――わたしの隣にいてくれる人が
ある日突然、離れて行ってしまうこともある
たとえそれが
わたしにとってかけがえのない存在でも
わたしが心から愛する人でも……
元スレ
まどか「人の恋路を邪魔する魔女は弓に射られて死んじまえ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347361828/
ピピピピピピピピ
まどか「ん…ん~」
まどか「ふあ~…ふぅ……」
コンコン
知久「まどか、おはよう。起きてるかい?」
まどか「うん、起きてるよ。おはよう、パパ」
知久「朝ご飯できてるから、ママを起こして来てくれるかい?」
まどか「うん、わかった」
――――――
詢子「それでまどか、最近ほむらちゃんとはどうよ?」
まどか「どう、って言われても……」
詢子「大事な娘の恋人とのことだし、親としては気になるわけよ」ニヤニヤ
まどか「わたしとしてはあんまりあれこれ聞かれたくないような……」
詢子「そう言うなって、もうチューしちゃったんだろ?」
まどか「も、もう、ママ!」
知久「ママ、その辺にしてあげよう?まどか、もうそろそろ時間だよ」
まどか「わ、ほんとだ。……それじゃ、いってきます!」バタン
詢子「あの子…ほむらちゃんと付き合ってから、毎日幸せそうだねぇ……」
知久「うん、そうだね。生き生きしてるっていうか……」
詢子「まどかが幸せそうで何よりだ。……それじゃ、アタシもいってくるよ」
知久「はい、いってらっしゃい」
ワルプルギスの夜をほむらちゃんたちが倒したあの日、わたしとほむらちゃんは恋人になった
あれから数ヶ月。季節はもうすぐ夏になろうかという頃
いつもの待ち合わせ場所に着くと、さやかちゃんが欠伸をしながら待っていた
まどか「さやかちゃん、おはよう」
さやか「お、まどか。おはよー」
まどか「あれ、仁美ちゃんとほむらちゃんは?」
さやか「あー、ほむらは日直で、仁美はー…何だったかの当番って言ってたな……」
さやか「というか、まどかのとこにメールしておいたって言ってたけど、見てないの?」
まどか「え?……あ、ほんとだ。ご飯食べてるときに来たのかな」
まどか「それじゃさやかちゃん、行こっか」
さやか「ん、そうだね」
さやか「それでまどか、最近ほむらとどうなのよ?」
まどか「さやかちゃん、ママと同じこと聞かないで……」
さやか「いやー、ほら、あたしの嫁だったまどかを貰われちゃったわけだし?やっぱ気になるわけよ」
まどか「うぇひひ、ごめんね?わたし、ほむらちゃんのお嫁さんになるから」
さやか「あー…こりゃもうあたし敵わないわ…かくなる上は……」
さやか「ほむらからまどかを奪う!これぞ略奪愛!」
まどか「えぇ!?」
さやか「なーんて、冗談だって。そんなことしたら何されるか……」
まどか「もう…そういうさやかちゃんだって、上条君とどうなってるの?」
さやか「な、ななな、何を言うのかねまどかさん!?」
さやかちゃんはあのあと、上条君に告白した。
結果としては、さやかちゃんは断られてしまった
でも、さやかちゃんの後に告白した仁美ちゃんともお付き合いしなかった
さやかちゃんが言うに、今はバイオリンが弾けることに頭がいっぱいで、他のことに頭が回らない
だから今は、付き合うことはできない。って言われたみたい
さやかちゃんは、もし他のことに目を向ける余裕ができたときに振り向いてもらえるように頑張るよ。って言ってたっけ
さやか「ま、まぁ、振り向いてもらえるように努力中です……」カァ
まどか「さやかちゃん、真っ赤になってるよ?」
さやか「うるせーやい。急にそんなこと聞くまどかが悪いんだよ……」
まどか「わたしだってもうそんな真っ赤になることないんだけど……」
さやか「う、うるせーやい」
さやか「……あ、マミさんだ。マミさん、おはよーございまーす」
まどか「マミさん、おはようございます」
マミ「鹿目さんに美樹さん。おはよう、今日もいい天気ね」
さやか「そうですねー。暑いくらいですよ」
マミ「……あら?今日は暁美さんは一緒じゃないの?」
さやか「今日は日直みたいで、先に行っちゃいました」
マミ「あら、そうなの?鹿目さん、残念だったわね」
まどか「大丈夫ですよ、教室に行けば会えるんですから」
マミ「そんな悠長なこと言ってると、誰かに暁美さん取られちゃうわよ?美人なんだから」
まどか「それこそ大丈夫ですよ。ほむらちゃんがわたし以外を取るはずないですもん」
マミ「ふふ、それもそうよね」
――――――
マミ「それじゃ2人とも、またあとでね」
さやか「はい、またお昼に。……さて、今日も1日がんばりますか」
まどか「でもそう言う割にさやかちゃん、授業中寝てるよね」
さやか「し、失礼なこと言いますね…まぁ実際そうなんですけど……」
まどか「上条君に振り向いてもらえるようにしっかりしないとダメだよ」
さやか「だ、大丈夫だよ…多分」
さやか「はぁ…あんたたちは幸せそうで羨ましいよ」
まどか「うん。ほむらちゃんといるとわたし、すごく幸せだよ」
さやか「あーはいはい。……さて、ほむらは教室にいますかねーっと」ガラ
さやか「えーと、ほむらは…いたいた、おーい、ほむら……」
まどか「ほむらちゃん!」
ほむら「あら、まどか」
まどか「おはよう、ほむらちゃん!」ギュウ
ほむら「おはよう、まどか」ギュウ
さやか「……あー、こいつらは朝っぱらから……」
ほむら「今日はごめんなさい。日直だったから早めに学校に来ないといけなかったから」
まどか「日直なら仕方ないよ。そのかわり、放課後に寄り道して行こうよ」
ほむら「そうね…それじゃ、行き先はまどかに任せるわね」
まどか「うん!」
さやか「……おはよう、ほむら」
ほむら「あらさやか、おはよう」
さやか「相変わらずお熱いことで……」
ほむら「当たり前じゃない。私とまどかよ?」
さやか「それにしたって教室で抱き合うのは……」
ほむら「別におかしいことでもないでしょう?女の子同士ならよくやることじゃない」
さやか「あー、うん、そうだね」
さやか(ぶっちゃけクラス内にはバレバレだと思うけどね)
キーンコーンカーンコーン
ほむら「あら、予鈴ね。……それじゃまどか、放課後楽しみにしてるわね」
まどか「うん、わたしも楽しみにしてるね!」
放課後にほむらちゃんと寄り道する約束をした
どこに行こうかな…雑貨屋、喫茶店、ゲームセンター……
どこに行こうか考えているうちに、時間はあっという間に過ぎていった
――――――
さやか「それじゃまどか、あたし先に帰るね」
まどか「うん。さやかちゃん、また明日」
さやか「それじゃねー」
さやかちゃんと校門で別れた
ほむらちゃんは日直の仕事があるので、校門前で待ち合わせしておいた
しばらく待っていると、ほむらちゃんがやって来た
まどか「ほむらちゃん、お疲れさま」
ほむら「お待たせ、まどか。それで、今日はどこに連れて行ってくれるのかしら?」
まどか「えっとね、この間入った雑貨屋さんにかわいい小物とかアクセサリーが置いてあったから、そこに行こうかなって」
ほむら「じゃあ決まりね。案内よろしくね」
まどか「うん!」
ほむら「……やっぱり私には、まどかがいてくれないと駄目ね」
まどか「え?何のこと?」
ほむら「以前に言ったことがあるでしょ?私にはまどかみたいに引っ張って行ってくれる人が必要だって」
ほむら「今もこうしてまどかが色んなところに連れて行ってくれる。私は、それが嬉しい」
まどか「わたしも、ほむらちゃんと色んなところに行くのが楽しいよ。これからもっと色んなところに行こうね」
ほむら「えぇ、そうね。……夏休みにどこかに旅行に行くとかは?」
まどか「わたしたちだけで行けるところってあるのかなぁ…あ、着いたよ。このお店」
ほむら「ここ?……なんというか、カラフルね。お店が」
まどか「ほらほむらちゃん、入ろう?」
ほむら「外見もそうだったけど……」
ほむら「店内もすごいわね…カラフルで。ここ、雑貨屋というよりファンシーショップじゃないの?」
まどか「そうなのかな。でも雑貨も置いてあるし、雑貨屋でも間違いじゃないんじゃ……」
ほむら「……まぁ、何だっていいわね。それじゃ見て回りましょうか」
まどか「アクセサリーも色々あったから、今日はそっち見て回ろうよ」
ほむら「何か欲しいものでもあるの?」
まどか「そういうわけでもないけど、ほむらちゃんに似合いそうなのないかなーと思って」
ほむら「ふふ、ありがとう、まどか」
それからしばらくほむらちゃんと一緒に店内を見て回った
リボンにヘアピン、イヤリング…色んなアクセサリーを試着してみた
ほむらちゃんは、やっぱり私よりまどかの方が似合うわね。なんて言っていた
ほむらちゃんもすごく似合ってるのになぁ……
そして、店内の一番奥、指輪売り場に入ったときだった
まどか「あ……」
ほむら「まどか?どうかした?」
まどか「この指輪……」
売り場の端っこに陳列されていた指輪
同じモデルでピンクと紫の2つが、並べて陳列されていた
まどか「この指輪…なんだか、わたしたちみたいだね」
ほむら「そうね…ピンクがまどかで、紫が私……」
まどか「ねぇ、ほむらちゃん。これ、買わない?」
ほむら「この指輪を?私は構わないけど……」
まどか「うぇひひ、ありがとう、ほむらちゃん」
ほむら「でもどうしてこの指輪を?」
まどか「ほむらちゃんと…お揃いのものが欲しくて……」
まどか「それで、この指輪を見つけたとき、これだ!って思って」
ほむら「まどかとペアリング…悪くないわね」
ほむら「それじゃこの指輪、買って行きましょう」
――――――
ほむら「まどか、ひとつ提案があるの」
まどか「何?ほむらちゃん」
ほむら「この指輪、紫をあなたが着けてくれないかしら?」
まどか「え?わたしが、紫を?」
ほむら「自分の色を自分で持っていても仕方ないでしょう?だから……」
ほむら「私の紫を、まどかに持っていてもらいたいの…どうかしら?」
まどか「……うん、そうしよっか。じゃあ……」
まどか「わたしのピンク、ほむらちゃんに持っていてほしいな」
ほむら「えぇ。あなたの指輪、確かに受け取ったわ」
まどか「何だかまたほむらちゃんと仲が深まった気がするよ」
ほむら「あのお店に寄ったおかげね。連れて来てくれてありがとう、まどか」
ほむら「それにしても……」
ほむら「安物とはいえ、ペアリングを買っちゃうなんてね。……結婚式でも挙げちゃおうかしら?」
まどか「え、えぇ!?な、ななな、何を言ってるのほむらちゃん!?」カァ
ほむら「あら、まどかは嫌なの?」
まどか「や、その、嫌じゃないよ?でもさ、急にそんなこと言われたら……」
ほむら「私は…まどかとがいいわ。まどか以外となんて、考えられないもの」
まどか「う、うん…ありがとう、ほむらちゃん……」
ほむら「それじゃまどか、そろそろ帰り……」
まどか「ほむらちゃん?」
ほむらちゃんの優しそうな顔が険しくなる
ほむらちゃんがこんな顔をするのは決まって、魔女が現れたとき
ほむら「……ごめんなさい、まどか。今日のデート、ここまでだわ」
まどか「……魔女が出たの?」
ほむら「えぇ、そうよ。……全く、魔女ってどうしてこう人の恋路を邪魔してくれるのかしら?」
まどか「それはわたしにも…ほむらちゃん、わたしも一緒に行くよ。もちろん、結界の前までだけど」
ほむら「わかったわ。それじゃ、行くわよ」
――――――
ほむら「……どうやらここのようね。それじゃまどか、行ってくるわね」
まどか「うん、気をつけてね」
ほむら「えぇ、わかってるわ」ズッ
まどか「……がんばって、ほむらちゃん」
タッタッタ…
杏子「……あれ、まどか?」
まどか「あ、杏子ちゃん」
杏子「こんなとこで一体何してんだ?……まさかお前、魔女の……」
まどか「大丈夫だよ。ほむらちゃんが戻ってくるの、待ってるだけだから」
杏子「そうか、それならいいんだ。……よく考えたら、毎日幸せそうなアンタが魔女に魅入られるわけないか……」
杏子「それにもうほむらが戦ってるのか。なら、アタシの出る幕はなさそうだな」
杏子「ワルプルギスの夜との戦闘で、ほむらの奴とんでもなく強くなりやがったからなぁ……」
まどか「わたしの願いが役に立ってよかったよ。……それにしてもあの魔法少女の格好、わたしとほむらちゃん、って感じですごくいいなあ」
杏子「相変わらずだな、お前ら。まぁせっかくだし、ほむらが戻って来るまでアタシも一緒にいてやるよ」
まどか「いいの?ありがとう、杏子ちゃん」
ワルプルギスの夜との戦いのとき、ほむらちゃんは過去のわたしの願いにより、わたしの魔力を手にした
わたしは魔法少女じゃないからよくわからないけど、何でもマミさんたち3人とは比べ物にならないほどらしい
その魔力のおかげか、銃の弾なんかを魔法で生み出すことができるようになったみたい
何が相手でもほむらちゃんは絶対に負けない。ほむらちゃんを信じ、待つことにした
――――――
ほむら「……魔女はここね」
ほむら「使い魔のいない魔女だなんて、珍しいわね。……さて、それじゃ」
ほむら「戦闘開始よ!」ダッ
ほむら「……魔女は……?」
ほむら(前方、左、右…どこにも見当たらない。残るは……)
ほむら「上……?」
魔女「……」フヨフヨ
ほむら「……あれ、かしら。黒い箱に見えるけど……」
ほむら「いつかの箱の魔女よりよっぽど箱箱しいわね」
ほむら「魔女を見つけたことだし、早く倒してまどかのところに帰りましょう」
ほむら「まずは……」ジャキ
ほむら「けん制!」バァンバァン
魔女「……」ガンガン
ほむら「硬いわね…それじゃ……」
ほむら「これはどう!?」バシュウ
魔女「!」
ズドォォォォン
ほむら「どうかしら?」
魔女「……」フヨフヨ
ほむら「まだ生きてる…思ったより頑丈ね」
魔女「……!」ゴォォ
ほむら「……」ヒョイ
ほむら「体当たりしかないのかしら、この魔女。なら、硬いだけね」
ほむら「時間停止」カシャッ
魔女「」
ほむら「硬いのなら、それ以上の威力で壊すだけ」
ほむら「魔法で作った魔法爆弾なら……!」スッ
ほむら「……このくらいあれば倒せるかしらね」
ほむら「時間停止解除」カシャッ
魔女「!!」
ズドォォォォォン
ほむら「これで……!」
魔女「……」ズズズ
ほむら「……?膨れてる……?」
魔女「!!」
パァン
ほむら「破裂…した……?」
ほむら「倒した…のかしら。魔女だとしたら、グリーフシードを落とすはずだけど……」
ほむら「使い魔だった……?でも反応は魔女のものだったし、使い魔にしては随分と頑丈だったし……」
ほむら「グリーフシードを落とさない魔女…そんなの、いるのかしら」
ほむら「……結界も消えつつあるし、倒したみたいね。それじゃ、戻りましょうか」
『……』ズズズ
――――――
ほむら「ただいま、まどか」
まどか「おかえり、ほむらちゃん」
杏子「お疲れさん」
ほむら「あら、杏子?」
杏子「魔女の反応があったから来てみたら、もうお前が戦ってるってまどかから聞いてね」
杏子「お前が戦ってるなら、アタシの出る幕ないと思ってまどかと待ってたんだよ」
ほむら「そうだったの。……それじゃ、まどか、帰りましょう」
まどか「うん、そうだね」
杏子「アタシも今日のところは帰ろうかね」
ほむら「まどか、今日はごめんなさい。デート中だったのに……」
まどか「ううん、魔女じゃ仕方ないよ。それより……」
まどか「この指輪、ありがとう。大事にするね」
ほむら「私も、大切にするわね。ありがとう、まどか」
まどか「学校には着けて行けないけど、放課後だったらいいよね」
ほむら「えぇ、そうね。……それじゃまどか、また明日」
まどか「うん、また明日」
ほむらちゃんと別れ、家路についた。お揃いの指輪、大事にしよう
それにしても、ほむらちゃんがあんなこと言うとは思わなかった。結婚式だなんて……
あのときは言えなかったけど、わたしだってほむらちゃんとなら、嫌なんてことないんだけど……
でもあれはほむらちゃんなりの冗談…だよね
これ以上考えるとまた真っ赤になりそうだったので、考えるのを止め、まっすぐ家に帰った
――翌日――
マミ「グリーフシードを落とさない魔女……?」
ほむら「えぇ。何か知らないかしら?」
マミ「……ごめんなさい。私が戦って来た中にそんな魔女はいなかったと思うわ」
ほむら「そう…ごめんなさい、手間を取らせたわね」
ほむらちゃんと一緒にマミさんの家に来た
何でも昨日の魔女で気になったことがあったから、マミさんに聞きたいことがある、とのこと
ほむらちゃんが昨日戦った魔女、グリーフシードを落とさなかったみたい
マミさんなら何か知ってるかもと聞きに来たが、マミさんにもわからないことだった
ほむら「それにあれは魔女と言うには少しおかしかったわ」
まどか「どういうこと?」
ほむら「まず、使い魔がいなかった。もっとも、これは稀にそういった魔女もいるから一概には言えないけど」
ほむら「そして、魔女と言うにはあまりにも小さい。それと、こちらへの攻撃手段が体当たり程度しかなかった」
マミ「それに加えて、グリーフシードを落とさなかった。……それらを含めて暁美さんが戦った魔女はおかしい、と思ったのね」
ほむら「えぇ…でも、今はこれ以上考えてもわからないだろうし、それに倒したからもう必要なさそうね」
ほむら「この話、ここまでにしましょう」
マミ「そう?……そうそう2人とも、昨日作ったので悪いけど、ケーキの味見してもらえないかしら?」
マミ「自分でオリジナルのケーキを作ったんだけど…自分ではおいしいと思うんだけど」
ほむら「えぇ、構わないわ」
まどか「どんなのだろう、楽しみだなぁ」
マミ「それじゃ、ちょっと待っててね」
マミさんがケーキを取りにキッチンに向かって行った
ほむらちゃんは何をするでもなく、ぼんやりとしていた
せっかくだし、言っちゃおうかな
まどか「ねぇ、ほむらちゃん」
ほむら「何?まどか」
まどか「昨日買った指輪、ここで着けてみない?もう放課後だし」
ほむら「え、ここで?……私は構わないけど、またマミが何を言うか……」
まどか「いいのいいの。もう慣れっこだし」
ほむら「……あなたって、変なところで強気よね……」
まどか「えー、そう?」
ほむら「……これでいいわね」
まどか「ほむらちゃん、どう?似合ってる…かな?」
ほむらちゃんの指にピンクの指輪が光る
わたしの指には紫の指輪
ほむら「えぇ。よく似合ってるわ」
まどか「ありがとう。ほむらちゃんも、すごく似合ってるよ」
ほむら「そうかしら?普段ピンクのものは身に着けないから、よくわからなくて」
まどか「ほむらちゃんはかわいい感じの色より、かっこいい感じの色だもんね」
まどか「……うん、ほむらちゃん、かわいい感じの色もいけるよ!」
ほむら「そう?ありがとう、まどか」
ほむら「……でもやっぱり、同じ指輪を2人でしてると……」
ほむら「結婚する2人って感じがするわね」
まどか「も、もう…ほむらちゃん、またその話……」
ほむら「恋人の次はもう結婚しかないじゃない」
まどか「そうかもしれないけど……」
ほむら「昨日も言ったけど、私、まどかとがいいわ」
まどか「う、うん…私も、ほむらちゃんとなら全然構わないけど……」
ほむら「ふふ、ありがとう、まど……」
マミ「……」ニコニコ
ほむら「……」
まどか「……」
ほむら「……マミ、いつからそこに?」
マミ「え?たった今よ?私は何も見てないし、聞いてないわ」
マミ「2人がお揃いの指輪してるのなんて見てないし、結婚したいほどに好きだなんて聞いてないわ」
まどか「全部見て聞いてるじゃないですか……」
ほむら「バレても構わないって言ったのはまどかじゃない」
まどか「それはそうだけど……」
マミ「それで、その指輪、どうしたの?」
ほむら「昨日まどかが連れて行ってくれたお店で買ってきたのよ」
まどか「ほむらちゃんとお揃いのものが欲しかったので……」
マミ「ほんと、あなたたちって幸せそうね。妬けちゃうくらいよ」
ほむら「当たり前じゃない。まどかを幸せにするって決めたもの」
まどか「わたしも、ほむらちゃんを幸せにするって決めましたから」
マミ「その分じゃずっと幸せでいられそうね。……それじゃ、これの味見、お願いできるかしら?」コト
ほむら「……見た目は普通のケーキに見えるけど」
まどか「……あ、フルーツケーキだよ、これ。何か入ってる」
マミ「そう…普通のケーキに飽きた私が辿り着いたのが、フルーツケーキ……」
マミ「そしてこれは、試行錯誤の末に作り上げた…円環の理3号よ!」
ほむら(円…何ですって?)
まどか(3号って、1号と2号は誰が食べたんだろう)
マミ「ほらほら、早く食べてみて?」
ほむら「え、えぇ…それじゃ……」パク
まどか「いただきます」パク
ほむら「……」モグモグ
まどか「……」モグモグ
マミ「どうかしら?」
まどか「……うん、おいしいことはおいしいんですけど……」
ほむら「何か惜しい気はする…何が惜しいって言われるとよくわからないけど……」
マミ「そう…まだ改良の余地がありそうね」
まどか「完成したらまた食べさせてくださいね」
マミ「えぇ。頑張るわね」
マミ「……さて、そろそろパトロールに行こうかしら」
ほむら「もうそんな時間?……結構長居してしまったわね」
ほむら「私も一緒に行きましょうか?」
マミ「あらそう?それじゃ、お願いするわ」
ほむら「まどか、あなたはどうする……」
まどか「もちろん一緒に行くよ。ほむらちゃんが行くなら!」
ほむら「ふふ、そうだったわね。それじゃ、一緒に行きましょうか」
――――――
マミ「ここのはずだけど……」
ほむら「えぇ、そうみたいね……」
パトロールを始めてすぐに魔女の反応があった
その場所に来たんだけど…この場所、以前にも来たような気がする
魔女は人気の少ないところに出やすいって話だったし、ここもそういう場所だからなんだと思う
ほむら「それじゃまどか、行ってくるわね」
まどか「気をつけてね、ほむらちゃん」
――結界内――
マミ「それであなた、鹿目さんと結婚したいの?」
ほむら「何を急に……」
マミ「だってさっき、そんなこと言ってたじゃない」
ほむら「……確かに言ったけど、私たちまだ結婚できる年齢じゃないでしょう。それに……」
マミ「形だけでもいいんじゃないかしら。想いがあればそれでも十分だと思うわよ」
ほむら「考えておくわ。……さて、魔女の前まで来たけれど……」
マミ「えぇ、使い魔がいなかったわね」
ほむら「最近そんな魔女が増えてるなんて話は聞いてないけど…とにかく、行きましょう」
ほむら「さて、どんな魔女…が……」
マミ「暁美さん?どうし……」
魔女「……」
マミ「嘘…この魔女って……」
ほむら「えぇ…あなたが以前倒したはずよね…この……」
ほむら「薔薇園の魔女は……」
魔女「……」
マミ「使い魔が育てば親の魔女と同じものになるはずだけど……」
ほむら「その可能性はないわね」
マミ「どうして?」
ほむら「あなたが薔薇園の魔女を倒してからもう何ヶ月も立つ。仮に私たちがあの使い魔を見逃していたとしてもとっくに成長してるはずよ」
ほむら「それと、あの魔女の体…よく見てみなさい」
マミ「え?……何かしら、あれ……」
ほむら「私は見覚えがある…昨日戦った、黒い箱。あいつが体にくっついてる」
マミ「でもあれは倒したって……」
ほむら「私にもわからないわ。……とにかく、今はあいつを倒すことだけ考えましょう」
魔女「……!」ズアア
ほむら「来るわよ!」ヒュン
マミ「わかってるわ!」ヒュン
マミ「一度倒した相手なら、勝てないわけないわね!」チャキ
マミ「はっ!」パァン
魔女「!」ビシ
マミ「……!防がれた…なら!」スッ
マミ「これは……」ズラァ
マミ「どうかしら!?」ズドドドド
魔女「……!!」
ズガガガガガ
マミ「これでトドメよ…ティロ・フィナーレ!!」
ズドォォォォォン
マミ「これで……」
魔女「……」
マミ「な……!」
魔女「……!」ズアア
ズドォン
魔女「……!」ガギン
マミ「暁美さん!」
ほむら「マミ!あの黒い箱を狙って!」
マミ「あれを!?……わかった、やってみるわ!」
魔女「!」ズアア
ほむら「蔓は私が何とかするわ!」ズドドドド
魔女「……!」
マミ「本当にこれでトドメよ……」
マミ「ティロ・フィナーレ!!」
ズドォォォォォン
マミ「これで…どうかしら!?」
魔女「……」ズズズ
マミ「……?何、あれ?」
魔女「!!」
パァン
マミ「破裂したわ……」
ほむら「……やっぱり、今の黒い箱…昨日戦った奴だわ」
マミ「今の相手のことだったのね、暁美さんが聞いて来たグリーフシードを落とさないおかしな魔女っていうのは」
ほむら「えぇ。……それにしても、以前に戦った相手に化けるなんて……」
マミ「……念のため、みんなを集めて話しておいたほうがよさそうね」
ほむら「明日あたりにでも集まりましょうか」
マミ「そうね。……それじゃ、戻りましょう。鹿目さんを待たせていることだし」
『……』ズズズ
まどか「……あ、おかえり、ほむらちゃん!」ギュウ
ほむら「ただいま、まどか。待たせちゃってごめんなさい」ギュウ
まどか「ほむらちゃんが無事に帰ってきてくれるのが一番だから、少し待つくらいなんでもないよ」
ほむら「ふふ、そうね」
マミ「……」ニコニコ
まどか・ほむら「……あ」
まどか「マミさんと一緒だったの、忘れてた……」
マミ「あら、いいのよ?私に構わずイチャイチャしてくれても」ニコニコ
ほむら「構うわよ……」
マミ「いいのよ、私はあなたたちを見てるだけで幸せだから」ニコニコ
ほむら「見せ物じゃないのよ…とりあえず、帰りましょうか」
まどか「そうだね。……マミさん、帰りますよー」
マミ「うふふふふ」ニコニコ
帰り道、ほむらちゃんが何だか浮かない顔をしていた
わたしがどうしたの?って聞いても何でもないわ、って教えてくれなかった
今日戦った魔女のことを考えていたのかな…こんなとき、魔法少女じゃない自分が少しもどかしい
でもわたしだって、ほむらちゃんの恋人として、ほむらちゃんを支えられているはずだ
これからもずっと一緒にいられるように、ほむらちゃんを支えてあげなくちゃ
――――――
ほむら「……遅いわね……」
まどか「どこまで探しに行ったんだろうねぇ……」
マミ「今日に限って捕まらないなんてね……」
昨日戦った魔女についてみんなに話しておきたいことがあるということで、マミさんの家に集まることになった
ただ、杏子ちゃんを探しに行ったさやかちゃんがなかなか戻ってこなかった
杏子ちゃんにはあとで伝えるとして、さやかちゃんに戻るように連絡しよう、そんなときだった
ピンポーン
マミ「あ、戻って来たわね」
ガチャ
さやか「やー、遅くなってすいません。こいつが見つからなかったもんで」
杏子「用事があるなら前もって伝えてくれって。携帯なんて便利なモン持ってないんだからさ」
マミ「美樹さん、お疲れさま。……それじゃ、上がって」
さやか「おじゃましまーす」
ほむら「遅かったわね、さやか」
さやか「杏子が見つからなくてね」
まどか「杏子ちゃん、どこにいたの?」
杏子「公園で昼寝してた」
さやか「だからテレパシーも返事なくてさー。ゲーセンばっかり見て回ってたもんで……」
杏子「アタシだってゲーセンばかりにいるわけじゃねえっての」
杏子「んで、今日は何の用だい?ここらの魔法少女全員集めてさ」
ほむら「ちょっと厄介な敵が現れてね。それの情報を伝えておこうかと思って」
さやか「厄介な敵?」
ほむら「えぇ。まず最初に言っておくと、魔女かどうかわからない相手よ」
杏子「なんだそりゃ?魔女か使い魔かわからないって言うのか?」
ほむら「グリーフシードを落とさない…だけど、反応は魔女のもの。……そんな奴よ」
さやか「グリーフシードを落とさないの?そいつ」
ほむら「少なくとも、今のところはね。……それで、ここからが一番妙なところ……」
ほむら「私が最初戦ったとき、そいつは黒い箱の姿だった。……でも」
ほむら「昨日再び現れたとき、あいつはマミが以前倒した薔薇園の魔女に化けて現れた」
さやか「薔薇園の魔女って、あたしたちがマミさんの魔女退治についていったときに倒した奴ですよね?」
マミ「えぇ、そうよ。……もう何ヶ月も前よね……」
杏子「使い魔が育ったにしては間が空きすぎてるな……」
ほむら「化けて現れた魔女にはその黒い箱がくっついていて、そっちを攻撃しないと駄目みたいなの」
ほむら「そして、倒すと…膨らんで、破裂する」
さやか「わけがわからなくなってきたなぁ……」
ほむら「あの黒い箱、多分また出てくるでしょうね」
マミ「どうしてわかるの?」
ほむら「……そんな気がするのよ」
杏子「まぁ、注意するに越したことはないよな」
さやか「そうだね…見つけたら連絡して、複数で戦ったほうがよさそうだよ」
ほむら「そうね…そうしましょうか」
ほむら「これで私からの話は終わりよ」
さやか「一体何だろうね、その黒い箱ってのは」
杏子「ま、考えてもわからないだろうし、もし会っちまってもぶっ潰しちゃえばいいんだろ?」
ほむら「そんな感じでいいのかしら……」
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「何か嫌な予感がするのよ。……気のせいだと思うけど……」
まどか「みんなで戦えばきっと大丈夫だよ」
ほむら「えぇ…そうね」
杏子「話は終わったってんなら、アタシはそろそろ行くよ」
マミ「あら、せっかく来たんだからゆっくりして行ってもいいのよ?」
杏子「そいつがグリーフシードを出さないのなら、その分他の魔女倒してストックしておかないとヤバいだろ」
さやか「そう言われるとそうか……」
ほむら「私はまだいくらかあるから大丈夫だけど……」
マミ「いつ現れるかわからない以上、グリーフシードとソウルジェムの状態には気をつけてね」
ほむら「……それじゃ、私たちもそろそろ帰りましょうか」
まどか「うん、そうだね」
さやか「あたしはもうちょっとマミさんとおしゃべりしてくよ」
マミ「それじゃ暁美さん、鹿目さん、また明日ね」
ほむら「えぇ、また明日」
まどか「マミさん、おじゃましました」
――――――
ほむら「そういえば、さっき話してるときに何か書いていたみたいだったけど?」
まどか「え?あぁ、ほむらちゃんの話をメモに纏めてたの」
ほむら「私の話を?」
まどか「うん。わたし、一緒には戦えないけど、この箱が何なのかって考えることは出来るから」
まどか「少しでもほむらちゃんの力になれたらなって」
ほむら「まどかが隣にいてくれるだけで、十分力になってもらってるわ」
まどか「それでも、だよ。わたしがしたくてしてることだから」
ほむら「ありがとう、まどか」
まどか「これでもほむらちゃんの恋人だもん。……それじゃほむらちゃん、また明日」
ほむら「えぇ、また明日ね」
まどか「うーん……」
夕飯までまだ時間があったので、部屋で黒い箱について考えてみた
箱って言うくらいだから、中に何かを入れるもの?それとも、ただ単に箱の形をしてるだけ?
それと、以前倒した魔女に化ける能力……
ほむらちゃんが最初に倒した箱と、化けた箱、同じ奴なのかな
魔女みたいなのにグリーフシードを落とさない理由もわからないし……
まどか「……全然わからないよ……」
考えても考えてもわからないことだらけ
ベッドで考えていたせいか、いつの間にかわたしは眠ってしまった
――翌日――
まどか「ほむらちゃん、帰ろっか」
ほむら「えぇ。さやかは?」
まどか「さやかちゃんは上条君の付き添いで病院行くって」
ほむら「そう。……さやかも、頑張ってるみたいね」
まどか「自分がされたくないからか、わたしたちのこともあんまりからかわなくなったよね」
ほむら「そういうものよ。……それじゃ、行きましょうか」
――――――
さやか「……」
恭介「ありがとうございました、失礼します」バタン
さやか「あ、恭介、どうだって?」
恭介「うん、足もだいぶよくなってきたって」
恭介「指の方は以前と変わらず、何も悪いところはないよ」
さやか「そっか。足も早く治るといいね」
恭介「うん。ありがとう、さやか」
さやか「それじゃ用も済んだし、帰りますか」
恭介「そういえばさやかは、今日はどうして着いて来てくれたんだい?」
さやか「どうしてって言われると…着いてきたかったから、かな」
恭介「え、それだけ?」
さやか「それだけ。ダメだった?」
恭介「そんなことないけど…でも、嬉しいな」
さやか「うん、あたしも……?」
恭介「さやか?」
さやか「……」
さやか(あの壁のところにあるアレって、結界…だよね。よりによってこんなときに……)
さやか(恭介と一緒にいる以上、この場ですぐ、ってわけにいかないから……)
さやか(もう少し離れたところまで行って、用事を思い出したことにして戻って来るか)
恭介「さやか、どうかした?」
さやか「何でもないよ?ほら、早く帰ろ」グイ
恭介「さ、さやか、あんまり引っ張らないで……」
さやか(……ここまで来れば大丈夫かな)
さやか「……あ、あたし、用事があるの思い出した……」
恭介「え、用事があったの?ごめんよ、付き添ってもらって」
さやか「いいって。それで悪いんだけど、帰り、1人で大丈夫?」
恭介「うん、家までならもう大丈夫だよ」
さやか「じゃあ恭介、今日はここで」
恭介「それじゃ、また明日」
さやか「うん、それじゃ!」ダッ
恭介「……走るほどに急ぐ用事だったのかな。なんか、悪いことしちゃったな……」
――――――
さやか(結界は…あそこか)
さやか(病院の結界ってあんまりいい思い出ないけど…やるしかないか)
さやか「……」キョロキョロ
さやか「……人影なし。それじゃ行きますか」ズッ
――結界内――
さやか「……っと」
さやか「病院に被害が出る前に……!」パァァ
さやか「普通の魔女相手なら、もうあたし1人で大丈夫だもんね」
さやか「……普通の魔女だったらいいなぁ……」
さやか「……うーん、これはもしかして……」
さやか「例の箱の結界かなぁ、使い魔いないし……」
さやか「誰か近くにいるかな」
さやか(あー、誰かいませんかー?)
ほむら(さやか?何か用かしら)
さやか(お、ほむらが近くにいてくれたか。助かった)
さやか(あたし今、病院にある結界に入ったんだけどさ、多分これ例の箱の結界だと思うんだよ)
ほむら(……!わかった、すぐそっちに向かうわ。私が行くまで無茶はしないで)
さやか(わかってるよ。それじゃ、頼むよ)
さやか「ふぅ…いてくれてよかった……」
さやか「でもほむらはまどかと一緒なんだろうな…邪魔しちゃったな」
さやか「……いや、あたしは悪くない!悪いのは魔女の方だ!」
さやか「あたしだって恭介と帰るの邪魔されたし!あーもう!」
さやか「ほむらじゃないけど、人の恋路を邪魔する魔女は剣で斬られて死んじゃえ!」
さやか「……さて、1人ブツブツ言いながら魔女のところまで来たけど」
さやか「ほむらが無茶するなって言ってたし、ほむらが来るまで待ってよう」
――――――
ほむら「お待たせ、さやか」
さやか「まどかとお楽しみ中にすいませんね」
ほむら「何言ってるの。まどかも大事だけど、魔女を倒すのも大事なことよ」
さやか「さやかちゃんのことは?」
ほむら「それなりに大事かしら」
さやか「それなりか…それじゃ、例の箱とご対面と行きますか」
ほむら「えぇ。すぐ終わらせてまどかのところに帰らせてもらうわ」ジャキ
ほむら「さて、今回は何が……」
さやか「ほむら?何が出た……」
魔女「……」
ほむら「……病院の結界って、どうしてこう碌でもないのかしら」
さやか「ねぇほむら、あたしの記憶が正しければさ……」
さやか「あいつって、口から恵方巻き出してきた奴でしょ?」
ほむら「えぇ、そうよ」
さやか「……ほんと、ほむらが近くにいてくれてよかったよ」
魔女「……」
さやか「それで、早いところ倒したいんだけどさ」
さやか「あいつ、くっついてるはずの箱が見当たらないんだけど」
ほむら「……まさか、中身の恵方巻きの方、とか言わないわよね……」
さやか「仕掛けるにしても、ぬいぐるみっぽい方、マミさんが何もさせなかったような気がするし、何をするのか……」
ほむら「まぁ、あいつの方は何もしてこないと思うけど…とにかく、仕掛けるわよ」ジャキ
さやか「おうよ!」チャキ
ほむら「さやかが一緒だから…銃器で攻めましょう」バァンバァン
魔女「……!」
ほむら「……ふっ!」ゲシッ
魔女「……」
ほむら「さやか!そっち行ったわよ!」
さやか「わかってる!…うおりゃっ!」ズバン
魔女「……」
さやか「これでっ!」バシュウ
魔女「……!」ズドン
ほむら「さやか、下がって!」ジャキ
ほむら「食らいなさい!」バシュウ
魔女「……!」
ズドォォォン
さやか「……このあと、多分……」
ほむら「えぇ、出てくるでしょうね…頭、気をつけなさい」
魔女「……」ブルブル
ほむら「……来るわよ」
ズルゥ
魔女「……」ズズズ
ほむら「……やっぱりこっちだったわね」
さやか「うん…よりにもよって顔のとこにくっついてるよ……」
ほむら「とにかく、箱に攻撃を。あなた、近接だから攻撃するときは食いつかれないように注意して」
魔女「……」ウネウネ
ほむら「そういえばあのときの私、こいつを蜂の巣にしたのよね。暴走していたとはいえ……」
ほむら「今のこいつ相手だと、どうかしら……!」ジャキ
ほむら「はっ!」ズドドドド
魔女「……」ガガガガ
ほむら「……やっぱり、箱以外には思ったようなダメージがないわね」
魔女「……!」グアア
ほむら「狙いは私のようね…いいわ、相手になってやろうじゃない」
ズドドドド
さやか「今魔女はほむらを狙ってるから…横っ面から斬りつけてやろうじゃない……!」
さやか(ほむら!次、あいつが噛み付き外して元の位置戻ったとき、あたしが斬りつける!)
ほむら(わかったわ、頼むわね)
さやか「よし…あとは……」
魔女「……!」グアア
さやか「噛み付きを外して……」
魔女「……」ズズ
さやか「そこだあぁぁぁ!」ゴオオ
魔女「!」
ズガッ
さやか「はあああああ!!」グググ
さやか「……うおりゃ!!」
ズバン
魔女「……!!」
ほむら「やった……!」
さやか「どうだっ!?」
魔女「……」ズズズ
さやか「うわ、ほんとに膨らんでるよ……」
魔女「!!」
パァン
さやか「破裂した…ふぅ、何とか倒せた……」
ほむら「お疲れさま、さやか」
ほむら「でもよく倒せたわね」
さやか「斬りつけたときに思ったんだよね。何が何でも斬り抜けてやろう、って」
ほむら「思いの力って結構凄いのね……」
さやか「それを一番知ってるのはむらでしょ」
ほむら「……えぇ、そうね。私のまどかへの想いは……」
さやか(あ、なんか長くなりそう)
さやか「それより、早くまどかのとこに戻ってあげなよ」
ほむら「そうね…私としたことが、うっかりしていたわ」
さやか「ほむら、今日はありがと。助かったよ」
さやか「それと、ごめん。まどかと一緒のところ邪魔しちゃって」
ほむら「さやかだって彼と一緒にいるの邪魔されたんでしょ?なら、お互い様よ」
ほむら「悪いのは最悪のタイミングで出てくる魔女の方よ」
ほむら「まぁ…私とまどかの邪魔するつもりなら、容赦はしないけど」ゴゴゴ
さやか「まどかとのことになるとおっかないねぇ、ほむらは」
ほむら「当然よ。……さて、まどかを待たせちゃったお詫びに、何か買って帰ろうかしらね」
さやか「あたしも帰ろっかな。恭介、1人で帰しちゃったし」
ほむら「それじゃさやか、また明日」
さやか「またねー、ほむら」
『……』ズズズ
――――――
ほむら「今日の放課後、もう1度集まってほしいんだけど……」
マミ「え?」
さやか「ふぁんはっへ?」モグモグ
まどか「さやかちゃん、飲み込んでから喋ったほうが……」
さやか「……ゴクン。それで、何か話でも?」
ほむら「えぇ。あの箱について、少しわかったことがあるの」
マミ「じゃあ私の家で構わないかしら?」
ほむらちゃんから、昨日戦った箱が化けた魔女の話を聞いたあと、どうしても気になることがある
それをほむらちゃんに話してみたら、それならもう1度全員集まって話すべきね。って
少し気になっただけなんだけどなぁ
ほむら「問題ないわ。さやか、杏子のこと、お願いね」
さやか「ちょ、またあたし!?」
ほむら「マミは家主だから無理に決まってるでしょう?」
さやか「そういうほむらはどうなのさ」
ほむら「私?私はまどかと離れるわけにいかないから」
さやか「ただまどかと離れたくないだけなんでしょ?」
ほむら「えぇ」
さやか「こいつ…はぁ、わかりましたよ、あたしが行きますよ」
ほむら「ごちそうさま。今日も美味しかったわ、まどか」
ほむらちゃんが空になった弁当箱をわたしに返す
最初はもっとほむらちゃんと仲良くなるために始めたことだったけど、今もほむらちゃんのお弁当を作って持ってきている
ほむらちゃんに美味しいって言ってもらえると、すごく嬉しい
まどか「よかった。今日はちょっと急いで作ってたから、心配だったの」
ほむら「まどかが私のために作ってくれてるのなら、何だって美味しいに決まってるじゃない」
まどか「ほむらちゃん……」カァ
さやか「ほむら、あんたまだまどかに弁当作ってもらってたの?」
ほむら「えぇ。以前1度だけ自分で作ったんだけど……」
マミ「けど?」
ほむら「……どうして上手くいかないのかしらね。爆弾作成ならお手の物なのに」
さやか「まずその認識をどうにかしないとずっとそのままだと思うよ」
キーンコーンカーンコーン
さやか「……っと、それじゃ残りの授業も頑張りますか」
マミ「それじゃ放課後、私の家でね」
ほむら「えぇ、また後で」
まどか「ねぇ、ほむらちゃん」
ほむら「まどか?何かしら」
まどか「何もみんなを集めることないような…わたしも、ちょっと気になったってだけだし……」
ほむら「今は少しでも情報が欲しいの。気になったことがあるなら、みんなに話すべきだわ」
まどか「……うん、そう…だね」
ほむら「ほら、教室に戻りましょう」
――放課後――
ピンポーン
マミ「いらっしゃい」
まどか「マミさん、おじゃまします」
ほむら「連日悪いわね。次回は私の家にするわ」
マミ「いいのよ、気にしないで」
ほむら「あとはさやかと杏子が来るのを待つだけね」
まどか「そうだね」
マミ「あら、今日はあの指輪してないのね」
ほむら「え?あぁ、今日はまっすぐここに来たから……」
マミ「ならここでしてもいいのよ?」
ほむら「……どうせまた何か言うつもりでしょう?」
マミ「え?何も言うつもりなんてないわよ?見てるだけで十分だから」
ほむら「それもどうなのよ…まぁいいわ、少し待ってなさい」ゴソゴソ
マミさんに茶化されつつも、ほむらちゃんは指輪を出して指にはめる
わたしも指輪を出して、ほむらちゃんと同じ指にはめた
マミ「……やっぱり素敵ね。私も今度佐倉さんと何かお揃いのもの買ってみようかしら」
ほむら「杏子と?」
マミ「だってあなたたちは恋人同士でしょ?美樹さんも好きな人がいるわけだから、あとはもう佐倉さんしかいないじゃない」
まどか「杏子ちゃんとかぁ…リボンとか?」
ほむら「そうね…ちょっとイメージしにくいわね」
マミ「佐倉さんだって女の子よ?可愛くなりたいに決まってるわ」
ピンポーン
マミ「あら、噂をすれば…ね」
ほむら「今日は早かったわね」
まどか「この前が特別かかりすぎただけだと思うよ」
さやか「今日はテレパシーに返事してくれたのですぐ捕まりました」
杏子「連日何だってんだよ。アタシだってやることが……」
まどか「ごめんね、杏子ちゃん」
杏子「あー、いや、まどかは悪くねぇよ。……仕方ねぇ、聞いてやるか」
まどか「ありがとう、杏子ちゃん」
マミ「それで暁美さん、話というのは……」
ほむら「今回は私からではなく、まどかからよ」
さやか「え?まどかから?」
ほむら「まどかがあの箱について気がついたことがあるみたいだから」
杏子「へぇ…一体なんだ?」
まどか「うぅ……」
みんなの視線がわたしに集まる。わたしとしてはほむらちゃんに話して終わりのつもりだったんだけど……
集まってもらった以上、みんなにも聞いてもらうことにした
まどか「えっと、最初に言っておくけど、あくまでわたしが気になったことだから、合ってるかどうかは……」
マミ「わかってるわ。可能性のひとつとして聞かせてもらうわね」
まどか「それじゃ、話します。わたしが、気になったことは……」
まどか「あの箱、ワルプルギスの夜の前に出てきた魔女に化けているんだと思います」
まどか「化けてるというより…その魔女を再現してるような……」
杏子「どういうことだ?」
まどか「あの箱、魔女の姿だけじゃなくて…結界が現れる場所も、以前と同じ場所に現れるんです」
まどか「この間の魔女も、以前マミさんに連れられて行った場所と同じ所でしたし……」
まどか「今回も以前病院に現れた魔女が、また病院に……」
さやか「そう言われると確かに……」
まどか「だから、この先もあの1ヶ月に出てきた魔女を、順番に再現するんじゃないかって……」
まどか「えっと、これで終わり…です」
ほむら「……」
マミ「……」
杏子「……」
まどか「あ、あれ?」
ほむら「……その話が本当だとして」
ほむら「その箱、どこまでを再現するのかしら……?」
さやか「どこまで?」
ほむら「えぇ。ワルプルギスの夜以前の魔女を再現しているのなら……」
ほむら「その再現はどこまで続くのか、って」
杏子「そうか…その再現の終点がわからないってことは……」
マミ「最悪、ワルプルギスの夜まで再現される可能性があるってことよね……」
さやか「ま、またあんなのが出てくるなんて勘弁してほしいよ……」
ほむら「……病院の次って、確か工場だったわよね」
マミ「えぇ、確かそうだったはずだけど」
ほむら「次の再現が工場だったとしたら、その話、本当だと見ていいと思うわ」
ほむら「凄いじゃない、まどか。よく気づいたわね」
まどか「そ、そうかな……」
ほむら「えぇ、そうよ。他の誰も気がつかなかったんだから」
まどか「うぇひひ、ほむらちゃんの力になれてよかったよ」
ほむら「これはまどかにお礼しないとね」
まどか「え?」
ほむら「これがお礼…よ」
そう言ってほむらちゃんは、わたしのほっぺにキスしてくれた
嬉しいけど、何もみんな見てるところでしなくても……
まどか「あ、ありがとうほむらちゃん……」カァ
ほむら「ふふ、やっぱりまどかは可愛いわね」
さやか(あー、胸焼けしそう)
マミ(やっぱりこの2人、見てるだけで幸せになるわね)
杏子(おかしいな、今日は砂糖入れてないはずなんだけどな)
ほむら「それじゃ、話はこれでおしまいにしましょう」
杏子「終わったのなら、アタシは帰るよ」
マミ「この前もそうだったけど、もっとゆっくりして行っていいのよ?」
杏子「アタシだってやることがあるんだよ。それじゃあな」バタン
マミ「……佐倉さん、何してるのかしら」
ほむら「あまり話したくないのなら、無理に聞くことじゃないわ。悪いことしてるでもないだろうし」
マミ「そうね」
まどか「ほむらちゃん、わたしたちも帰ろっか」
ほむら「えぇ、そうね。さやかは?」
さやか「あたしは今日もマミさんとおしゃべりしてから帰るよ」
まどか「それじゃマミさん、おじゃましました」
――――――
まどか「ねぇ、ほむらちゃん」
ほむら「何?」
まどか「今日のあの話、言ってよかったんだよね?」
あの話をしたことによって、変にみんなを混乱させたんじゃないか
心配になったわたしは、ほむらちゃんにそう聞いてみた
ほむら「えぇ。言ったでしょ?少しでも情報が欲しいって」
まどか「そっか…それならよかった」
わたしが気がついたこと、ほむらちゃんの役に立ったみたいでよかった
わたしは一緒には戦えないから、こういうことでほむらちゃんの力にならないと
だけど、ほむらちゃんから箱の話を聞いてから、たまに不安に思うことがある
どうしてだかわからないけど、ほむらちゃんが遠くへ行っちゃうような気がして……
ほむらちゃんがわたしから離れて行くことなんてない。そう思い、わたしはほむらちゃんの手を握った
――――――
ほむら「これで、止めよ!」ズドォン
魔女「!!」
さやか「やった!」
魔女「……」ズズズ
マミ「……だんだん風船に見えて来るわね」
魔女「!!」
パァン
ほむら「破裂するところもそっくりよね……」
マミ「お疲れさま、2人とも」
ほむら「……箱の魔女と言うくらいだから、今回と何か関係あるかもと思ったけど……」
マミ「えぇ…箱の魔女も、謎の箱に再現されていたわね」
ほむら「ここに魔女が再現された以上、まどかの話、どうやら当たってるようね……」
さやか「しかし、よく気がついたなぁ、まどかの奴も」
ほむら「ふふ…さすが私のまどかね」
マミ「暁美さんにそこまで想ってもらえるなんて、鹿目さんも幸せ者ねぇ」
さやか(あー、もう疲れてるし、ツッコまなくていいか……)
さやか「それより、魔女倒したのなら帰ろうよ」
ほむら「それもそうね」
マミ「それじゃ2人とも、もう夜だし、気をつけてね」
さやか「それじゃほむら、マミさん、お疲れさまー」
ほむら「また明日ね」
『……』ズズズ
――翌日――
ほむら「そういうわけで、まどかの推測、当たっていたわ」
まどか「えぇー…なんかいまいち嬉しくないような……」
ほむらちゃんから、昨日同じ所に、再現された魔女が現れたって話を聞かされた
こんなこと、わたしとしては当たってほしくはなかったんだけど……
マミ「でも、おかげで対策は立てやすくなったわ。ありがとう、鹿目さん」
まどか「い、いえ……」
ほむら「ただ、場所と中身は同じだけれど、出てくるまでの日数までは同じというわけではないみたいね」
マミ「そうね…1日おきくらいかしら?」
さやか「昨日倒したから明日あたりかな。……あれ、あの魔女の次ってなんだっけ?」
ほむら「影の魔女かしら。あなたが倒した奴よ」
さやか「……あー、あの真っ黒い奴か」
ほむら「以前はさやかが捨て身で倒したんだったかしら。……一応、杏子も呼んだ方がよさそうね」
マミ「それに再現の終わりもわからないし…早く終わってほしいわね」
さやか「それじゃあたしはそろそろ帰るね」
マミ「あら、美樹さんが早々帰るなんて珍しいわね」
さやか「今日は恭介の練習の成果を聞かせてもらえるということなので……」
ほむら「あぁ、そういう…さやかも私たちとばかりじゃなくて、彼と一緒にいてもいいのよ?」
さやか「そうも行かないよ。魔法少女としての使命だって大事なんだから」
ほむら「あなたがいいなら何も言わないわ。振り向いてくれなくても知らないわよ」
さやか「くそー、余裕たっぷりな発言しおって」
ほむら「そりゃ私たちは相思相愛ですもの。そうでしょ、まどか」
まどか「うん、ほむらちゃん」
さやか「やっぱ前世からの恋人同士にゃ敵わないな…それじゃ、おじゃましましたー」バタン
マミ「そういうあなたたちだって、もっと2人の時間作ってもいいのよ?」
ほむら「そうね…私が最初の箱を倒して以来、なかなか時間を作れないし……」
まどか「……そうだ、ほむらちゃん」
ほむら「何?」
まどか「今度わたしの家にお泊りに来てよ。そうしてくれたら、その日は1日一緒にいられるよ」
ほむら「そうね…それじゃ今度の休みの日にでもお邪魔しようかしら?」
まどか「うん、待ってるよ」
ほむら「それじゃ、今日はこれで帰るわね。明日あたりにもきっとまた箱が出てくるだろうから、そのときはお願いするわね」
マミ「えぇ、わかったわ」
まどか「あ、わたし、マミさんとお話してから帰るよ」
ほむら「あらそう?じゃあまた明日ね」
バタン
マミ「鹿目さんが残るなんて珍しいわね。いつも暁美さんと一緒に帰ってるのに」
そう言われると、最近は来るときも帰るときもほむらちゃんと一緒だった。別におかしなことではないけど
この話、ほむらちゃんにはさすがに言いづらい。ほむらちゃんはもう玄関先にいないだろうし、マミさんに話を聞いてもらうことにした
まどか「今日はちょっと相談がありまして……」
マミ「相談?暁美さんとのことかしら?」
まどか「そうです。……わたし、ほむらちゃんと……」
――――――
杏子「おーす、来たぞー」
ほむら「わざわざごめんなさい、呼び出したりして」
杏子「んー、いや、ひとまず今やってることは区切りがついたし、一旦戻ってくるつもりだったから問題ないさ」
さやか「杏子も来たし、これで全員揃ったけど……」
マミ「今のところ魔女の反応は見られないわね」
まどか「でもどうするの?出てくるまでここで待つ?」
ほむら「……いえ、先に移動しておきましょう。さやか、場所、わかるかしら?」
さやか「……多分」
ほむら「それじゃ、行きましょうか。まどかも一緒に来るのよね?」
まどか「え、何でわかったの?」
ほむら「まどかの考えてることくらいお見通しよ」
まどか「うぇひひ、さすがほむらちゃんだよ」
――――――
杏子「……っと、現れたな」
さやか「1度倒してるとはいえ、あのときのあたしのやり方じゃ参考には……」
杏子「ただの特攻だしな」
さやか「返す言葉もございません……」
マミ「今回は美樹さん1人じゃないから大丈夫よ」
ほむら「それじゃまどか、行って来るわね」
まどか「ほむらちゃん、気をつけてね」
ほむら「えぇ、わかってるわ。すぐ終わらせて帰ってくるから、少し待っていて頂戴」
まどか「うん!」
さやか(相変わらず甘いなぁ。そろそろ味覚に出てきそう……)
マミ(ほんと仲がいいわねぇ。鹿目さんのあの話、なんとかならないかしら……)
杏子(アタシ、おかしくなったか?あいつらの周りにピンクい物が見えるような……)
ほむら「それじゃ、行くわよ」
マミ「えぇ」
さやか「うん」
杏子「おう」
まどか「みんな、がんばってね!」
ほむらちゃんたちは結界に入って行った
みんなが帰って来るまで、結界の前で待つことにした
――――――
まどか「ほむらちゃん、大丈夫かな……」
ほむら「まどか」
まどか「あ、おかえり、ほむらちゃん!」
ほむら「ただいま、まどか」ギュウ
まどか「お疲れさま、ほむらちゃん」ギュウ
ほむら「あぁ…こうしてると疲れが癒されるわ……」
まどか「うぇひひ、大げさだよ」
――結界内――
杏子「……今回も使い魔はなし、か」
さやか「なんで使い魔がいないんだろうね?」
ほむら「魔女を再現してるだけであって、使い魔を生み出す能力は持ってないんじゃないかしら」
ほむら「まぁ元々が魔女なのかわからない奴だし……」
さやか「うーん、使い魔がいない分楽だからいいんだけど」
マミ「ほら、そんなこと言ってる間に着いたわよ」
さやか「そういえば、箱も魔女も真っ黒じゃん。見てわかるかなぁ」
ほむら「実際に見てみればいいじゃない。行くわよ」
魔女「……」
さやか「……うん、思ったよりわかっちゃうね。しっかりくっついてるよ」
ほむら「あいつは近づくと枝のようなもので攻撃してくるから、さやかと杏子は注意して」
杏子「あぁ、さやかを串刺しにしたアレか」
さやか「うっ、もうあんな戦い方しないよ……」
ほむら「それじゃ……」ジャキ
ほむら「行くわよ!」ズドドドド
魔女「……!」ワサワサ
杏子「おーおー、ワサワサ生やして来たな。さやか、行くぞ!」ダッ
さやか「うん!」ダッ
マミ「なるべくこっちで枝は掃うけど、残りはそっちで何とかして!」パァン
さやか「わかりました!」
魔女「……!」ワサワサ
さやか「そりゃっ!」ズバン
杏子「うりゃ!」ズバン
さやか「てい!」ズバン
杏子「おらっ!」ズバン
さやか「……ねぇ、杏子!」ズバン
杏子「なんだ!?」ズバン
さやか「これ、進めないんだけど!?」ズバン
杏子「知るか!痛覚遮断の特攻以外に何か作戦あんのか!?」ズバン
さやか「ない!」ズバン
ほむら「……なかなか進めないようね」ズドドド
マミ「えぇ、そうみたいね。それなら……」
マミ「一気に薙ぎ払ってしまえばいいのよ!」
マミ(美樹さん、佐倉さん!射線から退避して!)
さやか(わかりました!)
杏子(了解!)
マミ「行くわよ!ティロ・フィナーレ!!」
ズドォォォォォン
魔女「!」
杏子「よっしゃ、今のでだいぶ減ったな」
さやか「よし、今だ!」ダッ
杏子「あ、おいさやか!1人で突っ込むなって!」ダッ
さやか「一気に魔女を……!」
魔女「……!」ワサワサ
さやか「左右から……!」
魔女「!」
ズドン
杏子「さやか!!」
さやか「大丈夫…やられて、ないから……!」グググ
杏子「左右両方を剣で受け止めたのか…無茶しやがって」
さやか「杏子、今のうちに魔女を……!」グググ
杏子「あぁ、わかってる!」ダッ
魔女「……!」ワサワサ
杏子「遅いよ!」
魔女「!」
杏子「この箱を叩けばいいんだっけか……」
杏子「うらぁぁぁ!!」ズバン
魔女「!!」
杏子「……よし」
ボロボロ
さやか「枝が崩れて…ふぅ、助かったよ、杏子」
魔女「……」ズズズ
杏子「話には聞いてるけどよ……」
魔女「!!」パァン
杏子「……ほんと、変な奴だな」
さやか「なんで破裂するんだろうね……」
杏子「さぁな……」
マミ「みんな、お疲れさま」
ほむら「さやかがまた串刺しになったかと思ったわ」
さやか「そう何度も串刺しにされてたまるもんか」
杏子「少しは成長したんだろうよ」
さやか「少しって何さ、少しって」
マミ「とりあえず結界を出ましょう。外で鹿目さんが待ってるんだから」
ほむら「そうよ、まどかを待たせてるのよ。……まどか、今帰るわ……!」スタスタ
さやか「あっ、ちょ、待ってよー!」ダッ
杏子「置いてくなー!」ダッ
『……』ズズズ
――――――
まどか「ほむらちゃん、大丈夫かな……」
ほむら「まどか」
まどか「あ、おかえり、ほむらちゃん!」
ほむら「ただいま、まどか」ギュウ
まどか「お疲れさま、ほむらちゃん」ギュウ
ほむら「あぁ…こうしてると疲れが癒されるわ……」ギュウ
まどか「うぇひひ、大げさだよ」ギュウ
さやか「……」
杏子「……」
マミ「うふふふ」ニコニコ
さやか(結界を抜けた先は、あの2人の空間でした……)
杏子(あー、もう疲れたし帰ろうか……)
マミ「うふふふ」ニコニコ
まどか「……あ、みんな、おかえり!」
さやか「……うん、ただいま」
杏子「あぁ……」
マミ「うふふふ」ニコニコ
杏子「それじゃアタシは帰るよ……」
マミ「うふふふ…あ、佐倉さん。ちょっとだけ家によってほしいの。話したいことが……」
杏子「はぁ?今日はもう……」
マミ「美味しいケーキ、出しちゃうわ」
杏子「行くよ」
さやか(チョロい……)
ほむら(チョロいわね……)
まどか(杏子ちゃん……)
杏子「そういうわけで、アタシはマミん家に行くからマミと一緒に帰るよ」
さやか「あたしも今日はまっすぐ家に帰るか」
ほむら「じゃあ今日はここで解散ね」
まどか「みんな、また明日!」
さやか「またねー」
杏子「それで話って……」
マミ「それは家に着いてからのお楽しみよ」
――――――
まどか「ねぇ、ほむらちゃん」
ほむら「何?」
まどか「ほむらちゃんは、もしわたしと離ればなれになっちゃったら、どうする?」
ほむら「私とまどかが?離ればなれになるわけないじゃない」
まどか「もしも、だよ」
ほむら「そうねぇ…何が何でもまどかを取り戻す、かしら……」
ほむら「まどかはどうなの?」
まどか「わたしもほむらちゃんと同じ。絶対にほむらちゃんを取り戻す、って」
ほむら「ふふ、ありがとう、まどか」
ほむら「でも、私はまどかを離さないわ。あの日、そう誓ったじゃない」
まどか「うん。わたしも、ほむらちゃんは絶対に離さない」
ほむら「なら、離ればなれになる心配はないわ」
まどか「そうだよね。ごめんね、変なこと聞いて」
ほむら「別に構わないわ。……でも、どうして急にこんな話を?」
まどか「ちょっと聞いてみたかっただけだよ」
ほむら「そう……?それならいいけど」
マミさんに話した相談、協力するって言ってはくれたけど、どうするんだろう
杏子ちゃんを引き止めてたけど、杏子ちゃんにも協力してもらうのかな
この話、ほむらちゃんには、なるべく内緒にしておきたい
きっとその方がいい。そう思うから……
――――――
マミ「美樹さん、どうかしら?円環の理6号の出来は?」
さやか「……マミさん」
さやか「……ものすごいウマいですよ!何ですかこれ!?」
さやか「あたし、こんな美味しいケーキ、初めて食べましたよ!」
マミ「あぁ…とうとう完成したわ…円環の理……」
さやか(円環の理って何だろう……)
マミ「ほら、暁美さんも食べてみて?」
さやか「何?ほむら、あんたまだ食べてなかったの?」
ほむら「……」ブツブツ
さやか「おーい、ほむらー?」
ほむら「……」ブツブツ
マミ「別にもう会えなくなるわけでも別れたわけでもないのに……」
ほむら「……」ブツブツ
さやか「食べないんならあたしが食べるよ?」スッ
ほむら「……」サッ
さやか「……ならさっさと食べなさいよ」
ほむら「……」
ほむら「はぁ……」
ほむら「まどか…私じゃなくて杏子がよかったの……?」
マミ「あら、やっと喋ったわ」
さやか「だから今日はあの2人でちょっと用事があるだけだって」
ほむら「杏子がまどかに惚れたらどうしよう…まどかは可愛いから……」
マミ「それはないと思うけど……」
ほむら「あんな別れ方されたら…私、もう……」
さやか「だから恋人として別れたわけじゃないでしょうに」
――――――
まどか「ほむらちゃん、今日は杏子ちゃんと行く所があって……」
ほむら「じゃあ私も……」
まどか「ほむらちゃんは今日は待っていてくれないかな?ごめんね」
ほむら「え?そんな、まどか……?」
まどか「それじゃ杏子ちゃん、行こっか!」
杏子「お、おう……」
ほむら「……ふふ、杏子…あなたも私の敵なのね…ふふ……」フラフラ
杏子「……ほむら、大丈夫か?」
まどか「……さやかちゃんとマミさんにお願いしておくよ」
――――――
ほむら「はぁ…まどか、早く帰って来て……」
ほむら「はぁ…ケーキ、美味しいわね……」モグモグ
マミ「そんな状態で言われても……」
ほむら「はぁ……」
さやか「夕方頃には帰って来るって言ってたし、もうすぐ帰って来るって」
ほむら「まどか…あなたは私の天使よ……」
マミ「……大丈夫かしら?」
さやか「だと思いたいです……」
ほむら「……それはそうと……」
ほむら「まどかと杏子はどこへ出かけたのかしら?」
さやか「え!?え、えーっと、それは……」
マミ「そ、それはね、ほら……」
ほむら「何?言えないことなの?……やっぱり尾行するべきだったかしら」
さやか「そ、そんなんじゃないって!だからさ、あの……」
マミ「あ、暁美さんへの贈り物を買いに行ったのよ!」
ほむら「私への?どうして杏子と?」
マミ(美樹さん、合わせて!)
さやか(わかってます!)
さやか「な、何だかんだ言って杏子はほむらのことよく見てるんだって!」
マミ「そうよ!だから鹿目さんは佐倉さんと一緒に出かけたのよ!」
さやか「ほ、ほんとはほむらには言わないでって口止めされてたんだからね!」
マミ「鹿目さんには言っちゃダメよ!」
ほむら「……そうだったの。ふふ、まどかったら……」
さやか(……これ、バレたらヤバそうですね)
マミ(だ、大丈夫よ、きっと……)
マミ「それじゃ、私は夕飯の買い物に行って来るわね。あなたたちはどうする?」
ほむら「私も行くわ。気分転換くらいにはなるでしょうし」
さやか「じゃああたしも行こっかな。あたし1人で留守番ってのも寂しいしね」
マミ「今日は駅の方で安売りしてるところがあったはずだから、買い物してる間に帰って来るわよ」
ほむら「そう。それじゃ行きましょう」
さやか「……ほんと、こいつは……」
マミ「ふふ。それじゃ、行きましょうか」
――――――
さやか「マミさん、今日は何にするんですか?」
マミ「うーん、何にしようかしら……」
さやか「今日、両親が帰ってこないんで、夕飯をご馳走してもらえると助かるんですが……」
マミ「あら、そうなの?じゃあ夕飯、みんなにご馳走しちゃおうかしら」
さやか「やったー!」
ほむら「悪いわね」
マミ「いいのよ。みんなで食べるご飯は美味しいもの」
ほむら「それはそうね。私も夕飯は1人だから、どうしても適当に……」
さやか「具体的には?」
ほむら「もやしの炒め物とか」
さやか「それでもカロ○ーメイトから進歩したんだ」
ほむら「まどかに怒られたから……」
ほむら「いいのよ、料理が出来なくたって。まどかが美味しいもの作ってくれるから」
さやか「まどか頼みってのもどうなのよ。毎回夕飯作らせるわけに行かないでしょ?」
ほむら「夕飯の度に家まで来てもらうわけには…そうね、一緒に住めばいいのよ」
さやか「……ダメだこいつ」
マミ「たまには暁美さんが何か作ってあげたら?きっと驚くわよ」
ほむら「……考えておくわ」
さやか「もー、あんたはすぐそうやって……」
杏子(ほむら!さやか!マミ!誰か聞こえてねぇか!?)
マミ「あら……」
さやか「杏子からだ。どうしたんだろう?」
ほむら(杏子?何かあったの?)
杏子(ちょっと手を貸してくれ!今、箱の再現した魔女と戦ってる!)
ほむら(わかった、すぐに行くわ。結界はどこにあるの?)
杏子(駅だ!まどかと歩いてたら急に出てきやがって、一緒に飲み込まれちまった!)
ほむら(ちょっと!まどかも結界に入っちゃってるの!?)
杏子(すまねぇ!文句は後でたっぷり聞いてやるから、とにかく早く来てくれ!)
ほむら(えぇ、わかったわ!)
ほむら「2人とも、急ぐわよ!……まどか、無事でいて……!」ダッ
さやか「あ、待ってよ、ほむら!」ダッ
マミ「ちょっと、暁美さん!」ダッ
――――――
マミ「……ここね」
さやか「人目につかないうちに入ったほうがよさそうですよ」
マミ「えぇ、そうね」
ほむら「……」
さやか「ほむら?どうかした?」
ほむら「……何でもないわ。行きましょう」
――結界内――
さやか「相変わらず使い魔はなし、っと」
マミ「とにかく早く佐倉さんと鹿目さんのところへ……!」
ほむら「まどか…今行くわ!」ダッ
さやか「あ、また!待てって!」ダッ
マミ「あぁもう、置いてかないで!」ダッ
ギィン
杏子「クソッ……!」
杏子「コイツ…箱は見えてるのに、攻撃が届かねぇ……!」
まどか「杏子ちゃん、大丈夫!?」
杏子ちゃんの攻撃が魔女に弾かれる
杏子ちゃんと出かけた帰り…駅の改札を抜けて、出口へ歩いていたら、急に現れた結界に飲み込まれてしまった
杏子「あぁ、大丈夫だ、心配すんな」
杏子「もうすぐほむらたちが来てくれるんだ。それまでは…時間稼ぎさせてもらうよ!」
――――――
さやか「杏子、来たよ!大丈夫!?」
杏子「あぁ、なんとかな」
マミ「鹿目さんも大丈夫?」
まどか「大丈夫です、杏子ちゃんが魔法で守っててくれたので……」
杏子ちゃんがみんなに連絡したあと、すぐにみんなが来てくれた
ほむらちゃんの姿が見えたとき、すごくほっとした
ほむら「まどか、よかった……」
まどか「ごめんね、ほむらちゃん…心配かけちゃって」
ほむら「いいのよ。あなたが無事なら……」
まどか「ほむらちゃん……」
さやか「あんたら、後にしなさいって!ここ、結界の中だってわかってるでしょ!」
ほむら「よくもまどかを危ない目に遭わせてくれたわね…一体何の再現……」
ほむら「……」
杏子「ほむら?どうした?」
ほむら「……この箱、過去の魔女の再現のはずでしょ……?」
ほむら「……なら、どうして…どうして、こいつが出てくるのよ…この……」
ほむら「人魚の魔女が……!」
魔女「……」
ほむら「どういうことなの…この時間軸ではこいつは現れてないはずなのに……」
さやか「ほむら、どうしたのよ!?」
ほむら「なら、あの箱は何なの…?どうして、現れてないはずの魔女を知ってるの……?」
マミ「暁美さん、しっかりして!」
ほむら「何かおかしい…ありえないわ、こんなの……」
まどか「ほむらちゃん!」
杏子「……」
パーン
さやか「え?」
マミ「あら?」
まどか「あれ?」
ほむら「痛…杏子……?」
杏子「……ほむらがこれだけ取り乱すってことは、何かがあった魔女なんだろうけどよ……」
杏子「今は魔女を倒すのが先だろ?話なら後で聞いてやるからよ」
ほむら「……ごめんなさい、少し混乱してたようね」
ほむら「杏子の言った通り、まずは魔女を倒すわ……!」
魔女「……!」
杏子「さやか、行くぞ!」ダッ
さやか「おう!」ダッ
杏子「アタシは左、さやかは右だ!でかい分、攻撃が重いから気をつけろよ!」
さやか「了解!剣がでかくたって、さやかちゃんには敵わないって教えてあげるよ!」
マミ「暁美さん、こちらも攻撃するわよ!」
ほむら「えぇ、わかってるわ」
まどか「ほむらちゃん、がんばって!」
魔女「……!」
ズドン
さやか「うお、危なっ!」サッ
杏子「さやか、気をつけろ!」ギィン
さやか「ごめん!……しかし、2刀流とは、戦いにくいな……」
杏子「文句言ってたって仕方ねぇだろ!」
さやか「それはそうだけど…さ!」ギィン
杏子「それにしてもよ……」
杏子「何で頭の上なんて一番高いとこにあるんだよ!?」
さやか「文句言ったって仕方ないじゃん!」
杏子「それはそうだけど…よ!」ギィン
マミ「……」パァン
マミ「……効いてるのか効いてないのかいまいちわからないわね」
ほむら「……今話しかけないで、気が散るから……」
まどか「……ほむらちゃん、何そのすごい銃……」
マミ「狙撃銃…かしらね……」
ほむら「……そこっ!」ズドォン
魔女「……!」
ガギィン
ほむら「……頭の上だなんて狙って下さいと言ってるような場所にあるけど」
ほむら「そう簡単に当てさせてくれないわね……」
さやか「防御に回った……!今だ!」ダッ
杏子「バカ!飛び上がるな!」
さやか「え?」
魔女「……!」ブォン
さやか「な…ぐっ」ギィン
ドゴォォォン
杏子「さやか!大丈夫か!?」
さやか「……うん、なんとか……」
杏子「飛び上がれば叩きつけられるってわかってるだろ」
さやか「それなら、もう少し長く防御させればいいんだ……!」
さやか(ほむら!頭の箱にじゃんじゃん撃って!)
ほむら(さやか?)
さやか(両手を防御に使わせて、その間に箱を叩けばいいんだ!)
ほむら(そういうこと…弾幕は私の得意分野。任せなさい)
さやか(頼んだよ!)
ズドドドド
魔女「……!」ガガガガガ
さやか「よし、今だ!」ダッ
さやか「うおりゃあああ!!」ガギン
魔女「!」
さやか「うおおおお!!」グググ
魔女「!」ブンブン
杏子「うお、暴れだした!さやか、早いとこ斬っちまえ!」
さやか「わかってる!」ギリギリ
魔女「……!」
さやか「せい!!」ズバン
マミ「魔女ごと真っ二つ…これは倒したわね……!」
魔女「……」ズズズ
杏子「そんでお決まりの……」
魔女「!!」パァン
ほむら「……破裂ね」
さやか「ふ…またつまらぬものを斬ってしまった……」
杏子「何言ってんだお前」
マミ「さて…暁美さん」
ほむら「……」
マミ「話してもらえるかしら?あの魔女が何なのか」
マミ「あなたがあそこまで取り乱した理由を……」
ほむら「……わかってるわ」
杏子「こんなところで立ち話するのもアレだ。マミん家にでも行こうぜ」
マミ「そうね。それじゃ、行きましょう」
『……』ズズズ
――――――
ほむら「……と、こういう訳よ」
さやか「……」
杏子「なるほどね……」
マミさんの家で、ほむらちゃんはあの魔女についての話をした
あの魔女…人魚の魔女は、さやかちゃんが魔女化したときの姿らしい
別の時間のさやかちゃん、魔女になっちゃったんだ……
それをほむらちゃんが何度も倒して来たと聞いたとき…少し、切なかった
マミ「あの魔女が美樹さんの魔女化した姿だったなんて……」
まどか「で、でも!さやかちゃんはちゃんとここにいるよ!?」
ほむら「えぇ、そこがわからないのよ。どうしてこの時間軸では存在しない魔女を、あの箱は知っていたのか……」
ほむら「……もしかして、何かが足りないのかもしれないわね」
マミ「足りない?」
ほむら「えぇ。ワルプルギスの夜以前の魔女を再現していることは間違いないと思うけど……」
ほむら「単にそれだけじゃなくて…何か他に再現するにあたっての条件というか……」
さやか「それにあいつがグリーフシードを出さない理由もわからないままだよねぇ……」
杏子「あー…わけわかんねぇな……」
ここに来てまたわからないことが増えてしまった。みんな頭を抱えて唸っている
わたしも自分で纏めたメモを見ながら考えてみたけど、やっぱりわからなかった
ほむら「……まどか」
まどか「え、何?」
ほむら「……ごめんなさい。明日明後日と休日だけど……」
ほむら「あなたの家に泊まりに行く余裕、ないかも……」
まどか「……こんなときだもん。仕方ないよ」
まどか「でも、この問題が解決したら…来てほしいな」
ほむら「えぇ。それまでお預けね」
ほむら「とりあえず私は今回の件についてもう1度考え直してみるわ」
ほむら「そういうわけで、今日はこれで失礼するわ」
マミ「え?えぇ……」
ほむら「まどか、申し訳ないんだけど、今日は……」
まどか「わかってるよ。今日はわたし1人で帰るよ」
ほむら「本当にごめんなさい。……それじゃ、また」バタン
そう言ってほむらちゃんは慌しく出て行った
ほむらちゃんと一緒に帰れないのは寂しいけど、今回ばかりは仕方ない
杏子「……ダメだ。考えても考えてもさっぱりだな」
さやか「それっぽいものも浮かばないね……」
まどか「そうだね…何か他の話題にしようよ」
マミ「そうね…そうだ、丁度暁美さんもいないし、あの話を……」
さやか「お、そうですね。今日のまどかと杏子の話も聞かないとだし」
杏子「アタシは頼まれただけだからな……」
さやか「えー?んじゃまどか、どうだったよ?」
まどか「えーっと……」
――翌日――
ほむら「今日は来てくれてありがとう……」
ほむら「昨日一晩で私が考えた仮説を話すわ……」
まどか「ほむらちゃん、大丈夫?あんまり寝てないんじゃ……」
ほむら「大丈夫…話が終わって、あなたたちが帰ったら寝るから……」
ほむらちゃんから話があるというので、みんなでほむらちゃんの家に来た
ほむらちゃんはあまり寝てないらしく、なんだか疲れた顔をしていた
ほむら「それじゃ私の考えを話すけど…私の話もまどかのときと同じ、可能性のひとつして聞いて頂戴」
さやか「わかった」
ほむら「それじゃ…始まりは、私が最初の箱を倒したことなんだと思う」
ほむら「あの箱は…最初の箱を倒した魔法少女の記憶や経験だとか、そういった情報から魔女を再現しているんじゃないかしら」
ほむら「実際にその情報をどうやって私から読み取ったかまではわからないけど……」
ほむら「再現期間は…恐らく『私が2度と戦いたくないと思ってる魔女』が出尽くすまで」
杏子「ほむらが2度と戦いたくない魔女って……」
ほむら「えぇ…ワルプルギスの夜と、それ以前に出てきた魔女たち……」
ほむら「倒せる倒せないじゃないわ。まどかを契約させずに、ワルプルギスの夜を倒したこの時間まで…私は何度もあの1ヶ月をやり直してきた」
ほむら「本当に地獄のようだった…だから、できることなら…もうあの魔女たちは見たくない」
マミ「だから最初に現れたのが、暁美さんが転校してきてすぐの薔薇園の魔女だったのね……」
ほむら「そう。そして、私がそう思ってる以上…きっとワルプルギスの夜も再現されると思う」
ほむら「さやか、マミ、杏子…もう1度、ワルプルギスの夜を倒すために、力を貸してほしい……」
杏子「今更何言ってんだ」
さやか「そうだよ、ほむららしくない」
マミ「私たち、仲間でしょう?」
ほむら「……ありがとう」
まどか「わたしは……」
ほむら「まどかだって、一緒に戦ってくれてるわ。……ソウルジェムと、この指輪が……」
ほむら「そして、私の隣にいてくれること…それが、何よりの力になるわ」
まどか「うん……」
ほむら「それとグリーフシードを落とさない理由だけど……」
ほむら「あの箱はきっと…本体の分身というか、一部というか…そんな存在じゃないかしら」
ほむら「それなら魔女の反応なのにグリーフシードを落とさないことにも説明がつくと思うし……」
さやか「うーん、そう言われると……」
ほむら「最初の箱が得た私の情報を元に、本体が分身を作って魔女を再現している…そんなところかしら……
杏子「あいつらが魔女か使い魔か、それはいいんだけどよ…やっぱり本体を倒さないと終わらないのかねぇ」
マミ「そうかもしれないわね。……こうなった以上、全て倒して早く終わらせないとね」
さやか「そうですね」
ほむら「これで話は終わり…ごめんなさい、ちょっと駄目だわ……」
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「……」
まどか「ほむらちゃん、寝ちゃった……」
ほむら「……はっ」
ほむら「……そうそう、伝え忘れてたわね……。昨日人魚の魔女を倒したから……」
ほむら「きっと明日、再現されたワルプルギスの夜が出てくると思うわ……」
ほむら「大丈夫、分身程度が最強の魔女を完全に再現できるわけないだろうし、箱っていう明確な弱点もあるし……」
ほむら「これで本当に終わり…おやすみなさい……」
まどか「……今度こそ本当に寝ちゃった」
マミ「休ませてあげましょう。話の途中でも何度か寝そうになっていたし」
まどか「そうですね。……動かしちゃかわいそうだから、お布団持ってきたほうがいいかな」
マミ「それにしても…何だかパンドラの箱みたいな話ね」
まどか「パンドラの箱?」
マミ「開けるとありとあらゆる災いが撒き散らされるって奴よ」
さやか「あー、何か聞いたことあります」
マミ「現に箱を開けた暁美さんには、もう見たくない魔女って災いが起こってるし……」
杏子「縁起でもないこと言うなよ。まるでこの先災いが待ってるみたいじゃねえか」
マミ「ふふ、ごめんなさい。……でも、大丈夫よ。どんな災いがあったって……」
マミ「最後の最後には希望が残ってるんだから……」
――――――
さやか「それじゃあとはまどかに任せてあたしたちは帰りますか」
マミ「そうね。これ以上いるとお邪魔みたいだし」
まどか「え、えぇ!?」
杏子「そうだ…マミ、さやか、アレについてちょっと手伝ってほしいんだけどよ」
さやか「えー、今度はあたしらが出向くの?」
杏子「アタシに協力してくれって言ってきたのはそっちだろ。少しくらい手伝え」
さやか「それもそうか…わかりましたよっと。……それじゃまどか、あとは頼んだよ」
マミ「鹿目さん、向こうは私たちでやっておくわね」
まどか「あ、ありがとうございます」
杏子「そんじゃ行くぞ」
まどか「わたしが言い出したことなのに…何か悪いな……」
最初はマミさんにちょっと相談したことだったのに、何だか大事になってきた
もちろんわたしとしては、実現してくれたら嬉しいけど……
でも、ほむらちゃんにはまだ話せていない。もうすぐ準備も終わるみたいだし、話した方がいいかな
ほむら「……ん…まどか……」
ほむらちゃんがわたしを呼ぶ。起きたのかと思ったけど寝言だったらしく、ぐっすり眠っていた
まどか「ほむらちゃん……」
そっとほむらちゃんの髪に触れる
少し癖のある、綺麗で長い黒髪
以前は三つ編みだったみたいだけど、わたしは今の方が好きだな
ほむら「……まどか…大好き……」
ほむらちゃんが寝言で大好きって言ってくれている。夢にもわたしが出てきてるのかな
まどか「うん…わたしも大好きだよ……」
以前感じた、ほむらちゃんが遠くへ行ってしまうような不安
今日のほむらちゃんの話と、マミさんのパンドラの箱の話を聞いて…余計に不安に感じてしまった
でも、ずっと一緒にいるって約束してくれたし…わたしの考えすぎだよね
ほむらちゃん、ずっと一緒にいてね。と
眠っているほむらちゃんのほっぺに、キスをした
――――――
魔女「ア…アア……」
さやか「ほむら!トドメを!」
ほむら「えぇ、わかってる!これで……」
ほむら「止めよ!」ズドォン
魔女「ア……!!」
杏子「箱を貫通した……!」
魔女「……」ズズズ
ほむら「……よし」
魔女「!!」
パァン
マミ「……ふぅ。みんな、お疲れさま」
さやか「お疲れさまです。……それにしても」
さやか「最初、ワルプルギスの夜が再現されると聞いたときはどうなるかと思ったけど……」
杏子「あぁ。本物と比べたら大したことはなかったな」
ほむら「使い魔がいないし、箱を狙えば勝てるってわかってるのもあるわね」
マミ「結界の中にいたのはどうしてかしら?」
ほむら「さぁ…本物のように隠れる必要がないほど強くないのか、再現されたものだからか……」
杏子「本物よりずっと小さかったしな」
さやか「でもさ、あたし、今までの箱の分身の本体がワルプルギスの夜に化けて出てくるんじゃないかって考えてたけど」
さやか「結局こいつも分身の箱が再現した奴だったね」
杏子「全部倒したら本体が出てくるってパターンじゃねぇのか?」
マミ「とにかく本体でなかったわけだし、多分また出てくるわね」
ほむら「次がきっと本体だろうから、よろしくお願いするわね。……それじゃ、戻りましょう」
『……』ズズズ
さやか「それじゃ今日はこれで解散ってことで」
杏子「そんじゃさやか、マミ、今日も手伝ってもらうからな」
さやか「へいへい、わかりましたよー」
マミ「えぇ、わかってるわ」
杏子「なんだ?マミはやけにあっさりだな。さやかなんか文句言ってるってのに」
さやか「うるへー」
マミ「それはそうよ。私だって楽しみなんだから」
杏子「ま、手伝ってくれりゃいいさ。……んじゃ、またな」
ほむら「えぇ。……あの3人、最近何やってるのかしら?気になるわね」
ほむら「まぁいいわ。……さて、まどかを待たせているし、急ぎましょう」
――――――
まどか「ほむらちゃん、まだかなー……」
今日はせっかくのお休みだから、ほむらちゃんと一緒にお出かけすることにした
だけど、約束の時間の前に魔女が現れて、少し遅くなるって連絡が来た
ほんと、どうして魔女ってこうもわたしとほむらちゃんの邪魔ばかりするんだろう…わけわかんないよ
そんなことを頭の中でぼやいていたら、ほむらちゃんが走ってきた
ほむら「まどか…ごめんなさい、遅くなって……」ゼェゼェ
まどか「ううん、気にしないでよ」
ほむら「それで…今日はどこに…連れてって…くれるのかしら……?」ゼェゼェ
まどか「うん…その前にどこかで一休みしたほうがよさそうだね……」
ほむら「そうして…もらえると…助かるわ……」ゼェゼェ
まどか「それじゃ、行こっか」
――喫茶店――
まどか「ここなら休めるよね」
ほむら「そうね…あら、そういえばこのお店って……」
まどか「うん。前に一緒に来たところだよ」
ほむら「懐かしいわね…あの日の帰りに、まどかにずっと一緒にいようねって、言われたのよね……」
まどか「うん。あのあと色々あったけど、今こうしてほむらちゃんと一緒にいられて…幸せだよ」
ほむら「……そうね。私もよ」
ほむら「改めて聞くけど、今日はどこに連れてってくれるのかしら?」
まどか「前に行った雑貨屋さんあるでしょ?もう1回行きたいなって思って」
ほむら「あぁ…あのカラフルな雑貨屋ね。何か欲しいものでもあるの?」
まどか「それは行ってみてからのお楽しみだよ」
ほむら「そうなの?それじゃ、楽しみにしてるわね」
まどか「うん!」
ほむら「ここのコーヒー、美味しいわね」
まどか「ほむらちゃんすごいなぁ。お砂糖もミルクも入れないで飲んじゃうんだもん」
ほむら「単にこれが好きってだけよ。自分が美味しいと思う飲み方で飲めばいいのよ」
まどか「そうなの?」
ほむら「そうよ。無理して飲んだって仕方ないでしょう?それに……」
ほむら「まどかがブラックなんて、似合わないわ」
まどか「も、もう!ほむらちゃん!」
ほむら「ふふ、ごめんなさい。……さて、そろそろ行きましょうか」
――雑貨屋――
ほむら「……相変わらずものすごいカラフルね」
まどか「ほらほむらちゃん、これ見て!」
ほむら「何かしら…本日全サービス半額?このサービス半額が目当てなの?」
まどか「うん…それで、この前買った指輪あるでしょ?」
まどか「あれに名前、入れてもらおうと思って……」
ほむら「そうだったの……」
まどか「あ、ほむらちゃんは無理に入れなくてもいいよ、わたしだけでも……」
ほむら「まどかが入れてもらうのなら、私も入れてもらおうかしら。まどかだけってわけにはいかないわ」
まどか「……うん、ありがとう」
ほむら「じゃあ注文してきましょう」
――――――
店員「それでは、こちらになります」
まどか「ありがとうございます」
しばらくして、注文した指輪が出来上がった
指輪を受け取り、ほむらちゃんのところに戻る
まどか「はい、ほむらちゃんの指輪」
ほむら「ありがとう。……しっかり入ってるわね」
入れてもらったのは、わたしたちのイニシャル
わたしの紫の指輪にはM.K
ほむらちゃんのピンクの指輪にはH.A
ほむら「終わるのを待っていたらもう夕方ね」
まどか「うん……」
ほむら「?どうしたの、まどか?浮かない顔してるけど……」
まどか「うん…あのね……」
まどか「わたしの家に、寄ってってほしいの。もうちょっと、ほむらちゃんとお話したいから……」
ほむら「えぇ、いいわよ」
まどか「ほんと!?じゃあ早く行こうよ!」
ほむら「浮かない顔してたのは私が帰るのが寂しかったからかしら。まどからしいわね」
まどか「も、もう!」
――――――
まどか「それじゃほむらちゃん、今何か持ってくるね」バタン
ほむら「お構いなく…って、言う前に行ってしまったわね」
ほむら「……」キョロキョロ
ほむら「……相変わらずまどかの部屋は可愛らしいわね……」
ほむら「それと比べて私の家は…あまりに殺風景ね……」
ほむら「……模様替えでもしてみるかしら?」
ほむら「どんな感じがいいか、ちょっと考えてみましょう……」
まどか「お待たせ、ほむらちゃん」
ほむら「まどか……」
まどか「どうしたの?」
ほむら「いえ…自分のセンスの無さにちょっと嫌気が……」
まどか「何があったの…はい、これほむらちゃんの分」コト
ほむら「ありがとう、いただくわ」
ほむら「それで、私を呼んだ本当の理由は何かしら?」
まどか「え?それはだから、ほむらちゃんとお話したくて……」
ほむら「私はまどかの恋人よ?まどかの嘘くらい、すぐわかるわ」
まどか「うぅ……」
ほむら「ほら、話してみなさい」
まどか「うん…あのね……」
わたしはほむらちゃんに最近不安に感じていることを話した
ほむらちゃんがどこかへ行っちゃうんじゃないかということ
最近になってそれをより強く感じること
ふとしたときに急に寂しくなること
ほむらちゃんはわたしの話を真剣に聞いてくれた
ほむら「なるほどね……」
まどか「ごめんね。変な話で……」
ほむら「変な話なんかじゃないわ。あなたの悩み事でしょう?なら、大事なことよ」
まどか「でも、ほむらちゃんがどこかに行っちゃうっていうのはわたしの気のせいだろうし、寂しくなるのだって……」
ほむら「まどか……」
ほむらちゃんがわたしの隣に座った
そして、わたしにこう言ってくれた
ほむら「私がどこかへ行ってしまうっていうのは、あなたの気のせいかもしれないけど……」
ほむら「寂しいっていうのは、きっと気のせいじゃないと思うわ」
まどか「そうかな……」
ほむら「だってこの前、私が先に帰るって言ったときのまどか…とても寂しそうにしてたもの……」
ほむら「どうして寂しくなるのかはわからないけど、寂しいなら寂しいと…そう言って頂戴」
ほむら「私が側にいるから……」
まどか「ほむらちゃん……」
わたしの悩みをこんな親身になって聞いてくれる…やっぱり、ほむらちゃんは優しい
まどか「……ありがとう、ほむらちゃん」
ほむらちゃんの肩に頭を乗せる
ほむらちゃんはわたしを優しく受け止めてくれる
まどか「ほむらちゃんには敵わないな……」
ほむら「ふふ…もっと私を頼ってくれてもいいのよ?」
まどか「うん…ほむらちゃん、大好きだよ……」
ほむら「私も…大好きよ、まどか……」
夕焼けが部屋を照らす
部屋の中は茜色に染まっていた
わたしがほむらちゃんに寄り添って、ほむらちゃんはわたしの肩を抱いてくれている
なんだか久しぶりに、恋人らしいことをしたような気がする
そっと目を閉じる
ほむらちゃんといつまでもこうしていられたら
それはとっても幸せだなって……
ほむらちゃんと重ねた手には、お揃いの指輪が光っていた
――――――
まどか「……ん…んん……」
まどか「……あれ?わたし……」
真っ暗になった部屋で目を覚ました
もしかして、あのまま眠ってしまったのかな
ほむらちゃんの姿はなく、帰ってしまったようだ
まどか「ふあ~……」
詢子「お、まどか、やっと起きて来たか」
まどか「あれ、ママ?」
詢子「夕方からずっと寝てたみたいじゃんか」
まどか「やっぱりあのまま寝ちゃったんだ…ほむらちゃんは?」
詢子「もうとっくに帰っちゃったよ。ちゃんと『まどかが私の腕の中で眠っちゃって、ベッドに移したので帰ります』って説明までしてくれて」
まどか「えぇ!?」
詢子「はっはっは、一部冗談だよ。でもあんたが寝ちゃったってことはちゃんと言ってってくれたよ」
まどか「もう……」
詢子「あぁそうそう、夕飯はもう少し待ってくれよ。今パパとタツヤお風呂入ってるから」
まどか「うん。……じゃあわたし、ちょっと部屋に戻ってるね」
詢子「2度寝するなよー?」
まどか「し、しないよ!」
詢子「じゃあ2人があがったら教えるからなー」
まどか「うん、ありがとう、ママ」
まどか「……」
さっきまでここで、ほむらちゃんと一緒にいられた
学校なんかでも一緒にいるけど…やっぱり、2人きりで過ごしたい
あんな幸せなことは、ほかにはないと思うから……
まどか「あれ?」
テーブルの下に光るピンク色のものが落ちていた
拾ってみると、それはほむらちゃんの指輪だった
指輪をしまうときに落としてしまったのだろう
まどか「うーん、届けてあげたいけどもう夜だし……」
まどか「明日学校で返してあげればいいよね」
まどか「……あ、一応メールしておこう。ほむらちゃんあちこち探し回ってそうだし」
まどか「えーと…『ほむらちゃんの指輪、わたしの部屋に落ちてたよ。明日学校で返すね』…っと」ピッ
まどか「これで大丈夫だよね」
『おーい、まどかー!2人ともあがったぞー!』
階下からママが呼んでいる
パパがお風呂からあがったようだ
まどか「わかったー!今行くー!」
まどか「それじゃほむらちゃんの指輪は大事にしまって…と」
まどか「お腹空いちゃったなぁ。今日は何かなー?」
夕飯を作ってもらいに部屋を出る
せっかく家に寄ってってくれたんだし、ほむらちゃんも夕飯に誘えばよかったかな
ほむらちゃんに話を聞いてもらってから、もっとほむらちゃんと一緒にいたくなった
さっきほむらちゃんと2人きりで過ごしたあの時間は、本当に幸せだった
これから先、もっとあんな時間が増えたらいいな……
――――――
まどか「……」
まどか「ほむらちゃん…私……」
今までふいに寂しくなることはあったけど、こんなに寂しい思いをするのは初めてだった
どうしたらいいかわからず、あてもなく歩いていたら、自然とここに足が向かっていた
昨日出したメールにも返事がなく、今日学校に来てみても、ほむらちゃんは来ていなかった
何か知っているかもと思い、さやかちゃんとマミさんに聞いてみたら、昼休みに杏子ちゃんを呼び出してわたしに説明してくれた
――――――
まどか「さやかちゃん、ほむらちゃんはどうしちゃったの?昨日魔女と戦ってケガでもしちゃったの?」
さやか「い、いや…その……」
まどか「内緒にしないで教えてよー」
杏子「あ、あぁ…あのな……」
まどか「ねぇ、教えてよ。……わたし、心配だよ……」
マミ「……わかった、教えるわ。……暁美さんに、何があったか」
さやか「ちょっ、マミさん!?」
マミ「遅かれ早かれわかってしまうことよ。……なら、今話した方がいいと…思うわ」
まどか「マミさん?」
マミ「……鹿目さん、落ち着いて聞いてちょうだい。……暁美さんは…昨日の夜……」
マミ「……箱の魔女に…連れて行かれたの……」
まどか「……え?」
マミ「だから…暁美さんは……」
この先を聞いちゃいけない。そんな予感がした
そしてマミさんは、わたしにこう告げた
マミ「暁美さんは…今どこにいるか…わからないの……」
まどか「……」
マミさんが何を言ってるのか、理解できなかった
理解したくなかった
あの強くて、優しいほむらちゃんが
魔女に連れて行かれたなんて
まどか「……嘘、だよね……?さやかちゃん……」
さやか「……」
まどか「ねぇ…嘘なんでしょ、杏子ちゃん……」
杏子「……」
まどか「嘘って…嘘だって言ってよ、マミさん!」
マミ「……」
まどか「……嘘、でしょ……?ほむらちゃん……」
まどか「嫌…そんなの嫌だよ…ほむらちゃん…約束したよね、ずっと一緒にいるって……」
まどか「約束…破っちゃ嫌だよ…ほむらちゃん…ほむら…ちゃ……」
まどか「……ほむらちゃん…ほむらちゃん……」ポロポロ
さやか「まどか…ごめん、あたしのせいだ…あたしがほむらの近くにいたのに……」
杏子「いや…さやかだけのせいじゃない。アタシら3人のせいだ……」
マミ「……いくら謝っても足りることじゃないけど…ごめんなさい、鹿目さん……」
まどか「……」スッ
さやか「まどか……?どこ行くの?」
まどか「ほむらちゃんを…ほむらちゃんを探しに行かなきゃ……」フラフラ
杏子「お、おい、まどか?」
まどか「待ってて、ほむらちゃん…今わたしが……」ガクッ
マミ「ちょっ、鹿目さん!?しっかりして!」
――――――
気を失ったわたしは放課後、保健室で目を覚ました
あれが夢ならと思ったけど、やっぱり夢ではなかった
さやかちゃんたちが心配して来てくれたけど、もう大丈夫だからと付き添いを断り、1人で下校した
そして今、わたしはほむらちゃんの家の前にいる
まどか「……」ピンポーン
チャイムを鳴らしてみる
出てくるはずもない。わかってるはずなのに、すぐにほむらちゃんが出てきてくれる
そんな気がした
まどか「あ……」ガチャ
まどか「開いてる……」
まどか「……ほむらちゃん、おじゃまします」
ほむらちゃんの家に入ったわたしは、あちこちの部屋を探して回った
どこかにほむらちゃんがいるんじゃないかって
だけど、ほむらちゃんはどこにもいない
食べかけのお菓子と、飲みかけのお茶がそのままになっていた
きっと、昨日出て行く直前まで食べていたんだろう
まどか「……」ガチャ
最後に入ったのは寝室だった
そこにはほむらちゃんが使っていたであろうベッドが置かれていた
まどか「……」ギシ
ベッドに腰を下ろす
ベッドの上には、布団が綺麗に準備されていた
まどか「……」ギュウ
ほむらちゃんの布団を抱きしめる
ほむらちゃんの匂いがした
まどか「……」ジワ
もう、我慢できなかった
わたしは泣いた
これ以上ないかというくらい、大声で泣いた
ほむらちゃんはどこにいるかわからない
どう足掻いても、この事実は変わることはなかった
ほむらちゃんがいないと考えただけで、心が壊れそうだった
そのまましばらくの間、わたしは泣き続けた
まどか「……」
ひとしきり泣いたせいか、少し落ち着いた
そろそろ家に帰ろう。そう思い、居間に戻ってきた
夕焼けが部屋の中を照らしていた
昨日と同じ夕焼け
だけど、わたしの隣にほむらちゃんはいない
昨日の幸せな気持ちが嘘のように
今のわたしの胸の中は、悲しみでいっぱいだった
ガチャ
まどか「え……?」
さやか「……やっぱここにいたんだ」
まどか「さやかちゃん……」
さやか「まどか…大丈夫?」
まどか「うん…さっき、思いっきり泣いたから、少しは……」
さやか「そっか……」
さやか「まどか…ごめん、あたしたちが不甲斐ないせいで……」
まどか「……ねぇ、さやかちゃん」
まどか「ほむらちゃんは…どうして連れて行かれちゃったの……?」
さやか「うん…昨日の夜に、また箱が出てきてさ…ほむらが最初に戦ったっていう、箱そのものの姿のがいてね……」
さやか「そいつと戦って、いつものように破裂したから倒したんだと思って、帰ろうとしたときに……」
さやか「どこかに隠れてたんだろうけど…急に後ろから襲って来たんだ…多分、あいつが本体だったんだと思う……」
まどか「でも、ほむらちゃん、すごく強いんだよ?……まだ、信じられないよ……」
さやか「何もいなかったはずの背後から急に襲われたから…時間止めてる余裕もなかったんだと思う……」
さやか「すぐに本体を追いかけたんだけどさ…結局、逃げられたんだ……」
まどか「ほむらちゃんは……」
まどか「ほむらちゃんは…連れて行かれちゃっただけなんだよね……?」
さやか「だけ、っていうのも何か変だけど…そのはずだよ」
まどか「だったら……」
まどか「ほむらちゃんは、わたしが取り戻す。……絶対に」
さやか「取り戻すってのはあたしたちも賛成だけど…まどかは魔法少女じゃないでしょ?どうやって……」
まどか「……そんなの関係ないもん!!わたしが取り戻すの!!」
まどか「ほむらちゃんは…ほむらちゃんは、わたしが……!」
さやか「まどか!?ちょっと、落ち着きなって!」
まどか「……ごめん、さやかちゃん」
さやか「ううん、仕方ないよ。まどかの大事な人がいなくなっちゃったんだから……」
さやか「とにかく、ほむらを連れてった魔女はあたしたちが探し出して、必ずほむらを助け出すよ」
まどか「うん…ありがとう、さやかちゃん……」
さやか「ほら、今日のところは帰ろうよ」
まどか「うん……」
わたしの隣にいてくれた人が
突然、離れて行ってしまった
ただ、隣にいてくれる人じゃない
わたしにとってかけがえのない存在で
わたしが心から愛するほむらちゃんが……
離ればなれになったときには、わたしがほむらちゃんを取り戻すなんて言ったけど
魔法少女でもないわたしには、どうすることもできなかった
ほむらちゃんがいないことが悲しくて
自分には何も出来ないことが悔しくて
ほむらちゃんを連れて行った箱が憎くて
頭の中がぐちゃぐちゃになったわたしは、家に帰るとそのまま部屋に戻って布団を被る
部屋の前でパパが何か言っているけど、今のわたしの耳には届かない
わたしの中で渦巻いてるこの気持ち。今まで感じたことのないものだったけど
今ならわかる。この気持ちはきっと
絶望なんだ、と
――――――
まどか「……」
コンコン
知久「まどか?起きてるかい?……今日はどうだい?」
まどか「……ごめんなさい」
知久「……わかったよ。もう少ししたら、朝ご飯だけは食べにおいで」
まどか「……ありがとう、パパ」
ほむらちゃんがいなくなってから数日
さやかちゃんたちが必死に探してくれているけど、未だに見つからない
あれからわたしは、学校に行く気が起こらず、部屋で塞ぎ込んでいた
もう、ほむらちゃんに会えないんじゃないか
そんなことさえ考えてしまうようになってしまった
まどか「……」
大事にしまったほむらちゃんの指輪を眺める
内側にはH.Aとほむらちゃんの名前が刻まれている
またほむらちゃんと、この指輪をして…一緒に過ごしたいよ……
まどか「……最近、泣いてばっかりだな……」ポロポロ
まどか「……ご飯、食べに行かなきゃ……」
まどか「ごちそうさま……」
詢子「あ、まど……」
バタン
詢子「……やっぱり、まだダメかい……」
知久「うん…よほどショックだったんだろうね……」
詢子「大好きなほむらちゃんがいなくなっちゃったんだからね…どこに行っちゃったんだろうねぇ……」
知久「今さやかちゃんたちが探してくれてるけど、見つからないみたいだよ……」
詢子「ほむらちゃん、早く出てきておくれよ…あんなまどか、見てられないよ……」
まどか「……」
部屋に戻ったわたしは、ほむらちゃんの指輪をわたしの指輪と同じ指にはめる
そしてそのまま、布団に潜り込んだ
こうすれば、夢でほむらちゃんに会える気がしたから
ほむらちゃんのいない現実から逃げるように、わたしは眠りに落ちていった
――――――
『……か…まどか……』
まどか「……え、あ、あれ?」
ほむら「まどか、どうしたの?眠いの?」
まどか「ほむらちゃん…ううん、大丈夫。何でもないよ」
ほむら「私に寄り添ってくれたと思ったら、そのまま寝てしまいそうだったから」
まどか「え?ご、ごめんね」
ほむら「何も謝ることでもないでしょう?変なまどかね」
ほむら「まどか……」ギュウ
まどか「わ、ほむらちゃん」
ほむら「私、まどかとこうしてられて…幸せよ」
まどか「うん…わたしもだよ……」
ほむら「ねぇまどか…私たち――」
――――――
まどか「……夢…だよね……」
まどか「……わかってても、やっぱり…辛いな……」
まどか「……ほむらちゃん…帰って来てよ……」ポロポロ
夢の中で久しぶりに感じた、ほむらちゃんの温もり
現実で感じることが出来ないのなら、覚めない夢を見ていた方がいい
そんなことを考えていたときだった
『やぁまどか、久しぶりだね』
まどか「え……?」
どこからか聞こえてきた声
以前に聞いたことがある声
その声の主が、窓辺に座っていた
まどか「キュゥべえ……」
QB「本当に久しぶりだね。ワルプルギスの夜以来かな」
まどか「そう…なのかな……」
ワルプルギスの夜以降、キュゥべえはわたしに契約を持ちかけて来ることはなかった
ほむらちゃんがいつもわたしの側にいるのと、ほむらちゃんが魔女化すれば、わたしと同等のエネルギーを得られるからだって
今は時々みんなのところに使ったグリーフシードの回収に来る程度
なら、今更わたしに何の用だろう
まどか「わたしに…何か用……?」
QB「うん。まどか、僕と契約して、魔法少女になってよ!」
そんな気はしていた
キュゥべえの用と言えばそのくらいのはずだから
QB「君たちの話を聞かせてもらったけど、どうやらほむらが魔女に連れて行かれたみたいだね」
QB「君が望めば、すぐにでもほむらは帰って来るよ」
まどか「でも……」
QB「ほむらとの約束を律儀に守って、ほむらを失うつもりかい?」
まどか「……っ」
わたしが望めば、ほむらちゃんはすぐに帰って来る
キュゥべえの言うことが、嫌になるほどに心に響く
ほむらちゃんと、絶対に魔法少女にはならないって…そう約束したはずなのに
今のわたしは、キュゥべえと契約さえすればまたほむらちゃんに会える
そんな風に考えていた
わたしが契約したら…きっとほむらちゃんはすごく悲しむと思う
でも…もうわたしには、ほむらちゃんがいない世界が耐えられなかった
心から謝れば、きっと許してくれるよね……
まどか「キュゥべえ…わたし……」
『おじさん!まどか、いますか!?』
『さやかちゃん?うん、まどかなら部屋に……』
『ありがとうございます!すいません、おじゃまします!』
『ごめんなさい、おじゃましますね!』
『悪いね、あがらせてもらうよ!』
『う、うん…どうぞ』
何だか下が騒がしい
どうやらさやかちゃんたちが来てくれたみたい
足音はわたしの部屋の前で止まったかと思うと
勢いよくドアが開かれた
さやか「まどか!」バン
まどか「さやかちゃん……」
マミ「鹿目さん、お邪魔するわね」
まどか「マミさん……」
杏子「おっす、久しぶりだな」
まどか「杏子ちゃん……」
みんながわたしの部屋にやって来た
わたしのお見舞いという風でもなさそうだけど、どうしたんだろう
さやか「キュゥべえ…あんた、何してるのよ……」
QB「まどかに魔法少女になってくれないかって、お願いしていたんだ」
杏子「人が弱ってるところに…相変わらず、汚い真似してくれるね」
QB「汚いとは心外だなぁ」
まどか「でも…ほむらちゃんが、帰ってくるのなら…わたし、契約……」
パーン
まどか「っ……」
マミ「……」
まどか「マミ…さん……」
マミ「ごめんなさい、鹿目さん。……でもね」
マミ「あなたが契約してしまったら…暁美さんがどれほど悲しむか、わかるでしょう?」
マミ「暁美さんは、あなたに魔法少女になんてなってほしくないはずよ」
まどか「でも…でも、わたし…もう……!」
さやか「大丈夫だって。まどかが契約する必要なんて、ないんだからさ」
まどか「さやか…ちゃん……?」
さやか「……ほむら、見つけてきたよ」
まどか「え……」
今、さやかちゃんは何て言ったの?
何を見つけてきたって言ったの?
もう1度、確認してみる
まどか「さやか…ちゃん?今、何を見つけてきたって……?」
さやか「……ほむらを連れてった魔女…見つけてきた」
まどか「……!」
さやかちゃんは確かに言った。ほむらちゃんを見つけてきたと
夢じゃないよね?ほっぺをつねってみる。痛い
夢じゃ、ないんだよね?
まどか「嘘じゃ、ないんだよね?さやかちゃん」
さやか「嘘なんかじゃないって!」
まどか「ほんとに、嘘じゃないんだよね?杏子ちゃん」
杏子「嘘なもんか!」
まどか「ほんとのほんとに、嘘じゃないんですよね?マミさん」
マミ「えぇ、嘘じゃないわ!」
本当に、ほむらちゃんが見つかったんだ
また、ほむらちゃんに会えるんだ
一緒に過ごせるんだ
そう思っただけで、涙が止まらなかった
まどか「ほむらちゃん…よかった……!」ポロポロ
マミ「鹿目さん……」
さやか「あぁもう、泣かないでよ」
まどか「だって…だって……!」
QB「まさかほむらを見つけて来るなんてね」
杏子「これでもうまどかが契約する理由もなくなっただろ。さっさと消えな」
QB「やれやれ、仕方ないね。今回は諦めよう」
杏子「次回なんてないね。まどかの隣にゃ、ほむらがいるんだからよ」
QB「とにかく、今日はこれで帰るよ。みんな、頑張ってね」スゥ
杏子「ったく…心にもないことを……」
さやか「それじゃまどか、早く顔洗って着替えてきなさい」
まどか「え?」
杏子「ほむらを、助けに行くぞ」
まどか「え、わたしも?」
マミ「暁美さんを助けに行くのよ?あなたがいなきゃ」
まどか「で、でも……」
さやか「……最初に見つけたときにさ、あたしたちでほむらに呼びかけたんだけど…何も反応がなくてね」
さやか「でも、まどかなら…何か反応してくれそうな気がしてね……」
杏子「頼む、力を貸してくれ」
マミ「お願い、鹿目さん」
以前、ほむらちゃんに言った言葉を頭の中で呟く
もし、ほむらちゃんと離ればなれになったら、どうするか
わたしが…絶対にほむらちゃんを取り戻す
わたしが魔法少女じゃないとか、そんなことどうだっていい
まどか「……うん、わかった。ほむらちゃんは…わたしが助けてみせる」
さやか「よし…それじゃ、早く準備してきて!」
まどか「うん!」
ドタドタドタ
知久「おや、さやかちゃん。もう帰るのかい?」
さやか「あ、おじさん!ちょっとまどか、借りて行きます!」
知久「え、さやかちゃん?」
さやか「まどか、行くよ!」
まどか「うん!」
知久「まどか?どこに行くんだい?」
まどか「……ほむらちゃんを、助けに!」
知久「……わかった、行ってらっしゃい」
まどか「行ってきます!」
今まで、ほむらちゃんに助けてもらってばかりだった
護ってもらってばかりだった
だから今度は
わたしが、ほむらちゃんを助けてみせる
護ってみせる
そう決意して
わたしたちは、ほむらちゃんのいる結界に急いだ
――――――
さやか「着いたよ…この結界だよ」
まどか「……この結界?なんだか今まで見てきたのより、ずっと小さいけど……」
さやかちゃんたちの案内で目的の結界前までやって来た
今まで見てきた結界の入り口というと、わたしたち程度なら普通に入れるくらいの大きさだったけど
この結界は屈まないと入ることができない程に小さい入り口だった
マミ「えぇ。……おかげで、探し出すのに苦労したわ」
杏子「とにかく、グズグズしてないで早く行こうぜ!」
さやか「っと、そうだったね」
マミ「じゃあ行きましょう」
――結界内――
まどか「ねぇ、みんな……」
さやか「うん?」
まどか「この魔女はどうして…ほむらちゃんを連れてったんだろう……?」
マミ「……普通の魔女はそんなことしないわよね。こちらを攻撃してくるだけで……」
杏子「……アタシの気のせいならいいんだけどよ……」
杏子「ほむら…魔法少女を捕まえるってことは、何か目的があるんじゃないかと思うんだよ……」
杏子「その目的まではわからないけどさ…そうでなければわざわざ連れて行く必要なんてないしな……」
まどか「そんな……」
杏子「とにかく、何かよからぬことを企んでるのは間違いないな」
さやか「なら、急いだ方がいいね!」
さやか「……この奥だよ」
まどか「……」
この奥にほむらちゃんが
ほむらちゃんを連れて行った魔女がいるんだ
絶対…魔女からほむらちゃんを助け出してみせる
覚悟は、もう決まってる
まどか「……行こう。ほむらちゃんを、助けるために……」
魔女「……」
まどか「あ……」
箱の形をした魔女。分身と同じような姿をした魔女
その箱の一面に半ば取り込まれる形で
ほむらちゃんが、捕まっていた
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「……」
さやか「まどか、頼んだよ!」
マミ「魔女の攻撃は私たちが防ぐわ!」
杏子「だからお前は、ほむらに呼びかけ続けろ!」
まどか「……うん!」
魔女「……!」ズズ
杏子「いいな!!何が何でも、まどかを守れ!!」
さやか「わかってる!!」
マミ「本体は暁美さんが捕まってるし、どうなるかわからない以上、攻撃しちゃダメよ!!」
杏子「よし、そんじゃ行くぞ!!」
絶対に逃げられない
絶対に失敗できない
絶対にほむらちゃんを助けるんだ
まどか「……ほむらちゃん!わたしだよ!」
まどか「ほむらちゃん!目を覚まして、ほむらちゃん!!」
魔女「……!」ビュン
まどか「ほむらちゃ……!」
ガギン
さやか「まどかは…やらせないよ……!」
さやか「あたしが助けられなかったからほむらは捕まっちゃってるんだけど…だけどさ……!」
さやか「そんな拘束、さっさと振り解いて戻ってきなさいよ!!」
まどか「ほむらちゃん!お願いだよ、戻ってきてよ!」
まどか「ほむらちゃん!!」
魔女「……!」ブオン
マミ「させないわ!」ガッ
マミ「私たちの力不足で、暁美さんは連れて行かれた…でも……!」
マミ「あなたがいない間…鹿目さんがどれだけ悲しんだか、わからないの!?」
まどか「ほむらちゃん、約束したよね!?ずっと一緒にいるって!」
まどか「あの約束、嘘じゃないなら…ずっとわたしの隣にいてよ!!」
魔女「……!」ギラン
杏子「おっと!」ギィン
杏子「おっかしいなぁ…アタシの知ってるほむらはさぁ……」
杏子「ずっとまどかの隣で…笑ってるはずだろ!?」
まどか「ほむらちゃん!ねぇ、ほむらちゃんってば!!」
まどか「ほむらちゃん!!」
杏子「クソ…攻撃できねぇ戦いってのが、こんな辛いとはな……」
さやか「いい加減…目ぇ覚ましなさいよ、寝ぼすけ……!」
マミ「とにかく、鹿目さんは呼びかけを続けて!」
まどか「わかってます!」
『まどか……』
まどか「え……?」
ふと、ほむらちゃんの声が聞こえた気がする
気のせいかと思ったけど
『まどか…聞こえる……?』
やっぱり、ほむらちゃんの声だ
ほむらちゃんの声が、頭の中に聞こえてくる
まどか「ほむらちゃん……?うん…聞こえる、聞こえるよ!」
さやか「まどか!どうした!?」ギィン
まどか「ほむらちゃんから…ほむらちゃんから返事が……!」
さやか「……!やっぱり、まどかを連れてきて正解だったよ!その調子でお願い!」
まどか「うん!」
ほむら『よかった…またまどかと、話すことができて……』
まどか「ほむらちゃん!大丈夫なの!?」
ほむら『まどか、ごめんなさい。あなたに心配させてしまって……』
まどか「そんなのいいんだよ!待っててね、今、助けてあげるから……」
ほむら『まどか…お願いがあるの。……他の3人に…こう、伝えてほしいの……』
ほむら『私を殺して、と……』
ほむらちゃんが
あのほむらちゃんが、信じられない言葉を発した
私を殺してくれ、と
どうしてそんなことを言うのか、理解できなかった
まどか「……何を…何を、言ってるの……?」
ほむら『私は今、拘束されているわけだけど…ただ物理的に拘束されてるだけじゃないの……』
ほむら『恐らくこの箱…再現の魔女の能力によって拘束されている…私の力だけじゃどうにも出来ない……』
ほむら『この魔女は…取り込んだ魔法少女の魔法を再現して戦うみたいなの……」
ほむら『今までの再現は…トラウマを抉って、精神的に追い詰めて…そこを狙うつもりだったみたい……』
ほむら『私はそのトラウマを全て乗り越えてしまったから…本体が捕まえに来たんだと思う……』
ほむら『私の魔法を引き出したら…また新しい箱を作って、次の魔法少女を捕らえる…それが、この魔女の能力……』
まどか「そんな…それじゃ、ほむらちゃんは……!」
ほむら『今は…きっと私の中にある、まどかの魔力がそれを拒んでいてくれてるんだと思う。だけど……』
ほむら『私の魔法を再現されてしまったら…きっとあなたたちに危害が及んでしまう……』
ほむら『私は…さやか、マミ、杏子…そして…大好きなまどかを…傷つけたくないの……』
ほむら『私を助けようと戦闘が長引けば長引くほど…あなたたちが危険になる』
ほむら『それに万一、あなたたちがやられるところを見せられて…私が魔女になりでもしたら…それこそ、手がつけられなくなる……』
ほむら『だから…もう、こうするしかないの……』
まどか「……」
ほむら『まどか…あなたと過ごした日々は…とても、幸せだったわ……』
ほむら『まどか…ありがとう、私と恋人になってくれて……』
まどか「……ないでよ……」
ほむら『まどか……?』
まどか「ふざけないでよ!!」
まどか「いくらほむらちゃんだからって、そんなふざけたこと言わないでよ!!」
まどか「わたしたち、ほむらちゃんを助けに来たんだよ!!ほむらちゃんを殺すために来たんじゃないよ!!」
ほむら『だからそれは、どうしたらいいのかわからないし、長引けば……』
まどか「そんなのどうにだってするもん!!箱を倒すでも、ほむらちゃんを引っ張り出すでも!!」
まどか「……わたしたち…最後の最後まで、諦めないよ」
ここまできて…ほむらちゃんを諦めるなんて、できない
きっとみんなも、同じ気持ちだと思う
だから、わたしはみんなに、こう叫んだ
まどか「さやかちゃん!マミさん!杏子ちゃん!ほむらちゃんからの、伝言!」
まどか「私を、助けて!!」
さやか「了解!!」
マミ「わかったわ!!」
杏子「あぁ、任せろ!!」
まどか「みんな!ほむらちゃんを…助けてあげて!!」
ほむら『まどか…あなた……』
まどか「わたし、こんなところでほむらちゃんとお別れなんて…絶対に嫌だからね」
まどか「それに…ほむらちゃんに返さないといけないものも、あるしね」キラ
ほむら『それは…私の指輪……?』
まどか「うん。あの日、わたしの部屋に忘れていっちゃったの」
ほむら『そうだったの……』
まどか「わたし…ほむらちゃんと一緒に行きたいところも、したいことも、まだまだたくさんあるんだから」
ほむら『……私も…私も、同じよ、まどか……』
まどか「……やっと、やっと本音言ってくれたね…ほむらちゃん」
ほむら『私…まどかと一緒にいたい……!』
まどか「うん…3人が必ず助けてくれるよ。……それを、信じよう?」
ほむら『……えぇ。そうね……』
さやか「ほむらを…返せぇぇ!」
魔女「……!」グルン
さやか「……っ!」ピタ
魔女「……!」ビュン
さやか「ぐっ……」ガギン
杏子「野郎、ほむらを盾に……」
マミ「攻撃のチャンスが少ないわね……」
杏子「それなら…全方位から攻撃したらいいんだろ!?」
杏子「ロッソ・ファンタズマ!!」
ズラララララ
杏子「行くぞ!!」ダッ
マミ「佐倉さん!暁美さんの面がどこを向くか、しっかり見極めて!」
杏子「わかってるよ!……一斉攻撃!!」
魔女「……!?」グルン
杏子「おっと、こっち向いたか」ピタ
杏子「なら、残りは攻撃だ!!」
ズバンズバンズバン
魔女「……!」
杏子「よっしゃ、もう1度だ!」ダッ
魔女「!」
ギュルギュルギュル
杏子「うおっ!?何だ、回転した!?」
魔女「!」ズズ
さやか「うひゃっ!何か生えてきたよ!?」
杏子「危ねっ!……クソ、回転止めないと近づけねぇぞ」
マミ「それなら…任せて!」チャキ
マミ「はっ!」パァン
さやか「マミさん?今地面に打ち込んだのは……」
マミ「えぇ。……拘束!」
シュルシュル
魔女「……!」グルグル
マミ「さぁ…今のうちよ!」
さやか「はい!」ダッ
杏子「あぁ!」ダッ
さやか「うりゃっ!」ガッ
杏子「おらあっ!」ガッ
さやか「はあああああ……!」ギリギリ
杏子「うおおおおお……!」グググ
さやか「……はあっ!!」ズバァン
杏子「……だりゃあっ!!」ズドォン
ズガァァァン
魔女「……」
さやか「や…やった……?」
杏子「いや…まだ消滅してねぇ……」
魔女「……」ズオオ
ほむら『ぐっ……!』
まどか「ほむらちゃん!?」
魔女「……」ズズズ
杏子「……あいつ、何をしてんだ……?」
魔女「……」ズズズ
ほむら『ぐ…あ……ッ!』
まどか「ほむらちゃん!?どうしたの、ほむらちゃん!」
ほむらちゃんが急に苦しみだした
さっきの話を聞いた上で考えられるのは……
まどか「ほむらちゃん…もしかして……!」
ほむら『ごめん…なさい……!箱に、魔法、を……!』
まどか「ほむらちゃん!!」
ほむら『こんな奴…なんかに…私の、魔法……!』
ほむら『使わせたく…ない、のに……!』
魔女「……」ズズズ
杏子「何だかわかんねぇけどよ、ぼーっとしてるうちに攻撃させてもらうよ!」ダッ
まどか「……!杏子ちゃん、ダメっ!!」
魔女「……」フッ
杏子「……は?魔女が、消え……」
ドゴォン
杏子「が……ッ!」
ドガァァァァン
さやか「杏子!!」
マミ「佐倉さん!!」
杏子「……大丈夫、だ…何とか……」
さやか「よかった…マミさん、杏子の手当てを!まどか、危ないからもっと離れてて!」
マミ「佐倉さん、今治療を……」
杏子「応急処置だけでいい…しかし、どういうことだ?目の前から消えたと思ったら、別の方から……」
まどか「……あの魔女、取り込んだ魔法少女の魔法を…再現するみたいなの……」
まどか「多分…魔女が、ほむらちゃんの魔法を…使い始めたんだと思う」
杏子「……そうか、アレは時間を止められたのか……」
マミ「魔法の再現…時間停止と…魔法の弾撃ってきたりするかもしれないわね」
まどか「ほむらちゃんから聞いた話だと…あの時間停止、すごく燃費が悪くて多用できない、って言ってました」
マミ「それなら連続使用はできない、ってことかしら。……それなら、まだ何とか……!」
マミ「早く助け出さないと危ないわね、私たちも、暁美さんも。……はい、佐倉さん、終わったわ」
杏子「ありがとよ!サポート、頼んだ!」ダッ
マミ「えぇ、任せて!」
魔女「……」ズズズ
さやか「魔法の再現…時間を止めるってこと…だよね」
さやか「……ほむらの魔法、使うな!」ダッ
魔女「……!」ジャキ
さやか「……!銃口!?」
魔女「!」ズドドドド
さやか「当たるか!」ヒュン
さやか「てい!」ブォン
魔女「……」ヒュン
さやか「……動きも早くなってる、か」
杏子「さやか!悪い、今戻った!」
さやか「杏子、大丈夫なの?」
杏子「あぁ、大丈夫だ。アタシが先にダウンしてられるかってんだ」
さやか「言ってくれますね…そんじゃ、行くよ!」ダッ
杏子「おう!」ダッ
時間停止を使われる前にほむらちゃんを助け出す
簡単に言うけど、魔女はそう簡単に攻撃させてくれなかった
ほむらちゃんを盾にすることに加え、再現したほむらちゃんの魔法で攻撃してくる
時間停止による不意の攻撃を受ける度、大きく吹き飛ばされる
みんなは口を揃えて「大丈夫」「まだ戦える」って言ってはくれているけど
わたしにだってわかる。もう、限界が近いって
そして、何度目かの時間停止攻撃を受けたときだった
ドゴォン
さやか「か…は……ッ」
ドガァァァァン
杏子「さやか!!……テメェ、よくもさやかを!!」ブォン
魔女「……」ギィン
杏子「そんなゴルフクラブみてぇなのに…アタシが…負けるわけ……!」グググ
魔女「……!」ジャキ
杏子「な…んだと……?」
魔女「!」ズドドドド
杏子「ぐあああああっ!」
まどか「さやかちゃん!!」
マミ「佐倉さん!!」
さやか(マミ…さん、杏子はあたしがなんとか…マミさんは、まどかを……!)
マミ(美樹さん!……えぇ、わかったわ!)
マミ「鹿目さん、私から離れないで!」
まどか「は、はい!」
マミ「近接は得意ではないけど……!」
魔女「……」ブォン
マミ「くっ……」ギィン
魔女「……!」グググ
マミ「そん…な……っ!」
ドガァァァァン
まどか「マミさん!!」
マミ「……早く、鹿目さんのところへ……」
魔女「……」
マミ「え……」
ドゴォン
まどか「マミさん!マミさん!!」
さやかちゃんも
マミさんも
杏子ちゃんも
もう満足に戦える状態ではなかった
残っているのは、魔法少女でもないわたしだけ
さやかちゃんたちが結界を探し出して
ほむらちゃんを助けると決意して
覚悟を決めてここまで来たのに
最後の最後で護りたいものに手が届かないなんて
そんなのって、ないよ
ほむら『まどか……』
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら『まどか…もう…十分よ……』
まどか「十分って……」
ほむら『まどかたちは…十分、やって…くれたわ……』
ほむら『あとはもう…マミがまだ動けるうちに、私を……』
まどか「……っ!」
他にもう選択肢は、ないの……?
本当にもう…ほむらちゃんを殺すしかないの……?
悔しい
ほむらちゃんを助けられなくて、悔しい
ほむらちゃんを幸せにできなくて、悔しい
ほむらちゃんと一緒にいられなくて、悔しい
こんなときに何も出来ない自分が、悔しい
知らず知らずのうちに噛んでいた下唇からは
血が滲んでいた
まどか「……できない…できないよ……ほむらちゃんを、殺すなんて……」ポロポロ
まどか「……できるわけ…ないよ……!」
ほむら『もう…それしか、ないのよ……』
まどか「でも…でも……!」
ほむら『まどか…お願いよ…もう、私の魔法で…あなたたちを、傷つけさせないで……』
まどか「ほむらちゃん……」
以前、マミさんが言ったことが頭をよぎる
パンドラの箱には、最後の最後に希望が残っている、と
本当に希望が残っているのなら…奇跡があるのなら
わたしに…わたしに、力を
ほむらちゃんを助けるだけの、力を
まどか「神様でも…悪魔でも、何だっていい…わたしの願い…叶えて!」
まどか「ほむらちゃんを、助けられる力を!!」
パァァァァァ
まどか「え、何!?……指輪が……?」
指にはめたままだった、わたしとほむらちゃんの指輪が光り輝く
それを見た瞬間わたしは確信し、手を組んで、目を閉じ、心から願う
ほむらちゃんを助けたい、と
そして、次に目を開けたとき、わたしは……
まどか「……」
魔法少女の姿になっていた
いつだったか、ほむらちゃんから聞いたわたしの魔法少女の姿
衣装は同じだったけれど、細部が少し変わっていた
頭には紫のリボン。手には黒い弓と、ピンクの魔法の矢。そして
ソウルジェムの代わりに輝く、ピンクと紫の指輪
わたしとほむらちゃんの指輪がひとつになった、奇跡の指輪
マミ「鹿目…さん……?そんな、どうして……?」
さやか「まどかが……」
杏子「魔法…少女に……?」
マミ「どういうことなの……?まさか、キュゥべえと!?」
さやか「……いえ、あいつじゃないと思います。見当たらないですし」
マミ「それならどうして……」
杏子「パンドラの箱……」
マミ「え?」
杏子「マミが前言ってただろ。パンドラの箱には希望がある、って」
杏子「ほむらを失って、苦しんで、絶望して…そして、その災いの果てに残った希望……」
杏子「奇跡を…起こしたんじゃないか……?」
さやか「杏子…うん、そうだね……」
さやか「ワルプルギスの夜のときだって、まどかとほむらは奇跡を起こしたんだ。今回だって……!」
マミ「あの2人の…愛の奇跡かしらね……」
杏子「アタシたちも手を貸しに行きたいけどよ……」
マミ「今の私たちじゃ足手まといね…悔しいけど」
杏子「ほんと、あのときと同じだな…あとは、まどかを信じて待つしかないか……」
さやか「そうだね…まどか、ほむらを…頼んだよ……!」
ほむら『まどかの、魔法少女の姿…こんな形でまた見るなんてね……』
まどか「ほむらちゃん…ほむらちゃんは、わたしが……」
もう、泣いてなんかいられない
涙を拭って、前を見据える
まどか「わたしが、助けてみせる!!」
ほむら『まどか…私……』
ほむら「……か…まどか……」
まどか「ほむらちゃん……!」
ほむら「助けて…助けて、まどか!!」
まどか「ほむらちゃん!今、助けるからね!!」
――大丈夫。あなたなら、絶対にほむらちゃんを助けられる――
――がんばって、わたし――
どこからか、そんな声が聞こえた気がした
まどか「……」キリキリ
ほむら「まどか!こいつに遠距離は……!」
まどか「大丈夫…わたしを、信じて!」パシュウ
放った矢が、魔女へ向かって飛んでいく
魔女はそれを防ぐべく、ほむらちゃんを盾にする
そして、放った矢がほむらちゃんの目の前まで来たところで
まどか「弾けて!」
そう叫ぶと、1本だった矢は多数の小さな矢に枝分かれした
枝分かれした矢は魔女の左右から回り込んで
魔女の背後に突き刺さった
魔女「……!」
まどか「逃がさないよ!」ダッ
魔女が矢に気を取られているうちに、魔女に接近する
そして、手にした矢をそのまま
ほむらちゃんの側に突き立てた
ほむら「まどか!」
まどか「ほむらちゃん!」
魔女に取り付いてしまえば、もう時間停止は使えない
あとは、ほむらちゃんを魔女から引き離すだけだ
ほむら「まどかが頑張ってくれてるのに……」
ほむら「いつまでも捕まってるわけには…いかないわ……!」
ほむら「……っく…あああぁぁぁ!!」グググ
魔女「!」ジャキ
ズガッ
まどか「……させない!」
ほむら「……く…この……!」パキン
ほむら「……!腕が抜けた……!まどか!!」
まどか「ほむらちゃん!わたしの手を!!」
ほむら「えぇ!」
拘束から抜けたほむらちゃんの手をしっかりと掴む
1度は離してしまったこの手だけど
もう2度と離さない。絶対に離してたまるもんか
魔女「……!」グググ
ほむら「いい加減…離しなさい!」
まどか「ほむらちゃんを……!」グググ
まどか「ほむらちゃんを、返して!!」
魔女「!」パキン
ほむら「あ……!」
まどか「拘束が……!」
ほむらちゃんが拘束から抜ける
わたしはほむらちゃんを引き寄せ
ほむらちゃんを抱きしめた
まどか「ほむらちゃん!」ギュウ
ほむら「まどか……」
まどか「ほむらちゃん…ほむらちゃん……!」ポロポロ
ほむらちゃんが
ほむらちゃんが、わたしのところに、帰ってきてくれた
マミさんが言った通り
ほむらちゃんを失った災いのあとには
ほむらちゃんが帰って来る希望が残っていた
ほむら「まどか…感動の再会と行きたいけれど、まずは……」
ほむら「それを邪魔する無粋な奴を、倒してしまいましょう」
まどか「……うん!」
魔女「……」
ほむらちゃんが捕まっていた部分に、大きな穴が開いている
魔女の中に僅かに残っているほむらちゃんの魔力で、攻撃を仕掛けてきた
魔女「……!」ジャキ
まどか「ほむらちゃん!銃撃が来るよ!」
ほむら「大丈夫。……私に任せて」
ほむらちゃんがそう言うと、ほむらちゃんの背中から
翼のようなものが現れた
魔女の結界のような翼。それを生やしたほむらちゃんの姿は
わたしには、とても美しく見えた
そして、その翼の中から、とてつもない数の銃口が現れ
一斉に火を噴いた
ズドドドドド
魔女「!?」ガシャァァン
ほむら「……もう少しね」
まどか「あとは…わたしが……!」
ほむら「まどかだけにさせるわけには行かないわ。……私にも、手伝わせて」
まどか「ほむらちゃん…うん、わかったよ」
弓を構え
矢を番え
弓を引き絞る
狙うは、箱の魔女のど真ん中
ほむらちゃんを自分の力にしようとして、ほむらちゃんを連れて行った魔女。絶対、許さない
ほむらちゃんは…ほむらちゃんは、わたしの恋人だ。誰にだって、渡すもんか
わたしの後ろから、ほむらちゃんが支えてくれている
矢に紫が灯る。ほむらちゃんと一緒なら、倒せない魔女なんて、いるわけない
まどか「わたしとほむらちゃんの邪魔をする奴は」
ほむら「誰が相手だろうと許さないわ」
まどか「だから、邪魔する奴にはこう言うの」
ほむら「人の恋路を邪魔する魔女は!!」
まどか「弓に射られて死んじまえ!!」
わたしとほむらちゃんが放った矢は、まっすぐ魔女へ向かって飛んでいく
そして
魔女「!!」ズガァン
魔女のど真ん中に突き刺さった
矢はそのまま、魔女を吹き飛ばした
ドガァァァァン
ほむら「これで……!」
魔女「……」ズズズ
まどか「え……?膨らんでるよ!?」
ほむら「そんな…まさかこいつも分身とか言わないわよね!?」
魔女「!!」
パァン
まどか「破裂したよ……」
カラン
ほむら「……間違いなく、魔女を倒したのよ。グリーフシードも落としていったし」
まどか「そっか…よかった……」
ほむら「まどか…今回はごめんなさい……」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「ずっと、まどかと一緒にいるって言ったのに…まどかを離さないって約束したのに……」
ほむら「まどかから、離れていってしまって……」
まどか「ううん…ほむらちゃんのせいじゃないよ」
ほむら「でも、またまどかのところに帰って来ることができた…だから……」
ほむら「ただいま、まどか」
まどか「うん……!おかえり、ほむらちゃん……!」ポロポロ
ほむら「まどか…まどか……!」ギュウ
まどか「ほむらちゃん……!」ギュウ
ほむらちゃんの感触が
匂いが
温もりが
わたしを、包んでくれる
ほむらちゃんがまた、わたしの隣にいてくれる
ほむらちゃんと、一緒にいられる
ほむらちゃんと、幸せな時間を過ごせる
そう思っただけで、涙が止まらなかった
ほむらちゃんを強く抱きしめる。今までの悲しみと絶望を埋めるように
今はただ、ほむらちゃんを感じていたかった
泣きじゃくるわたしをほむらちゃんは
優しく抱きしめてくれた
さやか「まどか……」
杏子「……やっぱあいつらは、2人一緒じゃないとダメだな」
さやか「うん…そうだね」
杏子「あの2人を見てるとよ、こう…不思議と幸せになる気がするんだよ…なぁ、マミ?」
マミ「鹿目ざん…暁美ざん…よがっだ…本当に…よがっだぁ……」グス
杏子「うわ、マミ!?何でマミがマジ泣きしてるんだよ!?」
さやか「あー、マミさんはあの2人の幸せそうなのを見てるのが好きだから……」
まどか「あ……」
ほむら「まどか?」
まどか「そうだ、ほむらちゃんの指輪なんだけど……」
まどか「……あれ?」
ほむら「私の指輪がどうかしたの?」
まどか「うん、わたしが魔法少女になったときに、わたしの指輪とひとつになったはずなんだけど……」
まどか「元に戻ってる……」
ほむら「そういえば、まどかも元に戻ってるわね」
まどか「うん…あれはなんだったのかな……?」
ほむら「奇跡…だったのかしらね……」
まどか「奇跡…か…うん、そうだね……」
ほむら「きっと、まどかの想いが起こしたのね」
まどか「ううん…わたしと、ほむらちゃんが起こしたんじゃないかな……」
まどか「ワルプルギスの夜のときみたいに、わたしとほむらちゃんの…想いがひとつになって、さ」
ほむら「それがその指輪だったのかしらね……」
まどか「うん…そうだと思うんだ」
ほむら「そうね……」
まどか「奇跡だけじゃない…さやかちゃん、マミさん、杏子ちゃん…みんなが、力を貸してくれた」
まどか「わたし1人じゃ、何もできなかった。きっと今も、部屋で泣いてたと思う」
ほむら「みんなにも、お礼を言わないとね」
まどか「あれ、そういえば他のみんなは?」
ほむら「私たちの邪魔になると思ってか、あそこで待ってるわね」
まどか「それじゃほむらちゃん、帰ろうよ!」
ほむら「えぇ、そうね」
まどか(あのとき聞こえた声の人……)
まどか(わたし、ほむらちゃんを…助けたよ……)
まどか(この先もずっと…わたしがほむらちゃんを、支えてみせるよ……)
みんなのところに戻ったわたしとほむらちゃん
ほむらちゃんは、みんなから抱きしめられていた
ほむらちゃんはわたしの恋人だけど…今日は特別だよ
ほむらちゃんはみんなにありがとう、とお礼を言っていた
それを見ていたわたしは
また、涙が溢れてきてしまった
――――――
さやか「それじゃ、あたしたちはここで」
杏子「っと、そうだな」
マミ「暁美さん、今日はゆっくり休んでね」
さやか「あっと…まどか、ちょいちょい」
まどか「?さやかちゃん、何?」
さやか「いやね…ごにょごにょ……」
まどか「え、えぇ!?そんな、急すぎるよ!」
さやか「まぁまぁ、早いほうがいいじゃない?」
まどか「それはそうだけど……」
さやか「そんじゃそういうことでー。楽しみにしてなさいよ」
まどか「えぇー……」
さやか「マミさん、杏子、ちょっと話があるんですが……」
マミ「はいはい。……それじゃ暁美さん、また明日ね」
杏子「ったく、アイツはまた急に…んじゃ、またな」
ほむら「えぇ。みんな、また明日」
さやかちゃんたちと別れ、ほむらちゃんと並んで歩く
ほむらちゃんと一緒に帰るのも、久しぶりだな
ほむら「まどか、さっきさやかに何を言われてたの?」
まどか「え!?あ、いや、その…さ、さやかちゃんのことだから、わたしが言うのは……」
ほむら「そうなの?……なら、無理に聞き出さない方がいいわね」
まどか「う、うん。……あ、そうだ。ほむらちゃん」
ほむら「何?」
まどか「今日…またわたしの家に、寄ってってくれないかな」
ほむら「えぇ、構わないわ。今日までまどかに寂しい思いをさせちゃったもの」
ほむら「その埋め合わせもしないとね」
まどか「そ、そんなのいいのに……」
ほむら「ふふ…ほら、行きましょう?」
まどか「うん!」
家に帰るとパパと、いつもより早く帰ってきていたママが、待っていてくれた
一緒に帰ってきたほむらちゃんを見ると、2人とも涙を浮かべていた
ほむらちゃんは、心配させてしまってごめんなさいと、2人に謝った
そんなほむらちゃんをパパもママも、暖かく迎えてくれた
そんな中、ママが今日泊まって行ってくれ、と言い出した
最初はほむらちゃんも断っていたけど、パパにも頼まれたせいか、最後には泊まって行くことにしたみたい
そして、その日の夜……
ほむら「まどか、お風呂あがったわ」
ほむら「それにしても、今日は悪いわね。急に泊めてもらっちゃって」
まどか「ほむらちゃんだったらいつでも大歓迎だよ」
ほむら「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいわね」
まどか「それでその、ほむらちゃんに…お願いがあるんだけど……」
ほむら「お願い?」
まどか「うん…ほむらちゃんがいなくなっちゃった日も、わたしの家に来てくれたでしょ?」
まどか「あの日と同じことを…もう1回してほしいの」
ほむら「そんなことでいいの?私は構わないけど……」
まどか「うん、あれがいいの」
ほむら「そう…それじゃ、隣、行くわね」
ほむらちゃんがわたしの隣に座る
わたしはほむらちゃんに寄り添う
ほむらちゃんは、わたしの肩を抱いてくれる
ほむらちゃんと一緒にいるのも、2人きりで過ごすのも好き。だけど
わたしは、ほむらちゃんとこうして過ごすのが、大好きなんだ
ほむらちゃんにこうしてもらえると、心の底から幸せな気持ちになれる
今日までこの部屋で1人泣いていたことが
まるで嘘のようだった
まどか「……あの日、途中で眠っちゃったみたいで言えなかったけど……」
まどか「わたし、ほむらちゃんとこうしてるのが…大好きなんだ……」
ほむら「そうなの?」
まどか「うん…すごく、幸せな気持ちになれるから……」
ほむら「まどか…こんなことでよければ、いつでもしてあげるわ」
まどか「うん…ありがとう……」
まどか「……あのね、今回のことでひとつ、思ったことがあるんだ」
ほむら「あら、何かしら?」
まどか「ほむらちゃん、前に結婚するならわたしとがいい、って言ってくれたでしょ?」
ほむら「えぇ、言ったわね」
まどか「あのときのは、ほむらちゃんの冗談だったのかもしれないけど……」
まどか「今回、こんなことがあって…ほむらちゃんとのこと、色々考えたの」
まどか「それでね、わたしも…結婚するならほむらちゃんとがいいなぁ…って、そう思ったの」
まどか「だから…わたしも、ほむらちゃんとなら結婚したいな」
ほむら「……あのときああ言ったのは確かに半分は冗談だったかもね。真っ赤になって慌てるまどかが見たかったから」
まどか「そ、そうだったの……」
ほむら「ふふ、ごめんなさい。……でもね」
ほむら「あのとき言った、結婚するならまどかとがいいってのは…冗談じゃないわ。私の本心」
ほむら「だからまどかも、私のこと、そう思ってくれて…嬉しいわ」
ほむら「いつだったか、マミに言われたわね。形だけでも結婚式を挙げてみないか、って」
まどか「あ……」
ほむら「でも場所も準備もしないとだし…いつか、やってみたいわね」
まどか「……うん、そうだね」
ほむら「……何だかまどか、嬉しそうね?」
まどか「え…そ、そう?」
ほむら「嬉しそうって言うか、何かニヤニヤしてるような…私に何か隠してない?」
まどか「え!?そ、そんなことないよ!?」
ほむら「そう……?ならいいけど」
まどか「そ、それよりもさ、そろそろ寝ようよ」
ほむら「そうね…私も色々あって疲れたし……」
まどか「それでその、ほむらちゃん…一緒に寝てくれない…かな」
ほむら「ふふ、わかったわ」
まどか「ありがとう、ほむらちゃん」
まどか「……それじゃ、電気消すね」パチン
ほむら「えぇ。おやすみなさい、まどか」
まどか「……」ギュウ
ほむら「……まどか?」
まどか「……ごめんね、ほむらちゃん…でも…今日は、こうさせて……」
ほむら「……今日まで寂しい思いをさせてしまったけど…明日からはまた、私が隣にいるわ」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「まどか……」
まどか「ほむらちゃん、大好きだよ」
ほむら「私も大好きよ、まどか」
その日は、遅くまでほむらちゃんと幸せな時間を過ごした
明日からまた、ほむらちゃんと一緒に過ごせる
ほむらちゃんと色んなところへ出かけられる
そう思うとまた涙が出てきそうだったけど、ぐっと我慢する
そして明日…ほむらちゃんに、伝えないといけないことがある
どう言ったらいいのかな…と、考えるのもそこそこにして目を閉じる
ぎゅっとほむらちゃんに抱きついて
ほむらちゃんの温もりに包まれて
幸せな気持ちのまま、眠りについた
――――――
『……ちゃん…ほむらちゃん……』
ほむら「……んん……」
『ほむらちゃん…起きて…ほむらちゃん……』
ほむら「……まどか?……どうし……」
さやか「まどかかと思った?残念さやかちゃんでした!」
ほむら「……」
さやか「……」
ほむら「……おやすみなさい」パタン
さやか「ごめんなさい!起きてください、ほむらさん!」
ほむら「……で、何であなたがまどかの家にいるのかしら?」
さやか「ふふーん、ここがまどかの家に見えますかな?」
ほむら「……」キョロキョロ
ほむら「……ここはどこかしら?」
さやか「ここは杏子の家の教会だよ」
ほむら「杏子の?……それにしてはやけに綺麗ね」
さやか「みんなで掃除とかしたからね」
ほむら「あなたたちがコソコソとやっていたのはこれだったのね…それで、私はどうしてこんなところに連れてこられたのかしら?」
さやか「それはですね…まどかに聞いてみてよ」
ほむら「まどかに?」
さやか「うん。まぁあたしやマミさんや杏子も協力はしてるけど、これはまどかの計画だからね」
ほむら「それで、まどかはどこにいるの?」
さやか「えっと、礼拝堂にいるはずだよ」
ほむら「わかったわ…その前に身だしなみを……」
さやか「あ、それは大丈夫だよ。ほむらが寝てる間にまどかが全部やってったから」
ほむら「そう……?それじゃ、まどかのところに行ってみるわ」
さやか「あいよー。……まどか、頑張りなさいよ……」
マミ「……それじゃ鹿目さん、私たちは一旦外れるわね」
まどか「はい…ありがとうございます」
マミ「それじゃ佐倉さん、行きましょう」
杏子「あぁ…あとはお前次第だからな、頑張れよ」
まどか「ありがとう、杏子ちゃん」
他の準備のために、マミさんと杏子ちゃんが部屋から出ていった
みんな、わたしのこの計画に協力してくれて…ありがとう
あとは…ここにやって来るほむらちゃんに、わたしの想いを伝えるだけ
しばらく待っていると、目が覚めたほむらちゃんがやって来た
ほむら「まどか……」
まどか「あ、ほむらちゃん。おはよう」
ほむら「え、えぇ。おはよう、まどか……」
まどか「急にごめんね、こんなところに連れて来ちゃって」
ほむら「気にしないで…ちょっと驚いたけどね……」
ほむら「それでまどか、どうしてこんなところへ?」
まどか「今日は…ほむらちゃんに、伝えたいことがあるの」
ほむら「私に……?」
以前、ほむらちゃんは同じことをわたしに言ってくれた
でもあのときのは、ほむらちゃんなりの冗談だった
だけど…あれから言われたことについて、考えることが多くなった
今回こんなことがあって思った。もう2度と、ほむらちゃんと離れたくない
いつまでも、ほむらちゃんの隣にいたい
ほむらちゃんと一緒にいると、その気持ちがどんどん強くなる
たった一言。それを伝えるだけなのに、わたしの心臓は痛いくらいに激しく脈打つ
それでも、伝えなきゃ。ほむらちゃんに、わたしの想いを
まどか「ほむらちゃん……」
まどか「わたしと、結婚してください」
言った
言っちゃった
もう後には引けない
ほむら「え…まどか……?」
まどか「……昨日の夜に言い合ったような、冗談半分なんかじゃないよ」
まどか「わたしは、ほむらちゃんが大好き。心から愛してる」
まどか「ほむらちゃんとずっと一緒にいたい。ずっと、ほむらちゃんの隣にいたい。だから……」
まどか「ほむらちゃん…わたしと、結婚してください」
ほむら「……夢じゃ、ないのよね……?」
まどか「……うん。夢なんかじゃない」
ほむら「……ふふ、そう…夢じゃ…ないのね……」ポロポロ
ほむら「嬉しい…まどかに、そう言ってもらえるなんて……」
ほむらちゃんの目から涙が零れ落ちる
あとは、ほむらちゃんからの返事を聞くだけ
まどか「ほむらちゃん…返事、聞かせてほしいな……」
ほむら「……そんなの、決まってるわ」
ほむら「喜んで」
まどか「……ありがとう、ほむらちゃん」ポロポロ
ほむら「まどか…まどか……!」ポロポロ
ほむらちゃんは
わたしのプロポーズを、快く受けてくれた
想いが通じて、本当によかった
わたしは嬉しくて、涙を堪え切れなかった
ほむら「まどか…泣かないで……」
まどか「ほむらちゃんだって…泣いてるじゃない……」
ほむら「ふふ…おかしいわね…嬉しくて、仕方ないのに……」
ほむら「でも、それを伝えるのがどうしてここなの?」
まどか「……ほむらちゃん、鈍いよ……」
ほむら「え?……あ…もしかして……」
まどか「うん…そのまま、結婚式をしようと思って」
ほむら「まどか…ありがとう。私とのこと、そんなにも考えてくれて……」
ほむら「でもまさか…まどかに結婚しよう、なんて言われるとは思わなかったわ」
まどか「わたしだって、やるときはやるんだよ」
ほむら「ふふ…まどかには敵わないわね……」
ほむら「でも、結婚式と言っても…私、よく知らないのだけど……」
まどか「えーと…うん、そうだ」
ほむら「まどか?」
まどか「ほむらちゃん」
まどか「ほむらちゃんは、わたしとずっと一緒にいることを、誓いますか?」
ほむら「え?えっと、誓い…ます」
まどか「ほら、次はほむらちゃんの番だよ」
ほむら「え、えーと…まどか、あなたは私とずっと一緒にいることを、誓いますか?」
まどか「はい…誓います」
ほむら「……こんな感じでいいのかしら」
まどか「想いがこもってれば…いいんじゃないかな」
ほむら「そう…ね……」
まどか「それじゃほむらちゃん…指輪を……」
ほむら「指輪ね…はい」
まどか「ありがとう。……それじゃ、手を……」
ほむら「……えぇ」
ほむらちゃんの白い指に、指輪を通す
ほむらちゃんの指にピンクが光る
ほむら「ありがとう、まどか。次は私ね……」
まどか「うん…はい、指輪」
ほむらちゃんが、わたしの指に指輪を通す
わたしの指に紫が光る
まどか「……指輪の交換もしたし、あとは……」
ほむら「えぇ…まどか……」
まどか「最後にかっこいいところ、見せてよ」
ほむら「それは…ちょっと出来そうにないわ……」
まどか「え?」
ほむら「……嬉しくて、涙が止まらないから……」ポロポロ
ほむら「まどか…私なんかで、本当にいいの……?」
まどか「ほむらちゃんだから…結婚したいんだよ」
ほむら「まどか…ずっと、私の隣に…いてくれますか……?」
まどか「うん…ずっと一緒だよ……」ポロポロ
ほむら「まどか……」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむらちゃんがわたしを
わたしがほむらちゃんを
優しく抱きしめる
わたしもほむらちゃんも、涙が溢れて止まらなかった
ぼやける視界の中で交わした
わたしとほむらちゃんの誓いのキスは
涙の味がした
ほむら「……ぷはっ」
まどか「ぷぁ……」
ほむらちゃんと重ねた唇を離す
そのときに見たほむらちゃんは
本当に、かっこよかった
ほむら「ふふ…今のまどか…本当に可愛いわ……」
まどか「ほむらちゃんも…すごくかっこいいよ……」
ほむら「これで…まどかと、どこまでも一緒よ」
まどか「うん…ほむらちゃん、愛してるよ……」
ほむら「まどか…愛してるわ……」
さやか「まどか!!」
杏子「ほむら!!」
マミ「本当におめでどう……」
さやか「邪魔しないようにこっそりとだけど、見守らせてもらいましたよ」
杏子「教会出のアタシが見届けたんだ。永遠に安泰だよ」
マミ「鹿目ざん…暁美ざん…幸ぜになっでね……」
ほむら「みんな……」
さやか「マミさん、大丈夫ですか……?」
マミ「……うん、もう大丈夫よ」
さやか「そうだ、せっかく結婚しちゃったんなら苗字も変えちゃいなよ。あたしたちの間でだけどさ」
マミ「それもそうね、せっかくだしね」
杏子「鹿目ほむらか暁美まどか、どっちがいいかねぇ」
ほむら「そんな急に……」
まどか「……」
ほむら「まどか?」
まどか「わたしは…暁美まどかがいいな……」
ほむら「まどかは…それでいいの?」
まどか「うん…わたしはその方が…嬉しいから」
ほむら「まどか…ありがとう……」
杏子「それじゃマミ…そろそろアレ、持ってきてやれよ」
マミ「わかったわ。それじゃ今持ってくるから、ちょっと待っててね」
そう言うとマミさんは、持ってくるものを取りに向かった
まどか「さやかちゃん、杏子ちゃん。協力してくれて、本当にありがとう」
ほむら「私も…まどかとこうなれるなんて、夢にも思わなかったわ…だから、あなたたちには感謝してる。……ありがとう」
杏子「おめでとな、2人とも」
さやか「調子乗って人前でイチャイチャすんなよー?」
ほむら「それは約束できないわね。こんなにかわいいお嫁さんなら仕方ないわ」
まどか「わたしも、こんなにかっこいいお嫁さんだと仕方ないかなって」
さやか「あはは…まぁ、いっか」
マミ「みんな、お待たせ」
さやかちゃんと杏子ちゃんと話していると、マミさんが白い箱を持って戻ってきた
杏子「お、来たか。さやか、テーブルの用意頼む」
さやか「はいよっと」ガタガタ
ほむら「これは…何かしら」
まどか「マミさんがウェディングケーキを作ってくれたんだよ。わたしも、どんなのなのかは聞いてないけどね」
マミ「よいしょっと…それじゃ暁美さん。これ、開けてみて?」
ほむら「えぇ。……それじゃ、まどか」
まどか「うん」
まどか・ほむら「せーの!」
まどか「うわぁ……」
ほむら「凄いわ……」
さやか「こんなケーキ、見たことないですよ!」
杏子「なんか…食うのがもったいないな」
マミさんが作ってきてくれたケーキ
わたしをイメージした桃と、ほむらちゃんをイメージしたブルーベリーを使ったケーキ
そして、そのケーキの上には
ドレスを着たわたしと、ほむらちゃんの砂糖菓子の人形が乗っていた
マミ「ふふ…これこそが、私の会心の作品…その名も……」
マミ「桃円と紫焔の誓いよ!!」
まどか「……」
ほむら「……」
さやか「……」
杏子「……」
マミ「あ、あれ?」
ほむら「……正直、あの円環の何とかってのよりはだいぶまともね」
まどか「うん。きっと桃円ってのがわたしで、紫焔ってのがほむらちゃんなんだよ」
ほむら「なるほどね…マミのネーミングもたまには大当たりするのね」
マミ「何よ…円環の理の何がダメだっていうの……」ズーン
さやか「それより、早く切り分けて食べようよ!」
杏子「それじゃ、一刀目はご両人にお願いするよ。ウェディングケーキだしな」
杏子ちゃんからナイフを受け取る
ほむらちゃんと一緒にしてきたことなんて、今までもたくさんあるけど
今日ここから、ほむらちゃんとの、新しい関係が始まるんだ
その最初の一歩目に
ほむらちゃんと一緒に
ケーキに、ナイフを入れた
――――――
マミ「美樹さん、使い方わかるかしら?」
さやか「大丈夫です!……それじゃ、タイマーで行きますよー!」ピッ
杏子「ほらさやか、急げ急げ!」
さやか「そんなに急かさんでも大丈夫だって」
まどか「ねぇ、ほむらちゃん」
ほむら「何?まどか」
まどか「ありがとう、ほむらちゃん。わたしの想いに…答えてくれて」
ほむら「お礼を言うのは私の方よ。私を選んでくれて…ありがとう、まどか……」
ほむらちゃんと一緒になれた。こんなに幸せなことはない
この先もずっと…ほむらちゃんを幸せにしてみせる
そんなことを考えていたら、ほむらちゃんが呼びかけてきた
ほむら「まどか、ちょっといいかしら?」
まどか「え?何、ほむらちゃ……」
さやか「あっ」
マミ「あらあら」
杏子「うおっ」
ずるいなぁ…また同じ手、使うなんて……
でも…そんなほむらちゃんが、大好き。この先も、ずっと
ほむらちゃん
わたしと結婚してくれて、ありがとう
わたしは、ほむらちゃんを
心から愛しています
. -‐……… ‐-ミ
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{: // }__|:::::|:::::::::} マ::::| ::::::::} ]/ 《=====≠" }}.\ | 、リ
|/〈 /;;; |:::::|:::::::::l、 | :::|::::::::::| ヘ. 〉 リ \! 乂
|:::∧ ,;;;;;;;;;|:::::|:::::::::|;;;、 | :::|::::::::::| l! >ー―< ====≠'" { ノ
Fin
446 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/09/24 22:44:54.73 TRZiL7Dco 354/357これにて完結です
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました
447 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/09/24 22:48:03.29 Lx4uRYXLo 355/357乙
最後は甘甘やったな
455 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/09/25 11:17:15.70 Qoa1zhLEo 356/357長編乙!
甘々どころじゃない甘さやでぇ…
457 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/09/25 13:07:55.64 CPTLznCYo 357/357乙
また甘々まどほむ書いてくれ
いや下さい