関連記事
時系列 古い順  本筋の物語順序は数字順 番外編は#
13:男の過去~少年編~(前日譚)
14:男の過去~喪失編~(前日譚)
7:男と騎士の始まり(前日譚)
15:男の過去~戦争編~(前日譚)
12:エルフ、その始まり(前日譚)
4:旧エルフと男(前日譚)
5:男がエルフに出会うまで(前日譚)
1:エルフ「……そ~っ」 男「こらっ!」(本編)
#:ある男の狂気(番外編)
2:男がエルフに惚れるまで(後日談)
6:エルフが嫉妬する話(後日談)
8:男の嫉妬とエルフの深愛(後日談)
9:二人のちっぽけな喧嘩(後日談)
10:女魔法使いたちとの和解(後日談)
#:かしまし少女、二人(番外編)
11:戦乱の予兆(後日談)
16:未来編 前編後編(後日談)
17:空の欠片(後日談)
3:結婚、そして……(後日談)

当記事は、【 人とエルフ(エピローグ) 】 です

520 : 吟遊詩人[saga] - 2013/08/14 00:27:21.24 qR+Wdtl30 1103/1108

全ての物語には終わりがある。
 これは、一人の少年が世界に生まれ、人とエルフを繋ぎ、導く者としての運命を背負った物語。
 人とエルフにとって、そしてこの世界にとっても共通の敵である〝黄昏〟を倒し、彼とその仲間たちはこの世界に再びの平穏をもたらした。
 長い間お互いに相いれず、敵対関係を維持してきた種族は、この戦いを経てようやく新たな一歩を踏み出そうとしていた。
 今はまだ生まれたばかりの小さな芽。これがこれからどのように成長していくのか、それともこれまでのように途中で手折られてしまうのかはわからない。
 それでも、世界は新しい未来へと歩み出した者たちによって、その有り様を変えようとしている。

……




521 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/08/14 00:27:59.58 qR+Wdtl30 1104/1108



……

エルフ娘「お母さ~ん。お父さんまだ帰ってこないの~?」

エルフ「そうですよ。お父さんは今大事なお墓参りの最中なんです。積もる話もあるでしょうから、もう少しだけ待ちましょう」

エルフ娘「む~。ご飯早く食べたいよ~」

エルフ「しょうがないですね。それじゃあ、男さんには内緒で少しだけつまみ食いしちゃいましょうか」

エルフ娘「わ~い。お母さん大好き!」

 調理した食事を少しだけお皿に取り分け、男には内緒でこっそりと食べる二人。

エルフ娘「ねね、お母さん。お父さんが今お墓参りに行っているのって私の名前になってる人なんだよね?」

エルフ「そうですよ。それはもう、すごい人だったんですから。あなたが生まれる前に起こった大きな戦いで〝救世主〟として世界を救った偉大な女性だったんですよ」

エルフ娘「『旧エルフ』か~。どんな人だったのかな? 一度でいいから会ってみたかったなぁ」

エルフ「そうですね……。できることなら、私も会わせてあげたかったです」


522 : 吟遊詩人[saga] - 2013/08/14 00:28:40.23 qR+Wdtl30 1105/1108

 そうしてエルフは思い出す。彼女と男と一緒に暮らしたあの懐かしい日々を。
 運命を背負う代価に奇跡を体現し、再びこの世界に受胎した旧エルフ。最初は羨望と嫉妬で彼女の存在をエルフは受け入れられなかった。
 だが、共に過ごして彼女の人柄に触れていくうちに、同じ人を愛する者として徐々に彼女を受け入れ始めたこと。
 その後すぐに〝黄昏〟との戦いのため男共々連れ去られ、冷たい牢獄に押し込まれて不安になった自分を優しく包み込んでくれたことも。
 戦いを終え、役目を果たした末に最後まで笑顔を浮かべ、この世界を去っていった〝救世主〟を彼女は、覚えている……。

エルフ娘「お母さん……泣いてるの?」

エルフ「えっ?」

 エルフ娘に言われ頬を撫でてエルフは気がつく。無意識のうちに彼女の頬には涙が流れていた。

エルフ娘「どうしたの? なにか悲しいことでもあったの?」

エルフ「そんなこと……ないですよ。大丈夫です」

 不安そうに自分を見つめるエルフ娘の身体を優しく抱きしめるエルフ。かつて旧エルフが己にしたように。

エルフ「今はもう、あなたがいますから……」

 どことなく旧エルフの面影に似たエルフ娘の頭を優しく撫でながら、エルフは呟く。


523 : 吟遊詩人[saga] - 2013/08/14 00:29:10.98 qR+Wdtl30 1106/1108

 子供ができる。そう分かったとき、エルフは産まれる子供に彼女の名を付けることを決めていた。
 かつて、悲しい出来事があった。避けようのない別れがあった。
 けれど、それがあったからこそ自分たちは今この世界に存在できているのだと改めてエルフは実感する。
 消えていった彼女の想いに報いるためにも人とエルフが笑って過ごせる世界をつくる。それが、今のエルフと男の掲げる信念だった。
 不意に、家の門を開ける音が外から聞こえた。墓参りを済ませた男が帰ってきたのだろう。
 それに気づいたエルフはエルフ娘に合図を送り、ゆっくりと扉の前へと向かっていく。エルフ娘はエルフの合図に元気よく頷き返した。

エルフ「行きますよ?」

エルフ娘「うんっ!」

 徐々に開いていく扉。扉の前で彼女たちが待っているとは知らない男は、いつものように帰宅した。

エルフ娘「……そ~っ」

エルフ「……そ~っ」

 こっそりと扉の前に移動した二人は、扉が開くと同時に中に入ってきた男の胸めがけて二人が飛び込んだ。
 急に現れた二人に驚きながらも、男は二人の身体を両腕で抱きしめ、満面の笑みを浮かべながら、お決まりの言葉を口にするのだった。

「こらっ!」

エルフ「……そ~っ」 男「こらっ!」 epilogue 人とエルフ ――完――

524 : 吟遊詩人[saga] - 2013/08/14 00:29:48.60 qR+Wdtl30 1107/1108

そっこら時系列(最終版) 古い順
時系列 古い順  本筋の物語順序は数字順 番外編は#

13男の過去 ~少年編~(完結) 前日譚
 
  ↓

14男の過去 ~喪失編~(完結) 前日譚

  ↓

7男と騎士の始まり(完結) 前日譚

  ↓

15男の過去 ~戦争編~(完結) 前日譚

  ↓

12エルフ、その始まり(完結)前日譚

  ↓

4旧エルフと男(完結) 前日譚

  ↓

5男がエルフに出会うまで(完結) 前日譚

  ↓

1エルフ「……そ~っ」 男「こらっ!」(完結)  #ある男の狂気(完結) 

  ↓

2男がエルフに惚れるまで(完結) 後日談

  ↓

6エルフが嫉妬する話(完結) 後日談
  ↓

8男の嫉妬とエルフの深愛(完結) 後日談

  ↓

9二人のちっぽけな喧嘩(完結) 後日談

  ↓

10女魔法使いたちとの和解(完結) 後日談

  ↓

#かしまし少女、二人(完結) 後日談

  ↓

11戦乱の予兆(完結) 後日談

  ↓

16未来編(完結) 後日談

  ↓

17空の欠片(完結) 後日談

  ↓

3結婚、そして……(完結) 後日談

  ↓

18人とエルフ(完結) エピローグ

525 : 吟遊詩人[saga] - 2013/08/14 00:33:14.15 qR+Wdtl30 1108/1108

これでこのSSは終わりになります。
VIP+から始まり、全ての話を完結させるまで一年半。物語の最初からお付き合い下さった方には随分と長いこと終わりを待たせてしまいました。
途中筆を止めてしまいこちらのSS速報で書く事になりましたが、無事に完結させることができて良かったと思います。
このSSを読んでくださった方々が少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。
HTML化は三日後に出そうと思っているので、それまでに質問や疑問点があればお答えします。
改めまして、ここまでお付き合いくださりどうもありがとうございました!

記事をツイートする 記事をはてブする