1 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:10:50.03 t1Czfzh+0 1/39

~ リング ~

ドカッ!

格闘家「おぶっ……!」ドサッ

レフェリー「…………」

レフェリー「ストップ!」バッ

カンカンカンカンカーン……!

ワァー……! ワァー……! ブゥー……! ブゥー……!

格闘家(ちくしょう……また負けた……)

格闘家(これでデビュー以来、9連敗……)

元スレ
幼女「おじちゃん、よわーい!」格闘家「なんだと!?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1374941450/

3 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:14:35.34 t1Czfzh+0 2/39

~ 控え室 ~

格闘家「すみません、コーチ……」

格闘家「次は必ず──」

コーチ「…………」ハァ…

コーチ「お前さぁ……」

コーチ「努力を買って、デビューまでさせといてなんだけどさ」

コーチ「格闘家向いてねぇよ」

コーチ「悪いこたぁいわねえ。引退しな」

格闘家「!」

7 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:17:23.42 t1Czfzh+0 3/39

格闘家「たしかに……そうかもしれません」

格闘家「でも、せめて……一勝、一勝するまでは……!」

コーチ「一勝? 今の格闘界に、お前が勝てる相手なんているか?」

格闘家「!」

コーチ「たった一発のパンチすら当てられない奴が、いったいどうやって勝つんだ?」

コーチ「とうとう客からブーイングが出る始末だ」

コーチ「なんならサンドバッグを選手だってことにして、リングに上げるか?」

格闘家「そ、それは──」

コーチ「それにさ」

コーチ「お前があまりに不甲斐ないと、コーチである俺の評判まで下がるんだよ」

コーチ「これ、意味分かるよな?」

格闘家「は、はい……」

9 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:20:16.46 t1Czfzh+0 4/39

コーチ「次がラストチャンスだ」

コーチ「次の試合で勝てなきゃ、もう引退しろ」

コーチ「俺もこれ以上、見込みのない奴を面倒みきれん」

格闘家「コーチ……!」

コーチ「なぁに、お前もまだ若いんだ。他に色んな道があるだろ」

コーチ「俺もプロじゃなく、ただの練習生としてのお前になら付き合ってやるよ」

コーチ「じゃあな」バタンッ

格闘家「…………」

13 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:23:42.76 t1Czfzh+0 5/39

格闘家(コーチのいうとおりだ……)

格闘家(強くなりたい一心で、プロを目指して必死に練習して)

格闘家(コーチも半ばお情けで、俺をプロデビューさせてくれたというのに)

格闘家(まともにパンチを当てることすらできず)

格闘家(あれよあれよと9連敗……)

格闘家(素人だってもうちょっとやれるだろう)

格闘家(こんなもん、恩を仇で返すってレベルじゃない)

格闘家(むしろ9戦もやらせてくれたことに感謝すべきだ)

格闘家「…………」

格闘家(試合があった日は必ず行くって決めてたし、今日も報告に行くか……)

17 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:26:49.45 t1Czfzh+0 6/39

~ 墓地 ~

格闘家(父さん……)

格闘家(母さん……)

格闘家(姉さん……)

格闘家(ゴメン……今日も負けちゃったよ)

格闘家(パンチをかわされて、カウンター喰らって、KO負け……)

格闘家(ホント情けないよな、俺)

格闘家(だけど、もう心配しなくていいよ)

格闘家(多分……次が最後の試合になるから……)

22 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:29:23.99 t1Czfzh+0 7/39

~ 河原 ~

格闘家「シッ、シッ、シュッ!」シュッシュッシュッ

格闘家「シイッ!」ブオンッ

格闘家「ハァ……ハァ……ハァ……」

格闘家(俺はこれだけ練習してる! パンチだってキックだって……!)

格闘家(俺は弱くない! ──なのに、なんで試合じゃ攻撃が当たらないんだ!)

格闘家(なんで勝てないんだ!)

幼女「おじちゃん、よわーい!」

格闘家「なんだと!?」

25 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:33:27.18 t1Czfzh+0 8/39

格闘家(──って、子供!?)

格闘家(子供相手にムキになるなんて……アホか、俺は)

格闘家「ハハハ、ごめんね。怒鳴ったりして、悪かったね」

幼女「おじちゃん、よわすぎ!」

幼女「よわい、よわい、よわい、よわい、よわい!」

幼女「なんでそんなによわいの?」

幼女「よわいのぉ? よわすぎぃ!」

格闘家「…………」イラッ

28 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:36:20.15 t1Czfzh+0 9/39

格闘家「俺は……弱くなんかない!」

格闘家「ただちょっと──本番に弱いだけなんだ!」

幼女「それ、よわいってことじゃない」

格闘家「うぐっ……」ギクッ

幼女「いっとくけど、おじちゃんってほんとよわいよ」

幼女「あたしより、よわいよ」

幼女「たぶん、ケンカしたら、あたしがかつね」

格闘家「な、なんだと……」

30 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:39:22.75 t1Czfzh+0 10/39

格闘家「いくら俺だって、一般人には負けないよ。これでもプロ格闘家なんだ」

格闘家「ましてや、君みたいな女の子に──」

幼女「まけるよ」

幼女「だっておじちゃん、よわいんだもん。よわすぎなんだもん」

幼女「なんなら、ケンカする?」

格闘家「いいだろう……」

格闘家(周囲にだれもいないよな……)キョロキョロ

格闘家(一発小突いて、交番に迷子ですって突き出すか)

32 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:42:18.58 t1Czfzh+0 11/39

格闘家「そらっ!」ヒュッ

格闘家「えいっ!」ヒュッ

格闘家(あ、あれ? 当たらない。そんなバカな!)

格闘家「だっ!」ビュッ

格闘家「だりゃっ!」ビュッ

格闘家(な、なんで!?)

格闘家(もちろん力加減はしてるけど、本気で狙ってるってのに!)

幼女「だっらしない」

幼女「ほんとにおじちゃん、かくとーかなの?」

格闘家「…………」ムカッ

36 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:45:45.30 t1Czfzh+0 12/39

格闘家(こんな女の子にさえ──)ビュバッ

格闘家(なんで──)ブオンッ

格闘家(パンチやキックを──)シュバッ

格闘家(当てられないんだ!?)

格闘家「うおっ!?」ズルッ

ドサッ!

格闘家「あだだっ……!」

幼女「きゃはは、おじちゃんださぁ~い!」

39 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:47:57.79 t1Czfzh+0 13/39

幼女「あだだ、だって。だらしな~い」

幼女「あっ、そろそろかえらなきゃ」

幼女「じゃね~!」タタタッ

格闘家(本当にだらしない……)

格闘家(女の子相手に本気になり、攻撃を当てられず、ずっこける……)

格闘家(こんな格闘家、世界のどこを探したっているわけない)

格闘家(やっぱり引退すべきなのかなぁ……)

43 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:51:34.69 t1Czfzh+0 14/39

~ ジム ~

友人「よう、なに落ち込んでんだ?」

格闘家(女の子に負けた、なんていえるわけがないよな……)

格闘家(勝った負けた以前に、幼い女の子とケンカしたって事実がすでにヤバイ)

友人「いつまでもクヨクヨすんなって!」

友人「次勝てばいいだけのハナシだろ?」

友人「俺も今度試合あるからさ、気晴らしにスパーでもやろうぜスパー」

格闘家「……ああ」

46 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:54:15.81 t1Czfzh+0 15/39

バスッ! ドカッ! ドッ!

友人「ぐっ……やるな!」

格闘家(そう……)

格闘家(もちろんスパーだから、お互い本気じゃないとはいえ)

格闘家(友人だってかなり強いのに、俺もまずまず戦えてる……)

格闘家(なのに、なんで試合じゃ全然攻撃を当てられないんだ?)

格闘家(やっぱり俺、本番に弱いのか……?)

友人「フゥ……フゥ……」

格闘家「ハァ……ハァ……」

コーチ「そこまで!」

48 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:57:41.77 t1Czfzh+0 16/39

~ 河原 ~

幼女「こんにちは~おじちゃん」

格闘家「また君か」

格闘家「もうケンカはしないよ。いくら罵られてもね」

幼女「あっそ」

幼女「おじちゃん、よわい、よわい、よわすぎ!」

幼女「なんでそんなよわいの? どうしたらそんなによわくなれるの?」

幼女「よわよわよわよわよわよわぁ~~~~~い」

格闘家「…………」ピクピクッ

格闘家「い、いい加減にしろ!」

49 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 01:59:55.46 t1Czfzh+0 17/39

幼女「だったらさ」

幼女「あたしのこと、いっぱつぐらいひっぱたいてみなさいよ」

格闘家(なんてイヤな女の子なんだろうか……!)

格闘家(なんで俺はたかが女の子に、大人気なくイラついてるんだろうか……!)

格闘家「今度こそ、やってやる!」

幼女「むだだってば!」

格闘家「どりゃっ」シュッ

52 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:05:20.58 t1Czfzh+0 18/39

シュッ! ヒュッ! シュッ!

格闘家「ハァ……ハァ……くそっ!」

幼女「あたらないね~、よわいよわい」

格闘家(──しまった、夢中になりすぎた)チラッ

格闘家(あそこに通行人がいるじゃんか! ヤバイ!)

格闘家(ってあれ? 俺たちをチラッと見ただけで、どっかに行っちまったぞ)

格闘家(通報しにいくって雰囲気でもない)

格闘家(ああ……そうか)

格闘家(俺は大人気なく、この女の子を本気でひっぱたこうとしてるのに)

格闘家(通行人からすると──)

格闘家(俺とこの女の子がじゃれ合ってるようにしか見えないってことか……)

格闘家(助かったけど、ますます情けねえ……)

54 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:08:21.14 t1Czfzh+0 19/39

~ ジム ~

コーチ「次の試合が決まった」

コーチ「一ヶ月後、相手は──金髪だ」

コーチ「金髪はバリバリのハードパンチャーだ。俺もオーナーも断ったんだが──」

コーチ「向こうのジムの方が圧倒的にデカイし、断りきれなかった……」

コーチ「戦績は9勝0敗7KO……お前と正反対だな」

格闘家「…………」

コーチ「本当はもう少し弱い相手とやらせたかったってのが本音だが」

コーチ「この試合に負けたら……分かってんな」

格闘家「はい、分かってます」

55 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:11:29.96 t1Czfzh+0 20/39

~ 河原 ~

幼女「ふうん、しあい?」

格闘家「ああ、十中八九最後の試合になる」

格闘家「この試合で負けたら、俺は引退だ」

格闘家「でも、いいんだ。一応夢だったプロデビューはお情けでだけど叶ったし」

格闘家「これ以上、家族を心配させたくないしね」

幼女「かぞく?」

格闘家「ああ、天国にいる家族さ」

58 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:14:17.94 t1Czfzh+0 21/39

格闘家「俺には家族がいたんだ。四人家族になるはずだった」

格闘家「三人とも交通事故で亡くなっちゃったけどね」

格闘家「そして、母さんの腹の中にいた、産まれる寸前だった俺だけが生き延びた……」

格闘家「三人が必死に母さんの腹を守ってたおかげらしい」

格闘家「だから俺、死んだ三人のためにも強くなりたくて──」

格闘家「格闘家を目指したんだけど……このザマさ」

幼女「ふぅ~ん」

60 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:16:29.60 t1Czfzh+0 22/39

幼女「だったら、なおさらよわくちゃだめじゃん!」

幼女「せめて、あたしをなぐれるようにならなきゃ!」

幼女「ほらほら、よわいよわぁ~い」

格闘家「よぉーし、今日こそひっぱたいてみせる!」

格闘家「いくぞ!」

幼女「ぜったい、むりむり~! おじちゃん、よわいんだもぉ~ん!」トテテッ

63 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:19:57.18 t1Czfzh+0 23/39

~ ジム ~

格闘家「うおおおおっ!」

バスッ! バスッ! バスッ! バスッ!

友人「気合入ってんな。サンドバッグに同情するぜ」

格闘家「最後の試合になるかもしれないし、悔いは残したくないからな……」

友人「金髪ってたしか、すげーチャラチャラしてる、いけ好かない奴だろ?」

友人「絶対ブチのめせよ!」

格闘家「ああ、分かってる!」

格闘家(せめて一発くらい……パンチを当ててみせる)

65 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:22:43.03 t1Czfzh+0 24/39

~ 河原 ~

幼女「よわい、よわい、よわぁ~い!」トテテッ

格闘家「待てっ!」タタタッ

格闘家(10歳にも満たないだろう女の子を追い回す、20代プロ格闘家……)

格闘家(こんなに犯罪的なシチュエーションも、なかなかないよな)

格闘家(でも、この子と遊んでると、なぁ~んか)

格闘家(張りつめた気持ちがいい感じに、ほぐれるんだよな……)

格闘家(もしかして俺って、隠れロリコンだったのかな……)

69 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:26:30.55 t1Czfzh+0 25/39

~ 自宅 ~

格闘家(いよいよ明日は試合か……)

格闘家(意外と気分は落ちついてるけど、体を動かしたい気分だ……)ウズウズ…

格闘家「シッ! シュシュッ!」シュシュシュッ

グラグラ……

パサッ……

格闘家「──ん?」

格闘家(これは……アルバムだ)

72 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:29:23.91 t1Czfzh+0 26/39

格闘家(そういや俺、死んだ家族の写真って、ほとんど見たことないんだよな……)

格闘家(なんか辛くなっちゃいそうで……避けてた)

格闘家(今まで避けてた家族の写真を見ることが、少しは自信につながるかもしれない)

格闘家(……見てみるか)ペラッ…

格闘家(これが父さんか。俺をちょっとヒョロくしたって感じだな)

格闘家(母さんは……優しそうな顔してるな。俺を産んでくれて、ありがとう)

格闘家(このちっこいのが、姉さん──)

格闘家「!?」

82 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:33:27.50 t1Czfzh+0 27/39

~ 河原 ~

幼女「やっほ~! よわいおじちゃん、きたきた! いよいよしあいだね!」

格闘家「…………」

幼女「どしたの? そんなこわいかおしてさ」

格闘家「あのさ──」

格闘家「俺、君の正体が分かっちゃったかもしれない」

幼女「!」

格闘家「君は──俺の姉さん……なんだろう?」

88 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:37:32.70 t1Czfzh+0 28/39

幼女「……あ~あ、ばれちゃったか」

幼女「あたしがここにいられるのは、ちょうどきょうまでだし」

幼女「はずかしいから、このままだまったままかえろうっておもったのに」

格闘家(今日まで……)

格闘家「姉さん。君……いやアンタは弱い俺が心配になって来てくれたんだろう?」

格闘家「アンタみたいな女の子を本気で追い回して、俺が通報すらされないのは」

格闘家「多分……アンタは俺にしか見えないからだ」

格闘家「俺がアンタみたいな女の子に、本気で腹を立てることができたのは──」

格闘家「本能的に……俺はアンタが姉さんだって気づいてたからだろう」

幼女「う~ん、なかなかだけど、70てんってとこかな」

90 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:40:21.34 t1Czfzh+0 29/39

幼女「まずね、あたしがここにきたのはね」

幼女「あんたと、きょーだいゲンカってのを、ちょっとやってみたかっただけ」

幼女「パパとママはあんたをうんで、じょーぶつしちゃったけど」

幼女「あたしだけは、みれんがあったのよね」

幼女「べつに、あんたのしんぱいなんかしてないわ」

格闘家「…………」

幼女「それとね、もうひとつ」

幼女「あんたは、よわくなんかないよ」

格闘家「!」

93 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:43:25.45 t1Czfzh+0 30/39

幼女「あんたがあたしをなぐれなかったのはね」

幼女「あたしがよけてたってより、むしろあんたがよけてたのよ」

格闘家「俺が……避けてた!?」

幼女「そ」

幼女「あんた、どうもほんきになると、ひとをなぐれないみたいね」

格闘家(そうか……そういうことだったのか)

格闘家(俺は本気を出すって場面になると、相手を殴れない……)

格闘家(俺のパンチの方から、無意識に相手を避けちまう……)

格闘家(友人相手なら、友人は強いし、あくまで本気じゃないスパーリングだから)

格闘家(普通に戦うことができたんだ……)

96 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:46:23.10 t1Czfzh+0 31/39

幼女「だからさ」

幼女「さいごに、あたしをおもいっきりブンなぐってごらん!」

格闘家「ブン殴れっていわれても……」

幼女「だいじょーぶ! あたし、もうしんでるしさ」

幼女「おんなのこ、しかもねーさんをなぐれるようになれば」

幼女「だれだって、なぐれるようになるはずよ!」

格闘家「…………」ゴクッ…

格闘家「わ、分かった!」ザッ

98 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:49:26.53 t1Czfzh+0 32/39

格闘家「いくぞ……姉さん!」

幼女「どんときなさい!」

格闘家(本気で女の子を、しかも実の姉を、格闘家である俺が、ブン殴るッ!)

格闘家「うわぁぁぁっ!」

ブオンッ!

格闘家(すり抜けた……)

幼女「いいパンチだったよ」

幼女「やっぱ、あんたつよいよ!」

格闘家「俺が、強い……?」

格闘家「……ありがとう、姉さん」

103 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:52:40.37 t1Czfzh+0 33/39

幼女「それじゃ……きょーだいゲンカってのもやれたし」

幼女「そろそろあたしはいくよ」

幼女「もともと、きょうまでしかいられなかったしね」

格闘家「あっ……」

格闘家「ま、待ってくれ! 行かないでくれ! ──姉ちゃん!」

格闘家「もっと俺と遊ぼう、姉ちゃん!」

幼女「だいじょーぶ、あんたはつよいんだから」

幼女「あたしの、じまんのおとうとだよ」ニコッ

格闘家「姉ちゃん! 待ってくれ! せめて俺の試合を──」タッ

幼女「じゃあね……バイバイ」

スゥ……

格闘家「姉ちゃん……!」

格闘家「うっ……ぐぅぅ……っ! くっ……! ねえ、ちゃん……」

107 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:56:33.74 t1Czfzh+0 34/39

~ 控え室 ~

コーチ「さて、準備いいか?」

格闘家「……バッチリです」バスッ

友人「今日は俺もセコンドにつくぜ。なにか役に立てるかもしれねえし」

格闘家「ありがとう」

コーチ「よし、そろそろ入場すんぞ」

格闘家「……コーチ」

コーチ「ん?」

格闘家「これまで本当にありがとうございました」

格闘家「本来プロの域に達してない俺を、こうしてプロのリングに上げてくれて──」

格闘家「本当に感謝しています」

110 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 02:59:18.82 t1Czfzh+0 35/39

コーチ「お前、あまり俺を見くびるなよ」

コーチ「俺はお情けやら親心やらで」

コーチ「プロのレベルに達してない奴をデビューさせるほど、落ちちゃいねえよ」

コーチ「俺がお前をプロデビューさせたのは」

コーチ「お前はそのレベルに達してると判断したってだけだ」

格闘家「コーチ……」

コーチ「だから、今日負けたら引退させるってのも、脅しじゃなくマジだ」

格闘家「……分かってます」

友人「全部ぶつけてこい!」パシッ

格闘家「ああ!」

114 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 03:02:36.61 t1Czfzh+0 36/39

~ リング ~

ワァー……! ワァー……!

金髪「すんまちぇんね~、生け贄になってもらって」

格闘家「…………」

レフェリー「コラ、私語は──」

金髪「ウチの会長、ホープである俺に確実に記念すべき10連勝目を上げさせるために」

金髪「無理やりアンタみたいな9連敗中のカスと、試合組んでくれたんスわ」

金髪「ま、アンタみたいなゴミ、食ってもなんの足しにもならんけど」

金髪「1ラウンドとまではいわんけど、せめて1分くらいは頑張って下さいよ」

格闘家「…………」

122 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 03:06:27.89 t1Czfzh+0 37/39

レフェリー「ファイッ!」バッ

カーンッ!

金髪(さぁ~て、こんなゴミさっさとカタしちまうか)ザッ…

金髪(インタビューでなにいうか、考える時間もねーな)

金髪「そらっ!」

ドスッ! ボスッ! ドズッ! ドボッ! ガッ!

格闘家「ぐ……っ!」

コーチ「手ぇ出せ!」

友人「動け、動け! 止まっちゃダメだ!」

格闘家(姉ちゃん……)

126 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 03:09:25.22 t1Czfzh+0 38/39

格闘家(俺、はじめて──他人を本気で殴るよ)

格闘家(だって俺、姉ちゃんだって本気で殴れたんだから)

格闘家(もう多分……だれだって殴れる!)キッ

金髪「あ?」





ボゴォッ!!!

133 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/07/28 03:13:27.33 t1Czfzh+0 39/39

カンカンカンカンカーン……!

『1ラウンド、59秒! ノックアウト! 勝者、格闘家ーっ!』

ワァー……! ワァー……! ワァー……! ワァー……!

友人「ハハッ、やりやがった……一発KOだぜぇ!」

コーチ「フン……ようやく開花しやがったか」ニッ



格闘家(姉ちゃん……ありがとう!)





<おわり>

記事をツイートする 記事をはてブする