1 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/09/23 22:21:26.28 z1QNh7QR0 1/106

少女「そうだけれど、それがどうかしたのかしら」

「いや吸血鬼目の前にして『おなか空いた』なんていわれた日にゃ生きた心地がしないと思うんだけど・・・」

少女「ああ、血を吸われるかも、的な?」

「まさにそれ」

少女「大丈夫よ・・・あなた不味そうだもの」

「・・・ええと、喜ぶところ、なのだろうか」

少女「どうかしらね。価値観によると思うわ」

(価値観・・・?)

元スレ
少女「・・・おなか空いたわ」男「いやお前吸血鬼なんだろ?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1348406486/

4 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 22:24:40.14 z1QNh7QR0 2/106

「それで、」

少女「なにかしら」

「吸血鬼、なワケなんだよね」

少女「そうだと何度言えば分かるのかしら。人間はここ数年で言葉すら理解しなくなったの?」

「いやその、なんというか、確かに吸血鬼っぽくはある、っていうか、その片鱗は見たけどさ」

少女「信じられないのね、吸血鬼が」

「・・・まあありていに言えば」

少女「人間というのは昔からこう・・・見たものしか信じないというか、見ても信じないというか・・・」

5 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 22:28:15.11 z1QNh7QR0 3/106

「あの・・・」

少女「あなたの目は何のためについているの?自分の目すら信じられないなんてどうかしているわ」

「いやそうはいっても・・・」

少女「ならもう一度、今あなたの目の前で起きたことを説明してあげましょうか?」

「いや、あの、それは、多分大丈夫・・・だと思います。いやそう思う」

少女「どうかしら。あなたお世辞にも頭のよさそうな人間には見えないけれど」

「大きなお世話だけど、なんという高飛車な・・・」

少女「へえ、それが命の恩人に対する態度なのね?礼儀のれの字も知らないバカなのかしら」

「うぐ・・・」

6 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 22:32:31.48 z1QNh7QR0 4/106

少女「それで、あなたはこんな夜中に何をしていたのかしら。私がいなかったら死んでたわよ」

「あの・・・実はペットに逃げられて・・・」

少女「ペット。よほど人望が無いのね」

「いや相手鳥だし・・・」

少女「鳥も自由を手にしたということでしょう。無理に引き戻すなんて残酷だとは思わないのかしら」

「・・・」

少女「さて、と。多少鬱憤も晴れたわ。たまには気まぐれを起こすのも悪くないわね」

「ええと・・・」

少女「そろそろ、なんだったかしら。ああそう、警察が飛んでくるはずだわ。後の説明は自分で何とかするのね」

「いや、それはちょっと無理だと思うんだけど・・・」

7 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 22:33:48.62 z1QNh7QR0 5/106

少女「それで、あなたはこんな夜中に何をしていたのかしら。私がいなかったら死んでたわよ」

「あの・・・実はペットに逃げられて・・・」

少女「ペット。よほど人望が無いのね」

「いや相手鳥だし・・・」

少女「鳥も自由を手にしたということでしょう。無理に引き戻すなんて残酷だとは思わないのかしら」

「・・・」

少女「さて、と。多少鬱憤も晴れたわ。たまには気まぐれを起こすのも悪くないわね」

「ええと・・・」

少女「そろそろ、なんだったかしら。ああそう、警察が飛んでくるはずだわ。後の説明は自分で何とかするのね」

「いや、それはちょっと無理だと思うんだけど・・・」

8 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 22:37:04.93 z1QNh7QR0 6/106

重い・・・連投になってしまったすまぬ

少女「無理?ありのまま説明したらどう?吸血鬼がやったことだ、って」

「それで警察が納得すると思うのかよ・・・」

少女「そう、まったくどこの国の人間も同じね。融通が利かないというかなんというか。それじゃどうするのかしら」

「そりゃ・・・逃げるしかないんじゃないかな」

少女「それは大変ね。せいぜい頑張ってお逃げなさいな」

「そうするけど、あの、本当に吸血鬼、なんだよね」

少女「・・・しつこいわね。なんなら、あなたの喉元に噛み付いて証明しましょうか?」

「勘弁。・・・。一つだけ聞いてもいい?」

少女「・・・」

10 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 22:41:45.75 z1QNh7QR0 7/106

「最近のこのあたり一帯の事件、犯人はお前か?」

少女「・・・誰に断って質問しているのかしら。まあいいわ。その質問に答える義務でもあると思って?」

「・・・」

少女「・・・違うわ。私は吸血鬼だけど、そういう下賎なことはしないし、そもそもここに来たのもつい最近のことよ」

「・・・そう、かい」

少女「信じるの?片手でトラックを投げ飛ばした、得体の知れない吸血鬼を?」

「少なくとも、今俺を助けてくれただろ」

少女「・・・まったく、たまに余計なお世話をするとろくな事にならないわね」

・・・ファンファンファン・・・

「あ、そうだ逃げないと・・・。お前も早く逃げ・・・、・・・消えた」

12 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 22:45:50.45 z1QNh7QR0 8/106

翌日 PM12:48

「・・・という話、信じるか?」

「キミを撥ねかけた、どう見積もっても一トンはあるトラックを、金髪の少女が投げ飛ばした、って話をか?」

「・・・我ながらなんというこっけいな話」

「そうだな、普段の私なら間違いなく笑い飛ばすだろうが。しかしどうもそういうわけにもいかないだろう」

「今朝の話か?」

「正確にいえばそれこそ昨晩の話だ。また血抜き遺体が見つかったそうだ」

「今朝ニュースになってたよ。これで八人目か?」

「驚くね。そしてここにきてキミのいう吸血鬼だ。偶然だと思うか?」

13 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 22:48:59.41 z1QNh7QR0 9/106

「中二病を発症した女子中学生とか」

「可能性としてはある。しかしトラックの件が本当なら、幻覚でもない限りそれはないな」

「じゃあ本物の吸血鬼?」

「まさか。そんなものは御伽噺だ。・・・しかしこれでもトラックの件は説明できない」

「・・・」

「そんな危険な奴がこの街に入り込んでいるのは不気味だ。彼女が犯人だった、という可能性もある」

「まさか・・・なあ」

14 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 22:53:00.03 z1QNh7QR0 10/106

「なんにせよ用心した方がいい。体中の体液を抜かれて殺されるのはごめんだ」

「・・・それは同感」

「あれれ、二人とも何の話?真面目な顔しちゃってー」

「まあその、来るべき大学受験について、少し」

「ダウト一億」

「最近物騒だ、という話だ。この辺一帯の学校も集団下校だし、早く営業をやめる店も出てきているくらいだからな」

「あー、それは思うねー。怖い話だよ、今朝ので八人目でしょ?」

「ああ。だから気をつけないと、って話だ」

(・・・嘘ではないよな)

15 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 22:56:09.70 z1QNh7QR0 11/106

同日 17:27 男自宅前

(集団下校とはいえ、最終的にはこうやって一人になるわけだろ?あんまり意味無いよな・・・)

(・・・)

「・・・あれ、鍵どこやったかな・・・」

少女「鍵なら鞄の中よ。さっきからチャリチャリとやかましいわ」

「ああ、そうだったサンキュ・・・のわ!?」

少女「人を化け物みたいに見るなんていい度胸じゃない。・・・まあ当たってはいるけれど」

「お前、昨日の・・・」

少女「昨日の吸血鬼よ。思い出したかしら?」

16 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:00:23.09 z1QNh7QR0 12/106

「・・・ゴクリ」

「それで、今度は一体何のようだ?」

少女「随分怯えているのね。心拍数が跳ね上がったわよ。初心な女の子じゃないんだから、少しは冷静になったらどう?」

「なんのようだよ・・・?」(回りに人影ねえ・・・、襲われでもしたら・・・)

少女「これでもあなたを見つけるのには苦労したの。別に取って食いはしないわよ」

「え?」

少女「ちょっと聞きたいことがある・・・というか、何がどうなっているのか、説明してほしいわけ」

「ええと・・・?」

少女「鈍いわね。この町で『吸血殺人事件』とかいう事件、起きているでしょう?」

17 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:02:49.76 z1QNh7QR0 13/106

「え?」

少女「・・・」

「ええと、起きてる、けど」

少女「それについての話よ。この新聞とかいうやつは漢字が難しくていまいちよく分からないの。だから説明なさい」

「あの、それってどういう・・・」

少女「一体何が起きたのかを全部説明しなさい、と言ってるの」

「・・・なんで俺が」

少女「昨日の貸し、忘れていないでしょうね」

「ぐ・・・」

19 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:07:04.20 z1QNh7QR0 14/106

「・・・お前が犯人じゃないのか?」

少女「なんですって?」

「だから、お前吸血鬼なんだろ?だったら、その、八人の血を吸ったとか・・・」

少女「・・・妥当な推測だわ。無礼は特別に許すけれど、反論するとしたら、私は昨日あなたを助けるためにあなたと一緒にいたわね」

「・・・そうだな」

少女「今朝の死体の発見場所はあそこからは随分遠いわよね。私には不可能だし、そんな下賎なこともしないわ」

「いや、でも吸血鬼なんだからそれくらいは・・・」

少女「はぁ・・・。いいかしら、吸血鬼は招き入れられないとその家や敷地には入れないの。私も例外じゃない。そいつが見つかった場所を調べればすぐにわかるわ」

(・・・話がまったく読めん)

20 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:11:42.46 z1QNh7QR0 15/106

少女「吸血鬼にもルールがある。勿論昼間は歩けないし、十字架もダメ。そういうのの一つが、今の話」

「招き入れられないとは入れない・・・?」

少女「だからもし私が犯人だとしたら、被害者本人に招き入れられる必要がある。そんな時間があったかしら」

「でもお前は瞬間移動したじゃないか、昨日俺の目の前で」

少女「見た目のとおりバカなのね。消えたんじゃなくてすぐそばの路地に入ったのよ。あなたが勝手に見失っただけ」

「・・・」

少女「それにもし私が犯人なら、昨日あなたを餌にしていたでしょうね、間違いなく」

「・・・」

少女「質問は終わりかしら?なら今度は私が質問するわよ」

22 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:18:36.10 z1QNh7QR0 16/106

「殺人事件の話か?」

少女「そう。まず最初の被害者はどこでいつ見つかったのか、教えてもらうわ」

「・・・確か一ヵ月半くらい前だ、夏休みが終わる頃に最初の事件が起きた。地元の男子中学生がその、体液をなくした状態で見つかった」

少女「中学生・・・」

「その次は確か・・・爺さん。ちょっと待って、今スマホで検索する」

「・・・あった。次はまた中学生、婆さん、OL、女子高生、サラリーマン、だそうだ」

少女「全員が血を抜かれた状態で?」

「ああ。そうだ、ここに書いてある」

少女「・・・」

「あの・・・」

少女「何かしら」

「いや、あまりに気難しい顔してたから」

23 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:23:33.33 z1QNh7QR0 17/106

少女「ふん・・・。そう、分かった。それだけ分かっただけでも大きいわ」

「なあ、確認するけど、本当に吸血鬼なのか?」

少女「・・・くどいわ」

「いや、考えてみるとさ。俺お前の怪力しか見たことないし、それだけで吸血鬼です、っていわれても・・・」

少女「・・・ハァ。人のことを怪力女扱いとは、怖いもの知らずもいい加減にするのね」

少女「まあいいわ、そこまでいうなら、少なくとも私が化け物だということを教えてあげるわ」

「え」ゾワッ

少女「―――!!」

「!!」

(なん、だこれ・・・、体が動かな・・・)

24 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:26:49.00 z1QNh7QR0 18/106

少女「・・・吸血鬼がどうやって獲物をしとめるか、分かったかしら?」

「」

少女「その気になれば肺の動きも止められるのだけれど、その必要はなさそうね」

「」

少女「さて、と。私はもう行くけれど、何かの縁だから言っておくわ。多分この町では今とても不味いことが起きている。死にたくないなら、逃げた方がいいわ」

「」

少女「じゃ、もう会うこともないでしょうけど。もうすぐ金縛りは解けると思うから、安心するといいわ」

「」


「・・・プハッ!?あ、動ける・・・!」

25 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:28:59.04 z1QNh7QR0 19/106

「あいつは、もういないか・・・」

(くそ、なんだってんだよ昨日から・・・。頭がどうにかなっちまったのか・・・?)

「・・・吸血鬼、か・・・」

(まずい事がおきている・・・。この殺人事件が?本物の吸血鬼が出てくるよりも?)

「・・・わけわかんねー・・・」

27 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:33:10.30 z1QNh7QR0 20/106

同日 22:19
通話 男→友

『金縛りについては科学的に色々研究されていたが、しかしこれは面白いな。聞く限りでは催眠術の一種にも思える』

「どっちでもいいけどよ、あいつやっぱり本物だと思うか?」

『もしそうだとしても、今一番問題なのは、彼女が犯人なのかどうか、という点だろう。そのことについては、』

「違うって言ってたな、招き入れられないとどうとか」

『興味深いな。確かに吸血鬼伝説の中にはそんな逸話もあるが』

「そうなのか?」

『有名どころでは、流水をわたれないだとか、杭で心臓を打ち抜けば死ぬとか』

「ああ、それは聞いた事ある」

28 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:37:12.54 z1QNh7QR0 21/106

『しかし、ふふっ』

「どうした?」

『いや、杭で心臓を打ちつけられたら死ぬ、というのはどうなのだろうな。そんなことされたら吸血鬼じゃなくとも死ぬと思うのだが』

「ああ・・・なるほど確かに」

『ああ、すまんな話が逸れた。よし、では彼女が仮に本物の吸血鬼だとしよう。なぜこの町に現れたのだろうな』

「・・・分からん。吸血鬼の知り合いは他にいないし」

『同感だ。推測するならば、例えばこの町が吸血鬼たちの狩場になった、とかどうだろうか。マニアが喜びそうな設定だと思うが』

「勘弁してほしい」

『そうだな。しかし実際、この事件は不謹慎ながら、マニアにはウケているようだ』

「そうなのか?」

29 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:41:42.90 z1QNh7QR0 22/106

『日本のマスコミも面白がって連日ニュースにしているくらいだ、オカルトが食いつかないわけがない』

「・・・それもそうだ」

『今片手間にインターネットで検索してみているが、英語、フランス語、ロシア語、多くのサイトがヒットする。やはりあちらの人たちの関心は高い』

「吸血鬼だもんな、日本で」

『ふむ、嘘かホントかは分からないが、アルバニアからはヴァンパイアハンターが日本に向けて多数出動しているそうだ。ヴァチカンからもだ』

「ヴァチカン?それってアンデルs、」

『あそこはキリスト教カトリックの総本山だからな、宣教師や調査隊の一つや二つは派遣するだろうさ』

「あ、ああ。そうだよな。あれは漫画の話だからな・・・」

30 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:44:29.39 z1QNh7QR0 23/106

『いずれにせよ、今後はさらに危険になるかもしれないな。面白がる連中が増えるのはいいことではない』

「それは言えるな。少なくとも吸血鬼、らしいやつも入り込んでることだし」

『そういうことだ。ではまた明日な。私はもう少し吸血鬼について調べてみるよ。興味が沸いてきた』

「・・・ほどほどにな」
(通話終了)

「・・・ハァ。寝よう・・・なんかすごく疲れた」

31 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:47:53.72 z1QNh7QR0 24/106

翌日 7:48 通学路 男自宅→学校(移動中)

「おっはよー!」

「おっと・・・。毎度驚かされるな、お前の元気いっぱいな声には」

「元気が取り柄ですからねー」

「それは間違いない」

「ん?何だか疲れた顔してる?」

「え?ああ、最近ちょっと、な・・・。お疲れ気味というか、お憑かれ気味というか」

「?」

「あ、気にするな。寝不足なだけだ」

33 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:50:53.47 z1QNh7QR0 25/106

「それより、お前今日朝練無かったのか?」

「あー、ここのところぶっ続けだったから、今日はお休み。放課後はあるんだけどね」

「この物騒なときに・・・」

「でも大会直前だからね、大丈夫、部員で出来るだけまとまって帰ってるし。先生も途中まで来てくれるしね」

「・・・ま、大会なら仕方ないな。勝てるといいな、試合」

「うん、頑張るよ勝利のために!」

(薙刀ってどういう大会なんだか、俺にはよく分からないけどな・・・)

34 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:53:57.79 z1QNh7QR0 26/106

同日 昼休み 12:33 教室

「・・・飯食わなくていいのか?」

「ああ・・・。少し熱が入りすぎて今日は徹夜だ・・・。少しでも寝たい」

「ずっと調べてたのか?」

「気がついたら朝で・・・」

「・・・言わんこっちゃ無い」

「・・・姉にも呆れられたよ。姉の彼氏にも」

「ああ、隣に住んでるんだっけ?」

「姉の幼馴染だ・・・ってそんなことはどうでもいいんだ、一つ気になることがある」

「?」

36 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/23 23:58:32.13 z1QNh7QR0 27/106

「どこだったか・・・ああ、これだ。この紙を見てくれ。とあるページを印刷したものだが」

「吸血鬼についての?」

「うん。吸血鬼に血を吸われた者がどうなるか書いてあるだろう?」

「吸血鬼になるんじゃないのか?」

「グールというのを聞いた事は無いか」

「ああ、それは知ってる。漫画にも描いてある、確かゾンビみたいなのに変わっちまうんだよな」

「それによると、非童貞非処女はグールになると、そんなに気恥ずかしそうにするな、真面目な話だ」

「あ、ああすまん」

「気になるのはそこだよ、被害者は吸血鬼はおろかグールにすらならないで見つかっているだろう?」

「・・・そうだな」

37 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 00:02:47.42 3iQgOj6r0 28/106

「となれば、考えられるのは二つだ。犯人は吸血鬼などではないか、吸血鬼にもグールにもしない方法で血を吸っているか」

「・・・けど、後者は吸血鬼が存在している、て仮定の話だろ?」

「キミのいう少女が吸血鬼ならば、現実味を帯びてくるがな・・・」

「どうだろうな・・・。だって吸血鬼だぞ。突拍子無いだろ?」

「まあ、な。あくまで可能性の話だ。・・・いかん限界だ・・・」

「まったく・・・」

「ただいまー・・・て、あれ、寝ちゃったの?」

「たった今な。次の授業、理科室だよな」

「うん。移動まで寝かせてあげようよ」

38 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 00:08:37.47 3iQgOj6r0 29/106

「ふわぁ・・・。いかんな、俺も眠くなってきた」

「ただでさえ、次の授業は眠くなるのに。居眠りしちゃうんじゃない?」

「あり得る・・・。今日はレーザーと水を使った光の屈折実験、だったか?」

「ううん、それは前々回やったから、今日はええと、食塩とレーザーだね」

「どんだけレーザー好き何だか・・・。確かにあの光は暗闇にははえるけど」

「う・・・やはり少しでも寝ると違うな・・・」

「なんだもう起きたのか」

「寝つきと寝起きはいいからね・・・。次は理科室、だったか?」

「ああ。あ、これ返すぞ」

「?何のプリント?」

「ああ、今度演劇部がやる演劇についての資料だ。しかしやはりこの案は没だな、他の案を提供しないと」

40 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 00:12:55.23 3iQgOj6r0 30/106

同日 21:29 男自宅

「んあ・・・?なんだよ、インク切れか?」

「参ったな、このレポート、提出日明日なのに・・・。なんでわざわざボールペンで清書しなきゃなんねえんだか・・・」

「・・・仕方ない、コンビにまで買いに出るしかないか・・・」

(・・・すぐそこだし、まさかな・・・)

移動中 自宅→コンビニ

(さすがに人通りもまばらだな・・・。まあ当然のことか)

「そこのキミ」

「え!?」

警察官「こんな時間に何をしてるのかね?今夜中に一人で出歩くのは危ないだろう!」

「あ、ああすいません。でもちょっとコンビニに用事があって・・・」

42 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 00:16:34.01 3iQgOj6r0 31/106

警察官「ダメダメ、こんなときに一人で行かせられない。すぐに帰りなさい」

「で、でも」

警察官「でもじゃない!」

「では、私が一緒ならよろしいですかな?」

「!?」

警察官「なんだねキミは」

老紳士「なに、そこの少年とはちょっとした知り合いでしてね。コンビニに私もちょうど行こうとしていたところですゆえ」

警察官「身分証を出しなさい、身分証を」

老紳士「これでいいですかな?」ス・・・

警察官「なんだねこの石は―――」

「・・・え?」

警察官「」

老紳士「さ、参りましょう。今のうちです」

43 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 00:22:14.64 3iQgOj6r0 32/106

「え?え、ちょっと」

老紳士「そのまま自然に歩いてください。見つかったらまた面倒です。今この町で何が起きているか、知っておいででしょう」

「だ、だからこそ信用できないんじゃないか」

老紳士「さっきのをご覧になられましたね?やろうと思えばあなた様をあの警官のごとく身動きを取れなくしてもいいのですが、そうしない理由を酌んでくだされば・・・」

(こいつ・・・?)

老紳士「・・・さてここまで来れば撒いたでしょう」ススス・・・

(・・・今右手の指が奇妙な動きをしたような・・・)

老紳士「さて、改めて申し上げますが、私はあなた様に手荒な真似はいたしません。しかし質問に答えていただきたい」

「質問・・・?」

老紳士「なに、コンビニに着くまでには済みます。あなた様は―――」

老紳士「吸血鬼、という存在を信じられますか?」

「!」

老紳士「ああいえ、もちろん私は吸血鬼ではございません。ただの質問ですので」

45 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 00:26:50.85 3iQgOj6r0 33/106

「な、なんでそんなことを俺に・・・?」

老紳士「ふふ、老人の勘でございます。あなたは吸血鬼ではないが、吸血鬼の臭いがかすかにする」

(こいつ・・・何者なんだ・・・?)

老紳士「ゆえに、ひょっとしたら吸血鬼と接触したのではないかと考えました。思い違いでしたでしょうか」

(思い違いでそんな質問するやついないだろ・・・!待てよ、まさか・・・)

『ヴァンパイアハンターが日本に向けて・・・』

(・・・間違いない、こいつはそうだ。そういうタイプの人間だ・・・)

老紳士「沈黙が答えですかな?」

(くそ・・・こういう時、あいつなら・・・!)

「―――思い違いかもしれないのに、そんな確信じみた質問をするんですか?」

46 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 00:31:48.01 3iQgOj6r0 34/106

老紳士「気を悪くされましたかな?」

「いえ。でも、吸血鬼ですか。確かにこの町では今そんな名前の殺人が起きてます」

老紳士「ええ。いまや世界中が知っております」

「その犯人が吸血鬼だ、と?」

老紳士「さあ・・・。その辺は分かりませぬな」

「もしそうだとして、なら、俺の周りにその吸血鬼がいる、と?」

老紳士「最近接触した、そのような気がいたしましたので」

「・・・思い違いです。もし犯人が吸血鬼でこの辺にいるのなら、俺がすれ違った誰かがそうだっただけでしょう」

老紳士「そうかも知れません。ですから、その確認を今しているところでございます」

「吸血鬼なんてのは、西洋の御伽噺だ。ここは日本だ、まだ雪女や天狗の方が真実味があります」

老紳士「・・・ふ、度胸のあられる若者です。しかしその可能性も否めないわけでしたな。いかんせん、私の急ぎすぎでした」

「え?」

老紳士「歳は取りたくありませんな。頭の回転すら遅くなる。しかしいささか時間がありませぬゆえ、失礼をいたしました」

48 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 00:35:42.64 3iQgOj6r0 35/106

「・・・」

老紳士「化け物、というのは今もどこかで生きているのでしょう。我々が多くを隅に追いやってしまいましたが、恐らくはまだまだ健在だ」

「何の話ですか?」

老紳士「爺の独り言でございます。さて、目指すコンビにはあれですな。さすれば、私はこれで失礼をいたしますゆえ・・・」

「失礼って、あんた結局何者―――」

「・・・またいない。最近こんなのばっかりだ」

「・・・あれ、何しにここに来たんだっけ。・・・ああ、そうだボールペンだボールペン・・・」

(・・・まずい事、時間が無い。吸血鬼、ハンター。ああもう。漫画じゃないんだぞまったく・・・)

50 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 00:40:30.34 3iQgOj6r0 36/106

男自宅 25:29

「・・・ダメだ、まったく集中できん。これも全部あの吸血鬼とハンターのせいだ・・・」

「あー・・・。もうこの辺適当でいいかな・・・。ん・・・?」

男 携帯(着信) 友

「こんな時間に・・・。もしもし、ああ、ちょうど良かった。一つ聞きたいんだけど、明日提出のレポートの、」

『バカ、レポートどころの騒ぎじゃない!!』

「・・・?どうした、そんな切羽詰ったような声出して」

『女が死んだ!!殺された、例の殺人事件に巻き込まれた!!』

52 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 00:45:55.97 3iQgOj6r0 37/106

翌日 11:47 男自宅

「見つからなかったか?」

「そんなことどうでもいい。彼女が死んだ。殺されたんだ。自宅待機が知ったことか」

「・・・夕べは寝れなかった」

「私もだ!彼女が九人目だなんて・・・!!」

「ッ・・・」

「・・・もう泣かないぞ私は。昨日一晩泣いたんだ、それよりも絶対に犯人をとっ捕まえてみせる」

「犯人・・・」

「吸血鬼なら心臓をくり貫いてそこにニンニクをぶち込んで太陽光で炙ってやる。もし人間なら―――」

「もういいやめろ。・・・あいつが殺されたのは間違いないんだな」

「・・・ああ。警察からの電話でたたき起こされた」

53 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 00:51:07.95 3iQgOj6r0 38/106

「警察から?」

「・・・彼女と最後に連絡を取ったのは私だった。だからだそうだ。午後から事情聴取の予定だ」

「連絡取ったのか?」

「メールの履歴がある。見ろ、最後の送信が17:48だ。その三分前に部活が終わって、私にメールをしてきた」

「なんだっていうメール?」

「レポートについて。こんなくだらないやり取りが最後になるなんて私は・・・ッ」

「・・・確かあいつは部活メンバーで集団下校してるって言ってたが」

「あんなものはザルだ。家が近くなったら、必然的に一人になるだろう!」

「ああ、それはわかってる。見つかった場所は、どこだか聞いたか・・・?」

「・・・彼女の自宅から少し外れた、小さな路地だそうだ」

(路地・・・)

54 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 00:54:08.75 3iQgOj6r0 39/106

「・・・こんなときに言うことじゃないかも知れんけど、実は昨日、ヴァンパイアハンターらしき男と会った」

「・・・そいつに吸血鬼は狩らせない。私がやる」

「やめろ!しっかりしろよ、女が死んだのは別にお前のせいじゃないだろ!」

「・・・」

「・・・吸血鬼が犯人なのだとしたら、俺たちにはどうすることも出来ないだろ」

「・・・そうかもしれない。いや、そもそも吸血鬼が存在するのなら、という前提で、だが」

「・・・」

「・・・」

57 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 00:58:10.25 3iQgOj6r0 40/106

同日 17:33(日没時間) 移動中

(・・・他に手はない。杭はなかったけど、十字架はあった。杭の代わりにナイフも持った。あの吸血鬼を探すしかない・・・)

(でもどこを探せばいいんだ・・・?見当もつかねえ・・・)

(闇雲に動いて見つかるのか・・・?)

「あ・・・」

警察官「・・・」ウロウロ

(昨日の警官、またここにいやがる・・・。市民的にはありがたいけど、今は邪魔でしかねえっての、クソ真面目)

(仕方ない、こっちには行けないから、他を探すしかねえか・・・)

(・・・そうだ・・・)

60 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 01:04:35.26 3iQgOj6r0 41/106

・・・

「ここが遺体発見現場、か。やっぱりまだ入れそうにないよな。警官が二人もたってるし。・・・ん?」

警官A「」

警官B「」

(・・・なんかすげえボーっとしてないか?寝不足、ってわけじゃなさそうだけど・・・。それに、あんだけ騒いでたマスコミが一切いないのはおかしくねえか?)

「・・・もしかして・・・」

遺体発見現場

「ッ・・・。分かっていたけど、気分は最悪だな・・・。ここであいつが死んだなんて・・・」

「・・・いるんだろ吸血鬼。出て来いよ!!」

少女「・・・やかましいわね。誰かと思ったらいつぞやのバカ犬じゃない」

「・・・お前、ここで何してんだ」

少女「現場検証、といって信じるかしら。もっとも、これ以上は何も分かりそうに無いけれど。それで、こんなところにノコノコ現れて、何がしたいのかしら?」

「・・・ここで殺されたのは、俺の親友だ」

少女「!」

61 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 01:08:06.70 3iQgOj6r0 42/106

少女「・・・そう。なら、その敵意むき出しの目も納得だわ」

「お前がやったんじゃないのか」

少女「・・・」

「答えろよ」

少女「・・・何を言っても、信じないのではなくて?それでもあえて答えるわ。私はやっていない」

「・・・」

少女「・・・」

「じゃあ、誰がやったんだ?」

少女「それは、私にも分からない。でも少なくとも。人間の仕業じゃあないわね」

「・・・吸血鬼がやったとでも?」

少女「おそらく」

「お前以外の吸血鬼が、この町にいるって?お前以外の吸血鬼が、あいつを殺したって?」

少女「ええ、そうよ」

62 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 01:11:35.49 3iQgOj6r0 43/106

「・・・」

少女「私としては、それで信じてもらうしかないわね。証明も証拠もないけれど。・・・いいや、違うわ。ひとつだけ、証拠がある」

「証拠?」

少女「童貞と処女は吸血鬼になる。それ以外は生ける屍になる。これも吸血鬼のルール」

「知ってる」

少女「ぶっきらぼうになる前に聞きなさい。これ以外にもう一つ、ルールがある」

「なんだよ」

少女「・・・」


少女「・・・犯されながら血を吸い尽くされたものは、そのまま、死ぬ」

63 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 01:15:01.50 3iQgOj6r0 44/106

「」

少女「・・・」

「・・・おい、待てよ」

少女「・・・」

「それじゃ、それじゃああいつは・・・」

少女「・・・女である私にはそれが出来ない。男なら出来たでしょうね。獲物が男でも、女でもね」

「」ガクリ

少女「最初の吸血鬼はドラキュラいう男の吸血鬼だった。ゆえに、吸血鬼の中では男のほうが有利なこともある。・・・これがその一つ」

「じゃあ、今までの被害者は全員、全員、あいつ含めて、・・・」

少女「それを信じるか否かはあなたに任せるわ。けど私は今のあなたのような人間に嘘をつくほど堕ちていない」

65 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 01:21:23.77 3iQgOj6r0 45/106

少女「・・・乱暴されながら血を吸われるとね、心が、魂が壊れるの。修復が出来ないほどに。だから、吸血鬼にもグールにもなれない」

「じゃあ・・・じゃあ吸血鬼は男・・・。男の吸血鬼・・・」

少女「そういうことになるわ」

「いくら、化け物とはいえ、そんなことを、平気で―――」

少女「するわ、平気で。それが化け物なのよ。おそらくそれが鬼の本質。理性を失った吸血鬼の成れの果て」

「・・・どうすればいい」

少女「え?」

「どうすれば止められる?どうすればあいつの敵を討てる!?」

少女「・・・無理よ。いくら暴走しているとはいえ、相手は吸血鬼。人間の敵う相手じゃないわ」

「関係ない。そんなのもう関係ない。俺は、絶対に、そいつを斃す。絶対に」

少女「・・・この先に、彼女が倒れていた現場がある。・・・それを直視できる?」

「!!」

少女「できるのなら、あなたは鬼になるわ。私たちと同じ力を持つ化け物に。出来る?」

66 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 01:26:15.43 3iQgOj6r0 46/106

「・・・できるさ。やってやる。この先だな、この奥で・・・!!」ダッ

少女「・・・」

「・・・!!!!!」

(血まみr・・・あの線は、人型の線は・・・いや、あいつはそんなに小さかったか・・・!?)

「ぐ・・・うぅぅぅ・・・!!」

「うあああああああああああああああああ!!!!!」


少女「・・・見れなかったわね」

「ぐ、ゲホゲホ・・・。うぁ・・・っ・・・」

少女「血を吸われればあの位に体はしぼむわ。あれだけの所業を、するのが鬼よ」

「ぐぅう・・・」

少女「・・・でも、それでいいわ。人は鬼になる必要は無いわ。人は人として不可能と戦わないとならない。鬼を倒せるのは、人間の魂だけなのだから」

67 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 01:29:43.10 3iQgOj6r0 47/106

19:43 男自宅 前

「聞いていいか」

少女「何かしら」

「もし俺が、あの光景を直視できていたとしたら、どうしてた」

少女「あなたを殺して、去っていたわ。これ以上厄介ごとを増やしたくは無いもの」

「・・・」

少女「でもあなたは人間のままであり続けた。それだけで十分だわ」

「・・・さ、上がってくれ。散らかっているけど」

少女「いいのかしら。私は招かれないと家には入れないけれど、一度入れるようになったらもう死ぬまで追い出せないわよ」

「いいさ。その時は、お前を殺して去るだけだ、これ以上厄介ごとが増えるのはごめんだからな」

68 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 01:34:33.85 3iQgOj6r0 48/106

少女「・・・両親は?」

「死んだ。今は、裏に住んでる叔母ちゃんが面倒見てくれてる」

少女「・・・そう」

「それで、犯人の目星は?」

少女「まったく不明。そもそもこんな島国に突然理性を失った吸血鬼が現れるなんて妙な話だわ」

「どこかから渡ってきたんじゃないのか」

少女「それでも妙よ。普段私たちは、ヨーロッパの城とか大きな屋敷に悠々と暮らすのに、なんでこんな島国にわざわざ行くのか」

「何か理由がある?」

少女「それも理性を失っていることに関係あるかもしれないわね」

「・・・」

少女「いずれにせよ、これ以上の狼藉は許さない。まったく不愉快よ」

「ああ・・・」

少女「・・・ひどい顔だわ。ねえ、ちょっとこっち向いてくれるかしら」

69 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 01:37:01.84 3iQgOj6r0 49/106

「なんだよ」

少女「いいから。私の目を見なさい」

「・・・」

少女「―――!」

「!!」ゾクッ

「また金縛りか!!・・・あれ、動ける。・・・それに・・・」

少女「ちょっと心の中を整理したわ。少なくともトラウマや、ええと、心的外傷何とかにはならないと思うわ。感謝しなさい」

「・・・元はといえば、お前が見ろってけし掛けたんじゃないのかよ」

少女「仕方ないでしょう、そうするしかなかったのだし」

「それで、今後の計画は」

72 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 01:42:48.83 3iQgOj6r0 50/106

少女「今のところ何も」

「あ!?何の計画も無いのか!?」

少女「あのね、計画なんか立てられるのなら私はとっくに不逞の輩を締め上げているわ。なまじ暴走してる分、次の計画が読めないのよ」

「そんな、じゃあ手詰まりじゃねえか」

少女「・・・今夜一晩で考えをまとめるわ。とりあえず、あなたは腹ごしらえでもなさいな。少なくとも胃が受け付けないことはないはずよ」

「あんな光景見た後にか・・・?」

少女「いずれにせよ考えをまとめる必要があるわ。その間暇でしょう?」

「・・・ああ、わかったよ」

少女「ああ、少しは手伝うわよ。何か作業していたほうが雑念が消えてやりやすいし」

「意外とマメな奴だな・・・」

少女「ふん」

「じゃあ俺は野菜を切るから、お前はご飯炊いてくれ。・・・出来るか?」

少女「なめられたものね・・・」

74 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 01:46:52.63 3iQgOj6r0 51/106

「ああ、違うそこじゃなくて右のボタンを押すんだ、そうそう」

少女「いい加減年下扱いはやめてくれないかしら。こうみえてあなたの何百倍も生きてるのだけれど!」

「違うそれは予約ボタンだ、それじゃなくてその下の、」

少女「ああもう、面倒だわ!!」

「だからここを―――イテッ!!」

少女「・・・え?」

「いたた、指先切っちゃったよ・・・。まったく、気が散るんだよな・・・」

少女「」

「絆創膏どこだったかな・・・。ん?おいどうかしたか?ただの切り傷だぞ?」

少女「」ドクン・・・

「・・・?あれ、お前って目赤かったっけ・・・?」

76 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 01:51:11.83 3iQgOj6r0 52/106

少女「うぐ・・・!!」

「え!?お、おいどうした!?何かの攻撃か!?」

少女「近、寄るな・・・!!離れて・・・!!」

「お、おい?」

少女「うかつだった・・・。人間、少し、席を外すけど、気にしないで・・・」ヨロ・・・

「おま、どこ行くんだそんな具合悪そうで!!」

少女「忘、れ物を取りに、ね・・・。いいから、そのまま、離れて、うぐっ!?」

「おい!!」

少女「ッ・・・!!」ダダダッ・・・

「あ、・・・行っちまった・・・。もう姿見えないし・・・。でも、なんだったんだいきなり・・・」

78 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 01:55:15.90 3iQgOj6r0 53/106

21:13 通話 男→友

「・・・ダメか。まだ事情聴取中かな、出ない」

「あいつも戻ってこないし、一人でいると余計なことばっかり考えるし・・・」

「・・・あの爺さん、やっぱりハンターだったのか・・・?だとすれば、あいつやっぱり襲われてたんじゃ・・・」

「・・・あり得る。あの警察官をどうやったか手玉にとってたし。漫画的に言えば、精神系の技か・・・?」

ガタン

「ッ!!」ビクッ!!

「・・・」

(気のせいじゃない・・・。今玄関から音がした)

「・・・。誰だ?」

79 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 02:00:25.75 3iQgOj6r0 54/106

「・・・早く、開けなさい下僕・・・。血を吸うわよ」

「!お前・・・」ガチャリ・・・

少女「・・・そうやってすぐに疑わないで開けないことね・・・。私がもし敵の変装だったら、あなた死んでるわよ」

「あ、そうか・・・じゃなくて!!お前今までどこ行ってたんだ!!襲われたのか!?」

少女「・・・違うわ。言ったでしょう、忘れ物を取りに、行っただけだと・・・」

「大丈夫か?その割にはなんかこう、やられてないか・・・?」

少女「・・・平気よ。余、計な詮索は無用だわ・・・。それより、浴室を借りれるかしら・・・」

「え?ああ、いいけどお前、なんか体中濡れてないか?」

少女「ああ・・・。通り、雨に打たれ、たのよ・・・。だから風呂に入りたいの。もういいかしら?」

「着替えは?」

少女「そこにまとめて持ってきたから、平気よ・・・」

(棺桶じゃないのコレ・・・)

80 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 02:02:32.08 3iQgOj6r0 55/106

少女「ハァァ・・・。それ、中に入れておいて・・・」

「え!?このでかい棺桶を!?」

少女「言う、とおりにしなさい下僕・・・」

(俺いつから下僕なんだ・・・?)

少女「ああ・・・。おなか空いたわ・・・」

「え?」

少女「・・・」テクテク・・・

(・・・)

(あ、やっぱりあいつの目は青だよな・・・。さっきのは見間違いだよな・・・?)

90 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 02:27:54.43 3iQgOj6r0 56/106

少女「今のうちに言っておくけれど、覗いたら殺す」

「命がけの風呂覗きなんかするかよ、昭和じゃあるまいし・・・。棺桶、ここにおいておくからな」

少女「ええ。中見てないでしょうね」

「命がけの下着泥も遠慮する」

少女「賢明ね」

「さて、と・・・。あ、」
携帯電話 着信あり 友

「やっと取り調べ終わったか。どれ・・・」

『・・・もしもし』

「俺だ。終わったか」

『ひとまずは、な。おかげですこし落ち着くだけの時間があった』

「災難だったな」

『とはいえ、さすがに退屈だった。そっちに何か動きは』

「ああ、例の吸血鬼少女と合流した」

『正気か?彼女は容疑者筆頭だぞ!?』

「ああ、・・・理由は話せないんだけど、彼女は犯人じゃない。協力し合えることになった」

92 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 02:32:38.23 3iQgOj6r0 57/106

・・・
『二人の吸血鬼、か』

「どう思う?」

『キミが彼女を信頼するというのなら、その男の吸血鬼が暗躍しているのだろうな。しかしよく男だと断定したな』

「ああ、まあ、色々調べて、な」(いえるわけあるか・・・。乱暴されながら殺されたなんて・・・)

『とにかく、例のハンターのこともある。キミは用心してくれ』

「お前はどうする?」

『・・・すまないが、私はその吸血鬼をそこまで信用できない。会った事もないしな。私は別な手段で事件を調べなおしてみる』

「・・・わかった。お互い連絡は取り合えるようにしよう」

『了解だ。定期的に連絡を入れる』

93 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 02:37:08.17 3iQgOj6r0 58/106

少女「・・・上がったわ」

「ん、ああ。それで、考えはまとまったか?」

少女「少し。まだちゃんとした計画には至っていないわ」

「具合、少しは良くなったか」

少女「・・・そうね。だいぶマシよ。人間に心配されるとは、私もヤキがまわったのかしら」

「・・・ところで、その高飛車な日本語は誰に習ったんだ?」

少女「あら、独学よ。時間は死ぬほどあったもの。他にも世界中の言葉を」

「羨ましいね。人間の寿命は短いからな」

少女「そうかしら。長生きすればいいっていうのではないでしょう。私はそう思うわ」

「そりゃ、死ぬほど長い時間生きてたらそうも思うだろうさ」

少女「・・・死ぬほど長い時間だわ、本当に」

94 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 02:40:26.50 3iQgOj6r0 59/106

「偵察?」

少女「ええ。この家の周りを少し調べてみるわ。安全性とか、犯人の痕跡とか」

「こんな夜中に?」

少女「お忘れかもしれないけれど、私吸血鬼なのよ。知ってた?」

「・・・」

少女「すぐ戻るわ。それまで、私以外の誰も入れないことね。私の偽者も、いるかもしれないわ」

「どうやって見分ければいいんだ?」

少女「それくらい自分で考えなさいな。私とあなたしか知りえないことを聞けばいいじゃない」

「そんなのあったっけ、って、行っちまったよ・・・。最近話し聞いてもらえないな俺・・・」

95 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 02:42:55.16 3iQgOj6r0 60/106

23:52
「ふわぁ・・・。いかん眠い・・・。いつまで待てばいいんだ・・・?」

「・・・しかしこの棺桶邪魔だな。まさか本当に棺桶に寝てるとは思わなかった」

「ん?」

かんおけ の ふた が すこし ずれて なかみ が みえそうだ !

ニア開ける
 開けない

96 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 02:46:53.28 3iQgOj6r0 61/106

「・・・まあなんというか、これは事故だよ、うん」

「俺が開けたんじゃない。開いてたんだ。なら見えちゃっても仕方ないよな」

「蓋、意外と重いな・・・ブッ」

「無造作に下着投げ入れてんじゃねえよ・・・。水入りの小瓶に、なんだこれ、洋書?読めないな」

「同じ服が数着・・・。枕?あとは・・・」

「古い写真だ・・・。真ん中に写ってるのは・・・ぼやけて見難いけど、多分あの吸血鬼だ」

「横に若い男と、猫・・・。いつの写真だろう」

「・・・帰ったぞ」

「!!」ビクッ!!

97 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 02:51:28.97 3iQgOj6r0 62/106

「・・・本人か」

「私はそう思うけれど」

「・・・俺との初めての出会いはどんなだった」

「愚かにも前方不注意でふらふらしていた駄犬をわざわざ助けるために、他ならないこの私がトラックを片手で放り投げた」

「運転手はどうなった」

「トラックが空中一回転して着地したとき、ぽかんとした顔で私を見てから、糸が切れたように気絶」

「・・・風呂に入る前に穿いていたパンツの色は」

「ブッ!?」

「何色だ」

「ぐ・・・。く、黒よ」

「遅かったじゃないか心配したぞ」ガチャリ

少女「人間、少し話があるのだけれど」

101 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 03:00:06.17 3iQgOj6r0 63/106

少女「見えちゃっただけ?」

「・・・」

少女「油断も隙もないわねこのエロ犬。調教が必要かしら・・・」

「不、可抗力」

少女「ええ、ちょっと開いてたのはそうかもしれないけれど。開け放したのは万死に値するわ」

「・・・」

少女「・・・他には何か見たかしら」

「・・・いいえ、何も・・・」

少女「・・・まあいいわ。とりあえずこの辺に痕跡はなし。明日以降本格的に調べるしかないわね」

103 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 03:09:10.61 3iQgOj6r0 64/106

26:43

「zzz・・・」

少女「・・・」

少女(やはり妙だわ。なぜこんな島国で、この数百年起きなかった吸血鬼の暴走が起きるのかしら・・・)

少女(それも、こんなに吸血鬼とは関係の無い場所で・・・)

少女(・・・何か、とても大事なことを間違えているような気がするのだけれど)

少女(それにしても、もう時間が無いわ・・・)

105 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 03:18:01.27 3iQgOj6r0 65/106

翌朝 9:13

「すると、やっぱり手がかりなしか」

『被害者の共通点があるようでない。中学生二人は随分前に失踪したって記事があったが』

「失踪?殺される前にか」

『みたいだな。その後で遺体となって発見、らしい』

「・・・」

『分かったのはその二人くらいだ。二人は元々同じクラスだったらしいな』

「そうか、わかった」

106 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 03:20:11.77 3iQgOj6r0 66/106

『そっちはどうだ。何かつかめたか』

「今のところ何も。昼間はあいつが動けないから、何も出来ないし」

『下手に動くと警察に捕まるし、か』

「とりあえずまたコンビニに行こうとは思う。妙なのに会わなきゃいいけどさ」

『ああ、気をつけろよ』
通話終了

「さて、じゃあコンビニ行くか・・・」

107 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 03:22:48.78 3iQgOj6r0 67/106

「アーシター」

(さてこれで食料は確保できた)

(・・・そういえばあいつは何か食わないのか?昨日も結局何も食わなかったみたいだし)

(あれ、そういえば卿はあの警察官いないな。運がいいのかもな)

「・・・そういえば、あいつの葬儀ってどうなってんだろ・・・。まさか遺体を見せるわけにも行かないだろうし・・・」

「・・・くそ、早くなんとかしないと・・・」

108 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 03:26:45.88 3iQgOj6r0 68/106

17:28

少女「寝不足だわ」

「昼間中寝てただろ」

少女「吸血鬼ですからね」

「それで、作戦は」

少女「少々危険な賭けだけれど。この辺に確か空き地があったわね、大きな奴」

「ああ、三年前まででかい病院があったんだ。もう移転したけど、そこがどうした?」

少女「そこを中心に、私の臭いをばら撒くわ。いいえ、そういう臭いじゃなくて吸血鬼的な」

「あ、ああ」

少女「いくら理性崩壊とはいえ、同じ吸血鬼の臭いは分かるでしょう。縄張りを主張しに来たら、そこで叩く」

「それでうまくいくのか」

少女「神にでも聞きなさいな。私は嫌われているだろうけれど」

109 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 03:29:43.91 3iQgOj6r0 69/106

18:11 空き地 元病院跡

『なるほどな。理にはかなっている』

「そう思うか?」

『その吸血鬼の臭いとやらがどんなものか、私たちには理解できないが。きっと同属ならば・・・』

「そっちは?」

『ああ、少し気になることがあってね。今はそれを調べている。はっきりと分かったら伝えるよ』

「分かった。すこしでも手がかりがほしいからな・・・」

『うむ・・・。それは私も同じだ。吸血鬼は帰ってきたか?』

「いやまだだ。多分そろそろ帰ってくると思う」

『分かった。幸運を祈る』

110 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 03:33:27.55 3iQgOj6r0 70/106

少女「・・・こんなものでいいかしらね」

「なあ、変な意味じゃなくて聞くんだけど、吸血鬼の臭いってどんななんだ」

少女「そうね・・・。血と、あとは人間と大差ないわ。独特な香りというかなんというか」

「それを付着させてきたのか」

少女「犬じゃないのよ。まあ撒いてきた、の方が正しいかしらね」

「ふうん・・・。吸血鬼の臭い、ねえ」

(あれ?最近どこかで聞いた様な気がするな・・・)

(臭い・・・。吸血鬼の臭い・・・?)

「あれ、待てよ。もしそうなら・・・」

少女「?何事?」

「やばい!!今すぐ逃げ、!!」

111 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 03:36:29.52 3iQgOj6r0 71/106

「やはり。私の勘は当たっていたようでございますな」

「!!」

少女「お前は・・・!!」

老紳士「吸血鬼の臭いを撒くというのは賛同いたしかねます。私のようなものをも呼び寄せてしまう」

「あんた・・・」

老紳士「いったでしょう。吸血鬼の臭いがすると。迂闊ですぞお若いの」

「く・・・」

少女「・・・私を止めにきたようね」

老紳士「いかにも。これ以上は見ておれませぬゆえ」

「知り合い!?」

少女「古い、ね。離れていないと死ぬわよ」

老紳士「老いたとはいえ、今のあなたには十分でしょう」

少女「どうかしら。なめられたものだわ」

112 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 03:41:15.22 3iQgOj6r0 72/106

老紳士「では、おやめになる気はないと」

少女「愚問ね。お互い分かっていることでしょう?」

老紳士「・・・なれば、私は本気であなたにかかっていくしかありませぬな」

少女「元よりそうしないと死ぬわよ」

老紳士「・・・では、本気で行くぞ」

少女「上等・・・!!」

老紳士「!!」ヒュン!!

シュパン!!

「えっ!?な、何で今、プ、プレハブが真っ二つに!?」

少女「相変わらず非現実な糸ね・・・!!」

老紳士「外したか・・・。やはり昔のようにはいかないか。なら、こちらはどうだろう?」

122 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 04:42:27.92 3iQgOj6r0 73/106

シュッ!!

少女「ぐッ!?」

老紳士「一発掠めただけとは、こちらも鈍ったようですな」

(こ、これがヤムチャ視点・・・。今何かがものすごい速度で吸血鬼に飛んでいったのは分かるけど・・・!!)

少女「相変わらずの切れ味ね・・・。そうやって何人を切断したのかしら。そのトランプのカードで」

老紳士「覚える必要の無いことは覚えない主義でしてね。少なくとも、ポーカーでは負けたことが無いですな」

少女「相手を切り刻むポーカーなんて」

老紳士「やはり、それでもあなたの方が弱っている。そんな状態で何が出来るというのです?」

少女「それでも、私はコレを放っておくことはできないわ」

老紳士「約束だから、ですか」

少女「誓いだから、よ」

124 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 04:50:23.07 3iQgOj6r0 74/106

老紳士「そんな体で・・・!!」

少女「こんな体だからこそ」

老紳士「・・・最早言葉では通じないか」

少女「かもしれない。それでも私は・・・」

老紳士「・・・ッ。次は外しませんよ」

少女「望むところよ」

老紳士「・・・!!」

少女「・・・」

「・・・?」

老紳士「・・・やはり・・・やはり私にあなたを討つなど・・・」

少女「道を正すのが、役目なのではなかったのかしら」

老紳士「他ならぬあなたが選んだ道です。それを、誰が過ちだといえましょうか」

126 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 04:55:48.53 3iQgOj6r0 75/106

少女「それを言うのが仕事でしょうに」

老紳士「五十年前の約束です。それをあなたは完遂しようとしている。・・・私などは到底及びますまい」

少女「かつての切り裂きジャックの二つ名が泣くのではなくて?」

老紳士「名などに意味はないと教えてくれた猫がおりましたゆえ・・・」

「ええと・・・?」

少女「もういいわ。これ以上私たちが戦うことは無い」

「ごめん、はなしがさっぱり」

少女「この男は、私の城の執事で、元ヴァンパイアハンター。切断が大好きだったわ」

老紳士「お恥ずかしいところを・・・。しかしいても立ってもおられませずに、こうして参陣したしだいでございます」

「ええと、じゃあ・・・そもそも敵じゃないの?」

少女「敵というか、昔からの目付け役というのかしら・・・。全盛の頃は私と互角くらいの力があったわ」

老紳士「持ち上げすぎです、お嬢様」

127 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 05:01:21.41 3iQgOj6r0 76/106

少女「作戦は失敗ね」

「臭いに反応しなかった、てこと?」

老紳士「お恥ずかしながら、私がとお嬢様の戦闘に感ずいたのやも知れませぬ。責任は全てこの私に・・・」

少女「バトラー、時間が無いわ。次の手を考えないと」

老紳士「は。しかし、なぜこのような島国にかような吸血鬼が現れたのでしょうか」

「・・・それは私も考えていたわ。考えれば考えるほど辻褄が合わない」

「吸血鬼が日本で自然発生する、て可能性は」

老紳士「ゼロでしょうな、ほとんど」

「だからこそおかしいと思うのよ。何なのかしら、この違和感は」

老紳士「しかしながら、敵の戦力は巨大。こちらは老いた私目と弱ったお嬢様、それに人間のみとなれば、正面衝突は避けねばなりませぬ」

「弱った・・・?」

老紳士「失礼、失言でした。とかく、早く敵を捕捉しないことには始まりませぬ」

「同感だわ」

128 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 05:04:49.64 3iQgOj6r0 77/106

「やつは誰かに擬態していると考えるのが妥当ね」

「そうか、やっぱり。でも、誰に・・・?」

老紳士「失礼ながら、実は一つ気になることが。あなた様から、別の吸血鬼の臭いがいたします」

「俺が、え?」

少女「確か?」

老紳士「確かです。かすかにですが、最近接触した何者かが犯人の可能性があります」

「とはいえ、誰だ・・・?」

少女「昼間歩き回らない、あるいは暗い室内にいる人物が怪しいわ。心あたりは?」

「そんなこと言ったって・・・」

129 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 05:08:28.92 3iQgOj6r0 78/106

「・・・一人。コンビニ前の警官はどうだろ。昼間に見たこと無いけど、夜はいつもあの辺にいるし」

老紳士「ノン。それならば私があの時気づいております。もしそうならとうに切断いたしました」

少女「他ね。電話の相手は?」

「いや、あいつは女だ」

少女「これも却下ね。あとは?」

「あと、暗いところとか夜とか・・・?」

老紳士「そうでございますね、あるいは直射日光の当たらないようなターバンですとか」

「・・・」

「・・・、まてよ?」

130 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 05:11:27.81 3iQgOj6r0 79/106

同じ頃

「・・・やはりそうか。違和感の正体はコレだ。考えてみればこれしかない」

「なぜ吸血鬼がこの日本に侵入して来たのか。多分みんな根本的な勘違いをしてる。そうじゃないんだ」

「侵入したのではないとしたら。元々そこにいたのだとしたら。そこにいたモノがそれと化したのだとすれば・・・」


「・・・分かったかもしれない。誰が吸血鬼か」

131 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 05:16:26.51 3iQgOj6r0 80/106

翌日 学校前

生徒A「今日全校集会だろ?」

生徒B「ああ。多分校長から説明だよな・・・」

「・・・」テクテク・・・

「・・・失礼します」トントン・・・

理科教師「・・・」

「ああ、先生に用があって来ました。お訊ねしてもいいですか、理科の実験のことで」

理科教師「・・・いい、だろう」

「ありがとうございます。・・・実験中でしたか?カーテンを開けたいのですが」

理科教師「・・・ダメだ」

「そうですか、いい天気なのに。先生、もう一つ世間話を。薙刀について聞きたいのですが」

理科教師「なぎなた・・・」

「ええ。どうにも分からないんですよ、薙刀の大会ってどうやって勝敗がつくのか。先生はご存知ですよね」

133 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 05:22:28.44 3iQgOj6r0 81/106

理科教師「勝敗・・・」

「まさか知らないはず無いでしょう。杏奈率いる薙刀部の顧問でしたものね、先生は」

理科教師「・・・」

「完全下校の時間には空は暗くなる。だから引率のフリをして、獲物を探した。昼休みのたび、薙刀部の連中をここに集めて」

理科教師「・・・」

「大方うまそうな子を狙ったんだろう。かつ処女で、お前のお眼鏡にかなう子だ。なあおい」

理科教師「・・・」

「―――生きて帰れると思うなよ、腐れ外道」

バケモノ「ニヤァ・・・」

バケモノ「飲ンダ、飲ンダナア・・・。旨イ味、シタ・・・。アノ女ハシカモ、・・・イイ女ダッタ」

シュパパパッ!!

老紳士「それだけ聞ければ十分だろう。切断して太陽にさらしてくれようぞ・・・!!」

134 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 05:27:01.35 3iQgOj6r0 82/106

バケモノ「ヌ・・・!!」

老紳士「昼間にたかがカーテンだけでこんなところにいるとは、間抜け以外の何者でもない。さあ、溶けて消えるがいい」

バケモノ「ヌアアアアアアアアア!!!!」ジュウジュウ・・・!!

(これで・・・)

老紳士「!?違う!!」

「!?」

???「ヨクモ・・・アノ外見ハ気ニ入ッテイタノニ・・・!!」シュウウウウウ・・・・!!

「化け物の下から!?」

老紳士「これは・・・!?」


「貴様ラハ、肉ヲ直接食ッテヤル・・・!!」

136 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 05:32:35.39 3iQgOj6r0 83/106

「鬼!?」

老紳士「いかん、プレイングカード、『トランプ』ッ!!」

・・・老紳士『あらかじめ説明しておきますと、五十二枚のトランプのカードを特殊に加工したものでございます。これらが一挙に襲い掛かれば、相手は必ず切断されます』

少女『さすがに私でも避けられないでしょうね、全枚飛ばす『切り札』、トランプって技は』

老紳士『光栄でございます』・・・

「ナンダ、コンナモノ・・・」

「ま、まったく効いてない・・・!!」

老紳士「いけません!!下がってください!!」

「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

「こ、鼓膜が・・・!!」

老紳士「切れない・・・、なんという怨念の塊か・・・!!」

137 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 05:37:57.73 3iQgOj6r0 84/106

「食ウ・・・。血ダケジャナク、肉モ・・・」

「こいつ・・・!!」

「腹ガ減ッタ・・・。オ前、食ウ・・・!!」ガシッ!!

「うおわっ!?」

老紳士「ダメだ、物理的な攻撃がまったく効かん!!」

「く、食われ・・・!!」

「私の目の前で、そんなことが出来ると思うのか?」

老紳士「!!」

「お、前・・・ぐ・・・!?」メキメキ・・・

「オ前、旨ソウナ・・・」

「やはりそうか。根本的な勘違いだ、吸血鬼がこの町に来たんじゃない。元々この国にいたものが、生き血を啜る鬼に変化したんだ・・・」

138 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 05:42:00.87 3iQgOj6r0 85/106

「オ前モ、来イ・・・!!」

老紳士「いかん!!」

「逃げ、ろ・・・!!」

「いいや。ならば、こういうのは、どうだ!?」パシィ!!

「・・・ウギャアアアアアアア!!!!?」

「掴みに行った手が、溶けた・・・!?」

老紳士「これは・・・!?」 

「簡単なことだ、この国の化け物ならこの国なりのやり方で斃せばいい。・・・例えば、こういう符でな」

老紳士「神道か!!」

「ウオオオオオオオオオオオオン!!」ダダダッ!!

老紳士「おのれ逃がすか・・・!!」

「いいや、大丈夫だ。やつがどこへ逃げるか、見当は付いている」

142 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 06:02:26.11 3iQgOj6r0 86/106

同日 17:25 とある山の前

「本当だ・・・、枯れ果ててる」

少女「山の守り手が消えた?いや、違うわ、守り手が守るのを放棄したのかしら?」

「半年ほど前、最初の被害者である中学生ともう一人は、実はとある問題に絡んでいた」

「問題?」

「いじめに関する自殺問題だ。一時期盛んになっただろう?あれだよ。殺害されたサラリーマンは、そのいじめられていた子の実の父親だった」

少女「では・・・?」

「奴の本来の目的は恐らく彼らの殺害だ。彼がまだ、元の意思をもっていた頃の」

「彼がまだ、山の守り手―――天狗だった頃の、な・・・」

144 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 06:10:34.32 3iQgOj6r0 87/106

「でも、だからって殺人を、しかも血を飲むなんてのは・・・」

「・・・擁護するわけではないが、恐らく一線は越えていないのだろう」

「え?」

少女「そうね、まず肉を食わなかった。血は飲んだけれど、そこは守り抜いた・・・」

「そういう問題かよ!!たくさん人が殺されてんだぞ!!」

「・・・そしてもう一つ。杏奈は、杏奈は辱めは受けていなかった・・・」

少女「・・・やつは吸血鬼ではないから。私の臭いにも反応しなかった」

老紳士「すべての辻褄が、合いましたな」

「・・・」

少女「・・・あとは私の仕事だわ。鬼には鬼同士、譲れないものがある。人間のあなたたちが見せてくれた魂の強さは、私が戦うのには十分な理由ね」

老紳士「お嬢様・・・」

少女「大丈夫よ、まだ、ね」

「・・・行こう。この上に、古い祠がある。恐らく奴はそこだ」

146 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 06:16:44.71 3iQgOj6r0 88/106

祠前

少女「・・・悲しい生き物ね、私もお前も」

「・・・」

少女「他に道はなかったかもしれないけれど、それでも私はあなたの行き方を容認は出来ないわ」

「人間ナド・・・生キル価値ハ無イ・・・。未来アル子供ガ死ンデモ、タダ空シク、何モ変ワラナイ日常ガ続ク・・・ソコニ意味ナドアルノカ?」

少女「そこから先に進めないのが化け物。先に進めるのが人間よ。だからこそ、私たちは去らねばならないの。先に進むのに、私たちは障害なのよ」

「オ前ハ・・・」

少女「・・・覚悟はいいかしら?」

「私ハ・・・。・・・ああ、少年、私は・・・」

シュッ ドサッ!!

147 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 06:21:26.02 3iQgOj6r0 89/106

同日 21:00 男自宅

「最期は、呆気なかったな」

少女「・・・そんなものよ、化け物の最期なんて」

「・・・これでお終い、か」

少女「いいえ。まだやることが残っているわ」

「え?」

少女「人間。私と戦いなさい。この町を賭けて、私と、一対一で」

「・・・」

少女「・・・」

「・・・え」

少女「あなたが負けたら、この町は私が支配する。血も吸うわ。でもあなたが勝ったら、私は今後二度とこの国に足を踏み入れないわ」

「ちょ、ちょっと待てよ、何で俺がお前と!?」

少女「私は化け物。あなたは人間。・・・これ以上の理由はいらないわ。明日のこの時間。空き地で待つわ。来なくてもいいけど、不戦敗とみなす」

「そんな、勝手すぎるぞ!?」

148 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 06:25:47.13 3iQgOj6r0 90/106

少女「以上よ。・・・私はこの家をもう出るわ。出たが最後、私とあなたは敵同士」

「お前、なんで、」

少女「私は化け物よ。この町がほしいの、・・・血がほしい!!あの子やあなたからもね!!」

「な、」

少女「いいのよ、戦わないで逃げても。他の住人を全員差し出すのなら、見逃してあげるわ」

「―――お前本気で・・・」

少女「見せしめに一人殺そうかしら?それで理解する?あの子なんてどうかしら?」

「・・・」


「分かった・・・。もう行けよ、・・・この化け物が」

149 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 06:28:16.75 3iQgOj6r0 91/106

少女「・・・色々あったけれど、今となっては懐かしいわ。・・・感謝の一つもしておくわ」

「・・・ああ」

少女「・・・じゃ」

「・・・ああ」


(・・・)

(所詮は化け物・・・相容れない存在・・・)

(でも・・・それでも・・・)

150 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 06:36:38.11 3iQgOj6r0 92/106

翌日 21:00

少女「・・・逃げなかったのね」

「ああ」

少女「相手は吸血鬼。対するあなたはタダの学生。勝ち目が万に一つもあると思うのかしら」

「・・・」

少女「武器はナイフ?それとも十字架?」

「・・・」

少女「何でもいいわね。今じゃおたがい敵同士なのだから。・・・始めましょうか」

「お前、死ぬ気じゃないのか?」

少女「・・・」

「考えてみたけど、それしか思いつかない。不自然だ、あまりにも」

151 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 06:44:01.14 3iQgOj6r0 93/106

少女「・・・それは、あなたの頭が悪い証拠じゃないかしら」

「お前、なんでそんな頑ななんだ?死なないといけない理由があるのか?」

少女「答える必要があるのかしら?」

「なんでだ?妖怪や吸血鬼だって、人間と共存できるんじゃないのかよ」

少女「・・・知ったような口を・・・!!私は化け物だ!!人間を食い物にする哀れな下衆だ!!それがなぜ人間と共存できる!!」

「方法はいくらでもあるはずだろ!!今まで考えなかっただけで、」

少女「違う!!そんなのは楽観だ、そんなのは夢だ幻想だ!!私はもうこんな体、こんな人生・・・!!」

「そうやって何もかも放り出せば満足するのかよ!!」

少女「違うわ、私は、こうやって死ぬしか道がないの!!これ以外に゛っ!!?」ドクン!!

「・・・おい、どうした?」

少女「う、ぐあぁぁ・・・!!早、く私を、殺して・・・!!」

「何だと!?」

少女「抑えられているうちに・・・!!この衝動を、抑え。られているう、ちに・・・!!」!!

182 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 11:50:06.52 3iQgOj6r0 94/106

老紳士「やはりこうなりましたか・・・」

「あんた、これ、どうなってるんだ!?前にもこんなことあったけど!?」

老紳士「限界なのです最早・・・。これ以上本能を押さえつけられない・・・。本来吸血鬼は我々よりも生存本能が強いのです」

「本能!?」

老紳士「生き残ろうとする本能が、お嬢様の意思とは関係なく、吸血行為を強要する・・・。もう時間切れなのです」

「!?」

少女「う、ぁああああっ!!」

老紳士「お嬢様は五十年前の誓い以来、血を一滴も召していない・・・。だからこうなる前にこの決闘で・・・」

「そんな・・・」

184 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 11:55:38.06 3iQgOj6r0 95/106

「血を飲んでいない!?」

老紳士「これまではこうなったとき、薄めた聖水を自らにかけることで押さえ込んできましたが、もはやそうはいきますまい」

「じゃ、じゃあどうしたら・・・」

老紳士「・・・このままでは、お嬢様はただの血に飢えた吸血鬼と化します。そうなれば、老いた私やあなた様には止めようがなくなる」

「なんで、少しなら俺の血を、」

老紳士「少しでも吸われれば吸血鬼かグールとなります。お嬢様はそれを良しとしなかった。それゆえです!」

「じゃあもう方法がない・・・?」

少女「ああああ!!」

老紳士「今しかありません!!私ではなく、彼女はあなた様にそれを頼んだ!為すのは今です!!」

「!!」

少女「っ、ぐぁああう!?」

老紳士「少しの間なら、私の糸で彼女の動きを止められます!その間に、どうか!!」

「そ、そんなこと・・・」

186 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 12:00:36.55 3iQgOj6r0 96/106

老紳士「さあ、お嬢様の意思を、この町の多くの命を無駄にする気ですか!!」ヒュン!!

「うぐ、うああ」

老紳士「押さえました、どうか、今のうちに・・・!!」

「・・・ッ!!」

「早、く・・・これ以上は、もうこれ以上は・・・!!」

「・・・」

「気が、狂いそう・・・。化、け物には、相応しい、最、期、だわ・・・」

「お前・・・」

「さあ、やる、の・・・!!怖気づ、いた、のかしら・・・!?」

老紳士「むぅ!!いかん、糸が断ち切られる!!これ以上は!!」

「・・・一生」

「一生恨むぞ」

187 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 12:03:00.26 3iQgOj6r0 97/106

「・・・ふ、ふ・・・」ドクン、ドクン!!

「構わないわ・・・私、こう見えて、化け物な、のよ・・・。知ってた?」

「ああ・・・」

「今、痛いほどに・・・ッ!!」

―――

188 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 12:08:53.89 3iQgOj6r0 98/106

少女「・・・いい夜だわ・・・。最高の気分・・・」

「ハァ・・・ハァ・・・」

少女「辛いことを、させたかしら?」

「・・・ああ」

少女「そうよね・・・。ああ・・・。ごめんなさい」

「・・・」

老紳士「お嬢様・・・」

少女「いいのよ・・・。私はもう、死ぬほど生きたのだから・・・」

「お前、最初から死ぬ気だったのか」

少女「・・・ええ。誰かを、吸って、ガボッ・・・しまう前にね・・・」

老紳士「ついに・・・成し遂げられましたな。あの日の誓いを」

少女「死ぬまで、血を吸わない・・・。ふふ・・・。言うは易し、半世紀、か・・・」

「・・・」

少女「ああ、やっと・・・やっと空腹が・・・みち、た・・・」

189 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 12:11:05.60 3iQgOj6r0 99/106

「・・・」

少女「・・・ありが、・・・」

「ッ・・・!!」

老紳士「・・・感謝致します。これで、お嬢様の悪夢は終わりました」

「・・・」

「こんなのって、な・・・」

老紳士「・・・」

194 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 12:26:06.48 3iQgOj6r0 100/106

・・・
数週間後―――

「すっかり魂が抜けていないか」

「・・・ああ」

「処置なしだな。・・・まあ、仕方ない部分もあるのだろうが。すみませんが、こいつ頼みます」

老紳士「あなた様は?」

「私は、その、今回のことと似たようなことが起きないように、何とかしようと思う。漠然としてるけど・・・」

老紳士「左様ですか・・・。幸運をお祈りいたします」

「ああ。・・・では」

「・・・」

195 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 12:29:32.95 3iQgOj6r0 101/106

老紳士「ドラキュラをご存知ですかな」

「・・・」

老紳士「最初の吸血鬼、最強の男。彼は一人の人間に斃されました」

「・・・」

老紳士「ですが、彼は死んでなお吸血鬼は死に絶えなかった。私は思うのですが、ドラキュラは死を越える何かを持っていたのではないでしょうか」

「死を超える・・・」

老紳士「そうでなくては、吸血鬼が繁栄したことの説明がつきませぬ」

「・・・それが?」

老紳士「何、老人の戯言でございます。しかし・・・」

老紳士「死を超える者のことを、我々は化け物と、そう呼ぶのでございましょう・・・」

196 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 12:33:56.25 3iQgOj6r0 102/106

・・・
「・・・」

「殺した、か・・・」

「そういう意味じゃ、俺は鬼や化け物と何も変わらない・・・。助けることが殺すことだ、それで納得が出来るか?」

「俺には、そう割り切れない・・・」

「死を超越した者、化け物・・・。超えるって何だ?死んだら終わりじゃないのか」

「死んで終わりになるのが人間・・・。そうじゃないのが化け物・・・。俺は、俺は・・・」

「・・・いつまで、そうやってふ抜けているつもりなのかしら。地獄の底からでも見ちゃいられないわね」

「―――え?」

「化け物は、死すら乗り越えるからこそ、そう呼ばれる―――」

197 : ◆.zeSrWjK2c [] - 2012/09/24 12:35:06.75 3iQgOj6r0 103/106

よしこれにて終了
保守には足りないくらいの感謝を
最後何が起きたのかは、解釈しだいです

198 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/09/24 12:36:14.13 Xe8SHK/A0 104/106

お疲れ様。面白かった。

208 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/09/24 13:15:15.36 oc+gmmtB0 105/106

友は女だったか

210 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/09/24 14:16:43.82 WlxLQW2A0 106/106

すてきであった





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