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≪あらすじ≫
キュートでファンシー、ビビッドなお茶目さが魅力でお馴染みの女騎士ちゃんがめっちゃ活躍した。
女騎士ちゃんは果たして薄汚い魔物どもを一匹残らず根絶やしにする事ができるのか。
元スレ
女騎士「私の事を好きにならない人間は邪魔なんだよ」煮込み6杯目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377080897/
女騎士「そうなったのは私のせいじゃないから謝らない」煮込み7杯目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379703594/
勇者「連合との、いわば窓口となっているあなたに聞きたい」
姪「……」
勇者「アジ・ダハーカの正体、彼女をどう思うか……」
姪「こいつはどういった趣向だね、ええ?」
アラクネー「ふええ」
将軍丙「……」
姪「あばずれの有力な情報を掴んだと聞いて来てみれば……私もなめられたものだな」
将軍丙「確かな筋からの情報よ。現にあの女の下から救出された彼から……」
敵兵「……」
姪「鵜呑みにするものかね。そんな所から湧き出た手掛かりで身内を……自分の叔母を疑えと言うのか?」
敵兵「物的な証拠はない、しかしあの女をオレは、一度は捕らえた!その時の調書だって……」
姪「図に乗るなよ、東方人の分際で。そもそも、貴様のように出自のおぼつかない人間が何故ここにいる」
将軍丙「熱くなりすぎよ。私達との協調を持ちかけたのは貴女の方、少しばかり落ち着いてくれないかしら」
姪「アジ・ダハーカの始末は急務だが、素性のわからん不安要素を抱え込む気はない。おまけに茶番に付き合わされては……」
敵兵「(言っちゃ失礼だけど、どことなく似てるかもしれねえ……)」
姪「……」
敵兵「(やっぱり、身内って事が引っかかるのか……)」
姪「ふん、よかろう。ならば裏付けを取る、そこのみすぼらしい男なんぞに、我が血統を疑われては困るからな」
敵兵「はあ……」
姪「万一、叔母様がアジ・ダハーカだった場合……そうだな。その場で殺しても構わんのだろ?」
敵兵「」
将軍丙「待って。彼女は生かして拘束するべきだわ、まだエルフどもと繋がりがあるなら……」
姪「なら、邪魔をするエルフはまとめて殺してしまえばいい。彼奴らほど胡散臭い俗物もおるまいに」
将軍丙「殺すって……あなた、エルフは連合や東帝の……」
姪「悪には罰が必要だ。アジ・ダハーカや、エルフが仮に奴に与していたのなら、悪と呼ぶほかない。
遅かれ早かれ、奴らには罰が下される。魔王サマも、平静を繕ってはいるがそのつもりだろ?」
勇者「……わかった。ぼくから常任理事には伝えておく」
将軍丙「ちょ……勇者くん!」
勇者「ただし、君の中での確証が掴めたら……ぼくに直接知らせてほしい」
姪「あなたにか?」
勇者「ああ。約束してほしい、君の邪魔になるような事はしない。彼女に誓って」
姪「……とんだ魔王シンパの勇者サマだな。不愉快だ」
勇者「彼女ほど、今の世界に憂いている人はいない。ぼくは、彼女の希望に全てを賭けたんだ」
姪「とんでもない博打だな。奇妙なものだ、魔王軍とやらは。へどが出る」
敵兵「(間違いねえ……やっぱこの人、あのクソ女の遠縁だ……)」
敵兵「フォァーーー、自由だぁぁぁぁ、自由って素晴らしい!! 陽の光がこんなに心地よい!!」
ティタニア「あれまあ、お元気です事。曇り空でこんなに元気になってしまわれるなんて、どんな生活をしてきたのでしょう」
敵兵「空気がおいしい!おいしい!!」
ティタニア「煤塵と下水の腐臭がどことなーく漂う、気持ちのいいこの空気!」
敵兵「……」
ティタニア「散歩歩けば浮浪者にぶちあたる……あら、どうかいたしましたか、少尉どの。アテクシ何か言いましたか?」
敵兵「……沈んだ気分がもっと沈むからやめていただきたいです」
ティタニア「あらぁ、ゴメンあそばせ少尉どの」
敵兵「ち、中尉です……
ティタニア「あらぁ、そうだったかしらぁ。でも、正直なんでも良かったでしょ? ようやっとマトモな職にありつけたんだから」
敵兵「(まさか、魔王軍の下っ端になっちまうとは夢にも思わなかった……)」
ティタニア「一応は志願兵の立場ではあるけど……アテクシとその護衛が直々に監視についてやっているのです、謹んでお散歩なさいな」
敵兵「はい!! ありがたき幸せにございます!!」
ティタニア「そうでしょう、ありがたいでしょう!」
敵兵「自由時間が日に三度もあるだなんて幸せだ!!生きてて良かった!!もう食事に見た事ない植物が混じってる何て事も無い!!
ベッドもフカフカ!!給料も出るし部屋もある!!魔王軍は最高です!!」
ティタニア「」
ブラウニー「やだ……ブラックからいらした人だわ」
ピクシー「恐ろしや……まだ洗脳が抜けきってないのね」
敵兵「せ、洗脳されてないです……平気です、大丈夫ですから」
ティタニア「アテクシの部下に妙な毒電波撒かないでくださません?」
ブラウニー「きっと泣いたり笑ったりできなくされるのよ……」
ピクシー「両生類のクソをかき集めた価値しかなくなってしまうのよ……」
敵兵「ひどい言われようァ!!」
ティタニア「ほほほ! 仲のよろしい事で!」
ティタニア「そういえば……あなた、アジ・ダハーカの戦力としても使われたんですってね?」
敵兵「え、ええ……まあ……」
ティタニア「少しは見覚え、あるんでなくて? この西帝の雰囲気」
敵兵「(以前、幕府のどうぶつ奇想天外と一緒に奇襲をかけた土地……か)」
ティタニア「アテクシ、南に足を延ばしていたからその場には居なかったのだけれど……
どこぞのお馬鹿が、有毒ガスをドワーフの居住地を中心に散布しただとか」
敵兵「……オレも、その件については知りませんでした。そんな劇薬を手札として持っているなら、
わざわざ連合の庁舎や魔王軍に正面切って挑まないでしょうし」
ティタニア「公式発表では、かなり表現がぼかされていたわねぇ……付近の工場で行われた、ちょっとしたミスだとか」
敵兵「……」
ティタニア「……しかし、向こうの東側では少しだけ事情が違う。
西側と違って、北西諸島や共和国の介入を匂わせる表現を記す新聞社がぽつぽつ存在している」
敵兵「それって……!?」
ティタニア「連合からの思想流入が、いよいよ顕著になってきているって事じゃあないかしらぁ?
来年の連盟会議、連合もぼつぼつ本気で帝国の片一方をブン取る腹積もりなのかもしれないわねぇ」
敵兵「……複雑な気分です」
ティタニア「そりゃあねえ、祖国だものねえ。
ほら、鉄条網とコンクリの壁を登ればすぐ祖国の兵隊さんがいらっしゃるわ。乗り越えた途端に蜂の巣でしょうが」
敵兵「……」
ティタニア「地に足ついた生物にとっての鉄条網っていうのは、それは効果的でしょうねぇ
帝国陥落から数年もしないで、連合や北西のあらゆる施設の周囲……または国境線上に張り巡らされましたもの」
敵兵「……民衆の心理に与える影響も小さくないでしょうからね」
ティタニア「コストパフォーマンスも高いうえ、ひと工夫すれば帝国主力戦車もこれで足止めができちゃう……
残党軍がうかつに決起もできないのは、これと駐留している北西諸島や連合の目が光っているからだわね」
敵兵「……」
ティタニア「だからこそ……先のドラグーンを用いた電撃戦には致命的に弱かった。
収容所やゲットーという被差別区域を明確にする事には重宝したけれど、連合側は対ドラグーン戦術を未だに打ち出せていない……」
敵兵「(あのお爺ちゃんや騎士ども……そこまで見据えてドラグーンの育成をしてたってのか……?)」
ティタニア「本国からの査察や常備軍拡充が行われている最中だけど、軍備が整うのは再来月……連合ったら仕事が遅いったらないわぁ」
敵兵「モタモタしてると、またドラグーン部隊が……」
ティタニア「承知しているわぁ。アテクシ達やモルダヴィアの首なしどもは、あなたの警告に耳を傾けたけれど……
でも、北西諸島に手綱を握られている申命の園や幻獣はどうかしらねぇ……」
敵兵「やっぱり、巨人の王様が殺された事が……」
ティタニア「どこの誰がやったかは知らないけど……アテクシ達オフィシャルクランっていうのは、規模が大きくなるにつれて臆病になるものなのよぉ。
おおかた例外なく、慎重になりすぎる……今回の場合、代理人でなく首長本人が殺られちゃあ、警戒もするってものよぉ」
敵兵「……」
ティタニア「もっとも、ハナっから手を貸す気のない連中もいるんだけどねぇ……」
ティタニア「おまけに、食料を始めとする各種支援は東西同士のプライドのおかげで滞っちゃう始末。
結構な額の投資をした筈なんだけど、周りを見ればご覧の有様。かつての帝国の栄華はどこへやらよねぇ」
敵兵「中央から少しでも外れると、こうも荒れてしまうか……」
ティタニア「帝都の周りは、貴族や領主がメッタメタに暴れ回った土地ばっかりだから、それが停戦を機に更に悪化。
賠償金支払いも相まって、そのツケは全部国民に。悲惨なものねえ。頭がすげ替わっても、そう簡単には変わらないもんね」
敵兵「治安も……もはや最低と言ってもいい状況かあ」
ティタニア「皇族への信仰心が根強く残っている地域もあってか、東西間の亡命も一時期は盛んだったわねぇ。
壁を乗り越えて、敬愛する皇帝陛下や皇女殿下の軟禁されている地へ。もしくは、共和国への帰化か……」
敵兵「何も変わってないのかなぁ……オレ達が攻め込んだ時と……」
ティタニア「……さあ、ンな事は住んでる当人達しかわかんない事よぉ。アテクシ達が分かる筈もない」
敵兵「……」
ティタニア「ほら、見なさいな。あの人の列。あらあら、今日は随分盛況なのねえ」
敵兵「はい?」
ティタニア「アテクシ達が連合に掛け合って許可させた努力のたまものでしてよ。御覧なさい、立ちあがった民衆を!」
敵兵「あれは……デモ隊の行進かな。なるほど、ああしてメインストリートや列の横に魔王軍の人材を並べておけば……
平たく言えば、恩を売れると同時に、魔族への抵抗も緩和できるって所か」
ティタニア「毎月一度、税率や通行規制緩和、配給の質の向上……権利回復を求めるデモが行われているわぁ」
敵兵「……」
ティタニア「あらぁ……浮かない顔ねえ」
敵兵「いや、その……危なくないのかなって。エスカレートして暴力沙汰になったら本末転倒じゃないかな、と」
ティタニア「確かに、どこからか湧いてきたダークエルフの違法デモ隊だかと衝突するケースも過去に数回起こったけれど……
今の所、人死にが出るような事は皆無よぉ。アテクシ達がかなり人手を割いているってのも理由だろうけど」
敵兵「……たとえば、ワザと魔族の警備にケンカを売って、傷害沙汰に発展させるとか」
ティタニア「はあ?」
敵兵「それで、デモ隊と警備が衝突……とにかく際限なく暴力が広がって……」
ティタニア「あなた、本当に大丈夫……? どこのキ印がそんな無意味な事をするって言うのかしら。
アテクシ達、少なくとも帝国領内ではケンカ売られるような事は……そうね、アテクシ達やモルダヴィアはしてないわぁ」
敵兵「は、ははは。そう、そうですよねえ。考えすぎですよねえ。そんな無意味に憎悪の撒き散らすアホはいないですよねえ……」
『な、何ぁんだァァァーッ、今の音はァァーッ!!』
敵兵「」
『じゅ、銃声だァァーッ!!誰が撃たれたァァーッ!?』
『ああああーッ、お、おれっちの、ダチが動かねええええーッ!!しっかりしろォォーッ』
敵兵「」
『医者だ医者ッ、医者を呼べェェーッ!!』
『おいッ、後ろの方は何騒いでんだ?』
ティタニア「ちょっと……何よ……」
『誰かがオレ達を狙っているゥゥーッ!!』
『伏せろォーッ!!殺されるぞォォ!!』
ティタニア「……行くわよ、あなたもついてらっしゃいな」
敵兵「」
ブラウニー「まずいですよピクシーちゃん、今回もまたデモ派閥同士の事件かしら」
ピクシー「まったくダークエルフの連中ったら……自分達の都合のいい事しか主張しないんですから」
ティタニア「(ち……ただでさえガス流出事件でピリピリしているこの時期に……!!)」
オーク騎兵「落ち着けッ、落ち着くんだッ!!」
ゴブリン騎兵「ち、ちくしょう……どこのバカだ!? 火薬かなんかのイタズラじゃあねえのかッ!?」
ゴーストアーマー「参加者の所持品検査を行った責任者はどいつだ、リストを持って来させろッ!!」
オーク騎兵「は!」
ティタニア「回を重ねる毎に参加人数を増やしていくデモ隊……今回では、ここ以外の場所含め5万人はくだらない……」
ピクシー「ふぁっく!! 本当に銃声だったの?」
ブラウニー「ミセス・ティタニア! 我々はオーク警備兵と共に周辺のアパートメント等の警戒にあたります!」
ティタニア「了解。今日は厄日だわぁ!!」
敵兵「……」
ティタニア「あなたも、そんな変な顔色してないでぇ!」
『ここから出せェェーッ!!』
『殺されるゥゥーッ!! 列の中にいたら殺されちまうゥゥーッ!!』
『誰が撃ったんだ!? 何が起こっているッ』
ティタニア「列が乱れる……この人数を、何とかして統制しなくてはッ……!」
『ギャアアアーッ!!』
『ま、まただァーッ!! 二人目だァーッ!!』
オーク騎兵「こ、こらッ!!やめろッ、大人しくするんだッ!!いま、何が起こっているか捜査を……」
『うるせェェーッ、魔王軍の豚野郎が調子こいてんじゃあねーぞッ!!』
『状況見てもの話せよこの野郎ッ!!』
ゴーストアーマー「痛い、あ痛、いたい、あいて!」
敵兵「(やっぱりだ……明確な利益になるようなモノを与えなきゃあ、これだけ多くの人間の心なんか動かせない……)」
『くそ魔族がよォー! オメェらちゃんと警備してたのかよォーッ!!』
敵兵「(デモ行進の権利……西側の共和政庁からそれを勝ち取ったのは確かに帝国民にとってプラス……しかし……!)」
ゴブリン騎兵「上からの指示はまだかよ……応援が必要だぜこりゃあ。なあ相棒……」
オーク騎兵「」
ゴブリン騎兵「相……相棒!? おい、どうした相棒……相棒ォ!!」
ゴーストアーマー「何してるッ、これ以上刺激するんじゃあない!!」
ゴブリン騎兵「う、動かねえ! 息してねェんだよ、血も出てる! さ、さ、刺されたらしいんだよォ!!」
ゴーストアーマー「バカな!?」
ティタニア「……今は列の統制に専念なさい、狼藉者の捜索はアテクシ達が請け負います」
ゴーストアーマー「ミ、ミセス・ティタニア。しかし……!」
ティタニア「オフィシャルクランの代理人の言う事が聞けなくて? 早くなさいな、お役所仕事では、大人しくなるものもなりませんよ」
ゴーストアーマー「はっ……!」
敵兵「つ、次は空から来ます……十中八九、ドラグーンが来ますよ!!」
ティタニア「こんな時に何を言っているの!? あなたも鎮圧に参加なさい!」
敵兵「こ、これだけじゃあ多分終わらないですよ!! 」
ティタニア「こちとらが対空防御を講じるには手続きが必要なの! 二人以上の現地領主と……
それに加えて、暫定政府の許可が必要なのよぉ! 少なくとも、アテクシの一存じゃあ軍の飛行戦力は出せないわ!」
敵兵「そ、そんな……」
ティタニア「コッソリ出すってわけにも行かないでしょう、一騎か二騎じゃ、あなた満足しないって顔してるわぁ!!」
敵兵「ち、ちきしょう……!!」
チビ将校「これは……な、何の騒ぎかね」
デブ富豪「おお、恐ろしい……恐ろしすぎてお小水をしてしまいそうだ」
ハゲ文官「何が起きているのか、わかってはいないのか!?」
姪「落ち着いてくださいまし。御心配には及びません、皆さまがこの場に居る限り、われわれ情報部が安全を保証いたします」
姉「……無茶はしないでねぇ、お母さんはあなたが心配よぉ」
姪「……」
チビ将校「そうだ、キミもこの庁舎に残っていなさい。肉親を一人にしては危険ではないのか」
姪「出来る事ならばそうしたいのですが……私も出なければならないでしょう。母上、それでは」
姉「……」
姪「大佐。北西諸島の駐留部隊へのドラグーン使用許可は……」
チビ将校「ああ、その事なんだが……申し訳ないが、もう暫く見送りとなってしまったのだよ」
姪「……」
ハゲ文官「住宅区域上空を飛ばれると騒音がうるさいだとか、糞を撒き散らされちゃ困るだとか……
議会じゃあクレームの嵐でねえ。君のいう事は通してやりたかったんだが、いやぁすまないすまない」
デブ富豪「もう少し、キミが媚びた格好で現れてくれれば、飛べるようにはなるかもしれませんがなあwwwwww」
姪「いや、残念。それでは、私なりに足を使って仕事をするとしましょうか」
チビ将校「本当にすまないなあ。連合からお叱りを受けたら、就職の斡旋くらいはさせていただくよ」
デブ富豪「剣じゃあなく腰を振る職場だがなあwwwwwwwwwww」
姪「それはありがたい。いよいよ跡が無くなれば、頼らせていただきますれば……」
姪「……」
アラクネー「(うう……こわい……)」
将軍乙「デモの進行順路は、さっき教えた通りよ。口頭で申し訳ないのだけど……」
姪「問題ない。帝国中央の地図はすべて頭に入っている。デモ行進も然りだ」
将軍乙「なら、いいのだけれど。あなた、大丈夫なの?」
アラクネー「(すげー機嫌悪そう……)」
姪「何も。別に何も変わらない、罰を与えるべき者が増えるのは、日常茶飯事だ」
将軍乙「……そう」
姪「それよりも、今我々がすべきは銃撃犯の確保だ。情報部の人間を出す、必ず捕まえる」
将軍乙「ええ。幻獣族の支援も受けられるよう手を回すわ」
姪「有翼の魔族を優先して採用してほしい、空から敵を捜索しろ。責任は私が取る」
アラクネー「い、いいんですかぁ。怒られちゃいますよぉ」
姪「構うものか。仮にこの騒ぎにアジ・ダハーカが一枚関与しているなら尚の事、お釣りがくるほどのリターンが期待できる」
将軍乙「選択の余地はないわね」
姪「……必ず、ブロンドクソ女を断頭台に叩き込むぞ」
姉「ふぅ……私、少し休んできますわねぇ……」
ハゲ文官「おや、大丈夫かね? おっぱい触らせてくれんかね」
デブ富豪「一人で仮眠室に行けるかね? オマンチョン触らせてくれんかね」
チビ将官「何か欲しいものはあるかね? おちんぽん触ってくれんかね」
姉「あらあらぁ……すみませぇん、ちょっと今は寝たい気分なのぉ。一人にしてぇ……」
ハゲ文官「……」
デブ富豪「……」
チビ将校「……行ったな」
デブ富豪「行ってしまったなあ」
ハゲ文官「ふむ……では、行ってくる」
チビ将校「うむ、行ってこい」
デブ富豪「あのナマイキな連合の飼い犬の姪でも孕ませてしまえ」
ハゲ文官「うはwwwwwwwwwwついに私もwwwwwwww正式な貴族にwwwwwwwww」
チビ将校「……今度こそ行ったな」
デブ富豪「行ったな、あのクソハゲ。前々から下品で臭くて目障りだったのだ」
チビ将校「ハゲに生きている価値はないものな、まっとうな帝国民とは思えん」
デブ富豪「……まっこと下劣な男であったな。正直やつと話していると反吐が出そうだった」
チビ将校「おおよそ、やつの腐って死んだ頭皮から湧き出る腐臭のせいであろうな。不愉快な男だ」
デブ富豪「しかも、事あるごとに買い取った奴隷の自慢をするものな。イカレてる」
チビ将校「人間の奴隷で一喜一憂するなど下等もいいところだなイカレてる」
デブ富豪「エルフを愛でる事以上に幸福な事などあるまいに……」
チビ将校「人間のメスなど娼館から持ち帰って、淋病でも貰っては割に合わんのになあ」
エルフ三男「ええ、まったくもってその通り。さすがはお得意様でございます、よくわかっていらっしゃる」
チビ将校「おお、あなたは。これはこれは、こちらから話を持ちかけたのにお出迎えもできませんで」
エルフ三男「いえいえ、あなた方というパイプができたというのは、我々にとっても幸運でした。
どう連合軍を出しぬいてやろうと考えていたのでね。本国からの増援が辿り着く前に、再突撃をかける事は確定していましたが」
デブ富豪「これで作戦は盤石のものとなったわけですかな?」
エルフ三男「さあ……何事も、終わってみるまでは分かりませんゆえ……クックククwwwwwwwwwwwww」
女騎士「ははははwwwwwwwひゃっひゃっひゃっひゃっひゃwwwwwwwwwwwwwwww」
おかっぱ「悪趣味な……」
女騎士「案外よぉwwwwwwww毒ガスより効果的だよなぁwwwwwwwひゃっひゃっひゃwwwwwwwww」
騎士は「警備兵の間でも、不審が募っているようです……かなり待機陣形が乱れていますわ」
女騎士「アホだwwwwwクソボケどもだぜwwwwww負け組の失業者ども相手にたじたじとかwwwwwwww」
おかっぱ「……」
女騎士「あーあー悲惨だなぁwwwww抵抗できずに警備の魔物はフルボッコwwwwwwwwwww
でも私のせいじゃねぇしなぁwwwwww手出しすんなって言われてるんだろうなぁwwwww魔王様になぁーwwwwwww」
おかっぱ「(政庁のクズどもとのコネクションを、マフィアから通じて得た途端にこれか……
反体制の代名詞とも言えるデモ隊を鉄砲玉に……そして盾として利用するか……)」
女騎士「英雄はこうやって、そりゃあもうカッコ良く屍を踏みしめて凱旋すんのがスジってもんだしなあwwwwwwww」
秘書「ふええええ、高ーい、怖ーい!! 降ろしてえええ!!」
おかっぱ「痩せろ!! 運動しろ!! 騒ぐな!!」
女騎士「勇者さまぁーwwwww魔王さまぁーwwwwwwwそれとついでに連合のゴミどもーwwwww聞いてるぅー?wwww
こっちにゃあよォー、少なくともクズニート五万人ぶんの人質がいるんスよぉwwwwwwwwwどっすかwwwどっすかこれwwwwww」
ハゲ文官「も、も、もういいかね」
姉「はぁい? 何がでしょうかぁ」
ハゲ文官「それはもう素敵な事だよ、臍の下と下をこすりあわせる素敵な営みだよキミィ」
姉「はぁ」
ハゲ文官「もう、もう我慢できないぞキミィ、入ってもいいかねキミィ!!」
姉「はぁい。どうぞぅー」
ハゲ文官「(きた……決まった……このユルユル三十路に取り入れば、わたしの人生後半の幸福は確約されたも同然!!
帝国そのものなんぞはどうでもよいわ!! 連合傘下の分割領でおいしい思いができればそれで……!!)」
ハゲ文官「ま、待ちくたびれたよキミィ。このわたしを廊下で待たせるなど。さあさ、早くしたまへ……」
姪「はあ、お盛んな事で……よくいらっしゃいました」
ハゲ文官「」
バギッ
ハゲ文官「お゛ぱァァァーッ、わ、わ、わたしのゆ、指ィがァァァーッ」
姉「あらぁ……」
姪「婦女暴行……強姦の未遂、現行犯で逮捕、身柄を拘束する。以降は私の質問に答えてくれると助かる」
ハゲ文官「きき、貴様ァァ……」
姪「必要な事だけ、お前は喋る事を許される。もう一本いくか」
ハゲ文官「ひゃ……や、や、やめ……」
バギィ
ハゲ文官「!!!」
姪「あー……一つ目。公務フロアでたむろしてるチビとハゲ、あの二匹と一緒に何をたくらんでた」
ハゲ文官「しし、知らないィィ、な、何のことだかわからないィィ……」
バギィ
姪「この一大事の最中、政庁のホールで見かけん一団を目にしたという証言がある。エルフだとよ」
ハゲ文官「エ、エエ、エルフ!? し、知らん知らん知らん……わたしはエルフなんかに興味は……」
パンッ
ハゲ文官「がふっ!!」
姪「……ぺドフィリアのクソ野郎が。あたしをあんまりなめてんじゃあねーぞ。テメェにゃ逃げ場はねえんだよ。
どうせ惨めにおっ死ぬ運命にあるんだ、少しくらいはあたし相手に正直者になったらどうだ?」
ハゲ文官「は、はぇ……?」
姪「児童誘拐、売春斡旋……お前のブローカー稼業も、三十路相手のレイプ未遂で全部表沙汰になる。
くさり水を絞りきったボロ雑巾のようなテメェができる唯一の人間らしい事ってな、あたしに洗いざらい懺悔する事だけだぜ」
姉「お仕事たいへんなのねぇ、がんばってぇ」
姪「(……チビとデブ、それにエルフの一団についての情報は……本当に何も持っていないか。どうしようもないな)」
ハゲ文官「ああ゛ああッ、い、いい痛いィィーッ……き、キミィ……い、医者……医者と、それに弁護士を呼んでくれッ!!」
姉「まあ……弁護士さん?」
姪「(都市全域の駐屯部隊や警察機関に通達されている、飛行戦力の高度制限……それについてだけ聞きだせただけ御の字か)」
ハゲ文官「いいい、いいやッ、弁護士が先だァァーッ、弁護士を呼べえええッ!!
そこの女、着衣も乱れてなけりゃあ、そもそも事にも及んじゃあいない!!わたしは無実ッ、何も悪くはないぞお!!」
姪「(勇者サマからの情報によれば、あのプータローの証言にあった敵ドラグーン勢力については信じていいとの事……
すなわち、テロリストどもがドラグーンを中心に据えた戦力構成で武力侵攻してくる事は明白、コイツは利用されただけか)」
ハゲ文官「きき、キミィ!! 連合傘下のこの地では司法が全てなんだぞォ!! 情報部なんか、法廷で戦えば怖くもなんとも……」
姪「(北西諸島のドラグーンまで完全に封殺できるとは思えん……あちらさんは治外法権、このハゲの権力だけでなんとかできるかは……)」
姉「あふぅ、ねむいー」
ハゲ文官「そうさ! こういう時、スタイリッシュなわたしはこう捨て台詞を残して颯爽と去るのだ!! 諸君、法廷で」
姪「そうかい」 パンッ
ハゲ文官「あべし」
姉「まあ大変……お部屋がぐしょぐしょ」
姪「母上、ここから離れます。先ほど私が入ってきた……そう、そこの窓からです」
姉「でもぉ、どうやってぇ? お母さん、飛び降りたら死んじゃうわ」
姪「……アラクネー! 事は済んだ、逃げるぞ。糸をよこせ」
アラクネー「はいはーい!」
姉「まあまあ……クモちゃんなの? 女の子なの?」
姪「向かいのビルディングに彼女を待機させてきました。あの糸を伝って、向かいへ逃げます」
姉「まあ。お尻から出たべたべたしたものに捕まってむこうに行くのねぇ」
アラクネー「か、加工してあるもん!! 汚くないもん!!」
姪「もたもたしている時間はありません。この帝立政庁、エルフどもに掌握されるのも時間の問題です」
姉「はあい。せっかちなんだからぁ」
姪「(ち……あれほど東部への軍備増強を進言していたに関わらず……情報部の忠告を無視し続けた結果がこれだ、連合のボンクラどもが!)」
姉「まあー。その軍服、素敵だわー。金の刺繍がかっこいいわぁ」
将軍丙「あ、ありがとうございます……」
アラクネー「この人が……情報部でいちばんエライ人なのぉ?」
将軍丙「多分……」
姉「クモちゃんもありがとうねえ、ビルからビルの綱渡りなんて、二度としたくないけどぉ」
将軍丙「な、何なの、このウィスパーボイス……頭がクラクラしてくるわ……!」
姪「慣れだ、我慢してほしい。それより、状況はどうなっている」
ゴーストアーマー「正直、情報自体がかなり錯綜してしまっている。中央と、それに連なる街道に沿って並ぶすべてのデモ隊列が銃撃に晒された。
死傷者数は不明、現在は警備に当たっていた陸軍各分隊と、ミセス・ティタニア率いる近衛隊が事態の収拾に……」
姪「違法デモ隊が各方面で徒党を組んでいると先ほど聞いたが」
ゴーストアーマー「ああ……例のダークエルフどもの領有権デモ隊に加えて、余計な連中が次々湧いて出てきやがる。
先のドワーフゲットー襲撃事件に対する公式発表への不満が、ここにきて爆発したんだろうな」
姪「……」
アラクネー「あ……あれ、今光ったの……花火じゃあないですよね……どんどん被害やばくなってないですか」
ゴーストアーマー「ちっくしょう……こうしている間にも!」
姪「違法デモ隊に対しては、武力でもって対応。片っ端から身柄を拘束。抵抗する者は殺害して構わない」
アラクネー「えっ」
姪「情報部長じきじきの提言だ。叩きのめせ、法治国家に相応しくないものは全て掃いて捨てろ」
ポニテ「久方ぶりの我らが故郷だ、この日を生きて迎える事が出来たのは、ひとえに皆の尽力の賜物である。
これより、帝国首都解放戦を決行。全機動部隊で首都へと進軍……凱旋する」
おかっぱ「(……すさまじい士気……そして覇気だ。いつぞやの尊皇派との抗争を思い出すな)」
ポニテ「我々の大義にあだなす敵は、全て砕いて排除せよ。これが最後の闘いだ」
金長狸「お、おーっ」
真神「……」
金長狸「な、何か言えよう……」
真神「……うるさい……周りがざわついていると、落ち着かんのだ……ああ、おなかがいたい」
ポニテ「連合軍臨時政庁において幽閉されている皇女殿下の救出。作戦の成否は、この一点にかかっている。
既に小規模のエルフ分隊が潜入しているが、それも我々飛行隊への期待あっての決死行だ。彼らを裏切るようなマネだけはするな」
騎士は「ふふ……あったまってきましたわ」
騎士ち「見ていらっしゃい、魔物ども……私達の凱旋を、指咥えてねえ」
ダークエルフ騎兵「こちとらガキの時分からここで暮らしてたんだ、負けやしねえ!」
ポニテ「勝って、必ず帰還しろ。以上だ」
娘「お母様の園を取り戻す! 行こう、お兄ちゃん!」
息子「駆け抜けるぞ! 足を止めるな!」
女騎士「全騎作戦行動開始、これより帝国を奪還する! 遠慮はいらない、敵を残らず叩き潰せ!!」
女騎士「ひゃっひゃっひゃーwwwwwwwwwwwwwwwwww」
『あべし』
『ひでぶ』
息子「道を開けろ、このよそ者どもが!!」
娘「テメェらゴキブリどもの繁殖していい場所じゃあねェーンだよッ、死にやがれ!!」
女騎士「無駄無駄無駄ァァwwwwwばーんwwwばーんwwwwww」
ポニテ「地上戦力の駐屯地到達を確認……よし、援護するぞ! 私に続け!!」
ダークエルフ騎兵「俺たちの祖国に……お前らの基地なんかいらねえんだよお!!」
女騎士「当たんねーwwwwこの銃ポンコツだろwwwww擲弾持ってこいよ擲弾wwwww」
秘書「デ、デモ隊相手に発砲しかしてないじゃないですかー! 何やってんですかー!」
女騎士「だってよー、前線で頑張るのとか私ガラじゃないやん? 汗水たらして働くアピールは目上の人がいなけりゃ無意味やん」
秘書「」
女騎士「それにさーwwww生きててもしょうがねぇクズどもを楽にしてやってるんだぜwwwwこの慈悲深い私による慈善事業よwwwww」
秘書「ふぇぇぇ」
アラクネー「制約ぶっちして出撃した航空戦力もあるにはあるみたいですけど……それでも、多分かないませんよぉ」
将軍丙「まずいわね……オフィシャルクラン内での思想対立がこんな形で……」
姪「幻獣族のハーピィ、キマイラ達は動けないのか」
将軍丙「順次要請をかけてはいるけど……強力な戦力を持つ申命の園や北部神族は、今のところ出し渋っているわね」
姪「北部のカラドリウス、ワルキューレ隊……南はホルス率いる飛行隊もダメ、か。絶望的だな」
姉「大変ねぇー」
姪「勇者どもの一行の到着は?」
アラクネー「早くて、あと40分ほど……しかし、先のガルーダについての十分な釈明が無かった事を咎められた場合……」
姪「まったく、何から何までしがらみだらけだな、そちらは」
アラクネー「ふぇぇ」
姪「……あの神鳥ガルーダを落とすほどの戦力を、あの女は持っているという事。ゆゆしき事態だな、どうしようもないかもしれん」
姉「そうねぇー」
アラクネー「(この人なんなの!? すっげーいらいらする!!)」
姪「ふむ……ドラグーン隊の進軍角度はこう、デモ隊への発砲があった地点はここ」
アラクネー「……」
姪「となれば、ここへは地上部隊を向かわせ、時間差で飛行隊を差し向ける……か。狙いは十中八九、連合暫定政庁だな」
将軍丙「やはり、目的は皇族の奪取……!」
姪「テロリストどものやりそうな、底の浅い行動だな。恐らく、前線には愛国心で動くデク人形どもを採用してるんだろうよ」
アラクネー「デク人形……?」
姪「諸国に点在する極右組織だかから人材でも募ったか……まあ、真相はどうだかわからないが。
まあ、相手がそれならそれで取り入る隙はあろう。愛国心があれば……まあ、負ける事はないだろう」
将軍丙「……何をする気?」
姪「こうする気だ」
ダークエルフ騎兵「政庁敷地に地上部隊が突入! 我々は引き続き敵性勢力の掃討に向かいます!」
ポニテ「よろしく頼む! ここからが正念場だ、閣下に余計な負担をかけさせるな!」
ダークエルフ騎兵「大尉も、御武運を!」
おかっぱ「……さて、我々はどうする。政庁周辺を警戒するか?」
ポニテ「……」
おかっぱ「郷愁に浸っている暇はないぞ。、まだまだ『凱旋』とやらは迎えられておらん」
ポニテ「ええ……」
真神「……おい、おいマナ板よ!!」
おかっぱ「殺すぞ糞犬」
真神「あの、あそこの部隊……あれを見よ、何に足止めされているのだ?」
ポニテ「……あれは……魔王軍か? 非武装の女性を連れている……」
姪「何度も言わせるな、グズどもが。お前達の首魁に会わせろと言っているんだよ」
エルフ騎兵「ク……」
ダークエルフ騎兵「ど、どうしましょう……これがハッタリじゃなかったら……」
エルフ騎兵「オレに聞かれてもなあ……」
姉「あらぁ。あらあらぁ」
姪「この女……情報部長の命が惜しかったら、アジ・ダハーカを出せ。話をさせろ」
ダークエルフ騎兵「卑怯な……ッ」
姪「テメェらみてえな腐ったテロリストどもがそれを言うかね。恥というものがないのか?
当然か、秩序に基づく自己主張ができない欠陥だらけのポンコツ野郎どもばかりだものなあ。だが、私のいう事くらいはわかるだろ?」
姉「あら……痛っ、痛いわぁ」
姪「くそダークエルフ。愛するお国の愛する貴族様の頭が吹き飛ぶぜ。言う通りにしろよな?」
秘書「ってな事が起こっているらしいのですが」
女騎士「情報部長……って誰? 誰だっけ」
エルフ騎兵「えっ」
秘書「えっ」
女騎士「……?」
エルフ騎兵「ブロンドで頭の悪そうなババアだそうです。連れてた女は、これまたブロンドで頭の悪そうな小娘で」
女騎士「あー、カワイソーに。デモ隊のアピールで頭やられちゃったバカ姉妹だろ」
秘書「えっと……そうなんですか?」
女騎士「だって知らねーもん、情報部長なんか私の覚えてる範囲ではいけ好かねーオッサンしか知らねえもん」
エルフ騎兵「では……どう返しましょうか」
女騎士「ほっとけよ、キ印相手にしてちゃ日が暮れちゃう。パッパとぶっ殺しちゃえ」
エルフ騎兵「」
ポニテ「やはり単なるブラフか」
おかっぱ「(どうだかなあ……あの女なら、例えあちらの主張が真実でも人質なんぞ見捨てると思うが……)」
ポニテ「しかし、用心するに越した事はありません。錯乱しているのなら保護しなければ」
金長狸「(この人もこの人でクッソ真面目ですよねえ……)」
おかっぱ「とにかく、下の部隊には指示に従うよう条件を呑ませてはどうか。適当な場所に誘導して始末してしまえばいい」
ポニテ「……そうですね」
おかっぱ「(と、あの女ならそう言うだろうがな。どちらだろうが、在ダークエルフの戦力に与える影響は少なくはなかろう……
この場で単なるイカレポンチと断ずるのはやはり危険か。この連中の統制がつかなくなれば、不利になるのは我々だ)」
ポニテ「……」
金長狸「(や、やっぱりこの人も気にしてるしなあ)」
おかっぱ「いいだろう、私が話し相手になる。降下するぞ」
ポニテ「あ、あなたが!?」
おかっぱ「皇族を押さえるまでの時間が稼げればいいんだろう? 任せておけよ」
ポニテ「マナ板さん……」
おかっぱ「乳削ぐぞ」
エルフ三男「情報部長が人質にとられた、ねえ……」
エルフ近衛兵「魔王軍の差し金……でしょうか」
エルフ三男「そこまで露骨なイヤガラセをしてくるところを見ると……
こっちの戦力の中心が帝国への愛国精神で保たれてるって事実を把握してる勢力による仕業、かな」
エルフ近衛兵「そうなると……やはり、あの勇者一派の入れ知恵か!」
エルフ三男「断定はできない。しかし、あのダークエルフ達の士気を乱されては、正直言ってたまらないな。
貴族や皇族に対する忠誠、依存度は常備軍のそれより上回る。それが強みであり、致命的なウィークポイントだ。
こちらが貴族を見捨てる姿勢を取れば、それはたちまちこちらのフラッグである騎士様への不審に転ずる」
エルフ近衛兵「確証が得られるまで、時間を稼ぐほかないと?」
エルフ三男「そうだね……幕府のあの小娘が対応してるんだって?」
エルフ近衛兵「その通りで」
エルフ三男「……当面は、泳がせておいても問題はないか。わかった、そっちに任せるとしようか」
エルフ近衛兵「御意に」
エルフ三男「(何を考えているのかは知らない……知った事ではない。極東の黄猿の企みなんぞ興味はない。
向こうでどんな諍いがあったとしても……好き勝手やっていればいいさ。何が帝だ、何が幕府だよ……!)」
姪「(予想通りだ。雑兵……末端兵である愛国者、ダークエルフどもの足並みは止まった。次は……)」
ダークエルフ騎兵「ま、待っていろ! 早まるんじゃあないぞ!!」
おかっぱ「だ、そうデス。まあまあ、お気を確かに持って……穏やか~に、参りマショ!」
姪「いやあ、私は気が短い。早急にお前達のリーダーに会いたくて仕方がないんだ」
おかっぱ「何の御用かわかりマセンが……しばらくお話しにお付き合いいたしマス!」
姪「(……この『貴族の人質』という篩にかからない部隊こそが、真に討つべき敵だ。しっかり受け止めろよ、魔王軍よ!)」
将軍甲「して、『貴族の篩』にかからなかったのがテメェらって事だな? エルフども」
勇者「……」
賢者「逃がさないわ、ここでまとめて……!」
エルフ三男「僕ら、篩にかけられて……突出したところを捕まえられちゃった、ってところか」
エルフ騎兵「殺気立ってますね、殺る気満々ですよアレ。6年前に盛大にケンカ売ってますからねー」
エルフ三男「あっはっは、なかなか根に持つタイプだなあ、魔王軍は。あっはっは」
エルフ騎兵「……」
エルフ三男「あっはっはwwwwっはっはっはっはwwwwっひゃっひゃっひゃwwwwwwwwwww」
エルフ騎兵「もう笑うしかないよ!」
エルフ三男「(……勇者の装備……なんだ、あれは? 虎の子は悪趣味なデュランダルとやらだけではないのか?)」
エルフ近衛兵「閣下……」
エルフ三男「(腰部から背部にかけ、ハーネスで取り付けられたわけでもなし……鎧ではなかろうに、
それでは肉体欠損を念頭に置いたリアクティブアーマー……違う、かたちが歪すぎる。武器かどうかも見当が……)」
エルフ近衛兵「あれが叡智の教義のチカラ……なんですかね」
エルフ三男「見た事もない僕がわかるわけなかろうに。ただ、魔術とらやら準じたシロモノだと言う事は確からしい」
エルフ近衛兵「では……」
エルフ三男「部下をわけのわからんバケモノ相手に吶喊させるほど、僕は耄碌しちゃいない」
勇者「武器を捨て、投降してください。今なら命までは取りません」
賢者「共和国司法での申し開きも許可されましょう、投降してください!」
エルフ近衛兵「……閣下」
エルフ三男「投降だぁあ? 聞いたかい、どの口がそんな事を言うんだろうな。なあ?」
エルフ近衛兵「……」
エルフ三男「ここまでカネと労力をかけて、誰が進んで焚火の中に飛び込む羽虫になるよ? ケンカ売ってんのか?」
エルフ近衛兵「……」
エルフ三男「別命あるまで待機。僕がナシつけてこよう」
エルフ近衛兵「了解いたしました」
エルフ三男「こんにちは、みなさま方。ごきげんいかがでしょう」
勇者「……」
賢者「(やだ……クッソいい男……っていうか美少年じゃない……)」
将軍甲「(いけ好かねえ……エルフってな昔っから……)」
エルフ三男「おや、あなた今……いけ好かねえエルフが手間かけさせやがって。そう思われました?」
将軍甲「……」
エルフ三男「申し訳ございませんね、こればかりは性分でして。でもまあ、これは僕個人の意向です。エルフそのものを嫌わないでくださいネ」
勇者「武器を捨ててください」
エルフ三男「……はい。はいはい、これとこれと……このP08も置かないとだめですか? だめですよね……盗らないでくださいよ」
将軍甲「……勇者ッ、油断するんじゃあねーぞ」
勇者「わかっている」
エルフ三男「にしても、あなた方物騒ですね。僕がこうしてテーブルについてやったのに、フェアじゃあないじゃないですか」
将軍甲「身の程を弁えやがれ、テロリストがヌケヌケと!」
勇者「いい、僕が話し相手になろう。距離を空けてほしい」
将軍甲「し、しかしよ……」
勇者「……彼は今や、アルヴライヒの首長だ。その場の判断で首を取るわけにもいくまい。それに、あの女の情報も欲しい」
賢者「(めっさイケメンやわ……お話ししたいわ……)」
エルフ三男「(一瞬にしての霧消……あの正体不明の武装、やはり魔術兵装か。ますます気味が悪い連中だ)」
勇者「これでいいでしょう。さあ、申し開きがあるならば、どうぞ」
エルフ三男「(篩を使っての時間稼ぎか……連合からの援軍を待っているのだろうが、好きにさせてたまるか)」
勇者「……」
エルフ三男「(勇者……勇者……くそ勇者! どいつもこいつも勇者!! ふざけるな、衆愚に染まったバカどもが。
どうしてこんないかがわしい……胡散臭い存在を認め許容する。なぜだ……? 苛々させる)」
勇者「どうか、いたしましたか?」
エルフ三男「ええとですねえ。率直に申し上げます。そこ、どいてくださいませんか?」
勇者「……目的を述べて頂きたい。まさか、後宮の観覧などと言う訳ではないでしょう」
エルフ三男「うーん……あのう、今は僕が質問しましたよね。疑問文には疑問文で返すように学校で教えているんですか?
僕は、『どいていただけますか?』と聞いたんです。イエスかノーかで答えるのが筋でしょ、ね?」
将軍甲「あの野郎……!」
勇者「……ノーです。退くわけにはいきません」
エルフ三男「どうして?」
勇者「無用の混乱をもたらすあなた達を、通すわけにはいきませんので」
エルフ三男「無用の混乱……はて、一体何のことやら。6年前もそうですね、あなた達魔王に与する連中は。
そうやって濡れ衣を邪魔者に着せ、ある事ない事を全部おっかぶせる……」
勇者「あまりふざけた事を言っているんじゃあないぞ、ゲス野郎。アジ・ダハーカの腰巾着が」
賢者「(うわ言っちった。言っちった!)」
勇者「野心を持つのも大概にしろ。ここらでピリオドを打てと言ってるんだよ」
エルフ三男「……」
勇者「罪もない人々を蔑ろにして……食い物にして。一体何様のつもりだ、まるで肥ったノミじゃないか」
エルフ三男「まあ、ひどい……」
勇者「6年前の戦争も、お前達が……お前達なんかがいなければ、ここまでにはならなかっただろうさ。
一体……一体、何が目的だ? これ以上、何が欲しいんだ。まだ殺し足りないのか?」
将軍甲「(ンギモッヂイイ!! もっと言え勇者、言ったれ!!)」
勇者「おかしな女に誑かされたのは気の毒には思うが……手を切らないなら、僕たちは容赦しない。
これ以上、戦乱を無用に広げる気ならば、このままの武力行使も辞さない」
エルフ三男「……」
勇者「邪魔なんだよ……あなた達みたいな、言葉も思想も通じない連中は本当にさあ!!」
エルフ三男「乳臭ェ若造が、知ったような口利いてんじゃねェぞこの野郎、ぶち殺すぞコラ」
勇者「っ……!?」
エルフ三男「言葉も思想も通じねえだあ? 誰の事言ってんだか知らねェが、そりゃまさしくテメェらが言うなってやつだぜ」
勇者「何を言って……」
エルフ三男「やっぱりテメェらァ、ある事ない事並べ立てるキの字の集まりだ。違いない。お笑いだ、困ったね。
昔っから、そりゃあ昔っから変わってねェ。魔王軍ってな、依然として変わりない。野蛮で愚劣で卑怯な魔物の集まりだ」
エルフ三男「ああ、嫌だ嫌だ……魔物どもに毛も生え揃わねえ頃から毒されちまった人間ってのは手に負えねえ。
こうして……オレらみてぇな年長者の忠告も馬耳東風、ろくに話も聞きゃしねェ。若い男ってなァどうしようもねェ生き物だよ」
勇者「生憎だが、あなた達のような連中から学ぶ事などは……」
エルフ三男「ハァ? ハナッから聞く気もねえくせによく言う……頭ワリィと相手の主張を理解すんのに苦労すんなあ?」
賢者「(あれ、勇者くんどうしたん……言い返せ!)」
エルフ三男「……オレらにどうして欲しいんだ? テメェらがしたい事が、今一つ理解できねぇんだわ」
勇者「……今は、僕たちに進んで協力しろとは言わない。これ以上の非道をやめてくれ、戦いを……」
エルフ三男「ケンカ売ってきてんのはテメェらだろうが、くそ魔王軍がよお。おい勇者サマ、もちっと歴史のお勉強が必要か?
何でオレらエルフが、テメェら行き倒れにタカるウジにも劣るゴミどもと仲良しになんなきゃなんねぇんだよ」
勇者「な……」
エルフ三男「よう勇者サマ。勇者サマは勇者サマだから、抜き身の刃物とセイフティの外れた銃を両手に持った浮浪者ともお友達になれんのか?
頭からは土壌を腐らせるフケを撒き散らし、アカまみれの身体からは疫病を流行らせ、くっせえ口からトチ狂った経文を吐いて回るんだ。
オレらぁ、そういう妙なのに散々迷惑かけられてよお。今んなって、そのポンコツが形だけ整えて、『服役してきました。さあ一緒に暮らしましょう』。
ふっざけんじゃねえよなあ、無理だわそんなん。わかるか? 勇者サマ、言ってる事理解できてんのか?」
勇者「少なくとも、あの女……アジ・ダハーカよりかは狂っちゃいない。その例えは正しくないな、魔王は……」
エルフ三男「少なくともだってよ。ほんっとに見聞が足りねえんだなあ……しょうがねえやな、勇者サマなんだから」
勇者「エルヴライヒが魔王軍を嫌悪する理由は……把握しているつもりだ。しかし、なぜよりによってあの女に!!」
エルフ三男「一目惚れに理由を求めるなんて、無粋なクソガキだ。おまけに、あの女呼ばわりと来た」
勇者「一目……惚れ……!?」
エルフ三男「身の程弁えんのはテメェの方だぜ、つまんねえ啓蒙主義に目覚めた魔物どもに毒されちまった勇者サマ……
テメェみてぇなどうしようもねえ空想ゆんゆん電波ビュンビュンお花畑男よりかはずっとずっとずっとずっとずっとずっとましなんだよ」
エルフ三男「ましなんてもんじゃあない。それこそ雲泥の差、比べるまでもない……」
勇者「比べられてたまるものかよ、ブロンドの悪魔なんかと……!」
エルフ三男「いちいち人をイラつかせる野郎だな、ちっとは他人を思いやる言動はできねェのか?」
勇者「あなた達には言われたくないな。虚言で巧みに周囲を躍らせるのはそちらの十八番だろ、思いやりなどと……」
エルフ三男「……もうさぁ、顔も見たくねえのよ、魔物の顔なんかさあ」
勇者「……」
エルフ三男「要は『勇者サマ』の仮想敵だろ。そんなんに振り回されんのはウンザリなんだよ……やってらんねぇ。
飽きもしねえで、アタマのわりい人間相手に勇者サマ魔王サマ神サマっつってさ、勘弁してくれよ。何年続ける気だ、ボケ。
どっかとどっかで物言いが起こるたび、迷惑被るのはエルフ。エルフエルフエルフ! そうだよな、いっちばんちょろい相手だもんなあ。
その上テメェらで勝手に『気難しい、気まぐれ、恩知らず』みてえなレッテル貼りやがって。おお、怖い怖い。イジメっ子の思想だぜ」
将軍甲「(妙な事並べ立てやがって……!)」
エルフ三男「そりゃあ、最初のうちはイイ顔もしてやってたさ? テメェらと違ってマトモな思考回路持ってるわけだからなあ。
勇者の末裔、英雄の再臨だとか祀り上げられたボンクラの相手も何度か……オレが役職に就いてから、何度かあったさ。
それが、フタをあけてみりゃあどうだ? 敬語もろくに使えねえ、小生意気な学生に毛が生えた程度…
それ以下だな、いかれた妄想にまみれたカワイソーなアホが、信者と一緒にぞろぞろオレらを冷やかしに来るんだ。
やれ協調政策を取れ、やれ農地改革に協力しろ、やれ上下水道の重要性を理解すべきだ、エトセトラエトセトラ……」
勇者「……」
エルフ三男「いくつかは興味深い案件を持ってきた奴もいた事ァいた。だが、九割がたは思い上がりも甚だしいクソガキだったな。
東洋の輪廻の思想まで持ち出してきたアホもいた。こことは違う世界から来ました。内政に参加させてください、力になりますってな。
親父や兄貴なんかは、暇つぶしにはした金持たせて遊んでたが……正気か? って聞きたくなるってもんだ。横で聞いてて胃が痛くなる。
だってそうだろ? 国庫から決して安くないカネをドブに捨てるのを、指咥えて見てるわけだ。死にたくなるね、倉庫番としてはさあ」
賢者「(輪廻……転生思想の事……?)」
エルフ三男「ビックリしたのはアレだな……共産主義の向こう側、社会主義について、かなり見聞があるような事を話したあいつだ。
そいつもつまんねえクソガキだったが、国民全員が公務員に……だとかいう例えは面白かった、覚えてるよ。
カワイソーなそいつの妄想によりゃ、ソヴィエトとかいう国が実際に施行して盛大に自壊したって話だ。やたらディティールの凝った作り話だってさあ」
賢者「(さすが国家元首……かなり込み入った事実を持っている……!)」
エルフ三男「一大勢力ソヴィエトと、世界を相手にした対立構造……まるで、今のこの大陸のそれと同じじゃねえか。
面白い事を言うアンポンタンもいたもんだと感心したよ……もっとも、そいつは専門じゃないからか……それとも単なるボンクラだからか知らんが、
それ以上詳しい事は聞けなかった。それとも、それ以上の事は『設定』を考えてなかったからなのかね? ククク……」
勇者「それで……かつて持て囃された勇者たちが気に入らない、それだけの理由で僕たちに弓引くのか」
エルフ三男「それだけで十二分に勇者サマがムカつくってのもある。あるが……」
勇者「……」
エルフ三男「テメェら一辺の慈悲も持たねえクズどもにひれ伏すのだけは絶対にゴメンだって事だなあ」
エルフ三男「平等、人魔共存、奴隷解放……ああ、聞こえはいいよな、聞こえは。貧乏人にゃあこれ以上にキくものはない。
でもさあ、それってもうぶっちゃけ、耳にタコってレベルじゃないのよ。聞き飽きたわけ。何回同じ事やってんの?」
勇者「同じ事……!?」
エルフ三男「おたくら魔王軍に『叡智の教義』をもたらした勇者の世代……
さすがにそんな大昔の事は知らねえが、それ以降の『自称英雄』どもも、こぞって似たような事言っててよお。
中には……まあ、ほんの一部の地域で目的を成し遂げた英雄さんもいたさ。綺麗事を実現するってのは、そりゃあ尊敬されるべき偉業だよ。
それが今の世まで続くかって事ぁ置いといてさあ。自由主義だとか、人権尊重もいいんだけどさあ。
帝国領のはずれ、冬を越すのも一苦労な農民に、身に余る自由をくれてやって喜ぶと思うか?」
勇者「……何が言いたい」
エルフ三男「だからさあ。お前らがやりたいのは、普遍的な個々の権利の擁立・憲章の発行なわけだろ。
『さあ、解放してやりましたよ奴隷ども。自由に生きて御覧なさい』。ピーッとお前らはスタートのテープを引く。
大陸の理性ある者たちを一列に並べて……よーいドン! はやいはやい、ウサギさんはどんどん先にリードしていくぞー!」
勇者「……」
エルフ三男「……どれだけのカメさんが、最初の方でドンづまって干からびるんだろうなあ?」
エルフ三男「……見解の相違って言っちまえばそれまでだな、オレはカメがウサギさんを乗っけて歩いて行く方がマシだと思ってる。
全員がウサギさんになるには、一体どうすりゃあいいのかなっと……ま、ウサギさんはカメの事なんか考えないからウサギさんなんだけどさあ」
勇者「『女騎士さん』は、ウサギの脚を普遍のものにする気はあるのかい」
エルフ三男「まさかだろ。ビョーキ持ちのカメなんかそのままおっ死ね、その分ボコボコ産まれんだからさあ」
勇者「……そうか」
エルフ三男「……」
勇者「残念だ。あなたを生かしておくわけにはいかなくなった」
エルフ三男「怖い怖い……一緒にお遊戯踊れない子ははじき出されちゃうか」
勇者「そうとも。言っても聞かない、言い聞かせても無駄。それなら、内々に『いなくなってもらうしかない』」
エルフ三男「クク……武装解除した『僕』を前に、おっかない事を言う。さ、捕虜にでも何でもなってあげます。どうぞ、手枷を」
勇者「……」
賢者「(投降……した……?)」
将軍甲「(ざまあみやがれ……御託並べたって、所詮はエルフどもの卑劣な悪知恵。耳を傾ける事もなかったんだ……!)」
女騎士「おいおいおいおい、どーーなってやがる!! 意味わかんねー!! 何やってんだ、ダークエルフどもは!!」
エルフ騎兵「ですから、連中をこれからも扱う為には人質を確保した相手にも再三の注意を払わねば……」
女騎士「ンな事ァわかってんだよボケ!! 何様だクソガキが!!」
エルフ騎兵「ご、ごめんなしゃいいいいいいいいい」
秘書「(マ、マゾヒストばっかりじゃない、エルフって……!)」
女騎士「(ち……貴族を盾に314連隊……金魚のフンどもを封じやがった。よほどの事がなけりゃあ、この戦場での再起は難しいか)」
秘書「あ、あの……もういいでしょ、今のうちにごめんなさいすれば」
女騎士「(ダメだこいつ、頭が悪すぎる。私より一般教養ないんじゃねえか?)」
秘書「ほら、共和国の裁判所で情状酌量を……」
女騎士「私が悪い事でもしてるってーのか!? ざっけんな!! 幸福追求の権利を全力で行使して何が悪い、このバカチンが!!」
秘書「ふぐうううううう」
女騎士「このクソデブが!! このプ二腹マフィントップだって元はと言や私らの稼ぎだろうが!! 今さら抜け駆けなんかさせねえからな!!」
秘書「嫌ですう!! ぜ、絶対死にたくないです!! しし、死ぬのなんてごめんですう!!」
女騎士「まだ動けるエルフ騎兵は……ふん、あの少将閣下の分隊を除いてもまだいるじゃないか」
エルフ騎兵「今の所、進軍は順調に進んでいますね。ただ、これ以上刺激しすぎると人質が……」
女騎士「ハッ、連中だってこっちがデモ隊っつー人質を握ってる事は百も承知だろうがよ。
そもそもこの五万人、共和国や連合にとっちゃお荷物の失業者どもだ。二、三十人くたばったとしても……
その皇族を人質に取ったアホポン、トチ狂ってぶち殺す事はないだろ。多分」
エルフ騎兵「問題は、そのアホポンの扇動……やはり、314に与える影響でしょう」
女騎士「あーもう、ウッゼーな……ダークエルフみんな死なねーかな、『私の』お国の為に死んじまえ」
秘書「そんなひどい!!」
エルフ弓兵「騎士様、ご報告がございます!!」
女騎士「何よァ!!」
エルフ弓兵「ド、ドラグーン三騎がげ、撃墜!! 敵性体、圧倒的な速力で北上……政庁方面へ向かっております!!」
女騎士「敵性体って……何、部隊じゃないの? 一騎? 一匹? 一人? 何やってんのあんたら」
エルフ弓兵「は……それが、飛竜を駆っているようでもなく、魔族の飛行隊といったものでもないと」
女騎士「じゃ何なんだよ……連合のスーパー戦車でも攻めてきましたってか? トリモチでも主砲に詰めたれwwwww」
エルフ弓兵「……目撃者によれば、魔王が……あの女が単独で現れたと聞いております」
女騎士「」
女騎士「はぁ……魔王、ねえ」
エルフ弓兵「……例の勇者どものような身体能力……そして、ただの一撃の掌底でドラグーンが落ちたと」
女騎士「」
秘書「あのう、魔王ってあのちっちゃい女の子ですよね。それとも、魔王って言うくらいだからそりゃもうすごい……」
エルフ騎兵「魔術を行使している……か?」
エルフ弓兵「我々の文化圏では見慣れぬ装備に身を固めていたとの事。恐らくは、ヴォーパル鋼にまつわる逸物かと」
女騎士「アホか!! あのガキがそんな強え筈ないだろうが、バカ言ってんじゃねえ!! さっさとドラグーンで叩き潰せ!!」
エルフ弓兵「ま、間もなく若様とお嬢様が交戦いたします、政庁に向かわれる前に押さえられれば……!!」
女騎士「ったく……私の遺伝子がやっぱり最後には役に立つわけだからなー……さすが私、そしてさすが私の卵子だわ」
魔王「やめてくれ……銃を下ろしてくれ」
娘「どの口がンな事抜かしやがる……バラッバラにしてやらァ、そこに直れ豚女! その角ブチ折らせな!!」
魔王「……私に害意はない、現にそこの……そなたの兄に外傷は与えていない。騎竜も同然にな」
娘「だからァ? だから何ですかァ? 何が言いたいンですかァ!? テメェを逃がす理由にはなンないンですがァ?」
魔王「……」
息子「き、みは……逃げろ、お母様の……ところに……!」
娘「でも……でも、こんな女に、魔物なんかに舐められる訳にはいかない、殺さなきゃ!!」
魔王「まだ眠っておらんか、気丈なものだ……いかんな、少し肩を怪我している。化膿すると良くないぞ」
娘「……触ンなあ、触ってンじゃあねえッ、他人の実の兄貴に、勝手にさわンなあ!!」
魔王「……通してほしい、お願いだ」
娘「(このクソ女……こいつのてのひらに触れられた途端、ドラグーンが昏睡に陥った……!
騎竜そのものに至っては、一睨みで地べたにおねんねか……上等だ、チビガキのくせに調子こきやがって……!!)」
息子「お母様を……守……」
魔王「……今しばらく、眠っておれ。そう、そうだ……目が覚めれば、きっとすべて終わっておる」
娘「離れろって言ってンですよォ、クソビッチがよォ……何様のつもりなンですかねェ、なあ、おい!!」
魔王「私は……」
娘「……」
魔王「私はエレシュキガル。かつて地上の魔族を束ねた偉大なる為政者マルドゥークの実の孫にして、
アフラマズダーの加護の下に、人魔の統一を神々より仰せつかった『魔王』だ」
」
姪「(……頃合いか)」
おかっぱ「それにしたって、この帝国のガス灯の普及は目を見張るものがありマス! 美観への文化的なケアが……」
姪「(このマメタンクの相手は任せる。ダークエルフどもの足止め、よろしく頼む)」
将軍丙「は、はい?」
おかっぱ「(……何だ? ブロンドの代わりに、今度は魔族の女……何を企んでる……?)」
将軍丙「……さ、さあ。続きをしましょう。私がそちらの話を聞いてあげるわ」
おかっぱ「(ク、クソ……屈辱だ! こんな位の高そうな女にもバカそうなオノボリさんを演じねばならんとは!!)」
アラクネー「あのあのあのあの、どうする気ですかあ!? あ、あれで犯人あぶり出せるじゃないですか!!」
姪「……」
アラクネー「アジ・ダハーカだって、あの人達の話から聞きだせば……」
姪「あなた方魔王軍が拷問という手段を取らない限り、無理だろうな。恐らく口は割らない。在帝ダークエルフの事は多少なりとも把握している」
アラクネー「そ、そんなあ……」
姪「そう、口は決して割らない。あのマメチビ以外にも先ほど鎌をかけてみたが、まったくの無駄」
アラクネー「じゃあ、どうすればいいんですかぁ」
姪「となると、そんな愛国心のカタマリである奴らが全力で守りたがる存在……あの私の母親と同じような貴族、もしくは皇族とは考えられんか?」
アラクネー「あ……」
姪「アジ・ダハーカは貴族、それも帝国でかなり高いポストにいた。そこまで絞る事ができよう」
アラクネー「な、なるほどなー」
姪「更に、ドワーフゲットーでの毒ガス事件……その首謀者がかつて所属していたのは国教騎士団だ。
そう仮定すれば、なるほど納得だ。国教騎士団ほどの権力を持つ組織の生き残りが再起をかけ、ダークエルフを煽ったってわけだ」
アラクネー「はあ……わたし、6年前はほんとに下っ端だったんで、よくわかんないですけど」
姪「元からロクな組織ではないと聞いているからな。帝国内における組織犯罪のほとんどに加担していた、ガン細胞のような存在だ」
アラクネー「ひでえ」
姪「……あながち、間違った比喩ではないと思うがな。諸国に自分の思想を転移させ、じわじわと外堀から再び人々を蝕んでいく」
アラクネー「うう……」
姪「このまま好きにさせてたまるか、アジ・ダハーカ……殺してやる、必ず報いを受けさせてやる……!!」
アラクネー「(こわい……早く前線から離れたいぃ……)」
姪「待っていろ……罰を……」
アラクネー「あのうっ、それで今、どこに向かってるんですかあ!?」
姪「確証を得なければならないだろ、アジ・ダハーカの正体を!」
アラクネー「そ、そうですけどぉ……」
姪「思えば、今日に限っての飛行隊への規制も恣意的なものを感じた! 単なる気まぐれとも思えん、
十中八九連中の奇襲に合わせての密約があったはずだ。なら、あのクソ高官どもはどのパイプを通じてアジ・ダハーカと繋がったのだ?」
アラクネー「それは……」
姪「この帝国首都、連合のごく一部と魔王軍駐屯部隊……他にどちらさんがいらっしゃる!」
アラクネー「北西諸島……連合王国軍……!?」
姪「御明察。さすがは叩き上げ、中の下くらいの頭は持っているな」
アラクネー「ど、どうも……」
姪「この先の廃会館……北西諸島が間借りしている駐屯敷地に用がある。そこへの侵入についてきてもらったというわけだ」
アラクネー「ででで、でもそれって不法侵入……あそこは治外法権ですよ、射殺やむなしですよぉ」
姪「今ここにいたとて、アジ・ダハーカの手の者に八つ裂きにされない保証などない。それより先に奴の手掛かりを手に入れる」
アラクネー「……ふええ」
姪「建屋内について来いとは言わない。先ほどと同じく、隣接するビルからの潜入を手助けしてくれればいいだけだ。
出る時は……自分で何とかしてみせる、私が潜入したらさっさと逃げろ。この有事に魔王軍の兵が敷地に潜り込んだとなれば、さらに騒ぎが大きくなるぞ」
アラクネー「でも……ひ、一人で本当に大丈夫ですか、心配ですよぉ」
姪「これはおかしな事を言う魔族だ。気持ちだけ受け取っておくとするかね……」
アラクネー「(こ、この人イカレてる……まじで変な人だよう)」
姪「……」
アラクネー『聞こえますかあ、どーぞ。大丈夫ですかあー』
姪「……」
アラクネー『ああ、良かった……乗り込んですぐアウトって事にはなってないみたいですね』
姪「(文字通り、耳に糸を付けて糸電話か。こちらから迂闊に声は出せんものの、外部の状況がわかるのは好都合だな)」
アラクネー『いいですかあ、さっき言った通り……指で糸を一回チョンが肯定、二回チョチョンが否定ですよお。』
姪「……」
アラクネー『はい、よくできました!! それじゃあ、見当を祈ります! がんばって!』
姪「(なけるぜ)」
姪「……」
アラクネー『ううー、さむい……』
姪「……」
アラクネー『厚着してくればよかったなあ……そのトレンチコート、どちらで買ったんですかあ?』
姪「(鬱陶しい……)」
アラクネー『帝国領がこんなに寒いなんて思いませんでした……北方領なんてどれだけ寒いんですかねー……:』
姪「……」
アラクネー『……』
姪「……」
アラクネー『へーちょ』
姪「!?」
姪「(執務室から洗ってみたが、収穫はなし……現地司令は何も知らされていない可能性が高いか……
それとも、計画そのものが突発的に……この駐屯地は、平時から中継地として用いられていない……
もしくは、北西諸島が絡んでいるという推理そのものが間違っているか……いや、よそう。今は捜索を続けるのみ)」
アラクネー『へぶしっ』
姪「……」
姪「……」
アラクネー『な、なんですか今の……今の銃声ですか!? 大丈夫ですか!?』
姪「……」
アラクネー『ああ、良かった……心臓ばっくばくいってますよ、もう……』
姪「(資料室に入るまで二人……まあいい、どうせ殺しの疑いをおッ被るのは連合の対外情報庁だ。かまうものか)」
アラクネー『へっくふぃ』
姪「……」
アラクネー『へーちょ』
姪「!?」
7月25日
帝国標準時午前三時二十二分
湾岸沿いでドラグーン隊竜騎士部隊、謎のエルフ勢力と交戦。
双方ともに大きな被害は発生しなかったものの、未だに戦闘が勃発した理由は不明。
本国外務省からの報告が待たれる。
尚、今回の戦闘で、臨時部隊員が保護した帝国人女性一名が行方不明となった。
戦闘の最中に翼竜の背から誤って落下したしたと思われ、現在でも連合王国、共和国共同で河川を中心に捜索が続けられている。
アルヴライヒ陸軍大将…共和国中央地域のブドウ畑で変死体で発見
アルヴライヒ陸軍中将…共和国東部の納屋にて変死体で発見
アルヴライヒ陸軍少将…上気の戦闘との関係が疑われるも、証拠不十分で釈放
××××連合軍大尉…本国より重要参考人への傷害容疑で指名手配。行方不明
××××連合軍中佐…部隊の私的利用などが上層部に発覚、非人道的行為が表沙汰になり処刑
勇者××××…共和国内にて保護
魔術師××××…消息不明。魔王軍側でも捜索打ち切りが決定
魔王…共和国内にて保護
将軍甲…共和国内にて身柄拘束。以後の処遇が待たれる
将軍丙…同上
将軍乙…変死体として発見。遺体は本軍情報部が回収
○共和国司法において有罪確定。以下の者を戦犯者として取り扱うものとする
騎士い…戦時中、帝国内のオーク居住地での放火、殺人で起訴、刑死
騎士ろ…エルフ勢力国内にて療養中
騎士は…共和国テロに参加、デマを扇動するもその後の行方は不明
騎士に…エルフ勢力国内にて療養中
騎士ほ…詳細不明。連合軍との交戦で死亡したものと思われる
騎士へ…『い』と同罪、刑死
騎士と…北方共同体へ亡命。その後の所在は不明
騎士ち…共和国テロに参加、デマを扇動するもその後の行方は不明
騎士り…『い』と同罪。刑死
女騎士××××…開戦時、上記戦犯者らにより拉致、監禁。その後の所在は不明
姪「(日付は6年前、あのテロ事件についての走り書きか。読めん事も無いが……)」
アラクネー『ど、どおですか? 何か見つかりましたか?』
姪「……」
アラクネー『ほ、ほんとですか!! じゃ、じゃあさっさと逃げましょう、待ってますからね! 急いでくださいね!』
姪「……」
姪「(ふ……なるほどな、連合にはほとんど事実が流れてこなかったわけだ。
北西諸島の側でテロ事件の事実がせき止められてたと言うべきか。島国育ちどもめ……)」」
姪「(書類のみを見る限り、在帝ダークエルフを始めとする部隊は首都陥落と同時に連合の傘下に入っている……
この当時は、アジ・ダハーカの下には集っていなかったわけだ。さて、肝心のアジ・ダハーカはといえば……
『い』、『へ』、『り』は除外。当時の議事録が残っている。オーク焼き討ち……重要判例として何度も目にした記憶がある。
『ろ』、『に』も除外。戦後の所在はこちらで掴んでいる……現在は共和国の病院に移送されていた筈だ。
『と』も除外できる。今や帝国東部……連合の手の下、処刑を待つ身だ。ここまで大規模なテロは起こせまい)」
姪「(残るは『は』、『ち』、『ほ』……そして、叔母様。:三名とも戦時中に消息を絶っており、いずれも生死不明……)」
姪「騎士『ほ』……仲間である『と』を連合に売渡し、自らは北西諸島でのポストを確立していたように見えた……
戦後に死を装い、北西諸島で地位を手に入れ、帝国の幹部をパイプに再起を図った、そんなところか……・。
共同体、そしてガス騒動の際に二度顔を合わせたが……間違いない、この女……先の戦争でオークを人質に皇宮を開城させた張本人。
あんなゴミ同然のカス文官などを使わなければ、こうして私に嗅ぎ付けられなかったものを……真実は自分の口から語らせてやる……!!)」
騎士ほ「次のあなたの台詞は……『騎士ほ。貴様の不義に罰を与えてやる、アジ・ダハーカ』ですわよねえ……フククククwwwwwwwwwwwwwwww」
姪「なッ!?」
騎士ほ「惜しい惜しい……惜しかった惜しかった……頑張りましたねえ……ここまで辿り着けましたわねえ……」
姪「ここに貴様がいるという事は……!」
騎士ほ「あなたの答え……アジ・ダハーカはこのわたくし……ああ、惜しい……敢闘賞をさしあげましょうねぇ……」
姪「(どういう事だ……こいつの他にアジ・ダハーカがいる!? 黒幕は……どこの誰だ!?)」
騎士ほ「フククククwwwwwwwwwwwフククククwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
騎士ほ「でも、お行儀は相変わらず……窓を叩き割るだなんて、弁償しなきゃあいけませんわね……ねえっ?」
姪「がうっ!?」
騎士ほ「北風に吹かれて風邪をひいては事です……ごめんなさいを聞いてませんわ、ねえ?」
姪「(足……脛を……折られた……・!? う、後ろから……踏み砕かれたのか……!?)」
騎士ほ「フクク……いつもの威勢はどうしたんですか……痩せ犬みたいに吠えてごらんなさいな」
姪「ぐ……が……」
騎士ほ「左脛骨複雑骨折、前脛骨筋を始めとする周辺筋損傷著しく、完治にはまさしくホネが折れそう……」
アラクネー『もしもしー、大丈夫ですかあ? そろそろ戻った方がいいですよ、もしもしもしもし?』
姪「(無理……だ……立てん……!!)」
騎士ほ「最終問題ミスっちゃっちゃ、目も当てられませんわね……でも、ちょっと難しすぎましたかしら……
フクク……お姉様にも知らせず計画を進めて、今日ほど良かったと思う日はありませんわね……フククククwwwwww」
姪「地獄に……堕ちろ……ゲスめ!!」
騎士ほ「ゴキブリみたくこそこそ嗅ぎまわるから……まったく、最高の血筋にいながらどうしてこうもナマイキなのでしょうねぇ……」
アラクネー『もしもし……もしもし!? あのう、生きてます!? もしもし!?』
姪「(アジ・ダハーカ……クソが……こいつでなければ……『は』、『ち』……そして叔母様……!!)」
騎士ほ「言葉遣いもダメ、頭も悪い……そうですわ、私がきちんとレディとして教育してさしあげましょうか……」
姪「……」
騎士ほ「貴女の叔母様みたいに……立派な女性になれますわ……フククク……」
姪「叔母……様……!?」
騎士ほ「そう、お姉様のように……ね」
姪「……」
アラクネー『……し、死して屍拾う者あり。骨は拾ってあげます! 糸、戻しますよお! 強度を高めて回収します!』
姪「……!?」
騎士ほ「まだ動ける……!? いえ、あれは……ヒモ? 糸……!?」
アラクネー『い、生きてます!? まだ生きてらっしゃいますね! 怪我とかしてませんか、大丈夫ですか!?』
姪「(痛くて意識が飛ぶ寸前だ……)」
アラクネー『わ、わかりました! 命綱としてしっかりお仕事させていただきます!』
騎士ほ「……」
竜騎兵「大尉、今の物音は一体……まさか、表のデモ隊のクズどもが!?」
騎士ほ「ああ、そう! そうですわ。向こうの窓が割られてしまいましたのよ、怖いですわね……」
竜騎兵「マジかよ……最悪だな、帝国民ってのは。さっさと本国に帰りたいっすねぇ」
騎士ほ「そういう事を言うものではありません……思っていても心に秘めておくものですわ……」
竜騎兵「は……申し訳ありません」
騎士ほ「(フクク……表じゃあ、ぐだぐだ膠着が続いているようだけれど……
薄汚れた魔物どもが、勝てると思っているのかしら……バカバカしいわ……愚かだわ……)」
竜騎兵「(すげえ綺麗な人ではあるんだけど……人を選ぶ美人だよなあ、この人)」
騎士ほ「……私のペンドラゴンは用意できていて?」
竜騎兵「は、はい。キャメロットの血統書付ペンドラゴンなんて……初めて見ました。大尉もデモの鎮圧に?」
騎士ほ「ええ……こんなバカげた争い……テロだなんて、終わりにしなければいけませんもの……」
勇者「……」
将軍甲「胸糞悪ィ連中だぜ……人の話を聞かねえ奴らだ、エルフども」
勇者「ああ……確かに。思えば6年前からずっと、彼らには辛酸を舐めさせられてきたものね」
賢者「(活動写真のスタアにでもなってくれないかしら……いくらでもグッズ貢げちゃうかも)」
勇者「現在の状況は?」
賢者「あ、はいはい。テロリストの飛行戦力の6割は帝都郊外にて足止め……しかし、やはりデモ隊の鎮圧には手こずるかと」
将軍甲「日暮れ前には何とかしてえな……また妖精族やモルダヴィアに借りを作る事になるか」
賢者「かなり端折られた報告しか回ってこないのも不気味ね。足止めって……もしかして、交渉のテーブルまで進んでるっていうのかしら」
勇者「……」
将軍甲「けっ、今さら共和国への体面気にしてもしょうがねえ。対空警戒は今のうちに固めておくべきだぜ」
勇者「(情報部の彼女、多少ひねくれてはいるが仕事はしてくれているか……
クソ女……欲望の権化……! 大陸の汚染を広げる悪魔が……!)」
将軍甲「勇者……?」
勇者「(……いや、違う。奴は、この地上のどんな生きとし生けるものよりも強欲であり……
同時に、手の内にあるいかなるモノも手放す事ができる……必要とあらば、何であろうと切り捨てられる……!)」
賢者「……」
勇者「(エルフをこのまま好き勝手にしておくのも危険か。近いうちに、あの女に汚染された暗部を排除しなければ……!)」
おかっぱ「こんにちは……いやァ、やっと直接顔を拝めることができたな、魔王軍のエライ人」
将軍丙「……」
姉「おなかすいたわぁ……お菓子かなにかないかしら」
将軍丙「(東洋人……アジ・ダハーカの勢力には極東列島まで……!?)」
おかっぱ「クックク……そう力むんじゃあない。表のダークエルフどもはどうせ暫くは動けない、
あの女の檄でもなけりゃ……もっとも、そこまでノータリンでもないんだよな、クズ女のやつは」
将軍丙「聞いてると、貴女は飼い主の正体を隠す気がないように思えるわ」
おかっぱ「飼い主! バカ言っちゃあいけない、大陸の貴族なんぞ首輪のついていない山犬だ。
どちらかといえば、我々が調教してやっているようなものだが……如何せん頭の出来が悪すぎるようで手を焼いている」
将軍丙「私達の主張するアジ・ダハーカの存在を肯定するのね」
おかっぱ「……お望みとあらば、来年の西欧会議でも声を大にしてそちらに加勢してやってもいい」
将軍丙「な……!?」
姉「お菓子……」
将軍丙「あなた、何者……目的は何なの。アジ・ダハーカの仲間じゃあ……」
おかっぱ「あれに与していると、何かと便利なんだよ。クッソ邪魔な連合のブタどもを効率よく追っ払えるだろうしな」
将軍丙「その為になら、あの女の言う通りに災厄を……弱者を踏みつけにもできるって言うの?」
姉「おかし、お菓子お菓子お菓子! おーかーしー!」
おかっぱ「そういう安っぽい耳クソみたいなヒューマニズムは聞き飽きてんだよぉ。
必要な犠牲っていうのは、世の中一定数存在するもんなんだ。アタシ達は連合を当面黙らせられりゃあそれでいい……
あんたらにとっても、愛しのアジ・ダハーカは平和の為の尊い犠牲だろ? そんな厭な顔しないでほしいねえ」
将軍丙「……」
おかっぱ「そういうカッタルイ、面倒くせえ話をしに来たんじゃあない……ちょっとだけ、お近づきになりたくてね」
将軍丙「あなたは……誰?」
おかっぱ「極東列島幕府陸軍……征夷大将軍の膝元、将軍近代騎兵奉行の位に就かせていただいている。
我らの目的は、先ほど簡潔に語った通りかくかくしかじか。あなた方魔王軍に、損はさせないぞ?
そちらも連合に歩調をあわせ、難癖付けられながら活動するのも煩わしかろう。どうかな?」
将軍丙「……」
姉「あらまあ……フカフカねえ! メレンゲみたいねえ!」
金長狸「尻尾や! それ尻尾やで! 離して!」
おかっぱ「こっちもこっちで、内輪もめを再燃させたくないんだよ……そっちもさぁ、
アタシらと懇ろになりゃあ、かつての魔王軍の威光を取り戻せるんだ。少なくとも、今の悲惨な状況からは抜け出せる」
将軍丙「信用しろと言うの? 生憎だけれど、アジ・ダハーカには散々……」
おかっぱ「そーだよなあ。やっぱそーだよなぁ。メンドくせぇな」
ダークエルフ騎兵「……もし、お呼びでしょうか」
おかっぱ「ダークエルフが一人でもいりゃあ、交渉がスムースに進むかもしれない。あの大尉には話をつけてある、来てくれ」
ダークエルフ騎兵「了解です。早く、あの人質になっている女性を助けなければ……」
おかっぱ「……もちろんだ」
ダークエルフ騎兵「……」
おかっぱ「貴いテメェの命でなあ。お気の毒様……」
おかっぱ「どうだい、信じてくれたかい?」
将軍丙「なんて……事を……!!」
おかっぱ「ひでえな、行動で示してやったのに。どうせ生きてたって、あんたらが勝ちゃあロクな事にはならん。
そもそも、愛国心と仲間との信頼で動いてるこいつらがあんたらに迎えられる事を選ぶと思うのか?」
姉「……?」
おかっぱ「脳内麻薬でじゃぶじゃぶになってるこういう奴らには、過度な肩入れは慈悲にならない。
死んだ方がマシって例は、けっこう身近に転がっているものだ。さあ、どうなんだ?」
将軍丙「……」
おかっぱ「図体だけでっけえ連合を黙らせて、アジ・ダハーカ……クズ女をブッ殺して、みんなで仲良く暮らそうじゃないか」
金長狸「そうだー、まともなメシをよこせー、ストライキだー」
真神「時が来た……のか」
おかっぱ「まだ確証が得られないんなら……そうだな、おたくが世話してるであろうクソ童貞にでも確認を取ってみろ。
あの男もきっと、快くアタシ達幕府を迎える事を歓迎するだろうからなあ」
将軍丙「信じて、いいのね……? 本当に……!」
大嶽「見ました見ました見てしまいましたわ……あらあらあらら……
いーえー、何の気なしに目に入ってしまっただけですのでー……お気になしゃらずー」
おかっぱ「な……!?」
将軍丙「ま、窓の外!?」
おかっぱ「大獄……貴様、なぜここにいる!? 貴様らに出撃の許可は……」
大獄「そう申されましても……我々にとっては、帝の威光が第一ですので。幕府のこっすずるい方針なんて、知ったこっちゃありませんの」
おかっぱ「湿りくさった鈴鹿の売女めが……! 貴様ら穢らわしい鬼どもが皇帝の名を出すなど笑止千万、恥を知れ……!!」
大嶽「ボーケwwwwダーボwwwwブタのヘソーwwwww大陸の悪鬼征伐の任を放棄したのはどなたかしらーwwwwww」
おかっぱ「幕府が勅命を放棄したとな。片腹痛いわ、無駄口叩けんように目鼻と口を縫い合わせてやろうか」
大嶽「相変わらずイカレた集団ですわね。所詮は帝の威を借る豆ダヌキ、
少しばかり封建体制が安定したからと、すっかり付けあがってしまって……」
おかっぱ「革命の波に乗れん過去の遺物どもが、貴様らの時代はもうとっくの昔に終わってンだよ。
口出ししてくんじゃねェ、すっこんでな大バカ。テメェらはしゃしゃり出てくんじゃあねえ」
大獄「ひどい……仲間外れにする気ですのね……んふふ、意地でも一緒に遊びたくなってしまいますわ!!」
おかっぱ「散れッ!! 続きはお互い生きていたらだ、逃げろ!! そこのボンクラ貴族も連れて行け!!」
将軍丙「え、ええっ!!」
大獄「そうれ、煙弾ぼーん! 茨木、それに親方様! 張り切って参りましょう!!」
オーク騎兵「おういッ、どうした嬢ちゃん! こんなところにいたら危ねえ、さっさと家に帰んな!!」
幼女「これはこれは、親切にありがたい事じゃ。そうだの、街道沿いでは一揆が起きておるしのう」
オーク騎兵「そ、そっちに行くんじゃあない! だめだ、帰んな帰んな!」
幼女「んー、融通の利かん豚じゃ。儂なら平気じゃて、貴様も怪我をせんようにするんじゃぞ」
オーク騎兵「は……?」
幼女「そうじゃ、アメちゃんをくれてやろう! わーっちのあーめはあーまいぞー! ほれ、とっとけ!」
オーク騎兵「……いや、買収されねえよ!? アメに困る程貧乏な生活してないよ!?」
幼女「何じゃ、けちんぼ。んもー、大嶽から合図が来たのじゃ、行かなきゃならんのじゃあ」
オーク騎兵「ああもう、わかったから! 家までついていってやるから……ほら、この傍だろ!?」
幼女「いーやーじゃ。行くのじゃ。行ーくーのーじゃ」
オーク騎兵「(つ……強……!? う、動かねえ……お、お、重……!!)」
幼女「何じゃあ小童。相撲がしたいのか? この儂と? 負けんぞお、儂は強いぞお?」
オーク騎兵「は、離……」
幼女「なるほど……兵だけあって、そこらの豚と違って筋肉質じゃな。しかし……」
オーク騎兵「痛て……痛、痛ええええええっ、痛い痛い痛い痛い折れるちぎれるうううああああ」
幼女「豚は豚らしく、まるまるころころ育った方が好きじゃ。痩せすぎでも、鍛えすぎでもだめじゃ……」
オーク騎兵「あばばばばばばば」
幼女「お、お? 何じゃ、男(おのこ)じゃろ? 魔羅だけは立派なんじゃから……これっくらいで泡食って倒れてくれるな」
オーク騎兵「」
幼女「ほれぇ、アメちゃんなめなめせえ。そう、そうじゃあ。ゆっくり、ゆっくり味わうんじゃぞぉ。
どうじゃどうじゃ、一粒で軽く五千は取ってやりたい代物じゃあ、ほっぺたがじゅわじゅわするじゃろ。
うむうむ、ますます魔羅が硬ぁくいきり立っておるな……最後に腎水でも噴きたそうにしとるが……だーめじゃ、我慢じゃ」
幼女「ほらぁ……武骨で見苦しい兵の身体とは、今日かぎりでオサラバじゃぞぉ。必死こいて鍛え上げた筋も、骨も……
全部全部、こうやって愛くるしい童のように……溶けて、混ざり合ってしまうんじゃから……ぬし、もう背丈は儂より低いかもしれんのう……」
幼女「醜い豚の顔も原型が残っておらんのう……ほうれ、そこの窓で己の新しい姿と対面するがよいぞ。
クカカ……股倉の魔羅も、ふぐりもスカスカにひからびて……代わりにほれ、瑞々しい童の肢体が手に入ったのう」
幼女「何じゃ? クカカカ、そうか……自分の名前もわからんようになったか。可哀想に……惨めじゃのう。
いいじゃろ、儂の小間使いに貴様を飼わせてやる。儂か? 儂がなぜ貴様のような面白みのないガキのおもりをせにゃならん?」
幼女「そうじゃなあ……この朱天の為に、何かひとつ役に立ってくれたら、頭くらいは撫でてやらん事もない……クカカカ」
幼女「……いかん! 遊んでる場合じゃあない、さっさと行かにゃあ!」
ポニテ「おっ、大嶽どの! これは一体!?」
大嶽「全軍、進軍再開いたしましょう!! さあさ、邪魔者はすべて踏み砕いて道を作りましょうね!!」
ポニテ「しかし……彼女は!? あの貴族の女性は……大獄どの、大獄どのっ!!」
大獄「ははははははっ!! 私の敵はどこでしょう、どこにおられるんでしょう!! あっちかしら、こっちかしら? 目移りしてしまいますわ!!」
茨木「カミサマ……? それにしては……ずいぶんちっぽけでありんすね。しかしなるほど、ドラグーンじゃあ止められないのは納得……」
魔王「(こんな時に新手……!? 頭部の角のような意匠こそ、我々拝火の種族に近しいが……何者なのだ!?)」
茨木「非常にお強いようでありんすが……好き勝手暴れられる訳にはいきんせん、ちょいと静かにしてもらいんす」
魔王「どいてくれ……そこをどけっ、お願いだ! 戦いを、こんな事はやめさせなければっ!!」
朱天「遅れてすまんのう、大将首や」
エルフ三男「待ちくたびれました。やはり保険はかけておくに限ります……して、結果は?」
朱天「あの幕府のマメチビが尻尾を出したところを合図にな。貴様が持たせてくれた分隊のおかげじゃ。
我々は嘘をつく事ができん……故に、向こうの人質を無視して再び攻めこめと丸め込めんのじゃが……」
エルフ三男「兵が役に立ったのなら何よりです。もっとも……タガの外れたあなた方のチカラあっての荒業ですが」
朱天「クカカカ……幕府のぼんくらが幅を利かせるようになってから数百年、たいくつで仕方が無かったからの。
さてさて……大陸の戦争というのはどんなものか、味わわせてもらうとするか。のう、ゆうしゃさまァ?」
勇者「……」
エルフ騎兵「大将閣下からの煙弾、確認しました」
秘書「ほ、北西方面からの指定煙弾確認……あれもエルフの部隊なの……?」
エルフ弓兵「東部方面からの合図確認、頃合いです。騎士様!!」
女騎士「あいよ了解。それじゃあー……」
秘書「……」
女騎士「全騎、騎竜をメリジェーヌに乗り換えろ! 街道通って凱旋パレードだ!!」
秘書「か……かか、街道!? だ、だってデモ隊が……」
女騎士「プータローどもの頭の上すれすれwwwwwwwwwwwいいや、首狩りながら飛んでいってやろうぜwwwwwwwwwww」
秘書「」
女騎士「ゴミどもが、ちょっと私らが目を離した隙にデモなんぞ企てやがって。まさにゴキブリのような連中だ、死にくされ!!」
エルフ騎兵「指定ルート開けました、行けます!」
秘書「ちょっ、待っ……ま、まさかデモ隊をドラゴンで轢……」
女騎士「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
賢者「フードで顔を隠したドラグーンの一団……それがアジ・ダハーカの本命……!?」
オーク騎兵「は……現在、街道に沿って北上中……やはり連中の狙いは西部政庁かと思うわらば」
賢者「!?」
朱天「おや、すまんの。流れ弾じゃ」
勇者「撃つな! 甲の……彼の指示に従え、デモ隊の護衛に回れ!!」
朱天「……じかに見ると、やはり実に美人じゃの。どうじゃ、アメちゃんやるから儂の飼い犬にならんか」
勇者「(この女もまたエルフの……あの女の仲間か。それも凡百の人外でない、恐らくはカミに近しい幻獣……!?)」
朱天「さあさ、続きをしようではないか。京の武士も、昨今では職を失った腑抜けばかりになってしまった。貴様のようなツワモノに会えてうれしいぞお」
勇者「(デュランダルに加え……魔王軍の魔術兵装を用いても振り切れないか、何という隠し玉を……!!)」
朱天「のうのう、何で勝負するかの? 素手か、それとも刀かの?」
勇者「……その、出現した不明部隊には誰が向かえる?」
賢者「白の城塞からは、すでに飛行隊が出ているわ。戦士と僧侶の二人がモルダヴィアと追撃にあたると……」
勇者「わかった、そっちは任せよう。僕らも……早急に向かうとしよう!」
エルフ三男「(バカども……本当に馬鹿……! あんなお粗末な篩を使う時点で凡夫もいいところ……!!
お前ら頭のあったかいガキどもが、調子こいてんじゃあない……クク……バカよバカバカ、本当に馬鹿……!!
こいつら、本当に、本当に本当に、デモ隊や住民なんかが人質だと思っていやがるのかねえ……!!)」
戦士「見えた……あれか!!」
僧侶「ううう……ひど、ひどすぎです……ま、まるで……街道が血の河のよう……」
デュラハン「我々はミセス・ティタニアと共に負傷者の救援にあたります。あなた方とキマイラ飛行隊は、そのまま彼らを!!」
戦士「わかった。クズ野郎どもの首ィ、必ず持ってきてやるぜ!!」
僧侶「ほ、本当にいるんでしょうか……あの部隊にアジ・ダハーカが!」
戦士「あの元大尉さんが言ってただろうが! こういう晴れの……おぞましい事は率先してやりたがるのがアジ・ダハーカだってな!」
僧侶「うええ……」
戦士「6年前の魔王城でのイザコザだって、単身フラフラ現れた事が発端だって話だ! タチの悪い最低のクソアマだぜ!!」
僧侶「……このままにはしておけませんね」
戦士「ああ。よっぽど顕示欲が強いんだろうよ……見ていやがれ、必ずフン捕まえてやる!!」
敵兵「あれは……」
ティタニア「キマイラ隊……さっきのドラグーンの一団を押さえに行ったのね。まったく、アテクシの先見の明のおかげよねえ」
敵兵「じゃ、じゃあ……オレの言った事を信じてくれたってわけですか」
ティタニア「薄々はアジ・ダハーカがどんな人間か、みんな分かってきたって事じゃないかしらぁ。
アテクシなら、こんな絶対とっ捕まりそうな状況で、少数引き連れて飛び出したりしないけど……それをするのが、あの女なんでしょ?」
敵兵「……ええ。あのゴミカスゲロブタクソボケドラゴンマダムならやりますよ、絶対やります! あのクズ! ゲス!! バーカ! ざまぁ!!」
戦士「オラァ!!」
エルフ騎兵α「あぺぺぺぺぺ」
戦士「オラァ!!」
エルフ騎兵β「おぎゃぎゃぎゃぎゃ」
戦士「コイツも違う……! ああ、ちきしょう! 速すぎる、何なんだよあいつらの騎竜は!?」
僧侶「純粋な速度こそキマイラやワイバーンには及ばないけど……ダメッ、こんな市街地じゃ追い続けるのは無理ですよう!
あの竜、カベだとかの遮蔽物を利用した三次元走破性が売りなんでしょう……こっちのキマイラじゃ敵いません!」
戦士「クソッ、あと少し……あと少しだ、あと少しであの女に届くのに!」
戦士「オラァァァ!!」
エルフ騎兵Θ「ぱぎゃぎゃぎゃぎゃ」
僧侶「落とした……けど……!」
戦士「何だ、どうしたァ!!」
僧侶「……話に聞いてた女の人なんて……いますか? エルフしか仕留められてないですよ……!」
戦士「ああクソ! まだ取りこぼしがいるのか……! 一刻も早く始末しねえと……!」
僧侶「いや、あのう……」
僧侶「本当に、アジ・ダハーカは……さっき見た一団にいるんでしょうか……」
女騎士「やいクソデブ! 縄をほどきやがれ、何てことしやがるんだ!!」
秘書「だ、ダメです! 私がクビになっちゃいます!!」
女騎士「ふざっけんじゃねーぞ!! 私以外に誰がテメェみてえな肉女のクビを切るってんだよ!! ほどけ、ほーどーけーよー!」
秘書「(この人すっごい弱い……軍人じゃなかったの、何で私に拘束されるくらい弱いの……)」
女騎士「失業者対策にこの私が直々に一肌脱いでやろうってんだよ! ほどけー!」
秘書「……」
エルフ三男『なに新人くん。騎士様がオモチャを見つけて有頂天?』
エルフ三男『新人くん、それでも無理やり押し込めるんだ。
別に逆に考えなくていい。放っておいちゃダメだ、そう考えるんだ』
秘書「……」
女騎士「あー背中かゆい! かけ! あとお菓子! もう気分悪いなー、みんなのお給料出るかなー、あーだりいだりい」
秘書「」
騎士ほ「連合、魔王軍、並びにこの都市の全ての民に告げる。ただちに、法治制度への反逆行為……あらゆる戦闘、および違法行為を停止せよ。
こちらは北西諸島連合王国陸軍、近衛の位を有する竜騎手である。この勧告が聞き届けられぬ場合には、我らが女王や、父なる主への反目とみなし……」
将軍丙「北西諸島……今さら何の用なの!? 散々支援要請を無視して、今更……!!」
将軍甲「連中、いつもいつも肝心な時にしゃしゃり出てきやがって……! 勇者ァ、どうする!!」
魔王「……」
戦士「な、何だァ!? 何だってんだよォ……!」
騎士ほ「……繰り返す。この勧告が聞き届けられぬ場合には、我らが女王や、父なる主への反目とみなし、武力を以てその行為を鎮圧する」
エルフ騎兵「残存騎兵、上昇! 騎士様を護衛しつつ匍匐飛行、急げ!!」
女騎士「ん……ん?」
秘書「は、はぇ?」
エルフ騎兵「さ、縄をお切りいたします。閣下の定めたタイミングにございます、存分にカッ飛ばしましょうか」
女騎士「……ふぅーん、そっかぁ。あの北西諸島のドラフェチ……いや、ありゃあほの字かその手の小間使いってわけだな」
エルフ騎兵「ノーコメントで」
女騎士「クッククwwwwwwwwそんじゃまぁーwwwwwwwwww当初の予定をこなすとしましょうかーwwwwwwwwwwww」
秘書「え、あの……ど、どうなってるんですか……」
エルフ騎兵「魔王軍の動きは、これで更に制限できた筈。スズメの涙の連合陸軍など取るに足りません。一気に政庁まで駆けましょう」
秘書「あの……わ、私……さっきの一件しか教えてもらってないんですけど……何、何するんですかこれから」
女騎士「スッとろいなあ……小賢しい魔物どもにはいっちばんキきそうな仕上げだよ、仕上げ!!」
秘書「……?」
女騎士「政庁まで開けりゃあwwwwwwwwww建屋ごと皇女殿下を人質にできるじゃねぇかwwwwwwwwww」
秘書「」
女騎士「あいつらしょっぺぇ人質がんばってこさえたみてぇだけどwwwwwwwwwwww所詮は魔物の浅知恵wwwwwwwwwww
人間様に敵うと思ったらそうはいかんざきwwwwwwwwwwwwwwwなぁにが魔王軍だwwwww調子こきゃあがってwwwwwwwwwww」
秘書「皇女……様をですか……?」
エルフ騎兵「政庁の護衛についている連合陸軍や共和国戦力は、恐らくは北西諸島の勧告で退けられましょう。潜入さえしてしまえば……」
女騎士「内部に爆薬でもテキトーにブリまいてやるだけの簡単なお仕事だかんなーwwwwwwwwww
そのまま私らが立てこもったと見せかけてよぉwwwwwww後はさっさと撤収するに限るわwwwwwwwww」
秘書「」
女騎士「ぶっ殺されたら遺体ぶら下げて魔王軍の鬼畜の所業をアピールできるし……
手に入ったら、来期の連盟会議でかなりエルフ共々有利に事が運ぶ。どっちに転んでも役に立つってもんよwwwwwwwwww」
秘書「こ、皇族の方を、何だと……」
女騎士「パンピーが口出しとはナマイキになったもんだなデブ。皇族なんぞ、私らが汗水流して働いてる後ろでぷくぷく肥えてるクソどもだろ。
この私の役に立てる事を光栄に思うだろ、王権神授の学説によれば皇族が私の舎弟になるのは当然の事だもん」
秘書「だって……て、帝国の国民の為に働いてるって、あのブルネットの人が言ってましたよ。皇族のお方に何かがあったら……」
女騎士「何かあったら何だってんだよ!!!人間生きてりゃ空から鉛玉が振ってきて死ぬ事もあんだろお!?
皇族だって所詮はテメェらパンピーとさして変わらねえ人間なんだよ、偶然死んじまう事もあんだろお!?」
秘書「……」
女騎士「ひとつおさらいだ。帝国の国民は誰の為に働いてると思ってる? 私だあ!!
じゃあ皇族は誰の為に肥え太ったと思ってる? 私だあ!! 帝国に与する人間で最も価値のある人間は誰だと思ってる?」
秘書「(ちょっと何言ってんのかわかんない)」
女騎士「私に決まってんだろボケッ! 私が不幸になるのは、この神が作りたもうた大地における史上最大の損失だぞ!?」
秘書「じゃ、じゃあ……代わりに王様にでもなる気ですか……」
女騎士「嫌に決まってんだろグズッ!! 誰が好んでそんなブラック職に就かなきゃなんねーんだよ!!! 死んでもやだ!!!」
秘書「」
女騎士「少し考えりゃあわかるだろォが!! ぜってーブラックだわあんなん、そりゃダモクレスもどっ退くわ!!」
秘書「はあ……」
女騎士「『人魚姫』ってあるだろ、あのサカナ女の。あれ結局最後玉の輿でクッソ飯のマズイ終わり方するけどよぉ、
あんな半漁人を娶る王子にまともな為政期待できるか? ぜってー薬キメながら書いた童話だぜ、まじ頭おかしい」
秘書「そんな悲惨なお話しじゃないから……」
女騎士「もしくは痛烈な風刺だな、実際に王族が娶る女の脳ミソの容量はサカナ並ってコケにしてんだ、よくやるぜ。
サカナや魔物にゾッコンな性倒錯者のクソ王子みたいなのばっかだって、昔っから言われてるんだよ」
秘書「……」
女騎士「つまり、王様ってのは頭イカレてて周囲からヒかれててドMじゃないと務まらないんだよ。ほら、私は全然当てはまらない」
秘書「(ノーコメントで)」
女騎士「てなわけでだ、後々にあの三男坊には帝国で皇帝やってもらう事にする」
秘書「」
女騎士「私の姉貴、ガキだけは実家にワンサカいるからなあwwwwwwwそのうちの一匹にでもエルフの血を混ぜりゃどうにかならあwwwwwwww」
秘書「ワン……サカ……?」
女騎士「昆虫みてぇにポッコポコ産みやがるwwwwwwww外出するたびにああだからとんでもねぇ女だわwwwwwwwwwwwww
生きてりゃ姉貴本人にハーフエルフ産んでもらうのもいいけどwwwwwうわwwwwそれじゃあの三男坊と私が血縁になっちまうよwwwwwうええwwwww」
秘書「(この……この人……この人、クズなんだ……!!)」
騎士ほ「フククク……フッククククwwwwwwwwwwwwwwwwふひゃひゃひゃひゃwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
騎士ほ「見ぃぃぃておいでですかぁぁぁぁ、ゆぅぅぅしゃさまァァァwwwwwwwwwwwwwwwwひゃっひゃっひゃwwwwwww」
騎士ほ「希望を集めておいてwwwww人民を後から奈落に突き落とそうとwwwwwそんなwwwwwww下卑た企みも無駄ですわ無駄無駄wwwwwww」
騎士ほ「まともに手出しできるもんならしてみなさいなwwwwwwふひゃひゃwwwwwムリだろうなwwwww貴様らただの臆病者だぁwwwwwww」
騎士ほ「どうしたよぉwwwwwwwwwwwwwなぁんちゃってってwwww奥の手の一つでも出してみなwwwwwwwwwwふひゃひゃひゃwwwwwwwww」
勇者「」
朱天「おや、どうしたね勇者サマ? 勇者と呼ばれているからには、まだまだ楽しませてくれるんじゃろ」
賢者「」
朱天「何じゃあ、若いのに胆力に欠ける連中じゃ。根性だけは幕府のガキには負けるのう」
エルフ三男「……クク、くふふ……さっきの威勢はどこ行ったんだァ、勇者様ァ。ホゥラ、アジ・ダハーカを殺すんだろ?やってみろよ。
今なら庁舎ごと吹き飛ばせば始末できる……それとも何かな? デモ隊ならいくら殺されても構わんお前らが、皇族殺しを躊躇うのかな?」
勇者「」
エルフ三男「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
女中「き、騎士様……よくぞ、よくぞ生きておいでで……おお、神よ……」
女騎士「お久しぶりにございます、このような汚れたいでたちで申し訳ない」
皇女「6年ぶりじゃな……再びこうして会えるとは、思わなんだ……」
女騎士「姫は、少しお顔を見ぬ間に一段とお美しくなられた」
皇女「やめよ、もはやそのような歳ではない……」
女騎士「(ふん……どうやら、連合や魔王軍も皇族に関しては共和国とドラフェチどもの目を気にして腫れ物扱いってわけか。
こうして軟禁するだけしか能がないとは……バwwwwwカwwwwwだwwwwねーwwwww私だったらサッサと一族断絶させてんのにwwwww)」
第7部 帝国奪還編 破
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制作・著作 NHK