7 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/15 23:43:10.97 9O35EZnUO 1/61


 ある日の音楽準備室

「軽音部でライブに行くぞ!」バンッ

「ライブ?」

「ああ。チケットがちょうど5枚とれたんだ」

「誰のライブなの?」

「ワマナベ。当然知ってるよな?」

「中学から大好きなんだよなー! ずっとライブ行きたかったんだ!」

「その人なら私も知ってるわ! すごく有名な人じゃない!」

 わいわい…

「……」ガクガク

「……」プルプル

「あずにゃん?」チラ

「唯先輩……」チラ


元スレ
唯「レンタルお姉ちゃんだよっ」
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1292423933/

9 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/15 23:46:30.32 9O35EZnUO 2/61


「わまなべって……知ってる?」

「一応、名前くらいは。でも、歌を聞いたことはないです」

「私は完全に初耳なんだけど……」

「おーいゆいあず、なにコソコソしてんのー?」

「べつにっ!」ビクッ

「な、なんでもないですよ!」

「んー……? まあいっか。ライブは1週間後だけど、来れる?」

「うんっ、うん。大丈夫だよ」

「あっ……もう。はい、私も平気です」

「じゃあ、今日は解散にするか」

「へ? なんでだ?」

「良い時間だしさ。……ちょっと律、耳貸して。……ひそひそ」

「……あー、唯ちゃんたちに気を遣ったのね」

「……なんでムギに聞こえてるんだ?」


11 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/15 23:50:04.40 9O35EZnUO 3/61


――――

 帰り道

「じゃあムギちゃん、また明日学校で」

「うん、またね」

「さようなら、ムギ先輩」ペコ

 てくてく

「……」

「……あの、唯先輩」

「……こうしちゃいらんないね」

「あずにゃん。いますぐツタヤに行くよ」

「わまなべ……でしたね。せっかくライブ行くなら、勉強しておきたいですもんね」

「ちがうよ、わまなべは世界的なアーティストなんだよ? 知らないなんて恥ずかしいじゃん!」

「そこまでは言ってなかったような……」


12 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/15 23:53:05.56 9O35EZnUO 4/61


「とにかく、このことは誰にも内緒にしないと」

「憂にだってばれないようにしなきゃだめなんだ」

「唯先輩……? あの、なんだか雲行きが良くない気が」

「ふふ……」ニヤッ

「あずにゃん家しか、ないよね?」

「……」

「断るっていうなら、あずにゃんがワマナベ大嫌いなことりっちゃん達に言ってもいいんだよ?」

「なっ、だからそんなことは言ってないです!」

「ほんとかどうかなんて関係ないのだよ、少女あずさ」サワッ

「なんですかそれ……別に、CDを聴くぐらいいいですけど」

「やった!」

「……それじゃ、ツタヤまで寄り道しましょう。大通りに出たところにあったはずです」

「あずにゃん家にはワマナベのCDないの?」


13 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/15 23:56:43.53 9O35EZnUO 5/61


「どうでしょう……もしかしたら親が買ってるかもしれませんけど」

「無かった場合を考えると、先にツタヤに寄りたいですね」

「そーだね。あずにゃん家から出るのやだもん」

「居着く気ですか!?」

「……だめ?」

「だめじゃないですけど……」

「ってダメ! ダメに決まってるじゃないですか!」

「くう、もうちょっとだったのに!」パチン

「あっ、唯先輩指パッチン! できるようになったんですね!」

「憂にコツを教えてもらったのです」パチパチン パチパチン

「スゴイ、両手! それは私もできないです!」パチン パチン

「ほれーほれー」パチンパチンパチン

「くっ、つっ! 左手っ……!」スカッスカッ


14 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:00:02.80 tcAi4tI7O 6/61


「あずにゃん、ツタヤいくよー?」

「ちょっと、待ってくださ……ああっ」グイッ

「練習ならあずにゃん家に帰ってからやろ、ね?」

「ハ……イ。すみません」

「夢中になっちゃって可愛いなーあずにゃん」

「……」プイ

「へへぇ」

――――

 TSUTAYA

「ま、ま……あれ?」

「あずにゃん、何してるの?」

「マワナベ、置いてなくないですか?」

「ま……?」


15 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:03:03.85 tcAi4tI7O 7/61


「……あずにゃん。わたしたちはワマナベを探しに来たんだよ」

「へ? ですからマ行の棚を……」

「あずにゃん、ワ・マ・ナ・ベ」

「……わかってますよ! ワ行ですよね! あーここだここだあった!」

「今日のあずにゃんテンション高いねー。どしたの?」

「べ、別に何でもないです! その……」

「てぃ、ティーポイントもらっちゃいますから!」

「おぉー、たっぷりいただいていきなさい」

「……じゃ私、借りてきますね!」

「うん、よろしくねあずにゃん」

 とてて…

「ふぅ」

「……1泊レンタルかぁ」


17 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:06:33.07 tcAi4tI7O 8/61


――――

 中野家のマイルーム

「さあ、ではあずにゃん」

「はい! よろしくおねがいします!」

「ほい。まずこう指をぴんと伸ばしてくっつけるんだよ」

「こうですか?」

「そうそ。ほら見て、右手でやるときも、こうやって指曲がってないでしょ?」

「あ、ほんとですね。じゃあ左手でもこうしたら……」パシュ

「……れ?」パスッ スカ

「ほらほらあずにゃん、こうだよー」パチパチパチン

「……ゆいせんぱぁい」シュカ シュカ

「泣いちゃだめだよあずにゃん。指が濡れたらパッチン鳴らなくなる」

「……泣いてはいませんけど」グス


18 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:10:01.55 tcAi4tI7O 9/61


「……じゃ、CD聴いてみよっか」

「あ、はい。じゃあファーストアルバムからかけてみましょう」

「からって……あずにゃん、一体何枚借りてきたの?」

「とりあえずアルバム3枚と、新曲があったのでそれも」

「……」

「1泊、だよね?」

「あ」

「……あずにゃん」

「ご、ごめんなさい……」

「その、どうします?」

「しょうがないね……憂に電話してくるよ」

「へ?」

「このアルバム、かなり曲数入ってるみたいだし。泊まってかなきゃ聴ききれないよ」

「へ?」


21 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:13:02.74 tcAi4tI7O 10/61


「とっとと、泊まるんですかっ?」

「あはは、あずにゃん声うらがえってるー」

「あははーじゃなくてぇ!」

「……あずにゃん家、だめ?」

「……親に訊いてきますっ!」

「いまってあずにゃんのご両親、九州にいるんじゃないの?」

「あっと……そうでした。ですから……」

「いいよね、あずにゃん?」

「……ハイ。どうぞ泊まっていって下さい」

「えっへへー! あずにゃんとお泊りー!」ダキッ

「ひゃっ!?」

「にゃあだってー」ギュウギュウ

「言ってません! い、いいから憂に電話してきて下さい!」


22 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:16:20.39 tcAi4tI7O 11/61


「うんうん、すぐ言ってくるよ」パッ

「あっ……」

 すたた…

 ガチャ バタン

「なんでわざわざ部屋の外に……」

「……」そっ

「……」ぴた

『うん……だから』

『だ、だいじょうぶだよ。あんまりたくさんで押しかけたら悪いし』

「……」

『あ、着替え……うん。それは助かるけど』

『ほんとに? ……うん、うん』

『うん。ありがと憂……ごめんね』


23 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:20:06.91 tcAi4tI7O 12/61


 がちゃっ

「ひゃっ!」ドタン

「わ、あずにゃん!?」

「大丈夫? もー、そんなとこにいたらぶつけちゃうよ」

「す、すみません。……それで、どうでしたか?」

「あ、泊まっていいみたい。着替え持ってきてくれるって」

「え? それじゃあ、憂は」

「憂は学校あるからいいって。なに、3人がよかった?」

「……ま、まあ3人のほうがおもしろいかもしれませんけど」

「無理だって言うならしょうがないですね」

「……そっか。ひとまずさ、CDの前にごはんにしようよ」

「そうですね。もう7時ですし」

「憂のぶんも作ってあげよう!」


24 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:23:03.51 tcAi4tI7O 13/61


――――

 キッチン

「唯先輩、料理できるんですか?」

「そりゃ、少しはね。憂みたいにおいしくは作れないけど」

「へぇ……意外です」

「あんまり意外そうじゃないね」

「えと、まぁ、合宿の時とかきちんと包丁あつかえてましたし」

「よく見てるねぇ」

「あ、危なっかしいからです! ……でも、料理は大丈夫みたいですね」

「そゆこと。えへへ、まぁ任せて」

「あずにゃんは休んでていいよ。……あ、お風呂の準備しといてほしいかな」

「あ、はい。……てきぱきしてますね」

「だてに16年もお姉ちゃんしてないってことですよ」


27 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:26:29.57 tcAi4tI7O 14/61


「お姉ちゃん……」

「へ!?」

「え? いや、あの、違いますよ!? お姉ちゃんって呼んだ訳じゃ」

「あ、あずにゃん……」

「もっと言ってそれ! お姉ちゃんて!」

「い、いやですよ! そういうのは……」

「お願いあずにゃん!」

「……」

「あずにゃん?」

「……その、あずにゃんっていうのをやめてくれたら、いいですよ」

「……」

「じゃあ、そしたら……あずさちゃん?」

「はい、」

「いや待って! 違う……」


28 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:30:09.76 tcAi4tI7O 15/61


「へ? ちょっとあの、変なあだ名とか開発しないでくださいよ?」

「あずにゃんは私をお姉ちゃんって呼ぶんでしょ?」

「えっ……はい、まぁ」

「だったら……あずさだよ」

「!」キュウ

「私、ういのことはういって呼ぶし。だから、あずさ!」

「……な、なんか、新鮮ですね?」

「ほら、あずさ、あずさ!」

「えっ? ななんですか唯先輩」

「だからぁ、お姉ちゃんって呼んでよ!」

「へ……えっと……」

「お、お風呂沸かしてきますー!」ピュー

「あぁっ、逃げたなあずさー!」


30 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:33:12.08 tcAi4tI7O 16/61


――――

 浴室

「はぁっ、はぁ……」

「あぁもう……」ゴシゴシ

「お姉ちゃん、か……」

「お姉ちゃんにするなら、澪先輩とかかなあって思ってたけど」ゴシ…

「……唯お姉ちゃんかぁ」

 きゅ きゅ

 ザアアアー…

「お姉ちゃんっていうよりは……やっぱり、唯先輩とは」

「……す、すきです、唯先輩」

 ザアアアァァ

「何言ってんだろ。……ばかな私」


32 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:36:26.60 tcAi4tI7O 17/61


「ぽちっと」ぴっ

 ジャバババ…

「ふぅ……」

「唯先輩の妹かぁ」

「部活の後輩より……近づけたのかな」

「ふつうの、親密さでいうなら……そうなんだろうけど」

「……」

「わたしは憂の立場じゃないだけマシなのかも」

「わかってるけど……やっぱり憂がうらやましいな」

「今晩だけ……今晩だけだ。唯先輩の妹になってあげよう」

「お姉ちゃん、お姉ちゃん……うん、よし」

「……憂だって、一晩くらいなら許してくれるよね」

「……」


33 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:39:59.49 tcAi4tI7O 18/61


――――

 リビングルーム

「おね」ガチャッ

「……ゥゲフン、ゲフン!」

「あ、梓ちゃん。勝手に上がっちゃってごめんね」

「ううん、良いよ。来るっていうのは聞いてたし」

「お姉ちゃんとCD聴くんだって?」

「うん。1泊なのにレンタルしすぎちゃって。ていうか結局話したんですね、唯先輩」

『へ? なーにあずにゃん?』

「憂にはマワナベ知らないこと内緒にしておくんじゃなかったんですか?」

『いやぁー、言い訳思いつかないしさ、憂ぐらいにはいいかなって』

『あと、ワマナベだよあずにゃん? そこしっかりしないとりっちゃん達に笑われるよー?』

「う……気をつけます」


34 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:43:28.06 tcAi4tI7O 19/61


「ふふっ」

「なに……」

「意外とお姉ちゃんに頭上がらないんだね、梓ちゃんって」

「ち、違うもん! いつもはこんなじゃない!」

「そうかな。お姉ちゃんもなんか慣れてる感じだよ?」

『んー、なんか今日あずにゃん、やたらテンション上がってるから扱いやすいんだよね』

「ひどいですっ、唯先輩まで!」

「あれ? 梓ちゃんにとって私よりお姉ちゃんが下なの?」

『あずにゃん傷つくー』

「な、なんなんですかもうっ! そんなわけないじゃないですか!」

「えへへ、冗談冗談……お泊りって楽しいもんね」

「……まあ、そうだね。成り行きだけど、たまにはいいかな」

「お姉ちゃんだったらいつでも貸したげるよ?」

『ういー、私の意志はー?』


35 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:46:31.74 tcAi4tI7O 20/61


「ごめんごめん……でも、いいでしょ?」

『……ふんだ!』

「……」

「怒っちゃった」

「私に言われても……」

「じゃあ梓ちゃん、お姉ちゃんをよろしくね」

「もう帰っちゃうの? 唯先輩、憂のごはんも用意してくれるって言ってたよ」

「うん、使っちゃわないといけない野菜があるから……」

「そう……じゃあまた明日ね」

「うん、バイバイ。お姉ちゃーん、私帰るねー?」

『おーう、じゃーねー』

 とんとん ばたん

「……」


36 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:50:11.75 tcAi4tI7O 21/61


「……お姉ちゃん?」

『なーにー、あずさ?』

「……ごはんっ! いつできるかな!?」

『もうすぐだよ。待っててね』

「……」

 たたっ

「お姉ちゃん、私も手伝うよ!」

「そしたら、ごはんよそってくれるかな?」

「うん、わかったお姉ちゃん」

「……ふふっ、あーずーさ」

「おねーちゃん。……ぷくくっ」

「あず……ぷふ、あははっ! やっぱ変だよこれ!」

「唯先輩が提案したんですよ!?」


38 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:53:06.29 tcAi4tI7O 22/61


「あっこら! お姉ちゃんと呼びなさい!」

「続けるんですか!?」

「もちろん! あ、でも私はあずにゃんって呼ぶよ」

「一方的じゃないですか……」

「いいじゃん、あずにゃん。お姉ちゃんって呼んでよう」

「……お姉ちゃん?」

「なぁに、あずにゃん?」

「フライパンくすぶってますよ」

「うぇええ!? ちょ、ちょっとちょちょ」カチャカチャ

 ブシュゥウゥ…

「ああぁ……」

「そういうお願いはもっと姉らしくなってからしてください、『唯先輩』っ!」

「ちくしょう!」


40 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 00:55:58.26 tcAi4tI7O 23/61


――――

唯梓「いただきますっ」

「ん」モグ

「……」パク

「……ふ、ふふっ」

「タマネギによく火が通っています」

「ぷくっ……ふあっはははは! ひひ、おっかしい……」

「なにがツボなんですか……笑い事じゃないですよ」

「憂に料理教わった方がいいんじゃないですか?」

「ふっ……ぷふっ! ちがうもん、さっきは気を抜いてて……」

「あずにゃんがお姉ちゃんとか言うからぁ」

「だから提案したのはお姉ちゃんですっ!」

「……うあああああっ!!」ガリガリガリ

「ちょっとだけしみてるねぇ。この煮物さんのように」


41 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:00:08.39 tcAi4tI7O 24/61


「ハァ、まったく……なに言ってるんですかほんとに」

「あずにゃんこそだよ」

「あ、いいんですか? マワナベ知らないって言いふらしますよ?」

「だからワマナベ……」

「どっちでもいいですっ!」バン

「はいっ」

「さあ、食べましょう食べましょう!」パクパク

「むっ、早食い対決だね!?」パクパク

「むひょっ、あふっ!」ビクッ

「大丈夫ですか!?」

「うっほぴょ~ん」モグモグ

「……あぶない、コップの水かけちゃうところでした」

「やめてね?」


42 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:03:01.86 tcAi4tI7O 25/61


「でもあずにゃん、私の料理もけっこういけるでしょ?」

「ん……」パク

「まあ、焦げてないとこはおいしいかと……」

「でしょ? 憂もおいしいって言ってくれるんだよー」

「……憂がいるときに料理する事ってあるんですか?」

「……そこはつっこまないで」

「見栄張りましたね……」

「でも、普通に食べられれば十分だと思いますよ」

「えー? 自分でおいしい料理作れないと、毎日の食事が憂鬱になるんだよ?」

「なんか知ってるような言い方ですね」

「ん……まあ」

「食事は大事だと思うな。うん」

「ですね。焦がさないようにしなきゃいけませんよ」


44 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:06:29.86 tcAi4tI7O 26/61


「あずにゃん手厳しい……」

「すみません……」

「……」モグモグ

「あずにゃんこそ、料理できるの?」

「できますよ。……たぶん。憂と比べられたら困りますけど」

「憂もがんばってあそこまで上手になったんだよ。努力しなきゃ」

「唯先輩もです」

「ふんだ!」

「拗ねないでくださいよ、もう」

「ふんっふんっ」ヒョイパク ヒョイパク

「ぜんぶ食べられた!?」

「ごちそうさま!」

「ごちそうさまです……」


45 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:10:07.51 tcAi4tI7O 27/61


――――

 梓の部屋

「よし、お風呂も入ったことだし、CD聴こうか」

「はい。学校もありますから、遅くならないうちに聴き終えないといけませんしね」

「さっさとかけちゃお。ワマナベ1st……うわぁ、16曲もある」

 ガチャ ガチガチ

「よいと」カチ

「……」

 ~♪

「あずにゃん、こっちこっち」

「あっ、はい」

 ととっ

「失礼します……」ぴたっ


46 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:13:14.06 tcAi4tI7O 28/61


「……あずにゃん?」

「はい?」

「……ううん、なんでもない」

 …すりっ

「……」

「きれいだね……」

「えっ?」

「この歌手さんの歌声。すごくきれいだと思う」

「……」

「そうですか? ……私は、唯先輩のほうが好きですよ」

「……」

「……う、歌声が、です」

「そう? うれしいな」


48 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:16:25.16 tcAi4tI7O 29/61


「……」

「……」

「あずにゃん」

「はい?」

「ワマナベ、どう?」

「うーん……印象とは違いますね」

「律先輩が中学から好きって言うくらいですから、もっと激しいバンドなのかと思いましたけど」

「なんていうか……優しいです」

「うん。私も優しいって思った。用語とかわかんないから、説明できないけどさ」

「律先輩が素直に好きって言いそうな感じじゃないですよね」

「澪ちゃんならわかるけどね。なんていうか、この人の歌は……」

「人を素直にさせる力があるのかもね」

「……有名になるのもわかりますね」


49 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:20:05.37 tcAi4tI7O 30/61


「……」

「……」

「きれいだな……いいきもち」

「……そう、でしょうか」

「プロローグだっけ、この曲は」

「そうですね。……ライブで聴けるかなぁ」

「……」

 ぎゅっ

「どうしたんですか……急に抱き着いて」

「だめ?」

「いいですけど……」

「えへへ」ギュウ

「……」


52 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:23:22.73 tcAi4tI7O 31/61


 とくん とくん…

「……」

「あずにゃん?」

「……」ブルッ

「だいじょぶ? 湯冷めしちゃった?」

「いえ……」

「じゃあどうしたの?」

 ぎゅうっ

「……なんでもないですよ」

「唯先輩がいてくれたら、大丈夫ですから」

「……わかった。ぎゅってしててあげる」

「ありがとうございます……」


53 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:26:33.77 tcAi4tI7O 32/61


――――

「……」

「アルバム終わっちゃったね」

「……うん」

「次のCD入れてくるよ」ぱっ

「あ……」

 カチャ ガチッガチ

「……」

 カチャン

「……あずにゃん」

「なに、ですか? 唯先輩」

「そろそろ……お姉ちゃんって呼んでくれない?」

「……」


54 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:30:20.62 tcAi4tI7O 33/61


「あずさって……呼んでくれるなら」

「いいよ。……あずさ」

「おねえちゃん……」

 カチッ

「おいで。もっと近くで聴こうよ」

 ~♪

「うん……」

 すとっ

「……」ギュウウ

「あっ、ちょ……」

「……いつも憂にもこんな風に抱き着いてるんですか?」

「憂? うーん……」

 ぐいっ

「……」カアアッ


55 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:33:28.74 tcAi4tI7O 34/61


「あずさは膝にのっけて後ろから抱っこするのが、しっくりくるね」

「そ、そうかな……」

「うん。すっごく、いい」

 ぎゅううっ

「……」ドキドキ

「抱き心地もいいよ」

「曲……聴こうよ」

「……」

「綺麗な曲だよ。優しい曲」

「はい……」

「……」ギュッ

「……かわいいね」

「へ……」ドキンッ

「今のフレーズ、かわいかった」


56 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:36:27.61 tcAi4tI7O 35/61


「……」

「あずさ?」

「は、はいっ?」

「お姉ちゃんの話はちゃんと聞きなよ?」

「あ……ご、ごめんね、お姉ちゃん」

「けど、だって……ドキドキしちゃうから」

「あずさ……」ぎゅう

 ~♪

「あ……い、いやですっ……」

「わたし、あずさのこと好きだよ?」

「だめですっ、ゆいせんぱい……」

「あずさっ」

「……おねえちゃん」


59 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:40:05.87 tcAi4tI7O 36/61


「よしよし」

 なでなで

「……」

「あ、この曲」

「今度はなに?」

「さっきも流れてたよ。1stアルバムでも」

「……そうだったっけ?」

「ほら、ここ。こんな日の暮れ時~には~」

「淋しく誰か想~いた~い♪」

「あ……」

「なんーてね、空~がね~、透っき通るか~ら素直にな~るよ~♪」

「よ、よく……覚えてるね」

「えへへ。歌ならすぐ覚えられるんだ」


60 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:43:18.94 tcAi4tI7O 37/61


「わたしは今どのあ~た~り~?」

「……」

「小説としたら何ページ目あ~た~り~?」

「まだ~まだ~、プローロォ~グ♪」

「唯先輩っ!」

「こ……なぁに、あずさ」

「私、わたし……やっぱり唯先輩のほうが好きですっ」

「……」

「歌声だけじゃないです……唯先輩が好きなんです!」

「好きって、簡単な好きじゃないです。こ……恋なんです、この気持ちは!」

「おかしいですか!? わたしだって……ううむぐっ」

「……あずさ。お姉ちゃんの話、聞いてた?」

「……う、ぐむ……?」


61 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:46:32.09 tcAi4tI7O 38/61


「お姉ちゃんって呼んで。……そう言ってるよね?」

「……」

 パッ

「あずさ」

「……ゆい、せんぱいっ」ケホッ

「……」

「なんでですか……どうして憂なんですかっ」

「わたしだって、私の方がっ、唯先輩のこと愛してます!」

「なのに、何で憂なんですか……? 私を私として受け止めてくれないんですか!」

「……」

「憂じゃ……やだよう……」

「……あずさ。そうじゃないよ」

「あずさのことは好き。でも、妹じゃなきゃやだよ」

「意味がわかんないですっ……唯先輩の妹って、憂のことじゃないですか」


62 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:50:22.28 tcAi4tI7O 39/61


「……」

「……」

「唯先輩っ!」

「お姉ちゃんって呼びなさい」

「いやですっ、唯先輩!」

「……だったらあずにゃんの気持ちには答えられないよ?」

「あずにゃん、私に甘えたいんじゃないの?」

「私を通して憂を見られるくらいなら、甘えたくなんてありません」

「違うんだけどなぁ」クスッ

「まぁいいや。私のひざ、おりてよ」

「……」

「あずにゃん、おりて」

「……はい」ぽすっ


64 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:53:29.84 tcAi4tI7O 40/61


「……」

「……」

「良い曲だねえ」

「……」

「唯先輩……訊いてもいいですか」

「だめ」

「……ですけど」

「ヘンですよ? 唯先輩」

「……自覚してるから。言わないで」

「ていうか、あずにゃんだって人のこと言えないけど」

「……」

「そうかもしれませんね……」

「……」


66 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 01:56:37.64 tcAi4tI7O 41/61


――――

「……」

「3枚目……」

 カチャッ パチッコトン

「あずにゃん、ちゃんと曲聞いてる?」

「……」ぼー

「……あずさ。お姉ちゃんって呼ぶだけで良いんだよ?」

 カチッ

 ~♪

「……」

「あーずーさっ」

「……いやです」

「ふむ、強情な」


67 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:00:06.45 tcAi4tI7O 42/61


「……」

 ~♪

「……」

「もう12時だねぇ」

「でも、聴きませんと」

「あずにゃん真面目……ふあぁ……」

「……先に寝ててもいいですよ?」

「いいかな? 正直もうどうでもいいんだよね……ぁく」

「ベッドかりまーす……」

 ごそっ ごそごそ

 ぼすんっ

「……」

「……きれいな歌」


68 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:02:59.36 tcAi4tI7O 43/61


「すうぅ……くぅ、すうぅ……くぅ」

「……」

 カチッ

 しーん…

「でも……やっぱり唯先輩のほうが」

 そっ

 と と…

「……好きです、唯先輩……」

「今なら、私の好きにできますよね」

「すうぅ……くぅ、すうぅ……くぅ」

「……」

 ゴクッ

「……こんなの、いけないかもしれませんけど」

「でも、唯先輩のほうが、よっぽど……」


70 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:07:54.19 tcAi4tI7O 44/61


「……いきますよ」

 すっ

「ふぅ、ふぅっ……」

「ん……」

「うるさいよ、あずにゃん」ぐい

「むべるぷえうふぁお!?」

 どどっどたんっ

「……お姉ちゃんの寝込みを襲うのは良いけど、先輩はだめだよ、あずにゃん」

「ぷぇ……ゆ、ゆいせんぱぁい!」

「……わかんない子だね」

「わかってますよ! それでも嫌なんです!」

「唯先輩が私を後輩として見るのを嫌がるのと同じで……私も唯先輩を姉のように見たくないんです!」

「……ふつうの恋人がいいんです」


71 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:10:06.23 tcAi4tI7O 45/61


「……寝込みを襲って普通の恋人になれると思った?」

「それはその……すみません」

「ごめんね。もう眠いから寝かせて、あずにゃん」

「……」

「わたし、よその部屋で寝ます……」

「……我慢できないから?」

「……そうですよっ。そういうのは言わないでください」

「ごめんごめん。おやすみ」

「はい、おやすみなさい」

 とと…

 ガチャ バタン

「……」

「は、ぁ……」


72 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:13:08.82 tcAi4tI7O 46/61


 ふらふら…

「唯先輩のことしか考えらんない……」

「なのに……唯先輩は、お姉ちゃんっていうスタンスなんだよなぁ」

「もう、妹でも……いっかも」

「ていうか、妹でだめなことなんてないよね……唯先輩、たぶんそれならさせてくれるだろうし」

「……」

 ガチャッ

「……だめだよね、姉妹でなんて」

「唯先輩が良くても、私が許さないもん、そんなの」

「そう言ったら……あずにゃん真面目ーって……言ってくれるのかな」フラッ

 トサッ

「唯先輩……憂……」

「すぅ……」


73 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:16:59.55 tcAi4tI7O 47/61


――――

「あずにゃん、あずにゃん。起きて」

「……ぅ」

「学校遅れちゃうよ。朝ご飯食べないと」

「ゆい……せんぱい?」

「おはよ、あずにゃん」ニコ

「あ、あの……」

「……おはよう、ございます」

 ぐいっ

「ほらほら、急がないと!」

「早くご飯食べて、CD返して、学校行こう?」

「……はい」

「……」


74 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:20:09.98 tcAi4tI7O 48/61


「じゃあ私、下に行ってるよ。早く目さましておいで」

「はい……あの、昨日はすみませんでした」

「……」

「お姉ちゃんは、いつでもいいんだよ?」

 がちゃっ ぱたん

「唯先輩……」

「CD……プレーヤーの中に入れっぱなしだ」

 ととっ

「よしっ、起きなきゃ」パシン

「マワナベの勉強はまた今度したらいいや」

「……返しに行こう」

「……」

「着替えよ」


76 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:23:11.70 tcAi4tI7O 49/61


――――

 TSUTAYA

「まだ開いてないね」

「そうですね、この時間は……」

 ぎゅうっ

「あずにゃん?」

「……」

「そこの返却ポストに入れたらいいんだよ?」

「……ん」

「ん?」

「まだ、聴き終えてません。CD……」

「……そうだね。でも、いいんじゃない? いっぺん聴いたくらいじゃ覚え切れないし」

「ちゃんと返さないといけないよ? あずにゃん」


77 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:28:05.61 tcAi4tI7O 50/61


「そうなんですが……その、ライブまではまだ期間がありますし」

「もう少し、借りていたいです……」

「……ねぇ、あずさ」

「そんな曲、覚える必要ある? ライブに行って生の音聴けたら、それでよくない?」

「それは……でも、知っておいたほうがいいと思います」

「ほんとにそう思ってる? ……ほんとに、それだけのためにレンタル延長したいって思ってる?」

「そんなにわかに勉強したってさ、ライブをより楽しめるようにはならないと思うんだけど」

「う……で、でもっ」

「素直になろうよ、あずさ。お姉ちゃんは、いつでもレンタルOKだよ?」

「……」

「……いりませんっ」トコトコ

 がこんっ

「ありゃ……」

「学校行きますよ、『唯先輩』っ!」


78 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:30:54.96 tcAi4tI7O 51/61


――――

「……もしもし、律先輩ですか?」

「その、あの」

「今日は……部活、休ませて下さい」

「えっと、それとは違うんですけど」

「……だから男じゃないですってば」

「え……あ、はい。ありがとうございます」

「失礼します……」

 ぴっ

「……」

「さてと」ゴソッ

「また借りに行かないと」


79 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:34:06.78 tcAi4tI7O 52/61


――――

「もしもし、澪ちゃん?」

「ごめん、今日部活休んでいいかな?」

「あ、うん、そう! 頭痛くって」

「えぇと……りっちゃん達には先に行っててって言ったんだけど、やっぱ無理っぽくて」

「澪ちゃんから伝えてくれる? うん、ありがと」

「えへへ、ありがと。大丈夫……」

「明日ね~……」

 ぴっ

「……」

「さ、帰らないと」

「憂はお買い物してからだから、先回りできるよね」

「……ほんとに頭痛い気がしてきたよ」


81 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:36:59.45 tcAi4tI7O 53/61


 すたすた…

「……あ」

「あら、唯じゃない。軽音部行かなくていいの?」

「そうなんだ。今日は頭痛くって」

「大丈夫?」

「うん、だいじょぶ。楽器やるのはつらいかなってくらいで」

「……とてもそうは見えないわよ?」

「……そうかな?」

「少し待ってて、唯。これ職員室に持って行ったら帰れるから、一緒に帰るわよ」

「あぇ、あ、うん、ありがとう和ちゃん……でも」

「でもじゃないわよ。唯、今にも倒れそうよ」

「そ、そんなことないよ……」

「いいから、ここで待ってなさい」


83 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:40:08.01 tcAi4tI7O 54/61


「……わかったよう」

「うん。それじゃね、すぐ戻ってくるから」

 たったっ…

「……そんなに顔に出てたかあ」ペタペタ

「でも、あずにゃんがいけないんだよね……お姉ちゃんなんて言うんだもん」

「……他人のくせに」

「もう、おさまりつかないじゃん……」

「……」

 とっとっ…

「……唯、待たせたわね」

「……」

「いきましょ。ほら、靴履き替えなさい」


85 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:43:21.34 tcAi4tI7O 55/61


――――

 てくてく…

「唯と一緒に帰るのもひさしぶりね」

「うん、そうだね」

「中学のころは、唯……遠くに行っちゃったからね」

「……」

「私、唯ががんばって勉強して、高校から一緒に行けるって聞いた時は、すごく嬉しかったのよ」

「うん。私も、戻ってこれるのすごく嬉しかった」

「実際はあんまり一緒にいれる機会はないかもしれないけど……」

「あのころに比べたら、毎日すごく充実してるわ」

「……ごめんね」

「いいじゃない。唯が悪かったんじゃないわ」

「それに、きちんと悔いているんでしょ?」


86 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:46:32.18 tcAi4tI7O 56/61


「クイ?」

「反省してるってこと」

「あぁ、うん……」

「……あの時は、びっくりしたわよ」

「ごめん……」

「唯が転校するってことも、一人暮らしさせられるってこともだけど」

「唯が憂を……襲ったっていうのかしら。そのことも……」

「ちがうよ。私たちはちゃんと愛し合ってた」

「……そういえば、あのときのこと、唯にちゃんと聞いたことがなかったわね」

「唯は、何で……憂と」

「なんでって、そんなの……今になっちゃったらもう分かんない」

「ただね、でもね。……憂のことは今でも好きなんだ」

「……」


91 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:50:15.63 tcAi4tI7O 57/61


「だめだって分かってるから……別の人に気持ちを向けるようにしてたんだけど」

「……やっぱり、私のほんとの気持ちは違ったみたい」

「……」

「いや……どうなのかな。憂が好きっていうより……」

「妹が好き、なのかも」

「……フェチズム?」

「んー……」

「そう、かな。……和ちゃん、ちょっと私にお姉ちゃんって言ってみて?」

「? お姉ちゃん」

「棒読みじゃんー」

「そうは言っても、私は唯の妹じゃないし」

「だよねぇ……そうなんだよ」

「私の妹は憂ひとりだけなんだよねぇ」


92 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:53:13.26 tcAi4tI7O 58/61


――――

 平沢家

「それじゃ、しっかり休むのよ」

「うん、送ってくれてありがとう和ちゃん」

「……」ひらっ

 すたすた…

「……」

 ガチャッ

「ただいまー」

「ういー?」

 とたとた

「おかえり。どうしたのお姉ちゃん?」

「……えへへ。ただいま憂」


95 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 02:56:08.52 tcAi4tI7O 59/61


「部活は……」

「休んできた。ちょっとだけ、頭が痛いからね」

「へ? だいじょうぶ、お姉ちゃん?」

「……うい」

「お姉ちゃん?」

「えへへ……ちょっと、部屋まで連れてってくれないかな」

「あっ、うん。ごめんね。カバンとギー太持つよ」

「よいしょ……っと。ひとりで歩ける?」

「うん、平気。ありがとね」

「さ、私の部屋行こっ」

 ぐいぐいっ

「う、うん……えっと、お姉ちゃん?」

「そんなに押したら歩きにくいよ……」


96 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 03:00:18.63 tcAi4tI7O 60/61


 ぐぐっ

「……うい」

「っとと……なに?」

 とん とん

「憂は……私の妹だよね」

「う、うん。お姉ちゃんの妹だよ」

「だよね……うふふっ」

「変なお姉ちゃん」

 とん とん

 がちゃっ

「よいしょー……うー、重たかった……」

「ごめんね、憂」

「ううん。いいよ、お姉ちゃ……」


97 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2010/12/16 03:03:19.90 tcAi4tI7O 61/61


 どんっ

「ひゃうっ!」

 ぼふん

「び、びっくりした……なに、お姉ちゃん?」

「……」

 ぎしっ

「いいんだよね、憂」

 ぎしぃっ…

「あ……」

「……うん。いいよ、お姉ちゃん」

「……」ニヤッ

「大好きだよ、憂……」


  終わり


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