370 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 00:50:21 N1ePwil60

一部の粗筋―――
人間サイド
勇者→敗北。満身創痍のまま老兵に拾われる
戦士→死亡
僧侶→生死不明
魔法使い→生死不明
王→生死不明
姫→生存。離宮に避難
執事→生存。同じく離宮へ
先代の勇者→生死不明。未登場

魔物サイド
魔王→升
側近→顔の半分喪失するも、生存
吸血鬼→生存
人狼→生存

元スレ
王「行くがよい勇者」姫「気をつけて」勇者「姫のためなら」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1328516288/

377 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 00:58:10 N1ePwil60

詳しい人車でここでやればいいか

ここまでの現状
人間サイドの城陥落、王は生死不明。
勇者一行は敗北、ほぼ全滅
元々この国は数年前に隣国の帝国と戦争していた。現在は停戦状態
戦争中、最初の「勇者」が英雄として敵を押しかえした
戦争の数年後、魔王率いる新たな軍勢が発生

383 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 01:01:48 N1ePwil60

執事「・・・お嬢様」

「状況は?」

執事「芳しくありません。王国の各町はすでに占領されたものかと・・・」

「・・・民は」

執事「断片的な状況ですが、大半は捕縛か、あるいは虐殺されたものと」

「く・・・。アイツ・・・勇者は?」

執事「依然として行方は掴めてません。貿易の街で確認されたのが最後です」

「・・・順当に行けば、そこから迷いの森経由で魔王の土地に行ったか・・・」

執事「あるいは、今をもって交戦中かもしれませぬ」

「・・・どこにいるのよ、バカ・・・」

384 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 01:05:51 N1ePwil60

「最近じゃもうタバコも手に入らなくなってきた・・・。状況は最悪だな」

「しかし、噂ではまだ勇者様が戦っているとか・・・!」

「いいか、これは現実だ、ゲームじゃない。一人の英雄が戦況をひっくり返すなんてことはあり得ない」

「では、勇者様はどこに・・・」

「・・・さあな。すでに捕まったか、あるいは死んだのか」

「そんな・・・」

「いずれにせよ、この迷いの森ももう安全ではない。早いうちに脱出しなければ、俺たちもやられる」

「ああ・・・精霊様、どうしてこんなことに・・・」

「・・・ぅ・・・」

「?気がついたか?」

385 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 01:09:47 N1ePwil60

勇者「ここ、は・・・」

老兵「まだ動くな。いや、動けないだろう。それほどの怪我だ。もう二週間も意識が戻らなかったんだぞ」

勇者「あんたは・・・」

老兵「忠告したはずだ。お前に魔王は殺せない、と」

勇者「―――!!そうだ、魔・・・ぐあああああ!!?」

老兵「人の話を聞かないのはお前の悪い癖だ。動くなといった」

勇者「ぐうう・・・。お、れは・・・戻らなきゃ・・・。あいつらを、助けに・・・」

老兵「その様でどこに行くつもりだ?まともに動けないやつが、戦力として成り立つほどこの世界は甘くない」

勇者「ぐあぁ・・・」

老兵「ハァ・・・。この様だと、まだここから動けそうにないな」

町人「では、しばらくはここに・・・?」

老兵「そうするしかないだろうな」

387 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 01:12:36 N1ePwil60

老兵「案外町や白は真っ先に襲われたが、お膝元であるここはないがしろなもんだ」

勇者「二週間、だと・・・?」

老兵「そうだ。お前が川から流れ着いて、二週間経つ」

勇者「二週間・・・。」

老兵「その間、世の中は変わってしまったがな」

勇者「なに・・・?」

老兵「城は陥落し、ほぼ全ての町は魔王軍に落ちた。王も死んだそうだ」

勇者「!!」

老兵「他の人間がどうなったのかは分からないが、掃討も時間の問題だろうな」

勇者「・・・くそ・・・」

388 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 01:15:23 N1ePwil60

老兵「何を悔やむ」

勇者「俺が・・・あの時魔王を倒せていれば・・・」

老兵「のぼせるな新米。お前一人の力でどうこう出来る相手ではない」

勇者「ぐ・・・」

老兵「・・・お前仲間は。あの時は三人の連れがいただろう」

勇者「・・・」

老兵「自分だけ逃げたのか?それで勇者か?聞いて呆れるぞ」

町人「勇者・・・?」

勇者「違う、俺は・・・!!魔法使いが、俺を・・・!!」

老兵「逃がされたのか。情けないな、それでいっぱしの勇者のつもりか」

389 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 01:19:30 N1ePwil60

勇者「お前に何が分かる・・・!」

老兵「ふん。分かりたくないが、分からんでもない」

勇者「!?」

老兵「似たようなもんだ、俺もお前も。俺もかつて、逃げた。逃げてここに至った」

勇者「・・・」

老兵「そうだとも。だが俺は牙まで捨てはしなかったぞ。そしてお前もだろう?まだ戦えるのだろう?」

勇者「・・・」

老兵「家庭はどうあれ、お前は逃げた。魔王から逃げたんだ。そして生き残った。なら、することはここで俺相手に吼えることじゃないはずだ」

勇者「・・・っじじい・・・。黙って聞いてれば・・・!!」ぐぐぐ・・・!

老兵「!?」

勇者「俺を、なめるんじゃねえぞ・・・!!」

老兵「簡易的な回復呪文か。どこで覚えたかしらないが、感謝することだな」

390 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 01:26:07 N1ePwil60

勇者「感謝・・・?」

老兵「その呪文を教えた者にだ。これで予定を早められる。三日以内に出発する。森を東に抜けて、文化の町に出る」

町人「文化の町へ・・・?」

老兵「そうだ。あそこは恐らく、まだ魔王軍が攻め込んではいないはずだ。城からあそこに至るには、広大な砂漠超えが必要だからな。もう一つのルートは、迷いの森経由しかない」

老兵「だがそれもない。連中、文化よりも先に鍛冶の町や恐らく魔術大学を狙うはずだ」

勇者「・・・反乱されないように、か」

老兵「文化など最後でいい。連中が恐れるのは鍛冶や魔術だからだ。だからそこへ向かう」

勇者「・・・人間はどれくらい残った・・・?」

老兵「さあな。恐らく半数も残ってはおるまい」

勇者「・・・もし姫や執事が無事なら、まだチャンスはある」

老兵「チャンス?」

勇者「合流できれば、何か力になってくれるはずだ」

老兵「・・・。しかしまずは文化の町だ。姫様が生き残っている保証はない」

勇者「・・・ああ、そうだ。あんたの言うとおりだ」

392 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 01:29:58 N1ePwil60

同じ頃 城
魔王「ここが人間の城か」

側近「は・・・。人間どもが最後まで抵抗した場所でございます」

魔王「・・・顔の調子はどうだ」

側近「すこぶる快適でございます。この『機械化』なる技術はスバラしい」

魔王「人間の残党は」

側近「散り散りのようですな。あちこちでゲリラ的に戦闘が起きておりますが、すべて我が方が勝利しています」

銀仮面「・・・」

魔王「勇者の行方は」

側近「いえ、それがまだ・・・。あの小娘、味な真似をしてくれたものです」

393 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 01:33:48 N1ePwil60

側近「まあもっとも、あの小娘、味もそこそこにいいらしいですが」

魔王「吸血鬼の言うことなど、お前に当てはまるか知れぬが」

側近「あの連中、やってくれたものですよ。人間にしておくのがまったく惜しい」

魔王「ふん、大半すでに人間ではあるまいよ。お前たちがそうしてしまった」

側近「それもそうですが:

金仮面「魔王様」

魔王「お前か。状況は」

金仮面「は。貿易の街の制圧を完了いたしました。が、我が方にも多大な被害が」

魔王「・・・被害?」

金仮面「なんでも、一人とんでもない腕利がいたとか。目下、勇者の可能性があるので捜索中です」

側近「勇者が貿易の町に・・・?」

394 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 01:38:54 N1ePwil60

魔王「無い話ではないだろう。可能性はある」

側近「魔王様、勇者の例の件は・・・」

魔王「お前に一任する。勇者は生きて捕縛後、処刑だったか」

側近「は・・・。人間どもの最後の希望は勇者です。それを処刑できれば、人間の戦意は失われます」

魔王「好きにせよ。黒騎士の現在地は」

金仮面「は。現在黒騎士は漁業の町に向けて進撃中。なお、この街には国王軍の残党があるとのこと」

側近「蹴散らせ。黒騎士を正面に据えよ」

金仮面「存じております」

魔王「・・・つまらぬ。私は奥に引くぞ」サッ・・・

側近「あ、魔王様、しばしお待ちを・・・」タタタ・・・

金仮面「・・・ふん。人形め」

銀仮面「・・・」

397 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 01:44:43 N1ePwil60

「問題は、分散された戦力をどうやって集結させるか・・・」

執事「この場所は国王軍にも知らされておりませんので、ここに来る者はおりますまい」

「となると・・・?」

執事「問題はそこです。現在果たしてどこの町が占領されているのか否かも、ここからでは察しようがない」

「伝令です!貿易の街が、陥落したと・・・!」

「・・・分かりました」

執事「・・・次は恐らく、漁業の町でしょうな。その方向に他に街はありません」

「これで残された街はあと数箇所しか・・・」

執事「・・・もっとも侵略されにくいのは・・・ここと、ここです」

「北の要塞と、文化の町・・・?」

執事「文化の町は、南を砂漠に、北を迷いの森に、東西を山に囲まれておりますので、侵略がしにくいかと」

399 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 01:51:01 N1ePwil60

執事「北の要塞は言うまでも無く。帝国との境界です、武器や配置人数も揃っております」

「帝国・・・。そうだ、帝国の動きは」

執事「奇妙なほど静かだとか。まるで対岸の火事を見るように、動きがありません」

「連中の科学をつかった兵器軍なら、確かに魔王軍とも互角以上に戦えるかもしれないけど」

執事「帝国の脅威が薄い今なら、北の要塞に入るのがもっとも自然かと」

「・・・全軍に、荷物をまとめるように指示を出して。数日以内に、要塞へ向かいます」カツカツ・・・

執事「仰せのままに」

「・・・執事様。もう一つ、重要な報告が」

執事「なんだね」

「・・・国王陛下が、捕縛された模様です・・・」

執事「!・・・この話はお嬢様の前では決して漏らすな」

401 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 01:55:45 N1ePwil60

城下町 「元」国王広場

上級魔物「静まれ!!静まれ!!これより、王国国王の公開尋問を始める!!」

「・・・」

「王・・・」

「ひどい、あれじゃ死んじまう・・・」

上級魔物「王、貴様はこの国を煽動し、我が偉大なる魔王様に戦争をふっかけた!相違ないか!?」

「・・・」

上級魔物「黙秘権は認められていない!!やれ」

魔物「キシシシシ・・・」ドロォ・・・

上級魔物「我らが胃から分泌される強い酸だ。左足へ」

ドロォォォ・・・

「う、ぐ、あああああああああああああああああ!!!!!」

402 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:00:00 N1ePwil60

上級魔物「目が覚めたか?答えろ!!」

「・・・っ・・・。戦争を、始めたのは・・・魔、王だ・・・!!」

上級魔物「嘘をつくな!!お前が一つ嘘をつくたび、あそこで喚いている民が死ぬぞ!!」

「あれは・・・!?」

「み、みんな子供じゃないか!?」

「・・・!!何をする、つもりだ・・・」

上級魔物「簡単なこと。我ら魔物が増えるには二通りしかない。一つは生殖。もう一つは、人間の身体に我らの一部を植えつけること」

「・・・!?」

上級魔物「要は餌になってもらうのよ。生きたまま身体に卵を植えつける。そして、わが子たちは宿主を食って生まれてくるのだ!!」

「貴様ら・・・!!」

403 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:03:41 N1ePwil60

魔王「・・・あれもお前の差し金か」

側近「は。人間が大切にするもの、それは自分の家族と子供ですから」

魔王「・・・いい趣味とはいえないな」

側近「効果は絶大でございます。王が屈すれば、人も屈する。簡単な理屈です」

魔王「・・・で、戦況は」

側近「すでに漁業の町は制圧いたしましたが、いかがでしょう、あのように戦略的に価値のない街は焼き払われた方が」

魔王「戦略など興味はない。お前がしたようにすればいい」

側近「はは。ではそのように」

銀仮面「・・・」

側近「命令だ。その腰の剣で、王の首をはねるがいい」

404 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:08:12 N1ePwil60

「・・・そうだ。すべては私に、責任がある」

上級魔物「聞いたか人間ども!これで魔王様の正当が認められた!お前達の王によって!」

「・・・」

「くく・・・」

上級魔物「ふん、子供どもを地下に連れて行け。そこで苗になってもらう」

「!?何だと、貴様・・・!!」

上級魔物「ふん、正直に答えるから助けるなど、誰が言ったのだ」

銀仮面「・・・」カツ、カツ・・・

上級魔物「銀仮面様・・・?」

銀仮面「・・・」ズァッ!

「・・・ふん、その巨大な剣で、首を落とすつもりか・・・。化け物どもめ」

上級魔物「では最後に!最大の屈辱として!我らや人間の糞尿をぶちかけろ!」

405 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:10:36 N1ePwil60

バシャアッ!!

「・・・!!」

上級魔物「食われた人間と一緒にいられて幸せじゃないか国王・・・」

「・・・人間たちよ・・・。まだ、まだ諦め、るな・・・」

銀仮面「・・・」ギラッ!!

「まだ、我が娘が生きている・・・。我が息子、勇者もまだ、死んではいない・・・!」

「武器を取れ!!そして最期まで―――!!」

シュッ
ドスッ

407 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:13:36 N1ePwil60

「・・・これは美しくないな。今のはまったく、美しくない」

「・・・」

「今のお前も、あまり美しくはないな。血を吸わないことで歯向かっているつもりか?」

「・・・」

「まあいい。いつか耐え切れなくなる。そこがお前の、お前としての最後だ」

「・・・!」

「そんな目をしてももう遅い。もうお前は私が思うがままだからだ。その証拠に、なにをしても死ねないだろう?」

「・・・」

「ふん・・・。着いて来い。地下の地獄絵図でも見物しようかね」

412 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:22:09 N1ePwil60

別のどこか 同じ頃

「暗いねえ。明かりはないのかい?」

「火元はありますが、ランタンがないです」

「仕方ない・・・。灯火呪文を使うよ・・・」

吟遊詩人「ああ、明るくなった」

占い師「まったく、ようやくたどり着いたけどなんだいこの洞窟は」

吟遊詩人「昔知り合いが王国軍から逃げる時に使っていた洞窟です。奥に行けば、まだ食料があるかも」

占い師「やれやれだよ。こう暗くちゃ気が滅入る」

吟遊詩人「そういわないでください。これくらいしか僕にできる恩返しはないんですし」

占い師「ただあんたを襲いかけてた魔物を吹っ飛ばしただけじゃないか」

吟遊詩人「僕はそれで助かったんですよ」

413 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:26:04 N1ePwil60

占い師「で、この先かい?」

吟遊詩人「そのはずです」

占い師「・・・?おい、道がないぞ」

吟遊詩人「え?そんなはずは・・・」

占い師「ほら見てごらん。大穴が開いていて先に進めないよ」

吟遊詩人「こんな竪穴、前は無かったんですが・・・」

占い師「・・・?この竪穴、下は横穴になってないかい?」

吟遊詩人「本当だ。どこかに続いているかもしれません」

占い師「あんた食料はどのくらいある」

吟遊詩人「約三日分」

占い師「ほとんど同じか・・・。ここにいてもジリ貧になるだけさね。進んでみるよ」

吟遊詩人「え!?本気ですか!?」

占い師「当然だ!こう見えてあたしは若い頃冒険してたこともあるんだよ」

415 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:29:49 N1ePwil60

数日後 迷いの森
老兵「遅れるな。はぐれたら探してやれん」

勇者「あんたこの森で迷ったりしないのか?」

老兵「ないな。もう体が覚えてる」

町人「ハァ、ハァ・・・」

勇者「頑張れ、今日の行程も半分以上来てる」

老兵「これで文化の町に魔物がたむろしていたらお慰めだな」

勇者「そん時はあんたを囮に逃げるまでさ」

老兵「仮にも命の恩人だぞ?そんな口の利き方でいいのか?」

勇者「ふん」

418 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:35:10 N1ePwil60

同 数時間後

勇者「・・・なあ」

老兵「なんだ新米。明日も早いんだ、大人しく寝ろ」

勇者「前に言ってた、先代の勇者って何者なんだ」

老兵「・・・言ったとおりだ。戦争の英雄で、大量殺人者だ」

勇者「そうじゃない。勇者って自然に呼ばれるくらいなら、何かもっとこう、あるだろ?」

老兵「ふん・・・。伝説の英雄ほど、蓋を開けてみればがっかりするものだ。確かにやつには武勇伝も多い。が、戦場では美談の方が少ない」

勇者「・・・」

老兵「確かにやつは英雄だったかもしれないが、それは一極から見た場合だ。帝国からすれば、戦犯も同然」

勇者「でもそれは、この国を護るためにしたんだろ?この国を護りたかったから」

老兵「そうかもしれないな」

420 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:39:09 N1ePwil60

眠い・・・!!!

老兵「だが、そうじゃないかも知れん。もしかしたら、やつはただの戦闘狂で、ただのバーサーカーかもしれん」

勇者「そんなの・・・」

老兵「今となっては確かめようがない。やつは死んだか、そうでなくてももう再起しないだろう」

勇者「・・・そいつを知っているのか?」

老兵「・・・ああ。大昔にな。今よりずっと昔のことだ」

勇者「・・・」

老兵「すべては過ぎてしまった。今見るべきなのは、今過ぎようとしているこの今だ。それを忘れるな」

勇者「・・・。わかってる。わかってるさ」

421 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:44:11 N1ePwil60

翌日 北の道

魔物「アギャアアアア・・・」

ヒュン
ボンッ!!

執事「・・・ふむ。やはり、昔のようにはいきませんな」

「執事・・・」

執事「お怪我は」

「変わりない。しかし・・・まさかお前が先代『勇者』の一員だったとは・・・」

執事「いえ、私は『勇者』の後ろを護っていたに過ぎない、しがない戦士です。今となってはじじいですが」

「・・・。北の要塞へは?」

執事「まだ半分も来ておりますまい。幸いなのは、魔物の数が少ないことです」

「急いで向かわないと・・・。こうしている間にも民が・・・」

執事「左様でございます。急ぎましょう」

423 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:47:22 N1ePwil60

執事「しかし、帝国が動きを見せないとはいえ、姫様が要塞に入ったらどう動くか知れません」

「帝国が要塞を襲撃すると?」

執事「可能性はあります、然らば、姫様の存在はやはり秘匿した方がよいかと」

「秘匿・・・」

執事「代わりに、『北の要塞に王国軍か集結している』と伝令するのです。そうすれば、あるいは」

「それでうまくいくといいけど」

執事「最善の方法のように思われますが・・・!」

中級魔物「見つけた、姫だな・・・!」

「魔物・・・!!」

426 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:50:58 N1ePwil60

中級魔物「側近様の命により、お前を捕縛させてもらうぞ」

執事「できますかな?老いぼれたとはいえ、大戦の英雄を護った男がお相手しましょう」

中級魔物「老いぼれ、てめえに用は、」

ひゅん ひゅん

執事「いいたいことはそれだけか?」

中級魔物「な・・・!?」

ボッ!!
バラバラ・・・

執事「ふぅ・・・」

「・・・やはり中級魔物程度では話になりませんか」

執事「む・・・?」

429 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:54:44 N1ePwil60

金仮面「お初にお目にかかります。魔王軍大幹部を務めております」

執事「・・・悪趣味な仮面ですな。金ですか」

金仮面「付けたくて付けているのではないのですが、こうしないと銀が浮いてしまいますので」

執事「ふん・・・?それで、その大幹部が直々に何の用ですかな」

金仮面「実は任務は受けていないのですよ。たまたま通りがかった、それだけのことで」

執事「たまたまこんな田舎道にいた、と」

金仮面「そこは言いっこなしでしょう。お互い様です」

執事「む・・・」

金仮面「ですが、このまま見逃してもお叱りを受けてしまいますので。お手合わせ願いましょうか」

執事「最初からそのつもりでは?そう感じられましたが?」

430 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 02:58:22 N1ePwil60

金仮面「そこは大した問題ではありませんよ」

執事「姫様は連れのものと目的地へ向かってください」

「しかし!」

執事「そこにいられては巻き込んでしまいます!!お早く!!」

「・・・!!執事、必ず戻りなさい」

執事「仰せのままに」

金仮面「さて、ではまずは・・・小手調べを」ビュッ!!

執事「!」ひゅん!!

金仮面「遅い!!」ギラッ!!

執事「ち・・・」バッ・・・

金仮面「今のを避けますか」

執事「・・・『縮地』ですな。始めて見た」

431 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 03:01:56 N1ePwil60

金仮面「ほぅ・・・」

執事「遠い東の国の秘術・・・。あなた、魔物ではありませぬな」ひゅん!

金仮面「・・・だったらどうします?」

執事「なぜ人間が、それも王国以外の人間が魔王軍にいるのかははなはだ疑問ですが、それを聞いても教えてくれないのでしょう」

金仮面「そうですね。なぜなら、次の一撃であなたを殺すからです」

執事「・・・ほう」

金仮面「さあ、冥土の土産は持った?遺言は?地獄の審判に身を焼かれる準備は?」

執事「・・・ち」

金仮面「・・・参ります!」

434 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 03:05:56 N1ePwil60

同じ頃 漁業の町

黒騎士「火をつけろ。魔王様からの命令だ」

下級魔物「は!!」

「う・・・」

黒騎士「然る後撤退する。急げ」

「・・・あの・・・黒い、鎧の男は・・・」

黒騎士「馬をもってこい。先に城へ帰還する」

魔物「はは」

「・・・お触れに、出ていた・・・」

「・・・勇者・・・様・・・」ガクリ

436 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 03:10:30 N1ePwil60

ヘルシング 大 好 き さ!

同じ頃 迷いの森

勇者「あとどのくらいだ」

老兵「この分だと、今日の夜には着く。運がよければベッドに寝れるかも知れん」

勇者「助かった。食料ももう尽きかけてる」

老兵「それを計算したんだ。最低限の食料しか持ち出していない」

勇者「・・・なるほど」

老兵「急げ。いつまでも魔物がやってこない保証はないぞ」

町人「は、はい。でも少し、休憩させてください・・・」

老兵「・・・。十分間だ」

勇者「・・・この辺の廃墟は?」

老兵「昔エルフが住んでいた跡だろう。今は彼らの姿をこの国で見ることはない」

勇者「そうか、なら少し休憩に使わせてもらおう」

437 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 03:13:28 N1ePwil60

同日 夜
勇者「あれは・・・」

町人「町の光だ・・・!!」

老兵「どうやら無事にたどり着けたらしいな」

勇者「助かったか・・・。とりあえずは」

老兵「ああ、まったくとりあえずな」

勇者「急ごう、街の首長に会った方がいい」

町人「ベッドに風呂が待ってるぞー!!」

衛兵「ん・・・?止まれ!人間か?」

町人「そうだ!貿易の街から逃げてきた!中に入れてくれ!!」

438 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 03:15:48 N1ePwil60

衛兵A「生き残りだと・・・?」

衛兵B「お前が魔物でない証拠は?」

老兵「魔物が三人も堂々と衛兵の前に現れるはずがないだろう。それに、魔物はまだ森には入っていない」

衛兵A「じゃあ本当の生存者か!?」

衛兵B「伝令!伝令!!生存者がたどり着いた!!三人もだ!!」

勇者「大事だなこりゃ」

老兵「それだけ生き残りがいないのだろう」

443 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 03:20:02 N1ePwil60

町長「生き残りがいたとは・・・よく無事だった。何か暖かいものでも持ってこい」

勇者「ここには魔物は?」

町長「まだだ。だが、噂では砂漠の向こうまでもう来ているらしい。ここも時間の問題だ」

町人「そんなぁ・・・」

老兵「・・・他の生存者たちは」

町長「キミら以外に、外から来た者はいない。だが、王国軍がどこかに結集しているのは確かなようだ」

勇者「どこか?」

町長「それが、情報が錯綜していて・・・。魔王の城だとか、迷いの森だとかいう話もある」

老兵「町長、地図はあるか」

町長「あるとも。おい、地図だ。もってこい」

447 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 03:25:43 N1ePwil60

老兵「少なくとも鍛冶の町や貿易の街に集結することはあり得ない。となると、それ以外だ」

町人「旧魔王の城は・・・?」

老兵「迷いの森を越えられない。だからそれもない」

勇者「音楽の街は?そこそこの大きさもあって、城からも離れている」

老兵「いや、あそこは陣を敷くのに適さない。大戦の時も両軍から手を付けられなかったほどだ」

勇者「となると、他の場所・・・?」

老兵「考えられるのは、北の要塞と、北東の砦だが・・・」

勇者「どっちも軍事施設か。あり得る話だ」

老兵「問題はどちらかが分からないということだ。外れをひいた場合、リカバリが致命的だ」

勇者「どっちだ・・・?」

448 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 03:28:52 N1ePwil60

SS速報
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/

老兵「俺なら砦を選ぶ。帝国に背を向けて戦うなど、考えられん」

勇者「けど規模的には要塞の方があり得ると思う。砦は小さい気がする」

老兵「指揮官の性格がわかればある程度読めるのだが・・・」

勇者「ああ、そうかそう考えればいいのか」

老兵「?」

勇者「姫なら、あいつなら要塞を選ぶと思う」

老兵「根拠は」

勇者「姫は閉所恐怖症だ」

449 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 03:32:22 N1ePwil60

老兵「なるほど・・・?それならあり得るが、なぜそんなことを」

勇者「幼馴染だからな。城で育ったんだ俺」

老兵「何?じゃあ王族か」

勇者「まさか。両親は戦争で死んだ。で、引き取られた」

老兵「引き取られた?じゃあお前まさか、」

勇者「?」

老兵「・・・いやなんでもない。そうと決まれば、明日には要塞に向けて出発する。町長も住人にそう伝えろ」

町長「待ってくれ、さすがに明日は早急すぎる。せめて明後日にしてくれ、住人にも生活がある」

老兵「・・・いいだろう。ただし急がせろ。ここは戦場になるぞ」

勇者「宿の手配を頼む。さすがに病み上がりには堪える・・・」

450 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 03:36:34 N1ePwil60

翌日 北の要塞
司令官「お待ちしておりました。さあ中へ。お話はすでに、執事殿から承りました」

「執事本人は来ていないのですか」

司令官「はい。数日前、『姫様が向かわれる』というのが最後です」

「そう・・・。無事ならいいけど」

司令官「姫様のことは内密にいたします。外に漏れる心配を考えて、姫様は地下へ・・・」

「か、構わないけれど、部屋は狭いのかしら」

司令官「一応大きいお部屋でございます」

「ほ・・・。分かりました。ここから指示を出します。現存戦力は?」

司令官「1800です。うち、100は非戦闘員、300は施設内から動けません」

「残存兵力は1400か・・・。心もとないが、贅沢はいえない・・・」

451 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 03:44:16 N1ePwil60

「戦備を整えて。これより、反攻作戦を展開します。地図をここへ。各地域の状況を記入」

司令官「は!現在の最新情報によれば、漁業の町は陥落。現存するのは文化の町、及び音楽の町、さらに・・・」

(・・・お父様。お父様ほどうまくはできないけれど・・・。何とか、この国を護ります・・・)

「全軍に通達。残存戦力はすべて北の砦に集結せよ。然る後、反攻作戦を展開します」

司令官「全軍に通達!残存戦力は北の砦に集結せよ!!」

「攻撃目標を選定します。最初は最寄の街を解放します。即ち、ここ、産業の街です」

「で、伝令っ!!緊急伝令!!」

司令官「何事だ!」

「斥候より連絡!!当要塞に向け、魔物の一団が進行中!!」

「!!」

司令官「何だと!?詳細は!!」

「魔物の数、およそ3000!金の仮面をつけた者が前線指令をつとめている模様!!」

452 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 03:49:50 N1ePwil60

(執事っ・・・!!)

「・・・。作戦変更。これより防衛戦を開始します!!全砲門は標準を魔物へ。兵は白兵戦の用意!」

司令官「防衛戦用意!!持ちこたえろ!!ここがオチたら、この国はお終いだ!!」

同じ頃 北の大地

金仮面「全軍前進。目標、北部要塞。魔王様の命である!この地を赤く染めよ!諸君の空腹を満たすがいい!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

金仮面「さて、どうでるかな、あの姫様・・・。どう転んでも面白い見世物になりそうね・・・」

金仮面「目標を視認しだい、各自散開!!自由に行動し、目標を撃破せよ!!」

「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

金仮面「さあ、賽は投げられた。冥土の土産は持った?遺言は?地獄の審判に身を焼かれる準備は?」

金仮面「全軍、―――攻撃開始」

453 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 03:51:16 N1ePwil60

区切りがいいので・・・力尽きるわ・・・

執事は正直調子に乗りすぎたね

あとちょっと展開が速すぎるね

未熟で済まぬ・・・。付き合ってくれてありがとう

458 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 04:01:57 N1ePwil60

一部を「勇者冒険編」にするなら

二部は「王国反攻編」

三部は「●●●●編」ここまでは今決めた
以降は秘密。うそ、本当は決めてない

515 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 08:33:31 hoH8vdhc0

なぜまだあるし…
新規のタイトルは未定だけど変えないかも
移ったら投下し直しをぼんやり考えてるけど、もしかしたらいきなり続きからいくかも
その辺まだ未定

532 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/02/07 11:05:11 Dsuve2kh0

速報に移って書くよ
どの道昼間は書けないから

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