1 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/08 23:40:15.81 HH+HqJ/20 1/65

(体育の日なのでムギ先輩を誘ってテニスコートに来ました)

(だけど……)

「きっと私とテニスしても楽しくないよ。球技苦手だし迷惑かけちゃうと思うから」

「気にしなくて大丈夫です。私が教えてあげますから」

「だけど……」

「ここまで来たんだから腹を括ってください。それに……」

「それに?」

「私はムギにゃんと一緒に遊べるの楽しみにしてましたから」

「梓ちゃん……。よしっ、私頑張るね」

(なんとかムギ先輩前向きになってくれました)

(確かに先輩は球技が苦手ですが、手取り足取り教えてあげるのも楽しいはずです)

元スレ
梓「ムギにゃんとテニスに行くです」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1349707215/

3 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/08 23:45:48.90 HH+HqJ/20 2/65

「テニスをやったことはあるんですよね?」

「うん。小さなころに沢山やったの。写真も沢山残ってるわ」

「それじゃあとりあえずサーブを打ってみてくれますか。あっ、写真は後から見せてくださいね」

「うん」トトトトトト

(ムギ先輩のことだから力は十分なはず。コントロールが悪いのかな?)

「えいっ」バシュン

「は、速い」

「入ってた?」

「入ってました」

「やった!」

「それじゃあ次は打ち返しますね」

「うん」


5 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/08 23:50:28.76 HH+HqJ/20 3/65

「それっ」バシュン

(これも入ってくる)

(さっき見たところほとんど弾まなかったからカット系のサーブのはず)

(それなら前に出て……)

「お、おもい……」バン 

シュッ タンタンタン

(ネットに引っかかっちゃった)

「どうだった?」

「どうもこうもありません。凄かったです。どうやって打ってるんですか?」

「こんな感じなんだけど」ヒュン

「……スライスサーブですね」

「スライスサーブ?」


6 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/08 23:51:43.20 HH+HqJ/20 4/65

「横に曲がるサーブです。ただ、フォームが独特なせいか全然曲がりませんね」

「曲がらなきゃ駄目なんだよね?」

「普通はそうです」

「やっぱり…」シュン

「ただムギ先輩の場合は球が重いから問題ありません」

「球が重い?」

「はい。ほとんど跳ねない上、打ってもあまり跳ねないんです」

「やっぱり梓ちゃんはすごいね。一球受けただけで色々分かっちゃうんだ」

7 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/08 23:52:24.57 HH+HqJ/20 5/65

「謙遜してましたけど、ムギ先輩も普通に上手じゃないですか」

「……それじゃあ次は梓ちゃんがサーブを打ってみてくれる?」

「はい」トトトトトトト

(普通にフラットサーブを打ってみよう)

「えいっ」バシィッ

「えいっ」バキュン 

ヒューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「……」

「……」

「安心してください、ムギにゃん。野球ならホームランです」

「梓ちゃん。それ慰めになってないよ」


9 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/08 23:56:51.01 HH+HqJ/20 6/65

「……まぁ、想定の範囲内です」

「えっ」

「むしろサーブが凄すぎたんです。これから私がみっちり体に叩きこんであげますから、すぐに上手くなれますよ」

「どきどき」

「あっ、変な意味ではないので」

「しゅん」

「何を期待してたんですか……。とりあえずラリーしてみましょう」

「ボールを打ち合えばいいのね?」

「はい。できるだけ取りやすい球をお願いします」


12 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/08 23:58:15.02 HH+HqJ/20 7/65

___

「う~ん。2球に1球ぐらいアウトしちゃいますね」

「ごめんなさい」

「謝らなくていいです。それより対策を考えましょう」

「なんだか今日の梓ちゃんは頼もしいわ」

「はい、私に任せてください」

「それで、どうすればいい?」

「とりあえず回転をかけてみたらどうでしょうか」

「回転?」

「はい。ムギ先輩の場合、力をコントロールしきれていないんだと思うんです」

「ふむふむ」

14 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/08 23:59:29.56 HH+HqJ/20 8/65

「力を抑えるって方向もありますが、それはあまり楽しくないので却下です」

「梓ちゃんとテニスができれば、それくらい我慢――」

「ムギにゃんが楽しくないと私も楽しくないので却下です」

「……」キラキラ

「むぎにゃん?」

「今日の梓ちゃんカッコいい!!」

「///」

(そして、照れてる梓ちゃんはかわいい)

21 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 00:09:23.55 L3HkInxQ0 9/65

___
「……」

「30球以上やって1球も入らないなんて……」

「やっぱり私、球技は……」

「あ、諦めるのはまだ速いです」

「でも……あっ!」

「どうしました?」

「バックハンドだけ左手でやったらどうかしら?」

「ムギ先輩両利きなんですか?」

「うん。私、左利きを矯正してるから」

「ムギ先輩にそんな過去が……」

(本当はちゃんとバックも打てるようになったほうがいいけど、今日は遊びだし……)

「梓ちゃん?」

「わかりました。じゃあやってみましょう」

23 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 00:10:56.56 L3HkInxQ0 10/65

___
「どうかな?」

「5球に2球ぐらいミスしますね」

「楽しくラリーはできそうにないね」シュン

「だ、大丈夫です。できるだけフォアハンド(右手側)に返すようにしますから」

「梓ちゃんやさしいね」

「これくらい当然です。それじゃあラリーしましょうか」

「ええ」

パン! 
パン! 
パン! 
シュッ タンタンタン

パン! 
パン! 
パン!


「そんなこと言うなよ澪にゃん」

「澪にゃん澪にゃん言うな!」

25 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 00:12:43.81 L3HkInxQ0 11/65

「え~っ」

「えーっ、じゃない。まったくもう……」

「…あっ、あれ」

「どうしたんだ? あっ」

「りっちゃん! 澪ちゃん!!」

「律先輩と澪先輩。偶然ですね」

「ムギと梓じゃないか。二人もデートか?」

「まぁ、そんなところです」

「そうか。私たちは横のコートなんだ」

「あっ、そうだ。後から試合しないか」

「いいですよ」

「えっ」


27 : 書き溜め終了。後はゆっくりやる[... - 2012/10/09 00:18:44.27 L3HkInxQ0 12/65

「よし。私たちはちょっとラリーして体を温めるよ。三十分ぐらいしたら試合しようぜ」

「はい。わかりました」

___

「梓ちゃん!」

「ど、どうしました?」

「ねぇ、なんで試合なんて」

「嫌でしたか?」

「うん。私きっと足を引っ張っちゃう」

「大丈夫です。それ分私がカバーしますから」

「でも、きっと勝てない。澪ちゃんもりっちゃんも強そうだし」

「別に負けてもいいんですよ。遊びですから」

「そうかな?」

「ええ、そうです。でも勝つつもりでいきましょう」

「えっ」

「勝つとすっごく楽しいんですよ、テニスって」

30 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 00:23:13.13 L3HkInxQ0 13/65

___
30分後

「うぃっち?」

「すむーす」

グルグルグルグル バタン

「ラフです。サービスをもらいます」

「じゃあ私は左のコートを選ぶよ」

「はい」

「私達のサービスからね」

「はい。ムギにゃんのサービスからです」

「えっ、私?」

「はい。澪先輩と律先輩の度肝を抜いてやりましょう」

「私にできるかな?」

「できるかどうかじゃなくて、やるんです!!」

「……!」


34 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 00:29:36.20 L3HkInxQ0 14/65

「……」

(集中して……まずは最初のサーブを入れる)

「……」

(さっきちらっと見せてもらった。ムギのサーブはよく入る)

(だけど、そこまでのスピードはない)

(それほど曲がるわけでもない)

(リターンエースを狙う!)

「えいっ!」バシュン

「それっ!」バン


36 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 00:32:08.76 L3HkInxQ0 15/65

シュッ タンタンタン

「……ネットか」

「やった!!」

「やりましたね、ムギにゃん。サービスエースですよ」パン

「うん。やったよ、梓ちゃん。……右腕をあげてどうしたの?」

「ハイタッチです」パン

「あっ、うん」パン

「くそっ、やられたぜ……」

「どうだった、ムギの球」

「重い。とてつもなく重い」

「そう重い重い連呼するのはやめてくれ」

「……?」

「……少し下がって受けてみるか」

38 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 00:37:39.17 L3HkInxQ0 16/65

「ふぃふてぃーん、らぶ」

(この調子でもう一球)

「えいっ」バシュン

「ひ、低い」バン

シュッ タンタンタン

「またエースです」パン

「うん。凄くいい調子」パン

「澪でも無理か……」

「悪い」

(低くて上手く打てなかった。しかもこれだけ下がっても重いなんて)

(ムギがサービスのゲームは捨てるのが得策かな?)

(何か作戦を考えないと)

40 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 00:42:38.95 L3HkInxQ0 17/65

___
数分後

「まさかサービスエースだけで1ゲームとってしまうとは思いませんでした」

「うん……でも」

「……大丈夫。私がカバーしますから」

「うん。お願い」



「なぁ、澪にゃん」

「あぁ。あのサーブは無理だ」

「でもさっきの練習を見ていた限りだと、ムギはサーブだけだ」

「じゃあ律のサーブで取り戻してくれ」

「任された!!」

「ふふっ、こういうときの律は実に頼もしいな」


43 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 00:45:19.00 L3HkInxQ0 18/65

___
「げーむかうんとぜろいち」

(りっちゃんのサーブ……どんなのかしら)

「……」

(ここはサービスエースを狙っていく)

(入ってくれよ……)

「それっ!!」バシュン

「えっ」

トン…トントントン

「いえ~い」パン

「おしっ」パン

「う、動けなかった」


47 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 00:52:52.16 L3HkInxQ0 19/65

「どんまいです、ムギにゃん」

「ごめんなさい」

「謝らなくてもいいです。私もムギ先輩と同じ位置だったら返せなかったでしょうから」

「えっ」

「やりようはあります。見ててください」



「澪にゃん見ててくれたか」

「ナイスサーブだったぞ律」

「よし、この調子でいくぜ」

49 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 01:00:08.58 L3HkInxQ0 20/65

「ふぃふてぃーんらぶ」

「……」

(確かに速い。でもそれだけです。後ろに下がればなんてことないはず)

(かかってくるデス)

「……」

(梓……随分後ろに下がってるな)

(私は自分の仕事をするだけだ)

「えいっ!」バシュン

「それっ」バン

(思ったより重かったけど返せた……えっ)

「ここだ」バシュ

トン……トン……トン

「よしっ!」パン

「よっしゃ!」パン

52 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 01:03:51.50 L3HkInxQ0 21/65

「思ったよりお二人は強いみたいです」

「梓ちゃん……」

「でも、この調子ではいかない筈です」

「へっ」

「とりあえずムギ先輩はさっきより下がって打ち返してください。そのうち勝機は見えてきますから」

(思い切り打つフラットサーブはコントロールがつけにくい)

(そのうちフォルトを連発するはずです)

___
「さーてぃーんらぶ」

「……」

(よしっ、この調子だ)

「えいっ」バシュン

「……フォルト」


53 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 01:06:20.80 L3HkInxQ0 22/65

(外れてくれた)

(2本目も外れますように……)

「……」

(外してしまったか)

(ならば、これを使う)

「えいっ」シュ

「えっ」

(アンダーサーブ? ボールが凄く高いところに行って、あっ、落ちてきた)

(ギリギリネットインする位置!? 走らなきゃ)タタタタタタタタ

トン……トン…トン

「せ、せこい……」

「これだって立派な戦術だぞ。しかも結構難しいし」

「確かにそうですが……」

「まぁ、確かにせこいけど」

「澪にゃん……そりゃないよ」

55 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 01:11:51.39 L3HkInxQ0 23/65

「ふぉーてぃらぶ」

「えいっ!」シュバッ

「それっ」バシ

シュッ タンタンタン

「1ゲーム取り返したな」パン

「あぁ、律よくやってくれた」パン

「サーブの調子が良かったからな」

「うん。いつもあれくらい入れば無敵なんだけどな」

「大丈夫だって、私にはアンダーもあるし」

「あれバレてるから、次使ったらリターンエース食らうぞ」

「そんなことないって。澪にゃんは心配性だな」


「あっさり取られちゃいましたね」

「うん。どうしよう?」

「大丈夫です。また試合は始まったばかりですから」

「……うん。頑張ってみる」

58 : ここからダイジェスト多め[] - 2012/10/09 01:24:25.16 L3HkInxQ0 24/65

___
「げーむかうんといちいち」

「……」

(私のサーブはちゃんと曲がるスライス)

(あまりサービスエースは取れないけど、リターンエースもされにくい)

(何よりほとんどフォルトが出ない)

(ムギ先輩はボレーならちゃんとできる)

(後衛私、前衛ムギ先輩というのは最善の陣形)

(このゲーム、落とすわけにはいかない……)

「……」

(梓のやつ、打つの遅いな)


___
40分後

「ぜぇ…はぁ…はぁ……やったね、梓ちゃん」パン

「はぁ…はぁ…はい。なんとか取りましたね、このゲーム」パン

66 : 唯ちゃんなら和にゃん&憂ちゃんと... - 2012/10/09 01:36:42.34 L3HkInxQ0 25/65

「げーむかうんといちにー」

「……」

(ムギのやつだいぶ疲れてきてるみたいだ)

(梓もそれなりに疲弊してる)

(私たちはまだまだ元気だ)

(……試合前の運動量が少ないからちょっとズルいけど、勝負に情けは無用だな)

(このゲームも徹底的に走り回ってもらう)

「えいっ!」キュン

「それっ!」ズバシャ

律・澪「えっ」

タン・・・タンタン

「私が反応できなかった……」

「やりましたね、ムギにゃん」パン

「えーっと。うん……」パン

69 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 01:42:33.37 L3HkInxQ0 26/65

「納得行かなそうな顔ですね」

「うん。どうしてあんないい球を返せたのかしら」

「澪先輩がスピンサーブを打ったからです」

「スピンサーブ?」

「トップスピンと同じ回転がかかったサーブです」

「ほうほう」

「回転がかかってうおかげでラケットに大きな摩擦抵抗が生まれ、強いトップスピンのかかったリターンができたんです」

「……うん。よくわからない」

「……澪先輩のサーブはトップスピンで返すといいってことです」

「わかった!」


「……」

「澪にゃん?」

「……」

「しっかりしろ、澪。ここから取り戻すぞ」

「……あぁ」

73 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 01:50:44.06 L3HkInxQ0 27/65

(0-15から始まったこのゲーム)

(点取合戦がもつれてデュースに)

(取られ取り返されを繰り返して20分ぐらい)

(最後は梓のボレーが決まって、私たちの負けになった)

(これで1-3。……いや、次はムギのサーブだから1-4だと考えたほうがいいか)

(順調に梓とムギの体力は奪っているけど、ここらへんで取り返さないと……)


74 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 01:56:06.00 L3HkInxQ0 28/65

__
15分後

「まさかここまで取られるとは」

「あぁ、でもあいつらの躍進もここまでだ」

「できるか?」

「あぁ、任せとけ。今日の私は無敵だから」タタタタタタタ


「げーむかうんといちよん」

(ここは澪のためにも絶対に外せない)

(全部入れる)


76 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 01:57:30.00 L3HkInxQ0 29/65

「えいっ!」バシュン

「えっ」スカ

タン……タン…タン
___
「ふぃふてぃーんらぶ」

「それっ!」バシュン

「このっ!」バン

シュッ……タンタンタン
___
「さーてぃーんらぶ」

「そいや!」バシュン

「やあっ!」バン

シュッ……タンタンタン
___
「ふぉーてぃらぶ」

「いけっ!!」バシュウン

「えいっ!」スカ

タン……タン…タン

79 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 02:04:36.70 L3HkInxQ0 30/65

「りつうう!! 大好きだ愛してるぞおおおおお!!!」ダキッ

「うおっ、澪にゃん?」

「どうして律はこんなにかっこいいんだ」

「それはまぁ……私だからな」

「うんうん。律は律だからかっこいいんだな」スリスリ

「ははは……」


83 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 02:11:22.85 L3HkInxQ0 31/65

「それにしても、まさか律先輩にサービスエースだけでゲームを取られるとは……」

「りっちゃん凄いわ」

「はい。認識を変えなければならないようです」

「ええ」

「律先輩がサービスのゲームは落とすつもりでいかないと……そう考えると」

「考えると?」

「次のゲームは私がサーブ。そして澪先輩のゲームは私がサーブです。このどちらかを取ります」

「ということは、5-3にするの?」

「はい。そこでムギ先輩にサーブが回れば勝てます」

「だけど……」

「はい、わかってます。このゲームはちょっと休めましたが、私達の体力は限界に近い。だから……」

84 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 02:18:26.79 L3HkInxQ0 32/65

(ゲームカウント4-2で迎えた私のサービスゲーム)

(二人で選んだ戦略は「捨てること」だ)

(私たちはなるべく動かず、澪先輩と律先輩に走り回ってもらう)

(幸い、ムギ先輩はゲーム中ずっと前衛なので運動量は多くない)

(次の澪先輩のサービスゲーム。これが取れるかどうかに勝負はかかっている)

86 : ここから多分ダイジェストなし[] - 2012/10/09 02:23:05.40 L3HkInxQ0 33/65

「げーむかうんとさんよん」

「……」

(前のゲームはたぶん捨てにきたんだと思う)

(結構走らされたけど、律はまだ元気だし、私もまだまだやれる)

(でも、このゲームを落としたら、次のムギのサービスゲームで敗北が確定する)

(絶対に負けるわけにはいかない)

「えいっ!!」ビュン

「それっ!!」ギュン

(凄い球だけど…心の準備ができてれば打ち返せる!)

「えいっ」ギュン

「ここです!!」バシン

「と、届かない」

タン……タン…タン


87 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 02:28:00.31 L3HkInxQ0 34/65

「どんまい、澪にゃん」

「ご、ごめん律」

「気にしなくていいよ。今のは梓がうまかった」

「あぁ、梓本当に上手いな。ムギを上手くサポートしてる」

「でも、明らかに運動量が落ちてるな」

「そうだな」

「この勝負、勝てる」

「あぁ、私もそう思うよ」


89 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 02:33:08.76 L3HkInxQ0 35/65

「梓ちゃんナイスよ!!」パン

「綺麗にキマリました」パン

「でもあんな球良く取れたね」

「ヤマがあったんです」

「ヤマが……やっぱり梓ちゃんすごい!」

「くすっ。ムギ先輩だって十分凄いですよ」

「そうかな」

「ねぇ、ムギ先輩テニスって楽しいでしょ」

「えっ」

「勝っても負けても楽しいものだと思います、テニスって」

「うん。とっても楽しい!」

「それでこそ連れてきた甲斐がありました」

「なんだか死亡フラグみたいだね」

「縁起でもないこと言わないでください。これは檄です。勝ちに行きますよ」

「うんっ!」

92 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 02:40:15.73 L3HkInxQ0 36/65

「らぶふぃふてぃーん」

「えいっ!」バシュ

「それっ」パン

「緩いボール? どっちだ?」

「私に任せろ!!」

「頼んだ」

「えいっ」バシュ

(さすが幼馴染のお二人。お見合いへの対応は完璧です)

(でも、崩れた陣形は戻らない)

「これで」バシュ

タン……タン…タン


「やった!」パン

「狙い通りです!」パン

93 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 02:45:21.89 L3HkInxQ0 37/65

「……らぶさーてぃ」

「……」

(このまま負けるわけにはいかない)

「えいっ!!」バシュ

「それっ」バキュン

(これは……アウトだ)

(……! ここから落ちるのか! 対応できない!!)

「……っ」スカ

タン……タン…タン


「いえいっ!」パン

「ないすリターンです」パン

94 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 02:47:02.30 L3HkInxQ0 38/65

「大丈夫か、澪?」

「あぁ、大丈夫だ」

「……全然大丈夫そうな顔してないけどな」

「うん。わかってる」

「あまり難しく考えるな。ただの遊びだから」

「遊びだけど……負けたくないんだ」

「澪にゃんは負けず嫌いだな」

「茶化すな! 私と律が組んでるんだ。誰にも負けたくなんてない!」

「…!」

「律は負けてもいいのか?」 

「……絶対に勝つ!」

「……うん!」


96 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 02:51:05.96 L3HkInxQ0 39/65

「らぶふぉーてぃ」

(これを落とせば絶望的)

(絶対に、負けない!!)

「えいっ!!」バシュ

「やっ!」バシュ

「えいっ」シュパ

「それっ」バシュ

(今だ…! 絶好の位置。このスマッシュ、貰った!!!!)

(律先輩があんなところに…対応できない!)

「…!」

「そりゃあ!!」バシュン

「そうは問屋が…卸しません!!」バン

トン……トン……トン…トントン

「やった!」

100 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 02:57:16.86 L3HkInxQ0 40/65

「ムギにゃん、やりました。後は先輩のサービスゲームを取れば!」

「う……うん」

「ムギにゃん?」

「……っ」

「……どうしました?」

「ご、ごめんね梓ちゃん」

「……律先輩のスマッシュを受けた時、捻ってしまいましたか」

「……うん」

「……」

「……」

「仕方ありません。降参しましょう」

「ごめんね。本当にごめんね」ポロポロ

「な、泣かないでください」

101 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 03:06:15.99 L3HkInxQ0 41/65

「聞いたか?」

「うん」

「こんな終わり方は不本意だけど、仕方ないな」

「……そうだな」

「また、今度やりたいな」

「あぁ……」

102 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 03:11:26.21 L3HkInxQ0 42/65

「ひっく……本当にごめんなさい」ポロポロ

「も、もう泣かないでください。試合ならまたできますから」

「……っ…梓ちゃんがせっかく頑張ってくれたのに」ポロポロ

「でも仕方ないです」

「ごめんねなさい。本当にごめんなさい」ポロポロ

「……」

(ムギ先輩……私だって悔しいです。ムギ先輩と組んで律先輩達に勝てそうだったのに)

(だけど、手を怪我したらしょうがないんです。だって、手が使えなくちゃ)

(手が使えない……?)

(……)

(……)

「ムギ先輩、ひとつだけ方法があります」

「えっ」ポロポロ

「勝てるかどうかは分かりませんが、やってみる価値はあると思います」

107 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 03:23:18.83 L3HkInxQ0 43/65

「いいのか? ゲームカウントこのままで後日再試合でもいいんだぞ」

「体力回復してからやるのでは、フェアじゃないですから」

「そうか」

「はい。ただ、ムギ先輩がアイシングする時間だけは頂こうかと」

「あぁ。じゃあ暫く休憩だな」

「すいません」

「いや、謝ることはないよ。むしろ試合を続けられて私も嬉しい」

「律先輩のこと見直しました」

「そ、そうか?」

「あっ、照れると怒られますよ、澪にゃんに」


109 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 03:25:29.13 L3HkInxQ0 44/65

___
15分後

「オーストラリアンフォーメーション?」

「はい。ムギ先輩にはこれから左手だけを使って試合してもらいます。でも左手でバックハンドなんて絶対無理ですよね」

「……うん」

「だから陣形を変えるんです」

「どんな陣形なのかな?」



110 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 03:26:29.16 L3HkInxQ0 45/65

「ちょっと地面に書いて見せます。普通はこんな感じです」

   紬◯
   ◯梓
  ====←ネット
   澪◯
   ◯律

「うん」

「オーストラリアンフォーメーションだとこうなります」
   紬◯
   梓◯
  ====←ネット
   澪◯
   ◯律

「……どういう意味があるの?」

「ムギ先輩の右手側を狙いにくくなります」

「…なるほど」

114 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 03:30:56.02 L3HkInxQ0 46/65


「あと、並行陣も使います」

「並行陣?」

「はい。こんな感じです」

   梓紬
   ◯◯
  ====←ネット
   澪◯
   ◯律

「横に並ぶんだ」

「はい。これならムギ先輩の右手側を私がカバーできます」


116 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 03:33:08.16 L3HkInxQ0 47/65

「どちらも欠点はありますが、勝てるとしたらこの方法しかないと思います」

「うん。精一杯頑張る!」

「この手が使えるのはムギ先輩がサーブの時だけです。だから……」

「……うん」

「次のゲームを落としたら潔く降参しましょう」

「わかった」

「それじゃあ行きましょう」


117 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 03:34:55.68 L3HkInxQ0 48/65

___
「ごめんね。りっちゃん、澪ちゃん」

「ムギが謝ることないよ」

「次のゲーム落としたら私達降参するから」

「へっ」

「勝ち目がなくなっちゃうから」

「……そうなのか」

「……」

「逆に言えば、次のゲームは十分勝ち目があるってことです。そして次のゲームを取れば私達の勝ちです」

「梓?」

「そろそろラストゲームを始めましょう。勝っても負けても恨みっこなしです」

「あぁ」

「澪にゃん! 勝つぞ!!」

「おお!」

「ムギにゃん! 行きますよ!!」

「おーーーー!!」

119 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 03:40:09.73 L3HkInxQ0 49/65

「げーむかうんとごーさん」

「……」

(せっかっく梓ちゃんが繋いでくれたチャンス。無駄にするわけにはいかない)

「えいっ!」パン

(あっ、これは……)

「フォルト」

「どんまいです、ムギにゃん」

「う……うん」

(思ったより難しい)

(なんとか入れないと)

「えいっ!」パン

(緩いボール。これなら)タタタタ

「それっ!!」パキュン

タン……タン…タン

「そんな……」

122 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 03:47:18.24 L3HkInxQ0 50/65

「らぶふぃふてぃーん」

「……」

(緩く打ったらリターンエース取られちゃう)

(でも、強く打ったら入らない……)

(どうすれば……)

「ムギにゃん?」

「えっ…あっ……そっか。並行陣だから梓ちゃんが横にいるんだ」

「緊張してますねムギにゃん」

「……うん」

「強く打ってください。勝てるとしたら、それしかありません」

「……そうだね」

「……えいっ」バシュ

(これは……入る)

「それ」パン

124 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 03:52:19.28 L3HkInxQ0 51/65

「このっ!!」バン

「取れる!」バキュン

「えいっ!」バン

(ムギ先輩……なんとか打ち返した。今のうちに)タタタタタタタ

「それっ」バン

「えっ、なんで梓がネット前に」

「走ってきたんです。今デス!!」バン

タン・・・タンタン


「やりました!」パン

「梓ちゃん……最高!!」パン



「くそっ」

「次取り返せばいいさ」


125 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 03:54:44.38 L3HkInxQ0 52/65

「ふぃふてぃーんおーる」

「……」

(梓ちゃんが頑張ってくれてる。私も頑張らなきゃ)

「えいっ!!」バン

「それっ」バシュ

「届きます!!」バン

(よし、左が空いた……これで)

「決まれ!!」バシュ

(バックハンドにきた……でも、あてるだけなら!!)

「入って!」タン

(高く上がった……でも、飛距離が……。お願い、ネットまで届いて。)

タン………タンタン

「ネットイン…だと…」


「やりました!!」パン

「うん!」パン

128 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 04:00:26.58 L3HkInxQ0 53/65

「さーてぃふぃふてぃーん」

(後2ポイント連続でとれば、私達の勝ち)

(うん。こうなったら……やってやるです!)

「えいっ!!」バシュ

シュ…タン…タン

「どんまいです、ムギにゃん!」

「……」

(落ち着いて……)

(ふぅ……)

「えいっ」バシュ

「フォルト」

「そ、そんな……」

130 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 04:06:41.62 L3HkInxQ0 54/65

「さーてぃーおーる」

「……」

(次こそは絶対に入れる)

(……入って!)

「えいっ!!」バシュ

「球が甘い!」バキュン

(と、届け)タタタタタ

「……っ」バン

(ガットに当たった!? どんだけ運がいいんだ? でも、これで)タタタタタタ

「えいっ!」バシュ

「左端……届かない」タタタタタタタ

タン……タン…タン


「おしっ!」パン

「さすが私の律!!」パン


131 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 04:10:24.00 L3HkInxQ0 55/65

「……」

(次取られたらおしまい)

(……)

(……っ)

「ムギ……にゃん」

「梓ちゃん?」

「また、緊張してるみたいですね」

「……うん」

「今、楽しいですか?」

「……どうだろう」

「じゃあ、もっと楽しんでください」

132 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 04:13:45.38 L3HkInxQ0 56/65

「そんなこと……どうすればいいの?」

「勝つところを想像してください

「勝つところ?」

「そして、自分の読みがあたるところを想像してください」

「……想像するだけでいいの?」

「はい。自分が成功するところを想像してください」

「…うん」

「後はムギにゃん次第です」

「……」

(勝てたら……きっと楽しいだろうな)

(梓ちゃんは大喜びしてくれるだろうし)

(きっと私も誇らしいと思える)

(……私のサーブを澪ちゃんが受ける)

(私はどう動けば勝てるだろ?)

(……うん。決めた)

134 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 04:21:07.11 L3HkInxQ0 57/65

「さーてぃふぉーてぃ」

「えいっ!!」バシュ

(打ち頃の球だ…)タタタ

「それっ!」バキュ

(緩い球)タタタタタ

「それっ!!!」バシュ

(私の方に来た! これで決める!!)

「そいやっ!」バキュン

(走れば届く……)タタタタタタタタタタタ

「えいっ!!」バン

(ここ!!!!)

(高い球……アウトか? インか? インだ!)

「それっ!!」


135 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 04:25:42.06 L3HkInxQ0 58/65

(ムギが……)

(あがってきてる……?)

(ここしかない……左手でスマッシュは初めてだけど)

(きっと入る。きっと勝てる。だから……)

「それっ!!!」バシュン

(ムギ先輩のスマッシュ……力強い……。でも、ちょっとだけ高い……)

(お願い、入って!!)













タン……タン……タン…タン

「アウト」


137 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 04:32:47.32 L3HkInxQ0 59/65

帰宅後-律宅
___
「こんなに白熱した試合は久しぶりだったな」

「うん、すっごく楽しかった」

「こんどはムギが万全な状態でもう一度やりたいな」

「うん」

「また練習しに行こうぜ」

「律が誘ってくれればいつでも行くよ。だって、カッコいい律が見られるから」

「///」

(照れてる律かわいい)

「あっ、そうだ」

「なんだ?」

「そろそろいい時間だけど帰らなくていいのか?」

「私に言わせるのか?」

「あっ…………。まぁ、なんだ、澪にゃん。今日は泊まってってくれ」

「……うん!」

139 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 04:39:53.32 L3HkInxQ0 60/65

帰宅後-紬宅
___
「……負けちゃいましたね」

「うん。でも……」

「はい。想ってることは同じだと思います」

「うん。とっても楽しかった!」

「私も楽しかったです」

「だけど……」

「……はい」

「楽しかった以上に悔しいな」

「それが勝負です……」

「それは分かってるけど……。やっぱり梓ちゃんと二人で勝ちたかった」

「そうですね……。でも時間ならたっぷりあります」

「うん! 打倒りっちゃん澪ちゃんペアを目指して猛特訓ね!」

「はいです!」

140 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 04:41:56.69 L3HkInxQ0 61/65

「そうと決まれば明日から猛特訓ね」

「ムギにゃん。明日からじゃなくて今日からするべきです」

「……! そうね! 何をすればいいのかしら」

「今日わかったことがあります。私達の弱点は持久力です」

「そうだね」

「だからスタミナをつけるべきだと思うんです」

「どうやって?」

「夜の体育で」

「夜の体育?」

141 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 04:42:49.15 L3HkInxQ0 62/65

「はい、知りませんか?」

「うん」

「それじゃあ私がムギにゃんの体に教えこんであげるです」

「わくわく」

「それっ」ガバッ

「ひゃん///」



おしまいっ!


144 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 04:46:56.67 BObQME/I0 63/65


バカップルどもめかわいいぞ

147 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 04:52:51.17 o355tbRFP 64/65


疲れてるのにお盛んだなww

148 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/10/09 04:59:45.52 caSUmegu0 65/65


こういうのも悪くない

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