梓「邪道……?」
元スレ
梓「邪道」
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律「邪道だろー。やっぱりコロッケと言ったらじゃがいもだし」
澪「とか言って出されたら食べるんだろ」
律「もっちろーん。だっておいしいじゃ――」
梓「邪道ってなんですかっ!!」
律「うわっ?!」
澪「!?」
梓「あんなにおいしいのに邪道ってどういう事なんですか!」
紬「あ、梓ちゃん落ち着いて」
梓「これが落ち着いていられますか!」
律「いや、あのな梓、別に嫌いなわけじゃなくて……」
梓「だったら尚更です! あんなにおいしい食べ物を邪道だなんてひどいです!」
紬「え、えっと、りっちゃんはハサミがついてない物が邪道っていう事を言いたかったんじゃあ」
梓「そんな話出てません! どっちみち邪道扱いしてるじゃないですか!」
律紬「ふええ……」
澪「あ、あーそういえば唯も好きだったよな!?(同じく愛好家の唯と話し合えば梓も落ち着いてくれるはず)」
律「そうそう唯も好きだって言ってたもんな!(助けて唯!)」
紬「唯ちゃんっ」
唯「……うん」
澪律紬「ほっ……」
唯「カニクリームコロッケは邪道だよ」
6 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/09 22:05:19.00 1U0BN9AkP 5/38カニクリームコロッケも久しぶりだなぁ
梓「っ!」
澪律紬「え!?」
梓「……っ……すみません今日は帰りますっ」
澪「梓!?」
ガチャ バタン!
紬「あ……」
唯「……頑張れ、あずにゃん」
律「いやなんだよ『頑張れ、あずにゃん』って! 何でちょっとかっこつけてるんだよ!」
澪「どうしてあんな事……唯だってカニクリームコロッケ好きだったろ?」
唯「うん」
紬「梓ちゃん泣きそうだった……」
律「悪いのは私だけどさ、そこはフォローしてくれよ~!」
唯「でもね、カニクリームコロッケ(以下CCC)好きなら一度は通る道だから」
律「へ?」
唯「私も昔似たような事を言われたんだ」
唯「あの時は私も怒ったなぁ。だけど世の中にはそういう考えを持った人は必ずいるんだよ。食べ物だから好き嫌いもあるしね」
唯「CCCを好きすぎるあまりネガティブな意見に過剰反応しちゃうの」
唯「だけどそういうのを克服していかないとこれから先また同じような事が起こっちゃうから」
唯「だからあずにゃんには答えを見つけてほしくて」
紬「だからあんな突き放すような事を言ったの?」
唯「うん……」
律「……アホがいる」
唯「んなっ!?」
澪「唯がカニクリームコロッケの事をものすごく好きなのはわかったけど、梓も唯と同じくらい好きとは限らないだろ」
唯「あっ!? ……た、確かに」
紬「きっと梓ちゃんはカニクリームコロッケが好きな人に共感してほしかったのよ」
唯「それは……すごくわかる」
律「これがきっかけでカニクリームコロッケが嫌いになったりとか……」
唯「それだけはダメっ!」
唯「……はは、私だめだめだね。結局私もあの頃の事を引きずって過剰反応してるや。自分の価値観をあずにゃんに押し付けちゃってた……」
律「そんな大げさな事か? ……と思ったけど梓にとってもおおごとみたいだしな。私梓に謝ってくるわ」
唯「待ってりっちゃん、私に行かせて。同じCCC好きとして謝りたいの。りっちゃんの分も謝ってくるから、だからここは私に!」
律「わかった。唯に頼むよ」
唯「うん! じゃあ行ってくる!」
ガチャ バタン!
澪「……何て言うか、そんなに?」
紬「カニクリームコロッケが大好きなのね……よーし」
――――
梓「……」
梓「どうしてCCCの良さをわかってくれないのよ!? 先輩達なら分かってくれると思ったのに!」
梓「……」
梓「邪道って何よ……コロッケに邪道なんてないのに……CCCはあんなにおいしいんだから……」
梓「……あ」
「あーコロッケうめー」
「やっぱコロッケと言ったらジャガイモと肉だよな」
「だよなー」
「それ以外は邪道っすわ」
梓「!」
「特にカニクリームコロッケってなんだよな、カニ入ってんのかよあれ」
梓「このっ……!」
梓「ちょっと――」
唯「あずにゃんっ!! ……いー子いー子」
梓「ほわぁぁ……って唯先輩!?」
唯「ふう、ギリギリセーフ」
梓「う……すみません……ってどうしてここに」
唯「それはねー、ほらこれ!」
梓「この俵型のコロッケは……」
唯「もちろんカニクリームコロッケだよ♪ 公園で一緒に食べよ?」
梓「え、でも……」
唯「いいからいいから!」
梓「あ、ちょ、引っ張らないで下さい!」
公園
唯「さて、では頂くとしますか」
梓「……先輩にとってCCCは邪道なんでしょう?」
唯「その話は食べながら、ね。ほらこんなにおいしそうな出来立てだよ?」
梓「うっ……でもお箸もフォークもないのにどうやって」
唯「ふっふっふ、まだまだ甘いねあずにゃん。はいこれ」
梓「これは……紙?」
唯「サバーラップだよあずにゃん」
梓「サバーラップ?」
唯「そ。ミスドでドーナツ買った時にペーパーナプキンと一緒に透明な紙が入ってるでしょ?」
梓「ああ、あの紙ですか」
唯「うん。ワックスペーパーとかオイルペーパーって言うんだけどね、耐油性があるから手でカニコロを食べる時に便利なんだ」
唯「だからいつもカバンに入れてるの。ほら!」
梓「箱ごと!?」
唯「えへへ~サバーラップ1000枚入りだよ」
梓「そ、そんなものを常備してるんですか……?」
唯「うん。外で食べるカニコロも美味しいからね」
梓「それだけの準備をするほど好きなのにどうして邪道だなんて……」
唯「それは……ごめんなさいあずにゃん。私あずにゃんに自分の考えを押し付けてた」
梓「え?」
唯「私にも同じような経験があってね、だからあずにゃんには強くなってもらわなきゃって勝手に思って……」
梓「それであんな事を」
唯「うん。あずにゃんごめんなさい」
梓「……よかったです」
唯「えっ?」
梓「唯先輩がカニクリームコロッケを好きでいてくれて。それも私以上の好き者で」
唯「照れるなあ」
梓「先輩も同じような経験をしたんですよね……邪道に対する答えは見つけたんですか?」
唯「んー、一応はね。でも私もまだまだだーって今回の事でわかったよ」
梓「……」
唯「おっと、せっかくのカニクリームコロッケが冷めちゃうね。ほれ食べよう」
梓「あ、はい」
唯「いただきまーす」
梓「いただきます」
唯「ん~~おいし~!」
梓「あむ……おふっ!? あっ!」
唯「ぷふ、あずにゃんがクリームこぼした」
梓「うう……だって」
唯「ティッシュあるよ」
梓「ありがとうございます。……あ」
唯「どしたの?」
梓「なんだかこのクリーム、さっきの私みたいです。抜き身の刀ならぬアツアツのクリームみたいな……」
唯「確かにさっきのあずにゃんは見てて危なっかしかったかな」
梓「こんなんじゃカニクリームコロッケに笑われちゃいますね」
唯「おぉー」
唯「中々面白い事言うねこの子は」
梓「唯先輩、私CCCについてもっともっと詳しくなろうと思います」
梓「それで少なくとも邪道って言われたからって怒るような事は無くしたいと思います」
唯「そっか」
梓「先輩もCCCについて調べたんですよね? サバーラップを常備するくらいですし」
唯「まあね」
梓「そして唯先輩なりの答えを見つけた……。あのっ! 私も自分なりの答えも見つけてきます! だからその時は先輩の考えを聞かせて下さい」
唯「おおぅやる気だねあずにゃん。わかったよ。……と言ってもそんなに大した考えでもないけどね」
梓「やってやるです」
唯「うん。頑張れ、あずにゃん」
梓「はい!」
――――
唯「――っていう事があってね、今日があずにゃんとの対決の日なんだよ」
律「そ、そうなのか」
ガチャ
梓「お疲れ様です」
律「あ、梓……この前はごめんな」
梓「いえ私こそすみませんでした。日本で言うコロッケとは違うという点では一理あるかもしれませんしね」
律「あ、へ、うん?」
澪「なんだか今日の梓……」
紬「自信に満ち溢れている表情ね」
唯「あずにゃん……CCCについて調べてきたようだね」
梓「はい! 私の考えを聞いてください!」
律「一体何が始まるんです?」
澪「さあ……」
梓「では行きます!」
梓「カニクリームコロッケ、いえ、そもそも日本のコロッケの起源には諸説あって定かにはなっていません」
梓「ですが大元はフランス料理のクロケットというコロッケに似た料理でそれが日本に伝わってコロッケになったという点は同じです」
梓「クロケットは具をパン粉で包んで油で揚げるのでほとんどコロッケの様なものですがクロケットの具はホワイトソースがベースになっている事が多いんです」
梓「ですから起源を辿ればコロッケの中身はクリームなんです。そういった意味ではクリームコロッケが邪道とは言えないでしょう」
律「あ、そ、そうなんだ……なんかごめん」
唯「でもそれはクロケットっていう料理の話でしょ?」
梓「ルーツを辿ればクリームコロッケの方が正道とも言えます」
唯「でも日本でコロッケと言ったらジャガイモコロッケだと思うな」
梓「確かにクロケットが日本に伝わってそれがコロッケという料理にアレンジされたわけですからコロッケのスタンダードはジャガイモであると言えるでしょう」
梓「ですが――」
唯「日本でコロッケが浸透した後で西洋風のコロッケが登場します。それがクリームコロッケ。つまりその時点でクリームコロッケは後発なんだよ。日本ではコロッケ=ジャガイモは揺るがないよ」
梓「くっ……!」
紬「唯ちゃんすごい……」
澪「その頑張りをもう少し他に回して欲しい……」
梓「だからってクリームコロッケが邪道というほどのものでは――」
唯「ストップ。あずにゃんがコロッケについてよく調べてきたのはわかったよ。でもね、それはカニクリームコロッケとは直結しないんじゃないかな」
唯「さらに言うとスタンダードコロッケのバリエーションなんだよね、クリームコロッケは。そのバリエーションのさらに亜種のカニクリームコロッケには明確な起源なんてないよね」
梓「うっ……でも、私はカニクリームコロッケは一つの独立した料理として考えています!」
唯「それと同じようにカニクリームコロッケを邪道って考える人もいるよね」
梓「そ、それは……」
唯「食べ物の感覚はどこまでいっても主観だと思うんだ。あずにゃんだってカリフォルニアロールがお寿司だって言われたら戸惑うでしょ?」
律「なあ澪カリフォルニアロールって何?」
澪「アメリカの寿司屋で定番のアボカドとキュウリとカニ足を巻いた寿司の事」
紬「そんなお寿司が……!?」
唯「何となくカニクリームコロッケは邪道。その人がそう思ってしまえばそれまでなんだよ」
梓「そんな……それじゃただの感情論じゃないですか……」
唯「そういうものなんじゃないかな」
梓「うっ……っ……」
唯「あずにゃんはすごいね。この短期間で私と同じくらいの知識を身につけてるよ」
梓「それでも邪道って言われて言い返せなかったら意味ないです……」
唯「そんな事ないよ」
梓「あの、唯先輩は見つけたんですよね? カニクリームコロッケは邪道じゃないって証明できるんですよね?」
唯「……」
唯「カニクリームコロッケは邪道」
唯「それでいいんじゃないかな」
梓「えっ……?」
唯「さっきあずにゃん言ってたよね。カニクリームコロッケは一つの独立した料理として考えているって」
唯「そう考える人もいれば邪道だって考える人もいる。私はそれでいいと思う」
梓「でもそれじゃ――」
唯「ただし! 私は何と言われようとカニクリームコロッケが好きだって叫び続けるよ」
唯「必ず批判する人はいるんだよ。真っ向から対立してもそれ自体が目的の、ただ荒らすだけが目的の人だっている」
唯「そうやってカニクリームコロッケを火種にして、カニクリームコロッケを踏み潰して楽しむような人がいるかもしれない」
唯「でもね、まわりがどんな人であろうとどんな困難があろうと私がカニクリームコロッケを好きな事は変わらない。カニクリームコロッケが潰されてクリームがはみ出しても私はそのクリームを舐めるよ。だって美味しいもん」
唯「カニクリームコロッケを潰したい人が何をしようとも私がカニクリームコロッケを嫌いになる事なんてないんだよ。ていうかあんなにおいしい物を嫌いになれるはずないからね!」
唯「好きも嫌いも邪道も受け入れて、その上で自分の信じる道を行く。私はそうする事に決めたんだ」
梓「唯先輩……」
唯「……なんて、自分でも何言ってるかわかんないや。てへ」
梓「いえ……私もそうありたいと思いました」
唯「そっかあ。なんか嬉しいかも」
梓「そうですよね。私はカニクリームコロッケの事が好き。それが一番大事な事ですもんね」
唯「そうそう! 同じカニコロなら食べなきゃ損だよ!」
梓「はいっ!」
律「あのー、もう終わりました?」
唯「終わったよ~」
梓「やっぱり唯先輩はすごいですね。これからも色々教えて下さい」
唯「私が教えられる事なんて何にもないよ。それよりも一緒に頑張っていこうよ、カニコラーとして!」
梓「先輩……」
澪「なんだかコロッケの話ばっかり聞いてたらお腹が空いてきたな……」
紬「そんな澪ちゃんや唯ちゃん達の為に今日のおやつはカニクリームコロッケにしてみました~」
唯梓「ふおおおーーーー!?」
律「さっすがムギ! じゅるり!」
澪「おいしそう……」
紬「今日に合わせて持ってこようって思ってたの」
唯「すごいよムギちゃん! なんていうかっ、うんっ、ほんとすごいよ!」
梓「はいっ!」
澪「おちつけ」
律「私も腹減っちゃったよー早く食べよーぜ!」
唯「そっそうだね!」
梓「そっそうですね!」
唯梓澪律紬「いただきまーす!」
ガチャ
「ちょっといいかしら」
澪「おお和。どうしたんだ?」
和「今度の部長会議の事なんだけど……あら、コロッケ?」
紬「カニクリームコロッケなの~。よかったら和ちゃんも一緒に――」
唯「だめだよっ!!!」
梓澪律紬「!?」
唯「和ちゃんがCCCを食べるのは……CCCを認めてからじゃなきゃダメだよっ!!」
和「またその話? それならもう――」
唯「ここで会ったが百年目だよ和ちゃん! 今日こそCCCを認めさせてあげる!!」
和「何よそのシーシーシーって」
唯「カニクリームコロッケの略だよっ! 最初のCは――」
和「ああ、Crab Cream Croquetteってことね」
唯「Caniの略――えっ!? ……そ、そう! そうとも読めるんだよ! 二つの読み方が出来るんだよ!」
律「ああ、唯が昔似たような事を言われたってのは」
澪「和だったのか……」
紬「なるほど強敵ね」
唯「あずにゃん!!」
梓「はっはい!?」
唯「さっきはあんなエラそうな事言っちゃったけど私もまだまだ未熟なんだ。だから身近な人にCCCを馬鹿にされたら黙っていられない」
唯「それに和ちゃんは私が今まで出会った人の中で一番手強いんだ」
唯「だから力を貸してあずにゃん! あずにゃんの力が必要なの!!」
梓「私が唯先輩の力に……?」
唯「うんっ! お願いあずにゃん!」
梓「……わかりました。こうなったら私もやってやるです!」
梓「どこまでお役に立てるかわかりませんが頑張ります!」
唯「あずにゃんがいれば心強いよ! 同じカニコラーとしてこれからよろしくね!」
梓「はいっ!」
和「はぁ……澪、ちょっと悪いんだけど唯の事を……澪?」
澪「もしゃもしゃもしゃ……ほんとにうまいな!」
和「律? ムギ?」
律「っかーうめえ!」
紬「んん~クリーミィ♪」
和「……」
唯「和ちゃんにカニクリームコロッケの良さを一から教え直してあげるよ!」
梓「やってやるですっ!」
和「えぇ、ちょっ……」
梓(カニクリームコロッケを分かち合える人が出来た)
梓(こんなに嬉しいことないよ)
梓(それでも、まだまだこれから)
梓(私達は進み始めたばかりなんだ)
梓(この険しく曲がりくねった”ジャ”の道を……)
END