1 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:01:47 6V6RHUzI 1/156

幼稚園

「今日も交換ごっこしよ!」

「それじゃ、これ幼ちゃんにあげる!」

「ありがとう!それじゃあこれはおかえしです!」

「ありがとう!幼ちゃん!」

「かいぐいしてるのバレたら怒られるから…」

「うん。あそこの公園でたべてかえろう!」

元スレ
幼馴染「バレンタインのお返しに」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1365235307/

2 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:02:27 6V6RHUzI 2/156

ペリペリ
「ぼく、チロルチョコだーいすき」
パクッ

ペリペリ
「わたし、すももキャンディーだーいすき!」
パクッ

男・幼「えへへー」

「おいしいね!」

「うん!」

3 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:03:14 6V6RHUzI 3/156

「男くんはチロルチョコとわたし、どっちがすき?」

「もちろん幼ちゃんの方がすきだよ!だいすきだもん!」

「えへへー。私も、すももより男くんの方がだいすき!」

「ずーっといっしょにいたいね」

「そうだね!ずっといっしょにいたいね!」

「わたしを男くんのおよめさんにしてくれる?」

「うん!ぼくのおよめさんになってください!」

男・幼「えへへー」

4 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:03:53 6V6RHUzI 4/156



「あ、男くん」

「幼ちゃん、こっちにボールがこなかった?」

「ううん、きてないよ…って」

「また男子Aに無理やり野球やらされてるの?」

「う、うん…」

「また私が言ってあげる!行こう!」

5 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:04:44 6V6RHUzI 5/156

「男子A!男君は野球が苦手なんだから!」

男子A「うっせー。オンナが口出しするなー」

男子A「ブーちゃん!また幼の後ろにかくれるのかよ!」

「う…」

男子A「お前デブだし、野球もできないし」

男子A「幼にかくれてばっかりでチョーカッコ悪い!」

「男君はカッコ悪くない!」

6 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:05:32 6V6RHUzI 6/156

男子A「カッコ悪いだろっ!」

「弱いものイジメする方がカッコ悪い!」

男子A「幼もブーちゃんのこと、弱虫って思ってるんだろ!」

男子A「それを俺たちがきたえてるんだ!」

男子A「だからジャマすんな!」

「ちがう!」

「男くんは弱虫じゃない!優しいんだっ!」

「あ、あの…ふたりとも、ケンカしないで…」

7 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:06:16 6V6RHUzI 7/156

男子A「ブーちゃんはだまってろよ」

「男くん、ちょっと待っててね」

「今、あいつやっつけるから!」

ポカッ

男子A「やったなこいつ!」

ドカッ

「いたっ!」

8 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:07:23 6V6RHUzI 8/156

「お、幼ちゃん、大丈夫?」

「わたしはっ…大丈夫だから!」

「も、もうケンカはやめてよ…」

「ぼく、幼ちゃんがケガしたらイヤだよ!」

「男くん…」

先生「こらっ!またあなた達!?何してるの!」

男子A「幼が先に手だしたんだ!」

「でも男子Aが先に男くんをいじめてたんです!」

9 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:08:03 6V6RHUzI 9/156

先生「喧嘩は駄目!どっちも悪い!」
ポカッ ポカッ

男子A・幼「いたっ!」

「せんせい!2人はわるくないんです!」

「ぼ、ぼくがダメだから…」

「だから2人をしからないでください…」

先生「…それじゃ、男君も」
コツン

「うっ…」

10 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:08:58 6V6RHUzI 10/156

先生「喧嘩した人は皆、悪い!」

先生「だから、喧嘩はしないように!」

先生「わかりましたか?」

園児達「はーい」

(ぼくがしっかりしてないから、幼ちゃんが…)

(しっかりしなきゃ…)

11 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:09:50 6V6RHUzI 11/156

幼稚園の卒園式

「わたし、男くんのこと、ほんとにとってもだいすき!」

「うん!ぼくも幼ちゃんのこと、だーいすき!」

「わたし、ぜったい男くんのおよめさんになる!」

「うん!やくそくね!」

「小学校にいっても、ずーっとなかよしでいてね?」

「もちろん!」

12 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:10:27 6V6RHUzI 12/156

小学1年生

「おんなじ組じゃなかったね…」

「うん…でも、しかたないよ」

「だけどずっとなかよしのともだちだからね?」

「もちろんだよ!」

「それじゃ、今日いっしょにかえろうね!」

「うん!またあとでね!」

「うん!」

13 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:11:14 6V6RHUzI 13/156



「お、男と言います!みなさんなかよくしてくださいっ!」

担任「はい、男君、元気な挨拶ありがとうね」

男子A「デブだから、あだ名はブーちゃんでーす」

アハハハ

「う…」

担任「こらっ!男子A君!意地悪な事、言わないの!」

男子A「ほんとーのことだし!なー?ブーちゃん?」

「ぅ、うん…」

14 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:11:53 6V6RHUzI 14/156



放課後

「おーい、男くー…」

女子A「ねぇねぇ、幼ちゃんっ」

「…ん?な、なぁに?」

女子A「これからみんなで遊ぼうよー」

「え…あの…」

女子B「運動場で鬼ごっこやろーよ」

「う、うん…」

15 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:12:45 6V6RHUzI 15/156

「あ…幼ちゃん…」

「…」ショボン

男子A「なーなー、ブーちゃん」

「な、何?」

男子A「運動場で野球やろうぜー」

「え、ぼく、野球は…」

男子A「いいから行こうぜー」
グイッ
男子A「いつもジャマしてた幼のやつもいねーし」

「う…うん…」

16 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:13:26 6V6RHUzI 16/156



男子A「行くぞー、男子B!」

男子B「こい!ホームランにしてやる!」

男子A「おりゃー!」
ブンッ

ガスッ
「いたっ!」

男子A「ちゃんと取れよ、ブーちゃん!」

「ご、ごめん…」

男子A「早くボール取ってこいよー」

「う、うん…」

17 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:14:14 6V6RHUzI 17/156

「ボール、ないなぁ」
ガサガサ


「つかまらないよっ!」
タタタッ

女子A「幼ちゃん、ちょーはやいー!」

女子B「ぜ、ぜんぜん…おいつけない…」


「幼ちゃん…みんなと楽しそうに遊んでる…」

「ぼく、幼ちゃんと遊びたいのに…」

「…」ショボン

18 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:15:33 6V6RHUzI 18/156

オーイ、ハヤクボールトッテコーイ

「あ、早く探してもっていかないと…」

(幼ちゃん、女の子たちと楽しそうに遊んでるし…)

(ジャマしたらダメだ…)

(ぼく、幼ちゃんがだいすきだから…迷惑かけたくない)

(自分でなんとかしないと…)

19 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:16:03 6V6RHUzI 19/156

男子A「ブーちゃんはダメだなー」

男子B「デブだからダメだなー」

「ご、ごめん…おそくなっちゃって…」

男子A「きょうは5時までとっくんだな!」

男子B「オレたちがボールのとりかたおしえてやるよ!」

「あ、あの、ぼくは…」

男子A「にがさねーぞ」

(幼ちゃんと、いっしょにかえるやくそくが…)

20 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:16:53 6V6RHUzI 20/156

女子A「はー。やっぱり幼ちゃん足はやいー」

女子B「ぜんぜんおいつけないよー」

「ね、ねえ、今日はそろそろ帰ろう?」

女子C「ねーねー!帰りにみんなでコンビニ行こうよー」

女子B「おー!いいねー!」

「あの…わたしは…ちょっと…」

女子A「いいじゃん!みんなでいったら楽しいよ!」

(男くんと、いっしょにかえるやくそくが…)

21 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:17:35 6V6RHUzI 21/156




3ヶ月後

男子A「ブーちゃん、やっぱりお前はちゃんとボール取れないなー」

「や、やっぱりぼくには、キャッチャーは向いてないよ…」

男子A「デブはみんなキャッチャーって決まってるんだよ!」

男子B「そうだぞ、ブーちゃん」

「う、うん…」

男子A「それじゃ今日も特訓なー」

「…う、うん」

22 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:18:47 6V6RHUzI 22/156

(さいきん、ぜんぜん幼ちゃんと遊んでない…)

(幼ちゃんは1組の女の子たちと楽しそうに遊んでるし…)

(ぼくは毎日、野球の特訓だし…)

(さびしいけど、幼ちゃんに心配かけないように…)

(がんばらなくっちゃ…)

23 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:19:31 6V6RHUzI 23/156



女子A「今日はわたしの家であそぼー」

女子B「いいねー!」

「う、うん」

女子A「みんなでお菓子食べながら、ゲームしようよー」

女子B「じゃ、またコンビニに寄ってからかえろー」

「…」

24 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:20:13 6V6RHUzI 24/156

(…さいきん、ぜんぜん男くんと遊べてない)

(学校の帰りも別々だし…)

(男くん、わたしのこと、きらいになったのかな…)

(私も同じ組の子たちと一緒に遊ぶことが多くなったし…)

(…)

25 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:21:05 6V6RHUzI 25/156



小学3年生

(また男くんと別の組だ…)

(…もう全然お話しもしてない)

(男君…)


(また幼ちゃんと別々の組だ…)

(幼ちゃん、いつも女の子達と楽しそうに遊んでるし…)

(もう、僕とは友達じゃないのかな…)

26 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:22:20 6V6RHUzI 26/156



男子C「なぁなぁ」

男子C「何でお前ら、男の事をブーちゃんって呼ぶんだ?」

男子A「それはあいつがブタみたいだからだぜ」

男子C「ブタ?」

男子B「前はブクブク太ったデブだったんだぜ」

男子C「へぇ、でも今は別にデブじゃないじゃん」

男子C「ちょっと身体は大きいけどな」

男子A「でも今さらあだ名は変えられねーよ」

男子B「だよなー!あいつはブーちゃんのままだ!」

27 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:23:30 6V6RHUzI 27/156



男子A「おら、ブーちゃん、俺たちのカバン持てよ」

「お、重い…」

男子A「これは修行なんだからなー」

男子B「そうだぞー。デブじゃなくするための修行だー」

男子A「しっかり持てよー」

「う、うん…」


(うぅ…重くてキツい…)

(僕がデブだからこんなにキツいんだ)

(それにきっとデブだから幼ちゃんも…)

(僕、やせなきゃ…)

28 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:24:16 6V6RHUzI 28/156



「お母さん、僕、やせたいんだけど」

「どうしたらやせられる?」

男の母「うーん。男ちゃん、そんなに気にしなくても…」

「でも僕、やせたいんだ」

「それにもう、運動オンチって言われるの、イヤなんだ…」

男母(…特別太ってる訳じゃないのに)

男母(これは…どうすれば良いのかしら)

29 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:24:59 6V6RHUzI 29/156

「か、空手の道場とかに行きたいんだけど!」

男母「うーん…お母さんは反対です」

「な、なんで?お母さんは僕がずっとデブのままでもいいの?」

男母「男ちゃんは全然太ってないわよ」

「でも僕、学校で、デブデブって…」

男母「それじゃ、毎朝ご近所をウォーキングとかどうかしら?」

「ウォーキング?」

30 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:25:35 6V6RHUzI 30/156

男母「男ちゃんは優しいから、空手は向いてないと思うの」

男母「男ちゃんは誰かを叩いたり出来ないでしょ?」

「う…うん…無理かも…」

男母「だから、痩せたいのならね」

男母「毎朝ちょっぴり早起きして、歩くだけで良いと思う」

男母「お母さんも付き合うし、食事にも気をつけるから」

男母「しばらくはそれで、ね?」

「う、うん…それで…頑張ってみるよ!」

31 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:26:11 6V6RHUzI 31/156



半年後

「お母さん、早く早く!」

男母「はあっ…はあっ…ちょっと待って、男ちゃん」

男母「これはもう…ウォーキングじゃなくて…」

男母「ランニング…」

「僕、先に行くよー」
タッタッタッ

男母「あの子ったら、す…すっかり健康的になっちゃって」

32 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:26:50 6V6RHUzI 32/156

男母「ハァッ…ハァッ…」

「お母さん、おそいー」

男母「男ちゃんが早くなったのよ」

男母(とは言え、この歳で息子に負けるなんて…)

「ねぇ、お母さん、もっとやせるにはどうしたらいい?」

「もっといっぱい走ればやせる?」

男母「もう男ちゃんは充分痩せているでしょ?」

「でも、僕もっともっとやせたいんだよー」

男母(…どうしましょ)

33 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:27:46 6V6RHUzI 33/156



近所のおばちゃん「なるほどねぇ」

男母「どうしたら良いと思う?」

おばちゃん「小3で過度なダイエットなんて危険よ」

男母「私もそう思うんだけど…」

男母「どうやら学校で太ってるとか」

男母「運動音痴って言われてるらしくて」

男母「確かに幼稚園の頃はぽっちゃりしてたけど」

男母「今は体重的には普通なはずなんだけどね」

おばちゃん「そうよね。むしろ痩せて見えるわよ」

34 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:28:36 6V6RHUzI 34/156

おばちゃん「んー…小3だとちょっと早いかもしれないけど」

おばちゃん「ウチのバレークラブに参加させてみる?」

男母「バレークラブ?」

おばちゃん「私が監督だから無理はさせないし」

おばちゃん「スポーツすれば、健康的に痩せられるって説明すれば…」

男母「そうして貰えると助かるわ」

おばちゃん「それじゃ、男君の意思確認しておいて」

男母「今夜、聞いてみるわ」

35 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:29:37 6V6RHUzI 35/156



男母「と言う訳なんだけど…どう?」

「バレーボール…」

「僕、デブだし、運動神経にぶいけど、できるかな?」

「僕のせいで試合に負けたら…」

男母「大丈夫。皆が健康になる為にやる事だから」

男母「勝ち負けで怒られたりはしないわよ」

「じゃ、じゃあ僕、やってみようかな…」

男母「うん!頑張ってみなさい!」




(やせて、バレーも出来るようになったら…)

(幼ちゃんもまた僕と話してくれるかも…)

(…頑張って、カッコ良くなりたい!)

36 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:30:30 6V6RHUzI 36/156



おばちゃん「今日からみんなと練習する事になった男君です」

おばちゃん「はい、挨拶して」

「男と言います!よ、よろしくお願いしますっ!」

バレークラブの皆「よろしくー!」

キャプテン「宜しく、男君!」

「は、はい!えっと…頑張ります!」

キャプテン「このバレークラブは4年生から6年生で」

キャプテン「全員男君より年上だから」

キャプテン「皆にはさん付けな?」

「はい!」

37 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:31:15 6V6RHUzI 37/156



3ヶ月後

おばちゃん(思ってた以上に動けるわね…)

おばちゃん(小3だから身長は全然足りないけど)

おばちゃん(ボールにはちゃんと付いて行けてる)

おばちゃん(これで運動音痴なんてとんでもない)

おばちゃん(これは…)

38 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:31:52 6V6RHUzI 38/156

おばちゃん「どう?男君、バレーは楽しい?」

「はい、監督!楽しいです!」

おばちゃん「そう。良かった」

「身体動かすの、とっても楽しいです!」

おばちゃん「その調子で続けてれば、試合にも出られるわよ」

「えっ?し、試合は…僕には無理です…」

39 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:32:36 6V6RHUzI 39/156

おばちゃん「男君、もっと自分に自信を持って!」

おばちゃん「おばちゃんが保証する!」

おばちゃん「男君は出来る子だよ!」

「は、はい…頑張ります!」


(身体動かすの楽しい!)

(クラブの皆も優しいし…)

(バレー始めて良かった!)

40 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:33:18 6V6RHUzI 40/156



男子A「なぁブーちゃん」

「何?男子A君」

男子A「お前最近…なんか…」

「ん?」

男子A「いや、やっぱなんでもねーよ」

男子B「おーい!2人とも、野球やろうぜー」

男子A「おー!俺の魔球を見せてやるぜー」

41 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:33:52 6V6RHUzI 41/156

男子A「行くぞ、ブーちゃん!」

「あの…僕はバレーの練習があるから」

男子A「…なら仕方ねーな」

男子A「じゃーな、ブーちゃん」

「うん、また明日ね」

男子A「…」

43 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:34:32 6V6RHUzI 42/156

(男君、バレークラブに入ってから)

(毎日放課後は体育館だ…)

(話しも全然できない…)

(…もう、私の事も忘れちゃってるんだ)

(…きっとしかたない事なんだ)

(………)ショボン

女子A「幼ちゃん、今日も帰りにコンビニ行こー」

「う、うん」

44 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:36:01 6V6RHUzI 43/156



小学4年生

(あっ!やったっ!男君と同じ組だっ!)

(また、幼稚園の時みたいに一緒に遊べるかな…)

(おしゃべり出来るかな…)

(…楽しみだなっ)

(また幼稚園の時みたいに…)


「あ、あの…男君っ」

「あ、幼さん。1年間よろしくね!」

(幼…さん…)

「う、うん。よろしく…ね」

(…)

45 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:36:53 6V6RHUzI 44/156



7月中旬
(もうすぐ夏休み…)

(ほとんど会話もしてないけど)

(夏休みなら、一緒に遊べるかも!)


男子A「ブーちゃん、夏休み俺らと旅行行こうぜ」

男子B「ウチのばあちゃんの家に皆で行くんだ」

男子A「家の裏がすぐ海らしいぜ!」

「あ、僕、夏休みはバレー部の練習と合宿があるから…」

46 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:37:51 6V6RHUzI 45/156

男子A「何だよ、全然休み無いのかよー」

「ごめんね、男子A君、男子B君」

男子A「まぁ、お前バレー頑張ってるし仕方ねーな」

男子B「練習頑張れよ、ブーちゃん」

「うん。頑張るよ!」


(男君…バレー、頑張ってるんだ)

(私が声かける間も無いや…)

(…私、ホントにダメだ)

47 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:38:29 6V6RHUzI 46/156

夏休み中頃

幼母「それじゃ、そろそろ出発するわよ」

「はーい」

幼母「幼ちゃん、玄関の鍵よろしく」

「はいはい」
ガチャガチャカチッ

幼母「今年もおばあちゃん、幼ちゃんが来るの楽しみにしてるって」

「私もおばあちゃんと会うの楽しみ!」

48 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:39:41 6V6RHUzI 47/156

幼母「それじゃ、駐車場から車出して来るから、ちょっと待っててね」

「うん」


「あ!男君!」

「あれ?幼さん、こんにちは!…お出掛け?」

「う、うん。おばあちゃんの家に…」

「そっか。気をつけて行ってらっしゃい!」

49 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:42:21 6V6RHUzI 48/156

「お、男君は?」

「今、合宿の帰りなんだ」

「そ、そうなんだ?」

「それで明日から一週間、バレーの練習お休みなんだ」

「!」

「でも、一週間休んだら、××小学校のバレークラブと」

「また一週間の合同合宿があるんだけどね」

「そ、そうなんだ…」

50 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:42:53 6V6RHUzI 49/156

「だからこの一週間の休みで、頑張って宿題を終わらせようと思ってるんだ」

「幼さんは宿題終わった?」

「は、半分くらい。残りはおばあちゃんの家でやろうと思って」

「そっか、お互い頑張ろうね」

幼母「幼ちゃん、行くわよー」

「あ、それじゃあね、幼さん」

「うん、またね、男君」

51 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:44:11 6V6RHUzI 50/156

幼母「なぁに?幼ちゃん」

「え?な、なに?」

幼母「ニヤけちゃって…そんなにおばあちゃんの家に行くのが楽しみなの?」

「う、うん。すっごく楽しみだよ!」


(男君と久しぶりにお話し出来た…)

(何か、嬉しいなー)

(でも一週間しかお休みないんじゃ…)

(丁度私がおばあちゃんの家から戻ってくる頃に)

(男君はまたバレーか…)

(全然上手く行かないなぁ…)ショボン

52 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:44:47 6V6RHUzI 51/156



数ヶ月後

(…せっかく一緒のクラスになれたのに)

(夏休みにした会話が一番長い会話だった…)

(全然お話し出来ない…)

(バレー頑張ってるから、声かけにくいし…)

(もう…仲良く出来ないのかな…)

53 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:45:23 6V6RHUzI 52/156




2月12日

「…はぁ」

「もう4年生も終わっちゃう…」

「結局ほとんど話しも出来ないし…」

「…はぁ」
トボトボ

54 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:49:59 6V6RHUzI 53/156

「あ、駄菓子屋…」

「幼稚園の頃は男君と一緒によく来たなぁ…」

「最近はコンビニでも駄菓子はあるもんね」

「久しぶりに入ってみよ」
ガラガラ

「こんにちはー」

駄菓子屋のおばあちゃん「あら幼ちゃん、いらっしゃい」

55 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:50:49 6V6RHUzI 54/156

おばあちゃん「久しぶりだねぇ」

「おばあちゃん、久しぶりー」

おばあちゃん「随分大きくなって…今何年生?」

「今、4年生です」

「4年生かい。お姉ちゃんになったわねぇ」

おばあちゃん「今日は男ちゃんは一緒じゃないの?」

「えっ?あ、あの…」

56 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:52:03 6V6RHUzI 55/156

おばあちゃん「幼稚園の頃はいつも一緒に来てたじゃない」

おばあちゃん「喧嘩でもしちゃった?」

「いやっ…その…ケンカした訳じゃないんだけど…」

「小学校に上がってから、一緒に遊ばなくなって…」

おばあちゃん「また仲良く遊べるようになるさー」

「ホントに?ホントにそうかな?」

おばあちゃん「2人がいつもニコニコ仲良しだった事」

おばあちゃん「おばあちゃんはちゃんと覚えてるからね」

57 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:52:44 6V6RHUzI 56/156

おばあちゃん「だから絶対大丈夫!ね?」

「おばあちゃん、ありがとう!」

おばあちゃん「それじゃ、2人がまた仲良くニコニコ出来るように…」
ガサガサ

おばあちゃん「これをあげよう」
サッ

58 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:53:26 6V6RHUzI 57/156

「これ…」

おばあちゃん「明後日はバレンタインデーでしょ?」

「バレンタイン…」

おばあちゃん「ウチには高級なチョコは無いけど」

おばあちゃん「これ、男ちゃんが好きだった味だから」

おばあちゃん「男ちゃんも喜んでくれると思うわ」

おばあちゃん「ね?」

59 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:55:23 6V6RHUzI 58/156

「うん!ありがとう、おばあちゃん!」

「私、頑張ってみる!また男君と仲良くしたいから…」

おばあちゃん「幼ちゃん、またおいでね」

おばあちゃん「今度は男ちゃんと2人で、ね?」

「うん!」

60 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:56:25 6V6RHUzI 59/156



「おばあちゃんから、10個ももらっちゃったけど…」

「たくさんだと、男くんも気を使っちゃうかもだし」

「…3個くらいを可愛い袋に入れてあげようっと」
ガサガサ
ギュッ

「これで良しっと」

「明後日…ちゃんと渡せるかなぁ…」

「また、仲良く遊べるかなぁ…」

「男君…」

61 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:56:58 6V6RHUzI 60/156



次の日

女子A「えー?男の子にチョコあげるの?」

女子A「面倒だし、あげないでいいでしょー」

女子C「そ、そうだよね。面倒だよね」

「そうかな?面倒かな?」

女子A「え?幼ちゃん、もしかしてチョコ用意してるの?」

「え?ううん。ぜ、全然用意とかはしてないよ…」

63 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:58:18 6V6RHUzI 61/156

女子A「だよねー」

女子A「義理チョコの為に自分のおこづかい使いたくないしー」

女子B「そ、そうだよね。義理チョコとか意味わかんないよねー」

女子A「帰りに自分達が食べる用のお菓子買って帰ろう」

女子C「そ、そうだね…」

「うん…」

(…どうしよう)

64 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 17:59:08 6V6RHUzI 62/156

2月14日

男子A「おはよー、男子B」

男子B「オッス」

男子A「あれ?ブーちゃんまだ来てないのかー」

男子B「バレーの朝練みたいだぜ」

男子A「あいつ、バレーやり始めて変わったよなー」

男子B「だよなー」

65 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:00:11 6V6RHUzI 63/156

女子C「あの…おはよう、男子A君」

男子A「おはよう…ん?なんか用か?」

女子C「えっと…これ…バレンタインのチョコなんだけど…」

女子C「う、受け取ってくれる?」

男子A「お、俺にかよ?いいのかよ?」

男子B「マジかー」

女子A「ちょっと!アンタ!チョコあげないって言ってたのに!」

66 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:01:12 6V6RHUzI 64/156

女子C「ゴメン、女子Aちゃん…これ義理チョコじゃないから…」

女子B「なら…あの…男子B君…これ私から…チョコ」

男子B「マジかー?ありがとー!」

女子A「女子B!アンタまで…裏切り者ー!」

女子A「お、幼ちゃんは何も準備してないんだよね?」

「う…うん…」

(男君にあげたいけど…)

(…)

67 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:01:43 6V6RHUzI 65/156



放課後

男子A「ブーちゃん、俺らの分もトイレ掃除よろしくなー」

男子B「俺ら野球の練習あるから、頼むなー」

「う、うん…」

(早く掃除終わらせて、バレーの練習に行かなきゃ…)

68 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:02:28 6V6RHUzI 66/156

30分後

「はぁ…やっと終わった…」

「早く荷物取って、体育館に行かなきゃ…」
ガラッ

「あっ!」

「ひゃっ!?」

「あれっ?幼さん…今日って日直だっけ?」

「ち、違うけど…」

69 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:03:08 6V6RHUzI 67/156

(みんなが帰るの待ってたら、こんな時間になっちゃった)

(男君のカバンにチョコ入れようとしたら急に入ってきたから)

(ビックリして変な声出しちゃった…)

「もう誰も残ってないと思ってたからビックリしたよ」

「わ、私もビックリしたけどね」

70 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:04:02 6V6RHUzI 68/156

「っと…僕、もう行かなきゃ」

「もう幼さん以外は帰っちゃってるよね?」

「うん、ついさっきみんな帰ったよ」

「幼さんも出るなら、教室の鍵かけちゃうけど…」

「う、うん…私ももう帰る所だったから」

「それじゃ、戸締り確認するね」

「う、うん…」

(今だ!今、渡さなきゃ…)

(でも、何て言って渡せば…)

71 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:05:15 6V6RHUzI 69/156

「窓、全部締まってる」

「幼さん、忘れ物無い?」

「う、うん、大丈夫」

「それじゃ、鍵かけるよー」
ガチャガチャ

「これで戸締りオッケー」

「…鍵、私が職員室に持っていくよ」

「ホント?ありがとう」

「それじゃお願いします」
チャリッ

72 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:05:57 6V6RHUzI 70/156

「…これから体育館?」

「うん!バレーの練習なんだー」

「ふーん」

(…知ってるけど)

「それじゃ、鍵、お願いね」

「また明日」

「お、男君!ちょっと!」

「うん?なぁに?」

73 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:06:33 6V6RHUzI 71/156

「男君は今日、誰かからチョコ貰ったの?」

「チョコ?」

「今日はバレンタインデーでしょ?」

「あー…いやー、誰からも貰ってないよー」

「そ、そう言えば、男子A君たちは貰ってたみたいよ」

「そうなんだー。良いなー」

「僕、チョコレート好きなんだけどなー」

(知ってるし)

74 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:07:33 6V6RHUzI 72/156

「僕だけもらえないや、えへへ」

「そっか。そ、それじゃ、これあげる」
サッ

「え?これって…」

「一個も貰えないと可哀想かなって」

「ありがとう!幼さん!」

「べ、別にお礼とか、良いから」

「中身、チロルチョコ3個だし」

75 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:08:23 6V6RHUzI 73/156

「それでも嬉しいよ、ホントにありがとう!」

「そ、それじゃ、バレー頑張ってね」

「うん!それじゃ!また明日ね!」


(結局…また仲良くしたいとか)

(何も言えなかったなぁ…)

(もう、一生仲良く出来ないのかなぁ…)

(せっかくおばあちゃんがくれたチャンスだったのになぁ…)

(はぁ…もうダメだ…)

76 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:09:03 6V6RHUzI 74/156



男の妹「兄ちゃん、それ何?」

「あぁ、これ学校でもらったチョコレート」

「私にちょーだい!」

男の弟「ズルい!僕にも!」

「あはは、3個あるから、3人でわけようね」

「なーんだ、チロルチョコかー」

「俺、きなこ味あんま好きじゃなーい」

77 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:09:41 6V6RHUzI 75/156

「なら私にちょうだい!」

「だめー!きなこ味でもチョコはチョコ!」
パクッ

「なら最初から文句言わなければ良いのに!」
パクッ

「2人とも、喧嘩しないでね」
パクッ

78 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:11:01 6V6RHUzI 76/156

1ヶ月後

男母「あんたそう言えば、誰かからチョコ貰って無かった?」

「あ!幼さんから貰ったや」

「しまった…僕、お返し用意してない…」

男母「丁度貰い物のクッキーあるから、これ包んで持って行きなさい」

「ありがとう、母さん!」

79 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:11:55 6V6RHUzI 77/156



「幼さん、ちょっと良い?」

「な、何?」

「これ、先月のお返し」

「クッキーなんだけど」
サッ

「あ、ありがとう…」

「出来合いの物でごめんね」

80 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:12:34 6V6RHUzI 78/156

「別に気にしなくて良いわよ」

「私なんか、チロルチョコだったんだし」

「それでも、嬉しかったから」

「そ、そう…それは良かったわ」

「あ…僕そろそろバレーの練習に行かなきゃ」

「それじゃ、また明日ね、幼さん」

「あ…うん…また明日、ね」


(お返し、ちゃんと貰えた…嬉しい…)

(だけど、やっぱりちょっと胸が苦しいよ…)

81 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:13:06 6V6RHUzI 79/156

小学6年生

「キャプテンとして一生懸命頑張ります!」

「皆さん、よろしくお願いします!」

バレークラブの皆「よろしくお願いします!」

おばちゃん「男君、頑張ってね!」

「はいっ!」

82 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:13:56 6V6RHUzI 80/156

(男君、バレークラブのキャプテンになったんだ…)

(背も凄く高くなって、カッコよくなって…)

(私はチンチクリンのまんま…)

(もう違う世界の人みたい…)

(せめて普通に話しだけでも出来れば…)

(組も違うし、無理か…)

(はぁ…)

83 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:14:57 6V6RHUzI 81/156




「それじゃ、今日の練習はこれで終わります」

バレークラブの皆「はいっ!お疲れ様でしたっ!」

「皆、気をつけて帰ってね」

バレー部員「男さんは帰らないんですか?」

「僕はちょっと用事があるんだ」

「気にせず帰って」

バレー部員「はいっ!それじゃ、お疲れ様でした!」

「また明日ね」

84 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:17:02 6V6RHUzI 82/156

キュッキュッ
「…っと、こんなもんかな」

おばちゃん「一人で居残りして、掃除?」

「あ、監督…バレちゃいましたか」

おばちゃん「まぁ、ちょっと前から気付いてたけど」

「もう片付け終わりますんで…」

おばちゃん「なんで掃除?」

85 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:18:12 6V6RHUzI 83/156

「あの…僕もうじき卒業じゃないですか」

おばちゃん「もう2月だもんね」

「だから、お世話になった体育館を綺麗にしたいなぁって」

おばちゃん「そう…男君、中学行ってもバレー続ける?」

「はい!頑張ろうと思ってます!」

「監督にはとっても感謝してます」

おばちゃん「感謝?」

86 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:18:52 6V6RHUzI 84/156

「僕を、このバレークラブに誘ってくれて」

「おかげで僕は変われました!」

おばちゃん「そう言って貰えると嬉しいわ」

おばちゃん「すっかり格好良くなっちゃって」

「そ、それは…解らないですけど…」

おばちゃん「大丈夫、男君はもう、大丈夫!」

おばちゃん「私が保証する!」

「ありがとうございますっ!」

87 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:19:40 6V6RHUzI 85/156

中学1年生

(…男君は中学もバレー部なんだろうなぁ)

(私も何か部活入ろうかな…)

(…そうだ)

(バレー部って、マネージャーとか募集してないかな?)

(こう言うのって、直接バレー部に行くのかな?)

(顧問の先生に聞くのかな)

(どうすれば良いんだろう…)

88 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:20:24 6V6RHUzI 86/156

「○○小学校からきました、男と言います!」

「よろしくお願いしますっ」

「友と言います!ガンガン頑張るタイプです!」

「よろしくお願いします!」

バレー部部員「よろしく!」

バレー部部長「今年の1年は元気良いな!」

部長「3年間、しっかり頑張ってくれ!」

89 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:21:35 6V6RHUzI 87/156



「なぁなぁ、男」

「何?友君」

「俺も高い方だけど、お前、背高いな」

「何センチ?」

「ん…今178くらいだと思う」

「小学生で178あったら、学校一デカかったろ?」

「いやー、全校生徒の中では3番目だったよ」

「マジで?1番と2番の奴はバレーやってねーの?」

「その2人はバスケットやっててね」

「あぁ、そっち行ったのかー」

90 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:22:14 6V6RHUzI 88/156

「レギュラーになれるように、お互い頑張ろうね」

「お、良いねー。そんで全国制覇とかしようぜ!」

「ぜ、全国は…まぁ…」

「夢はデカい方が良いだろ?」

「なんなら、世界制覇でも良いくらいだぜ!」

「ふふっ、世界制覇って…」

「へへっ、良いだろ?」

91 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:24:17 6V6RHUzI 89/156

「うん…夢はデカい方が良いもんね!頑張ろう!」

「おうよ!やるぜやるぜー!」
タッタッタッ

幼友(あの2人、喋りながら走ってるのに、何で他の部員より速いのかしら)

幼友(友のバカは良いとして…)

幼友(男君…か)

幼友(○○小って言ったら…幼と同じかな?)

92 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:24:53 6V6RHUzI 90/156



幼友「ねぇねぇ、幼」

「んっ?何?」

幼友「幼って○○小学校から来たんだよね?」

「うん、そうだけど」

幼友「3組の男君も、○○小学校だよね?」

「う、うん…なんで?」

幼友「彼、かなり格好良いと思うんだけど、どう?」

93 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:25:41 6V6RHUzI 91/156

「う、うん。まあ格好良いと思うけど」

幼友「何か、接点とか、無い?」

「と、特に無いかなぁ…」

幼友「そっか…私バレー部のマネージャーになったんだけどさー」

幼友「男君、ちょっと良いなーと思って」

「そ、そうなんだ?」

幼友「優しいし、練習一生懸命だし」

幼友「背高いし、顔格好良いし」

「そ、そうかもね…」

94 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:26:27 6V6RHUzI 92/156

幼友「彼女とか好きな人とか居るのかなぁ」

幼友「知ってる?」

「ちょっと解んないなぁ」

(私も知りたいけど…)

「ね、ねえ、幼友ちゃん」

「男子バレー部って、マネージャーまだ募集してる?」

幼友「あー、私が最後の一枠だったんだー」

95 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:27:15 6V6RHUzI 93/156

幼友「2年生のマネージャーが5人も居るんだよ」

幼友「マネージャー多過ぎだって」

「そ、そっか」

幼友「幼、入りたかった?」

「いやー、折角中学生になったんだから」

「私も何か始めたいなぁと思って」

「マネージャーなら出来るかなって」

「でもまぁ、他の部活考えて見るよ」

96 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:27:54 6V6RHUzI 94/156



幼友「男君、お疲れっ。コレどうぞ」

「あ、幼友さん、ありがとう」

「幼友、俺の分は?」

幼友「今ので最後でーす」

「ひでーな、オイ。イジメかよ」

幼友「冗談よ、はい」
ポイッ

「っと。男に対する態度と随分違うじゃねーか」
パシッ

97 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:28:43 6V6RHUzI 95/156

幼友「男君、今のやり取りちゃんと見てた?」

「そうだぞ、男。俺達は仲良くは無いぞ」

「でも2人、すっごく楽しそうにおしゃべりしてたじゃない」

「2人は同じ小学校だっけ?」

幼友「まぁ、保育園から一緒だわね」

「でも仲良しでは無いぞ?」

幼友「むしろライバル的ポジションだわ」

98 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:29:21 6V6RHUzI 96/156

「やっぱり仲良しでしょ?」

友・幼友「仲良くは無い!」

「息ピッタリ、ふふっ」

友・幼友「…」

部長「おいそこー。そろそろ休憩終われー」

男・友「はいっ!」

幼友「…」

99 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:30:01 6V6RHUzI 97/156



幼友「はぁ…」

「どうしたの、溜息なんかついて」

幼友「男君って格好良いし、良い人なんだけど…何て言うか…」

「何?」

幼友「ニブいよね」

「そ、そうなの?私良く知らないけど」

幼友「私、部活で結構喋りかけてるんだけどさぁ」

100 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:31:15 6V6RHUzI 98/156

幼友「なんかいつもふわふわっと返されちゃうんだよね」

「そ、そうなんだ」

幼友「それとも誰か好きな人が居るのかなぁ」

幼友「小学生の頃はどうだったの?」

幼友「やっぱり凄くモテたんでしょうね」

「私、知らない…男君ってモテてたのかな」

幼友「今は凄いよー」

101 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:32:51 6V6RHUzI 99/156

「そうなの?」

幼友「体育館で部活してたら目立つからねー」

幼友「1年の中でも一番動けるし」

幼友「女子バレーの連中とか、クリスマスパーティに誘ったらしいよ」

幼友「家族と過ごすからって断られたらしいけど」

「そ、そうなんだ」

幼友「来月のバレンタイン、凄い事になるんじゃないかなー」

102 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:33:35 6V6RHUzI 100/156

「…バレンタインかぁ」

幼友「私もあげるけどね!」

「幼友ちゃん、本気なの?」

幼友「まぁ、ダメ元で、ね」

幼友「幼は誰かにあげないの?」

「あ、あはは、私はそう言うのは…」

幼友「気になる人とか居ないの?」

「うん…居ない…かな」

(本当は1人、居るんだけど…)

103 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:34:40 6V6RHUzI 101/156



2月14日

女子バレー部員「男さん、これ、受け取って下さいっ」

「あ、ありがとう」

女子バスケ部員「男君っ!これ、私の気持ち!」

「ど、どうも…ありがとう」


「部長、アレ、どう思います?」

部長「まぁ、アイツ格好良いからなぁ」

「どうにかなれ!って思いません?」

幼友「僻み?みっともないわね、友」

104 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:35:20 6V6RHUzI 102/156

「なんだよ、お前も男に渡すのか?」

幼友「まぁね。準備してきたし」

幼友「イチかバチかの賭けよ!」

「分の悪い賭けだと思うがなぁ」

幼友「うっさい!」

「ほれ、さっさと渡してこいよ」

幼友「もうちょっと落ち着いてから渡すわよ」

105 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:35:54 6V6RHUzI 103/156



部長「男ー!そろそろ練習始めるぞー!」

「はーい!今行きまーす」

「あの…皆さん、どうもありがとう」

「必ずお返ししますから」

女子達「はいっ!練習頑張ってくださいっ!」

「うんっ。それじゃ!」

幼友(あんなに沢山…)

106 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:38:05 6V6RHUzI 104/156

「俺とお前の違いはなんだろうな」

「そう言われても…」

幼友「顔じゃないの?」

「顔…そんなに悪くねーと思うんだがなー」

「俺、チョコ貰った事ねーし」

幼友「だから顔じゃないの?」

「…」

幼友「ほら、ボヤいてんじゃないわよ…練習始まるわよ」

「へいへい」

107 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:38:47 6V6RHUzI 105/156

幼友「あと…男君、これ、私からもチョコ」

「どうもありがとう、幼友さん」

幼友「…おまけでアンタにも」
ポイッ

「お?マジで?ありがとよ」
パシッ

「イャッホー!初めて家族以外からチョコ貰ったぜー!」

108 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:39:26 6V6RHUzI 106/156

幼友「うっさい。ほら、さっさと練習始めなさいよ!」

「やっぱり、2人は仲良しだなぁ」

友・幼友「仲良く無いっての!」

「あはは、相変わらず息ぴったりだね」

友・幼友「…ぐ」

109 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:40:08 6V6RHUzI 107/156

(一応、チョコ準備して、体育館まで来てみたけど…)

(やっぱり駄目だ)

(あんなに沢山貰ってるし)

(今年もこのチョコは自分で食べよう…)

(はぁ…)

110 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:41:11 6V6RHUzI 108/156

中学2年生

(あ…男君と同じ組だ…)

(嬉しいけど、切ないなぁ…)

(また話しも出来ないで終わるんだろうなぁ)

(幼友も男君の事本当に好きみたいだし…)

(私、いつからこんなダメな感じなんだっけ…)

111 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:41:42 6V6RHUzI 109/156




幼友「男君ってさぁ」

「ん?何?」

幼友「好きな人とか、居ないの?」

「今は…居ないかなぁ」

「強いて言うなら、バレーが恋人…的な?」

幼友「去年あれだけバレンタインにチョコ貰っておいて」

幼友「一人も良い人居なかったの?」

112 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:42:54 6V6RHUzI 110/156

「うーん…本当に今はバレーするのが楽しくてね」

「あんまり他の事、考えられないんだ」

幼友「私とか、どう?」

「え?」

幼友「なーんてね。今のは冗談!」

「ビックリしたー」

幼友「…でも、男君の事、好きって言う子、結構居るよ?」

「うーん…俺、そう言うのあんまりわからなくて」

113 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:43:39 6V6RHUzI 111/156

「小3の頃からずっとバレー頑張って来たから」

「やっぱり今はバレー頑張りたいんだ」

「俺、バカだから、2つの事一生懸命にはなれそうもないしね」

幼友「そっか。バレーが恋人か、ふふっ」

幼友「そう言う一途な所、見てる人は見てるもんだよ」

「そんなもんかな?」

幼友「鈍感な男君は一生気付かないかもしれないけどねっ」

「あはは、ひどいなぁ」

114 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:45:08 6V6RHUzI 112/156



幼友「…なんて会話がありましてね」

「そうなんだ」

幼友「はー…、私にはどうにもならないと悟ったわー」

「ど、ドンマイ?」

幼友「あぁ…私の運命の人はどこに居るのかしらね」

「案外近くに居るかもよ?」

115 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:46:29 6V6RHUzI 113/156

幼友「本当にそうなら、今すぐ出てきて欲しいわー」

ガラッ
キョロキョロ
「おーい、幼友」

幼友「んー?何?」

「悪い、歴史の教科書貸してくれ」

幼友「男君から借りれば?」

「あいつ今いねーじゃん」

「頼むよ!俺、今日当てられそうな気がするんだ」

116 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:47:06 6V6RHUzI 114/156

幼友「しょうがないわねー。落書きとかしないでよ?」
ガサゴソ
ポイッ

パシッ
「助かった!サンキュ!」

幼友「今度ミスドおごりね」

「…まぁ、金ある時にな」
タタタッ

「幼友と友君って仲良いよね」

幼友「そんなでもないけどね」

117 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:47:55 6V6RHUzI 115/156

幼友「家が隣り同士の幼馴染なのよ」

幼友「小学校の頃もずっと同じクラスだったしね」

幼友「まぁ、腐れ縁ってやつよ」

「…何か羨ましいなぁ」

幼友「そう?」

「案外、友君が、幼友の運命の人なのかもよ?」

118 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:48:31 6V6RHUzI 116/156

幼友「ちょっとー、冗談でもそんな事言わないでよ」

幼友「私はもっと格好良い人とお付き合いしたい!」

(贅沢だなぁ)

幼友「取り敢えず、男君の事は諦める事にする」

幼友「次の恋を探す!」

「が、頑張って!」

119 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:49:26 6V6RHUzI 117/156



2月14日

「友ー、今日練習無しだって」

「マジで?でもまぁ、たまには良いか…」

「そんじゃ、帰りは久しぶりにゲーセンでも…」

後輩女「あ、あの、男先輩っ!」

「は、はい?後輩女さん、俺に用事?」

後輩女「これ、バレンタインのチョコです!」

後輩女「受け取って下さいっ!」

120 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:50:10 6V6RHUzI 118/156

「ありがとう、嬉しいよ」

「…」

後輩女「そ、それじゃっ」
タタタッ

「えへへ。チョコレートを貰ってしまった」

「チッ…去年も沢山貰ってただろ?」

「モッテモテで羨ましいですなぁ」

「お返しで破産しろ!」

121 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:50:47 6V6RHUzI 119/156

先輩女「あ、あの、男君、ちょっと良いかな?」

「あ、先輩女さん、お早うございます」

「今日って3年生は登校日でしたっけ?」

先輩女「あ、あぁ。今日は普通の3年は休みだな」

「何か用事でした?」

先輩女「べ、別に他意は無いのだけど」

先輩女「いつも部活で頑張っている君に…これを」
サッ

122 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:52:12 6V6RHUzI 120/156

先輩女「チョ、チョコレートだ」

「は、はい」

先輩女「これからもバレー部の事を、よろしく頼む」

先輩女「これは先払いの報酬と思ってくれ」

「ありがとうございます!先輩女さん」

先輩女「う、うん。それではな」
タタタッ

123 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:52:49 6V6RHUzI 121/156

「…恋する乙女って感じだったな」

「あの厳しかった先輩女さんが…」

「そうかな?バレー部の仲間としてくれただけじゃないかな」

「なら何で俺には無いんだよ!」

「お前、そこまで行くとイヤミだぜ?」

「あ、あの…何かゴメン」

124 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:53:53 6V6RHUzI 122/156

委員長「あの、男君、ちょっと良いかな?」

「…またかよ」

「うん?何?委員長さん。また何かお手伝い?」

委員長「そ、そうじゃなくてね」

委員長「いつも色々手伝ってもらってるから、これ」
サッ

委員長「お礼の気持ちをこめたチョコレート…」

委員長「受け取ってくれる?」

「ありがとう、委員長さん」

125 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:54:33 6V6RHUzI 123/156

委員長「出来ればこれからも、その、お手伝いとか…」

「いつでも声かけてよ。出来る事なら何でもするから」

委員長「うん、本当にいつもありがとうね」

委員長「そ、それじゃ」
タタタッ

「ほら、これは最近流行りのアレだ」

「何?」

「リア充爆発しろってやつだ」

「そう言われても困るんだけど」

126 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:55:17 6V6RHUzI 124/156

放課後

「チョコ、またこんなにもらっちゃったなぁ」

「自分のモテ度を誇示してる訳か?爆発しろよ」

「そんな事無いよ」

「まぁ、お前好きな人とかいなさそうだもんな」

「ひょっとして、俺の事が好きとか?」

「そんな趣味は無いよ」

(男君…今年もあんなに沢山チョコ貰って…)

127 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:55:49 6V6RHUzI 125/156

「それにしても…そんなに沢山、食べきれるのか?」

「うーん…甘いもの好きなんだけど…さすがに多いかなぁ」

「俺が食ってやろうか?」

「それは…」

「いいだろ?家族からしかチョコ貰えない俺に」

「少しでも幸せを分けてくれよ!」

(まさか、友君に分けるつもり!?)

128 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:56:25 6V6RHUzI 126/156

「うーん、じゃあ何個か貰ってくれる?」

「イェイ!じゃあ半分位くれっ!」

「俺は三度の飯よりチョコが好きなんだ!」

「ちょっと待ちなさいよっ!」

「え?な、何?幼さん」

「あんた今、友君にチョコわけようとしたでしょ!」

「あぁ、うん。さすがにこんなに沢山は食べられないし…」

129 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:57:06 6V6RHUzI 127/156

「バレンタインのチョコなんだよ?」

「たとえ義理チョコでも!」

「その一つ一つに、女の子の気持ちがこめられてるんだよ?」

「それをアンタは他人に譲るって言うの?」

「ご、ごめんなさい」

「あの…幼さん、俺がくれって言ったからで…」

「こいつは悪くないんだ」

130 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:57:44 6V6RHUzI 128/156

「ごめんなさい、幼さん」

「俺、このチョコくれた人の気持ち考えて無かったよ」

「教えてくれて、どうもありがとう」

「…別に、解れば良いのよ、解れば」

「このチョコ全部、食べてから帰るよ」

「なんで?」

「家に持って帰ったら、妹や弟が欲しがると思うから」

131 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:58:23 6V6RHUzI 129/156

「大変だなぁ…」

「ウチの家族、皆甘いもの好きだからね」

「んじゃ、俺、お茶でも買って来るぜ」

「ありがとう、友」

「ダッシュで行ってくるぜ!」
タタタッ

「…それじゃ、一個目」
ガサガサ

「手作りだ…」
パキッモグモグ

132 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:58:57 6V6RHUzI 130/156

「ちゃんと全員にお返ししなさいよ?」

「う、うん…」
モグモグ

「そ、それだけあると、食べるの大変そうね」

「まぁ、でも俺チョコ好きだし」
モグモグ

133 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 18:59:32 6V6RHUzI 131/156

「そうだよね、昔から…」

「ん?何?」
モグモグ

「それじゃ、一個くらい増えても問題無いよね?」

「え?」

「ほらっ」
ポイッ

「おっと」
パシッ

134 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:00:30 6V6RHUzI 132/156

「チロルチョコ?」

「バレンタインだから、私からもね」

「あ、ありがとう」

「義理ですけどね」

「あ…そういえばさ」

「何?」

「小4の頃、こんな事あったよね」

135 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:01:02 6V6RHUzI 133/156

「お、覚えてるの?」

「今、思い出した」

「俺だけ誰からもチョコ貰えないーって言ったら」

「幼さんがチロルチョコを三個くれたんだよね」

「…あの頃からは想像も出来ないわよね」

「アンタは今や校内一のモテ男だもんね」

男・幼「…」

136 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:01:41 6V6RHUzI 134/156

ガラッ
「ふぃーお待たせー」

「温かいお茶と冷たいココア、どっちがいい?」

「それ、選ばせる気無いよね?」

「ふふっ」

「…幼さん、ありがとうね」

「…別に。それじゃ、私帰るね」

「うん、それじゃあ、また明日ね」

137 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:02:17 6V6RHUzI 135/156



「…今年は渡せたなぁ」

「チロルチョコでも、チョコはチョコだもんね」

「…もうこれで忘れよう」

「男君は小さい頃仲良しだった人」

「それ以上でもそれ以下でも無い…」

「今は只のクラスメイト」

「寂しいけど、仕方無いよね…」

138 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:03:45 6V6RHUzI 136/156



「ちょっとチョコ食べ過ぎたかな…」

「3日位に分けて食べれば良かった…」

「このチロルだけ、明日食べよう」

(チロルチョコかぁ)

(あぁ、なんか、懐かしいな…)

(昔、よく駄菓子屋で買ってたなー)

(お返しにキャンディーを準備しよう)

(駄菓子屋で…あ…そう言えば、幼さんの好きだった…)

139 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:04:40 6V6RHUzI 137/156

(そう言えば小さい頃はよく公園で食べたなぁ)

(俺がキャンディーを買って)

(幼さんがチョコを買って)

(それを交換して、食べて…)

(…いつも2人で笑ってて)

(仲良しで、ずっと一緒に…)

(!)

140 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:06:07 6V6RHUzI 138/156

(そうだ!俺、幼さんと…)

(結婚の約束とかする位仲良しで…)

(でも小学校に上がってから、組が別になって…)

(幼さんに心配かけないように、色々頑張って…)

(なのに、同じクラスになっても、殆ど話しもしてない…)

(俺がバレー始めた理由だって…)

(何でこんな大切な事、忘れちゃってたんだろう)

(…)

(気持ちのこもったチョコ…)

(それなら俺も…気持ちを込めて…)

141 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:06:39 6V6RHUzI 139/156

3月13日

「帰り道なのに全然寄らなくなったなぁ」

「おばあちゃん、元気かな…」
ガラガラ

「こんにちはー」

おばあちゃん「あら!男ちゃん!久しぶりねぇ!」

「おばあちゃん、お久しぶりです」
ペコッ

142 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:07:17 6V6RHUzI 140/156

おばあちゃん「もうすっかりお兄ちゃんになっちゃって」

おばあちゃん「今、何年生になったんだい?」

「今、中学2年です」

おばあちゃん「ずいぶんと背も伸びてー」

「はい、幼稚園の頃と比べたら大きくなりましたよー」

おばあちゃん「ふふ…久しぶりに来てくれて嬉しいよ」

「今日はちょっと欲しいものがあって…」

おばあちゃん「なんだい?」

「すももキャンディー、ありますか?」

143 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:08:10 6V6RHUzI 141/156




3月14日

「幼さん、これ」

「え?何これ」

「ほら、先月チョコ貰ったから、お返しに」

「…あ、ありがと」

「中身はクッキーが3枚だけどね」

「他の皆にはコンビニで買ったっぽいの配ってたじゃない」

「なんで私だけ、クッキー3枚なのよ」

144 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:09:28 6V6RHUzI 142/156

「幼さんから貰ったのは、チロルチョコ1個だったからね」

「3倍返しだよ、ふふっ」

「ぐっ…そうね。確かに3倍ね」

「まぁ良いわ。別に期待もしてなかったし」

「元々、偶然持ってたチョコを義理であげただけだし」
ガサガサ

「いただきまーす」
カリッモグモグ

「あ、このクッキー美味しい。何処のクッキー?」

145 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:10:30 6V6RHUzI 143/156

「ふっふっふ、それ皆に配った、出来合いのクッキーじゃないよ」

「特別、俺の手作りクッキーです」

「へぇ?男君って料理出来るんだ?」

「実はお菓子だけは作れるんだよ」

「普通の料理と違って、分量きっちり量って、レシピ通りにやれば」

「ほとんど失敗もしないしね」

「凄く美味しいよ」
モグモグ

146 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:11:07 6V6RHUzI 144/156

「それとね…」

「ん?まだ何かあるの?」

「はい、これ」

「この包みは何?」

「バレンタインのお返しその2だよ」

「…どっちかって言うと、こっちが本命だったりして」

「ほ、本命って…」
ガサガサ

147 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:11:39 6V6RHUzI 145/156

「これ…これって私が昔好きだったすももキャンディー…」

「3個…」

「3倍返しだしね」

「駄菓子屋に行って買ってきたんだ」

「あ、あぁ…男君も行ったんだ」

「おばあちゃんが、今度は2人で来なさいねーって」

「…」

148 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:12:11 6V6RHUzI 146/156

「幼稚園の頃に…僕とした約束って覚えてる?」

「と、突然何?何の事?」

「覚えて無い?」

「…」

「ちょっと個人的な話しなんだけどさ」

「実は俺、最近までその約束を忘れててね」

「ふ、ふーん」

149 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:12:48 6V6RHUzI 147/156

「バレーやり始めたのも、最初は目標があったのに」

「やってるうちにバレーが楽しくなっちゃって」

「身体動かすのに夢中になっちゃって」

「目標を完全に忘れちゃってたんだ」

「本当に馬鹿だよね」

「目標?」

150 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:13:37 6V6RHUzI 148/156

「ある人に心配かけたくない」

「ある人に頑張ってる所を見て欲しい」

「スポーツして、格好良くなりたい」

「最初はそんな邪な気持ちだったんだよ」

「別に邪じゃないんじゃない?」

「誰かに見て欲しい、認めて欲しいって、普通でしょ?」

「でも俺はその目標を忘れちゃってたんだ」

151 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:15:13 6V6RHUzI 149/156

「何で今、それを私に言うのよ」

「バレンタインの夜、思い出したんだよ」

「幼ちゃんが、言ってくれた言葉でね」

「わ、私、何か言ったっけ?」

(い、今、私の事、幼ちゃんって…)

(昔の呼び方で…)

「義理でもチョコの一つ一つに気持ちがこもってるって」

152 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:18:09 6V6RHUzI 150/156

「そ、そんな事言ったっけ?」

「覚えてないし」

「小4の時も、今年も…」

「あのきなこ味のチロルチョコをくれたのは」

「昔みたいに仲良くしたいって事なのかなって…」

「そう言う気持ちを込めてくれたのかなって…」

「だから…」

153 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:19:15 6V6RHUzI 151/156

(やめてよ…何を言うつもりよ…)

(変な期待しちゃうじゃない…)

「俺、幼ちゃんの事が好きだって事、忘れちゃってた」

「!」

「それを思い出させてくれて、ありがとう」

「あ、あれは義理だって言ったでしょ?」

「でも、気持ちこもってたんだよね?」

「う…」

154 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:19:50 6V6RHUzI 152/156

「よ、幼稚園の頃の男君はぽっちゃりで」

「いっつも私の後ろに隠れてて」

「男子Aとかに無理やり野球やらされて」

「泣いたりしてたもんね」

「あ、あはは…懐かしいね」

「そんなアンタが今や校内一のスポーツマンだもんね」

男・幼「…」

155 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:20:38 6V6RHUzI 153/156

「私が傍に居なくても…別に困らないもんね」

「だから昔の約束なんて無効だよ、無効」

「それこそ、子供の言った事だもんね」

「男君は何も気にしなくて良いよ」

「そう言う訳にはいかないよ」

「確かに結婚の約束は…まだ解らないけど」

「俺が幼ちゃんの事好きだって言うのは、今の気持ちだからね」

156 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:21:22 6V6RHUzI 154/156

「俺の事、嫌いなら嫌いって言って欲しい」

「もしそうじゃないなら、まずは友達から…」

「昔みたいに、2人で遊んで、話して、笑って…」

「そうしたいんだけど…どうかな?」

「…ありがとう、男君」

「え?ありがとう?」

157 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:22:14 6V6RHUzI 155/156

「バレンタインのお返しに」

「男君は、今、私が一番欲しい言葉をくれた」

「こんなに嬉しい事って無いよ」

「私、ずっと…ずっとね?」

「昔みたいに、男君と仲良くしたいって思ってたよ」

「だから、ありがとう、男君」

「これから、よろしくね」

「出来れば、ずっとずっと、ね?」

「大好きだよ、男君っ」

158 : ◆L0dG93FE2w[sa... - 2013/04/06 19:23:43 6V6RHUzI 156/156




大学2回生の2月14日

「またそんなにチョコ貰って…」

「あ、あはは…サークルの皆から…ね」

「ちゃんとお返しはしなさいよ」

「もちろんするよ」

「それじゃ、これも追加で」
ポンッ

「ありがと。これが一番嬉しいよ、幼」

「今年も、お返し、期待してるわよ、男」

「おばあちゃんの駄菓子屋で、交換ごっこ、ね?」

「うんっ!」


おわり

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