1 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/14 23:59:43.14 t582azDh0 1/37

「言葉」

「愛とはなんだ?」

「名前」

「愛とはなんだ?」

「漢字」

「愛とはなんだ?」

「目」

「……それはeyeじゃないのか?」

「口で言われても違いがわからない」

「数秒前にお前が漢字と言ったばかりだが、なぜ英語にした?」

「気分」

「なら仕方ない」



元スレ
兄「妹よ、愛とはなんだ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373813982/

2 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:00:40.68 NqO2x70H0 2/37

「妹よ、恋愛相談がある」

「するな」

「なぜだ?」

「キモい」

「なぜキモい?」

「兄の恋心なんぞ、知りたくない」

「知れ。そして的確な答えを導き出し、兄に伝授しろ」

「やだ」

「そうか」

3 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:01:51.87 NqO2x70H0 3/37

「妹よ、ゲームばかりしてないで、兄の目を見て話せ」

「断る」

「なぜだ?」

「私の目が腐る」

「お前の兄は、特殊ななにかを発して他人の目を腐らせるのか?」

「そう」

「そうだったのか」

4 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:02:47.02 NqO2x70H0 4/37

「妹よ、夕食はなにが食べたい?」

「魚肉ハンバーグ。レタスとキュウリとトマトのサラダ。あと、みそ汁と白米」

「ドレッシングはなににする?」

「今日はごまのやつ」

「みそ汁なんだが、卵を入れようと思う」

「ん」

「溶き卵とそのまま、どっちがいい?」

「そのまま」

「すぐに作ろう」

5 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:03:46.58 NqO2x70H0 5/37

「妹よ、いただきますを言え」

「いただきます」

「うむ。美味いか?」

「普通に食える程度には」

「充分だ。ところで、先程の続きだが、好きな人が出来た」

「その話を続ける気なら、舌を引き抜く」

「……」

「……」

「……」

6 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:04:44.41 NqO2x70H0 6/37

「妹よ、ご馳走様をしろ」

「ご馳走様でした」

「皿はそのままでいいぞ。兄が片づけてやろう」

「運ぶくらい、自分でする」

「いい子だ。風呂が沸いてるから、入って来い」

「その前に、お皿を洗う」

「それは兄の仕事だ」

「偶にはやらせろ」

「兄の生き甲斐を奪おうとするな」

「わかった。やらない」

「よろしい」

7 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:06:23.05 NqO2x70H0 7/37

「妹よ、バスタオルを忘れただろ? ここに置いておく」

『ん』

「では、リビングに戻ってるぞ」

『……偶には一緒に――』

「一緒に、なんだ?」

『……なんでもない』

「そうか。では、ゆっくり浸かってろ。ちゃんと百まで数えるんだぞ?」

『……いーち。にーい。さーん』

「偉いぞ。この兄は小さかった頃、一、十、百の三テンポで終わらせてたからな」

8 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:08:40.89 NqO2x70H0 8/37

「妹よ、髪を乾かしてやろう」

「ん」

「ここに座れ」

「ん」

「スイッチをオンにしたドライヤーを左手に、櫛を右手に装備。行くぞ」

「櫛は痛い。素手でやれ」

「わかった。始めるぞ」

「ん」

「うむ。やはり妹の髪は手触りが良いな」

「……別に嬉しくない」

「この兄が嬉しいのだ。長いから、少々乾かすのに時間がかかるがな」

「大変?」

「そんなわけがない。もっとじっくり堪能したいほどだ」

「シスコン変態野郎」

「最高の褒め言葉だ。もっと罵れ」

9 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:10:22.27 NqO2x70H0 9/37

「妹よ。もういい時間だ。早く部屋に戻って寝ろ」

「まだセーブが出来ない」

「そのゲーム、フィールド上ならどこでもセーブが出来たはずだ」

「ちっ」

「舌打ちはダメだ。舌打ちをしたらいけない」

「なんで?」

「口調は人それぞれだが、舌打ちは万人を不快にする。故にダメだ」

「はいはい」

「セーブが出来たな。では、部屋に戻れ。兄は戸締りの確認をした後、部屋の電気を消して寝る」

「お休みなさい」

「お休みなさい」

10 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:13:32.94 NqO2x70H0 10/37

「妹よ、今日もお日様が昇ったぞ」

「まだ眠い……」

「それでも目を覚ませ」

「……うん」

「アイロンをかけた服は、机の上に置いたからな」

「……うん」

「朝食は食パンと、スクランブルエッグと、ちりめんじゃこサラダと、牛乳だ」

「……うん」

「今日は何曜日だ?」

「……うん」

「よし、待ってろ。今からこの部屋でくさやを焼いてやる」

「やめろ」

「おはよう」

11 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:14:46.26 NqO2x70H0 11/37

「妹よ、忘れ物はないな?」

「あるわけない」

「ハンカチは?」

「ある」

「ポケットティッシュは?」

「ある」

「宿題は?」

「しつこい」

「確か、今日は給食ではなく、弁当の日だったな」

「……」

「うっかり屋さんめ」

「うっさい」

「弁当はこれだ。ちゃんとナップサックに入れておけ。ランドセルには入らないだろうからな」

「ん」

「では、いってらっしゃい」

12 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:16:04.35 NqO2x70H0 12/37

「妹よ、学校から兄は帰って来た」

「ん」

「またゲームをしているのか? 目が悪くなるぞ」

「視力10.0」

「お前はどこの民族で育った?」

「我が家」

「うむ、その通りだ。やるな妹。一本取られたぞ」

「上手い事は言ってない」

「ふむ、言われてみればそうだな。ところで、宿題はやったのか?」

「授業中に終わらせてる」

「流石我が妹。この兄とは違ってよく出来てる。とても誇らしいぞ」

13 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:16:54.47 NqO2x70H0 13/37

「妹よ、それはそれとして報告がある」

「なに?」

「なんと、この兄に彼女が出来た」

「許さない」

「なぜだ?」

「すぐ別れろ」

「いや、こちらから申し出てすぐに別れるというのは……」

「ならケータイを貸せ。私が言う」

「……妹の頼みでもそれは聞けない」

「貸せ」

「そうだ、明日家に連れて来る。その時に彼女の素晴らしい人となりを知れ」

「死んでしまえ」

「……」

14 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:18:07.48 NqO2x70H0 14/37

「妹よ、夕食が出来たぞ。部屋に籠ってないで出て来い」

『……』

「なんと、今日もお前の好きな魚肉ハンバーグがあるぞ」

『……』

「お腹が減っただろ?」

『……』

「うむ、我ながらこの肉じゃがは中々の出来だ。芋がホクホクしている」

『……』

「このきんぴらゴボウも程よい辛さで白米が進む」

「……人の部屋の前の廊下に座って食うな」

「みっともない兄を見たくなければ、一緒にリビングで食うぞ」

「……うん」

15 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:19:07.30 NqO2x70H0 15/37

「妹よ、話とはなんだ?」

「私は彼女なんて認めない」

「それは悲しい。だが、彼女と会えば、すぐに納得してくれるはずだ」

「認めない。でも、会って話すくらいはしてやる」

「嬉しいぞ、妹よ」

「その上で、全否定してやる」

「少しくらい、認める努力を――」

「しない」

「……」

16 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:21:18.12 NqO2x70H0 16/37

「妹よ、今日は学校が終わったらすぐ帰るんだぞ」

「わかってる」

「この兄もなるべく早く帰ろう。無論、彼女を連れて」

「絶対」

「約束は必ず守ろう」

「当然。じゃないと、一晩考えた否定作文四百三十九枚が無駄になる」

「一晩で作文用紙四百枚以上も文字で埋められる才能を、肯定の方に回して欲しかった」

「無理」

「……」

17 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:23:02.83 NqO2x70H0 17/37

「妹よ、今帰ったぞ」

「おかえり」

「お、お邪魔します」

「それが彼女?」

「それなんて失礼な言い方はするな。紹介する。女さんだ」

「お、女です。初めまして」

「ふん、思ってたより地味な人」

「この口の悪いのが妹だ」

「兄さんからお話は伺っています。本当に可愛い子ですね」

「自慢の妹だ」


18 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:25:10.10 NqO2x70H0 18/37

「妹よ、兄はお茶とお菓子を用意する。仲良くするように」

「いや」

「こんな妹だが、少しの間だけ相手をしてやって欲しい」

「うん。わかりました」

「では、少し席を外す」

「……」

「え、えっと、妹さんは来年中学生ですよね? 心配とかありますか?」

「そんな無駄話はいらない。単刀直入に最低限の質問をする」

「は、はい。どうぞ」

「あんたはアレのどこが良いの?」

「それはその……」

「言えない?」

「い、言えます! 兄さんは、とても落ち着いてて、とても格好よくて……」

「ふーん。落ち着いてて格好がよければ誰とでも付き合うんだ」

「そんな事ありません!」

「どうだか」

19 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:26:19.58 NqO2x70H0 19/37

「妹よ、たった数分で空気が重いぞ」

「誰のせいだと思う?」

「……ごめんなさい」

「なぜ女さんが謝る。悪いのは全てこの兄のせいだ」

「兄さん……」

「ふん」

20 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:27:21.41 NqO2x70H0 20/37

「妹よ、少し話してわかったと思うが、女さんは見た目通りふわふわしてる人だ」

「猫被ってるだけ」

「猫被ってるのはこの兄だ」

子猫「にゃー」

「……どこで拾って来た、その子猫」

(そもそも、いつ頭の上に乗せたのでしょうか? 先程まで、手に持ってさえいなかったはずですが)

「可愛いだろ」

「可愛いけど……」

「抱いてみるか?」

「……ちょっとだけ」

「うむ、素直でよろしい」


21 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:28:51.39 NqO2x70H0 21/37

「妹よ、猫の抱き心地は良いか?」

「……まぁまぁ」

「では没収」

子猫「にゃー」

「あっ……」

「そんな顔をするな。次に、女さんに抱きついてみろ」

「わ、私にですか!?」

「いや」

「この猫も可哀想に。妹が女さんに抱きつけば保健所に行かなくても済んだのだが……」

「卑怯者め」

「どうする?」

「……くっ。あんた、両手を広げて」

「ば、ばっちこーい!」

22 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:30:53.62 NqO2x70H0 22/37

「妹よ、女さんの抱き心地はどうだ?」

「……」

「素直に言わなければ、この猫は……」

「……悪くない」

「良い点を五個あげなければ……当然、心からの言葉で」

「おっぱいがふかふか。良い匂い。温かい。落ち着く。心地良い。おっぱいが大きい」

「そ、そんなに大きいかなぁ……?」

「一個多めに言うほど気に入ったようだ、女さん」

「ふふっ、私も妹さんを抱きしめてて凄くいい気分です」

「……今だけ、頭撫でるのを許してやる」

「ありがとうございます」

23 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:32:41.04 NqO2x70H0 23/37

「妹よ、改めて問おう。お前の中で女さんはどんな人になった?」

「抱き枕」

「今晩、一緒に寝てあげましょうか?」

「それはダメだ。妹がいるとは言え、男の家に泊まるなど、女さんのご両親が心配する」

「そうでした……残念です」

「代わりと言ってはなんだが、妹を連れて帰ってもいい」

「本当ですか?」

「無理。絶対に無理。この家を離れて寝るなんて無理」

「どうしてもか?」

「どうしても」

「そうか」

「あ、あの。今度の休日もお邪魔します。その時、妹さんとお昼寝をさせて貰えたら嬉しいです」

「そういう事で」

「わかった」

24 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:34:04.97 NqO2x70H0 24/37

「妹よ、格闘ゲームで女さんをタコ殴りにするのはどうかと思うぞ? 十戦して一度も攻撃を喰らわないほど」

「手加減するの苦手」

「下手でごめんなさい……」

「ところで、女さん。妹を膝の上に乗せているが、平気か? 足は痺れていないか?」

「大丈夫ですよ。妹さん、とても軽いですから」

「ふん」

「鼻を鳴らしながらも女さんから離れないほど気に入ったか。兄は嬉しいぞ。なぁ、猫」

子猫「にゃー」

25 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:36:14.35 NqO2x70H0 25/37

「妹よ、もう夕方だ。兄は女さんを送って来る」

「そんな必要はない」

「まだ言うか」

「えっと、すぐ近くなので、別に送って頂かなくても……」

「家、どこ?」

「このマンションの三階です」

「近っ。えっ? なんでそんなに近いの? 下の階じゃん」

「聞いて驚くな。女さんは数日前、偶然このマンションに引っ越して来たんだ」

「家族と一緒にですけどね」

「嫌み妬み抜きで、送る必要はない」

「近かろうと遠かろうと、男が女性を送るのは義務だ。なにかあったらどうする」

「ウチと女さんの家との距離じゃ、絶対になにも起こらない」

「初めて私の名前を口にしてくれましたね! ありがとうございます!」

「あっ……ニヤニヤすんな、馬鹿兄」

26 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:38:33.34 NqO2x70H0 26/37

「妹よ、女さんを送り終えたぞ」

「……」

「なぜ、リビングの隅で膝を抱えている?」

「……うっさい」

「ついうっかりとは言え、女さんの名前を口にするほど心を開いた事は、個人的にとても嬉しいのだが」

「一生の不覚」

「お前はまだ、十二年弱しか生きていない」

「十二年弱の不覚」

「それが正しい日本語なのか、馬鹿な兄にはわからん。お前はわかるか? 猫」

子猫「にゃー」

「うむ。妹の言葉なら大抵は正しいはずだった。猫に言われるまで気付かないとは、兄としてまだまだだな」

「子猫と会話すんな」

27 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:39:48.61 NqO2x70H0 27/37

「妹よ、休日とはいえ、早起きを怠るのはよくない」

「まだ寝かせろ……」

「仕方ない。猫ボディプレス」

子猫「にゃー」

「ぶふっ!」

「目が覚めたか?」

「おい、子猫を顔面に放るなんていい度胸だな」

「兄に手をあげるか。ご褒美だな。いくらでも殴れ」

「遠慮なく」

「ありがとうっふ!」

29 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:41:36.36 NqO2x70H0 28/37

「妹よ、女さんが遊びに来たぞ」

「妹さん、私が得意なゲームを持ってきました!」

「相手をしてやる。五体投地をして感謝しろ」

「はい」

「本当にやろうとするな。しかもウチの玄関先で」

「ご、ごめんなさい……」

「ちなみに、どんなゲームを持って来たの? 見せて」

「はい」

「……トランプって」

「ゲームだな。テレビは使わないが」

「普通のトランプじゃありませんよ? トランプ式の麻雀です!」

「……」

「……」

31 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:50:14.09 NqO2x70H0 29/37

「妹よ、兄は女さんを侮っていた」

「奇遇。私も同じ事を思った」

「兄さん、それロンです。これで八連荘ですね」

「なんだ、この人の強さは」

「今回含めて、あがりが全部役満って……」

「飛びなしにしたのは失敗だった。終わる気がしない」

「えへへ。運頼みの遊びは凄く強いんですよ、私」

「宝くじ買ったら大金持ち一直線の才能だよ」

「どうなんでしょう? 親から、二十歳前に宝くじを買うと、ダメな人になるから止めなさいと言われていまして」

「若い内から金持ちになって金銭感覚を狂わすな、という意味だろう」

「よく出来たご両親だと思う」

「自慢の両親です!」

「ただ、娘にトランプの麻雀を与えるのはどうかと思うがな。今更だが、妹もよくルールを知っていたな」

「兄の部屋にあった、哲と言う漫画とアカギと言う漫画を読んだ」

「なるほど」





32 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:52:20.14 NqO2x70H0 30/37

「妹よ、桃鉄で兄妹揃って借金塗れのところ悪いが、兄は少し抜けるぞ」

「まさか、始めて一年以内に桃太郎ランドを買われるとは……」

「兄さん、どこかに出かけるのですか?」

「昼食を作る」

「お手伝いをさせて下さい」

「女さんはお客さんだ。そんな事はさせられん。それより、ぶっとびカードで毎回ゴールするのを止めて下さい」

「おかしい。絶対にこのゲーム、バグってる」

「なんか、すみません……あっ、またゴールしちゃいました」

「うがぁぁぁあ」

33 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:54:54.97 NqO2x70H0 31/37

「妹よ、悔しい気持ちはわかるが、飯を食え」

「こ、今度は格闘ゲームをしましょう! やった事ありませんがRPGでも構いませんよ!」

「同情するな、小娘が」

「お前の方が小娘だ、妹。それより食うぞ。いただきます」

「いただきます」

「……いただきます」

「手軽に素麺と天ぷら数種類にしたが、いかがだ?」

「美味しいですよ。天ぷらもサクサクしてます。凄いですね。私、こんなに上手く揚げられませんよ」

「こんなもの、誰だって出来る。女さんに才能がないだけ」

「……ふむ、では妹。揚げてみるか?」

「……えっ?」

「材料なら心配するな。まだ多少残っている」

「……だ、誰にでも出来る事じゃなかった、かも」

「仲の良い兄妹で羨ましいですね、子猫さん」

子猫「にゃー」

34 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:56:56.39 NqO2x70H0 32/37

「妹よ、腹を出して寝ると、この季節でも風邪をひくぞ。全く」

「すー……すー……」

「ふふっ、気持ち良さそうに寝てますね」

「妹に抱きつかれたままで暑苦しくないか?」

「いえいえ、そんな事はありません。むしろ、とても心地良いですよ」

「ならよかった」

「話で聞いていた通り、本当に可愛い妹さんですね」

「こんな兄と兄妹でいる事が勿体ないくらいだ」

「そんな事を言ったら駄目ですよ。妹さんが悲しんでしまいます」

「気を付けよう」

「ところで、兄さんたちのご両親は? 休日なのに、お二人共お仕事なのですか?」

「二人は……」

「二人は?」

「……」

「えっ、あっ、ご、ごめんなさい……失礼な事を……」

「どこかで元気に暮らしてるはずだ。妹とは毎晩メールか電話をしてる」

「紛らわしい雰囲気を醸し出さないで下さい!」

35 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 00:58:27.14 NqO2x70H0 33/37

「妹よ、女さんが大事な話をするそうだから、絶対に起きるな」

「態々そう言わなくても……」

「で、話とは?」

「ゲームでわかったと思いますが、私、運だけは凄く良いんです」

「ドン引きするくらいにな」

「引かないで下さいよ……」

「それで?」

「私、今この運に凄く感謝しています」

「どうしてだ?」

「兄さんと出会う事が出来て、こうしてお付き合いをさせて頂けていますから」

「こちらこそ、ありがとう」

「いえいえ。しかも、妹さんや子猫さんとも出会えました。本当に運が良かったのだと思います」

「人はそれを縁と呼ぶ、という言葉を耳にした事がある」

「縁も運ですからね」

「縁と運か……」

36 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 01:03:32.06 NqO2x70H0 34/37

「妹よ、なんでお前は妹なんだ?」

「ふふっ。なんですか、それ」

「女さんの話を聞いてふと思った。もし運がなく、妹が妹ではない状態で会っていたらどうなっていたのかと」

「その時はきっと、私なんかより妹さんを選んでいたと思いますよ。こんなに愛らしいのですから」

「それはない。異性として愛するのは女さんだけだ」

「えっ? え、えっと、その……きょ、恐縮です……」

「そもそも、来年大学生になる高校生が小学生に手を出したら犯罪だ」

「それは数年後と言う脳内設定で補って下さい」

「……」

「? どうしました?」

「……考えてみたが、やはり妹は妹としか思えん」

「それでもこの子の事を、兄さんは愛しているのですよね?」

「無論だ」

「なら、それで良いじゃありませんか。仮にお二人が兄妹ではない世界があったとしても、この世界では兄妹なのですから」

「正論だな」

37 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 01:04:51.41 NqO2x70H0 35/37

「妹よ、そろそろ起きろ。猫爆弾を投下するぞ?」

子猫「にゃー」

「やめろ」

「おはようございます、妹さん」

「ん、おはよう」

「寝起きのところ悪いが、言いたい事がある」

「なに?」

「寝ぼけながら掴んだ兄の手を解放して欲しい」

「……お休み」

「行け、猫」

子猫「にゃー」

「ふごっ」

「ふふっ」

38 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 01:07:20.92 NqO2x70H0 36/37

「猫爆弾を投下しても兄の手を離さない妹よ」

「なんだ、合図一つで私の顔に飛びかかるよう、子猫を躾けた兄よ」

「答え合わせをしようと思う」

「なんの?」

「愛とはなんだ?」

「またそれか」

「ちなみに、この兄の中では、すでに答えが出ている。が、妹であるお前の答えも知りたい」

「そんなの決まってる」

「では、それを教えて貰おう」

「……離したくないって思う事。今握ってる手も、抱きついてる女さんの事も、ついでに私の頭にしがみ付いてる子猫も、全部」

「俺も同じだよ、妹よ」

39 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/07/15 01:08:28.21 NqO2x70H0 37/37

終わり

読んでくれた人、ありがと

記事をツイートする 記事をはてブする