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前回:魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」 #25

201 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 19:20:39.77 34eUyEEP

――氷の国、外れの交易村

開拓民「止まれ~!! 誰かそいつを止めてくれぇ!!

器用な少年「止まれと云われて止まる馬鹿がいるかよぅ」

開拓民「そいつは泥棒だぁ!! 誰かぁ!」

器用な少年「ははっ! 追いつけるもんなら追いついてみなぁ!
 へっへーんだ。こちとら食ってないんだ最軽量だぜぇ!」

メイド妹「えい」ひょい

器用な少年「え?」

グルグルグル、ズッデーーン!!

器用な少年「何しやがるんだ、この雌ガキっ!!」

メイド妹「泥棒はいけないことだよっ?」

器用な少年「うるせぇ!!
 だったら死ねって云うのかよっ!
 こっちは命がけで食ってるんだよっ!」

タッタッタッ

開拓民「捕まえてくれぇ~」

器用な少年「来やがったな! 邪魔すんな、あっち行けドブスっ!」

貴族子弟「おやおや。淑女――の卵になんて口を聞くんですか」

元スレ
魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1253950332/

202 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 19:23:39.95 34eUyEEP

器用な少年「邪魔すんなよ、洒落者の旦那。
 ってか、あんたも財布をおいていくか?」チャキッ

貴族子弟「そんなちっぽけなナイフで何をするんです?」
メイド妹「ううっ。貴族のお兄ちゃん」

器用な少年「はんっ! でかい口聞くなよっ」
貴族子弟「エレガントさが足りませんよ、君」

ヒュバッ!!

器用な少年「え?」
メイド妹「ひゃっ!!」

器用な少年「あ、あ、ああっ!!」じたばたっ
貴族子弟「早くその下半身を隠しなさい。むさ苦しい」

器用な少年「お、お前が切ったんじゃねぇか」
貴族子弟「えい」

ぼくっ

器用な少年「#’〒☆♭()ッ!!!」

貴族子弟「つまらぬ物を蹴ってしまった」
メイド妹「泡吐いてるよ? この子」

開拓民「はぁっ! はぁっ! き、貴族様でしたか。
 ありがとうございます!! こいつは泥棒なんですよっ!」

貴族子弟「いえいえ、こっちの都合もありますからね。
 このあたりに詳しそうな道案内が一人欲しかったんです」

206 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 19:46:18.11 34eUyEEP

――鉄の国、王宮、大広間

鉄腕王「……そんな訳で、魔族との一端の交戦は
 我が国守備部隊により、峠道において回避された。
 だが、我が鉄の国と白夜の国は山と大河を隔てて
 長い国境線を接している。
 人も通わぬような辺境地帯を抜けて、
 今も魔族の侵攻が進んでいると見て間違いないだろう」

氷雪の女王「……」

女騎士「鉄の国の軍備はどうなのだ?」

鉄腕王「数字だけで云えば6万に迫る数だが、
 その多くは開拓民や難民など、名ばかりの軍人に
 過ぎないし、訓練らしい訓練など、まだやっと手をつけたばかり。
 戦場に出せる数は、全てかき集めても1万がやっとだろうな」

氷雪の女王「我が氷の国は3000と云ったところ」

冬国士官「冬の国は7500が良いところでしょう」

冬寂王「それでも、三年前に比べれば倍にも増えているが」

鉄腕王「だが、どの国も急激にふくれあがった人口の治安維持や
 国境警備に必要な部隊もあろう。
 それらを差し引くならば、動員したとしても三ヶ国合わせて
 半数の1万に届くか、届かぬか」

氷雪の女王「問題は、魔族の軍勢がどの程度いるかですが……」

冬寂王「我が手の者の情報に寄れば、
 今回魔界から突如侵攻してきた魔族は、
 蒼魔族と呼ばれる魔界でも随一の過激派、
 好戦派と云える部族だそうだ。
 率いるは刻印王とよばれる若き王で前王を抹殺の上、
 軍を掌握し、その精鋭を率いて人間界へ流れ込んできた。
 その数は2万と5千」

207 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 19:47:19.61 34eUyEEP

鉄腕王「ふむ」
氷雪の女王「蒼魔族……」

女騎士(その報告精度は爺さんか……)

冬国士官「しかし、それでも2万からの軍勢。
 このままでは我らが三ヶ国存亡の危機であります」

鉄腕王「まさにな」

氷雪の女王「……」

冬寂王「いや、滅亡の危機よりなお悪いかもしれぬ。
 三ヶ国の人口全てを合わせれば、約20万。
 いくら訓練されていないとは言え、
 最終的な消耗戦になれば三ヶ国の民が生き残っているうちに、
 魔族2万を撃退できる可能戦は十二分にある」

冬国士官「……」

女騎士「それは、焦土作戦と呼ばれている。
 少なくともわたしが学士に聞いた話ではな。
 
 ……焦土作戦とは交戦下において、不利な立場にある防御側が
 攻撃側に奪われる地域の利用価値のある建物や食料を焼き払い、
 その地の利用価値をなくして攻撃側に利便性を残さない戦術だ。
 自国領土に侵攻する敵軍に食料を初めとする物資の補給を
 許さず、消耗を強いることにより、戦闘を小規模、限定化し、
 徐々にその戦力をそぐことを要訣とする」

鉄腕王「自国の領土を……」
氷雪の女王「焼き……払う……?」

女騎士「そうだ。この人数比率は、
 そこまでやれば勝利は容易い比率であると云える」

208 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 19:49:16.48 34eUyEEP

冬国士官「しかしそれではっ」

女騎士「当然だ、ようやく開墾が進み緑豊かになってきた
 この南の地を十年、いやそれ以上人も住めない不毛の
 荒野へと戻すことになる。
 そのようなことは、我が湖畔修道会としても
 見過ごすわけには行かないっ」

冬寂王「……」

鉄腕王「なんとしてでも、魔族を退けなくてはならぬ」

氷雪の女王「魔族に支配された白夜の国の罪も無き民草は
 今はどのような暮らしを強いられていることか……」

女騎士「あまりにも兵の数が足りぬか……」

冬国士官「やはりここは半数などとは言わず、
 国境線の防御を薄くしてでも、
 まずは魔族との開戦を優先させるべきかと思うのですが」

鉄腕王「そうだの」
氷雪の女王「……」

女騎士「しかし、中央諸国の三ヶ国通商に対する
 批判や風当たりには依然厳しい物がある」

冬国士官「だがしかし、魔族が現われている
 このタイミングでの軍事行動があり得る物でしょうか?」

冬寂王「……」

氷雪の女王「このようなことになってしまうとは……」

209 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 19:50:46.95 34eUyEEP

冬寂王「氷雪の女王。諸国の委任状やとりまとめの状況は?」

氷雪の女王「湖の国、梢の国、葦風の国、赤馬の国。
 他には幾つかの自由貿易都市の領主が賛意を示してくれています。
 委任状の取り付けも、ほぼ全て」

女騎士「……?」

冬寂王「このタイミングしか、あるまい」
鉄腕王「立ち上げるのか」

氷雪の女王「では」

冬寂王「うむ。三ヶ国通商同盟はその名を南部連合と改める。
 と同時に、湖の国、梢の国、葦風の国、赤馬の国の諸国には
 参加を表明していただき、いくつかの政策の合意を行う。
 最終的には、南部連合は全国での農奴解放と通商協定の
 元の自由貿易を目指し、国家の連合として活動を
 始めようと思う」

鉄腕王「うむっ」
氷雪の女王「そう言うことにしかならぬと思っていました」

女騎士「それで援軍を当てに出来るのか?」
冬国士官「どうでしょう……」

冬寂王「長期戦ともなれば援軍以上に物資の補給が有り難くも
 なるだろう。また、義勇兵の募集も期待できる。
 
 天然痘の予防体制、種痘はこの春にやっと第一段階の
 実用化を迎えた。
 今後はこの技術を伝播し、湖畔修道会を中心に連合諸国、
 ひいてはこの大陸全てに広めてゆかなければならない。
 
 ここで連合が潰え去ることだけは、我ら三ヶ国ならず
 人間世界に取ってあってはならぬことだ。
 もし国々が正しい判断力を持つのならば
 きっと我らに対する支援を送ってくれる」

210 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 19:51:54.23 34eUyEEP

鉄腕王「しかし、そのためには今少しの時間が必要だ」
氷雪の女王「そうですね」

冬寂王 こくり

鉄腕王「国境の防備は、今ある男に任せている。
 若いがなかなかの気骨ある司令官だ。
 護民卿を名乗らせてはいるが、いずれ我が国の大将軍として
 柱石となってくれるだろう」

冬国士官「どの程度の軍を配置しているのですか?」

鉄腕王「3500にすぎん」

女騎士「よしっ。わたしが率いてきた騎馬部隊、
 冬寂王の部隊、そして冬の国からの歩兵部隊で2000は揃う。
 おっつけ冬の国から二次編制部隊3000も届くだろう。
 それを合わせれば5000だ。
 鉄の国でも二次部隊の編制を頼みたい」

冬寂王「心得た。それでも……約8500か」

氷雪の女王「我が国はいかがしましょう?」

女騎士「こう言っては何だが、氷の国の兵士は指揮系統が弱い。
 鉄の国国境付近まで出て哨戒をお願いしたい」

氷雪の女王「わかりました。……もう、あの風来坊は
 どこをほっつき歩いているのだか」

女騎士「わたしが出る。お歴々の方々、異論は?」

冬寂王「頼む」
鉄腕王「騎士将軍は我が三カ国最強の将軍ゆえな。
 ここで頼むのは、おぬししか居ないであろうな」

211 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 19:53:06.95 34eUyEEP

氷雪の女王「しかし敵の数は二倍。
 いつぞやの中央連合のように貴族の寄せ集めでもなく
 若く残忍な王に率いられた精鋭軍人の集まりとなると……」

女騎士「勝つのは難しく、最善であっても苦戦は
 避けられぬだろう」
冬国士官「……」

冬寂王「戦の帰趨はどうなる」

女騎士「負けるつもりはないが、予断は許さぬ。
 ……と云うよりも、むしろ判断がつきかねる、
 わたしが知る限り、魔界へと進んだ聖鍵遠征軍も、
 前回の極光島奪還作戦もそうだが、
 魔族には人間世界の戦の常識やルールが通用しない。
 かといってそれは常識やルールがないというわけではなく
 彼らは彼らなりの都合や身分制度、戦術の中で動いている
 印象を持っている。
 こちらがこちらの都合でそうだろうと決めつけていると
 痛い目を見る。
 
 実を言えば、わたしは蒼魔族の若き刻印王をこの目で
 見たことがある」

冬国士官「えっ!?」
冬寂王「なんと……」

女騎士「その強さは無類だ。わたしの及ぶところではない」

氷雪の女王「そんな……」

214 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 19:55:13.43 34eUyEEP

女騎士「だが、しかし、戦は一個人の技量だけで
 決着がつく物ではない。ましてや……勇者もいる。
 希望を捨てるには早すぎる。まだ接触さえしていないのだ。
 だが、だからといって勝つとも云えぬ。
 
 勘だけで云わせて貰えば、相当分が悪い賭けだろう」

冬国士官「……」

冬寂王「最大限の支援が必要だと云うことだな」

鉄腕王「武具の生産と後方部隊、二次編制を急がせる」
氷雪の女王「我が国も何らかの手が打てないかと考えてみます」

女騎士「戦場の事は面倒を見よう。
 その……。王の方々よ。
 ……わたしは一介の騎士に過ぎないが」

冬寂王「何を言うか、全軍を預かって頂く将軍ともあろう人が!」
鉄腕王「そのとおりだ、それに麗しい騎士でもある」にやり
氷雪の女王「その通りですわ」

女騎士「……出来ればその時が訪れた時に、
 各々がたが曇り無き心で判断してくれることを、願う」

冬国士官「……?」

鉄腕王「そいつはなんのことだ?」
氷雪の女王「何を仰っているのですか?」

女騎士「――。
 わたしは戦場に向かおう。
 一刻も早く現地の地形の把握が必要だ。
 鉄の国の領内ゆえ、白夜の蒼魔軍よりも
 早く入れるとは言え、敵の行軍速度が判らない」

冬寂王「うむ、たのんだぞ。総司令将軍」

女騎士「引き受けたっ」

223 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 20:38:44.65 34eUyEEP

――聖王国、南部平原

王弟元帥「光の精霊の尊き御名の元に集いし
 汝ら光の子らよ、選ばれし戦士達よっ!!
 我らが旅立ちの時が来たっ!!
 
 我らは長い間この地にあり、精霊の導きの元
 大地から作物を獲て、四方を治め暮らしてきた。
 我らは精霊の子、光によってえらばれし民である。
 
 しかし昼短く闇深き南方の果てには魔界があり、
 そこでは今なお野蛮な風習を色濃く残す魔族なるものが
 威を振るい君臨している。
 我らは我らが大地を護るため、盾と矛を取り
 この脅威に応戦をしてきた。
 その筆頭となったのが南部の諸王国である。
 而して南部の王国はいつの間にか魔族の侵攻を受け、
 その王も軍も闇の者どもの手先となってしまった」

 ざわざわざわ……

王弟元帥「それは何故か!!
 今こそ語ろう、『聖骸』の秘密を!
 それは我らが救い主、光の精霊の遺骸。世にふたつと無き至宝!
 遙かな古の昔、魔族はその宝を我らがえらばれし民より
 奪い去り、魔界へとかくしたのだ!!
 
 南部の諸王たちはその輝きに見せられ、我ら人間と
 精霊の慈悲を裏切ったのである。
 
 見よ、南部の地を!!
 そこには、異端の食物が溢れ人々は享楽を欲しいままにしている。
 それらはすべて魔族の奸計、
 遙か古に裏切りし魔族の歪んだ血のなせるわざなのだ!!」

224 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 20:39:51.22 34eUyEEP

王弟元帥「中央諸国の光の教徒たちよっ!
 高きも低きも、富める者も貧しき者も
 南方の同胞の救援に進めっ!
 
 彼らは闇に目隠しをされた盲人なのであるっ。
 彼らを自由などという世迷いごと、その退廃から救いだし
 この世界のあるべき秩序に戻すためには
 我ら光の戦士の雄々しき腕による救済こそが今必要なのだっ!
 
 我と共に旅立つ光の教徒たちよ!
 今こそ大儀のために立ち上がれ!!
 
 光の精霊は我らを導き給うであろう。
 正義のための戦いに倒れた者には罪の赦しが与えられよう。
 
 この地では人々は貧しく惨めだが、
 彼の地では富み、喜び、神のまことの友となろう。
 なんとなれば、そこには真の精霊の宝『聖骸』があるからである。
 我らは『開門都市』と『聖なる鍵』を手に入れ、
 我らが奪われし永遠の宝、『聖骸』を奪還せねばならない。
 
 いまやためらっているべき時は過ぎ去った。
 光の導きのもとに、いまこそ出陣の時であるのだっ!!」

うわああぁぁぁぁ!!
   うわああぁぁぁぁ!!

光の兵士「精霊はこれを欲し給うっ!!」

光の兵士「精霊はこれを欲し給うっ!!」

光の兵士「精霊はこれを欲し給うっ!!」

王弟元帥「精霊の旗のもとっ!! いざ、南へっ!!!!」

226 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 20:42:14.06 34eUyEEP

うわああぁぁぁぁ!!
 ざっざっ!
   ざっざっ!
     ざっざっ!

司教「すさまじい人数ですな。王弟殿下は演説もお上手だ」

聖王国将官「この草原に集まっただけで2万。10大隊ですな。
 同様の大隊が四つほど進軍中です」

司教「10万ですか。それは希有壮大な……」

聖王国将官「元帥の構想ではこれらを中核とし、
 最終的には40万の軍勢をもってして魔界へ入るとのこと」

司教「ふはははっ。圧倒的ではないですか」

ザッザッザッ

王弟元帥「司教殿」
司教「王弟殿下、見事な演説でございました」

王弟元帥「この軍は元々は教会のためではありませんか」
司教「ふふふっ。猊下もことのほかお喜びのご様子」

王弟元帥「では、例の布告も?」

司教「はっ。猊下のご裁断はすでに頂き、発布しております。
 “聖鍵遠征軍は精霊の意志の元に行われる奪還運動である。
 聖鍵遠征軍に参加する貴族や領主の全ては、借金や借入物の
 支払いを一時的に免除される”と」

王弟元帥「ふふっ。それでこそ、どの貴族もこぞって
 第三次聖鍵遠征軍へとその身を投じるでしょう。
 その動きにつられ、食い詰めた農奴や開拓民も遠征軍に加わる……」

229 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 20:43:20.20 34eUyEEP

聖王国将官「40万は決して非現実的な数字では
 なくなってきましたね」

司教「これも精霊のお導き。恩寵ですな。はっはっはっ」

王弟元帥「その布告は“借金を待って貰いたいのならば教会に従え”
 でしかないのに、それに気が付く貴族が何人いることやら」

司教「はははっ! 仕方ありますまい。そもそもが身から出た錆」

王弟元帥「魔界を手に入れれば、その領土、豊かさは
 我らが大陸の数倍にも達する。新たな領土も豊かさも思いのまま」

司教「我ら教会は『聖骸』と、永遠の第一教会の地位さえあれば
 世俗のことは貴方にお任せいたしましょう。王弟殿下」

王弟元帥「我は忠実な精霊の僕の一人」

司教「その通り、わたし達は皆そうです」

王弟元帥「だからこそ、上手くやっていきたいものですな」

司教「まったく! まったくですよ。あははははっ」

王弟元帥「猊下は?」

司教「猊下は聖王国大教会から、近く出立されるご予定です」
王弟元帥「十分な警備をお願いしますよ」

司教「教会騎士団は清廉にして無敵の百合、
 ご心配には及びませぬ。それより南部の邪魔者どもを」

王弟元帥「心得ていますぞ。お任せあれ」にやり

244 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 21:10:53.36 34eUyEEP

――白夜国首都、白亜の凍結宮

参謀軍師「ふふっ。この度は御戦勝、おめでとうございます」

蒼魔上級将軍「それもこれも、情報の精度のお陰よ。
 今回の力添え、蒼魔族を代表してお礼申し上げると
 王弟殿下へと伝えられよ」

参謀軍師「うけたまわりました。……刻印王は?
 古い王を廃されて、いよいよ名実をもって貴方の主が、
 蒼魔族を率いるようになったと聞きましたが?」

蒼魔上級将軍「王は力を蓄えるための眠りについておる」
参謀軍師「そうですか……」

蒼魔上級将軍「王としても、聖王国の手引きには
 感謝を示されていた。
 もっともそれもそちらの都合あってのことであろう?
 我らが魔族に、白夜を討たせたい都合が」

参謀軍師「それはまぁ、ははは」

蒼魔上級将軍「利害の一致。責めようと云うつもりはない」

参謀軍師「有り難い限りですな」

蒼魔上級将軍「さて、取引だな」
参謀軍師「はい」

蒼魔上級将軍「まずは、白夜を落とした見返りを頂きたい」
参謀軍師「蒼魔族は地上に新しい領土を獲た。
 ……それでは不十分すかな?」

蒼魔上級将軍「それは我らが実力で勝ち取ったものであろう?
 聖王国は何も失っておらぬ。それでは取引にはならぬ」


245 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 21:11:51.04 34eUyEEP

参謀軍師「さよう云われましても……。
 では、かねてより依頼してありました、
 あちらのほうで対価に色をつけようではありませんか」

蒼魔上級将軍「ああ。依頼されたとおり、最大限の量を
 国元より運び出してきた。あれの運び出しのために、
 我が軍の輜重部隊の積載量は大幅に圧迫され、
 食料や武器などにもすでに悪影響が出ているのだぞ?」

参謀軍師「そちらを高額で買い取る、ということで
 この際いかがでしょう? 取引とはなりませぬか?」

蒼魔上級将軍「あのようなものを、本当に欲するのか」

参謀軍師「いくつかの産業で入り用でしてな」

蒼魔上級将軍「ふむ」
参謀軍師「どれくらいの量を用意されているのですか?」

蒼魔上級将軍「馬車にして、900台といったところだろう」

参謀軍師「そうですか。……ではそれら全てを3倍の量の
 食料および、替えの武具4000人分でいかがですか?」

蒼魔上級将軍「硝石とは随分貴重な物のようだな。
 5倍の食料およびそのままの数の武具と交換して貰おう」

参謀軍師「っ。……判りました」

蒼魔上級将軍「引き渡す硝石は半分だ。少なくとも我らが
 隣国を落とすまではな」

参謀軍師「……宜しいでしょう」

247 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 21:14:42.25 34eUyEEP

蒼魔上級将軍「補給食料はいつ用意できる?」

参謀軍師「このようなことになると考えていましたし、
 半分であればさほど時をおかずに用意できるでしょう」

蒼魔上級将軍「では早速搬入を初めて貰おう。
 我らはすでに隣国攻略作戦の情報収集段階にはいっている」

参謀軍師「流石勇猛をもってなる蒼魔族」

ザッザッザッ

蒼魔近衛兵「報告でありますっ!」ちらっ
蒼魔上級将軍「構わぬ」

蒼魔近衛兵「測量騎兵隊準備終了しました。
 これより出発いたしますっ!!」

蒼魔上級将軍「急げ。王の瞑想終了には間に合わせよ」
蒼魔近衛兵「はっ!!」

参謀軍師「鉄の国、ですか」
蒼魔上級将軍「多少は歯ごたえがあればよいのだが」

参謀軍師「南部三カ国の中ではもっとも兵の充実した国です。
 噛み応えはあるでしょう。安心為されて宜しいかと」

蒼魔上級将軍「そうだとよいが……。ん?」

ふわり

参謀軍師「どうなされた?」

蒼魔上級将軍「いや、何でもないようだ」

249 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 21:37:03.97 34eUyEEP

――蔓穂ヶ原の外れ、鉄国後方陣地

ザックッザックザック……

女騎士「良く整えられた陣営だな」
冬国士官「そのようですね。1500にしては規模が大きいような」

女騎士「増えることを見越してあるのだろう」
冬国士官「そうですね」

バサッ

軍人子弟「騎士殿!!」

女騎士「軍人子弟っ!」

軍人子弟「はははははっ! お久しぶりでござる!
 ずっとお会いもできませんでござった!
 しかしきっといらっしゃると思っていたでござるよっ!」

鉄国少尉「こちらは、まさか!?」

軍人子弟「そう! かつて勇者を支えた三人の英傑の一人にして
 湖畔修道委員会の指導者、そして我が三カ国同盟の誇る常勝将軍!
 ”鬼面の騎士”にして”怪力皇女”! “絶壁つるつる行進曲”!
 我が師、女騎士殿でござぐぇぇぇっ」

女騎士「お前は成長しないのか」 チャキンッ

冬国士官「ふははは」
鉄国少尉「あははははっ」

女騎士「恥ずかしいところを見せてしまったな。
 わたしは女騎士。新任の将軍にして、この戦の司令官だ。
 貴君ら鉄の国の国境防衛部隊は、我が傘下に組み込まれる」

鉄国少尉「お話は伺っております! どうぞ天幕へっ!」

軍人子弟「ぐっ。……拙者だって上官なのに」

250 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 21:38:32.54 34eUyEEP

――蔓穂ヶ原の外れ、鉄国後方陣地、仮設兵舎

女騎士「それで、軍人子弟はここが戦場になると読んだのか?」

軍人子弟「そうでござらんが。おい、地形図を」
鉄国少尉「はっ」

ばさり!

女騎士「ふむ」

軍人子弟「ここは鉄の国と氷の国を流れる紫涙河の源流付近。
 山岳からやってきた清水は森林の中に大小合わせれば
 無数としか言い様のないくぼみを作り、
 こちらの蔓穂ヶ原は湿原地帯となっているでござる」

冬国士官「ふぅむ」

軍人子弟「水量の豊かなこの地は、
 いずれ干拓や潅漑が進めば
 豊かな農地へとなるかも知れないでござるが、
 現在の所は水はけの悪い草原、湿地帯、泥炭地の混合地形。
 
 しかしながら付近では大規模な軍を運用できる土地は
 他にはござらん。また、この場所に軍の集積地をおけば、
 白夜国から鉄の国へとやってくる峠道や迂回路のほぼ全てを
 2日以内の地点で監視する体制を作れるでござる」

女騎士「哨戒はどうなってる?」

軍人子弟「半日ごとに偵察を切り替えながら、
 常時監視を行っているでござるよ」

女騎士「まずは及第点だ」

軍人子弟 ふぅ
鉄国少尉「護民卿、顔色蒼いですよ」

軍人子弟「今までの色んな記憶のせいで
 やたらと緊張するのでござるよ」

251 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 21:39:38.49 34eUyEEP

女騎士「さぁって、ここからは本番だな」

軍人子弟 こくり

女騎士「こっちはいま2000連れてきた。騎馬500に歩兵1500。
 どちらも訓練度は高い正規軍人で、実戦経験もある」

軍人子弟「この陣地および周辺に展開中なのは3500名。
 全て正規軍人で、訓練度には多少ばらつきがござるが
 最終的には拙者が全員を指導いたしました」

鉄国少尉「あわせて、5500名でございますね。
 早速食料備蓄と配給を再計算しなくては」

女騎士「敵は最大25000の蒼魔族。
 戦力、兵装、戦術は不明だが
 騎馬部隊、弓兵部隊の存在は確認している。
 騎馬は槍を装備して、他には小剣と盾を持った歩兵もいたな」

軍人子弟「弓兵は長弓でござるか?」

女騎士「長弓と云うには多少小降りだったな。
 だが威力はなかなかだった」

軍人子弟「ふむ。比率は不明、と」
女騎士「そうだ」

軍人子弟「威力偵察に迫ってきた兵達は騎馬部隊でござった。
 騎馬には板金の馬鎧をつけてござったな」

女騎士「重騎兵か……」

軍人子弟「まず第一に云えるのは」
女騎士「聞こう」

252 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 21:41:04.87 34eUyEEP

軍人子弟「敵の司令官は馬鹿でもなければ
 油断も慢心もしていないと云うことでござる。
 さらにいえば、その蒼魔族なる魔族は武装が良くて
 統制も取れ、訓練も行き届いていると云うこと」

女騎士「同感だ」

軍人子弟「そして二倍の数がいることから考え合わせると、
 通常の戦闘をする限り、
 拙者達の運命は敗北以外にはないと云うことでござる」

女騎士「その通り」

軍人子弟「ではどのように機略を用いるかと云うことでござるが、
 その前に確認したいことはこの戦争の最終的な目標でござる。
 目標が与えられない限り、戦術は構築出来ないでござる」

女騎士「良く覚えてるな」
軍人子弟「戦術授業だけは真面目に受けたでござるよ」

女騎士「お前も護民卿になったんだろう?
 目標設定もしてみるべきだな」

軍人子弟「民を護ることでござる」

女騎士「“どこ”の?」

軍人子弟「もちろん、白夜の国を含めて」

女騎士「では目標はただ一つ。蒼魔族を打ち破り、
 白夜の国も開放すべきだ」

255 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 21:43:19.62 34eUyEEP

冬国士官「まっ。待ってくださいよ。今わたし達は
 自分たちが生きるか死ぬか、国が滅びるか、
 滅びないかの瀬戸際なんですよっ!?」

鉄国少尉「そうですよっ! 裏切り者の白夜なんて
 構っている場合じゃないですよっ」

女騎士「と、云っているが?」

軍人子弟「どうにもならなければ、
 作戦目標を変更することもあるでござるが、
 最初から引き分け狙いで勝てるほど甘い相手ではないでござろ?
 “完全”を求める者にこそ、
 それでやっと“半分”が与えられるでござるよ」

鉄国少尉「……っ」

女騎士「さぁて、随分骨のある課題になったな」

軍人子弟「そうでござるね。まずは、数の差を埋めるでござるよ」
女騎士「おおっと、そっちからいくか」

軍人子弟「これでもこき使われたでござるからね。
 戦略によって戦闘資源を確保できるならば、
 その方が王道でござる。騎士殿はお土産はないのでござるか?」

女騎士「氷の国の兵は断った。
 冬の国からは歩兵3000が一週間後には届くだろう」
冬国士官「はい、連絡を絶やさないようにしております」

軍人子弟「拙者のほうでは開拓兵に声をかけるでござる」

女騎士「何に使う?」
軍人子弟「工兵としてならば期待できるでござる」

257 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 21:45:41.50 34eUyEEP

女騎士「と、やはり地形か」
軍人子弟「地形でござるね」

女騎士「だが、さっき聞いたが敵も馬鹿じゃないんだろう?
 重装騎兵を持っている将軍が、沼沢地方での決戦に応じるか?
 こちらの地形情報がなければそれもあり得るだろうが
 斥候も測量もださないってのは流石にないだろう」

軍人子弟「餌が必要でござろうね」
女騎士「餌、か」

軍人子弟「騎士師匠」きりっ

女騎士「何だよ改まって。気持ち悪いな」

軍人子弟「拙者、前々から思っていたのでござるが
 騎士師匠は実に端正な横顔をしているでござる。
 水晶のような鮮やかな瞳にバラ色の唇、細くて豊かな髪。
 馬上にて指揮する姿は全軍の視線を集める戦の女神でござるよ」

鉄国少尉「えっと」
冬国士官「そのように云われると、我が将軍ながら照れますね」

女騎士「なっ、何を言ってるんだよ」

軍人子弟「いやいや、もうこれはお世辞ではござらんのですよ。
 その上我らが南部三ヶ国通商の誇る常勝将軍にして
 勝利の約束、生きる伝説でもある姫将軍でもあるわけです」

鉄国少尉「えー」
軍人子弟(小声)「褒めるでござる」
鉄国少尉「へ?」
軍人子弟(小声)「褒めちぎるでござる。
 ちぎってちぎってちぎりまくるでござるよ」

259 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 21:47:14.17 34eUyEEP

女騎士「な、な、なにを」ばたばた
軍人子弟「拙者、密かに女騎士将軍の指揮の下
 戦える日を夢見てござった」

鉄国少尉「そ。そうですよ! 三ヶ国の兵は皆、騎士将軍に
 憧れの気持ちを持っているんですよ」
冬国士官「それは事実ですなぁ。
 なんだ鉄の国の連中も判っているじゃないか」

女騎士「お前達まで、何をっ」

軍人子弟「いやいや、謙遜なさることはござらん。
 もはやこれは、全軍の偽らざる気持ちというものでござろう?
 で、ござるよな! 皆の衆」

鉄国少尉・冬国士官 こくこく

軍人子弟「いぇーい! 女騎士将軍ばんざーい!」

鉄国少尉・冬国士官「ばんざーい!」

女騎士「ちょ、お前達っ」

軍人子弟「いぇーい! 少女めいた華奢な首筋ばんざーい!」

鉄国少尉・冬国士官「ばんざーい!」

女騎士「な、やめろ。お、怒るぞっ!」かぁっ

軍人子弟「こほん。万歳ついでに、餌を」

女騎士「え?」

軍人子弟「蒼魔族のよだれを垂らす美味しい餌は、
 女騎士将軍をおいて他にはいないでござるよ!」にぱっ

278 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 22:19:44.73 34eUyEEP

――大陸街道南部、羊飼いの草原

めぇぇぇーー。めぇぇぇぇー。

羊飼いの男「なんだ、ありゃ?」
羊飼いの娘「地面が動いてるの? ……いえ、あれは」

羊飼いの男「人だ。すげぇ人だ!」
羊飼いの娘「何が起きてるの!?」

めぇぇぇー。めぇぇぇぇー。

 ザッザッザッ
 
 ――精霊はこれを欲し給う
 ――精霊はこれを欲し給う

羊飼いの男「すごい数の人だ。いや、兵隊達だ」
羊飼いの娘「でもこんな人数、領主様の軍だって。
 ううん、どんな王様の軍だって想像できないよ……」

やつれた旅商人「なんだあんた達、聞いていないのか?」

羊飼いの男「旅人さんじゃないか」
羊飼いの娘「これはなんなの? 何が起きているの?」

やつれた旅商人「大主教さまが、第三次聖鍵遠征軍を
 招集なさったんだよ」

羊飼いの男「聖鍵……」
羊飼いの娘「遠征軍?」

やつれた旅商人「ああ、そうさ」

281 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 22:23:54.59 34eUyEEP

 ザッザッザッ
 
 ――精霊はこれを欲し給う
 ――精霊はこれを欲し給う

やつれた旅商人「俺たちの光の精霊様を侮辱していたって云う
 魔族の連中を倒すために、大主教さまが広く兵を
 募集なさったんだ」

羊飼いの男「広くって、貴族だけじゃないのか?」
やつれた旅商人「ああ、農奴も市民も参加しているって話だよ」

羊飼いの男「それでこんなに……」

 ザッザッザッ

羊飼いの娘「とんでもないわ。世界の終わりみたい……」

やつれた旅商人「俺は北西の方から旅をしてきたんだけど
 これと同じ景色が、あっちには何日も続いている。
 どこにこんなに人数がいたんだろうってくらいだ」

羊飼いの男「もしかしたら、羊も買ってくれるかな?」

やつれた旅商人「ああ、買ってくれるんじゃないか?
 後から後から参加する連中や、娼婦や、物乞いまでも
 一緒にずるずるとくっついて行っているよ」

羊飼いの男「ちょっといってみるかな」

羊飼いの娘「なんだか怖いよ。離れていた方が良くない?」
やつれた旅商人「俺も興味はないね」

羊飼いの男「でも儲かるかも知れない。俺は行ってみるよっ」
羊飼いの娘「まってよ、わたしもついて行くってば!」

287 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 22:45:57.01 34eUyEEP

――蔓穂ヶ原、尾根部分

パチッ。パキリ……

蒼魔軍斥候隊長「どうだ?」
騎馬弓兵「この辺り一帯が該当区域ですね」

蒼魔軍斥候「かなり広大な平野部だな」

蒼魔軍斥候隊長「うむ。地図上でも差し渡し15里はあるようだ」

騎馬弓兵「どのように調べましょう?」

蒼魔軍斥候隊長「まずは、この尾根道の調査を、斥候隊」

蒼魔軍斥候「はいっ」

蒼魔軍斥候隊長「つぶさに行うのだ。2万の軍が
 何列で進めるかも含めて詳細な見取り図を作成せよ」

蒼魔軍斥候「はっ」

蒼魔軍斥候隊長「平原の地勢はどうだ?」

騎馬弓兵「穏やかなうねりを伴った草原が殆どですが
 幾つかの場所において湿地や、ぬかるみ滑りやすい泥が
 むき出しになった地形が存在するようです」

蒼魔軍斥候隊長「ふぅむ」

騎馬弓兵「いかがいたしましょう?」

291 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 22:50:40.65 34eUyEEP

蒼魔軍斥候隊長「騎兵の運用はどうだ?」

騎馬弓兵「軽騎兵はいけるでしょうが、
 重装騎兵は難しいかも知れません。
 馬が足をくじいたら身動きも取れなくなるでしょうし。
 ただしそれは沼沢部分で、草地を上手く使えば
 あるいは可能かも知れませんが……」

蒼魔軍斥候「しかし、沼沢地方では重装歩兵すら運用が
 難しい場所も存在するようです」

蒼魔軍斥候隊長「“見た目より狭い”ということか。
 使える場所が限られている地形のようだな」

騎馬弓兵「手強い地形ですね」

蒼魔軍斥候隊長「騎馬弓兵は馬を下りて、
 ここより平野中心部にかけての地形を調査せよ。
 判る限りの沼沢部分、平地部分、丘陵部分を事細かく記録せよ。
 平原の周辺部については沼沢の割合が大きいようだ。
 戦場とするのは不適当に過ぎる。
 中心部を重点的に測量、また敵にあった場合交戦は避けて
 諜報と斥候に勤めるように」

騎馬弓兵「了解いたしましたっ」

グシャッ

蒼魔軍斥候「は?」

蒼魔軍斥候隊長「蔓穂の花よ。ふっ。人間の国など、
 我ら蒼魔の勇者がこの花のように踏みにじってくれようぞ」

297 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 23:09:58.40 34eUyEEP

――冬の国辺境、人里離れた深い森の中

ホーウ、ホーウ
 バサバサバサッ!

器用な少年 びくっ!
メイド妹「あれは、フクロウさんだよー?」

器用な少年「判ってるよっ!!」

ギャーッギャッギャッギャ
 バサバサバサッ!

器用な少年「っ!?」

貴族子弟「ほらほら、少年。少年がびびってるから
 鳥たちも飛び立つんですよ。サクサク歩くっ」

メイド妹「遅いよぉ」

器用な少年「お前らの荷物も俺が持ってるからだろうっ!」

貴族子弟「だってねぇ?」
メイド妹「うん」

貴族子弟「ぼかぁ、ほら。線の細い貴族ですし」
メイド妹「わたし女の子だもん」

器用な少年「どんだけ荷物持たせるんだよっ!?」

300 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 23:11:55.32 34eUyEEP

貴族子弟「命を救ってあげたじゃないですか」
メイド妹 うんうん

器用な少年「奴隷にされただけだっ!」

貴族子弟「生意気ばっかり云ってると、このレイピアちゃんで
 首の横から食事できるようにしちゃいますよ?」

メイド妹「それじゃ味が分かんなくなっちゃうよぉ!」ぷんすか

貴族子弟「まずいか。じゃお尻の穴を増やしましょうか?」
メイド妹「それならいいよ♪」

器用な少年「ひっ。わ、判ったよ。運ぶ、運ぶよっ」

ザッザッザッ

貴族子弟「ほらほら、君は荷物運びじゃないんですから」
メイド妹「先頭歩かないと」

器用な少年「俺だって正確な場所が判るわけじゃねぇって」
貴族子弟「でも、この辺の森は詳しいでしょ」
メイド妹「うんうん」

器用な少年「たぶん、砦の廃墟に……それらしい人が」

ザッザッザッ

貴族子弟「ああ。あっちかな」
メイド妹「ん。これは……。まめのスープの匂いだ」

器用な少年「あれでいいのか?」

貴族子弟「ええ、あれが目的地のようですね」

301 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 23:13:27.19 34eUyEEP

器用な少年「じゃぁ、俺はここで良いだろう?
 あの連中はやばいんだって。俺は行きたくねぇよ」

貴族子弟「あははは。だってそれじゃ荷物運べないじゃないですか」

器用な少年「そんな事言ったって、
 俺に持たせる前は二人で背負ってたじゃねぇかよぉ!!」

貴族子弟「?」
メイド妹「?」

器用な少年「言葉が分かんないような困った顔するなよっ!!」

貴族子弟「まったく楽しい少年ですね」
メイド妹「きっとお腹がすいてるんだよ」

器用な少年「なぁ、頼むよ! あそこにいるのは傭兵崩れなんだ。
 ただの野盗といっしょにしちゃまずいんだよ!
 人殺しに馴れている本当のプロなんだってば!!」

貴族子弟「だからわざわざ来たんじゃないですか」

器用な少年「判ってねぇよ!」

貴族子弟「判ってますよ。だいたいプロの人が、もう明かりも
 見えるような距離に侵入者の僕らが踏み込んでいて」

ガサッ

屈強な傭兵「動くなっ。武器に手を触れるなよっ」

貴族子弟「気が付かないわけがないでしょう?」

313 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 23:23:35.83 34eUyEEP

――冬の国辺境、人里離れた深い森の中、砦の廃墟

めらめら、パチパチっ

傭兵隊長「で、お前ら何なんだ? あん」
傭兵槍騎兵「返答次第じゃ生きては帰さねぇぞ」

器用な少年「お、おいらはちんけなこそ泥で
 まったく全然無関係なんだっ。
 勘弁してくれよ、隊長さんっ」

貴族子弟「多少は気合いを入れて意地を張らないと
 何時までも負け犬だよ? 少年くん」
メイド妹「お姉ちゃんに笑われちゃうよ-?」

傭兵隊長「で、そっちの貴族様は?」

貴族子弟「ぼくの名は貴族子弟。優雅なワルツと花の香り
 酒の甘さと淑女を愛する雅の信奉者といったところかな」

メイド妹「わたしはメイド妹です。将来の宮廷料理長だよ♪」

傭兵隊長「ふんっ。で、その貴族様が何だって?」

貴族子弟「いや、この森にね。
 このあたりで最も屈強な傭兵団崩れがいるって
 聞いてね、やってきたんだ」

傭兵隊長「ほう……」ギラッ
傭兵槍騎兵「隊長」ジャギッ

貴族子弟「武器をちらつかせるのは止めてくれよ。
 自慢じゃないが僕は弱いんだ。
 失禁したらお洒落なズボンが濡れるだろう?」

メイド妹「それ格好良くないよ、お兄ちゃん……」

314 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 23:24:32.07 34eUyEEP

傭兵隊長「そうかい? 俺は戦場暮らしが長くてね。
 あんたは、そこらのぼんくら騎士より、
 よっぽど使うって俺の勘が告げているんだがね」

貴族子弟「たかだかぼんぼんの庭先剣法さ。
 だいたいのところ、よしんば僕がどれだけ手練れだったとしても
 この砦にいる数百人から逃げられるわけもない。
 あの塔」すっ

器用な少年「へ?」きょろきょろ

貴族子弟「――からは、石弓でだって狙ってるんだろう?」

傭兵隊長「お見通しかい。へへへっ。
 で、あんたはどんな用なんだい? あんたも金をくれるって?
 どっちからなんだい?」

貴族子弟「……」
器用な少年「ど、ど、どっちって?」

傭兵隊長「“冬の国から奪って欲しい”のか
 “冬の国を勘弁して欲しいのか”ってことさ。
 俺たちは野盗だからよ。金をくれた方に着くぜ?」

貴族子弟「ふぅむ、そうなのか?
 そんな理由で今まで金を受け取らないでいたのかい」

傭兵隊長「……他に何があるんだ?」

貴族子弟「いや、他にも何かあるんじゃないかと思ってきたんだが」

傭兵槍騎兵「貴様、生意気な口をっ」

器用な少年「ひっ!!」

315 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 23:25:43.07 34eUyEEP

傭兵隊長「何が言いたいんだ」

貴族子弟「いや。手入れの良い軍馬だな、と思って」

傭兵隊長「……」

貴族子弟「ただ草をはませてるだけじゃない。
 毎日拭いてやって世話をしてやらないと、
 こういう毛づやにはならない。
 それに武具だってくたびれてはいても、どれも丁寧に
 修理してあるし、愛用のものなんだろう?
 砦の使い方も規律があって、野盗のそれじゃない」

傭兵隊長「何が云いてぇ」

貴族子弟「実を言えば、雇用に来てね」

傭兵隊長「ほぉらみろ、やっぱりそうじゃねぇか」

貴族子弟「いやいや、意味も雇用条件も目的もまったく別さ」

傭兵隊長「何だってんだ、云ってみろよ」

貴族子弟「実は知っているかも知れないけれど、
 白夜の国ってあるだろう? ここからはさほど遠くない」

傭兵隊長「ああ」
傭兵槍騎兵「ちっ。何だってんだおまえ」

貴族子弟「そこの首都が魔族に落とされていてね」

傭兵隊長「……はん。腐れ貴族がっ。最低限自分の国を
 護ることも出来ねぇのかよ。笑わせるぜっ」

貴族子弟「で、だ。そこの首都を救って欲しいんだ」


317 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 23:27:06.27 34eUyEEP

器用な少年「へ?」
傭兵槍騎兵「はぁぁ!? 何を言ってるんだお前」

貴族子弟「そんなに変な雇用かな?」

傭兵槍騎兵「ったりまえだ!
 何で俺たちが魔族に突っ込まなきゃ行けねぇんだ!
 しかも貴族様のケツを拭くなんて何で俺らがそんな事を」

傭兵隊長「――おい、黙っとけ。
 で、貴族の兄ちゃんよ。生きているうちに
 云いたいことはそれだけか?」

貴族子弟「べつに、尻ぬぐいをしろなんて云ってやしない。
 そもそも白夜国は滅びたよ。
 王も死んだし、政府だって残っちゃいない。
 あそこは“かつて白夜と云われた土地”ってだけだ。
 尻ぬぐいの相手なんかいない。その必要もない」

器用な少年「……おいらの国だ」

貴族子弟「あそこにいるのは、ただひたすらに飢えて
 酷使される農奴以下の奴隷となった国民達。
 ――それだけだ」

メイド妹「うん……」

傭兵隊長「で?」

貴族子弟「だから、あそこでは大変需要があるんだよ。
 そう、ヒーローってやつにね」

傭兵隊長「っ」

貴族子弟「どうだい。ここは一つ、
 解放軍とやらになってみる気はないかい?」

318 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 23:29:21.46 34eUyEEP

貴族子弟「ああ、いたって正気さ。
 どうにも我が学院は、正気になれば正気になるほど
 周囲から見て狂気に見えるという忌まわしい伝統が
 あるようなのだよ。困ったもんだ。
 軍人子弟しかり、メイド姉君しかり。
 そもそも師からして正気とは言い難い。
 陰陽としか言えない胸のサイズだ。
 きわめて正気なのに。悲しいことだなぁ」

傭兵隊長「……」

貴族子弟「隊長は知っていると思うけれど、
 今あそこを支配している魔族は近々、
 隣国である鉄の国に攻め込むはずなんだよ。
 どれくらいの兵力で攻め込むかは判らないけれど
 殆ど全軍を率いて出発すると僕の兄弟弟子は見ている。
 すると、白夜国には殆ど兵力は残らないはずだ。
 
 君ほどの統率力があれば、周辺に散在している
 幾つかの武装集団もまとめることが出来るだろう?
 
 ……翡翠の国の辺境戦争と警備軍のことは聞いている」

傭兵隊長「貴様、どこでそれを……っ」
貴族子弟「貴族の社交界というのは思ったより広いんだよ」

傭兵隊長「……っ」

貴族子弟「だが、貴方ほどの指導力があれば
 この周辺の武装集団を組織化することも出来るだろう?
 主力の出はらった白夜の国を開放することも不可能とは云えない」

320 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 23:30:34.68 34eUyEEP

傭兵隊長「報酬は何だ?」
貴族子弟「おい、少年」

器用な少年「なんだってんだよっ!?」
貴族子弟「荷物を降ろして良いぞ」

傭兵槍騎兵「なんだ? 金ごと持ってきてるのか?
 奪って欲しいとしか思えねぇ、馬鹿か、お前」

器用な少年「判ったよ、降ろすっ」

傭兵槍騎兵「開けますぜ隊長? ……なんだこりゃ」
器用な少年「これは……。なんだ」

メイド妹「ベーコンとジャガイモの、ホワイトクリームパイだよ」

傭兵隊長「なんでこんなもん……」

貴族子弟「食べろ」

傭兵隊長「何言ってるんだ、お前!?」

貴族子弟「良いから、黙って食え。それでなくても
 開いたらどんどん冷めて行くんだ。早いところ食え」

傭兵槍騎兵「隊長……。良い匂いですが。毒ってことも」
メイド妹「ちがうもんっ! わたしはそんなモノ作らないもんっ」

傭兵隊長「一個よこせ」
傭兵槍騎兵「でも」

傭兵隊長「良いからよこせ。……ふん。むっしゃ、むっしゃ」

傭兵槍騎兵「じゃ、おれも……」

傭兵弓士「お、おいらも」おずおず
傭兵剣士「俺も腹が減ってるんだ」

322 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 23:32:38.25 34eUyEEP

傭兵隊長「……美味ぇな」ぽつり

メイド妹「うん! 頑張って美味しく作ったよっ!」

傭兵隊長「ああ、美味い。たいしたもんだ。
 嬢ちゃんなのか? すげぇな。美味いよ。
 ちっせぇのに。
 ああ、なんだろう、こいつは。
 なんだか応えるほどに――美味いなぁ」

貴族子弟「どうだ、すごいだろう?」
器用な少年「なんでこの兄ちゃんが威張るんだ」

貴族子弟「白夜国を救うと、こう言うのがずっと食えるようになる」

傭兵隊長「は?」

貴族子弟「ずっと食えるようになる」こくり
傭兵隊長「何言ってるんだ?」

貴族子弟「解放軍として、仕官しないか?
 冬の国でも良いし、再興するなら白夜でも良い。
 自分たちを地獄から救ってくれた英雄だ。
 民は感謝するぞ。
 
 “ありがとう”って云うぞ。
 そういうふうにならないか? ただの野盗になるつもりなら
 何で馬具の手入れを欠かさない? 何故武具を磨く?
 
 君たちは、野盗じゃない。傭兵団だ。
 しかも、いずれ故郷にたどり着く、希望を持った傭兵団だ」

傭兵隊長「本気なのか? 俺は戦場であんたらの所の
 女将軍と追っかけ合ったこともあるんだぜ?」

326 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/27 23:34:43.94 34eUyEEP

貴族子弟「この僕が責任を持とう。
 僕は氷の国の氷雪女王の特使として、
 また三ヶ国通商同盟の全権委任大使として
 あなたに依頼する。
 
 当面の費用は氷の国が責任を持つ。
 この森の中で自分の納得行く規模の師団を編制して
 白夜の国辺境に潜伏。機を見て、その民を解放してくれ。
 魔族を撃退してくれとは頼まない。
 出来る限りの民を救い出してくれるだけで良い」

メイド妹「お願いしますっ」

傭兵隊長「……」
傭兵槍騎兵「隊長……」
傭兵弓士「お頭……」

貴族子弟「……」

傭兵隊長「もう一個貰っても良いかな」

メイド妹「うんっ。これはね、豚の脂身を入れてから
 焼くんだよっ。熱いと、何倍も美味しいんだよっ」

傭兵隊長「へぇ。むっしゃ、むっしゃ。
 へっ。美味ぇや。たいしたもんだよ。ああっ、たいしたもんだ。
 はん。――いいだろうっ!!」

貴族子弟 にこり

傭兵隊長「こんなに美味ぇ前金受け取ったら働くっきゃねぇだろ!
 おい、お前ら! 付近の頭だった連中に渡りをつけろっ!
 俺たちの戦が始まるぞっ。どうせどっかでのたれ死ぬのが
 傭兵の運命だ。死ぬ前に1回、その“ありがとう”とか
 いうやつを拝んでやろうじゃねぇか!」

343 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/28 00:20:17.56 L1AOl7sP

――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地

斥候「来ましたっ!」

女騎士「構成は?」

斥候「中央に歩兵。我が軍に照らせば軽装ですが、
 巨大な木製の盾を保持している模様っ」

冬国仕官「弓矢対策か」

斥候「さらに左右に軽騎兵および重装騎兵。
 厚みのある陣容です。
 前方突出部分だけで一万を超えている模様」

冬国軽騎兵「いち……まん……」

女騎士「ひるむなっ! よしんば敵が二万いようと
 こちらも7000はいるのだ! 一人三人の敵を倒せば済むっ」

冬国軽騎兵「はっ!」

女騎士「距離はどの程度だ」

斥候「尾根を下りきった地点。おそらく正午頃には会敵しますっ」

冬国仕官「指揮官は……」

女騎士「おそらく蒼魔の将軍だろう。
 刻印の王が出てきたら全軍撤退だ。武器も放り出して逃げろ」

冬国仕官「……了解」

344 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/28 00:22:15.85 L1AOl7sP

――蔓穂ヶ原、尾根道を下った周縁地域

蒼魔上級将軍「陣形を整えよ。ここを後詰めとするぞ」

蒼魔近衛兵「はっ! 方陣形っ!」

ザッザッザッ!!

蒼魔軍歩兵「15番隊まで、整列完了しましたっ!」
蒼魔軍軽騎兵「軽騎兵完了」
蒼魔軍弓兵「弓兵、配置よしっ」

蒼魔上級将軍「さて、敵はどうだ?」

斥候部隊「報告位置より動いてはおりません。
 中央部丘陵地帯に前衛陣地を置き、待ち受ける構え」

蒼魔上級将軍「どうやらあの部分が
 最も足場がしっかりしていて、
 敵の騎兵も使いやすいのであろうな」

蒼魔近衛兵「しかし、それはこちらも同じこと」

蒼魔上級将軍「それゆえ、あそこにたどり着く前に
 弓矢でこちらの戦力を出来る限り減らすのが
 きゃつらの作戦だろう」

蒼魔軍歩兵隊長「だが予想済みでございます。
 矢よけの大盾を装備すれば、接近前の矢など何ほどのこともなく。
 人間などの思うとおりにはさせませぬ」

蒼魔上級将軍「いいや。ここはその心根を砕くとしよう。
 だれぞあるっ!! 督戦隊をよべっ!!」

ばさっ!

蒼魔督戦隊長「ここにっ!」がばっ

蒼魔上級将軍「そのほうに先鋒を申しつける!
 中央の丘陵地帯への突破口を開き、
 我が蒼魔族の騎馬部隊を導き入れよっ!!」

345 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/28 00:24:16.72 L1AOl7sP

――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地

冬国軽騎兵「霧が出てきたな」
冬国槍兵士「ああ……」

冬国弓兵士「蒼魔族接近っ! 目視できますっ!」

女騎士「まだだっ。まだ撃つなっ。引きつけるぞっ!」
冬国仕官「全軍射撃準備っ」

冬国弓兵士 すっ

女騎士「……」
冬国仕官「まだか」

冬国槍兵士「有効射程の外ですが、こちらでも目視確認っ」

冬国弓兵士「思ったよりも大盾の装備は少ない様子。
 臨時の装備だったようですね。
 これならばこちらの弓矢でも効果は十分だ」

女騎士「……っ。まさか」ぎりぎりっ

冬国弓兵士「距離よしっ。姫将軍、号令をっ!!」

女騎士「……っ」

冬国弓兵士「接近します、どうか号令をっ」

女騎士「……構わんっ。撃てぇぇっ!!!」

びゅんびゅんびゅん! びゅんびゅん!
   びゅんびゅんびゅん! びゅんびゅんびゅんっ!

346 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/28 00:26:28.46 L1AOl7sP

――蔓穂ヶ原、中央部、接近中の蒼魔軍先鋒

奴隷歩兵「ぎゃぁぁぁ!!」

蒼魔督戦隊「進め! 進めっ!」

奴隷歩兵「ダメだっ! 弓矢が壁みたいにっ!」

蒼魔督戦隊「貴様らは敗北者の兵だろう! 奴隷なのだ!」

奴隷歩兵「俺たちは人間だっ。人間に剣を向けるなんてっ」

蒼魔督戦隊「はんっ! この間まで鉄の国と白夜国は
 戦争をしていたと云うじゃないか! どの口がほざくっ!
 さぁ、立て! 立って戦えっ!」

奴隷歩兵「いやだぁ! 俺は死にたくないんだぁ」

蒼魔督戦隊「では死ね」

ドスッ!

奴隷歩兵「あ、ああっー!?」

蒼魔督戦隊「貴様らの背中はこの督戦隊が
 狙っていることを忘れるなっ!
 怖じけずいて逃亡しようとした奴らは、
 この督戦隊がすぐさま射殺してくれるっ!」

奴隷歩兵「な、なんで。なんでこんなっ!」

蒼魔督戦隊「槍を拾え! 突っ込め! あの丘を奪うのだっ!」

353 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/28 00:33:10.13 L1AOl7sP

――蔓穂ヶ原、森林部、待機場所

ぶるるるっ

軍人子弟「馬に藁を咬ませるでござる。静かに」
鉄国歩兵「はっ」

軍人子弟「……」

              わぁぁ キン、キン

鉄国少尉「開戦したようですね」
鉄国歩兵「……」ぎゅっ

軍人子弟「拙者達の役目はこちらでござるよ。
 心配でござるが、我が師ならきっと持ちこたえるでござる」
鉄国少尉「はい」

軍人子弟「あと3時間も持ちこたえれば、
 きっと勝機が来るでござる。それまでは……」

鉄国少尉「そうですね。わが護民卿の策です」

軍人子弟「はははっ。女騎士殿の考えでござるよ」
鉄国少尉「でも、殆ど同じコトを考えていましたね」

軍人子弟「我が師でござるからね」
鉄国少尉「俺……あー、わたしも。きっと護民卿に
 師事して、その力を学ばせて貰いたいと考えています、ハイ」

軍人子弟「助けて貰っているでござるよ」

鉄国少尉「いえいえ、そんな」

斥候「将軍っ」

357 : 以下、VIPにかわりましてパー速... - 2009/09/28 00:34:39.59 L1AOl7sP

軍人子弟「何でござるか」

斥候「後方から未確認の部隊接近」

軍人子弟「後方っ!? どうやって」

斥候「いや、大陸街道やら森の中からです。
 しかし、魔族じゃありません。人間です」

軍人子弟「援軍でござるか? この時期に現われそうな
 援軍は思いつかないでござるが……」

鉄国少尉「とりあえず伝令を出して所属を確かめませんと」

軍人子弟「そうでござるな。工兵の防御のためにも、
 我が隊はここを離れるわけには行かないでござる。
 斥候、済まないが、その部隊に確認を――」

     ドゥゥゥーーン!!!

鉄国少尉「っ!?」
鉄国歩兵「な、なんだ……」

  ドゥゥゥーーン!!!

軍人子弟「これは……」

鉄国歩兵「将軍っ! 将軍っ!!」
軍人子弟「落ち着くでござるっ!」

鉄国歩兵「我が軍の後方部隊、および開拓兵が
 謎の軍と接触! 攻撃を受けていますっ!
 謎の軍は轟音を発する射撃武器にて我が軍を蹂躙っ!!」

軍人子弟「なっ!?」




次回:魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」 #27


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