1 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 15:12:00.24 Hvn8KzIH0 1/18

「『女未』。この漢字、差別的だと思わない?」

「未だ、なんて言うなら、いつから女になるわけ? そう聞いてみたくなっちゃう」

「初潮かしら。じゃ、私はもう妹じゃないの?」

「それなら閉経したらもう女じゃないわけ? 『女非』?」

「産む機械が女、なんて発想なのかも。男尊女卑的ね」

「言えてる。でも閉経したババアがフェミニストだったりするし、やっぱり生理基準じゃないんじゃないの?」

「まだ自分は女だと思い込むために女の代表ヅラしてるのかも」

「あ、それウケる。でも生殖基準ならEDの男も『男非』じゃない?」

「そこも男尊女卑ね。弟が『男未』、兄が『男市』になるまではEDも男」

「あははっ、EDは男尊女卑に感謝しなくちゃ!」

元スレ
妹「未だ女でない」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1362895920/

5 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 15:17:32.80 Hvn8KzIH0 2/18

「そうだ、あの話してよ」

「どの話?」

「あんたが自分の兄貴に恋した話」

「また私にそんな少女漫画のタイトルみたいな乙女話しろって言うの?」

「聞きたいんだもん」

「イヤよ」

「しないとあんたの兄貴にバラす」

「このビッチが」

「もっと罵って~!」 チュッチュッ

「鬱陶しいからベタベタしないで」

「あんたのそういう所が大好き!」

6 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 15:22:21.17 Hvn8KzIH0 3/18

「はぁ……実際はロマンも何もない話だって知ってるでしょ」

「いいから話してよ」

「クラスのくだらない男の子にレイプされかけた私を、うちの兄が助けてくれて私は好きになりました。おしまい」

「もっとちゃんと話してよ」

「同じ話をまた聞いて何が楽しいの?」

「何度聞いても楽しいから頼んでるわけ」

「死ね」

「良い、もっと」

「……話してる間は黙るって約束するなら話してあげる」

「はいはい、了解しました」

8 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 15:29:11.99 Hvn8KzIH0 4/18

くだらない男の子だったけど、顔はそこそこ良かったし。
私も恋愛に興味がないわけじゃなかったから、少しは青春的な経験をしようなんて魔が差した。
だって、夕方の公園のベンチで制服の男女がお喋りするって、青春チックでしょう?

でも夕陽はすぐに沈むし、そうすれば夜になっちゃう。
夜の公園で男女二人、相手の男の子は勘違いしたんでしょうね。

実際、私もガードが甘かった。
中身が残念なその男の子は、良い雰囲気っていう言葉を、レイプするのに都合の良い雰囲気と勘違いしたんでしょうね。
私の太腿を撫でて、胸を揉んで、抵抗する私を微笑ましげに見てたわね。

嫌よ嫌よも好きの内って、あれ、絶対バカな男が考えた言葉。勘違いも甚だしい。
焦らしてるのか本気なのかなんて、見れば分かるでしょう?
大体、青春の1ページのために放課後を共有しただけの男の子が、私の気持ちをそこまで大胆に勘違いできた理由が不思議。

ほら、全然ロマンのない始まり。ただのバカな男の子の陰口。

10 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 15:35:38.96 Hvn8KzIH0 5/18

これ、まだ続けるの? ……わかった、わかりました。話すからもう黙って。

兄が言うには、私はすごく運が良かったみたいで、
その公園を通りかかったのは、初めて遊んだ友達の家からの帰り道だったそう。
普段は通りもしない場所だった。ちょっと運命的で、ロマンの欠片くらいはあるかな。

遠目にはカップルの痴話喧嘩で、兄も通りすぎようとして、途中で私に気付いたって。
嫌よ嫌よも、なんて勘違いも、産まれて以来の付き合いでしないてくれて、私を助けてくれた。

濡れた。……冗談よ。
私は恋の話を真面目にするような人間じゃないって、何度も言ってるでしょ。

でも、あの日以来、兄のすべてが良く見え始めたのは本当。
ガラスの曇りが晴れたみたいに、兄のすべてが綺麗な物に見えた。
恋は盲目。そういう言葉は私も知っていたし、それが錯覚だなんて分かり切ってた。

格好悪くても、馬鹿でも、落ち着きがなくても、全部可愛く思えてしまう。
勘違いの自覚はあっても、そう思えてしまうのだけは止められなくて、
結局私はズルズルと、恋の泥沼に絡め取られてしまったというお話。

12 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 15:42:13.55 Hvn8KzIH0 6/18

私が泥沼の中にいる時、その泥沼の主は何の変化もなく普段通りで、
恋は不公平なものね、相手の方はこれなんだから、なんて嘆いてみたりしたわ。

妹は未だ女でない。これ、世界中の兄の気持ちなのかもね。
周囲の女の子よりも未熟で、女扱いするに足らない存在。そういう意味なのかもね。

もし私が姉なら、少なくとも女のようなもの扱いはされたと思うし。
……もう何歳か年上に生まれてれば、私の胸だって、もう少し大きいはずだし。
こんな体に興奮して襲おうとしたくらいだから、あの男の子も相当な変態だったのかも。

兄も同じくらいの変態だったら良かったんだけど、
私が兄にどれだけ男の子を感じても、兄は私に女の子を感じてくれなかった。
恋の格差って悲しいわ、本当。

13 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 15:45:15.59 Hvn8KzIH0 7/18

「あんたって、悲しむ心はあっても、他人の悲しみは汲み取らないわよね」

「どうでもいい人の悲しみなんて、どうでもいいもの」

「それは言えてる。ところで、どうでもよくない人って誰がいる?」

「兄だけね」

「私は?」

「どうでもよくはないわ、悪い意味で」

「愛の反対は無関心なんだって」

「愛で人を殺すのは難しいけど、この気持ちであなたを殺すのは簡単だと思う」

「あんたに殺されるなら本望! それより続き続き」

「急かすなら最初から口を挟まないでくれる?」

14 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 15:50:34.62 Hvn8KzIH0 8/18

それにしても、片想いのままでいい、なんて負け犬の言葉よね。
それって、両想いになれないと諦めてるか、本当は恋でもなんでもないってだけでしょう?
命短し恋せよ乙女、なんて古い歌にもあるくらいなのに、
どうして叶わないと決め付けてる無駄な片想いを続けるのか、本当に不思議。

私はそんな無駄な片想いは嫌。だから考え続けて、悩み続けた。
ご飯も三日に一食は喉が通らないくらいに悩んだ。
世間一般の女子より乙女純度が低い私なんだから、三日に一食でも相当。

逆レイプも手かな、なんて本気で考えてみたり。
泣いて助けを求める兄を想像して笑ってみたり。

でも、恋とセックスは違う。恋はセックスに繋がるけど、セックスは恋に通じない。
その時の私はまだ乙女純度が今より高かったから、そう思い込んでたけど、
実際、世の中の恋愛なんて大体セックスじゃない?

……あなたが肯くと、納得もいくわ。

15 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 15:56:03.96 Hvn8KzIH0 9/18

私、身体はまだ子供っぽいけど結構可愛いし、
後は胸さえあれば、兄も意識してくれるんじゃないかって期待した。
現実は非情ね、期待に胸を膨らませても、脂肪は胸に偏らないの。

……笑うな、ぶつわよ。

そうして胸に手を当てて考えていたら、ふと思いついた。
ここからは今更説明する必要もないでしょ。
あとは、あなたの知っての通り。

16 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 16:03:01.94 Hvn8KzIH0 10/18

「え~! ちゃんと話してよ~!」

「イヤよ」

「お願い!」

「絶対にイヤ」

「バラすよ?」

「……」

「話してくれないと全部バラしちゃう~!」

「あなたのこと、心の底から嫌いになりそう」

「……ごめんなさい」

「嫌よ嫌よもなんて勘違いしないで」

「テンション上がりすぎちゃった、本当にごめん」

「……」

18 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 16:07:51.19 Hvn8KzIH0 11/18

学校で有名なヤリマン女にこう尋ねた事があったわ。
性病は怖くないの。

そしたらヤリマン女はこう答えた。
ゴムは必ず付けさせるから大丈夫、じゃないとすぐに妊娠しちゃうでしょ。

どうしようもないヤリマンの癖に、そんな所だけはしっかり気を付けてたのが笑い所。

……したくもない話ばかりさせるから苛々してるのよ。

19 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 16:14:29.42 Hvn8KzIH0 12/18

私は昔から変な子に好かれやすくて、
女の子の集団に馴染めない女の子はいつも私の周りに寄ってきた。

特別誰とも仲良くしたいと思わずに過ごすと、
中立と孤立を両立してしまって、後は惰性。
それだけなのに、人によっては孤高なんてものに見えるみたい。

本当の所は、乙女純度が低いせいかもね。
だって女の子ってみんな、友達と一緒に過ごしたがるものなんでしょう?
私はそうじゃないから、やっぱり純度が低い。

私が、……股周辺が自由な女の子によく話しかけられていたのも、そのせいだったのかも。
本人に聞いてみれば詳しく分かるんだろうけど、別に聞きたくないからいい。

22 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 16:24:27.79 Hvn8KzIH0 13/18

その三大欲求の一部が暴走してる女の子を利用して、
兄の価値観を変えようと思った。

私はこう切り出した。うちの兄は同性愛者かもしれない。

……あの時、私がもう少し注意深ければ気付けたかもしれないのに。

今更後悔してみても遅いし、話を進めるわ。

私は言った。兄の周りに女の気配がなさすぎる、兄は同性愛者かもしれない。
彼女は言った。そのお兄ちゃんは童貞なのかもよ。
狙い通りの答えだった。

私達は賭けた。兄が同性愛者か童貞か。
確認方法は、彼女が兄とセックスできるかどうか。
セックスが好きな彼女なら、絶対にそう言うに決まってると思ってた。

23 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 16:31:34.12 Hvn8KzIH0 14/18

私の閃きは、こう。
妹を恋愛対象として見るには、価値観の転換が必要。
人の価値観が変わる瞬間は、大きなショックを受けた時。

恋愛に関する大きな衝撃を兄に与えれば、私が恋愛対象になる可能性だってある。
具体的には、兄に酷い失恋を経験させる事。
私の助けなしに立ち直れないくらいに酷い失恋。

相手は兄に本気になりそうもなくて、たった一度きりの関係がいい。
私だって嫉妬くらいする。一度は許せても、二度は許せないかもしれない。

最適な女の子が知り合いにいた。男なら誰でもいって子が。

24 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 16:38:43.58 Hvn8KzIH0 15/18

私だって手段を選べるなら選ぶ。
でも無理でしょう? だって兄妹だもの。
くだらない男の子に襲われる前の私に、兄に欲情しろなんて言っても、絶対に無理。
そんなの、舌を噛み切って死ぬわ。

人の価値観を、それも望まないように変えるって、簡単な事じゃないでしょ。
命懸けで、叶うか叶わないか。そのくらいの覚悟、ちゃんとあった。

彼女が私の家に来て、兄に告白して、押し倒してセックスしてる時だって、
どんなに胸が張り裂けそうになっても、私は耐えた。

でも少しだけ、後悔した。
私が兄を押し倒しても上手くいったのかも。そう思ったから。

後悔は一瞬だけ。だって、すべては望み通りに進んだんだから。
彼女が、あなたが私の部屋に戻るまでは。

26 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 16:51:10.80 Hvn8KzIH0 16/18

「普通気付かないでしょ、あなたがバイセクシャルで私が好きだなんて」

「向こうから弱味背負って来るなんて私も予想外だったわ」

「……どうして私の兄への気持ちまで分かったの?」

「毎日あんたを見続けてたんだから当たり前でしょ」

「気持ち悪い」

「あぁ、良い!」 チュッチュッ

「離れて。一週間、あなたに付き合う約束だったでしょう。ちょうど一週間過ぎたわ」 ドンッ

「えぇっ! いいじゃん、もう少しイチャイチャしようよ~!」

「しつこい。あなたに付き合う約束はちゃんと果たした」

27 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 16:53:27.63 Hvn8KzIH0 17/18

「で、でも気持ち良かったでしょ!」

「そうね、気持ち良かった。それだけね」

「普通一週間も掛けてじっくりねっとりあんな事やこんな事したら堕ちるでしょ!」

「他の人には恋はセックスでも、私には違うの。これでも一途なのよ」

「乙女欠乏症の癖に。そうだ、もう一週間付き合ってくれないとバラ……」

「……」

「や、やめてよ、冗談だってば、そんな目で見ないでよ」

「あなたを心底軽蔑する所だったわ」

「あ、あはは……で、でもでも、あんたの体は全身私がちゅっちゅした後なんだし、もう私のものみたいなものでしょ?」

「そうなるなら一週間前の約束はしなかったでしょうね」

「あんたの体を好きにしていい、ただし一週間だけで挿入は禁止。……そんなに膜一枚が大事?」

「だって私、妹だもの。未だ女でない、それだけで十分でしょう」

28 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2013/03/10 16:54:20.19 Hvn8KzIH0 18/18

それじゃ、ちゃんと兄を手酷く振ってね。
兄の一週間の夢も、私の一週間の悪夢も、ちゃんと今日で終わりにしてね。

……いいえ、私があなたに気付かせたのが悪いのだし、あなたを恨んだりしてない。
あなたは私の秘密を、正しい値段で私に売った。
だから、あなたの事は嫌いじゃない。でも私は、優しくて間抜けで可愛い兄が大好きなの。

……あなたが泣くなんて、ちょっと意外。
でも、行くわ。私は兄と幸せになる。
あなたが祝福してくれると、私は嬉しいわ。

だってあなたは、私の唯一の親友だから。

……なんでもないわ。それじゃ、また明日。


おわり

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