王様「……ついに行くというのか」
勇者「はい。この世に魔王が君臨して十数年……もはや私が立ち上がるしかないのです」
王様「そうか。本来は守るべき民から犠牲が出るのは、辛いのう……」
勇者「安心してください、王。私は犠牲になりませぬ。必ずやあの魔王の首を持ち帰りましょうぞ」
王様「そうか……。本来は兵士を付けてやりたいところだが、それさえも叶わぬ状況。
国一の酒場の主人に話をつけておいたから、そこで仲間を集いなされ」
勇者「はっ……心遣い、ありがたく思います」
王様「……うむ、決して、死ぬではないぞ」
勇者「存じております。では、行ってまいります」
元スレ
勇者「本日より、旅立つと決めました」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1347715941/
勇者(……仲間か。本来は一人で行きたかったんだが……)
勇者(仲よくなれる……いや、辛い戦いになるんだ。まず強くなくちゃいけない)
勇者(腕だけじゃない。心の強さも必要だ)
勇者(長い時間故郷を離れ、数人だけで旅をして、命を懸けて戦える)
勇者(その事を、嘆かない奴じゃないとな……)
+酒場+
主人「……来たね、勇者様」
勇者「王に話は聞いてあるんだろう。早速、仲間を紹介してほしい」
主人「勿論。けど、たったひとつだけ約束がある」
勇者「約束?なんだ、それは」
主人「決して、紹介した仲間を無下にしない事。それだけだ」
勇者「……当然だ。その約束は、守れるに決まっている」
主人「その言葉、忘れないでね。じゃあ、勇者様、仲間のご要望は」
勇者「腕が良くて、辛い戦いにも泣きださない、心も強い奴が欲しい」
主人「……ふむ。剣士、僧侶、魔術師の3人が居るけど、どうする?」
勇者「そんなにいるのか?しかもバランスが取れている……」
主人「腕っぷしは強くて、心も強いよ。少なくともどんなに辛い戦いでもこなせると私はおもうんだ」
勇者「……そうか、ならその3人をお願いする」
主人「わかった。呼んでくるね」
勇者(……一体どんな奴なんだ。国一番の酒場というのだから、目をつむりたくなるような人物ではないと思うが……)
主人「お待たせ」
勇者(おどろおどろしい黒いローブをすっぽりと被ってるのが魔術師か。白い衣装が目立つのが僧侶。
……剣をさしているのが剣士、といったところだろうか)
主人「お互いにらみ合わないで。ほらほら自己紹介自己紹介」
魔術師「ああそっか。えーっと、じゃ、俺から。名前は魔術師ってんだ。よろしくな」
勇者(え、えらくフランクな魔術師だな……魔術師っていうと頭でっかちのイメージがあるんだが)
魔術師「特技はリンゴを片手で潰すことだ!」
勇者「ちょっと待て」
魔術師「……?何が?」
勇者「お前なんだ?」
魔術師「魔術師」
勇者「特技は?」
魔術師「リンゴ片手で潰せる」
勇者「……おかしいだろ!?なんで後衛がそんな能力もっちゃったんだよ!!」
魔術師「後衛?何言ってんだよ。俺前線でバリバリ戦っちゃう派なんでシクヨロ!」
勇者「シクヨロ!じゃない!」
僧侶「ああじゃあ次私ですね」
勇者「さらっと流された!」
僧侶「私の名前は僧侶と申します。好きな言葉は『金』と『権力』。嫌いな言葉は『無料奉仕』です。
ふつつかものですが、よろしくお願いいたします」
勇者「いやいやいや!!おかしいだろ!僧侶だろ!」
僧侶「嫌ですね。昔から言うでしょう。信者と書いて儲と読む。神はすべてを知っておいでなのです」
勇者「ドヤ顔で言うな!!逆にムカつくわ!」
勇者(なんだこいつら!?変なのばっかりじゃないか!!残り一人は……?)
剣士「…………。剣士」
勇者(あ、よかった。コイツはまともそうだ……)
魔術師「で、あんたは何て言うんだ?」
勇者「あ、ああ。俺は勇者だ。国王の名により魔王を――」
魔術師「ぶっ!ぶはははwww勇者!?ゆうしゃだって!?夢ww見杉www」
勇者「なっ!」
僧侶「いけませんね魔術師殿。人が話してる時は真剣に聞かねば」
魔術師「うひーwwwひーwwゴメンゴメンwwwあー、お腹痛い」
僧侶「確かに少々将来が心配になる夢を見ておいでのようですが、最低限のマナーですよ」
勇者「おい、どういう意味だよ」
僧侶「どういうもこういうも……
なんというか、パンピーがいきがってんじゃねぇよww馬鹿じゃねぇのwwプゲラww
……といったような感情を抱いてしまうだけでして」
勇者「思いっきり失礼だな!!ちゃんと証書あるわ!!」
僧侶「勇者(仮)殿、僧侶として一つだけ言わせていただきます」
勇者(仮つけやがった……)
僧侶「文章偽造は、金を積めば簡単に出来るんですよ」
勇者「僧侶関係ねぇ!」
剣士「……二人とも、失礼だ。夢は、誰もが抱くものだろう」
魔術師「確かに、そうだな」
僧侶「言われてみればそうですねぇ」
剣士「その内容に、他人がケチをつけるべきじゃない」
魔術師「……あー、そうだな。笑って悪かったな、勇者」
勇者「別にいい。剣士、フォローしてくれてありがとうな」
剣士「いや、当然の意見だ。…………自分も、大きくなったらケーキ屋さんになりたい」
勇者「ちょっと待て」
剣士「?」
勇者「大きくなったらって何だ。
俺の眼にはお前がすっかり成人しきった奴に見えるのだけど気のせいかお前幾つだよ」
剣士「……今年で、24」
勇者「何が大きくなるんだよ!もう将来として剣士という職業がついちゃってるだろう!!」
剣士「………?」
勇者「その『うわぁコイツ何言ってるの』みたいな目やめろよ!」
勇者(こ、こいつも同類……)
僧侶「勇者殿が言いますか。私の中では貴方の職業が目に一番痛々しくて見てられないんですが」
勇者「うるさいよ生臭坊主!」
主人「いやー、仲良くなってなによりだねぇ」
勇者「……はっ!そうだ!こんな奴ら連れて歩けるか!クーリングオフだクーリングオフ!!」
主人「いや私の酒場、そういう制度ないから……。一回は冒険に連れて行ってもらわないと」
勇者「はぁ!?」
主人「本来は紹介金いただくんだけど、王様から前払いされてるから。
もうこの子たちに支払ったし、契約が発生してるからしょうがないんだよねぇ」
勇者「おいおいおい。こいつら言っとくけどその辺の呪われた装備よりタチ悪ぃぞ!」
主人「それに言ったでしょ、『仲間を無下にしない』って約束!」
勇者「たった今俺が無下にされただろうが」
主人「それに勇者様言ったじゃないか。腕っぷしが強くて、どんな過酷な状況でも耐えられるような心の強い人物が良いって」
勇者「……うぐっ」
勇者(確かに……腕はわからんが心は強そう……強いだろうけど……ッ!!)
主人「それに勇者たるもの、こんな所で心折れてどうするの。まだ戦ってすらいないじゃないか」
魔術師「なー、俺一体いつまでこうやって立ってたらいいんだ?」
僧侶「少なくともこのもめごとが終わるまででしょうね」
剣士「…………あ」
(ばたーん!)
兵士「こ、ここに勇者様がいるって聞いたんだけど、本当ですか!」
僧侶「ええそうですよ、此方にいらっしゃる貧相な一般市民……おっと失礼。
愚劣で貧弱、そして時代錯誤ともいえるオーラをお持ちのこの屑が勇者です」
勇者「全力で貶めんな。そして言い直す必要性がまったく感じられない!」
兵士「そ、そうでしたか、貴方様が勇者様……なんと神々しい……」
勇者「あの説明で崇められても反応に困るッ……」
魔術師「で、村人さんは何をしに来たんだ?」
兵士「は、はい……実は南にある村が、魔王の手の者によって襲撃されてしまい……」
剣士「……大変」
兵士「私はそこを守っていたのですが、命からがら逃げてきた……いえ、逃がされたというべきでしょうか。
魔物から……勇者様に伝言を伝えろと、そう言われました」
勇者「俺に……だと」
兵士「はい。『村より東の遺跡にてお前を待つ』と。
私には、勇者を3日以内につれてこなければ今度は別の村を壊滅させると脅されて……っ」
僧侶「おやおや、典型的な罠ですね」
勇者「……。わかった、行こう」
兵士「いいんですか!?あの遺跡は広く、魔物どもの巣窟になっているやもしれませんよ!」
勇者「……それが勇者の仕事だからな」
兵士「ありがとうございます………」
主人「そうと決まったら兵士さんは王様に報告しないとね」
兵士「勿論です。勇者様、後の事はお任せいたしました」
勇者「任せておいてくれ。……しょうがない、行くぞ、3人とも!」
魔術師「おう!」
剣士「…………うん」
僧侶「ちょっと待ってください」(ジー)
兵士「な、何でしょう」
勇者「どうしたんだよ?」
僧侶「……。随分みすぼらしい装b(バフ
勇者「ザ!失礼!!お前ちょっと黙ってろ!」
兵士「あのー……」
勇者「俺たちは行ってくるんで!どうぞご安心ください!!」(ズルズルズル
魔術師「あ、おい、待てよ勇者ー」
兵士「……大丈夫、なんでしょうか……」
主人「心配いらない要らなーい。たぶんね」
+道中の草原+
勇者「もう、頼むから最低限相手に非礼のない接し方をしてくれ」
僧侶「……善処します」
勇者「それは世界一信頼のできない言葉だって知っててやってるだろ」
僧侶「そんなことありませんよ。勇者殿は疑り深いですね」
勇者「…………」
魔術師「んーふっふー、ふっふっふーん、ふーっふー!ひーっひーふぅー!!ひっひっふー!」
勇者「お前はお前でなんだその奇怪な鼻歌は」
魔術師「旅の吟遊詩人から教えてもらったんだぜ、中々イケてるだろ」
勇者「止めてくれ、魔物がよびよせられそうだ」
僧侶「勇者様、知っていますか」
勇者「なんだよ」
僧侶「そう言うと、言葉通りの結果が現れるというんですよ」
[>スライムが あらわれた!
スライム「ぴきー」
魔術師「本当だ!すっげぇな僧侶」
僧侶「展開を読むのは得意ですので」
勇者「突っ込まないからな。……兎に角倒すぞ」
魔術師「勇者、俺に任せてくれ!スライムの弱点なら知ってるんだ!」
勇者「いやこんな雑魚に弱点も何も……まあいいか。魔術師、頼んだ」
魔術師「まかせてくれ、とりゃあ!」(ぐわし)
スライム「ぴき!?」
勇者「え、手づかみ」
魔術師「こうして、こっちとこっち握って雑巾絞りのようにするとな」(ギリギリギリ
スライム「ピギャ」(ブチャア
魔術師「つぶれて死ぬんだ!」
剣士「………おお」
勇者「グロイ!っていうかそんな『殴り続ければ死ぬ』みたいなことを言われても!」
僧侶「勇者殿、あちらにもいるようですよ」
[>スライムが あらわれた!
スライム「ピキー」
魔術師「スライムを潰すのは俺に任せろー!」
勇者「やめて!」
魔術師「……なんで?」
勇者「もっと他にやりようあるだろ?魔法とかさ……」
魔術師「なーんだ勇者、お前魔法が見たかったのかよ。そうならそうと言えって」
[>スライムが あらわれた!
[>スライムが あらわれた!
[>スライムが あらわれた!
[>スライムが あらわれた!
[>スライムが あらわれた!
[>スライムが あらわれた!
[>スライムが あらわれた!
剣士「……スライム、いっぱい……」
勇者「おいおいこれって……」
[>なんと スライムは がったいした! スライムはキングスライムになった!
キングスライム「ピギー」
僧侶「おやまあ」
魔術師「でっけぇ!」
[>キングスライムのこうげき!
勇者「危ない魔術師!」
魔術師「お?」
ボヨヨン
魔術師「……おお!じゃれてるのかお前!」
キングスライム「ピギャー」
勇者「まさかの物理攻撃でダメージ0とか……」
剣士「……楽しそう」
魔術師「うおー、こいつおもしれー」(ボヨヨンボヨヨン)
勇者「集中攻撃食らってるみたいだけど、本人幸せそうだし」
剣士「……勇者、自分もあれやりたい」
勇者「いや危険だからやめとけ。常人なら吹っ飛んでるはず」
剣士「…………そうか」
僧侶「魔術師殿、魔物だから倒さねばなりませんよ」
キングスライム「ピギャー!!キシャー!!」
魔術師「えー、ペットにしたい」(ボヨヨンボヨヨン)
僧侶「……だそうですが」
勇者「面倒見切れないし、第一魔物を飼う予定は無い。あとそいつ殺気ありまくりだから!」
キングスライム「ピギャー!!」
魔術師「む?なんだお前、じゃれてたんじゃなくて喧嘩売ってたのか」(ボヨヨンボヨヨン)
僧侶「先ほど潰したスライムの仇とか思われているのではないでしょうか」
キングスライム「ギシャー!」
魔術師「そうか。売られた喧嘩は買わないといけねぇな!よーっしとったどー!」(グワシ
キングスライム「ピギャー!?」
勇者「……一方的な虐殺になる未来が見える」
魔術師「そうだ!……勇者!こいつの新しい弱点見つけた!!」
勇者「『そうだ!』って何だ!すでに思い付きである事を認めているじゃないか!!」
魔術師「聞いて驚け!このスライムはこことここを思いっきり握って」
キングスライム「ピギッ!」
魔術師「おもいっきり対角線上に引っ張ると!」
キングスライム「ピギギギギ」
魔術師「破けて死ぬ!」
キングスライム「パギャッ」(バシァャッ)
勇者「だからグロは止めろーッ!スライムを物理的に破るやつ初めて見た!」
魔術師「うわー、全身べっとべとになった……ハッ!だから止めろって事か!すごいな勇者!」
勇者「……。もういいや、それで」
剣士「…………」(ポムポム
勇者「何?」
剣士「…………がんばれ」
勇者「……いや、この変な空気お前も一役買ってるから……」
魔術師「お前らー、何してんだよー、早く行こうぜー」
勇者「わかったわかった、わかったからそのべっとべとなのをどうにかしろ!」
+しばらく歩いて+
勇者「……此処が村、か?」
剣士「…………ぼろぼろ」
魔術師「んー、誰も居ない感じだなぁ。でも、ぜんぜん血の匂いがしないのはおかしいぜ」
勇者「……お前がそれを感じ取るのかよ」
僧侶「そうですねぇ。きな臭いですよ」
剣士「…………やはり罠か?」
僧侶「その可能性が高い事を視野に入れるべきでしょうね。勇者様、いかが致します」
勇者「罠なら猶更行くべきだ。
魔物を倒さなければいけない以上、危険だからと見ない振りをして良いわけじゃない」
魔術師「なるほど、頭良いなー」
勇者「それに、兵士の言葉が引っかかる。他の場所が危険に晒されるかもしれない」
僧侶「ふむ……流石見た目はともかく勇者を名乗っている方ですね。わたしにはとてもできない」
勇者「おい『僧侶』」
剣士「……遺跡は、東。行くのか」
勇者「行こう。迷っていられない」
+東の遺跡+
魔術師「ここか……ぼろっちいなぁ。もっときれいにしといてやれよ!」
勇者「遺跡だからな。お前は言葉を勉強して来い!」
剣士「あ……シロツメクサ生えてる……四葉のクローバー、あるかな」
勇者「おいそこの乙女チック!ふらふら離れるな戻って来い!」
僧侶「うーん、結構荒らされた感じがしますね。国からの距離といい、金目の物はなさそうです」
勇者「残念そうに言うな僧侶!それはお前の仕事じゃないッ!」
魔術師「勇者は叫んでわめいて元気だなあ」
剣士「そうだな……」
僧侶「いやー、若いって良いですねー」
勇者「お前らがそうさせてるんだよ!敵のアジトだと思われる場所なんだよ!
頼むからもっと真剣に取り組んでくれ!!」
魔術師・僧侶・剣士「…………」
魔術師「真剣に取り組むってどうすりゃいいんだ(ひそひそ)」
僧侶「とりあえず形式だけでも頭を下げておけば気が済むんじゃないんですか?
ああいうタイプって自分が1番だと思えればとりあえず満足する小者なんで(ぼそぼそ)」
剣士「…………シロツメクサ……」(ふらふら)
魔術師「そうか!なるほど!勇者!僧侶がやれっていったからなんかよくわかんねーけど頭下げるわ!」
勇者「聞こえてんだよお前らの会話!!あとヒソヒソボソボソ口で言ってんじゃねぇよ!」
魔術師「あちゃー、ダメだった」
僧侶「勇者殿は気難しい方ですね。もっと柔軟でないとやっていけませんよ」
剣士「……あ、四葉のクローバー」
勇者「なんで俺が聞き分けられない子みたいなことなってんだよ!
それと剣士、頼むから戻って来い!」
剣士「……しょうがない」
勇者「ぜーっ、ぜーっ、なんかすごい疲れた……今まさに敵地に乗り込もうっていうのに疲れた……」
魔術師「ダメだな勇者、若いのに体力ねーぞ」
勇者「五月蝿いわ!っていうかお前らのせいだよ畜生!」
僧侶「無駄口叩いてないでさっさと行きません?時は金なりって言いますし」
剣士「…………」
勇者「好き勝手言いやがって……まったく」
+遺跡内部+
勇者「……と、中は暗いな……明かりをつけられるか、魔術師」
魔術師「無理!俺そういうちみっこい魔法からっきしだからな!」
勇者「えばるな。じゃあ僧侶……」
僧侶「1時間につき5Gで御座います」
勇者「金取るのかよ!」
僧侶「当然でしょう。私は貴方に『ついていく』だけの基本料しか支払われていませんから。
魔法行使となると別途オプション扱いになりますので、追加料金をいただかなければ」
勇者「……歩くぼったくり商売か。もういい、たいまつを使う!」
剣士「…………ライト」(パアッ)
勇者「お前が使えるのかよ!」
剣士「……MPが少ないから、3分間だけ……」
勇者「うわぁ使えない!消してろ消してろ!」
剣士「…………ん」
勇者「……さて、とたいまつはこれでいいか。進もう」
剣士「先頭は任せて」
魔術師「ちょっと待った、俺が先頭を歩く!」
剣士「自分が歩く」
魔術師「俺だ!」
剣士「自分!!」
勇者「子供かッ!」
勇者「もう、じゃんけんできめろじゃんけんで!」
魔術師「む……」
剣士「む……」
魔術師「さいっしょは グー! じゃーんけーん!」
魔術師「グー!」
剣士「パー!」
勇者「剣士の勝ちだな。じゃあ剣士……」
魔術師「まだだ!こういうのは3回勝負だぜ!」
剣士「…………望む所!」
勇者「おいこれしってるぞ、ぐだぐだになるって知ってるぞ」
僧侶「ならばこの私めが一計を図りましょうか」
勇者「もしかして金銭が発生……」
僧侶「いたしませんよ。知恵を出すのは基本料に入っております」
勇者「変な所にこだわるんだな」
僧侶「きっちりしている、と申してください」(ごそごそ
勇者「って、人の荷物あさってるんじゃねぇよ!」
僧侶「何をおっしゃいますか。必要な過程ですよ。取り出しましたたいまつに火をつけます」
勇者「……それで?」
僧侶「魔術師殿、戦士殿、もう一本明かりがありますので並んで進めばよろしいのでは?」
魔術師「む!確かにそっちのほうがいいな」
剣士「…………ん、わかった」
勇者「おお、まとまった。たいまつ2本も使うなよと突っ込みたいけど……まあいいか」
僧侶「では勇者殿、私たちは彼らの後ろを歩きましょうか」
魔術師「あるっこー、あーるっこー、すきっぷすきっぷらんらららー」
剣士「けん、けん、ぱ けん、けん、ぱ、けん、けん、けん、ぱ」
勇者「好き放題に騒ぎすぎだろ!?なんで二人して華麗なステップなんだよ!」
僧侶「おやおや、一番声が大きいのは貴方ですよ」
勇者「う……もういい。それにしても静かだな。思ったよりも罠があるような雰囲気もないし」
僧侶「…………そうでしょうか?」
勇者「だって、あいつらがあんなにはしゃいでも何一つおこらn」(カチ
[>なんと! 勇者の足元の床が抜けた
勇者「おわああああぁぁー………」
魔術師「あ、勇者落ちた」
剣士「ドジ……」
僧侶「勇者殿ー、治療魔法は一律150G、蘇生魔法は一回800Gですよー!!」
勇者の声「怪我なしで生きとるわボケぇええええ!!!」
僧侶「……チッ」
勇者の声「その舌打ち聞こえてるぞおおおおお!!!」
魔術師「しょーがない、助けてやるか。僧侶、たいまつもっててくれ」
僧侶「はい、わかりました」
魔術師「待ってろ勇者!今すぐいく!」(タンッ
剣士「いってらっしゃい」
+穴の底+
勇者「ったく、僧侶の奴……ん、何か音が」
魔術師「勇者ああああああああああ!!!!」
勇者「うわああああああああ!!!」
(ずしーん)
魔術師「あれ?勇者!?どこいった?……消えた!勇者が消えた!」
勇者「お前の下!下!重い重い!うわあああ魔術師の体重じゃねええええええ!!!」
魔術師「おわ。メンゴメンゴ。ほら俺って鍛えてるから」
勇者「……それは知ってる。で、ロープは?」
魔術師「なんだそれ」
勇者「……お前、飛翔魔法が使えたりは」
魔術師「しない!」
勇者「えばんな!!」
勇者「どうやってあがるんだよ!被害者が増えただけじゃないか!!」
魔術師「どうやって、って……え、コツがいるけど上れるだろ」
勇者「のぼるったって、触れば解るけど普通の穴じゃなくて石組みだぞこれ」
魔術師「だから、石と石の隙間に指かけて上れるだろ。暗いから勇者わかんねーだろうけど。
俺、夜目ちょうきくんだ」
勇者「いや、明るくても無理だぞ!?」
魔術師「またまたー。ほら、背中に乗れって。上るから」
勇者「え、ええー……って、わーぉ、魔術師とは思えない広さとたくましさ」
魔術師「前衛だからな!」
勇者「……納得だけはする」
勇者「まさか本当に上りきるとは思わなかった」
魔術師「もー、次は気をつけろよ」
勇者「わかってるって、さすがに2度目はn」(カチ
[>なんと! 勇者の足元の床が抜けた
勇者「またかああああぁぁー………」
剣士「あーあ……」
僧侶「勇者殿、ドジっ子なんですかねぇ」
魔術師「ほんっとうに気をつけろよな!!」
勇者「珍しく返す言葉がない。申し訳ない」
剣士「……ドンマイ?」
勇者「それにしても、お前らなんで前を歩いているのに引っかからないんだよ」
魔術師「カン!」
剣士「……罠なんて、あった?」
勇者「……」
僧侶「勇者殿、二人の足並みを真似すれば引っかかりませんよ」
勇者「そういやアンタもそんなことをしてたのか?」
僧侶「いいえ。そんな愉快な事したくありません」
勇者「じゃあなんで……」
僧侶「趣味で盗賊スキルを少々嗜んでおりまして」
勇者「僧侶ってなんだろうな、本当」
僧侶「自らを差し出し仕える神を見つければみな僧侶ですよ、勇者殿」
魔術師「うおー、僧侶かっけぇー!俺も真似しようかな!『魔法を使えれば全員魔術師だ』!」
勇者「……突っ込まんからな。先に行くぞ!剣士、魔術師、先頭を行くんだろ」
剣士「当然」
魔術師「おー!先頭のほうがわくわくするからな!」
+しばらく進んで+
剣士「開けた場所……」
魔術師「声がひびくー!やっほー!!やーっほー!!」
勇者「二人とも、一応気をつけてくれ。何があるかわからないんだから」
僧侶「さすが勇者殿。落とし穴に5度落ち、槍に刺さりそうになったのが3度、
加えて8度矢に打たれそうになり2回射抜かれた方の言葉は一段と重みがありますね」
勇者「真面目に凹むからやめてくれ」
魔術師「……んぁ?変な音がする」
僧侶「音?」
(ごごごごご……)
勇者「こ、これは……」
僧侶「どうやら天井が下がってきているようですね。それも結構な勢いで」
勇者「冷静に言っている場合じゃないだろ!どうにかしないと俺達つぶれて死ぬぞ!」
魔術師「うおおおすっげぇええええ!!ぱっねえええええ!!!」
勇者「はしゃぐな!僧侶、俺たちが入ってきたところはどうなってる?」
僧侶「閉じちゃってますねえ。他に出口も見当たりません」
勇者「くっ……万事休すって奴か……」
僧侶「城を出て1日と持たずに遺跡のトラップで勇者死す、ですか。……あっけないですね」
勇者「いやお前も死ぬからね!?何その他人事みたいに言うのやめろよ!」
魔術師「うー……」
勇者「それでお前はどうした魔術師、天井を見上げて」
魔術師「タイミングをみてるんだ」
勇者「タイミング?」
魔術師「ああそうさ。俺の魔法を見せてやる」
勇者「……何か方法でもあるってのか」
魔術師「おう、『とっとき』だ!」
僧侶「力強い言葉ですね」
勇者「わかった、魔術師、お前に任せる」
魔術師「……いまだっ!片手に炎術!もう片方に氷術!」(ダンッ
魔術師「くらえ、これが俺の、超・絶・まほおおおおおおお!!!」
[>魔術師は地面を蹴ると飛び上がり迫り来る天井を殴り続けた!
勇者「いやそれ無茶」
魔術師「ふおおおおおおおおおお!!!」
[>その拳は高速を超え、勇者でさえも見えない!
ピシ……ピシ……
僧侶「おお」
魔術師「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄あッ!!!」
ドゴォオオオオオオン!!
勇者「そんな馬鹿な!」
魔術師「どうだ!これが俺の魔法だ!」
勇者「俺の知ってる魔法と随分違う!」
僧侶「それにしてもすごい威力ですね。さすが魔術師殿です」
魔術師「へへっ、硬いのはな、急に熱した後に冷やしたら脆くなるんだぜ!」
勇者「いやそれ金属の話だから!!」
ズズゥン……
僧侶「おや、トラップを解除したから扉が開いたようですね」
勇者「―――!!誰か来る」
剣士「……ふうふう、よかった、間に合った」(トテトテ
勇者「待て」
魔術師「お帰り剣士、どうだった?」
勇者「待て待て」
僧侶「いつ戻られるか冷や冷やしておりましたよ」
剣士「ごめん」
勇者「待て待て待て待てッ!お前何処に行ってたんだよ!っていうかなんで二人は把握してるんだよ!」
剣士「……自分の家」
魔術師「なんでって、剣士が言ったからに決まってるだろー。部屋に入る前」
僧侶「いけませんよ魔術師殿、勇者殿には内緒にしておくよういい含められていたではありませんか」
勇者「何やってんだよ!そもそも何で帰ってたの、ほら言いなさい!」
魔術師「勇者お母さんみてぇ」
勇者「五月蝿い!」
剣士「……その、ガス閉め忘れてなかったか、気になった……」
勇者「ちゃんと確認してから家を出ろ!……で、閉まってたんだろ」
剣士「………も……てた」
勇者「漏れてたのかよ、危ねぇよ!」
剣士(ふるふる)
勇者「え、違うのか?」
剣士「……燃えてた」
勇者「……………」
剣士「…………下の人が、寝タバコしてたみたいで……帰る家、なくなった……」
勇者「………。そ、そうか」
魔術師「畜生……魔王の奴!剣士のすんでる所を燃やしちまうなんて!!ゆるさねえ!」
勇者「魔王は……多分関係ないんじゃないかな……」
僧侶「それで、剣士殿、貴方はどうしたんです。まさか火事を放っておいてそのまま此方に来たわけではないでしょう?」
剣士「ガス閉じてなかったの自分だから……大家さんに怒られると思って……見たことある兵士がいたから……スケープゴートに……」
勇者「極悪だ!あとかっこよく言うな!」
僧侶「そうでしたか。なら問題ありませんね」
勇者「いろいろ大有りだよ!?」
魔術師「なーなー、向こうにも進めるみたいだからさっさといこうぜー」
勇者「ああもう!お前は先に先へと進むな!待てってば!」
+遺跡の再奥+
鴉「ボスー、勇者一行の気配がするッスよー」
吸血鬼「ふむ、流石勇者……罠とわかっていても来ましたか。尊敬に値しましょうか。各トラップはどうなっています?」
鴉「そこそこ発動してるみたいッスよー」
吸血鬼「ふむ、ならば上々。雑魚を与えれば彼らはレベルアップしてしまいますからね。
こうしてトラップを山ほど仕掛けることにより、疲弊だけを誘う……ふっ、我ながら末恐ろしい作戦を考えたものです」
鴉「捻くれボッチだから部下がほっとんど居ないだけじゃないスかー」
吸血鬼「お黙りなさい。かの王国がひた隠しにしてきた存在……。我等魔族の敵になる前に彼を倒せば、魔王様からの株もストップ高というものです」
鴉「上手くいく気がまったくしないんだぜー……」
(どたどたどた)
勇者「はーっ、はー……、や、やっと、最後、ついた……っ、ぜえぜえ」
僧侶「勇者様、お疲れ様です」
剣士「……おめでとう」
魔術師「っつかれーしたー!じゃあ帰ろうぜ!」
勇者「帰らない!目的地ここだからな!!ああもう!」
吸血鬼「そうですよ、そしてここが貴方達の墓場――旅の終焉となるのです」
勇者「……っ、お前が、あの村を襲った奴か!」
吸血鬼「ふふっ……」
剣士「……カラスさんだー……待って」
魔術師「焼き鳥!焼き鳥にしようぜ!!くらえ、炎の魔法!」(ボッ
鴉「やぁめぇてええええ!!」(ばっさばっさ
吸血鬼「あっ、ちょ、戦闘前の台詞中に部下に攻撃しないでください!!」
勇者「はいはい剣士、魔術師!戻って来い!ハウスッ!」
魔術師「俺らは犬じゃねーっての」
剣士「でも、雇い主は勇者。サボると給料取り上げ」
魔術師「そういやそうだったな。戻るか」
(トコトコ)
僧侶「さ、台詞の続きをどうぞ」
吸血鬼「……空気を壊しておいて続けられるわけがないでしょう!」
勇者(心中お察しいたします)
吸血鬼「……ふ、ふん。ふざけているのも今のうち……貴様らは罠にかかったのですからね」
勇者「それくらいわかっている、わざわざ俺を呼び出すようなマネをしているんだからな」
魔術師「そうだな。遺跡罠いっぱいだったからな!勇者しかひっかかってなかったけど!」
剣士「…………一人だけ、ずるい」
勇者「泣きそうになるからやめてくれ」
吸血鬼「ふふふ……罠はそこではないんですよ!何故ならッ!」
僧侶『この村は元々廃村で、お前たちをおびき寄せるためだけに利用したのですよ!』
吸血鬼「その通り!……って、え?」
僧侶『勇者を呼びにいったのも数少ない部下にみっともなく頭を下げ頼み込み兵士に変装させた者』
吸血鬼「え、いや、頼み込むって……それ、私の台詞」
鴉「うわー、バレバレじゃないですかー。部下が少ない所まで」
僧侶『いいんですか?このような場所で私と遊んでいて。
お前たちがここにいる間に王国が襲われているのですよ』……と、いった所でしょうか」
吸血鬼「全部言われた、もうだめだ」
勇者「おい僧侶!何時知っていた!?っていうか、その話が本当なら――」
僧侶「ご安心を勇者様。剣士の言葉を思い出してください」
剣士「…………?」
勇者「こいつの言葉って……まさか!?」
僧侶「ええ。あの兵士は今頃、事情聴取をうけているはずです。
ガス漏れの罪で。……言われなき罪で攻められ、キれてらっしゃるかもしれませんね」
吸血鬼「なにそれ初耳」
鴉「あーあーあーあー」
魔術師「……えっと、どういうことだ?」
剣士「……自分の許されない選択が、正義だった話」
魔術師「マジで!?剣士すっげぇー!!!」
吸血鬼「くっ、私のたくらみは潰え、王国は無事、ということですか」
僧侶「ご安心を中ボス殿。剣士の言葉を思い出してください」
吸血鬼「いや知らないんですけど」
僧侶「剣士の家は、王国でも住宅が所狭しと並ぶアパートの一室。……そこがガス爆発となれば、王国の被害も物凄いかと」
勇者「何それ初耳」
鴉「わーあーあーあー」
魔術師「……えっと、どういうことだ?」
剣士「……犠牲は必要だった、って話」
魔術師「マジで!?剣士パネェー!!」
吸血鬼「……えっと、ちょっと待ってください。では王国は……」
僧侶「閑静な住宅街が突如鳴り響いた爆発音と共に地獄のような火の海に覆われ、住民百数名あまりが重軽傷といったところでしょうか」
勇者「…………」
吸血鬼「…………」
勇者「おい剣士」
剣士「…………悪くない。自分は少しうっかりしてただけ……」
勇者「おい剣士!!」
魔術師「……じゅーけーしょ?かんせー?」
僧侶「魔術師殿、王国に住んでいる人たちがいっぱい火傷しました、という事です」
魔術師「何だってー!!魔王の奴、剣士の居る家を爆破させただけには飽き足らず、罪もない人々を巻き添えにしたって事か!」
勇者「魔王関係ねーよ!完ッ全に人災だよ!?」
剣士「そ、そうだ。悪いのは魔王!悪い魔王の部下であるお前は勇者が倒す!」
勇者「おいこら諸悪の根源!!」
魔術師「流石だぜ勇者……俺も協力する!」
勇者「俺は何一つとして賛同の声を上げてないよな!?」
僧侶「では貴方はあの吸血鬼をのさばらせておく事は賛成なのですか?」
勇者「…………」
僧侶「問題ありませんし、いいではありませんか。変に水を差してしまえばまた喚いて怒鳴って……
『もうやめて!勇者殿の喉のライフポイントはゼロよ!!』と悲鳴をお上げに……」
勇者「わかったわかった!!
――兎に角、お前が起こした事件の内容の是非は問わん!けど、民に仇なす者である事は確かだ!
勇者として、討伐させてもらう!」
魔術師「……あだなす?とーばつ?」
僧侶「魔術師殿、悪い事しそうだからとっちめちゃうぞ、って事です。変に厨二全開の台詞とか気持ち悪いですよね」
勇者「お前が全力で水差しに来てんじゃねー!!!」
鴉「なー、ボスー、勇者ってなんか親近感沸きませんかー?ボスにそっくりッスよねー」
吸血鬼「……だ、誰がそのような者と同一なのですか…………」
鴉「案外かるーく謝っちまえば仲良くなれっかもしれないッスよー?
ほぼハブ状態なのに吹けば飛びそうなプライドだけで魔王陣営にいても良い事ないじゃないッスかー」
吸血鬼「わ、私は代々伝わる高貴なる吸血鬼の一族なのですよ!?そんな事……」
鴉「それだって三代前の主がギャンブラーでサイマーで地の底よりも没落した今じゃ完全お飾りッスよねー」
吸血鬼「お黙りなさい!いくら貴方と言えど、我が家系を馬鹿にするのであればっ……」
鴉「どーするっていうんスかー。ボスの話まともに聞いてくれんのってオレしかいないっスよー」
吸血鬼「…………う、あ、そ、それは……」
魔術師「勇者ー、あいつら何言ってんだ?なんか様子が変だぜ?」
僧侶「要するに、目の前の陣営は魔王に完全に服従しているわけではないという事ですよ、魔術師殿」
勇者「うわー……倒しにくい。なんか内情を聞けば聞くほど倒せなくなる気がする……」
剣士「今のうち、ボコる?」
勇者「あー……それやるとこっちが悪になるだろうし……えーっと……どうしよっか……」
吸血鬼「……ハッ!?ほら鴉!貴方が余計な事を言うから妙な感じになったでしょう!?」
鴉「オレは正しいことしかいってねーッスよ」
吸血鬼「こ、こほん。掛かってこないという事は、この私を前に怖れを成しましたか」
勇者「いや、お前自身っていうかお前のバックストーリーに怖れを抱いてんだよ」
吸血鬼「ふっ……恐怖を抱くことに何も戸惑う事はありません、この吸血鬼を前にしたのであれば当然なのですから!」
剣士「あっ、3時……みんな、おやつの時間にしよう……」
魔術師「うっひょー!!わーいおやつおやつ!!剣士ー、今日のおやつは何だ!?」
吸血鬼「えっ、あっ」
剣士「今日はがんばって……ガトーショコラ作ってきた……」
魔術師「マジで!?やったー!!俺ケーキ大好き―ッ!!」
鴉「うわ、完全スルーじゃないッスかボス」
吸血鬼「…………(カアア」
勇者「お前ら、ここ敵陣だからな!?んでもって決戦直前だ!!なんでピクニックシートしいてケーキ切り分けてんだよ!?
見てみろよ吸血鬼さんとか元に戻そうとした空気を完全にハズした感じで可哀そうじゃねーか!」
僧侶「そうですね、頑張りだけはみとめてあげましょう」
勇者「紅茶のいい香りさせながら超上から目線で言ってんじゃねーよ」
剣士「勇者、一緒にどう?」
勇者「いや、俺は……」
魔術師「飯もおやつも一緒に食べた方が美味いんだぞ!!一緒に食おうぜ!!うしろの吸血鬼さんも一緒にさ!」
吸血鬼「ひぇ!?わ、私!?」
鴉「わー、お茶の誘いとか初めてッスよねボス!」
吸血鬼「そ、そんなことありませんよ、私にだって一度や二度くらい……あ、ありますもん」
剣士「魔術師……ナイスアイディア……」
魔術師「ほらほらこっちにぐぐっと!!さあさあ!!」
吸血鬼「あっ、ちょ、ちょっと引っ張らないでください!!」
鴉「といいつつ顔超にやけてまッスよボスー。よかったッスねー」
勇者「……なにこれ」
僧侶「残念ながらここで断った方が完全に悪者ですよ、勇者殿」
勇者「いや解ってるけど……いや解ってるけどよ!?」
僧侶「まあまあ座ってくださいよ。紅茶も有りますよ」
勇者「……。解ったよもう!!しょうがねーな!!」
剣士「勇者の分、はい」
勇者「ありがとう……って、本当にケーキとか作れるんだな」
剣士「まだ修行中だけど……僧侶は?」
僧侶「申し訳ないのですが、私はこの時間帯小麦粉を使ったものを食さないよう宗教上の理由で禁止されておりまして……」
剣士「そうか……残念……」
僧侶「ええ、すみません」
魔術師「うっひょー!!ケーキうめぇー!!!剣士、おかわり!!」
剣士「ん……」
吸血鬼「お、お前は本当によく食べるな」
魔術師「食う子と寝る子は育つんだぜ!吸血鬼さんも食べてみろよ!!超うまいんだぜ」
吸血鬼「……仕方ありませんね。毒は入っていないようだから食べてみて差し上げますよ!」
鴉「うっわー、笑える程ツンデレじゃないッスかボスー……」
勇者「……。はあ、変な話になっちまいそうだな……王様にどう報告すべきか。食ってから考えよう」(ぱく
勇者「おじーちゃん、なんでおれ、たたかわなきゃいけないの?」
爺「それはなあ勇者、お前が勇者だからよ」
勇者「おじーちゃん、なんでおれ、みんなとあそべないの?」
爺「それはなあ勇者、お前が勇者だからだよ」
勇者「おじーちゃん、なんでおじーちゃんはいつもおなじこたえなの?」
爺「それはなあ勇者、お前が勇者だからだよ」
勇者「おじーちゃん……。てんどんはどがすぎるとうっとうしいだけだよ……」
僧侶「…………殿、勇者殿」
勇者「へ?な、何だ、どうしたんだ?あれ、俺、寝てた?何で??」
僧侶「お早うございます。初回サービスで後払いにして差し上げますので、800G頂けます?」
勇者「えっ」
僧侶「800G頂けませんか」
勇者「意味解ら……」
僧侶「勇者殿、800G」
勇者「ああわかったよ!!何なんだよ一体!!」(ちゃりーん
僧侶「はい確かに。では次回からは勝手に財布からいただきますね」
勇者「だからお前の行為がわけわからん!説明してくれるんだろうな」
魔術師「説明も何も、勇者死んだから僧侶に生き返らせてもらったんだろ」
勇者「はぁ!?って事はアレ走馬灯!?シャレにならん……」
剣士「悲しい事件だった……」
勇者「事件も何も、俺さっき剣士の作ったケーキ食っただけだぞ」
僧侶「ですから死んだんじゃないですか」
勇者「だから訳がわからん!!」
僧侶「剣士殿のケーキをお召し上がりになられて、勇者殿は死んだんですよ」
剣士「……悲しい事件だった……バニラエッセンスを入れすぎた故の事故……」
勇者「お前のその手に持っている髑髏マークの茶色い瓶がバニラエッセンスというならばその認識を先ず改めようか」
剣士「わざとじゃない……だぱぁってなった……」
勇者「量の問題じゃねーよ!?はっ!ちょっと待て、俺がこうなったって事は――!!!」
魔術師「きれいな顔してるだろ。ウソみたいだろ。死んでるんだぜ。それで」
鴉「ボスーーー!!!!」
勇者「やっぱりー!!!!」
勇者「アンデッドを再びデッドにしちゃうケーキって何だよ!?つか何で魔術師は元気なんだよ!!」
魔術師「ちょっと口先は痺れたけど、美味かったぜ剣士。また作ってくれよ!」
剣士「ああ」
勇者「悲劇フラグをまた立てるなッ!それにしてもお前丈夫だな!」
魔術師「よく言われる!!馬鹿だからな!」
鴉「ボス……こんなにも満足げな笑みを浮かべて……ッス」
勇者「どうすんだよアレ!?なあ僧侶……」
僧侶「ゾンビに回復魔法をかけると蒸発しますよ?上級不死者である吸血鬼とはいえ蘇生魔法は不味いのでは?」
勇者「ですよねー!!」
[>ゆうしゃたちは きゅうけつきを たおした!!
[>けいけんちを500てにいれた!!
魔術師「あっ、俺今のでレベルアップした」
僧侶「おめでとうございます、魔術師殿」
剣士「……こんばんは、せきはん……」
勇者「うわああ最悪の倒し方だー!!!!」
鴉「あっ、大丈夫ッスよー。一か月くらいしたら目を覚ましまっスよー」
勇者「えっ」
鴉「ボス一応ちゃんとした吸血鬼の本家血筋ひいてんスよー。そこらの魔物よりははるかに丈夫ッスよ」
勇者「そうか……よかっ……いや、良いのか……?」
僧侶「お望みならば金銭と相談したうえで塵も残さず蒸発させられますが如何いたします?」
勇者「たのむからやめてあげて」
僧侶「畏まりました」
鴉「それで、勇者サン達どうするんスかー?安全な帰り道くらいは教えまッスよー」
剣士「ボコらずに帰る?」
勇者「そうするしかな…………。あーでも、コイツ別のトコ襲うって言ってたんだよなあ……」
魔術師「んー……じゃあそうしたら殴って止めたらいんじゃね?」
勇者「お前は何を言ってるの」
魔術師「ダチが正しい道から逸れた時はそうするのが一番イイってばっちゃが言ってたからな!」
勇者「お前は何を言ってるの!?」
魔術師「知らないのか、勇者。同じ釜の飯を食って同じ杯を交わしたらダチなんだぜ!」
僧侶「同じホールのケーキを食べて同じポットから紅茶飲んだだけですけどね」
鴉「ダチ……友達……良い響きッスねー。ボスが聞いたら泣いて喜びまッスよー」
剣士「比喩……なさそう」
勇者「それを言われると良心が痛い。想像がつくだけにさらに痛い」
僧侶「ではどうします?」
勇者「…………。帰ろう。吸血鬼には、えーっと、あれだ……」
魔術師「絶対に遊びに来るから此処に住んでてくれって伝えてくれよ!俺ぜんっぜん道わかんなくなっから!!」
剣士「また、ケーキ持ってくる……」
僧侶「……ふふっ、一番それが効果的なのではないのでしょうか」
勇者「……どっちの意味でだよ」
僧侶「さあ?」
勇者「……それが一番いい落としどころか?ま、そういう風に伝えといてくれ」
鴉「うぃー、了解ッスー。後時々手紙とか書いてあげると喜ぶんで書いてやって欲しいッスー」
剣士「わかった……そういうの、好きだから……書こう……」
鴉「そしたら道こっちッスー」
魔術師「おお、こんなとこにも出口あったんだな」
僧侶「隠し通路のようですね。ふむふむ……めずらしい仕掛けですね……今後の参考にさせていただきましょうか」
勇者「色々怖いよお前が言うと!!」
+外+
勇者「はぁ……一応これでいいのか……」
僧侶「お疲れ様でした、勇者殿。どうされますか?」
魔術師「一回帰ろうぜー。進んでもどーせ野宿にしかならないしー」
剣士「野宿は……嫌」
勇者「そうだな、戻るか。兵士の件について報告もあるし。それに……」
剣士「それに?」
勇者「お前らとやっていけねーんだよ!!!クーリングオフだクーリングオフ!!!もしくはチェンジッ!!!」
僧侶「おやおや。短気はいけませんよ」
魔術師「勇者は怒りっぽいなー。将来ハゲるぜ?」
剣士「……ドンマイ、勇者」
勇者「だから俺悪くねーよ!!お前らが改めろよちくしょーッ!!!!!」
++おしまい++
一応補足
勇者「お前さー、兵士の件いつ気づいてたんだよ」
僧侶「最初ですね。近辺の村の兵士にしては装備が貧弱でしたし、言語の認識にもブレがあったでしょう。あまり上級の存在ではなかったのでしょうね」
勇者「……あの神々しいってとこか。気づいてたんなら言えよ!?剣士がどうにかしなかったらどうにかなってただろ!!」
僧侶「私については報酬は前払いですべて頂いておりましたし、
王国が破壊されたら破壊されたで私の仕事増えてぼった……いえ、神の御導きを正しく人々に説けるいい機会、と思いまして」
勇者「……なあ、気のせいじゃなければいいんだけど、お前……魔王とか言わないよな?」
僧侶「そんなこと申し上げてどうするんですか。私はれっきとした僧侶ですよ。少々金銭に五月蠅いだけでございます」
勇者「五月蠅いってレベルじゃねーよ!?」
97 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/09/15 23:39:37.82 KAsdFJ8+o 98/98乙。
おもしろかった!