1 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2013/01/26 19:30:47.69 IJ+SPfW/o 1/30


「…止めても無駄だぞ」

「別に止めないわよ。見てるだけ」

「それは人としてどうなんだ」

「あら、自殺志願者にだけは言われたくないわね」

「……いいからどっか行ってくれないか。気が散る」

「まずはその高いフェンスを越えないとね」

「うるせぇ!」

「……」




元スレ
女「あなた、そこから飛び降りるつもり?」男「……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1359196247/

2 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/26 19:37:30.66 lETaFwv0o 2/30


「…まだ落ちないの?」

「なんなんだよお前…」

「あなたを救いにきた天使」

「は?」

「とでも言うと思ったかしら」

「…何が目的だ」

「別に。ただ怯えてる子犬ちゃんが気になって」

「チッ……」


3 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/26 19:43:02.90 oeTE5dz0o 3/30


「…わかった。なら勝手に見てろ」ガシャン

「ねぇ」

「なんだよ!」

「そこから飛んだら、貴方の身体はどうなると思う?」

「そりゃ…ぐちゃぐちゃに???

「ならない」

「…は…何を根拠に…」

「運が良ければ…いえ、悪ければだけど」



4 : 文字化け???→──── ◆XA... - 2013/01/26 19:49:04.98 flo2fVQBo 4/30


「落下防止用ネット…って知ってるかしら」

「こういうマンションだと大抵あるのだけど」

「えっ……」ガシャッ

「そんなに覗いても見えないわ。そういうものだもの」

「…なんで…そんな事知ってんだよ…」

「……そうね」

「経験者は語る…、って答えじゃ不満?」

「え…………」


5 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/26 20:13:19.81 i28SOyAdo 5/30


「何よその顔。幽霊でも見たみたいに」

「いや……だって」

「ところで、貴方はこれから同るの?飛び降りは失敗したわけだけど」

「っ…そりゃ首吊りでも投身でも──────

「首吊りってね、一説では最も楽な自殺の手段と言われているの」

「…ならもうそれでいいよ」

「…頸動脈が絞まるとね、頭に血が集まってくるのを感じるの。顔の皮膚が血液に押し出されて裂けちゃいそうに」

「鼓動が一つ、また一つ鳴る度にそれが強くなってくる。眼球も舌も、外に投げ出してしまいたい…そんな気分になるの」

「」

「」

7 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/26 20:24:25.26 8a5Z4O5Vo 6/30


「お前…頭おかしいんじゃねぇの」

「そうかもしれないわね」

「くそっ…くそ!」

「そうそう。さっきのネットの話だけど、半分は嘘」

「はっ!?」

「そっち。そう、その角の辺りから力の限り飛んでみなさい。ネットの隙間を落ちていけるかもしれないわ」

「…嘘じゃないだろうな」

「えぇ、もちろん」ニコッ


8 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/26 20:30:57.38 IJ+SPfW/o 7/30


「そうかよ」ガシャンガシャン

「今度は簡単にネットを越えるのね。後は手を離せばさよなら、って訳か」

「馬鹿な話聞いたらどうでもよくなったんだよ」

「…そう」

「じゃあな…っく!」ガシャッ

「……」

「……タイミングを間違えたんだよ…」


9 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/26 20:38:54.44 TR2aVjjOo 8/30


「ねぇ」

「っ…な、なんだよ?」

「貴方は何故死にたいの?」

「……」

「ほら、遺言と思って。貴方みたいな人間の失敗作でも、それなりの理由はあるんでしょう?」

「お前…っ!」

「あら、なぜ怒るの?そこに立っているのがその証明でしょうに」

「…はぁ…。わかった…聞けよ」

「えぇ、是非」ニコッ


10 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/26 20:48:02.48 lyrjtpW2o 9/30


「最愛の人に裏切られたんだ」

「…へぇ……それで?」

「今思えば散々貢がされただけなんだなって…無駄な借金まで作っちまってな」

「ふんふん…で?」

「え……いや、終わりだけど」

「……」

「……」

「……ぷ」


11 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/26 20:55:07.52 oeTE5dz0o 10/30


「…お前、今笑っただろ…」

「っく…ふふ、ごめんなさい。想像以上にくだらない話だったから」

「お前に……」ボソッ

「?」

「お前に何がわかるんだよ!?」

「顔は下の下!たいした取り柄もない、周りからはゴミ扱い!!口でカバーしようとすりゃ臭いだのキモイだの──────

「貴方の事なんて知らないし、微塵もわからない」

「っ…!」


12 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/26 21:01:19.99 TR2aVjjOo 11/30


「質問を質問で返すようだけど、貴方は私の何がわかるの?周りの人達の何がわかるの?」

「ぐ……そ、んなの…」

「でしょう?他人を理解しようともせずに自分を理解してもらおうだなんて…とんだ甘えん坊ね」クスッ

「っ…それは、お前にも同じ事が言えるんじゃないのか」

「私は理解して欲しくもないし、理解する気もない」

「これで満足かしら」

「…う………もう訳がわからん…」

「…奇遇ね。私もよ」ニコッ


13 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/26 21:09:01.41 V4NrzQqyo 12/30


「……はぁ」ガシャ

「そうだ」

「今度はなんだよ…」

「くだらない話を聞かせてもらったお返しに、面白い小話をしてあげる」

「いらん」

「あら、ずいぶん冷たいのね」

「それで結構」

「なら別に聞かなくてもいいわ。これから独り言始めるから。貴方はいつ飛んでもいいのよ?」

「……」


14 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/26 21:26:19.55 gVDDECSSo 13/30


「ある所にね、小学生の女の子が幸せに暮らしていたの」

「庭付きの一戸建てに父と母とで、それはもう周囲が羨む程に仲良のいい家庭」

「……」

「そんな中、突然それは起きた。不慮の事故だった。不幸な事に、両親はその子を残して他界したわ」

「お前……」

「?まだいたんだ」

「……」

「…行き場を失い、彼女はやがて叔母夫婦に引き取られる事になった。幸運な事に、数ヶ月後には再び、微笑ましい家庭ができあがっていた」

「表向きは、だけれど」


15 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/26 21:34:48.57 gVDDECSSo 14/30


「叔父にはね、少し変わった性癖があったの」

「ペドフィリア──────小児性愛とでも言うのかしら」

「っ…お前まさか、その…叔父に…?」

「…貴方が何を言っているかわからないわ」

「だって…!!」

「言ったでしょう?これは『ある女の子』の話だって。優しく可憐で、慈愛に溢れる…『ある女の子』」ニコッ


20 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/27 20:52:15.82 XaizJibuo 15/30


「祖父母の家に移って間もない、皆が寝静まった夜に叔父は動いた」

「泣き疲れて眠る彼女の服を剥ぎ取り、幼い身体を嬲り始めた」

「もちろん、違和感を感じた彼女は飛び起きたわ。抵抗もしたし、声もあげようとした」

「でもね、叔父はそんな彼女に暴力を加えた。元々体格が違いすぎるもの。すぐに取り押さえられた」

「………」

「…何よその顔。面白い話よ?笑いなさい」

「……無理言うな」

「…そ。なら続けるわ」


21 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/27 21:24:47.02 2dzqYqoOo 16/30


「行為が始まってどれくらい経ったかしら。下腹部に違和感を感じたの」

「反射的に逃げようとした。何か大切なものが壊れてしまう、そんな気がした」

「それが彼女の最後の抵抗」

「叔父の歪んだ欲望は、彼女の小さい身体を貫いた。何度も…何度も何度も何度も何度も」

「…うっ……」

「目の前が眩しいくらいフラッシュしてね、気付けば朝だった」

「悪い夢を見てたんだ、って……思ったわ。でも焼け付くような痛みと、気持ちの悪い感触は消えてはくれなかった」

「これが…始まり」


22 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/27 22:05:34.46 L7zAHN1so 17/30


「…始ま、り……?」

「…元々明るい性格でクラスの人気者だった彼女も、毎晩のようにやってくる叔父に変えられてしまった」

「口数は減って、笑う事さえ苦痛になっていったの」

「…誰かに相談とか…できなかったのか?」

「…そうね。心に余裕があれば、そういう選択肢もあったのかもしれないわね」

「愛する両親を亡くし、傷も癒えないまま叔父に暴行を受けた…どうかしら?」

「……」

「ふふ…。そう、例えるなら人形のよう。彼女は毎日決まった動きをするだけの人形になり果てたの」



23 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/27 22:21:56.84 G2Ps8CqQo 18/30


「…友達はいたんだろ?」

「いい質問ね。…あ、独り言って事を忘れてたわ」

「いいから」

「…"いた"。その通りよ。最初は皆心配して甲斐甲斐しく話しかけていたわ」

「でもね、人形は喋らない、反応しない。…となると人が離れていくのは必然でしょう?」

「…そうだな」

「…やがて彼女は中学生になった。精神はそのままにね」


24 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/27 22:51:03.15 FvapgaZpo 19/30


「入学してすぐの事だった。授業中、突然吐き気がしたの。それも尋常じゃない程のね」

「目の前が真っ暗になって…起きた時には病院でね、医者がすごく困った顔で言ったの」

「…え…と……はっ?」

「子種を散々注ぎ込まれたんだもの。彼女の身体には叔父との子が宿っていた」

「っ…」

「でもね、ここで奇跡が起こったの」

「奇跡…?」

「そう。彼女の中に生まれた命。自分の半身。この子だけは裏切らない、守らなきゃいけない…って」

「人形だった彼女に心が戻ったのよ」


25 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/27 23:17:50.51 c7bf8A/fo 20/30


「しばらくして迎えに来た叔父に彼女は伝えたわ。産みたい、ってね」

「叔父は堕ろせ、ってそればっかりでね」

「…ちょっと待て。叔母はそれまで何をしてたんだよ」

「…人ってね、少しの欲望で簡単に変わると思うの」

「…は?」

「叔父は性欲に溺れた。…そして叔母の場合は愛に飢えた」

「叔母はね、彼女にばかり構う叔父に対して嫉妬した。矛先はもちろん彼女」

「嫌味や嫌がらせを経て…最終的には無関心になったから特に害はなかったけれど」


28 : >>27あざす ◆XA/D3KJ... - 2013/01/28 18:55:33.48 Pdqvc9xeo 21/30


「…その後は?」

「もちろんどちらも退かなかった。結局、結論は出ないまま彼女はそのまま入院する事になったの」

「つまり…産んだのか?」

「いいえ、産んでない…産めなかったのよ」

「?どういう事だよ…」

「妊娠が発覚してから数日、彼女が飲み物を買う為に階段を下っていたの」

「………え」

「そこでね、階段から落ちたの。事故?いいえ、突き落とされたのよ。誰かに」

「身体中に走る痛みに耐えながら、彼女は見てしまった。叔父に似た背格好の男が走り去るのを、ね」


29 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/28 19:04:21.14 2xuKWtn+o 22/30


「そして運が悪かったのか…彼女は自分の分身を失ってしまった。同時に、二度と子供を産めない身体のオマケつきで」

「…なんだよそれ……」

「同情する? 彼女に」

「同情……そうだな。可哀想、だとも思う」

「…そう。優しいのね」

「そんな事初めて言われたよ…はは」

「やっと笑ってくれた」

「えっ…」

「貴方のその笑顔、好きよ」ニコッ

「は…っ!? えっ……」


30 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/28 19:10:25.18 2X0L2BQxo 23/30


「あら、落ちるわよ」

「うおっ……」ガシャ

「……」

「……なぁ」

「…何かしら」

「俺みたいなクズでも…『その女の子』を支え……いや、ごめん。忘れてくれ」

「……大丈夫よ」

「…え、と…」

「貴方みたいなゴミでも、役に立てるわ」

「…そっかー……」


31 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/28 19:29:32.62 MjPalfUBo 24/30


「…もう一回頑張ってみるよ、俺」

「そう…」

「なら、戻ってくるのかしら。こっちに」

「…あぁ」ガシャンガシャン

「……」ギュッ

「っ…は!?」

「…抱きしめて」

「…あ、あぁ…」ギュッ

「おかえりなさい」

「…うん。ただい────────

ズドッ


32 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/28 19:39:45.62 rmDE+TVwo 25/30


「…ま……?あれ…、…なん…だこれ……包、丁……?」フラ…フラ

「…ねぇ、今どんな気持ち?」ズシャ

「あ、が……っ…ぐ」バタッ

「貴方、これから死ぬと思うけど…どんな気持ちなのかしら」

「すごく痛い?死ぬのが怖い?どんな気分なの?ねぇ、お願い教えて?」

「あ゙…っ、し…しんじゃ…!」

「…そう、その顔よ。死を覚悟した後の死に顔程つまらないものはないもの」

「希望があるから絶望が活きるの」ニコッ



33 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/28 19:49:02.97 MjPalfUBo 26/30


「ちょっと失礼するわ」ドサッ

「!っ…ぐぁ…ぎ、…!?」

「ねぇ、見て。貴方に馬乗りになる私と、下で喘ぐ貴方。誰かが見たら、発情したカップルに見えるのかしら?」

「ひっ…っ、…ぎっ!!」ジタバタ

「……実はね、さっきの話には続きがあってね」

「ゔっ…っ!…、は…っ」

「知りたい?…そうよね。気になるわよね」

「…っぐ、…ふぅ゙、ぁ゙…!」



34 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/28 20:09:58.52 qhnL1eEfo 27/30


「愛する我が子を失った彼女は思ったの。この世の仕組みは弱肉強食だって」

「腹の子が邪魔なら殺せばいい。欲しい女がいれば犯せばいい。気に食わないなら壊せばいい」

「ふふ…、簡単でしょう?」

「あ……っ…ぎ…ち、が……ゔ」

「だからね、彼女もそう生きる事にした訳」

「そうそう、最初に言ったけど…転落防止のネット」

「数年前までは無かったの。でもある事故が起こってから、設置された」


『経験者は語る…、って答えじゃ不満?』


「初老の男性がね、ふふ…、足を滑らせて落ちちゃったらしいわよ? っふふ、あはははは」


35 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/28 20:46:09.29 CSzci8kvo 28/30


「」ポタ…ポタ

「……」

「私ね、貴方の事好きよ」

「不格好で…惨めで醜悪で、すごく弱い。異常なまでに人間らしい貴方が、好き」

「…そんな貴方でも人の役に立てたの。ほら、こうして私を満たしてくれた」

「見て、空がすごく綺麗」

「…すごく…眩しいの…」

「…まるで………」ボソッ

「……」ガシャン

「……ふふ」


36 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/28 20:47:06.35 CSzci8kvo 29/30



────────────
──────────
────────
──────
────
──



37 : ◆XA/D3KJkxU[sag... - 2013/01/28 21:03:25.07 e3pyhL+2o 30/30



『先日、○○県○○市の高層マンションの屋上で男性の刺殺死体が見つかりました』


『凶器は持ち去られており、警察は容疑者の特定を急ぐとともに、被害者の人間関係に問題がなかったかを調べているとの事です』


『また、近隣住民に聞き込みを行った所、不審な若い女性を連日、頻繁に目撃していた事から』


『この女性が事件に関係していると見て捜査を進めています』


『それでは続いてのニュースを────────


END

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