1 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:40:16 JKRmBgjk 1/156

「何だか、高校生活ってあっという間ですね」

「そうだなぁ」

「色々ありましたけど、もう3年生ですね」

「3年生だなぁ」

「男、解ってますか?3年生なんですよ?」

「解ってるよ」

「約束は?ちゃんと覚えてますか?」

「もちろん覚えてるよ」

「俺が幼の事をないがしろにする訳が無いでしょ」

「それなら良いんですけども!」

元スレ
幼馴染「もうすっかり春ですね」 男「そうだなぁ」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1368304816/

2 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:41:03 JKRmBgjk 2/156

「それでですね」

「ん?」

「デートがしてみたいです!」

「何?突然…デート?」

「高校生になってから…」

「遊びに行くのはいつも友君と幼友ちゃんと、女さんが一緒でした」

「俺達、仲良し5人組だもんな」

「…」

3 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:41:41 JKRmBgjk 3/156

「と、とにかく!私たち、2人きりでデートした事がありません!」

「友君と幼友ちゃんは2人でデートしてるのに!」

「何で急にそんな…」

「夏休みに入ったら、お互い勉強忙しくなっちゃうし」

「今、思いついたので、今、言いました!」

「今週末、丁度連休じゃないですか?」

「3連休だな」

4 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:42:35 JKRmBgjk 4/156

「だからデートしましょう!」

「ん…んー?」

「ちゃんと待ち合わせしてお出かけですよ?」

「すぐ隣りなんだから別に待ち合わせ無くても…」

「駄目です!待ち合わせは必須です!」

「私、30分前から待ってますからね!」

「じゃあ俺は40分前から待つよ」

「駄目ですよ、そんなの」

5 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:43:24 JKRmBgjk 5/156

「じゃあ幼も時間通りに、な?」

「良いじゃないですか。私、待ってみたいんです」

「解ったよ、じゃあ俺は時間通りに行くから」

「どこに行くのか、楽しみにしてますからね?」

「あ、俺が計画するのか?」

「当然です。エスコートして下さいね?」

「とは言え、なぁ」

6 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:44:04 JKRmBgjk 6/156

「ちゃんと考えてくれれば、それで良いですから」

「身の丈に合った、男らしいデートプラン、期待してますよ」

「ん…んー?」

「…解ってますか?」

「解った。ちゃんと考える」

「ちゃんとおめかしもして下さいよ?」

7 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:46:12 JKRmBgjk 7/156

「俺がどんな服持ってるかなんて、知ってるだろ?」

「デートに合ったコーディネートを考えて下さい」

「解ったよ」

「っと、アパート着きましたね」

「おう、それじゃまた後でな」

「はい、また後で」

8 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:46:53 JKRmBgjk 8/156




「デートかぁ…そう言えば、した事なかったか」

「いつも一緒に居るんだけどなぁ」

「…これはかなり難しい問題だな」

「友はどんなデートしてるんだろう…」

「ちょっと電話してみるか」

9 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:47:40 JKRmBgjk 9/156



『って訳なんだけどさ』

『お前らさ』

『ん?』

『俺らと遊んでない時の休日ってどうしてんの?』

『アパートの部屋が隣り同士で、付き合ってるんだろ?』

『はっ!?まさか、高校生の分際で、爛れた関係を…?』

10 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:48:40 JKRmBgjk 10/156

『まさか。普通に勉強したり、料理したり』

『一緒にDVD観たり、そんな感じだよ』

『宅デート?外には出ねーの?』

『2人でスーパーに買い物に行く事はあるけどなー』

『それはデートじゃねーな。日常生活だろ』

『友と幼友って、2人でどんな所に行ってるのか聞きたいなーって』

『んー…ありきたりだけどさ』

『映画行ったり、ゲーセン行ったり』

『カラオケ、ボーリング、ビリヤード』

11 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:49:24 JKRmBgjk 11/156

『高校生の小遣いじゃ、そんな所かな』

『それは普段、仲良し5人組で行くのと変わらんな』

『本当はドライブとか行きたいけどな』

『ドライブかー』

『お前、免許取ったんだろ?』

『うん、3月から教習所に通って』

『誕生日に取った』

『ならレンタカーでドライブとかどうだ?』

12 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:50:14 JKRmBgjk 12/156

『うーん…レンタカーとか、怖いなぁ』

『コスったりしたら、大変だし』

『それもそうか』

『それじゃ、無難に映画とか行けば?』

『それで、昼飯は洒落たカフェで…とかさ』

『その後、2人でカラオケとか』

『それかショッピングとか…かなぁ』

13 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:50:54 JKRmBgjk 13/156

『うーん…やっぱその辺りが無難かなぁ』

『背伸びし過ぎたら、逆に幼ちゃんは怒っちゃうんじゃなか?』

『はは、そうかもな』

『まぁ、頑張れよ』

『おう。頑張って見る』

『んじゃ、また明日な』

『ありがとな、友』

14 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:51:29 JKRmBgjk 14/156



「男!デートプランは考えましたか?」

「ん、今考え中」

「私、すっごく楽しみです!」

「まぁ、俺なりに頑張ってみるよ」

「はい!」

「それより今日の2者面談、大丈夫か?」

「全然問題ありません!」

15 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:52:22 JKRmBgjk 15/156



A組担任「やっぱりあそこの専門学校、受けるのか」

「はい。やっぱり作業療法士になりたいので」

A組担任「それだったら、こっちの学校の方がハードル低いぞ?」

A組担任「こっちは試験無しの面接だけだからな」

「でも、金銭的な問題と、質の問題で…」

A組担任「…確かに学費が倍ほど違うからな」

「はい」

16 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:53:11 JKRmBgjk 16/156

A組担任「本気なんだな?」

A組担任「正直、大学行くより難しいぞ?」

「真剣に頑張ります」

A組担任「それなら、精一杯頑張れ」

A組担任「困った事があったら言えよ?」

A組担任「俺はお前の担任なんだからな」

「はい!」

17 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:54:07 JKRmBgjk 17/156



B組担任「幼さんは大学受験ね」

「はい」

B組担任「幼さんの成績なら問題ないでしょう」

「ありがとうございます」

B組担任「けど、なぜ心理学科なの?」

「はい。心理学を勉強してやりたい仕事があるんです」

B組担任「やりたい仕事?」

「臨床心理士になりたいと思ってます」

18 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:55:45 JKRmBgjk 18/156

B組担任「それは…素晴らしいけど、大変な道のりよ?」

「覚悟は出来てます!」

B組担任「決意は固いみたいね」

「はい!」

B組担任「それじゃ、一緒に頑張って行きましょう!」

B組担任「なんでも相談してね?」

B組担任「私は幼さんの担任なんだから!」

「はい、よろしくお願いいします!」

19 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:56:48 JKRmBgjk 19/156



「二者面談どうでした?」

「ん?んー…俺は専門学校だなぁ」

「やっぱりそうですか…」

「幼は大学に進学するんだよな?」

「実は少しだけ迷ってます」

「何で?」

「両親に金銭的負担をかけるのはどうかと思って…」

20 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:57:48 JKRmBgjk 20/156

「でも、やりたい事があるんだろ?」

「はい。私は…子供の頃の事を活かして」

「カウンセラーになりたいんです」

「カウンセラー?」

「小さい頃の事を思い出すと、今でも嫌な気分になります」

「たまに嫌な夢も見ますし」

「…」

「でも、私の話しを聞いてくれたカウンセラーさんの事を思い出すと」

「凄くほっとします」

21 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:58:23 JKRmBgjk 21/156

「私みたいな目に遭ってしまった子の力になりたいんです」

「うん、凄く良いな」

「両親も絶対賛成してくれるよ」

「そう…でしょうか?」

「絶対、間違いない」

「まぁ、実際に私が立ち直れた一番の理由は…」

「優しくて格好良い男の子が」

「ずーっと傍に居てくれたからなんですけどね?」

「それは…まぁ、別の話しでしょ」

22 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 05:59:16 JKRmBgjk 22/156

「ともかくですね!」

「うん」

「卒業するまでの約1年、よろしくお願いしますね、男」

「こちらこそ、幼」

「後はお互い合格に向けて、頑張るだけだな」

「…道、別れちゃいますね」

「それは仕方ないだろ」

23 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:00:00 JKRmBgjk 23/156

「こうして、同じ道を帰る事も、あと数ヶ月で終わっちゃうんですよ?」

「寂しくないんですか?」

「そりゃ、少しは寂しいさ」

「少しなんですか?」

「だって…」

「おーい、お二人さん」

「!?」

24 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:00:43 JKRmBgjk 24/156

「今帰り?一緒に帰ろうよ」

「…って幼さん、そんなに身構えないでよ」

「また、待ち伏せですか?」

「違うよー。何でそんな敵みたいに言うの?」

「女さんは私の敵です!」

「そんなに目の敵にしないでよー」

「ね?男君!」

25 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:01:21 JKRmBgjk 25/156

「…まぁ、幼にとっては敵じゃないんじゃないか?」

「俺にとっては敵かもだけど…」

「男にとって敵なら、私にとっても敵です!」

「もう、二人とも、考え過ぎだってー」

「そう言って、この2年の間に」

「何回騙された事か!」

26 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:02:29 JKRmBgjk 26/156

「大丈夫、私ね、今好きな人が居るんだよ」

「ま、まさか…また…」

「違う違う。全然違う」

「後輩なんだけどね、ちょっと良いかなって思う人が居てね」

「へ、へー」

「部活の後輩?」

「良く解ったね!吹奏楽部の1年生なんだー」

27 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:03:16 JKRmBgjk 27/156

「1年生ですか…」

「ん?何?」

「もしその人とお付き合いする事になったとして…」

「私たち、あと数ヶ月で卒業じゃないですか」

「卒業したら、もうその1年生の方とは」

「その…会えなくなるじゃないですか?」

「え?そう?」

「違いますか?」

28 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:04:22 JKRmBgjk 28/156

「別に外国に行く訳でもないし」

「地面は続いてるんだから、いつでも会えるでしょ」

「…」

「ま、私は好きな人が海外に行っちゃったとしても」

「絶対会いに行くけどね!」

「そ、そうでしょうね」

「まぁ、女さんは情熱的だもんね」

「情熱的ってずいぶん良い言い方ですね!」

29 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:05:14 JKRmBgjk 29/156

「えへへ、そんな褒められても嬉しくなーいぞっと」

男・幼(褒めてはいない…)

「あ、そう言えば男君ってさぁ」

「ん?俺?」

「専門学校に行くんでしょ?」

「うん。作業療法士になりたくてね」

「じゃあ、受験勉強とか無いの?」

30 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:06:11 JKRmBgjk 30/156

「いや、普通に筆記試験と小論文あるよ」

「じゃあさ!また勉強会しようよ、みんなで!」

「…私は反対です」

「えー?何でー?幼ちゃんも進学でしょ?」

「そうですけど」

「私も女子大に進学するつもりなんだけどさぁ」

「今の成績だとちょっときつくて…」

31 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:06:57 JKRmBgjk 31/156

「だから学年トップクラスのお2人に教えてもらいたいなーって」

「百歩譲って、図書館でなら良いですよ」

「えー?幼ちゃんの部屋でやろうよー」

「それは絶対に嫌です!」

「女さんを家に入れるなんて、絶対嫌です」

「そこまで言われると傷つくなぁ」

「以前の勉強会でされた事を考えたら…」

32 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:07:43 JKRmBgjk 32/156

「もう、あんな事はしないからさー」

「絶対嫌です!」

「じゃあ男君は?男君の部屋で勉強会やろうよ!」

「俺もちょっと…」

「えー?」

「勉強なら図書館で出来るでしょ?」

「むー。友達の家で勉強会って言うのが良いのにー」

「あ!じゃあ私の部屋でやる?」

33 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:08:25 JKRmBgjk 33/156

「図書館でお願いします」

「ちぇーっ」

「教えるのはやぶさかじゃないからさ」

「いつでも言ってよ」

「図書館でね」

「…あいー」

「っと、私はここまでだね」

「じゃあね、二人とも、また明日ね」

男・幼「また明日」

34 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:09:23 JKRmBgjk 34/156



「…はぁ」

「どうした」

「未だに女さんを見るとハラハラします」

「まぁ、それもこれも全部ひっくるめてさ」

「青春の1ページに刻む思い出って事で」

「男は実害を被って無いからそんな事を…」

35 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:11:31 JKRmBgjk 35/156

「…中3の時、幼が俺の進路を変えてくれたおかげで」

「俺は色んな物を見れたし、色んな人にも会えた」

「色んな事を考えられたし、将来の夢も持てた」

「感謝なんて言葉で言い表せないくらい感謝してる」

「ど、どうしたんですか、突然」

「女さんや友、幼友達との出会いも、大切な良い思い出になるって事」

「?」

「この前、幼が言ってただろ」

「私、何か言いました?」

36 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:12:17 JKRmBgjk 36/156

「もうすっかり春だって」

「あ、始業式の日に言いましたね」

「桜並木を見ながら並んで通学するのも、今年が最後」

「…そうですね」

「来年からは別々の道に進むけどさ」

「だからこそ、今この一瞬が大事だなって思えるんだ」

「…はい」

「おっと、暗い顔は無しだぜ、幼?」

37 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:12:59 JKRmBgjk 37/156

「は、はい、そうですね!」

「あと約1年は一緒に通学出来ますもんね!」

「おう!それに気付かせてくれた幼に感謝してるって話しだよ」

「ふふっ…中3の時の私、グッジョブ!ですね?」

「その通り、良くやった!中3の時の幼!」

「だからって訳じゃないけどさ」

「はい?」

38 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:13:46 JKRmBgjk 38/156

「デート、期待しててくれよ」

「俺、頑張って考えるからさ」

「絶対に幼が喜んで、2人の思い出に残るようなデートをさ」

「は、はい!」

「それじゃまた後でな」

「はい、また後で」

39 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:14:38 JKRmBgjk 39/156



「…」

男父「…よう、お帰り。久しぶりだな」

「父ちゃん?俺の部屋で何してんの?」

男父「取り敢えず家捜しだな」

男父「しかしお前の部屋はつまらんなー」

男父「エッチな物が何も無いってのは年頃の男子として…」

「何かあった?何で急に…」

40 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:15:20 JKRmBgjk 40/156

男父「一人暮らしの息子の様子を見に来たに決まってんだろ」

「来るなら来るで連絡くらい…」

男父「サプラーイズ!」

「まぁ、びっくりはしたけどさ」

「マジで様子見に来ただけ?」

男父「フフフ、驚けよ?」

「もう驚いてるよ」

41 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:16:18 JKRmBgjk 41/156

男父「もっとだもっと!」

「もっと?」

男父「取り敢えず、表に出な」

「何で?」

男父「お前に見せたい物があるんだよ」

「はぁ」

42 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:17:08 JKRmBgjk 42/156



「父ちゃん、どこまで行くんだよ」

男父「すぐそこの駐車場までだ」

「駐車場?」

男父「ここだ」

「何?」

男父「なぁ、こいつをどう思う?」

43 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:17:40 JKRmBgjk 43/156

「え?これ?まさか…」

男父「羨ましいだろ!俺の愛車だ!」

「でかっ!てか買ったの?」

男父「昔から憧れてたんだよ」

「…こんなデカい車、必要あんの?」

男父「必要か不必要かで言えば、不必要かもしれねぇ…」

男父「でもなぁ」

44 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:18:25 JKRmBgjk 44/156

男父「欲しいか、欲しくないかで言ったら…」

「まぁ、欲しかった訳ね」

男父「漢のロマンってやつだ」

「で?これを見せるためにわざわざ来たのか?」

男父「まぁ、これの自慢はついでだ」

「ついで?」

男父「その隣りにあるワゴンRな」

「ん?」

45 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:19:20 JKRmBgjk 45/156

男父「俺のお古だが、お前にやる」

「はぁ?」

男父「俺がちゃんと整備したんだ、あと10年は走るさ」

「はぁ…」

男父「免許取ったんだろ?」

「あぁ、先々週取ったけど…」

男父「ちょっと遅目の誕生日プレゼントだ」

「えぇ?マジ?」

46 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:20:19 JKRmBgjk 46/156

男父「実はもうお前の名義に変えてある」

男父「駐車場も契約済みだ」

男父「いらんと言われても、俺が困るぞ?」

「あ、あぁ、ありがとう。嬉しいよ」

男父「これで幼ちゃんとドライブでもしろよ」

「あぁ、それは…」

男父「約束、破って無いだろうな?」

「ちゃんと守ってるよ」

47 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:21:54 JKRmBgjk 47/156

男父「世間は見えたか?」

「お陰様で少しは見えたと思うよ」

男父「進路はどうだ?」

「専門学校に進学したいと思ってる」

男父「島から出て良かっただろ?」

「うん、感謝してるよ、父ちゃん」

男父「んじゃ、頑張れよ」

48 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:22:42 JKRmBgjk 48/156

男父「ほら、これが鍵だ」
ポイッ

「お、おう」
パシッ

「て言うか、どうやってここまで運んで来たんだ?」

男父「フフフ。俺の車の助手席を見ろよ」

「ん?」
そーっ

49 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:23:31 JKRmBgjk 49/156

「…寝てるの?」

男父「起こすなよ?長距離運転で疲れてんだよ」

男父「そんじゃな」

「え?帰るのか?」

男父「おう、今日中に帰りたいからな」

男父「もう出ないと、フェリーの時間に間に合わん」

「幼には会って行かないのかよ」

50 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:24:13 JKRmBgjk 50/156

男父「まぁ、サプライズって事で」

「それで良いのかよ、母ちゃん…」

男父「その車で、たまには家に顔出せよ」

男父「フェリー代くらい出してやっから」

「あぁ、そうするよ」

男父「あとな」

「何だよ」

51 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:24:45 JKRmBgjk 51/156

男父「キスくらいならセーフだぞ?」

「…」

男父「じゃあな!」


「はぁ…」

「それにしても…車かよ」

「今後必要になるかなと思ってはいたけど」

「…父ちゃんありがとう」

52 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:25:28 JKRmBgjk 52/156



その日の夜

コンコン

「男、ちょっと良いですか?」

「…」

コンコン
「男?」

「…」

「もう寝てるんでしょうか?」

「まだ9時なのに…」

53 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:26:08 JKRmBgjk 53/156



「男、昨夜は随分と寝るのが早かったんですね」

「あ、あぁ…ちょっと疲れてたからさ」

「ん?男、今ちょっと嘘つきましたか?」

「んー?ついてないよ」

「…」
ジーッ

「本当だって!」

「それより明日の事なんだけどな」

54 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:26:56 JKRmBgjk 54/156

「はい、いよいよデートの日ですね!」

「待ち合わせなんだけど、朝の8時で良いかな?」

「はい…え?8時ですか?早くないですか?」

「ん、なるべく早くに出発したいんだ」

「解りました。どこで待ち合わせですか?」

「ちょっと雰囲気無いかもしれないけど」

「近くのローソンの駐車場で良いかな?」

「はい、解りました」

「楽しみにしててくれよ」

「はいっ!すっごく楽しみです!」

55 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:27:50 JKRmBgjk 55/156



その日の夜

コンコン
「男、起きてますか?」

「…」

「本当に寝てるんでしょうか…」

「デートは明日なのに…」

「…」

「いいえ!男は楽しみにしてろって言ってくれました!」

「私が男を疑ってどうするんですか!」

「…お休みなさい、男」

「明日、楽しみにしてますから…」

56 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:28:34 JKRmBgjk 56/156



次の日

「よし!準備完了っ!」

「お弁当も準備万端!」

「幼友ちゃんに習ったメイクもばっちりだし」

「洋服も、男には内緒で買った勝負服だし」

「下着も…」

「…ま、まぁこれはあくまで念の為に、ですけど」

「7時15分…そろそろ出ましょう」

「楽しみです!」

57 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:29:41 JKRmBgjk 57/156



ローソンの駐車場

「…」

(…好きな人を待つって、こんなにソワソワする物なんですね)

(でも全然嫌じゃない、凄く楽しいソワソワですね)

(今日はきっと最高の1日になりますね!)

(8時になったら、きっとあの角から男が歩いて来ます)

(どんな格好で来るんでしょうか)

(男も私みたいに、こっそり服を買っているかもしれませんね)

58 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:30:38 JKRmBgjk 58/156

(もうすぐ8時ですね)

(そろそろあの角から、男が…)

ブロロロロロ

(あ、車が入って来た…)

キッ

(8時…男はまだ来ませんね)

59 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:31:11 JKRmBgjk 59/156

ウィーン
「お待たせ、幼」

「えっ?男?…その車は…?」

「へっへー。どうしたと思う?」

「まさかわざわざレンタカーを?」

「ハズレ。これは正真正銘俺の車なのだ!貰い物だけど」

「へ?」

60 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:32:23 JKRmBgjk 60/156

「車貰ったって…意味が解りません!」

「実は父ちゃんから貰ったんだ」

「あぁ…お父さん…さてはサプライズですね?」

「うん。貰った本人もびっくりだよ」

「さ、幼、乗って。行き先は決まってるから」

「は、はい…」
ガチャ
バタン

「大丈夫、安全運転で行くからさ」

61 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:34:16 JKRmBgjk 61/156

「そこは別に不安じゃありません」

「男が私を乗せて危険運転する訳がありませんから」

「うん」

「あ!さては、昨日、一昨日の夜…」

「運転の練習をしてたんですね?」

「バレたか。その通り」

「心配して損しました」

62 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:34:59 JKRmBgjk 62/156

「せっかく父ちゃんからのサプライズだったから」

「幼にもサプライズを!と思って」

「その辺り、さすが親子ですね」

「自分でもそう思うよ」

「いつ来てたんですか?」

「一昨日、帰ったら部屋に居た」

「ひょとしてお母さんも?」

「うん」

63 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:35:44 JKRmBgjk 63/156

「全く…サプライズの為とは言え、私に一言も無いなんて」

「母ちゃん、寝てたんだ」

「父ちゃんが買った新車の助手席でね」

「お母さんは普段あまり運転しませんからね」

「うん、長距離運転で疲れてるから起こすなって言われた」

「まぁそれは…仕方無いですね」

64 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:36:35 JKRmBgjk 64/156

「それで、男、この車はどこに向かって走ってるんですか?」

「着けば解るよ。今は内緒」

「むぅ…では到着するまで、面白い話しして下さい」

「難しいなぁ…取り敢えず、普通の会話でお願いします」

「…幼、今日の服超可愛いな。似合ってるぜ」

「気付いて貰えて嬉しいです!今日の為に買ったとっておきで…」

65 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:37:33 JKRmBgjk 65/156



「ここは…」

「初めてだろ?」

「私、一度来てみたかったんです!」

「知ってたよ。だから来たんだ」

「すっごく嬉しいです!」

「喜んでくれて嬉しいよ」

「お、男!早く中に入りましょう!」

「落ち着いて、幼。水族館は逃げないから」

66 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:38:27 JKRmBgjk 66/156



「…言葉が見つかりません」

「うん、そうだなぁ」

「こんなに大きな水槽で…魚が…」

「ジンベエザメってデカいなぁ」

「色んな魚がぐるぐる回って…とっても…」

「…」

67 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:40:42 JKRmBgjk 67/156

「綺麗ですね…」

「…あぁ、綺麗だな」

「…はい」

「…本当に、綺麗だな」

「…」

「来て良かったよ」

「本当にそうですね…」

68 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:41:16 JKRmBgjk 68/156



「はぁ…言葉も無く1時間も大水槽の前で立ち尽くしてしまいましたね」

「それだけの価値はあったなぁ」

「男、本当にありがとうございます」

「俺だけの力じゃ無理だったけどね」

「後でお礼の電話をしなければ」

「2人共、喜ぶと思うよ」

69 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:42:00 JKRmBgjk 69/156

「さて!次はあれです!男っ!」

「イルカショー?」

「見たかったんですっ」

「ん、丁度時間も良い感じだし、行こうか」

「はいっ!」

70 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:42:34 JKRmBgjk 70/156



「とっても凄かったですけども」

「最前列はやめておいた方が良かったですね…」

「結構水かかっちまったな」

「でもまぁ、この天気だし、すぐ乾くだろう」

「男、私の服、透けてません?」

「ん…んー?」

71 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:43:15 JKRmBgjk 71/156

「…どうですか?」

「大丈夫、どこも透けてないよ」

「ふぅ…まぁ、透けてても良いんですけど」

「それは俺が嫌だから」

「ふふっ、男ならそう言ってくれると思ってましたよ」

「あそこのベンチでちょっと休むか」

「…あそこのベンチ、どうして誰も座ってないんでしょうね?」

「他のベンチは人で一杯なのに…」

72 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:44:30 JKRmBgjk 72/156

「今日暑いからなー」

「あそこのベンチだけ、屋根が無いからじゃないか?」

「なるほど。でも、服を乾かしたい私たちにはピッタリですね」

「それじゃそこでお弁当にしましょう!」

「じゃあ、俺、飲み物買って来るよ」

「お願いします」

「幼はお茶で良い?」

「はい!緑茶でお願いします」

「じゃ、ちょっと行って来る」

73 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:45:08 JKRmBgjk 73/156



「はぁ…私、こんなに幸せで良いんでしょうか」

「大好きな人と、楽しく過ごす時間…」

「大切な時間ですね」

「…」
ソワソワ

「…男、遅いですね」

「ふふっ…やっぱり私、男の事が大好きです」

「こんなわずかな時間も、離れてるとソワソワしてしまうなんて」

「…これからもずっと一緒に居たいです」

「…なぁ、そこの姉ちゃん」

74 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:45:45 JKRmBgjk 74/156

「…」

「あんただよ、聞こえてるんだろ?」

「ひょっとして私に話しかけてるんですか?」

「そうだよ、あんただよ」

「どちら様ですか?」

「ナンパなら他を当たって下さい、連れが居ますので」

「よっこいしょっと」
ドサ

75 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:56:34 JKRmBgjk 75/156

「ちょ、隣りに座らないで下さいっ」

「連れが居るって言ってるじゃないですか!」

「それに、お酒臭いです。寄らないで下さい!」

「…お前、幼だろ?」

「な、なんですか?誰ですか?何故私の名前を知ってるんですか?」

「母ちゃんに似て、美人になったなぁ」

「母を知ってるんですか?」

「まだ思い出さねえのか?俺だよ俺」

76 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:57:07 JKRmBgjk 76/156

「わ、私はあなたみたいな人は、し、知りません」

「あぁん?実の父親の顔、忘れる位、馬鹿に育ったのか?」

「あ…あ…」
ガタガタ

「離婚したとは言えよう」

「俺はお前の親父だぜ?」

元幼父「ちゃんと挨拶くらいしたらどうだ?あぁ?」

「わ、私は…」
ガタガタ

77 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:58:06 JKRmBgjk 77/156

元幼父「何だよ、何震えてんだ」

元幼父「また俺がお前の事、殴ると思ってんのか?」

元幼父「安心しろよ、殴ったりしねぇよ」

「な…何で…こんな所に…」
ガタガタ

元幼父「あぁ?俺が水族館に居たらおかしいか?」
ダンッ

「ひっ!」
ガタガタ

78 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:58:54 JKRmBgjk 78/156

元幼父「お前は相変わらず、憎たらしい目ぇしてやがるな」

元幼父「俺が今日、ここに居るのは偶然だからな?」

元幼父「狙って来た訳じゃねーからな」

「ぁ…」
ガタガタ

元幼父「んだよ、いい加減震えるの止めろっ!」

「ひっ…」
ガタガタ

79 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 06:59:38 JKRmBgjk 79/156

元幼父「俺がお前を虐待してるみたいだろ?なぁ!おい!」
ダンッ

「い、嫌っ…嫌っ…」
ガタガタ

元幼父「あぁ、その態度…変わってねぇなあ」

元幼父「あの女、相変わらず馬鹿なんだなぁ」

元幼父「教育がなってねーからこんな馬鹿な人間が育つんだ」

80 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:00:14 JKRmBgjk 80/156

元幼父「お前今、高校生くらいだろ?」

元幼父「なのに、実の親に挨拶も出来ねー」

元幼父「馬鹿は殴らなきゃ治らねーっての」

元幼父「なぁ、おい。お前もそう思うだろ?幼っ!」
ズイッ

(ま、また殴られる…嫌だ!痛いの嫌だ!)
ガタガタ


「あの」

81 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:01:10 JKRmBgjk 81/156

元幼父「あぁ?何だ?」

「今、その娘の事、殴ろうとしました?」

元幼父「あぁ、自分の娘を教育中だ、他人が口出す事じゃねーよ!」

「他人じゃないので、そう言う訳には行かないです」
スッ

元幼父「あぁ?お前誰だ?」

「…他人じゃないって言ってるでしょ」

元幼父「あん?ひょっとしてこいつの彼氏か?」

「そうです」

82 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:01:56 JKRmBgjk 82/156

元幼父「けっ…ガキが色気付きやがって」

「幼、大丈夫だから」

「…ぁ…」
ガタガタ

「遅くなってごめんな」

「男ぉ…」
ガタガタ

元幼父「あー、彼氏君さぁ」

「何ですか?」

83 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:04:13 JKRmBgjk 83/156

元幼父「そいつ馬鹿だから、言う事聞かせるには殴らないと駄目なんだよ」

元幼父「まぁ、教育って奴だ」

元幼父「だからそこどけ。ぶっ飛ばされんうちにな」

「そうは行かないです」

「彼女は俺の大切な人なので、ここは引けません」

「愛する人を傷付けられて、黙ってる人間なんて居ないでしょ」

元幼父「…あぁ、お前も馬鹿なんだな?」

84 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:05:10 JKRmBgjk 84/156


元幼父「やっぱガキは殴られないと解らねぇんだ…」

「殴られても、一歩も引きませんよ」

元幼父「ぷっ…あはははは」

元幼父「そうかそうか…彼女の前では格好つけたいもんなぁ」

「…」

元幼父「でもなぁ…やっぱりガキの躾は大人の義務だからなぁ!」
バチィン

「っく…」

85 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:06:01 JKRmBgjk 85/156

元幼父「さすが男の子、小さなガキとは違うなぁ…」
ドカッ

「ぅ…」

「ゃ…」
ガタガタ

元幼父「オラ!ちゃんと目上の人間に敬意って奴を…」
ガスッ

「…」

86 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:06:38 JKRmBgjk 86/156

元幼父「…何だ、その目」

「…あんたが昔、幼にした事は許せない、許されない事だ」

元幼父「あん?」

「会社の金横領して、クビになって、酒に溺れて」

「自分の家族に暴力を振るう様な…」

「クソ野郎に、敬意を持って接する事なんて出来ないね!」

元幼父「この野郎…殴られ足りないんだな?やっぱ馬鹿なんだな?」
バチッドスッ

「っ…」

87 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:07:33 JKRmBgjk 87/156

「ぃゃ…」
ガタガタ

元幼父「オラ!さっきみたいに威勢のいい事言ってみろ、クソガキが!」
ドスッ

「ぅ…」
フラフラ

(怖い…怖いよ…)
ガタガタ

(でも…このままじゃ男が…男っ!)
ガタガタ

88 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:08:33 JKRmBgjk 88/156

(男っ!!)

(…そうだ)

(こいつに殴られて、人間不信になってた私を)

(優しく見守ってくれて、仲良くしてくれて)

(いつだって、私の事を大切にしてくれて…)

(…私は…私はっ!)

89 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:09:32 JKRmBgjk 89/156

「止めて下さいっ!」

元幼父「あぁん?馬鹿はちょっと黙ってろよ」

「男は私の大切な人ですっ!」

「これ以上は…やらせませんっ!」

元幼父「はぁ?、生意気な口きく様になったなぁ」

元幼父「今度は右耳も聞こえなくしてやろうか?あぁ?」

「やれるもんならやってみやがれです!」

90 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:10:45 JKRmBgjk 90/156

(大丈夫、もう怖くない…)

(男の為なら…何も怖くないっ!)

元幼父「このガキがっ!」
バチンッ

「っ…」

「お、幼っ!」

「…もう、あの頃の私とは違いますっ!」

「あなたの様な人に、屈したりしない!」

元幼父「このクソガキがっ!」

91 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:11:22 JKRmBgjk 91/156

ガシッ
警備員「ちょっと待った!」

元幼父「何だ?今、ガキを教育中だ。引っ込んでろよ」

警備員「今のそれは教育とは関係無く見えました」

元幼父「何だよ…俺ぁ客だぜ?おい」

元幼父「それに俺はこいつらの保護者だ」

元幼父「教育の邪魔だからどっか行け」

92 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:12:03 JKRmBgjk 92/156

警備員「…君たちはこの人の子なのかな?」

「いいえ、違います」

「この人が一方的に暴力を振るって来たんです」

元幼父「おい…あんまり俺を怒らせるなよ、馬鹿娘がっ!」

警備員「ちょっと3人とも、事務所まで来てもらえますかね?」

元幼父「おい…そんなガキの言う事を信じるのかよっ!」

警備員「少なくとも酔って公衆の面前で」

警備員「暴力を振るう人の言葉よりは信じられますね、元幼父さん」

元幼父「チッ…」

93 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:12:58 JKRmBgjk 93/156

「男!」

「幼…大丈夫??」
フラフラ

「私は何ともありません!それより男の方こそ大丈夫ですか?」

「ほっぺとお腹とスネが痛い…」

「でも死ぬ程じゃないし、大丈夫だよ、幼」

「こんな時、ドラマとかだと気を失ったりするのになぁ」

「人間って、結構頑丈に出来てるもんだな」

94 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:14:04 JKRmBgjk 94/156

「何言ってるんですか!もう!男は無茶し過ぎですよ!」

「何で…殴り返さなかったんですか?」

「ここで手出しちゃ、負けでしょ」

「負け…ですか」

「そこのクソ野郎と同じになっちゃうだろ」

「もう…格好付け過ぎですよ…」
グスッ

「泣くなよ、幼。もう大丈夫だから」
ナデナデ

「はい…」

96 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:14:49 JKRmBgjk 95/156



「いえ、警察に連絡とかはしなくていいです」

警備員「でも暴行されたんだし、通報した方が良いんじゃないかな?」

「別に大したことないです」

「男、良いんですか?」

「うん」

元幼父「…色男だなぁ、オイ」

97 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:15:38 JKRmBgjk 96/156

「勘違いしないで下さいよ?」

元幼父「あ?」

「俺はあなたと金輪際、係わり合いたくないんです」

「幼にも幼母にも、もう二度とあんたの顔を見せたくない」

「今日、ここで会っちゃったのはまぁ、事故だとして」

「警察沙汰なんかにしたら、またあなたの顔を見る事になる」

「それが嫌なんで」

元幼父「はっ!それが色男だって言ってるんだよっ!馬鹿か?」

98 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:17:29 JKRmBgjk 97/156

警備員「大人げない…声の大きさ調整も出来ないんですか?」

元幼父「なんだとっ?」

警備員「そっちの彼の方がよっぽど大人ですよ」

元幼父「このっ…」

警備責任者「元幼父さん、酔って入館して、他のお客様に絡んで騒動を起こすのは」

警備責任者「迷惑だと言ったはずです、そして次は通報すると」

警備責任者「彼らには関係無く、業務妨害で通報しても良いんですよ?」

元幼父「…」

警備責任者「取り敢えず、もう二度と来ないで下さい。出禁です」

99 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:18:53 JKRmBgjk 98/156




警備責任者「今日は災難だったね」

「はは、まぁ少し」

「少しじゃありません!」

「…もし次、こんな事があったら」

「もっとこう…ガードするとか、して下さい!」

「機会があったらそうするよ」

100 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:19:27 JKRmBgjk 99/156

警備責任者「あの…これ、良ければ受け取ってくれるかな?」
スッ

「これは?」

警備責任者「この水族館の入場券が2枚入ってるよ」

「良いんですか?」

警備責任者「このままだと、嫌な思い出しか残らなくて…」

警備責任者「もう2度と来なくなってしまうだろ?」

警備責任者「そうなったら悲しいからな」

101 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:20:00 JKRmBgjk 100/156

「ありがとうございますっ」
ペコッ

「ありがとうございます、警備責任者さん」

警備責任者「ははは、是非また来てくれよ?」

「はい、絶対また来ますよ」

警備責任者「車で来たんだよね?」

「そうです」

警備責任者「帰り道、気をつけて」

102 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:20:51 JKRmBgjk 101/156



「…」

「男、大丈夫ですか?」

「大丈夫!って言いたいけど…」

「ちょっと痛いかも」

「運転、変わってあげられれば良かったんですけど…」

「て言うか男、道が違うと思うんですけど」

「さっきの交差点、直進じゃなかったですか?」

「家に帰るなら直進なんだけどさ…」

103 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:21:29 JKRmBgjk 102/156

「ん…ごめん、幼」

「ちょっと休みたい…」

「はい…でもどこで?」

「そこに見える、ホテルで」

「部屋取れたら…」

「ホ、ホテル…」

「着いたら、ちょっとフロントで、部屋取れるか聞いて来てくれる?」

「は、はい」

104 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:22:16 JKRmBgjk 103/156



「部屋取れて良かったですね、男」

「ん?んー…そだね…」

「い、勢いで、ホテルに入ってしまいましたね!」

「よくここにホテルがあるって解りましたね!」

「ん、途中、看板が見えたから…」

「シーズン前とは言え、よくこんなリゾートホテルの部屋が空いてましたね!」

「ある意味、ラッキーですねっ」

105 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:22:57 JKRmBgjk 104/156

「それにしても、綺麗な部屋ですね」

「あ!こっちの窓から海も見えますよ!男!」

「うん…そっか…それは良かった…」

「男、大丈夫ですか?」

「ごめん…幼、ちょっと…休ませて…」

「は、はい!どうぞ!」

「だはー」
ばふっ

106 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:23:43 JKRmBgjk 105/156

「…」

「男、寝る前にちゃんと靴は脱いで、お布団に入って下さい」

「ぉぅ…」
ゴソゴソ

「ノリの効いたシーツ、ふかふかの布団、気持ちいいなぁ…」

「…そ、そうですか」

「あぁ…幼も、入ってみ…」

107 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:24:32 JKRmBgjk 106/156

「は、はいっ!そのっ!それは、あの!」

「私もやぶさかでは無いんですけどっ!」

「でもお父さんとの約束もありますし!」

「でもでも、男がどうしてもと言うなら!」

「こ、これは決してやましい事を考えている訳ではなくて!」

「か、看病!そう!私をかばって、怪我をした男の事を!」

「看病すると言う事で…」

108 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:25:06 JKRmBgjk 107/156

「…」スースー

「…男?」

「…」スースー

「寝ちゃったんですか…はぁ…」

「…」

「もう!私だけ舞い上がって、馬鹿みたいじゃないですか!」

「…」スースー

「ふふっ」

109 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:25:44 JKRmBgjk 108/156

「男、今日はありがとうございます」

「私を助けてくれて」

「男が傍に居てくれたから、私も勇気出せました」

「…初めて、あの人に反抗出来ました」

「ほっぺは痛かったけど、清清しました」

「きっともう嫌な夢も見ないと思います」

「本当にありがとうございます、男…」

「大好きです…」


ちゅっ

110 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:26:20 JKRmBgjk 109/156



「…ん」

「…」スースー

「…あれ?なんで幼が俺のベッドに?」

「ん…んー?」

「…」スースー

「あ、そうか、ここホテルだ」

「俺、寝ちゃったんだな」

111 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:27:36 JKRmBgjk 110/156

「…」スースー

「ははっ、こっちに入って来ちゃったか」

「これじゃベッド2つある意味無いし」

「…」

「しっかし今日は緊張したなぁ…」

「話しには聞いてたけど、幼の実の親とは思えないなぁ」

「全くクソ野郎って言葉がピッタリだったな」

112 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:28:16 JKRmBgjk 111/156

「昔は優しくて格好良かったって言ってたけど」

「…母ちゃんに似て良かったな、幼」

「…」スースー

「ちょっと笑ってる…良い夢見てるのかな?」

「今日の俺は、ちゃんと幼の事を守れたのかな」

「一発庇いきれなくて、ほっぺが赤くなってるな…」

「ごめんな、次はちゃんと守るから」
ナデナデ

113 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:29:20 JKRmBgjk 112/156


「…」
ニコッ

「!!」

「…あれ?何だこれヤバい」

「動悸が激しいし、顔が熱いし」

「よく考えたら、同じ布団で寝るなんて、何年ぶりだろ」

「…」

114 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:30:10 JKRmBgjk 113/156

「…あー、駄目だ駄目だ」

「俺は不埒な事は考えてないぞ!断じて!」

「断じて…」

「…」

「幼、起きて無いよな?」

「…」

「…ぅー」



ちゅっ

115 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:31:08 JKRmBgjk 114/156

「やっちまった…」

「…あぁ…もう!」

「…それはこちらの台詞ですよ、男」

「う…やっぱ起きてたか…」

「なんでおでこなんですか!」

「キスしやすいように、顔を向けていたのに!」

「駄目だから!約束だから!」

116 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:31:44 JKRmBgjk 115/156

「なら何でおでこにキスしたんですか?」

「幼が可愛かったからだ」

「ふふっ、そこは正直なんですね」

「だって本当にすげー可愛かったし」

「でも嬉しいですよ」

「何が?」

「初めて、男の方からキスしてくれました!」

「おう…そうか…」

117 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:32:26 JKRmBgjk 116/156

「て言うか、どこから起きてた?」

「ひょっとしてずっと起きてたか?」

「いえ、最初は本当に寝てましたよ」

「男が頭を撫でてくれたので起きました」

「頭ナデナデは駄目かー」

「いえ、とっても嬉しかったですよ」

「小さい頃はよく撫でてくれたのに」

「最近は全然ですからね!」

118 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:32:59 JKRmBgjk 117/156

「子供扱いっぽいかなと思って、やらない様にしてたんだけどな」

「思いませんよ。むしろ嬉しいのでどんどん撫でて下さい」

「お、おぅ」

「今、撫でてくれても良いんですよ?」

「う…」

「と言うか、頭を撫でるのは約束に反してませんよ!」

「普通のスキンシップじゃないですか!」

119 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:33:44 JKRmBgjk 118/156

「だから、今撫でて下さい!」

「解ったよ…」
ナデナデ

「ふふっ…くすぐったいですね」

「止めるか?」

「そのまましばらく撫でてもらえますか?」

「おう」

120 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:34:45 JKRmBgjk 119/156

「小一時間くらい?」

「いや、一時間は長いだろ!」

「今までの時間からしたら、短いくらいです!」

「…そっか」
ナデナデ

「本当はさ」

「はい?」

121 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:35:30 JKRmBgjk 120/156

「キスくらいならセーフなんだって」

「!?」

「この前、父ちゃんに言われたんだ」

「だからまだ…」

「じゃあ、今すぐキスしましょう!」

「ここじゃ駄目だ!絶対駄目!」

「どうしてですか!キス、セーフなんですよね?」

「私、キスしたいです!」

122 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:36:05 JKRmBgjk 121/156

「あー、ここでキスしたらさ」

「はい」

「理性が、その…持たないって言うか」

「理性?…あっ!」

「だから駄目!」

「もう良いじゃないですか」

「駄目です」

123 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:36:43 JKRmBgjk 122/156

「わ、私は、覚悟とか出来てますよ?」

「高校に入学したら、他の人の事好きになるかもなんて言われましたけど」

「やっぱり男以外の事を好きになるなんてありえません!」

「一生、男の傍に居ます!」

「だから…」

「…」

「…」



ぐぅ…

124 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:37:14 JKRmBgjk 123/156

男・幼「…」

「ぷっ…そう言えばお腹空いたな?」

「お、お恥ずかしい限りです…」

「お昼沢山食べるつもりで、朝も軽くしか食べてないので…」

「私の腹の虫は空気読めないですね…」

「幼、お弁当は?」

「一応、備え付けの冷蔵庫に入れてあります」

125 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:37:58 JKRmBgjk 124/156

「サンドイッチなので、食べられると思います」

「それじゃ、もう夕食の時間だけど、食べようか」

「はいっ」

「…そう言うのはさ、幼」

「はい?」

「ゆっくりで良いよ、ゆっくりで」

「長い人生だ、まだまだ時間は沢山ある」

「な?」

「…はい、男」

126 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:39:03 JKRmBgjk 125/156




「もうすっかり夏ですね」

「そうだなぁ、もう7月だもんなぁ」

「セミの鳴き声も五月蝿いなぁ」

「ふふっ、そこは風情じゃないですか?」

「聞きたくても、冬には聞けない物ですよ?」

「それはそうだけどさ」

127 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:40:01 JKRmBgjk 126/156

「あ、そう言えば、男に聞きたい事が」

「何?」

「なんで作業療法士になりたいんですか?」

「また突然だな」

「理由聞いた事無いなと思って」

「あー…高校進学決める時にさ」

「家族で会議したじゃん」

「しましたね」

128 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:40:48 JKRmBgjk 127/156

「自動車整備士になろうとしてた俺を」

「父ちゃんが止めたじゃん」

「断固拒否って言ってましたね」

「父ちゃんの跡継いで、島の皆の役に立ちたかったんだよ」

「俺の跡継ぎになるとか考えるな!って言ってましたね」

「それでもやっぱり島の人の為になる仕事がしたいと思ってさ」

129 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:41:41 JKRmBgjk 128/156

「色々考えたんだけど、地域医療に興味があるって言うか」

「地域医療ですか」

「島のじいちゃん、ばあちゃん達さ」

「脚が痛いとか、腰が痛いとか言ってたじゃん」

「言ってましたね」

130 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:42:19 JKRmBgjk 129/156

「そう言う人達の役に立ちたいんだよ」

「なるほど…」

「作業療法士として、経験を積んだら」

「大学院で整形の勉強して、もっとみんなの役に立てる様にしたい…なぁ、と思ってるんだ」

「やっぱり男は凄いですね」

「…だからさ、幼」

「ふふふ、言わなくても解ってますよ、男」

131 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:43:22 JKRmBgjk 130/156

「私の気持ちは揺るぎません!」

「男が求婚してくれるまで、ずっと待ってます!」

「あ、待ってるって言っても、もちろん」

「男の傍で…ですけどね!」

「高校卒業したら、すぐ結婚!って言うかと思ったけど」

「お互い、成長したよな」

「本当はそれが一番良いんですけどね!」

132 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:44:10 JKRmBgjk 131/156

「…でも、恋人とか夫婦とか、そんな肩書きじゃなくて」

「大好きな人と一緒に居られれば、それで…」

「それで満足です」

「…俺、幼の事好きで良かった」

「へっ?な、なんですか突然」

「幼の気持ちに、必ず応えるから」

「そ、そんな事、不意に言わないで下さいっ」

133 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:45:39 JKRmBgjk 132/156

「嬉しくって、舞い上がってしまいますっ」
タタッ

「おい、走ると危ないぞ?」

「子供じゃありませんから、大丈夫で…きゃあっ!」
ドタッ

「幼っ、大丈夫か?」

「いたた…、だ、大丈夫です」
スッ

134 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:46:11 JKRmBgjk 133/156

「あー、カバンの中身ぶちまけちゃって…」
ヒョイヒョイ

「すみません、調子に乗りすぎました…」

「ん?何だこの写真」
ピラッ

「あっ!それは!駄目です!」
バシッ!

「…見ました?」

「うん、まぁ、見た」

135 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:47:09 JKRmBgjk 134/156

「あれか、俺達が初めて会った日の…」

「そ、そうです…これ、私のお守りなので…」

「そっか、そんな写真持ってたのか」

「いつもカバンに入れて歩いてるんですよ?」

「辛い事があった時、そっと見て、勇気を分けてもらうんです」

「俺も…」

「え?」

136 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:48:07 JKRmBgjk 135/156

「俺も欲しい!幼の写真!」

「ふふふっ…良いですよ、男にならどんな写真を撮られても…」

「ち、違う!…あ、それはそれで欲しいけど!」

「?」

「お人形さんみたな幼の小1の頃の写真、俺も欲しい!」

「父ちゃんに言って、一枚焼いてもらおう」

「は、恥ずかしいからやめて下さいっ!」

137 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:48:58 JKRmBgjk 136/156

「良いだろ?幼は持ってるんだから!」

「駄目です!」

「えー…」

「それじゃ…今の2人の写真を撮りましょう」

「ツーショットです。そっちの方が良いですよね?」

「ん…んー?そうか?」

「良く考えたら、2人っきりで写真を撮った事も無いじゃないですか」

「そう言えばそうだな」

138 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:49:36 JKRmBgjk 137/156

「…携帯で今すぐ撮りましょう!」

「そして、速やかに待受画面に設定して下さい」

「?」

「魔除けみたいな物です!」

「魔除け?」

「他の女子と浮気しないように!」

「余計な心配だけど、待受に設定するのは良いな」

139 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:51:09 JKRmBgjk 138/156

「それじゃ撮るか!」

「ちょっと待って下さい、今、身だしなみを…」

「良いから良いから!」
ギュッ

「わわっ」

「撮るぞー」

「…えいっ!」

ちゅっ
カシャッ

140 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:52:02 JKRmBgjk 139/156

「なっ!?今のは駄目だろ!」

「急に撮っちゃった仕返しです!」

「えー?普段の幼の顔が良いよ、ありのままの幼の顔が」

「…もう!もうっ!」
バシッ

「ちょ!痛いし!何だよ?」

「あんまり恥ずかしい事言わないで下さい!」

141 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:52:34 JKRmBgjk 140/156

「…男、携帯貸して下さい」

「ん?どうぞ」

ピッピッピ
「っと、これで待受設定完了です!」

「ありがと、幼」

「良く撮れてるな、ちょっと恥ずかしいけど」

142 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:53:50 JKRmBgjk 141/156

「…この待受を変える時は」

「へ?」

「私のウェディングドレス姿の写真にして下さいねっ!男!」



「…なぁ、あれどう思う?」

幼友「往来でよくやるなぁって思う」

「だよなぁ…」

「幼ちゃん、記念撮影って言ったら、私ともキスしてくれるかな?」

友・幼友「や、それは無理でしょ!」



おわり
ちょっとおまけあり

143 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:54:26 JKRmBgjk 142/156

『初めて会った日』

「えっ?今日?今日くるの?」

男父「そうだ、今日来るぞ」

「なんじにくるの?」

男父「3時のフェリーだから…そろそろ迎えに行ってくるかな」

「もう!そんなことはさきにいってよ!」
バシッ

男父「ははは、驚かそうと思ってな!」

144 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:55:32 JKRmBgjk 143/156

「…メッチャおどろいたよ」

男父「ドッキリ大成功、イェーイ!」

「はぁ…」

男父「それじゃ、行くかな」

男父「お前も一緒に迎えに行くか?」

「ぼくはいいよ、ウチでまってるから…」

男父「何だ?照れてんのか?」

145 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:56:56 JKRmBgjk 144/156

「あたりまえでしょ!」
バシッ

男父「ははは、そんじゃ、大人しく待ってろよ」

「うん…」

(どんなひとたちなんだろう)

(幼母さんと幼ちゃん…)

(あたらしいお母さんと、妹かぁ…)

(なかよくできたらいいなぁ)

146 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:57:41 JKRmBgjk 145/156



幼母「ほら、幼ちゃん、もうすぐ港に着くわよ」

「…うん」

幼母「…まだ怖い?」

「あたらしいおとうさんとおにいちゃん…」

「幼のこと、ぶったりしない?」

幼母「大丈夫、2人とも優しいから」

幼母「絶対に幼ちゃんをぶったりしないから」

「…」

(どんなひとたちなんだろう)

(やっぱりちょっとこわい…)

(…)

147 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:58:25 JKRmBgjk 146/156



男父「おーい!こっちだこっちー!」
ブンブン

幼母「はーい!ほら、幼ちゃん」

「…うん」

男父「ようこそ!待ってたよ、2人とも!」

幼母「あー、本当に良い景色ね!」

男父「そうだろ。ま、それしか無いんだけどな!はははっ」

148 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 07:59:38 JKRmBgjk 147/156

「…」

男父「ん?幼ちゃん!船酔いかな?」

「…んん」

男父「そっか、おっさんが怖いのかな?」

「ちょっとだけ、おかおがこわい…」

男父「大丈夫大丈夫。おっさんは怖くないぞー?」

男父「今日から幼ちゃんの父ちゃんになるんだぞ?」

「…は、はい」

149 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 08:00:26 JKRmBgjk 148/156

男父「大丈夫!おっさんは声はデカいし、顔もちょっとだけ怖いけど」

男父「本当はとってもこわがりなんだぜ?」

「…そうなの?」

男父「幼ちゃんに嫌われたら、おっさんだけど泣くかもよ?」

幼母「ほら、幼ちゃん。お父さん泣かしちゃったら大変よ?」

「うん…おじさ…お、おとうさん…なかないで?」

男父「幼ちゃんに言われたら、お父さんもう泣けないなぁ」

男父「今日から宜しくね、幼ちゃん」

「…うん!」

150 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 08:01:10 JKRmBgjk 149/156

男父「それじゃ、2人とも、車に乗って乗って」

男父「家でお兄ちゃんが待ってるぞ?」

「…おにいちゃんもこわくない?」

男父「あぁ、全然怖くないぞー」

男父「優しいから大丈夫だー」

男父「あ!もしいじめられたら、お父さんに言いな?」

男父「でも、男は絶対いじめなんかしないと思うけどなー」

「なんで?」

男父「だってこんなに可愛い妹が出来たんだからな!はははっ」

「…」

151 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 08:01:41 JKRmBgjk 150/156



ピンポーン

「!」

男父「男ー、帰ったぞー!」

「い、今いくー!」

(ついにきた!)

(きんちょうする!)
ドタドタ

152 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 08:02:12 JKRmBgjk 151/156

「あのっ」

男父「ほら、男、ちゃんと挨拶しろよ」

「男です。こんにちは」
ペコッ

幼母「よろしくね、男ちゃん」

「は、はい」

(この人が、ぼくのお母さんになるひと…)

(そして…)

153 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 08:02:48 JKRmBgjk 152/156

幼母「ほら、幼ちゃんも、ちゃんと挨拶しなさい」

幼母「男君があなたのお兄ちゃんになるのよ?」

(このこが、ぼくの妹になる…)

(幼ちゃん…)

(すっげーかわいい!)

「…」

154 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 08:03:24 JKRmBgjk 153/156

(このひとが、わたしのおにいちゃん…)

(おとうさんはこわいかおしてるけど…)

(おにいちゃんは…)

(やさしそう…)

幼母「ほら、幼ちゃん?」

「…」
プイッ

「!」

155 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 08:05:35 JKRmBgjk 154/156

幼母「もう、この子ったら…照れちゃって」

「てれてないし!」

幼母「ほら、2人共、握手握手!」

「あ、あくしゅ?」

幼母「仲良くしましょうっていう握手、出来るでしょ?」

「幼と、なかよく…してくれる?」

「もちろんっ!」

156 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 08:06:06 JKRmBgjk 155/156

男父「お、シャッターチャンスな?」

男父「デジカメ、デジカメ…」
ピッ

男父「はい、2人とも!良い笑顔でー、握手っ!」

「よろしくね、幼ちゃん」
ぎゅっ

「うん…よろしく…おねがいします」
ぎゅっ



「…おにいちゃん」
ボソッ



パシャッ



おわり

157 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/05/12 08:07:05 JKRmBgjk 156/156

これでおわりです
このSSは
義妹「私は幼馴染と言う事に?」 男「何言ってんの?」

幼馴染「さ、学校に行きましょう!」 男「おう」
の続きでした

途中レスくれた方、ありがとうございました!
最後まで読んでくれたら嬉しいです

次スレは
幼馴染「ミッション・ポッシブル!」 幼友「ちょっと違くない?」
ってタイトルで立てると思います
では。

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