~病院・ほむらの個室~
ほむら「またこの時間に戻ってきてしまった……」
ほむら「どうして上手くいかないのかしら」
ほむら「未来の知識があっても……」
ほむら「誰も私の言うことを信じてくれないのが辛いわ」
ほむら「いったいどうすればいいのかしら……」
ほむら「……そうだわ」
ほむら「魔法少女のことを漫画にしましょう」
元スレ
ほむら「そうだわ、魔法少女のことを漫画にしましょう」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1304411926/
ほむら「口で説明しても誰も信じてくれないもの」
ほむら「分かりやすく漫画にすればいいんだわ」
ほむら「魔法少女のシステムとか、キュゥべえの企みとかを漫画にして、皆に見せよう」
ほむら「まどかも、マミも、美樹さやかも、それなりに漫画好きのようだし」
ほむら「佐倉杏子は……漫画を買えるような生活をしてないから分からないけど」
ほむら「そうと決まれば早速漫画の練習ね」
ほむら「とは言っても漫画の書き方なんて知らないわ」
ほむら「まずはネットで調べてみましょう」
ほむら「爆弾だってネットの知識で作れたんですもの」
ほむら「漫画だってネットの知識で何とかなるに違いないわ」
ほむら「……」カチカチ
ほむら「色んなサイトがヒットしたわね」
ほむら「へえ、WEB上で漫画を公開している人もいるのね」
ほむら「魔法少女を題材にした作品も多いみたい」
ほむら「ちょっと読んでみましょう。勉強になるかもしれないわ」
ほむら「まずはこの『魔法少女のK』っていう作品から……」
ほむら「……いやあああああ!?」
ほむら「なにこれ?! 全然救いのない話じゃない!」
ほむら「魔法少女モノって普通はもっと優しい物語でしょ!?」
ほむら「……まあ、衝撃的という意味では楽しめたけど」
ほむら「……次はこの『事実の魔法少女』って作品にしましょう」
~翌朝~
ほむら「……徹夜して読んでしまったわ」
ほむら「なにこの超大作。話が先に進まないくせに面白かったわ」
ほむら「リリは私の嫁……いやいや、私はまどか一筋よ」
ほむら「……というか私の本来の目的が何一つ達成されてないわね」
ほむら「WEB漫画は恐ろしいわ。時間を操る私から時間を奪うなんて、まさしく時間泥棒」
ほむら「……改めて漫画の書き方を勉強しましょう」
ほむら「あら、これは……」
ほむら「『週間・マンガ家になろうよ!』ですって?」
ほむら「『毎号ついて来る付録とテキストを使えば、キミも漫画家になれる!』」
ほむら「これは素晴らしいわ。買ってみましょう」
ほむら「バックナンバーから最新号までまとめ買いよ」
~翌日~
ほむら「色々あったけど基礎的な知識は身についたわ」
ほむら「アマゾんから届いた『週間・マンガ家になろうよ!』とかいう雑誌はクソの役にも立たなかったわ」
ほむら「一般の人が運営するサイトの方が有益な情報を得られたわ。タダだったし」
ほむら「それはさておき執筆作業に入りましょう」
――数時間後――
ほむら「……私は絵が下手くそであることが判明したわ」
ほむら「とにかく練習するしかないわね」
ほむら「でも単純に練習を繰り返すだけではモチベーションが保てないわ」
ほむら「ストレスでソウルジェムがベタ塗りになりそうよ」
ほむら「気力を保つためにも、何か工夫をしないと……」
ほむら「そうだわ」
ほむら「エロに走りましょう」
ほむら「エロ絵を描きまくりましょう」
ほむら「まどかの裸」ハアハア
ほむら「まどかの鎖骨」ハアハア
ほむら「まどかのおへそ」ハアハア
ほむら「まどかのおっぱい」ハアハア
ほむら「まどかのオナニー」ハアハア
ほむら「まどかと私の秘め事」ハアハア
ほむら「まどかの貴重な産卵シーン」ハアハア
――数秒後――
ほむら「時間停止も駆使した結果、プロ並みの画力を身につけたわ」
ほむら「魔力を思い切り消費したけど」
ほむら「精神が充実してたからソウルジェムが濁ることもなかったわ」
ほむら「エロの力は偉大ね」
ほむら「ノート五十冊分もまどかの痴態を描いてしまったわ」
ほむら「さて……ようやく作品を描けるレベルまで上達したので」
ほむら「さっそく執筆作業に入るわ」
ほむら「まどかに似せた女の子、マルグレーテが主人公よ」カリカリ
ほむら「愛称はマルー」カリカリ
ほむら「本当はすごい才能を秘めているけれど、自分に自信がない女の子なの」カリカリ
ほむら「友人のオクタヴィアと学校へ通うシーンから始まるわ」カリカリ
ほむら「オクタヴィアのモデルはもちろん美樹さやかよ」
ほむら「……オクタヴィアを描くのが面倒くさいわ」
ほむら「私の中のテンションが下がっていくのを感じる」
ほむら「もっとマルーを……いえ、まどかを描きたい」
ほむら「……」
ほむら「この想いはエロ絵ノートにぶつけましょう」カリカリ
ほむら「『らめぇ、そこは耳の穴だよぅ』とまどかは泣き叫び……」
ほむら「……ふう。ソウルジェムの曇りはエロで晴らしたわ」
ほむら「さて続きよ」
ほむら「転校生のほむら……じゃなかった、ポプラと出会うことで物語は動き出すわ」
ほむら「ポプラは成績優秀、運動神経抜群で、流れるような黒髪がチャームポイントのクールビューティよ」
ほむら「そして剣術、射撃、格闘、魔法すべてを使いこなす戦闘のエキスパート。
自分のことをまったく語らず、唯一みずからを「ライトニング」と呼称する。
だが、これが本名かは不明。
もともと、とある組織で階級のある立場にいた。
が、それが一転。現在は追われる立場になっている。
性格は高貴と言えるが、決して高飛車なわけではなく、
誰もいないところで、ふとやわらかい表情を見せる一面もあるようだ」
ほむら「……これはやりすぎよね。ボツだわ」
ほむら「……さて、マルーはインキュベーターと名乗る化け物に騙されて魔法少女にされそうになるわ」
ほむら「そこへ颯爽とポプラが登場。マルーを助けるのだけれど……」
ほむら「勘違いからポプラはマルーに嫌われてしまう」
ほむら「……ぐすっ」
ほむら「いいもん。出会いが最悪でもハッピーエンドになればいいんだもん」
ほむら「でもインキュベーターがムカつくから、漫画内でも虐殺しておきましょう」
ほむら「その綺麗な顔を吹き飛ばしてやるぜ! ……と」
ほむら「……虐殺シーンで十ページも使ってしまったわ」
ほむら「これじゃあ単なるグロ漫画じゃない」
ほむら「グロ描写で読者の目を引くのも一つの手法だけど……」
ほむら「これはさすがに過剰演出よね」
ほむら「……待てよ? かの名作、ベルセルクはもっとグロかったわよね」
ほむら「しかもグロの中にエロも織り交ぜてきていたわ」
ほむら「やはりエログロは読者が求めるものなんだわ」
ほむら「……つまりこのキュゥべえ虐殺シーンにもエロを組み込めば……」
ほむら「よし、試してみましょう」
ほむら「まずポプラはインキュベーターの尻穴に拳銃をねじ込んで……」
ほむら「うん、これボツ」
ほむら「えーと、次はマミさんの出番ね。名前は何にしようかしら」
ほむら「よし。ティロ・フィナ子でいいわ」
ほむら「フィナ粉はインキュベーターに騙されたこと知らず、魔法少女として戦っている女の子」
ほむら「マルーとオクタヴィアに魔法少女がどんな存在か教えてあげる先輩キャラなんだけど……」
ほむら「……油断して……魔女に……殺される……」
ほむら「……そして……マルーは、魔法少女になるということの怖さを、思い知る……」
ほむら「…………」
ほむら「というのはフィナ子が考えたシナリオで……本当はフィナ子は生きてるのよ」
ほむら「そして影からマルーを見守っている……うん。そうしましょう」
――数時間後――
ほむら「アニメ三話分くらいまでストーリーが進んだわ」
ほむら「明日から学校だし、今日はこの辺で終わりにしましょう」
ほむら「問題は……どうやってこれをまどかに読んでもらうかだけど……」
ほむら「まあ何とかなるわ。その場のノリでなんとかしましょう」
ほむら「さて……寝る前にもう一仕事ね」
ほむら「今夜はキュゥべえがまどかの前に現れる日。事前に潰しておきましょう」
~転校初日~
ほむら(とりあえずはクラスに溶け込むことができたわ)
ほむら(休み時間を利用して、まどかに漫画の話題を振りましょう)
ほむら「……鹿目さん。保健室に連れていってくれないかしら?」
まどか「うん、いいよ。お薬飲まなきゃいけないんだよね?」
ほむら「ええ、そうなの」
まどか「じゃあ行こっか」
まどか「……ねえ、ほむらちゃん。私たち何処かで会ったことあるっけ?」
ほむら「それはさておき鹿目さん。あなたは漫画に興味あるかしら?」
まどか「え? う、うん。まあ普通に読むくらいなら……」
ほむら「どんな漫画を読むの?」
まどか「えーと、サバイビーとか、UltraRedとか、賢い犬リリエンタールとか好きだよ」
ほむら「あ、私もその作品好きよ」
まどか「ホント? 嬉しいなあ、趣味が合うなんて」
――しばらく濃密な時間を過ごした――
ほむら「……こんなに楽しい時間を過ごしたのは久しぶりだわ。ありがとう、まどか」
ほむら(……本当に、久しぶりだったわ)
まどか「うふふ、私も楽しかったよ。でも意外だったなあ、ほむらちゃんがこんなに漫画好きだったなんて」
ほむら「そうかしら?」
まどか「うん。何だか大人びた印象だったから、漫画なんて読まなそうなイメージだったよ」
ほむら「そんなことないわよ。それに大人でも子供でも、漫画は楽しめるものよ」
まどか「……うん! そうだよね!」
ほむら「ところで……実は私ね、趣味で漫画を描いてるの」
まどか「え? すごーい! プロの漫画家を目指してるの?」
ほむら「プロになりたいわけじゃないわ。個人的な目的のために描いてるだけで……」
まどか「そうなの?」
ほむら「ええ。ちなみに昨日初めて作品を完成させたわ」
まどか「へー……でも楽しそうだね! いいなあ、趣味があるのって」
ほむら「それで……その、もし良かったら、私の漫画を読んでみてくれないかしら?」
まどか「え? ほむらちゃんが描いた漫画を?」
ほむら「ええ、感想を聞いてみたくて……読んでくれる?」
まどか「うん。ぜひ読んでみたいな!」
ほむら「……そう言ってもらえて嬉しいわ」ニタァ
~放課後・ほむらの家~
ほむら(そんなわけで、まどかをウチに招待した)
ほむら(おまけで美樹さやかもついてきてる)
ほむら(まあ彼女にも魔法少女のことを知ってもらいたかったから好都合だ)
まどか「……へー、ここがほむらちゃんの部屋?」
さやか「意外と片付いてるじゃん! 漫画描きの部屋って、もっと汚いかと思ってたわ」
まどか「さやかちゃん! 失礼だよそんなこと言ったら!」
さやか「あ、ゴメン。悪気はなかったんだけど……」
ほむら「気にしてないわ。……それに普段はもっと散らかってるのよ」
ほむら(というか、たった今慌てて片付けたのよ。時間停止を使って)
ほむら(危ないところだったわ……爆弾や銃火器は見られても問題ないけど)
ほむら(まどかのエロ絵を描きまくったエロノートを見られてしまうところだった)
ほむら(もしもまどかに見られていたら……)
ほむら(『ほむらちゃんって変態さんだったんだね……』とか言われて)
ほむら(白い目で見られて……)
ほむら(…………)
ほむら(……それはそれで御褒美だけど、今は漫画を読んでもらう方が先決よ)
ほむら「さてと……これが私の描いた漫画よ。読んでみて?」
まどか「わあ、この子が主人公なの? 可愛いね!」
ほむら(それは勿論あなたがモデルだからよ)
さやか「ま、『魔法少女マルー☆マジカル』? これまた意外なジャンルだね……」
ほむら「人に見せるのは初めてだから恥ずかしいわ……絵も上手くないし」
まどか「そんなことないよ! とっても上手でプロみたいだよ?」
さやか「うんうん、画力は大したもんじゃん。でも問題はストーリーですな、あたしの採点は辛口だぞー?」
まどか「もう、さやかちゃんたら。またそんなこと言って……」
まどか「主人公はマルーちゃんっていうんだね」
さやか「あれ? ちょっとまどか似じゃない?」
まどか「そうかなあ? マルーちゃんのほうが何倍も可愛いよ?」
さやか「お、友人ポジションのキャラが出てきた。ふーん、オクタヴィアねぇ」
まどか「マルーちゃんが私なら、オクタヴィアちゃんはさやかちゃんだね?」
さやか「いやいや、あたしのほうが何倍も可愛いよ!」
まどか「うふふ……あれ? ねえ、ほむらちゃん」
ほむら「何かしら?」
まどか「何でオクタヴィアちゃんは、ときどきキモイ兜みたいなツラの半魚人になるの?」
ほむら「ファンタジーだからよ」
さやか「お、何か可愛いマスコットみたいのが出てきた。いんきゅべーたー? 変わった名前だな」
まどか「でも怪我してるよ?」
さやか「転校生のポプラがやったんだな? くそー、ポプラは敵か?」
まどか「うーん、何か事情がありそうだけど……」
さやか「事情があるなら説明してほしいよねー。思わせ振りな態度とってないでさー」
ほむら(……口下手でごめんなさい)
まどか「それを言ったら作品が終わっちゃうんだよ、きっと」
さやか「マスコットキャラが『僕と契約して魔法少女になってよ!』だってさ」
まどか「この子と協力して、魔法が使える様になるのかな?」
さやか「さあさあどうなるマルー! といったところで第一話はお終いか」
まどか「続きが気になる!」
ほむら「どう? 面白かった?」
まどか「うん! これの続きはまだ描けてないの?」
ほむら「第三話まで描いてあるわ。読む?」
さやか「もっちろん!」
ほむら「それじゃあ……はい、どうぞ。第二話よ」
まどか「わーい、ありがとう」
ほむら「私は二人が読んでいる間にお茶を淹れてくるわ」
~台所~
QB「……このへんから素質のある女の子の気配が……」
ほむら(不法侵入をしている珍獣を発見してしまった)
QB「おや? キミは魔法少女……?」
ほむら(そういえばキュゥべえのレイプシーンも描いたわよね。結局ボツにしたけど)
QB「おかしいな、キミみたいな子と契約した覚えは……」
ほむら「……実際にケツ穴にブチ込んだら、どんな声で鳴くのかしら?」
QB「きゅっ?!」
まどか「あれ!? 今、助けてーって声が聞こえた!」
さやか「まじで!? 漫画と同じじゃん!! ……ってんなわけあるかーい!」
まどか「えへへ、そうだよねー。気のせい気のせい」
まどか「第二話を読み終わったけど、ほむらちゃんが帰ってこないね」
さやか「お茶を用意すんのに手間取ってるのかな? 続きが気になってるんだけどなあ」
ガチャ
ほむら「おまたせ。お茶を持ってきたわ」
まどか「あっ、おかえりほむらちゃん!」
さやか「もー、遅いから読み終わっちゃったよ? 早く続き見せてよ!」
まどか「うん! 見たい見たい!」
ほむら「そんなに面白かったのね? 光栄だわ」
ほむら「はい、これが第三話よ」
まどか「わーい、読ませてもらうね?」
さやか「さてさてお次はどうなるのかな?」
まどか「前回は先輩魔法少女のティロ・フィナ子さんが大活躍だったね!」
さやか「そうそう、カッコいいのにクラスで孤立してるところがまたチャームポイントだよねー」
まどか「孤高のヒロインって感じだよねー」
ほむら(……マミさんをモデルにしたキャラは好評みたいね……嬉しいわ)
さやか「あたしがマルーだったらフィナ子さんに惚れ込んで、さっさと魔法少女になっちゃいそうだな!」
まどか「うんうん、私も! あーあ、ホントに魔法少女になれたらいいのになあ」
ほむら(くすっ……二人ともあんな無邪気にはしゃいじゃって)
ほむら(今ホントにキュゥべえが出てきたら、喜んで契約を結びそうね……)
ほむら(……)
ほむら(それ駄目じゃね?)
ほむら(魔法少女の危険性を教えるために漫画を描いたのに……)
ほむら(魔法少女に憧れさせてどうするのよ!)
ほむら(いえ、大丈夫よ……まだ慌てる時間じゃないわ)
ほむら(これから二人が読むのは第三話。マミさんの死に様を見れば……)
ほむら(魔法少女になろうなんて甘い考えは捨てるはず!)
さやか「やっぱりフィナ子さんは格好いいなー」
まどか「うん! アクションシーンも凄く上手に描かれてるよね!」
さやか「あ、また魔女をやっつけた!」
まどか「でも、あれ? 何か様子が……」
さやか「うわあああ!? フィナ子さんが食べられたぁああ!?」
まどか「食べられたうえに念入りに咀嚼されたよおおお!?」
さやか「しかも卒業アルバムの恥ずかしいポエムが公開されてるうううう!」
まどか「更に同級生に『地味な子だったから良く分かりません』ってコメントされちゃうぇええ!」
さやか「……こ、これでフィナ子さんの出番は終わり? ホントは生きてるとかじゃないの?」
まどか「酷いよ、こんなのってあんまりだよ!」
ほむら(期待通りのリアクションで嬉しい)
ほむら(実は生きてて主人公を見守ってる、という設定なんだけど……今言う必要はないわね)
ほむら「どうだったかしら? そのシーンは自信があったんだけれど……」
さやか「エグイ! ちょっとエグすぎるよコレ!」
まどか「うう……トラウマになりそう……」
ほむら「喜んでもらえて何よりだわ」
さやか「サディストかアンタは!」
まどか「ほむらちゃんはこういう漫画が描きたかったんだ?」
ほむら「ええ。テーマは……『見た目に騙されるな』ってところかしら」
さやか「なるほどね。あたしたちはまんまと騙されたってことかー」
まどか「うーん。ショッキングな展開だったけど……とっても楽しめたよ!」
さやか「それはあたしも同意だわ。素人が描いたとは思えないクオリティだったよ」
ほむら「続きが描けたらまた読んでもらえるかしら?」
さやか「うん、喜んで!」
まどか「ちょっと怖いけど、私も読みたいな」
ほむら「ありがとう……頑張って続けるわ」
ほむら「ところで、二人に聞いてみても良い?」
まどか「うん、いいよ?」
さやか「なになに?」
ほむら「もしも自分が、この漫画の主人公だったら……魔法少女になりたいと思う?」
さやか「えー? 魔法少女に?」
まどか「うーん、どうかなぁ……」
さやか「それって死ぬ危険もあるってことでしょ? あたしはヤダなあ」
さやか「まあ、何でも願いが叶うってのは魅力的だけどさ」
さやか「何かこのインキュベーターとかいうキャラ胡散臭いし……詐欺臭いんだよね」
ほむら(よしよし、良い傾向ね)
ほむら「まどかは? どう思った?」
まどか「私は……」
まどか「私は、魔法少女になっちゃうかも」
ほむら(…………!?)
さやか「へえ、怖がりのまどかにしては意外だね?」
まどか「うん……死ぬのは怖いよ。でもさ、私がもしもこの漫画の主人公で……」
まどか「もし、もっと早くに魔法少女になってたら、ティロ・フィナ子さんを救えたかもしれないよね」
さやか「ほー、そうきたか」
まどか「私が頑張ることで誰かが助かるなら……」
まどか「私は魔法少女になる……かも」
ほむら「まどか……」
ほむら「……まあ、あくまで漫画の話だけれど……参考になったわ。ありがとう」
まどか「ううん、こっちこそ楽しませてもらってありがとう!」
ほむら(なんてことなの……)
ほむら(『漫画で分かる魔法少女』作戦は完全に裏目に出たわ)
ほむら(まどか……貴方は優しすぎる!)
ほむら(まさか漫画のキャラに同情して魔法少女になる決心を固めるなんて……!)
ほむら(……でも私は諦めないわ、貴方を魔法少女にしないためにも……)
ほむら(次はもっとエグい漫画を描かなければ……!)
~その頃のキュゥべえ~
QB「うう、マミ……助けて……」
マミ「どうしたのキュゥべえ! 血が……どこか怪我したの!?」
QB「お、お尻……」
マミ「え?」
QB「お尻が裂けて……」
次回へ続く。
さやか「うわ、なにこのノート。女の子の裸ばっかり書いてあんじゃん」
まどか「ほむらちゃんって変態さんだったんだね……」
ほむら「ち、ちがうの、これは……」
まどか「違わないでしょ? ほら、ここがもうこんなに濡れてるよ?」
さやか「ちょっと言葉攻めしてあげただけなのにねぇ?」
ほむら「うううううううう……」
と、いう展開も予定していたのですが、別の時間軸に飲み込まれ消滅しました。
~夜・ほむらの部屋~
ほむら「さて、まどかと美樹さやかに漫画を読ませることに成功したけれど……」
ほむら「新たな問題も発生してしまった」
ほむら「このままでは漫画の影響で、まどかは魔法少女になってしまうかもしれない」
ほむら「どうしよう」
ほむら「…………」
ほむら「まどかの残り香のせいで集中できないわ」
ほむら「ムラムラする……」
ほむら「この想いはエロノートに書きなぐりましょう」
ほむら「『私の中にほむらちゃんの骨髄が入ってくるよぅ』、とまどかは嬌声をあげ……」
ほむら「……ふう。すっきりしたわ」
ほむら「さて漫画の続きを書きましょう」
ほむら「まどかを救うための重要な漫画だもの。手は抜けないわ」
ほむら「生易しい内容ではなく……もっとエグイ内容にしなくちゃ」
ほむら「まどかが魔法少女になりたいなんて思わないように!」
ほむら「エグく、エグく!」
ほむら「えーと。前回の続きからだから……」
ほむら「ティロ・フィナ子(巴マミ)の死後……」
ほむら「オクタヴィア(美樹さやか)が魔法少女になってしまうのよね」
ほむら「幼なじみのキョウスキー・セガール(スティーヴン・セガール)の手を治すために……」
ほむら「…………」
ほむら「あんまりやる気が出ないわね」
ほむら「この辺、まどかの出番少ないんだもの」
ほむら「……そうだわ。下校途中に古本屋で雑誌を買ったんだった」
ほむら「表紙が可愛かったから、参考になるかと思ったのよね」
ほむら「息抜きに読むとしましょう」
ガサゴソ
ほむら「……うん。やっぱり可愛い表紙だわ」
ほむら「コミックLOっていうのね」
ほむら「…………」
ほむら「Yesロリータ、Noタッチ」
ほむら「新しい属性に目覚めてしまったわ」
ほむら「どうしようかしら。ロリが描きたい」
ほむら「漫画に登場させなければ気が済まないわ」
ほむら「…………そうだわ」
ほむら「まだ登場させてない重要人物が居たじゃない」
ほむら「佐倉杏子をロリにしましょう」
ほむら「オクタヴィアが魔法少女活動を始めてしばらくしたところで……」
ほむら「ライバルのアンコ(ロリ)が登場する、と」
アンコ『アタシはセンパイなんだぞぉ!』エッヘン☆
ほむら「やだ……かわいい」
ほむら「まさしく自画自賛してしまったわ」
ほむら「……オクタヴィアとアンコは考え方の相違から対立」
ほむら「バトルシーンが始まるわ」
ほむら「ここらでエグさを強調しましょう」
ほむら「アクションに交えてパンチラも沢山盛り込んで……」
ほむら「アンコが前屈みなったときにシャツが弛んで胸チラするのも良いわね」
ほむら「腋のスベスベ感+発展途上の横チチに……」
ほむら「無邪気にアイスキャンディを頬張るアンコ」
ほむら「素晴らしいわ……」
ほむら「エグい! エグすぎるわ!」
ほむら「……エグ、い…………エロい?」
ほむら「だいぶ話がそれてしまったわ」
ほむら「軌道修正しましょう……エグく、エグく!」
ほむら「……最初のうちはキョウスキーの怪我が治ったことを素直に喜ぶオクタヴィア」
ほむら「魔法少女として人々のために戦うのも悪くない……そんなふうに考えていた」
ほむら「しかしアンコとの戦いの中で、衝撃の事実が明らかになる!」
ほむら「なんと、魔法少女の本体はソウルジェムであり、肉体は器に過ぎないことが判明するのであった!」
ほむら「『それじゃあゾンビにされたようなもんじゃねーか!』とアンコは怒りを顕わに……」
ほむら「…………」
ほむら「もっとエグイ設定にしたいわね」
ほむら「事実とは異なるけど脚色しちゃいましょう」
ほむら「そうね……魔法少女になるとゾンビになるだけじゃなくて……」
ほむら「皆から忘れ去られてしまうとか……どうかしら」
ほむら「家族や仲間からも忘れられて、『○○って誰だ?』みたいな展開に……」
ほむら「有りがちね」
ほむら「最終的に思い出の品とかがきっかけで記憶を取り戻すパターンになりそうだわ」
ほむら「…………」
ほむら「あら? なぜかしら、目から涙が……」
ほむら「おかしいわね、涙が止まらないわ」
ほむら「……よく分からないけどこの展開は止めましょう」
ほむら「描けそうな気がしないわ」
ほむら「他に案は出てこないかしら」
ほむら「こう、エグくて……年頃の女の子が堪えられなさそうな」
ほむら「……思春期の女子にとって重要な事柄と言えば恋愛よね」
ほむら「恋人と結ばれるのは誰でも憧れるでしょう」
ほむら「なら、それを踏みにじるような展開にすれば絶望するわよね」
ほむら「……レイプ……妊娠……中絶……」
ほむら「……スイーツ(笑)」
ほむら「スイーツはさておき、レイプ・妊娠は中々にエグいわよね」
ほむら「某RPGでも主人公の母親がモンスターを出産させられていたけれど」
ほむら「今まで倒してきた怪物が自分の異父兄弟だった、という設定はエグくて衝撃的だったわ」
ほむら「それがエロゲじゃなくて全年齢対応作品なんだからどうかしてるわよね」
ほむら「魔法少女は異形の化け物に犯される……」
ほむら「エロいしエグいし、これならまどかも魔法少女になりたがらないでしょう」
ほむら「さて、『魔法少女になると化け物に犯される』という設定で話を進めるわ」
ほむら「化け物の名前は……『魔獣』とか?」
ほむら「……いや、突然そんなのが出てこられても困るわね」
ほむら「やはり何の伏線も無く新設定をブチ込むのは難しいかしら……」
ほむら「…………」
ほむら「…………そうだ、閃いたわ!」
ほむら「魔法少女の契約を結ぶと……」
ほむら「キュゥべえの子供を妊娠させられてしまうことにしましょう!」
ほむら「キュゥべえの力で魔法少女にされ、肉体を作り替えられる際に……」
ほむら「少女たちはキュゥべえの子を孕ませられるの」
ほむら「もちろんキュゥべえはそのことを説明しないわ」
ほむら「魔法少女たちもしばらくの間は気が付かない」
ほむら「契約してから数週間後……ようやく魔法少女たちは自身のお腹の膨らみに違和感を抱く」
ほむら「そして知るのよ。……自分はキュゥべえの子供を妊娠していると!」
ほむら「キュゥべえは満面の笑顔で告げる。『もちろん産んでくれるよね』?」
ほむら「――――そう、キュゥべえは繁殖を目的として地球にやって来た宇宙人だったんだよ!」
ほむら「生理的嫌悪を抱きつつもキュゥべえに妊娠させられる魔法少女……エグイわ」
ほむら「思い切り後付け設定になるけど、まあ何とかなるでしょう」
ほむら「……そういえばキュゥべえってオスなのかしら? 今更だけど」
ほむら「そもそも生殖活動を必要とするの? 生殖器とかついてるのかしら?」
ほむら「猫のペニスはトゲがついてるのよね。もしかしたらキュゥべえも?」
ほむら「精液はドロッと系? サラサラ系?」
ほむら「犬の精液はサラサラ系なのよね。キュゥべえはどうなのかしら」
ほむら「興味は尽きないわ……」
QB「やあ、お邪魔するよ暁美ほむら。今日は君に聞きたいことが……」
ほむら「あら、ちょうど良いところに実験サンプルが」
QB「?」
ほむら「……実験動物には逃げられてしまったわ」
ほむら「まあそれはさておき、漫画の続きを描きましょう」
ほむら「……とは言っても後はいつものパターンなんだけど」
ほむら「魔法少女の真実を知ったオクタヴィアは、自暴自棄になって」
ほむら「しかも幼なじみにフられて絶望し魔女化」
ほむら「オクタヴィアを助けようとしたアンコは戦いの果てに自爆」
ほむら「マルーの心には深い傷が残される……」
ほむら「この流れは変えるまでもないわね」
ほむら「充分に憂鬱な展開だもの」
ほむら「……さて、今日はこの辺にしておきましょうか」
ほむら「一気に第9話まで進んだわ」
ほむら「時間停止を駆使したからソウルジェムもギリギリよ」
ほむら「急いでエロパワーでソウルジェムを浄化しないと……」
ほむら「『ほむらちゃんの眼鏡こんなに勃起してるよ……』とまどかは優しく撫でて……」
ほむら「…………」カリカリ
ほむら「ふう。すっきりしたわ」
ほむら「明日は漫画を学校に持って行って……」
ほむら「休み時間にでも読んでもらうとしましょう」
ほむら「まどかの反応が楽しみだわ♪」グフフ
~その頃のマミさん~
マミ「よしよし、大丈夫だから……もう泣かないで、キュゥべえ」
QB「ぐすっ、怖かったよう」
マミ「それにしても……その暁美さんってコは何者なのかしら……?」
QB「わからない。魔法少女であることは確かなんだけど……」
マミ「なぜアナタを狙うのかしらね? 目的はなんなのかしら?」
QB「……うう……えぐえぐ」
マミ「ああゴメンなさい。思い出させちゃったわね」ナデナデ
QB「うわーん!」
マミ(キュゥべえがこんなに怯えるなんて……初めてのことだわ)
マミ(今度はいったい何をされたというの?)
マミ(……暁美ほむらさん、貴女とは早めに話をつける必要がありそうね)
~朝・登校時~
ほむら(登校中のまどかと美樹さやかを見つけた)
ほむら「おはよう、まどか」
まどか「あ、おはよう! ほむらちゃん」
ほむら「美樹さんも、おはよう」
さやか「おいーっす。こんなとこで会うなんて奇遇だね」
まどか「ほむらちゃんもこの道を通るんだ?」
ほむら「ええ、そうよ」
ほむら(ホントはまどかに会うためにわざわざ遠回りしてるのだけれど)
ほむら「そうそう、昨日の続きが描けたから持ってきたわ」
まどか「続きって、漫画の? もう描けたの?!」
さやか「マジで? 仕事早いねー」
ほむら「二人に読んでもらいたくて頑張ったのよ」
まどか「そうなの? 嬉しいなあ」
さやか「こいつぅ、可愛いコト言ってくれんじゃん!」
ほむら「ふふ、あとでお昼休みにでも読んでもらえるかしら?」
まどか「うん、喜んで!」
マミ「――――お話し中のところ悪いけれど、少し良いかしら……暁美ほむらさん?」
さやか「わっ? ど、どちらさま?」
まどか「ほむらちゃんのお知り合い?」
ほむら「!?……巴、マミ……」
マミ「あら、名乗った覚えはないのだけれど……どうして私の名前を知ってるのかしら?」
ほむら「……それはお互い様でしょう?」
まどか「な、なんか険悪な雰囲気だね」ヒソヒソ
さやか「うん……少なくとも、お友達って感じじゃないね」ヒソヒソ
マミ「暁美さんと『二人で』お話ししたいことがあるの。ちょっとだけ時間を貰える?」
ほむら「……ええ良いわよ」
まどか「ほ、ほむらちゃん、大丈夫なの……?」ヒソヒソ
さやか「ねえ……まさか虐めとかじゃないでしょうね?」ヒソヒソ
ほむら「大丈夫よ。彼女はそんなことをする人じゃないから」
まどか「え?」
ほむら「まどかと美樹さんは先に行っててちょうだい? 遅刻するといけないわ」
さやか「……分かった。でも何かあったらあたし達に言いなよ?」
まどか「その、えっと、力になれることがあったら協力するからね?」
ほむら「ええ……ありがとう、二人とも」
――まどか達と別れた――
ほむら「それで、用件は何かしら?」
マミ「その前に改めて自己紹介させてもらうわ。私は巴マミ、貴女と同じ魔法少女よ」
ほむら「……私は暁美ほむらよ。アナタも知っているみたいだけれど」
マミ「ええ。貴女のことはキュゥべえから聞いたの」
ほむら「キュゥべえから?」
マミ「そうよ、あの子言ってたわ……貴女に苛められたって」
マミ「ねえ暁美さん。何故キュゥべえを狙うの? あの子を傷つける理由は何? 返答によっては……」
ほむら「取材よ」
マミ「……え?」
ほむら「漫画のリアリティのためには必要なことだったの」
マミ「ごめんなさい、ちょっと待って……漫画?」
ほむら「ええ。例えるなら第四部で岸辺露伴が蜘蛛の味を確かめたのと同じよ」
マミ「なるほど、そういうことね……つまり貴女は漫画を描くためにキュゥべえを虐めたと」
ほむら「分かってもらえたみたいね」
マミ「じゃあ貴女が漫画を描く目的は何? まさか単なる趣味ではないのでしょう?」
ほむら「……私は、魔法少女を増やしたくないの」
マミ「?」
ほむら「だから魔法少女の悲惨な末路と、キュゥべえの企みを漫画にして、友人達に読ませている」
マミ「魔法少女の末路? それにキュゥべえの企みって……」
ほむら「アナタも気になるかしら、巴マミ? 知りたければ読ませてあげるわ」
マミ「………………」
マミ「そうね。私も拝見させてもらうわ」
~喫茶店~
ほむら(落ち着いて話が出来るように場所を移した)
ほむら(でも巴マミがどこかソワソワしているようにも見えるわね)
ほむら「どうかしたの?」
マミ「……私、学校をサボって喫茶店に入るなんて初めてなの」
ほむら「……真面目なのね、あなたって」
マミ「ふふ、そんなことないわよ。本当に真面目だったら無断欠席なんてしないでしょう?」
マミ「それじゃあ、貴女がお友達のために描いた、っていう漫画を読ませてもらおうかしら」
ほむら「ええ……これよ」
マミ「魔法少女マルー☆マジカル……ね」
マミ(見るからに面白そうなタイトルだわ)
マミ「……あら? 第4話からなの?」
ほむら「話の流れは大体わかるようにしてあるから大丈夫よ」
マミ「そう。じゃあ読みはじめるわね」
――漫画鑑賞中――
ほむら(ロリ魔法少女アンコちゃんが登場したページで巴マミの手が止まった)
マミ「……ねえ、このアンコちゃんって誰かモデルが居るのかしら?」
ほむら「佐倉杏子という魔法少女を参考にしたわ」
マミ「やっぱり……外見とか考え方とか似ていると思ったわ」
ほむら「アナタは佐倉杏子と面識があるのね」
マミ「ええ、以前少し、ね……というか貴女こそ佐倉さんを知っているのね」
ほむら「こちらが一方的に知っているだけよ。面識はないわ」
マミ「その辺りの事情も詳しく聞きたいところだけれど……後にするわ」
マミ「ところでなんで佐倉さんはロリになっているの?」
ほむら「私の趣味よ」
――漫画観賞継続中――
ほむら(物語はオクタヴィア編クライマックスに入った)
ほむら(ついに魔法少女と魔女の関係が明かされる)
マミ「……魔法少女は絶望を溜め込むと、魔女になる……?」
マミ「嘘……そんなことって……」
ほむら「信じられないかしら?」
マミ「当たり前じゃない! いきなりそんなことを言われたって……!」
ほむら「でも事実よ。キュゥべえは魔法少女を魔女にしようと企んでいる」
マミ「そんな……」
ほむら(巴マミの表情は固く、ページをめくる手も重たい)
ほむら(しばらくの間、居心地の悪い空気が流れた)
ほむら(と、そこへウェイトレスがやってきた)
ほむら(注文していたレモンティーがテーブルに並べられる)
ほむら(ひと仕事を終え、営業スマイルと愛想のよい声を残してウェイトレスは去っていった)
ほむら(巴マミがグラスに手を伸ばし、ゆっくりとストローに口をつける)
ほむら(冷たい液体が喉を通り、気分も少しはマシになったのだろうか、)
ほむら(彼女は決心したように再びページをめくり始めた)
ほむら(だが数ぺ―ジ進んだところで、突然顔を真っ赤にして原稿を握り締めた)
マミ「……!?」
マミ「ちょ、ちょっと暁美さん? いきなりキュゥべえが、その、子作りを始めたのだけれど……!?」
ほむら(そういえばそんなシーンも描いたわね)
マミ「魔法少女を、に、妊娠させるって……まさかコレも本当にあったことなの!?」
ほむら「ああ、それはフィクションよ」
マミ「へ?」
ほむら「実際にはキュゥべえは人間と交尾なんてしないわ」
マミ「そ、そうなの? 良かったわ……」
マミ「でも、それなら何故こんな場面を描いたの?」
ほむら「始めに言った通り、私の友人が魔法少女にならないようにするためよ」
マミ「……魔法少女はエッチなものだと思わせて、契約への抵抗感を強めたかったわけね?」
ほむら「まあそんなところよ」
マミ「……まったくもう。おかしいと思ったわ」
マミ「いきなりキュゥべえがあんなことやこんなことを始めるんですもの」
ほむら「キュゥべえが自慢の耳毛をしごいて絶頂を迎えるシーンは我ながら上手く描けたと思うわ」
マミ「なんていうか……まあ、耳毛で快感を得るっていう発想の凄さだけは認めるわ」
ほむら「お褒めいただき光栄だわ」
ほむら「でも訂正させてもらうけど……」
ほむら「『キュゥべえがツイン耳毛コキでイッちゃう』という設定は私の妄想の産物ではないわよ?」
マミ「え?」
ほむら「取材で得た情報を元に、キュゥべえの生態を忠実に描写しただけだもの」
マミ「…………え、つまり、キュゥべえは本当に耳毛で……?」
ほむら「そうよ。アイツは耳毛が性感帯なのよ」
マミ「何ですって……?!」
――漫画を読み終わった!――
マミ「…………」
マミ「暁美さん、改めて確認するけど……これらは本当のことなのね?」
ほむら「ええ。脚色した部分もあるけれど殆どが事実よ」
マミ「そん、な……」
ほむら「まあさっきも言ったけれど、『キュゥべえの目的は子作りだった』っていう部分だけは嘘だから安心していいわ」
マミ「つまりそれ以外は事実だって言うのね……」
ほむら「そうよ」
マミ「魔法少女が絶望すると魔女になってしまうことも……」
ほむら「事実よ」
マミ「キュゥべえが私たちを使い捨ての電池みたいに考えていることも……」
ほむら「間違いないわ」
マミ「キュゥべえの耳毛が実は性感帯だっていうのも……!」
ほむら「確認済みよ」
マミ「キュゥべえがお尻の穴をほじられながら耳毛をしごかれるのが大好きだっていうのも……!」
ほむら「すべて本当のことよ」
マミ「なんてことなの……!!」
マミ「私、今まで何も知らなかったわ……キュゥべえとは長い付き合いなのに……」
ほむら「アイツは真実を隠すのが得意なのよ。気に病む必要はないわ」
マミ「……暁美さんは私よりもキュゥべえのことを知っているのね」
ほむら「私は……たまたま知る機会があっただけよ」
マミ「そう……タマタマなのね……」
ほむら「巴マミ。貴女ももっとキュゥべえという存在を理解するべきだわ」
マミ「……分かったわ。今日キュゥべえと話して、色々と確認してみる」
ほむら「それが良いと思うわ。アイツは嘘だけはつかないから」
ほむら「でも気をつけて。アイツは私達を利用して棄てることしか考えていないのだから」
マミ「ええ。心に留めておくわ……」
ほむら「……さて、と。これから貴女はどうするの?」
マミ「私は家に帰るわ。少しでも早くキュゥべえに確認を取りたいから……」
ほむら「あら、学校はサボるのね? 私は遅刻してでも登校するつもりだったけれど」
マミ「……正直なところ、学校に行く気分じゃあないのよ」
マミ「気持ちの整理もつかないし、授業に集中なんて出来そうにないから」
マミ「……魔法少女のこと、魔女のこと、キュゥべえのこと……」
マミ「そして何より耳毛のことをキュゥべえの口から説明してもらわないと、私は前に進めないと思うから……」
ほむら(巴マミは私の主張を信じてくれたようだ)
ほむら(かなりショックを受けていたようだったけれど……)
ほむら(以前とは違って発狂もしなかった)
ほむら(今後彼女がどう動くか、注意は必要だけれど……)
ほむら(ひとまずは安心ね)
――喫茶店から出た――
ほむら「巴マミと別れたわ」
ほむら「私は……完全に遅刻だけど学校へ行くとしましょう」
ほむら「……と思ってた矢先に素晴らしい気配を感じた」テッテレ
ほむら「近くに魔女がいるみたいね」
ほむら「どうしようかしら」
ほむら「巴マミはもう帰っちゃったし……あてには出来ないわね」
ほむら「仕方がないわ。ますます遅刻になるけれど魔女退治にいくとしましょう」
~そのあとのマミさん~
マミ「ただいま、キュゥべえ」
QB「おや、おかえりマミ。今日は随分と帰りが早いんだね?」
マミ「ええ……アナタと『お話』したいことがあってね」
QB「『お話』したいこと? なんだい?」
マミ「その前にキュゥべえ、ちょっと抱っこしても良いかしら?」
QB「別に構わないけど?」
マミ「うふ、ありがとう」ギュッ
QB「むぎゅっ……少し苦しいよマミ、もっと優しく抱いてほしいな」
マミ「ええ、優しくしてあげるから安心してね……」
ツツツ……
QB「ひゃっ!? ま、マミっ、変なトコ触らないでよっ」
マミ「うふふ……ごめんなさい」
QB「……マミ? ねえ……何だか怖いよ?」
マミ「……大丈夫よ、怖がらないで? 少し『お話』するだけだから……」
QB「えっ……あっ?! そこは触っちゃダメェ!!」
――魔女の結界――
ほむら「さて、魔女退治に来たわけだけど……」
ほむら「エロパワーのおかげでソウルジェムの汚れを気にせず戦えるのは素晴らしいわね」
ほむら「…………」
ほむら「身体が軽い……こんな気持ちで戦うなんて初めて!」
ほむら「もう、何も怖くない!」
使い魔「…………!」
ほむら「雑魚のお出ましね」
ほむら「早速で悪いけれど、一気に決めさせて貰うわ!」
ほむら「……ティロ・フィナーレ!」
(´・ω・`)つ爆弾
ドカーン!
ほむら「やったわ!」
使い魔「…………!」
ほむらが勝利を確信したその時、爆風の中から使い魔が現れた。
ほむら「え……?」
使い魔は一瞬にして間合いを詰め、巨大な顎を開く。
憐れな魔法少女を喰らうために――――
ほむら「などと巴マミごっこをしながら使い魔を倒したわ」
ほむら「そろそろ魔女の居場所に辿り着きそうね」
ほむら「この分なら昼休みには間に合いそう……さっさと片付けてしまいましょう」
??「――――ちょっと待ちな」
ジャラジャラジャラ!
ほむら(っ!? 鎖が、巻き付いて――――!?)
??「抵抗すんなよ? 大人しくしてりゃあ怪我はさせないさ」
ほむら「貴女は……!!」
杏子「安心しな。見ての通り、魔法少女だよ」
ほむら(……鎖で身動きが取れない。これじゃあ時間停止も無意味ね)
杏子「アンタ新入りだね? 他人の縄張りで獲物を横取りしようなんていい根性してんじゃん」
ほむら「……この辺りは巴マミの管轄でしょう。貴女の縄張りでもないわ」
杏子「ちっ……なんだ、マミの知り合いか? 面倒くせえことになったな」
ほむら「貴女のことも知ってるわよ、佐倉杏子」
杏子「ふん、マミから聞いてたのか? ますます面倒くさいな」
ほむら「どうして貴女がここにいるのかしら? 巴マミと協力関係でも結んでいたの?」
杏子「馬ぁ鹿、そんなわけないだろ。まあアレだ、例えて言うなら『鬼の居ぬ間に洗濯』ってやつさ」
杏子「マミの奴は呑気に学校なんか通ってやがるだろ? つまり日中は街が手薄になるわけだ」
ほむら「そのあいだに魔女を狩ってグリーフシードを稼いでいる、と。……まるで空き巣ね」
杏子「……オイ、口の利き方に気をつけなよ? 今アンタの命を握ってるのはアタシなんだからな」
ほむら「そうね、訂正するわ。貴女はマミにも気付かれず街を守っている立派な正義の味方だわ」
杏子「馬鹿にしてんのか」
杏子「まあ大人しくそこで待ってな。アタシが魔女を倒したら解放してやるよ」
ほむら「以前そんなことを言って死んだ人がいるのだけど……」
杏子「なんだ? 脅しか? 生憎とそんなことでビビるほど臆病じゃねーよ」
ほむら(……別にグリーフシードは不足してないし、佐倉杏子が戦っても問題は無いのよね)
杏子「じゃーな、魔女はアタシがいただくぜ」
ほむら(どうぞどうぞ。大人しく待つことにします……あら?)
使い魔「……」
杏子「うん? 使い魔だな。攻撃の意思は無さそーだ」
使い魔「……」ジー
ほむら(あの使い魔、何で私の鞄を見つめているのかしら……何かされたら嫌だわ)
ほむら「ちょっと佐倉杏子。アイツを倒してくれないかしら」
杏子「なんだビビってんのか?」ニヤニヤ
ほむら「そうじゃなくて、私の荷物が……」
使い魔「……」ヒョイ
ほむら「あっ!? 私の鞄が!!」
杏子「あー、持って行かれちまったな」
ほむら(中に漫画が入っているのに……っ!!)
ほむら「この鎖を解きなさい、今すぐに!」ガチャガチャ
杏子「なんだよ、随分と慌ててるな? アレがそんなに大事なモンなのか?」
使い魔「…………♪」テクテク
ほむら「良いから早くして! 使い魔が行ってしまう!」
杏子「へっ、アレくらいアタシが取り返してやるよ。アンタは大人しく見てなっ!」ダッ!
使い魔「?」
ズバッ! ザシュ!
杏子「あ、やべ! 鞄ごと斬っちまった」
ほむら「ちょっ、あ!?」
ドサドサドサッ
杏子「あちゃー、中身が散らばって……ん? 何だコレ。漫画か?」
ほむら(良かった、原稿は無事みたいね)
ほむら(……って、あら?)
使い魔A「…………」
使い魔B「…………」
使い魔C「…………」
杏子「うわ、なんか沢山出てきやがったぞ!?」
ほむら「……何だか嫌な予感しかしないわ」
使い魔達「っ!」
シュバババ
杏子「くっ、こいつ等!?」
ほむら「っ!? 私の漫画が!」
使い魔「…………♪」スタコラサッサ
杏子「ちくしょう、待ちやがれ!」
ほむら(使い魔が佐倉杏子の隙を突いて……私の原稿を持ち去ろうとしているわ!)
ほむら「佐倉杏子! さっさと拘束を解いて!」
杏子「ちっ、分かったよ!」
ジャラジャラ
ほむら「くっ……!」
ほむら(即、時間停止!)
――――――――
ほむら「何体かは仕留めて、原稿を回収できたけど……」
ほむら「残りは見失ってしまったわね」
ほむら「これ以上は時間停止も厳しいわ」
ほむら「一旦解除しましょう」
――――――――
杏子「っ!? 使い魔が……一瞬で!?」
杏子「おいアンタ、今なにをしたんだっ!?」
ほむら「説明する暇はないわ。私は逃がした使い魔を捜す!」ダッ!
杏子「あ、おい! ちょっと待てよ!」ダッ!
杏子「何でわざわざ使い魔を狙うんだよ! 魔女を倒せばいいじゃねーか!」タッタッタ
ほむら「使い魔達が持ち去った物は私の大事な物なのよ」タッタッタ
ほむら「魔女を倒してしまったら結界ごと私の荷物も消滅してしまうかもしれないわ」
杏子「なるほど……その可能性は否定できねーな」
ほむら「ええ。だから回収が終わるまで、魔女には手出ししないで貰えるかしら?」
杏子「……分かったよ」
杏子「それと……ついでだからアタシも使い魔探しを手伝ってやるよ」
杏子「アンタの荷物が散らばっちまったのはアタシのせいでもあるしな」
杏子「仕方ないから今は協力してやる」
ほむら「……ありがとう」
杏子「か、勘違いすんなよ? アタシは借りを作るのが嫌なだけだからな!」
杏子「テメェのためなんかじゃねーからな!?」
ほむら(ツンデレキタ――――(゚∀゚)――――!)
ほむら(やっぱりアンコちゃんマジ天使だわ!)
ほむら(鞄を叩き斬ったことに責任を感じちゃってる良い子なのね!?)
ほむら(その割にはいきなり襲ってきたり放置プレイしようとしたり常識が欠落気味だけど!)
ほむら(――――だがそれが良い)
ほむら(ああ、照れてるのね? 耳が真っ赤になってるわ! あと髪も真っ赤だわ!)
ほむら(うふふ……身体も熱くなってるいるみたいね、アンコちゃんたら何だか汗ばんできてるわ!)
ほむら(腋も湿っぽくなって……もう神々しさすら感じるわ! アンコちゃんマジAngkor Wat!)
ほむら(ああ、でも何で現実のアンコちゃんはロリじゃないのかしら)
ほむら(今のままでも充分美味しいけれど、一度ロリの味を知ってしまった私には物足りないわ!)
ほむら(もしも私に時間逆行能力があったら過去のアンコちゃんに会いに行くのに!)
ほむら(もしくは今回の魔女がたまたまロリ好きで杏子に魔法をかけて幼女化させてくれたりとかないかしら!)
ほむら(そしたらきっと服がダボダボになってピンクの可愛らしい蕾が覗くに違いないのに!)
ほむら(ハアハアハアハア…………うっ!)
ほむら(…………ふぅ)
ほむら(エロ妄想の御蔭でソウルジェムも輝きを取り戻したわ)
ほむら(ごめんね、まどか……妄想とはいえ浮気しちゃって)
ほむら(でもソウルジェムの汚れを消すためには必要なことだったの……)
杏子「なあ、さっきから黙ってるけど……不安なのか?」
ほむら「へ?」
杏子「心配すんなって。ちゃんと責任とって、アタシが全部取り返してやるからさ」
ほむら(……アンコちゃんマジ聖母!!)
使い魔「!?」
杏子「お、見つけたぜ!」
ほむら「……逃がさないわ!」バンッバンッ!
使い魔「っ!!」
杏子「ふん、遅ぇんだよ!」ズバッ!
使い魔「やられたー」
杏子「へへっ……一丁あがりっと!」
ほむら「良い攻撃だったわ、佐倉杏子」
杏子「いや、今のはアンタの牽制射撃が的確だったんだよ」
ほむら「なら私達のコンビネーションの勝利、ということね」
杏子「な、調子に乗んなよ! コンビネーションなんかじゃないからな!!」
ほむら(アンコちゃんマジ以下略)
杏子「使い魔が盗んでいった物も無事みたいだな。……ところで、何なんだコレ?」ペラ
ほむら「私の描いた漫画よ。魔法少女を題材にした、ね」
杏子「魔法少女を? ってことは自分を漫画にしたのか?」
ほむら「まあそんなところよ。私や仲間が実際に見聞きした出来事を物語にしたかったの」
杏子「ふぅん……アンタって物好きなんだな」
杏子(……ん? このキャラクター……何か妙に親近感が沸くな)
杏子(アンコちゃん、っていうのか)
ほむら「まじまじと眺めてどうしたの? アナタも読んでみたいのかしら?」
杏子「あ、いや、別に? アタシはあんまり漫画とか興味ないしさ」
ほむら「そう。それは残念ね」
杏子「で、盗られた漫画はあと何ページあるんだ?」
ほむら「ええと……全部であと13枚ね」
杏子「結構あるんだな。サッサと終わらせようぜ」
ほむら「そうね、手早く片付けましょう」
――数分後――
杏子「ほいっと、またゲットだ」
杏子(お、アンコちゃんが出てるページだ。誰かと口論してるぞ?)
杏子(『食いものをそまつにすんじゃねー!』か。アンコちゃんは良いことを言うなぁ)
杏子(でも何でこの子は常に食い物を持ってるんだ)
杏子(食べ過ぎでお腹が膨らんでるじゃねーか)
杏子(……何かアタシも腹減ってきたな)
杏子(秘蔵のうんまい棒を食べるとしよう)ガサゴソ
ほむら「あら、美味しそうね」
杏子「食うかい?」
――更に数分後――
杏子「今度は一気に二枚も取り返せたな!」
ほむら「割と順調に回収出来ているわね」
杏子(お、またアンコちゃんのページだ。どれどれ……)
インキュベーター『僕の子供を産んで、お母さんになってよ!』
アンコ『嫌だ……アタシは化け物の赤ちゃんなんて産みたくない!』
インキュベーター『そうは言っても、キミのボテ腹にはもう新しい命が宿っているんだよ?』
アンコ『うううう……』
杏子(……なんじゃこりゃあああ!?)
杏子(あ、アンコちゃんのお腹に赤ちゃんがいるっていうのか?)
杏子(しかも相手はこのキュゥべえもどきだって……嘘だろ?!)
杏子(つ、次のページは……何かと戦ってるぞ!)
杏子(ああっ、攻撃されてる! 頑張れ、負けるなアンコちゃん!)
アンコ『独りは寂しいもんな……』
チュドーン!
杏子(……アンコちゃんが自爆したあああ!?)
杏子(魔女と一緒に死んじまうなんて……そんなにお腹の子供が嫌だったのか……!?)
杏子(グス……相手が人間じゃないんだもんなあ、嫌に決まってるよなあ)
杏子(畜生、このインキュベーターってヤツ許せねえな!)
杏子(………………あれ? ちょっと待てよ?)
杏子「……なあアンタ、確か……この漫画は実体験が元になってるって言ったよな」
ほむら「? ええそうよ。それがどうかしたのかしら?」
杏子「ああ、いや、別に……何でもないよ」
杏子(やっぱりだ……! つまり、この漫画は本当にあったことで……!)
杏子(キュゥべえに妊娠させられて自爆したアンコちゃんも実際に居たんだな!?)
杏子(クソっ!! キュゥべえの野郎……今度会ったらブチのめしてやる!!)
――しばらくして――
ほむら(無事に全ての漫画を回収して、魔女も倒したわ)
ほむら(でも……佐倉杏子の様子がおかしいわね。何だか怒っているようにも見えるわ……)
杏子「イライラ」
ほむら(ハッ! そういえば……さっき私の漫画をチラ見して、何か気にしていたわね……)
ほむら(ま、まさか、アンコちゃんのモデルが自分であることに気が付いて……)
ほむら(それで怒っているのかしら!?)
ほむら(特にアンコちゃんのシーンは調子に乗ってエロくしたから……怒るのも当然よね)
ほむら(あ、謝るべきかしら? ……謝るべきだわ!)
ほむら「ご、ごめんなさい!」
杏子「へ? な、なんだよ急に……」
ほむら「ごめんなさい! 貴女をモデルにしてアンコちゃんを描いてごめんなさい!」
杏子「っ!?」
ほむら「ごめんなさい……こんなの気持ち悪いよね、でも、私は――――」
杏子「あ、アンコのモデルがアタシ……?!」
ほむら「……あ、あら? もしかして……気が付いてなかった?」
杏子(……アンコちゃんはキュゥべえの子供を知らない間に孕まされてたんだよな?)
杏子(しかもこの漫画はノンフィクションなんだよな?)
杏子(それでアンコはアタシが元になってる……?)
杏子(じゃあ、まさか……アタシのお腹にも気が付かない間に……!?)
杏子「ふ、ふざけんなあっ!!」
ほむら「っ!?」ビクッ
杏子「そ、そんなわけあるかっ! アタシがアンコだなんて、そんな馬鹿な話が……」
ほむら「ほ、本当よ、私は以前から貴女のことを知っていたから、貴女をモデルにさせて貰ったの……ごめんなさい」
杏子「前から知ってたって……じゃあやっぱり……!」
杏子「やっぱりアタシのお腹にはキュゥべえの赤ちゃんがいるんだな!?」
ほむら「え? あ、いやそれは違っ……」
杏子「キュゥべえはアタシを騙してたんだな!?」
ほむら「ま、まあそれは合ってるわ」
杏子「……ブッ殺す」
ほむら「ええっ?」
杏子「キュゥべえの野郎ブッ殺してやる!」
ほむら「それは別に構わないけど落ち着いて! 貴女、誤解を……」
杏子「うぁああああ! 出てこいキュゥべえぇぇえ!!」
ほむら「あ、待ちなさいって!」
~公園~
QB「グスッ……ひどいよ、ひど過ぎるよ、マミ……信じてたのに……」
QB「嫌だって、言ったのにっ……中に出しちゃダメって言ったのに……あんなことするなんて……」
QB「マミにとって僕は……玩具でしかなかったの……?」
QB「ぼ、僕のこと、友達だって、言ってくれたのも……全部ウソだったの……?」
QB「うう……うぁああああん!」
QB「ぐすっ……えぐっ……」
QB「…………ぐすっ」
QB「……な……泣いてばかりいちゃ……駄目だよね……ぐすん」
QB「ちゃんと自分の仕事をしなくちゃ……」
QB「魔法少女のケアに、新人の勧誘に……やることはいっぱいあるんだから!」
QB「……うん、頑張ろう!」
QB「天国のお母さん、見守っててください。僕はきっと一人前のインキュベーターに……」
杏子「見つけたぞキュゥべえええええええええ!!!」
QB「きゅっ!?」
………………。
ほむら「そのあと、何とか佐倉杏子に説明して誤解は解いた」
ほむら「もう少し遅かったら彼女のソウルジェムは呪いで真っ黒になっていたかもしれない」
ほむら「グリーフシードを多めに持っていたから何とか助かったけれど……」
ほむら「ちなみにキュゥべえはボロ雑巾のようになりながらも逃げ切ったらしい」
ほむら「私のせいで佐倉杏子が暴走したのだと思うと、ほんの少しだけキュゥべえに罪悪感を感じる」
ほむら「ところで、私は今日の授業には出席できなかった」
ほむら「魔女退治や追いかけっこで時間を費やしてしまったせいだ」
ほむら「仕方がないわね……まどかに漫画を見せるのは明日にしましょう」
~まどかんち~
まどか(後から行くって言ってたのに……結局ほむらちゃんは学校に来なかった)
まどか(先生の話だと、欠席するって連絡は入っていたみたいだけど)
まどか(大丈夫だったのかなあ? 知らない先輩に着いて行っちゃって)
まどか(退院したばかりなんだし、急に体調が悪くなってたりしないといいんだけど……)
ガタガタッ!
まどか「っ!? 誰!?」
QB「ひっ!? ご、ごめんなさい、苛めないでえっ!!」
まどか「え……アナタは……?」
まどか(ほむらちゃんの漫画に出てきた子にソックリ……!?)
~朝・通学路~
ほむら「もうっ! 私ったら転校早々に寝坊するなんて、おバカさんなんだからっ!」タッタッタ
ほむら「はあはあ……朝ご飯も食べる時間がなかったし……」タッタッタ
ほむら「授業中にお腹が鳴ったらどうしよう? きっと皆に笑われちゃうよね」タッタッタ
ほむら「そんなことになったら恥ずかしくて眼鏡が脂でベトベトになっちゃうよお……」タッタッタ
ドシーン!
ほむら「きゃ! 急いでたから曲がり角で誰かとぶつかっちゃった!」
マミ「大丈夫かい? 子猫ちゃん?」
ほむら(ドキッ☆ 私がぶつかってしまったのは超美形のお姉様だったわ!)
ほむら「ご、ごめんなさい! 私ったらドジで……あっ!?」
ドサドサッ!
ほむら(焼き土下座した拍子に私の描いた漫画が散らばっちゃった!)
マミ「おや、これは……へえ、君が描いたのかい?」
ほむら「は、はい……」
ほむら(どうしよう、見られちゃったよう……恥ずかしくて内臓が粉砕しそうっ!)
マミ「上手なんだね。もし良かったら今度ゆっくり読ませてほしいな」ニコッ
ほむら(ずっきゅーん☆ 何て素敵な笑顔なのかしら!?)
ほむら「あ、あのっ!」
マミ「大丈夫。言わなくてもわかるよ、暁美ほむらさん」
ほむら「ええっ!? 何で私の名前を知ってるんですかあ!?」
マミ「ふふっ、何となくわかったのさ」
ほむら「ほえー。さすがマミさんですねー」
マミ「それじゃあまた明日ここで会おう。一緒に漫画のことを語り合おうじゃないか」
ほむら「はいっ! わかりましたぁ!」
ほむら(巴マミさん……何て素敵なお姉様なのかしら……☆)
~昼休み・屋上~
……………。
ほむら「と、いうわけで巴マミとは知り合ったのよ」
まどか「そ、そうなんだ、すごいね」
さやか「いや意味が分からないわ。分からないけど……もう良いや」
ほむら「そう言ってもらえると助かるわ」
ほむら「私と巴マミの関係は置いといて……私の漫画を読んでもらえるかしら?」
さやか「うん、読む読む! 昨日は結局読めなかったから気になってたんだよねー」
まどか「…………」
さやか「まどか? どうしたの、ボーッとしちゃって」
まどか「え? あ、ううん。何でもないよ?」
さやか「そう? じゃあさっそく漫画観賞会といきますか!」
ほむら(……まどか? 何か様子がおかしいわね)
――漫画鑑賞中――
さやか「うわ、とうとうオクタヴィアが魔女になっちゃったよ」
まどか「……魔法少女は魔女になっちゃうんだ?」
さやか「インキュベーターの陰謀も段々と明らかになってきてるね」
まどか「……うん」
ほむら(やっぱり……まどかが変だわ。何か悩み事でもあるのかしら……)
――漫画を読み終わった!――
ほむら「さて、それじゃあ二人の感想を聞かせてもらおうかしら」
まどか「あ、うん」
さやか「そーだなあ、今回あたしが印象的だったのは……」
さやか「やっぱりオクタヴィアが魔女化したことかな」
さやか「恋は報われず、しかもバケモノになっちゃうなんて悲惨過ぎでしょ!」
さやか「……あ、でもオクタヴィアが簡単にキョウスキーを諦めちゃったのは納得いかなかったな」
さやか「告白もせずに身を引いちゃうなんて、腑抜けてるよねー」
ほむら「まどかはどう思った?」
まどか「…………」
ほむら「……まどか?」
まどか「……ほむらちゃん、酷いよ……!」グスッ
ほむら(な……泣いてる!?)
まどか「どうしてこんな酷いお話を描くの……? こんなのってないよ、あんまりだよ……」グスグス
さやか「ちょ、まどか?」
ほむら「い、一体どうしたの? そんなに悲しい内容だった?」
まどか「グスッ……ねえ、ほむらちゃんはどうしてこれを私達に読ませるの? 何が目的なの?」
ほむら「えっ……?」
まどか「ほむらちゃんは……あの子のことを虐めて、楽しんでるだけなの?」
さやか「あの子? ねえまどか、何を言って……」
ほむら「……まどか、貴女まさか……!?」
まどか「可哀相だよ……こんな風に描かれて、悪者扱いされて……キュゥべえが可哀相だよ……!」
ほむら「っ!!」
ほむら「やっぱり……会ったのね、キュゥべえに!」
まどか「……うん」
さやか「九兵衛? ああ、ウッカリさんの?」
まどか「あの子から聞いたの。キュゥべえのこと、魔法少女のこと……」
ほむら「知ってしまったのね……」
さやか「ってそりゃハチベエやないかーい!」
まどか「うん……それに、ほむらちゃんがキュゥべえを虐めてたことも……聞いたよ」
ほむら「……!!」
まどか「何でキュゥべえを虐めたの? あの子を玩具みたいに扱って、ほむらちゃんは楽しかったの!?」
さやか「ハチベエじゃないとなると……みなしごの蜂さんのことかな?」
ほむら「そ、それは……アイツが悪いのよ。アイツは貴女を陥れようと企んでいるのよ!」
まどか「キュゥべえはそんなコじゃないよっ! 泣き虫だけど優しくて、とっても良い子だよ!」
さやか「ゆーけーゆけーハッ○ー、ミツバチ○ッチー……はっ!? じゃすらっくに怒られる!?」
まどか「あの子、ほむらちゃんから酷いことされて……身体も心もボロボロに傷付いてたんだよ?」
さやか「ミツバチハッチでもない? ……ああ、分かった! ご主人さまの帰りを待つ忠犬のことね!」
ほむら「そ、それは平気なのよ、アイツは痛みなんて感じないし、死んでも問題ない生き物なのよ!」
まどか「っ!? なにそれ……どうしてそんな酷いことを言えるの!? 見損なったよほむらちゃん!!」
さやか「そうよ! ハチに代わりなんか居ないわよ!」
ほむら「…………」
まどか「さやかちゃん……ごめん、少し黙ってて貰える?」
さやか「はい」
まどか「……ほむらちゃんは、キュゥべえを虐めても心が痛まないんだね」
ほむら「それは、その……アイツは沢山の人を騙してきて……私にとっては敵みたいな存在だから……」
まどか「だからって傷付けて、こんな嘘ばっかりの漫画描いて、キュゥべえを虐めても良いと思ってるの?」
ほむら「? ……待って、まどか。この漫画は全てが嘘なわけじゃあないわ」
ほむら「魔法少女の仕組みに関しては本当のことを描いて……」
まどか「……私、ほむらちゃんのこと友達だって思ってるよ」
まどか「でも、どうしてかな……ほむらちゃんの言ってることが信じられないよ……」
ほむら「――――!!」
♪~♪~♪~
さやか「あ……昼休み終わっちゃったけど……」
まどか「……教室、戻ろうか」
ほむら「待って! お願い、私の話を聞いて!」
まどか「……ごめんね、ほむらちゃん。私、今はほむらちゃんの話を聞いてあげられない」
まどか「気持ちの整理がついたら……また、お話を聞くから。今は……ごめん」
ほむら「…………っ」
さやか(……二人とも電波ちゃんだったんだ……友達やめようかなあ)
~放課後・ほむホーム~
ほむら(あのあと、まどかは口を利いてくれなかった)
ほむら(まどかは完全にキュゥべえの味方をするつもりみたいだわ)
ほむら(魔法少女が魔女になることも、キュゥべえが魔法少女を騙していることも……)
ほむら(信じてはくれなかった)
ほむら(…………)
ほむら(……また、結局同じなの……?)
ほむら(何を話しても、どうやっても信じて貰えない……)
ほむら(私のしていることは、やっぱり全部無駄な足掻きなの……?)
ほむら(……いいえ、私は諦めないわ。絶対に)
ほむら(そうよ……話を聞いてくれないなら、また漫画を描けば良いんだわ!)
ほむら(顔を合わせると言いづらいことも……きっと漫画なら伝えられる!)
ほむら(…………)
ほむら「……とは言ったものの」
ほむら「今まで通りのやり方では、まどかも読んでくれそうにないわね」
ほむら「まどかは私がキュゥべえを陥れるために漫画を描いてると思いこんでいるもの……」
ほむら「……」
ほむら「……少し、別のことを描きましょう」
ほむら「魔法少女のシステムのことじゃなくて……」
ほむら「キュゥべえの企みのことでもなくて……」
ほむら「……一人の女の子の物語を」
ほむら「同じ時を繰り返してきた、無力な少女の物語を」
ほむら「あるところに、身体が弱く、心も弱々しい少女が居ました」
ほむら「彼女は長い間入院していたため勉強も運動も全くこなせず、人づきあいも苦手でした」
ほむら「転校初日から学校へ通うことが嫌になり、落ち込んでいた彼女を救ったのは……」
ほむら「可愛いリボンがとても良く似合う、クラスメートの女の子でした」
ほむら「彼女と出会い、毎日が楽しくなり始めてきて、ひと月ほど過ぎたころ……」
ほむら「街を、絶望が襲いました」
ほむら「……そこから、長い長い戦いが始まったのです」
ほむら「リボンの少女を救うための戦いが――――」
…………。
ほむら「描き上げたわ……私の想いを」
ほむら「脚色や嘘を交えない、本当の想いを」
ほむら「今度は誰かを貶めるような内容じゃあないし……」
ほむら「これならまどかも読んでくれるに違いないわ」
ほむら「きっと、分かってくれる……」
ほむら(…………)
ほむら(本当にそうなのかしら……?)
ほむら(漫画なら信じてもらえると思って、漫画を描いて……)
ほむら(それで結局、今の状況があるんじゃない……)
ほむら「これも、また無駄になるかもしれない……」
シュウウ……
ほむら「っ……ソウルジェムが濁っていく……」
ほむら「諦めることを考えてしまったからだわ……」
ほむら「だめよ、私は魔女になるわけにはいかない」
ほむら「エロノートで穢れを浄化しないと……」
ほむら「……今日は、こんなシチュエーションで……」
――――――――――
まどか「ほむらちゃん! 一緒に遊びに行こうよ!」
ほむら「ええ、喜んで」
さやか「今日はどこ行こうか?」
杏子「駅前にできたクレープ屋が美味いらしいよ? 食べにいこーぜ!」
マミ「ふふ、佐倉さんはいっつも食べることばっかりね?」
杏子「べ、別に良いだろ!? 甘いもんが好きなんだよアタシは!」
さやか「それでいて太らないんだからズルイよね、杏子は」
ほむら「全くだわ。たまには体重計の上で頭を抱える経験もすればいいのに」
まどか「あはは、ほむらちゃんもそういう経験があるんだ?」
――――――――――
ほむら「…………」カキカキ
ほむら「ふふ……」
ほむら「こんなの、くだらない妄想よね」
ほむら「現実は、こんなに甘くない」
ほむら「まどかを救うことを願ったくせに……まどかを救えないでいる私が」
ほむら「こんな幸せな未来を作り出せるわけがない」
ほむら「でも……ほんの少しだけなら……」
ほむら「夢を見たっていいわよね……」
ピ シ ッ
ほむら「……え?」
ほむらの部屋に渇いた音が響く。
ほむら「今の、音は……」
過去に幾度か聞いた覚えがある音だった。
……それは希望がひび割れ、絶望が生み出される、破滅の音色。
最悪の結末が脳裏を過ぎる。
狼狽しながらもソウルジェムを確認するとそこには――――
ほむら「嘘、そんな、何で……!?」
~鹿目さんの家~
まどか「ただいま……」
QB「あ、まどか! おかえりなさーい!」
QB「ねえ聞いて聞いて! 今日ね、パパさんがおやつにケーキを作ったんだよ!」
QB「とっても美味しくてね、ボク三切れも食べちゃった!」
まどか「え、キュゥべえ……ケーキ食べちゃったの?」
QB「うん! とっても良い香りがしてね、まろやかな舌触りでね……」
まどか「ねえキュゥべえ、あなたってパパには見えないんだよね?」
QB「そうだよ? 僕の姿は魔法少女の素質がある子にしか見えないから」
まどか(じゃあ……パパの目には、いきなりケーキが消えたように見えたのかな……)
QB「まどかも後で一緒に食べよう! おいしすぎてビックリすると思うよ!」
まどか「キュゥべえったら、まだ食べるつもりなの?」
QB「えへへ……駄目かな?」
まどか「うーん、まあいっか」
QB「わーい! ケーキ、ケーキ!」
まどか「ふふ、そんなに気に入ったんだ?」
QB「うん! ボクね、ケーキ大好きなんだ!」
QB「ボクのお友達がケーキ大好きでね、だからボクもケーキが大好きになったんだ!」
まどか「へー、そうなんだ?」
まどか「その子は今どうしてるの? もしかしてこの町に住んでる?」
QB「あっ…………」
まどか「?」
QB「……うう、うわあああん……!」
まどか「ええっ? ど、どうしたのキュゥべえ?」
QB「友達だって、友達だって思ってたのにいぃい……!!」
まどか「大丈夫、大丈夫だから、ね? 落ち着いて?」
……………………。
まどか「……落ち着いた?」ナデナデ
QB「うん……ごめんね、かっこ悪いところ見せて……」
まどか「良いんだよ、男は涙を踏み台にして強くなるものだって、たっくんも言ってた」
QB「……ありがとう、まどか……」
まどか(…………)
まどか(『友達だと思ってたのに』、かぁ……)
まどか(……きっと、キュゥべえはそのお友達と喧嘩しちゃったんだろうなあ)
まどか(私と同じ……)
『アイツは貴女を陥れようと企んでいるのよ!』
まどか(…………ほむらちゃん)
まどか「……ねえキュゥべえ。私ね、今日……友達と喧嘩しちゃったんだ」
QB「え……?」
まどか「その子はね、とっても綺麗で、ユーモアもあって、絵も上手で……素敵な女の子なの」
まどか「でもね、その子はとっても酷いことをしてたんだ」
まどか「私はそれを知って……その子を信じられなくなっちゃった」
まどか「だってその子を信じると、今度は他のお友達を疑うことになっちゃうから……」
まどか「本当は信じたい。どっちの子も、大切な友達だから。なのに、私は……」
QB「まどか……キミは……」
――――ゾワッ
QB「っ!?」
まどか「え……なに、この感覚……周りの雰囲気が変わった!?」
QB「魔女の結界だ!! 不味い……!!」
まどか「魔女って、昨日キュゥべえが話してくれた、あの!?」
QB「うん……でも、なんだコレ、変だ……規模が大きすぎる!!」
まどか「ど、どういうことなの?」
QB「一体の魔女の力とは思えない! まるで、何人分もの、何十人分もの呪いで作り上げたみたいな……」
まどか「それって、えと、つまり?」
QB「まどか! ボクは家の外を見てくる!」
まどか「えっ!? ちょ、ちょっと待って!!」
~屋外~
QB「なにこれ……この辺り一帯、いや町全体が魔女の結界に包まれてる!!」
まどか「キュ、キュゥべえ!! あれ見て!!」
QB「な……あれは……」
まどか「巨人……!? ねえ、あれが魔女なの?!」
QB「う……うわあああああああっ!!」
まどか「ど、どうしたの? だいじょうぶ? あれが何だか知ってるの?!」
QB「あれは、あの子は嫌だ!! またボクを苛める気なんだ!!」
まどか「なに? 何を言ってるのキュゥべえ!?」
QB「この魔力の感じは間違いない、間違えるもんか!!」
QB「あれは――――暁美ほむらだ!!」
まどか「…………え?」
時の歯車に捕らえられ、幸せな結末を望む少女が生み出したソレは、
かつて別の時間軸で世界を『救済』した魔女に酷似していた。
何かを求めるかのように両手を掲げ、声を発することはなく、ただ立ち尽くす。
魔法少女の呪いから作り出された巨大な人影。名もなき魔女。
その性質は――――――
『萌え』
まどか「嘘……嘘だよね、あそこにいるのが……ほむらちゃん?」
QB「うあ、ああ……」
まどか「ねえ、答えてよキュゥべえ! 嘘って言ってよ!」
マミ「恐らくあれは……本当に暁美さんよ」
まどか「っ!? 貴女は……!?」
マミ「一度お会いしたことがあったわね? 私は巴マミ……魔法少女よ」
まどか「あのっ! あそこに見えるのがほむらちゃんって本当なんですか!?」
マミ「ええ……間違いないと思うわ。彼女のアニマを感じるもの……」
まどか「そん、な……じゃあ魔法少女が魔女になるって話は……本当だったの……!?」
マミ「そうみたいね……私も実際に目にするのは初めてだけれど……」
マミ「その辺りの話は貴方のほうが詳しいわよね、キュゥべえ?」
QB「……え? あ、マミっ……!? どうして此処に……!?」
マミ「貴方を探してきたのよ。……貴方に、謝りたくて」
QB「え……」
マミ「ごめんなさい。私……貴方に酷いことをしたわ」
マミ「現実を受け入れるのが怖くて、貴方を虐めることで気を紛らわそうとしてた……最低よね」
QB「マミ……」
マミ「いくら謝っても足りないと思うけれど……」
マミ「今は目の前の問題を片付けるために、貴方の力を貸してくれるかしら、キュゥべえ」
QB「………………うん。わかったよ」
まどか「それで、あの、マミさん! どうすればほむらちゃんは助けられるんですか!?」
マミ「それは……」
QB「助ける方法は……ないよ」
まどか「っ!! そんなっ!」
QB「魔法少女は絶望に呑まれた時、魔女になる……そこに希望はないんだ」
まどか「……やだ……そんなの嘘だよ……!」
まどか「そ、そうだ! 私が魔法少女になれば……」
QB「だ、ダメだよ! そんなの僕が許さない!」
まどか「どうして!? 魔法少女になればどんな願いも一つだけ叶うんでしょう!?」
QB「そのかわりキミが魔女になってしまうよ! そんなの……そんなのボクは嫌だ!」
まどか「でもっ!」
マミ「……貴女は暁美さんの遺志を無駄にするつもりなの?」
まどか「……えっ?」
マミ「暁美さんは言っていたわ。『友人を魔法少女にしないために、漫画を描いている』って」
まどか「ほむらちゃんが……!?」
マミ「貴女を魔法少女に、そして魔女にしないために暁美さんは戦っていたのよ」
マミ「……だというのに貴女が魔法少女になってしまっては……彼女が報われないわ」
まどか「でもっ……でもっ!!」
杏子「――――それなら、別の方法で奇跡を起こしてやればいいじゃねーか」
まどか「!」
マミ「佐倉さん……貴女も来てくれたのね」
杏子「まーね。正義の味方を気取るつもりはないけど……アイツを放っておけないしね」
まどか「魔法少女の人ですか? あのっ、別の方法でって、どんな……!」
杏子「期待させて悪いけど、確実な方法があるってわけじゃあないよ。……けど、試したいことはある」
まどか「試したいこと……!?」
杏子「アイツに、呼び掛けてみるんだ」
QB「感情に訴えかけようっていうのかい? ……無駄だよ。魔女に人間だったころの意識なんて残っていない」
杏子「そんなの、やってみなきゃわかんねーだろ!」
杏子「……アンタ、まどかって言ったっけ?」
まどか「は、はいっ」
杏子「ほむらから話は聞いてるよ。……大切な友達だってな」
まどか「友、達……」
杏子「アンタなら……ほむらが一番に想っていたアンタの声なら、アイツを正気に戻せるかもしれない」
まどか「でもっ、私、ほむらちゃんに酷いことを言って、傷付けてっ」
まどか「きっともう嫌われてるよ! 私が話し掛けたって、ほむらちゃんは……」
杏子「じゃあ諦めて逃げ出すか? それともアイツの気持ちを裏切って魔法少女になるか?」
まどか「っ!!」
杏子「……どっちも嫌だ、ってツラしてるな。なら、試してみようじゃんか。アイツにアンタの声が届くかどうか」
まどか「……」
マミ「鹿目さん……」
まどか「私…………ほむらちゃんを助けたい!」
まどか「無駄かもしれないけど、私なんかじゃ何の力にもなれないかもしれないけどっ……」
杏子「……決まりだな。なら行こーぜ、ほむらのとこへさ!」
まどか「……うんっ!」
マミ「でもそうなると、鹿目さんを連れて接近する必要があるわね……」
杏子「コイツを守りながら敵を蹴散らして行くしかないな」
QB「成功するかどうかも分からないのに、まどかを危険に晒す気なの!? 訳が分からないよ!」
まどか「でも、それでも私は行くよ。ほむらちゃんの所へ!」
「――――安心して。まどかは私が守るわ」
まどか「えっ……この声は……!?」
さやか「あたしが来たからにはもう大丈夫よ、まどか!」
まどか「さやかちゃん! 来てくれたんだね!」
マミ「…………えーと?」
杏子「……は? 何だアンタ。アンタも魔法少女なのか?」
さやか「いえ、一般人です」
杏子「……帰ったほうが良いんじゃね?」
マミ「ま、まあ彼女の気持ちを尊重してあげましょう」
杏子「はあ……とりあえず魔法で強化した棒切れでも持たせておこうか」
マミ「分かったわ……はい美樹さん、コレ」
さやか「おお、マジカルな武器だ! これで鬼に金棒、猫に小判ね!」
まどか「さやかちゃん格好良い!」
QB「……どうしても行くって言うんだね、まどか」
まどか「うん、ごめんねキュゥべえ。私……行かなくちゃ」
QB「止めても無駄なんだね……分かったよ、ならボクも一緒に行く」
QB「ボクじゃあ使い魔も倒せないけど、絶対キミの力になるよ」
まどか「キュゥべえ……ありがとう」
マミ「……うん、話は纏まったわね。それじゃあ行きましょうか」
杏子「簡単な道のりじゃねーぞ、覚悟決めろよ」
さやか「よしっ! それじゃあ全員、行くわよー!」
『おーっ!』
………………。
さやか「……と、意気込んだ割には何も起こんないね」
杏子「使い魔も出て来ないな。……逆に薄気味悪ぃ」
マミ「まだ魔女と距離があるせいかしら? それとも……誰にも頼らないという意志の現れ?」
QB「そうだとしたら……寂しいね」
まどか「ほむらちゃんっ……!」
さやか「いやー、このマジカル棒切れ素敵だわー。あたし舞い上がっちゃってますねー」
マミ「気に入ってもらえて何よりだわ。そうね……その子は『第十七使徒タブリス』と名付けましょう」
さやか「ひゅー! カッコいいっすマミさん!!」
魔女『……ァァァォォォカァァァ……』
マミ「っ! 動いた……こっちを見てるわ!」
杏子「へっ、ようやく気付きやがったか! ここからが本番だ、気を引き締めろよ!」
まどか「う……うん!」
マミ「私は暁美さんを拘束するわ! 佐倉さんは二人を守ってあげて!」
杏子「よし、任せ――――」
杏子「――――っぐあああ!?」
マミ「佐倉さんっ!?」
まどか「え、え? 何? 何が起こったの!?」
QB「分からないっ、気が付いたら杏子が吹き飛ばされてた!」
さやか「攻撃されたの!? 何も見えなかったわよ?!」
マミ(私にすら何も感じ取れなかった……!)
杏子「くそっ! 何だっていうんだ!?」
QB「無事かい、杏子!?」
マミ「くっ……一度退きましょう! 相手の手の内が見えない――――」
マミ「――――きゃああああっ!」
杏子「なっ!? マミ!?」
さやか「そんなっ、またなの!?」
まどか「大丈夫ですかマミさん!」
マミ「ええ、何とか……くっ……とにかく撤退よ!」
………………。
さやか「さやかちゃんと愉快な仲間達は物陰に隠れました」
杏子「……畜生、話し掛ける余裕すらなかったじゃねーか!」
マミ「攻撃が見えなければ防ぎようもないわね……」
QB「一体、暁美ほむらはどんな力を使って……?」
さやか「二人とも本気で吹っ飛ばされてたよね、ダメージは平気なの?」
マミ「少し痛むけど……動きに支障は出ないわ」
杏子「あれくらい魔法少女ならどうってことないよ」
さやか「はー、まるっきり漫画の世界だね……」
まどか「…………漫画?」
QB「ん? どうかしたのかい、まどか」
まどか「もしかしたら……ほむらちゃんの魔法は、時間を止めるもの、かも……」
杏子「何だって!?」
まどか「ほむらちゃんは魔法少女のことを漫画にしてたよね?」
さやか「うん、そうだね」
杏子「アタシをモデルにしたりもしてたな……それがどうしたって言うんだ?」
まどか「あの漫画に、ほむらちゃんに似たキャラが出て来るんだけど……その子の魔法が時間を止めるものだったの」
まどか「だから、もしかしたらほむらちゃんの魔法も……」
マミ「成る程……確かに暁美さんは実体験を基に漫画を描いていた、と話していたわ」
マミ「自分の分身たる登場人物に、自身と同じ能力を持たせてる可能性はある、か」
杏子「それに時間停止がアイツの魔法なら、さっきの攻撃も説明がつくな」
杏子「たぶん、時間を止めている間に攻撃を仕掛けてきたんだろ。……だから何も見えなかった」
さやか「……でもさあ、その予想が正しかったら……対抗手段がないような気がするんだけど」
さやか「例えばこうして隠れてても時間を止めて捜されたら――――」
さやか「見つかった瞬間に一網打尽だよね……」
QB「ちょ、止めてよ! 不吉なこと言うとホントになるってお祖母ちゃんが言ってたでしょ!」
マミ「……!?」
マミ「ちょっと待って……鹿目さんは!?」
杏子「え? あ、居なくなって……!?」
魔女『……マァァァォォォァァァ……』
まどか「きゃっ!? あ、あれ、私……!?」
まどか(ほむらちゃんに……掴まれてる!?)
まどか(じ、時間が止まっている間に捕まったんだ!)
ヒュォォオオ……
まどか(ひっ!? た、高い……! ビルなんかより、ずっと空の上だ……!!)
まどか(ほかの皆は!? 何処にいるの!? みんな無事なの!?)
魔女『……ァァァォォォァァァ……』
まどか(ほむらちゃん……そうだ!)
まどか(……この距離なら……私の声も聞こえるはず!)
まどか「ほむらちゃん、お願い! 目を覚まして!」
魔女『……カァァァォォォェェェ……』
まどか「ほむらちゃん……ううっ!?」
ギリッ……
まどか「ゲホッ! あ……う……!」
まどか「ほむらちゃんっ……ほむらちゃ」
ギリギリギリ……
まどか「あっ! ぎぃ……っ!」
まどか(駄目なの……? やっぱり私の声は、ほむらちゃんには届かないの……?)
まどか「ほむら、ちゃ……ごめん、ね……」
まどか「私、ほむらちゃんに酷いことしたよね……」
まどか「許して、なんて、言えないよね……でも」
ギリッ……
まどか「うぐっ! かはっ……!」
まどか「はあ、はあ……こ、こんなこと、言うと、笑われるかもしれないけど……」
まどか「私ね、ほむらちゃんと、昔から……知り合いだった、ような気がしてたんだっ……」
まどか「なぜか他人とは思えなくて……ずっと友達だったような気がして……!」
まどか「へ、変だよね……こんなこと言って、気持ち、悪いよね」
まどか「けど、この気持ちに嘘はないの……私は、ほむらちゃんのこと、本当に、友達だと……」
……メキッ……
まどか「う……ああああっ!?」
魔女『……ァァァォォォカァァァ……』
まどか(ああ……やっぱり、駄目なんだ……)
まどか(そうだよね……いまさら……もう、遅いよね……)
まどか「ほむらちゃん……」
まどか「ごめん、ね……」
祈るように重ねられた魔女の両手の中で、まどかは静かに目を閉じた。
少女の願いは人外の者には届かず、奇跡など起こるはずもなく。
行き過ぎた愛情から生まれた呪いは、無慈悲に両の手に力を込めていく。
声を上げることも諦めた少女は死を覚悟し……
――――そして鮮血が飛び散った。
少し、時間を遡る。
~ほむらの部屋~
渇いた音が、部屋の中に響いた。
ほむら「今の、音は……」
過去に幾度か聞いた覚えがある音だった。
……それは希望がひび割れ、絶望が生み出される、破滅の音色。
最悪の結末が脳裏を過ぎる。
狼狽しながらもソウルジェムを確認するとそこには――――
ほむら「嘘、そんな、何で……!?」
傷一つなく、光り輝くソウルジェムがあった。
ほむら「ど、どういうこと? でも、確かにソウルジェムが割れる音が……」
ほむら「それにこの禍々しい気配……間違いなく魔女が生まれるときの……」
ピシッ
ほむら「また……!? でも、どこから……?」
ピシピシッ
ほむら「……ソウルジェムの中……いえ、盾の中から……!?」
ほむら「いったい何が原因なの?」ゴソゴソ
ほむら「……これだわ!」
ほむら「――――エロノート!!」
ほむら「っ!? ひょ、表紙が裂けて……呪いが噴き出している!?」
ほむら「単なる市販のノートだったのに、どうしてこんなことに?」
ほむら「…………!!」
ほむら「そうか、そういうことね……!」
ほむら「私は今までソウルジェムを浄化するためにエロ妄想を書きなぐってきた……」
ほむら「でも、私が浄化したと思っていた穢れは消滅したわけではなく……」
ほむら「私のソウルジェムから、エロノートに移っていただけだったのね……!?」
ほむら「そしてノートに移った穢れが一か所に集められて、互いに干渉しあって……」
ほむら「それが今、許容限界を超えて呪いを生み出し始めたんだわ!」
ズルズル……
ほむら「くっ!? 呪いが実体化して……絡みついてくる!?」
ピシッ
ピシピシッ
ほむら「不味い……! 今までため込んできた穢れが暴走しているわ!」
ほむら(このままじゃ、私のエロノート10万3001冊分の呪いが……)
ほむら(魔女になってしまう……!?)
ごばああああああ!!
ほむら(ノートの呪いが一斉に噴き出して――――!?)
ほむら(時間を止め……駄目、間に合わない!!)
……………………。
ほむら『此処は……? 真っ暗だわ、何も見えない……』
ほむら『なんなの、この闇は……ざらつくような、まとわりつくような……気持ちが悪いわ』
ほむら『これは……穢れ? 私が生み出した呪い?』
ほむら『まさか此処は……魔女の体内なの?』
ほむら『くっ!? う、あ……やめてっ! 私の中に入ってこないで!!』
『えへへ、ほむらちゃーん』
ほむら『ま、まどか……?』
『そんなに緊張しなくても良いんだよ? ほら、肩の力を抜いて?』
ほむら『あ……ええ……あなたが……言うなら……』
『ね、ほむらちゃん。私なんだかね、ぎゅーってしてほしくなっちゃたなあ』
ほむら『もう……甘えん坊さんね、まどかは』
『早く早くぅ、ぎゅーしてよお』
ほむら『うふふ、良いわよ。ほら、ぎゅー……って』
『むぎゅー……えへへ、ほむらちゃんだぁい好き……』
まどか「ほむらちゃん、お願い! 目を覚まして!」
ほむら『――――――っ!!』
ほむらは意識を取り戻し、掌の内に小さな小さな少女が収まっていることに気が付いた。
いや、少女が小さいのではない。ほむらの身体が巨大すぎるのだ。
そして彼女が今まさに握りつぶさんとしている少女は……
ほむらにとって最愛の友人、鹿目まどかであった。
ほむら『私は、いったい、何を……?!』
ほむら『この身体は……この巨大な肉体は何なの? 私はなぜまどかを握り締めているの?』
ほむら『私は……魔女になってしまったというの?』
まどか「ほむらちゃん……ううっ!?」
ギリッ……
ほむら『まどか……!! くっ、手が……勝手に……!』
『ほむらちゃんは私のこと大好きなんでしょう?』
ほむら(何……? 頭の中に、声が……)
ほむら『お前は……ノートの呪いね!?』
『うんそうだよ。私はほむらちゃんが生み出したノートの呪い』
『そしてアナタが描いた、空想上の鹿目まどか』
ほむら『……!?』
『ね、まどか【わたし】のこと抱きしめてよ。いっぱい、思いっきり』
ほむら『出来るわけないでしょう! そんなことしたらまどかが……!』
『潰れちゃうくらいにハグするのも愛情表現の一つだよ、ほら、はぐはぐして?』
ほむら『ふざけないで!』
『ふざけてなんかないよー? 私よく潰れ饅頭とか呼ばれるし、潰れたくなる時もあるよー』
ほむら『五月蠅い! まどかの声で勝手なことを言わないで!!』
『ふふ……でもほむらちゃん、体は正直みたいだよ?』
ギリギリギリ……
まどか「あっ! ぎぃ……っ!!」
『ほら、まどか【わたし】のことをあんなに締めつけて……いやらしいなあ』
ほむら『やめて! 私は……こんなことしたくない!!』
まどか「ほむら、ちゃ……ごめん、ね……」
ほむら『まどか……!!』
まどか「私、ほむらちゃんに酷いことしたよね……」
ほむら『そんなことないっ、私の方こそ、貴女を救えなくて、何度も何度も傷つけてきた……!』
まどか「許して、なんて、言えないよね……でも」
ギリッ……
まどか「うぐっ! かはっ……!」
ほむら『まどか、まどかっ!! 嫌っ!! この両手ッ……言うことを聞きなさい!!』
『この身体はほむらちゃんが作り出したんだよ? ほむらちゃんの妄想を叶えてるだけなんだよ』
『歪んだ妄想。受け入れられぬ妄想。醜い妄想。……すなわち「萌え」!!』
『それが私! そして貴女の全てなんだよ、ほむらちゃん!!!』
ほむら『違う……! 私はこんなこと望んでいない!!』
まどか「ほむらちゃん……」
まどか「ごめん、ね……」
ほむら『――――まどかああああああああ!!』
圧倒的な力で押し潰す。
その直前に……魔女の両手はまどかから離れた。
ほむら『うああああああああああ!!』
一瞬だけ、呪われた肉体の制御を得たほむらは――――
『抗うんだ? 無駄だと思うけどなあ』
ほむら『黙れ……!!』
――――迷うことなく、その両手で自身の……いや、魔女の眼球を貫いた。
『い、ぎあああああ!?』
ほむら『お前が私の妄想ならっ……大人しく私に従いなさい!!』
激痛が走る。視界が完全に塞がれた。
――――そして鮮血が飛び散った。
『もうっ! ほむらちゃんたら酷いことするなあ。両目が潰れちゃったよ!』
『それにまどかを放り出すなんてどうかしてるよ! あのままじゃあ墜落死しちゃうよ?』
ほむら『言われなくたって分かってるわ……だから……私がっ、助ける!!』
『どうやって? こんな魔女の身体でまどかを助けられると思ってるの?』
ほむら『……確かに、この肉体は私の呪いが作り出した魔女の肉体だわ』
『なんだ、わかってるんだ。そうだよ、魔女になってしまった以上、ほむらちゃんは呪いを撒き散らすしか――――』
ほむら『でも、私は魔女なんかじゃない!』
『魔女じゃない? ほむらちゃんたら、まだそんな甘い考えをもってるんだ?』
ほむら『そうよ、私は魔女じゃない!! だって――――』
ほむら『私のソウルジェムは砕けていない!! 私の魂は此処にある!!』
ほむら『だから……わたしはまどかを助けに行ける!!』
――――どす黒い肉の塊、巨大な魔女の肉体から、渦巻く呪いの心臓部から。
『あーあ』
ほむらは、飛び立った。
『行っちゃうんだね』
魔女の支配から抜け出し、少女は生まれたままの姿で空を駆ける。
『呪い【わたし】を置き去りにして』
ほむら「やった……!! 私の身体、取り戻せた……!!」
ほむら「何故か装備が盾とストッキングしかないけど……!」
魔女『ぁぁぁぁぁぁぁォォォォォォォォォ』
ほむら(くっ、魔女は……まだ生きているのね……!!)
ほむら(いいえ、今はそれよりも……まどか!!)
まどか「…………」ヒュゥゥゥゥゥ……
ほむら「――――見つけた!」
ほむら「今助けるわ、まどか!!」
ほむら(時間、停止!!)
――――――――――
ほむら「まどかっ……!!」
ガシッ!
ほむら「っ!! 酷い怪我だわ……でも必ず助ける!!」
魔女『ァァァァァォォォォォォォォ!!』
ほむら(なっ……!? アイツも止まった時の中で動けるの!?)
魔女『ッァァァァァァ!!!』
ほむら(さすがは私から生まれた魔女、といったところね……けど、動きは遅いっ!)
ほむら(悪いけれど、逃げ切らせてもらうわ!!)
――――――――――
……………………。
魔女『ォォォォォォォォォォォォォォォッ!!…………』
まどか(……ほむらちゃんの声が……遠ざかってく)
まどか(不思議……なんだか空を飛んでるみたい)
まどか(死ぬ、ってこういうのだったんだね……)
まどか(あったかい……誰かに抱っこされてるみたい……)
まどか(…………)
まどか(あれ……? 私、生きて、る?)
ほむら「――――遅くなってごめんなさい、まどか……!!」
まどか「ほむら、ちゃん……?」
まどか「ほむら、ちゃ、……何、で……」
ほむら「無理に喋らないで! 身体に障るわ」
まどか「ほむらちゃん……良かっ、た……」
ほむら「帰って、来てくれたんだね……」
ほむら「……貴女のおかげよ、まどか」
魔女『マアアアアアアドオオオカアアアアアア』
ほむら「あっちの私はお怒りみたいね……」
ほむら「少し飛ばすわ、しっかり掴まってて!」
まどか「うんっ……!」
~ビルの屋上らしき場所~
ほむら「……これで応急処置は済んだわ」
まどか「ありがとう、ほむらちゃん……やっぱり魔法って凄いんだね」
ほむら「私はあまり得意ではないのだけれどね」
まどか「そうなんだ……と、ところで、ほむらちゃん?」
ほむら「何かしら?」
まどか「その、ほむらちゃん、ほとんど裸だよ……?」
ほむら「ええ、そうね」髪バサァ
まどか「そうね、って、恥ずかしくないのっ?」
ほむら「貴女以外に見ている人間もいないし、構わないわ」
まどか「で、でも私のほうが目のやり場に困るって言うか……」
ほむら「……服を再生するのも魔力を消費するのよ。少しでも節約したいからこのままで良いわ」
まどか「そ、そうなの? あ……もしかして、私の怪我を治したせいで魔力が……?」
ほむら「……そういうわけではないわ。気にしないで」
まどか「……ごめんね、ほむらちゃん」
ほむら「……どうしたの、改まって」
まどか「だって! 私、ほむらちゃんのこと信じられないとか、最低だとか、キモオタだとか、酷いこと言って……」
まどか「私、ほむらちゃんに嫌われて当然なのに、今もまた足を引っ張って……!」
ほむら「そんなことないわ! 私のほうこそ、貴女を傷付けてしまった……謝るのは私のほうよ」
まどか「でもっ」
ほむら「何も気に病む必要はないわ、まどか。だから……」
魔女『マアアアアdooooookaaaaaaモeeeeeeeeeeeeeeeee!』
ほむら「……私がアイツを片付けるのを、貴女は待っていてくれれば良い」
まどか「……ほむらちゃん、まさか一人でアレと戦う気なの!?」
ほむら「……ええ」
まどか「駄目だよ、そんなの危ないよ! そうだ、マミさん達も来てるんだよ、一緒に協力したほうが……!」
ほむら「いいえ、アイツと戦えるのは私だけよ」
ほむら「アイツは私と同じ、時間停止能力を持っている……止まった時間の中で戦えない者では歯が立たないのよ」
まどか「そんな……!」
ほむら「…………」
ほむら「……まどか、貴女にこれを預けておくわ」
まどか「え……? (盾の中から……何か取り出した?)」
ほむら「私の漫画……最新話よ」
ほむら「私が歩んできた時間を、私の本当の気持ちを記した第十話。……読んで貰えるかしら?」
まどか「……うん。でも……」
ほむら「アイツを倒して、私が帰ってきたら……感想を聞かせて頂戴?」
まどか「……本当に、帰ってきてくれるの?」
ほむら「勿論よ」
まどか「…………」
まどか「……うん、わかった。漫画……読ませてもらうね」
ほむら「……ありがとう、まどか」
まどか「絶対、絶対帰ってきてね。いっぱい、いっぱい感想を聞かせてあげるから」
ほむら「ええ、必ず。それじゃあ……行ってくるわね」
まどか「うん……いってらっしゃい」
まどか「ほむらちゃん……頑張って……!」
――――――――――
『あれ、ほむらちゃん! 帰ってきてくれたんだね!』
ほむら「……両目が潰れてるくせに分かるのね?」
『見えないけど分かるよ、だってほむらちゃんのこと大好きだもん!』
ほむら「魔女に好かれたって嬉しくないわ」
『酷いなあ……確かに私は魔女だけど、ほむらちゃんの一部なのに!』
『私がほむらちゃんのことを大好きなのも、ほむらちゃんがそう妄想したからなんだよ?』
『ほむらちゃんの妄想に従い、無条件でほむらちゃんを愛する、都合の良いまどか【わたし】……とっても魅力的でしょ?』
ほむら「私に従う? その割には、さっきは中々言うことを聞かなかったじゃない」
『それは私のせいじゃないよぉ。ほむらちゃんがそう妄想しちゃったから、そうなっただけだもん』
ほむら「魔女が私の言うことを聞かず、まどかを害する、と……そう私が妄想したから?」
『そう、そういうこと! でもそれだけじゃあないよ?』
『「思い通りにならないまどかなんてメチャクチャにしちゃえ」って考えがあったから、私はその通りに動いたんだよ』
ほむら「私はっ! そんなこと考えてなんか……」
『恥じなくて良いんだよ! 仕方ないよ、まどかが悪いんだもん!』
『せっかくほむらちゃんが助けてあげようとしてるのに、耳も貸さないで自滅する馬鹿な女の子、鹿目まどか!』
『……でもね、私は違うよ。思い通りにならない現実のまどかとは違うんだよ!』
『ずっと愛してあげる! 何をされたって愛してあげる!』
『アソコにナニをぶち込んだって良いし、どんなアブノーマルなプレイだって出来るよ!!』
『何だってほむらちゃんの思い通りになるの! それが私!』
ほむら「…………」
ほむら「そう……それが貴女という存在、つまり『萌え』なのね?」
『うん!』
ほむら「何でも思う通りなる? ふふ……素晴らしいわね」
ほむら「――――なら、天国まで付き合って貰うわよ……妄想の魔女っ!!」
…………………………
…………………
…………。
まどか(ねえ、ほむらちゃん。魔女は強かった? 怪我とかしてない?)
まどか(ほむらちゃんは止まった時間の中で戦っていたから……)
まどか(私達には、ほむらちゃんの戦いを見ることもできなかったんだ)
まどか(分かるのは、ほむらちゃんが魔女に勝った、っていう結果だけ)
まどか(気が付けば魔女は消えていて、辺りも元通りになってたんだもん、ビックリしちゃった)
まどか(あとね、街の人達は結界に飲み込まれてた間の記憶がないらしいんだ)
まどか(大騒ぎになるんじゃないかと思ったけど、平和そのものだったよ)
まどか(……ほむらちゃんがこの街を守ったことも、誰も知らないんだ)
まどか(私とか、マミさん達しか知らないの)
まどか(ほむらちゃんはそんなこと気にしないかもしれないけど……私はちょっと寂しいな)
まどか(キュゥべえは、私とは会ってくれなくなっちゃった)
まどか(魔法少女を騙して、魔女にしてきたことを後悔して……自分を責めてるみたいだった)
『僕みたいな悪魔に優しくしてくれてありがとう。さよなら、まどか』
まどか(それが私の聞いたキュゥべえの最後の言葉)
まどか(マミさんや杏子ちゃんとは時々会ってるみたいだけど……私とは絶対会わないつもりなんだって)
まどか(せっかくお友達になれたと思ったのにな……)
まどか(そうそう、マミさんと杏子ちゃんは一緒に魔女退治を続けているんだよ)
まどか(最近、二人で身寄りのない女の子の面倒を見てあげてるらしくて、一緒にお買い物してるところも見かけたよ)
まどか(まるで家族みたいに手を繋いでて、何だかあったかい感じがしたなあ……)
まどか(それを見たさやかちゃんが『いやー、お似合いの夫婦ですなあ』なんて言っちゃって……)
まどか(顔を真っ赤にした杏子ちゃんに怒られちゃったんだ。うふふ)
まどか(……皆、とっても仲良くやってるよ)
まどか(ほむらちゃんが貸してくれた漫画も読み終わっちゃったよ)
まどか(同じ時間を繰り返して、大切な友達を救おうと頑張った女の子のお話……)
まどか(帰ってきたら私の感想を聞いてくれるよね?)
まどか(それに、早く続きも読みたいな)
まどか(この物語の結末は、ちゃんとハッピーエンドになるんだよね?)
まどか(誰かが救われないまま終わるなんて、そんなことないよね?)
まどか(ねえ、ほむらちゃん……)
まどか(早く、帰ってきてね……)
――――約一ヶ月後――――
マミ「いよいよね……」
杏子「ああ。アイツの漫画によれば、今日現れるはずだ」
マミ「Walpurgis nacht……ワルプルギスの夜、か」
杏子「なーに、アタシ達にかかれば余裕さ。ちゃちゃっと片付けて、家に帰ろうぜ」
マミ「そうね。あの子も待っているもの」
杏子「ふふ、マミが『あの子』なんて言うとお母さんみたいだな」
マミ「あら、私がお母さんなら貴女はお父さんかしら?」
杏子「ばッ、馬鹿なこと言うなよ!」
マミ「うふふ……」
杏子「……風が、怪しくなってきたな」
マミ「さて……鬼が出るか蛇が出るか? ってところね」
杏子「この辺の住民は避難したらしいな」
マミ「ええ……避難所に被害が出ないように頑張りましょう、お父さん」
杏子「まだ続けるのかよそのネタ……」
マミ「だって佐倉さんの反応が楽しいんですもの」
杏子「やれやれ……」
二人『――――――っ!!』
杏子「この感じ……」
マミ「来る……!」
~避難所~
まどか「……二人とも、大丈夫かな……」
タツヤ「まどかー」
まどか「あ、たっくん。ごめんね、ただの独り言だから……」
タツヤ「しんぱいー?」
まどか「……やっぱり分かっちゃう?」
タツヤ「わかるー」
まどか「えへへ……たっくんには隠し事出来ないね」
まどか「私に、出来ることはないのかな……」
タツヤ「あるよー」
まどか「そうかな……でも、単なる中学生に出来ることなんて……」
タツヤ「信じろ」
まどか「え?」
タツヤ「お前のダチを信じてやれ。何が起ころうとな」
まどか「たっくん……」
まどか「うん、私信じるよ。マミさんを、杏子ちゃんを……」
まどか「そして……ほむらちゃんを……」
夜「アハハハハハハ!」イーツーカキミガー
杏子「クソッ、全然攻撃が効かねーじゃねーか!」
マミ「まさか……ここまで強力だったなんて……!」
夜「アハハハハハハ!」ヒトミニトモス
杏子「また使い魔が来るぞ!」
マミ「迎撃するわっ!」
夜「アハハハハハハ!」アイノヒカリガ
杏子「うぉぉぉぉ!」
マミ「はあああああっ!」
夜「アハハハハハハ」エート ナンダッケ
杏子「ぐはっ……」
マミ「佐倉さんっ!」
杏子「畜生……こんな、とこで、負けるわけには……」
マミ「しっかりして! 傷は浅いわ!」
杏子「へへ、心配すんなって、ちゃんと……帰るって、言ったろ……」
マミ(意識が混濁している……危険な状態だわ……)
マミ「いったいどうすれば…………」
『――――私に任せて、巴マミ』
マミ「…………え?」
まどか「…………あ」
タツヤ「どしたのー?」
まどか「ほむら、ちゃん……?」
パパ「ん? まどか、どこへ行くんだい?」
タツヤ「だい?」
まどか「す、すぐ戻るから! 心配しないで!」
パパ「ええっ? ちょっ、待ちなさい!」
タツヤ「……行かせてやれよ。女にだって退けない時があるもんさ」
パパ「貴方誰なんですか!? 娘とどういう関係なんだ!?」
避難所から飛び出した少女は、二つの巨大な影を見た。
一つは、ワルプルギスの夜と呼ばれる魔女。
逆さまの姿勢で空を征く舞台装置の魔女。
もう一つは、天を衝くほどの巨人。
まどか「……ほむら、ちゃん……?」
かつて暁美ほむらが倒したはずの、妄想の魔女であった。
まどか「うそ……何で? アレはほむらちゃんがやっつけたんじゃ……」
まどか「……まさか、ほむらちゃんは、やられちゃったの……?」
まどか「そんなの、そんなのって……!」
『大丈夫よ。安心して、まどか』
まどか「え……? ほむらちゃん? ほむらちゃんなの?!」
『ええ。ごめんなさい、心配掛けたわね』
まどか「いったい何がどうなっているの? ほむらちゃんは、今どこに……」
『話は後にしましょう。今からもう一仕事、片づけなければならないから』
マミ「あの巨人は……魔女ではなく、本当に暁美さんなのね」
杏子「あいつ、ようやく戻ってきやがったんだな……まったく、遅ぇんだよ」
『遅れて悪かったわ。今……終わらせるから』
マミ「あ……」
杏子「おう、遅刻した分しっかり働いてけよなー」
『大船に乗った気でいなさい』
マミ「……お願いするわね、暁美さん」
巨人が……いや、暁美ほむらがワルプルギスの夜を掴む。
『ワルプルギスの夜……貴女ももう疲れたでしょう?』
舞台装置の魔女は抵抗するが……逃げられない。
構わずほむらは両手に納まった魔女を天に掲げる。
『最期に、素敵な贈り物をあげるわ』
ほむらの背に、翼が現れた。
その体格に見合った長大な翼を羽ばたかせ、ほむらは宙に浮かび上がる。
ワルプルギスの夜がどれだけ抗おうと、その両手を放さず。
空へ、天へ、高く舞い上がるほむら。
『貴女に、星空をプレゼントしてあげる』
――――そして、見滝原市を襲った大災害は、消え去った。
ほむら「……ただいま」
まどか「おかえりなさい、ほむらちゃん」
まどか「これで……ぜんぶ終わったの?」
ほむら「ええ、これで私の物語は完結よ。……感想をきかせてもらえるかしら、まどか」
まどか「うーん……まあまあ、かな」
ほむら「その言い方から察するに……どこか不満があったのね?」
まどか「うん。だって、これじゃあ戦いが終わっただけでしょう?」
ほむら「?」
まどか「だからさ、続編を書いてよ。私と、ほむらちゃんと、皆で仲良く過ごすような……」
まどか「そんな幸せな物語を……ね?」
306 : 1 ◆NsfUjTiOGg[sa... - 2011/05/25 22:51:09.88 kKp4z1SH0 209/224完結です。
今までレスをくださった皆さん、どうもありがとうございました。
本当は凄くリアクションを取りたかったのですが、
「いつだって、SSは粛々と投下するものさ」と井戸に囁かれたで粛々と行きました。
ご感想、批評、批判をお待ちしております。
HTML化依頼は自分で出しますのでご心配なく。
なんでこんなシリアスもどきになったのか訳が分からないよwwwwww
QB「朝起きたら股間から変なモノが生えてた……」
QB「何なんだろコレ、気持ち悪いよぉ……」
QB「うう、キノコみたいな形してるけど……」
QB「さ、触っても平気なのかなあ?」
ツンッ!
QB「ひゃう!?」ビクン!
QB「な、なに今の……身体に電気が走ったみたいだった……?」
QB「も、もう一度、触ってみようかな……」
ツンツン!
QB「ひゃっ! あうう!?」
QB「うう、何なのコレ……触ってると、何だか……頭がモヤモヤしてくるよ……」
ムクムク……
QB「あ……どんどん腫れ上がってくる……!?」
QB「……まさか変な病気なのかな? ど、どうすればいいんだろう?」
QB「もしこのまま悪化して命に関わるようなことになったら……!」
QB「うわーん、そんなの嫌だ! ボクはまだ死にたくないよぉ!」
QB「でも医者に行くお金なんて持ってないし……」
QB「誰か……誰かに助けてもらわないと……」
QB「……そうだ! マミのところへ行こう!」
QB「マミは治療魔法も得意だし、きっと助けてくれるよ!」
QB「……助けてくれるよね?」
QB「助けてよぉ……」グスッ
~マミさんち~
QB「やあ、マミ。今日は君にお願いがあるんだ」
マミ「お願い? 良いわよ、話してみて?」
QB「……僕の身体に異常が現れたんだ。キミたち人間に例えると『病気』というやつだね」
マミ「まあ……それなら獣医さんにでも診てもらいましょうか?」
QB「それは無理だよ。僕は魔法少女にしか見ることが出来ないしね」
マミ「ああ……そうだったわね。でもそうなると……」
QB「でもマミ、君の力なら治療が可能かもしれない。試してみてくれないかい?」
マミ「うーん。私はあんまり病気に詳しいわけでもないし……」
QB「そんなことを言わずに頼むよ」
マミ「治してあげたいのは山々だけど……難しい病気となると、下手をすれば逆効果になってしまうかもしれないし……」
QB「………………ぐすっ」
マミ「?」
QB「うう……やっぱりダメなのかな……ボクはこのまま病気で死んじゃうのかな……」
マミ(な、泣いてる……!?)
QB「……グスッ……お医者さんになんて行けなくて……マミにも治せないなら……ヒグッ……ボクはもう……」
マミ「わ……分かったわ! 上手くいくかは分からないけど力になってあげるから、泣かないで、ね?」
QB「マミ……! ありがとう……」
QB「で、でもボク、な、泣いてなんかっ……グスッ……ないんだからね!」
マミ「……それで、どこが悪いの?」
QB「ああ、それは……股のところなんだけど」
マミ「股?」
QB「そうなんだ。変なモノが出来ちゃったんだ」
マミ「そう。じゃあ見せてもらえるかしら?」
QB「うん。ちょっぴりグロテスクだけど……驚かないでね?」
QB「コレなんだけどさ……」
M字開脚っ!
マミ「……きゃっ!?」
マミ(な、何よコレ……浅黒くて、太くて、長くて、ビクビクしてる!)
マミ(コレって、どう見ても……お、おちん……)
マミ(まさかキュゥべえったら私にセクハラを……? いえ、違うわよね、キュゥべえがそんな……)
QB「ねえ、どうかな? どう思う……?」
マミ「すごく……大きいです……」
QB「は?」
マミ「い、いえ。なんでもないわ」
マミ「と、ところでコレは感覚があるのかしら? 触ると痛みとかは?」
QB「そ、それがさ、スッゴい敏感で……少し触っただけでも腰が抜けそうになっちゃうんだ……」
マミ「そ、そうなの……?」
ツンっ
QB「あひゃあっ!?」
マミ「きゃっ!?」
QB「きゅ、急に触んないでよっ、敏感なんだからあ……!」
マミ「ご、ごめんなさい……」
マミ(触った瞬間、ビクンッて跳ねたわ……まるで別の生き物みたいに)
マミ(あ……それに凄い勢いで大きくなってる……!)
マミ(やっぱりこれって……)
QB「あ……どんどん大きくなってるよぉ……怖いよぅ……!」
マミ「だ、大丈夫よ! 安心しなさい」
QB「……コレが何なのか分かるの? どうすれば治る?」
マミ「コレは……その、たぶん、おちん……」
ほむほむ「それはインキュベーター族特有の病よ」
QB「っ!?」
マミ「貴女は……暁美さん!? いつの間に……!」
ほむほむ「二人とも、お困りのようね」
QB「ねえほむら! コレが何だか知ってるんだね!?」
ブランブラン
マミ「ちょ、ちょっと……振り回すのは止めてくれないかしら?」
QB「え? あ、ごめんね?」
ほむほむ「今言った通り、それはキュゥべえだけがかかる病気のようなものなの」
ほむほむ「QB。貴方は最近グリーフシードを沢山食べたわね?」
QB「そういえばそうだね。ここのところマミが大活躍してくれたから……」
ほむほむ「それが原因よ」
ほむほむ「キュゥべえの身体に溜まった汚れが肉体に影響を与えてしまったの」
マミ「その結果がコレだというの?」
ほむほむ「ええ。体内で消化しきれなかった汚れが、瘤を作り出してしまったんだわ」
QB「こ、瘤? コレって瘤なんだ……」ブランブラン
マミ(おち○ちんとか言わなくて良かった……)
ほむほむ『そう、瘤よ。おちん○んなんかじゃないわよ……巴マミ』テレパシー
マミ「ぐっ!?」
QB「こいつの正体は分かったよ。それで? 治す方法は?」
マミ「……消化しきれなかった汚れが原因なら、消化を待てばいいんじゃないかしら?」
QB「そっか、確かにそうだね!!」ブランブラン!
ほむほむ「いえ、残念ながらそう簡単にはいかないわ」
ほむほむ「肉体の一部になってしまった汚れを解放するには、特別な方法が必要になるの」
マミ「特別な方法?」
QB「何それ、早く教えてよ!!」
ほむほむ「うん。めんどくせーから理由は省略するけど……」
ほむほむ「巴マミがQBのそそり立つ肉棒をシゴいたりしゃぶったりすれば治るわよ」
マミ「しゃぶっ……!? コレを、私が!?」
QB「ま、待ってよ! ただでさえ敏感なのにそんなことされたら……」
ほむほむ「気持ち良すぎて頭が真っ白になるだろうけど大丈夫。医療行為だから何も問題ないわよ」
マミ「し、信用できないわ。貴方の言い分が本当とは限らないもの」
QB「そうだ! だ、騙そうとしてるかもしれないもん!」
ほむほむ「私は嘘をつかないわ」
ほむほむ「あ、最終的にQBの凶暴な肉器官から謎の白い液体が出るけど魔力だから何の問題もないわよ」
ほむほむ「むしろ少量なら健康に良いわ」
ほむほむ「さあ早く治療を始めなさい! 私は治療記録を撮影するから!」ジーッ
QB「で、でも……心の準備が……」
マミ「いきなり、そんなこと出来ないわ……」
ほむほむ「うっせーな、いいから早くチュパチュパ始めなさい! 私は説明シーンが大嫌いなのよ!!」
QB「う、ぐあああっ!?」ビクンビクン
マミ「!? どうしたのキュゥべえ!」
ほむほむ「やれやれ、早く治療しないからよ。限界を超えそうな汚れが暴走を始めたんだわ」
QB「そ、そんな……なにソレっ……!」
ほむほむ「さあ急ぐのよ巴マミ。このままではQBが手遅れになってしまうわ」
マミ「………………分かったわ」
QB「っ!? マミっ……! キミはまさか……」
マミ「安心しなさい、キュゥべえ。私が貴方の病気を治してあげるから」
QB「ほ、本気なのかい!? こんな気持ち悪いモノを舐めたりするなんて……!」
マミ「……平気よ。暁美さんの言うとおり医療行為だと思えばなんてことないわ」
QB「ううううう……ごめんね、マミ……じゃあ頼むよ……」
マミ「ええ、任せなさい。……あまり自信はないけれど」
QB「え?」
マミ「私……こういうの初めてだから……痛くしてしまったら御免なさいね」
ツゥ……
QB「あひぃ!?」
QB(これっ、ダメ、あっ……! マミの指、ひんやりしてて気持ちいいっ……!)
マミ「と、いう漫画を描いてみたのだけれどどうかしら」
杏子「う、うわあ……やっぱり、マミの趣味は良く分かんねえよ」
杏子「まあ、これでマミのソウルジェムが浄化されるなら別に良いけどよ……」
QB「やあ、二人とも。何を読んでるんだい?」
杏子「あ」
QB「……ああーっ!? またエッチな漫画を描いたんだね?!」
マミ「こ、これは違うのよ! 医療漫画よ!」
QB「もうっ! マミってば、こんな漫画描かなくたって……」
マミ「え?」
QB「……ボクが何でもしてあげるのに……」
マミ「キュゥべえ……!! 大好きっ!!」ギュウ!
QB「あっ! だ、ダメだよマミっ、杏子が見てるよぉ……!」
杏子(なんだろ……マミがキュゥべえとイチャついてるのを見ると……何だか胸が……)ドキドキ
おしまい。
ついにネームの更新すらも止まってしまったが