男「オヤジ、この店で一番高い奴隷はどれだ?」
店主「一番高いっていうと、今朝仕入れたばかりのエルフの奴隷だな」
「しかし、ニイちゃん。マジで高いぜ? 金はあんのかい?」
男「ふふん」ドサッ
ジャララ!
店主「おお! 金貨がこんなに!」
男「宝くじが当たったんだ」
「さぁ、一番高いエルフの子を連れてきてもらおうか」
店主「へいへい、ただちに!」タタッ
元スレ
男「宝くじ当たったからエルフの奴隷買いにきたったwwww」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1371986740/
男「宝くじ当たったからエルフの奴隷と幸せに暮らしたったwwww」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1373215754/
店主「はい、こちらが一番高い奴隷です」グイ
エルフ姉「きゃぅ」パタン
男「なんだ、まだ年端もいかないガキじゃないか」
店主「この年頃のが一番人気なんですよ」
男「可哀想になぁお前。お前は俺に買われて俺の所有物になるんだ」ジュルリ…
エルフ姉「ひっ…!」フルフル
男「小動物みたいに震えて……。ククッ、いいねいいね、最高だねェ!」
エルフ妹「お姉ちゃん!」
男「ン?」
エルフ妹「人間め! お姉ちゃんを放せ!」ガチャガチャ
男「オヤジ、あれは?」
店主「こいつの妹ですよ。姉と違って性格に難ありなんで安いですが」
男「ふーん。ならあいつも貰おうか」
「金はこいつで足りるか?」
店主「多すぎるぐらいですぜ」
男「なら多い分はチップで構わない」
店主「ありがとうございます! オプションの方は最大限サービスさせて頂きます」
エルフ姉「うぅ……」フルフル
御者「着きました」
男「ありがとう」
エルフ姉「……」フルフル
エルフ妹「お姉ちゃん大丈夫、お姉ちゃんはわたしが守るから…!」
男「さぁお前たち。今日からここがお前たちの牢獄(いえ)だ」
「そして俺はお前たちのご主人様だ。俺のことは男様と呼ぶんだ」
エルフ姉「男さm」
エルフ妹「いやだ! 誰が人間なんかを主人と認めるものか!」
男「うん? わかってないなぁお前」
「ご主人様にそんな口を聞いたらどうなるか……」ニヤリ
エルフ妹「くっ…!」ビクッ
男「エルフ姉、こい」
エルフ姉「きゃっ!」
エルフ妹「お姉ちゃんに触っ、ぐぅっ…!」ガクッ
エルフ姉「妹ちゃん!」
男「お前たちの首輪には呪いがかかっていてな」
「俺に許可なく触れようとすればそうなる」ククッ
「さぁ行くぞ、エルフ姉」グイ
エルフ姉「あぁっ! 妹ちゃん、妹ちゃーん!」ズルズル
エルフ妹「お、ねえちゃ…!」
男「妹が逆らえば姉が、姉が逆らえば妹が酷い目に合う」
「よく覚えておくといい…! クククッ、ハーッハッハッハ!」
キィ・・・バタン。
男「さて、いつまでもそんなボロ布というのも味気無いな」
「これに着替えるんだ」スッ
エルフ姉「こ、これに…?」
男「早くしないと妹がどうなっても知らないぞ?」
エルフ姉「! はい……、わかりました男様」
ぱさ、スルスル・・・
ガチャ。
エルフ妹「お姉ちゃん!」ハッ
「そ、その格好……」
男「いいだろう、奴隷店の店主がサービスでつけてくれたメイド服だ」
エルフ姉「妹ちゃん…///」
エルフ妹「お姉ちゃん……」
エルフ妹(顔が赤い……、あいつお姉ちゃんに何をしたのよ!)
エルフ妹「許さない…!」ギリッ
エルフ姉(こんな可愛い服、私になんて似合わないよぅ///)
男「気に入らないか? 可愛いと思うんだが」
「まぁいい。お前の分もあるから妹も着替えろ」
エルフ妹「誰がっ!」
男「いいのか?」ススッ
エルフ姉「ひゃうっ!」ビクン
エルフ妹「やめて! すぐ着替えるからお姉ちゃんにひどいことしないで!」
男「ククク、美しい姉妹愛だな」
「エルフ姉、妹に着せてやれ。その間に俺はやることがあるからな」
エルフ妹「汚らしい人間め…!」
エルフ姉「着替えました……、男様」
エルフ妹(人間の服を着せられるなんて屈辱だ…!)
男「うん、やはり似合うな」ジロジロ
エルフ妹「じろじろ見るな、人間!」
男「男様、だ」
「まぁいい。こっちへこい」
エルフ姉「はい……。行こう、妹ちゃん」
エルフ妹「くっ!」
エルフ姉「この匂い……」
男「夕飯だ。アレルギーはないな? 好き嫌いは許さんが」
エルフ姉「あ、ありません……」
エルフ妹「……」
男「妹の方は?」
エルフ姉「妹ちゃんも平気です。牛乳が嫌いですけど」
エルフ妹「お姉ちゃん!」
男「ほう…!」ニヤリ
コト。
エルフ妹「なっ…!」
男「やはりパンにはミルクだな」
「さぁ食べようか。いただきます」
バクッ、もぐもぐ・・・
エルフ妹「……」フルフル
エルフ姉「……」オロオロ
男「どうした、食べないのか?」
エルフ妹「い、いらない! 人間が用意した食事なんて食べるもんか!」
男「そうか……。ならエルフ姉、お前も食べるな」
エルフ妹「ッ!」
男「エルフ妹がミルクを飲むまで、一切の食事を許さない」
エルフ姉「はい、わかりました……」
エルフ妹「お前…!」
男「男様だ、何度言えば分かる?」
「それにしても美味いパンだ。ミルクもパンに良く合う」
ゴクゴクゴク・・・。
ぐぅ~。
エルフ妹「っ!」///
男「ん? 腹が減ってるのか?」
エルフ妹「減ってない!」
男「そうか、それならいいが」バクバク
ぐぅ~。
エルフ姉「っ!」///
男「姉は腹が空いているんじゃないのか?」
エルフ姉「いえ、私も……」
男「そうか」ムシャムシャゴクゴク
エルフ妹「~~~っ!!」
がしっ、ぐいっ!
ゴクゴクゴク・・・。
エルフ妹「ぷはっ!」
男「なんだ、喉が渇いていたのか」
エルフ妹「これでいいんでしょっ!」ウルウル
男「うん? 何がだ?」
「腹が減っているなら食べればいいだろう、おかしな奴だ」
エルフ妹「~~~っ!」///
バクバクバクバク・・・
エルフ姉「くすっ」ニコッ
男「さて、次は風呂か」
エルフ妹「!」ビクン
エルフ妹(こいつのことだ…! きっと…!)
男「さぁ俺の身体を洗って貰おうか、お前たちの身体を使ってだ」ニヤリ
エルフ姉「はい、男様……」スルッ、パサッ
ぬるっ、ぬるっ・・・
エルフ姉「はぁはぁ……」
男「どうした、息が上がってるみたいだが」ククク
男「今度は俺がお前を洗ってやろう」
「隅の隅まで、綺麗にしてやるからな」ワキワキ
エルフ姉「お、男様……」ウルウル
男「この俺の、ジョニーでなぁ」ビンビン
エルフ妹(なんてことをするに違いない……)
(なんとしてもお姉ちゃんを守らないと!)
男「風呂は廊下の突当たりだ。俺は洗い物してるから先に入れ」
エルフ妹「!?」
かぽーん。
エルフ妹「……」チャプ
「ねぇ、お姉ちゃん」
エルフ姉「どうしたの、妹ちゃん?」ゴシゴシ
エルフ妹「あいつってなんなの?」
エルフ姉「あいつって、男様のことだよね?」
エルフ妹「あんな奴、様付けで呼んじゃダメ!」
エルフ姉「そんなに悪い人だとは思えないけど……」
エルフ妹「そんなわけない! 人間はみんな敵だ!」ザバ
エルフ姉「でもエルフ族は戦争で負けちゃったから……」
エルフ妹「私が負けたわけじゃないもん!」
カタッ。
男「お前たち」
エルフ妹「!」ハッ
エルフ妹(あいつ、私たちが気を抜くのを待ってたのか!)
(どこまでも卑劣な……、これだから人間は!)
男「着替え、置いておくぞ」
エルフ姉「はい、ありがとうございます」
男「ゆっくり温まるといい」スタスタ
エルフ妹「……」
エルフ姉「ね? やっぱりあの人はそんなに悪い人じゃないと思うよ」
エルフ妹「そ、ん、な、わけなーい!」バシャーン
エルフ姉「どうどう」
エルフ妹「がるるるる…!」
エルフ姉「あの、男様…?」
男「ん? 風呂はどうだった」
エルフ姉「あ、いいお湯でした」
男「そうか、なら俺もそろそろ入るか」
エルフ妹「その前に! これ何よ!」
男「これ?」
エルフ妹「私たちの格好!」
男「あぁ、可愛いじゃないか。似合ってるぞ」
エルフ姉「」ウサピョーン
エルフ妹「」ウニャニャーン
エルフ姉「はぅ…///」
男「それも店主のサービスでな。サイズもぴったりじゃないか」
エルフ妹「なんなの? 私たちは着せ替え人形か何かなわけ!?」
男「そうだな。着せ替え人形でもある。文句あるのか、奴隷の分際で」
「文句があるなら着なくていいぞ? "二人揃って"裸になればいい」
エルフ妹「ぐっ…!」
男「まだ何かあるか?」
エルフ妹「……ない」
男「ありません、だ」ガシガシ
「風呂に行ってくる。エルフ姉、妹の頭をちゃんと乾かしておけ」
エルフ姉「はい、男様」
ごしごし。
エルフ妹「やめてよお姉ちゃん、頭ぐらい自分で拭けるって!」
エルフ姉「だめよ、男様の命令なんだから」
エルフ妹「またあいつのこと様付けで呼ぶし!」
エルフ姉「はいはい♪」ゴシゴシ
エルフ妹「……」
エルフ妹(調子が狂う。人間はみんな悪い奴のはずなのに……)
エルフ姉「はい、おしまい」
エルフ妹「ん、ありがと」
エルフ姉「あっ」
エルフ妹「どうかした、お姉ちゃん?」
エルフ姉「うん。ペンダント、着替えた時に脱衣所に忘れてきちゃったみたい」
エルフ妹「お姉ちゃんが大事にしてる、お母さんの形見のペンダントだよね」
エルフ姉「ちょっと取ってくるから待っててね」
エルフ妹「うん」
パタパタ。
エルフ姉「えっと……」ゴソゴソ
「よかった、ちゃんとあった」キラリ
『ヒャッホーッ!!』バシャーン!!
エルフ姉「!?」ビクン
男「――――! ――――!」
エルフ姉「…? ……」
男「――――――! ―――!」
エルフ姉「……あっ、妹ちゃんのところに戻らないと」パタパタ
男「…? 誰かいるのか?」ガラッ
しーん。
男「気のせいか」
エルフ妹「あっ、お姉ちゃん。ペンダント見つかった?」
エルフ姉「うん」
エルフ妹「お母さんか……、厳しかったけど優しかったよね」
エルフ姉「そうね。厳しくて、優しくて、頭も良くて」
エルフ妹「剣術も秘術もすごかったよね。料理だけは壊滅的だったけど」
エルフ姉「それに里のみんなからも慕われてた」
「眠る時は子守唄を歌ってくれたわね」
「~♪ ~♪」
エルフ妹「お姉ちゃんがいつも口ずさんでるお母さんの子守唄。その歌好きだなぁ」
エルフ姉「~♪」
男「……その歌」
エルフ姉「きゃっ、男様!?」
男「エルフ姉、今の歌は」
エルフ姉「母がいつも聞かせてくれていた子守唄です」
エルフ妹「お姉ちゃん! こいつにそんなこと話しちゃダメ!」
男「お前らの母親が、か」
「……こい、寝室に行くぞ」
エルフ姉「はい、男様」
エルフ妹「寝室…!?」
男「脱げ」
エルフ姉「えっ?」
男「脱げと言っているんだ!」
ビリィッ!
エルフ姉「きゃぁぁぁっ!」
男「せっかく奴隷を買ったんだ。夜は楽しまないとなぁ」ヒヒヒ
エルフ姉「い、いや……」フルフル
男「別にいいんだぞ、お前の妹を代わりに使うだけだ」
エルフ姉「……そんな!」
エルフ姉「……さい」
男「あん? なんだって?」
エルフ姉「私にご奉仕させて下さい……」フルフル
男「ふふん、わかってるじゃないか」
エルフ姉「だから妹には……」
男「それはお前が俺を満足させられるかどうかにかかってくるかな」
エルフ姉「頑張りますから……、どうか妹には……」ウルッ
エルフ妹(なんてことを考えているに違いない!!)
男「はぁー、今日はいろいろ買い物したから疲れたー、寝るぞー」バフッ
エルフ妹「えっ?」
男「どうした? 子どもはそろそろ起きてるのも辛い時間だろう?」
エルフ妹「なんでもない……」
エルフ妹(こいつまさかErectile Dysfunctionか?)
エルフ姉「あの、男様。私たちはどこで眠れば……」
男「悪いがベットは一つしかないんだ」
エルフ妹「!」ハッ
男「他の部屋はまだ片付いてないし、ベッドを二つも置けるほど部屋も広くないからなぁ」
エルフ妹「くっ…! やっぱりそういうことか…!」
男「顔がずいぶんと険しいがそんなに眠いのか…?」
エルフ妹「……」スタスタ、ポフ
男「…?」
エルフ妹「抱けばいいだろっ!」クワッ
男「!?」
エルフ姉「!?」ビクッ
エルフ妹「だから……お姉ちゃんには手を」ウルッ
男「へぇ、お前も可愛いところあるじゃないか」スッ
エルフ妹「……っ!」
男「お前がこんなに怖がりだとはな」ヨシヨシ
エルフ妹「……あれ?」
男「あの天井の木目が気になるんだろ? じっと見てると顔に見えてくる感じの」→(∵)
「俺はリビングで寝ようかと思ったんだが、一緒に寝るか」
「エルフ姉、お前は妹の反対側だな」
エルフ姉「あ、はい」イソイソ
男「ランプの灯り、消すぞ」フッ
「じゃ、おやすみ」
エルフ姉「おやすみなさい」
エルフ妹「……」
「…………」
「寝よう」
翌朝――。
エルフ妹「すぅすぅ……」
ぎしっ。
エルフ妹(ぅん…?)
男「ククク、よく寝てやがるな」
エルフ妹(っ! こいつ、私に何する気だ…!?)
男「額に肉って書いてやろう」
エルフ妹(……)
男「いや、ここは米にするべきか? 絆創膏をバツの字に貼るのも捨てがたいしなぁ」
エルフ妹「はぁ……」パチッ
男「うおっ、おおお起きたか。朝食ができたから呼びに着てやったぞ」サッ
エルフ妹「今何隠したの?」
男「何も隠してない」
エルフ妹「ふーん……」
男「ほら、行くぞ」
エルフ妹「はいはい」
エルフ妹「あれ? まだ食べてなかったの?」
男「お前が遅いからだろう。飯は全員揃ってが基本だ」
エルフ姉「妹ちゃん、早く座って」
エルフ妹「うん」コトッ
「げっ…!」
ミルク「Good Morning!」
男「もしかして腹が空いていないのか?」ニヤニヤ
エルフ姉「好き嫌いは良くないよ、妹ちゃん」
エルフ妹「別に嫌いなんかじゃないもん。ちゃんとお腹も空いてるし」フン
男「じゃあ、手を合わせて、いただきます」
エルフ姉「いただきます」
エルフ妹「……いただきます」ボソリ
男「ごちそうさまでした」
エルフ姉「ごちそうさまでした」
エルフ妹「ごちそうさま」フン
男「さて、今日から奴隷のお前たちに仕事を与える」
エルフ姉「お仕事ですか」
男「そうだ。お前たち、料理はできるか?」
エルフ姉「私は少し。妹ちゃんはまったくです」
男「ならエルフ姉には朝、昼、晩の食事を作ってもらおうか」
エルフ姉「わかりました」
男「エルフ妹」
エルフ妹「……何?」
男「お前は洗濯だ」
エルフ妹「やったことない」
男「そうか。お前は洗濯だ」
エルフ妹「聞こえなかったの?」
「そんなのやったことないって言ってるの」
男「そんなことは聞いていない」
「ご主人様がやれと言っている。奴隷に拒否権など無い」
エルフ妹「くっ…! こいつ…!」
男「あまり反抗的だと売り飛ばすぞ、お前」
エルフ妹「好きにしたら?」フン
エルフ姉「妹ちゃん!」
エルフ妹「何よ、お姉ちゃん!」
エルフ姉「お姉ちゃんをあまり困らせないで」
エルフ妹「…! お姉ちゃん、こいつの味方するの…?」
エルフ姉「味方とかそういうことじゃないわ」
エルフ妹「……お姉ちゃんの馬鹿! もう知らない!」ダッ
ガチャッ、バタン!
男「これだから子どもは……」ハァ
エルフ姉「すみません、男様」
男「お前が気にすることは無い。困るのはあいつだ」
「と言っても、妹のことが気にならないわけがないか」
エルフ姉「はい……」
男「お前は昼食の用意を頼む」
「簡単なもので構わない。台所はわかるな?」
エルフ姉「はい。あの、男様は…?」
男「散歩だ。昼までには戻る」
エルフ姉「わかりました」
エルフ妹「……」
「お姉ちゃんの馬鹿」ポツリ
「あいつは私たちの里を侵略した人間なのに……」
「なんであいつの味方なんかするのよ」
「……はぁ」
??「おっ、こいつもしかして野良奴隷か?」
エルフ妹「えっ?」
弟者「野良奴隷ってなんだよ、兄者」
兄者「そのままの意味だよ、弟者」
「野良の奴隷、主人に捨てられたか、逃げ出してきたのかわからんが」
「これはいい拾い物だぞ、弟者」ニヤリ
エルフ妹「ちょっ、あんたたち何言ってるのよ…?」
兄者「野良奴隷は誰のものでもないからな」
「俺たちが貰って可愛がってやろうじゃないか」
弟者「さすがだな兄者」
兄者「おっ、しかもよく見ればこいつ、エルフじゃないか」
「これは可愛がり甲斐がありそうだな」ククク
エルフ妹「いやっ、こないでよ人間!」ダッ
エルフ妹 は 逃げ出そうと した▽
弟者「おっと逃がさないぜ」
しかし 回りこまれて しまった▽
兄者「さすがだよな俺ら」ワキワキ
弟者「さすがだろ俺ら」ジリジリ
エルフ妹「いや…! 誰か、誰か助けてよ……」フルフル
男「ん? お前、エルフ妹か?」
エルフ妹「えっ? あ、あんた…!」
兄者「あん? なんだお前は」
男「俺か? 俺はこいつの所有者……だと思うんだが」
弟「だと思うってなんだよ」
男「エルフの奴隷なんてどいつも同じような顔してるだろ」
「昨日買ってきたばかりだからはっきりわからなくてな」
「おい、そこの奴隷」
エルフ妹「な、何よ…!」
男「お前、誰の奴隷だ?」
エルフ妹「わ、私は……」
エルフ妹(この二人組の人間、目が血走ってて明らかにやばい感じがするし……)
(こんな奴らの奴隷にされたら何されるかわかったもんじゃない!)
(それなら……)
エルフ妹「私はあんたの奴隷よ……」
男「そうか」
「……お前ら、どうやらこいつは俺の奴隷じゃないらしい」
エルフ妹「えっ!?」
兄者「なんだ、違うのか?」
男「あぁ、俺の勘違いだったみたいだ」
「お前たちが先に見つけたんだ、欲しいならお前らが拾えばいい」
エルフ妹「ちょっとあんた、なんで…!」
男「俺の奴隷は俺のことを『あんた』なんて呼ばないからな」
「別の場所を探してみるよ」
エルフ妹「っ! こいつ…!」
弟者「よくわからんが、こいつは俺らが貰っていいみたいだな」
兄者「さすがだな俺ら、ツイてるぜ」
エルフ妹「ま、待って…!」
男「野良奴隷風情が俺に話しかけるな」
エルフ妹「私、野良じゃない!」
男「ほう? ならなんなんだ?」
エルフ妹「わ、私は……男様の……ぶつです」
男「あぁん? 聞こえんなぁ」ニヤニヤ
エルフ妹「私は、男様の所有物です!」
「だから……捨てないで、下さい……」ウルウル
兄弟者「「なん、だと…?」」
男「……もしかして、俺が出す白い液体が大好きなエルフ妹か?」
エルフ妹「にゃっ…!?///」カァッ
男「んー? 違うのか?」
エルフ妹「ち、違いません……男様の出す白い液体が大好きなエルフ妹ですっ///」
兄者「し、白い液体…!?」ビクビクン
男「今朝も俺が出した白い液体をおいしそうに飲んでいたエルフ妹か?」
エルフ妹「はい……男様の出して下さった白い液体はとても美味しかったですっ///」フルフル
弟者「なんて淫乱な…!」ゴクリ
男「おぉっ、なんだやっぱりエルフ妹か」
「探してたんだぞ?」ククク
エルフ妹「すみません、男様のお手を煩わせてしまって……」
男「さぁ、帰ろう。エルフ姉が昼飯を作って待ってる」
兄者「おい、お前! どういうことだよ!」
弟者「お前の奴隷じゃないんじゃなかったのかよ!」
男「そう言われてもなぁ。俺のことちゃんと知ってるみたいだし」
「ぬか喜びさせたのは済まなかったな。これは詫びだ」チャリン
兄者「き、金貨!?」
弟者「ま、まぁ間違いは誰にだってあるさ。気にすんなよ」
男「そうか、ありがとう」
弟者「どうする、兄者」
兄者「どうする、って。何がだ、弟者」
弟者「金貨なんて持って帰っても、どうせ母者に取り上げられてしまう」
兄者「そうか……ならここはパーッと風俗にでも」
母者「探したよ、あんたたち!」
兄者「げぇっ! 母者!」
母者「店番ほったらかして、どこいってんだい!」ガシッ
「さっさと帰って店の手伝いするんだよ!」ズルズル
弟者「や、やめっ、俺たちは、桃源郷に行かなければ……」
母者「あんまり馬鹿言ってると三途の川渡らせるよ!」
兄弟者「「俺らは母者の奴隷じゃないっつーのぉ!」」
エルフ妹「……」
男「……」
エルフ妹(くそっ……さっきはよくもあんな恥ずかしいことを……)
(きっと家に帰ったら同じ事を私にさせる気なんだ…!)
(やっぱりこいつもさっきの奴らと同じ汚らわしい人間だ……)
男「おい」
エルフ妹「……なんでしょう、男様」
男「あまり心配させるな」
エルフ妹「えっ?」
男「お前の姉をだ」
男「それと、家に帰ったら俺のことは好きに呼べばいい」
「俺のことを様付けで呼ぶのは外出した時だけで構わない」
「周りの目ってのも考えてくれればそれでいい」
エルフ妹「……わかった」
男「ほら、ついたぞ……牛乳が大好きなエルフ妹」
エルフ妹「牛乳? ……あっ!///」
男「はっはっはっ!」
エルフ妹「~~~っ!///」
エルフ姉「おかえりなさいませ、男様」
男「あぁ、ただいま」
エルフ妹「……あの、お姉ちゃん」
エルフ姉「おかえり、妹ちゃん」
エルフ妹「……ただいま」
男「昼食はできてるな?」
エルフ姉「あ、はい。ですが……」
男「ん?」
男「こ、これは……」ゴクリ
エルフ妹「真っ黒」
エルフ姉「少し焦がしてしまって……。すみません」ペコリ
「こちらのはあまり焦げていないので、こちらを召し上がって下さい」
男「いや、いい」
エルフ姉「そ、そうですよね、すぐ作り直しますので!」
男「これでいい」コト
エルフ姉「えっ、でもそれは焦げが一番酷い奴で」
男「今日はこれぐらい焦げてる奴が食いたい気分なんだ」
エルフ姉「ありがとうございます、男様」
エルフ妹「……」
男「ごちそうさまでした……」ゲソッ
エルフ妹「ごちそうさま」
エルフ姉「ごちそうさまでした」
「男様、その……大丈夫ですか?」
男「大丈夫だ……いや、やはり少し横になる」
エルフ姉「わかりました」
男「裏に井戸があるからエルフ妹に洗濯の仕方を教えてやれ」
「お前は分かるだろう?」
エルフ姉「はい」
男「洗濯が終わったら起こしてくれ」
エルフ姉「わかりました」
じゃぶじゃぶ、ごしごし。
エルフ姉「こういう服はね、傷みやすいから優しく……」
エルフ妹「ねぇ、お姉ちゃん」
エルフ姉「何? 妹ちゃん」
エルフ妹「お姉ちゃんは、人間のことどう思ってるの?」
エルフ姉「そうね……私もやっぱり嫌いかな」
「お母さんを殺したのも人間だし、私たちを捕えたのも人間……」
エルフ妹「じゃあ、男のことは?」
エルフ姉「……それは」
エルフ姉「怖い人、かな」
エルフ妹「怖い人? 好きとか嫌いじゃなくて?」
エルフ姉「昨日、男様のことは悪い人じゃないって言ったけど、男様は私たちは買ったご主人様」
「私たちは男様の奴隷なの」
エルフ妹「うん、だから私たちはこんな風に働かされてる」
エルフ姉「働かされてるって言っても、こんなのただの家事」
「今までだってやってたことよ」
エルフ妹「あっ……」
エルフ姉「奴隷っていうのは何をされても仕方がないの」
「ただ黙って耐えるしかないのに……」
エルフ姉「私は男様が何を考えてるのか分からない」
「いつこの生活が終わってしまうのだろうと思うと、とても恐ろしいの……」
エルフ妹「お姉ちゃん……」
エルフ姉「だから怖い人」
「悪い人ではないと思うけど、男様のことはほとんど知らないし……」
「妹ちゃんもあまり逆らわない方がいいわ」
エルフ妹「うん、分かった……」
エルフ妹(怖い人、か……。そんな風には考えてなかったな)
エルフ姉「ふぅ、これでおしまいっと」
「今日はお天気もいいし、今からでも乾きそうね」
エルフ妹「私、男起こしてくるね」
エルフ姉「いいの?」
エルフ妹「うん、お姉ちゃんは休んでていいよ」
エルフ姉「ふふっ、ありがと。じゃあお言葉に甘えさせてもらうわね」
ガチャ。
エルフ妹「終わったよ、洗濯」
男「くかー……」zzz
エルフ妹「完全に寝てる……」
エルフ妹『お姉ちゃんに触っ、ぐぅっ…!』ガクッ
男『お前たちの首輪には呪いがかかっていてな』
男『俺に許可なく触れようとすればそうなる』ククッ
エルフ妹「……」ソォー
つんつん。
エルフ妹「触れる……」
エルフ妹「今は『許可』してくれてるってこと、だよね」
エルフ妹(隙だらけ……。今ならこいつのこと……)
エルフ妹「……」ソロリ、ソロリ
がしっ。
男「っく!? ぐぅっ…!」ジタバタ
エルフ妹「……」ギュウウウ
男「ふがっ!」バッ
エルフ妹「やっと起きた」
男「あぁ、エルフ妹か……」
「なんか鼻が痛いんだが」
エルフ妹「さぁ次は私たちに何をさせるの?」
男「いや、それより鼻が」
エルフ妹「さぁ!」
男「……掃除でもしてもらおうかな」
エルフ妹「わかった」
エルフ妹「お姉ちゃん、次は掃除だって」
エルフ姉「わかったわ。男様はどうしてる?」
エルフ妹「お風呂の水汲んでくるって」
エルフ姉「お風呂の……」
エルフ妹「どうかした、お姉ちゃん」
エルフ姉「ううん、なんでもないわ。行きましょう」
エルフ妹「うん」
男「エルフ姉ー、そろそろ夕飯の支度を頼む」
エルフ姉「はい、わかりました」
男「妹は巻き割りを手伝ってくれ」
エルフ妹「薪割り?」
男「薪割りもやったことないのか?」
エルフ妹「やったことない」
男「家事とか全くやったことないのか?」
エルフ妹「家のことはお母さんとお姉ちゃんがやってくれてたから」
男「その間、お前は何してたんだ?」
エルフ妹「私は祝福されてるからずっと秘術の練習。それと剣術」
男「戦争のため、か」
「というか、エルフ妹は秘術が使えるのか」
エルフ妹「使えるけど今は使えない。この首輪が邪魔してるから」
男「あぁ、そりゃそうか」
「奴隷が秘術なんて危険なもの使えたら、とっくに暴動が起きてるか」
男「奴隷として生きてくには覚えなきゃいけないこと、たくさんあるぞ」
エルフ妹「なら解放してよ。私もお姉ちゃんも」
男「やなこった」
エルフ妹「ケチ」
男「……そうだな。どうしてもって言うなら、解放してやってもいいぞ」
エルフ妹「えっ?」
男「ただし、姉かお前か、どちらか一人だけだ」ニヤニヤ
「どうする?」
エルフ妹「そんなの…!」
エルフ妹(私かお姉ちゃんのどちらかだけ解放してもらえる……)
(一生、人間の奴隷なんて絶対嫌だ)
(でも、私かお姉ちゃんのどちらか一人なんて……)
男「はい、時間切れー」
エルフ妹「なっ!? 時間切れって何よ!」
男「どちらか一人だけ解放してもらえる券の使用期限だ」
エルフ妹「どうせ初めからどっちも解放する気なんてなかったくせに」
男「それは……どうかな?」フフン
エルフ妹「……早く薪割り教えなさいよ」イラッ
男「なんで奴隷がそんなに偉そうなんだ、まったく」
エルフ姉「男様、夕飯の用意ができました」
男「あぁ、すぐ行くよ。……夕飯は焦げてないよな?」
エルフ姉「だ、大丈夫ですっ///」
男「ならよかった」
「エルフ妹も行くぞ」
エルフ妹「わかってる」
男「ごちそうさまでした。うまかったよ、エルフ姉」
エルフ姉「ありがとうございます」
男「洗い物が終わったら風呂に入るといい。もう沸かしてあるから」
「俺は書斎で本を読んでいるから、あがったら呼んでくれ」
エルフ姉「はい。……あの、男様?」
男「なんだ?」
エルフ姉「その……人間のお風呂のお湯というのは身体によろしいのですか?」
男「ふぁ!?」
エルフ妹「お姉ちゃん、何言ってるの…?」
エルフ姉「昨日、男様がお風呂に入っていた時なんですが」
「私、ポケットに忘れ物をしてしまってそれを取りに脱衣場に戻ったんです」
男「ま、まさか……」
男『ヒャッホーッ! 少女のエキスが染み込んだ風呂だー!』バシャバシャ
『うめえwwwwマジうめえwwwマジ生き返るwwwww』ゴクゴク
『俺は今エルフの少女の一部が染み込んだお湯に包まれている!』
『これはもはやエルフの少女の群れに包まれているのも同じ!!』
『宇宙のwwww法則がwwwww乱れまくりんぐwwwwwwww』ヘヴン!!
男「あれを聞いていたのか…?」ゴクリ
エルフ姉「はい」
エルフ妹「……え、飲んでたの? ほんとに?」
男「……」ダラダラ
エルフ姉「と言っても、断片的でしたので」
「お湯を飲まれている、というのと、生き返るという声ぐらいしか……」
男(まだだ……、ここで選択を間違わなければ誤魔化せるはずだ……)
男「そ、そうなんだ! 人間の風呂は健康によくってだな」
「エルフの風呂はそういう効能はないのか?! 文化の違いって奴かな!」ハハハ…
エルフ妹「んなわけあるかー!」ズン!
男「ぐふっ!?」ガクン
エルフ姉「お、男様!?」
男「腰の入ったいい拳だった、ぜ……」バタン
エルフ姉「妹ちゃん、なんてことするの!?」
エルフ妹「お姉ちゃん騙されちゃだめだよ!」
「こいつとんだ変態だよ! ロリコンなの!」
エルフ姉「えっ、えっ、どういうこと?」
エルフ妹「こいつは私たちが入ったお風呂のお湯を飲んで悦んでたの!」
エルフ姉「でも、男様は健康にいいからだって」
エルフ妹「健康にいいなんて嘘っぱちだよ!」
エルフ姉「……嘘なんですか? 男様……」ウルウル
エルフ姉「……」ウルウル
男「……」
エルフ妹「……」ジー
男「……はい、嘘でございます」
エルフ姉「!!」ガーン
エルフ妹「変態」
男「…!」ゾクゾク
エルフ妹「奴隷に罵られて気持ちいいの?」
男「ま、まだまだぁ…!」
エルフ妹「気持ち悪い……」ゾワッ
男「……ふぅ」ビクンビクン
男「……風呂に入る」
エルフ妹「そうして。私たちは後から入るから」
エルフ姉「……」ショボン
男「お前らもだ」
エルフ妹「は? 嫌に決まってるでしょ」
男「お前らはなんだ? 奴隷だろう」
エルフ姉「っ!」ビクッ
エルフ妹「こいつ…!」
男「俺は、おれは……ご主人様だぞ! 偉いんだぞ!」ジワッ
「だから一緒に入れよぅ!」ポロポロ
エルフ妹「マジ泣きしながら命令しないでよ!」
エルフ姉「ど、どうしよう、妹ちゃん……」オロオロ
エルフ妹「わ、私に聞かないでよ……」ドンビキ
男「どうしようじゃないの! ご主人様の命令なの!」ダン!
「一緒に入ればいいんだよ!」ダンダン!
「一緒に入るだけ! 何もしないから!」ズザァッ
エルフ妹「いい大人が駄々こねた挙句に土下座とか……」
エルフ姉「なんか可哀想だよ……、一緒に入ってあげよう?」
エルフ妹「ダメだよ、お姉ちゃん!」
「あんなこと言ってるけど洗いっことか言って変なことするに決まってる!」
男「くっ…! あ、洗いっこもしませんから……」
エルフ妹「『くっ』、って何よ、『くっ』って!」
エルフ妹「……」
男「湯船に入って抱っこするだけ……」グスッ
エルフ妹「やだ!」
エルフ姉「そのくらいなら……」
男「えっ、ほんとに!?」
エルフ妹「ちょっ、お姉ちゃん!? いいの!?」
エルフ姉「う、うん…///」
男「ありがとうございます、エルフ姉様ぁっ!」
エルフ妹「マジ気持ち悪い……」
男「うっ…!」ビクンビクン
エルフ妹「ダメだコイツ、早く何とかしないと……」
かぽーん。
男「~♪」ギュッ
エルフ姉「///」
エルフ妹「……」イライラ
男「間違いなく生涯で一番幸せな時間だった」ホカホカ
エルフ姉「///」
エルフ妹「人間ってみんなあんたみたいなの?」
男「失敬だな、俺みたいな紳士的な人間はそうはいないぞ」
エルフ妹「どこが紳士的よ、変態!」
男「仮に変態だとしても、変態という名の紳士だ!」
エルフ妹「はぁ……、どうしてエルフは人間なんかに負けちゃったのよ」
男「そんなもん、お前たちが優しすぎるからに決まってるだろう」
エルフ妹「何よ、優しすぎるって」
男「お前たち、エルフと人間の戦争でエルフが人間を何人殺したか知ってるか?」
エルフ妹「何人? えっと……」
エルフ妹(戦争だしきっと10人ぐらい? もしかして100人ぐらい? もっとかな?)
エルフ妹「たくさんよ! エルフは秘術も使えるしとっても強いんだから」
男「エルフ姉は何人ぐらいだと思う?」
エルフ姉「……0人、でしょうか」
エルフ妹「え? お姉ちゃん、戦争だよ?」
男「どうしてそう思った?」
エルフ姉「なんとなく、です」
男「……正解だ」
エルフ妹「うそ…!?」
男「エルフ妹が言うようにエルフは強い種族だ」
「人間には真似できない秘術も使える」
「けど、エルフは人間を殺さなかった」
「足の腱を斬り身動きを取れなくしたり、秘術で意識を奪ったり」
「最後まで足止めを目的とした戦い方で、命は一つとして奪わなかったよ」
エルフ妹「そんなの、勝てるわけないじゃない……」
男「そうだ。だからエルフが戦争に負けたのは当然の結果だったんだ」
エルフ妹「エルフはたくさん殺されたのに……。私たちのお母さんだって……」
男「……ほら」ポイ
カラン。
エルフ妹「何? 果物ナイフ?」
男「俺を殺せ。そうすりゃお前たちは自由だ」
エルフ妹「なっ!?」
エルフ姉「男様!?」
男「俺に触れられない呪いは解いてある」
エルフ妹「……」ギュッ
エルフ姉「だ、ダメだよ妹ちゃん!」
エルフ妹(こいつを殺せば私たちは自由……)
男「目も瞑っててやるからいつでも刺すといい」ス…
エルフ妹(こんな変態、死んだって構うもんか)
(でも……こんなの刺したら痛いだろうな)
(きっと血もいっぱい出て、とっても苦しくて……)
男「……」パチッ
エルフ妹「え?」
男「……」スチャ
エルフ妹「短剣!? そんなのどこから…!」
男「死ね…!」ブン
エルフ姉「きゃっ…!」
エルフ妹「お姉ちゃんっ!!」ガバ
男「……」
エルフ妹「……え?」
男「そんなだからエルフは人間に負けるんだよ」ポイ
カシャン。
男「姉が殺されるかもしれない、そんな時でも人間を殺せない」
「相手を殺すくらいなら自分の身をていして仲間を守ろうとする」
「エルフという種族は優しすぎる……。あの女も……」
エルフ妹「……」ヘナヘナ…ペタン
男「怖がらせて悪かったな、二人とも」
「今日はもう寝ろ。俺は物置で寝るから朝になったら起こしてくれ」
「おやすみ」
キィ・・・バタン。
エルフ妹「……お姉ちゃん」
エルフ姉「……なに?」
エルフ妹「私も、あいつのこと怖い……」
「何考えてるかわかんないんだもん……」
エルフ姉「そうね……、私もよ」
「今日はもう寝ましょう」
エルフ妹「うん……」
翌朝――。
カチャ・・・。
エルフ姉「男様、おはようございます。朝です」
男「んん…? あれ、なんで俺こんなとこで寝てんだ?」ムクリ
エルフ姉「それは昨夜、男様がご自分でこちらで眠るとおっしゃられて」
男「あぁ、そうだったな。……昨日は悪かったな」
エルフ姉「いえ、気にしておりませんので。男様もお気になさらないで下さい」
男「そういってくれると助かる。朝食はもうできてるのか?」
エルフ姉「はい」
男「わかったすぐ行くよ」
男「ごちそうさま。今朝も美味かった」
エルフ姉「ありがとうございます」
男「昨日の昼飯を見たときはどうなるかと思ったが」
エルフ姉「あ、あれはもう忘れて下さい///」
男「ははは、悪い悪い。さって今日の仕事だけど」
エルフ姉「はい」
男「エルフ姉は家の掃除。妹は洗濯だ」
「この家にはまだ引っ越してきたばかりで、ところどころ掃除が後回しになってるんだ」
「たぶん午前の間じゃ終わらないと思うから、午後は二人で掃除だ」
「俺は今日一日家を空けるから俺の昼食は必要ない。夕飯には戻る」
「以上だ」
エルフ姉「はい、わかりました」
エルフ妹「……」
エルフ妹「……」ゴシゴシ、パタパタ
エルフ姉「妹ちゃん、昨日のことまだ怒ってるの?」
エルフ妹「怒ってない」
エルフ姉「ほんとに?」
エルフ妹「ほんとに。ただ……」
エルフ姉「ただ?」
エルフ妹「悔しいだけ。エルフは馬鹿ばっかりなんだもん……」
エルフ姉「こらっ! そんなこと言っちゃダメよ」
エルフ妹「でも……」
エルフ姉「デモもテロもないの」
「私たちのお母さんだって戦争に参加してたのよ?」
「お母さんのこと馬鹿なんて言っちゃダメ」
エルフ妹「……ごめん」
カタン。
エルフ妹「あっ、小箱が…!」
エルフ姉「落としちゃったの? 壊れてない?」
エルフ妹「うん、箱は大丈夫みたいだけど……」カパッ
「中身は……えっ?」
エルフ姉「もしかして、壊れちゃってた?」
エルフ妹「これ……」チャリ
エルフ姉「えっ? それって……」ゴソゴソ
「やっぱり、私が持ってるお母さんの形見のペンダントと同じ」
エルフ妹「なんであいつがこれを持ってるの?」
エルフ姉「わからない……」
「私もお母さんにお守りって言って渡されただけだから」
エルフ妹「これ、どうしよう」
エルフ姉「とりあえず、元に戻しておきましょう」
「勝手に開けたなんて知られたら怒られてしまうわ」
エルフ妹「男はそんなことで怒らないでしょ?」
「それより直接聞いてみたらどうかな?」
エルフ姉「ダメよ」
エルフ妹「むぅ。はーい」
エルフ姉「私はそろそろ夕飯の用意をするから、後お願いね」
エルフ妹「うん、任せて」
キィ・・・バタン。
エルフ妹「行っちゃった?」
「よしよし、今のうちに……」
ごそごそ・・・。
男「ただいま」
エルフ姉「おかえりなさいませ、男様」
男「いい匂いだな」
エルフ姉「今夜はシチューです」
男「みたいだな。夕飯が楽しみだ」
エルフ姉「もうすぐできますので、居間でお待ち下さい」
男「いや風呂の用意がまだだろう。それだけは飯前に済ませておかないと」
エルフ姉「妹ちゃんにも手伝わせましょうか?」
男「いや、いいよ。水汲みは力仕事だからな」
エルフ姉「ありがとうございます、男様」
男「…? どうした、急に?」
エルフ姉「男様は昨晩、エルフは優しすぎるとおっしゃいました」
「ですが、男様も十分優しいと思います」
男「俺が、優しい?」ハハッ
「お世辞でも嬉しいよ、ありがとう」
エルフ姉「そんなつもりでは……」
男「さって、おいしい夕飯のために一仕事頑張るか」
夕食後――。
男「今日も一緒に入ろう」
エルフ妹「い、や!」
男「うるせー、入ろー!」ドン!
エルフ妹「うるさいのはそっち!」
男「一回入ったら何回入っても一緒だろ」
「エルフ姉はどう思う?」
エルフ姉「私はご一緒でも構いませんよ」ニコニコ
エルフ妹「お姉ちゃん、甘やかしちゃダメ!」
男「甘やかすって……、仮にも俺はご主人様だぞ」
エルフ妹「ご主人様だろうとダメなものはダメ!」
かぽーん。
エルフ妹「はぁ、結局……」
男「いい湯だなぁ、エルフ姉」ギュッ
エルフ姉「は、はい…///」
エルフ妹「これだもん……。私もだけどさ」
エルフ妹(やっぱりエルフって優しすぎるのかな……)
男「エルフ妹もこっちこいよ」
エルフ妹「い、や。私はもう出るけど」ザバァ
「お姉ちゃんに変な事したら絶対許さないから」
男「わかってるよ」
男「くくく、邪魔者はいなくなった……」
「エルフ姉は可愛いなぁ!」ギュゥ
「肌はスベスベだし、髪はサラサラだし」スリスリ
エルフ姉「ひゃっ、男様、くすぐったいです…///」
男「あぁ、ごめんな」
エルフ姉「……」チャプ
男「……」
エルフ姉「あの……」
男「どうした?」
エルフ姉「何も、しないんですか?」
男「何かして欲しいことでもあるのか?」
エルフ姉「いえ……、妹ちゃんもいなくなりましたし」
「その、エッチなこととかされるのかと…///」
男「っ! ……お前」
「可愛すぎるっ!!」ワシワシ
エルフ姉「きゃうっ」
男「けど、ちょっと離れてくれ……」ススス
エルフ姉「男様…?」
男「ちょっとジョニーが……」
エルフ姉「ジョニー?」
男「いや、なんでもない。素数を数えたからもう大丈夫」ダキッ
「それで、なんだ……エッチなことだったか」
エルフ姉「はい///」
男「して欲しいのか? エルフって性欲強かったりする?」
エルフ姉「そ、そんなことありません!///」
男「お前たちが本気で嫌がるようなことはしないよ」
「どうしてそんなこと聞いたんだ?」
エルフ姉「少し、不安になってしまって……」
男「不安に?」
エルフ姉「私たちは男様の奴隷として買われてきました」
「なのに男様は私たちにこんなによくしてくれます」
男「強制労働を強いている」
エルフ姉「このくらい、家でもよくやっていました」
「衣食住、全て揃っていますし、奴隷というよりメイドです」
男「賃金は出ないぞ」
エルフ姉「それは……そうですけど」
男「お前たちは奴隷だ。だから奴隷としていろいろ命令している」
エルフ姉「はい」
男「お前たちは子どもだ。ちゃんと食ってちゃんと寝るのが仕事だ」
エルフ姉「はい…?」
男「俺はロリコンだ。ロリコンは子どもを大切にするのが仕事だ」
エルフ姉「は、はぁ…?」
男「Yesロリータ、Noタッチだ」
エルフ姉「あの、すでに今触れられていると思うんですが……」
男「邪な気持ちがなければセーフだ」
男「今日は一緒に寝るぞ」
エルフ妹「えー……、今日も物置で寝ればいいのに」
エルフ姉「そんなこと言わないの」
エルフ妹「っていうか、もう一つベッド買わないの? 今日の掃除で部屋一個空いたじゃん」
男「なんかもう別にいいかなーって。お前たち抱いて寝るの気持ちいいし」ウヘヘ
エルフ妹「気持ち悪い……」
男「こいつは一度本気でシメた方がいいかもしれないな」
エルフ妹「やれるもんならやってみろっての」
男「裸にひん剥いて放り出すぞ。姉を」
エルフ姉「えぇっ!?」
エルフ妹「できないくせに……。おやすみ」コロン
エルフ姉「え、えっと……」ウルウル
男「冗談だ」
エルフ姉「お、おやすみなさいっ」
男「……おやすみ」フッ
それから数日が過ぎた――。
男「あれ? おかしいな……」ゴソゴソ
エルフ姉「どうかされましたか? 男様」
男「この小箱なんだが、中に入ってたものがなくなっててな」
「どこか別のところへ移したんだったかな……」ウーン
エルフ姉「……」
エルフ妹「ごっしごっし、じゃぶじゃぶ、今日は洗濯日和~♪」フンフーン
エルフ姉「妹ちゃん、ちょっといい?」
エルフ妹「何? お姉ちゃん」クルッ
エルフ姉「男様のペンダント、持ってるでしょ?」
エルフ妹「ぎくっ」ピタッ
エルフ姉「ぎくっ、じゃないわ。ちゃんと返しなさい」
「お姉ちゃんも一緒に謝ってあげるから」
エルフ妹「はーい……」
エルフ姉「申し訳ありません、男様」フカブカ
「ほら、妹ちゃんも」
エルフ妹「ごめんなさい……」ペコリ
男「なくなったわけじゃないから別にいいが……」チャリ
「今度ばかりは少しお仕置きが必要かもしれないな」ガシッ
エルフ妹「えっ?」
男「尻叩き100回の刑」
エルフ妹「ほ、ほんとに?」
男「ほんとに」ニッコリ
男「はい一回目ー」ペチン!
エルフ妹「きゃうっ!」
男「二回目ー」ペチン!
エルフ妹「ぎゃあっ!」
「お、お姉ちゃん、助けて!」ジタバタ
エルフ姉「私、ダメだって言ったよね?」
エルフ妹「ううっ、それは……」
エルフ姉「お姉ちゃんの言うこと聞かない子なんて知らない」
エルフ妹「そんなぁ……」
男「三回目ー」ペチン!
エルフ妹「きゃんっ!」
男「はい、100回目」ペチン!
エルフ妹「あうぅぅ、お尻がヒリヒリする……」
男「これに懲りたら二度こんなことするなよ」
エルフ妹「しくしく、ぐすん」
男「お前、恐ろしく嘘泣きが下手だな……」
エルフ妹「えっ、なんでわかったの!?」
男「反省してないみたいだな……、仕方ない」
「エルフ姉、ちょっとこい」
エルフ姉「は、はい!」
男「妹の躾がちゃんとできてなかった姉にもお仕置きだ」
「尻叩き10回の刑な」
エルフ姉「はい……」
エルフ妹「やめてよ、お姉ちゃんは関係ないじゃん!」
男「妹の躾は姉の仕事だ」
「それができてなかったんだからお仕置きは当然だ」
エルフ姉「すみません、男様」
「……お仕置き、お願いします」スルッ
男「い、いや、お前は裾をたくし上げなくていい!」
エルフ姉「は、はい///」
男「いくぞ……」
エルフ姉「ど、どうぞ……」フルフル
男「一回目」ペチン!
エルフ姉「ひゃんっ!」
男「!?」
「……に、二回目」ペチン!
エルフ姉「ぁんっ!」
男「……」ゴクリ
男(これはただのお仕置きだ、躾なんだ)
(けっしてエッチなお仕置きなんかじゃない…! よしっ!)
「三回目行くぞー」ペチン!
エルフ姉「ぁ、はぁんっ♥」
男「くっ…!」
エルフ姉「お、男様…? どうかされましたか…?」ハァハァ…
男「い、いや、反省してるみたいだし、3回で許してやろう」
エルフ姉「あ、ありがとうございます」ペコッ
エルフ妹「……」ジー
男「なんだよ……」
エルフ妹「へたれ」
エルフ妹「この際だから教えてよ」
男「何をだ?」
エルフ妹「そのペンダント。男には似合ってないし、男が持ってるのは不自然っていうか……」
男「あぁ、これは預かり物なんだ」
エルフ姉「預かり物、ですか?」
男「これと同じものを持っているエルフを探してるんだが」
「お前たち知らないか?」
エルフ妹「それなら…!」
エルフ姉「すみません、ちょっとわからないです」
エルフ妹「お姉ちゃん…?」
男「そうか……。そう簡単に見つかるものでもないか」
「俺はこれを元の場所に戻してくる」
「エルフ妹は洗濯の続き、姉はそろそろ昼食の用意を頼む」
エルフ妹「はーい」
エルフ姉「わかりました」
スタスタ・・・。
エルフ妹「お姉ちゃん。さっきはどうして嘘なんか……」
エルフ姉「私がこれを持ってるのを男様が知ってしまったら」
「今の生活が終わってしまうような気がして……」
エルフ妹「…? よくわからないんだけど」
エルフ姉「そうだね。私もよく分からないや」
「けど、これはお姉ちゃんとの秘密、絶対話しちゃダメよ?」
エルフ妹「お姉ちゃんがそう言うなら……」
エルフ姉「それじゃあ、お姉ちゃんはお昼の用意してくるから」
「妹ちゃんはお洗濯頑張ってね」
エルフ妹「うん、わかった」
さらに数日が過ぎたある日――。
コンコン、ガチャ。
エルフ姉「男様、昼食の用意ができたまし……えっ?」
男「」グッタリ
エルフ姉「お、男様…? 意識がない…!?」
「妹ちゃん! 早くきて、妹ちゃん!」
エルフ妹「なになに、そんなに慌ててどうしたの? お姉ちゃん」トタタ
エルフ姉「男様を昼食に呼びに着たんだけど、ドアを開けたら男様が倒れてて…!」
エルフ妹「えぇっ!? こ、こういう時ってどうしたら……」アタフタ
エルフ姉「とりあえずベッドに寝かせましょう。妹ちゃんも手伝って」
エルフ妹「う、うん! わかった!」
エルフ姉「せーの! よいしょ、よいしょ……」
エルフ妹「ぐぅっ、重いぃ……」
エルフ姉「もうちょっとよ、頑張って」
どさっ。
エルフ妹「はぁ、重かったぁ……」
エルフ姉「熱は……ないみたい。呼吸も荒くないし、まるで眠ってるみたい……」
「でもお医者様に診てもらった方がいいわよね。私、街まで呼びに行ってくるわ」
男「ん……、ぅうっ……」
エルフ妹「待ってお姉ちゃん、男が目を覚ましたみたい」
エルフ姉「えっ? ほんとに!?」
男「あれ……、ここは……?」
エルフ姉「床に倒れていらっしゃったんです」
エルフ妹「私とお姉ちゃんでベッドまで運んだんだから。感謝してよね」
男「そうか、心配かけちまったかな」
エルフ妹「心配なんかするわけないじゃない。あんたが死ねば私たちは自由になれるんだから」
エルフ姉「こらっ! 冗談でもそういうこと言わないの!」コツン
エルフ妹「あうっ」
男「ならぬか喜びさせて悪かったな」
「まぁ、俺が死んだところで野良奴隷になるから主人が変わるだけだがな」
エルフ妹「なーんだ」
エルフ姉「そんなことより、お体の方は平気なんですか?」
男「あぁ、ちょっと床に寝転んでみたら冷たくて気持ちよくてな」
「ついうとうとと……ははは」
エルフ妹「呆れた、はははじゃないっての」
エルフ姉「……」
男「そういうわけだから俺は元気だよ、エルフ姉」
エルフ姉「ほんとですか…?」ジー
男「ほらこの通り」
エルフ妹「えっ、ちょっと!?」ヒョイ
男「エルフ妹を肩車できるぐらい元気だぞ……ってなんだ、前が見えない!?」ズボ
エルフ妹「どこに頭突っ込んでんのよ、この変態!」パコン
男「いたっ、いたたたた、やめろって! 前見えないんだから危ないって!」
エルフ妹「くすぐったいから頭動かすなー!」ジタバタ
エルフ姉「クスクス、その様子でしたらなんともないみたいですね」
「昼食はご用意できてますので、早く居間にいらして下さいね」
男「よーし、このまま居間まで行くぞ、エルフ妹。ドアはこっちか?」ヨタヨタ
エルフ妹「そっちは壁! ドアは右!」
男「その調子で誘導頼むぞ。……すぅーはぁー、それにしても幼女のスカートの中ってすごくいい匂いがす、」
エルフ妹「死ねーっ!」ガスッ
男「ぐはぁっ!」ドサッ
エルフ妹「きゃあぁぁぁっ!?」ドシ-ン!
エルフ姉(ちょっと心配だったけど、ほんとに杞憂だったみたいね)
男「うぐぅ……」ピヨピヨ
昼食後――。
男「さて、ここ何日か、昼下がりは日向ぼっこをして過ごす日が多かったと思う」
エルフ妹「大して広くない家だし、大掃除もすぐ終わっちゃったもんね」
男「あぁ、そこでだ!」
エルフ妹「げっ、仕事増えるの!?」
エルフ姉「こら、嫌そうな顔しないの」メッ
「私たちは奴隷ですのでなんなりとご命令下さい、男様」
男「まぁ新しい仕事っていっても大したことはない。これだ」パラ…
エルフ妹「?」
エルフ姉「これは……」
エルフ姉「植物の種、ですか?」
エルフ妹「種?」
男「エルフ姉、正解。庭に小さな菜園を作ろうと思うんだ」
エルフ姉「わぁ、素敵なお考えです」
エルフ妹「あんたにしてはまともな案じゃない。何を育てるの?」
男「いろいろだ。今あるのは大根、カブ、胡瓜、南瓜だな」
「せっかくだからお前たちも希望があれば言ってみろ」
エルフ妹「はいはい! 西瓜! 私西瓜大好き!」
男「わかった、明日になったら街で種を買ってきてやる」
エルフ妹「やったぁ!」ピョンピョン
男「エルフ姉はどうだ?」
エルフ姉「私は特には……。男様がお好きなお野菜を選んで下さい」
男「そうか? それならあとは……」
エルフ妹「男、男。お姉ちゃんの好物はサツマイモだよ」
エルフ姉「妹ちゃん!?」
男「なんだ、エルフ姉はサツマイモが好きだったのか。遠慮なんかしなくていいんだぞ?」
エルフ姉「いけません……。あまり奴隷の言葉に耳を傾けてばかりいると男様の良くない噂が……」
男「それもそうだな、やっぱりサツマイモはやめておくか」
エルフ姉「え!?」
男「ん?」
エルフ姉「あっ…///」
エルフ妹「お姉ちゃん、こういうときは素直になった方がいいよ」
「男は小さい女の子のお願いは断れないロリコンだから」
男「紳士といえ、紳士と。何回言えばわかるんだエルフ妹は」
「いつまでもそんな生意気な口を利いてると成長してからのお前の扱い、どうなるかわからんぞ」
エルフ妹「何それ、ひどーい! これだからロリコンは」
男「ロリコンだからロリ以外には厳しいんですー。今の発言でお前の将来、俺の欲情のはけ口コース決定な」
エルフ妹「うぇっ!? じょ、冗談よね…?」
男「つーん」
エルフ妹「さっきのは言いすぎました、ごめんなさい!」フカブカ
男「どうしようかなー。今夜はエルフ妹を抱いて湯船に浸かりたい気分なんだけどなー」チラッ
エルフ妹「~~~っ!」
エルフ姉「……」
エルフ妹「お姉ちゃん、黙ってないで助けてよー」
エルフ姉「あの、男様……」
男「なんだエルフ姉」
エルフ姉「その……やっぱり、サツマイモ食べたいです…///」
男「ああ、いいぞ。明日いい苗を探してきてやる」
エルフ姉「やった!」ピョンピョン
男(おお、喜び方が妹と同じだ。さすが姉妹)
エルフ妹「お、お姉ちゃん…? 妹がピンチなんだけど……」
エルフ姉「え? あぁ、大丈夫よ、妹ちゃん」
エルフ妹「ほっ……」
エルフ姉「ちょっとくすぐったいだけだから、ね?」
エルフ妹「!? そ、そんなぁ……」
男「エルフ妹、今日の風呂は一人で入るか?」
エルフ妹「うぅ……、男様と一緒に入りたいです……」ガクッ
男「仕方ないなー、お前がそこまでいうのなら一緒に入ってやろう」フフフ
エルフ妹(いつか泣かす…!)ギラッ
男「さて、今夜の楽しみができたところで、種を埋めようにもまずは土を耕さないといけない」
エルフ姉「そうですね。広さはどのくらいにしましょうか?」
男「んー……、全部でこのぐらい……でどうだろう」ガリガリガリ…
エルフ妹「あんまり大きいと世話するのめんどくさいし、そのぐらいでいいんじゃない?」
男「だな。それじゃ耕すとするか」
「鍬はニ本しかないから、一本はお前たち二人で交替して使え」スッ
エルフ妹「わかった」
男「おいしい西瓜が食べたいかー」
エルフ妹「おー!」
男「おいしいサツマイモが食べたいかー」
エルフ姉「ぉ、おー!」
男「張り切って耕すぞー!」
エルフ姉妹「「おー!」」
かぽーん。
エルフ妹「あうぅ、腕が痛い……」
男「筋肉痛か? エルフ妹は張り切ってたからなぁ」
エルフ妹「お姉ちゃんは大丈夫?」
エルフ姉「うん。妹ちゃんが頑張ってくれたおかげで、私はほとんど鍬を握ってなかったから」
男「よしよし、それじゃあ早く良くなるように俺がマッサージしてやろう」ワキワキ
エルフ妹「……好きにすればいいじゃん」チャプン
男「お?」
男「今日は素直だな。いつもなら俺と一緒の湯船には浸かろうともしないのに」ギュッ
エルフ妹「…? 昼間、今夜は私を抱っこしてお風呂に入りたいって言ってたじゃん」
「じゃないと私が大人になったら……その、欲情の、はけ口にするって……」
男「……あ」
エルフ妹「ちょっと待って、まさか忘れてた!?」
男「そんなことないぞ(棒)」
エルフ妹「絶対嘘だ! うわーん、私もう出るーっ!」
男「思い出させてしまった以上、お前はもう逃げられないのだ。ふははは!」ダキシメ
エルフ姉「~♪」ゴシゴシ、ザパー
エルフ妹「ぎゃー、穢されるー!」バシャバシャ
男「大丈夫、優しくマッサージするだけだから! ……先っちょを!」ギュゥ
エルフ妹「先っちょってどこ!? お姉ちゃん助け……」
エルフ姉「えいっ」ピョィ
バシャン!
男「うわっ!」
エルフ妹「きゃっ!」
エルフ姉「えへへ、三人だとさすがにちょっと狭いですね」ギュッ
男「え、エルフ姉!?」
エルフ姉「いつも抱きしめられてばかりでしたから、たまには抱きしめるのもいいですね」ムニュッ
男(胸が……胸が当たっている!?)
(まだ大きくはないが確かに主張し始めている小生意気な二つの丘が俺の背中に!?)
ピコーン!
エルフ妹「えっ……何これ、なんか当たってる! 太ももに硬い何かが当たってるんだけど!?」
男(子どもに欲情してしまっては紳士の名折れ! 素数を! 素数を数えるんだ!)2,3,5,7…
エルフ姉「男様の(背中)、大きくて硬いですね」ムニュムニュ
男「ふぉうっ!!」
エルフ妹「ひぃっ!」
男「さ、先に上がる!」ザパッ
エルフ姉「男様?」
男「お前たちは風邪ひかないようにゆっくり入れ!」タタッ
エルフ妹「た、助かったぁ……」
エルフ姉「逆上せたのかな? いつもより浸かってる時間短かったけど……あ!」
「もしかして昼間倒れられたから体調がよくないんじゃ!」
エルフ妹「お姉ちゃんて、ときどきすごく天然だよね……」
エルフ姉「へ?」
エルフ妹「なんでもない」ブクブク
エルフ姉「変な妹ちゃん」
翌日、昼――。
男「掘り起こすだけはなんとか午前中に終わらせられたな」モグモグ
エルフ妹「種はいつ埋めるのよ?」パクパク
男「まだ肥料を混ぜて畝も作らないといけないからな」
「種や苗を植えるのは明後日になるかな」
エルフ姉「午後からは街まで買い物に行かれんですよね?」
男「あぁ、今言った肥料と種を買いにな」
エルフ姉「お一人で平気ですか? 私たちもお供した方が……」
男「平気だよ。御者も呼んであるし一人で問題ない」
エルフ姉「そうですか。わかりました」
エルフ妹「ごちそうさま!」
男「ごちそうさま」
エルフ姉「お口に合いましたでしょうか?」
男「今日もうまかった、ありがとう」
エルフ姉「もったいないお言葉です」
男「それじゃあ街まで出かけてくるよ。日暮れには戻る」
エルフ姉「いってらっしゃいませ、男様」
エルフ妹「……」
エルフ姉「ほら、妹ちゃんも」
エルフ妹「えー……いってらっしゃい」
男「あぁ、行ってくる」
ガチャ、バタン。
エルフ姉「そんなんじゃ、また男様に叱られるよ?」
エルフ妹「むぅ……。っていうかお姉ちゃん、今の生活を楽しんでない?」
エルフ姉「え?」
エルフ妹「無理やりこんな所に連れてこられたって言うのに、最近のお姉ちゃん、楽しそう……」
エルフ姉「うん、楽しいよ。妹ちゃんは楽しくない?」
エルフ妹「楽しくない」
エルフ姉「西瓜、楽しみじゃない?」
エルフ妹「それは……楽しみだけど」
エルフ姉「手から零れ落ちちゃった水はもうどうにもならないわ」
エルフ妹「零れ落ちた水…?」
エルフ姉「エルフが人間に負けたこと。私たちが人間に捕まったこと。奴隷として売られてしまったこと」
「起きてしまった過去は変えられない……大地に染み込んだ水を掬うことができないのと一緒でね」
エルフ妹「どうにもならないことなら考えない方がいいってこと?」
エルフ姉「うん。今が楽しいならそれでいいじゃない」
「こうして一番大事な家族とは一緒にいられるんですもの、それだけで十分よ」ナデナデ
エルフ妹「お姉ちゃん……ちょっとくすぐったいかも」
エルフ姉「それじゃ、午後のお仕事も頑張りましょう」
エルフ妹「うん」
書斎――。
エルフ姉「お掃除お掃除~♪」パタパタ
「あら? 机に本が出しっぱなし……男様、どんな本を読んでるのかしら?」スッ
ぺらっ・・・
エルフ姉「え……」
ぺら、ぺら・・・
エルフ姉「これって…!」
庭先――。
エルフ妹「よっし、洗濯終わりっと」
「あとは桶を片付けて日向ぼっこー!」
??「たす、け……」
エルフ妹「え? 今声が……」
??「頼む、助けて……く、れ」ドサッ
エルフ妹「きゃっ!? ひ、人…? 怪我してる…!」
「手当てしないと……」
「お姉ちゃーん! ちょっときてー!」
エルフ姉「はっ、妹ちゃんが呼んでる……」パタン
パタパタ・・・
エルフ姉「どうかしたの、妹ちゃん? 大きな声出して……あっ!」
女エルフ「」グッタリ
エルフ妹「この女の人、突然現れて、私に助けてってつぶやいた後倒れちゃったの!」
エルフ姉「私たちと同じエルフね……」
エルフ妹「怪我してるみたいだけど、大丈夫?」
エルフ姉「わからないわ、とりあえずベッドまで運びましょう」
エルフ妹「うん、わかった!」
男「ただいま帰ったぞ」
し~ん・・・
男「出迎えなしか……」スタスタ
「台所にエルフ姉がいないな。夕飯の用意もまだ見たいだが……」キョロキョロ
エルフ姉「あっ、男様」
男「あぁ、エルフ姉。探してたんだ」
エルフ姉「すみません、お帰りになられてたんですね」
男「丁度帰宅したところだ。俺が留守の間に何かあったか?」
エルフ姉「はい……あの、こちらへ」ガチャ
男「寝室?」
エルフ妹「あ。男、帰ってきたんだ」
女エルフ「――」スヤァ
男「ベッドで寝てるのは誰だ? お前達と同じエルフのようだが」
エルフ妹「洗濯物干してたらどこからか現れて目の前で倒れたの」
エルフ姉「怪我をしていましたので簡単な治療だけしてベッドに寝かせたのですが、まだ目を覚まさなくて……」
男「そうか……」
エルフ姉「すみません、男様。男様の留守に勝手な振る舞いを……」
「後でどんな罰でも受けます! 彼女を助けていただけませんか?」
エルフ妹「!! この人を見つけたのは私! 罰なら私が受ける!」
エルフ姉「妹ちゃん!」
男「別に怒ってはいない。だから怪我人の枕元では静かにしろ」
エルフ妹「あ……」
エルフ姉「はい……」
男「怪我は切り傷に擦り傷、打ち身もあるか……」
エルフ姉「手や足だけでなく服の下も全身……家にあった軟膏もほとんど使ってしまいました」
男「それはいい、明日買ってくる」
エルフ姉「ありがとうございます」
男「目に見える範囲での骨折はなし、少し体温が高い気がするが傷が原因だろうな」
「エルフ妹、お前は秘術が使えるんだったな?」
エルフ妹「え? う、うん、一応」
男「その首輪がなければ傷を治す術は使えるか?」
エルフ妹「ううん、治癒術はすごく高位の術だから私はまだ」
男「そうか」
エルフ妹「お医者さんじゃだめなの…?」
男「医者は……まずいな」
エルフ妹「え?」
男「幸い医者が診ても塗り薬を処方されるレベルの傷だ。このまま様子を見よう」
エルフ姉「わかりました」
男「このまま眺めていても仕方ない。エルフ姉はそろそろ夕飯の用意をしてくれ」
「今日は温かいスープが飲みたい気分だ。4人分頼む」
エルフ姉「はい、すぐに支度いたします」
男「俺は風呂を沸かしてくる。エルフ妹はここにいろ」
「目を覚ました時、同族が近くにいた方が安心するだろう」
エルフ妹「わかった」
しばらくして――。
女エルフ「うぅん……ここは?」
エルフ妹「気がついた?」
女エルフ「はっ! ぐぅっ…!」バサッ
エルフ妹「まだ動いちゃダメだよ! 怪我たくさんしてるのに」
女エルフ「君は……君が私を助けてくれたのか?」
エルフ妹「うん。ってお薬塗ったのはお姉ちゃんだけど……」
女エルフ「その首輪……君も奴隷なのか」
エルフ妹「うん、ちょっと前に人間に捕まってこの家に売られてきたの」
女エルフ「そうか……」
エルフ妹「おねえさんは首輪がないから奴隷じゃないんだよね?」
女エルフ「私は……」
ぐぅ~・・・
女エルフ「…///」コホン
エルフ妹「お腹空いてるよね。お姉ちゃんにご飯貰ってくるからちょっと待っててね」トトッ
女エルフ「……ありがとう」
エルフ妹「エルフ同士、困ってる時は助け合わないとね」
エルフ姉「どうぞ、召し上がって下さい」スッ
女エルフ「……」ゴクリ
エルフ姉「…? 何か嫌いな食べものでも?」
女エルフ「いや、違う。こんなことをして、君達は大丈夫なのか?」
エルフ妹「どういうこと?」
女エルフ「この家の主人は私のことは知っているのか? もし黙って匿っているのなら君達に迷惑が……」グゥゥ
エルフ姉「それなら大丈夫です。男様はこのことを存じていますし、あなたの食事を作ることも許可して下さいました」
女エルフ(よかった、気付かれてはいないみたいだ……)
女エルフ「そうか、君たちは主人に恵まれたようだな……いただきます」パクモグ…
女エルフ「ごちそうさま」
エルフ姉「お口にあいましたか?」
女エルフ「あぁ、美味しかった。ありがとう」
コンコン、
男「入るぞ」ガチャ
エルフ姉「男様」
女エルフ「…!」ビクッ
男「……」
女エルフ「あなたがこの家の主人か。助けていただいて感謝する」ペコリ
男「礼ならこの二人に言え。俺が助けたわけじゃない」
「それより傷の具合はどうだ?」
女エルフ「薬も塗っていただきましたし、一晩寝ればここを発てるぐらいには回復すると思う」
男「そうか。いくつか尋ねたいことがあるんだが」
女エルフ「私が答えられることであれば」
エルフ妹「…?」
男「首輪、自分で壊したのか?」
女エルフ「!!?」
エルフ妹「え? 首輪を壊したって…?」
男「どこから逃げてきたかは知らないが、その身体の傷、ずいぶんとこき使われていたみたいだな」
女エルフ「……気付いていたのか」
男「ん? お前が野良奴隷だってことをか?」
エルフ妹「野良奴隷って……おねえさんも奴隷なの?」
女エルフ「元だ」
エルフ姉「やはり……」
エルフ妹「お姉ちゃんも知ってたの?」
エルフ姉「身体の傷を見たときからなんとなく、ね」
女エルフ「毎日が地獄だった。朝から晩まで働かされ、食事は一日一食……」
「夜はお前たち人間の性玩具として扱われた」
エルフ姉「っ……」
エルフ妹「ひどい……」
女エルフ「ずっと逃げ出す機会をうかがっていたが、昨日、ようやくチャンスがめぐってきた」
「人間どもの隙をついて首輪を壊しここまで逃げてきたんだ……」
男「逃げた後はどうするつもりだったんだ。少しでもましな主人でも探すつもりだったのか?」
女エルフ「人間の奴隷になど二度となるか!」
男「ならどうするつもりだったんだ?」
女エルフ「……」
男「エルフの隠れ里」ボソリ
女エルフ「!! な、なぜそれを!?」
男「ただの噂話だ。しかし、その反応だと……」
女エルフ「っ! しまっ……」
男「まぁ、俺にはどうでもいい話だ」
女エルフ「なにっ!?」
男「最後の質問だ。これを……見たことはあるか?」チャリ
エルフ妹「あっ……」
女エルフ「ペンダント、か?」
男「これと同じものを持つエルフの子どもを捜している」
女エルフ「その子どもを見つけ出してどうするつもりだ?」
男「見たことがあるのかないのか、どっちだ?」
女エルフ「……ない」
男「そうか……」
男「お前は明日、兵士に引き渡す」
エルフ姉「えっ!?」
エルフ妹「そんな!」
男「お前達は黙っていろ」
女エルフ「……」
男「野良奴隷は誰のものでもないが、発見した場合は国に報告する義務がある」
「発見者の拾得物にすることもできるが、あいにく個人でエルフの奴隷は二人までしか飼うことができないからな」
「飼わないのであれば国に引き渡すしかない」
「逃亡の場合は元の飼い主のもとへ戻されるだろうが……」
女エルフ「!!」
女エルフ「それだけは! それだけは勘弁してくれ!」
「あんなところに戻ったら今度こそ殺される!!」ヒシッ
男「離せ。運がなかったと諦めろ」
エルフ妹「ちょっとあんた! いくらなんでもあんまりじゃない!」
男「口の利き方には気をつけろ。エルフ妹」ギロリ
エルフ妹「ひっ…!」ビクッ
エルフ妹(今の目、前に短剣を向けられた時と同じ目だ…!)
エルフ姉「あの、男様……」
男「お前も何かあるのか、エルフ姉」
エルフ姉「……いえ、なんでもありません」
男「お前達はそのエルフとともにこの部屋で寝ろ」
「そのエルフが逃げ出さないように見張ってるんだ」スタスタ
エルフ妹「……」
ガチャ、バタン。
女エルフ「くそっ……」バン
エルフ姉「すみません、いつもはもっとお優しい方なのですが……」
女エルフ「その結果がこれだ! 明日私は殺される!」
エルフ妹「ごめんなさい……私が、私のせいで……」グスン
エルフ姉「妹ちゃん……」
エルフ妹「おねえさん助けてっていってたのに、私…!」
「ごめんなさい、ごめんなさい……うっ、うぅ……」
女エルフ「……すまなかった。君達姉妹は何も悪くないというのに……」
エルフ姉「いえ、明日もう一度男様に頼んでみましょう。あなたのこともきっと……」
女エルフ「無駄だろう。人間は我々エルフなど家畜程度にしか思っていまい」
エルフ姉「私は信じています、男様のことを」
エルフ妹「うぅっ、ぐすっ……」
翌日――。
女エルフ「……」
エルフ姉(朝から何度か男様にお願いしてみましたが、男様が首を縦に振ってくれることはありませんでした)
男「そろそろ街に行くか……」スク
エルフ姉「男様……、お願いです。女エルフさんのこと、もう一度だけ考え直してもらえませんか…?」
男「くどいぞ」
エルフ姉「ですが、このままでは女エルフさんは……」
男「……どうしてもというなら、方法がないこともないが」
女エルフ「何?」
エルフ姉「本当ですか!?」
エルフ妹「おねえさんを助けられるなら私なんでもする…!」ガタ
男「昨日も言ったがこの国の法で、エルフの奴隷は一人で二人までしか飼う事ができない」
「つまり、お前達のどちらかを売り払えば女エルフを飼うことができるということになる」
エルフ姉「そんなっ!」
男「エルフ妹、さっきなんでもすると言ったな? お前がこの家から出て行くか?」
エルフ妹「やだ! お姉ちゃんと離れ離れなんて!」
男「なら諦めろ。ちなみにエルフ姉を売る気はない、お前はこいつより優秀だからな」
エルフ妹「うっ……、ううぅっ…!」グスッ
エルフ妹(私が売られればおねえさんを助けられる……でも)
女エルフ「茶番だな」
エルフ妹「おねえさん…!」
女エルフ「私をとっとと兵士に引き渡せ」
男「いいんだな」
女エルフ「あぁ。この二人を私のせいでこれ以上苦しませたくない」
男「よかったな、二人とも。離れ離れにならずにすむぞ」
エルフ妹「ごめんなさい……」
エルフ姉「お役に立てずすみません……」
女エルフ「気にするな」
男「二刻ほどで戻るつもりだ」
女エルフ「……」
男「行ってくる」ガチャ
パタン。
女エルフ「ん?」
エルフ姉「え?」
女エルフ「おい、待て!」ガチャッ
男「どうした?」
女エルフ「どうして私を連れて行かない!?」
男「お前はまだ傷が癒えていないだろう? 兵士を呼んでくるから大人しく待っていろ」
女エルフ「はぁ!?」
男「もし女エルフを逃がせばお前達に罰を与えるからな。きちんと見張っていろよ」
エルフ姉「あ、はい……」
エルフ妹「どこまで卑劣なのよ…!」
女エルフ「行ってしまったな……」
エルフ姉「そうですね……」
エルフ妹「人間はどうしてこんなひどいことを平気でできるの…?」グスッ
女エルフ「ん? エルフ妹はわかっていないのか。……くっくっ」
エルフ姉「ふふっ、うふふふ」
エルフ妹「え? どうして笑ってるの?」
女エルフ「エルフ妹は素直ないい子だな。それに比べてあの男という奴は……」
エルフ姉「こう言ってはなんですけどひねくれてますね、かなり」
エルフ妹「???」
エルフ妹「えっ? じゃあわざと逃げられる状況を作ったってこと?」
女エルフ「あぁ、そうとしか考えられない」
エルフ妹「うぐぐぐ、つまり男は私たちのことからかって遊んでたってことか……今回は絶対に許さないんだから!」
女エルフ「どんな気まぐれかは知らないけど、私たちはこれで助かったんだ。許そうじゃないか」
エルフ妹「私たち?」
女エルフ「おいで、首輪を外してあげよう」ポゥ
がちゃん!
エルフ妹「首輪が外れた!?」
女エルフ「秘術さえ使えれば首輪を外すなんて容易いことだ」
女エルフ「エルフ姉の首輪も……」ポゥ
がちゃん!
エルフ姉「ありがとうございます」
女エルフ「さぁ、逃げよう。男は二刻と言っていた、兵士が追ってくることも考えて急いだ方がいい」
エルフ妹「そうだね。お姉ちゃんも早く」グイ
エルフ姉「……」
エルフ妹「お姉ちゃん?」
女エルフ「本気か?」
エルフ姉「はい……どうしても確かめないといけないことがあるので……」
エルフ妹「そんな! やだよ私、お姉ちゃんと離れるの!」
エルフ姉「ごめんね、妹ちゃん……。女エルフさん、妹をお願いします」ペコリ
女エルフ「了解した。必ず無事に隠れ里まで連れて行く」
エルフ妹「やだ! お姉ちゃんが残るんだったら私も残る!」
エルフ姉「妹ちゃん、お姉ちゃんを困らせないで」
エルフ妹「でも…!」
エルフ姉「男様はいつも何を考えてるかよくわからない人だから……」
「また同じようにチャンスをもらえるとは限らないの。せめて妹ちゃんだけでも逃げて」
エルフ妹「それでもいい! お姉ちゃんと離れるぐらいなら一生男の奴隷でいい!」ヒシッ
エルフ姉「妹ちゃん……」
女エルフ「どうやら一人旅になりそうだな」
エルフ姉「すみません、女エルフさん……やっぱり妹は」
女エルフ「気にするな。しかし、私だけ逃げると二人に罰が……」
エルフ妹「それは大丈夫、男はロリコンだから私たちにひどいことなんてできないもん」フフン
女エルフ「そこは胸を張って言うところなのか…?」
女エルフ「まぁ、そこまで自信を持って言うのなら平気なんだろう」
「私も一晩世話になっただけだが、それほど悪い人間でもない気がする」
「また会えることを願っているよ」ポゥ
エルフ妹「ふみゅぅ、あれ急に眠気が……」フラフラ
女エルフ「私の秘術だ。二人は私を捕まえようとしたが、私に眠らせられてしまった」
エルフ姉「女エルフさん……お元気で」ストン
女エルフ「ありがとう。そしてさよなら」
エルフ姉「くぅ……」スヤァ
エルフ妹「すぴー……」スヤァ
男「エルフ姉、野良奴隷を逃がした罰を与える」
エルフ姉「申し訳ありませんでした……男様。いかな罰もお受けします」フルフル
エルフ妹「やめてよ! お姉ちゃんにひどいことしないで!」
男「黙っていろ!」バチンッ!
エルフ妹「きゃぁっ!」
エルフ姉「妹ちゃん!」
男「今までは大目に見てきていたがそれも今日までだ」
「次に俺の許可なく発言をすれば姉がどんな目にあうかわからんぞ」
エルフ妹「っ!!」
エルフ姉「ごめんね、妹ちゃん……。私のわがままにつき合わせてしまったばっかりに……」
エルフ妹「…!」ブンブン
エルフ妹(お姉ちゃんは何も悪くない……、悪いのは……)キッ!
男「なんだその反抗的な目は?」
エルフ妹(人間だ…!)
男「まぁいい。それよりも今は、エルフ姉に罰を与えるのが先だ」
エルフ姉「はい……お願いします、男様」
男「これが何か分かるか…?」ドサッ
エルフ姉「これは、お庭の菜園で取れたお野菜さんたち……」
男「下着を脱いでスカートをたくし上げろ」
エルフ姉「わかりました……」スルッ、パサッ
エルフ妹(お姉ちゃん…!)
エルフ姉「これでよろしいでしょうか……」
男「まずはこれぐらいでいいか」スッ
エルフ妹(胡瓜? あれをどうするつもりなの…?)
男「股を開け」
エルフ妹「!?」
エルフ姉「っ!! はい……」クパァ
男「さぁ、何本ぐらい入るだろうなぁ」ククク…
エルフ姉「くっ……ああぁっ!」ガクガク
エルフ妹(もう見てられないよ……)
男「どうした、もう限界か? まだ三本目だぞ?」
エルフ姉「……もう、むりですぅっっ」プシャァアッ!
ぼとっ、ごとごと・・・
男「……落としたな。よりきつい罰を与えないといけないな」
エルフ姉「は、はいぃ……」ビクビク
エルフ妹「!!」
エルフ妹「もうやめ、」ダッ!
「……っ!?」ドサッ
エルフ姉「妹ちゃん!?」
男「首輪の呪いだ。身体が動かないだろう?」
エルフ妹「ぐっ……この!」
男「そこで指をくわえて姉が苦しむ様を眺めているんだな。それがお前への罰だ」
エルフ妹「悪魔ぁ……人間なんてみんな悪魔だぁ!」
男「違うな。これが奴隷と主人と正しい関係だ」
男「さぁ、続けようか。エルフ姉」
エルフ姉「はい……」
男「さっきお前が落としたこの胡瓜は、尻に入れてやろう」グイッ
エルフ姉「あぁあっ! 痛いです男様!」
男「罰なんだから当たり前だろう。そして前にはこのカブを……」
エルフ姉「ひっ……」
男「と思ったが、これはやめだ」
エルフ姉「ほっ」
男「さっきエルフ妹が俺の言いつけを破って口を開いたからな。この特に太い大根をぶち込んでやる」
エルフ妹「!!」
エルフ姉「そ、そんな大きなもの入りませんっ!」フルフル
男「入る入らないんじゃないんだよ。入れるんだ」グッ
エルフ姉「あああぁぁあぁっ!! 痛い、痛いです男様あぁあ!」ブチブチ
男「うるさい! 黙れ!」グイィィッ!!
エルフ姉「かはっ…!」ボコォッ!!
エルフ妹「お姉ちゃーん!」ポロポロ
男『ふん、やはり入るじゃないか』
エルフ姉『ぁ……あぅぅ……』グッタリ
エルフ妹『お姉ちゃん、ごめんね……私のせいで……』
エルフ姉「すぅすぅ……」zzz
エルフ妹「うぅぅ……」zzz
男「なんだこの状況は……」
エルフ妹「いくらなんでも西瓜なんか入れたらおねえちゃんが壊れちゃう……」ムニャムニャ
男「そしてこいつは何の夢を見ているんだ……」
兵士「あの~、報告のあったエルフの野良奴隷というのはどちらですか?」
男「あぁ、この二匹はうちの奴隷だ。状況から察するに二人を秘術で眠らせ逃亡したらしい」
兵士「二匹の首輪が外れているようですが……」
男「野良奴隷が同族を助けようとしたんでしょう。……馬鹿な奴だ」
「こいつらは首輪なんかなくてももう逃げられやしない。俺がそういう風に調教したんだからな」
兵士「ほう……」ゴクリ
男「それにしても、あの野良奴隷が秘術を使えたとは誤算だった……」
「ここまでご足労頂いたのに申し訳ない兵士殿」
兵士「あぁ、いえ、私どもも仕事ですので」
男「こいつらを叩き起こした所でどっちへ逃げたかも分からないでしょう」
「今日のところはお引取り頂いてよろしいですか?」
兵士「そうします。何か足取りが分かりましたら連絡お願いします」
男「わかっています」
兵士「では、私はこれで」ケイレイ
男「はい」
キィ・・・バタン。
男「……はぁ」
「……ちゃん、妹ちゃん!」
エルフ妹「……ふぇ?」
エルフ姉「あ、やっと起きた」
エルフ妹「んー……お姉ちゃんおはよう」ノビー
エルフ姉「おはようじゃないわ、もう夜よ。ほら窓の外」
エルフ妹「うわっ、ほんとだ! 洗濯物取り込まないと!」
エルフ姉「そうじゃなくて!」
エルフ妹「え?」
エルフ姉「ここ寝室よ?」
エルフ妹「あれ? なんで?」
「おねえさんの秘術で眠らされたのって居間だったよね? お姉ちゃんが運んでくれたの?」
エルフ姉「ううん、私も今起きたところ」
エルフ妹「じゃあ男が運んだの?」
エルフ姉「たぶん……」
エルフ妹「ふーん、寝てる間に変なところ触られてないといいんだけど……」
ガチャッ。
エルフ姉「!!」
男「二人とも目が覚めたか」
エルフ姉「あっ、男様!」
男「夕飯の用意ができたから呼びにきた」
エルフ姉「えぇっ? すみません、私の仕事なのに……」
男「気にするな。それと、洗濯物も取り込んでおいたぞ」
エルフ妹「あ、ごめん」
男「早く居間にこいよ」
バタン。
エルフ姉「……」
エルフ妹「……」
エルフ妹「……なんか優しくなかった? 気持ち悪いぐらいに」
エルフ姉「う、うん……。それに、女エルフさんを逃がしたこと何も言わなかったわ」
エルフ妹「それは男がそういう風に仕向けたんだし、何も言うことないんじゃないの?」
エルフ姉「それはそうかもしれないけど……」
エルフ妹「何か気になるの?」
エルフ姉「男様の雰囲気が……」
エルフ妹「雰囲気?」
エルフ姉「ううん、なんでもないわ。早く居間に行きましょう」
エルフ妹「? うん」
かちゃかちゃっ、ぱく、もぐ・・・
男「……」モグモグ
エルフ姉「……」パクパク
エルフ妹「……」パクゴク
エルフ妹(さっきお姉ちゃんが言おうとしたことがやっとわかった……)
(男の雰囲気がいつもと全然違う……怒ってるのかなぁ)
エルフ妹「あのさ……男はおねえさんを逃がしたこと、怒ってる…?」
男「……お前はどう思う?」
エルフ妹「えっ、私!?」
男「落し物を拾った。それを持ち主に届けようとした途中でなくしてしまった」
エルフ妹「えっと、持ち主に悪いことしたなー、とか?」
男「元はといえば落とした持ち主が悪いんだ。俺が盗んだわけじゃないんだから何も気にする必要などあるまい」
エルフ妹「そっか。じゃあ怒ってないんだ」
男「そのことについてはな」
エルフ妹「そのことについては? それ以外は何か怒ってるってこと!?」
男「さぁな。……ごちそうさま。俺は書斎で本でも読んでる、今日は二人で風呂に入れ」
エルフ妹「えぇっ!?」
男「風呂からあがったら呼びにこい」スタスタ
エルフ妹「ちょ、ちょっと!」
エルフ姉「……」
かぽーん。
エルフ妹「絶対おかしいって! 毎日私たちと一緒にお風呂に入ってたのに今日に限って二人で入れなんて」
エルフ姉「うん……」
エルフ妹「やっぱり怒ってるよね、あれ」
エルフ姉「うん……」
エルフ妹「洗濯物取り込むの忘れてたからか何か知らないけど、秘術で眠らされてたんだから仕方ないじゃん」
「お姉ちゃんもそう思うよね?」
エルフ姉「うん……」
エルフ妹「……お姉ちゃん、私の話聞いてる?」
エルフ姉「うん……えっ? 何か言った?」
エルフ妹「やっぱり聞いてなかったんだ」チャプン
エルフ姉「……ごめん。何の話だったの?」
エルフ妹「何に対してかわからないけど、男が怒ってるって話」
エルフ姉「あれは怒ってるのかしら……」
エルフ妹「そうとしか思えないよ。イライラとかピリピリとかそんな感じの」
エルフ姉「思えば男様が怒ってるところって見たことないわね」
エルフ妹「え? 男っていつも怒ってない?」
エルフ姉「それって、大体妹ちゃんが男様に逆らって叱られてる時の事でしょ?」
エルフ妹「うぐっ……、そういえばそうかな……」
エルフ姉「そういう感じじゃなくてもっと感情が抑えられないみたいな……うーん、なんて言えばいいのかな」
エルフ妹「あっ、お姉ちゃんの言いたいことなんとなくわかったかも」
エルフ姉「そう?」
エルフ妹「心の中でぐわーってしたのが渦巻いてて頭の中ぐちゃぐちゃで自分じゃどうしようもない感じのでしょ?」
エルフ姉「うん? そう……かな?」
エルフ妹「確かにああいう男は見たことなかったかも」
エルフ姉「男様……」
エルフ妹「うー、なんかこっちまで頭の中ぐちゃぐちゃになってきた」グテー
エルフ姉「ふふっ、のぼせてきちゃった? そろそろあがりましょうか」
エルフ妹「うん、そうする」
男「……」ペラッ
コンコン。
男「ん?」
エルフ姉『男様、お風呂お先に頂きました』
男「そうか。今日はもう休め」
エルフ姉『はい。失礼します』
男「…………」
「はぁ……」
ざばー。
男「……」ゴシゴシ
男(俺は馬鹿か、こんなことで感情を昂ぶらせて……)
(俺はどこで間違えた? あの時か、それともあの時か……)
(いや、そんなこと考えるまでもない。あのエルフを殺した時からに決まってるだろう)
かたん。
男「エルフ姉か? 何か忘れ物でも……」
エルフ姉「お背中を流しに参りました」カチャ
男「お前……さっき入ったんじゃなかったのか」
エルフ姉「……」
男「まぁいい。流してくれるというのなら頼む」
エルフ姉「はい」
ごしごし。
男「……」
エルフ姉「……」ゴシゴシ
男「……エルフは馬鹿な種族だな」
エルフ姉「え?」ゴシ
男「逃げればよかったものを」
エルフ姉「きゃっ!」
背中を擦っていたエルフ姉の手を掴むと、ぐいと引っ張ってやる。
するとエルフ姉はバランスを崩し、小さな悲鳴をあげてその場に仰向けの体勢で倒れこんでしまう。
その隙に覆いかぶさるようにして両腕を押さえ込んでやる。
エルフ姉の透き通るような白い肌を隠すものは何もない。
男「……こうしてお前の裸をじっくりと見るのは初めてだな」
エルフ姉「お、男様…?」
突然のことに理解が追いついていないのか、エルフ姉は目を白黒させるばかりだ。
男「例え生娘でもこれから何をされるかぐらいわかるだろう」
エルフ姉「っ!」
今の一言でようやく状況を飲み込めたのか、エルフ姉は顔を仄かに上気させ両手の拘束を振りほどこうと力を込める。
しかし、エルフ姉の華奢な力では抵抗と呼べる抵抗にもならず身動き一つできずにいる。
男「ククッ、なんだ嫌なのか? てっきり誘ってるものかと思ったぞ」
下卑た笑みを浮かべたまま少しずつ顔を近づけていく。
エルフ姉「決してそんなつもりでは…!」
男「なら男の性というもの知らなかった自分を呪え」
さらに顔を近付けてやると、エルフ姉は咄嗟に顔を横に背けてしまう。
ならばとその首筋に強く唇を押し当てたあと、耳に向かって舌を滑らせていく。
エルフ姉「ひゃん、あぁっ……」
小さく身を震わせるエルフ姉の姿は、その白い肌もあいまって怯えた野兎を連想させる。
男「くすぐったいのか? それとも感じているのか?」
エルフ姉「男様……、私は……」フルフル
男「なんだ?」
エルフ姉「何か大変なことをしでかしてしまったのでしょうか……」
男「……何の話だ?」
エルフ姉「私には、男様がどうしてそんなに辛そうにされているのか見当がつきません」
男「俺が、辛そう……だと?」
エルフ姉「……違うのですか?」
男「……」
ザパー。
エルフ姉「きゃぁっ」
男「俺は何をやっているんだ」ハァ
エルフ姉「男様…?」
男「エルフ姉、立てるか?」
エルフ姉「あ、はい……」スク
男「体冷えただろ。湯船で温まっていけ」
エルフ姉(いつもの男様だ……)
エルフ姉「はい」
男「ほんとに俺も一緒に入って良いのか?」
エルフ姉「はい、いつものように抱きしめて下さって結構ですよ」
男「なら、遠慮なく」ギュッ
エルフ姉「ふふっ」
男「何がおかしいんだ?」
エルフ姉「こうしてると先ほどの男様が嘘のようだと」
男「うぐっ……その、謝って済むものでもないかもしれないがさっきは悪かった」
エルフ姉「私は奴隷なのですから、謝らないで下さい」
男「しかしだな……」
エルフ姉「それに私、男様が初めてのお相手でしたら、拒んだりしませんよ?」
男「なっ…!」
エルフ姉「なんて、さすがに今のは冗談ですけど」
男「はぁ……勘弁してくれ」
エルフ姉「先ほどの男様、ちょっとだけ怖かったですからお返しです」
男「……そういえば、エルフ妹はどうしてるんだ?」
エルフ姉「妹ちゃんですか? 妹ちゃんならもう寝てしまいました」
男「昼間あれだけ寝ておいて、まだ寝るのか……」
エルフ姉「寝る子は育つといいますし」クスクス
男「あいつは素直なぶん分かりやすいんだがなぁ……」
エルフ姉「はい?」
男「……どうして逃げなかったんだ?」
エルフ姉「……」
男「お前に何か理由があったんだろう? エルフ妹はお前と離れたくなくて残っただけで」
エルフ姉「その問いにお答えする前に、先に教えていただきたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
男「なんだ?」
エルフ姉「男様が辛そうに……今もとても苦しそうにされている理由です」
男「うっ……」
男「それは、どうしても答えないといけないか…?」
エルフ姉「どうしてもというわけではありませんが……」
「ただ、私は男様のお役に立ちたいと思っています」
男「……はぁ。わかったよ、話そう」
エルフ姉「ありがとうございます、男様」
男「俺は……、もしかしたらお前たちエルフが怖いのかもしれない」
エルフ姉「私たちが、怖い?」
男「正直、俺はお前たちがこの家に残っているなんて微塵も考えてなかった」
エルフ姉「それは……」
男「その答えは後で聞くが、どんな理由があれば奴隷としてこの家に残るという結論が出るのか俺には想像できなかったんだ」
「そして理解できないものには恐怖や嫌悪を示すのが人間だ」
「お前たちが眠っている間、ずっと考えて考えてお前たちが目を覚ます頃になっても自分を納得させられる答えが出なかった」
「これも勝手な思い込みだが、まるでお前たちに弄ばれてる気分だったよ」
「エルフはやはり人間には理解できない種族なんだって」
エルフ姉「『やはり』ですか?」
男「あぁ」
男「俺は戦争中、エルフに命を助けられたことがある」
エルフ姉「戦争中に?」
男「俺も傭兵として戦争に参加していたんだ」
「……あの日、鬱蒼と生い茂る山林で、俺は一人のエルフの女騎士と鉢合わせた」
「その時はこちらも俺一人だったが、エルフは人間を殺さない、そのことはすでに周知の事実となっていた」
「だから俺は一人でその女騎士に戦いを挑もうとして、……気付けば崖から足を滑らせて転落していた」ポリポリ
エルフ姉「え?」キョトン
男「そう不思議そうな顔をするな……ただ、俺がどん臭かっただけだ……」
男「そして気を失い、次に目を覚ました時、どういうわけか俺はエルフの女騎士に介抱されていた」
男『つっ…! 一体何がどうなった……』
女騎士『お前は崖を転げ落ちたんだ。勝手に足を滑らせてな』
男『お前はさっきの! ……ぐぁっ!』バッ
女騎士『動くな。お前は頭を強く打って出血していた。秘術でなんとか止血できたが、危ないところだったぞ』
男『はっ……敵国の兵士を助けるのか? どこまでも甘い種族だな、エルフは』
女騎士『怪我人を助けるのに敵も味方もない。それに私はお前に襲われたわけではないからな』
男『なんだと? 俺はお前に斬りかかろうと剣を抜いただろう』
女騎士『そうだったのか? 目の前でいきなり崖を滑り落ちていったから気付かなかったな』
男『ぐぬぬっ…!』
女騎士『まぁ、剣を交えていたとしても私はお前を助けていただろうがな』
男『……一つ聞いてもいいか』
女騎士『なんだ? 藪から棒に』
男『お前たちはなぜ俺たち人間を殺さない。エルフの崇める神の教えか何かか?』
女騎士『神? はっはっはっ、そんなものを信じているエルフなど、一人もいないぞ』
男『ならばなぜだ、すでにエルフは何十人も殺されているだろう。悲しくはないのか、憎くはないのか』
女騎士『馬鹿なことを。同胞が土に帰れば悲しいし、それが人の手によるものだと分かれば憎くもある』
男『もう一度問う、ならばなぜ人間に報復しない』
女騎士『そのようなこと……同じ想いをして欲しくないからに決まっている』
男『どういう意味だ?』
女騎士『親しいものが死ぬというのは想像以上に悲しいことだ。お前たちにそんな想いをして欲しくない』
男『な、何を言っている…? 戦争だぞこれは!』
女騎士『だが人間たちに死者は出ていないはずだ。ならばまだこの戦争は止めることができる、我々はそう考えている』
男『エルフは何十人も殺されているんだぞ!?』
女騎士『だから人間を殺すのか? そんなことをしても我々の心は晴れはしない。何をしても死者が蘇ることなどありはしないんだ』
男『まるで理解できない…! 狂ってるとしか……』ブツブツ
女騎士『お前の質問には答えてやった。次はこちらの頼みを聞いてもらえるか』
男『……なんだ?』
女騎士『このペンダントを娘に渡して欲しい』
男『なぜ俺にそんなことを頼む? 何か渡せない理由でも……っ! その血は!』ハッ
女騎士『大した傷じゃない……くっ』
男『そういえばなぜお前まで崖下にいる!? まさかお前、俺を追って……』
女騎士『そんなこと今はどうでもいい』
男『っ! そうだ……、今は止血しないと……ぐぅっ!』ガクッ
女騎士『怪我をしているのはお前も同じだ、じっとしていろ』
男『お前……秘術で止血できるんだろう。自分には使えないのか…?』
女騎士『止血するには傷が大きすぎる。それに秘術は体力を使う、もう私に治癒術を使うほどの体力は残っていない……』
男『俺の傷を治療したからか…?』
女騎士『それは関係ない。言っただろう、止血するには傷が大きすぎると』
男『嘘だッ…! お前たちエルフは優しすぎる! 自己犠牲がそんなに楽しいか!!』
女騎士『何を、言っている…?』
男『お前たちエルフの考えは人間には理解できない!! お前を待っている娘がいるんだろう!?』
『なのに自分の身を挺してまで敵国の兵士を助けて何の意味がある!?』
女騎士『人が人を救うことに理由などない。それが我々エルフの誇りだ……』
男『馬鹿だ…! お前たちエルフは大馬鹿だ…!』
女騎士『もう……いいか? 私に残された時間は、あまり長くない……』
男『……っ! そのペンダントを、お前の娘に渡せばいいんだな……』
女騎士『あぁ、これは夫が作ってくれたものでな。娘もそれと同じものを、持っている……』
男『わかった。必ず……、必ず手渡すと誓おう!』
女騎士『すまない……娘達に、愛していたと……伝えて、』カクン
男『……っ!』
男「その時に渡されたペンダントが、この間エルフ妹が勝手に持ち出したものだ」
エルフ姉「……」
男「死の間際とは言え、敵に頼みごとなど……今でもあの女騎士の行動は理解できない」
男「兵士を連れて、無人のはずの家の扉を開けたら、お前たちが仲良く寝ているじゃないか」
「その瞬間、彼女のことを思い出して俺は思わず叫びだしそうだったよ」
エルフ姉「すみません……」
男「謝るな。思い通りに行かず俺が勝手に癇癪を起こしただけだ」
「その挙句にさっきはお前に八つ当たりしてしまった」
「ああしていればお前たちも女エルフと共に逃げていたんじゃないかと、そう考えたら手が出ていた。……すまない」
エルフ姉「私は気にしていませんので、男様も気になさらないで下さい」
男「そうか。そう言ってくれると、少しは気が楽になる」
エルフ姉「男様が私たちに優しく接して下さるのは、私たちがエルフだからですか?」
男「俺がエルフの女騎士のことでエルフに対して負い目を感じていると、そう言いたいのか?」
エルフ姉「はい」
男「そうだな……あの出来事がなければ女エルフをわざと逃がすようなことはしていなかっただろうな」
「思えば、あの女騎士には助けられたことに対する礼すら言えていなかったんだ。いろいろと思うところはあるよ」
エルフ姉「そうですか……」
男「と、俺の話はこれぐらいでいいか? かなり浸かっていたから少しのぼせてきた」
エルフ姉「そうですね。私も二回目のお風呂ですしちょっと」
男「ははっ、そういえばそうだったな。お前の話は風呂から出た後に、……ぁ?」ガクン
バシャン!
エルフ姉「お、男様!? 大丈夫ですか?」
男「……」ブクブクブク…
エルフ姉「男様っ!!?」ガシッ…
男「……すぅ、すぅ」
エルフ姉「……眠ってらっしゃるんですか?」
「男様、起きて下さい。男様」ユサユサ
男「……すぅ、すぅ」
エルフ姉「このままじゃ風邪を引いてしまわれます」ユサユサ
男「……すぅ」スヤー
エルフ姉「こんなにしても起きないなんて」
「支えてないと溺れてしまうし、まずお風呂の栓を抜いて……」キュポン
「一人じゃ男様を移動させるのは無理だし、妹ちゃんも起こしてこないと」タタッ
――――
――
男「ん……」ピク
エルフ姉「男様?」
男「ここは、寝室か…?」
エルフ妹「そうよ。お風呂で寝ちゃったあんたを私たちがここまで運んであげたの」
男「そういえば風呂に入っていたんだったな、俺は」
男「二人ともありがとう」
エルフ妹「まったくよ、せっかく人が気持ちよく寝てたのに」
男「寝巻きも着せてくれたんだな。何から何まですまない」
エルフ姉「お体のほうは大丈夫ですか? お医者様をお呼びした方がよろしいでしょうか?」
男「いや、問題ない。今日は街まで行って疲れていたからか、急に睡魔がやってきただけだ」
エルフ姉「それは、本当ですか…?」
エルフ妹「お姉ちゃん?」
男「どうした、エルフ姉?」
エルフ姉「……」
エルフ姉「男様は私がこの家に残った理由、お尋ねになりましたよね」
エルフ妹「お風呂でそんなこと話してたの?」
男「あ、あぁ。それがどうかしたか?」
エルフ姉「……そのことについて、男様にまず謝らなければならないことがあります」
男「どういうことだ?」
エルフ姉「昨日、書斎の掃除をしていましたところ、机に一冊の本が置かれておりました」
男「本? 棚から取り出した本はいつも戻していたと思ったが……」
エルフ姉「男様がどのような本をお読みになっているのか興味があり、本を開いたのですが……」
男「おい、まさかその本は!」
エルフ姉「……はい、そのまさかです」
エルフ妹「何? どんな変態な本を読んでたのよ、あんた」
男「……っ」
エルフ姉「申し訳ありませんでした、男様。主の日記を勝手に盗み見るような真似をしてしまい」ペコリ
エルフ妹「男の日記…?」
男「……どこまで読んだ」
エルフ姉「初めに開いたページが丁度、男さまが床に倒れられていた日でそこから数日……」
男「そうか……。なら知ってるんだな、俺の病のこと」
エルフ姉「はい」
エルフ妹「え…?」
男「……いずれ話すつもりではいたんだ」
エルフ妹「ちょっと待ってよ、男が病気って何の話? ちゃんと説明してよ!」
エルフ姉「男様は脳に腫瘍ができていてもう長くないと……」
エルフ妹「頭に腫瘍? もしかして……あんた、死ぬの…?」
男「発作といっていいのかわからんが、時々、突然意識が遠くなって気を失うように眠ってしまうんだ」
「その発作の間隔がだんだん短くなってきて、眠っている時間が長くなっていく」
「そして最終的には……」
エルフ妹「……」
男「医者の見立てでは、俺はあと1年も生きられないらしい」
エルフ姉「……」
エルフ妹「へ、へー……そっか、あんた死ぬんだ……ふふっ、ざまあみろってやつね!」
エルフ姉「妹ちゃん……」
エルフ妹「エルフを奴隷にしてるからバチが当たったのよ! 死んで地獄に落ちればいいのよ!」
エルフ姉「妹ちゃんっ!」
エルフ妹「ッ!」パチン!
男「おい!」
エルフ妹「……」ヒリヒリ
エルフ姉「妹ちゃん、男様に井戸で水を汲んできてあげて」
エルフ妹「……わかった」スタスタ
カチャ、パタン。
エルフ姉「すみません、男様。妹ちゃんが失礼なことを」
男「構わない。人間はエルフから恨まれて当然のことをしたんだ、あいつがあぁ思うのも仕方のないことだ」
エルフ姉「妹ちゃんは本気であんなこと思っていませんよ」
「さっきのは少し気持ちの整理が追いつかなかっただけなんです」
男「なぜそんなことがわかる?」
エルフ姉「わかりますよ。だって、私はあの子のお姉ちゃんですから」
エルフ妹「……っ!」チャプン
「男が死ぬ……憎かった人間が死ぬんだ……」
「ふ、ふふっ……私たちを買うような奴、死んで当然じゃんか……」
「喜ぶべきじゃん……なのに、なのにどうして……」ポタッ
「涙が出てくるのよっ…!」ポロポロ
「ばかっ! 泣くな私! 人間なんかのために、泣いてやる……もん、」グシグシ
「うっ、うぅぅ……うわああああああぁぁぁん」
エルフ姉「エルフは里を荒らされ、家族を失い、捕えられて奴隷にされました」
男「全て人間がやったことだ」
エルフ姉「はい。ですから、私たちエルフは人間に畏怖や恨みの念を抱いています」
男「それが普通だろう」
エルフ姉「ですが、男様を恨んでいるわけではありません」
男「俺は人間だぞ?」
エルフ姉「男様に買われてから過ごした日々に比べれば些細なことです」
男「は……本気で言っているのか?」
エルフ姉「はい」
男「理解、」
エルフ姉「理解できませんか?」
男「……できるわけないだろう。俺がお前の立場なら常に寝首を掻くことだけ考えている」
エルフ姉「寝首を掻かれるかもしれない相手と同衾される方が言う言葉とは思えません」
男「それはお前たちエルフが人間を殺せないと知っているからで」
エルフ姉「男様は言ってることと考え方が矛盾しすぎています」
男「……そう言われると返す言葉がないが」
エルフ姉「そんな男様だから、逃げずに家に残り真実を確かめようと思えたんですけど」
男「真実? ……そういえば、お前がこの家に残った理由をまだ聞いていなかったな」
男「俺の病を知って同情したか?」
「どうせお前たちのことは理解できないんだ、今更どんな理由があっても驚かない自信がある」
エルフ姉「本当ですか?」
男「あぁ、本当だ」
エルフ姉「本当の本当に、ですか?」
男「本当の本当に、だ。随分ともったいぶるな……」
エルフ姉「男様がどんな風に驚くのか少し楽しみで、うふふっ」
男「聞くのが怖くなるから止めてくれ。というか驚く前提なのか」
エルフ姉「はい」
男「そろそろ本気で教えてくれ」
エルフ姉「わかりました。私がこの家に残った理由は……これです」チャリ
男「ん? あのペンダントじゃないか。これが欲しくて残ったって言うのか?」
エルフ姉「……」
男「風呂場でも話したがこれは大事な預かりものだ」
「もし俺が死ぬまでに見つけられなければ、お前たちに託すつもりでいるが……」
エルフ姉「男様」
男「なんだ」
エルフ姉「母との約束を守って下さって、ありがとうございます」ペコリ
男「っ!!」
男「それはお前が持っていたものなのか…?」
エルフ姉「はい、母からお守りとして貰ったものです」
男「そうか……。そこの引き出しに小箱が入っている、出してくれるか」
エルフ姉「……これですか?」スッ
男「それだ。開けてくれ」
エルフ姉「はい」パカッ、チャリ
男「…! 確かに同じものだ……、じゃあ本当にお前たちは……」
エルフ姉「間違いないと思います」
男「は、はは……偶然にしてもできすぎだ」
エルフ姉「ですね。私も驚きました」
男「だが、なぜ今まで黙っていたんだ。前にこのペンダントを見せた時は知らないと言っていたじゃないか」
エルフ姉「あの時は、私が同じペンダントを持っていることを話してしまったら、今の生活が終わってしまいそうで怖かったんです」
男「今の生活が終わる、か……」
エルフ姉「男様にとってペンダントの持ち主は大事な人なのか、それとも憎むべき相手なのか、わかりませんでしたから」
男「話そうと思ったきっかけは俺の日記か」
エルフ姉「はい。妹ちゃんがペンダントを持ち出した日の日記に、母のことと思われることが書かれていたので確かめなければと思ったんです」
男「真実を知ってどうだ。俺を……殺すか?」
エルフ姉「えぇっ? どうしてそうなるんですか?」
男「直接手をかけていないとは言え、お前たちから母親を奪ったのは間違いなく俺だ」
「言うなれば親の仇だろう」
エルフ姉「私は男様が母の仇だなんて思っていません。母が救った命、大事にして下さい」
男「お前はそれでいいのか?」
エルフ姉「良いも悪いもありませんよ。私は男様が亡くなられたら悲しいんです」
「妹ちゃんもきっとそう言うと思います」
コンコン。
男「!」
エルフ妹「お姉ちゃん、手が塞がってるからドア開けて」
エルフ姉「はいはい、ちょっと待ってね」ガチャッ
エルフ妹「ありがとう。……はい、水」
男「風呂で気を失って喉もカラカラだったからな。助かる」
エルフ妹「……」
男「ごく、ごく……ぷはっ」
エルフ妹「おかわりいる?」
男「いや、いい。ありがとう、エルフ妹」
エルフ妹「別に。お姉ちゃんに言われたから汲んできただけだし」
男(……目が赤いな。泣いていたのか、こんな俺のために……)
男「エルフ妹、お前に話さなければならないことがある」
エルフ妹「何? まだ隠してることがあるの?」
男「あぁ。お前の母親のことだ」
エルフ妹「えっ?」
――――
――
―
男「――以上だ」
エルフ妹「それ……ほんとなの?」
男「あぁ、本当だ」
エルフ妹「……お姉ちゃん、私どうしたらいい?」
エルフ姉「妹ちゃんはどうしたいの?」
エルフ妹「わからない……そんなのわからないよ」
「こんなのただの事故じゃん。ただ運が悪かっただけ」
男「俺さえいなければお前の母は生きていたとは思わないのか?」
エルフ妹「それは思うけどあんたを恨んでも仕方ないもん……」
「お母さんがしたことを間違ってたなんて思いたくない」
男「そうか……ありがとう」
エルフ妹「なんでお礼?」
男「ん? なんでだろうな。俺にもわからん」
エルフ妹「何それ?」
エルフ姉「ふふふ、もう夜も遅いです。そろそろ横になりませんか」
男「あぁ、そうだな。そうしよう」
エルフ妹「……うん」
翌日の昼下がり――。
男「それで、お前たちはいつこの家を出て行くんだ?」
エルフ妹「え?」
エルフ姉「どういうことですか?」
男「ん? いや、知りたかったことも知れただろう」
「俺とこの家で暮らすよりエルフの隠れ里とやらに行ったほうがいいんじゃないのか」
エルフ姉「どこにあるかわからないですし」
男「女エルフから聞いていなかったのか?」
エルフ姉「はい。識者の案内なしには辿り着くのは難しいらしく……」
男「それなのに残ったというのか、お前たちは……」
エルフ姉「里に戻って会いたい人もいませんし、後悔はしていませんよ」
男「結構、さっぱりした性格してるな、お前……」
エルフ姉「そうですか?」
男「そうだよ。エルフ妹もよかったのか、お前は人間が嫌いだろう?」
エルフ妹「私はお姉ちゃんさえいればそれでいいの」スリスリ
エルフ姉「もう、妹ちゃんったら」ナデナデ
男「姉と結婚でもするつもりか、お前は」
エルフ妹「私、お姉ちゃんが相手なら別にいいよ」
エルフ姉「……」ナデナデ
エルフ妹「な、なんで何も言わないの…? そこは私もよ、って言うところじゃないの?」
エルフ姉「さすがにそれはちょっと……」
エルフ妹「がーん!」
男「はははは!」
エルフ妹「笑うなぁっ」
男「それなら……俺と結婚するか?」
エルフ姉「えぇっ、男様もですか?」
エルフ妹「だめっ! お姉ちゃんは絶対に渡さないんだから!」
男「別に妹でも構わないぞ」
エルフ妹「別にって何なのよ、男のくせにむかつく!」
男「まぁ、形式上だけの話になるし」
エルフ姉「? あの、もしかして本気で仰ってるんですか?」
男「もちろん本気だぞ?」
エルフ妹「はぁ!?」
男「昨日話したが俺はもう長くない」
エルフ姉「はい……」
男「俺が死んだらお前たちはどうなるかわかるか?」
エルフ妹「えっと、確か野良奴隷になるんだっけ」
男「そうだ。俺がお前たちを奴隷から解放すると宣言したところで、この国でのお前たちの扱いは奴隷のままだ」
「だが、奴隷から解放される方法がないわけでもない」
エルフ姉「あ、もしかしてそれで……」
男「エルフ姉は察しが良いな。つまりはそういうことだ」
エルフ妹「え? え? どういうこと? 教えてよ」
男「この国には人間と婚姻関係を結んだエルフは人間として扱うという法律があるんだ」
エルフ妹「えっと、つまり……」
男「俺と結婚すれば、お前たちのどちらか一人は奴隷から解放してやれる」
エルフ妹「!! 前に言ってたのって、このこと…!」
男「あの女騎士の娘を見つけてこの法律で助けること。それが俺が死ぬまでにやるべきことの一つだった」
「もし俺の命が尽きるまでに見つからなければ、適当に買ってきた奴隷に代理を頼むつもりだったが」
エルフ姉「その適当に買ってきた奴隷が、探していたエルフだった」
男「偶然とは恐ろしいものだ」
エルフ姉「偶然なんかじゃありませんよ」
男「ん?」
エルフ姉「きっと、母が廻り遭せてくれたんです。そんな気がします」
男「そうかもしれないな」
エルフ妹「で?」
男「で?とは?」
エルフ妹「どっちと結婚するつもりなのよ……」ジー
男「俺はどちらでも構わないが、後々のことを考えるとエルフ姉の方が問題は少ないだろうな」
エルフ姉「私が男様の奥様に…!」ポッ
エルフ妹「だめ!」
男「ならお前がするか?」
エルフ妹「それもいや!」
男「ならどうしろと……」
エルフ妹「別にいいじゃん……このままでも」
男「言っただろう、俺の命はもう長くないんだ」
「一年も生きれたら良い方で、もしかしたら明日にも俺の寿命は尽きるかも、」
エルフ妹「それもだめ!」
男「それもだめってお前……」
エルフ姉「妹ちゃん……」
男「エルフ妹……すまない」
エルフ妹「なんで謝るのよ…!」
男「エルフ妹、俺は死ぬ」
エルフ妹「っ!」
エルフ姉「……」
男「できるだけ長く生きたいとは思うが、きっとそうはいかないだろう」
エルフ妹「……私、秘術の練習する。治癒術を覚えて治すから……」
男「無理だ」
エルフ妹「やってみなきゃわからない!」
男「そうじゃない。まだ外したままだが奴隷は必ずあの首輪をつけなければならない」
「そうしたら秘術は使えなくなるだろう」
エルフ妹「なら私と結婚して! 結婚したら奴隷じゃなくなるから首輪は外せるんでしょ?」
男「それは、そうだが……」
エルフ妹「男は死にたいの?」
男「……首飾りを返せた今となっては、別に死んでも良いとは思っている」
エルフ妹「お母さんの命を貰ったのに死ぬなんて許さない!」
男「……すまん」
エルフ姉「……」
エルフ姉「男様……妹ちゃんの好きにさせてあげてくれませんか?」
エルフ妹「お姉ちゃん」
男「エルフ姉……いいのか?」
エルフ姉「はい。私は構いません」
男「……わかった。別に俺はお前たちを奴隷から解放できればそれでいいんだ。結婚するぞ、エルフ妹」
エルフ妹「絶対助けるから……絶対に」
男「期待せずに待ってるよ」
そしてその年の冬――。
男「――」
医者「ご臨終です」
エルフ姉「……男様」
エルフ妹「うっ、うぅ……、間に合わなかった……」ガクッ
男は死んだ。
エルフ妹「……」
エルフ姉「妹ちゃん……、夕飯ができたわ」
エルフ妹「食べたくない……」
エルフ姉「だめよ。もう丸二日、何も食べてないじゃない」
エルフ妹「……」
エルフ姉「男様も亡くなる前に食事は好き嫌いなくちゃんと摂るようにって、」
エルフ妹「あいつの話はしないで!」
エルフ姉「妹ちゃん……」
エルフ姉「男様に買われてこの家にきたばかりのこと、覚えてる…?」
エルフ妹「……」
エルフ姉「男様のことをよく知らない私たちにはすごく怖い人に見えたわよね」
「男様は私たちに良くしてくれたけれど、逆に不安に思ったりもした」
エルフ妹「覚えてないよ、そんな昔のこと」
エルフ姉「妹ちゃんが家出したこともあった。男様の持ち物からお母さんの形見が出てきてどうしようか悩んだこともあった」
「一緒に作った家庭菜園はどれも美味しく出来たわよね」
エルフ妹「……西瓜、美味しかった」
エルフ姉「そうね。焼き芋も美味しかったわ」
エルフ妹「もうその頃には男は一日に一度は気を失うようになってた……」
エルフ姉「そういえば、おトイレで気を失ったこともあったわね。うふふ、あの時は大変だったわ」
エルフ妹「……」
エルフ姉「いろいろなことがあったわよね」
エルフ妹「うん……」
エルフ姉「……妹ちゃんは良く頑張ったと思うわ」
エルフ妹「うん……」ジワッ
エルフ姉「男様、最後に言ってたわよね。幸せだったって」
エルフ妹「うんっ…!」ポロポロ
エルフ妹(今でも人間は嫌い)
(でも、男のことだけは嫌いじゃなかったよ)
(さよなら、男)
おわり。