勇者「……ごめん、よく聞こえなかったんだけど」
商人「勇者さんのパンツを売りたい、と言ったのです」
勇者「……」
勇者「あ、ああ! 勇者愛用の、的な!?」
商人「いえ、勇者さんの脱ぎたてのパンツを売りたいのです」
勇者「……」
商人「どうかしましたか?」
勇者「不思議そうな顔をしないでよ!」
元スレ
商人「勇者さんのパンツを売りたいんですが」勇者「」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1341846286/
商人「魔王討伐の旅は長い……その資金のために必要なのです。あと私の趣味で」
勇者「普通に、魔物を倒して稼ごう!?」
商人「残念ですが、魔物から得られる資金では足りません」
勇者「ちょっと待って」
商人「どうかしましたか?」
勇者「いま、普通に趣味って付け加えたよね!?」
商人「ええ、私の心を落ち着けるために、どうしても必要なのです」
商人「できれば一日三枚は脱ぎたてパンツを生産していただきたい」
勇者「何いってんの!?」
盗賊「ちっ、下品なやつはこれだから」
勇者「と、盗賊さん……」
盗賊「使用済みなんて邪道! 洗いたてを愛でるべきよ!」
勇者「お前もか!」
盗賊「衛生的にも悪いしね! その点、私は毎朝洗いたてを拝借している」
勇者「お前か、時々消えてたのー!」
商人「下品なのはどちらですかな」
勇者「両方だよ!」
商人「脱ぎたての素晴らしさは、体液が染み付いていることにあります」
勇者「深刻なレベルでひどいよ!」
盗賊「ふん、体液体液と……そんなものをありがたがるから下品なのよ!」
商人「擬似的なセックス」
盗賊「!」
勇者「本気で気持ち悪いよ!」
勇者「そして盗賊さんも反応しないで!」
商人「脱ぎたて、洗いたてのどちらでも、嗅ぐもよし、ペロペロするもよし、こすりつけるもよし」
商人「ですが、誰かのパンツを欲しいと思う気持ちは、何よりその人を感じたいという思いなのです」
盗賊「確かに、それはそうだけど……!」
勇者「おかしいよ!? ふたりともおかしいよ!?」
商人「体液を神聖視しているのではなく、身近に思いたい」
商人「それが脱ぎたてパンツの価値なのです」
盗賊「くっ……」
勇者「いい加減にしてよ!」
Q:また勇者SSなのですか?
A:はい
Q:早くエロ書け
A:無理です
Q:お前はいいところで切っちゃうよな
A:童貞だから……
適度にお付き合いください
商人「? 脱ぎたてパンツを売る意味がわかっていただけたのでは?」
勇者「わからないよ! ていうか、もう仲間にしたことを後悔するレベルだよ!」
盗賊「勇者、私、間違ってたわ……」ポン
勇者「な、なんですかこれ?」
盗賊「とりあえず、これは今朝盗んだ分」
勇者「アホか!」パァンッ
商人「今の擬音は『パンツ』に近かったですな」
勇者「うるせーよバカ!」
盗賊「ちょっと待って……昨日盗んだ分も返すから……」ヌギヌギ
勇者「脱ぐな! 返すな!」
武闘家「やかましいわね……」
勇者「あ、武闘家さん! もう、行きましょ、こんなやつら置いて!」
武闘家「大体、量産するなら脱ぎたてにならないじゃない……」
勇者「もうだめだ! こいつらは!」
商人「ええ、ですから、目の前で脱いでいただくサービスもオプションで」
勇者「それ性風俗だよね!?」
盗賊「え!? じゃあ、交換会……しちゃう!?」
勇者「早く履けよ! 二度と脱ぐなよ!」
武闘家「……ありだな」
勇者「ありじゃねぇよ! 全っ然、ありじゃねぇえええよ!」
勇者「はぁ、はぁ、はぁ」
商人「……」
盗賊「……」
武闘家「……」
勇者「とにかく、そういう、エッチな事でお金を稼ぐのはやめにしましょう?」
盗賊「ちぇっ」
武闘家「……三人女なんだから、良いアイデアだと……」
勇者「ダメ!」
商人「仕方ありませんな」
商人「資金をすべてパンツに変えたところだったのですが……」
勇者「うおおおおお! 大地斬んんんんんんんん!」
商人「……」
商人「まあ、時々売りさばいているのですがね」
砂漠の町。
商人「勇者さんの水着を売りたいのですが」
勇者「」
盗賊「オアシスだからか!」
勇者「しゃべらないでもらえますか!?」
盗賊「勇者が冷たいよ……」
商人「暑い気候にはぴったりですな」
勇者「お前だよ、お寒いのは!」
商人「勇者さんの使用済みの水着が売りたいのです」
勇者「聞けよ、人の話を!」
武闘家「勇者、言葉遣いが崩れてるぞ……」
勇者「誰のせいでしょうねぇ」イライラ
武闘家「水浴びは、いいよな……」バッ
勇者「きゃっ」
商人「さらしにふんどし、ですか」
武闘家「私は、泳いでくるぞ……」 バシャアッ
商人「うむ、これは損ないましたな」
勇者「……何がですか?」
商人「さらしにふんどしは想定外だということです」
勇者「いい加減にしてくださいよ……!」
盗賊「まあ、でも、勇者みたいにおっぱい小さくても、さらしって使えるわよね」
勇者「セクハラしないでください!」
盗賊「やん、パンツ一枚て泳いでもいいのよ?」
勇者「ふざけんなー!」
商人「勇者さん、今度の提案は、パンツとは違います」
勇者「ほ、ほ~、どう違うって言うんですか」
商人「生着替えと一緒に売ることで」
勇者「違わねーだろ、ボケが!」
商人「ふーむ、しかし、砂漠の魔物が思ったよりもお金を落とさないので」
勇者「……そりゃね、手持ち資金はきついですよ」
勇者「だけど、その、パンツや水着を売って世界を救った勇者とか、嫌すぎでしょ?」
商人「パンツ売りの勇者」カキカキ
盗賊「!」
勇者「おいメモんな!」
勇者「あと盗賊さんは反応しないで!」
商人「なかなかパンツが売れない勇者さんは、自分で履くことにしました」カキカキ
商人「勇者さんが真夏の町でパンツを履くと、ひんやりとした感触が……」カキカキ
勇者「それ明らかに使用済みでしょぉっ!?」
商人「勇者さん。もちろん、資金を稼ぐ目的はあります」
勇者「もういいよ!」
商人「ですが、私が勇者さんに水着を着ていただきたい本当の目的は、別にあります」
商人「連戦で疲れた心身を、オアシスで癒して欲しいのです。あとは私の趣味で」
勇者「お前らの相手で心身がすり減ってるよ!」
勇者「あと結局趣味なんでしょ!?」
商人「ええ、私は水浴びより水着ガン見の方が」
勇者「全然うまくないよ!」
盗賊「ふん、お前は毎回、強引だから勇者に切れられるんだ」
勇者「……こないだから、あなたにも切れてますけどねぇ」
盗賊「私は太陽方式でいくわ!」
盗賊「じゃあん、勇者、お揃いの水着~!」
勇者「……どこから持ってきたんです」
盗賊「一緒に着ようよーって、え?」
勇者「金が無いっていうのに、まさか貴重な資金を使ったんじゃないでしょうね!?」
盗賊「盗んできただけよ!」
勇者「もっと悪いじゃないですかぁー!」
盗賊「ちょ、ちょっと待って」
勇者「死ぬ前に一言くらいは聞きますよ……」
盗賊「ちゃんと勇者のサイズにバッチリあってるのを持ってきたんだって!」
勇者「ふん!」
勇者の攻撃!
商人「ふう、あなたは相変わらずですな」
盗賊「な、何よ」
商人「ちょっと小さめの方が良いに決まっています」
勇者「うらあっ!」
勇者の攻撃!
商人「ではこうしましょう。美少女水着コンテスト」
商人「賞金プラス誰が優勝するかの賭博で稼ぐことに」
勇者「そっ、そんなこと、できるわけないでしょ!?」
商人「なぜです? しかも、今回は『あぶないみずぎ』禁止ルールの健全大会ということで町長さんにも」
勇者「だからぁっ!? ……ちょっと待って、町長さんって」
町長「町を上げて協力させていただきます」
勇者「おい、ジジイ!」
商人「勇者さん、暴言はよろしくないですよ」
勇者「こんなので名声値を上げたくないわー!」
商人「ふう、勇者さん。考えてもみてください」
勇者「何を考えろっていうのよー!」
商人「日々、魔物の襲撃に心が疲れているのは、何も我々だけではありません」
町長「町の娘たちも、たまには開放的な気分ではしゃぎたいという希望がありましてな」
町長「すでに十人以上の応募があるのです」
勇者「なん……だと……」
商人「ふむ、それだけの数ですと、勇者さんの不参加も致し方なく……」
町長「しかし、ぜひ勇者様にも参加いただいて、ここで知名度を上げていただければ、と思っていたのですが」
勇者「そ、それは……」
商人「勇者さん、あなたが参加すれば、町の皆さんも希望が持てるでしょう」
勇者「なんの希望よ!」
商人「心を明るくするのも勇者の務めでしょう」
町長「勇者様の参加となれば、娘たちもよりいっそう楽しんでくれましょう」
勇者「だ、だけど、そういうエッチなのは……」
商人「勇者さん」
勇者「なによ」
商人「勇者さんくらいの体型が私のお気に入りでして」
勇者「お前の趣味は聞いてないわよ!」
町長「私も妻が同じくらいの体型でしてな」
勇者「お前の趣味も聞いてないわよ!」
勇者「と・に・か・く! 絶対反対よ、こんなの」
商人「そうですか……もったいない……」
勇者「は?」
商人「ですが、さらしにふんどしを用意できなかった時点で私の負けです」
町長「それは仕方ありませんな……」
勇者「……あのさ、どういうことかな」
商人「いえ、資金をすべて水着に替えてきたので」
勇者「うおおおおおおっ、海破斬――――ッ!」
武闘家「ぎゃー」
水着コンテスト。
商人「さあさ、お集まりの紳士淑女の皆々様!」
商人「今から登場しますのは、ここオアシスの女神たち!」
商人「そして、美しいカラダを持つ冒険者たち!」
商人「「美少女水着コンテスト イン オアシス」の始まりだぁーっ!」
\わああああああああああああ!/
盗賊「うーん、テンションがいつもまるで違うわね、あいつ」
勇者「結局、出ることになってしまったわ……審査員だけど」
武闘家「それにしても、この商人、ノリノリである……」
商人「まず一番手、宿屋の若女将さんの登場だ~!」
宿屋「は~い、みんなー、元気ー?」
\ゲンキー!/\おねえさーん/
商人「おおっと、いきなりたっぷりとしたビキニで会場を沸かせたぞ!」
商人「豊かな体で、冒険者たちを癒してくれるのかっ」
商人「ゆうべはあなたとおたのしみでしたよっ」
商人「まずは一言どうぞ!」
宿屋「うふふ、今日のために水着を新調しちゃいました~」
\うおおおおおおおおおっ/
商人「これには男性陣も大興奮だぁっ!」
商人「さあ、宿屋さん、ここで一つアピールタイムだっ」
宿屋「えーっとぉ、私に投票してくれた人にはぁ、宿屋特製メニューを提供しちゃいますよ~」
商人「特製メニュー! そいつはどんな」
宿屋「暑い気候にこそ、熱い料理! ウルトラカレーですっ!」
宿屋「オマケで、載せられるだけフルーツ大盛りっ!」
商人「載せるってどこにですか」
宿屋「えへへ、もちろん、こ・こ」 ← ぽよん
\キタああああああああああああああああ/
商人「おおっと、こいつは強烈なアピールだああああああ!」
商人「それでは、実際にいくつ載せられるか試してみましょう!」
宿屋「え?」
商人「さあ、まずはバナナが一本目ー!」
宿屋「ひゃん」
商人「続いて二本目ー!」
宿屋「やんっ」
商人「今度は小さなオレンジを三個投入ー!」
宿屋「ううう、もうっ」
\はぁはぁ/\うっ/
宿屋「こ、こうなったら、とことんまでやってあげるわ!」
商人「さすがのプロ根性です! アップル! マンゴー! ドラゴンフルーツ!」
宿屋「う、腕で支えるのはありよね」
商人「これは……見てください! 載っています! フルーツ大盛りですっ!」
商人「こんなフルーツバスケットは見たことがない!」
\うおおおおおおおおおおおっ/
宿屋「はぁはぁ、ど、どんなもんよ~」プルプル
商人「素晴らしい! さああ、ここで会場の旦那さんから、練乳の差し入れだー!」
宿屋「あなた……あとで張り倒す」
商人「にゅるにゅるにゅる~っと」ブチュチュ
宿屋「くううっ」
商人「人妻若女将の練乳フルーツ盛りの完成ですっ!」
商人「最後に笑顔でどうぞっ」
宿屋「みなさ~ん、ぜひ宿屋に来てくださいね~っ」
\いくぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!/
商人「素晴らしいトップバッターでしたああああああっ」
商人「さあ、審査員の皆さん、一言ずつ感想をどうぞ」
町長「うむ。巨乳もいいのお」
商人「ありがとうございます!」
男戦士「実に素晴らしい。商売人としての意気込みを感じさせるアピールだった」
商人「確かに見習いたいサービス精神でした!」
勇者「……」
商人「勇者さん?」
勇者「どこの深夜番組だよっ!!!」
商人「巨乳はお気に召しませんでしたか」
勇者「そういう意味じゃねぇよ!!」
商人「ロリ枠も用意してますから、ご安心を」
勇者「安心じゃないでしょ!? それとも私かっ!? 胸だけロリ枠扱いかっ!?」
商人「さあ、どんどん参りましょう!」
勇者「聞けよ、人の話!」
商人「続いては、東の国からやってきた、しなやかな肉体を持つ、この人だああああっ!」
武闘家「ん」
\うおおおおおおおおおおおおおっ!?/
商人「これは珍しい、サラシにフンドシ、東の国の名産品を身に着けて!」
商人「サラシから零れそうなダイナミックとムチムチフトモモを、惜しげも無く見せつけていますっ!」
武闘家「いやん……」クネッ
\ぶっ/\エロい!/\いいぞー!/
商人「冒険者枠から早くも参戦!」
商人「まずは一言どうぞっ」
武闘家「強くてかわいい武闘家でござる……」
勇者「……武闘家さんもノリノリだし」
商人「さて、一発目のアピールは!」
武闘家「ふっ、はっ、ほっ」 ひゅん、ひゅん、ぴしっ
商人「これは! 武の型を見せながら、ばっちりおっぱいを揺らしております!」
武闘家「ぶるんぶるん」
\おぱーい!/\もっと跳ねてくれー!/
商人「見事です、見事な演武です!」
商人「さああ、ここからさらにどんなアピールを見せてくれるのかっ!」
武闘家「私は……強い……」
武闘家「くまも一撃……」
商人「おおっと、ここで強力な力こぶ! しかし、その話は本当ですかぁ~?」
武闘家「実は、いつもは爪を使ってる……」チャキ
\どっ/\はははははは/
商人「なんと、衝撃的な発言だぁーっ! まさか、武闘家の伝説とは夢だったのか~!?」
武闘家「私はパンチが弱い……」 さっ
商人「さあ、ここで武闘家さん、オアシス名産ココナッツを取り出しましたー!」
商人「そこでぇー……投げたーっ!」
武闘家「その代わり……」 ひゅー……
武闘家「は」 ヒュボッ
\う、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?/
商人「な、なんと、なんと」
商人「なんと、ご覧ください! 宙に浮いたココナッツが、武闘家さんのキック一つで吹き飛びましたっ!!!!!」
武闘家「脚が強い……」 ムチッ
商人「そして、強烈なフトモモアピールっ!」
商人「素晴らしい肉体美っ!!! 強さの中のエロさっ!!!」
武闘家「パンチだと……」 ヒュンッ
武闘家「手刀で割れるくらい……」 カパッ
商人「こ、これは、ココナッツが見事に真っ二つっ!」
商人「そして溢れ出るココナッツミルク~!!」
武闘家「んぐんぐ」
\うおおおおおおおおお!/
商人「これはいい! ミルクが零れて、こちらもダイナミックです!!」
商人「武闘家さんに白濁が振りかかるっ!」
武闘家「ぶい」
商人「最後はピースで締めました~!」
商人「冒険者枠も乗っけからすごいことになって参りました!」
商人「さあ、審査員の皆さんに一言ずついただきましょう!」
町長「いい尻じゃのう」
商人「ですよね~」
男戦士「実に優れた攻撃力だ。そして実に優れた尻と太腿だ。何よりフンドシがうれしい」
商人「私もそう思います!」
勇者「えーっと、武闘家さんってすごいんだね……」
商人「一番、つまらない感想ですな」
勇者「うるさいっ! えーとえーと」
武闘家「……勇者も、サラシ巻く?」
勇者「あ、ちょっと待って!」
商人「どうしました?」
勇者「サラシとフンドシって、水着じゃないんじゃないの」
武闘家「……!」
商人「気づいてしまいましたか……」
町長「なるほど……!」
男戦士「くうっ、フンドシのエロティシズムに釣られて、本質を見損なっていたとは!」
勇者「え?」
商人「さああああああああ、みなさん!」
\お?/\なんだ?/
商人「美少女水着コンテストに相応しい、水着を彼女は着るべきではないでしょうか」
\そ、そうだー!/\可愛いの着てー/
武闘家「なんてこった……」
勇者「え、え?」
商人「そこでっ、追加アピールッ!」
商人「水着生着替えタイムですっっっ!!!」
\うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?/
武闘家「は、恥ずかしい……」
勇者「いや、あの」
商人「さあ、目の前にボックスが用意されました! 中には十数着の水着の群れが!」
商人「武闘家さん、ここはひとつ、ご自分で選んだ最高の水着に、お着替えくださいっ!」
武闘家「くっ、ヤムを得ない……」
勇者「何いってんの」
商人「生着替えタイム……スタートッ!!!!!」
\キタああああああああああああああああ!!/
商人「さあ、中でするすると音がします」
商人「サラシを外しているのでしょうか、布がめくれる音が聞こえてきます……!」
商人「解説の男戦士さん、生着替えの魅力について、教えていただけますか」
男戦士「うむ。やはり、臨場感、LIVE感と言い直してもいいだろう。それを感じさせるところが素晴らしい」
男戦士「それから、期待感だな。隠されているものに対する、覗きたい、出会いたいという欲求、それを高めさせる効果がある」
勇者「いや、おい、お前ら」
商人「そうですねぇ、それに加えて、武闘家さんについては」
男戦士「東国の衣装に秘められた、不可思議なエキゾチックが、着替えという行為を通じて昇華していく、まさにここが見所だろう」
商人「なるほど!」
勇者「おい、聞けよ、おい」
商人「つまり、武闘家さんの魅力が、着替えによって更に高められるというわけですね?」
男戦士「そのとおり! 数年ぶりに私は、物が分かる実況に出会えたようだ……」
勇者「理解したくないレベルなんですけど」
商人「さあ、前かがみの男性陣の前で、あーっ、いま、落ちました!」
商人「いま、サラシが落ちました! そしてフンドシもあっさりと落ちた!」
商人「間違いなく、フンドシが落ちました!」
勇者「おい、おい。うるせーよ!」
男戦士「これは……!」
商人「どうしました? 男戦士さん」
男戦士「うむ、戦士の眼を生かして、彼女の取った水着を推測したのだが……」
男戦士「お尻にクマさん柄の模様が入っている……!」
商人「な、なんと……!」
勇者「武闘家さんも! もうやめていいのよ、こんなの!」
武闘家「開放感……」チラ
勇者「ちゃんと着替えろ、お前は!」
商人「さあ、周囲が見守る中、今、着替えが、終わりました―ッ!」
ドジャーン!
勇者「もう好きにしていいよもう」
武闘家「えい……」
商人「こ、これはー!? ひっじょうにキュートです!」
商人「上部は小さなフリルをあしらって、おっぱいに咲く花のようになっております!」
商人「そして、下は見事なクマさん柄! ちょっとお尻向けてもらっていいですか」
武闘家「せや」クルッ
\ぶっしゅ/\きたよ! はい、俺死んだよ!/
商人「会場も大爆発! 先ほどの美しさから一転、可愛らしさでもトップクラス!!」
武闘家「どや」
勇者「」ジーッ
武闘家「勇者に視姦、イイ……」
勇者「はっ!? つ、つい見ちゃった……」
商人「さあ、この追加アピールで、俄然テンションが上がって参りました!」
商人「続いては、冒険者枠から、この人です!」
商人「渋い銀髪の頭の中は真っピンク!」
商人「色ボケ盗賊さんの登場だ~!」
盗賊「……」
商人「あ?」
勇者「きゃああああああっ!?」
\うおおおおおおおおおおっ!?/
商人「何してらっしゃるんですか、全裸で」
盗賊「歌います」
――しばらくお待ち下さい――
商人「途中ハプニングがありましたが、残りも少なくなって参りました」
男戦士「さすがに水着コンテストで全裸はアウトですからな」
勇者「そういう問題じゃないでしょ……」
村長「他のメンバーも素晴らしかったのう」
勇者「もう突っ込むのにも疲れたわ……」
商人「いよいよ最後の挑戦者です!」
商人「審査員から特別出場! 伝説の勇者様!」
勇者「!?」
\うおおおおおおおおおおおおおおっ!/
商人「最後です、ばっちり目立ってきてください」
勇者「いやいやいや!」
勇者「ちょっと待ってよ! 私、水着持ってないし!」
商人「十着用意しておりますゆえ」
勇者「ゆえじゃないよ! 理由になってないよ!」
商人「パーティーの恥の責任取るのも、リーダーの務めですよ」
勇者「……マジであいつは外す」
商人「さあ、やるのですか、やらないのですか」
勇者「や、やれるわけないでしょ。私みたいな体型の子なんかいなかったし……」
商人「……? 5歳の村長のお孫さんも出ていましたが」
勇者「幼女と比べんな!」
勇者「とにかく、圧倒的に拒否!」
商人「素寒貧です」
勇者「は?」
商人「このコンテストが成功しないと、我々には一銭も残りません」
勇者「……」
商人「まさに、勇者さんの水着に世界がかかっているといっても過言では」
勇者「追い込んでるのはお前だよね!?」
商人「さあ、勇者様、やる気満々です!」
勇者「嘘をつくなー!」
男戦士「実に楽しみだ」
村長「まったくです」
\わああああああああああああああああああああああああああ/
勇者「こ、この……」
勇者「そ、そうよ、大体、私にアピールできることなんて」
商人「勇者様に挑戦していただくのは、水着早着替え十連発!」
勇者「いやあの」
商人「さらに! 今回は着替えボックスを使いませんっ!」
勇者「」
\きたー!/\痴女キタ――!/\ぶしゅうっ/
勇者「それただのストリップでしょ!?」
商人「見せないように着替えればいいのです」
勇者「だから何言ってんの!?」
商人「見えても会場は興奮するので。もちろん、私も」
勇者「もう救いたくねぇよ! こんな世界!」
勇者「はあ、はあ……」
商人「ダメですかね」
勇者「……」
勇者「……ふ、ふふ」
勇者「ふふふふふふふふふ」
勇者「やればいいんでしょ! やれば!」
勇者「そのかわり、これで一位にでもならなかったら、全員皆殺しにするレベルだからね!」
商人「さあ、まさかのキル・ゼム・オール宣言!」
商人「今、力強く勇者様が水着のコーナーに向かいます!」
商人「その堂々たるや! まさに勇者です!」
勇者「そんな勇者認定はいらん!」
商人「あ、ぴっと笛がなったら始めてくださいね」
商人「ピーッ!」
勇者「は、早いわよ」
商人「スタートしました!」
商人「まずは勇者さん、並べられた水着に手を取り――」
商人「おっと!? これは早い! いきなりその場でマントを脱いだ!」
商人「そして……!?」
\!?/
商人「これは、一瞬のうちです! 一瞬のうちに白ワンピース水着に着替えましたッ!」
商人「瞬きせずに見ていた方は……ああああーっ!」
商人「早い! 赤セパレート! 赤セパレート勇者の出来上がりだッ!」
勇者「うるさい」ヌギヌギ
男戦士「むう……っ!」
商人「解説の男戦士さん、これはどういうことでしょうか!」
男戦士「間違いない、戦闘中の装備変更術……!」
商人「それは、武器を持ち替えたりするだけでは」
男戦士「常人なら、敵を目の前にして呑気に持ち替えていれば、一発でやられる」
男戦士「彼女はそれを極限まで高め、戦闘中に防具まで変更するかのような荒業をやってのけているのだッッ!」
商人「なるほど!」
男戦士「すばらしい……」
男戦士「戦士の目を持ってしても、乳首すら拝むのがやっとだというのだからな……」
勇者「お前、後で斬り殺す!」ゴソゴソ
商人「さああ、言っている間にもう一分が経過!」
商人「しかし、勇者様はもはや6着目に入っております!」
商人「先ほどとはうってかわって、ビキニの三角形!」
商人「膨らみません! ぺったんこです!」
商人「三角形は、膨らまないっ!」
勇者「お前も潰してやるからな」ハキハキ
商人「いよいよ難易度の高い七着目! ボトムがスパッツタイプ!」
勇者「あ、ちょ」ぐらっ
\うおおおおおおおお!?/\きた!? きた!?/
商人「あーっと、これは!?」
男戦士「見えてない!」
商人「見えてません! 私以外は完全に見えてません!」
勇者「あとで二度と見えないようにしてやるわ!」
商人「ローライズ! パレオ! さあ、余裕が出てポーズを決めています!」
商人「最後に選んだのは……女子学校指定の紺色水着だあああああああああっ!」
勇者「こ、これが一番露出少ないしね」パチンッ
\わああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!/
商人「フィニーッシュ!!!!!」
勇者「なんで興奮してんの」
商人「……失礼、鼻血が止まりませんな」ポタポタ
男戦士「私もだ」ドボドボ
村長「わしも」トポポ
商人「勇者様、スクール水着でフィニッシュです!」
勇者「いやあの」
勇者「……なんで一番露出が少ないので興奮してんの」
商人「うっ……ふう」
商人「失礼しました。それでは、他の審査員の方々からコメントをいただきましょう」
商人「男戦士さん、いかがでしたか」
男戦士「すでに解説したとおりだ……素晴らしいものを見た」
商人「確かに、様々な意味で感動してしまいましたね」
商人「それでは、村長さん」
村長「最後にスク水を持ってくるところにセンスを感じるわい」
商人「ベストチョイスと言って間違い無いですよね!」
商人「それから、痴女さん」
盗賊「スク水って内側がしっかりしてるから使いやすいのよね」
商人「ギリギリのコメントをありがとうございます」
勇者「なんでいんのお前」
商人「さあ、すべての挑戦者が出揃いました!」
商人「最終審査にもとづいて、優勝が発表されます!」
勇者「もう、早く終わってほしいわ……」
盗賊「どうして落ち込んでるの? スク水を着てるのに」ハァハァ
勇者「武闘家さん、あいつ近づけないでもらえます?」
武闘家「いま、焼きもろこしに、忙しい……」ハフハフ
商人「優勝に輝いたのは―――」
商人「5歳の村長のお孫さんです!!」
幼女「え?」
\うわああああああああああああああああああああああっ/
商人「さあ、幼女ちゃんには、賞金1万と、副賞にスイカが贈られますよ」
幼女「あ、ありがとう、ございます」
商人「照れてて可愛いですね~」
商人「それでは、商品の受け渡しとともに、審査員からも一言ずつ」
男戦士「うむ。やはり、ロリはいい」
商人「最低のコメント、ありがとうございます!」
村長「良かったのう、ほれ、スイカじゃ」
幼女「ありがとう、おじいちゃん!」
商人「勇者さんからも、一言」
勇者「一番、健全だったから」
商人「いやあ、健全な水着コンテストも、これで終了となります!」
勇者「まだツッコミが足りないわけ?」
パチパチパチパチ――
夜。
商人「さて、それではコンテストは無事終了したわけですが……」
勇者「ちょっと待ちなさい」
商人「どうしました?」
勇者「まだ、私のパーティーの中で、一人だけ水着じゃない人がいるわよね」
商人「全裸の」
勇者「言うな!」
勇者「そうじゃなくて、目の前にいる……」
商人「私のことですか」
勇者「そうよ! 人を散々辱めておいて、一人だけ高みの見物っていうのはおかしいんじゃないかしら!?」
商人「いえ、私が着ているのは際どかったので」
勇者「え、あ、着てるの……?」
商人「スリングショットの」ぬぎっ
勇者「ひゃあああああ!? 紐じゃないのっ」
勇者「人、ここまだ人がいるからっ!」
商人「さあて、夜も更けて参りました!」
勇者「!?」
商人「ここからはお楽しみコーナー! 全部売ります! 『脱ぎ捨て水着即売会』!!!!」
\うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!/
勇者「おい、おいお前!」
商人「昼間に出てきた水着約十点分を、売り尽くし大セールだっ!」
勇者「明らかに大半私のよねっ!?」
商人「まずはこちらから! 武闘家さんが着ていたサラシ&フンドシセット!」
商人「金額は1000からスタート!」
勇者「ぬあああああああああああっ、空破斬っっ!!!」
商人「完売しました」
洞窟。
商人「魔物のパンツを」
勇者「もうね、黙ってて」
商人「まだ言い終わってませんが……」
勇者「見りゃ分かるわよ! 私が魔物娘を倒した! 商人がおもむろに下着をチェック!」
盗賊「『ほう、魔界産の下着ですか』」
勇者「この流れであんたが商売以外の話をするわけないでしょ!?」
商人「趣味も入っています」
勇者「うるせぇ!」
商人「これは勇者さんでも装備できるものです」
勇者「……だから?」
商人「防御力も高いかもしれない」
勇者「下着で守備力を上げるバカがどこにいんのよ!?」
武闘家「良い生地のふんどしは……」
商人「攻撃力があがるのですよね」
勇者「ねぇ、ほんっとに黙っててもらえます?」
盗賊「どうしたの、勇者。生理なのは知ってるけど」
勇者「ああ~、夜の試し斬りで本物使いたいなー、本物の人体がなー」
魔物娘「んん……」
なんと、魔物娘が起き上がった!
盗賊「あ、ほらほら、試し斬りまだ出来るわよ」
勇者「しつこいやつね」チャキ
魔物娘「ひいっ、私、悪い魔物じゃないよ」ブルブル
商人「知っていますよ。魔物には売り物になる魔物と、使い道のない魔物が」
魔物娘「売り飛ばされる!?」
勇者「待ちなさい。売り物にはならないように、たっぷり傷をつけてあげるから」
武闘家「ナム……」
魔物娘「や、やめて」
魔物娘「そ、そうだ。いいことを教えてあげるわ」
魔物娘「この洞窟の奥にいるボスの弱点よ」
勇者「もう倒してきたやつの弱点っていいことなのかしらね」
魔物娘「なん、だと……」
商人「いいことを思いつきましたよ」
勇者「黙れ! お前は黙れ!」
商人「いえ、これは勇者さんにとってもチャンスだと思うんですが」
勇者「……じゃあ、言ってみなさいよ」
商人「こいつに勇者さんのパンツを売ってもらうんです」
勇者「」
魔物娘「」
勇者「えーっとさ、まあ、そのさ、想定外なんですけどね」
勇者「こいつの脱ぎたてパンツを売りさばいて、精神的に陵辱するとかじゃなくて、売らせるの?」
魔物娘「!?」
商人「私が勇者さんの下着類を売りさばいているのは、ひとつは勇者さんの人気を」
勇者「分かったわ。あんたの頭にうじが湧いていることを」
商人「つまり、魔物にも下着を売ることで、魔物への人気を高める効果が」
勇者「嫌だよ! そんな人気!」
勇者「大体あいつら全裸が大半じゃんか!」
魔物娘「ひどい!?」
盗賊「よく見ればこの子も半裸よね」
魔物娘「見ないでぇー!」
商人「しかし、これは私の趣味だけではなく、魔物を内側から切り崩す手で」
勇者「趣味なんだよね!? 大半が趣味なんだよね!?」
商人「どうですかな。有効打になりえますか」
魔物娘「私に聞いてるんですか?」
商人「ええ」
魔物娘「えーっと、人間の装備は、その、戦利品になるからそこそこ嬉しいと思います」
勇者「お前もまじめに答えてんじゃねーよ!!!」
魔物娘「ひいっ」
商人「まさか勇者さんのパンツが世界を救うとは……」
勇者「こないだは世界のためとか言ってたよね!?」
盗賊「待ちなさい!」
勇者「黙れ」
盗賊「勇者と魔物娘と、セットで下着を売ったらどうかしら」
商人「ナイスアイデア」
勇者「セットで斬り捨てられたいわけ!?」
盗賊「ああ、でも、下着を順々に交換会するとかもありよねぇ」
勇者「よ~し、まずお前から斬っちゃうぞ~」
魔物娘(どうしよう、この流れ……)
魔物娘「あのう、それじゃ、私はこれで……」
勇者「逃がすかぁッ!」ガシッ
魔物娘「いやああああっ」
勇者「何から何まで馬鹿にしやがってよ!」
魔物娘「わ、私は馬鹿にしてないわよぅ」
魔物娘「どっちかっていうと、仲間になりたそうに立ち上がるつもりだったのにー!」
勇者「え、仲間、に……?」
勇者(……この変態どもと別れて、多少は真面目なこいつを仲間に入れる)
勇者(ありよ! 全然ありよ!)
商人「なるほど。これは少し下着の購入計画を見直さなくてはなりませんな」
盗賊「5Pとか余裕だから、任せてね」
武闘家「つまり、サンドバッグが仲間に……」
魔物娘「やっぱりなかったことに」
勇者「いいえ! 死にたくなければ仲間になるのよ!」
勇者「そして代わりに、お前らは去れ!」
魔物娘「ええ!? それはそれでいや!」
盗賊「そーよそーよ! 主に下半身の交流会とか必要でしょ!」
勇者「やかましいわ! もう私は決めたわ!」
商人「それは構いませんが……」
勇者「構わない!? 今構わないって言ったわね!」
勇者「外したら二度はないわよ!」
商人「ええ、それでも構わないんですが、一つだけお伝えし忘れていたことがありまして」
勇者「何よ!」
商人「勇者さんのお家を担保につくった特注のビキニアーマーが」
勇者「は?」
商人「ですから、特注のビキニアーマーを最後に着ていただいて」
勇者「その前、その前」
商人「勇者さんのお家を担保に」
勇者「おま、ちょ、おま、待って?」
商人「お母様が快く協力をしていただいたので」
勇者「何考えてんのよぉおおおおおおお!?」
商人「勇者さん用のビキニアーマーって意外と難しかったんですよね」
勇者「うがああああああああああっ、ギガブレイク――――ッ!」
魔物娘「……あの、私は」
商人「売り子になりました」
商人「勇者さん」
勇者「しゃべんな!」
商人「いえ、休憩を兼ねてコスプレはいかがかと」
盗賊「え? コスチュームプレイ!?」
勇者「反応するな! 息をするな!」
魔物娘「……魔王城までこんなテンションとかちょっと引きますわ~」
勇者「誰のせいだよ!?」
魔物娘「わ、私ですか」
武闘家「やれやれ……」
勇者「はぁはぁ……結局、ここまで私が一人で戦っているようなもんじゃないの……」
盗賊「失礼ね! 私だってお宝とか休憩できそうな場所を探したりしてたし!」
勇者「セクハラタイムしたいだけだろうが!?」
武闘家「勇者、敵中だ……落ち着け……」
勇者「おっ……! ええ、そうね」
魔物娘「お茶を淹れましょうか~」
勇者「くっ、魔物が一番役に立つとかどういうことよっ」
商人「いいですな。人魔の架け橋として、勇者×魔物娘の本を書きましょう」
勇者「レズ本だろ!? それ子どもに見せられないやつだろ!?」
盗賊「ちょっと商人! どうして私がダメで、魔物娘は勇者と絡んでいいのよ」
商人「異種間って需要があると思います」
勇者「よーし、息抜きに素振りしちゃおっかなー」
武闘家「……3Pはあり?」チラリ
勇者「いちいちアピールすんじゃねぇ!」
魔物娘「それにしても、仲がよろしいんですね」
勇者「ここから先、肉の盾がほしいなって思ってたのよね」
魔物娘「へひぃっ!?」
商人「有効に使うなら魔王戦でしょうな」
魔物娘「ひいぃーっ」
勇者「言っておくけどね、私はこいつらなんか大・嫌いなのよ!」
魔物娘「……そんなに嫌なら、別れたら良かったじゃないですか?」
勇者「……」
盗賊「そんなことできないわよねー」
勇者「魔王をぶっ倒したら、お前ら全員切り刻んでやる」
魔物娘「……いや、さっぱり分かりませんわ」
武闘家「勇者には、友だちができない……」
勇者「うるさいっ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
――最初の町。
勇者「とにかく、魔王を倒すために、とびっきり強い人が必要なんです!」
どっはははは
勇者「なんで笑うんですか?」
戦士「お嬢ちゃん、まあ、親父さんに憧れるのはいいけどさ」
男武闘家「うへへ、俺はいいぜ? ちっちゃくてかわいいしな」
勇者「お前らは最初からお断りだ」
戦士「勇ましいなぁ、一人でスライムに勝てるようになってから言えば説得力があるのにな」
勇者「……!」
男武闘家「なんだったら、俺が守ってやろうか?」
勇者「ちっ、触るんじゃねぇ!」スラッ
マスター「店の中で剣を抜くんじゃない!」
勇者「す、すみません……」
勇者「ね、ねぇ、お姉さんなんか、私と一緒に冒険しませんか」
僧侶「申し訳ないけれど、あなたのような乱暴者は……」
魔法使い「粋がってるだけのガキはお断りよ」
勇者「お前も十分ガキだろうがっ、胸とか胸とか!」
魔法使い「なんですってぇ!」
僧侶「こらこら、おやめなさい」
勇者「ふん、腰抜けと雑魚なんか、こちらだって欲しくないわよ!」
勇者「ほら、本気でついてくる人はいないの!?」
シーン。
僧侶「……あなたのような人について行こうという人はいませんよ」
勇者「う」
僧侶「少しは失礼な言動を慎みなさい」
勇者「く」
商人「では、私などどうですかな」
勇者「え、えーと」
商人「商人、と申します。勇者さんのトータルコーディネートを任せていただけないでしょうか」
勇者「ほ、本当に!?」
商人「ええ。見たところあなたは逸材も逸材……」
勇者「やっぱり!?」
商人「まさに世界を獲れる素質を備えた方と申せましょう」
勇者「そ、そんなに褒められると照れるなぁ」
僧侶「商人さん、あなたね」
魔法使い「ほっときなさいよ、おだてられたら木で裸踊りでもしそうなやつなんか」
僧侶「けど、若い子どもを弄ぶような真似」
商人「生憎と、私が本気でなかったことなどありませんから」
僧侶「そうね……」
魔法使い「確かにね……」
勇者「じゃあ、じゃあ、他にはどんな人がいいかな」
盗賊「なに~、こんなに股間にきゅんきゅんしちゃう子を(ry」
~~~~~~~~~~
勇者「ストー――ップ!」
盗賊「え、ちょ、私の分の回想は?」
武闘家「私の回想も……」
勇者「誰が言わせるかっ!」
商人「確かに、仲間への立候補がなかった時の顔もそそられるものがありましたが」
勇者「うきゃああああああっ!」
盗賊「サルじゃないんだから」
魔物娘「まあ、よく分かりました」
勇者「何が分かったのよ」
魔物娘「え」ビクッ
勇者「何が分かったのか言ってみなさいよ」
魔物娘「えーっと」キョロキョロ
盗賊「何が分かったのかしらねぇ」ニヤニヤ
武闘家「くくく……」
商人「この不安げな表情、魔物もなかなかやりますな」
魔物娘「……」
魔物娘「あ、ほら、よくできたパーティーなんだなって」
勇者「私が、仕方なく、選んだ、この変態どもが、よくできていると」
商人「それは勇者さんの人選ですからな」
盗賊「墓穴を掘ったわね」
武闘家「先生、他に組む相手がいません……」
勇者「うるああああああああっ! ギガドリルブレイクゥゥゥゥッ!」
盗賊「……それにしても、勇者もずいぶんと沸点が低くなったものねー」プスプス
武闘家「元から、相当……」
魔物娘「なんていうか、もう見慣れたんですけど、大丈夫ですか」
商人「大丈夫です。盗賊さんはタフさが売りですからな」
盗賊「最大10P20ラウンド経験済☆」
魔物娘「これスルーしていいんですかね」
商人「肉壁に相応しいのはどちらなのか、ということですよ」
魔物娘「あ、私は、まだ未経験なんでー」
盗賊「初めてが魔王戦とかハードすぎない?」
魔物娘「あの」
武闘家「スルー安定……」
盗賊「そういう商人は、なんかおとなしいじゃない?」
魔物娘「コスプレ休憩を提案するのがおとなしいんですか」
商人「いえ、魔王城ですし、私も緊張しているのです」
盗賊「なに企んでるの」
商人「最初から言っているではないですか。勇者さんなら世界を獲れる、と」
武闘家「プロデュース……」
商人「そのとおり。世界のためですよ」
魔物娘「……何を言っているのかさっぱり分かりませんけど」
盗賊「そういうあんたもどうするの?」
魔物娘「へ? 私ですか?」
武闘家「魔王と、戦う……」
魔物娘「あー」
魔物娘「いいんじゃないですかね」
盗賊「まあ、いいけど。なんかエロ衣装着て、グッズ販売してる方が向いてそうだしね、あんた」
商人「着回しさせて申し訳ありませんでしたな」
魔物娘「あ、まー、人間の衣装もなかなかおもしろかったし」
盗賊「けっこう臭いがキツイわよね、魔物って」
魔物娘「嗅いだんですね!? 嗅いだんですね!?」
盗賊「そりゃ嗅ぐわよ」
商人「魔物娘のあそこの臭い付き下着、いや、直接的すぎるからハンカチとか……」
魔物娘「やめてください!?」
武闘家「手ぬぐいなら、あそこに当てても違和感ない……」
商人「採用しましょう」
魔物娘「助けて! 勇者さん助けてください!」
勇者は魔王を倒し、世界に平和が訪れた――
それから。
商人「パンツに勇者さんのサインが欲しいんですが」
勇者「」
商人「初回限定版に付属しているこの勇者さんの愛用パンツ(複製)、非常に好評でして」
商人「本体より、こっちの方が、いえ、むしろこっちの方が本体だと」
勇者「」
商人「勇者さん?」
勇者「……何、この、長蛇の列」
商人「もちろん、勇者さんのサイン会の列です」
勇者「……私の、なんの、サイン会だって?」
魔物娘「はい、『DOKIDOKI☆勇者様』刊行記念、特別サイン会の最後尾はこちらでーす」
勇者「なんの、サイン会だって?」
商人「『DOKIDOKI☆』」
勇者「タイトルじゃねぇよ!」
商人「では、ご説明いたしましょう」
商人「こちら、『DOKIDOKI☆勇者様』は、魔王を倒し、世界を救うまでの旅の期間の、勇者さんの表情を余すところ無く収めた写真集となっております」
勇者「表情じゃないだろ……」
商人「ツータイプご用意させていただきました」
商人「まず一冊が『勇者様、世界を救った全パンチラ編』」
勇者「尻じゃん!」
商人「お尻の表情が」
勇者「うるさいよ!?」
商人「あの、伝説の早着替えのギリギリシーンまで、アクティブな勇者さんを楽しみたい方に」
商人「付録はもちろん、スク水のサポーター。今回、希望者には股間部分へのサインも」
勇者「うらあっ」ダン!
商人「これも(複製)ですからな」
商人「そしてもう一冊、『勇者様、寝顔キュート編』」
勇者「もうおかしいでしょ!?」
商人「アクティブすぎる勇者さんの、別の一面を捉えた、まさにこちらは表情とエロスを楽しむ一冊」
商人「ちっぱいを無防備に晒す初期の頃から、野宿で見張り番をしてついうっかり漏らした時の」
勇者「うだあああああああっ!」ダン! ダン!
商人「こちらの魅力は、なんと言っても付録についてくる愛用パンツ(複製)」
商人「柔らかく、ゴムも強くて、しっかり締まるパンツに、購入者は大満足」
勇者「別の満足でしょ!? それは!」
商人「予想以上の売上になりましたな」
商人「私もまさか、履く用、使う用、飾る用に加えて」
勇者「もうやめい!」
商人「これも勇者さんの人気が高いからですな」
勇者「別の人気だろがこれはあああああああっ!」
商人「ふう……勇者さん」
勇者「な、なによ」
商人「私は初めてお会いした時に、言ったはずです。トータルコーディネートだと」
商人「そして、あなたは世界を獲れる、と」
勇者「……なに? 性風俗で一位が獲れるって意味だったわけ?」
商人「滅相もない。本番どころかペッティングすらなくても十分」
勇者「やっぱり性風俗じゃないのよおおおおおおっ」
盗賊「なにー、世界を救ってもまだヤってるの?」
勇者「やってないわよ! 抗議してるのよ!」
盗賊「え? 交尾?」ドキドキ
勇者「お前は! いつまでッ! 私を切れさせるのよっ!!」ガンガン
盗賊「盗賊はあきらめない」
商人「ダメじゃないですか、性犯罪者がウロウロしてちゃ」
盗賊「何よぅ、私ってそういう扱いなわけ?」
商人「最初から」
盗賊「私は勇者の下着をクンカクンカしたり擦りつけたりするのが好きなだけよ」
勇者「ねぇ、救世主たる私に衆人環視で惨殺されたいの」
盗賊「ただの愛情表現ってこと」
勇者「愛って一番人の命を奪う感情なんですって」
盗賊「あら、勇者もちょっと大人になった? 今までだったら、もう剣を振りぬいていたのに」
商人「さっき殴ったのですがね」
盗賊「まあまあ。実は勇者の本の出版記念に、こんなの持ってきたのよ」
盗賊「じゃあん、商人の着ていたスリングショット」ビリィーッ
勇者「……失せろ」
盗賊「ちょ……ちょっと待ってよ、これは商人に」
勇者「とか言ってどうせ私が着る流れなんでしょうが!?」
商人「私はもう着ています」ヌギ
勇者「やめろ! 失せろ!」
武闘家「勇者用のふんどしをおみやげに……」
勇者「さらっと出てくるんじゃねぇ!」
武闘家「さらしもある……」
勇者「だからあっ! もう着ないっての!」
商人「着心地が良いと嬉しそうにしていたのですがね」
勇者「そっ、それは、その」
武闘家「今回の特別商品はふんどしの前垂れに勇者の文字が……」
勇者「売るなよ! 絶対売るなよ!」
商人「生憎、もう完売してしまいましたので」
勇者「うおらああああああああああああっ!」
勇者「はぁはぁ、はぁはぁ……」
勇者「なんなのよ、もう」
勇者「そんなに私を辱めたいって言うの?」
商人「……勇者さん」
盗賊「うん!」
武闘家「こいつは退場させておく……」
盗賊「もがもが」
商人「少し、私のお話をさせていただいてもよろしいですか」
勇者「な、なによ」グスッ
商人「私の生まれも商家でして、一家で代々商人だったのですが」
勇者「ああ、そう」
商人「私は、いやいやで商人をやっていたのです」
勇者「そう」
商人「そのくせ、父に『お前には商才がない』と罵られて」
勇者「……やめちゃえばよかったのに」
商人「そうですね。やめどきが分からなかったんですね」
勇者「……私みたい」
勇者「お前は勇者だなんだっておだてられて、結局、ろくな仲間も捕まえられずに」
商人「私はろくな仲間ではなかったと?」
勇者「当たり前でしょ! こんな人だとは思わなかったわよ」
勇者「……どこかで解散してやる! って思ってたのに、結局、魔王まで倒しちゃった」
商人「ふふふ」
勇者「世界を救っても、こんなところまで引っ張りだされて、ずるずるやめられない」
商人「お嫌ですか」
勇者「……分かんない。で、何よ、話はそれだけなの?」
商人「いいえ。散々罵られたのに、商人として独り立ちせよって言われて、途方に暮れていたんです」
商人「私もずるずるとやめられず、ここまで来ました」
勇者「……ふん」
商人「ですが、少なくとも一つだけ、勇者さんと違うところがあるかもしれません」
勇者「なんなの?」
商人「私は勇者さんを愛しています」
勇者「……は?」
商人「途方に暮れかけていた時にあなたを見て、ズキューンと来ちゃったんです」
商人「で、この人を世界で一番の愛されキャラにしようと」
勇者「いやあの」
商人「さあ、そろそろサイン会が始まりますよ」
勇者「あの、ちょ、え!?」
商人「これが終わったら、魔界に売り込みに行きましょう」
勇者「あのあのあの」
魔物娘「はいー、勇者パンツサイン会、もうまもなくですー!」
勇者「ちょっと待ってぇえええええええええ!?」
おしまい。