったな』
絹旗『というわけで超編集タイムですが。一方通行も参加しますか?』
一方通行『いや…。俺は、先に外で待ってるぜ』
絹旗『えー、こういうのも結構楽しいんですけどね。分かりました!ちょっと待っててください♪』
一方通行『焦らなくてイイからな』
絹旗『どのみち制限時間付きですから、すぐ終わります』
一方通行『そ、そォか』
一方通行(…なんつうか、いろいろ勉強になったな)
この一日で随分プリクラに詳しくなった…気がする。今までは触れることもなかった未知の世界。
これからもこいつといれば、もっといろんなことを見たり聴いたり…体験できたりするんだろうか。
絹旗自身はもちろんだが、絹旗と“一緒にいる”こと自体、それだけで何か重要な価値になりそうだった。
一方通行(大切にしねェとな…。あいつとの時間)
……
絹旗『終わりましたよ一方通行!っと、携帯に転送したいんで、あなたの携帯貸してくださいっ』
一方通行『おう、ほらよ』
ティロリン
絹旗『転送終了です♪携帯返しますね。それと…他の撮ったプリクラも渡します。どうぞ!』
一方通行『お前が編集したってヤツか。ご苦労さン。さて、一体どんなふうになって…』
一方通行『……』
絹旗『どうですか?私のアーティスティックな写真は!』
一方通行『何で俺、丸メガネかけてンの?』
絹旗『面白いでしょ?』キラキラ
一方通行『二枚目の写真にいたっては、鼻ヒゲや顎ヒゲだらけだなァ…』
絹旗『私にも注目してくださいよ!ほら、ここ!ツノが二本も生えてます!』
一方通行『そんな生物二人の背景は、宇宙ときましたかァ。お前センスありすぎ』
絹旗『いやいや。私の落書きなどまだまだオーソドックスなほうですよ。
世の中にはもっとカオスな落書きする人だって、いるんですからね』
一方通行『世界は広いンだな』
絹旗『三枚目はどうです?』
一方通行『…俺の口に、吹き出しで“最高!!”って書いてあるな』
絹旗『私の吹き出しには“ですよねー!”と書きました!』
一方通行『コントか』ビシッ
絹旗『はい、突っ込みいただきましたーっ』
一方通行『…ン?最後の四枚目は結構マジメだな』
絹旗『だって。最後の写真は凄く良かったですから…。これにはあまり、変な装飾は入れたくなかったんです』
一方通行(背景は…のどかな草原。空いた空間に“一方通行”と“絹旗最愛”、二人の名前が入ってンな)
絹旗『私、この写真は超大事にします。証拠に…。ジャーン!携帯の待ち受けにもしちゃいました!』
一方通行『仕事早ェなお前!』
絹旗『……』
一方通行『…ン?絹旗?』
その待ち受けを見ながら、彼女は何かを考えてる様子だった。
絹旗『今日、麦野たちが乱入してきたりいろいろありましたけど…。
最後に、こうやって一方通行と形になるもの残せてよかったなって、そう思ってたんです』
一方通行『…そうだな。俺も、お前と一緒に撮れて本当に良かったと思ってる』
絹旗『正直、最後のあの表情は反則でしたけど…』ブツブツ
一方通行『?何か言ったか?』
絹旗『超なんでもないです//』
一方通行「絹旗…」
回想をやめ、もう一度待ち受けを眺めてみる一方通行。
一方通行「あいつに触発されて俺もつい、待ち受けにしちまったが。
…こういう写真ってのも、悪くないもンだな」
感慨にふけていた一方通行だったが…。突如として、そういう時間は終わるものだ。
番外個体「ギャハハハハハ!!一方通行が!一方通行が女の写真見ながら呆けてるっ!!!!♪
あの一方通行がっ!!こりゃキモイってレベルじゃねーぞアハハハハハハハハ!!!」
一方通行「…俺としたことがァ」
不覚。後方に番外個体が迫っていたことに気付かなかった。…絹旗のことを考えていたせいか。
打ち止め「お、女の写真!?一方通行…!!それってどういうことなのかな!?ま、まさかまさか
女の人のエッチな写真でも見てたんじゃ…?!ってミサカはミサカは問い詰めてみたり!!」
一方通行「…だったらどうすンだァ?」
打ち止め「そ、そんなもの見ちゃダメなの!ってミサカはミサカは怒ってみる!!///」
顔を真っ赤にし、彼の携帯を取りあげようとする打ち止め。
一方通行「別に変な写真なンかじゃねェよ」
素直にも、一方通行は見ていた画像を打ち止めへと見せる。
打ち止め「……」
一方通行「ン?どうした黙りこくって?別におかしいもンじゃねえだろ??」
打ち止め「あ、いや…。あまりにも一緒に映ってるあなたが良い表情してるからって、
ミサカはミサカはつい見とれてしまってみたり」
一方通行「なンじゃそりゃ」
番外個体「へえー。一方通行にしては、ちょっといい絵だったりするかも」
同じく写真を眺める番外個体がそう言い放つ。
一方通行「お前まで何言ってンだ」
番外個体「あれ。そういえば、この女は誰!!?」
打ち止め「そ、そうだよ!一緒に映ってるこの人は誰なの!?
ってミサカはミサカは全力で問い正してみたり!!」
一方通行「今更そこに気が付いたのかお前ら」
……
一方通行「…というワケだ」
番外個体「ミサカ、分かんない~!」
一方通行「二度は説明しねェぞ」
打ち止め「この絹旗さんって人については、とりあえず分かったけれど…」
一方通行「どォした?何か不満か」
打ち止め「この人とはどういう関係なのかなって、ミサカはミサカはつい聞いてみたり…」
一方通行「あン?どういう関係も何も、最近知り合った女ってだけだがァ…」
番外個体「いやいやいや、それはないねえー!!だってだって~!何でもない女の前で、
一方通行がこんな表情するわけないもんねえ??しかもプリクラを一緒に撮る仲ときたッ!!」
打ち止め「そうだよ一方通行。もしかして…彼女さんだったり?」
一方通行「彼女だァ!?それは違―」
番外個体「彼女!?一方通行に彼女ッ!!そんなの、天地がひっくり返ってもナイナイ!!♪
だってあの一方通行だよ??こんな奴、彼女の『か』の字も…って、あれ?二人っきりで写真を撮る、
そういう関係を世間一般じゃ恋人って言うんだっけ??じゃあまさか本当に彼女!!?信じらんねえ!!」
一方通行「誰かこいつを黙らせろ…」
打ち止め「そうだよ番外個体。少し静かにしてほしいかもって、ミサカはミサカはお願いしてみる!」
番外個体「んな悠長なこと言ってる場合じゃないっつーの!!もしそうだとしたら、
昨日こいつの様子がおかしかったのは本当に恋煩いだったってワケー!?
うわああああああ!!一週間分のオヤツが!!ミサカとしたことがぁ…!!」
打ち止め「はっ、そうだった!?やったー!オヤツはいただき!!
ってミサカはミサカは空前絶後の大勝利にお祭り騒ぎをしてみるっ!!!」
番外個体「!?もしかして今の、私が言わなきゃ最終信号は賭け自体忘れてた!?
な、なんということを私ってば、しちゃったの~!??もう、ミサカってばドジっコなんだから~♪」
打ち止め「あー。番外個体が一週間オヤツが食べられない苦しみから現実逃避して気分がハイに
なっちゃってるのって、ミサカはミサカは勝者としての余裕を含みながら彼女を分析してみたり!!」
一方通行「…自分の部屋に戻るとするかァ」
打ち止め「あ!ま、待って一方通行!あ、あの…っ」
一方通行「まだ何かあンのか」
番外個体「これから一週間ミサカはどうやって生きよー!?ってミサカは空想してみたり~♪」
打ち止め「と、とりあえずあそこで壊れてる番外個体は置いとくとして…」
打ち止め「あの写真の絹旗さん、とても楽しそうな顔してたって…ミサカはミサカは告げてみる」
一方通行「…まぁ、確かにヤツは楽しそうだったが」
打ち止め「楽しそうっていうか、幸せそうな顔だったかな。一方通行は彼女のことどう思ってるの?」
一方通行「どうって…。少なくとも、どうでもいいとかは思っちゃいねェがなァ」
打ち止め「もっと具体的に!ってミサカはミサカはさらに追究してみる!」
一方通行「具体的ィ?!っていうか、何でそンなことまでお前に教えなきゃなンねェんだよ??」
打ち止め「あなたの口からそれを聞きたいの。絹旗さんのことを…。どう思ってるのか」
一方通行「……」
いつになく真剣な眼差しで見つめる打ち止め。そんな彼女に、一方通行は渋々答えてやることにした。
一方通行「まぁ…大切かなとは思ってるが」
打ち止め「そ、そっか…!そうなんだね」
一方通行「…?」
打ち止め「それって…。私や番外個体、黄泉川や芳川と同じ“大切”って意味なのかな」
一方通行「それは―」
同じ、と言おうとした一方通行だったが…。どうもその言葉の手前で、彼は違和感を覚えた。
一方通行(…同じ?絹旗が、打ち止め・番外個体・黄泉川・芳川と“同じ”…?)
ここの家に住む4人に対して。彼女たちは自分にとって大切な存在であり、なくてはならない存在。
その事実は変わらない。今でもその考えは変わらない。だが…絹旗に対してはどうなのだろうか。
確かに彼女も、“大切な存在”であることには違いない…のだが。
一方通行(俺は…)
ここで一方通行は気付いてしまった。4人への感情にはない、ある決定的に異なったものに。
一方通行(俺は絹旗に…“それ以上”を求めちまってる…??)
目の前にいる打ち止めを…見据える一方通行。
一方通行「……」
打ち止め「…?一方通行…?」
一方通行「…っ」
今まで多々あった危機の中でも、特に自分の命を投げ出しまで守ってきた…この打ち止めという存在。
大切な存在。そんな彼女に、彼は一度として“それ以上”の関係を望んだことがあっただろうか。
もちたいと思ったことがあっただろうか。そんな気持ちを一度でも抱いたことがあっただろうか。
一方通行「……」
一方通行「打ち止め。抱きしめてもいいか?」
打ち止め「え?」
ギュッ
打ち止め「え!?ちょ、一方通行!?ど、どうしちゃったの急に??///」
一方通行「……」
打ち止め「一方通行…//」
一方通行「……っ」
一方通行(こいつといると、心が落ち着くンだよな…)
……
しばらくして、一方通行は打ち止めを離す。
一方通行「打ち止め。さっきの答えだけどなァ」
打ち止め「!う、うん」
一方通行「その“大切”ってのは、違う大切だ」
打ち止め「…っ。そっか。あなたの気持ち…ミサカにちゃんと伝わったよっ」
一方通行(さっきの…わずかな時間。俺に、“それ以上”の欲求はなかった。それで…。十分だったンだ)
打ち止め「……」
一方通行「……」
打ち止め「一方通行って…」
一方通行「…ン?」
打ち止め「変わったよね。良い意味で。ミサカはミサカは素直にそう思ってみたり」
一方通行「…?」
打ち止め「絹旗さん、大事にしてあげて。ミサカは信じてる。今のあなたにならそれができる!
ってミサカはミサカは自信満々にズバッと言い放ってみたり!!」
一方通行「打ち止め…」
打ち止め「そして、やっぱりミサカの思った通りだった!」
打ち止め『一方通行はいざとなったら女の子のことも…ちゃんと考えてくれる、そんな頼りになる人!』
打ち止め「ミサカはね、実は昨日番外個体と賭けをしてたんだよ。あなたがボーッとしてるのを見て、
もしかしたらそれは恋煩いなんじゃないかって。そして見事にそれは当たり、
ミサカは勝者となったのであった!!ってミサカはミサカはあなたに戦勝報告をしてみる!!」
一方通行「…何かこそこそ話してンなと思ったら、ンなくだらねェことやってたンかい」
一方通行「…まぁ実際は番外個体のヤツも、それはそれで正しかったンだろうがな」
打ち止め「?どういうこと?」
一方通行「あいつ、天の邪鬼だろォ。逆の意見を言いたかったンだとしたら、
それは打ち止めの予想したもンと同じになるだろがよ」
打ち止め「え、ええぇ!!まぁ、た、確かにそうなるけど…何か強引のような―」
番外個体「聞いーちゃった♪聞いちゃった♪というわけで最終信号?この賭けは引き分けってことで♪」
打ち止め「う、うっそおおおお!?せっかくの戦勝報告の後で、その流れは無いかも!!
正直無いかも!!ってミサカはミサカは猛抗議してみるッ!!」
一方通行「ていうか、いつのまに復活してたンだよお前」
番外個体「ん?実は結構前から。ところで、話は聞かせてもらったよ?」ニヤリ
一方通行「え」
番外個体「いやぁ、びっくりしたねぇ!最終信号に抱きついたときは、さすがに
“このロリコンまじ無いわぁマジきもいドン引き~”状態だったんだけどねン?そこでそれを口に出すほど、
ミサカもKYではなかったってワケ♪あんたの覚悟は、確かに伝わったよ。…最終信号同様に、ね。
ま、だから。後はあんたの好きなようにやればいいんじゃないかなーん?もっとも、それで上手くいくと
思ったら大間違い~!!あんたの恋路を邪魔することが、ミサカの生きがいなんだからねッ!!♪」
一方通行「よく舌が回るヤツだなァ」
一方通行(二人とも…ありがとな)
……
黄泉川「というわけで、今日はすき焼きじゃんよ!!」
打ち止め「えー!?冬でもないのにすき焼きなの??ってミサカはミサカは驚いてみる!」
黄泉川「何言ってんじゃんよー。食べ物に、暑さも季節も関係ない!!」
一方通行「いや、それはおかしいだろ」
芳川「さすがに今のはね。でも、すき焼きがいつ食べてもおいしい定番食なのは、確かよ?」
打ち止め「へえー、そうなんだね!」
番外個体「そんなのどうでもいいから、ミサカお腹すいた~!!」
黄泉川「今から作るじゃんよ!!というわけでテーブルの上、片づけた片づけた!食器並べるじゃん!?」
打ち止め「はーい!」
番外個体「ミサカはお腹減って動けない~」
一方通行「……」
打ち止め「?どうしたの一方通行?」
一方通行「あ、いや、なンでもねェ」
一方通行(らしくもねェ。この団らんに、しみじみとしてましたなンて…言えるワケもねェ)
番外個体「あれー?どうったのー?♪もしかして!早速 き・ぬ・は・た・ちゃんのことでも考えてた?♪
わー!!わー!!一方通行が女の子のこと考えてるぅー!!好きなコのこと考えてるぅー!!」
一方通行「ッ!?お前さっきまでの元気の無さはどこ逝った!!?」
芳川「ん?好きなコ?今好きなコって、確かにそう言ったわよね?」
黄泉川「おぉ!?ついに一方通行に女の話!?詳しく聞かせるじゃんッ!?」
打ち止め「あ、そういえば、今絹旗さんとはどこまで仲は進展してるの?ってミサカはミサカは―」
一方通行「テメェら…すき焼きの準備はどうしたァァァァァァァァァァァァァァッ!?!?」
黄泉川家の、とある日常であった。
翌朝
一方通行「……」
……
一方通行「体が重い」
一方通行(はァ…)
体が重いと言っても、別に病気にかかってるわけでも、ましてやケガをしているわけでもない。
一方通行(まさに、心労ってヤツだぜ…ッ)
※心労とは、あれこれ心配して心を使うこと。また、それによる精神的な疲れ。気苦労。気疲れ。
一方通行(黄泉川たちに根掘り葉掘り聞かれまくったってのもあるが…。正直、極めつけは)
……
一方通行「俺が、絹旗のことを“好き”だって、自覚しちまったことだよなァ…」
昨日の打ち止めとの掛け合いで、ようやく自分の気持ちを知るに至った一方通行。
一方通行「まぁ自覚したからといって、何がどうなるってわけでもねェが…。どうも調子狂うぞオイ」
一方通行(…ン?)
一方通行「メールが来てやがる。何々…?」
メール『よっ!元気してたか一方通行?突然だが、今日の9時にいつものファミレスに集合ってことで。
結標や海原も呼んである。じゃ、よろしく頼むにゃ~!from土御門元春』
一方通行「土御門?誰だったか」
……
一方通行「と、誰もいねェのにボケ入れてもしょうがねェな。ったく、急すぎんぞ土御門ォ…
テメェのことだから、どうせ9時ってのも午後じゃなくて午前のほうなンだろうがよォ?」
まだ時間は8時。とりあえず外へ出る身支度をする一方通行。
一方通行(しっかし、見事に面々が“グループ”ときた。なんだァ?また暗部に首でも突っ込もうってか?)
面倒に巻き込むンじゃねェよと考える一方通行だったが
一方通行(…最近は絹旗のことばっか考えてたからなァ…。たまには違う空気入れるのも悪くねェ)
あくまでポジティブに。一方通行はその指定場所へと向かうことにした。
そして午前9時。例のファミレスにて。
土御門「久しぶりだにゃー!一方通行!」
一方通行「はっ、相変わらずだなテメェはよ。エイワスの一件以来、てっきりくたばったとばかり思ってたが」
土御門「俺を見くびってもらっちゃ困るぜぇ!妹舞夏のためにも、俺はまだまだ死ねないんだにゃーっ」
海原「僕も同じく、まだまだまだ死ねないんですよ!」キラキラ
一方通行「…うぜェ野郎どもだ。…結標さんよォ。俺が来るまで、こいつらのお相手ご苦労」
結標「別に。ただ、男ってのはバカで低俗な生き物だってのが改めて分かっただけだから」
一方通行「おォ?なかなか達観してらっしゃるな」
結標「…これも、事あるごとに便利屋扱いされてきた賜物なのかもねえ…?
ねえ??一方通行さん…?おかげでそりゃ、随分と忍耐力はついたものよ?」
一方通行「忍耐力ついたンか。よかったな結標」
結標「好きでつけたわけじゃないわよッ!」
一方通行「で、用事ってのは何だ土御門。こんなバカ話するために集まったわけじゃねーンだろ?」
土御門「そうだな。事態はもっと深刻だ。正直、こんなバカ話をしてられる余裕はない」
一方通行「ほォ…。相当切羽詰まってンのな」
一方通行(チッ。糞が)
また、この学園都市で面倒なことでも起きてしまうのか。自分の周りの…“大切な存在”。
彼女たちを巻き込まずに…。なんとかして、速攻で事態の収拾を図れりゃいいんだが。
そう考えていた一方通行だったが
土御門「本当に深刻だ。あの一方通行に、 好 き な 人 ができたっていうんだからな…」
海原「これは由々しき事態ですよ本当に…」
一方通行「……」
……
一方通行「バカ話じゃねェかッ!!?」
結標「ごめんなさい一方通行…」
一方通行「あァ!?」
結標「実は昨日…。あの後気になって、あなた達の後をつけてたの」
一方通行「……」
結標「そういうわけで、公園で一部始終は聞かせてもらったの。だから―」
一方通行「うっかり土御門や海原に口を滑らしてしまったと!?そういうことかァ結標ェ!!?」
結標「な、何よ!!そりゃ話しちゃったのは悪かったと思ってるけど…!
もとはと言えば、あの場に私を呼んだあんたが悪いんでしょ!!?」
一方通行「うぐ…」
確かに結標の言う通りだ。散々便利屋として活用してきたそのツケが。ここへきて返ってきてしまった。
土御門「というわけで今日のグループの議題は!『一方通行の恋の行方について』、だにゃ!」
一方通行「」
一方通行「帰る!!全力で帰るッ!!」
海原「ちょ、落ち着いてください一方通行!僕たちはただ、あなたの恋を応援してるだけなんです!!」
結標「“たち”って、私もその中に入ってるの?」
土御門「当たり前だろ結標。それとも何か?お前は一方通行の“絹旗ちゃんLOVE”を応援できないってのか?」
一方通行「土御門、後で殺す」
結標「誰もそんなことは言ってないでしょ!?ただ、そこまで興味もないっていうか…」
土御門「んー?何か無理してるように見えるのは気のせいかにゃぁ?」
海原「まさか結標さん。ここにきて“一方通行のことが好き”とか、そんなオチでは―」
結標「一方通行。こいつら殺しましょう」
一方通行「手っ取り早く済まそうぜ」
土御門「ま、待て待て待て!別に、今のは冗談でも何でもないんだぜい!?」
海原「そうですよ!っていうか薄々と、前々から思ってたことなんです。あなたがそれを否定するなら…。
ならば、どうして結標さんは毎回毎回、一方通行の傍若無人ともいえる呼び出しに従ってたんですか?
あなたが一方通行に何か弱味を握られていた、という覚えもありません。彼の命令を実行したところで、
あなたへのメリットはほとんどないはずです」
結標「…っ!それはただ、私が見返りを求めない…とっても親切な女の子ってだけの話。私の協力がなかったら
一方通行、何もできないんだもんね。分かった?私はあいつに、ただ慈悲の手を差し伸べてるってだけなのよ」
土御門「一方通行。結標のことを、一度たりとも“菩薩”のように感じたことはあったか?」
一方通行「ねェ」
結標「即答!!?」
一方通行「まぁ、感謝してるってのは本当だけどよォ」
結標「…はぁ。少しはそれを行動で示してよね…」
海原「一方通行。彼女が行動で示してほしい、と言ってますよ」
結標「え?ちょ、海原何言って―」
土御門「お姫様がお待ちだぞ一方通行。ここはとりあえず!キスしてみるとかどうかにゃー!?」
結標&一方通行「!!?!?」
一方通行「ダメだ。もうバカどもには付き合ってらンねェ。結標、店出るぞ」
そう言って一方通行は結標淡希の手をつかむ。
結標「やっ…!」
一方通行「…ァ?」
予想外のことが起こった。結標が、彼のつかんだ手を振りほどいてしまっていた。
一方通行「ど、どうしたァ?」
結標「あ、ご、ゴメンなさい。何でもないの…//」
一方通行「顔が赤いぞ?熱でもあるンじゃねェか」
結標「な、ないない!そんなのないから!っていうか、何らしくもなく
心配しちゃってるのよ!?そういうのはね、余計なお節介って言うのッ!!」
一方通行「そ、そォか…」
結標の突然の気迫に圧され、黙ってしまう一方通行。
結標「ってか、あんたたちバカ二人(土御門と海原)は一方通行と絹旗さんの恋を
応援してたんじゃなかったの!!?なに急にふざけて、こんなバカなことしてんのよッ!?」
海原「すみません。つい面白くて」土御門「見てて面白かったんだにゃ」
結標「最悪だこの人たち」
海原(結標さんが俗に言う“ツンデレ”ってことは分かりました)
結標「今あらぬことを考えなかった?」
海原「気のせいです」
土御門「とにかく、絹旗ちゃんについて話を元に戻すとだな―」
一方通行「テメェが脱線させたンだろうが。ってか“ちゃん”付けやめろ。マジで殺す」
土御門「一方通行。付き合う上で一番大事なことは…何か分かるか?」
一方通行「…は?いきなり何言ってンだお前―」
土御門「俺は真面目な話をしてるつもりだぜい?一方通行。ぶっちゃけ、
そのことが分かってないと、恋愛ってのはうまくいかないもんなんだぜ」
一方通行「…そうですかァそうですかァ。…何でテメェなんぞに恋愛論を説かれなきゃなンねェんだ…」
結標「まぁ、聞くだけ聞いてみましょ。このバカの言うことも」
土御門「それはだな。相手の思考や状態を察知して、絶えずその欲求に応えてあげることだ」
一方通行(…あン?まともなこと言ってるような気がすンのは)
結標(気のせいかしら)
海原「まぁ、当たり前といえば当たり前のことなんですけどね」
土御門「その常々言われてる“当たり前”ってのをなかなか実行できないのが、人間ってものなんだにゃぁ」
一方通行「…言うねェ土御門ォ」
土御門「言ったろ?『俺は真面目な話をしてるつもりだ』ってな」
海原「さっきはふざけすぎてしまったんで、ココからはシリアスモードです」
結標「最初からシリアスモードでいてほしかったわ…」
土御門「…そうだな。具体例を挙げれば、例えば絹旗が喉渇いてそうだったらどうする?」
一方通行「ア?そりゃあジュース買ってきたり、どっか飲み物のある場所へ移動したりすンだろ」
海原「模範的回答ですね。じゃあ、疲れてそうなときは?」
一方通行「休める場所へ行きゃいいンじゃね」
土御門「そうだな。だが、現実ってのはそういう“状態”に加えて、“思考”が混じってくるから厄介だ」
一方通行「…?」
結標「…なるほどね。あんたたちの言わんとしてることは分かったわ。
例えばね一方通行。絹旗さんが“疲れてそうに見えなかったら”。どうする?」
一方通行「どうするって、それなら問題はねぇンじゃねェか」
結標「そう考えがちよね。でもいつもそうであるとは限らない。
もし絹旗さんが実際には疲れてても、“疲れていないようなフリ”をしてるだけだったら」
一方通行「は?」
結標「あんたに心配をかけたくない。だから、“疲れていないようなフリ”をする」
一方通行「あァ、そういうことか。そりゃまた面倒な展開だな」
海原「そういうあなたも。実際には疲弊してるところを、
他人にはそう感じさせないよう振る舞ったことがあるのではないですか?」
一方通行「……」
ふいに打ち止めの姿が浮かぶ。
一方通行「なるほど、テメェらが言ってた“思考”ってのはこういうことか」
海原「お分かりいただけましたか」
土御門「さて、ここで問題だにゃ一方通行。相手のそんな“状態”を見抜くには、どうしたらいいと思う?」
一方通行「…こりゃまた難しい問題がきたもンだ」
一方通行「相手がどういう人間なのか、それを把握することから始めねェとな…
行動や思考パターンをつかむためにも、まずはそれが必要だァ」
土御門「良いこと言うねえ一方通行。じゃあ、お前は絹旗最愛について、今現在どれだけ知ってる?」
一方通行「絹旗について…だと?そりゃァ…」
一方通行「……」
一方通行(いざそう問われるとォ困るな)
結標「あのさぁ土御門。彼女と一方通行は、まだ出会ってから数日しか経ってないのよ?
そんな彼に、この質問は酷なんじゃない?」
一方通行「…映画が好きってのと、独特な口癖くらいしか分かンねェな…」
土御門「何でもいいんだぜ一方通行。見た目でもいいし、なんとなく感じた性格でもいい」
一方通行「性格は…わりと、いや、かなり積極的なほうだなァ。ンで明るい。見た目は小さいヤツとしか…」
土御門「そっか…小さいのか。結標!残念だったな…」
結標「!?ちょっ、どこ見て言ってんのよ!?/// あんたって…変態ね」
すかさず自分の胸を隠す結標。
海原「結標さん、気をつけてください。世の中には“変態”と呼ばれて喜ぶ殿方もいます」
結標「シリアスモードは!?ねえッ!シリアスモードはどこへ逝っちゃったの!!?」
結標「ねえ一方通行…。こいつらをセクハラで訴えてもいいわよね?」
一方通行「いいンじゃね」
海原「それにしても小さい女の子ですか。一方通行ってやっぱり…」
土御門「アクセロリ―」
一方通行「オイ結標。刑事告発しなくていいから、こいつら殺せ」
結標「逆鱗に触れたのは分かるから!分かったから落ち着ついて一方通行!」
土御門「そうだぜ一方通行。みっともないぜ」
結標「殺したいのは私も同じだけどね」
海原「怖いですよ結標さん…」
土御門「ええっと、話を元に戻すぜい」
結標「逃げたわね」
土御門「というわけでだ。一方通行は、絹旗最愛のことをまだよく知らない」
一方通行「…違いねェ」
土御門「じゃあ、どうやってそれを知るかってことなんだが…」
海原「一番早い近道は、とにかく“相手と一緒に時間を共有する”ことです。できれば二人っきりがいいですが、
別に誰か一緒でも大勢でも構いません。ただ、あなたの近くに彼女がいて、その仕草や言動が眺められれば、
それだけで絹旗さんの像について近づけるプラス材料となり得るはずですからね」
一方通行「時間を共有しろ…か」
昨日、喫茶店からゲーセンにいたるまでの彼女との時間を思い出す一方通行。
一方通行(そういう時間の積み重ねが、絹旗についても知ることにつながってくンだな)
海原「もちろん、無理に誘いすぎてもいけません。うざがられて逆効果となり得ることもあります」
結標「あんたがそれ言っても説得力ないわよね」
土御門「でも一方通行の話だと、その絹旗ってコは一方通行に対して…
かなり積極的な性格してんだろ?なら、そのへんは問題なさそうだな」
結標「後はそうね。できれば絹旗さんの周りの人、友達ともコンタクトを取っておいたらいいかも。
知人を通して、彼女のことを知ったりすることもできるはずだから」
一方通行(…浜面がそうか。それと滝壺理后だったか?第4位もいたな)
海原「白井黒子…」
結標「え?」
海原「い、いえ、なんでもないです」
結標「…?ただし、あまり異性と近づきすぎることがないようにね。本命を知ろうとして近づいて、
かえってそれが本命に不信感を抱かれるってトラブルが、現実じゃ結構起こってたりするもの」
一方通行「…リアルだな。気をつけとく」
一方通行(まァ、滝壺や第4位なら大丈夫そうだけどな)
海原(そもそも相手がジャッジメントなだけに、迂闊に近づけませんね…)
土御門「相手のことをよく知らなくても、だ。刹那的な仕草や表情を見逃さないってだけで、
大体の心中は推察できるもんだにゃー。だが、あまり濫用はせんようにな。一方通行なら尚更だぜい」
一方通行「…?どういう意味だァ?」
結標「あんたがじっくり相手の顔を見ることと、“ガンを飛ばす”は同義だから」
あァ!?と言いたいところだったが、やめた。悲しいことだが、自分の目つきが悪いってのは、
自分が一番よく知っている。特に第4位の顔を凝視した日にゃ、その瞬間ゴングが鳴る自信がある。
結標「といっても、あくまでそれは向こうが普通の知人だったらって話。
もし絹旗さんがすでに一方通行にベタ惚れなんだとしたら、あまり気にする必要はないかもね」
一方通行「はっ。さすがに、そんな虫のよすぎる展開はねェよ」
結標(いや…公園で一部始終見てたけど、絹旗さんルンルンだったわよ…?)
海原(自分も、そんな虫のよすぎる展開になりたいです)
土御門「だから、絹旗最愛のことをよく知るためにも!これをお前にプレゼントするぜい!!」
と言って、土御門が差し出したものは
一方通行「なんじゃこりゃァ」
土御門「見て分からないか?つい最近、この辺りでオープンした水族館のチケットだよ。
それも、ペア用のフリーパスチケットだぜ。絹旗誘って、一緒に行ってきたらどうだ」
一方通行「…オイオイ、いいのかよこれ。フリーだろ、結構したンじゃねェか?
あんま、テメェに借りをつくるような真似はしたくないンだがなァ…」
土御門「ははっ、気にすんなって。ちょうど臨時収入があってな。それに充てさせてもらっただけだ!」
※臨時収入=浜面から騙し取った1万円
一方通行「…そうかよ。じゃァ、受け取っとくぜ。ありがとな」
結標「!一方通行がちゃんとお礼を言えるなんて!?」
海原「成長したんですねえ。彼も」
一方通行「ガキですかァ?俺は?」
結標「にしても、何で水族館なの?」
土御門「特に理由はないんだけどにゃぁ。単に近々オープンするから目移りしたってだけで。
敢えて利点を挙げるなら、落ち着いて回れるってとこか?絹旗のことも、ゆっくり観察しながら
デートを楽しめる。相手のことも分かって一石二鳥だぜい!それとも、一方通行はアクション全開の
ジェットコースターや抱きつきイベント発生のお化け屋敷付き遊園地のほうが良かったかにゃー?」
一方通行「いや…特にこだわりはねェから水族館でいいわ」(元暗部の人間が…お化けを怖がって抱きつき??)
土御門「オープン自体は明日からするんだが、それから1週間以内なら有効だからな。
絹旗と都合のいい日でも見繕って、デートしてきちゃってくれ!幸運を祈るぜい!」
海原「というわけで今日の議題、『一方通行の恋の行方について』は終わりです」
結標「え?終わり?」
土御門「解散!」
一方通行「潔いなオイ!」
結標「チケット渡したら、元々解散する予定だったってことね…」
土御門「ここからは一方通行しだいだからにゃー。俺たちが力になれることは、もうないのさ」
海原「大体の恋愛講座は…チケット渡す前に粗方終わりましたからね。
結標さんのご協力もあって、実に円滑に進めることができました!」
結標「弄んだだけでしょ」
土御門「それは違うぞ結標。俺たちはただ、面白かったんだにゃ!」
結標「それを弄んだっていうのよッ!??」
そういうわけで、ドタバタしながらも
『一方通行の恋の行方について』会議(土御門・海原主催)は閉幕となった。
ファミレスから帰る途中。一方通行は公園に立ち寄り、ベンチへと腰掛ける。
一方通行「思い立ったが吉日って言うからなァ。早速電話してみっか」
Prrrrrrrrrrrrrrrr、ガチャッ
一方通行「よォ絹旗。俺だ」
絹旗『あ、一方通行!?あなたから電話をくれるなんて…というか、初めての電話ですね!』
一方通行「ン?そういやそうだな」
絹旗『えっと…何かあったんですか?』
一方通行「用ってのはなァ」
……
絹旗『それは良いですね!私も超行きたいです!あ、でも…』
一方通行「?」
絹旗『明日はちょっと用事があって…。明後日はダメですか?』
一方通行「あン?全然いいぞ」
絹旗『よ、良かったです!じゃあ明後日、超楽しみにしときます!』
一方通行「おう。待ち合わせは…駅の券売機近くでいいか?」
絹旗『了解です!』
一方通行「ン。伝えたいことは以上だ。じゃァ―」
絹旗『あ、あのっ』
一方通行「?まだ聞き足りないことでもあったか?」
絹旗『そうではないんですけど…。今日の夜にでも、っていうか1日に1回だけでも、その』
一方通行「…?」
絹旗『メール、しませんか?』
一方通行「…そういや、そういう約束してたよな。
すまねェ、すっかり忘れてた。昨日にでもすりゃァよかったな」
絹旗『あ、いえ!私のほうこそ、昨日はボーッとしててメールするの忘れちゃって…』
一方通行「そォか。…じゃァ、今日こそはメールしような」
絹旗『はい!』
一方通行「新規作成…っと」
夜。夕食を食べ終えた一方通行は、早速携帯を取り出していた。
一方通行「とはいえ、なンてメールすっかな」
とりあえず…明後日のことを書けばいいだろうか?まぁ無難と言えば無難である。
一方通行「そォだ。せっかくだし、顔文字も使ってみるかァ…。似合わねェことこの上ねーけどよォ」
というわけでメールを打った。
メール『明後日が楽しみだな\(^o^)/そういえばお前、魚とか好きなんか?/^o^\』
一方通行「顔文字はこんなンでいいだろ。楽しさを表現するには十分なはずだァ」
転送する一方通行。そして、数分も経たないうちにメールが返ってくる。
一方通行「早ェな。やっぱ女ってのは、メール打つのも速いンですかねェ。何々…?」
返信『超楽しみです!d(≧▽≦*d)
海の生き物って、可愛いのも不思議なのもいますから好きです♪♪(*´▽`*)ノ゛』
一方通行「いいね。好感触だったみたいだァ」
番外個体「くっくっく…!!ギャハハハハハハハハハ!!!!!」
一方通行「な、何だァ!?ってかお前、またしても後ろにいたのか」
番外個体「うっくっ、こりゃ笑わずにはいられないよ!!ギャハハハハハハハハ♪」
一方通行「…何がそんなにおかしンんだァ?」
番外個体「途中までは我慢して見てたんだけどっ。やっぱダメだアハハハハハハハハハハ!!!」
一方通行「どうしちまったんだお前はよォ…」
番外個体「あんたが打ってたその顔文字!“オワタ”と“フッジッサーン”なんだよねー!♪」
一方通行「は?」
打ち止め「実はそれ二つとも、人生終わったって意味なんだよ!ってミサカはミサカは宣告してみたり!」
一方通行「」
番外個体「好きな人に向かって『オワタ』!?笑いが止まんないよキャハハハハハハハハハハハッ!!!♪」
一方通行「ま、待てよオイ?!だが絹旗は返信で、その意味にゃ触れちゃいなかったぞ!?」
番外個体「そりゃぁ、初めてのメールってことで大目に見てくれたんじゃない?♪」
一方通行「なンだと…」
打ち止め「でも、人によってはオワタを『楽しい』って解釈する人もいるみたいだから
案外絹旗さんも大丈夫な人だったんじゃないかな?ってミサカはミサカは予想してみたり♪」
一方通行「くッ…!笑ってる顔だからって、安易に選んだのが間違いだったってか…?!」
一方通行(顔文字ってのは奥が深いゼ…)
番外個体「オワタ♪オワタ♪」
一方通行「うるせェ!!!」
打ち止め「ところで、絹旗さんとどこかへ行くの?ってミサカはミサカは尋ねてみる!」
一方通行「ン?あぁ。ちょっとな」
番外個体「デート♪デート♪」
一方通行「さっきからうるせェよお前はッ!!?」
そういうわけで。この日は終了したのであった。
そして。
一方通行「時が経つのは早ェな…」
気付けば、もう当日だった。
一方通行「特に何かを準備したってわけでもねェが。まァ、あんま気負ってもしょうがねェもンな」
一方通行(さて、そろそろ出るとしますかァ)
家を出て、マンションの一階へと降りる一方通行。そんな彼を…遠くのとある高層ビルから見守る影が一つ。
海原「こちら海原。ターゲットが家を出ました」
土御門『了解!今から結標をそっちに送るから、お前も駅まで来るんだにゃー!』
海原「分かりました!では」ピッ
結標「というわけでやってきたわよ」
海原「駅まで座標移動お願いしますね」
結標「何で私たちこんなことやってるのかしら…」
海原「あなたは、“一方通行のデート”が気にはならないんですか?」
結標「そりゃ気にならないと言えばウソになるけど…。だからって、こんな跡をつけるような真似…」
海原「僕はそういうの慣れっこですよ?」
結標「あんたが特殊なだけだからそれ!!」
海原「ならば。ここで作戦を降りますか?結標さん。僕としては別に構わないのですが」
結標「……」
結標「ま、まぁ、ちょっとくらいなら。覗いてもいいわよ…ね?」
海原「なんだ。実はノリノリなんじゃないですか。まったく、あなたときたら…」
結標「は、はぁ!?何勘違いしてんのよ??別に、ノリノリなんかじゃない…し」
海原(ツンデレな結標さんもまた一興です)
数十分後。
一方通行「…ォ」
絹旗「あ、一方通行!おはようございます!」
一方通行「ン、おはよォ」
絹旗「もしかして、超待たせちゃいましたか?」
一方通行「いや。今来たとこだ」
絹旗「それはよかったです!」
一方通行「おう。じゃ、切符買ってこい。ここで待ってっから」
絹旗「はい♪」
そんな二人を、驚愕の表情で見つめる男が二人。
海原「…これは驚きました」
土御門「まさか、素で『いや、今来たとこだ』を言う人間がいるとはな…」
海原「人生で言ってみたいベスト3に入っててもおかしくない言葉をあんな…。
やはり、一方通行は学園都市最強というだけあって、どこか人とはズレてるんでしょうか?」
結標「あんたたちのこだわりなんて知らないわよ…」
電車に乗り、目的地へと着く二人。お目当ての水族館は、わりと駅から近かった。
一方通行「着いたな。早速入ろうぜ」
絹旗「どんな生き物がいるのか超楽しみです!」
フリーパスを見せ、中へと入っていく一方通行と絹旗。
結標「あ、そういやお金出さなきゃいけないんだっけ」
土御門「その必要はないぜェ結標」
海原「これをあなたに渡します」
結標「水族館の…見取り図」
土御門「というわけでよろしく頼む!」
海原「座標移動の出番ですよ結標さん!」
結標「…1000円ですら払いたくないの??ホントあんたたちって汚いわね…発想がガキレベル」
土御門「手段を選ばないのが、俺たち“グループ”のやり方さ!」
結標「その中に私は含めないでね」
この水族館にはB1Fもあるということで、一方通行たちは下から上へと順に展示物を見ていくことにした。
というわけでまずは地下1階。
一方通行「…ペンギンプールか」
絹旗「なんか凄いみたいですよここ。亜南極圏の環境を再現してるみたいです!!
…ところで“亜南極”って何です?」
一方通行「知らないのに感極まってたのか」
絹旗「つい勢いで…!」
一方通行「…はァ。場所にもよるみてェだが…南極ってよりはオセアニアに近ェらしいから、
そこまで極寒ってわけではないらしいゼ。南米の下にある、フォークランド諸島って有名な島があンだろ?
あれも確か亜南極の地理に入ッてたはずだ。それ以外にも島はたくさんある…挙げたらキリないがなァ」
絹旗「なるほど!よく分かりません…」
一方通行「つまり、南のちょっと寒い地域ってことだ」
絹旗「超分かりました!」
結標(ぶっちゃけたわね一方通行…)
土御門「亜南極といえばオークランド諸島!いつか舞夏も連れて旅行したいぜ!」
結標「どこなのそれ」
絹旗「それにしても、ペンギンって可愛いですね!あの歩き方といい泳ぎ方といい♪」
一方通行「名前はすげェけどな」
絹旗「?あ、ここのペンギンって、キングペンギンっていうんですね。…キング?」
一方通行「大型種だからだろ。ペンギンの中じゃァ2番目にでかいらしいぜ」
絹旗「そりゃ凄いですね!え、じゃあ1番目は?」
一方通行「ここの看板に載ってる。コウテイペンギンっていうらしい」
絹旗「皇帝ですか??ふむ…。じゃあ、一方通行はコウテイニンゲン?」
一方通行「何がどうなってそうなったンだ…?」
絹旗「人類最強だから…?」
一方通行「勝手に俺を人類代表にすンな。しかもそれ、大きさとは全然関係ねェよな」
絹旗「じゃあ、あなたのことはどう命名すれば?エンペラー?」
一方通行「頼むからペンギンから離れてくれ」
ペンギンをじっくりと観賞し終えた二人は、一階へと上がった。
一方通行「ン?そういや一階には水槽はねェのか」
絹旗「あり…ませんね。出入り口に近いから、そのへんの環境も関係してるのかもしれないです」
一方通行「その代わりイルカやアシカのショーをやってンな。見に行くか?」
絹旗「そうですね!行きましょう」
ステージのある部屋へと移動する二人。
海原「…おかしいですね」
結標「どうしたの?」
海原「一方通行にしては、あまりにも デ ー ト が 順 調 す ぎ る とは思いませんか?」
結標「いや、何もそこまで強調して言わなくても…」
土御門「何かハプニングでも起こるかとワクワクしてたんだけどにゃー。正直期待はずれだぜい」
海原「というわけで、僕たちは二階の展示物でも見てきます。サンゴ礁でも見たい気分になってきました」
結標「何しにきたのあんたたちは」
一方通行「おうおう、ちょうどやってンな」
絹旗「と思ったら」
一方通行「終わっちまったぜ…」
結標(え、ここにきてハプニング??)
一方通行「仕方ねェ。二階へ行くか?」
絹旗「あ、ちょっと待ってください!?ステージ以外の時間でも、見ること自体は自由らしいです」
一方通行「見るって…あァ、イルカが泳いでやがンな」
絹旗「ちょうどイルカも自由な時間なんですね。優雅そうに泳いでますよ♪」
一方通行「ほォ…」
一方通行「……」
なんとも、リラックスして泳いでンなァと一方通行は感じた。ショーから解放されたせいだろうか。
絹旗「こういう海の生き物は、映画では結構何度か見たことあるんですが。
やっぱり間近で見ると超違いますね。躍動感みたいなのを感じますよ」
そう言って、絹旗は一方通行の方を振り向く。
一方通行「…?」
絹旗「どっかの誰かさんも、実際に間近で見てみたら違ったってことです」
一方通行「?」
絹旗「っと、語弊がありましたね。見ただけでは分かりませんでした。話してみてようやく超分かったんです!」
相変わらず、一方通行の目を見て彼女は言う。それに気付いたのか
一方通行「…なァ。もしかしてそれ、俺のことか?」
絹旗「そうとも言います!」
一方通行「そうとしか言えねェだろ」
それもそのはずだ。こんな悪人面の形相、誰だって見ただけでは、
“学園都市最強のレベル5として聞いてたイメージ”と合致してもおかしくない。
一方通行「……」
絹旗「!あ、勘違いしないでくださいね!?別に、見た目がダメとかそういうことを言ってるんじゃないです」
一方通行「お世辞はいらねェぞ。自覚してっから」
絹旗「本当に違うんです!今では私、それも含めてあなたのこと…」
結標(…え?まさか―)
絹旗(はっ!)
絹旗「そ、それも含めて!私は一方通行のことを良いと思ってるんですよっ!!」
一方通行「そ、そうか…?」
絹旗「そ、そうです!」
絹旗(今、私は何を言おうとしてたんですかね…)
結標(…ま、まぁ、さすがにここで急展開はないわよね)
絹旗「とにかく、この場所はもう十分に堪能しました!次の階に行きましょう一方通行!」
一方通行「お、おう…?」
何か心に引っかかった一方通行だったが。気にせず、絹旗の言う通り二階へと行くことにした。
……
一方通行「……」
絹旗「?一方通行?」
一方通行「なんだこりゃァ」
絹旗「あっ、クラゲですね」
一方通行「超、不思議な形してやがる…」
絹旗「超が付くくらい、超興味関心もっちゃいましたか?」
一方通行「なンつうか、こんな透明な傘した生き物が動いてンだなァと」
絹旗「確かに感慨深いですね。ミズクラゲっていうみたいです」
土御門(…ジュルリ)
結標「え?」
土御門「おいしそうだにゃぁ…」
結標「いや、それ水族館じゃ禁句だから」
海原「ミズクラゲは食べられませんが、エチゼンクラゲやビゼンクラゲなら食べることができます」
結標「何でそんなどうでもいいこと知ってるの?」
海原「以前クラゲが食べたいと思ったことがありまして。個人的に調べておいたんです」
土御門「海原。それ、どこへ行ったら食べれる?」
海原「タダ…では教えられませんね。それなりの対価は支払ってもらわなくては」
結標(もう嫌だこの集団)
絹旗「!見てください一方通行!カブトガニですよ!!」
一方通行「おォ。甲羅背負って歩いてンな。ってか、何でそんな興奮してンだ?」
絹旗「知らないんですか??カブトガニって、今じゃ日本では絶滅危惧種に認定されてるんですっ」
一方通行「あー、そういやそうだったか。レアな生き物なンだなァ」
絹旗(…。一方通行のほうが、人間としてはよっぽどレアな生き物だと思いますけどね…能力的な意味で)
土御門「んー。あれはちょっと硬くて食べられないかにゃー」
結標「土御門?次食べるとかいったらサメのいる水槽へ座標移動させるから」
土御門「ふっ。結標、この水族館にサメはいないんだぜい」
結標「じゃあ向こうにいる人食いナマズでいいわ」
土御門「は?そんなのいるわけ…って、ホントにいるし!?」
海原「というか、食べたくても食べられませんよ土御門。あれは絶滅危惧種なんです。もし食用にでもすれば
“絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律”に抵触、罰則を受けますよ」
結標「本当に詳しいのね海原。ドン引きするくらいに」
海原「少しでも多くの知識を蓄え…。僕は、御坂さんにおいしい料理を味わってもらいたいんです…っ!」
結標(海原…っ。過去に超電磁砲を、魚料理のお店に誘って失敗したことを…。今でも悔やんでるのね…っ)
海原「とはいえ、カブトガニは正確には魚介類ではないんですけどね。クモやサソリに近い生き物なんです」
土御門「危なかったぜい!さすがの俺もクモやサソリは食べたくないからにゃぁ」
結標「そしてこの空気に戻るのね」
……
絹旗「一方通行!そろそろお昼にしませんか?」
一方通行「あぁ、もうこんな時間か。ン?そういやこの建物ン中に食べるところあったか?」
絹旗「屋上が開いてるそうですよ。ただし持ち込み付きですけど」
一方通行「…しまった。ここ来る前に、何か弁当でも買ってくりゃァよかったな…」
絹旗「あ、マジですか。ちょうどよかったです!」
一方通行「あン?」
絹旗「…あなたの分のお弁当も、つくってきたんです」
一方通行「…そ、そうなのかァ!ありがとよ…」
そのとき。一方通行の中で異変が起こった。
一方通行(こいつ…。こんなに可愛かったか…??)
尽くされた、と感じたからだろうか。気付けば一方通行のトキメキ度はMAXだった。
一方通行「そ、そうと決まれば早速屋上だァ!!」
この瞬間だけは。絹旗の顔を見ることは叶わなかった。またしても、前みたく意識してしまったのだ…
一方通行(不意討ちすぎンぞ畜生…!)
おそらく赤くなってるであろう顔がバレないよう、そそくさと屋上へと向かう一方通行だった。
……
一方通行「ご丁寧にベンチや椅子、テーブルまで置いてやがる。食べるにはもってこいの場所だなァ」
絹旗「景色も超いいですね。海や船舶が一目で見渡せます」
一方通行「じゃ、適当なとこ座って食べるか」
さすがに屋上に上がる頃には、例の熱も引いていた。いつまでも意識してはいられない。
絹旗「というわけで、これです!」
一方通行「こ、これは…」
大きめのタッパーが二つ差し出される。一方の絹旗の分はというと、一つ。
単純計算にして自身の2倍以上もの量を、彼女はつくってきてくれたことになる。
絹旗「男の人って、女の倍は食べますよね。浜面の食事を見てれば、そういうのは一目瞭然でした」
一方通行「…いいのか?こんなに食べてよォ」
絹旗「いや、むしろ食べてくれないと私困りますよ。超いろんな意味で…」
…確かに。せっかく自分のために一生懸命つくってくれたのだから。それを断るようなら、万死に値するだろう。
一方通行「…そうだな。じゃァ、ありがたくいただくとするぜ」
そう言い、タッパーのふたを開く一方通行。
一方通行「こりゃァまた…。お前、本当に頑張ったンだな」
まず一つ目のタッパー。そこには唐揚げや肉団子、卵焼きといった
お弁当おかずの定番が…ギッシリ詰まっていた。
絹旗「本当は、もうちょっとおかずの種類増やしたかったんですが…!
思った以上に一つ一つの料理に手間かかっちゃって。手際が悪くてすみません…」
一方通行「は、はァ??何言ってやがンだテメェは…?!
俺の目が節穴じゃなけりゃァ、十分種類は揃ってるように思うぞ…?」
そうなのである。それに、量も申し分ない。
一方通行「…今すぐにでもかぶりつきてェとこだが、まだもう一つあったよな」
もう一つ。一方通行は二つ目のタッパーを開ける。
一方通行「…なるほど。さっきのやつにはご飯がねェと思ったら、こっちにあったンだな」
絹旗「そりゃそうですよ!洋食ならともかく、和食でおかずだけって超ありえませんからね」
そこには。なんとも大きいサイズの三角おにぎりが三つ。ノリやフリカケ等、種類も異なっていた。
絹旗「以上が、私のつくってきたお弁当です。お気に召してもらえばいいのですが」
割り箸を手渡される一方通行。何から食べようか迷ったが…。とりあえずは、卵焼きから食べることにした。
一方通行「……」モグモグ
一方通行「……」
絹旗「ど…どうですかね?」
一方通行「普通にウマイ」
絹旗「ほ、本当ですか!?」
一方通行「ウソ言ってどうする。食感も柔らかかったし、味もちゃンと甘かった」
絹旗「よかったです…。マズイぞ絹旗ァ!!とか言われた日にゃどうしようかと思ってました…」
一方通行「言うわけねェだろンなこと」
一方通行(…あくまで平静を装ってる自分だが。俺のために…こんなウマイもんをつくってくれた絹旗。
俺のために。その事実だけで…っ!!正直涙が出そうなくらい嬉しいのは、全力で隠すッ!!)
つまり、静かに彼は感動していたのであった。
……
海原「なんか、見ててお腹すいてきました」
土御門「me,too!結標ー、何かつくってきてない?」
結標「ツッコミは入れないから」
結標(にしても、弁当…か。絹旗さんも本気なのね)
……
昼食を終える一方通行と絹旗。
一方通行「ごちそうさまでしたァ…!」
絹旗「お粗末さまでした…!」
一方通行「マジで美味かった。正直、また食いてェ」
絹旗「朝から頑張った甲斐がありましたよ…。そう言ってもらえて、超嬉しいです!」
また絹旗の料理が食べられる(かもしれない)。ますます心が躍る一方通行であった。
一方通行「じゃ、食べ終わったところで行くかァ」
絹旗「次は三階へ行ってみましょう」
……
海原(結局、外のコンビニへ座標移動で買い出しに行くハメになりました。トホホ)
一方通行「…なんだァこのトゲトゲの生き物は」
絹旗「ポーキュパインフィッシュ…?」
一方通行「さすがの俺も分かンねェ…」
絹旗「学園都市最強でも知らないことはあるんですね?」
一方通行「そりゃ当たり前ェだろ」
絹旗「あ、ここに書いてありますね。ハリセンボンの仲間だそうです」
一方通行「あー、そう言われりゃ分かる」
絹旗「そしてフグだそうです」
一方通行「どっちなんだァ!?」
絹旗「自分で言ってて混乱してきました…。
フグっていうカテゴリーの中に、ハリセンボンという種が属してるってことじゃないですか?」
一方通行「ややこしいなオイ」
海原「土御門。朗報です。ハリセンボンは食べられますよ」
土御門「本当か海原!!」
結標「…あれ。フグって毒があるんじゃなかったっけ…?調理師免許もってないとダメとか―」
海原「フグの仲間ですが、毒は持ってないんで食べられます」キリッ
結標「もうあんた料理人になったら?」
海原「それもいいかもしれません」
土御門「じゃあ、今度魚料理をごちそうしてくれにゃー!」
海原「お安いご用ですよ」
子供「ママー??あの人たち、お魚を食べるとか言ってるよぉ!?
ここにいる魚さんたち可愛いのに、食べちゃうなんて可哀相だよぉっ!」
母「しっ!見ちゃいけません!あの人たちはね、ちょっとおかしい人たちなの」
結標(あぁ…恐れていた事態が。ってか私も同類の目で見られてる。正直死にたい)
……
一方通行「…すげェな。この階には海中トンネルまであったのか」
絹旗「わぁ…本当に海の中みたいです」
一方通行「散歩してみっか」
絹旗「はい!」
絹旗「なんというか凄いですね!」
一方通行「おォ。すげェ量の魚だ」
絹旗「あの魚、よく見かけますよ。なんて言いましたっけ…」
一方通行「ここには説明の看板もねェからなァ。たぶんだが、イワシじゃねェのか」
絹旗「イワシってこんなに綺麗な泳ぎ方するんですか!?いや、魚なら大体はそうなんでしょうけど…。
食卓に添えられたイメージが強かったので、ちょっとびっくりです」
一方通行「確かに、イワシって食されるイメージだからなァ…」
絹旗「イワシも生きてるんだなぁって実感しました!」
一方通行「イワシについて、一つ勉強になったなァ!」
絹旗「はい!」
一方通行(何でイワシ談義してンだ俺ら)
土御門「……」
結標「食べたいとか言わないでね」ギラリ
土御門「海原ぁ!さっきから結標が怖ぇよぉぉ!!」
絹旗「…あっ」
一方通行「?どうしたァ?」
絹旗「上ばかり見てましたけど、よく見たら下にもいるんですね」
一方通行「下?って、地面しかねェが…」
絹旗「砂から何か覗いてますよ」
一方通行「…そういやなンかいるな」
絹旗「何でしょうねあれ?」
一方通行「さすがにあの断片だけじゃなァ…」
絹旗「なんとかして砂から引きずり出せませんかね。あ、そうだ。原始的方法ですが―」
バンバンバンバンバンバンバン!!!!
一方通行「ッ!?」
絹旗「こうやって窓を叩けば!振動で超動き出すかも!?」
一方通行「ガキかテメェは!?」
一方通行「ってか、今一瞬ヒヤヒヤしたぞ…。窒素装甲でガラスを叩き始めたのかと思った」
絹旗「いや、いくらなんでもそれはないですよ。そしたら最後、この水族館は水没しちゃうじゃないですか」
一方通行「実際にそうなるわけだから。お前って恐ろしいヤツだよなァ」
絹旗(あなたにだけは言われたくないです)
絹旗「って、本当に動き出しましたよ!?」
一方通行「ほォ。あんな方法でも、どうにかなるンだな」
絹旗「こ、これは…!?平べったい…ですね?」
一方通行「そうだな」
絹旗「超平べったいですね」
一方通行「そうだな」
絹旗「何なんですかこの生き物?!」
一方通行「エイだろ」
絹旗「映…?」(画?)
一方通行「何を想像したかは知らねェが、片仮名の“エイ”だからな」
絹旗「そんな妙な魚がいるんですか?」
一方通行「いるから、実際にここにいンだろ」
絹旗「そうですけど。そっか…。世界は超広いんですね!!」
一方通行「いや、普通に日本で獲れる」
絹旗「世界は超狭かったです…」
絹旗「って、獲れるって、これ食べられるんですか??」
一方通行「一部地域じゃ郷土料理にもなってるらしい」
絹旗「!じゃあ、おいしいんですか??」
一方通行「それはどォだろう」
絹旗「じゃあ今度、一緒にエイ料理のお店にでも行きません!?どんな味なのか超気になりますッ!!」
一方通行「残念だが、そんな店は聞いたことがねェな…」
……
海原「なるほど、エイ店ですか。それは盲点でした」
結標「まさか出店する気じゃないわよね…?」
海中トンネルを通った後も、くまなく展示物を見て回っていた二人だったが。気付けば夕方となっていた。
絹旗「あ…。もうすぐ閉館時間ですね」
一方通行「もうそんな時間か」
当初は。見て回るだけの水族館を、若干ではあったが不安視してた一方通行だったが…
終わってみるとあっけなかった。むしろ、もっといても良いくらいだった。
絹旗「あの、今日は誘ってくれてありがとうございました!超楽しかったです!!」
一方通行「…そォか。そりゃよかった」
絹旗が喜んでくれた。それだけで、ここへ誘った甲斐があったというもの。
…もっとも、自分自身もいろんな不思議系動物を見て、内心かなり楽しんでいたのは秘密だが。
絹旗「…。この後、時間はありますか?」
一方通行「…ン?特に何もねェけどよ」
そういえば、この後の予定を全く考えていなかった。
絹旗「ちょっと、散歩でもしませんか?」
一方通行「?構わねェが」
絹旗に言われるがまま。後をついていく一方通行。
土御門「対象が移動を開始したぜい!追いかけ―」
結標「土御門。もう、やめましょ」
土御門「え?」
結標「二人っきりにさせてあげて」
海原「…良いんですか?」
結標「良いも悪いも、元々私たちは部外者でしょう??野次馬は…去らなきゃね」
海原「…。土御門、彼女は本気のようですよ。どうします?」
土御門「んー。じゃあ、今日はこのへんでお開きにするかにゃー?十分俺らも楽しんだしなッ!」
結標「私を除く、ね」
海原「では。一方通行たちの進展を祈って…。ここで解散としますかね」
結標「ええ」
……
結標(百聞は一見に如かず…か。今日来てみてよかったかも。…頑張ってね一方通行)
去り際に土御門と海原が見た彼女の表情。…良い顔をしてるように思えた。
海岸線に沿って歩く絹旗と一方通行。
……
絹旗「海…ですね」
一方通行「あ、あァ…?」
そりゃ、海岸線に沿って歩いているのだから。海が見えるのは当然だろう。
絹旗「夕方の海は。どうですか?」
一方通行「…?」
どうも先ほどから彼女の意図がつかめないのだが。とりあえず答えるとする。
一方通行「夕日に赤く照らされてンな」
絹旗「そう…ですね。超綺麗ですよね」
絹旗(さっきから何をやってるんでしょう私は…)
しばらく散歩をしていると、右側にファミレスが見えてきた。
絹旗「…どうせだから夕食も食べていきません?」
一方通行「そうだなァ…」
いつもなら、黄泉川たちと一緒に食事をとっているのだが。
黄泉川『今日は一方通行除いた4人で外へ食べに行くじゃん!!』
一方通行『な、何で俺だけハブられンだよ?!』
芳川『絹旗さんとデートなんでしょ?打ち止めたちが言ってたわ』
黄泉川『一緒にどっかで食べてきたらいいじゃんよ!』
一方通行『チッ。余計な気ィ使いやがって』
というわけで、今日に限っては大丈夫なのだった。
……
しかし店に入ったからといって、さっきと比較して会話がはずむ。というわけでもない。
絹旗「……」
一方通行(…どうしたンだろうな絹旗のヤツ。何か考え事でもしてンのか…?)
一体絹旗はどうしてしまったのか。
……
実は二日前。時は“一方通行が初メールをした”時間に遡る。
絹旗「……」
絹旗(オワタの顔文字を使ってくるとは。一方通行もなかなか面白い趣向をしてますね。
これは予想以上に、彼という人間は超面白いのかもしれません…!?)
というか、薄々そんな予感はしていた。
絹旗(明後日の水族館へのお誘いにしてもそうですよ。会ってまだ日も浅いのに、
実質デートともいえるこの提案。周りの働きかけももしかしたらあったにせよ、
本人がそれを私に伝えてきた以上…彼にもそういう意思があったというのは、見て間違いないでしょう)
……
絹旗「一方通行って、案外積極的だったんですね」
まったく。彼氏彼女の関係なくせ、いまだにヘタレな浜面には見習わせてやりたいくらいだ。
絹旗(むしろ、私の方からどこかへと誘おうと思っていたのですが。すっかり先手を打たれてしまいましたね)
実は、“明日ある用事”というのは、そのために設けたものだった。それは―
絹旗(明日、滝壺や麦野と一緒に。浴衣を買いに行くんですよね)
今週日曜にある花火大会。そこに新しい浴衣を着ていき、一方通行を誘うという算段。
もっとも。そこに麦野を呼ぶのには…若干の苦労を要したものだが。
麦野『…は?あんたたちだけで行けばいいじゃない』
絹旗『何言ってんですか。一緒に行きましょうよ麦野!』
麦野『絹旗あんた…状況を分かって言ってんの??』
絹旗『え』
麦野『滝壺は浜面を誘う。そして、あんたは一方通行を誘うんでしょ。そこに私が加わったら…
どうみたってダブルデートの邪魔だろうがぁぁぁぁぁッ!!!!私はいらない人間なんだよぉぉぉッ!!!!』
滝壺『そんなことないよ麦野』
麦野『た…滝壺?』
滝壺『単に、いつものアイテムのメンバーに一方通行が加わるだけ。そんなに重たく考える必要はないんだよ』
麦野『…?そう…なの?』
滝壺『うん。確かに浜面のことも大事だけど、このお祭りはみんなで楽しみたいと思ってるから。ダメ…かな?』
麦野『…絹旗も?』
絹旗『私も、大体そんな感じです』
絹旗(一方通行と二人でいたい、という気持ちも無くは無いですが。それでも、
麦野を除け者にして自分だけ楽しむような真似はしたくないですし、そんな展開は超望んでません)
麦野『…そこまで言うなら、付き合ってやる』ボソボソ
滝壺『これにて一件落着だね』
そういうわけで、無事みんなで行けることになった。
そして翌日。浴衣を買いに行く日。
絹旗「明日は一方通行と水族館でデート…超楽しみです」
麦野「絹旗ぁ、心の声が外にダダ漏れ」
絹旗「はっ!」
滝壺「もうお店、着いちゃったよ」
なんたる不覚。とりあえず、今は浴衣選びに集中するとしよう。
絹旗「ところで、麦野たちはどういうのを買うのかもう決めてんですか?」
麦野「一応見て決めるけどさー。黒系がいいかな」
滝壺「私はピンク…かな」
絹旗「二人ともらしいと言えばらしいですね」
絹旗(私はどうしましょうか)
??「この黄色い帯なんかどうです御坂さん!」
??「へぇー、こんなのもあるんだ。結構よさそうね」
絹旗「ん?」
美琴「あ」
麦野「え」
佐天「い?」
滝壺「う」
絹旗「お、じゃない!!何ゆえア行を超連発してんですか!?」
佐天「いやぁー、つい釣られちゃって♪」
滝壺「私は空気を読んだだけ。そういう絹旗も言ってたじゃない」
絹旗「ノリってのは恐ろしいです…」
麦野「そんなコントはどうでもいいッ!!第3位!!?何で貴様こんなところに―」
美琴「何でって、浴衣を買いにきただけなんだけど…」
麦野「うぐっ」
滝壺「そりゃそうだよね」
絹旗「あなたたちも花火大会に行くんですか?」
佐天「あったり前じゃないですかーっ!だって祭りですもん!」
美琴「その様子だと、絹旗さんたちもそうなのね」
ちなみに、黒子と初春がいないのは風紀委員で来れないかららしい。
佐天「ところで御坂さん。この人たちとはお知り合いですか?」
美琴「あ、そうだった。そういや佐天さんは初めてだったよね。紹介するわ」
絹旗(あの黒髪ロングの人、どっかで見たような…)
……
佐天「レベル4が二人に…この麦野さんって方は、レベル5の第4位!??」
絹旗「そんなに気負わなくていいですよ。だって麦野ですし」
麦野「絹旗ァ?それどういう意味―」
滝壺「よろしくね佐天さん」
麦野「滝壺もそこは突っ込まねぇのかよッ!?」
……
美琴「そっか。みんな大体何色にしようかとか決めてんだ」
絹旗「御坂さんはどうなんです?」
美琴「んー、実は黄色の浴衣一着もってるんだけど。ちょっと気分変えて、緑にでもしようかなぁと思って」
美琴(決してゲコ太のイメージカラーに影響されたわけじゃないんだからね!?…ちょっとだけだし)
佐天「っていうか、みんな浴衣買うんですね。まぁ当たり前といえば
当たり前なんですけど!帯だけ買いにきた私が浮いてるな~…」
麦野「どういう浴衣もってんの?」
佐天「水色に、黄色の花柄のあるやつです。以前は赤の帯してたんですけど…
御坂さん同様気分変えたくなっちゃって。赤以外に似合いそうな色はないかなぁと」
滝壺「そうなんだ。でも、それなら自由に選んでいいかもね。水色って何にでも合うし」
佐天「だからこそ、何買えばいいか迷うんですよねー」
麦野「いっそラメ感のあるゴールドとかどうよ?柄とも同色系統だし、結構いいんでなーい?」
絹旗「いや、何でも合うといってもさすがにそれは…」
滝壺「麦野くらいしか似合わないよ。良い意味でも悪い意味でも」
麦野「さっきから、あんたらは私をどういう目で見てんのよ…」
絹旗「まぁ実際問題。麦野は黒系を選ぶんですから、ゴールドは似合うと思いますよ」
佐天「なんて大人っぽい色の組み合わせ…麦野さんだからこそできるってやつですね」
麦野「でも…。私もたまにはそういうのじゃなく“可愛い系”も演出してみたいっていうか…」
美琴(…第4位も複雑なお年頃なのね)
佐天「まぁゴールドはともかく、黄色なら選んでも良いかも!」
美琴「佐天さんらしい元気な色ね」
佐天「そういう御坂さんだって元気の塊なんですから、黄色とか考えてもいいんじゃないですか?」
美琴「緑の浴衣に黄色の帯…か」
滝壺「いいんじゃない?」
麦野「緑だったら、白や黒も合うわね。大人っぽさを出せるって点なら。
もっとも、第3位にはそんなの似合わないかぁ!!アハハハハハ!!!」
美琴(あいつだったら…何色が似合うっていうのかな。やっぱ黄色なのかな…)ブツブツ
麦野「こいつも滝壺や絹旗と同類か。あーヤダヤダ。佐天って言ったっけ?なんかあんたには親近感沸いてきた」
佐天「え?」(どゆこと??)
絹旗(私もいい加減、どんな色や柄にするのか目安くらいはつけないと…)
美琴「店員さんに聞いてきた!黄色は緑に合わせる定番且つ明るいイメージを出せるみたいだから…
やっぱ帯は黄色系にする!そうと決まれば、後は緑の浴衣選びね…」
佐天「じゃあ、各々探していくとしますか!」
というわけでみんな点々となった。
……
美琴「あ」
絹旗「…?あぁ、御坂さん」
偶然にも第3位さんと会った。
美琴「絹旗さんも緑の浴衣見にこっちに来たの?」
絹旗「あ、いえ。実はまだ決まってなくて。いろいろ見て彷徨ってるうちに、こっちに来ちゃったんです」
美琴「そっか。…ねえ、絹旗さん」
絹旗「はい?」
美琴「やっぱその…。あいつと一緒にお祭り行くの?」
“あいつ”とは、一方通行のことだろう。
絹旗「そうですね。そのつもりですよ」
美琴「やっぱそうなんだ。仲が良きことで」
絹旗「別に、まだそんなんじゃないですよ」
美琴「…あのさ。前から気になってたんだけど」
絹旗「?」
美琴「絹旗さんはさ、一方通行のどこが好きになったのかなぁって」
絹旗「え?そりゃぁもちろん―」
……
そういや何でだ?
絹旗「……」
いざそう聞かれると答えられない。一体、何がきっかけとなって彼を好きになったのだろう。いや、そもそも…
絹旗(私は本当に一方通行のことが“好き”…なんでしょうか…?)
絹旗「……」
美琴「あ、ゴメン、もしかして変なこと聞いちゃった…?」
絹旗「い、いえ、全然そんなことはないです」
そう。本来なら全然たいしたことのない質問だったはず。それがこうなってるのは…
絹旗(私が、一方通行について真剣に考えたことがなかったから、ですね…)
それに尽きる。
別に彼のことが嫌いというわけではない。むしろ好きな部類には入ってるはずだ。そうでもなければ
明日や祭りのことではしゃいでる自分は、一体何だということになる。ただ…それが男女の“好き”を
意味するのか。単に反応を窺うのが楽しいだけではないか。彼の意外な人間性が斬新なだけではないか。
もしかしたら、浜面という男友達の延長線上として彼を見ているだけではないか?そう思えて―
絹旗(いや…)
訂正。アホ面とは違う。少なくともヤツと一方通行とでは…。
接してるときの私の態度、感じ方は全然違う。それは私自身把握している。
絹旗(じゃあ、この感情の正体は…?)
答えは出なかった。…その代わり。一方通行のことを考えていたせいか。思いもよらない別の答えが出てきた。
絹旗「…白」
美琴「え?」
絹旗「そ、そうそう!白ですよ!白の浴衣なんか超どうかなぁと思いまして!!」
美琴「白…か。良いんじゃない?純白な感じがして。絹旗さんにも似合うと思う!」
絹旗「そうですか?じゃ、じゃぁ…白地のを探してみるとしますっ」
突然出てきた“白”という色。その理由は非常に単純。
絹旗(だって、一方通行といえば白ですもんね…)
彼のことを考えるうちに、つい顔を思い浮かべてしまっていた。白い髪に、薄白い綺麗な肌。
もっとも、それだけで浴衣に白を選んだわけではないが…。自分にも合うかどうか考えて、そして決めた。
美琴「ただ、白だけだとちょっと寂しいかもだから、柄はちょっと派手なくらいでちょうどいいかもね」
絹旗「そうですね。それなりに映えそうなのを選ぼうと思います。あ、そういえば」
美琴「どうしたの?」
絹旗「御坂さんこそ。上条当麻さんは誘わないんですか?」
美琴「!?」
一方通行のことを聞かれたせいか。向こうの“事情”も聞きたくなってしまった。
美琴「な、な…!何でここで、あの『バカ』が出てくんのよ!!?」
…分かりやすい反応だ。まさか、隠してるつもりなのだろうか。
絹旗「だって仲良さそうですし♪で、誘わないんですか?」
美琴「いや、あいつは誘うとか誘わないとかそれ以前に…!私、佐天さんたちと一緒に回る約束してるから!」
絹旗「それ言えば私だって麦野や滝壺たちと回りますよ。そこに上条さんも加えてあげたらどうです?」
美琴「…そうね。か、考えておくわ。機会があったら、ね」
絹旗(相変わらず素直じゃないなぁ)
つくづくそう思った。
【後編】に続きます。
麦野、結標の今後も気になる。