男「カラーヒヨコか…これまた懐かしいもの売ってるな」
商人「買ってくかい?」
男「いえ、どうせすぐ死んじゃうんでしょ?
可哀相だからやめときます」
商人「買わなくても死ぬけどね。
飼ってあげたほうが生き延びる可能性は高いと思うよ」
男「……じゃあ、二、三匹」
商人「まいど」
元スレ
男「カラーヒヨコが女の子になってる…」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1234705920/
男「で…買ってきたヒヨコが何故女の子に…
だいたい、ああいうところで売られてるのってオスだろうに」
赤「なってしまったものは仕方ないだろ!」
青「正直私達も驚いている」
緑「……死にたい」
赤「だいたい、赤って名前なんだよ!
色そのまんまじゃねえかっ!」
男「そう言われても…」
青「青はなかなかいいな。できれば蒼と表記してもらいたかったが」
緑「……だいたい、色づけされただけなのに」
男(…なんだか緑色のが元気ないな。
赤いのはありすぎだけど)
男「大丈夫かい?気分わるいの?」
緑「生まれてから気分がよかったことなんてない……早く死にたい…」
男(…どうしよう。このままじゃ本当に死んじゃいそうだ)
男「ヒヨコだから…ミミズみたいなの食べるんだよな…」
青「そうとは限らないね。今の私達の姿はどうみても人間だろう?
体内の構造もそれに準じてるんじゃないかと推測するが」
緑「…髪の色くらいしか原形残ってない。……しかも着色したものだし。
こんなんじゃヒヨコなんて言えないよ……」
赤「どーでもいいから食いもんもってこーい!」
男「…騒がしい」
男「とりあえず、カップヌードルでも…」
赤「よっしょ!私はこの赤いの選ぶぞ」
青「そういうことなら、私は青、シーフードかな?」
緑「……緑色がない」
男「あ、緑のパッケージのもあるんだけどね。
ただ買ってないだけだから」
緑「…緑はいらない……私もいらない」
男「そ、そんなことないよ!絶対ないからね!」
男「あ、緑のたぬきがあったよ」
緑「…たぬき…ヒヨコはやっぱりいらない」
赤「あぁああ!細かいこと気にしてんじゃねえよ!」
緑「……それでも、他のより大きい。忍びない」
青「私達は別に気にしないよ。このくらいの量で十分さ」
男「じゃあさ、これは俺と一緒に食べよ。それなら気にならないだろ?」
緑「…それならいい」
ズズッ
赤「うめぇええ!」
青「もっと静かには食べれないのか……」
緑「………」
男「君は食べないの?」
緑「…熱い」
男「そうか。じゃあ…ふぅー、ふぅー。はいっ」
緑「あむっ…」モグモグ
男「どう?」
緑「美味しい…」
男(緑の子はなんでこんなに元気が無いんだろ…)
青「緑がなんでこんな風なのか考えてるのかい?」
男「…よくわかったね」
青「なんでも、色が心情に影響を与えるってのは珍しいことじゃないらしいよ」
男「…でも、緑色は人の心を穏やかにするんじゃなかったっけ?」
青「さぁね、私達はヒヨコだからね。元々色なんてわからないわけなんだしね」
男「とりあえず、色を落としてみるか」
青「どうやってだい?」
男「風呂」
赤「よっしゃ!風呂だ」
緑「風呂って……何?」
男「知らないの?」
青「そりゃあ、元々ヒヨコだからね」
男(…ヒヨコだからって一緒に風呂入っていいのだろうか)
青「心配は無いよ。人間のメスになったとしても、
元々はヒヨコだったんだ。この姿も人間の幼体なんだろう?」
男「ま、まぁ…」
緑「………」
男(そうだよな。とりあえず髪の色を落とさないと」
ワシャワシャワシャワシャ
男「目はつむったままでいてね」
緑「……精神的に辛い」
男「す、すぐ終わるから…」
男(これだけ洗えば少しは落ちたよな…)
男「お湯かけるからね」
緑「心の準備が……」
ザッパーン
男「よしっ……あれ?」
青「落ちないな」
男「なんで…」
青「まぁ、人間になったという時点でありえないことさ、
色が落ちないくらいどうってことはないだろう」
緑「……心の準備ができてないのにお湯をかけられた。
とても怖かった……」
男「あ、ごめん。ごめんね」
バシャバシャバシャバシャ
赤「風呂楽しーぞー!」
男(この子もあれくらい気楽にやってくれれば……)
バサッ
男「よしっと、君達はベッドを使ってくれ。
俺は布団で寝るから」
青「ここはあなたの住居だろう?
あなたがベッドを使うべきでは……」
バフッバフッ
赤「ふかふかだぞー青も緑もこいよー」
青「……まったく」
男「気にしなくていいよ。ここはもう君達の家でもあるんだから」
緑「………」
男「あれ?君は寝ないの?」
緑「…どうせ赤の寝相は悪い。私はベッドから落とされて、そのまま死ぬ」
男「いや…そんなことは」
バフッバフッ
赤「うおー!すげぇジャンプできるぞ!」
青「お…おい、やめろ!」
男(…ありえそう)
男「じゃあ、一緒に寝よっか」
緑「………」
男「俺は寝相悪くないはずだし、床にしいてあるから落ちる心配もないだろ」
緑「……うん」
赤「なんで緑はこっちで寝ないんだ?」
青「半分以上は君のせいだと思うんだけどね」
赤「むにゃむにゃ……」
青「すぅ…すぅ……」
男「眠ってたら静かだな」
緑「………」
男「君はまだ起きてるのかな?」ツンツン
緑「起きてる…」
男「早く寝たほうがいいよ」
緑「夜は…こわい…眠るのもこわい…」
男「こわくないよ。大丈夫、俺がついてるから」
緑「……わかった、寝る」
赤「うぉおおお!朝だぁあああ!」
男「うわっ!」ガバッ
青「…静かにしたまえ。ヒヨコなんだから朝鳴く必要はないだろ」
緑「…まだ眠い」
赤「何言ってんだ。朝だぞ朝!」
男「待っててね。今朝ご飯の用意するから」
赤「大至急でな」
青「まったく…」
緑「…ねむい」
青「君は寝てるといいよ。たぶん昨日寝るのも遅かったんだろ?」
緑「………」コクッ
男「そうだね。君のぶんは、すぐ食べれるように準備しておくから」
男「トーストだけど…口にあうかな?」
青「そんなこと気にしなくていいよ。
ご飯を用意してくれただけでも有り難いんだから」
赤「うめぇぞ!サクサクして」
青「いただきますくらい言えないのか?
もうヒヨコじゃないんだぞ」
赤「いいから食えよ」ヒョイッ
青「むがっ……」
男「まぁまぁ…」
男「じゃあ、仕事に行ってくるね」
赤「どこ行くんだ?」
青「仕事って言ってるだろ。人間は働いて生活していくためのお金を稼ぐんだよ」
赤「お前…ヒヨコのくせに、よくそんなこと知ってんな」
トテトテトテ
緑「………」
男「あれ?どうしたの?寝てたんじゃ」
緑「…いってらっしゃい」
青「ちなみに、これが外に出ていく人にたいする言葉だね」
赤「そうか、じゃあ、いってらっしゃーい!」
青「いってらっしゃい」
男「うん、行ってきます」
緑「………」
赤「ん?もう寝ないのか?」
緑「うん」
青「君が騒がしいから寝れないだけじゃないのかい?」
赤「は?騒がしいってなんだよ」
青「うるさいって意味だよ」
赤「そういう意味じゃねぅよっ!」
緑「……私のせいで喧嘩に」
青「…あ、君のせいじゃないんだよ。ほら赤も」
赤「あ…、そうだ。お前は気にするな」
緑「………」
青「そうだ。布団をたたんでおこう。
さすがに私達だけで押し入れに入れるのは無理だと思うけど、
そのくらいはしておこうか」
赤「よっしゃー!たたむぞー」
緑「わかった」
緑「よいしょ…」
赤「うらぁー!」バサッ
緑「あっ…」
バフンッ
青「赤っ!何をしてるんだ!
青が布団の下敷きになっちゃったじゃないか」
赤「そう言うお前は何もしてねぇじゃん」
青「私は現場の指揮をしてるんだ」
赤「結局何もしてねぇじゃん」
青「あのな…皆が皆好き勝手にしてたら作業が進まないだろう?」
赤「は?皆でやったほうが早いだろ普通」
緑「……早く助けて」モゾモゾ
赤「その位自分で出れるだろ」
青「緑は君と違って馬鹿みたいな体力が無いんだよ」
緑「……うん…しょ…」モゾモゾ
赤「仕方ねぇな…うりゃ!」バサッ
緑「あ……ありがとう」
赤「礼なんていらねぇよ」
赤「ん?青がいなくなったな」
緑「いない…」キョロキョロ
青「……赤、君はもっと周りを見て行動したほうがいい」
赤「声は聞こえるな」
緑「……もしかして」
青「…そうだよ。布団の下だよ」
赤「暇だぁ…」
青「暇なら本でも読めばいい。私はそうしてる」
赤「ヒヨコのくせに字なんて読めんのかよ」
青「喋れるだけでめ十分異常なんだ。読めたって不思議じゃないだろ」
赤「それでも読みたくねぇ……緑は何してんだよ?」
緑「…ぼーっとしてる。こういうの好き」
赤「そうだ。昼飯はどうするんだよ」
青「ヒヨコに朝昼晩の食事という概念はないだろ」
赤「それでも腹は減るだろうが」
緑「……餓死」
青「あの人がパンを買ってきて置いといてくれたから大丈夫だよ。
あと、この家のものは、すきに飲み食いしていいって…」
赤「そっか、じゃあ食おうぜ」
青「駄目だ。昼まで待つんだ」
赤「なんでだよ」
青「なんでも」
男「大丈夫かな…」
同僚「どうしたんだ?そわそわして」
男「えっと、昨日露店でカラーヒヨコを買ったんだけど」
同僚「懐かしいな。でも、あれすぐ死ぬだろ」
男「…やっぱりそうだよな」
同僚「帰ったらもう死んでるかもな」
男「………」
赤「このテレビっつうのみてみたいな」
青「ああ、昨日だいたいの使い方は聞いたけど」
赤「どうすればいいんだ?」
青「リモコン、もしくはこのスイッチを…」
ピッ
「いいともー!」
赤「うおっ」
青「ついたね」
赤「タモさんって人面白いな」
青「私は関根さんのほうが好きだが」
緑「………」
赤「おーい、いつまでもぼーっとしてないでテレビ見ようぜ」
緑「…うん」
赤「このCMっていうの邪魔だな」
青「これの広告料でテレビ局は収入をえているんだ。
仕方ないだろう」
「ケンタッキーフライドチキン!」
緑「………鶏肉」
ガチャ
男「はぁ…はぁ…ただいま」
赤「………」
青「………」
男「そ…そんな…嘘だろ…」
ツンツン
緑「寝てるだけ。私は朝寝たから眠くない」
男「よかった…よかったぁ…」
ムギュ
緑「…苦しい」
赤「にしても焦ったなぁ。起きたら泣きそうな顔して抱きしめられてるんだから」
青「カラーヒヨコは死にやすいからね」
緑「…私が死んだら悲しんでくれる人がいる。うれしい」
赤「で、またすぐ出かけたみたいだけどどうしたんだ?」
青「慌てて帰ってきたみたいで夕飯の買い物を忘れたみたいだよ」
緑「…あるもので構わなかったのに」
青(冷蔵庫に卵しか無かったみたいだからね。
赤と緑に見つかる前に処分しなくちゃ…)
男「意外と鶏、卵の入ってない食品買うのって大変だな…」
男(マヨネーズとかにも入ってるし)
男「ま、卵アレルギーの子をもってると思えばたいしたことじゃないな。うん」
男「そうだった…パンなんか、ほぼ確実に卵が入ってる」
青「そこまで気にする必要はないと思うよ。
緑はともかく、赤なんかは卵焼き位までになったら、食べそうだし」
男「それでも一応…」
青「ふふっ、気をつかってくれてありがとう」
男「…ねぇ、君達の寿命ってどうなるのかな?」
青「わからないなぁ…人間みたいに八十年ちかく生きるかもしれないし、
鶏みたいに十年かもしれないし…」
男「あんまり早く死んでほしくないな…」
青「たとえ、十年でも私はいいと思ってる」
男「………」
青「その十年を精一杯生きれればそれはそれで幸せだと思うから」
男「…そうか」
青「まぁ、長生きできれば、それにこしたことはないんだけどね」
赤「うらぁー!暇だったんだぞ!」
男「ははっ、ごめんね」
赤「私と遊べー!」
男「うん、何して遊ぼか」
赤「うーん………」
男「うん」
赤「…………」
男「ん?」
赤「すぴー…すぴー…」
男(……この子は考えごとが苦手なのかな?)
緑「………」
男「俺が留守の間大丈夫だった?」
緑「…うん、何もしてないの好き」
男「あはは…」
緑「………」
男「あ、そろそろ風呂わかさなきゃ」
緑「………」
トテトテトテ…
男「ん?」
緑「………」
男(これは、懐いてくれたのかな?)
赤「おっはよー!」
青「元気な挨拶はいいと思うが、君は時と場合に合わせた行動をするといいよ」
赤「何がいけないんだよ」
青「今日は休みの日なんだ。
この人は、いつも仕事に行って疲れてるんだから、
今日くらいは休ませてあげようとは思わないのかい?」
男「ううん、いいよ。
休みだからといって、いつまでも寝てるわけにはいかないからね」
緑「…朝は気分が重い。でも…夜がいいわけでもない。
一日中気分が悪い…」
男「なんでヒヨコが人間になんてなったんたんだろうね」
青「ヒヨコの私に聞かれてもねぇ」
赤「なんだ、お前にもわからないことってあるんだな」
青「……古い文献で詳しく時代はわからないんだけどね」
男「何か知ってるの?」
青「なんでも、お爺さんが、助けた鶴が人間になって恩返しに来たって話があるらしいよ」
男「えっと…それって」
青「………」
赤「あははははははははは!馬鹿!ばーか!」
男「い、いや…でも、そういう昔話も、実際にあったことかもしれないし」
赤「お爺さんが助けた鶴が人間になって…」キリッ
赤「なわけねーだろ!
鶴が人間になんて、あっはっはっはっはっ…ひぃ…駄目だ…もう…あはははははは!」
青「う…うぅ……」
緑「自分達のことを棚にあげて…」
男「うーん…」
赤「おーい、また寝てるのかー?」
青「だから、いつも仕事にいって疲れているんだよ。
私達のご飯代もその働いたお金で買ってもらってるんだ」
赤「そんなの知らねえよ。とぁっ!」ピョンッ
バフッ
男「うっ…」
青「こらっ!だから…」
ムクッ
男「………」
赤「お、やっと起きたか」
男「………」
青「ほら、怒ってるじゃないか」
赤「こいつが私達を怒ったことなんて一回もないじゃん。
なぁー?」
男「………」
赤「さてと、起きたことだし、さっそく私と遊べ」
ガシッ
赤「ん?なんだよ?」
男「じゃあ、一緒におねんねしようか?」ニコッ
赤「は?私は全然眠くなんて…」
グイッ
赤「うわっ!?」
バフッ
青「………」
緑「…まるで布団に食べられたみたい」
赤「うおぉー出せー!こらー!」ジタバタ
緑「…いくらもがいても出られない。もはや、猫のお腹の中のヒヨコ」
5分後
青「…静かなったな」
緑「ご愁傷様」
青「…人間には、眠りの邪魔をされると。かなり狂暴化する個体もいるらしいね。
私達も気をつけようか」
緑「……うん」
赤「暇だぁ…」
青「だから本を読めと言ってるだろう」
赤「嫌だ。どこかの誰かさんみたいに、現実と空想の区別がつかなくなりそうだし」
青「…それはだれのことだ」
男「まぁまぁ、喧嘩しないで」
緑「だらだら、ぼーっとしてるのが一番…」
男「それも考えものだな……よしっ、近くの公園にでもいくか」
赤「公園?」
青「子供の遊び場のことさ」
緑「…外は危険がいっぱい」
男「大丈夫だよ。そんな危ないところじゃないから」
赤「よっしゃー!外か、走るぞー!」
プップー
赤「これはなんだ?」
青「自動車だね。乗り物だよ」
緑「踏み潰されたら……ぐしゃ…」
男「あ、あ、道路の真ん中にいちゃ駄目だよ!」
青「そうそう、道路を歩く上ではルールがあるんだ」
赤「めんどくせぇな…」
青「たとえば…そう、この信号とか、
赤は止まれ、黄は注意、青は進め」
緑「でも実際は緑……自分の色にしたいからって嘘をつく…酷い」
青「違うって、これは本当に青信号って言うんだって」
男「本当だよ」
緑「……可哀相……緑色なのに青って呼ばれて」
青「えっと…青信号になったら。右を見て、左を見て、もう一度右を見て…」
赤「さらに左を見て!」
緑「右…左…右…永遠に終わらない地獄…」
青「ああっ…そんなことしてたてるから赤信号になっちゃったじゃないか…」
男「ふぅ…やっとついた」
青「君達のせいで遅れたんだぞ」
赤「なんで私のせいなんだよっ!」
緑「…私のせい。この世の不幸は全て私のせい」
青「…君達は性格を足して二で割ったほうがいいね」
ワーワーワー
青「先客がいたみたいだね」
赤「私も混ぜろー!」ズダダダダ
青「あ、こらっ…まったく…」
男「君も行ってくるといいよ」
青「そうだね。赤一人じゃ何しでかすかわからないし」
緑「………」
男「あれ?君は行かないの?」
緑「初対面の相手と遊ぶなんて…無理…」
男「そんなこと言ってたらお友達できないよ」
緑「いらない」
男「仕方ないなぁ…」
ヒョイッ
緑「…お…おろして」
男「そんなこと言う子は無理にでも遊んでもらいます」
緑「…無理…絶対無理…」ジタバタ
赤「おっしゃー!じゃあ次は私が鬼なっ」
青「みんな逃げろー!固まるなよ!バラバラに逃げるんだ」
男「もう馴染んじゃってる。子供って凄いね」
緑「…私は子供じゃなくて雛だから」
子供「君だーれ?」
ビクッ、サッ
男「ほら、隠れちゃ駄目だろ」
緑「…こわい」
子供「一緒にあそぼ」
緑「………」
男「この子ね。少し恥ずかしがり屋さんなんだよ。
だから少し無理にでも連れてってくれると助かるな」
緑「え……」
子供「うん、わかった」
ガシッ
緑「…ま…待っ…心の…」
子供「急ご」
緑「ま…まだぁああああああああ…」
青「お、ようやく緑も来たか」
赤「おらぁ、すきあり」
パシッ
青「…油断した」
赤「ばーか!」
青「こ…この…」
ズダダダダ…
赤「ばーか、まぬけー!捕まるかよーだ」
青「…は…速い」
青「はぁ…はぁ…まさか…赤どころか…緑にすら追い付けないなんて…」
「足遅いねー」
「運動音痴ってやつじゃね?」
緑「……うんち」
青「………」
緑「……青筋が浮かびそう……青なだけに」
青「さすがに怒ったよ……まてぇえええ!」
緑「みんな逃げて…」
5分前
緑「本当に足が遅い…」
青「はぁ…ひぃ…ちょっと…待って…」
緑「待てと言われて待つわけがない」
青「はぁ…はぁ…もう…駄目…」バタッ
緑「…で、倒れた」
赤「馬鹿っ!そういうことは早く言えよ!」
ユサユサ
赤「おいっ!大丈夫か?おいってば!」
青「………」
赤「緑!あいつ呼んでこい。急げよ!」
緑「わかった」
パシッ
赤「あ?」
青「ふっふっふっふっ…騙されたね。
体力の無いぶんは頭脳でカバーさ」
赤「………」
青「どうだ?悔しいか?」
赤「心配したんだぞっ!馬鹿っ!」
青「あ……いや…ごめん」
赤「もうこんなこと二度とすんなっ!」
青「う…うん……」
緑「かくれんぼをすれば問題ない」
青「え?」
緑「かくれんぼなら…足が遅くても大丈夫」
赤「そうだな。鬼ごっこだったら、青が鬼になったらつまらないもんな」
「よーし、かくれんぼだー!」
「青ちゃん、がんばって」
青「…みんな」
男「今日は楽しかった?」
赤「おう!すっげぇー楽しかった」
緑「…まぁまぁ」
青「………」
男「ん?どうしたんだ?」
青「…みんな、木の上に隠れるなんて、ずるいじゃないか」
赤「なんでだ?」
青「木に登るなんて発想…普通思いつかないだろ」
赤「そうか?」
緑「…青は木登りができない」
青「そ…そんなことはないよ。
ただ、かくれんぼと木登りというミスマッチが…」
緑「…図星」
青「う……」
男「赤も緑も疲れて眠っちゃったのか…
いつもなら寝付きの悪い緑も相当疲れたのか、あっさり寝ちゃったし」
青「………」
男「…と思ったら。今度は君か」
青「…私はダメダメだ」
男「誰にでも得意不得意ってものはあるだろ?」
青「それはわかる…けど…」
男「けど?」
青「私のような運動音痴と一緒に遊んでたら…皆もつまらないだろうなって…」
男「誰もそんなこと思ってないよ」
赤「むにゃ…がんばれ…青…」
男「ほら」
青「……そうだな」
緑「…青うんち…青い…気色悪い…」
男「えっと…」
青「明日の朝…覚えてろ…」
男「あはは…寝言だからね」
男「じゃあお休み」
ズルッ…ズルッ…
緑「ううぅ…」
男「…えっと、何してるの?」
青「ちょっとした仕返しをね。
寝言だから寝てるうちにしなきゃ。
…よいっ…手伝ってくれないかな?」
男「…何を?」
青「たいしたことじゃないさ。
ただ、緑を今日はベッドで寝かせるだけだから」
男「…それなら別にいいけど」
青「これでよしっと」
男「何か意味はあるの?」
青「明日の朝のお楽しみさ」
男「そう……じゃあ寝ようか」
青「そうか、緑がベッドで寝るということは、私はこっちなのか」
男「…嫌とか?」
青「ううん、嫌なわけないよ」
深夜
ズドンッ
緑「うあっ……」ガバッ
緑「今の………何?」
赤「うなぁー!」
ゲシッ
緑「うばっ…」
緑(何故…赤と一緒に寝てる…)
翌朝
赤「おっす」
緑「………」
赤「相変わらず元気ねぇな」
緑「体中が痛いせい…」
青「それは、筋肉痛ってやつじゃないのかな?」
緑「…違う」
青「ううん、きっとそうだよ。
いつもはダラダラしてるのに、昨日あんなにいっぱい遊んだんだから」
赤「また公園に行きたいなぁ…」
青「そうかい?」
緑「…外は危険がいっぱい。この前は運が良かっただけ」
青「うん、確かに外には危険なものも沢山あるね。
自動車とかには特に気をつけないと」
緑「一番こわいのは…猫」
赤「はぁ?」
青「確かに、ヒヨコのときだったら脅威だったかもしれないけど、
今の私達にはたいしたことないと思うけど」
緑「…わかっちゃいない…二人とも猫の本当の恐ろしさを」
赤「よーし、今日も元気に遊ぶぞぉー!」
青「せめて室内で暴れるのはやめてくれないかな?」
緑「…埃がまう」
男「うん、転んで怪我したら危ないから、やめたほうがいいかもね」
赤「怪我なんて…」
パタッ
青「ほら、転んだじゃないか」
赤「………」
男「なんだか様子が変だぞ…」
青「お、おい…どうしたんだ」
ユサユサ
赤「うぅ………」
男「どうしたんだ……風邪とかかな…」
青「まさか、赤に限って…」
ペタッ
青「…大変だ凄い熱だ」
男「とりあえず布団には寝かせたけど…いったいこれからどうすれば」
青「………医者にみせるのが一番だと思うけど」
男「やっぱり…獣医に見せたほうがいいのかな?」
青「いや、私達の体は今、人間のそれとほとんど変わらないと思うんだ。
人間の医者にみせたほうがいいと思う」
男「そうか、それならさっそく!」
緑「…保険入ってない。きっとお金いっぱいかかる…他にもいろいろ問題ある」
男「そんなの気にしてられないよ。
それに、このままにしておくよりよっぽどいいだろ?」
男「じゃあ、病院に行ってくるから。
君達はうがい手洗いをしっかりして、マスクをしておいてね」
青「…わかったよ」
緑「…いってらっしゃい」
男「うん、いってくるからね」
赤「………」
青「ねぇ…赤は大丈夫だよね?
死んじゃったりしない…よね?」
男「大丈夫だよ。安心して待ってて」
ガチャ……バタンッ
青「やっぱり…心配だね」
緑「……べつに」
青(…じゃあ、いつもはじっとしている君がなんで、
そんなに落ち着かないんだい?)
青「赤…ちゃんと帰ってこいよ…」
青「ふーん…なるほどね」ペラッ
緑「…本が逆さま」
青「えっ…あ、ああ…気づかなかったよ」
緑「心配をしすぎてもどうもならない」
青「…わかってるさ、そんなこと」
男「ただいま」
青「赤は?赤は大丈夫なの?」
男「うん、インフルエンザだって」
青「インフルエンザ!?
まさかちょっと前に騒ぎになった鳥インフルエンザじゃないのかい?
少し前まで大勢のヒヨコに囲まれてたんだ。その可能性も…」
男「ううん、今年流行してる型のやつだって。
多分、この前公園でもらっちゃったんだろうね」
青「で…でも…」
赤「…違うって医者が言ったんだよ馬鹿」
青「赤!もう大丈夫なの?」
赤「大丈夫じゃねえよ…頭はガンガンするわ、体中痛いわで…」
男「点滴をうってもらって、少しは良くなったんだよ」
青「…よ…よかった」
赤「心配しすぎなんだよ…馬鹿」
緑「…そう」
青「君だって、さっきから聞き耳たててたじゃないか」
男「じゃあ、赤は別の部屋に寝かせておくから。
なるべく近づかないようにしててね。
あ、手洗いうがいは小まめにするんだよ」
青「わかったよ」
緑「……これ、赤に」
男「ん?プリン?」
緑「とっておいた」。赤にあげて」
男「大丈夫か?苦しくないか?」
赤「頭ガンガンするぅ…喉痛てぇ……」
男「頭痛はどうしようもないけど、トローチ買ってきたから」
赤「お、飴…ゲホッゲホッ…」
男「あと、何か欲しいものとかあるかな?」
赤「…ん、何もいらない」
男「えっと…何でもいいんだよ」
赤「いらない…
青と緑とお前と…みんなで一緒に暮らせるだけでいい」
男「…そうか、じゃあ早く病気治さないとね」
ナデナデ
赤「おうっ…ゲホッゲホッ…」
青「………」
緑「………」
赤「…お、青、緑」
男「あ、こら、こっちに来ちゃ駄目だって言っただろ?
君達まで病気になったら大変じゃないか」
緑「…心配」
青「ちょっとだけ、様子を見るだけでいいんだ」
男「だめです!」
青「………」
緑「………」
赤「おう、お前ら!私は大丈夫だ。また公園で遊ぼうな」
青「…約束だからな」
緑「絶対に守って」
男「二人とも寝たみたいだね」
赤「お前は寝なくていいのか?」
男「あ、うん。今夜はね」
赤「明日も仕事なんだろ…」
男「一日くらい寝なくても大丈夫だって」
赤「……前…寝てるの邪魔してごめん」
男「そんなのいいんだよ。それより、君も早く寝て、早い元気になってね?」
赤「…わかった」
翌朝
男「いや、やっぱり今日は仕事休むよ」
青「大丈夫」
緑「私達で面倒みる」
男「いや…でもうつったりしたら…」
青「マスクもするし、うがい手洗いもしてるんだ大丈夫だよ」
男「それでも、インフルエンザはうつる病気なんだよ」
赤「大丈夫だ。寝てるだけだから…なるべく二人とも部屋に入れないようにする」
男「…じゃあ、何かあったら連絡してね。
電話の使い方は前に教えた通りだから」
青「覚えてる。何も心配するひつようはないよ」
赤「…おい、こっちにくるなって言われたろ?」
青「でもさ…」
赤「これでお前まで病気になったらどうするんだよ。あいつがまた心配するだろ」
青「…そうだね。じゃあこれ置いてくね」
赤「何だよこれ」
青「鈴だよ。何かあったら鳴らしてくれ。
私達は静かにしてるから、きっと聞こえると思うから」
赤「…なんか気持ち悪いな」
青「…大丈夫?水飲む?」
赤「違う…お前がだよ。変に優しいから」
青「…本当に君が心配なんだよ」
緑「………」
赤「今度はお前かよ…こっちは喋るのも喉が痛いんだよ」
緑「…喋る必要ない」
赤「じゃあ出てけよ。うつるから」
緑「……がんばって」
赤「おう」
青「お粥と薬だよ」
赤「おう…一人で食えるから置いたらさっさと出てけよ」
青「いや、食べさせてあげるよ」
赤「だから!……ゲホッゲホッ…うつるって…ゲホッ…」
青「あ、ごめんよ…私のせいで大きな声出させちゃって」
赤「…本当に大丈夫だから安心しろ。
昨日の夜よりだいぶマシになったんだ。一人で食えるって」
青「わかったよ。あ、薬はちゃんと飲まないと駄目だよ」
赤「わかってる。早く治して、あいつを安心させてやんないとな」
青「そうだね」
数日後
男「うん、かなり良くなったね」
赤「おっしゃー!」
男「でも、まだ安静にしてないと駄目だよ。
あと、悪いけどもうちょっとだけ二人ともあんまり合わないようにしてね」
赤「わかってるよ。体の中にインフルエンザってのが残ってるかもしれないんだろ?」
男「うん、本当にあとちょっとだからね」
青「だいぶ元気になったみたいだね」
赤「おい…話聞いてなかったのかよ」
青「聞いてたさ。だからマスクをしてるだろ」
赤「それでもうつるから言ってんだよ」
緑「…青は、赤の様子が心配なだけ」
青「き、君だってそうじゃないか」
緑「私は違う…ただ面白そうだから」
赤「あーっもー!あと少しだって言ってんだから出てけぇえええええ!」
男「うーん…二人とも困ったもんだねぇ。
君が心配なのはわかるんだけど」
赤「まったくだ」
男「でも、もう明日くらいには、一緒にいても大丈夫そうかな?」
赤「……少し残念だなぁ」
男「なんで?また一緒に遊べるんだよ」
赤「だってさぁ…病気なら独り占めできるだろ」
男「…何を?」
赤「なんでもない」
赤「おらー!起きろー!」
青「…なんだよ騒がし……赤!?治ったんだね」
赤「まぁな」
緑「せっかく静かだったのに……」
赤「なんだとぉ!」
青「ははっ、緑は照れ臭くてそんな事言ってるだけだよ」
青「みんな、今回のことでわかったことがあるんだ」
赤「なんだ?」
緑「………」
青「私達は誰ひとりとして欠けちゃいけないんだ。赤も緑も…」
緑「青も…」
赤「たしかにな、青と緑だけじゃ、ちょっと暗すぎだしな」
青「ちゃかさないでくれ。ここからちょっと真剣な話になるんだから」
赤「なんだよ…真面目な顔して」
青「たぶんだけどね…私達の寿命は人間のそれと一緒だと思うんだ」
緑「…無駄に長生き」
青「人間から見たら鶏の寿命が短いのさ」
赤「でもなんで、そんなことわかるんだよ」
青「じゃあ聞くよ?ここに来てからどれくらいたつと思う?」
赤「四週間くらい…だっけ?」
緑「正確には22日間…」
青「そうだね。約一ヶ月になるね」
赤「それが何か関係あるのか?」
青「この一ヶ月間で私達の体に変化はあったかな?」
赤「風邪ひいたけど」
青「…そういうのじゃなくて」
青「ヒヨコなら、この期間である程度の成長をしてるはずなんだよ」
赤「…つまり、どういうことだよ!」
緑「私達は…人間の成長速度で生きている」
青「そうなるね。あと、赤が風邪を引いたのも、私達が今は人間だって裏付けになってるんだ」
青「インフルエンザ等のウィルスは、複数の型があるんだ。
そして人間にかかる型、鳥にかかる型…それぞれが存在するんだ」
緑「でも…人間も鳥インフルエンザにかかる」
青「それはあくまで特別変異さ、人間にうつるにあたって型が変化するんだよ。
でも、今回赤は、人間のかかる型にかかって、
さらに人間用の治療薬で治ったんだ」
赤「ふーん…じゃあ私らは人間なんだな」
緑「…正直どっちでもよかった」
青「あのね…これは結構重大なことなんだよ。
ようするに、私達は一生あの人に迷惑をかけるという……」
男「…迷惑なんかじゃないよ」
青「あ…」
男「迷惑なんて感じたこと……まったく無かったら嘘になるけど…」
緑「…やっぱり迷惑」
男「でもね、嬉しいと感じたことや、楽しいと感じたことのほうが、
ずーっと多いんだ」
緑「…………本当に?」
男「本当だよ」
男「赤…」
赤「おうっ」
男「君は本当に元気いっぱいの子だね。
俺も君からたくさんの元気をもらったよ」
赤「へへっ…」
緑「…そのぶん頭は悪い」
赤「うるさいなぁー!」
男「青、君は本当に勉強家だね。
たまに俺もわからないようなことまで知ってて驚かされたよ」
青「知るということが好きなだけさ」
緑「…ただ、運動はまるで駄目。うんち」
青「緑…ちょっと後で話そうか…」
男「はははっ」
男「そして緑、君には手をやかされたよ。
最初のころなんて元気がなくて本当に心配だったんだから」
緑「う………」
赤「だよなぁ、死にたい死にたいって、毎日言ってたし」
青「つねに後ろ向きだったね」
男「でも君は、とても心の優しい子だったね」
緑「……別に」
男「ありがとう。そしてこれからもよろしく」
赤「おうっ、まかせとけ!」
緑「……そこまで頼まれたのなら」
青「まったく、君は素直じゃないね」
緑「…私はいつだって素直」
青「そうかなぁ?」
緑「そう…」
赤「私が一番素直だぁー!」
青「君のは馬鹿って言うんだよ」
赤「なんだとぉー!」
男「ははは…まぁまぁ」
おわり
ちょっとした蛇足
幼女が好きな人は飛ばしたほうがいい
赤「まったく…悪いことばっかり覚えやがって」
青「そのおかげでこうして普通の高校生になれたんじゃないか」
緑「…公文書偽造。立派な犯罪」
青「大丈夫だよ。捕まるようなヘマはしてないから」
赤「そういう問題かよ……
頭ばっかりよくなるのも考えもんだな…まったく」
青「そういう君はもうちょっと勉強をしたほうがいいんじゃないかな?
この前のテストも赤点だったそうじゃないか」
赤「ヒヨコなんだから仕方ないだろ!」
緑「…私も青も元ヒヨコ、青は学年トップクラス。私は平均」
赤「そうですか!私が馬鹿なんですね!くそっ………」
緑「…勉強教える」
青「なんなら私が教えてあげようか」
赤「青はいい…お前の勉強法異常だから」
青「青じゃないだろ」
赤「あ、そうか…葵だったな」
青「そうだよ、茜」
赤「はぁ…なんで名前まで変えないといけないんだよ」
青「赤、青なんて名前普通じゃないからね」
緑「…私は緑のまま」
赤「ほんっと、羨ましい…」
青「まったくだね」
緑「……ぶい」
緑「店長に…接客は嫌だって言ったのに裏方にまわしてくれない」
青「まぁ、仕方ないって言ったら仕方ないけどね」
赤「そうだ。もうバイトの時間じゃねえか」
青「まったく…今日は休みを入れるように頼んだ日だろ」
赤「あ、そうだった…」
青「今日が何の日か忘れたのかい?」
赤「忘れるわけないだろ」
緑「当然覚えてる…」
緑「パパと…」
赤「そうだな、父さんと…」
青「うん、初めて出会った日だね」
終わり