6 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:02:54.72 w2LJRKdh0 1/45

「でもおかしな夢だったんです」

「どういうことー?」

「唯先輩が……あっ、でも、やっぱり言うのやめときます」

「ええ、気になるじゃん。教えてよっ」

「いや、その……あんまり、人に言うべきじゃないと思って」

「だいじょうぶ、だいじょうぶ。まだ部室には私とあずにゃんだけだし」

「でも……」

「言ってよあずにゃーん」

「わ、分かりましたから、抱きつくのはやめてくださいっ」

「それでそれで?どんな夢だったの?」

「……唯先輩が、」

「トラックに轢かれる夢です」

元スレ
梓「唯先輩の夢を見たせいでよく眠れなかったんです」唯「またー?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1344606929/

9 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:07:25.47 w2LJRKdh0 2/45

「…………え?」

「だ、だからあんまり言うべき話じゃないなーって」

「やめてよあずにゃん。私ただでさえ、前あずにゃんが見た夢の被害者なんだから」

「言えと促したのは誰ですか。前っていうと……確か、犬に追いかけられる夢でしたよね」

「うんうん。それを聞いた放課後、しっぽを踏んじゃった犬に本当に追いかけられたんだからぁー」

「あ、謝ったほうがいいんでしょうか……」

「あはは。まあ偶然だろうけどっ」

「ですよねぇ。唯先輩がトラックに轢かれたら困ります」

「あっ、心配してくれてるの?ありがとあずにゃーん!」

「だ、だから抱きつかないでくださいっ!」

13 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:12:19.58 w2LJRKdh0 3/45

次の日

「あっ、澪先輩、おはようございます」

「…………」

「澪先輩?」

「……あ、梓か」

「どうしたんですか?随分顔色悪いですけど」

「聞いてないのか!?」

「わっ!なんですかいきなり大声だしてっ」

「唯が昨日、交通事故にあったんだよ!」

「え?」

「なんで唯のやつ、梓に連絡していないんだ!?私はてっきり」

「交通事故……?」

15 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:14:50.10 w2LJRKdh0 4/45

「それって一体、どういうことですか?」

「どうもこうも……」

「澪!梓!」

「あ、律先輩……」

「律……目が腫れてるぞ」

「仕方ないだろ?昨日唯の件で驚いたんだから……おかげで朝も寝坊だよ」

「あの!」

「うん?」

「私、唯先輩に何があったか聞いてないんですけど!一体どういうことですか!?」

17 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:18:45.90 w2LJRKdh0 5/45

「昨日、部活終わって放課後。帰り道に事故ったらしいんだよ、唯」

「事故って……」

「ああでも安心しろ。私も最初心臓が止まるかと思ったけど、大した怪我じゃないんだってさ」

「それでも交通事故だぞ!あと一歩間違えてたら……」

「唯のやつ、体だけは頑丈に出来ているよなあー。何せ、」

「トラックに撥ねられて、軽症で済んだんだから」

「え……?」

「それにしても、何で唯は梓にだけ言わなかったんだろう」

「そういや気が動転してたから深く考えなかったけど、病院にも梓来てなかったしな」

「…………」

18 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:21:49.60 w2LJRKdh0 6/45

「ゆ、唯先輩は、今どこに……?」

「病院だよ。撥ねられたとき意識失ったらしくて、まあ2、3日は入院だそうだ」

「わ、わたし!」

「梓。気持ちは分かるが駄目だぞ。行くなら放課後、ムギも入れた4人で行こう」

「でも先輩は私のせいで!」

「うん?梓、何かしたのか?」

「えっ……あ、いや、何もしてないですけど……」

「なら放課後にしよう。今行ったら唯にも迷惑がかかる」

「はい……」

20 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:24:55.66 w2LJRKdh0 7/45

放課後

「唯先輩!」

「あ、あずにゃんー。お見舞いに来てくれたのー?あれ、みんなは?」

「私だけ先に来ちゃいました!それよりどうして昨日教えてくれなかったんですか!」

「あはは、やっぱ伝わっちゃったかぁ」

「当たり前です!言ってくれたら私も行ったのに!」

「だってあずにゃん、変に意識しそうだったから」

「意識って…………夢、のことですよね」

「うん。偶然なんだから、深く捉えちゃだめだよ?」

21 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:27:47.32 w2LJRKdh0 8/45

「おい、梓ぁ。一人だけ先に行くなんてずるいぞ」

「おかげで私たちまでレースをするはめに……」

「唯ちゃんが元気そうで安心したわあ」

「あっ、みんな!わざわざありがとう」

「…………」

「いい、あずにゃん。ほんと、ただの偶然なんだから。みんなにも言っちゃだめだよ?」

「偶然……」

「そ、そうですよね……私の夢にそんな力あるわけないですもんね……」

「ん?何の話?」

「ううん、なんでもないっ!それより今日あったこと聞かせてよー!」

22 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:31:13.72 w2LJRKdh0 9/45



「どうしたの梓ちゃん?元気ないけど」

「あ、いえ……」

「なんだよなんだよ。朝からおかしいやつだなぁ」

「唯のことが心配なんだろ。茶化すなよ」

「あ、あの、私」

「なんだ?」

「もう一回唯先輩に会いに行こうかな……なんて」

「面会時間は過ぎているんだから、それは無理だと思うぞ?」

「あ、あはは。ですよね……」

(どうしよう……。昨日も私、夢見ちゃった……)

26 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:35:54.19 w2LJRKdh0 10/45

「病院は、安全ですよね」

「何言ってんだよ。そんなに唯が心配か?」

「大丈夫よ梓ちゃん。あそこには人がたくさんいるんだから」

「そうそう。少なくとも交通事故に遭う心配はないさ」

「ですよね。交通事故なんて……ありえないですよね」

「変なやつー」

「ありえない、ありえない……」

(唯先輩が今日もトラックで轢かれちゃうなんてこと、ありえないんだ……)

「それじゃあこの辺で解散だな。みんな、また明日」

27 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:38:41.51 w2LJRKdh0 11/45

夜中

「……あはは。何だろ、怖くて寝れないや」

「唯先輩起きてるかな。メール、してみようかな」

「でも寝てたらまずいよね。それで起こしちゃったりしたら……」

「あれっ。電話だ。澪先輩?」

「こんな夜中に何の用だろう……まさかね」

「もしもし、中野ですけど」

『梓……落ち着いて聞いてくれ』

「え……?」

『唯がさっき、交通事故に遭って亡くなった』

31 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:41:36.46 w2LJRKdh0 12/45

「は?」

『ごめん、私も詳しい話は聞いてなくて……う、憂ちゃんが』

「みお、せんぱい?」

『なっ、泣きながら連絡っ、してくれて。わ、わたぢ、』

「落ち着いてください。えっと、すみません。私も一応、憂に連絡取っていいですか?」

『ああ……でも、憂ちゃん。話せるような状態じゃ』

「失礼します」

「…………」

「嘘でしょ……?」

35 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:46:16.08 w2LJRKdh0 13/45

「あ、ありえないって。何かの冗談だ」

「きっとあれだよ。私の調子おかしかったから、みんなでドッキリを仕掛けているんだ」

「だってそんな、病院にいたんだよ?唯先輩」

「なんで交通事故なんか、遭うわけないじゃん!」

「とにかく、そうだ。憂に電話してみよう」

「……もしもし、憂?」

『…………』

「聞いてよ。澪先輩がさ、おかしな冗談で騙そうとしてるんだ」

「唯先輩がし、死んじゃったなんて、そんなのありえるわけないのに」

「そうでしょ?憂」

『……』

「憂!何か言ってよ!!」

『……ほんとうだよ、梓ちゃん』

『お姉ちゃんは、しんじゃったんだあ』

40 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:54:04.81 w2LJRKdh0 14/45

「……うそ。うそうそうそ」

「ありえないって。唯先輩、病院にいたんだよ?」

『…………』

「ありえるわけないじゃん!なに?唯先輩は魔法でも使えたわけ!?」

「大体なんで病院の人は外出るの止めなかったの!?ふざけんな、みんなグルで」

『梓ちゃん』

「な、なに?あ、やっぱり嘘だった?なんだ、私まんまと騙されちゃッ」

『うるさいよ、梓ちゃん』

「え?」

『私、病院だから。病院では、うるさくしちゃいけないんだよ』

『一昨日お姉ちゃんをお見舞いしたときも、私それでお姉ちゃんに怒られ……おこ、』

『おこらっ……う、ううう。お姉ちゃん、おねえちゃん……なんで、なんでよぉ……』

44 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/10 23:58:27.11 w2LJRKdh0 15/45

『私がずっと、ずっとお姉ちゃんの傍にいれば、お姉ちゃんは!』

『なんで、なんで死んじゃったのお姉ちゃん!!う、あああ!』

「憂……あ、はは」

『なんで梓ちゃん笑ってるの?ねえどうして?梓ちゃんが犯人なの?』

『梓ちゃんがお姉ちゃんを!』

「違うよ、憂」

『……ごめん、そうだね。梓ちゃんがお姉ちゃんに何かするはずないよね……』

「違うけど……ごめんね、憂」

『え?』

「私が必ず、犯人を捕まえるから」

46 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:02:29.70 wg/W2lal0 16/45

次の日

「…………朝だ」

「みんな、病院に行ったのかな」

「あはは。メールも着信もいっぱいだ。律先輩なんか、すっごい怒ってる」

「そりゃそうだよね。普通向かうのに私は、のんびり部屋で寝てたんだもん」

「あーあ。昨日のは夢じゃなかったのか……いや、夢なら見たんだ」

「そのために、私は行かなかったんだよ」

「私の夢の、犯人を捕まえるんだ」

47 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:05:57.18 wg/W2lal0 17/45

放課後

「ムギ先輩。今日、ムギ先輩の家に泊まっていいですか?」

「え?」

「梓!てめえ昨日も顔見せないで何言ってるんだよ!!」

「……」

「落ち着け、律。梓だって何か訳があるんだろ。そうだよな?」

「……ムギ先輩、駄目ですか?」

「梓!澪を無視してんじゃねえよ!」

「りっちゃん、落ち着いて……。私は大丈夫よ、梓ちゃん。心細いのよね?」

「……はあ、そうですね」

「梓……」

48 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:08:33.74 wg/W2lal0 18/45



「……それじゃあ、そろそろ寝ましょうか」

「私、ムギ先輩と同じ部屋で寝てもいいですか?」

「一応、梓ちゃん専用の部屋はあるけど……梓ちゃんがそうしたいなら、私は全然いいよ」

「ありがとうございます」

「それじゃあ、こっち」

「はい……」

(私が、絶対に見つけるんだ……)

51 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:13:32.60 wg/W2lal0 19/45

「それじゃあ、電気消すわね」

「はい」

(……私の夢が、もしも本当に効果を持つのなら、)

(今日、ムギ先輩は自分で絞殺をして命を絶つ)

(その夢を昨日見たんだ……)

「梓ちゃん」

「え?はい」

「もっと寄ってもいい?私……心細くて」

「なんで唯ちゃん……死んじゃったのかしらね」

「あんなに良い娘だったのに……」

「ムギ先輩……」

53 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:16:11.19 wg/W2lal0 20/45

夜中

「…………」

(ムギ先輩は寝たみたい。当然だよね、一昨日と昨日でたくさんありすぎた)

(そりゃ疲れるって……)

「私も……」

(いや、私が何とかしなきゃいけないんだ。絶対に。唯先輩のためにも)

「でも……この状態でムギ先輩が何かするとは思えない」

「気を抜いちゃ……だめだ」

54 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:17:42.91 wg/W2lal0 21/45

「…………」

「…………」

「…………ムギ先輩?」

「っ……」

「トイレですか?」

「……」

「ムギ先輩、あの、」

「……っ」

「ムギ先輩!!」

55 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:20:55.15 wg/W2lal0 22/45

「ムギ先輩!アンプのコード持ってどうする気ですか!!」

「……」

「聞いてますか!?あの!」

「……」

「首に巻いて……っ!?ムギ先輩!!」

「っ」

「やめて……やめてくださいっ」

「誰か!だれかぁー!!ムギ先輩がおかしいです!!」

「……」

「自分の首を絞めないでッ!!ムギ先輩!!」

57 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:23:52.04 wg/W2lal0 23/45



「はあ……はあ……」

「あれ?梓ちゃん、おはよう……どうしたの。家の者、みんな集まって……」

「何かあったの?」

(そうだ……なんで気づかなかったんだろう)

(私が見た夢は、ムギ先輩が自ら命を絶つ夢)

(自殺に……犯人なんているわけない……っ)

「まさか唯先輩も自発的に……?」

「梓ちゃん?」

「そんなの……とめられるわけない!!」

58 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:27:58.07 wg/W2lal0 24/45



「ああ……くそっ、くそっ」

「大丈夫?梓」

「どうしたら……!」

(でも待って、そうだよ。今日のムギ先輩は止められた)

(助けることが出来たんだ。あのままだったら夢通りになっていたんだから)

「私が……全部止めれば、誰も死なない……」

「梓……?」

「私がみんなを助けるんだ……!はは、そうすれば」

生徒「おい!大変だ!三年生の女子トイレで自殺があったらしいぞ!!」

64 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:37:42.89 wg/W2lal0 25/45

「あ、あああ……?」

「自殺って、一体誰が!?」

生徒「琴引だか、琴吹だか……そんな感じの生徒……」

「梓、それってまさか……」

「うそだ、うそだうそだうそだ……」

「紬先輩なんじゃ……」

「聞きたくない聞きたくない聞きたくない!」

「梓!」

「聞いたって、どうしようもないでしょ……!!」

67 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:40:46.39 wg/W2lal0 26/45

放課後

「もういやだ、もういやだ……」

「…………」

「……なんで、ムギまで」

「う、ああああ……」

「ムギ、唯のことを気に病んで……?」

「違う!!」

「えっ?」

「あ、や……違うと思います……」

「梓。お前、何か知っているのか?」

68 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:44:56.47 wg/W2lal0 27/45

「な、なに言っているんですか。私は何も知りませんよ……」

「ならどうして、ムギがそうじゃないって分かるんだ?」

「それは、き、昨日の夜、ムギ先輩が悲しんでたから……」

「答えになってねーよ。だったら尚更澪の言う方が合っているだろ」

「唯の怪我の頃から、梓、様子おかしかったよな」

「……」

「何を隠しているんだ?言ってくれ」

「私は……」

「……」

「何も、隠してません……」

71 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:50:36.46 wg/W2lal0 28/45

「梓!」

「ひっ……」

「澪やめろ。ならこうしよう、梓」

「……」

「お前の抱えている問題を、私たちにも分けてくれ」

「……」

「お前が一人で重いものを抱えているのは知っている。一人だけ何かから怯えているのも」

「私は、私たちは、お前の力になりたいんだ。ひとりじゃない、私たちにもその重みを一緒に背負わせてほしい」

「それが唯や、ムギのためにもなると思う。だから……頼む」

「……」

「梓、私からもお願いだ」

「………・・・」

「わかりました。話します……」

73 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:54:37.70 wg/W2lal0 29/45

「でも、私にもよく分かっていません。これを先輩達に話していいのかも分かりません」

「それでも構わない。教えて欲しい」

「……夢を、見るんです」

「夢?」

「唯先輩がトラックに轢かれた夢。ムギ先輩が、絞殺した夢」

「まさか、その夢が現実になったっていうのか?」

「……」

「信じられない……」

「私は、昨日ムギ先輩の家に泊まって、防ごうとしました。それは成功したんですけど……」

「……結果的に、ムギは死んでしまった」

77 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 00:57:49.75 wg/W2lal0 30/45

「そんな馬鹿な話があるか……!」

「梓、それは本当なんだよな?」

「冗談でもこんなこと言いません!!」

「だが……そんなの、現実的に考えてありえないだろう!」

「でも、実際に起きているんだから信じるしかない」

「律!」

「考えてみろよ。ムギの様子だって変だった。いきなり喋らなくなって、トイレに向かったかと思いきやアレだ」

「なら……今日梓が夢を見れば、また誰かが命を落とすのか?」

「……その心配はありません」

84 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:01:48.82 wg/W2lal0 31/45

「私、もう寝ませんから」

「なに?」

「寝なければ、夢を見ることもない。そうですよね、澪先輩」

「そ、それはそうだけど……寝ないなんて、続いても1週間だぞ?」

「私は3日寝なかったら頭がおかしくなりそうだった」

「それでも……寝ませんよ。寝るわけにはいきません」

「梓……」

「一度防いだくらいじゃどうにもならない。なら、この方法しかありません」

「そんなの、無茶だ……。梓、ここは大人の人に相談して」

「時間はないんです!悠長に構えてなんかいられない!私が寝ない以外の選択肢はない!!」

「……」

88 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:04:32.35 wg/W2lal0 32/45



「私は、寝ない」

「大丈夫だよ。人間、水さえあれば生きていけるんだ」

「もう誰も死なせるもんか」

「ギネスの最長記録って何日だったっけ?」

「少なくとも、その日までは起きていられる……」

「ち、違う!ずっと、ずっと起きているんだ」

「これが正しいんですよね。唯先輩……」

91 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:09:14.88 wg/W2lal0 33/45

夜 2日目

「……」

「もし私が寝たら、きっと次の日には誰かが死ぬんだと思う……」

「寝ても、夢を見なければ……」

「ううん、もし見てしまったら終わりだ……」

「って何考えてるんだ、私。寝るなんて選択肢、元からないんだから」

「…………」

「唯先輩に、会いたいなあ」

94 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:13:42.08 wg/W2lal0 34/45

放課後

「…………」

「梓、大丈夫か?」

「…………」

「これで5日目だったよな……放課後部活、と言っても何もしていないけど、ここで体力使っちゃまずいんじゃないか?」

「……いえ……早く帰ったら、寝ちゃいそうで……」

「……」

「澪先輩……何か、暇を潰せるものありませんか……?寝ずに済むような……」

「ゲームとかか?本は……眠くなるから駄目だよな」

「くそっ、私も何か出来ないのかな……」

「大丈夫です、律先輩……私が頑張れば、何も起きないんです」

「現に、人だって死んでいないんだから……」

97 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:17:00.62 wg/W2lal0 35/45

夜 13日目

「だ……め……だ」

(頭が……働かない……)

「明日は学校……欠席しなきゃな……」

「借りたゲーム……全部おわっちゃったし……」

「どうしよ……」

「そういえば、ねっとげーむしている人って、あんま寝てないらしいよね……」

「ああやば……体が動かない……」

「……ゆいせんぱい……」

100 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:20:21.24 wg/W2lal0 36/45

放課後

「梓が学校来なくなって、もう1週間か」

「まだ寝ていないのかな……」

「澪も、目にくまが出来ているぞ」

「ああ、梓が心配でさ……」

「……」

「うそ。本当は、寝ているうちに自分が死ぬんじゃないかって、怖いんだ」

「私も同じような感じだよ。梓は……どんな気持ちなんだろう」

「寝たら誰かが死ぬかもしれない……私には、想像がつかないな」

101 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:21:36.46 wg/W2lal0 37/45

夜 20日目

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………あっ」

102 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:23:53.22 wg/W2lal0 38/45

「…………わたし、まだねてないよね……」

「うん、だいじょうぶだ……まだ……」

「まだ……」

「わたしは…………」

「……ねな…………」

「…………い…………」

「………………………」

「……」

「……」

「…」

105 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:26:19.83 wg/W2lal0 39/45



「…………あれ」

「朝だ……太陽、眩しいな」

「いててて、体中痛いや」

「というか、体が上手く動かせない。なんでだろ」

「病気で寝込んだときとか、よくこうな――」

「え?」

「……うそ」

「私、寝ちゃったの?」

107 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:31:02.61 wg/W2lal0 40/45

「今いつ!?次の日?それならまだ!」

「……5日、経ってる」

「いや、でも私、疲れすぎてて夢とか……」

「みた」

「見たよ、たくさん見た。飽きるくらい……律先輩と、澪先輩の、夢も」

「電話だ、電話しよう」

「わっ、なんだこれ。着信がたくさん着てる」

「えっと律先輩は……つながらない。澪先輩……も、つながらない」

「純に、かけてみようか」

「もしもし、純?」

『……梓、あんた何やってんの?律先輩も、澪先輩も……二人とも、死んじゃったよ』

109 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:33:50.65 wg/W2lal0 41/45

「…………」

『梓?聞こえてる?あんた何日も連絡寄越さないで何やッ』

「切断」

「…………」

「あはは、あははは、ははっ!」

「はははははははははははは!!」

「みんな死んじゃった!先輩たち、みんな死んじゃった!」

「私だけ残った!いえい!私が生き残りだ!あっははは!!」

「あっはは!はは!は」

「…………」

111 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:37:02.71 wg/W2lal0 42/45

「夢……見たなあ。律先輩と、澪先輩……他に、もう一人」

「誰だったんだろ……思い出せない……」

「まあ、もういいか」

「あの二人には話せなかったけど、私もう一つだけ方法思いついたんだよね」

「この最悪なシナリオを終わらせる方法!」

「さあ、何故こんなことが起こっているのか!原因は?夢!」

「そしてその夢を見ているのは?私!」

「なら――私が死ねば、解決するね」

115 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:42:52.29 wg/W2lal0 43/45

「あーあ、こんなはずじゃなかったのになあ」

「高校3年間を楽しく過ごして、唯先輩たちと同じ大学行って、バンドやって」

「社会に出たら、それぞれの道を行くけれど、バンドだけは続けるんだ」

「唯先輩なんか喜ぶだろうな。またみんなと会えるねって」

「澪先輩は泣いてそう。律先輩は無理なスケジュールとか立てちゃって、ムギ先輩はそれを本気で実行しようとか考えちゃう」

「それで、お婆ちゃんになっても、コンサートをやるの。学校にだって出張しちゃうんだ」

「それで――幸せなまま、一生を終える」

「……なのにこれ。何で私ロープを首に巻きつけているわけ?」

「こんなはずじゃなかったのになあ」

「こんなはずじゃ、なかったのになあ……」

117 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:46:53.37 wg/W2lal0 44/45

「唯先輩……もう一度、会いたいな」

「みんなとも、会えるかな」

「あっ……くぐっ」

(そうだ。思い出した)

「ぐるじ……いッ」

(夢に出てきたの。律先輩と、澪先輩の他に……首吊りをしてた人)

「あァ……ハハッ」

(それって、私じゃん)

(最後の最後まで、こんな結末……)

「やダッ、じにたく……なッ」

「ッ…………」

「……」

(さよなら、私)

「……」

「…」

120 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/08/11 01:51:55.48 wg/W2lal0 45/45

放課後

「……?」

「あっ、あずにゃんやっと起きたぁー!」

「唯、先輩?ここ、どこですか?」

「何言ってるのあずにゃん。ここは軽音部の部室でしょ」

「はあ……あれ?」

「それにしても一体いつから寝てたの?私が来るころにはぐっすりだったよ」

「あ……あはは。そっか、夢。夢だったんですね」

「うん?」

「あっ、ははっ!やった、夢だ!夢だったんだ!また先輩たちと一緒にいられるんだっ!」

「もー、どうしたの?変なあずにゃん」

「あ、夢といえばね。昨日、」

「あずにゃんの夢を見たせいでよく眠れなかったよ」

「…………また?」

To Be Continued

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