am11:00、とあるキャンピングカー内
一方通行「……、……」ムスー
結標「……、……」ジィー
土御門「……、どうしたんだそれ」
海原「くっついてしまったようですよ」
打ち止め「すー……、すー……」
一方通行「……、……」ムッスー
土御門「いや、だから、どうしたんだそれ」
海原「ですからくっついてしまったと」
土御門「意味がわからない!」
一方通行「でけェ声出すなガキが起きる」
元スレ
一方通行「……剥がれねェ」
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1281533720/
土御門「……悪い」
一方通行「以後気ィつけろ」
結標「剥がれないのよ、さっきからどうにかしてファミリーサイドに飛ばしてあげようと思っているのだけれど」
土御門「っていうか、いつから?」
海原「いつからと言うのは」
土御門「いつから一方通行は打ち止めを背負ってるんだ?」
一方通行「今朝から」
結標「かれこれ5時間は背負ってるみたいね」
一方通行「いや、起きたのは10時だからまだ1時間ってとこだな、もォ慣れたが」
土御門「いや、だから、説明がほしいんだが」
海原「見てわかるでしょう。一方通行さんの背中に打ち止めなう、ですよ」
土御門「ツイッターか!」
一方通行「大声」
土御門「悪かった」
土御門「で、どうするんだ」
一方通行「あンまり剥がれねェから、結標に飛ばしてもらおうと思ってたンだがなァ」
結標「演算しようとしても失敗しちゃうのよね。見えない壁に阻まれている感じよ」
海原「と、いうことです。自分側の力というわけでもなさそうですが……」
土御門「どれ、ちょっと引っ張ってみるか」ガシッ
打ち止め「すぴー、くー……」
一方通行「引っ張ンなァ結構だが、ガキの脇腹おさえるとくすぐってェらしいンだわ。すぐ起きるからやめろ」
土御門「じゃあ引っ張りようがないな」パッ
打ち止め「くかー……、むにゃ……」
海原「構図としては微笑ましいものがありますね。悪人面した最強が天使の寝顔である幼女を負ぶっている、と」
一方通行「オーケェわかった、ガキが剥がれ次第オマエからブチ殺す」
海原「冗談ですよ、UK」
結標「UK……ユナイテッドキングダム?」
海原「いえ。海原的に考えて、です」ドヤ
一方通行「そのドヤ顔削ぐぞ」イライラ
土御門「しかし、困るな……職場に子供連れで来られては」
一方通行「俺を子育てに勤しむ父親みてェに言うな」
結標「でも事実でしょう? あなた、その子を背負ったままで仕事に専念できるとでもいうの?」
海原「守るべきものがあれば強くなれると言いますが、これはちょっと」
一方通行「だから俺が背負いたくて背負ってるわけじゃねェンだよクソったれ……」
土御門「いつになく低い声だが静かだな」
海原「ほら、起こしちゃまずいから。つまり今の彼に何を言っても大した反撃はされないということですよ」
結標「あら。いつもは言いたくても言えないことまで包み隠さず言えるじゃない」
一方通行「あァ、実はショタコンですってかァ? 悪ィなァ、もォ知ってる」
結標「……飛ばすわよ」
一方通行「できるモンならガキを飛ばしやがれ」
土御門「そもそも、どうして打ち止めを背負うことになったのか――理由はわかっているのか?」
一方通行「それがわかりゃ苦労はしねェ。わかンねェから剥がせねェンだ」
海原「何か変わったことはありませんでしたか? たとえば御坂さんにどこかで会ったとか、そのときに御坂さんは何をしていたとか」
一方通行「オイ、途中から欲望ダダ漏れだぞ」
結標「いいから思い出してみなさいよ。あなたがロリコンだろうがペドフィリアだろうがどうでもいいけど、仕事に支障が出るのは困るわ」
一方通行「ロリコンでもねェしペドはオマエだボケ。……昨日、昨日なァ」
土御門「ああ、そういえば昨晩見たぞ。お前がカミやんとスーパー行くの」
一方通行「……スーパー……あー、そォいや」
・
・
・
上条『あれ、一方通行? 一方通行じゃねえか!』
一方通行『ンだよ、何か用か三し』
上条『卵! お一人様2パックまで!』グワシッ
一方通行『のわッ、オマ、人の腕勝手に掴むンじゃ』
上条『2×2は4……4パックの卵! ちょっと得した気分だな!』
一方通行『だから話聞けよクソが!』
一方通行「とまァ、こンな具合で巻き込まれた」
打ち止め「すぴー」
結標「まったく関係がないと思うわ。結局買ったわけ?」
一方通行「買った。それどころか一度スーパーを出てから二度目のレジ通過まで果たさせやがったぜェ、あのウニヘッド」
海原「庶民の知恵ってやつですね、まあどんまいとしか言えないですけど」
土御門「ふむ。っていうか、昨晩は打ち止めに会ったのか?」
一方通行「会ってねェ」
結標「? だったらどうしてあなたの背中にくっついてるのよ」
一方通行「知らねェっつの。普通にホテル借りて寝て起きたら背中重くてペチペチ触ったらガキがへばりついてたンだよ」
土御門「……それおかしくないか」
海原「ホテル総出のドッキリなら頷けますね」
一方通行「ンなわけあるかボケ」
結標「ああ、そうね、下世話だとわかっていて訊くのだけれど」
一方通行「あン?」
結標「排泄物の処理はどうしているの?」
一方通行「」
土御門「オレ達が訊くに訊けなかった点をずばっと……」
海原「さすが結標さん、遠慮も配慮もない」
一方通行「……どォでもイイだろォがよ」
結標「女の子の視点に立ってみると、どうでもよくはないわよ。その子だって立派な女の子じゃない」
打ち止め「すかー……くかー」
土御門「くっついて離れないってことは、トイレ行けないんじゃないかにゃー?」
一方通行「黙れ」
海原「えっ、行ったんですか」
一方通行「だから黙れよ」
結標「あなたはともかく、その子の排泄物の処理方法が甚だしく気になるわね」
一方通行「イヤ意味わかンねェし気にならなくてイイですンで」
打ち止め「すー……むにゃ、んー……」モゾモゾ
一方通行「!」スッ
土御門「体勢を変えそうになったらすぐに正す、と。ずっとそんな感じなのか?」
一方通行「あァ。どォもこのガキ、俺がわざわざ手でおさえてやらなくてもずり落ちることはねェらしいンだが」
海原「本格的に粘着状態なんですね」
一方通行「そンなとこだな。つまり、背中になンか背負ってるっつゥ点を除けばいつも通りだ」
結標「なんか背負ってる点が最たる奇妙かつ不審な点でもあるのだけれど、どうするのよ」
一方通行「今日の仕事はたしか……」
土御門「不正取引をしているスキルアウトの殲滅だぞ。ま、結標ひとりでも制圧できるだろうがな」
打ち止め「むー……おな、か……」モゾリ
一方通行「!」サッ
打ち止め「おなか、すいたー……って、ミサカはミサカは元気良く……んしょっ! おはよーございます!」ガバッ
一方通行「チッ、目ェ覚めたかクソガキ」
海原(今急に起きても反り返りすぎないようにしっかり腕回してましたね)
結標(おんぶに相当慣れたと見えるわ)
土御門(しかしまあ、キャンピングカー内でちゃんと座りながらも背負うってけっこう辛いと思うぜい)
海原「さすが彼女の遺伝子です、ところで自分はどちらを名乗れば」
一方通行「名乗ンな消えろ」
海原「これは手厳しい」
打ち止め「ねえねえ、もしかしてお仕事中かなってミサカはミサカは空腹を我慢しなければならないときの解決策を考えてみるんだけど」
一方通行「あァ、今からちょっと仕事だがすぐに終わ」
結標「あら、あなた今日は休みでしょう?」
一方通行「!?」
土御門「そういえば休みだったな。なんでいるんだお前」
一方通行「は、はァア?」
海原「お帰りはこちらですよ、さあどうぞ」ウィーン
一方通行「は、オイちょっ」
ポイッバタン ブロロロロロ…
打ち止め「なんだか体よく追い出されちゃったね、ってミサカはミサカは地面に膝を着いているあなたに話しかけてみたり」
一方通行「ったく、どォすりゃいいンだ、どォすりゃ……」カツカツカツ
打ち止め「杖つきでミサカまで支えてたら転んだときに受身が取れないよ? ってミサカはミサカは手を背中に回していることの無意味さを主張してみる」
一方通行「無意味じゃねェよ、クソったれ」カツカツ
打ち止め「でも、ミサカがずり落ちないのは今朝確認してるじゃない、ってミサカはミサカは得体の知れない力にちょっとわくわくしてみたり!」
一方通行「チッ……心情的、体面的な問題だよ。手で支えてねェのにガキがくっついたままだと怖ェだろォが」
打ち止め「ほおお、そっちの見た目の心配をしてたのね、ってミサカはミサカは納得してうんうんと頷いてみ、」グゥー
一方通行「……、……」
打ち止め「えっと、その、おなかすいた……ってミサカはミサカは接触しているためにダイレクトに伝わったであろう腹の音に赤面しちゃったり」
一方通行「……何が食いてェ?」
打ち止め「! カレーライス! ってミサカはミサカは勢い良くこぶしをつきあげてみる!」
一方通行「まァ、ファミレスでイイな」
土御門「あ、カミやん探せって言うの忘れた」
結標「いいからちょっとは手伝いなさいよ」
海原「メールしときますよ。カミやん探せ、でいいんですよね」ポチポチ
結標「だから手伝えや」
とあるファミレス
店員「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
打ち止め「二名ですーってミサカはミサカは指を二本立ててみる!」
店員(背中から元気に返答した……だと……)
店員「では、こちらになります」
一方通行「……ふと思ったンだが」
打ち止め「どしたのー? ってミサカはミサカはさりげなくメニューを見せてくれるあなたに感激しつつ訊ねてみたり」
一方通行「オマエ、おンぶされるよォな年齢ではねェよなァ」
打ち止め「たしかにそうかもしれないね、ってミサカはミサカの微妙で繊細な年齢に思いを馳せてみる」
一方通行「つまり、おンぶしている以上は怪我でもしてンじゃねェかと思われてるわけだ」
打ち止め「うーん? そうなのかなってミサカはミサカは周囲の視線が気にならないので所詮些事だねって切り捨てて」
一方通行「イイから黙って病人のフリしろ」
打ち止め「!」
一方通行「どォいうわけか離れねェし剥がせねェ以上、怪しまれるよォな態度は慎め」
打ち止め「で、でも元気はミサカの取り得なのでってミサカはミサカは」
一方通行「オーケーオーケェ、いっそ足に包帯でも巻きますかァ?」
打ち止め「むう、なんだか中二病みたいで嫌かもってミサカはミサカはネットワークから得た知識を披露してみる」
店員「こちらカレーライスとブラックコーヒーになります。ごゆっくりどうぞー」ゴトッ
打ち止め「カレーカレーカレー! 久しぶりにあなたと外食だねってミサカはミサカは興奮を隠し切れずにカレーに手を伸ばいたっ!」
一方通行「俺の背中に乗った状態で普通にカレー食おうとすンなクソガキ!」
打ち止め「でもじゃあどうすれば……はっ! ここはあなたがミサカにあーんするべき場面! ってミサカはミサカは名案を思いついてにっこりしてみる」
一方通行「誰がするかァ!」
打ち止め「じゃあどうすればミサカはこのカレーを食べられるのってミサカはミサカは歯痒さと空腹感を耐え切れずにあなたの髪で遊んでみたり」
一方通行(とは言え、ガキはこの状態でカレーなンざ食えねェ……でも『あーン』なンて俺の沽券に関わる。つまりここは第三者の介入が必要、だが……)
御坂妹「あ、どーも遅くなりましたー、とミサカは軽いノリでさっさと目の前に座ります。っていうかおんぶとかねーよ」
一方通行「」
打ち止め「」
御坂妹「ふむ、カレーですね。子供である上位個体らしいいかにもなチョイスです、もちろんミサカはもっと大人の食べ物を注文しますが」
一方通行「チェンジ」
御坂妹「ヘルプとしてやってきてやったのにそれはねーだろ、とミサカはひどい扱いに苛立ちました。すみませーん、一番高いメニューください」
一方通行「オッマエ……!」イラッ
打ち止め「どこが大人の食べ物? ってミサカはミサカは下位個体の大人気ない仕打ちに疑問を抱いてみる」
御坂妹「まあ、なんでミサカがここにいるかっつったら上位個体から聞いたんですけど、とミサカはざっくばらんに打ち明けます。もぐ」
一方通行「ンでェ? ヘルプのオマエはなンでクソでけェパフェを食ってンだオイ」
御坂妹「いわゆる労働賃です、とミサカは答えます。あ、上位個体。ポッキーあげましょうか、ほれほれ」
打ち止め「わーい、ってミサカはミサカは遠慮なくポッキーをふはへへひふー」
一方通行「くわえたままキョロキョロすンな、俺にポッキーがぶつかる」
御坂妹「一方通行もポッキーがほしいなら数秒前に言うべきでしたね、とミサカは鼻で笑います」
一方通行「イヤ、いらねェしそもそもポッキーはバリバリのメンズ派だボケ」
打ち止め「あれ苦くてあんまりおいしくないよー、ってミサカはミサカはどこまでも苦味にこだわるあなたに苦笑してみたり」
御坂妹「それにしても、とミサカは巨大パフェを前に悟ります。これはでけーよ……多いわ」
一方通行「だったら頼ンでンじゃねェよクソったれ!」
打ち止め「おなかすいたーはやくカレーたべたいおなかすいたー、ってミサカはミサカのカレーが冷めている可能性を指摘してみる」
御坂妹「あ、サーセン。もういいやこのパフェ、とミサカは親切にも5割残っているパフェを一方通行に献上します」
一方通行「だから普通のパフェ頼めばイイじゃねェかよ半分残してンじゃねェェェェエエエ!」
御坂妹「はい、あーん、とミサカは上位個体にスプーンを差し出します」
打ち止め「むぐ、ぱくっ。んーおいしっ! ってミサカはミサカはちょうど食べやすい熱さのカレーを堪能してみたりー」
一方通行「……、……」
御坂妹「ではもう一度。はい、あーん、とミサカはさらにスプーンをずずいと差し出します」
打ち止め「んぐっ。もぐ、やっぱりおいしーってミサカはミサカはにんじんさんの程よい甘さに口元を綻ばせてみるー」
一方通行「……、……」
御坂妹「はい、あーん、とミサカはテーブルに突っ伏している一方通行にもあえてスプーンを差し向けてみますが」ニヤー
一方通行「イイからさっさとガキに食わせろ、この体勢キツいンだっつの」
打ち止め「たしかにミサカが早く食べないとあなたがテーブルと一体化しかねないねってミサカはミサカの消化スピードをあげてみたり!」
御坂妹「あ、ちょっとタンマ。しっかり写真取らねーと、とミサカは普段見られない一方通行の低姿勢っぷりを心のアルバムに保存します」
一方通行「……オイ、その心のアルバムってなァまさか」
御坂妹「もちろん妹達全員が共有していますが、とミサカはスプーン片手にしてやったりと無表情に笑います」
打ち止め「おおお、しっかり保存されてるーってミサカはミサカのみさろだで確認して感動しちゃうんだけど!」
一方通行「こンのクソガキ共がァァァアアアア!!!!」
打ち止め「ふいー、ごちそうさまでした! ってミサカはミサカは両手を合わせてみる」
一方通行「……、……」ズズー
御坂妹「あれ? パフェ食べないんですか、あれー? とミサカはパフェに一切手をつけていない一方通行を不思議がります」
一方通行「ンな甘ったりィモン食えねェよ。腹減ったやつがいンならあげてェくらいだ、例えばあのガラスに張り付いたシスターみて、……あン?」ゴシゴシ
インデックス「ううーとうまがいないんだよー、でもおなかすいたから何か食べたいんだけどとうまがいないからどうすればいいの?
私のおなかはどうすれば満たされるの? 隣に行ったけどお留守だしこもえもいないし街を歩いても短髪さえ会わないしどうすればいいの?
おなかすいたんだよおなかすいたって言ってるのにどうして誰も助けてくれないのかなさすが学園都市だねみんな自分のことで精一杯なのかも!
だけど私はおなかがすいたんであっておなかがすいたんだからとにかく何か食べなきゃいけなくてだけどお金がなくておなかがすいてどうしようもないの、
だからおなかをおさえて歩いているのにとうまはいないしとうまはいつもどこに行くか言わないよねせめて冷蔵庫に何か残してくれればいいのに何もないんだよ、
私が餓死しちゃったらとうまの責任問題かもとりあえずおなかがすいてどうしようもなくてパフェパフェパフェパフェカレーカレーカレーハンバーグハンバーグハンバーグハンバーグ……、
いいなああのパフェおっきいなあいいなあおなかすいたんだよおなかがすいたのおなかがすいたのかもあの白い髪ワタアメみたいでおいしそうだなあ、
おなかすいたなあおなかすいたんだよぐーきゅるるーどころじゃないんだよぐるぉぉぉおおおおおおきゅるるるぅぅぅうううみたいな腹の音なんだよおなかすい」
打ち止め「……まるでホラー、ってミサカはミサカが空腹を訴えていたときもここまでひどくはなかったことを思い出してみたり」
一方通行「……、……ちょっと行ってくるわ」
御坂妹「あとハンバーグ頼んでおきますね、とミサカは顔見知りのシスターを心配して出来る女アピールもします」
数分後
インデックス「あー、あくせられーた! ここにあるもの全部食べてもいいのかな?」
一方通行「あァ。イイ、食ってイイから眼孔開いてる目ェどォにかしてくれ」
打ち止め「メニュー全部頼んだのははじめてかも、ってミサカはミサカはシスターさんの胃袋を心配してみるんだけど……」
一方通行「心配いらねェ。こいつは全部平らげる」
御坂妹「ところで彼がいないとはどういうことでしょうか、とミサカはパスタをものすごい勢いですすっているシスターに訊ねます」
インデックス「ミートソースもおいしいけどペペロンチーノもおいしいんだよ!」ズルズル
御坂妹「聞いちゃいねえ、とミサカは盛大に舌打ちをかまし、仕方がないので一方通行をからか……ぶふっ」
一方通行「あァ?」
打ち止め「あ、まだ完成途中なんだから動かないでーってミサカはミサカはあなたの髪をいそいそとみつあみにしてみる」
一方通行「……、……」ブンブンブンブンッ
打ち止め「わっ、なんで頭を超スピードで振るの!? ってミサカはミサカのやったみつあみがほどけたことを遺憾に思うんだから!」
一方通行「知るかボケ! なァンでこの俺がみつあみなンざされなきゃならねェンだよォ!」
御坂妹(え? みつあみ姿の一方通行の動画くれ? んな気色悪いもん静止画で精一杯だよミサカは頭がお花畑じゃないからな、とミサカはとある個体に返答します)
インデックス「ええっとね、とうまがいないの。朝起きたらもういなくてどっか行っちゃったんだよ」パクパクズルズル
打ち止め「じゃあもしかして朝から何も食べてないの? ってミサカはミサカはシスターさんに同情を禁じえない……」イソイソ
一方通行「その分今食ってりゃ問題ねェだろ。ただ、ああやってガラスに張り付くンはやめとけ」
インデックス「あれは意識が朦朧としていたから仕方ないのかも。ちょっと恥ずかしいな」ガツガツモグモグ
御坂妹「その驚異的な食べ方を恥ずかしがったりはしないんですね、とミサカはツッコミ……おや? 一方通行の携帯が光っています」
一方通行「あン? メールか」パカッ
[DATE]XX/XX 12:15
[FROM]海原
[SUB]土御門さんが
―――――――――――――
カミやん探せだそうです
ファイト(笑)
一方通行「……、……」パタンッ
御坂妹「どんな内容だったか見てもいいっすかね、とミサカは一方通行の携帯に手をそろりと」
一方通行「くっだらねェ内容だから気にすンな」ベシッ
打ち止め「むう、なかなか思うようにいかないなってミサカはミサカは自分の手が小さいことを悔やんでみる」イソイソ
一方通行「ところで、三下がいねェ理由はわからねェンだな?」
インデックス「うん。とうまが急にふらっといなくなっちゃうのってわりと普通だもん」モグモグガツガツバクバク
御坂妹「意志の疎通が図れてねーなおい、とミサカは呟きます。いっそミサカが押しかけ女房になるべきかもしれませんね」
打ち止め「うむー、もうちょっと、ってミサカはミサカは指をがんばって動かしてー」
インデックス「さっきかららすとおーだーはあくせられーたの髪で何をしてるの?」ゴッキュゴキュモグパクガツガツ
打ち止め「んと、今度はあみこみーってミサカはミサカったあ! 今あなたミサカの額に正確にチョップしたーっ!」
一方通行「学、習、能、力、ねェのかオマエは!」ビシビシ
御坂妹(あみこみセロリたん練乳風味画像よこせ? ねーよそんなもん、パフェすら食ってねーぞあいつ、とミサカはとある個体にしたうちと共に返答します)
御坂妹(は? パフェを食わせたらいい? だったらてめーがやれよミサカはまだ命が惜しいわボケ、とミサカはとある個体に再度返答し……)
御坂妹(あみこみ一方通行の動画うp? いやだから上位個体がいるからちょっと動画はまずいとミサカはとある個体に返答し、っておい暴走すんなお花畑)
御坂妹(だーもうお前らマジうっせえよ無理だっつってんだろちくしょうセロリ派はこれだから! とミサカは苛立ちの余り返答を諦めます)
一方通行「なンか髪が若干ウェーブかかってねェかこれ」
打ち止め「あみこみしちゃったからだねーってミサカはミサカはあなたの新しいヘアスタイルもなかなか好みであることを告白してみたり」
一方通行「上条を探せ、ね。たしかにこのガキがなンでくっついてンのかは解明できねェままだが、あいつなら剥がすことはできるだろォな」
御坂妹「あ、その件なんですけど、とミサカは意見を呈します」
一方通行「あァ?」
御坂妹「朝起きたら上位個体がくっついていたとのことですが、ネットワークでの調査およびとある個体の活躍の結果――
夜のうちに上位個体は何者かに攫われ一方通行にくっつけられたことが判明しました、とミサカは懇切丁寧に説明します」
打ち止め「? そうなの? ってミサカはミサカの記憶が定かじゃないので首を傾げてみるんだけど」
御坂妹「ええ、上位個体はぐっすりおねむでした、とミサカは昨夜のネットワークはBGMがオルゴールだったことを明らかにします」
インデックス「というか、ふたりは好きでおんぶしているわけじゃないの?」
一方通行「ちっげェよ!」
打ち止め「ミサカはあなたの背中大好きーってミサカはミサカはここぞとばかりにぴたりとくっついてみたり!」
一方通行「暑いやめろクソガキ」ペチペチ
インデックス「ふうん。でもそれ、私がわからないからきっと科学サイドのものだと思うんだよ」
一方通行「!」
インデックス「私の十万三千冊の魔道書と照らし合わせてみても、今のふたりがどうしてくっついているのかはわからないの。だから、科学側かも」
御坂妹「つまり、学園都市の誰かがこうして上位個体が一方通行の背中に乗っているような状態につくりあげたということですね、とミサカは要約します」
インデックス「そう。とうまが言っていたんだけど、あくせられーたはこの学園都市のトップなんだよね?」
一方通行「トップ、つゥよりは……いや、まァトップでイイか。それがどォした」
インデックス「多分、ふたりをこんな状況にした人はあくせられーたには及ばないにしろ、相当な手練なんだよ」
打ち止め「そっか、考えてみたらあなたの能力が効いてないもんね、ってミサカはミサカは納得してみる」
インデックス「まあ、きっととうまが右手で触ったらふたりはすぐに離れることができると思うんだよ。あくせられーたに心当たりはないのかな」
一方通行「ありすぎて困るくれェだ。色ンなトコで恨みばっか買ってっからよォ」
御坂妹「さすが最強、いえ最凶ですねとミサカはpgrします。もしもその恨みを売ってくれた方々が今殴りこんできたらどうするんですか?」
一方通行「……ガキひとり背負ってるくらいじゃ負けねェよ」
インデックス「とにかく、一刻も早くとうまを見つけないとね」ゴックン
インデックス「それじゃ、私はおなかが満足したから帰るんだよ。とうまに会ったら怒っておいてね!」
打ち止め「え、一緒に探さないの? ってミサカはミサカはシスターさんの帰宅発言に度肝を抜かれちゃったんだけど」
インデックス「うん。だって観たいどらまが始まっちゃうかも、だからばいばーい」
パタパタ
御坂妹「『観たいドラマがある――それが彼女の最後の言葉だった。それから僕らが彼女に出会うことはなかったのだ、』とミサカは」
一方通行「もっともらしいモノローグつけンな」ビシッ
打ち止め「どうしようかなあ、ってミサカはミサカは逡巡してみる。そもそも、どうしてあなたの反射が効いてないの?」
一方通行「さァな、つゥか演算したくても背中でオマエと接触してっから演算が狂うンだよ。さすがの俺でも背中に目はねェし」
御坂妹「それに今必要最低限の代理演算しかしてませんしね、とミサカは叩かれた額をさすりながら付け足します」ヒリヒリ
一方通行「ンな恨みがましい目ェすンな。自業自得だろ」
打ち止め「チョップはミサカにだけだと思ってたのに……ってミサカはミサカの権利がミサカだけのものではないことを知って愕然としてみる」
一方通行「そンなにチョップ喰らいてェかコラ」ペチ
御坂妹(あ? 幼女そこ代われ? 知るかよそんなの、優しさが垣間見えた? あーそう、そうなんじゃね? とミサカはお花畑に適当な返事をします)
一方通行「あいつが行きそうな場所っつったら……、わかンねェわ」
御坂妹「何ならちょっとネットワーク経由で聞いてみますか、とミサカは提案を持ちかけます」
打ち止め「ああ、そういえばスネークの役割を担う個体がいたねってミサカはミサカはネットワークで検体番号を検出してみ……あれ? いないよ」
御坂妹「え?」
打ち止め「学園都市にいないことになってる……でも世界のどこにもいないのかな? ってミサカはミサカは訳が分からなくなってきたかも」
一方通行「……オイ、説明しろ」
打ち止め「うん、つまり検体番号17600号の所在が分からないのってミサカはミサカはかいつまんで説明してみるんだけど」
御坂妹「もしかしたら何かの能力者の支配下に置かれているやもしれません、とミサカはさして心配せずに発言します」
一方通行「支配下、だァ?」
打ち止め「ミサカネットワークの干渉を妨げられるほどの能力者はいないと思うけど、もしいたら常識外としか言えないねってミサカはミサカは舌を出してみたり」
御坂妹「まあスネークほどのミサカがそうやすやすと倒されはしないでしょう、とミサカは結論付けます。さて、んじゃここらでアデュー」
一方通行「あァ? オマエ帰ンのかよ」
御坂妹「これ以上一方通行といるとセロリ派がうるさくてかなわん、とミサカは遠い目をします。では」
スタスタスタ
打ち止め「行っちゃった、ってミサカはミサカは10032号の背中を見送ってみる」
一方通行「行っちゃったはイイけどよォ、オマエさっきファミレスで水分すげェ取ったンじゃねェのか」
打ち止め「オレンジジュースとウーロン茶とお冷しか飲んでないよ? ってミサカはミサカはあなたの言葉を否定してみたり」
一方通行「十分飲ンでンだろォがクソガキ!」
打ち止め「うっ、で、でも水分摂取は大切ってミサ……うあ」
一方通行「ンだよ」
打ち止め「トイレに行きたくなりました、ってミサカはミサカは……」
一方通行「」
打ち止め「え、えへっ」
一方通行「……、……」カチリ
打ち止め「能力使用モードに切り替えてどうするの、ってミサカはミサぷぎゃ」
一方通行「黙ってろォ」スッ
ピタリ ドゥルルルルルルルッ
打ち止め「!? な、なんだか急に汗がでてきたんだけどってミサカはミサカはあなたをいぶかしんでみる」
一方通行「……トイレは」
打ち止め「あ、そういえばおさまったかも、ってミサカはミサカの膀胱の我慢強さを高く評価してみる」
一方通行「ハイハイ我慢強い我慢強い。ンじゃ、とっとと三下探すかァ」カチリ
打ち止め「むー、そうやって子ども扱いしないで! 今ミサカの額に手をあてて何をしたのってミサカはミサカはあなたの頭をがしがし!」
一方通行「ハイハイがしがしがしがし」
打ち止め「もおおー! どうしてあなたの髪はがしがししてもウェーブがかっていても格好良く見えるの!? どうしてキマってるの!?
ってミサカはミサカは苛立ちを募らせてみる!」バタバタ
一方通行「オイ、どォでもイイがあンまり背中で暴れンな」
一方通行(尿素をベクトル操作しましたァ、なンて言えねェしなァ)
一方通行(今はまだやり過ごせた、だがこの先半日以上くっついたままだと面倒だ……結標じゃねェが、排泄物はどォすンだよ)
一方通行(その気になりゃ俺とクソガキの間にある『何か』を解析できンだが、そのためには電極を切り替えなきゃならねェ)
一方通行(そして問題は、朝起きて真っ先にガキが背中にいたせいで、吃驚してロクに充電できなかったことだな)
・
・
・
am10:00、とあるホテル
一方通行『仕事は11時、……くあー』モゾモゾ
一方通行『もォ少し寝てもいいか……』ゴロン
フニッ
一方通行『……、……ふに?』ガバッ
一方通行『……背中が重い。しかもなンとなく経験のある重さなンだが』
ペチペチ
打ち止め『ふぇ? んむー、ヨミカワ、まだもうちょっと寝るよー、って、ミサカ、は……くー』
一方通行『……、どォしてこォなった……』
一方通行『ここはどこだ、ホテルだ』
一方通行『オーケェ、なら話は簡単だ。どォしてガキがここにいる』
一方通行『の前に、どォしてガキが俺の背中にいンだよ。どォにかして下ろさねェと』ガシッ ギューグイッ
一方通行『……は?』グイッグイッ
一方通行『離れねェ……つゥより、剥がれねェ……?』ブンブンブンッ
一方通行『てェか、接着されてやがる……?』
打ち止め『すー……くかー……むにゃ』
ピョンッピョンッピョンッ
一方通行『跳ねてみてもまったく落ちねェ』
ヒョイッシュタッ
一方通行『逆立ちしても剥がれねェ』
グワンッ
一方通行『大きく反り返ってみてもまったく離れる気配がねェ』
一方通行『……だからどォしてこォなった』
一方通行『……そォか。夢か』ホッペギュー
一方通行『痛覚はある、と。夢じゃねェわけか』
打ち止め『すー……くー……すぴー』
一方通行『とりあえず、起こすか。起こすしかねェよな』
ユサユサガクガクペチペチ
打ち止め『むー、う? ん……っはー! おはようございます、ってミサカはミサカは元気に朝の挨拶を、……えっ?』
一方通行『よォ。目ェ覚めてンな、じゃあ黄泉川ンとこ行くぞ』
打ち止め『』パチクリ
一方通行『オイ、聞こえてンのか』
打ち止め『えっと、なんでミサカはあなたの背中に乗ってるんだっけってミサカはミサカは慌てて下りようとし、ってなんだか離れられない!』
一方通行『……つまり、オマエの意志でもねェのか』
打ち止め『ミサカの意志? ってミサカはミサカはよくわからずに言葉を繰り返してみる』
一方通行『あァ、とりあえず簡単に状況を説明するなら、くっついてンだよ』
打ち止め『全然わからないよってミサカはミサカはあなたの言葉の少なさに憮然としてみたり』
一方通行『俺だってわかンねェからな。とにかく、オマエが俺の背中にへばりついてて、しかも剥がれねェってこった』
打ち止め『ベクトル操作でもしてるの? ってミサカはミサカはあなたがミサカをおんぶしたかった可能性について考察してみる』
一方通行『ねェな。これは明らかに第三者にやられてンだ』
打ち止め『……くあー』
一方通行『……寝ンのか』
打ち止め『あなたの背中はなんだか安心するのってミサカはミサカはベストポジションを発見して眠気を我慢できなかったり』
一方通行『オマエに今寝られると黄泉川ンとこ行ったとき面倒……あァもォイイか』
打ち止め『んー、と、おやすみなさい、ってミサカは……ふあー……』コテン
一方通行『……寝たな』
ピッポチポチ
プルルルルルルルッ
芳川『はい、もしもし』
一方通行『ンだよ、芳川か』
芳川『なんだとはひどい言い様ね。ところで、キミに言わなければならないことがあるのだけれど』
一方通行『ガキなら、俺ンとこにいる』
芳川『! あら、それならいいわ。愛穂が朝起きて「打ち止めがいないじゃんよー!」と叫んでいたものだから』
一方通行『ガキがそっちから消えたンは何時頃だ?』
芳川『ごめんなさいね、わたしは寝ていたからまったくわからないの。とにかくあの子がキミのもとにいるのなら心配はいらないわね』
一方通行『……それが、そォでもねェンだわ』
芳川『どうかした?』
一方通行『笑うンじゃねェぞ』
芳川『内容次第ね。でもいいわ、笑わない努力はするつもりよ』
一方通行『剥がれねェ』
芳川『えっ』
一方通行『背中にへばりついてるガキが、剥がれねェンだ』
芳川『』
一方通行『ちなみにこの場合の「へばりついてる」は比喩でもなンでもねェ事実、現実なンだが』
芳川『待って。つまり、えーと、うちから消えた最終信号がキミの背中にいて、しかも離れないのよね?』
一方通行『あァ。チョップしよォが体振ろォが飛び跳ねよォが逆立ちしよォが反り返ろォが、微塵も剥がれ落ちねェ』
芳川『……ちょっと、席外すわ』
一方通行『席ってオマ』
電話『~♪~~~♪~~~♪♪~♪~~(※保留音)』
一方通行(あァ、笑ってンな。こりゃ間違いなく抱腹絶倒してやがンな)
電話『♪~~~♪~♪~~~♪~~♪~♪~』
一方通行(笑いすぎだクソニート。いや、俺も自分がこンな状況じゃねェなら笑うかもしれねェが笑いすぎだ)
芳川『あは、ふー、ひぃ……それで?』
一方通行『笑うならせめて笑いがおさまってから電話に出ろォ!』
芳川『じゃあもうちょっと席を外すわね』
一方通行『まだ笑うンかよ……』
芳川『それで、最終信号が剥がれないんだったかしら。どういうことなの?』
一方通行『その原因を突き止めよォとしてンだよ、今』
芳川『わたしにもわからないわ。高位能力者の仕業じゃないかと思うのだけれど』
一方通行『考えてもみろよ。俺の背中にガキくっつけてどォなるってンだ』
芳川『……せいぜい見て笑って楽しむしかないわね』
一方通行『……、……』イラッ
芳川『まあいいわ。データベースでも漁ってそれらしい能力者を探すくらいならしてあげられるし』
一方通行『仮に能力者なら、俺に関わりがあって、なおかつガキのことも知っていて、さらには大能力者以上じゃねェとありえねェ』
芳川『……つまり?』
一方通行『俺に関わりがあり、ガキのことも知っていて、俺の背中にガキをくっつけちまえるよォな能力者なンざいねェっつってンだ』
芳川『困ったわね。どうするの?』
一方通行『イヤ、マジどォすンの?』
芳川『聞き返されてもねえ。わたしは甘いからそのままでいいんじゃないかと思ってしまうわ』
一方通行『オマエに訊いた俺が馬鹿だった。とりあえず俺とガキがどォ足掻いても剥がれねェから、結標あたりに移動させるわ』
芳川『……空間移動が通用すればいいけれど』
一方通行『あン?』
芳川『なんでもないわ……一日たっても現状が変わらないのなら、家に来ること。いい?』
一方通行『言われなくても、最初っからその気だった。ンじゃ』
・
・
・
一方通行「今思うと、芳川は正論を述べてやがる」
打ち止め「ヨシカワがどうしたの? ってミサカはミサカはあなたの言葉尻を捉えてみる」
一方通行「空間移動が通じねェって話だよ」カツカツ
打ち止め「ねえねえミサカ重くない? ってミサカはミサカは一人前の女らしくあなたを気遣ってみたり」
一方通行「別に」カツカツ
打ち止め「ねえねえどこへ行くの? ってミサカはミサカは足取りが若干ふらついているあなたに訊ねてみるんだけど」
一方通行「適当に」カツカツ
打ち止め「ねえねえあっちのほうに――」
一方通行「ねえねえねえねえうっせェ!」
美琴「……うっせえ、ね。……人の妹おんぶしておきながらうっせえ、ね……? 何してくれとんじゃ一方通行ァァァアア!!!!!」
一方通行「」
打ち止め「だから、あっちにお姉様がいるよって言おうとしたのに、ってミサカはミサカはあなたが聞く耳を持たないせいだよって呟いてみる」
一方通行「」
打ち止め「予想外すぎて呆然としてる、ってミサカはミサカはあなたの顔が見えないのでとりあえずお姉様に片手を振ってみたり」
一方通行「……いや、あれはねェわ」
とあるカフェ
美琴「で。説明してもらおうじゃないの、なんでアンタは打ち止めをおんぶしてるわけ!?」バンッ
黒子「お姉様、少々気を静めてくださいな。殿方さんも何か事情がおありかもしれませんの」
一方通行「事情なンてねェよ。ガキが背中にへばりついてる、以上だ」
美琴「まったく説明になってないわよ! ていうか座ってるんだから下ろしなさいよ!」
打ち止め「でも離れられないんだ、ってミサカはミサカは目を伏せてお姉様に告げてみる」
美琴「!!! は、離れられないってアンタら、そっ、そういう……」
黒子「んまあ。情熱的な関係ですのね」
一方通行(あれ? なーンか違うな、勘違いされてンじゃねェかこれ)
美琴「……、……――ない」
一方通行「はァ?」
美琴「認めないっつったのよ! 打ち止めはまだ若いの、アンタに好き勝手されるわけにはいかないわ!」
一方通行「まだ若ェってか、俺も若ェしオマエも若ェだろォがよ……」
黒子「離れられない、というのはお互いに好きすぎて――ですわね?」
一方通行「だから違ェよボケ」
黒子「あら? では、物理的に離れることができない、と。そういうことですの?」
打ち止め「うん! ってミサカはミサカは勢い良く肯定してみたり。さっきもトイレに行きたかったんだけぷびゃ!」
一方通行「ソフトクリームでも食ってろ」
打ち止め「もぐ、へほはほはひほふほへっへひはははひははは」
美琴「物理的に離れられない、ってどういうことよ」
一方通行「原因がわかりゃ苦労はしねェ。俺だってとっとと解析してベクトル操作してェンだよ」
美琴「すればいいじゃない。見てるこっちが居た堪れなくなるのよ、おんぶとか」
一方通行「背中でくっついてっからな、演算に集中できねェし……厄介なンだよ」
美琴「ねえ、打ち止めってどのレベルで離れられないの?」
一方通行「超能力者並みの転移能力を持つ大能力者が飛ばせねェレベルだ」
黒子「あらあらまあまあ、小さいお姉様。口元に白いものがおつきですの」フキフキ
打ち止め「え? ありがとーツインテールのお姉ちゃん、ってミサカはミサカはにっこり微笑んでみる」
美琴「それは……厄介ね」
一方通行「かれこれ数時間は経ってる、少しは慣れた」
美琴「周囲の視線がすごいでしょ」
一方通行「いンや、そォでもねェな」
美琴「?」
一方通行「歩くときはガキに病人を装わせてンだよ」
美琴「……包帯巻いたら?」
一方通行「あァ、それも視野には入れてある」
黒子「小さいお姉様。わたくしにもそのソフトクリームを分けてくださいませんかしら?」
打ち止め「いいよー、はいどうぞってミサカはミサカはツインテールのお姉ちゃんに食べかけを差し出してみたりっ」スッ
黒子「食べかけ、食べかけ食べかけ食べかけ間接間接間接」ペロリ
一方通行「……オリジナル、この変態ツインテなンとかしろ」
美琴「ごめん無理」
美琴「でも、そういうわけわかんないものでも、あいつなら消しちゃうじゃない」
一方通行「あァ、だから探してンだが……今日見かけたか?」
美琴「ぜーんぜん。そういえば変ね、休日にここらへん歩いてたらけっこう会うんだけど」
一方通行「へェー」ニヤニヤ
美琴「なっ、なによ」
一方通行「べェつゥにィー」ニヤニヤ
美琴「う、うるさ」
黒子「ち、小さいお姉様! もーいっかい! もーいっかい!」
打ち止め「えー、それじゃあもう一度だけだよ、ってミサカはミサカはソフトクリームを一舐めしてツインテールのお姉ちゃんに渡してみる」
黒子「か、間接ぺろり……ッ!」ジュル
一方通行「切実になンとかしてくれ」
美琴「ごめん切実に無理」
一方通行「これ以上こォしてたってラチが明かねェ。じゃあな」ガタッ
黒子「あ、お待ちになって」
打ち止め「どうしたの? ってミサカはミサカはツインテールのお姉ちゃんに顔を向けてみたり」
黒子「先ほど包帯がどうとかおっしゃっておられましたので」
一方通行「あ?」
黒子「わたくしこれでも風紀委員ですの。簡易救急箱なら持ち運んでいる日もありますのよ」
美琴「普段は持ち歩いてないじゃない、今日だけでしょーが」
黒子「偶然というヤツですわ。どうぞ、お使い下さいまし」
打ち止め「ふおおー、ありがとうお姉ちゃん! ってミサカはミサカは満面の笑みをみせてみる!」
黒子「そ、そうですわ、このままでは小さいお姉様は包帯を巻けませんの。では僭越ながらハァハァわたくし白井黒子がハァハァ優しくそのおみ足にハァハァ」
一方通行「第三位さーン、この女どっかに連れてってェー」
美琴「ごめん第一位でも無理なものは第三位でも無理。とりあえず黒子はどきなさい、私がさくっと包帯巻いちゃうから」
黒子「ああん……つれないですの」
美琴「それにしても、アンタで手強い相手ってそうそういないわよねー」マキマキ
打ち止め「普段のこの人は一般人だもんってミサカはミサカの助けがなければ最強になれないこの人を可愛く思ってみる!」
一方通行「その、『私がいなきゃだめなんだから』みたいな言い方やめろクソガキ」
黒子「本当に仲良しさんですこと。ところで、小さいお姉様をわたくしの力で空間移動できませんの?」ピト
一方通行「試すンは構わねェが、座標移動もできなかったからな。無理じゃねェの」
打ち止め「空間移動っ空間移動っ♪ ってミサカはミサカは初体験に胸を躍らせてみる!」
黒子「んむ、むむむむむ……」
美琴「まきまき終了っと。黒子、アンタ顔青くなってるわよ」
黒子「っぷはあ! で、できませんの……なんでしょう、この感覚。得体の知れない何かに邪魔されているような心地でしたの」
一方通行「だァから言ったじゃねェか」
打ち止め「ツインテールのお姉ちゃんも失敗かあ、ってミサカはミサカは本格的にヒーローさんに頼らざるを得ないことを確信してみたり」
黒子「包帯を巻けば、怪我をしている子供を背負うお兄さんの図が完成しますわね。お見事ですの、お姉様」
美琴「たいしたことじゃないわよ。じゃ、私もあいつ見かけたら教えるから」
一方通行「あァ、頼ンだ」ガタッ
打ち止め「じゃあばいばーい! ってミサカはミサカはお姉様とツインテールのお姉ちゃんに手を振りつつカフェを後にしてみたりー!」
カツカツカツカラン
黒子「……行ってしまいましたの」
美琴「ま、変なことに巻き込まれてるみたいだけど、一方通行がいるならどうにかなるでしょ」
黒子「ええ、それはもちろん第一位ですし危惧することはありませんけれど、妙な感覚でしたわ」
美琴「さっき能力が効いてなかったわよねー、あいつみたいなもんなのかしら」
黒子「いいえ。あれは間違いなく能力者の仕業ですの! ですが、なんと申しましょうか……次元がまるで違う感覚、でしたの」
美琴「次元が違う、ねえ……」チウー
一方通行「どーォすっかな……オイ、行きてェとこあっかよ」
打ち止め「あなたと行けるならどこへでも! ってミサカはミサカはドラマで覚えた言葉をあなたに適用してみる!」
一方通行「具体的に言え」ビシッ
打ち止め「あうっ! うう、この体勢にもすっかり慣れたあなたは鏡がなくてもミサカをチョップできるようになったのね、ってミサカはミサカは涙ぐんでみたり」
一方通行「行きてェとこは?」
打ち止め「……遊園地、ってミサカはミサカはぼそっと」
一方通行「ハイ却下ァ」
打ち止め「わかってたもん! さすがにミサカそこまで馬鹿じゃないもん! ってミサカはミサカはあなたの頭をぽかぽか殴って抗議してみる!」
一方通行「アテになンねェな、ちくしょ……痛ェ。殴りすぎだクソガキ」カチリ
打ち止め「はーっはっはっは! 今のあなたはミサカのサンドバックなんだからってミサカはミサいたっ! ひどい、反射使うなんてひどいよ!」
一方通行「ひどくねェ、正当防衛――」
滝壺「……はまづら。見て、おんぶ」
浜面「え? ってあれ、一方通行じゃねえか!」
一方通行「なンでこォ厄介な連中とばっか遭遇すンだよオイ」
滝壺「どうしておんぶしてるの?」
浜面「休日のお父さんみたいだな」
一方通行「黙れチンピラ」
打ち止め「あ、お友達にそんなこと言っちゃだめってミサカはミサカはあなたの髪をわしゃわしゃ!」ワシャワシャ
一方通行「……、浜面くン」
浜面「おう?」
一方通行「三下知らね?」
浜面「いんや。見かけてねえな」
一方通行「そっかァ。ンじゃな、永遠に」
滝壺「髪、そのままでいいの?」
一方通行「ほっときゃ直る」
浜面(余計な言葉を使わないようにしてるのか)
打ち止め「あれ、もうさよならしちゃうの? ってミサカはミサカは名残惜しく思ってみるんだけど」
一方通行「うっせェ黙れ。さよォなら、おふたりさン」カツカツカツカツ
滝壺「……すごく、無理してたね。隙在らば罵ってやろうって目をしてた」
浜面「最後までおんぶの真相が明らかにならなかったな……なんであんなことしてんだ? 怪我してたのか?」
一方通行(出来るだけ知人との接触は避けてェとこだな、いくら不可抗力とはいえ)
打ち止め「あー、ねえねえあっち! あっちに人がいるよってミサカはミサカはぐいぐいあなたの髪を引っ張ってみたり!」
一方通行「ンだよいちいち引っ張ン、……」
麦野「あァン? いいんだよ細けえことはよぉ……こっちは今クソったれのクソ野郎探してて忙しいんだっつーの!」
黄泉川「そうキレるなよ。何にせよお前がやったことは器物破損じゃん」
麦野「うっせーぞクソババァ。いいからさっさとそこ退けそしてあのクソったれをブチ殺させろォ!」
黄泉川「はいはい落ち着け。とりあえずさくっと連行しちゃうじゃんよー」
麦野「完全武装してようがどうだろうが、『原子崩し』に敵うと思ってんのかよ! お望みならブチ抜いてやろうかァッ!?」
打ち止め「美人さんが怒ると迫力があるなあってミサカはミサカはお仕事中のヨミカワに手を振りたい衝動をぐっと堪えてみる」
一方通行「あの女ァ……えーっと、あー……あれ? 会ったことねェな俺」
一方通行「よし、立ち去ンぞ」
打ち止め「了解ーってミサカはミサカは最後にもう一度騒ぎの中心を見て、あ、目が合った」
一方通行「!?」
麦野「……! ……あっは、いーいもの見つけた」
黄泉川「? どうした、急に落ち着いたじゃんか」
麦野「ああ、なんだっけ? 器物破損? これ警備員のデモンストレーションだと思ってくれればいいわよ、こういう騒動が起こった場合の対処法の特訓ってことで」
黄泉川「え?」
麦野「だからー、今回はやりすぎちゃったけどさあ。めんどくさいからこういうのは上に言ってくれるかにゃーん? んじゃ」スタスタ
黄泉川「……超能力者ってのはどいつもこいつも破天荒で困るじゃん」
一方通行(なぜか嫌な予感がする)
打ち止め「美人なお姉さんがこっちに来るよ? ってミサカはミサカはあなたにお知らせしてみるんだけど」
麦野「美人? あら、いいこと言ってくれるわね、事実だけど」
一方通行「」
一方通行「……人違いです」
麦野「まだ何も言ってねえよ第一位」
一方通行「僕ら急いでますンで、ンじゃ失礼しま」
麦野「まあ、待・ち・な?」ギロ
一方通行「……ンだよ畜生俺ァとっとと三下見つけてェンだっつのクソったれェェェェエエエ!!!!!」
麦野「三下? はまあよくわかんないしどうでもいいんだけど、クソ野郎のクソったれのクソ第二位見なかった?」
打ち止め「会話のほとんどがクソだらけ、ってミサカはミサカは狂気に震えてみる」
一方通行「第二位って、見なかったも何も俺がこの手でブチのめしてンだが」
麦野「あれ、聞いてない? あいつ最近まで冷蔵庫レベルのクソでかい機械でどうにか生き永らえてたんだけど、つい昨日復活したのよ」
一方通行「意味がわからねェ」
麦野「っつか、自己紹介がまだだったね。第四位の原子崩し、麦野沈利。まあいろいろあって方目と片腕はないんだけど」
一方通行「いやべつに知りたくもねェし……」
打ち止め「こら、ってミサカはミサカは二度目のわしゃわしゃを決行してみたり!」ワシャワシャ
一方通行「ンで? あのクソメルヘンが復活して、なンでオマエが追っかけてンだよ」
麦野「借りがあんの、借りが。きっちり返さないと気がすまない借りがね」
一方通行「ハイがンばって、そンじゃ」
麦野「待てコラ」ガッシ
打ち止め「ふえっ!? ってミサカはミサカはいきなり脇腹を掴まれて動揺してみる……!」
一方通行「なっ、オマ、剥がれねェンだからそっち引っ張ンな!」
麦野「剥がれないって何よ。っつかおんぶって何よ。第一位のくせに自分だけは幼女と楽しくお出かけでちゅかあ?」
一方通行「色々と語弊があンだが、とりあえず楽しくお出かけなンてモンじゃねェことはたしかだ」
打ち止め「えっ、楽しくないの? ってミサカはミサカが楽しいからてっきりあなたも楽しいんだろうなって思ってたん、だけど……」
一方通行「ぐ、……」
麦野「あれ、幼女イジメはよくないでちゅよ一方通行たん? あれー?」
一方通行「だァもォ黙れェェェエエエ!!!!」
麦野「でまあ、探してるのよ。見なかった?」
一方通行「だから見てねェしそもそも復活とか訳わかンねェし」
麦野「そーお? でもさあ、あのクソ野郎なら真っ先にアンタのとこ行くんじゃないかと思ってたんだけど」
一方通行「はァア?」
麦野「なんだったかなー……一時期治療受けてるときに会話したことあってさあ、私はまあ原型とどめてんだけど、あっちはもう脳味噌状態で」
打ち止め「想像したらなかなか怖いものがあるねってミサカはミサカは学園都市の恐ろしさに肝を冷やしてみたり」
麦野「そんときに言ってたわけ。『第一位のクソもやしにはぜってえ後悔させてやる』とかなんとか」
一方通行「クソもやし……クソメルヘンのくせに」イラッ
麦野「だからね、復活したら真っ先にアンタんとこ行くんじゃないかと思ってたの。オーケー?」
一方通行「オーケーオーケェ。……あン? 待て、復活したのはいつだ?」
麦野「昨日よ」
打ち止め「? いきなり考え込んでどうしたのってミサカはミサカはあなたの顔が見えないのを残念がってみる」
――見えない壁に阻まれている感じ――
――夜のうちに上位個体は何者かに攫われ一方通行にくっつけられたことが判明しました――
――十万三千冊の魔道書と照らし合わせてみても、今のふたりがどうしてくっついているのかはわからないの――
――あくせられーたには及ばないにしろ、相当な手練なんだよ――
――ミサカネットワークの干渉を妨げられるほどの能力者はいないと思うけど、もしいたら常識外としか言えないね――
――得体の知れない何かに邪魔されているような心地――
――俺に関わりがあり、ガキのことも知っていて、俺の背中にガキをくっつけちまえるよォな能力者なンざ……
一方通行「……ぎゃは。いるじゃねェか、ただひとり――常識が通用しねェやつがよォ!」
麦野「お、スイッチ入っちゃったか?」
一方通行「がっつりなァ。そォと決まれば、クソメルヘン探しと行こォじゃねェか」
打ち止め「ヒーローさんは探さないの、ってミサカはミサカは今までの行動を振り返ってみたり」
麦野「そのヒーローってのが誰かはわからないんだけど、垣根が今朝普通の高校生と話してんのは見たわよ」
一方通行「普通の、ね……頭は?」
麦野「ウニみたいに尖ってたかな。それ以外は普通で、あんまり頭良さそうな感じはなかったと思うわね」
一方通行「ビンゴ、あンな奇怪な頭してンなァあの三下くれェだ。つゥか第四位、オマエなンであそこで暴れてやがった?」
麦野「ついさっきまであの場にクソ野郎もいたからに決まってるでしょ」
一方通行「」
打ち止め「」
麦野「なんか、今朝見たときは持ってなかった棺桶みたいなの担いでたのよね。人ひとり入れそうな」
一方通行「オマエよォ、ついさっきまであの場にいた第二位を俺が見るわけねェだろ……」
麦野「……それもそっか」ショボン
打ち止め「げ、元気出して麦野のお姉ちゃん! ってミサカはミサカはこの人の背中から応援してみる!」
一方通行(イヤ、まァこいつが元気出したら出したで面倒になるンだと思うンだが)
麦野「! ありがと、第三位は生意気だったけどアンタは可愛いよ」ナデナデ
打ち止め「お姉様を知ってるの? ってミサカはミサカは麦野のお姉ちゃんの人脈にびっくりしてみたり」
一方通行(人脈じゃねェと思う。多分暗部とオリジナルがぶつかったとかそンなンだと思う)
麦野「ま、ちょっとした知り合いよ。とりあえずアンタらはあのクソ垣根を見てないのよね」
一方通行「あァ見てねェ。今から探すがな」
麦野「あ、そ。なら、私は私で探すわ。そんじゃーね」ヒラヒラ
コツコツコツ
打ち止め「怖いけど美人さんだったね、ってミサカはミサカはなでられた感触がまだ残ってたりー」
一方通行「解決の糸口にはなったなァ。しかし、垣根ね……」
打ち止め「カキネさんって人があなたとミサカをくっつけちゃったんだよね、ってミサカはミサカは確認を取ってみる」
一方通行「こンなタチ悪りィこと、あいつしかしねェよ」
打ち止め「でも、カキネさんは解除できるのかなってミサカはミサカはひとつの疑問を浮かばせてみる」
一方通行「!」
打ち止め「多分、カキネさんを探すよりもヒーローさんを探したほうが確実だよってミサカはミサカはなんとなく空を仰い、……え?」
一方通行「あン? どォした」
打ち止め「浮かんでる、ってミサカはミサカは空に浮いている人影を指差してみる」
一方通行「……、……?」
垣根「うお、やっべ。もう見つかった」(上空)
棺桶「……、……」ガタゴト
一方通行「」
打ち止め「白い翼の人が棺桶に座っているようにも見えるんだけど、ってミサカはミサカはぶわっ!」
一方通行「あンのクソメルヘン……道理で第四位が探しても見つからねェわけだよ、あはぎゃはッ!!!!」カチリ
打ち止め「うわっ、待って待ってミサカのこともちょっと考えてほしいなってミサカはミサカはハイテンションなあなたに安全運転を求めてみたりいいいい!」
一方通行「案ずることなかれ、ってなァ! オマエが背中にいンのくれェもォ慣れたンだよォ!」バシュンッ
麦野「あ、あれクソ垣根と第一位じゃない。上空かよ……」
上空
一方通行「かァァァきィねくゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!!!」
垣根「よう、って軽ーく挨拶してもダメっぽいな。どうだ? 背中に幼女乗っけた気分はよぉ!」
棺桶「……、……」ガタゴト
一方通行「おかげさまですっかり慣れちまったよ、クソメルヘンゾンビ」
垣根「おいおい、俺はたしかにメルヘン要素を持ったイケメンだが、ゾンビじゃねえ」
棺桶「……、……」ガタゴト
一方通行「イヤイヤ、死ンだにも関わらず復活したンだろォ? ゾンビ以外にどォ呼べっての」
垣根「十歩譲ってイケメンゾンビならまあ、許容範囲だな」キリッ
一方通行「……ほとンど譲ってねェぞそれ」
棺桶「……、……」ガタゴト
打ち止め(さっきからガタゴトしてる棺桶、一体なんなんだろう、ってミサカはミサカはじいっと観察してみるんだけど)
棺桶「……、……」ガタガタガタガタミシィ
一方通行「まァイイ。早くこれどォにかしろ」
垣根「えっなんのことぉ?」
一方通行「クソガキと俺を離せっつってンだよ!」
垣根「ええっとー、ていとく生まれたてだからわかんなぁい☆」
一方通行「……、……」
垣根「……、……」
一方通行「……、……」
垣根「……悪かった」
一方通行「……あァ」
垣根「でさ、その、テメェと最終信号の間に存在する未元物質のことなんだが」
一方通行「……ンだよ」
垣根「今さりげなく回析してみたら、どうも最終信号の微弱な電気のせいで形質が変わってるみたいでな」
一方通行「……まさか」
垣根「いや、ごめん。遊び心のつもりがまさかの大惨事、いやほんっとー悪いな!」ニヤニヤ
一方通行「……、……」イラッ
打ち止め(中に誰かいるのかな、ってミサカはミサカはさりげなく生体反応を確認し――、!)
棺桶「……、……」ガタガタガタメキメキメシッ
一方通行「ところでよォ、オマエ、三下――いや、『幻想殺し』を知らねェか?」
垣根「知ってるけど、会ったことはねェな」
一方通行「ダウト」
垣根「はぁあ?」
棺桶「……、……」ギシギシガタガタッゴトンゴト
一方通行「イイことを教えてやンぜ? 第四位がオマエを探し回ってる、ありゃブチ殺し確定ってトコだ」
垣根「あー麦野ね。あいつも大概だよ、俺に敵うわけねえってのに」
一方通行「その麦野が教えてくれてさァ……その棺桶」
垣根「!」サッ
一方通行「初めはオマエの内臓でも入ってンのかと思ったが、そォいや第四位は『今朝見たときは持ってなかった棺桶』っつってたンだわ」
棺桶「……、……」ゴトゴトギシギシメキメキメキメキ
一方通行「ンじゃオマエにとっては必要ねェモンなわけだ。少なくともその棺桶は、オマエの体の一部じゃねェ」
垣根「……へーえ。だったら、どうすんの」
棺桶「……、……」ゴトメキメキメキピシッバキッ
一方通行「で、まァまた麦野の言葉を借りるわけだがよ。今朝、オマエは上条と話した。間違いねェな?」
垣根「だからー、会ったことねえって……しらばっくれても通らねえみてえだな。会ったし話した、それで?」
棺桶「……、……」パキパキパキガンッゴトガタガタ
一方通行「さァて、問題です。『幻想殺し』こと上条当麻は、一体どこにいるンでしょォか!」ズガンッ
打ち止め「だっ、だめだよその棺桶を蹴飛ばしたら、ってミサカはミサカは――」
垣根「! しまっ――」
ベコッバキィ、キィー
棺桶「っててててて、……ようやく開いた、開きましたよ。まったくとんだ災難だぞちくしょ、ってうおわあああああああああッ!!!!」
ヒュルルルルルルルルルル
垣根「そりゃ上空でいきなり棺桶開けたら落ちるわ!」
一方通行「その発想はなかった」
打ち止め「そこまで気を回しているんだって信じてたのに! ってミサカはミサカはヒーローさんに手を振ってみる!」
上条「振らないで! その手を上条さんに伸ばしてくださいませんかっ!」
棺桶「……、……」ガタ
棺桶「……落下していく感覚ですね、とミサカは焦らず騒がず底からそっと抜け出し裏に張り付きます」
17600「おお、落ちていく一方通行と上位個体、あとは第二位に上条当麻が見えます、とミサカは自分が一番安全であることを再確認します」
17600「え? どうしてお前はそこにいるのか? そりゃもちろんスネークですし、とミサカはここで盛大にネタばらし」
17600「これにはみんな苦笑い、ああそうそう。ミサカがネットワーク上で存在しないことになっていたのは、上条当麻の近くにいたからにほかなりません」
17600「まあ近くっつーか棺桶の板の隠し裏にいたわけですが、とミサカは棺桶をチョイスした垣根帝督に心の中でサムズアップしてみます」
17600「上位個体も気づいていたようですし、ネタばらしもすんだし、とミサカはさっさとパラシュートで帰路に着くことを選択します」
17600「あとミサカも>>92みたいなこと考えたんですけど、上位個体に言ったらそういうのはつまんないでしょって言われました。末恐ろしい幼女です」
17600「ではみなさん、アデュー」パシュッ
pm04:30、とあるファーストフード店
打ち止め「うわー、またサンシャイニーが出なかったよ、ってミサカはミサカはハピネスセットにやきもきしてみたり!」
一方通行「オマケメインに考えてどォすンだよ、釣られてンじゃねェか」
上条「子供って案外そんなもんじゃねえ? このハピネスセットの趣旨はおもちゃで釣ることだろ」
垣根「おっ。俺サンシャイニーだったわ、最終信号にやるよ」スッ
打ち止め「わーいありがとーってミサカはミサ」
一方通行「いらねェ」ベシッ
打ち止め「!?」
一方通行「不審者から怪しいモン貰うなって黄泉川に習っただろォが」
垣根「おい待てコラ」
上条「いやー、体の節々が痛いのなんのって」
垣根「……、だからごめんって言ってんじゃねえか」
打ち止め「サンシャイニーかわいいんだけどなあ、ってミサカはミサカはカキネさんはともかくサンシャイニーに非はないことを主張してみる」
一方通行「チッ。好きにしろ」
上条「そもそも、俺は今回なんで棺桶に閉じ込められてたんだ?」
垣根「だって、お前『幻想殺し』じゃん。お前の右手であっさり未元物質を無効化されたらつまんねーなって思って」
一方通行「……なンでオマエ生きてンの?」
垣根「科学ってすげー、この一言に尽きる」
一方通行「なンでオマエこンな馬鹿げた復讐してンの?」
垣根「俺はテメェと俺の役割を悟って死んだことになってるからな。ほら、一度悟っちゃったし派手に殺し合いすんのもなんかなー、と」
打ち止め「よくわかんないけど、カキネさんは平和主義者なの? ってミサカはミサカは首を傾げつつサンシャイニーをいそいそと光らせてみる」
一方通行「それはねェ」
上条「あ、ポテトおごってくれ。そしたらこの体の痛みとかも忘れてやるから」
垣根「仕方ねえな。好きなだけ食えよ」
一方通行「チキンおごれよ。ケンタのフライドチキンじゃねェと許さねェぞ」
垣根「お前におごる筋合いはねえな、だって復讐対象だもん」シレッ
打ち止め「そういえば、カキネさんがミサカをこの人にくっつけたってことは、寝込みを襲ったってことだよねってミサカはミサカはもぐもぐ」
一方通行「……、……へェ?」
垣根「!? いや、結果的にはそうなるかもしれねえが俺はべつにロリコンじゃねえしどっちかっていうと年上好きだし攫ったときもやましい気持ちは微塵もなくて」
一方通行「クソガキが寝てるとこを、攫ったンだったよなァ」
垣根「いや、まあそうなるんだけどだからべつに殺してやろうとかはもう思ってなくてな、ほんとちょっと悪戯心っていうか見て笑っちゃえっていうか」
一方通行「……、……」
――せいぜい見て笑って楽しむしかないわね――
一方通行「ニートのくせに、鋭い目をお持ちで、ってかァ?」
垣根「いやまあニートだけどでもそのうちまだ俺暗部になるかもしんねーしめんどくせーからやんねーけど俺ニートって言われるとちょっと違うっていうか」
上条「多分一方通行はお前に言ってるわけじゃないと思うけど、とりあえずナゲットもらうぞ」
pm05:00
上条「やばっ、早く帰らねーとインデックスが餓死しちまう!」
一方通行「あンだけ食えば餓死はねェンじゃねェか……?」
上条「もしかして、またご馳走になったのか、あいつ」
打ち止め「死にそうな顔で一歩間違うと狂人レベルのシスターさんがウィンドウにへばりついてたの、ってミサカはミサカは数時間前を思い起こしてみたり」
上条「リアルに想像できた。申し訳ない、この通りだ」ペコッ
一方通行「イヤ、べつに構わねェよ。オマエの手のおかげでクソったれな未元物質もどォにかできたし」
垣根「クソったれとか言うな。排泄物よりは崇高だ」キリッ
上条「まあまあ、あんま喧嘩すんなよ。学園都市のツートップじゃねえか」ポン
一方通行「この死にぞこないと一緒にすンな」
打ち止め「その言い方はかわいそうだよってミサカはミサカはあなたを窘めてみる!」
垣根「そーだそーだかわいそーだ」
一方通行「……ンのクソメルヘン……」イライラ
上条「よくわかんねーけど喧嘩はダメ、絶対! んじゃなー!」
バタバタバタ
一方通行「さァーて、と」コキコキカチリ
垣根「……おい、なにしてる? なんで肩回してんの? なんで電極スイッチ入れたの? 俺ら和解したんじゃねえの?」アトズサリ
一方通行「和解、だァ? ンな言葉、俺の辞書にはねェな」コツコツコツ
垣根「あー待って。ちょい待ち、悪かった。数時間くっついたままってめんどくさかったんだろうなあとかは! でもな!」ジリジリ
一方通行「でも、なンですかァ?」
垣根「見てて楽しかった」
一方通行「オマエの気持ちはよォーっくわかった。とりあえず飛ばしゃ麦野も気づくだ、ろォッ!」
ドガッ
バヒューン
キラッ
打ち止め「すごいねすごいね、今のあなたはまるでヒーローみたいなパンチだったねってミサカはミサカはさりげなく加減していたあなたを褒めてみたり!」
一方通行「加減はしたが、そォいうのは言わねェのが華ってモンだろォが。オラ、帰ンぞ」
打ち止め「はーい、ってミサカはミサカはそのうち落ちてくるであろうカキネさんの安否をちょっと心配しつつも、あなたの手に自分の手をからませてみるー」
垣根「頭すっげえ揺れるわ……しかもこのままだと落ちる」
垣根「加減したとかしてないとか以前に、満更でもねえくせして粋がってんじゃねえよ、クソもやし」
pm06:50、ファミリーサイド
黄泉川「あっはっは! なにそれなにそれ、すっげー見たかったじゃんよー」
打ち止め「でも、ミサカ達はヨミカワを見たんだよね、ってミサカはミサカはあなたに相槌を求めてみたりっ」
一方通行「見たっつゥかは偶然視界に入ってきたンだがな」
芳川「ああ、それで結局誰の仕業だったのかしら。大方第二位の未元物質じゃないかと思っていたのだけれど」
一方通行「ゴメイトウ。考えてみりゃ、最初っからあいつ以外考えられねェイベントだったンだよなァ」
黄泉川「誰がやったことだろうが、楽しかったならいいじゃん。な、打ち止め」
打ち止め「うんっ! 普段はあなたと一緒にいられないからとっても楽しかった、ってミサカはミサカは笑顔で黄泉川に答えてみる!」
一方通行「……くっだらねェ。はしゃいでンじゃねェぞ、クソガキ」
芳川「あら。キミははしゃいでいなかったの?」
一方通行「誰がはしゃぐかクソったれ。もォ帰る」
黄泉川「まーまー待ちなって。今晩はうちで食べていくじゃん」
一方通行「……メニューは」
黄泉川「煮込みハンバーグじゃん」
一方通行「食って帰る」
打ち止め「あなたは肉ならなんだっていいのね、ってミサカはミサカはハンバーグに釣られたあなたの子供っぽいところも大好きなんだけど」
一方通行「ハイハイ肉肉」
芳川「聞く耳持たずってところね。愛穂、わたしのハンバーグは大きめで頼むわ」
一方通行「オマエちったァ動けよ。あとハンバーグ一番でけェのは俺のモンな」
黄泉川「喧嘩はやめなさいじゃんよー。みんな等しく同じサイズだからな」
芳川「えー」
一方通行「えェー」
打ち止め「えええー」
黄泉川「なにお前ら……その連係プレイは何なんだよ」
芳川「仕方ないわね。じゃあさっさと準備して、一方通行」
一方通行「だから働けよクソニート。オイガキ、オマエ箸準備しとけ」ガタッ
打ち止め「おっけーってミサカはミサカは全員分の箸を丁寧にテーブルに置いていきまーすっ」
黄泉川「桔梗、なに偉そうにテレビ観てるじゃん」プツン
芳川「あっ、今いいとこなのに!」
翌日、とあるセレクトショップ
一方通行(このブーツ、悪くねェな……けど安物臭が半端ねェ。この無駄なツヤを消せば……)
土御門「あーくせーられーえた!」バンッ
一方通行「!?」ビクッ
土御門「よう。剥がれたみたいでなによりだにゃー」
一方通行(ブーツに熱中しすぎて気づかなかった、だァ……?)
土御門「今後の参考と言っちゃなんだが、誰の仕業だったか、そもそもの経緯を詳しく教えてもらいたいものだな」
一方通行「……あァ、オマエにわかりやすく教えてやンよ」
土御門「?」
一方通行「『ひょンなコトから一方通行はクソガキを背負いましたがひょンなコトから犯人を特定しひょンなコトから三下に会いひょンなコトから』」
土御門「あーもういい、もういいぜよ」
一方通行「ンじゃ、訊くな」
土御門「今回お前に話しかけたのはこれだけじゃない。まだ知らないとは思うが――第二位が蘇生した」
一方通行「……、……ぶはっ」
土御門「何がおかしい?」
一方通行「いンやァ? そンでその蘇生した第二位がどォしたよ」
土御門「研究所から逃げ出したらしい。羽ばたいて」
一方通行「……、……ぎゃはっ」
土御門「ともかく、そういうことだ。気をつけるんだな」
一方通行「わざわざご忠告どォも。いらねェ忠告だがな」
コツコツコツ
土御門「やれやれ、相変わらず愛想のないやつだにゃー。しかし、このブーツがお気に召したのかね」ピラッ
土御門「ってこれ、クロムハーツの……60万……えっ、6万じゃな……60万だ……」
土御門「これだから超能力者は!」
一方通行(ブーツと言えば、あのガキもそろそろ秋物買わなきゃならねェンじゃねェの。サンダルだったおかげで足がぶつかっても痛くなかったけどよォ)
オチなんてないけどおしまい!
おまけという名の蛇足
本当は。彼の宿泊しているホテルに運ばれる途中で目覚めていたのだ。
ただ、そのことに気づいた垣根帝督がぎくりと身を震わせたとき、打ち止めはあえて笑顔で彼に頼み込んだ。
どうして自分を攫ったのか、理由を問い質した上で。
だいたい、あの人はいつだってミサカを安全な場所に置きたがるんだから――とは打ち止めの弁である。
命を救ってくれた最強の少年は、打ち止めの命と引き換えに演算能力を失った。
彼がなぜ自分を救ったのか。
おそらくたったひとつの言葉では言い表せなくて、複数の理由や感情が絡み合っているのだろうと打ち止めは思う。
彼女としても、一方通行という人間に対して抱いている感情はとてもではないがそう易々と他人に理解されるものではないし、されたいとも思わない。
たとえば、御坂美琴。
彼女は初め、受け入れてはくれなかった。妹達にとっての「仇」である一方通行の傍で、打ち止めが笑って過ごすこと。
それはとても矛盾していて、見過ごせるものではなかったのだろう。
初めて打ち止めがオリジナルである美琴に会ったとき、隣には一方通行がいた。無愛想で目つきの悪い、白い少年が。
打ち止めの知る限りで、一方通行が美琴と直接的な接触をしたことはない。
おそらく、彼なりに気遣っているのだ。
ひとと関わることの苦手な打ち止めの「あの人」は、自分の傍に誰かがいて傷つくくらいなら、その人物を先に傷つけて遠ざけて二度と傷つかないように守り通す。
そんな、無器用な守り方しか知らない少年なのだから。
――んじゃさっさとくっつけちまうけど、俺のことは喋らないでくれよ? 小さなお嬢さん。
垣根は物分かり良く頷いて、打ち止めの願いを聞き入れた。
学園都市第二位の実力は確かなもので、彼は計画通り打ち止めを一方通行の背中に負ぶわせ、そのまま接着させた。
打ち止めは未元物質がどんな能力なのか詳しくは知らない。
同時に、一方通行と垣根帝督の間にあった――ともすれば垣根の一方的な確執も全貌は把握できていなかった。
けれど、お嬢さんとあのもやしをちょっとくっつけて遊びたくなってな、と笑う垣根の顔は、すっきりとしていたから。
未練だとか、恨みだとか、そういった類の感情はその瞳に映ってなどいなかったし、どちらかといえば。
(いたずらっ子みたいな笑顔だったな、ってミサカはミサカはカキネの笑顔を思い返してみる)
あれが本来の彼であるとすれば、きっと一方通行のいい友人になれただろうに。
一方通行に言ったら間違いなくチョップを喰らうであろうことを考えて、打ち止めはくすりと笑みをもらす。
細い細いと思っていた彼の体は、それでも打ち止めよりは大きかった。
未元物質によって接着されている以上、一方通行が打ち止めの体に腕を回す必要はどこにもない、けれど彼はしっかり打ち止めを支え続けていた。
そのことがひたすらに嬉しくて目の前の薄い背中にぎゅうとしがみついた彼女の思いなど、一方通行は知らないだろう。
それで、いい。知ってもらおうとは思わないから。
打ち止めは、数時間一方通行の背中に乗っていて、楽しかった。本当に楽しかったのだ。
なぜなら彼女は誰がふたりをくっつけたのかちゃんと知っていて、頃合を見計らって空に浮いている垣根を見つければいいとわかっていたからである。
「オイ、まだ寝ねェのかよ」
打ち止めの隣でソファに座っていた一方通行が、時計を見ながら呟く。短針は12を指している。
子供は寝る時間だと言わんばかりの表情をしていた一方通行はまったく寝る気配がない。
もしかすれば、打ち止めが寝入った後にこっそり帰る心積もりかもしれない。
いつもそうだ。打ち止めが会いたい会いたいとせがむから仕方なく、といった体で黄泉川のマンションに訪れ、しばらくぐったりとソファに寝そべってから二言三言、会話する。
気分がよければそのまま夕食をご馳走になっていくし、仕事があるだとか言ってそのまま帰ってしまうときもある。
一方通行のライフスタイルは杳として知れない。
聞いてはいけないのだと、打ち止めもなんとなく察している。
「んーと、あなたが寝るならミサカも寝ようかな、ってミサカはミサカは深夜番組を楽しめるほど大人な年齢ではないことを告白してみたり」
「うっせェ、寝ろ」
苛立ちを隠すことなく前面に押し出す一方通行の目を見て、打ち止めは再び密やかに笑う。
普段と同じように振る舞ってはいるものの、今日のおんぶ事件はそれなりに堪えたらしい。
いつもなら夜は彼の活動時間なのだろうが、今日の彼はとても眠そうだ。疲れているようにもみえる。
「じゃああなたは寝なくてもいいからミサカに子守唄を歌って! ってミサカはミサカはそしたらちゃんと眠るから!」
「……クソガキ」
べし、と鮮やかなチョップが打ち止めの額にヒットする。
どうせ、歌ってくれるわけがないと思っていた打ち止めは、予想通りの反応に苦笑して立ち上がり――あれ、と首をかしげた。
寝室に行こうとした彼女よりも先に、一方通行が立ち上がったからだ。
かつん。彼のつく杖の音が響く。
「あら、キミも寝るの?」
テレビを観ていた芳川が顔を向けた。
言葉を発するでもなく、ただ首を振って否定した一方通行が、打ち止めの寝室として使用している部屋に向かって歩いていく。
え、え、とわけが分からないながらも打ち止めは彼についていった。
彼は、照れ屋だ。そしておそらく、言わなくてもわかるだろう、と妙なところで高を括っている。
(それは、信頼されてるってことでいいのかなあ、ってミサカはミサカはあなたの後ろを歩きながら考えてみるけど)
一方通行は打ち止めのベッド前まで歩くなり、どかっとベッドの端っこに座った。
そして、不思議そうに自分を見つめる少女を不機嫌そうに手招きする。
まだわかりきっていない打ち止めが、ちょこんと一方通行の隣に腰掛けた。
直後、バカかオマエ、と一方通行からもう一度チョップを喰らって、打ち止めは思わず一方通行を見た。
何か、言い返そうと思ったのだ。
それなのに。
一方通行は、自分でも向いていないとわかっているのだろうか。
顔を片手で覆い、打ち止めとは反対のほうを向いて、小さな声で「イイから寝ろ」と呟いている。
その様子が年相応で、普段の大人びていてどこか世間を舐めきったような一方通行はどこにもいなかった。
「子守唄は? ってミサカはミサカはこっちに顔を向けてくれないあなたに訊ねてみる」
「……心配しなくても、オマエが寝るまではここにいてやる。だから寝ろ」
ばふん、と乱暴に布団をかけられて、打ち止めは慌ててベッドにもぐりこむ。
いると、言ってくれた。めったに「そんな言葉」を口にしない彼が、ぶっきらぼうに、でもたしかに、約束してくれた。
一方通行は、守れない約束はしない。打ち止めが一番知っている。
できない、守れないと思うことは、最初から約束しない。その代わりに、守ることのできる約束は、ぜったいに破らないのだ。
「えへへー、ってミサカはミサカはあなたがすぐ傍にいる幸せに浸りつ、つ、……眠って、み、……」
ぽんぽんと布団越しにあやされたような気がした。
慣れていない、どこか不規則なリズムで、自分が眠りにつくのを後押しされた気がした。
打ち止めはゆっくりとまどろみ、夢の世界へと沈んでいく。
おやすみ――もしかしたら、そんな言葉も言ってくれたのかもしれないけれど。
翌朝、打ち止めがごしごしと目を擦る頃には、ベッドの上の彼のぬくもりは消えうせていて、昨日の出来事はまるで嘘だったかのように。
普段と変わらない、一方通行のいない一日が始まる。
けれど、聡い少女はわかっている。
「あなたはずっとここにいてくれたんだね、ってミサカはミサカは乱れていない布団を見て微笑んでみたり」
寝相のあまりよくない打ち止めは普段布団をベッドから落としてしまっているのに、今朝は布団をきちんとかぶっていた。
おそらく長い間、一方通行は傍にいた。自分がしっかり眠るのをその目で確認して、帰ったのだと打ち止めは推測する。
それは、まるで、――
「やっぱり、あなたの傍が一番安心するなあ、ってミサカはミサカはここにいないあの人に呟いてみる」
彼に、甘やかされているようで。
悪くない一日だったなあ、と昨日を振り返って思うのが自分だけでなければいいのに、と打ち止めはやわらかく笑い、朝食のために食卓へ向かったのだった。
end
おまけという名の蛇足(2)
【おんぶ】一方通行が上位個体背負ってるけど【剥がれない】
1 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
とりあえずパフェおごらせた
2 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka19090
( ゚∀゚)o彡゚感覚共有!感覚共有!
3 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10039
>>2は食欲抑えるためかしらんがやたら感覚共有強制するよな
なにそのダイエット法
4 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10777
学園都市組有利すぎワロタ
5 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka13577
そうか、ダイエット法だったのか…
なにそれずるい
6 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
お前らwww話wwww聞けwwwwww
これからセロリどうするよ>>10
7 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka11589
なんでおぶってるの?ロリコンなの?そういうプレイなの?ねえねえ
って訊く
8 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka11801
ポッキーはメンズ派みたいですが人間もメンズが好きですか?
って訊く
9 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14510
ちょ、待てよなんで一方通行さんとファミレスいんだよ
なんで幼女背負ってんだよなんでべったりくっついてんだ
なんか幼女せせら笑ってね? ミサカせせら笑われてね?
あれ? これ喧嘩売られてね? 幼女に喧嘩売られてんじゃね?
え? おい 買うぞ
10 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14889
とりあえずパフェ食えなそうだし一方通行にあげればいいんじゃね
11 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
>>10
さすが姉御、安価で俺の腹の心配までしてくれるとは///
とりあえず食べかけくれてやるわ
12 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka19827
っつかなんでセロリは幼女背負ってんのかkwsk
13 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10039
シラネ
スネークいないのスネーク
14 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka13874
でも一方通行嫌がってはいないな
若干疲れが見えるけど
15 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka12525
そりゃロリコンだからなjk
幼女が背中に抱きついてたら嬉しい人種だからなjk
16 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
……スネークいない?
17 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14889
みたいだな
ていうかさっきから一方通行の姿勢低すぎないか
18 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka18264
テーブルに額くっつく寸前wwwwww低姿勢乙wwwwwwwwww
いますぐテーブルになって額にゴンッてしてやりてーwwwwwwww
19 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka20000
セロリたんがテーブルで公開オナニーすると聞いて
20 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka13577
セロリ派マジぱねえマジきめえwwwpgrwwwww
21 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14510
一方通行さんの画像うp!!!!!!!!!!!!
うpうpうppppppppppppppppp
22 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka12345
うわあ^^;
23 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
仕方ねーな
ほらよttp://up3.misakaloader.net/rotarelecca/src/orz1203.jpg
24 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka19191
テラwwwwww低wwwwwww姿wwwwww勢wwwwwwww
25 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka11216
なんぞwwwww超wwwwwwペコリwwwwwwwwwwww
頭下げてるってもんじゃねーぞwwwwwwwwwwwwwwwwww
26 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10039
つむじwwwwwwwwwwww見えてるwwwwwwwwwww
つむじさんチィースwwwwwwwwwwwwwww
27 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka16992
幼女も幼女で平然と食ってるよなwwwwwwwwwww
さすがぱねえwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
・
・
・
303 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka18264
あみこみ一方通行、だと……いや全然ときめかねーけど萌えねーけど
むしろ気色悪いけど あみこみ(笑)とかねーよまじねーよ
304 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
あっじゃあうpんなくていいよなwwwwwww
若干wwwwwウェーブがかったセロリとかwwwwwww
誰得だもんなwwwwwwwwpgrwwwwwwwwwwww
305 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14510
いややめてくださいほしいですおねがいしますください動画でください
306 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka13577
上位個体がログインしてないから堂々とクレクレしてるお花畑
307 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka17601
おい スネークから連絡きた!
308 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
なんて?
ってか>>307はスネークの緊急連絡個体かwww
309 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka17601
上位個体は寝てるときに攫われて空飛んでたってよ
でもさあ
310 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka19090
でもさあ?
311 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14889
仮にも上位個体だから、攫われて空飛んだなら起きるだろ常識的に考えて
312 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka12682
つまり…どういうことだってばよ
313 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10777
上位個体は好きでそうしてるってことじゃね
314 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
…なんかさー、気のせいかもしんねーけどさー
315 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10039
どした
316 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
幼女が余計なことすんなって言ってるような気がすあbbbbbbbbb
317 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka20000
余計なことすんなって言われるとなwwwwwww
やっぱセロリたんの汗なめなめしあbbbbbbbbbbbbbbbbb
318 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka19090
運営様こんにちは! 今日はお日柄も良く、いいおんぶ日和ですね!
一方通行さん頼りがいのあるイケメンですね!
319 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka13577
運営様こんにちは! カレーライスおいしかったですか?
一方通行さんの背中って素敵なポジションでしょうね!
320 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10039
運営様こんにちは! どうして背中に乗っているのかわかりませんがよかったですね!
俺らミサカ一同も運営様が幸せそうでなによりですって話してましたよ!
321 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka20001
みんなこんにちはーってミサカはミサカは元気良く挨拶してみる
なあ、20000号は何なの?馬鹿なの?死ぬの?
322 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka18264
変態ざまあwwwwwww自らお仕置きくらうとかドMですね本当にry
323 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10033
ドMと聞いて
低姿勢なご主人様もなかなあbbbbbbbbbbbbbbb
324 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
あのー、運営
325 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka20001
ん、なーに?
326 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
もしかして俺邪魔っすかね?
327 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka20001
邪魔じゃないけど、あの人が早々に気づくような手助けは控えてほしいなっ
328 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
サーセンした! ほんとサーセン思い出しました用事思い出しました!
いますぐ失礼します!!!
329 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka20001
そう? じゃあわかった、ミサカもちょっと戻るねー
20000号覚悟しとけよ
330 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10039
運営様乙っす!マジ乙っす!
331 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka13577
しばらくエンジョイしてくださいね!ほんとこっちに顔出さなくていいんで!
332 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka19090
運営様、よいおんぶタイムを!
333 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14510
……ふぅ、やれやれだぜ
334 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
お花畑最近賢くなったな
335 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka20000
お仕置きこそ至高wwwwwwwww
ところでセロリたんの動画マダー?
336 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka15551
まだ言ってんのかwwwwwさすが変態懲りねえ歪みねえ
337 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka17601
スネークが「棺桶なう」って
338 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka18639
どこ行ってんだスネークwwwwwwwwww
339 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
頭くらくらする
動画だっけ? もういいくれてやんよ
340 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14510
wktkwktk
341 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
ttp://www.misatube.com/watch?v=oneway
342 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14889
>>340は見ないほうがいい
343 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka19090
なんというwwwwww
ロリコンとwwwww幼女のwwwwデートwwwwwwwwwww
これはひどい
344 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10032
これしか許可下りなかった
ざwwwwwまwwwwwwあwwwwwww
345 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka20000
運営に髪いじられたり怒られたりしてるセロリたんにはMの資質があります(キリッ
346 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka16288
まあドがつくSだけどな・・・それにしてもまるで休日のお父さんだ
347 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka14510
うわあああああああああああああああああああああああああん!!!!!
SATSUGAI!SATSUGAIせよ!サツガイせよおおおおおおおおおおおおおお
348 :以下、名無しにかわりましてミサカがお送りしますID:Misaka10039
発狂ワロタ
御坂妹「まあ上位個体ってなんだかんだで一枚二枚上手だよな、とミサカは上空でバトるツートップと棺桶を見て呟き……」
御坂妹「oh? なんかあの棺桶、動いてね? こえー、とミサカはその場から立ち去ります」
御坂妹「……と、思いましたが」
17600「よっす、とミサカはパラシュートをたたみながら挨拶します」
御坂妹「これはこれは、行方不明のスネークさん、とミサカはハイタッチします。棺桶なうの意味もわかりました」
17600「あー、この件なんだけど最初から幼女、じゃねえ運営、じゃねえ上位個体は全貌を知ってたみたいなんだぜ、とミサカは情報を漏洩します」
御坂妹「マジでか」
17600「きっかけは第二位だったらしいけどな、とミサカは付け加えます。つーか腹減った、どっかで何か食わね?」
御坂妹「そういえば最近ハピネスセットのサンシャイニーが気になってんだわ、とミサカは日曜アニメも視聴していることを明らかにします」
17600「んじゃ行くか、とミサカ達は連れ立って目指すはファーストフード店です」
end