関連記事:男「……ゾンビ……?」【前編】

8 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 16:40:49.81 YWGGGf320 198/410

【第四部・国際空港編】

「……」

「男さん。これからどうするの?」

「……幼に会って気づいたんだけど……、ずっと家族のことを頭の外に閉めだしてたんだ」

「……」

「だから、無事かどうか確かめに行こうと思う。……もしダメなら、その時は……この手で……」

「男さん……」

13 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 16:43:24.03 YWGGGf320 199/410

「無事だと……良いね……」

「ああ。……そうあることを願うよ」

(男さんが悲しむ顔……これ以上見たくないよ……)

「女さん?」

「あ、ううん、何でもない……」

「そうか、なら、良いんだけど」

(もし、最悪のことが起きたら……、その時は、私が彼を支えてあげなくちゃ)

17 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 16:48:57.60 YWGGGf320 200/410

【男自宅付近】

「……思えば、女さんと始めて出会ったのもここだったな」

「うん、そうだね」

「いきなり、食べさせて、だもんな。頭おかしいんじゃないかと思ったよ」

「う……、でも、本当にお腹が空いてて」

「わかってるよ。……あの時君に会えて、よかったと思ってる」

「男さん……、それって不吉なんでしょ?」

「……ごめんごめん。……ただ、言っておきたかったから」

「そういうことは、もっと、後が良いな」

「もっと、後って?」

「……ごーる、いん……とか」

「……ははっ、そりゃいいな。うん、凄く良い」

「ほんと?」

「……ああ。ゴール目指して、生きような」

「……はい!」

23 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 16:53:22.94 YWGGGf320 201/410

「……しっかし、人っ子一人いないぞ?」

「なんでかな」

「さて……な」

「……男さん」

「大丈夫。どんな結果が見えても、俺は生きるから」

「無理はしないでね。……泣いても良いんだから」

「……ああ」

「私がついてるから」

「頼もしい限りだよ。本当に」

「どういたしまして。えへへ」

26 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 16:57:19.78 YWGGGf320 202/410

【男・自宅前】

「入るよ」

「うん」

ガチャ……ギィィィィ

「……まずはリビングからだ」

「うん……」

【リビング】

「……何も、ない? 血の跡も、暴れた形跡も何も……」

「もしかして、生きてるんじゃないかな、男君のご両親」

「……ああ、そうかもしれないな……」

「他のところも、探そう? 私、二階に行くね」

「気をつけてな」

「大丈夫、私にはこの相棒――チェーンソーがあるからっ」

27 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 17:01:43.72 YWGGGf320 203/410

【一階】

「……何もない。俺が出て行った時と、何もかもそっくりそのままだ」

「つーか、律儀にコンセント抜いてやがる。……これ生きてるんじゃないか?」

「だけど、それじゃあどこ行った?」

「一階には手がかり無しか……。二階の女さんが何か見つけてくれてるかな?」

【二階】

「来ました、男さんの自室……。ごくり」

「……なんだか、すごくえっちな気分になりますね」

「……えーい、そんなことではだめです私。集中集中。とりゃーっ!」バタンッ

「……あれ、割とこじんまりとした部屋ですね……。汚れてもいないし」

「あれは……男さんのベッド……寝ても、良いですよね……」キョロキョロ

28 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 17:04:18.61 YWGGGf320 204/410

「せーっ、のっ!」バフンッ

「あ、ああ……男さんの匂いが……んぅ……」ゴロゴロ

「……おーい、女さん、何か見つか……っ、た……?」

「い、いえ……」

「そ、そう」

「は、はい……」

「……ごゆっくり」パタン

「ああ、そんな目で私を見ないでっ! 男さんっ」

31 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 17:07:32.34 YWGGGf320 205/410

「何をしていたのか、は敢えて聞かない」

「はい……」

「でも、母さんたちの書き置きを見つけられたのは僥倖だ」

「だよねっ」

「……」

「すいません……」

「よし、読むよ」

『男へ。これを読んだのならば、すぐに国際空港に来て下さい。
 私たちはそこで、姉と一緒にあなたを待つことにします。
 どうか無事で、姿を見せてくれることを願っています。 母』

「だってさ。生きてるんだ、母さんたちは」

「よかったね!」

「ああ。これで次の目的地は決まりだな」

「国際空港っ!」

「よし、行こう!」

34 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 17:13:40.02 YWGGGf320 206/410

「……♪」

「ノリノリだね、男さん」

「まあな、家族が生きてるんだ……。嬉しいよ」

「そっかー」

「あ……悪いこと言ったな……」

「あ、気にしないで。……そういう記憶、ないから」

「ないのか……。じゃあ、いつかは俺のことも」

「それは、ないよっ! 絶対にない」

「断言しますね」

「忘れるわけないじゃないっ。ここまで一緒に生きてきた、一番大事な人を」

「……そうだな。ごめん」

「私もたまに怖くなるけど、でも、そういう時こそ自分と、相手を信じなきゃ」

「ああ」

38 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 17:19:20.46 YWGGGf320 207/410

「ところで、ここから国際空港までどれくらいなの?」

「歩いて四十分ちょいかな」

「そうなんだ。だったら、ゾンビたちに囲まれない限りは今日中に到着できるね」

「だな。暗くなると道がわかりにくいし、なるべく急いだ方が良い」

「りょーかい」

「た、助けてくれえええっ! Help me!」

「……そうも行かないみたい」

「大変だね」

「……いや、構わんさ」

41 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 17:23:13.75 YWGGGf320 208/410

「やっぱりゾンビども! 数は、7!」

「右は私が叩くから、左はお願い!」

「任せろっ!」バンバンッ

「斬るよっ!」ギュイイイイイン、ガガガガガガガ

ゾンビ「うあー」
ゾンビ「あうあー」
ゾンビ「あーあー」

「……おい、女さん……。このゾンビども、どこかで見たことないか……」

「奇遇だね、私もそう思ってたところ……」

「くそっ、嫌な予感がするぜ!」

43 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 17:26:08.99 YWGGGf320 209/410

「落ちろ落ちろ落ちろ!」バンバンバンッ

「さよならっ!」ガガッ、ガガッ、ガガガッ

「六体、撃退完了…………!?」

「……そんな……やっぱり……!」

ジョン「サンキュー、Boy and Girl! 俺の名前はジョン! よろしく頼むぜ……って、どうした?」

婦警「…………あ。あー」

「婦警、さん……っ!」

52 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 17:30:40.72 YWGGGf320 210/410

婦警「お、とこ……くん…………あい、たかっ……た…………あー」

「婦警さん……」

婦警「おと、こ……くん……」

ジョン「そのWoman、さっきからそれしか言わないんだゼェ? なんなんだよ一体」

「婦警さん……俺も……」

「男さんっ! ダメだよっ! いくら言葉を話しているとは言え、彼女はゾンビなんだよっ!」

「でも、俺のことを呼んでる――」

「それは……生前、強く思っていたことを発してるだけで……!」

「じゃあ、婦警さんは、俺のことを考えててくれたんだろ……?」

「男さんっ!」

57 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 17:35:04.33 YWGGGf320 211/410

「俺は……俺は……!」

「目を覚ましてよ! 男さんっ!」

ジョン「Boy! そのまま行けば、お前さんは死んじまうぞ! それでいいのか!?」

婦警「お……とこ…………くん……」

「俺は、婦警さんを助けたいだけだ……」

「それなら! もっと落ち着いて考えてっ! お願いだからっ!」

「落ち着いて……?」

「ねぇ、婦警さんは、どうして死んだの……? 私たちを、守るためでしょ……?」

「……」

「そんな彼女が、今こんな姿になって、君を襲うことを……望んだと思うの……?」

「それは……」

「私は、手を出さない……。だから。君が、婦警さんを救ってあげて……。最後の、手向けだよ……」

婦警「おとこ……おと、こ……」

「……俺は……っ!」

66 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 17:42:29.92 YWGGGf320 212/410

「俺は……。婦警さんを、救いたい」

婦警「お、と、こ……」

「だから……婦警さんから託されたこの拳銃で……っ!」

婦警「あ……あー……?」

「もしもこうして再び会えるなら、笑っていたあなたが見たかった……!」

婦警「おと、こ…………。……っ……て」

「……!」

婦警「おとこ……。…………て……」

婦警『男君。私を撃ってくれ。今までは多分、君は私の思いを継ぐつもりで、戦ってきたんだろう?』

婦警『でも、それじゃあいけない。人の思いを継ぐだけで、長く戦えるわけがない』

婦警『確固たる信念を持って、そして戦うんだ』

婦警『君には、守る人がいるだろう。……ならば、その人のために、全身全霊を持って、戦いたまえよ』

婦警『私に囚われるのは、もうやめにするんだ。いいね……』

「婦警、さん……っ! さようならっ……!」……バンッ!

73 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 17:49:31.10 YWGGGf320 213/410

「……」

「男さん」

「これでよかったんだ。……婦警さんもこれで、楽になれたさ」

「……うん、きっと」

「俺は今まで、あの人の意志を継ぐつもりで戦ってきたけど」

「……」

「自分自身の理由のために、戦うよ。……それが、婦警さんとの約束だ」

「……応援、してるから」

「うん」

ジョン「Hey! 待ってくれよそこのボーイアンドガール。ここで出会ったのも何かの縁、仲良く三人で旅しようぜェ?」

「なんだこの面白黒人」

ジョン「Oh! なかなか辛辣、でもそれじゃあ俺は挫けないぜBaby! お前さんらの強さに惚れちまったんだよ」

「は、はぁ……」

「俺たちは、空港に向かってるんだけど」

ジョン「オゥ、いいね、良い感じじゃん!? 俺もAirportに向かおうと思ってたんだぜぃ」

82 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 17:53:49.11 YWGGGf320 214/410

【黒人のジョンが仲間になった】

「しかしまあ、テンション高いな……」

「外国の人って、みんなそうなのかな……?」

ジョン「ボーイエンドガール! ナイショ話は、仲間割れの原因だぜェ」

「あー、悪い」

「ごめん……」

ジョン「Oh,そんなシケた面見せるもんじゃないぜ? 若い内はスマイルが基本!」

「……テンション高いな、ジョン」

「ほんと……」

ジョン「このご時世、こうでもしなくちゃつぶれちまうぜ」

「……それも、そうだけど」

ジョン「ハッハー、ならば笑え笑え! 笑いは心のMealだぜ!」

90 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 17:59:47.73 YWGGGf320 215/410

「それで、ジョンはどうして日本に?」

ジョン「決まってるだろォ! アキバだYO!」

「あきば……?」

「秋葉原だな。俺もたまに行く。……てかそれだけのためかよ」

ジョン「ザッツライト! フィギュアって凄いぜェ! 魔改造フィギュアは勃起物だ!」

「ぼっ……き……」

「耳ふさいでろ」

ジョン「まあ何より? メイドさん、モエエエエエエエエエエ!」

「……大丈夫かコイツ」

97 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 18:03:46.31 YWGGGf320 216/410

ジョン「祖国の兄弟たちにィ……、俺のGetしたエロエロポスターを渡さない限り、俺は死んでも死にきれねぇよ!」

「あー、そうかい」

「えろ、えろ……」

「耳ふさいでろって」

ジョン「なんだなんだ? お前らカッポーじゃねえのかよ? アーハァ?」

「いや、そのつもりだけど」

ジョン「のわりにウブだぜ! ヴァージンか、ヴァージンなのか!? 中古はいらねぇ!」

「お前どこまで日本に染まってんだよ……」

104 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 18:07:52.08 YWGGGf320 217/410

【国際空港・入り口】

「なんだかんだでようやく着いたぜ……」

ジョン「ヘイヘイヘイ、まだ話したりねーよ」

「俺はもうお腹いっぱいだよ……。そうだよ、ルリルリがヒロインだ……」

ジョン「可愛すぎだろォ? それなのに劇場版のアキトと来たらよォ。艦長が報われねぇぜ」

「男さん、大丈夫?」

「少し、休みたい……。このテンションに付き合うのは骨が折れる……」

ジョン「Oh! 骨折か? 良い医者を知ってるんだ、俺に任せな!」

「……」

119 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 18:29:34.35 YWGGGf320 218/410

【国際線・出発カウンター】

「うわーっ、人が多いね」

「まあね……」

ジョン「安全な場所って言うと、やっぱ広くてみんなが集まる場所だからなァ」

「……母さんたちはどこかな……?」

「ここにいるの?」

「姉貴が、ここのカウンター嬢なんだ。だからそこらへんに……」

ジョン「ヘイヘイヘイ! 初耳だぜ、お前にBig Sisterがいるなんてよォ」

「言ってないしな」

ジョン「メアド教えてくれ」

「なんでだよ! 自分で聞いてくれ!」

「……あ? 男、お前、男か?」

「んっ? 姉貴! 無事だったのか!」

「なんだなんだ、お前も無事だったのか、そいつは何よりだなあ!」

122 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 18:34:03.65 YWGGGf320 219/410

「引きこもりのお前が外に出たって言うから、結構心配したたんだぞ?」

「ほっとけよ」

「しっかし、しばらく見ない間にこんな可愛い彼女と……面白黒人を連れてくるとはな」

「女さんはともかく、ジョンは知らん」

ジョン「Nooooo! 俺たちの友情はこんな物だったのか!? Hey!」

「つい三十分前くらいに出会ったばかりだろうが!」

「あ、あはは……」

「ふ~ん、ま。彼女が出来たんなら父さんと母さんに知らせてやんなきゃな。喜ぶぜ~」

「……う、ん……」

「男さん、私、髪の毛とか服とか変じゃないかな……?」

「大丈夫。問題なし」

ジョン「参ったな……俺がBoyのGirlfriendだなんてよォ」

「……一生やってろ」

131 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 18:39:02.29 YWGGGf320 220/410

「……女さん、緊張しないで良いから。ウチって結構、みんなフランクだし」

「う、うん……でも……」

「手、握ろうか?」

「お願い……」

「ん……」ギュッ

「やっぱり、安心する……」

ジョン「Boy、俺の緊張も解いてくれよ。Handだぜぇ」

「……」

ジョン「そんな怖い顔で見ないでくれよな。チェリーの俺はチビりそうだぜ」

「俺も童貞だ」

ジョン「What!? ここまで仲良くてまだヤッてないとか、Youはおかしいんじゃねえか?」

「……もう、嫌……」

140 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 18:47:31.76 YWGGGf320 221/410

「男……!」

「無事だったか、男」

「父さん、母さん……、ああ、無事だったよ。なんとかな」

「おお、よかった……。あんたが死んだんじゃないかって、お父さんと大泣きしてたんだよ」

「よ、余計なことはいわんでいいっ……が、よく、無事に戻ってきてくれたな……」

「心配かけて、ごめん」

「いいのよ、お前が帰ってきてくれただけで……」

「へへへ、泣かせるねぇ」

ジョン「良い話だぜェ……」

「ジョン……お前……」

「ところで、さっきから手を繋いでいるそちらの子は……?」

142 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 18:50:28.11 YWGGGf320 222/410

「は、は、は、は、はいっ! はじめましてっ! 男君の、こ、恋人の……女です!」

「おやおや……あんた、どさまぎに彼女なんて作ったのかい?」

「ああ。……彼女がいるから、俺はここまで生きて来れたんだ」

「それはそれは……、ありがとう、女さん」

「いえ、こちらこそっ! 男君には、色々お世話になって!」

「あらまあ、礼儀正しい子だねぇ。どうか、男をよろしくね」

「はいっ! ありがとうございますっ!」

「よかったな、女さん」

「はいっ!」


ジョン「……あのー、俺は?」

146 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 18:53:17.38 YWGGGf320 223/410

「こいつは……、さっき道端で助けた黒人のジョン」

ジョン「よろしく頼むぜェ!」

「元気そうな人だねぇ」

ジョン「笑顔は世界を救うぜ! イヤッフゥッ!」

「……と、まあ、テンションが無駄に高い奴だけど、悪い奴じゃない」

「ジョンさん、どうか、男をよろしく頼むよ。コイツは奥手でね、友達があまりいないんだ」

「ばっ、何言ってんの!」

ジョン「まっかせてくださ~い! Boyは、俺の立派なマブダチだぜェ、Year!」

152 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2009/08/23 18:58:44.95 YWGGGf320 224/410

「さて、感動の再会はまあいいとして……」

「?」

「あんた、もの凄く臭いよ」

「……マジで?」

「良いからシャワー浴びてきな。彼女も一緒にな!」

「ば、馬鹿な事言うな!」

「それが案外そうでもなくてねぇ……。シャワールームは数が少ないから、二人で入った方が時間短縮、文句言われなくて良いんだよねぇ」ニヤニヤ

「あ、姉貴……!」

「わ、私……男さんなら……一緒でも……」

ジョン「ヘイ、ボーイ! 俺と一緒に入って、男と男の友情を確かめ合おうぜェ!」

「……女さん、恥ずかしいけど……入る……?」

「……うん……」

158 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 19:03:26.44 YWGGGf320 225/410

【シャワールーム】

(姉貴からは鍵と、シャンプーやらの入ったポーチを渡されたが)

「……これはどこをどう見てもゴムだよな?」

「……時間短縮しろって言ったのはあいつだよな?」

「……何考えてるんだろ……ほんと、アホだ」

「……てか、女さんとはそういうことは出来ません」

「やれやれ……」

ジョン「ほおおおぉぉぉぉぉ! シャワーの水圧強すぎるよぉぉぉぉぉぉぉ!」

「弱めろよ!」

163 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 19:08:13.33 YWGGGf320 226/410

「……準備、出来た……けど……」

「う、うん……」

「私の体……その……」

「……大丈夫。女さんは女さんだから」

「……ありがとう……」

「じゃあ、入るよ」

「……うん……」

ガチャリ

シャアアアアアアアア

165 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 19:12:09.46 YWGGGf320 227/410

「……精神的に死ぬかと思った」

「ふーん。で? ヤッたのか? あたしのプレゼント、役に立った?」

「使ってねえよバカ姉貴」

「んだよ、折角愛すべき弟のためにプレゼントしたってのに」

「いらんわ!」

「あぁあぁ、いつか姉ちゃんのことを思い出して泣く日が来るぞ?」

「こねえよバーカ」

「何でだよ」

「女さんだけじゃない。父さんも母さんも、姉貴も……死なせはしない。ついでにジョンもな」

「……へっ、口だけは一人前だな」

「なんとでも」

「ただ……格好良くなったな、バカのくせに」

169 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 19:17:39.01 YWGGGf320 228/410

ジョン「へい、Boy! UNOやろうぜ!」

「……元気だな、ジョンは」

ジョン「さっきも言ったがー、こんな時こそ笑うべきだぜ!」

「羨ましいな。ジョンの明るさ」

ジョン「お前も笑うべきだぜぇぇぇぇぇっと!」

「兄貴かお前は」

「ふーん、面白い友達じゃん。くく、大事にしなよ」

「……面白いのは認めるけどなあ」

ジョン「そらにぃ、そびえるぅ、くぅろがねのぉしろぉ!」

「……やれやれ」

171 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 19:23:40.66 YWGGGf320 229/410

「あ、男さん……」

「女さん……」

「ん~? 視線を逸らす二人、その頬はどちらも朱く染まって…………」

「な、何をバカな」

「ん~ん~、さっきはああ言ってたけど、お前も大人になったって事だな」

「あ、あの、お姉さんが考えているようなことは、何も……!」

「ん~? あたしが考えてる事って、何?」

「そ、それは……その……」

「くくく、いじめすぎたね、悪い悪い。いやはや、見れば見るだけ、コイツにはもったいない彼女さんだ」

「うるせぇ」

「……コイツねー、頑固だから大変だろうけど、頑張ってね」

「は、はい……っ。頑張ります」

「そういや、夕飯はどうするの?」

「わ、私は……良いです……。蛋白質、たくさん……」

「?」

178 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 19:29:46.32 YWGGGf320 230/410

【夜】

「みんなで雑魚寝なんだね」

「人が多いしな、仕方ない」

ジョン「Hmm……、でも、飛行機は飛んでるみたいだぜェ?」

「極地か、砂漠なら、ゾンビは生きていけないだろうからな」

ジョン「なるほど、ガッテン」

「私たちも……そういうところに、行くのかな」

「姉貴から聞いた話だと、そこに行けるのは抽選に当たった人だけだって。しかも倍率千越え」

「無理か……」

ジョン「スイスはどうだ? 家に核シェルターだぜェ?」

「一杯だろうよ」

ジョン「参ったもんだ。……まさに、この世の地獄。生きながら体験できるとはなァ」

180 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 19:33:39.41 YWGGGf320 231/410

「今日は、もう寝よう」

「うん……。男さん、近くに寄って良い?」

ジョン「あたしもあたしも」

「……まあ、いいけど……」

ジョン「オトコ、大好き!」

「誤解を招くから大声で言わない方が良いぞ」

「男さん……」ギューッ

「……」

「ずっと、一緒にいたい……」

「……女さん」ギュッ

ジョン(邪魔者は退散、言われなくてもスタコラサッサだぜェ)

189 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 19:39:10.21 YWGGGf320 232/410

「……すぅ」ギュッ

「……んぅ」ギュウッ

ジョン「…………」

ジョン「…………」

ジョン「…………」

ジョン「…………」

ジョン「……この二人を守ってやりたいもんだぜェ……」

ジョン「愛し合っている二人ほど、美しい物はないからなァ」

ジョン「Good night」

197 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 19:44:21.22 YWGGGf320 233/410

「すがすがしい朝だ」

ジョン「ぐっもーにん」

「ああ、おはよう」

「いよっ、起きたかバカ」

「ああ」

「おぅおぅ、抱きつかれてんじゃねえかこの色男が」

「いいだろ、恋人同士なんだから」

「へへへっ、責任はとれよ、男としてな」

「まだそこまで行ってねえよ」

「けど、いつかは行くんだろ? だったら、早いことそういうのは叩き込んでおいてやった方が良いのさ」

「……」

「まあいい……、ほれ、これに名前書きな」

「なんだこれ?」

「極地旅客機搭乗券抽選エントリーシート」

202 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 19:49:08.22 YWGGGf320 234/410

「……書いてどうするんだ?」

「アホ、逃げるに決まってんだよ、あのゾンビどもからな」

「当たるかもわからないのに? というか、これ、ペアチケットじゃねえか」

「だから、お前と、彼女さんの二人だな」

「……家族と、ついでにジョンを置いて行けと?」

「お前はまだ若い。まだまだ、人生を楽しまなくちゃ行けねぇんだよ。引きこもってた分もな」

「けど……」

「つーか、当たるかもわかんねぇのにウダウダ悩むなアホ。名前書いときゃいーんだよ」

「ったく……」

「毎度っ」

(これで良い。……子孫繁栄だの何だの政府は叫んでやがるから、こいつらの当選は決まってる。……達者で生きろよバカ野郎)

207 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 19:56:39.34 YWGGGf320 235/410

ジョン「ん~? ヘイ、その紙見せてくれるかな?」

「あ? 良いけど」

ジョン「ほぅ、ほぅほぅ……。これ、ちゃんと彼らに説明した?」

「してない」

ジョン「良いのかよォ? キャンセル不可、譲渡不可……そんなんじゃ、ボーイがキレちまうぜェ」

「……けどな、これくらいしか、あたしらがしてやれることはないんだよ」

ジョン「ボーイの好きにさせてやるって選択肢はァ?」

「却下。あいつは若い。まだ、生きないと……!」

ジョン「Hmm……。日本には、良い言葉があるね。ありがた迷惑って。……ボーイにとって、君の行動はきっとそれだぜェ」

「へっ、下の奴は、年長者の言うこと聞いてりゃいいんだよ」

ジョン「なるほど? じゃあ俺からは何も言わないけどなァ……」

212 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 20:03:35.19 YWGGGf320 236/410

「跡はこれを上に提出して……」

「ストップ」

「あん? なんだよバカ。あたしはまだ仕事中……」

「その申込用紙。……破らせて貰う」

「……ジョンか? あの面白黒人……」

ジョン「俺からは何も言わないって言っただろォ? 事実をボーイに伝えて、後はボーイに任せただけだぜェ」

「くっ! 男、その手を離しな。これを上に送れば……あんたらは幸せに暮らせるんだ」

「姉貴。俺がほんとに、そういう生活を望んでるとでも?」

「しらねえよ。望んでようが望んでなかろうが、これがあたしら……年長者の使命なんだよ」

「自分勝手な使命とか何とかに、俺たちを巻き込むのはやめて欲しいんだけど」

「あぁ? お前のことを思ってやってんだぞ? わかってんのか?」

「だったら、俺の好きにさせてくれよ。……確かに俺は女さんと一緒に、のんびり暮らしたいと思ってる」

「だったら――」

「けどな、家族と、ついでにジョンを捨てて手に入れたそんな生活……俺は耐えきれる気がしねえよ」

220 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 20:09:54.75 YWGGGf320 237/410

「……だから、頼む。そいつを提出するのはやめてくれ」

「……」

「姉貴と、父さんと母さんと、女さんと、ジョン……。……それで、良いじゃないか」

ジョン「オゥ、俺もついにFamilyの仲間入りかい!?」

「……へっ。お前って、そんなにお姉ちゃんっ子だったっけかぁ?」

「知らなかったのか? 俺はシスコンだぜ」

「……そうか……そうかよ……。バカが……」

「なんとでも」

ジョン「姉弟愛、泣かせるねぇ……」

227 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 20:15:30.83 YWGGGf320 238/410

「そういえば、空港って着陸する飛行機はないんですね」

「ああ、そりゃあな。ウィルス運んでくるかも知れないしな」

「あれ……? それだと、いずれこの空港にも飛行機がなくなっちゃうんじゃ」

「そうだ。問題はそこなんだよ。……政府はどうするつもりなのかね」

ジョン「へへへ、そういう時こそ裸踊りだぜベイビー! フゥゥゥゥゥ!」

「ジョン! やめろって!」

ジョン「俺のマグナムが火を噴くぜェ!」

「うおっ、酒臭いッ! 酔ってんのかお前!」

「ん~、ああ、ジョンって酒弱いんだ。……あんなの軽い軽い」

「あんたか」

235 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 20:23:17.73 YWGGGf320 239/410

「やれやれ……」

「ふふ」

「なんか、疲れるけど……」

「うん」

「今までで、一番笑ってる気がするな」

「そうだね……。ジョンさんとか、お姉さんとかに会えて……、楽しくなったよね」

「……いつまでも、続けばいいのにな」

「うん……」

「でも、必ず……壊れるんだよな」

「……」

「……ごめん。たまにブルーになるから困る」

「大丈夫。私も、だから」

239 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 20:29:32.19 YWGGGf320 240/410

「……」

「……月が綺麗だよ」

「……ほんとに」

「……、生きような」

「うん……」

「…………」

「…………」

「……キモオタ君、元気かな」

「元気だよ、多分」

「……だよな。モールの守護者だし」

「ふふ……。寝ようか……?」

「……ああ」

250 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 20:37:28.95 YWGGGf320 241/410

「おはよーさん」

「おはー」

ジョン「グッモーニンッ!」

「おはようっ」

「おはよう」

「おはよう、寝癖直しなさい」



「なんだかんだで、こんな安らかな日々が二週間ほど続いた」

「けれど、そんな安寧は、やはりいつも唐突に終わってしまう」

「……それは、いつもと変わらない日の朝だった……」

269 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 21:01:47.42 YWGGGf320 242/410

「うーん、今日もすがすがしい朝だ」

「朝ご飯、トーストだって」

「オッケーオッケー……ん?」

ジョン「どうしたボーイ」

「いや……あれ……。あの飛行機、こっちに向かってないか?」

ジョン「Hmm……Oh,why?」

「おかしいだろ……どう考えても。……着陸する機体なんてないんだから……」

「…………不時着?」

「だけですめばいいけどな……。女さん、一応チェーンソーを」

「……うん」

273 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 21:07:47.56 YWGGGf320 243/410

ヒュウゥゥゥゥゥゥゥ……ドゴォン……

ジョン「オゥ! 落ちちゃったぜェ!?」

「……燃えてる」

「空港消防隊が鎮火しに行ったが…………」

「だ、ダメだよっ! 見て!」



ゾンビ「うおおおああああー」
ゾンビ「うあああああああー」
ゾンビ「うおあおうあうあー」

「ゾンビども……」

ジョン「Oh,Shit! 最悪だぜこれはァ……!」 

280 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 21:12:11.57 YWGGGf320 244/410

「消防隊が……喰われてく……!」

「つーか、あの炎で死んでないのかよ、ゾンビども!」

「……どんどん、強くなってる……?」

ジョン「ヘイヘイヘイ! このままだと、いずれ建物の中にまで来ちまうぜェ!?」

「その前に、殺し尽くさないと……」

「だが……あれはトリプル7だぜ……? 三百人以上、あれに乗ってんだ……」

「全員を屠るのは……無理……?」

「だけど、やらなかったらここは終わりだ……」

285 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 21:14:53.74 YWGGGf320 245/410

「既に、下に何人か出てるけどな……、それでもきつい状況だ!」

「……女さん、行こう!」

「うんっ!」

「お、おいっ! 死ぬ気かよ!」

「んなわけないだろ! 危なくなったらスタコラ逃げるさ」

「これでも私たち、歴戦なんですよ」

「安心しなっ! 姉貴たちは俺が守るからな!」



「……男……あいつ……」

ジョン「……俺に出来ることを、探しとかないとなァ」

295 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 21:18:32.22 YWGGGf320 246/410

【階下・滑走路及びハンガー付近】

警備隊1「うて、撃てぇ!」

バンッ、バンバンバンバンババンッ

ゾンビ「うー」
ゾンビ「うおおおおおおおああああああー」
ゾンビ「うーあーあー」

警備隊2「ひっ、ひいっ!」

ゾンビ「あうー」グチャグチャ
ゾンビ「うーあー」バク、モグ
ゾンビ「あおー」ニュチョ

「最悪だ……」

「でも、殺らなきゃ殺られる……」

「くそったれめ!」パンッパンパパンッ

296 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 21:21:55.93 YWGGGf320 247/410

「……こんなところで、死ぬわけにはいかない……!」ブルッ、ブルゥゥゥゥン……

「……私のチェーンソーで、ぶった切ってあげる!」

「くっそ……、みんなを守るんだ……! 死なせてたまるか!」

「婦警さん……、力を貸して下さい!」パンッ

「……ゾンビはやっぱり、動きがとろいよ!」ザシュッ

ゾンビ「うあ……」

「えいっ、はっ、消えろぉっ!」ザンッ、ズシャ、ブチュッ

ゾンビ「あー……」
ゾンビ「うー」
ゾンビ「おーあー……」

302 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 21:25:50.09 YWGGGf320 248/410

「やっぱり、きりがないっ! 一人倒しても……二人がゾンビになってるんじゃダメだよ!」

「でもどうするんだ!? まだうじゃうじゃいやがる!」

警備隊3「き、君たちは早く避難したまえ! もうここは危ない!」

「まだやれます! ここを守らなきゃ……家族が!」

警備隊3「し、しかし……!」

ジョン「ヘイ、そんなときに俺の出番だぜ」

「ジョン! 何を……」

ジョン「へへっ、これだ」

警備隊3「それは……、消防隊の放水ホース……」

ジョン「水圧は、時として銃弾をも上回るんじゃないかなぁ……ってなァ!」

312 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 21:30:10.16 YWGGGf320 249/410

ジョン「消し飛べぇっ!」ブシャアアアアアアアアアアアアアア

ゾンビ「うおー……」
ゾンビ「うあー……」
ゾンビ「ううー……」

「凄い、効果は抜群だ……!」

ジョン「ここは……俺に任せてっ、ボーイたちは、仕留め損ねた奴らを……!」

「わかった! 男さんっ!」

「おうよ!」

321 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2009/08/23 21:36:51.48 YWGGGf320 250/410

「うらうらうらあぁっ!」

「……斬るッ!」

ジョン「俺からのプレゼントをくらいな!」

警備隊3「す、凄い……! たった三人で、半分以上のゾンビを……」

「女さんっ! 後ろ、伏せてッ!」パパンッ

「ありがとっ、男さん!」

「いやいや! ……まだいるぞ!」

「うんっ!」

ジョン「ホースの振動が、気持ちいいよぉぉぉぉぉぉ!」

330 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 21:40:58.39 YWGGGf320 251/410

警備隊3「……無線?」

『……滑走路だけじゃない、逆の国道沿いからもゾンビどもが集まってきている! 人員を割けないか!』

警備隊3「な、なんだって……!?」

「国道側……滑走路の逆……みんながいるところにかよ!?」

「えっ……!」

警備隊3「い、今すぐ行きます!」

「くそ、俺も行きたいけど……!」

ジョン「ヘイボーイ、何をためらうことがあるんだ?」

「ジョン……?」

ジョン「一度言ってみたかったんだよなァ。……ここは俺に任せて、早く行きな!」

339 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 21:44:45.52 YWGGGf320 252/410

「死ぬなよ!」

ジョン「俺を誰だと思ってんだァ? 泣く子も黙る、ジョン・スミス様だぜェ」

「偽名だと言うことはよくわかった。……頼んだ!」

「……ジョンさん、ご無事で……!」

ジョン「へっへっへ……これで良い、ヒーローの戦い方ァ、たっぷりと教えてやるぜェ!」

ゾンビ「うあー」

ジョン「残りの敵は、百体前後……。くくっ、ヒーローは逆境に置かれてこそだ!」

ゾンビ「あうー」

ジョン「来いよ糞野郎ども! お前ら全員、Fuckしてやるぜェ!」

345 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 21:48:02.79 YWGGGf320 253/410

「こっちか!」

「ロビーが……!」

ゾンビ「あうー」
ゾンビ「うー」
ゾンビ「うあー」

「姉貴たちは!?」

「今、探してるけどっ!」

「どこだ、どこだよ姉貴!」


ゾンビ「うあー」

ドガッ

「ちっ、流石に追い込まれてきたか……! トランク振り回すとか、やっぱ色気ないよなああたしはよ!」

350 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 21:53:06.33 YWGGGf320 254/410

「ったく……あたしだってこんなこたあやりたくないんだよ……!」

ゾンビ「あ、ね……」

ゾンビ「……おと、こ……」

「でもな、やっぱり生き残りたいんだよな! そのためだから……許してくれるよな……父さん、母さんッ!」

ゾンビ「あ……ね……」

「くそおおおおおおっ! ……あたしには……出来ない……出来ないよ畜生……!」

「姉貴っ!」

「お、おとこ? おとこ……おとこぉ…………!」

「姉貴、無事だったのか……。よかった……。母さんと、父さんは……。っ!」

「ゾンビに……。で、でも……あたしには出来ない……殺せ、ないよ……」

「守れなかった……。父さんも、母さんもっ……!」

353 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 21:57:18.02 YWGGGf320 255/410

ゾンビ「お、とこ……ぉ」
ゾンビ「あね…………」

「……父さんも、母さんも……ゾンビに……」

「……嫌だ、嫌だよ……男……助けて……」

「……守れなかった……。偉そうに、言っといて……」

「母さんと、父さんを助けて……。誰か……」

「くそ……腕が震えて、銃が持てない……」

「……う、うぅ……っ」

「くそったれ……」

361 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 22:04:56.02 YWGGGf320 256/410

ゾンビ「おと……こ……」

ゾンビ「あ…………ね……」

「……ねぇ、おとこ……。もう、いっしょに食べられちゃおうよ……」

「そうしたら……家族で、いっしょに……」

「そうだな……、それが……」

「男さん! 何馬鹿な事言ってるの!」

「……女さん……?」

「ずっと一緒にいてくれるって約束したじゃない! あれは嘘なの!?」

「でも……家族が死んだんだ……! 肉親だぞ……! 俺をここまで育ててくれた……両親が……!」

「辛いのはわかるけど……、でもっ! 君が死んだら、私はどうすればいいの!? 何を支えに、生きていけばいいの!?」

「おんな……さん」

「勝手なことだってのはわかってるけど、言わせてッ! 私は、男さんがいるからここまでやってこれたんだよ! ……だから、諦めないで……! お願い、だから……!」

「……女、さん……」

369 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 22:11:21.04 YWGGGf320 257/410

「男さんは生きないとダメなんだよ……!」

「…………」

「お願い……!」

「姉貴……」

「なに……?」

「俺……親不孝者だったな……。引きこもりで、ろくに母さんの飯も食べないで」

「うん……」

「これから俺……さらに親不孝者になるな……」

「……おとこ……」

「……父さんと母さんの分も……生きよう……。必ず……」

「や、やだよおとこ……、母さんと父さんを……撃つの……?」

「……俺は、生きないと……。女さんのためにも、俺を救うため、命を散らした人のためにも……」

「で、でも……。両親、なんだよ……」

「両親だからこそ……。俺が、引導を……渡さなきゃ……。息子の……俺が……!」

373 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 22:14:52.03 YWGGGf320 258/410

「最初で最後の親孝行だ……。親不孝かな…………。……でも……!」

「男さん……」

「母さん。……俺を産んでくれてありがとう。
  父さん。いつも俺のことを気にかけてくれてたな。
  俺は、生きるよ。……だから……さよなら……!」

「いやあああああああああ!」

パーン、パーン



…………ドサッ

378 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 22:19:33.99 YWGGGf320 259/410

「…………」

「ばか……ばか……ばかぁ……!」

「…………俺、だって……殺したく、なかったよ……」

「……じゃあ」

「でも……あそこでおとなしく死ぬのは……ダメなんだ……。まだ、俺たちは人間なんだ……」

「……」

「なりたくもないゾンビになった人たちの分まで……生きるんだ……」

「…………辛いよ……」

「俺もだよ…………」

「……男さん。……ごめんなさい」

「何で君が謝るのさ……」

「……ごめんなさい。……それじゃあ、他のゾンビを屠って、来るね……!」ダッ

383 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 22:27:38.22 YWGGGf320 260/410

(……私のせいだ)

(元を正せば、全て……!)

(男さんが、悲しむことなんてなかったんだ……!)

(私が、変な気を起こしていなかったら……!)

「私は……私はぁぁぁぁぁぁ!」ズザッ、ザンッ、ズチャッ、ズザザッ、ズガッ

「ああああああああああああ!」ザザッ、ズジジッ、ズザンッ、ガガッ、ズジッ

389 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 22:31:53.45 YWGGGf320 261/410

「はぁーっ、はぁーっ……、はぁーっ……!」

「どうして私は生まれたの!」

「どうして! どうしてよ!」

「何が嬉しくて、何が楽しくて、何が興味深くて私なんかが!」

「もう……こりごりだ……」

「こりごりだよ…………!」

391 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 22:34:48.78 YWGGGf320 262/410

「女さん……何か、叫んでる……?」

「……う、うぅぅ……」

「くそ……、それにしても、まだちらほらとゾンビがいやがる……」

「……殺す、しか……! そうしなきゃ……姉貴も、女さんも……!」

「……膝が笑ってるな……。まともに立てる気がしない……」

「くそっ、立ち上がれ、立ってくれよ、俺の足……!」

ギギギギギィィィィィッ!

「な、何だ……? トラック……? こっちに、突っ込んでくる……!?」

395 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 22:37:18.30 YWGGGf320 263/410

ズガッ、バリィーンッ!

「姉貴ッ、伏せろッ!」バッ

「きゃ……っ」

「……なんなんだよ……。正面ガラスぶち破って……何が……」

ガ、ガガガガガガガガ

「コンテナが、開く……」

ゾンビ「うおー」
ゾンビ「あうー」
ゾンビ「うーおー」

「な、何でトラックに……ゾンビが……。なんで、トラックがゾンビを運んでくるんだよ……!?」

400 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 22:43:59.86 YWGGGf320 264/410

「ゾンビどもが来る……!」

ゾンビ「うーあー」

「くそっ! 動け、動けよォ!」

「男さん……!」

「女さん……、来たら、ダメだ! この数には、いくら君でも太刀打ちできない……!」

「でも……!」

「ダメなんだ!」

「でも、全部私の責任だから!」

「何、言って……」

「私が……私がゾンビウィルスの……キャリアーだから……ッ!」

「!」

418 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 22:48:04.42 YWGGGf320 265/410

「研究所に拉致されて……、ゾンビウィルスを植え付けられて……!」

「そんな……嘘だろ……?」

「全てに絶望して……、研究所を飛び出して……!」

「やめろよ、やめてくれ……聞きたくないよ!」

「私だけが……こんな目に遭うのが、信じられなくて、腹が立って……!」

「やめろ、それ以上は……っ!」

「だから、所構わず、いろいろな人を食べて食べて食べて……!」

「やめてくれよっ! もうやめてくれぇぇっ!」

425 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 22:53:47.62 YWGGGf320 266/410

「一通りやり尽くして……、ふと立ち寄った街角で、君に出会って……」

「女さん、頼む……もう……!」

「最後にこの人を食べようと思ったのに……思ったのに……!」

「女さん……、頼むよ……やめて……くれ……!」

「一緒に、いろんな所を回る内に、どんどん好きになっていって……!」

「いいから、もう、良いんだ……! 君の、話は……」

「ずっと一緒にいたかったけど……それももう、叶わない……!」

「な、何が……何がだよ……!?」

「研究所に……連れて行かれちゃうから……」

「研究所……、って、なんで……どうして……!」

「私を解剖して……ワクチンを作るんだよ……」

「解剖……!? 採血じゃダメなのか!?」

「ゾンビウィルスの核は、子宮に植え付けられているから……」

「そん、な……」

436 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 22:58:15.15 YWGGGf320 267/410

「このトラックは……研究所のだよ……」

「え……」

「私を見た人、関わった人を全員殺すために……、ゾンビまで用意して……」

「そんな……」

「もう……ここでお別れなのかな……」

「い、嫌だ! 俺は女さんと一緒に生きていくって、決めたんだ! そうだろ、なあ!?」

「でも……もう…………ダメ、だよ……」

黒服「……被献体004。……施設へ帰還の後、解剖作業を行なう」

「……」

「て、てめえええ! 待てよ! 女さんをそんな名前で呼ぶんじゃねえよおおおおおお!」

黒服「黙れ。貴様たちはここで朽ち果てる運命だ」

442 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 23:03:15.99 YWGGGf320 268/410

「……男さん……!」

「女さん、待って、待ってくれ……! そこの黒服、責めて研究所の場所を教えろ!」

黒服「ふん……。生き残れるかはわからんが、教えてやろう。ここから南西にずっと進んだ、軍用施設の中だ」

「記憶した……! 女さん、必ず助けに行くからな……!」

「男さん……!」

黒服「無駄だろうがな」

「やりもせずに、諦めてたまるか!」

454 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 23:06:32.14 YWGGGf320 269/410

ブロロロロロロロ……

「女さん……」

「君の隠し事は、これだったのか」

「確かに、なかなかきつい隠し事だった」

「けど、今更そんなので、俺の君への想いが変わる事なんてない……!」

「敵は数百匹。……姉貴を守りながら、戦えるか……!?」


        『お前は一人じゃないぜェ!』

473 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 23:12:16.23 YWGGGf320 270/410

ジョン「ヒーローは遅れてやってくるんだなァ! これが!」

「ジョン! 生きてたのか!」

ジョン「当然! 俺を誰だと思ってやがる? 天下のジョン・スミス様だぜェ!」

「話は……?」

ジョン「ばっちりきっかり聞いちゃったぜ。へへへっ、シンデレラ奪還、燃えるシチュエーションじゃねえか!」

「……ああ!」

ジョン「武器はあるか?」

「素手だ!」

ジョン「粋だねぇ……。なら俺も、素手で行こうかァ?」

『まったく、君は少し無鉄砲なところがあるみたいだね――!』

489 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 23:15:22.01 YWGGGf320 271/410

キモオタ「ほらほらタカシ、もっと飛ばして!」

タカシ「るせぇ、糞デブ! これでも精一杯だ! 痩せろ!」

キモオタ「男君! そこの人! これを使うんだっ!」ガシャッ

「キモオタ君! それと、あの時のあの人!」

タカシ「タカシだ! 覚えとけよ!」

マユミ「あたしマユミね~」

ジョン「ヘイヘイヘイ、これはこれは無茶苦茶厚い展開じゃないかァ?」

『もう……男君ってば、まだまだ忘れてる人がいるんじゃない?』

509 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 23:20:14.81 YWGGGf320 272/410

「この声は……」

「久しぶり、男君」

「幼……!」

「ふふ、あの時からね、私、心を入れ替えたんだ。……女さんの言葉がよく身に染みて」

「幼……」

「……話は、男君の洋服に縫い付けた小型集音器で全て聞いてるわ」

「……え?」

「あらいやだ、忘れてね?」

ジョン「ヘイヘイヘイ、これはすげぇ展開だぜェ!」

「……何にせよ……全員、集合か……!」

「ふ、ふふっ……男ぉ、誰か忘れてるだろぉ?」

527 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 23:24:37.72 YWGGGf320 273/410

「姉貴……! 大丈夫なのか……!?」

「ったりまえだろうがよ! あんな話聞いて黙ってられっか!?」

「姉貴!」

「いいか、女ちゃんを奪還した跡、あたしが彼女に熱い灸を据えてやる! そう決めた!」

「ほどほどに……」

「あの娘のせいで父さんたちは死んじまったんだろ? 一発殴らにゃ気がすまねぇが……! だがな、それよりも、あんないたいけな少女を実験に使いやがる政府の方が気にくわねえ!」

「姉貴!」

「やってやろうじゃねえか!」

535 : ◆XtpqcHhpns [] - 2009/08/23 23:28:14.46 YWGGGf320 274/410

「今度こそ、全員……集合……!」

ジョン「このメンバー、面識ないのが多いけど、負ける気がしねぇぜェ!」

タカシ「ったりまえだ! 俺とマユミがいるんだからな!」

マユミ「たっぷり暴れさせて貰うよ!」

キモオタ「女さんの……僕の仲間の笑顔のために、僕は戦う!」

「彼女には、大事なことを教わりましたから。……感謝の言葉を、差し上げませんと!」

「あの娘は、弟の恋人だ……。それを助けないで、何が義姉だ!」

「女さん……、俺たちは、君を助けに行く!」

「そして必ず……! 君を……!」


【第四部・国際空港編・完】

17 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:24:21.14 UbJCGWE0 275/410

【第五部・シンデレラ奪還】

「……とにかく、詳しい話はまた後だな」

キモオタ「うん、まずはゾンビどもをみんな……」

タカシ「へへへっ、糞デブに仕込まれた銃の腕を見せる時が来たぜ!」

マユミ「う~ん……刀って、私にはあわないと思うんだけどなあ」

ジョン「俺の武器はルガーかよォ? JAMには気をつけないとなァ」

「な、なんだか濃い友人だなぁ、男……」

「ああ。みんな個性的だけど……、頼りになる、俺の大事な戦友だ」

19 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:25:18.13 UbJCGWE0 276/410

「……」

「幼……も、チェーンソーなのか」

「ふふ、リスペクト、かな。……男君、来るよっ」

「っ、ああ!」

ゾンビ「うあー」
ゾンビ「あうー」
ゾンビ「うーあー」
ゾンビ「あーおー」
ゾンビ「うーうー」
ゾンビ「あおあー」

キモオタ「久しぶりの……ゾンビ戦だ……。燃えてくる……!」

21 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:27:17.62 UbJCGWE0 277/410

キモオタ「はぁぁぁぁぁぁ、掃射あああああああああ!」バババババババババババババ!

ゾンビ「う……」
ゾンビ「あー……」
ゾンビ「お……」

キモオタ「まだまだまだまだぁっ! 踊れ踊れ、踊れぇっ!」ババババババババババババ

ジョン「ヘイ、俺も負けてらんねーぜェ!? ダンスタイムだ、Zombieども!」ババン

タカシ「うらうらうらうらァッ!」

22 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:28:18.52 UbJCGWE0 278/410

「姉貴は下がってろ!」

「何言ってんだ、あたしも戦う!」

「……でも……」

「でも、も、かも、もあるかよ。これから、こいつらの親玉んとこに向かうんだ。景気づけにはうってこいだぜ?」

「……わかったよ。姉貴は、わがままだよな、やっぱ」

「そんなわがままを通してくれるお前のこと、嫌いじゃないぜ」

「そいつはどーも」

「ははっ、さぁて……、たっぷり景気づけさせて貰うかんなぁ! ゾンビどもが!」

「……俺も、やるか……!」

「うらあああああああああ!」

「おおおおおおおおおおッ!」

24 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:30:59.26 UbJCGWEo 279/410

「斬るよ!」ギュイイイイン……

ゾンビ「うあー」

「はあッ!」ザンッ

ゾンビ「う……」

「まだまだっ! はぁぁぁッ!」ザンッ、ズシャッ、ドチャッ

ゾンビ「あ……ぁ」

ゾンビ「う……ぉ」

ゾンビ「お……ぉ」

「撃墜スコア4!」

マユミ「ゾンビたち、この刀の餌食にしてやるんだから!」

ゾンビ「うー」

マユミ「……そこっ!」スパンッ

ゾンビ「う……うー……?」

マユミ「居合抜き!」

ゾンビ「あー……」ドチャッ

26 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:32:12.81 UbJCGWE0 280/410

「男君、無事っ?」

「心配ご無用! 女さんを取り返すまでは……死ぬもんかよ!」

(……やっぱり、そうだよね)

ゾンビ「うあー」

「幼! 何でよそ見してるんだ!」バンッ

「えっ」

ゾンビ「あ……」

「大丈夫か幼! 無事かっ!?」

「う、うん……」

「……よかった。お前だって、俺の大事な人なんだ。……死なないでくれよ」

「……うん……!」

(そう、だよね……。男君の笑顔のために……、今は……!)

「必ず女さんを助け出す……っ!」

27 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:33:23.65 UbJCGWEo 281/410

「……後どれくらいっ!?」

ジョン「百体かァ!?」

「大体そんなもん! あと少しだ!」

キモオタ「行ける! いや……絶対に突破するんだ……!」

タカシ「そういうことならぶっ飛ばすぜ!」

「……ギタギタに、斬ります……!」

マユミ「……斬る!」

「……よし、ラストスパートだ!」

28 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:34:29.03 UbJCGWEo 282/410

「……え? 死んでない……? 頭は吹っ飛ばしたのに……?」

キモオタ「男君ッ! 危ないよ、早く避けて!」

ゾンビ「……」

「!」

「男君ッ!」ガシッ……ドタンッ

「っ」

ゾンビ「……」

「大丈夫!?」

「お、俺は大丈夫だ……幼は?」

「私は、無事だよ……。よかった……男君……」

「……おいおい、あのゾンビなんなんだ?」

タカシ「頭を撃っても死なないとか、おかしいだろ!?」

ジョン「……進化かァ? 薄気味悪いぜ、ゾンビのくせによォ……!」

29 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:35:30.38 UbJCGWEo 283/410

キモオタ「今までのゾンビは頭が弱点だったけど……、じゃあ、弱点がなくなったって事!?」

マユミ「そんな!」

「チェーンソーで、バラバラに切り刻むしかないの……?」

「でもよ、そんなこといちいちしてたら……こっちがもたねえぞ!?」

「でも、あいつに肉を食べられることがないから……」

ジョン「甘ぇぜボーイ……。ガールが言ってたろォ? ゾンビになるのはウィルスの仕業だ。
    幸い空気感染とまではなってねえが、あいつの爪に傷つけられたらおじゃんだぜェ」

「……じゃあ、今度は一撃喰らうだけでも死に繋がるって……?」

ジョン「それは今までもそうだった……。俺たちは変わらず、向こうだけが強くなるアンフェアな戦いだなァ……!」

30 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:36:22.50 UbJCGWEo 284/410

「く……っ! 切り刻んでやるっ!」

「幼!」

「はあああああああっ!」

キモオタ「タカシ、彼女を援護しろ!」バババババババ

タカシ「っ! わーったよ!」パンパンパンッ

「はあああああっ!」ザザザザザザザザ……ズドン……

「右腕、左腕、左足、右足……、死ね、死ねええええええ!」

ゾンビ「……」ボトッ、ボトッ、ボトッ……

「……はぁっ……はぁっ……」

32 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:38:00.36 UbJCGWEo 285/410

「幼、大丈夫か!」

「何とか……。でも、いちいちこんなのやってたら……」

「一発でバラバラに出来る武器とかないのかね……?」

「探してみるか……。何はともあれ、これで、一段落だ……。少し休もう」

ジョン「賛成だ」

「…………くっ……」

「幼……助かったよ」

「男君」

「……お前も、少し休めよ?」

「……はい」

33 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:38:57.50 UbJCGWE0 286/410

「……」

「……」

「……なぁ、姉貴」

「なんだ?」

「母さんたちを……埋めに行かないか」

「…………そう、だな」

「……はは、重い、な……。死んでも、これは変わらないのか」

「ああ……」

「…………」

「…………家族、二人だけだな」

「……うん」

34 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:40:00.63 UbJCGWEo 287/410

「……父さんも、母さんも、辛かったろ……」

「……」

「どうかゆっくりと……安らかに……眠って、……」

「……っ」

「くれ……よ…………」

「…………ぅ、うぅ……」

「……姉貴……俺らが、泣いたら……」

「…………そ、そうだよ……な……。くっ……」

「……必ず生きて戻ってきて……そしたらちゃんとしたお墓を……建てるから」

「ああ……、私の貯金と……男のへそくり全部使って、立派なのを……」

「ああ……。絶対……」

「……ぐすっ……」

「……行こう…………姉貴……」

35 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:40:52.16 UbJCGWEo 288/410

キモオタ「僕はキモオタ。よろしく」

ジョン「よろしくファットボーイ!」

キモオタ「え、やっぱ太ってる? 痩せたかと思ったんだけどなあ」

タカシ「ねーよ」

キモオタ「君は僕に恨みでもあるのか?」

タカシ「ねーよ」

キモオタ「じゃあなんで」

タカシ「お前が幸せそうだとむかつく」

キモオタ「何なんだよ君は!」

「仲が良いんですね、ふふっ」

マユミ「どーなんだろ。あの二人、出会った当初は凄く険悪だったんだけど」

「そうなんですか?」

36 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:43:01.75 UbJCGWEo 289/410

マユミ「タカシがね、色々とねー。……男って、よくわかんないわ」

「はは……わかります。それは」

マユミ「あたしマユミ、よろしく」

「男君の幼馴染みの、幼です。よろしくお願いします」

マユミ「うん。正直女が少ないからさ、このメンバー、結構寂しかったんだよねー」

「そうですね、三人ですもんね」

マユミ「そうそう」

「マユミさんとタカシさんって、おつきあいされてるんですよね」

マユミ「まぁねー」

「……羨ましいです。ちょっと」

マユミ「幼は可愛いから、大丈夫じゃない?」

「昔、そう言ってくれた人がいました……。ふふっ」

37 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:45:01.53 UbJCGWEo 290/410

「帰ってきたよ」

キモオタ「お帰り、男君」

「ああ、ただいま。……まさかキモオタ君たちが来てくれるとは思わなかったよ」

キモオタ「モールのゾンビは倒し尽くして、近辺のゾンビもあらかた狩り尽くしたんだ。
   だから範囲を広げることにしてね。それで街を回ってたら、空港にゾンビがたくさんいるのが見えたのさ」

「そうか……。君は立派に責任を果たしたんだな……」

キモオタ「いや、まだまださ。……まだ、僕の罪は贖えちゃいないよ」

38 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:46:24.76 UbJCGWEo 291/410

「そんで……そこの強姦未遂魔タカシも」

タカシ「嫌味かそれは」

「いや……まさか君も来てくれるとは考えもしなかったからさ」

タカシ「ふん、糞デブに連れてこられただけだ。パトロールとか……下らな――」

キモオタ「こいつ、男君と女さんに謝りたいっていつも言っててさ。パトロールには必ず――」

タカシ「黙れ糞デブ! いいかお前、これは違うかんな!」

「はは、わかってるよ。……幼も、よく来てくれた」

「恩人である女さんと、大好きな男君のためですからね。ふふっ」

「おやおや、色男だねぇ、お前」

「うっさいな……」

ジョン「ヘイボーイ、休憩は終わりにして、そろそろ行こうかい?」

「……ああ、そうだな」

ジョン「ハッハー! いざ研究所、目指すはシンデレラ奪還だぜェ!」

39 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:47:24.38 UbJCGWEo 292/410

「なぁキモオタ君、南西に軍用施設なんてあるかい?」

キモオタ「ある……というよりは、あった、かな」

「……?」

キモオタ「数年前に、そこは使用されなくなったはずだけど」

「カモフラージュか……汚ねぇ奴らだぜ」

「そうか……、ありがとう。……黒服の言葉は、正しかったのか……」

ジョン「そうと決まれば行くしかねぇ、早く行こうぜェ!」

「ああ。……だけど、七人も乗れる車……あるかな?」

キモオタ「残念だけどタカシが運転してきた車は小さすぎるな……」

タカシ「るせぇ!」

マユミ「空港だし、リムジンとかあるんじゃない?」

ジョン「じゃあそれで行こうぜェ! ハハハッ、シンデレラを迎えに行くにはおあつらえ向きだなァ!」

40 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:48:15.28 UbJCGWEo 293/410

「リムジンだね」

「広いからね……その分武器をできるだけ積んでおこう」

「お、酒がついてるじゃねえか!」

ジョン「飲むのかよォ?」

「それも良いが、飲むのは完全勝利を勝ち取った後だな。それまでは……お預けだ」

タカシ「そろそろ出るぞ。糞デブ、マユミ、早く入れ!」

キモオタ「あいよー」

マユミ「せっかちだなあ……。だから早漏なんだよ」

タカシ「黙ってろ!」

「くく……」

「童貞のお前が笑えんのかよ」

「うっさい!」

41 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:49:07.55 UbJCGWEo 294/410

【リムジン車中】

「……」

「……」

「……」

キモオタ「……」

マユミ「……」

ジョン「アイゴッタァバーニンラーブッ! 青く輝く炎で、この悲しみを、燃やし尽くす時までェー!」

タカシ「うっせえからすこし黙ってろ!」

ジョン「ヘイヘイヘイ、タカシひどいなァ」

タカシ「……いきなり馴れ馴れしいな」

ジョン「ハハハ、口開けてるのはお前と俺だけだからなァ!」

42 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:50:32.36 UbJCGWEo 295/410

(……研究所……、なにがあるかは、わからない)

(さっきのゾンビもそうだ……、奴らは進化してる)

(倒すのには骨が折れるし、死ぬ可能性もある)

(……むしろ死ぬ可能性の方が高いけど……、だけど)

(尻込みなんてしていられるか。……女さんを助けて)

(女さんに……これを渡すんだ……)

(……そして言おう……)

(…………結婚してくれって)

43 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:51:25.33 UbJCGWEo 296/410

「……後、どれくらいかな」

キモオタ「……十五分もないと思うよ」

「そうか……」

「……いよいよだな」

ジョン「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ……」

「誰と?」

ジョン「ボーイ、これはジョークだぜェ」

「ふふ、面白い人ですね、ジョンさんって」

ジョン「みんな緊張しすぎだって。笑えよ、笑えば気持ちも明るくなる!」

「ふ……あんたを見てると苦笑しか漏れてこねぇよ」

ジョン「だがそれも笑いには違いない。……笑わなきゃ、人は生きて行けねぇんだよォ」

「じゃあジョン、歌い続けてくれよ。苦笑くらいは漏れてくるから。ははっ」

ジョン「必要ないぜ、もうお前は笑ってるからなァ。ハハハッ」

44 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:52:33.75 UbJCGWEo 297/410

【研究所前】

タカシ「へっ……着いたぜ、シンデレラのお城だ」

「……よし……行こう!」

ジョン「オーケィ、死ぬ気で行くぜェ!」

「本当に死んだらダメですけどね」

キモオタ「……よし!」

「へへへ……この酒のためにも、そう簡単には死ねねぇなぁ」

マユミ「まだまだ男漁りが足りないしー」

タカシ「…………」

45 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:53:24.05 UbJCGWEo 298/410

「……何の変哲もない……ただの建物だな」

「だが……中はおぞましい奴らが蠢く魔の城だ。……死ぬなよ、男」

「姉貴こそ」

「……最後の、家族なんだからな」

「わかってるよ……」

「……言ってなかったけど、あたしはブラコンなんだ」

「は、はぁ?」

「……お前のハートが女ちゃんに持ってかれたかと思うと、なかなか泣けるぜ」

「姉貴……お前……」

「……悲しいが、同時に嬉しい」

「……」

「お前が選んだ子だからな。……へへっ、なかなか良い趣味してやがるぜ」

「そいつは、どうも」

「子供の命名権は、あたしによこせよ。くくくっ」

「やらねーよ」

47 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:56:25.39 UbJCGWEo 299/410

「男君……」

「……どうした?」

「死んじゃいやだよ。絶対に生きてね」

「ああ、そのつもりだ」

「私が死んでも、気にしないで、必ず女さんを助けるんだよ」

「幼……それは……」

「女さんは……笑っていないとダメな人だと思うの。そして、その笑顔を取り戻せるのは、君だけだから」パチコーン

「いてっ」

「ふふっ、幼馴染みが昔から腕を磨いてきたデコピンだもん。喝が入ったでしょ?」

「そうだな、凄く」

「それなら良いんだ。私は……昔から、男君の幼馴染みで、これからもずっとそうだもん」

「……幼、でも、やっぱりダメだ」

「なにが……?」

「お前も、俺も、女さんも、みんなが生きて戻るんだ。……そうしないと、女さんは心の底から笑えないはずだ」

「男君……」

「だから、生きるんだ。いいな。勿論俺だって死ぬつもりはない」

「うん……! ……それじゃあ行こう? 女さんを取り戻すために!」

「ああ!」

48 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:58:11.25 UbJCGWEo 300/410

タカシ「あー、クソガキ」

「ん、俺?」

マユミ「へへっ、タカシ、念願の土下座タ~イム」

タカシ「るせぇ……。……クソガキ……いや、男……」

「……」

タカシ「あの時は、悪かったな……。お前は何ら間違っちゃいなかった」

「タカシ……」

タカシ「……糞デブたちとモールで過ごしてく内に……、いかに俺が矮小な男だったかがわかった」

「……」

タカシ「……俺は、女にも謝らないといけねぇ。……だから、必ず、必ず勝つぞ」

「ああ、そのつもりだ。……協力、頼むよ」

タカシ「任せろ。……汚名挽回する時が来たぜ」

マユミ「名誉挽回ね。汚名挽回じゃ余計ダメっしょ」

タカシ「うるせぇ!」

49 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:59:03.76 UbJCGWEo 301/410

ジョン「ボーイ……わかってるな? やることは一つだ」

「女さんの、奪還」

ジョン「そうだ。お前はそれだけを考えてれば良いんだぜェ」

「どういう意味だ?」

ジョン「そう言う意味だ。……ゾンビどもは俺たちに任せて、お前はさっさとシンデレラを取り戻すんだよォ」

「何言ってんだよ。それじゃあ意味ないだろ」

ジョン「……」

「お前も生きて、女さんを笑わせるんだよ」

ジョン「……」

「つーか、全員で生き残るのが……絶対の目標で目的だ。良いか?」

ジョン「やぁれやれ……。理想論だと言いたいがァ……魅力的だな。ギャグについては俺のセンスが誰よりもぴかいちだからなァ」

「それはない」

ジョン「ひでぇぜマイフレンド。ハハッ…………行くか!」

「……行こう!」

50 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 20:59:57.41 UbJCGWEo 302/410

【少し時間が遡って、研究所・内部】

黒服「……博士」

博士「ふん、来たか……」

「離して……!」

黒服「……」パッ

「っ……出たな……!」ギロッ

博士「そんな目で見るな。被検体が生意気な」

「私をこうしたのは……あなたでしょ……!」

博士「そうだな。……いやはや、いつか試そうと思っていた実験が、成功するとは」

黒服「……」

博士「実に良いデータが採れた。感謝しようじゃないか……、被検体」

「黙れ……ッ!」

博士「だが……、脱走したというのは頂けないな」

「汚い手で触るな……!」

博士「……躾がなっていないか、やはり……」

51 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:00:54.79 UbJCGWEo 303/410

博士「……黒服、こいつを部屋にぶち込め。私は少し休む。こいつの解剖は明日だ」

黒服「……」

博士「わかったら早くお前も消えろ、目障りだ」

黒服「……」

ガチャリ

博士「くく……。奴を解剖すれば、耐ゾンビウィルスのワクチンを作るどころか、ゾンビウィルスを死滅させるウィルスを作ることだって可能だ」

博士「そうして、それを学会で発表してみろ……」

博士「私は一躍ヒーローじゃないか?」

博士「くく……、政府は既に機能していない。故にこのプロジェクトが外部に漏れることはない」

博士「……自分で作ったウィルスを自分で殺す。それだけで評価されるんだ、実にこの世は素晴らしい、くくく」

52 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:01:54.08 UbJCGWEo 304/410

黒服「……」

「私は解剖されるの?」

黒服「……そうだ」

「……そう」

黒服「……」

【被検体004・部屋】

黒服「……入れ」

「……変わってないな。……暗いしジメジメしてるし、独房の方が正しいよ、これ」

黒服「……」

「……喋らないの」

黒服「……」

「……」

黒服「……信じることは、悪い事じゃない」スタスタスタ

「! ……行っちゃった……」

53 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:03:28.73 UbJCGWEo 305/410

「男さんのことだよね……きっと……」

「助けに……来てくれるのかな……?」

「信じよう……。……きっと、必ず……」

「男さん……。もう一度会いたいよ……」

「みんなに……。私が出会った、かけがえのない人たちに……」

「……だから私も……まだ諦めない……」

「……私はまだ、生きて……生きて男さんの側にいるんだ」

「負けるもんか……」

「負けるもんか……!」

54 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:05:11.24 UbJCGWEo 306/410

【研究所・敷地内】

「……なにもない……」

「静かすぎて逆に怪しいな」

「……というか、人がいるような形跡がない……。なんで……?」

タカシ「地下とか、そこらへんにいるんじゃねえのか?」

キモオタ「その可能性が一番高いね。廃墟の地下に研究所、よくあるパターンじゃないか」

「……じゃあ、この建物は単なる飾り物か……」

ジョン「地下への入口を捜そうぜェ?」

「そうしよう。……中に入るよ」

55 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:06:50.07 UbJCGWEo 307/410

【研究所内部】

「……暗いな」

マユミ「電気ないのー?」

「地下の施設に電力を回しているから、電気がないとか」

「ありえるな……、しかし暗いぞ。キモオタ君だっけか。ライトはないか?」

キモオタ「二つあります」

ジョン「two? ……七人をhalfにわけるのか」

「……それしかないか」

「んじゃ、とっとと決めようぜ」

56 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:08:28.05 UbJCGWEo 308/410

【男・姉・幼・ジョン】
【キモオタ・タカシ・マユミ】

「わかれたな」

タカシ「そうだな」

「……男と一緒か、へへっ」

「ぐわっ、いきなり腕に抱きつくな!」

「お姉ちゃん、暗いところ苦手なの~」

「キモい」

「ひでぇ野郎だ」

マユミ「それじゃ、大体三十分後くらいにまたここに集合?」

「そうだな。そうしよう。三人とも、無事で」

キモオタ「大丈夫。二人は僕が守るよ」

タカシ「るせぇぞ糞デブ。それは俺の台詞だ」

キモオタ「頼もしいね」

58 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:09:20.88 UbJCGWEo 309/410

「……暗いね」ギュッ

「暗いな……」ギュッ

ジョン「くらーい」ダキッ

「あんたら全員ひっつくな暑苦しいいいい!」

「いーじゃねえか、姉弟だろ?」

「幼馴染みだよね?」

ジョン「マブダチだろォ?」

「そういう問題じゃねえ!」

59 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:11:05.19 UbJCGWEo 310/410

「いつどこにゾンビどもが出てくるかわからないんだ……。万全の態勢で」

「……へぃへぃ。わかりましたよ……」

「姉貴っ」

「お前が焦ってるのはわかるけど、ちょいと落ち着けよ、な?」

「俺は焦ってなんか……」

ジョン「焦ってるぜェ。……いいか、焦りってのは、物や人を探す上で一番まずい」

「……」

ジョン「焦りは怒りと同じく、正常な判断、思考を妨害する……。ガールを見つけたいんなら、少しクールダウンしようぜェ」

「それがいいよ、男君」

「……わかった」

「へへっ」

「でも抱きつき禁止」

「……泣くぞ」

60 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:12:32.89 UbJCGWEo 311/410

【研究所内部・一階】

「……扉が何個かあるけど……虱潰しに開けていくか?」

「ああ」

「……じゃあ、これからだね」

ジョン「準備はオーケィだぜェ」

「……開けるよ」……ギィ

「何もいねぇか……?」

「お姉さん、だめですっ!」

ゾンビ「うあー」ガタッ

「ちっ、出た!」

「姉貴、屈んで! ……頭を……!」パァン

ゾンビ「う……」ゴトッ

「……死んだ……?」

ジョン「ああ。……まだ完全に全部のゾンビが進化した訳じゃねえみたいだなァ」

「……むしろここだからじゃないかな」

「……地下の研究所の中には、もっと進化した奴がいるってこと……?」

63 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:13:22.03 UbJCGWEo 312/410

「そう考えるのが妥当だよ」

「……その時は、私のチェーンソーの出番だね」

「頼りにしてる」

「うんっ、任せて」

「だけど、任せてばかりじゃまずいな……。何か効率の良い手段を考えなきゃ」

ジョン「じゃあ、それも含めて他の部屋も探そうぜェ」

「そうだな、早く見つけて、女ちゃんを助けないと」

「……そうしよう」

「……頑張ろう?」

「ああ」

64 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:14:44.19 UbJCGWEo 313/410

「……なあ、男」

「どうした?」

「ここの奴らって……ゾンビを手なずけてるのかな」

「……、わからない」

ジョン「微妙なところだよなァ」

「俺たちが戦っている内に、あいつらは耐久力が上がってきてる。それは知性も同じだ」

「だから……もしかしたら……、命令で動くゾンビもいるかも知れない」

「……手強いな」

「……うん」

「……」

65 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:16:35.11 UbJCGWEo 314/410

【研究所・地下実験施設】

モニター『……ザザッ……ザ……』

博士「ん……? 侵入者か?」

博士「……やれやれ、探険ごっこのつもりなんだろうが……」

博士「ここに来たのが運の尽きだったな」

博士「いずれ死ぬ運命に…………、ん?」

『またかっ! 頭を!』パァンッ

博士「……ほぅ……これは面白いネズミが飛び込んできたな」

博士「黒服」

黒服「……」

博士「005の評価実験を行なう。標的は、あいつらだ」

黒服「……」スッ

博士「さぁて、上手く行くかな……? せいぜい楽しませてくれよ、被検体」

66 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:17:47.52 UbJCGWEo 315/410

【被検体004・部屋】

「……男君……来てくれてるのかな……。無事かな……」

「ねぇねぇお姉ちゃん、その、男君って誰?」

「え? 誰?」

「ここだよここ。私の部屋とお姉ちゃんの部屋、小さな穴があるんだよ」

「あ、ほんとだ……。ちょっと待ってて」

「うん」

「よいしょっ……と。もしもし?」

「あはは、目が見えるー」

「へへ、君もここに閉じ込められてる子? あ、私は女って言うの」

幼女「私は幼女だよ、よろしくね」

「うん、よろしく」

幼女「それで、その男君って?」

67 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:18:59.00 UbJCGWEo 316/410

「私の大事な人。凄く格好良いんだよ」

幼女「そうなんだ……。お姉ちゃん、脱走してた人でしょ?」

「え? うん……」

幼女「良いなぁ……。外は楽しかった?」

「……うん、とっても」

幼女「私も、もう一度外に出たいな……。もう、いつからここにいるのかもわからないよ」

「そうなの……。君みたいな小さな子まで……」

幼女「でも、いつか出られるよね、きっと」

「うん。出られるよ。男君が私を助けに来てくれるから……、その時は一緒に、ね?」

幼女「うんっ、楽しみにしてる」

「……男君……どうか、無事で……」

68 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:20:33.18 UbJCGWEo 317/410

幼女「……あ、ねぇねぇ」

「なに?」

幼女「お姉ちゃんには、何か特殊な力とかあるの?」

「特殊な力?」

幼女「うん。例えば、力持ちだー、とか……」

「特殊……な力か……」

幼女「?」

「……持ちたくもないのに、手に入れた力が一つだけ。……それも、世界を滅ぼせるほどの」

幼女「そうなの? すごーい!」

「凄くないよ……」

幼女「私はね、お人形さん遊びが出来るんだよ。全然凄くないけど。えへへっ」

「ううん、お人形さんだなんて、可愛らしいよ。幼女ちゃんに似合ってると思う」

69 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:21:27.05 UbJCGWEo 318/410

幼女「じゃあ、見せてあげるね。私のお人形さん遊び」

「うん、お願いね」

(ほほえましいなぁ……)

ゾンビ「うあー」
ゾンビ「うーあー」

「ひっ……!」

幼女「ダメだよー、アシャー、エヴィン。お姉ちゃん怖がってる」

ゾンビ「う……」ショボン
ゾンビ「あ……」ショボン

幼女「あはは、良い子だね。じゃあ、一列に並んでっ!」

ゾンビ「あうー」ピシッ
ゾンビ「うあー」ピシシッ

幼女「へへっ、お姉ちゃん、どう?」

「そんな…………。ゾンビを操るなんて……」

幼女「どーしたの? ねぇ……?」

70 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:22:57.89 UbJCGWEo 319/410

「それ……は……幼女ちゃん……」

幼女「?」ニコニコ

「ゾンビじゃない……」

幼女「ぞんび? ぞんびってなに?」

「……」

(どうして、何で……、何でゾンビが操れるの……?)

(いや、それもあるけど……、こんな小さな子まで実験に使うの……?)

(どうして…………)

(何がしたいの…………?)

幼女「この子たちはね、私の大事なお人形さん! えへへっ」ダキッ

ゾンビ「あー」ナデナデ

幼女「えへっ……」

ゾンビ「うあー」

「……っ」

71 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:26:12.08 UbJCGWE0 320/410

「幼女ちゃん……あなたのお人形は……」

幼女「なに?」

「それはお人形じゃないの……。だから……」

幼女「あははっ、お姉ちゃん何言ってるの?」

「それから離れないと……!」

幼女「どうして? アシャーもエヴィンも、こんなに優しいのに」

ゾンビ「うー」

ゾンビ「あー」

幼女「ね?」ニコニコ

「……違うの、違うんだよ、幼女ちゃん……!」

73 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 21:32:23.43 UbJCGWE0 321/410

黒服「……」ガチャリ

「!」

幼女「あ……、何……?」

黒服「……着いてこい」

幼女「アシャーもエヴィンも一緒で良い?」

黒服「……連れてこい」

幼女「はーい!」

「ちょ、ちょっと……! 幼女ちゃんをどこに連れて行くのよ!」

黒服「……研究所に迷い込んだネズミ退治だ」

「ネズミ……?」

黒服「……信じた結果か……はたして」

「!」

黒服「……行くぞ、005」

幼女「準備は完璧!」

「だ、ダメ! これじゃあ、幼女ちゃんと、男さんが……! 待ってよ!」

黒服「……その穴は、後で塞ぐ」

幼女「お姉ちゃん、行ってきま~す」ガチャリ


「あ……そんな……」

88 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 22:05:06.59 UbJCGWE0 322/410

黒服「……」ガチャリ

博士「来たか」

幼女「あ……」

博士「随分と怯えた目をしているな」

幼女「こないで……っ」

博士「ふん……、良いか被検体。今からお前の性能評価実験を行なう」

幼女「な、なに……?」

博士「……まあ、お前は知らなくても良いことだな。腕を出せ」

幼女「え、え……?」

博士「ふん……」プスッ

幼女「あ、注射……っ……」

黒服「…………!」

博士「……これで、よしだ。005、お前は今から、ここに迷い込んだネズミを狩り尽くせ。いいな」

幼女「……………………はい」

博士「黒服」

博士「……」

幼女「行こう、アシャー、エヴィン」

ゾンビ「うー」

黒服「……っ」ガチャリ

博士「さぁて……実験は果たして成功か、それとも失敗か……」

93 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 22:14:18.71 UbJCGWE0 323/410

【研究所・二階】

「……くそ、手がかり無しだ……」

「手がかりはないくせに、疲労だけはたまっていくね……」

ジョン「ゾンビども、まだまだいやがるみたいだなァ」

「……ったく……。この部屋で二階も終わりか……」

「どうせまた、ゾンビがいるんだろうけどさ……」

ガチャリ

「……」ギュィィィィィィィン

ジョン「Oh、ゾンビどもはいないぜェ」

「ほんとだ。……しかし……広いな、この部屋」

「広間……?」


幼女「そうだよ……。憩いの場……、ダンスパーティのための……」

「!?」

ジョン「オゥ、ゾンビじゃない……?」

「……誰……?」

96 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 22:18:36.18 UbJCGWE0 324/410

幼女「誰でも良いじゃない……。それより……、一緒に踊ってよ、ネズミさん」

ジョン「マウス? 俺たちがかァ?」

幼女「……、アシャー、エヴィン、扉を閉めて」

ゾンビ「うー」

ゾンビ「あー」

ガチャン

「ゾンビ!?」

「ってことは、この子も……!」

ジョン「それにしては知能高杉じゃねえか!?」

「あなたは……」

幼女「……お前たちには死んで貰う……」

「くっ……!」

ジョン「中ボスってか!」

幼女「おいで、私の可愛い人形たち……」

ボトッ    ボトボトボトボトボトッ……

99 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 22:21:54.83 UbJCGWE0 325/410

「天井、から……?」

「落ちてくる……」

ゾンビ「うーあー」
ゾンビ「あーうー」
ゾンビ「ああー」
ゾンビ「うーおー」
ゾンビ「あーおー」

「いかに数が多くとも……!」

ジョン「だが、俺たち結構Tiredだぜェ……」

「くそっ……!」

幼女「さぁ、ダンスパーティーの始まりだあ……」

幼女「みんな……踊って……」

103 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 22:27:20.60 UbJCGWE0 326/410

ゾンビ「うあー」スタタッ

「素早いっ!?」

ゾンビ「うー」

「させるかよっ!」パンパンパンッ

ゾンビ「う……」

「幼、大丈夫か!?」

「男君……ごめん!」

ジョン「こいつら今までとは比べものにならないくらい早いぜェ!?」

「くそったれめ! 囲まれたら終わりだぞ!」ドゴッ

「わかってるよ!」パンパンパン

ゾンビ「あ……」

ゾンビ「う……ぁ」

ゾンビ「あ……」

幼女「……私の可愛いお人形さんが……。でも大丈夫なの、まだまだいるから」

ドンッ ドドドドドド

ゾンビ「うあー」

「マジかよ……」

107 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 22:34:01.90 UbJCGWE0 327/410

「斬る! 邪魔だああああああ!」ザザザザザザザンッ

ゾンビ「うあー」

ゾンビ「あー」

幼女「うわぁ……豪快だね……。でも、まだまだ……。みんな、そこのチェーンソー女と遊んであげて……」

ゾンビ「あー」

ゾンビ「うー」

「っ!」

ジョン「Shit! 目標を変えて来やがったぞ!」

「幼ちゃん!」

「くそっ、幼!」

「大丈夫、これくらい……、全部斬り捨ててやる……!」

ゾンビ「うあー……」

「姉貴、ジョン、悪いけど他の奴を頼む! 俺は幼を!」

「わかってる、早く行け!」

「どけどけどけどけえぇぇぇぇっ!」ズガガガガガガガガガガ

「幼! 大丈夫か! 今行く!」

「男君!」

109 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 22:38:10.18 UbJCGWE0 328/410

幼女「……男?」

幼女「……どこかで……聞いたような……」

幼女「どうでもいいや……。みんな、その男も狙っちゃって……」

ゾンビ「あうー」

「へっ……来いよゾンビども!」パパパパパンッ

「何が何でも斬り捨てる!」

ジョン「俺たちも囲みを解くぜェ!」

「おうよ!」ザシュッ


「はああああああああっ!」

「おおおおおおおおおっ!」

ゾンビ「おーうー」

ゾンビ「うーあー」

111 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/24 22:46:18.79 UbJCGWE0 329/410

幼女「うーん……」

幼女「おとこ、おとこ……」

幼女「……うーん?」

幼女「……まあ、いいや……」



「幼、後ろの敵はまかせたぞ!」

「うん! 背中合わせで戦うのって……なんだか漫画みたいだね」

「だが悲しいかな現実だ! 行くぜ!」

「うんっ!」

「墜ちろカトンボども!」

「ええいっ、寄るな、寄るなぁー!」



ジョン「Hey……、あのようじょを倒さない限り、俺たちに勝機はないんじゃねぇかァ」

「……ああ、そうかも知れねぇな……だけど……」

ジョン「……やれるわけねぇ……!」

146 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 18:14:04.85 zPfTAZo0 330/410

幼女「……しつこいなぁ……、早く落ちてよ……!」

ゾンビ「あー」
ゾンビ「あー」
ゾンビ「うー」

「しつこいのはそっちだっ! 次から次へと湧いて来やがって……!」

ジョン「あのようじょを倒すしかないのかァ……!?」

「だけど……、あんな……小さい子を……!」

「そうだ……憎むべきは彼女じゃなくて……彼女にそうさせてる研究所の奴らだ!」

148 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 18:20:09.04 zPfTAZo0 331/410

「……けれど彼女は、明確な敵意を持って攻撃してくる……」

「ああ、そうだな……、でも、時折表情が変わるから……それが……」

「敵は排除しなくちゃ……この戦いに、終わりなんて来ない……」

「幼……お前まさか……」

「……女さんに会うんでしょう! こんなところで、足を止めてるわけには……ッ!」ダッ

「幼、待てッ! うかつに近づくと……!」

幼女「来るの? 遊んでくれるの? 踊ってくれる? あははっ、アナベル、エギーユ、カリウス……やっちゃえっ」

ゾンビ「あああああああああ!」ダダダダダッ
ゾンビ「おおおおおおおおお!」ダダダダダッ
ゾンビ「ううううううううう!」ダダダダダッ

「あのゾンビ、素早い!」

149 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 18:22:59.07 zPfTAZo0 332/410

「幼!」

「確かに早い……けどっ!」

ゾンビ「あああああああああ!」

「所詮はゾンビよっ!」ズシャッ

ゾンビ「あああああ……あ……」

「……ふん、私を敵に回すはまだまだ未熟! お前も落ちろぉっ!」ズザッ

ゾンビ「おおおおおおおお……」

「さぁ、どう……? 切り札はやられてるけど?」

幼女「あははっ、お姉ちゃんはまだまだ踊れそうだね……。じゃあ……」

「……?」

幼女「……おいで、私のお人形さん!」

「まだか……!」

150 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 18:26:53.27 zPfTAZo0 333/410

「幼、少し下がれ! 無理しすぎだ!」

「まだまだ! 男君を先に行かせるんだ……、そのためには!」

「幼、落ち着け!」

ジョン「そうだぜェ! ユーは少しクールダウンしろォ!」

「私は……私は冷静だぁぁぁぁっ!」

「どこが冷静だよ……!」

「敵はみんな切り刻む! 最後はお前もだ!」

幼女「あは、出来るかな?」

「出来る出来ないじゃない……、やるんだっ! あああああああああッ!」ザンッ

151 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/08/25 18:28:53.17 zPfTAZo0 334/410

幼女「踊れ踊れー、あははっ」

幼女「……うーん……」

幼女「頭がクラクラするなぁ……」

幼女「……そういえば……」

幼女「おとこ……って、誰?」

幼女「うーん……」

幼女「…………みんな、あいつらを踊らせてあげて!」

ゾンビ「ああああああううう!」

154 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 18:32:18.71 zPfTAZo0 335/410

(ゾンビを操っているのはあの幼女……!)

(ゾンビは無尽蔵に出てくるし、私たちの体力は無限じゃない!)

(だったら……!)

(幼女を倒して終わりにする!)

「悪いけど……殺す!」

「幼、待てッ! あんな小さい子を……!」

ジョン「そうだぜェ! あのようじょを殺したら……俺たちは後悔するぞォ!?」

「大丈夫」

「何がだよ……」

「罪を被るのも、後悔するのも……そんな煩わしいことは、全部私が引き受けるから」

「な……幼!」

「男君は女さんのことだけ気にしてればいいの!」ダッ

156 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 18:35:26.01 zPfTAZo0 336/410

「……あーくそ、格段に早くなってやがる! 男、あたしらがこいつらを引き受けるから……」

ジョン「ボーイはデンジャラスガールを止めろ! そうしなきゃ……あの子は一生引きずるぜェ!」

「わかってる! 頼むぜ二人とも!」

「お姉ちゃんを信じろって! しくじんなよ!」

「おう!」

158 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 18:42:05.67 zPfTAZo0 337/410

「はあああああああっ!」

幼女「くるの? させないけどねっ!」

ゾンビ「うー」
ゾンビ「あー」
ゾンビ「おー」

「肉の壁? ……無意味だねッ!」ザ、ザザザザンッ

ゾンビ「あ……」
ゾンビ「お……」
ゾンビ「う……」

幼女「横一文字で斬り裂いた……。あはは、やるじゃん、イカれたお姉ちゃん♪」

「君もすぐにこうしてやるさ!」

「待てよ、幼!」

160 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 18:46:18.60 zPfTAZo0 338/410

「男君……?」

幼女「おとこ……」

「落ち付けって……、言ってんだろ……」

「……止めても無駄だよ、これが一番正しい選択だもん」

「それはわかってる」

「じゃあ……!」

「でも、この子は被害者だろ!? 俺たちが助けようとしてる、女と同じなんだよ!」

「……」

「だから俺は……出来るなら、この子も助けたい。そりゃあ、青臭いガキの理想論だ、無茶なのはわかってる」

「……」

「けどさ、こんな小さい子を殺したら……お前も俺も、一生引きずっちまうだろ……。この子は、ゾンビじゃないんだぜ……?」

「でも……、この子がゾンビを操ってる! それなら!」

「この子は……何かの方法で操られてるんだ……。見ろ、彼女を」

幼女「……?」

161 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 18:50:16.98 zPfTAZo0 339/410

ゾンビ「うー……!」

ジョン「オゥ、こいつはどうしたゾンビども! バッテリー切れかァ!?」

「へっ、そうとわかりゃあこっちのもんだ!」

ドガッ、バキッ、メチャッ


「な? 彼女が少しおとなしくなると、ゾンビどもの動きも鈍る……」

「……」

「だから、まだ可能性はあるんだよ。彼女を相手にしなくても良い可能性がさ」

「…………わかったよ……。男君がそこまで言うのなら、私からは何も言えないや」

「ありがとう……幼」

162 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 18:53:22.99 zPfTAZo0 340/410

幼女「……ぁ、いた、いたいよぉ……っ」

幼女「頭が……頭が……痛い……!」

幼女「ああああああ…………!」

ゾンビ「……うー」

幼女「あ、うわぁぁぁん、いたいよぉぉ……」

「おい、大丈夫か!?」

幼女「い、いたいの……頭が……たすけて……」

「……男君、私は今の内にゾンビを!」

「あ、ああ!」

幼女「ああああああ、いやあああああああああ」

「だ、大丈夫だから、落ち着け、落ち着いて……、な?」

165 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 19:04:32.04 zPfTAZo0 341/410

【研究所内部】

幼女『ああああああ、いやあああああああああ』

博士「ちっ……、もう禁断症状か」

博士「役に立たんな……」

博士「脳波でゾンビをコントロール……、感受性豊かなガキなら成功するかと思ったのだが……」

博士「……ふん、いても目障りなだけか……。黒服」

黒服「……」

博士「被検体003を出す。皆殺しにさせろ」

黒服「……は、奴を……ですか」

博士「被検体の中でもかなり頑丈かつ凶暴な003だ。……面白くなってきた」

166 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 19:10:25.41 zPfTAZo0 342/410

幼女「……あ、あぁ……」

「落ち着いたかい?」

幼女「う……ん……」

「男、でかした。部屋のゾンビどもは狩り尽くしたぜ」

ジョン「上から落ちてくる気配もないぜェ!」

「男君の言うとおりだったね……、私、もう少し落ち着かないとダメかも」

「いや、でも……、ここのゾンビを倒し尽くせたのはお前のおかげだよ」

「えへへ、ありがとう」

「さて……、この子に研究所の場所を聞かないとな……」

幼女「…………けんきゅうじょ……」

168 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 19:15:33.01 zPfTAZo0 343/410

「ああ、そうだ……。そこに、俺の大事な人が閉じ込められるんだ」

幼女「だいじな……ひと……。お姉ちゃんも同じ事、言ってた……」

「お姉ちゃん?」

「それってもしかして、女ちゃんじゃ」

幼女「……女お姉ちゃ――」

ドゴォォォォンッ

ジョン「うおっぷ! な、何が起こってんだァ!?」

「天井が落ちてきたんだよ!」

ジョン「何でだよォ!?」

003「……ひゃひゃひゃ、ひゃひゃひゃひゃひゃ!」

「……なに、あいつは……」

170 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 19:18:51.68 zPfTAZo0 344/410

「でっか……」

ジョン「あのでぶちんの五倍はあるぜェ!?」

「でぶちんって……キモオタ君のこと?」

ジョン「イエスッ!」

デブ「……で、デブって言うなあああああああああ! ひゃひゃひゃひゃひゃ!」

「な、何なのよ……!」

デブ「ひゃひゃひゃ! 落ちろォー!」

「!」

デブ「唸れ鉄拳! アイアァァァァン、ナッコォォォォォ!」

ズガァンッ

ジョン「ヘイヘイヘイ! 床に亀裂が走ってるぜ、おい!」

「なんて膂力だよ……!」

173 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 19:21:45.10 zPfTAZo0 345/410

「っ! 男君、亀裂の先に……!」

「え?」


幼女「ふぇ……」


「あの子ッ!」

「落ちちゃう……!」

(どうする! あの子に一番近いのは俺だ!)

(……俺が助けた言ったんだ、俺が助けなくてどうすんだ!)

「うおおおおおおおっ、間に合え、間に合えぇぇぇぇぇっ!」ダッ

幼女「床が……」

「君ッ!」ダキッ!

幼女「ぇ……」ギュッ

「みんな、悪い……!」

「え、男っ!?」

「うああああああああっ!」

ヒュウゥゥゥゥゥゥゥ……

174 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 19:25:19.08 zPfTAZo0 346/410

ジョン「ヘイヘイヘイ……冗談だろ?」

「男が……下に……落ちた……?」

「で、でもっ、下には部屋があるはず……!」

003「ひゃひゃひゃ、無駄だなぁ……」

「!」

003「下は……『奴ら』で一杯だぁ……。死んだも同然……ひゃひゃひゃひゃひゃ!」

「っ! そんなの、ハッタリに決まってる!」

003「まぁ、信じなくても良いけどなぁ……? ひゃひゃひゃ、どうせあいつにお前らは出会えない……」

ジョン「どういう意味だァ? このFat Man! 解答次第によっちゃあ、容赦しねぇぜェ!」

003「お前らを殺すぅぅぅぅ! ひゃひゃひゃひゃひゃ!」

「……男……、無事でいてよ……」

「お姉さん、男君に会うためにも!」

「ああ……、そうだね、ここでこいつを倒すよ……!」

175 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 19:28:34.70 zPfTAZo0 347/410

ザガッズガッズガッ……ドシィンッ

「うごぉぁっ……」

幼女「…………っ」

「く、……この子は……無事か……」

幼女「…………」

「くそ……いたいな……」

幼女「…………」

「体が……うごかねぇ……っ」

幼女「…………」

「はやく、みんなを……」

ゾンビ「うー……?」

「!」

205 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 22:15:57.89 zPfTAZo0 348/410

ゾンビ「あー」
ゾンビ「うー」
ゾンビ「おー」

ワラワラ……

「く、くそっ……! 体に、力が……!」

幼女「…………」

「銃を……せめて銃を取れたら……!」

幼女「…………」

「ダメだ……、腕も動かねぇっ……」

幼女「…………」

「く、そっ……!」

ゾンビ「あああああああー」

「終わりかよ……! こんな、ところで……!」

206 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 22:19:31.28 zPfTAZo0 349/410

「あれだけ大口叩いて……、また俺は……!」

「この子を守るとか……、これじゃあ、全然意味がない……!」」

「俺もこの子も、喰われて終わり……」

「みんなを残して先に逝くのか……?」

「母さんや父さんだけじゃなく……、女さんも……」

「惚れた女一人守れないのかよ……っ! 俺はッ!」

「くそ、くそおおおおおおおおっ!」

ゾンビ「ああああああああ」グイッ

「……女さん……すまない……!」





『ここまで来ておいて、諦めるのか?』

207 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 22:24:19.43 zPfTAZo0 350/410

黒服「……ふっ」ドカッ

ゾンビ「あー……」

黒服「……はっ」グキッ

ゾンビ「う……」

黒服「……!」シュッ

ゾンビ「お……」

「あ、れは……、空港の……?」

黒服「……貴様がまさか生き残ってここまで辿り着くとは思いもしなかった」

「……へっ……」

黒服「だが、期待はずれだ」

「何を……」

黒服「……空港で見た時の貴様は……、男だった」

「……」

黒服「今の貴様は……、単なる敗者だ」

「!」

208 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 22:31:30.23 zPfTAZo0 351/410

黒服「……あの瞳には覚悟があった」

「何だと……? 今だって……」

黒服「いや、ない」ズカッ

ゾンビ「あ……」

黒服「……貴様は諦めていた」

「……」

黒服「……被検体004を取り戻すのだろう?」

「その名前で……」

黒服「……今の貴様が何をほざこうと、それは負け犬の叫び声だ」

「っ……」

黒服「……あの時の覚悟を見せろ。そうでなくては……貴様にリークした意味がない」

「リーク……だと……」

黒服「……良いか貴様、今は試練の時だ。乗り越えろ、その壁を。乗り越えて見せろ」

「……ぐ、勝手な事言ってくれるぜ……」

黒服「……出来ないのか? あれだけの大口を叩いたんだ……。それともあれは……004の気を引くための演技か?」

「っ!」

209 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 22:36:48.14 zPfTAZo0 352/410

「あれは……偽りない俺の本心だ……!」

黒服「ならば、今すぐここでそれを証明しろ。証明してみせるんだな」

「……やったろうじゃねえか……!」

黒服「……ふん」

「見せてやるよ……、俺の言葉が、嘘じゃなかったことをな……!」

「っ、……く、あぁ……っ! うあああああああああああああっ!」

「……右、足……! ひだり、足…………!」

「立て、立つんだ……俺の……言葉が……偽りでないことの証のために!」

「ああああああああああああああああああああああああッ!」

黒服「……ふ、出来るじゃないか」

「お前の言うとおり……、俺は諦めてたのかも知れない……」

黒服「……」

「だが、目が覚めた……! 礼を言うぜ……!」

黒服「……そんな下らないことに時間を費やすのなら、ここの奴らを殲滅することを考えるのだな」

「言われなくてもっ……!」

212 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 22:44:55.28 zPfTAZo0 353/410

「……うらああああああっ!」バンバンバンッ

黒服「……はあっ!」ドンッ

ゾンビ「うあー……」

ゾンビ「あうあ……」

(柔術……? ……しかし、強いな……)

黒服「……終わりだ。……っ!」ボキッ

ゾンビ「ぅ……」

黒服「……殲滅完了」

「は、はは……やべ、力が抜けた……」ドサッ

黒服「……これをやろう」ヒョイッ

「……?」

黒服「……薬だ。今の貴様は、激しく体力を消耗している。それを飲めば、一時間ほどで容態はマシになる」

「……なんで、これを……?」

黒服「……貴様には死なれると困る」

「なんでだ? お前は……俺たちの敵だろ?」

黒服「……敵だ」

「じゃあ……」

黒服「……敵にも、敵はいる」

「は……?」

黒服「……研究施設は、地下にある……。柱を探すんだな」

「柱……」

黒服「……貴様を信じて待っている者がいる。それを忘れるな」

「あ……おい……!」

215 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 22:49:38.68 zPfTAZo0 354/410

「なんなんだ……?」

「とにかく、薬か……」

「怪しい……が、あいつは……、悪い奴ではないような……」

「どうする……?」

「……」

「……」

「……」

「飲もう。……今は、あいつを……信じるしかない」

ゴクッ

「……はぁっ…………、な、なんだ……、視界が、ぼやける……! 体が、熱い……!」

「……くっ、あ、……なんだ、これは……!」

216 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 22:51:17.05 zPfTAZo0 355/410

「うあぁぁ…………っ!」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………ぐぅ」

220 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 22:55:22.58 zPfTAZo0 356/410

幼女「…………ん、ぁ……」

幼女「わたし……どうして?」

幼女「アナベル? エギーユ、カリウス……どこ? キース、エイパー、ベルナルド……。……みんな、どこ?」

幼女「いない……。どうして……?」

幼女「ねぇ……みんなぁ……」

幼女「お願いだよ……、私と遊んで……」

幼女「ねぇ……。……ぐすっ……ふぇぇぇぇん……」

「……あ……?」

幼女「う、ぐすっ……、みんなぁ……どこぉ……」

「泣いてる……? あの……君……」

幼女「うわぁぁぁん……」

223 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/25 23:00:08.21 zPfTAZo0 357/410

「子供に……泣かれた……」

幼女「うわぁぁぁぁん……、みんあ、みんなぁ……」

(こういう時って、頭を撫でてあげると良いのかな……)

「立ち上がって……。あれ……あれ? 体が、いたくない……」

「あの薬の……おかげか? なんにせよありがたい……」

幼女「ふぇぇぇん…………。みんな、いないよぉ……」

「あの、君……」

幼女「どうして……。ねぇ……。遊ぼうよぉ……」

「……泣かないで、ね?」ナデナデ

幼女「カリウス……? じゃ、ない……」

「ごめんね……君のお人形じゃないけど……、これくらいは、俺にも出来るから」ナデナデ

264 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/26 23:05:16.84 3U8fv2.0 358/410

幼女「……お兄ちゃん……う、ぐすっ……」

「……良い子だから、ね……? 泣かないで」ナデナデ

幼女「うん……」

「君のお友達は、遠いところに行ったんだ」

幼女「そうなの……?」

「うん。こう言ってたよ。……『僕たちがいなくても泣かないで』だって」

幼女「……アナベルたちが……?」

「ああ、そうさ。君のことを最後まで思ってたよ」

幼女「……うん……」

「だから、君は、彼らを安心させてあげなくちゃいけないよ」

幼女「わかった……わかったよ……」

(……俺が彼女の『お友達』を殺したのにな……)

268 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/26 23:15:14.79 3U8fv2.0 359/410

「……どう、落ち着いたかい?」

幼女「う、うん……」

「……俺は男。君は……?」

幼女「よ、幼女……」

「幼女ちゃんか。……こんなに小さいのに……」

幼女「どうしたの、お兄ちゃん?」

「お兄ちゃん……。もっと呼んでくださ――いや、幼女ちゃん、俺はこれから行かないといけないところがあるんだ」

幼女「うん」

「それで、君に少し聞きたいことがある。……君を嫌な気持ちにさせてしまうかも知れないけれど、ごめんね」

幼女「う、うん……」

「研究所には、どうやっていくんだい?」

幼女「!」

271 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/26 23:24:56.37 3U8fv2.0 360/410

幼女「お兄ちゃんは……あそこに行くの……?」

「ああ、行く。行かなきゃならない。あそこには、女さんがいるんだ」

幼女「お姉ちゃんが……」

「……どうやって、行けばいいのかな」

幼女「……あそこには……行きたくないよ……」

「……どうして?」

幼女「嫌な人がいるの……。いつも、気持ち悪く笑っている人……。怖いの……」

「……」

幼女「私たちを……、物みたいに……」

「!」

幼女「あそこに行ったら、お兄ちゃん……あいつに殺されちゃうよ!」

「……ああ、そうかもしれないね」

幼女「え……」

「だけど、それでも俺は行かなくちゃならない。そいつを倒さなくちゃならないんだ」

272 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/26 23:29:51.29 3U8fv2.0 361/410

「俺は、女さんを救うと決めた。約束もした」

「死ぬ覚悟だって……今はもう、ちゃんと出来てる」

「だけどその前に……、女さんや、君を酷い目に遭わせたそいつを……」

「一発殴らなきゃ気が済まない。……そうだろ?」

「君たちは、そいつのせいでこんなところに閉じ込められて……」

「欲しくもなかった力を手に入れて……」

「そいつは神様気取りなんだろうけど……、そんなのは間違ってる」

「それを、叩き込みに行くんだ。……だから、幼女ちゃん……」

幼女「……真ん中の、おっきい柱に……エレベーターがあるの……」

「!」

幼女「そこから、ずっと……降りるの……」

「そうか……、そうなのか……。ようやく、ようやく見つけたぞ……!」

ドガシャァァァン!

「!」

「……上……? ……上! みんなが……ッ!」

380 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 20:32:28.50 qTd3WwM0 362/410

「みんなが……!」

幼女「お兄ちゃん……行くの?」

「ああ、みんながいるんだ、あそこには!」

幼女「やめておいた方が良いよ……」

「え……?」

幼女「被検体003は……凶暴で……お兄ちゃん一人の手には負えない」

「そりゃそうだろうな。でも、あそこにはみんながいる……。だろ?」

幼女「ううん……無駄だよ……。勝てないよ、絶対」

「……どうして……、そんなことが言える?」

幼女「……」スッ

「上……?」

ボトッ

「!」

381 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 20:39:03.05 qTd3WwM0 363/410

幼女「……」

「おい……なんだよあれ……」

幼女「……」

「腕……? 腕……。誰の……? 腕だ……?」

幼女「お兄ちゃんは、お姉ちゃんを助けるんでしょ……? 早く、行かないと……」

「で、でも、あれは……誰の腕だ……? ジョンか? 姉貴か? 幼か……?」

幼女「そんなこと……気にしてる暇無いでしょ……!」

「だけど、みんなは俺の仲間なんだ!」

幼女「お姉ちゃんとみんな、どっちが大切なの!?」

「……!」




『ずっと、一緒にいたい……』





「くそ……、また俺は……口だけで救えなかったのか……!」

幼女「お兄ちゃん……」

「幼女ちゃん、行こう……。俺がもたもたしている間にも……みんなを助けられるチャンスが減っていく……」

幼女「うん……」

(あの腕が……誰のものかはわからない……。……くそっ!)

タタタタタタタッ

384 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 20:43:35.63 qTd3WwMo 364/410

003「ひゃひゃひゃ! どうだよぉ……?」

「……」

「くっ……、うっ……おぇ…………」

ジョン「ヘイヘイヘイ! しっかりしてくれよ二人ともよォ!」

003「ひゃひゃ、ひゃひゃひゃひゃひゃ!」

ジョン「ったく……これじゃ俺が頑張るしないじゃねぇかァ? ヒーローとしてなァ」

003「訳わからんこといってんじゃねえぇぇ! ひゃひゃひゃひゃひゃ!」



ジョン「わからせてやるよ、ファットボーイ。テメエの足りないおつむに、思い切りな」


387 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 20:49:28.49 qTd3WwM0 365/410

「幼女ちゃん、どこにエレベーターがあるの!?」

幼女「えっとね……、あそこを上って……!」

「了解!」

タタタタタッ

ゾンビ「うああああああああああ」
ゾンビ「あああああああああああ」
ゾンビ「おおおおおおおおおおお」

「くそ、出やがった!」

幼女「待って……! お願い……みんな、今は私たちを……」

ゾンビ「……うあー」

「す、凄い……」

幼女「えへへ。みんなが出てきたら任せてよ」

「ああ、頼む!」

389 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 20:51:12.87 qTd3WwMo 366/410

キモオタ「……ん? みんな、何か聞こえなかったかい?」

タカシ「はぁ? 何も聞こえないぞ?」

マユミ「ちょっと待って……。微かに、だけど……、地響きみたいな、そんな音がする」

タカシ「マジか?」

キモオタ「……もしかして、男君達かな」

タカシ「多分そうだな……。あいつら大丈夫か?」

マユミ「助けに行く? ここはもう何もないし」

キモオタ「そうだね……。男君達のところに向かおう!」

392 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 20:55:34.06 qTd3WwMo 367/410

「これが……柱……」

幼女「そう」

「ここには来たけど……、でも、気づかなかったぞ……」

幼女「……仕方ないよ。……この本棚に、スイッチがあるの」

ポチッ

ガタタタタタタタタ

「う、うわっ……」

幼女「来るよ……。エレベーター……。……地獄への片道切符」

「……望むところだ」

幼女「うん」

395 : やってもうた ◆XtpqcHhp... - 2009/08/30 21:01:24.42 qTd3WwM0 368/410

ガチャッ

「……狭くて暗いね」

幼女「仕方ないよ……」

「で、どうして君は俺に抱きついているのかな」

幼女「……暗いのは、あまり好きじゃないから」

「そっか……。なぁ、幼女ちゃん」

幼女「なに?」

「……もしも俺が死にそうになったら、君はちゃんと逃げるんだよ」

幼女「……どこに?」

「んー……まだ、この世界のどこかには、きっと安全な場所があるはずだからさ」

幼女「探せってこと?」

「出来るなら」

幼女「考えとくね」

「そいつはどうも」

396 : なんかパー速重いね ◆Xtpqc... - 2009/08/30 21:05:35.79 qTd3WwM0 369/410

幼女「……お兄ちゃん、心配?」

「何が?」

幼女「全部。……これからどうなっちゃうかとか」

「そうだなあ……。今は、女さんを取り戻すことしか考えてないや」

幼女「そうなんだ」

「俺にとってかけがえのないものは、やっぱり女さんやみんなとの思い出だから」

「引きこもりだった俺に、色々大事なことを教えてくれたのは、女さんだし」

「……もしも全部が終わったら、その時はその時だよ」

幼女「……そんな考え方、嫌いじゃないや」

「あまり俺に似ると将来困るよ。はは」

ポーン

「着いたか……」

幼女「うん……」

ギィィィ

399 : なんかパー速重いね ◆Xtpqc... - 2009/08/30 21:13:46.47 qTd3WwM0 370/410

博士「……よく来たね、ネズミ君」

「……あんたは……?」

幼女「ひっ……」

「……そうか、あんたが……!」

博士「……ネズミ君、いやはやここまで来てもらって悪いが……」

「てめえ!」

黒服「被検体005は返してもらおう」

スチャッ

「っ!」

パンパンパン

「っと、幼女ちゃん、逃げろ!」

幼女「……いや、いやぁ……」

「幼女ちゃん!」

博士「無駄だ。……005、回収完了」

「お前ええ! 放せ! 幼女ちゃんを放さなきゃ、撃つぞ!」

博士「やってみるかね?」

「っ、てめえを殺してここで終わりだ糞野郎がああああああああ!」

パンッ!

400 : なんかパー速重いね ◆Xtpqc... - 2009/08/30 21:19:28.79 qTd3WwM0 371/410

ガキィンッ

「なに……?」

博士「ははは、はははははははは! 私が策無しで貴様のような猿の前に現われるとでも思っているのか?」

博士「だとしたら貴様は愛すべき馬鹿だよ……。くくくくく!」

「てめえ……!」

博士「何でも被検体004を取り戻しに来たそうだが……」

「その名前で女さんを呼ぶな!」

博士「無駄だと言うことが何故わからないのか……。学習能力がないものは本当に相手にしにくい」

「お前はあああああああ!」

パンパンパンッ

博士「無駄だというのに……」

「何でだよ! 死ねよ、死ねよぉぉ!」

博士「……黒服」

黒服「……」

スチャッ



パァンッ

「ぐっ……!?」

401 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 21:26:09.39 qTd3WwM0 372/410

幼女「お兄ちゃんっ!?」

「あ……が……っ……!」

黒服「……」

博士「黒服。どうして腕だけなんだ?」

黒服「……奴らならまだしも、こいつは生身の人間です」

博士「お前にも情はあると? ふん……、まあいい。そいつの処理は任せる」

黒服「……はっ」

博士「奴らの餌にするなり、煮るなり焼くなり好きにしろ」

黒服「……」

博士「005は連れて行く」

黒服「……」

幼女「お兄ちゃん! お兄ちゃん! お姉ちゃんを助けるんでしょ、お兄ちゃん!」

「あ、……く…………」

(そういや俺……銃で撃たれたこととか無いんだな……。こんなに、痛いのか……)

402 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 21:30:11.30 qTd3WwM0 373/410

黒服「立てるか」

「んな……わけ…………あがぁっ……」

黒服「憎まれ口は叩けるわけだ……。肩を貸してやる」

「はぁっ……、っ、ぐ……」

黒服「……すまないな。痛いだろう」

「…………たり、まえ……」

黒服「……すぐに楽にしてやる……」

(それは……どういう……意味……)

黒服「……」



黒服「気絶したのか。……まあいい、こちらとしてもやりやすくはなる」

403 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 21:36:28.43 qTd3WwM0 374/410

003「ひゃひゃひゃ!」

ブゥン!

ジョン「アヒョーゥオ! 腕がそのまま武器になるとは流石だぜェ!」

003「うるさい……!」

ジョン「しっかし……この状況は流石にきついぜェ……」

ジョン(……デンジャラスガールは気絶……)

「……」

ジョン(ビッグシスターは立ち上がる気力無し)

「……く、……そ……」

ジョン(タカシ達が来てくれるのをwaitするしか無いかァ?)

003「ぬぅん!」

ジョン「っと、力業だけじゃ、勝てるもんも勝てないぜェ!?」

003「黙れぇ!」

ジョン「ハハッ、ヒーローの戦い方……じっくり教えてやるぜェ!」

409 : すいませんでした ◆XtpqcH... - 2009/08/30 21:48:15.17 qTd3WwM0 375/410

タカシ「ったく、つーかあいつらどの部屋にいやがんだよ!」

マユミ「多分こっちで合ってるとは思うけど……」

キモオタ「大分音は近づいてる……。大丈夫だ! 早く行こう!」






003「ぬぅんっ!」

ジョン「デンジャラスガール……、ユーの得物、借りるぜェ!」

003「チェーンソーか……。無駄だ!」

ジョン「……無駄かどうかは、俺が決めるんだよォ!」

003「ぐおらっ!」

ジョン(奴の攻撃パターンは左、右と順番に腕を振り回すだけ……)

ジョン(何度かそれを繰り返した後……隙が出来る!)

ジョン「それまでは逃げ続けるぜぇぇぇ!」

410 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 21:53:51.03 qTd3WwM0 376/410

003「ふぅ!」

ジョン「よっと!」

003「はあ!」

ジョン「甘いぜ」

003「ぬおっ!」

ジョン「ふっ……見えたぜ、隙がな!」

003「何……! 胸元に迫って――」

ジョン「グッバイ……ファットボーイ」ギュイイイイイイインン

ザシュッ

ジョン「……ん?」

003「ひゃひゃひゃ! 効くわけねぇよ……」

ジョン「くっ、なんだこいつ……! 鉄板でも埋め込まれてるってのかよォ!」

003「だぁ~いせぇ~いかぁ~い」

ジョン「ちっ……!」

412 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 22:00:49.40 qTd3WwM0 377/410

ジョン「弱点はあるのかよォ……」

ジョン(頭……、だが、それは背丈的にきつい……)

ジョン(それに、胸に仕込んでやがるんだ……。頭にも埋め込んでるに違いねェ!)

ジョン(じゃあこれで詰みか?)

ジョン(いや、違う……全ッ然違うぜェ……)

ジョン(斬れないのなら……砕けばいい……)

ジョン(その方法は……、タカシ達が握っている……!)

ジョン(タカシ達が来るまで、俺は……)

ジョン(とにかく奴を疲れさせる……!)

003「覚悟は良いかよ、ひゃひゃひゃ!」

ジョン「やることは決まった! 行くぜェ!」

413 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 22:07:30.63 qTd3WwM0 378/410

003「ん……」

ジョン「ヘイ、腕が止まったぜェ!?」

003「何もお前だけ相手にしなくても良いと思ってなぁ、ひゃひゃひゃ!」

ジョン「!」

「……ぐ……」

「……」

ジョン「そいつは卑怯じゃねえかァ? 男なら正々堂々勝負しろよォ!」

003「いやなこった……。この娘可愛いじゃないか……ひゃひゃひゃ!」

ジョン「そのデンジャラスガールは危険だからやめといた方が良いぜェ。ついでに、そっちのビッグシスターもなァ……」

003「やな、こった……!」

ジョン「てめえ、何するつもりだよォ!」

ガシッ

003「握る」

「あ、う……」

ジョン「ヘイヘイヘイヘイ! ちょっとそれはレディに対する態度としては間違いじゃねぇかァ!?」

003「勝てばいいのさ、ひゃひゃひゃひゃひゃ!」

414 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 22:13:30.56 qTd3WwM0 379/410

ジョン(くそ、どうする! ビッグシスターに何かあったら、俺はボーイに顔向け出来ねェ!)

ジョン(いや、そんなんじゃねェ……。仲間を傷つけられてたまるかよォ!)

ジョン(……ん……? 奴の指は……仕込まれてるのか……?)

ジョン(試す価値だけはある……!)

ジョン「ヘイ、ファットボーイ! プリンセスは返してもらうぜェ!」

003「出来るのかよ、ひゃひゃひゃ!」

ジョン「正直聞き飽きた言葉だがなァ……。出来る出来ないじゃなくて、やるんだよォ!」ギュイィィィィィン

003「ひゃひゃひゃ! 死ぬ気かよ!」

ジョン「生きるために戦ってる!」

415 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 22:26:39.73 qTd3WwM0 380/410

ジョン「喰らえってんだよォォォォォ!」

ジョン「ガール直伝! 天翔龍閃!」

003「ひゃひゃ、どこを狙って――」

ジョン「俺のこの手が光って唸る、お前を倒せと轟き叫ぶゥ! ああああああああああっ!」

ザシュッ

003「ひ、ひいっ……!?」

ジョン「ビンゴォ! 流石にそこまでは仕込みきれなかったってかァ!?」

「っ、……」

ジョン「おっといけねぇ、レディは丁重に扱わねぇとなァ……」

ダキッ(お姫様だっこ)

「……ん……」

ジョン「……おっといけねェ……、寝ているレディを襲うのは反則だ」

003「お、俺の指が……ひゃひゃひゃ……」

ジョン「……いける……!」

419 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 22:51:02.93 qTd3WwM0 381/410

ジョン「らああああああああああっ!」

キモオタ「タカシ、掃射だ!」

タカシ「あいよ!」

バババババババババババ

ジョン「来たか……!」ニヤリ

003「仲間かよ、ひゃひゃひゃ! だが、何人来ようと同じ事だよぉ!」

キモオタ「ジョン! 男君は!」

ジョン「ボーイは色々あって別行動中だ! それよりでぶちん、ダイナマイトはあるかァ!?」

キモオタ「ダイナマイト? あるけど、それをどうするんだい!?」

ジョン「使うに決まってんだろうがよォ!」

003「ごちゃごちゃうるさいんだよ、ひゃひゃひゃ!」

マユミ「……一閃!」

シャッ

003「ちっ……」

ジョン「ナイスフォロー!」

マユミ「任せといて」

420 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/08/30 22:58:56.26 qTd3WwM0 382/410

タカシ「おいおいおい……、チェーンソー女も、男の姉貴もダウン中かよ」

ジョン「ああ、だからすまねぇがタカシ、彼女らを連れて逃げてくれよ」

タカシ「は?」

ジョン「でぶちん、ダイナマイトをくれよォ」

キモオタ「う、うん……」

ジョン「タカシ、ライターだ」

タカシ「ライター……?」ヒョイッ

ジョン「ハハッ、こいつは行けるぜ……! 奴を破壊するには大爆発しかねェ!」

マユミ「あんた、何言って……」

ジョン「だからァ? ヒーローであるこの俺がァ……」



ジョン「奴に突っ込む!」

キモオタ「そんな無茶な!」

ジョン「ダイナマイトを投げただけでは奴に致命傷は与えられねェ……」

ジョン「なら、ギリギリまで近くにいた方が良いだろォ?」

タカシ「んなことしたら、お前が死ぬだろ!」

ジョン「ここにいたって、みんなが死んじまう……。なら、俺一人の犠牲で済めば楽な話だろォ」

マユミ「ちょ、ちょっと……! いくら何でも無茶苦茶……」

716 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/10/29 21:10:57.94 gMG1AQ20 383/410

ジョン「俺は面白黒人だゼェ? 死ぬわけがねえだろ?」

マユミ「何言って……」

キモオタ「……。ジョン……」

ジョン「どうしたでぶちん」

キモオタ「……任せた」

ジョン「それでいい……それでなあ」

タカシ「な、キモオタ、おい!」

キモオタ「覚悟を決めたんだよ……ジョンは。その覚悟は、僕たちの言葉でどうこうできるもんじゃない」

マユミ「だからってここで無駄に命を散らしても……」

ジョン「無駄じゃないゼェ。仲間を助けられること……これ以上の幸せはねぇ」

タカシ「ジョン……」

ジョン「行きな! ガールとボーイを助けるんだ!」

キモオタ「……ジョン、君に会えてよかったよ。君は、僕が見た中でも一番の漢だ」

ジョン「嬉しい事言ってくれるじゃないの」

717 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/10/29 21:17:12.36 gMG1AQ20 384/410

003「ゴチャゴチャ五月蠅いんだよ!」

ジョン「大丈夫、話は終わった。俺とお前で素敵にランデブーだぜェッ!」

003「ああああああああああっ!」

ジョン(キモオタ達は逃げた……。俺はここでリタイアだ……)

ジョン(ボーイ……)

ジョン「女を泣かせる奴は最低だって、よく覚えておけよおおおおおぉぉっ!」

003「!?」

ジョン「ジョン・スミス・ダイナマイトボンバーァァァァァァァァ!」

003「は、離せっ!」





ジョン「吹き飛べ、この化け物がよぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!」


ドガァァァァァァアンンッ

718 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/10/29 21:19:14.81 gMG1AQ20 385/410

マユミ「あ……ああ…………」

タカシ「くっ……」

キモオタ「……行こう、みんな」

「ん……」

「……く」

キモオタ「……男君はどこにいったんだろう……」

マユミ「……」

タカシ「……探さなくちゃな……」

721 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/10/29 21:29:46.08 gMG1AQ20 386/410

【地下・監獄】

「がふっ……」

おっさん「……む…………人間? 数ヶ月ぶりに見たな」

黒服「……どうも」

おっさん「なんだ、お前が連れてきたのか……」

黒服「ええ」

おっさん「どうしたんだ?」

黒服「彼の腕から、銃弾を取り除いていただきたい」

おっさん「撃ったか」

黒服「仕方ありませんでした」

おっさん「道具がないが」

黒服「ここに」

おっさん「用意が良いな。……それにしても、何故こんな少年が……」

黒服「被検体003を取り戻すために」

おっさん「……ああ……キャリアーか……」

797 : ◆XtpqcHhpns[] - 2009/12/23 17:04:51.71 hMDctsc0 387/410

おっさん「こいつは一体誰なんだ?」

黒服「被検体004の……恋人……なのでしょうか。わかりません」

おっさん「フン、恋人のために単身乗り込んできたってところか。泣かせるね」

黒服「……いい加減、博士のやり方は目に余ります」

おっさん「……」

黒服「……いえ、忘れてください」

おっさん「いや、お前さんの本音が聞けて案外嬉しいよ」

黒服「……」

おっさん「じゃ、久しぶりにメスを振るうとしますか」

798 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:08:55.95 hMDctsc0 388/410

「……うぅ」

おっさん「目が覚めたか坊や」

「!? あんたは……誰だ?」

おっさん「俺は……ここに閉じ込められてる可哀想な中年さ」

「……」

おっさん「身構えないでくれよ。俺はお前さんの恩人だぜ? 腕が軽いだろ」

「あ……」

おっさん「黒服の頼みでな」

「あいつが……?」

おっさん「まあいい……、さて、お前さんがどうしてここに来たのか聞いても良いかな」

「俺は、女さんを助けるためにここに来たんだ」

おっさん「女……、被検体004か」

「その名前で女さんを呼ぶな」

おっさん「おう、怖い怖い」

799 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:11:20.14 hMDctsc0 389/410

「あんたは、女さんがキャリアーになった理由を知ってるのか?」

おっさん「知ってる。というか、むしろ、俺がそうした」

「――!」

おっさん「おっと、話は最後まで聞いてから行動を起こすべきだぜ」

「……」

おっさん「ホントはなぁ、あの娘は女神になれるはずだったんだよ」

「女神……?」

おっさん「ゾンビウィルスってのはな、細胞が死なないまんまになるんだ。言うなれば永遠の命を手に入れてるも同義だ」

「……だけど、死んでるじゃないか」

おっさん「俺は平和利用が出来ると思ったのさ。馬鹿馬鹿しい戦争も何も終わらせられるような素敵なウィルスだ」

「……」

おっさん「ゾンビウィルスの女王であるあの娘は……、女神になれるはずだったんだ」

「……」

おっさん「そもそもゾンビウィルスって呼び方自体がアレだけどな、問題は博士――、お前も会ったろ、あのキチガイ」

「ああ」

おっさん「俺の弟なんだがな……、俺の研究を横取りした挙げ句、世界の支配者になるとか何とか言い出してこれだよ」

「……そ、そんな下らない理由でここまで人を殺したのか?」

おっさん「あいつにとっては大真面目だろうよ。馬鹿馬鹿しいがな」

800 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:16:59.57 hMDctsc0 390/410

「止めないと……」

おっさん「止めて、どうなるんだ?」

「は?」

おっさん「もう世界の人口の半分以上がゾンビか、あるいは死んでるんだぜ? コロニー落としレベルだな」

「でも、逆に言えばまだ半数は生きてるんだ」

おっさん「へぇ、面白い事言うな」

「俺はその人達を助けるためにも、女さんを助けるためにも、やらなくちゃいけない」

おっさん「なるほど、お前の気持ちはわかった。が、どうするんだ? 博士を殺したところで、あの娘はキャリアーのままだぜ」

「だからどうした。俺は女さんのそばにずっといる。女さんと共に歩いていくつもりだ」

おっさん「やれやれ馬鹿だな。あの娘は生きてるゾンビなんだぜ? 死なないし、もう年も取るまいよ」

「関係無いね」

おっさん「……はは、言い切るね。面白い。……そういう熱い奴は、俺、大好きなんだ」

「……」

おっさん「これをやるよ」

「ば、爆弾?」

おっさん「これで壁をぶっ壊せるだろ」

801 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:20:33.57 hMDctsc0 391/410

「あんたはなんで使わなかったんだ?」

おっさん「諦めてたのさ。弟に全てを奪われ、こんなとこにぶち込まれて、なんか、どうでもよくなっててな」

「……」

おっさん「そんで、まあ、使わなかったけど、未来ある若者に託そうじゃねえか」

「あんたはどうするんだよ」

おっさん「逃げも隠れもする気はないなあ」

「……あんた、女さんをキャリアーにする技術があったんだよな」

おっさん「ああ。そうだが?」

「女さんを普通の人間には戻せないのか」

おっさん「……やってやれないことはない。時間がかかるし設備も必要だが」

「……この研究施設の設備だったら?」

おっさん「まあ余裕だろ。そもそもここでやってたわけだし」

「頼む。彼女を普通の人間に戻してやってくれ」

おっさん「……」

「彼女に、なんのしがらみもない世界を見せてやりたいんだ。ゾンビの女王でもない、キャリアーでもない、ただの、年相応な少女の目で、世界を見せてやりたいんだよ」

おっさん「……若いってのは良いねぇ」

「頼む……」

おっさん「へいへい、お前さんの情熱には負けたよ。俺も一肌脱ぎますか」

802 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:23:19.81 hMDctsc0 392/410

「いち、にの、さん!」

バンッ

「爆破完了」

おっさん「こっちをそのまままっすぐ行け! そうすりゃあの馬鹿弟の研究室だ! ゾンビには気ぃつけろよ!」

「わかってる! アンタも頼むぜ!」

おっさん「はっはー、まっかせなさ~い!」

(女さん……幼女ちゃん……今助けに行くから!)

おっさん(……何かに打ち込める奴は、見ていて清々しいよなぁ)

「うおおおおおおおおおお!」

804 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:26:38.89 hMDctsc0 393/410

【研究室】

博士「なんだ? 騒々しいな」

ビーッビーッ

博士「む、脱走か! ゾンビ部隊を出せ」

黒服「は……」

博士「005!」

幼女「ひゃんっ」

博士「部隊を動かせ。貴様のゾンビどもを動かして、あの男を殺せ」

幼女「う、……い、……」

博士「ん?」

幼女「い、ぃ、いやだぁぁっ!」

博士「!」

幼女「あ、あなたの言う事なんて、ぜっっったいにきかない!」

博士「……くく、ふふ、ふはは、反抗するのか? 私に? この私には向かうのかクソガキが!」

バキッ

幼女「きゃああっ!」

黒服「っ……」

博士「はぁ……、はぁ……、モルモットが私に逆らうな!」

バキッ

805 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:29:06.15 hMDctsc0 394/410

博士「……黒服。004を出せ」

黒服「……何故です?」

博士「奴も一応、脳波でのコントロールが出来るようにしてあるからな」

黒服「……」

博士「ふふ、ふはは、ふはははは!」

幼女「お、お姉ちゃん……」

【被検体004・部屋】

黒服「……」

「あ……、あなた」

黒服「出ろ」

「ついに解剖?」

黒服「いや……、それよりも酷いかもしれんな」

「え……?」

806 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:31:55.00 hMDctsc0 395/410

「うあああああああああ!」

ゾンビ「うー」
ゾンビ「あー」
ゾンビ「おー」

「どけどけどけどけどけぇ!」

ゾンビ「あ」
ゾンビ「あ」
ゾンビ「あ」

「後どれくらいで研究室だ!? 女さんは、幼女ちゃんは無事なのか!?」

「ジョン、キモオタ君、タカシにマユミに幼、姉……。みんなと生きて、帰るんだぁぁぁ!」

807 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:36:30.05 hMDctsc0 396/410

博士「よく来たな004」

「……」

博士「このモニターを見ろ」

「……あ、男さん!?」

博士「今からお前には、こいつを殺して貰う」

「え……」

博士「お前にもゾンビをコントロールするための機構はあるからな……」

「そんな、そんなこと……」

博士「嫌でも、してもらうがな……ククク」

(注射器……!)

博士「ふふ、ふふふ……」

黒服「004! 幼女を連れて逃げろ!」

「えっ?」

パンパンパンッ

博士「ぬぅっ!? 何をする黒服……!」

黒服「あなたのやり方は、目に余る。ここらが潮時でしょう」

808 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:42:32.78 hMDctsc0 397/410

博士「この裏切り者がぁああああああああ!」

黒服「何とでも言え! ……あなたには拾って貰った恩があるが、もうそれもここまでだ!」

博士「がああああああああああああああああああ!」

黒服「妹を化け物にし、そして死なせた恨み、忘れはしない!」

博士「この糞野郎があああああああああああああああああ!」

黒服「これで、終わりだ――!」

博士「うおおおおあああおあおあおあああああ、わはああはははっはひっひはははああ!」

黒服「!?」

博士「おおおおおおれええええはははああはははああ、せせせせかいあいかかかかいいいいをおをををおおお」

黒服「ゾンビウィルスを埋め込んであったのか!?」

博士「わたさんああなななあああああいいいいいいい! わたさないぞおおおぞぞおぞおおおおおおおお!」

黒服(俺もここまでか……。ふ……ふふ……)

グチャッ……ベキッバリッグシャッモグモグ……ゴクン…………ゲェップ……

809 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:45:20.77 hMDctsc0 398/410

【廊下】

「どこに……」

「男さん!」

「えっ……」

「男さんっ!」

「お、女さん……、女さん、なんだね……?」

「うん、うんっ……! 私、待ってた、信じてた、きっと、あなたが来てくれるって!」

「女さん……。ああ、助けに来た。みんないるんだ。一緒に……一緒に帰ろう!」

「男さん……!」

ギュッ

幼女「らぶしーん?」

810 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:47:23.82 hMDctsc0 399/410

「って、名残惜しいけどこんなことしてる場合じゃないんだ。女さん、君を普通の人にできるかも知れない」

「え?」

「……監獄であったおっさんが、技術を持ってるんだ。君を元に戻す、技術を」

「そう、なんだ」

「だから……」

おっさん「おい少年! どうなった!?」

「おっさん!」

おっさん「おっさん言うな。……被検体004と005か。助け出したんだな」

「ああ。ところで、出来たのか?」

おっさん「おう、ばっちりだぜ」

「……私を、人間に戻す事が出来るんですか?」

おっさん「ああ。そうだ。それが俺のケジメでもあるかなってな」

「それだったら私……、お断りします」

「え」

おっさん「ほぅ」

811 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:49:42.27 hMDctsc0 400/410

「世界に混乱が訪れたのは、元はと言えば私の責任ですから」

「私が人間に戻って、幸せに暮らしました、なんてエンディングは」

「あっちゃ、いけないんです」

「確かに私は望まずにこんな体にされてしまった」

「けど、私がもっと強い心を持っていれば、ゾンビが増えることなんて無かったでしょう?」

「私は、その罪を背負って生きていく義務があると、思うんです」

「女さん……」

おっさん「ま、お前さんがそういうのなら俺は構わんがね」

「女さんはそれで良いのか? 君だって、自分の幸せを求める権利があるはずだろう!?」

「あら、それだったらもう、十分幸せですから」

「まるで物語のお姫様のような、素敵な体験をさせてもらったから……。ね、私の王子様」

「う……」

おっさん「若いって良いねえ」

幼女「恥ずかしいけどね」

812 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:50:48.36 hMDctsc0 401/410

博士「ウゥゥゥ……」

「ん? あの、なにあれ」

幼女「らすぼす?」

「博士……かなあ」

おっさん「変わり果てたな、我が弟」

博士「ウギャアアアアオオオオォッ」

おっさん「おい少年!」

「なんだ!?」

おっさん「これをやるよ」

「レポート?」

おっさん「大事に取っとけ! いつか、必ず役に立つから!」

「って、あんたはどこに行くんだよ!」

おっさん「最後のケジメをつけに行く! 施設を爆破して、弟もろともお星様になるさ!」

「あんたが死ぬ必要はないだろ!」

おっさん「いや、弟を止められなかったのも、嬢ちゃんを化け物にしちまったのも俺の責任だ」

おっさん「死んで、残った俺の責任から逃げてる感じもするけど、なぁに、まあいいさ」

おっさん「大人はずるい生き物だからな」

「おい、あんた!」

おっさん「じゃあな、少年、そして嬢ちゃん!」

タタタタタッ

「くそっ!」

「男さん、今は、あの人の言うとおりに外へ!」

「……ああ、そうだな」

813 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:52:47.49 hMDctsc0 402/410

博士「キサマァ、ニゲダシタノカァ」

おっさん「なあ弟よ。いい加減目を覚まそうぜ」

博士「ウルサイウルサイウルサイ」

おっさん「お前が俺のことを恨んでたのはわかるぜ。俺は天才だからな」

博士「ウウウウウウウウ」

おっさん「だけど、他人を巻き込むのは感心しねえな」

博士「ウル、サイ……」

おっさん「俺とお前の二人のケジメ、しっかりここでつけようじゃん」

博士「コロス」

おっさん「殺される前に、起爆スイッチは押させて貰った、けどな」

博士「ウガアアアアアアアアアアア」

おっさん(生きろよ少年少女達!)

814 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:55:19.70 hMDctsc0 403/410

【外】

キモオタ「……」

タカシ「ジョンも、男も、女も出てきやしない……」

マユミ「……きっと、帰ってくるよ……」

「男君……」

「男……、姉貴を置いて死んでたら、許さないかんね!」

幼女「みんな~! 早く離れてええええ!」

キモオタ「え?」

幼女「屋敷が、基地が、爆発するからああ!」

キモオタ「えええええ!」

タカシ「キモオタ、車だ車!」

マユミ「えっと、お嬢ちゃん、男と女は?」

幼女「もうすぐ、来るから!」

「男君……!」

「帰って、来るんだね!」

815 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 17:58:33.09 hMDctsc0 404/410

「女さん、走れる!?」

「ちょ、ちょっと……無理かも……」

「わかった!」

ダキッ(お姫様だっこ)

「え、ええっ?」

「しっかり捕まってて! あのリムジンが、お姫様を迎えに来た魔法の馬車だ! 行くよ!」

「男さん……」

「……」

「ありがとう、助けに、来てくれて」

「当たり前だろ? ……俺の一番、大事な人なんだから」

「うん……私も!」

817 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 18:01:51.26 hMDctsc0 405/410

キモオタ「男君、女さん、乗ったね!?」

「ああ、遅くなった!」

タカシ「よく帰ってきたな!」

「しん……心配したんだからね!」

「よかった、二人とも……」

マユミ「お疲れ。今はお休み」

「みなさん……」

キモオタ「走れええあああああ!」

ドガァァァァァァァァァァンンッ!

幼女「あ、燃えてる……、基地が……」

「私たちの忌まわしい記憶も、一緒に、ね……」

「……あれ」

タカシ「どうした?」

「ジョン、は……?」

キモオタ「……」

「……死んだ、よ」

819 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 18:05:55.91 hMDctsc0 406/410

「ジョンが……、死んだ……」

「そんな……」

タカシ「デカブツを倒すためにな……」

「……そう、か」

黒人「そんな暗い顔するんじゃないぜ。お前さんたちは生きてる。生きているならHappyだ」

全員「……」

黒人「おぅ、みんな反応が暗いぜェ?」

「ジョン? ジョンなんだよな?」

ジョン「That's right! 面白黒人は死なない。そう、俺が正義だ!」

「……なんてご都合展開なんでしょう……」

マユミ「そもそもあの爆発でどうやって生きてるの?」

ジョン「マネキンにダイナマイトを括り付けてみたのさ。俺ってマジクール。イカすぜ」

「……」

820 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 18:10:40.78 hMDctsc0 407/410

こうして、なんだか釈然としないままに全員が生還し、俺たちの戦いは終わった。

……いや、終わってなどいない。まだ、始まったばかりだ。

それでも、俺は……。


「……ふぅ」

「男さん、モールの屋上に来てくれなんて、一体どうしたの?」

「あ、ああ、いや、その、さ。伝えたいことがね」

「?」

「……あのさ、女さん」

「はい?」

「俺と……その……えーと、あの……」

「なぁに?」クスクス

「俺、女さんと、ずっとずっと同じ道を、歩いていきたいんだ」

「……男さん」

「それはつまりだ、うん、その、俺と、結婚してください」

「…………はい」

822 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 18:17:06.98 hMDctsc0 408/410

晴れて結ばれた俺たちは、おっさんが残したレポートを元にゾンビウィルスのワクチンを製造し、世界を回っている。

それが、女さんがしてしまったことに対しての贖罪になると信じて。

ちなみに、女さんは最近蛋白質が足りないとぼやいてばかりいる。色々まずいなあ。



タカシとマユミとキモオタ君の三人トリオは、モールを中心に元の生活を取り戻すために活動を続けている。

今やモール付近では、ゾンビ騒動が起こる前と変わらない、平和な日常がゆったりと流れているとか。

そういえばキモオタ君は、自分の内面を見てくれる素敵な女性とお付き合いしているらしい。よかったな。



姉貴は、幼女ちゃんと暮らし始めた。何だかんだ言って姉貴も寂しいんだろう。

また今度、会いにいってやらないとな。……ハグとかスキンシップの嵐になりそうだけど。

女さんとの喧嘩が勃発しないのを願うばかりだ。



幼もまた、俺たちとは違うルートで世界を回り、ワクチンを配っている。

一度狂ってしまった自分に対する戒めも含めて、らしい。

それより、俺と女さんが結婚した今も誘惑してくるのはどうにかならないのだろうか。

823 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 18:21:58.20 hMDctsc0 409/410

ジョンは、いつの間にか姿を消していた。

リムジンの中にいたジョンが果たして本当にジョンだったのか、それとも幻だったのか。

今となっては確かめようがないけれど、俺は、あいつが生きてると、そう、信じている。



空港に行くと、あの日のことが思い出される。

親父と母さんを失ったあの日。女さんの真実を知ったあの日。

辛い日だったけど、それを乗り越えたから、今の俺がいる。

……俺は、あなたたちの分まで生きます。父さん、母さん。



変わり果てた婦警さん。俺は彼女の死体を、見晴らしの良い丘の上に埋めた。

市民を守ること、それだけを考えて生きた婦警さんは、街を見渡せるあの丘の上で、静かに眠るんだ。

……あなたの魂は、ちゃんと、俺が受け継いでいますから。だから、安心して眠ってください、婦警さん。

824 : ◆XtpqcHhpns[sag... - 2009/12/23 18:25:33.71 hMDctsc0 410/410

「男さん、ごめんね」

「なにが?」

「私のわがままに、付き合わせちゃって」

「そんなことか。……気にすること無いよ」

「でも……」

「夫婦だろ、俺たち。……夫婦って、互いに支え合って生きていく物だよ」

「男さん……」

「君に出会えて、本当によかった。長いようで短い、でも、短いようで長い、そんな人生……」

「うん……」

「女さんと二人で、並んで歩いていこう」

「はいっ」


――彼女が見せたその笑みは、今までに見たどんな笑みよりも、輝いていた。

「……ゾンビ……?」
「君がゾンビだろうと何だろうと、関係ないよ」
「たとえ、君がゾンビだったとしても……!」

【完】

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