ヨッシー「久しぶりのキノコ王国」
ヨッシー「もうあれから五年になるんですね」
ヨッシー「クッパも歳をとってピーチ姫をさらう体力もなく」
ヨッシー「こっちとしては平和でいいんですけど」
ヨッシー「えーっと、ここかな」
ヨッシー「せっかくだからマリオさんの家に寄っていこうと思ったけど、住所変わったんですね」
ヨッシー「マリオさーん」ピンポーン
元スレ
マリオ「腰が痛ぇ……」
http://hayabusa2.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1325864455/
マリオ『はい』
ヨッシー「マリオさん! ヨッシーです」
マリオ『ヨッシー!?』
ヨッシー「ええ、キノコ王国に寄る用があったので、ついでに」
マリオ『そうか。まあ上がってくれ』
ヨッシー「(……随分小さな家ですね)」
ヨッシー「お邪魔しまーす」
マリオ「ヨッシー! 久しぶりだなぁ。全然変わらないね」
ヨッシー「ええ。マリオさんは……少し痩せました?」
マリオ「まあな。お茶でも出すから座ってくれ」
ヨッシー「(……少しどころじゃないですね、あれは……)」
マリオ「はい、お茶」
ヨッシー「ありがとうございます」
マリオ「ヨッシーは何の用事でこっちに来たんだい?」
ヨッシー「仕事みたいなものです。マリオさんは今配管工をやっているんですよね」
マリオ「ああ。昔は冒険家がメインだったが、最近は冒険に出ることもないんで、もともとやってた配管工で生計を立ててるよ」
ヨッシー「そうですか」
マリオ「よっこいしょ。あいたたた……」
ヨッシー「腰が悪いんですか?」
マリオ「ちょっと最近な……」
ヨッシー「それじゃあ配管工の仕事も大変でしょう」
マリオ「あ、ああ」
ヨッシー「ルイージさんはどこに?」
マリオ「ルイージは仕事に行ってるよ」
ヨッシー「ルイージさんが仕事なのにマリオさんは家にいるんですか?」
マリオ「今日はたまたま俺だけ休みなんだよ」
ヨッシー「そうですか……」
ルイージ「ただいまー」
マリオ「!!」
ヨッシー「ルイージさん。お邪魔してます」
ルイージ「ヨッシーじゃないか! 久しぶり!」
マリオ「は、早かったな。ルイージ」
ルイージ「今日は仕事がはかどってね。ノルマすぐにこなしちゃったよ。全く、兄さんも少しは働いてくれないと」
ヨッシー「え?」
マリオ「お、おい」
ヨッシー「マリオさんって働いてないんですか?」
マリオ「そんなことは」
ルイージ「何、兄さん隠してたの!?」
マリオ「ルイージ!」
ルイージ「そうだよ、ヨッシー。あれから兄さん全然外に出ないで、もうニートと呼んで差し支えないよ」
ヨッシー「ルイージさんの収入だけでマリオさんを養って……?」
ルイージ「さすがにそれは無理だね。僕らが冒険家やってた頃の貯金から少しずつ切り崩しているよ。でもそれも時間の問題かな……」
ヨッシー「マリオさん……」
マリオ「……」
ヨッシー「あの、今日泊っていってもいいですか?」
マリオ「!?」
ルイージ「ああ、もちろん!」
ヨッシー「ありがとうございます」
マリオ「お、おい。ルイージ」
ルイージ「兄さんに文句言う資格あるの?」
マリオ「う……」
ルイージ「ヨッシーは今何の仕事やってるの?」
ヨッシー「僕は雑誌の記者をやってるんです」
ルイージ「へえー」
ヨッシー「今回キノコ王国に来たのもその関係で……」
ルイージ「そういえばワリオが会社を立ち上げたらしいよ」
ヨッシー「へぇー。ドンキーは農場を経営してるとか」
マリオ「……」
翌日 午前七時
ヨッシー「ふあー、よく寝た」
ルイージ「おはよう、ヨッシー」
ヨッシー「ルイージさん、おはようございます。あっ、美味しそうなご飯!」
ルイージ「僕は洗いものをしてるから、先に食べてくれて構わないよ」
ヨッシー「いただきまーす! お、これは美味しいなぁ。……いつもルイージさんが作ってるんですか?」
ルイージ「そうだよ」
午前九時
ルイージ「じゃあ、行ってきます。夕方には帰るよ」
ヨッシー「行ってらっしゃーい」
ヨッシー「さて……マリオさんの部屋は……ここか」
ヨッシー「マリオさーん! 朝ですよー! 起きなさ―い!」
マリオ「zzz……」
ヨッシー「マリオさーん!」
マリオ「うーん……。なんだ、まだ九時じゃないか……」
ヨッシー「もう九時ですよ! ほら!」
マリオ「分かったよ……」
ヨッシー「ルイージさんがご飯作ってくれてますよ」
マリオ「ああ……」
ヨッシー「……」
マリオ「……」モッチャモッチャ
ヨッシー「マリオさん、もう少し美味しそうに食べられませんかね」
マリオ「眠いんだよ」
ヨッシー「……」
マリオ「ごっそさん」
ヨッシー「(結局食べ終わるまで一言も発しなかったよこの人……)」
マリオ「さて……」
ヨッシー「出かけるんですか?」
マリオ「二度寝」
ヨッシー「……」
午後一時
マリオ「あーよく寝た」
ヨッシー「やっと起きましたか」
マリオ「さて」
ヨッシー「お、やっと出かけるんですか?」
マリオ「まあな」
ヨッシー「ついていってもいいですか」
マリオ「うん」
キノピオの隠れ家
キノピオ「絵合わせ、揃ったらいいものあげる」
マリオ「これと……これだ!」
キノピオ「はずれー」
マリオ「くそっ」ダンッ
ヨッシー「……」
マリオ「次はあれだ、ルーレット」
キノピオ「はいはい」
マリオ「ヨッシー、ここのルーレットはな、目押しが出来るんだよ」
ヨッシー「はあ」
マリオ「とうっ! ふんっ! でやぁ!」
キノピオ「はずれー」
マリオ「くそっ! くそっ!」
午後三時 マリオの家
ヨッシー「マリオさん、結局いくらスったんですか?」
マリオ「なに、たったの30コインだ」
ヨッシー「たったのって、結構な額じゃないですか」
マリオ「大丈夫大丈夫。冒険家時代いくら稼いだと思ってんだ」
ヨッシー「……マリオさん、最近通帳見ました?」
マリオ「……いや」
ヨッシー「ちょっと見てみて下さいよ」
マリオ「……いいけど」
マリオ「たしかこの辺に……あったあった」
マリオ「……」
マリオ「……」
ヨッシー「いくら残ってたんですか?」
マリオ「寝る」
ヨッシー「マリオさーん!」
午後五時
ヨッシー「まさか本当に寝るとは……」
ヨッシー「さて、僕の方としても用事が……」
ヨッシー「えーっと、確かこの辺……」
ヨッシー「あ、ここかな」ピンポーン
カメック『はい』
ヨッシー「あ、ヨースター出版のヨッシーという者ですが……」
カメック『ヨッシー!? 久しぶりですね!』
ヨッシー「クッパさんってご在宅ですかね」
カメック『ええ、どうぞお上がり下さい!』
午後七時
ヨッシー「ただいまです」
ルイージ「おかえり。どこ行ってたの?」
ヨッシー「仕事で、ちょっと取材に」
ルイージ「大変だねぇ」
ヨッシー「マリオさんは?」
ルイージ「まだ寝てるよ」
ヨッシー「そうですか……」
ルイージ「まったく、うちのコインもそんなにたくさんあるわけじゃないのにね」
ヨッシー「マリオさん、どうしちゃったんですか? とてもあのマリオさんとは思えません!」
ルイージ「どうなんだろうね……。いわゆる燃え尽き症候群ってやつなのか、平穏な生活に馴染めないらしい」
ヨッシー「だからって引きこもることないじゃないですか……」
ルイージ「ヨッシー、あそこにいるのはもうかつての兄さんじゃないよ」
ヨッシー「僕、そんなの認めたくありません……」
ルイージ「ヨッシー……」
ヨッシー「ルイージさん。僕は仕事でこっちに来たって言ったじゃないですか」
ルイージ「うん」
ヨッシー「実はその仕事っていうのは……」
マリオの部屋
マリオ「(ヨッシーが帰ってきたのか……)」
マリオ「(ちくしょう、俺だって好きでこんな生活してるんじゃねえよ)」
マリオ「(そりゃ五年前は輝いてたさ)」
マリオ「(冒険に冒険を重ね、その度にクッパに勝ち、スポーツ大会やパーティーからも引っ張りだこだった)」
マリオ「(だがクッパが引退して以来、俺には配管工としての日常しか残されていなかった)」
マリオ「(気付いたんだ……俺はもう平和な世界には馴染めないって)」
マリオ「(ルイージはいいさ。冒険に出たっていっても俺ほど回数が多くない。すぐに日常に戻れるだろうよ)」
マリオ「(ワリオなんてもともと金儲けの為に冒険してたようなもんだし、会社をやるのだって性にあってるだろうさ)」
マリオ「(ドンキーはもともと自給自足みたいな生活してたし、土地にも恵まれている)」
マリオ「(くそ、何で俺だけ……)」
翌日 午前九時
マリオ「……ふあっ」
マリオ「……今日は早く目が覚めたな」
マリオ「ルイージ? ヨッシー? ……いないのか」
マリオ「飯だけ置いてある。……食うか」
マリオ「あいつらどこ行ったんだろう」
マリオ「まさか俺を置いて……」
マリオ「なんてな」
午前十時
ヨッシー「マリオさーん」
マリオ「おお。おかえり」
マリオ「(少しほっとしている自分がいる……)」
ヨッシー「知ってます? 今キノコ城でスポーツ大会やってるんですよ」
マリオ「へえー」
ヨッシー「出場しましょうよ! ゴルフ、テニス、カート、バスケ、何でもありますよ!」
マリオ「えー、いいよダルい……」
ヨッシー「つべこべ言わずに来るんです!」グイッ
マリオ「ちょ、ヨッシー!」
キノコ城
ヨッシー「僕とマリオさんのペアで、テニスのダブルスに申し込んできました」
マリオ「ああ、そう……」
ヨッシー「優勝したらピーチ姫から商品がもらえるみたいですよ!」
マリオ「ふーん……」
テニスコート
「第一試合、マリオ&ヨッシーペアVSヘイホー&テレサペア!」
ヨッシー「なかなか手ごわそうな相手ですね」
マリオ「え? あ、うん」
「おおっ、マリオとヨッシーだ!」
「久しぶりに見るなー」
「あのペアが出るんじゃ、優勝は決まりだな」
ヨッシー「ほら、マリオさん! すごい人気ですよ!」
マリオ「そうやってハードル上げられるの困るんだけどなあ……」
試合開始
テレサ「ケケケー」パコーン
ヨッシー「マリオさん、そっちに行きました!」
マリオ「ああ……。ううっ!」
ヨッシー「マリオさん!? 大丈夫ですか!?」
マリオ「こ、腰が……」
ヨッシー「マリオさん!」
マリオ「も、もう歩けん……」
ヨッシー「マリオさーん!」
ベンチ
ヨッシー「マリオさん、無理させてすみません」
マリオ「あいたたたた……」
ヨッシー「(精神だけではなく体力まで後退しているとは……)」
マリオ「ヨッシー、家に帰りたい。乗せていってくれ」
ヨッシー「ええ……」
「キャー!!」
「何だあれは!?」
マリオ「!?」
ヨッシー「何だか周りが騒がしいですね……ってあれは!」
クッパ「ワハハハハ!! 久しぶりだな貴様ら!!」
ヨッシー「マリオワールドでの飛行船に乗って……。隣にいるのは……ピーチ姫!」
ピーチ「HELP!」
マリオ「……!」
クッパ「マリオ! ピーチ姫は頂いた! 返してほしくば我が城まで来るんだな!」
ピーチ「マリオ―!」
マリオ「……」
ヨッシー「マリオさん、助けに行きましょう!」
マリオ「……いいよ」
ヨッシー「マリオさん!? ピーチ姫はどうなるんですか!」
マリオ「ルイージとかいるだろ。別に俺が行かなくても……」
ヨッシー「……マリオさん、知っていますか?」
マリオ「何がだ?」
ヨッシー「マリオさんがこなしてきた数々の冒険は、世界中の人に勇気を与えてきたんです」
マリオ「……」
ヨッシー「マリオさんの冒険物語は、人から人へ、口伝えで広まっていきました。そして今や、マリオさんを見たことがない人ですら、マリオさんのことを知っているんです」
マリオ「そんなに……」
ヨッシー「彼らはマリオさんを称えて、あなたのことをこう呼びます。――スーパーマリオと」
マリオ「! ……」
ヨッシー「マリオさんはいくつもの冒険をこなしてきた勇者じゃないですか! たくさんのライバルに勝ち抜いてきた、スーパースターじゃないですか! こんなことでどうするんです!」
マリオ「……ヨッシー」
ヨッシー「さ、マリオさん。行きましょう。ピーチ姫を助け出しに!」
マリオ「ヨッシー。俺、目が覚めた気がする。でも……」
ヨッシー「でも?」
マリオ「腰が……」ヨロヨロ
ヨッシー「ありゃ」ズコッ
マリオ「こればかりはどうにもならん……」
ヨッシー「マリオさん、これを」
マリオ「……これは、スーパーキノコ」
ヨッシー「ちびマリオから、元に戻って下さい」
マリオ「……」ガブッ
マリオ「Here we go!」
ヨッシー「マリオさん!」
クッパの部屋 前
マリオ「はー、はー」
ヨッシー「何とか辿りつきましたね」
マリオ「クッパめ、待ってろ……」
ヨッシー「マリオさん」
マリオ「ん?」
ヨッシー「まだまだ現役じゃないっすか」
マリオ「……ああ」
ヨッシー「じゃあ、行きましょう」
マリオ「おおっ!」
クッパの部屋
クッパ「この淹れ方はどうだ?」
ピーチ「ちょっと濃いわね」
クッパ「吾輩は濃い目が好きなのだ!」
ピーチ「香りも死んでるし、あんまり美味しくないわ」
クッパ「ピーチは相変わらず辛口だな……おお、マリオ。来たか」
マリオ「……クッパ、お前随分とピーチ姫と仲良くなったな」
クッパ「何だかんだで付き合い長いしな」
ピーチ「もう腐れ縁ってやつ?」
クッパ「まあ、座ってくれ」
マリオ「……だいたいオチが読めたぞ」
ヨッシー「すいません」
クッパ「実は、昨日ヨッシーが訪ねてきてな」
マリオ「ヨッシーが?」
クッパ「何でもインタビューとかで……何だったっけ?」
ヨッシー「『スーパーマリオ ~冒険者の歴史~』です」
クッパ「そう、それそれ」
マリオ「? どういうことだ?」
ヨッシー「僕、記者やってるって言ったじゃないですか」
マリオ「ああ」
ヨッシー「雑誌の方の仕事をする一方で、マリオさんとの冒険の記録を書きためていたんです。それが最近終わりまして、本にして出版しようかと」
マリオ「はあっ!? そんなことやってたのか!?」
ヨッシー「ただ僕だけが書くのもどうかと思ったんで、当時のマリオさんを知る色々な人にインタビューをすることにしたんです。ピーチ姫をはじめとして、王様、RPGからマロさん、サンシャインのポンプさん、そして生涯のライバル、クッパ」
クッパ「ヨッシーがマリオについて話してほしいというんでな、しばらく貴様の話をしていた。するとどうだ、今のマリオは引きこもりになり下がってしまったと言うじゃないか」
マリオ「耳が痛い」
クッパ「そんな奴のライバルとして紹介されては、吾輩の品位も落ちる。そんな訳で、ピーチをさらってみた」
ピーチ「そんなに軽くさらわないでちょうだい」
マリオ「ははっ、とんだ茶番だな……」
ヨッシー「でも道中のマリオさん、随分生き生きとしてましたよ」
マリオ「そうか……」
ヨッシー「で、このインタビューで終わりです」
マリオ「?」
ヨッシー「マリオさんを一番よく知る人、マリオさん」
マリオ「ははは……」
ヨッシー「とりあえずドンキーコングの辺りから話してもらえますか?」
マリオ「かなりタイトだな。ま、いいだろう」
数時間後
ヨッシー「ありがとうございます。これをまとめて、しばらくしたら出版できますよ」
マリオ「楽しみだな」
クッパ「で、貴様はどうするんだ? またニート暮らしに戻るのか?」
マリオ「……」
クッパ「吾輩もそんなにピーチをさらってもいられんからな。歳なのはこちらも同じだ」
ピーチ「あのー、わたしの迷惑考えてますか?」
マリオ「いや、クッパに限らず、冒険はいくらでもあるだろう」
マリオ「冒険だけじゃない。スポーツも、パズルも、俺に出来ることはまだまだある」
マリオ「なんたって俺は、スーパーマリオ。皆の憧れだからな」
クッパ「自分でよく言うわ」
マリオ「そんなわけで、これからもマリオをよろしく!」
おわり
スマブラXの歌詞みたいなことをやってみたかったんだが、うーん……
ありがとうございました