勇者「乗り心地はどうですかぁ?」
姫「最悪ね、速く静かに歩いてよ」
勇者「はいはい」
元スレ
姫「疲れた、おんぶして」勇者「はいはい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1337509920/
姫「勇者、お腹すいた」
勇者「パンを持って来ようか」
姫「作ってよ」
勇者「半日はかかるけど」
姫「待ってるから速く作ってよ」
勇者「出来はどう?」
姫「中はふんわりしてて外はさっくり、良いブレッドね」
勇者「味は」
姫「最悪ね、苺ジャムと合いそうかな」
勇者「はいはい」ごとっ
姫「おはよう」
勇者「おはよう」
姫「口が嫌な感じ、歯磨きしたい」
勇者「洗面所あるだろ」
姫「抱っこ」
勇者「はいはい」がしっ
姫「寝間着やだ、替えてよ」
勇者「メイド達呼んで来るよ」
姫「今日はドレスは着ないの、察してよ」
勇者「?」
姫「勇者の服と同じデザインのコスチューム作らせたの」ばさっ
勇者「おー、ちっちゃい」
勇者「何で俺が手伝うんだ」
姫「面倒くさいからよ、早くして」
勇者「……これどう外すの」ぶちっ
姫「……最悪ね、今日は部屋から出ないで過ごすから」
勇者「下着くらい他にあるんじゃ?」
姫「今日はあれを着けてアンタと遊びたかったのよ、ばか」
姫「フルハウス」
勇者「ツーペア、負けたなー」
姫「勇者は弱いのねいつも」
勇者「勝ったら怒るだろ」
姫「当たり前でしょばか、はい私が勝ったからまたマッサージしてよ」
勇者「はいはい」もみもみ
勇者「今日は雨か……」
姫「外の散歩はムリね」
勇者「またトランプする?」
姫「じいやも混ぜたいからそこまで連れてって」
勇者「はいはい」がしっ
姫「お姫様抱っこは恥ずかしいからやめてよ」
勇者「はいはい」無視
大臣「おやおや姫様、何かご用か」
姫「トランプでもしようかと思ったの、じいやもやろー」
大臣「姫様、もう少し上品に振る舞って下され……」
姫「なんでよ」
大臣「今宵は遠路はるばる伯爵様も見えておりますのじゃ」
姫「最悪、追い返してよ勇者」
勇者「さすがにマズいだろこのドアホ!」
伯爵「おや、噂に聞くラダトームの姫様は実に美しいな」
姫「……」
大臣「姫様、この方がメルキドを治める辺境伯、伯爵様でございます」ぺこ
姫「……勇者」
勇者「はいはい」がしっ
伯爵「どうされたかな」
勇者「調子が悪いだけです」スタスタ
姫「なんか眠い」
勇者「部屋に戻るか」
姫「戻らない、おんぶしてよ勇者」
勇者「はいはい」
姫「このまま城の中歩いてて」
勇者「はいはい」てくてく
勇者「……」そー
姫「zZZ」すやすや
勇者(まさか背中に乗ったまま寝るとは)
姫「スヤァ」
勇者(じゃあまた後で来るか)
姫「んっ」ぎゅ
勇者「……はいはい」ベッド横のイスに座る
勇者「お呼びですか王様」
王様「勇者よ、姫がまた勝手に伯爵殿に挨拶せず帰ったらしいな」
勇者「はい」
王様「教育係は古来よりそなたの一族が担って来たのだぞ、どうなっている」
勇者「はい」
王様「今度の満月の夜我が城で舞踏会を開く、その日までに改めさせよ」
勇者「はい」
姫「疲れた、おんぶして」
勇者「もう少し歩いてみないか」
姫「なんでよ」
勇者「今度舞踏会らしい」
姫「何それ、私嫌よ」
勇者「そうか」がしっ
姫「いたっ、急におんぶするから顎ぶつけたじゃないばかっ」
姫「勇者、バラ園連れてってよ」
勇者「咲いてないぞ」
姫「咲いてるわよ」
勇者「はいはい」
姫「本当なんだから! 行きなさいよ!」
勇者「はいはい、髪を引っ張るな」
姫「ほらね、たんぽぽ」
勇者「あー、撒いたのか?」
姫「この間ふーふーして撒いたのよ」
勇者「水は雨だけか、逞しく育ったな」
姫「アンタとは大違いね」
勇者「はいはい」なでなで
姫「今日なんか暑いわね、扇いでよ」
勇者「それ脱いだらどうかな」
姫「勇者と同じ服なのになんでアンタは涼しそうなのよ」
勇者「交換してみる?」
姫「ばかじゃないの、サイズが合わないでしょ」
勇者「はいはい、合えばいいんだなー」
姫「……ばか」
勇者「かき氷を作ってみた」
姫「雪みたいなデザートね……美味しそう」
勇者「あ、こっちのシロップかけると良いと思う」
姫「キャラメルお願い」
勇者「あるわけないだろ」
姫「そうなの? ……じゃあなんでもいい」
勇者「冗談、用意してあるから泣くなよ」ごとっ
姫「泣いてない!」
姫「頭がキーンとする……なにこれ」
勇者「一度に沢山食べるからだな」
姫「欲張りにかかる呪いってわけね、最悪」
勇者「姫は欲張りじゃないよ」
姫「……褒められても頭のキーンは取れないわよ、最悪」
勇者「はいはい褒めてない」
メイド「キャー! スライムが台所に……!」
姫「大丈夫? 私がついてるわっ」
勇者「こらこら、女の子脅かしちゃダメだろ」
スラ「ぴっぴきぴー!」
勇者「だめ、姫は怖がりだから」
姫「余計なこと言ってないで追い出してよ!」
勇者「はいはい」がしっ
スラ「ぴー……」
兵士「申し訳ありません! まさかスライムに侵入を許すとは……」
姫「この陽気じゃ居眠りしても仕方ないわよね」
勇者「でも心配になるな」
兵士「申し訳ありません姫様!! どうか王様には黙っていて下さい!」がしっ
姫「わっ……!」
勇者「触るな、次触れたら首がないと思え」
兵士「っ……はぃ」びくっ
姫「あんなに怒る必要あったの?」
勇者「一応」
姫「そう、ところで勇者……」
勇者「はいはい」がしっ
姫「ん、楽ちん楽ちん」
伯爵「おー、奇遇ですなラダトーム姫様」
姫「……」
伯爵「はっはっは、そう緊張なさらずとも大丈夫ですよ」
勇者「伯爵様、本日はどういった要件でここに?」
伯爵「なに、ちょっと王様とティータイムを楽しんでいただけですよ」
伯爵「所で、何故に姫様は君の背中に?」
勇者「先程城内に魔物が侵入した際に、足を挫いたらしく」
姫「ちょっと……?」
勇者「そうですよね」
姫「……えぇ、そうね、早く医務室に連れてって」
勇者「はいはい、ではこれで」スタスタ
伯爵「ええ、お大事に」
姫「さっきの何よ」
勇者「なんとなく」
姫「嘘なんか吐いて、ばかじゃない?」
勇者「ごめん」
姫「最悪ね、当分は毎日移動はアンタにお願いするしかないし」
勇者「……はいはい」なでなで
姫「なに撫でてんのよ」
姫「勇者、痛い」
勇者「またか、どこだ?」
姫「言う必要ないでしょ、ホイミかけてよ」
勇者「? はいはい」ポォ
姫(……胸が成長する度に痛いなぁ)
姫「喉乾いた」
勇者「はいはい」ちゃぷ
姫「お腹すいた」
勇者「はいはい」ごとっ
姫「ねむい」
勇者「はいはい」なでなで
姫「zZZ」ぎゅ
勇者「久しぶりの外だな、城の」
姫「珍しくお父様が外出を許してくれたものね」
勇者「まあお使いなんだけどな」
姫「最悪ね、お使いに手間取った事にして遊ぶわよ」
勇者「はいはい(楽しそうな声だな)」
姫「勇者、あれやりたい」
勇者「射的か」
姫「ボウガンなんて触ったことないけど、やりたい」
勇者「矢は俺が付けるから、姫はよーく狙って撃つんだ」
姫「うん!」
姫「……当たらない」
勇者「残り二本まだ矢があるよ」
姫「最悪な気分、やめる」
勇者「そっか」スコンッ←景品を当てた
姫「……」
勇者「どうかした?」
姫「おんぶして、それから……見てるから勇者が代わりに当てなさいよ」
勇者「はいはい、オヤジさん、矢を五本追加」
姫「……もふもふしてる」
勇者「ぬいぐるみっていう、玩具みたいなものだよ」
姫「城には無いけど、なんでなの」
勇者「王族には必要ないんだってさ」
姫「……そうね、必要ないわ」
姫「だから城に入る前に、勇者にぬいぐるみあげるから大事にしなさいよね!」
勇者「はいはい」
勇者(持っててあげるから、俺の背中で泣きそうになるなよ)
姫「zZZ」
勇者「寝てるのか……」
勇者「丁度いいからお使い済ませるか」
店主「いらっしゃい」
勇者「ラダトーム王様のオーダーした物を取りに来た」
店主「ラダトーム王様の、となるとそちらの方が姫様?」
勇者「ああ」
勇者「なんだこれ」
店主「ラダトーム王様のオーダーで作りました、姫様の舞踏会でのドレスになります」
勇者「……露出が多すぎるぞ」
店主「そう言われましても」
勇者「仕方ない、代金はこれでいいな」
店主「ありがとうございます」
姫「ん……おはよ」
勇者「おはよう」
姫「……この体勢つかれた」
勇者「降りるか」
姫「抱っこ」
勇者「はいはい」ぎゅ
姫「おやすみ……」
勇者「また寝るのかよ!」
メイド「お帰りなさいませ」クスクス
勇者「笑うなよ……」
メイド「小さな頃から仲が良いですね、姫様と勇者は」
勇者「俺の一族はロトの代から王家に仕えてるからな」
メイド「素直じゃないですねー」
勇者「素直だよ俺は」
勇者「こちらがドレスになります」
王様「おぉ! 実に美しいではないか」
勇者「王様、姫様には必要ない露出が含まれていますが」
王様「何を言うか、そなたが不甲斐ないばかりにわざわざ作らせたのだぞ!」
勇者「は?」
王様「今度の舞踏会を通して、メルキドの辺境伯である伯爵殿に姫の婚約者になって貰うつもりだ」
勇者「!!?」
勇者「……うーん」
姫「zZZ」
勇者「……うーん」
姫「zZZ」
勇者「うーん……婚約かぁ」
勇者「……明日、姫に踊り教えるかな」
姫「勇者、つかれた」
勇者「だめだ、練習練習」
姫「何よ、私は絶対に踊らないからね!」
姫「勇者なんて嫌い」
勇者「……はいはい」
姫「勇者ぁ……っ」
勇者「ごめんってば! 大丈夫か足!」
姫「挫いたのに大丈夫な訳ないでしょばかっ」
勇者「悪かったよ、無理に踊らせようとして」
姫「……ホイミは部屋に着いてからかけなさいよ、話があるし」
勇者「…おう」
姫「こ、婚約?」
勇者「ああ、それでせめて少しは踊れるようにって」
姫「心配したの?」
勇者「そりゃ心配だよ」
姫「本当最悪、ばか勇者……ホイミはかけなくていいわ」
勇者「でも踊れないだろ」
姫「踊らない、そもそも踊れないの知ってるくせに」
勇者「あー、初めて追い出された」
メイド「どうしました?」
勇者「なんでもないよ」スタスタ
メイド「元気ないですね」
勇者「そりゃーもう泣きたいくらいにな」
勇者「ただいまー……」
勇者(まあ1人暮らしなんだけどな、兵士の寮だし)
勇者「…………」
勇者(もう姫のわがまま聞いてられないな)
勇者(このまま隠し通したら、姫の心が壊れるかもしれない)
勇者(………)がさっ
●ラダトーム王女、姫の体質
○男性恐怖症
○低血圧
○貧血?
○足に若干の障害有り(強く踏み込む事が出来ない)
○極度の不眠症(近くに人がいれば眠れるのを12歳の時に確認)
○今までの16年間で三度に渡って意識不明の昏睡状態になる(原因は不明・呪いの可能性有り)
○風邪を引くと咳が止まらない為、吐血する(キアリーで対処可能なのが幼少期に確認)
勇者(……こんな物を見せて、どうするんだ)
勇者(姫が結婚すれば将来は安泰だ)
勇者(きっと俺より優秀な魔法使いも雇える)
勇者(姫の人生は明るいはずじゃないかよ)
『勇者……おんぶ』
勇者「…………はいはい」
姫「なんでいるのよ」
勇者「鍵開いてたぞ」
姫「最悪、なんで開けるのよばか」
勇者「眠れないだろ」
姫「眠くない」
勇者「この時間は眠くなるからいつも撫でてたろ」
姫「……」
勇者「……」なでなで
姫「……勇者」
勇者「んー」なでなで
姫「私のこと、嫌いになるの?」
勇者「ならないだろ、姫に嫌われる事はあってもさ」
姫「……そう」
姫「………明日は……一緒に踊りの練習…しよ」
勇者「はいはい、おやすみ」なでなで
姫「そんなわけで練習ね、ちゃんと教えなさいよ」
勇者「無理するなよ」
姫「無理させないでよ?」
勇者「りょーかい」
姫「……じゃあまず腰に手を…」ごにょごにょ
勇者「はいはい」ぎゅっ
勇者「……やっぱり難しいな」
姫「特にターンがね」
勇者「なんか、姫の足が折れそうで怖いな」
姫「そこまで貧弱じゃないわよ、ばかっ!」ズキズキ
勇者「はいはい、既に挫いたのな」
伯爵「これはこれは、姫様、もしや舞踏会に向け練習を?」
姫「!」
勇者「……ええ、少し苦戦していますが」
伯爵「なんと、私が少々見ましょうか姫様」すっ
姫「っ……」びくっ
勇者(…)
伯爵「……ふむ、お世辞にもダンスが上手いとは言えませぬな」
姫「っ、勇者」
勇者「はいはい……伯爵殿、姫様はこれより少々移動しますので」がしっ
伯爵「おやそうですか、では私もそろそろ行きましょうかな」
姫(………っ)ぎゅぅ
勇者「……」
姫「……勇者、お風呂入る」
勇者「大丈夫か」
姫「大丈夫よ……当たり前でしょ」
勇者「そうか、なら俺はメイド呼んで来る」
姫「すぐに浴びたいのよばか、呼ぶ間待つのは嫌」
勇者「はいはい…って、ぇ?」////
勇者「俺は見てないぞー大丈夫だからなー」
姫「何赤くなってるのよ」
勇者「五年は久しぶりだからだよ、一緒に入るのは」
姫「別にいいでしょ、アンタは脱いでないんだから」
勇者「姫は脱いでるだろ」
姫「見ないんでしょ? なら平気よばか、早く私の体を洗いなさいよ」
勇者「はいはい…ってだから、え!?」
勇者「痒い所はありますかぁ?」
姫「なによそれ、とりあえず最悪ね、メイドの方が上手く洗ってくれるわよ」
勇者「目が見えないんだよ」
姫「もう、じれったいわね早くしてよ」
勇者「ああ、わかっ……」もみっ
姫「はぅ……、も、もう少し強く擦りなさいよっ」
勇者「今やっと気づいた、姫お前さっきから恥ずかしさで冷静じゃないだろ」
姫「胸に触って冷静になる勇者はどうなの?」
勇者「うっ…」
姫「うぅ、のぼせた」
勇者「……服が蒸し蒸ししてる」
姫「勇者のせいよ、最悪……次から優しく丁寧にしてよね」
勇者「次なんて無いから」
姫「……」
勇者「はいはい」なでなで
姫「なんで撫でるのよ」
伯爵「いやあ楽しみですな、16になったばかりとはいえ美しくなられた姫様と踊れるとは」
王様「しかし姫は少々礼儀作法に欠ける、教育係たる者がしっかりしないのだ」
伯爵「おやいけませんよ王様、彼はとてもよく働いておいでだ」
王様「む? 伯爵殿は勇者の奴をご存知だったか」
伯爵「えぇ、彼は実によく働いてましたよ」
伯爵「所で王様、実はお伺いしたい事があるのです」
王様「ほう、何かな」
伯爵「……随分とこの城は魔物の侵入を許してしまうのですね」
王様「何を言っている?」
伯爵「スライムすら侵入してしまう城……おお恐ろしい、民衆が聞いたらどんな顔をするか」
王様「……伯爵殿、何を……!」
伯爵「【それに比べてメルキドはとても防衛に優れている】……と思いませんか」
王様「……っ」
伯爵「王様、ここはどうかお考え下さいね? 私と姫様の婚約を絶対の物とする事をね」
姫「……」ぶるっ
勇者「どうした」
姫「寒い、勇者あっためてよ」
勇者「熱計ったらな」
姫「抱っこしながら計るから」
勇者「はいはい」がしっ
姫「……見方わかんない」
勇者「あー、割と高い熱だな」
姫「そうなの?」
勇者「今日は安静にしてろよ」
姫「嫌よ、せめt
勇者「はいはい」←トランプに食料に水を取り出した
姫「手に力入らない」
勇者「はいはい、あーん」
姫「んっ」ぱく
勇者「美味しいか」
姫「最悪ね、今度は調子が良い時に食べたいわ」
勇者「そうか」ぎゅー
姫「……涙出る」
勇者「指でこすらないで、俺が拭くから」
姫「どうして涙が出るのよばかぁっ」
勇者「熱だからだな」
姫「知ってるわよ、ばーか!」
勇者「はいはい」←ちょっと今のばーかに萌えた
勇者「ん、水なくなったからメイドに取り替えて貰う」
姫「まだ喉乾いてないからいいわよ」
勇者「水分補給は大切なんだぞ」
姫「トランプの続きしたいの」
勇者「勝った方が罰ゲームってルールなのに?」
姫「そ、そうよ」
勇者「はいはいわかったよ」←直後にロイヤルストレートフラッシュ
メイド「……で、負けないで勝っちゃったんですか」
勇者「ああ、姫に罰ゲームするわけにもいかないしな」
メイド「ふーん」
勇者「なんだよ」
メイド「いえ、勇者さんって本当に男性なのかなっと」
勇者「罰ゲームで姫とキスしようかとは思った」
メイド「……勇者さんって煽られると負けたくないタイプ?」
勇者「素直なんだよ」
勇者「ただいまー」
姫「けほっけほっ、遅かったわね勇者」
勇者「咳か」
姫「そうよ…けほっ、けほっけほっ!」
勇者「姫、よしよし」なでなで
姫「なによ」
勇者「楽になるおまじないとかどうだ」
姫「ばかじゃないの? ……おまじないなんて年じゃないし」
勇者「はいはい」
姫「……zZZ」
勇者「……」なでなで
勇者(ちょっと眠くなってきた、椅子持ってくるか)
勇者「よっと」
勇者(……じゃあおやすみー)なでなで
姫「zZZ」
勇者「……」
勇者(よく寝た……って、なんかあったかい?)もぞっ
姫「zZZ」ぎゅ
勇者「……」
勇者(俺をベッドに上げるのも辛いのに、わざわざ……)
勇者「ありがとな」なでなで
姫「……」
姫(……はいはい)←熱のせいにしつつも顔真っ赤
姫「……だーるーいー」
勇者「ね、寝過ぎたな……昼寝にしては……」
姫「私は熱のせいね」
勇者「だな」
姫「勇者、冷たい物食べたい」
勇者「かき氷だめだぞ」
姫「勇者の作った物ならなんでもいいからぁ」
勇者「はいはい」←今の言い方にクラッとキタ
姫「なにこれ」
勇者「姫にも優しいバニラアイスだ」←全力で作った
姫「……ひんやりしてて真っ白」
勇者「はい、あーん」
姫「んっ」ぱく
姫「……最悪、しょっぱい」
勇者「なんだとっ!?」
勇者「……砂糖と塩間違えた」
姫「これじゃ食べられないじゃない、ばか!」
勇者「ごめん」
姫「最悪よ、もういいから下げて」
勇者「ああ……」
姫「勇者」
勇者「ん?」
姫「次は失敗してない、美味しいのが食べたいわ」
勇者「はいはい」
メイド「そんなことがあったんですかー」
勇者「ああ、今は姫寝てる」
メイド「今日はもうお帰りになりますか?」
勇者「まあな、姫も寝たし」
メイド「じゃあ私も帰ります」
勇者「そうか、送ってくよ」
メイド「助かりますね、いつも♪」
姫「勇者、おんぶ」
勇者「もう平気なのか」
姫「治ったわよ、当たり前でしょ」
勇者「そうか」がしっ
姫「今日は城の裏庭に行くわよ!」ぺしぺし
勇者「はいはい頭叩くな」
メイド「あれ、何しに来たんですか姫様」
姫「散歩!」
勇者「仕事中か? 悪かった」
メイド「いえいえ、1人で草刈りするよりは楽しいです」
勇者「1人? 他のメイドは?」
メイド「伯爵様をもてなす為に他の仕事中ですよ」
姫「……あの人、また来てるの」
勇者「最近頻繁に来てるな」
姫「勇者、私メイドの手伝いをするわ」
勇者「なんで」
姫「メイド1人じゃかわいそうじゃない!」
勇者「あー、メイドは手伝って平気か」
メイド「助かりますよ」
姫「ほらね! 私だってたまにはメイドの手伝いくらい……」
勇者「はいはい」がしっ
姫「なんで勝手に私を背負うのよ」
勇者「草刈り鎌は危ないんだ、もし姫が怪我したりしたら大変だろ」
姫「最悪ね、女は鎌も使えないっていうの?」
勇者「姫の手にこんなの刺さった所見たくない」ギラッ
姫「………」ぞぉ
勇者「わかってくれて良かった」
メイド(なんか面白いなぁこの2人)
勇者「終わったな」
姫「は、早い……」
メイド「大丈夫ですか勇者さん」
勇者「大丈夫」
姫「ほとんど1人で刈ったわねアンタ……」
勇者「どうだった?」
姫「え? そりゃかっこよ……って、何言わせたいのよばかっ」
勇者「はいはい」←満足
メイド「姫様と勇者さんにジュース入れて来ました」
勇者「悪いな」
姫「おー! 甘そうな匂いねっ」
勇者「オレンジ……に蜂蜜か?」
メイド「匂いで見破られたのは初めてです」
勇者「姫が好きな組み合わせなんだ」
姫「うんうん♪ 甘露甘露♪」
姫「ふぁぁ……気持ちいい陽気ね」
勇者「風とかいい具合だな」
姫「……」ぎゅー
勇者「?」
姫「しばらく勇者がベッドになっててよ」
勇者「はいはい」なでなで
メイド「……勇者さんと姫様は、いつからお知り合いに?」
勇者「なんだ急に」
メイド「なんとなく気になりまして」
勇者「なんとなくか、んーと……」
姫「……♪」zZZ
勇者「……多分赤ん坊の時からかな」
メイド「……ほー」
勇者「……両親が今の王の教育係で、俺も親と同じように姫の教育係になったんだ」
メイド「勇者さん、歳は?」
勇者「19……当時は3歳で俺はよくわかってなかったよ」
メイド「凄まじい記憶力ですね」
勇者「ああ、不思議だよな」
姫「zZZ」
勇者「姫との記憶は全部欠ける事なく覚えてるんだ」
勇者「今まで色々あったな、病気とか怪我とか」
メイド「姫様、昔から体が弱かったですよね」
勇者「……必死に姫の病気治すために色々学んだな」
メイド「魔法も?」
勇者「ああ、姫を守る為に必要な力は全部」
メイド「惚れそうです」
メイド「……さて、と」
勇者「どうした」
メイド「いえ、そろそろ私も伯爵様の持て成しに参加しようかと思って」
勇者「そうか、ありがとうな」
メイド「ありがとうって?」
勇者「色々話し聞いてくれてだよ」
メイド「いえいえ♪」
メイド「……」スタスタ
メイド(本当になんていうか、聞いてるこっちが嬉しくなるくらい姫様愛されてるなぁ)スタスタ
メイド(今日は大収穫かな、勇者さんが姫様をどう思ってるか聞けたし)スタスタ
メイド(今度は是非とも姫様の気持ちを聞きたいかなー)スタスタ
メイド(………)
メイド(そう言えば、勇者さんって伝説ロトの一族なんだよね)
メイド「……あははっ」
メイド「なんか、おとぎ話みたいに勇者さんなら悪い魔王に捕まった姫様を助けに行っちゃいそう♪」
王様「……いよいよ明日、舞踏会か」
大臣「姫様の晴れ舞台ですな」
王様「晴れ舞台? とんでもない、娘にとって最悪の日になるに違いない」
大臣「王様、何を言うのですっ」
王様「そうだろう? 姫は愛してもいない男と、国の為に、そうだ……政略結婚する約束を交わすのだぞ」
大臣「し、しかし王様! 姫様もきっと王族として産まれたからには理解しているはず……」
王様「理解はしていても、姫の心は納得はせぬ」
王様「知っておるはずだな? 姫は勇者と共にいる時だけまるで生きているような表情をしている」
大臣「…………」
王様「伯爵の事だ、姫を独占し、近くに置くつもりだろう」
大臣「……王様、ならばあなたは何も悔やむ必要はありません」
王様「いいや!! 私だ! 私が娘から生も希望も夢すらも奪ってしまうのだ!! この汚い玉座のために!」
大臣「……王様」
「 よく来た……勇者よ 」
「 我こそが竜王……竜族の王にして、全ての覇を司る王だ 」
「 我は待っていたのだ、そなたのような強き若者をな…… 」
「 どうだ? 我が配下に加わらぬか、そなたの力も、大切なその姫も渡すのだ 」
「 そうすれば、そなたには世界の半分をやろう……闇に染まった絶望の世界をな 」
「 さあ……そなたの答えを聞かせて貰おう……! 」
勇者「……!!」ばっ
姫「勇者、大丈夫なの?」
勇者「………」
姫「な、何よそんな顔をして……怖い夢でも見たの?」
勇者「……そうみたいだ」なでなで
姫「大丈夫?」
姫「今日は満月、舞踏会の日ね」
勇者「……そうだな」
姫「なによ? まだ暗い顔して」
勇者「……ちょっと現実味がなくてさ、舞踏会で伯爵と姫が踊った後に婚約するんだろ」
姫「分からないわよ、私の 体質 はアンタが理解してるでしょ」
勇者「まあな」
姫「だから、きっと大丈夫よ」
姫「勇者ー、もう着替えるの?」
勇者「姫は王族だから、先にダンスホールで王様と待ってなきゃダメなんだと」
姫「退屈ね、私そういうの嫌」
勇者「知ってるよ」
メイド「所で勇者さん早く出て行ってくれません? 姫様にドレス着せたいんですが」
姫「……勇者から聞いてるわ、ドレスの見た目は」
メイド「そうですかー」
姫「だから私はどんな物でも覚悟出来てる」
メイド「なるほどー」
姫「あの、だから……目隠しとっていい?」
メイド「ダメです」
姫「…………」
メイド「どうですか、姫様にピッタリじゃないですか?」
姫「メイド、これって……」
メイド「私が自作したドレスですよ、動き易くて軽いでしょう」
姫「でもっ、お父様のドレスは……!」
メイド「今頃私が飼い慣らした野良猫達がビリビリにしてますよ♪」
勇者「おぉ、似合うけどそのドレスなんだ」
姫「メイドが作ってくれたみたいなの! 似合う? 似合う?」
勇者「はいはい……」なでなで
勇者(……メイド)
メイド(せめて姫様らしい姿で今日の舞踏会に臨んで頂きたかったんです)ひそひそ
メイド「では私は姫様をダンスホールまで連れて行きます」
勇者「いや、俺が行くよ」
メイド「そうお願いしたかったのですが、勇者さんに宝物庫の安全確認をしろと王様が」
勇者「王様が? わかった、直ぐ追いつくよ」
姫「……勇者」
勇者「はいはい、緊張するなって、まだまだ時間あるし」なでなで
勇者(宝物庫かー、久々に来たな)
勇者(……ん、錠の確認良し)ガチャガチャ
勇者(戻るか)くるっ
伯爵「こんにちは」
勇者「!」
兵士「動くな」シャキン
兵長「勇者殿、貴方を拘束させて頂く」
勇者「……兵長、アンタいつから伯爵の手下になった」
兵長「勇者、悪いがこれは王様の意志だ」
勇者「なんでだよ」
伯爵「貴方が婚約の儀式に邪魔を入れると、私と王様が判断したのですよ」
勇者「儀式? ……婚約を姫に申し込むんじゃ」
伯爵「おや、貴方はそれなりに博識だと聞いてましたが、まだまだ子供らしい」
兵長「……伯爵様、勇者は私の甥みたいなもの……どうか儀式については語らないで頂きたい」
伯爵「ふふ、そうですね……野蛮な一族の子孫など怒らせたくもない」
勇者「なんだよ! 姫に何するつもりだ貴様ァッ!!」
兵士「動くな!!」ドガッ
勇者「……っ!」ドサッ
伯爵「……無様ですねぇ、さっさとこの男に猿ぐつわと手足に枷を」
兵士「はっ」
勇者「……っ」
兵士「立て、妙な動きをすれば首を跳ねる」
兵長「よせ……今夜だけだ」
兵士「……」
伯爵「ああ、待ちなさい」
勇者「……?」ギロッ
伯爵(おやおや怖い、ですが何も出来ないでしょう? 王様が決めた事なんですから)ひそひそ
伯爵(せいぜい牢の中で想像するんですね……姫の処女が私に散らされる様を)くすっ
勇者「~ッ!!」ガタッ
ドガッ!!
勇者「………っ」
兵士「……頼む勇者、動かないでくれ」
勇者(畜生……っ)
兵長「我慢してくれ勇者、お前の辛さはよくわかる……」
勇者(誰も、姫の事を考えてくれないのか……畜生!!)
姫「勇者、遅いなぁ」
メイド「もしかしたら宝物庫の宝箱を一つ一つ確認してるかもしれませんね」
姫「舞踏会までに間に合う…かな」
メイド「間に合いますよ、勇者さんですから」
姫「緊張してきた……」
メイド(勇者さんいないと姫様って借りて来た猫みたいで可愛い)
兵士B「あーあ、なんで俺達は外壁の見張りなんだ」
兵士C「貴族やあの伯爵様が、王様の下に集まったんだ、仕方ない」
兵士B「でも貧乏くじだよなー、見張りって四方の見張り塔に2人ずつの合計8人しかいないんだぜ」
兵士C「文句言うなよ……俺まで悲しくなってきた」
兵士B「西側の見張り塔もそんな気持ちだろうな」
兵士C「なんで」
兵士B「だって、見ろよ……2人共突っ伏してら」
兵士C「……寝てないだろうな、起こすか」
兵士C「おーい!! 見張りなんだからシャキッとしろシャキッと!!」
兵士B「……」
兵士C「……反応ないな」
兵士B「な、なんかおかしくないか? 東側の見張り塔も同じだぞ……」
兵士C「…………」
兵士C「ま、まずい! 鐘を鳴らせー!!」
―――――― ドシュッ
兵士B「え、え……」
しにがみのきし「……シー」ブンッ
―――――― ドシュッ
メイド(……遅いわね、勇者さん何してるんだろ)
姫「メイドっ、もう舞踏会が……!」
メイド「すみません姫様、勇者さん探して来ます!」
< 「ではこれより、ラダトーム王家による舞踏会を……」
姫「は、始まったわよ?」
メイド「急ぎます! しばしお待ち下さい姫様!」たたっ
メイド「もう、勇者さんどこ行ったのかな……」
メイド(……まさか)ピタッ
メイド(勇者さんなら、姫様の幸せを一番に願うかもしれない)
メイド(だとしたらこれは勇者さんが姫様に伯爵と婚約させるための、わざと?)
メイド(……)
姫(……うわぁ、伯爵がこっちに来る)ビクビク
姫(どうしようどうしよう……勇者は? メイドは?)
姫(…………怖い)ビクビク
伯爵「こんばんは、姫様」ニッコリ
伯爵「私と踊って頂けますかな?」
姫「…………………ぁ…は、はい」
勇者(……どうしたら)
勇者(どうしたらいい? 姫……こんなの、酷すぎる……)
勇者(何かないのか…)
―――――― ビリィッ
勇者(!?)ビクッ
勇者(……今、【誰かが死んだ】……?)
メイド「はぁ……宝物庫にもいないなんて、どうなってるのかな」
メイド(……やっぱり姫様のために?)
メイド(だとしたら説教しなきゃね、姫様の気持ちはともかく勇者さんは姫様が好きなんだから)
メイド「うーん、でもどこに…………」
フッ
メイド「? あれ、なんで急に灯りが全部………」
勇者(……来る!!)
勇者(間違いない、何かとても大きな何かが……近づいてる!!)
勇者「うおおおおお!!」バギィンッ
兵士「勇者!? 何をして……」
―――――― ドゴォオオオオオオッッ
王様「なっ、何事か!?」
姫「きゃあっ!」
伯爵「今のはなんですかな…!?」
―――――― ゴバァアアアン!!
王様「ぬぉぉ!?」
―――――― 【 我に平伏すがいい、人間どもよ・・・! 】
姫「………ひ」
伯爵「魔物!? それも、巨大なドラゴン!?」
―――――― 【 クックック、そなたが美しきラダトームの王女か 】
姫「ひっ……ぁ」へなっ
―――――― 【 美しい、我が妻に相応しい美貌よ……! 】
―――――― ガシィッ
姫「ひゃぁぁ!? 誰かぁ!」
―――――― 【 我が忠実なる兵士よ! 邪魔する人間どもを喰い殺すがいい! 】
しにがみのきし「……」ガシャッ
大魔導「……」
兵士「姫様を守れー!!」
ガブッ
ダースドラゴン「……ゲフッ」
兵士「うわあああ!」
兵長「逃げるな! 戦えー!!」
伯爵(ひぃっ、はぁ……なんなんだあの魔物達は!)
伯爵(ラダトーム王家の兵士達すら蹴散らす力……なんなんだこれは、悪夢なのか……)
伯爵(……!)
王様「……だ…れか いないのか……」
伯爵「ラダトーム王! ああなんと……瓦礫に挟まれているではないですか!」
王様「は、伯爵か……助けてくれ……」
伯爵「勿論ですとも、さあ私に掴まって……」
伯爵(!)ピタリ
王様「どうした……はやくたのむ」
伯爵(……もしも)
伯爵(もしもここで私が王を亡き者にすれば?)
伯爵(王妃は既に亡くなっている、姫はあの巨大な魔物にきっと殺される)
伯爵「………ははっ」チャキッ
王様「なっ……なにを?」
兵長「うぉぉ!?」ドサァッ
しにがみのきし「……シー」ガシャッ
兵長「おのれ……まるで刃が立たぬとは……」
しにがみのきし「……」ブンッ
スカッ
しにがみのきし「……?」
メイド「はぁっ…はぁっ、兵長さん無事ですか!?」
兵長「メイドか? 危険だ! すぐに逃げろ!」
メイド「分かりました! っ!?」ズキッ
メイド(今のダイブで足を捻った? 立てないっ)
しにがみのきし「シッ!!」ビュッッ
兵長「メイド!!」
メイド「!?」
バリバリィィッ!!
しにがみのきし「―――――― !?」ゴシャッ
< ズドォン!!
メイド「い、今のは……ギラ?」
メイド「!!」バッ
勇者「2人共怪我はないか!?」スタッ
―――――― 【 ・・・ヌゥ 】
―――――― 【 我が忠実なる魔導師よ、あの男を殺せ 】
大魔導「御意」
バチバチィィッ!!
大魔導「消えるがいい人間、『ベギラマ』!」
ゴバァアアアン!!
勇者「……邪魔だ」
大魔導「!? 何故だ、直撃した筈…」
勇者「ッ……!!」ドゴォッ
大魔導「ぐぁあああ!?」
―――――― 【 ・・・ 】
ダースドラゴン「グルル……(私が行きますか)」
―――――― 【 よい、ダースドラゴン・・・そなたは先に大魔導達と共に城へ戻れ 】
大魔導「ぅぐ……く、ルーラを唱えます!」
しにがみのきし「……シー」ボロボロ
勇者「……逃げる気か」
―――――― 【 我は逃げぬ 】
勇者「何者だ、何の目的で来た」
―――――― 【 クックック・・・我の目的は『コレ』よ 】
姫「……」ぐったり
勇者「!! 姫ッ!」
勇者は叫ぶ。
巨竜の手に捕まる姫に、呼び掛けた。
しかし返事はない、気を失っていたのだ。
―――――― 【 我の妻となる王女は頂いた、もはやこの城に用は無し・・・!! 】
勇者「……っ!?」
聞き捨てならない言葉を放つと同時に羽ばたく巨竜。
勇者は僅かにその迫力に気圧され、後退りさえしてしまう。
夜空の下で崩れるラダトーム城の上空。
巨竜は見下ろすように舞い上がり、王者の如き覇気で圧倒した。
―――――― 【 燃え盛る我が火炎にて、貴様達を葬ってやろう・・・喜ぶがいい 】
巨竜の喉が轟音を挙げ、凄まじい爆炎が漏れ出る。
その太陽にも似た光からはラダトーム城が業火に飲まれる事は誰にでも想像できた。
勇者「……!!」
勇者(絶対に……やらせない!!)
そう、勇者にも想像できた。
そして彼は・・・
――― ゴォオオッッ!! ―――
ラダトーム城全体に響き渡る衝撃波。
巨竜の真下にいた兵士達はその音に自身の命運が尽きた事を悟った。
メイド「……え」
兵長「あれは……!?」
しかし、この2人は確かに見た。
天高く君臨した巨竜、その凶悪なアギトから放たれた爆炎は夜空に散っていたのだ。
―――――― 【 何ィッ・・・!? 】
巨竜が初めて驚愕の音を上げる。
それもその筈、巨竜の視界はいつの間にか星空を見上げていたからだ。
後から瞬時に襲って来る顎の鈍痛、全身が麻痺する感覚。
勇者「……落ちろ、ドラゴン」
姫「…っ」
―――――― 【 貴様・・・一体・・・? 】
巨竜の手から解放された姫を勇者は抱き捕まえ、巨竜を見下ろしていた。
何故? と竜の王者は刹那に思う。
人間が飛べる高さでも無ければ、人間に巨竜を『殴り飛ばす』力がある筈もない。
直後に巨竜はラダトーム城の真横に音を立てて落下した。
夜空に君臨していた筈の姿は、今や粉塵に隠されてしまう。
勇者「やったか?」
姫を抱きかかえた勇者は風に乗ったように静かに着地した。
勇者「姫! しっかりしろ、もう大丈夫だ!」
姫「……んぅ」
勇者「姫!! 良かった……無事か」
何度か揺さぶり、目を覚まさなかったら……と勇者は心配したが姫は僅かに覚醒した。
少しだるさを残した表情で彼女は目を覚ます。
姫「……勇者? なんで私、確か舞踏会に……」
勇者「もう舞踏会なんて良い、本当に無事で良かった……」
安心し、勇者はそのまま姫を抱き締めようとする。
―――――― が
―――――― ドシュッ!!
勇者「……っ?」
何かが、勇者の胸から突き出た。
【 ・・・まさか我を地に墜とすとはな、貴様は我が直接葬ってやる 】
聞こえたのは憎悪に満ちたような、威厳を感じさせる覇気に溢れた声。
勇者の体を貫いていた杖を勢いよく引き抜いた。
勇者「がぁ……ぐあああ!!」
姫「勇者!? 血が……!!」
勇者が跪いたのと同時、次なる追撃が襲って来た。
―――――― バリィッ!!
勇者と不気味な闇に包まれた魔導師のような男の間で、閃光が衝突した。
威力は先の大魔導という魔物が放ったベギラマよりも上なのにも関わらず、結果は相殺だった。
【 そなた、本当に人間か……その傷で我と互角の呪文を操るとは 】
勇者「がはっ……ゲホッ、ぐはぁ……はぁ……っ」
姫「いや…っ! もうやめて、何でもするから勇者を傷つけないで下さい!!」
勇者「……下がってろ姫……す、直ぐに終わる」
多量の血が流れる勇者を見た姫が叫んだ。
しかし勇者は姫を下がらせる、彼は分かっていたのだ。
勇者(姫が目的、なら……コイツを倒さない限り……)
【 初めて我に一撃を入れた人間よ、褒めてやろう……そなたは我にとって初の強敵と言えた 】
【 だが甘い、いや、弱い・・・そなたの『ベギラマ』では我の『ギラ』が互角なのだからな 】
勇者が止まる。
今、この敵は何と言った?
【 クックック・・・今のは『ベギラマ』ではない、『ギラ』だ 】
勇者「なっ……!?」
【 そなたの持つ魔法はそれだけか、ならばそなたは我の『ベギラマ』にすら勝てぬ!! 】
天に突き出した魔導師のような男の手に、莫大な閃光が集まっていく。
勇者の表情が、体が、その強大な力の前に固まってしまう。
これが『王者の力』。
勇者はその言葉が脳内に響いてから、ある存在を意味する名前を思い出した。
勇者「 ………【 魔王 】……? 」
姫「勇者逃げてぇぇぇぇっ!!!」
初めて、彼が戦った敵の正体。
そして彼が刹那に見てしまった格の差、力量の差。
……姫の必死の声は勇者に届かなかった。
―――――― ッッ!!! ――――――
閃光が、勇者の姿を飲み込む。
メイド「……!? 今の音は何?」びくっ
兵長「城の上からだな……」
メイド(勇者さん、まだ戦ってるのかも!)バッ
兵長「よせメイド!! 危険だ!」
メイド「大丈夫ですよ、勇者さんならきっともうやっつけたに違いありません!」
メイド(勇者さんが戦ってるのは初めて見たけど、明らかに勇者さんの方が強かった!)
メイド(だからただの魔物なんかに勇者さんが負ける訳ないよね!)
< バサァッ!
メイド「!」ピタッ
メイド(さっきのドラゴンが飛んで行ってる……勇者さん勝ったんだ!)
メイド(怪我してないかな? 姫様も無事かな?)
メイド「急がなきゃ!」
メイド「…………」
勇者「…」
メイド「……えっ?」
メイド「……ゆ、勇者さん?」
勇者「…」
メイド「ちょ、やだ……姫様? どこにいるんですか?」
メイド「勇者さん…も、ふふ、ふざけ……ないで下さいよ……」
メイド「………ぇ…?」
―――――― 『ゆーしゃ! おんぶしてー』
―――――― 『えへへー♪ わたしだけのゆーしゃだからねっ』
―――― 『……なによ、泣いてないわよ』
―――― 『別に、ちょっと使用人の男の子と喧嘩したの……』
―――― 『わっ、わっ、なんでぎゅーするの!?』
―――― 『……ありがと、勇者』
―― 『勇者、一緒に遊ぼう?』
―― 『勇者、ここの問題難しいから教えて』
―― 『勇者、今日は一緒に居て』
姫「勇者、起きてよ! もう……私を待たせないでよねばかっ」
勇者「……は…ぃ………は……い…………っ」
メイド「!!」
メイド「勇者さん! 聞こえますか!? メイドです、私です! しっかり!!」
勇者「…………」
メイド「勇者さん? 寝ちゃダメです! 勇者さん!!」
メイド「誰か! 誰か来て!! 勇者さんの血が……」
―――――― 『勇者・・・』
勇者「……っ、『ベホマ』!!」
< シュゥゥ…
メイド「! 全身の傷が塞がっていく……こんな呪文、見たこと……」
勇者「……」スッ
勇者(……待たせないさ、直ぐに迎えに行くよ)
勇者(待ってろよ……姫)
大魔導「竜王様、ご無事でしたか」
死神の騎士「……シー」
竜王【 ・・・少々余興に手間取ったがな 】
竜王【 今宵は我が花嫁の歓迎して!! 宴を開くが良い! 】
大魔導「御意」
竜王【 ああ、大魔導よ……我の玉座の間には誰も近づけるな 】
大魔導「は? ……分かりました」
竜王【 気にするな、折角の花嫁だぞ 】
大魔導「……左様で御座いますか、良い夜を竜王様」
竜王【 奴隷の人間共を食い、存分に今宵を楽しめ 】
―――――― ギィ・・・バタンッ
竜王【 クックック・・・楽にして良いぞ王女よ 】
姫「……」ぶるぶる
竜王【 そう怯えるな、我はそなたを妻にしようというだけだぞ? 】
姫「……っ」ポロポロ
姫「アンタなんかの……妻になんて絶対ならないわよ」ポロポロ
竜王【 ・・・理解に苦しむ、何故涙を流すのだ 】
姫「……分からないわよっ、他人を平気で傷つけて、勇者を……っ」ポロポロ
姫「アンタは私を妻になんて出来ない、……アンタには優しさも愛もある筈ない!!」
竜王【 ・・・ 】
竜王【 クックック、そなたを我が花嫁に選んで正解だったらしい 】
姫「っ……?」 ビクッ
竜王【 そなたの涙、今の言動から察するに『勇者』という男を思っているのだろう 】
竜王【 そして怒りはその男を奪った我への憎しみ、つまり『勇者』とは先の戦いで葬った男か 】
竜王【 何よりそなたの今の言葉……そなたは『恋』をし『優しさ』を受け、『愛』しているのだな 】
姫「………」
竜王【 我がそなたを妻に選んだのは『それ』だ、聞かせて貰おう 】
竜王【 『愛』とは、『優しさ』とは何だ・・・? 】
竜王【 ・・・大魔導よ 】
大魔導「はっ」
竜王【 我は4日程前までは人間共の優しさなど理解出来なかった 】
大魔導「魔族たる我々には不要の感情ですから」
竜王【 だが今の我ならば相応しき相手さえ揃えば恋すらするだろうな 】
大魔導「はっ、・・・はい?」
竜王【 クックック・・・この我が、たったの3日で人間の持つ感情を理解したのだ 】
竜王【 我はあのラダトーム王女を妻に選んで正解、否、もはや運命とすら言える 】
大魔導「……この3日、何を話されたのです」
竜王【 王女の半生……そして王女の目を通して我が垣間見た男の姿 】
竜王【 我は王女と話をしたのではない、聞いていたのだ、ただ静かにな 】
大魔導「…………竜王様、その男とは………」
竜王【 クックック、そなたに頼んだ調べ物もまた、我にとって正解らしい 】
大魔導「……『マネマネ』にラダトーム城に潜入させ、3日前に我々と戦った男を調べました」
竜王【 それで、結果はどうか 】
大魔導「…あの男は、生きていました……」
竜王【 ! 】
大魔導「更に素性を調べ行くと、あの男は『勇者』で、古来からラダトーム城に仕える一族だそうです」
大魔導「その一族の名は…」
竜王【 【ロト】の一族、そして奴が今の【ロトの勇者】か 】
大魔導「ご、ご存知でしたか」
竜王【 約数百年も前に、このアレフガルドを救った一族だ 】
大魔導「ではまさか彼の大魔王を討ち倒したのも?」
竜王【 ロトだ 】
竜王【 奴らは守る物がある事で力を増し、神すら越える力を持つ 】
竜王【 間違いなくこの世界で最強の『化け物』だ 】
竜王【 クックック・・・ 】
竜王【 クックッ、フハハハハハハ!! 】
竜王【 大魔導よ、ラダトーム王女をこの城から遠ざけよ! 】
大魔導「御意、しかし何故に?」
竜王【 姫はしきりに我に言っていたのだ、勇者ならばどんな所にいようと助けに来てくれたとな 】
竜王【 ならば、我は見たいのだ! 大魔王ゾーマの闇を切り裂いた一族の、『愛』を! 】
大魔導「では早速、私達四天王が姫を移動させましょう」
竜王【 うむ 】
大魔導「しかし、宜しいのですか?」
竜王【 何がだ 】
大魔導「ラダトーム王女の体は何故か急激に衰弱しつつありますので」
竜王【 ・・・構わぬ、もはや我にはあの王女が妻である理由も無いのでな 】
竜王【 ・・・ 】
―――――― キィィィン
竜王【(……美しい光を放つオーブだ、だが我が優しき心を手放せば直ぐに我を拒絶し、消え去るだろう)】
竜王【(この光のオーブを闇に染め上げるまでは手放す訳にはいかぬ)】
竜王【(必ずや我は大魔王ゾーマを越える力を持ち、この世界を手に入れてみせる……)】
竜王【(それまでは・・・!)】
勇者「……何の冗談だ」
メイド「あの、だから……」
勇者「王様が亡くなった上に、伯爵がラダトームの王? ふざけるな!!」
メイド「私……に言わないで下さい」ビクビク
勇者「……ごめん」
伯爵王「やあ」
勇者「……」
伯爵王「明日、私の戴冠式をするんだが……君に何かスピーチを頼みたい」
勇者「…………貴様は外道の屑だ」
伯爵王「NOか、そうだろうと思った」
勇者「姫にまだ王位継承権がある!! 伯爵に王位を継承する資格はない筈だ!!」
伯爵王「ふふ、姫様は魔物に連れ去られ、殺されましたよ?」
勇者「デタラメだ!!」ドガッ
伯爵王「では証拠があるとでも? 王女様が、姫が生きているという証拠がね!」
伯爵王「答えは否ッ!! 皆無!! 何も無いだろう!?」
勇者「っ……」
伯爵王「ふふ、しかしそんなに君が意地になるならば私も悪魔じゃない……チャンスをあげよう」
勇者「なに……」
伯爵王「君が、姫を助け出して来れば良いよ……そうしたら彼女に王位は譲ろうじゃないか」
勇者「…………」
―――――― ピチョンッ
まほうつかい「ケケッ、食事だぞ人間」
< がたんっ
まほうつかい「……けっ、返事もしねーのかよ」
姫「………」
姫(……ご飯、食べないと)ズル
姫(………)ドサッ
姫「だるい……や」
姫「……っ」ググッ
姫(っ)ドサッ
姫(………動けないよ、勇者)
姫(竜王に私の話を聞かせたのはいいけど……)
姫(……こんな洞窟の牢屋に入れられるなんてね)
姫(………最悪、だなぁ……)
ウルッ
姫(…………寒いよ)
姫(……おなか、すいたよ………)
スライム「ぴきーっ!」タッタッ!
姫「……?」
スラ「ぴーっ、ぴーっ!」ズズ
姫「……食べろって?」
スラ「ぴー……」コクンコクン
姫「………スプーン、とって」
スラ「ぴきーっ!」カチャ
姫「……ありがと、助かったわスライム」
スラ「ぴきーっ! ぴっぴきー!」
姫「……ごめんね、勇者とは違って私には君の言葉が分からないの」
スラ「ぴーっ…」
姫「………」
姫「もしかして、この間……お城の台所に忍び込んだスライム?」
スラ「ぴきーっ♪」コクン
姫(……そっか、あの後勇者がこの子を逃がしたから……)
姫(………勇者)
ぴょこっ
スラ「ぴー?」
姫「…!」
姫「スライムなら、勇者を呼べる?」
悪魔の騎士「……グォ…ッ」ガシャッ
悪魔の騎士(ば、馬鹿な!! この俺が手も足も出ないとは……)
悪魔の騎士「貴様、人間ではないのか……」
勇者「……勇者だよ、ただのな……」
―――――― ザクッ
―――――― ギィンッッ!!
ゴールドマン「……オソロ、シイ・・・キサマ、ナニモノダ」
勇者「……姫はどこだ」
ゴールドマン「……コタエナイナラ?」
勇者「ここ一帯に住む魔物を全て殺す」
ゴールドマン「…………」
ゴールドマン「【メガンテ】」カッッ
勇者「!!」
大魔導「ご報告致します」
竜王【 聞かずとも我には分かる、勇者が本格的に動き出したか 】
大魔導「……」
竜王【 どうかしたのか、大魔導よ 】
大魔導「お言葉ですが竜王様、我々は早急に姫を殺すべきだったのでは?」
竜王【 何が言いたい、大魔導 】
大魔導「……勇者は姫を探す為にたった2日で50を越える魔物を虐殺しています、あの悪魔の騎士やゴールドマンの『メガンテ』すら凌いだそうです」
竜王【 ・・・ 】
竜王【 クックック、クク・・・ふはははははははは!! 】
竜王【 面白い……!! 奴はどうやら姫の命が風前の灯火にある状態なのが分かるらしい 】
竜王【 そして今、あの男は極限の力を持って姫を探している訳か!! 】
大魔導「……」
竜王【 大魔導!! そなたを含む四天王全員を姫のいる洞窟に集結させよ! 】
大魔導「!?」
竜王【 ロトの勇者が全力を出し切り、そして大切な者を守れずに殺される様を我に見せよ!! 】
―――――― ガシャァン! ドサッ
スラ「ぴきーっ!? ぴーっ!」
姫「……」
スラ「ぴきーっ! ぴきーっ!」
スルッ
姫「…」トクン…トクン…
スラ「ぴきーっ!?? ぴーっ! ぴーっ! ぴきーっ!!」
死神の騎士「……シー」ガシャッ
スラ「ぴきーっ!! ぴきーっ!!」
死神の騎士「……」
ひょいっ
ぽーん!
スラ「ぴぎ!?」ドサッ
死神の騎士「シー……」
スラ「ぴきーっ!! ピィィッキィィィィ!!」
死神の騎士「…」イラッ
死神の騎士「シッ……!」ドガッ
スラ「ぴぃっ!」ドサッ
死神の騎士「……」スタスタ
スラ「ぴぃっ……ぴぃっ!」タッタッ!
死神の騎士「!」
ドラゴン「……グルル(そのスライム、どうしたんだ)」
死神の騎士「シッ(さあな、姫に情が芽生えた馬鹿なスライムだ)」
ドラゴン「ガゥ?(丁度ヒマだし殺る?)」
死神の騎士「……シー(勝手にしろ、同胞を斬る剣は無い)」
ドラゴン「ガァアアアアアッ!!」ギュォッ
スラ「ぴっ?」
―――――― ゴシャァ!!
スラ「ぴぃっ……!!?」ドサッ
スラ「ぴっ……ぴきぃ……」ズルズル
ドラゴン「ガゥ♪(トドメ♪)」スッ
―――――― ガシィッ
ダースドラゴン「ゴガァアアアア!! (ドラゴン貴様、同胞に何をしている!!)」
キースドラゴン「ギャオオオ……(スライム如きをいたぶって楽しいか貴様)」
ドラゴン「ガルル……っ」
ダースドラゴン「ゴガァア!! (大魔導、来てくれ!!)」
大魔導「何事だ」ズウッ
ダースドラゴン「グルル(そこのスライムにホイミをかけてやってくれ)」
大魔導「………いないが?」
スラ「ぴぃっ……ぴっ……」ズルズル
スラ「ぴきー……」ガサッ
『偉いね……ありがとう、どこから持って来たの?』
『あのね、もし私に……余り、待つ時間が無い時この手紙を勇者に届けて欲しいの』
『なに? ……あはは、今のは私でも分かるよ……『どうして直接行かさないのか』でしょ』
『………信じてるから、勇者ならきっと助けに来てくれるって』
スラ「……ぴきぃ」ズクン
スラ「っ……」ドクドクッ
ドサッ
スラ「……ぴぃっ」ズルズル
―――――― ザァァ・・・
勇者(……姫が浚われて、一週間)
勇者(手掛かりは何も無い……『太陽の賢者』や『雨の賢者』達も竜王の城しか分からない)
勇者(・・・)
勇者(嫌な、雨だ……)
―――――― 降りしきる雨の中、一匹のスライムは長い距離を歩き続けた。
身に負った傷の深さを考えれば自殺行為。
それはわかっている、しかしスライムは止まれない。
幼き日の、とある少女と少年。
その2人にスライムはかつて命を救われたことがあった。
しかし成長した少女が覚えていないのは直ぐに分かった。
そしてそれにも理由があるのを知った。
少年がどれだけ成長したのかを知れた。
スライムは自身の体に限界が来るのを無視し、歩き続けた。
彼は、100年近く生きていた理由を知ったから。
小さな自分にできる事を彼は成し遂げる。
次回
勇者「……必ず、約束するよ」
スラ「ぴきーっ♪」