―トキサダメシティ―
トキサダメシティ。
全体的にどこか懐かしい香りのする街で、人もポケモンも穏やかに暮らしているのが特徴的だろう。
静かな時間が流れる、何気ない日常の見られる街である。
辺りはすっかり暗くなろうとしていた。
さやか「着ーいたー!トキサダメシティ!」
まどか「はぁ~~……もう駄目…足がボーマンダだよ……」
さやか「あんがとまどか!おかげで随分快適な旅路でしたよ」
まどか「うぅ…昨日さやかちゃんばっかりに任せた罰が当たったのかな……」
さやか「まあまあ、今日は明日のジム戦に備えてバッチリ休もうよ!」
まどか「うん、そうする……」
さやか「あっ、その前に砂漠越えの道具一式返しに行かなきゃ」
まどか「ふぇぇそんなの明日でいいんじゃないのぉ~」
さやか「駄目だよ、明日にしたら延滞料金取られるんだよ?」
まどか「そうだったね……はぁ……」
帽子やゴーグルなどの道具一式全てをレンタルショップに返したところで、まどかはようやく解放感を得ることができたのだった。
その足でポケモンセンターに向かい、夕食や入浴を済ませたところで、やはり布団に直行してすぐに眠りに就いた。
※管理人注記
このスレは未完結スレです。作者さんがBW2プレイ中みたいです。
完結したら続きをまとめたいと思います。
元スレ
QB「僕と契約してポケモン図鑑所有者になってよ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1331539059/
470 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/04/30(月) 20:20:07.43 yFg0wPwY0 380/548めがめが(チコリータ→ベイリーフ)『しんりょく』♀
御三家だと炎タイプもいいかなと思ったけど、草がいなかったので
あと、めがほむだったしメガニウムならめがめがってNNにできるしいいかなと
性格は能天気で考え込むほむらとは真逆だけど、バトルの際に負けん気が強いところは似ているかもしれない
~九日目~
早めにポケモンセンターを出発した二人は、ジムを目指す前に一先ずニコを探すことにした。
サキに教えてもらった住所を頼りに街を散策する。
しかし、どうにも同じような家が立ち並んでおり、完全に迷ってしまった。
さやか「うーん…まどか、今どの辺か分かる?」
まどか「んー、ポケ―タイだとこの辺らしいんだけど……でも神那って苗字はないんだよね」
マラカッチ「マッカララー」シャカッシャカッ
さやか「カチっちはこんな時でも能天気にマラカス鳴らしちゃって……迷ってるって分かってるのかな?」
まどか「うーん、一体どこに――」
ふと視線を上げると、
『神那&東雲研究所』
何の変哲もなさそうな平屋建ての一軒家に、どう見ても場違いな看板がご丁寧にでかでかと掲げてあった。
まどか「……ま」
まどさや「丸出しだー!」
さやか「ここか!?ここでいいのか!?」
まどか「えっと…一応チャイム押してみるね」ピンポーン
<はーい
???「なのおかえりー!あれ?なのじゃなかった」
まどか「子供…?」
さやか「ニコさんの妹かな?それとも間違えたかな?」
出迎えてくれたのは、ブロンドヘアーの幼女だった。
どういうわけか白衣に身を包み、真っ赤なネクタイをしている。
ニコ「どうしたんだいはかせ……おや、君達は確か……」
さやか「サキさん!ということはやっぱりここはニコさんの家だったんですね」
ニコ「生き別れになったビスケット1号と2号じゃないか」
さやか「なんですかそれ違いますよ!?学習装置の試験を頼まれた美樹さやかと鹿目まどかです!!」
ニコ「あぁ!」ポン
まどか「思い出してくれましたか?」
ニコ「知ってたよ」
さやか「ズコー!」
はかせ「ねーニコー、この人たち誰ー?」
ニコ「私のお客さんだよはかせ。さあ君達、遠慮せず入ってくれたまえ」
まどか「お邪魔します…ニコさんの妹さんですか?」
はかせ「違います。はかせははかせなのです」
さやか「…?」
ニコ「妹ではないよ。言うなれば仕事仲間といったところさね」
まどか「仕事?どんなお仕事なんですか?」」
はかせ「プププ、はかせの仕事って言ったら研究しかないんだけど」
さやか「研究?っていうと、この学習装置とかですか?」
ニコ「うむ。まあゆっくり話そう」
ニコとはかせと呼ばれる少女に案内され、和室に腰を下ろす。
部屋には炬燵机に冷蔵庫、その上にはなぜかサングラスの様に目を塗りつぶされたダルマッカの人形がある。
そして赤いスカーフを巻いたブラッキーが昼寝をしていた。
まどか「わぁブラッキー可愛い」ナデナデリ
はかせ「ブラッキーのさかもと。喋るよ」
さやか「喋るの?へぇ、そりゃ寝てるのが残念だね~」
話半分にしか聞いていないようだ。
まどか「はかせちゃんはお名前なんて言うの?」
はかせ「だからはかせははかせなんだけど」
さやか「いや、だから本名をだね……」
ニコ「はいはいストッピング。それで、どうだった?私の開発した学習装置は?」
さやか「いやぁ、それなんですけど……実は一日しかつけてないんですよねぇ」ポリポリ
ニコ「というと?」
さやかはニビジムであったことを話した。
ナックラーのために、人の都合で実験に付き合わせたくなかったことを、正直に。
さやか「だから、あんまり効果については分からなかったんです。ごめんなさい」
ニコ「……うーん、そういうことなら仕方ないね。試験は中止で残念無念また来週」
さやか「これ、お返ししますね。あたしは道具に頼らずにポケモンに懐いてもらいたいんで」
ニコ「ありがとう。気が向いたら他の誰かに持たせてみよう」
まどか「そういえば、ここに来るときイツ砂漠でサキさんに会ったんですよ。ニコさんによろしく言っといてくれって」
ニコ「あぁ、サキな。そういえば久しく会ってない気がするが……相変わらずな感じなんだろうな」
はかせ「ねーねーつまんないー遊ぼうよー」
ニコ「ふむ、そうだね、四人でできる遊びとなると……」
まどか「あの、せっかくなんですけど私たちこれからジムに行こうと思ってるんです」
ニコ「そうかそうか…しかしそれには及ばないよ。今日はジムリーダーがまだジムにいないのだからね」
さやか「ありゃ、そうなんですか?」
ニコ「あぁ、だってここにいるしね」
まどか「へぇー」
まどさや「……」
ニコ「ね」ニコッ
まどさや「えぇぇーー!?!?」
まどか「に、ニコさんがこの街のジムリーダーなんですか!?」
はかせ「ニコがジムリーダーなのは有名なんだけど」
まどか「そんなこと一言も言わなかったじゃないですか!」
ニコ「聞かれなかったからね」
さやか「そんなどっかの詐欺師みたいなこと言わないでくださいよ!っていうかサキさんもなんで教えてくれなかったのさ!!」
ニコ「というわけだ。君達がどうしてもと言うんなら、今からジムに行くことにするが……」
はかせ「いいよ、はかせがお留守番します」
ニコ「そうか、なら任せよう」
まどか「大丈夫なんですか?この子一人で」
ニコ「なに心配いらないさ」
はかせ(プププ、一人になったらお菓子食べ放題だぞー)
ニコ「――とか考えているだろうから」ヒソヒソ
さやか「な、なるほど」
>>473
さやか「サキさん!
おかしいね、ニコさんだね
ニコ「……そうそう、そういえば君達はポケモン図鑑というものを持っていたんじゃ無かったかな?」
まどか「よく覚えてますね」
はかせ「ポケモン図鑑!?ねえねえフカマルは!フカマルは見たことある!?」
まどか「フカマル?うん、あるよ。図鑑にもほら」ピッ
さやか「あれ、まどかいつの間に?」
まどか「あの時のフカマル達、せめてデータだけでもと思って……」
さやか「……なるほどね」
はかせ「ねえねえもっと見せて!フカマルの絵描いてもいい!?」
ニコ「……うん、それはいい。はかせに図鑑を貸してあげたらどうかな?その方が描きやすいだろうしね
はかせは一人寂しく留守番をしなければならない…なんて可哀相なんだろう……せめて大好きなフカマルと一緒にいられたらねえ」チラッ
まどか「なら、図鑑持ってていいよ。一杯お絵かきしてね」
はかせ「ほぁーやったぁー!!!」
ニコ「それじゃあさっそくジムに行くとしようか」
さやか「よっしゃあ!負けませんよー!!」
ニコに続いて二人は研究所の扉を開けた。
と、コイルを連れたこの研究所のもう一人の住人と出くわした。
ニコ「おや、なのちゃん今お帰りかい」
なの「神那さん、いつもはかせの相手ありがとうございます。そちらの方達は?」
ニコ「ジムに挑戦したいと言うんでね、今から行くところ」
なの「初めまして、東雲なのといいます」
まどか「お邪魔してます」
はかせ「あ、なのおかえりー」
なの「はかせただいま、サメハダーチョコ買ってきましたよ」
はかせ「やった!」
ニコ「よろしくね。今日はジムには誰がいたんだったっけ?」
なの「今日は長野原さんと水上さんですよ。頑張ってくださいね、お二人とも強いですから」
さやか「ご忠告どうもです!」
まどか「頑張ってきま――」
なのが背中を向けた時、まどかは見てしまった。
本来人間ならば、そこに付いていることなどあり得ないもの。
彼女の連れているコイルの物とはまた別の形、古典的な形。
まどか「なのさん背中にね――」
ニコ「はいストーップ」ガバッ
さやか「なのさん背中にねじが付いてる!?」
ニコ「アイトァー……」
なの「わぁっ!?こ、これは違うんです!その、なんていうか、ロボ的なものではなくてですね!?」
はかせ「違うよ、なのははかせが作りました」
なの「なんで言っちゃうんですか!?と、とにかくなんでもないですから!行くよみかんさん!!」
コイルがなのに続いて入るや否や凄まじい勢いで扉を閉められ、それっきりだった。
残ったのは強烈なインパクトだけである。
まどさや「……」ポカーン
ニコ「さ、レッツジム戦だ」
さやか「なんなんですか今の!なんで背中にねじが――」
ニコ「はいはい、後で答えてあげるから。ジムはこっちだぞ」
ニコに後押しされ二人はやむなく研究所をあとにする。
しばらく歩いたところでさやかは改めてニコに問う。
さやか「で、なんなんですかあれ?新しいファッションですか?」
ニコ「そう思ってくれるとありがたいね」
まどか「なんか、はかせちゃんが作ったとか言ってましたけど」
ニコ「そう、なのちゃんはロボットだよ」
さやか「……マジですか?」
ニコ「大マジだよ。君達ウィッチ団のサーカスを知ってるかい?」
まどか「ウィッチ団ですか?チケットは持ってるんですけど、ショーはまだ見たことないんです」
ニコ「あのショーには数体、彼女が作ったロボットが使われてたことがあるんだよ。どうやら団員が怪我してしまったらしくてね
急遽団員の代わりに動くロボットを頼まれたんだ。その動きは本物とほぼ遜色なかったらしいし」
さやか「サーカスっていったらきっと目茶苦茶な動きするんですよね…なるほど、確かにロボットならできそうだ」
ニコ「要するになのちゃんがロボットでもなんら不思議ダネということはないわけだよ
ただ、なのちゃんは自分がロボットなの気にしてるみたいだからあまり言わないであげてほしいね」
まどか「そういうことなら……」
まどか(自律できるロボット……シズルちゃんの偽物みたいな感じなのかな)
一応ニコの話に納得した二人はこの街のジム、トキサダメジムへと案内された。
なぜか高校の横にあるものの、外観はやはりというべきか、この街に合わせた様にいたって普通のジムだ。
―トキサダメジム―
ニコ「じゃ、私は先に行って待ってるぞ。ジムトレーナーを倒したら一対一で正々堂々」
まどさや「はい!!」
案内人「元気かい?未来のチャンピオン!ここはトキサダメジム、通称『静かに燃える弾丸少女』、神那ニコさんのジムだ!
神那さんのエキスパートタイプ……それはずばり、炎タイプ!」
まどか「炎タイプ…カチっちはちょっと不利し作戦考えないと……」
さやか「あたしはミジュかでガンガン攻めあるのみ!」
案内人「気張っていこう!」
張り切って赴いたものの、ジム内にいたジムトレーナーはたった二人、ミニスカートだけだった。
みお「命を……燃やせーー!!!!」
まどか「負けないでチャモっち!"にどげり"!!」
麻衣「桃から出てきた二等兵」
さやか「ドユコト!?とにかくミジュか!"シェルブレード"!!」
接戦を繰り広げどうにか勝利した二人は、
みお「あれれれれれれれれれ???」
まどか「やったぁ!」
麻衣「燃えてるの一言に尽きるね」
さやか「ど、どうも……」
シンプルなジムに迷うこともなく、すぐにニコの元に辿り着いた。
ニコ「モーニン。感動の再会も済んだことだし諸君、本題に入ろうか…使用ポケモンは三体のシングルス」
まどか「分かりました」
ニコ「あなたと私、ポケモンバトルでみんな仲良く。眠りの際に教えてあげよう……我が名は神那ニコ」
ジムリーダーの 神那ニコが 勝負をしかけてきた!▽
http://www.youtube.com/watch?v=IjDQ4po2nDQ
ニコ「ダルマッカ」ボンッ ダルマッカ「パッパカパー!」
まどか「チャモっち!」ボンッ ワカシャモ「シャッ!」
ニコ「炎に炎をぶつけてくる……いいね、"かげぶんしん"」
まどか「落ち着いてチャモっち、よく見て!」
取り囲むように展開された分身に、ワカシャモはどの状態からでも反撃できるように精神を研ぎ澄ます。
すぐに背後から突進してきたダルマッカに、ワカシャモの強烈なカウンターの二度蹴りが撃ち込まれた。
ダルマッカはふらついたもののすぐに体制を立て直す。
ニコ「おー怖、ぎりぎりでんがな」
まどか「もう一回"にどげり"だよ!」
すかさずワカシャモの蹴りが再び炸裂し、ダルマなのに起き上がることはなく、戦闘不能になった。
ニコ「ありゃりゃ……選手交代」シュパン
ニコ「デルビル」ボンッ デルビル「バウ!」
まどか「"にどげり"!」
ニコ「"はじけるほのお"」
デルビルの口から炎弾が噴出される。
巧みな足技で蹴り飛ばそうとするも、足にヒットした瞬間に一気に弾けて火の粉が飛んだ。
まどか「わっ、こっちにまで!」
さやか「こっちにまで!!どんだけ弾けるんだよあの炎!」
ニコ「いいね、採れたてホヤホヤの炎の味だ。"はじけるほのお"」
まどか「こっちも"はじけるほのお"!」
リング中央で二つの炎弾が衝突し、またしても火の粉が弾ける。
ワカシャモが軽く火の粉を払ったのに対し、なんとデルビルはその火の粉を飲み込んでしまった。
ニコ「二回目だよ。そろそろかな…"はじけるほのお"」
まどか「こっちも負けないで!」
三度目の炎弾が射出される。
しかし今度は衝突しても弾けず、ワカシャモの炎弾を貫いてヒットした。
まどか「なんで!?さっきはおんなじ威力だったのに……図鑑で――あれ?」
デルビルの特徴を調べようとした矢先、ポケットに違和感を覚えた。
そういえば、あるはずのものがない。
まどか「そっか!はかせちゃんに図鑑貸したままだったんだ!」
さやか「あっ!それでニコさんやたらまどかに図鑑を貸すように迫ってたわけですね!!なんて策士だ!」
ニコ「敵を欺くにはまず味方……いや、挑戦者だったんだから最初から敵だったっけ」
まどか「そんな、どうすれば……」
ニコ「どうすれば?それはおかしいね、本来図鑑などないのが普通のトレーナーなんだけどね
図鑑に頼りっぱなしで知識を身につけて来なかったのかい」
まどか「っ……」
まどか(そうだよ、こんなのじゃ駄目だよ……あの子達に勝てるわけない……デルビルは自分で火の粉を飲み込んでた
確か炎を浴びたら強くなるのは……あっ!)
まどか「『もらいび』ですね」
ニコ「ご明答、でももう遅い。どんどん浴びせようデルビル、"はじけるほのお"」
まどか「こ、交代だよチャモっち!」シュゥゥン
まどか「ピピっちお願い!」ボンッ ピクシー「ピッピー!」
ニコ「見物だね、敢えて交代するなんて」
まどか(近付くと"はじけるほのお"狙われちゃう。でもチャモっちじゃ炎しか遠距離の攻撃がないから交代するしかない…!)
まどか「"うたう"だよ!」
出てきてすぐに、美しい音色が響く。
デルビルは今にも吐きだそうとしていた炎を、その口から出すこともなく眠りについてしまった。
まどか「"めざましビンタ"!」
眠りについたばかりのデルビルをピクシーが叩き起こす。
寝起きに強烈なビンタを喰らったことで、デルビルはノックダウンした。
ニコ「うーん、けっこう痛い…ねッ」シュゥゥン
さやか「いいぞーまどかー!このまま押し切っちゃえー!」
ニコ「マグカルゴ」ボンッ マグカルゴ「ジャゴー」
まどか「マグカルゴ……大丈夫、負けないよ。ピピっちもう一回"うたう"!」
ニコ「うーん、毎回眠らされる…ね」
まどか「"めざましビンタ"!」
全く同じ流れでマグカルゴにピクシーのビンタが炸裂する。
背中の殻がボロボロと崩れ出るほどの大ダメージを与えた!
――が、今回は少し様子がおかしい。
ピクシー「ピー!?」フゥーフゥー
まどか「ピピっちどうしたの!?火傷したの?」
ニコ「無暗に触れると火傷するよ。おかげで目が覚めたみたいだけどね、まだ"あくび"が出ちゃうよ」
さやか「そうか!ほむらのランプラーと同じ、『ほのおのからだ』だ!でも今ので結構体力削ったはず…!」
まどか「負けないでピピっち!もう一回"うた――」
ピクシー「ピィ……」zzZ
まどか「なっ、どうしたのピピっち!?なんで寝ちゃうの!?」
ニコ「策士策で溺死する……さっきの"あくび"が寝首をかくよ。今のうちに"じこさいせい"だ」
破れていたからもみるみる回復していき、完全復活を遂げた。
ニコ「ちなみにいい攻撃を貰ったから殻が崩れたと思ったのかもしれないけど、元々マグカルゴの殻は何かに触れるだけで割とすぐ崩れちゃうんだよね
さ、"いわなだれ"をプレゼントしてあげて」
無数の岩が眠りにつくピクシーに降り注ぎ、ピクシーはそのまま戦闘不能になってしまった。
まどか「ピピっちお疲れ様」シュパン
ニコ「あと一体だからって油断しない方がいい。バトルとはそういうものだぞ」
まどか(ニコさんの言う通り…諦めずに最後まで、持てる力を出し切る…!)
まどか「カチっち頑張って!」ボンッ マラカッチ「カララ~」
ニコ「む?草タイプなんて、自棄になったか」
まどか「いいえ、私の全力を尽くします!カチっち"タネマシンガン"!!」
マラカスのような音に合わせ、腕から無数の種が射出される。
それらは全弾マグカルゴにヒットした。
しかし、炎の体により高温のボディを持つマグカルゴにはほとんど効いておらず、接した瞬間種はことごとく燃えていく。
ニコ「草技はマグカルゴが『ほのおのからだ』であるかぎり燃え続けるよ」
まどか「ま、まだだよカチっち!タネを撃ち続けて!!」
両の腕から先程以上の数の種が射出されるも、やはりそれらはいとも簡単に燃えていってしまう。
ニコ「"はじけるほのお"」
タネの攻撃を打ち破り、大きな炎弾がマラカッチを貫き、そのまま戦闘不能となった。
まどか「カチっち……ありがとう」シュゥゥン
さやか「いくら相性があったとはいえ、一気に二体も倒すなんて……流石ジムリーダーの最後の一体ってとこだね」
ニコ「これで一対一の正々堂々に戻ってきたね」
まどか「チャモっち!」ボンッ ワカシャモ「ワシャッ」
ニコ「さて、どうやって切り抜けるのかい?」
まどか「"にどげり"だよ!」
ニコ「……やれやれ、一つ覚えだね。"いわなだれ"だ」
蹴りを放ったと同時に、ワカシャモに岩雪崩が襲いかかり岩に埋まってしまった。
ニコ「ちょうどいい、すぐに"じこさいせい"」
まどか「"こうそくいどう"!!」
ニコ「おぉ、神速だね」
素早く岩から脱出したワカシャモはすかさずマグカルゴに蹴りを撃ち込む。
しかしどんなに強烈なダメージを与えても、僅かに体力が残っていたならすぐに再生を繰り返してしまい、完全に倒しきることはできない。
まどか(だめ、もっと大きなダメージを与えないと……だったら、やっぱりあれしかないよね)
ニコ「さて、次の"いわなだれ"は先程は違う特別製だ。果たして耐えられるかな」
崩れ落ちる岩にマグカルゴが噴出した炎が纏われる。
弾ける炎などとは段違いの炎弾岩が雪崩となってワカシャモに降り注ぐ。
ニコ「この炎弾岩で試合終了だよ」
まどか「チャモっち一発だけだよ!フィニトラ!」
ニコ「む?」
雪崩を軽々とかわして距離を縮める。
負けじとマグカルゴも炎弾岩の弾数を増やし、ワカシャモは徐々に追い詰められていく。
ワカシャモ「シャモッ!?」ドガッ
ニコ「一発入った――」
まどか「フレティア!」
ワカシャモ「――ッシャーッ!!」
先程までのスピードを悠々と超えて、一瞬でマグカルゴに到達する。
しかしマグカルゴもそのための対策はしてある。
起死回生の一撃と、零距離からの炎弾岩、二つが互いにヒットして両者吹き飛ばされてしまった。
ニコ「驚いたよ、あんなに素早く移動できるなんて……あの一瞬で攻撃するために力を蓄えていたわけだね
しかし、備えていた私の勝ちのようだね」
まどか「チャモっち!まだ立てる!?」
ニコ「無理のムリムリだよ。君は体力を減らされる一方だったけど、私はずっと回復してきてたからね
ワカシャモは戦闘不能でマグカルゴはまだ――」
ワカシャモ「……シャ…モ…!」ググッ マグカルゴ「……」キュゥ~
ニコ「……マジ?」
さやか「おぉー!やったまどか!!勝ってるよ!」
まどか「チャモっちが回復できずにマグカルゴは回復し続けてた……それは違いますよニコさん
チャモっちはずっと回復してましたよ」
ニコ「そんな……む、これは、"やどりぎのタネ"?……へぇ、そういうことかい」
さやか「何何?まどかどうやって勝てたの?」
まどか「カチっちは最初"タネマシンガン"撃ったよね?一回目は確かに"タネマシンガン"だったけど、二回目は私『タネを撃ち続けて』って言ったの」
ニコ「てっきり"タネマシンガン"ばかりかと思ってたけど、どうやらその中に"やどりぎのタネ"と"なやみのタネ"を織り交ぜていたようだね
"なやみのタネ"で特性が『ふみん』に変わってしまったマグカルゴは『ほのおのからだ』じゃなくなった……
だから"やどりぎのタネ"を燃やすことができなかったわけか」
さやか「あぁ!それでチャモっちは最後攻撃受けても回復して立ち上がれたんだね!」
まどか「"なやみのタネ"も燃えたらどうしようとか、ニコさんがいつ"やどりぎのタネ"の存在に気付くか不安だったんですけど、うまくいったみたいです」
ニコ「参った参った……よしまどか、このロッソバッジをあげよう」
まどかは ロッソバッジを手に入れた!
さやか「おめでとまどか!図鑑なくてもなんとかなるじゃん!」
まどか「ティヒヒ、でもニコさんの言うとおりこれが普通なんだよね…私ももっと勉強しなきゃ!」
ニコ「さて、次はさやかだったね。早速準備をしよう」
さやか「え、連戦ですか?回復とかは大丈夫なんですか?」
ニコ「心配しなくても他のポケモンを使うよ。作戦がバレたまま戦うのは怖いからね
なんなら図鑑を使ってくれてもいいよ」ニコリ
さやか「うっ…なんかヤな予感……」
そうしてさやかの試合が始まった。
さやかの予感は的中し、水タイプのはずのフタチマルだけでは勝つのが困難なほどにニコは攻めてきた。
図鑑など全く意味などないほどの、強行突破を図ってきたのだ。
一旦引いてリオルとナックラーで体勢を立て直し、二匹の犠牲の末どうにかフタチマルでとどめを刺すことができ、なんとか勝利を収めた。
さやか「っしゃー!ナイスミジュか!!」
ニコ「うーむ、"にほんばれ"で水技を弱体化させたまではよかったはずなんだけど……一匹ならなんとかなったかもしれないが、三位一体はもっと強いってことだね
さやか、君にもロッソバッジだ」
さやか「ありがとうございます!」
まどか「おめでとうさやかちゃん!これで一足先に四つ目だね」
さやか「おう!まどかには悪いけどさやかちゃんは素直な人間なのだよ」
さやかはロッソバッジを 手に入れた!
さやかのバッジケースに四つ目の輝きが灯った。
ニコ「さてと、この辺でお開きにしようか。みお、麻衣、後片付け……って、もういない」
まどか「お昼ごはん買ってくるって言ってさっき出掛けましたよ?」
ニコ「……ま、そういう日もあるよね」
さやか「じゃあニコさん!早速ですが、一体何が振る舞われるんですかね!」
まどか「もう、さやかちゃん焦っちゃ駄目だよ」
ニコ「…?」
さやか「…?」
ニコ「……あぁ、あれか。グンマーの伝統、ジムリーダーが挑戦者に振る舞うという曰く付きの」
さやか「そうそれです!正直お腹ぺこぺこです!」
ニコ「……いや、期待して貰って言いにくいんだけど、私料理は苦手なんだよね」
さやか「えっ」
ニコ「だから昼食は自分達で用意してくれないとこっちも、ね…?」
さやか「カザミノで話を聞いてワクワクしてたのに…ニビで肩透かしを食らって……楽しみにしてたここでもまさかの裏切りですか……」
まどか「さ、さやかちゃん一緒にどこか食べに行こう!ニコさんに美味しいお店教えて貰ってさ!ね?」
ニコ「そうそう、大工バーガーにフカマルカステラ、中之条大福、あとはてんぷらアイス……」
さやか「てんぷらアイス!?なんですかそのインビな響きは!?」
まどか「落ち着いてさやかちゃん、言ってる意味が分からないよ!」
ニコ「まあ、そのまんまだよ、アイスのてんぷら。外は熱々中はひんやり、あちゃ冷たいが同時に来るからおいしい、ってね」
さやか「それにしようまどか!それが買えるお店教えて下さい!」
ニコ「いいよ。じゃあ一緒に行こうか」
ジムを後にした三人は、ニコ行きつけのてんぷらアイスを買いに向かった。
小さな屋台には行列ができており、買うのに結構な時間待たされることになった。
ようやく口にしたその味は格別である。
さやか「ん~~~!!!美味い!!熱いと冷たいのハーモニーっつーんですかぁ!?例えるならウッちゃんに対するナンちゃんッ!サイモンに対するガーファングルッ!!
とにかく美味いっす!」
まどか「とろけるね!ありがとうございます、奢ってもらっちゃって」
ニコ「あはは、まあジムリーダーの宿命だしね。うん……」
ニコ(……財布がからっけつ)
まどか「そうだ、はかせちゃんに図鑑貸したままだったから取りにいかなきゃ」
ニコ「私も面白そうだからついていこう。しかし、どんな風になってるか楽しみだ」
さやか「?」
―神那&東雲研究所―
なの「はーい…あ、ニコさん!それと挑戦者のお二人も。どうでしたか?」
さやか「バッチリ勝たせて頂きました!」
なの「わぁ~!おめでとうございます!今お昼ご飯作ってるんで、良かったら一緒に食べていきませんか?」
さやか「本当ですか!?是非お願いします!」
なの「いえいえ、いつも作ってますから」
まどか「……いつも?」
ニコ「……テヘペロ」
さやか「なのさんの料理が挑戦者への振る舞いってことですか……」
部屋に戻るとはかせは絵本を読んでいる最中、ブラッキーはまだ昼寝をしていた。
はかせ「ニコおかえりー」
ニコ「やあはかせ、図鑑はどうだった?」
はかせ「かわいくなったよー!」
まどか「可愛くって?」
はかせ「はい、ちょっと持ってて」テテテ
まどかに図鑑を手渡し、はかせはどこからかスイッチを持ってくる。
箱の上にボタン一つがついただけのシンプルなものだ。
はかせ「なんと変身します」
まどか「え、変身って――」
はかせ「じゃあいくよー!発射ーピコー!」ポチッ
ガショーンガショーン ブォーン
図鑑から腕が生え足が生え、その形を変えていき、さながらヒードランのようなフォルムに変形した。
カションカションと足音を立てて歩行している。
まどか「えぇぇええぇぇぇぇ!?!?!?」
さやか「なんてこった!いきなりなんてこった!!」
はかせ「ね、かわいいでしょ?」
まどか「なんで勝手に改造しちゃうの!?これすっごく大事なものなんだよ!?」
はかせ「大丈夫です。はかせなら機能そのままにしておくなんて簡単なんだけど」
まどか「そのままって……あ、ほんとだちゃんと動く」ピッ
さやか「いや、でもなんていうかこの見た目……ちょっとキモクない?」
はかせ「かわいいよ!」
ニコ「ところではかせ、見た目以外の改造は如何ほどに?」
はかせ「さすがニコ良いこと言った。なんと新しい機能を付けました。なんとポケ―タイと連動して図鑑の場所が分かるのです」
さやか「ドユコト?」
ニコ「まどか、ちょっポケ―タイ見せてもらえる?」
まどか「はい」
ニコが受け取ると、はかせに聞きながらてきぱきと図鑑とポケ―タイを操作していく。
全て終わったのかまどかに二つとも返して、ニコは説明を始める。
ニコ「簡単に言ってしまえばGPSのようなものを図鑑につけて、ポケ―タイに自作アプリを入れて拾えるようにしたわけだね」
まどか「アプリってこれですか……地図の上で点滅してるここが今図鑑があるとこですね」
さやか「何これスゴイ!これがあったらこないだみたいに取られた時でもすぐに分かるね!はかせちゃんやるぅ!!」
はかせ「えへへ、はかせは凄いのです」
さやか「あたしのにも付けれる?」
はかせ「当然です」
さやか「じゃあお願いしてもいいかな?ただし変形するのは無しで」
まどか「あ、私のもできれば元に戻してほしいかなあって……」
はかせ「えぇーつまんない……」
ニコ「まあまあはかせは十分凄いんだから。元に戻すのも簡単でしょ?」
はかせ「他にもロケットパンチできるのに」
まどか「絶対元に戻してください」
なの「お昼ごはんできましたよ。今日はオムライスですよはかせ」
さやか「おっ、待ってました!」
はかせ「やった!」
ニコ「さあてランチタイムだね」
まどか「絶対元に戻してよ?絶対だよ?」
東雲家で昼食を済ませた二人は、はかせに図鑑改良をお願いしたところ完成は夕方とのことなので街をぶらつきに出掛けた。
出発は明日にすることにして街を散策した後、再び研究所に戻ってきた。
はかせ「はい。完璧なんだけど」
ニコ「使い方は知っての通りだよ」
まどか「ありがとうはかせちゃん」
さやか「これで無くしても安心だね!」
ニコ「他にもプラスアルファしてあるから適当に探してみてね」ニコッ
まどか「えっ」
はかせ「プププ、それは後のお楽しみなんだけど」
さやか「えっ」
ニコ「さぁて私も自分家に帰るとしようかな」
まどか「なんですか?何かあるんですか!?っていうかニコさんの家ここじゃなかったんですか!?」
さやか「ちょっ、勝手に変形したりしないよね!?」
ニコ「お邪魔しましたー」
はかせ「ばいばーーい!!!」
まどさや「聞いてます!?」
結局二人はあの機能の他にどういうものが付与されたのか分からないまま、ポケモンセンターに帰ることになった。
部屋で色々とボタンを押してみることにしたが、
まどか「同時押しとか」ピピッ
さやか「押す順番とか」ピッピッ
やはり分からなかったのでモヤモヤを残したまま、二人は眠りについた。
ニコ「さーていつ気付くかな~……」
497 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/04/30(月) 21:40:55.57 yFg0wPwY0 406/548トキサダメ編終わり
実にスピーディだ
らんらん(ランプラー→シャンデラ)『ほのおのからだ』♀
紫だし弾ける炎とかほむらっぽいなあと
性格は控えめ、特に描写はないけどおっちょこちょいだったりする
シャンデラの図鑑説明のおかげで催眠術っぽいことができる凄い奴
500 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/05/01(火) 00:08:22.04 1uBE5ews0 407/548そういえばジム戦が久々すぎてジム戦用の技書いてなかったな…まあなくてもいいんだけど一応
ピクシー(歌う、目覚ましビンタ、おうふくビンタ、光の壁)
ワカシャモ(高速移動、起死回生、二度蹴り、弾ける炎)
マラカッチ(飛び跳ねる、タネマシンガン、悩みの種、やどりぎのタネ)
フタチマル(シェルブレード、水の波動、燕返し、きあいだめ)
リオル(はっけい、スカイアッパー、嫌な音、噛みつく)
ナックラー(砂地獄、騙し打ち、かいりき、穴を掘る)
ダルマッカ(炎のパンチ、影分身、ころがる、突進)
デルビル(雷の牙、弾ける炎、イカサマ、遠吠え)
マグカルゴ(自己再生、弾ける炎、岩雪崩、欠伸)
弾ける炎のバーゲンセールだな
502 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/05/07(月) 21:21:01.22 VUPNLxML0 408/548大会終わっちゃたけど、個体値なんて関係ないとある程度は証明できた気がしないでもない
ぐるぐる(ウォーグル)『ゆうかん』♂
ほむらって銃にデザートイーグル使ってたなあ→イーグル→ウォーグル
理由って大体こんなんばっかり
性格は勇猛果敢、つまり勇敢
とても几帳面で細かい作業は割と得意
なぜかゴッドバードにかまいたちを使いこなす凄い奴
~十日目~
この日も早めに起きた二人は、次の街を目指すことにした。
まどか「次はえっと…北西のタカサキシティだね」
さやか「うん。しっかし結局図鑑の何が変わったのか分かんなかったし、この胸の内に渦巻く気持ち悪さはどうしようか……」
まどか「確かに……でもはかせちゃん凄いよね、初めて見た図鑑でも簡単に改造できるなんて」
さやか「流石ロボットを作ってるだけあるね……一体何者なんだか」
まどか「まあ、いつか分かるかな?」
トキサダメシティを出発して道中を進んでいく。
当然出てくるポケモンの中にいる図鑑未登録のポケモン達は捕まえていく。
その道中――
男「助けてー!」
女「誰か―!」
胞子をまき散らす大量のパラス達に追われるラブラブカップルを見つけた。
まどか「た、大変!助けなきゃ!カチっち"ミサイルばり"!!」
さやか「ミジュか"みずのはどう"!!」
二匹の活躍によりパラス達はすっかり大人しくなって、一か所に寄り集まった。
それでも警戒は解こうとせず、隙あらば胞子をばら撒こうとしている。
まどか「なんでパラスが……もしかして」
さやか「あいつらが逃がしたパラスかも……」
あいつら――すなわち、シズルの属する『Wの組織』を思い浮かべる。
マリ「ありがとうございます!私マリです」
シンゴ「俺シンゴ!君達強いね、マジありがとう!」
さやか「危ない所でしたね……しかしこのパラス達なんで襲いかかってきたんでしょうね?」
まどか「あれ……なんだろう、このパラス達何かを守ってるみたいな……」
シンゴ「そうそう、これは俺達が悪かったんで」
マリ「あそこに木の実畑があるでしょ?あの木の実獲ろうとしたら襲われちゃって」
マリが指差した木の実畑は、パラス達が背を向けた先にあった。
彼らが守っていたのはこの畑だったのだ。
まどか「あ、よく見たら柵が作られてるんですね」
シンゴ「気付かずに獲ろうとした俺らのせいなんだよ」
マリ「もう、シンちゃんがちゃんと見ないからぁ」イチャイチャ
シンゴ「マリッぺだって気付かなかったじゃんかぁ」イチャコラ
さやか「……あの、もういいっすかね」
まどか「柵があるってことは誰かの畑なのかな?」
???「こらお前ら、うちの木の実畑で何やってんだ」
トロピウスに乗って四人の前に空から現れたのは、一人の青年だった。
いかにもというシェフの様なエプロンを身につけ、清潔感ある身だしなみをしている。
『さわやか』、という言葉がよく似合う。
さやか「あなたがこの木の実畑作ってるんですか?」
???「いかにも、そこは俺の畑だ。いろんな輩が木の実を盗っていくからパラス達に守らせてたんだが……
俺のパラス達を倒すとはなかなかやるみたいだな」
シンゴ「あの、すいません。俺らのせいで」
???「なんも盗らなかったんならそれでいいさ。この木の実使った料理が食べたいんなら是非うちに来てくれ」スッ
まどか「名刺?」
マリ「あっ!実は私たちこれからそのお店に行こうと思ってたんだです!っていうかあなたがこのお店のシェフの立花宗一郎さんですか!?」
宗一郎「そうだよ。俺の店に来てくれるってんなら仕込みが終わったらにしてくれな」
まどか「お店やってるんですか?」
宗一郎「ああ、この先のタカサキシティにある『レパ・マチュカ』ってカフェだから君達も来てくれ。それにお前達、ポケモントレーナーだな?」
さやか「そうですけど、よく分かりましたね」
宗一郎「これでもタカサキシティのジムリーダーだからなあ。当然分かる」
まどか「ジムリーダーなんですか!?でもさっきシェフって……」
宗一郎「両立くらいできるさ。ジムバッジ集めてるんなら、当然寄ってくるんだろ?」
さやか「ということはあれですよね!勝利した後の料理には期待してもいいんですよね!?」
宗一郎「勝てたらな……勝者限定の特別メニューだ」
さやか「うぉー!!俄然燃えてきたー!!!」
シンゴ「あの、俺らは普通に食べてもいいんですよね?」
宗一郎「いや駄目」
マリ「なんでですか!?」
宗一郎「人の物盗ろうとした罰だ。収穫を手伝ってくれたら少し安くしてやるから手伝って貰おうか」
マリシンゴ「……はぁい」
宗一郎「あ、お前らが普通に食べる分には問題ないからな?ただ、今日は色々忙しいから、挑戦するなら明日の朝、開店前にしてくれないか?」
まどか「はい!今日のお昼か晩御飯に是非寄らせて貰いますね」
さやか「あたしら先に行ってますね」
宗一郎「あぁ、店で待ってる」
マリ「シンちゃんこれ何の木の実?」
シンゴ「これはえっと……」
宗一郎「それはナナの実と言ってな――」
収穫作業を始めた三人とトロピウスを背に、二人は歩き出した。
タカサキまでの話題は必然、ジムリーダーという立花宗一郎の話になる。
さやか「あの人が次のジムリーダーか……ちょっとカッコよかったね」
まどか「上条君とどっちが?」
さやか「そりゃあやっぱり恭介が――って何言わすのよもうっ!!」
まどか「ティヒヒ、素直じゃないなあ」
さやか「と、とにかく!あの人の使うポケモンは草タイプだろうね!間違いないよ!!」
まどか「トロピウスにパラスだもんね…さやかちゃんはちょっと不利かな?」
さやか「うーむ、何か対策を考えねば……」
まどか「でも楽しみだよね」
さやか「おう!今日のお昼はあの人のお店…なんてったっけ?」
まどか「『レパ・マチュカ』って言ってたね。他の街からも食べに来る人がいるってことは、結構有名みたいだね」
さやか「そうそれ!そこで食べよう!」
まどか「なんかお腹空いてきたかも……早く行かなきゃね」
さやか「あっ、上見て上」
まどか「立花さんだ!」
上空を手を振っている宗一郎が乗ったトロピウスが過ぎっていった。
二人も手を振り返し、先を急ぐ。
足取りは軽く、ポケモンゲットも道中のトレーナーとのポケモンバトルも楽々終わらせ、タカサキシティを目指した。
508 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/05/07(月) 21:47:01.69 VUPNLxML0 414/548立花さんって誰やねん?って人はかずみを読もう
ぎあぎあ(ギアル→ギギアル→ギギギアル)『プラス』
ほむスピナー?のイメージから
性格は照れ屋、名前呼んで欲しいけど積極的になれなかったりちびギアがいないとおろおろしたり
自分が歯車でうるさいからか、物音には敏感
なぜか電撃波やテレポートが使える凄い奴
NNの件は許してソーナンス
次は明日か明後日にでも
513 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/05/09(水) 20:06:38.04 ZVVhvLhM0 415/548ようやくマラカッチの紹介を
カチっち(マラカッチ)『ようりょくそ』♀
まどっち→まどかっち→マラカッチ
例によって駄洒落
性格は能天気、でもサボテン食うかい?とか言われるとツーンとする辺りちょっと怒りっぽい
晴れパでキョウコン(キュウコン)と組ませると楽しいぞ
―タカサキシティ―
ミタキハラ、マエバシと並ぶ、グンマー地方三大シティに数えられる巨大都市の一つである。
グンマーの端に位置しているものの、その賑わいは他の街に引けを取らない。
様々なレジャー施設、遊園地、有名レストランなどが存在しており、遠い街からも多くの人が訪れるほどである。
さやか「ってなわけで着きましたよ!タカサキシティ!」
まどか「やっぱり賑やかだねえ。時間的にもちょうどいいし、ポケモンセンター言った後でお店探してみよっか?」
さやか「もうお腹ペコペコペコリンですわ…結構有名っぽいし検索したら出てくるかな!」
ポケモン達を回復させた後、ポケ―タイで検索したところすぐにヒットした。
場所もポケモンセンターからそれほど遠くはないようで、住所を頼りに歩いたところこれまたすぐに見つかった。
見つかったのだが……
さやか「うわー何これ……」
まどか「すっごい行列……」
レパ・マチュカの前にはイワークのような長蛇の列が続いていた。
さやか「そりゃそうか、有名ってことはこの時間なら当然こうなるよね」トホホ
まどか「でも並ぶよね?」
さやか「当たり前だのクラッカー!」
並ぶこと三十分、まだ初夏といえど照りつける日差しの元、オーバーヒート状態になりつつもようやく店に入ることができた。
ここはどうやらポケモン用のフードも置いてあるらしく、店内はまだまだ多くの人とポケモン達でごった返している。
さやか「長かった……今なら極渋のシーヤの実でも食べられそう……」グゥー
ウェイター「いらっしゃいませ。二名様ですね、どうぞこちらへ」
なんとか椅子に座れた二人はメニューからポケモン達の分も適当にチョイスし、その時を待つ。
少しずつ人も捌けてきて静かになってきた頃、宗一郎が料理を運んできた。
宗一郎「お待たせ、ビーフストロガノフ二つ。来てくれたのか」
さやか「どうもっス!」
まどか「わぁ美味しそう!」
さやか「いただきます!」
宗一郎「さっきも言ったがバトルは明日な。六時くらいに来てくれると助かる」
さやか「早っ!!いえ行かせて頂きますんで!ってかこれ美味いですね!?」
宗一郎「落ち着いて食べろ」
まどか「わっ、ホントに美味しいですね」
宗一郎「ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいね…そういや名前は?」
まどか「鹿目まどかと美樹さやかちゃんです」
さやか「ふぇーす」モグモグ
宗一郎「了解、覚えとくよ……あと口に物入れて喋んな」
???「やっほーまた来てやったよ宗一郎!」
宗一郎「よう、アイリにユウリじゃねーか!じゃ、お前らまた後でな」
まどさや「はーい」
ユウリ「久々だね!」
アイリ「どうも」
入店してきたのは二人の少女だった。
前を歩く元気なツインテールの少女と少し控えめそうなショートカットの少女、どちらも鮮やかな金色の髪をしている。
宗一郎とは親しいのか、かなりフランクに接している様に見える。
ユウリ「空いてるようじゃん、座らせてもらうよ」
宗一郎「注文は?」
アイリ「いつもので」
宗一郎「はいよ」
宗一郎がキッチンに戻っていくのを余所に、まどか達は料理をゆっくりと味わっていく。
まどかが食べ終わったちょうどその頃、アイリとユウリに料理が運ばれてきた。
宗一郎「ほらよいつものだ」
ユウリ「わお!相変わらずうまそう!!」
アイリ「ん……うん、美味しいね。ユウリも次の料理コンテストでこれくらいの作らないとね」
ユウリ「分かってる!打倒秋山さんだもんね!」
宗一郎「頑張れよ……そうだ、お前らにもついでに紹介しとこうか。どうせいつか会うことになるしな」
ユウリ「何が?」
宗一郎「おいお前ら」
まどか「はい?」
さやか「なんでふか~?」モグモグ
宗一郎「挨拶しとけよ、将来バトルすることになるだろうからな」
まどか「?それってどういう……」
宗一郎「こいつらもジムリーダーだ」
まどか「そうなんですか!?」ガタッ
まどかがユウリ達の元に駆け寄り、後を追いかけるようにさやかも口の中を空にしてから立ち上がる。
ユウリ「なになに?あんたらひょっとしてポケモントレーナー?」
アイリ「ジムに挑戦してるんだね」
さやか「そうですよ」
まどか「えっと、どちらの方がジムリーダーなんですか?」
ユウリ「なるほどね……このユウリ様のことが気になるご様子で」
アイリ「ちょっと私のこと忘れないでよ!私達は二人で一人なんだから!」
まどか「二人で…?」
ユウリ「ようするに!ダブルバトル専門のジムリーダー!それがこのあたし飛鳥ユウリ!!」
アイリ「同じく杏里アイリ、私達二人でトネシティのジムリーダーやってるの」
さやか「二人で一人ってそういうことですか」
宗一郎「今のうちに分かって良かったな。どいつもダブル慣れせずにこいつらんとこ行くから負けまくってな、最近はあんまり人来ないんだとよ」
ユウリ「ひっでー!アタシらは普通にジムリーダーとしてやるべきことをやってるだけなのに」
アイリ「まあまあ、その暇な分料理の時間に費やせるんだからいいじゃん」
ユウリ「フッ、おかげでかなり上達したよ」
アイリ「そういえば二人の名前聞いてなかったね」
まどか「鹿目まどかと」
さやか「美樹さやか!」
ユウリ「いいよ!トネシティで待ってっからね!!いつでもカモン!」
宗一郎「すまんな、食べてる最中に呼んじまって」
まどか「いえ、こちらこそごめんなさい。これから食べる時に」
アイリ「いいのいいの、冷めても美味しいのが立花さん料理のいい所だから」
ユウリ「いやいやアタシのは良くない!じゃ、改めていっただきます!!」
まどか「私達はそろそろ出る?」
さやか「ちょっ待って!あたしのまだ最後の一口残ってるから!!」
その後さやかの食事が終わったところで二人は店を出た。
予定は特に決めていなかったが、さやかの案によってジム戦に向けて特訓をすることにした。
この街にはバトル用の施設も多く、トレーナー達が集まってはバトルに明け暮れる広場や建物もある。
二人があえて選んだのは、草タイプ対策ということで、特に関係はないが緑豊かな自然公園だ。
―タカサキ自然公園―
まどか「ここなら思いっきり練習できるね」
さやか「おう!なんせあの料理めちゃんこおいしかったからね!こりゃもう特別メニューに期待しないわけにはいかないでしょ!
ってなわけで何が何でも勝ちたいんだけど、うちのメンバーじゃ草タイプは結構厳しいんだよね……」
まどか「だから特訓しようってことだね」
さやか「イエスざっつらい!幸いにもミジュかは"つばめがえし"が使えるから、技の精度とか威力とかもっと上げればなんとかなるかもしれない!」
まどか「じゃあ私のカチっちと練習しよっか。草タイプと練習した方が効率いいもんね」ボンッ
さやか「作戦としてはリオすけはいつも通りで、フラすけはどうしようかな……とりあえず、一矢報いる!」
ナックラー「……」ジトッ
さやか「……わ、分かってるって、ちゃんと考えとくから!」
まどか「チャモっちはリオすけと組み手お願いね」
さやか「とにかく特訓開始!」
こうしてまずはフタチマルの燕返しの精度を高めていく。
より鋭くより速く、攻撃される前に攻撃するつもりでホタチを降る。
そうしていつしか、フタチマルは目にも止まらぬ素早い一撃を繰り出すことができるようになった。
さやか「ふぅ~、かなり良くなったんじゃないかな?」
まどか「疲れたね……ちょっと休憩しよっか?」
さやか「だぁねぇ。ちょっとジュース買ってくるね」
まどか「私も行くよ。えっと、お財布は……」ゴソゴソ
ゴロッ
まどか「わぁっとっと!」バッ
岩の上に置いておいた鞄から、危うくタマゴが転がり落ちそうになり、すかさずキャッチする。
まどかのとっさの行動により、地面すれすれでどうにか止まった――
まどか「セ~~フ!!」
かに見えた。
さやか「あ…アウトだよ!!ヒビ入ってるってばっ!!!」
まどか「えぇっ!?」
タマゴの上部には、確かに今までなかった割れ目がくっきりと付いていた。
さやか「……」
まどか「……」
さやか「……あの、まどか…?」
まどか「あっ」
さやか「な、何?」
まどか「今動いたよ」
さやか「えっ!?」
突然タマゴがまどかの手から飛び上がった。
くるくる回りながら落ちてきたかと思うと、手が、足がタマゴから生え、それは地面に綺麗に着地する。
そして、頭部の殻が少しずつ割れてそのポケモンの正体が遂に明らかになった。
トゲピー「チョッゲプリィィ」
まどか「やったぁー!タマゴが孵ったよ!!」
さやか「トゲピーだ!」
まどか「トゲっち私がまどかだよ、分かる?」
トゲピー「トゲ?」キョトン
まどか「ティヒヒ、まだ分かんないかな?おいでトゲっち」
さやか「もう名前決めてたのか……全く割れたと思ったら産まれたっていうんだもん、びっくりしたよ」
まどか「えへへ、ずっと内緒にしてたけどこの子がママから貰ったタマゴのポケモンなの」
まどか「というわけで!新しい仲間のトゲっちだよ!」
\ワーワー/ \オーオー/
さやか「はいはい静かに!新しい仲間の歓迎は大いに結構……BUTだがしかし!我々にはすべきことがあるのではないであろうか!?」
まどか「よしよ~し今ジュース買ってきてあげるからね~」ナデナデ
さやか「……まどかさん」
まどか「なに?」
さやか「なにじゃない!!ジュース飲んだらすぐに特訓開始だかんね!」
まどか「えぇ~、もうちょっとゆっくり――」
さやか「そんな暇はない!あたしがダッシュで買ってきてあげるから首を洗って待っていなさい!!」ダッ
まどか「あっ…もう行っちゃった……そうだよね、浮かれてらんないよね!」
トゲピー「…?」キョトン
まどか「でもやっぱり可愛いよね~」スリスリ
ワカシャモ達「……」ジー
まどか「……さ、さやかちゃんが帰ってくるまでだから!ちゃんとやるもん!」
さやか「お待たせええーーー!」ズザー
まどか「早いよ!!」
さやか「ぜぇー…ぜぇー……は、はい、ミックスジュースね……」
まどか「あ、ありがとう……」
さやか「さあ特訓再開じゃー!」
まどか「もう!?」
全員ジュースを一気飲みして特訓再開。
マラカッチとフタチマルがまどか達の指示で撃ち合い、ワカシャモとリオルは組み手、ピクシーはなぜかナックラーに追われている。
そんな様子をトゲピーはしげしげと見つめながら、けらけらと笑っていた。
そして時は過ぎて夕方、ここでもう一つの嬉しい変化が訪れた。
さやか「ふぅー、だいぶ暗くなってきたしそろそろこの辺で帰ろっか」
まどか「だね……あれ、チャモっち…?」
さやか「ミジュか…?」
ワカシャモ「…!!」ブルブル メキメキ フタチマル「……」ブルブル メキメキ
まどさや「し、進化だ!!」
バシャーモ「バシャッ!」 ダイケンキ「ダーイ!」
まどか「チャモっちがバシャーモに!」
さやか「ミジュかがダイケンキに!」
まどさや「やったぁーー!!」
さやか「勝てる…勝てるよミジュか!!これで草タイプもドンとこいだ!」
まどか「今日はいいことばっかりだね!美味しい料理は食べられたしトゲっちは産まれるしチャモっちは進化するし」
さやか「これで明日勝てれば文句なし!」
まどか「そうだ図鑑登録しとかなきゃ」ピッ
さやか「どれどれ……へぇ、それってもうホタチじゃなくってアシガタナっていうんだ…ちょっと振ってみて」
ダイケンキ「ッ!」ブンッ
さやか「おぉ速い!これなら"つばめがえし"も問題なさそうだね!剣風まで吹かせるなんて凄いよ!!」
まどか「チャモっちも逞しくなったね!カッコいいよ!」
バシャーモ「シャモ!」
さやか「……ねえねえ、もうちょっと特訓してっていいかな?」
まどか「え、だってもう夜だよ?」
さやか「うーん……でもさ、進化したばっかりで体も大きくなったわけだし、一応慣れとかないと大変かなって」
まどか「そう言われるとそうかも……」
さやか「先に帰ってていいからさ。あたしはミジュかが慣れるまでやってくよ」
まどか「さやかちゃんがやるんなら私も付き合うよ!一緒に頑張ろう!」
さやか「まどか……ありがとう!それでこそあたしの夫になる女!!」
こうして二人はさらに一時間ほど特訓を再開。
バシャーモは新しい蹴り技を習得し、ダイケンキは燕返しの修練を積み、居合の速度を上昇させた。
この居合こそ、後のジム戦での切り札となることに、さやかをはじめまだ誰も気付いていなかった。
公園に来た時よりもさらに賑やかになったまどか達は、明日の勝利を夢見てポケモンセンターへと帰っていった。
見るもの全てが新鮮なトゲピーは終始はしゃぎまわっていたが、しかしまどかは一緒になって笑った。
新しい命が産まれることは、こんなにも嬉しいものなのだと。
きっとこれが、正しいあり方なのだと……
そして日が暮れて、また昇っていく。
アイリとユウリって誰?って人はかずみをry
進化したしタマゴも生まれたしいいこと尽くめ
トゲっち(トゲピー)『てんのめぐみ』♀
アチャモと同じく女神まどかの「翼」っぽいイメージから
性格は次の更新で言うけどいろいろと無邪気、目に映る全てに興味津々で好奇心が強い
これからの活躍に期待
一応五人分終わったし次は仁美とかかな
525 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/05/10(木) 21:45:52.37 TEoAA5lr0 427/548ジム戦はっじまーるよー
5人以外は性格とか決めてたり決めてなかったりだから適当に
フィア(イーブイ→リーフィア)『リーフガード』♀
仁美の相棒
一部ではワカメと言われてるらしいからその繋がりで
性格はせっかちで血の気が多い
レイド(ラルトス→キルリア→エルレイド)『ふくつのこころ』♂
仁美の用心棒
緑だしなんか用心棒っぽいイメージがあったので
性格は真面目で力が自慢
~十一日目~―タカサキジム―
さやか「こんな朝早くにジム戦だなんて、よっぽど忙しいんだね」
まどか「眠い……けど頑張ろうね!」
宗一郎「お、来たか」
まどか「おはようございます」
宗一郎「他のジムと同じくジム内のトレーナーを倒してから来いよ。ルールとかは案内人に聞いてくれ
じゃ、先に行って待ってるから」
さやか「ふっふっふ、今のうちに特別メニューとやらの支度をしておいた方がいいですよ」
宗一郎「……そうだな、期待してるよ」スタスタ
案内人「元気かい?未来のチャンピオン!ここはタカサキジムだぁ!立花さんはカフェレストラン『レパ・マチュカ』のシェフにして我らがジムリーダー!!
皆からは『緑のクールシェフ』と呼ばれる草タイプの使い手だぁ!気張っていこう!」
さやか「やっぱり草タイプか……いくよまどか!みんな!」
まどか「トゲっちもちょっと頑張ってみる?」
トゲピー「ピッ!」
まどか「もう、無邪気に喜んじゃって……可愛いなぁもう!」
中で待ち受けていたのは、前日店で働いていたウェイターやウェイトレス達だった。
ウェイター「ロゼリア"マジカルリーフ"!」
さやか「ミジュか"つばめがえし"!!」
ジムトレーナー戦を順調に勝ち進み、
ウェイトレス「モンジャラ"からみつく"!」
まどか「トゲっち"ゆびをふる"だよ!」
宗一郎の元へ辿り着いた。
宗一郎「いらっしゃい。昨日はうちの料理を堪能してくれたようでなによりだ」
さやか「どういたしまして…あたしからでいい?」
まどか「うん、昨日から楽しみにしてたもんね」
さやか「あたしからやります!使用ポケモン三体のシングルスでお願いします」
宗一郎「あぁ。シェフとしてもジムリーダーとしても俺はまだまだ一流とはいえないかもしれないが、全力で相手になろう!
立花宗一郎、いざ参る」
ジムリーダーの 立花宗一郎が 勝負をしかけてきた!▽
http://www.youtube.com/watch?v=mlRVNT6KGY0&feature=related
さやか「リオすけゴー!」ボンッ リオル「ルー!」
宗一郎「チェリンボ!」ボンッ チェリンボ「チェリー」
まどか「サクランボみたいなポケモンだ……そういえば朝ごはんまだだからお腹空いたなぁ」
さやか「ちっちゃいからって油断しませんよ!"はっけい"!」
宗一郎「"くすぐれ"!」
攻撃を受けたチェリンボだが、すかさず葉っぱをリオルの腕や足に擦らせ笑わせる。
負けじと次はバレットパンチを撃とうとした瞬間、
宗一郎「そこで"くさむすび"」
弾丸のようなスピードで突っ込んだリオルは、その速さが仇となり顔面から地面に激突した。
しかしすかさず体勢を立て直し、再び発頸を叩きこむ。
宗一郎「やはり体重が軽すぎるか…ならば"しぜんのめぐみ"!」
持っていたカゴの実を使ってリオルに水技が撃ち込まれる。
それでも立ち止まることなく三発目の発頸によってチェリンボをダウンに持ち込んだ。
さやか「ふぅ、危ない危ない」
宗一郎「なかなかパワーとスピードがあるようだな」シュパン
宗一郎「パラセクト」ボンッ パラセクト「パラララ!」
さやか「こりゃきつそう……リオすけ一旦引いて!」シュゥゥン
宗一郎「ほう、いい判断だ。"くすぐる"で弱体化したままだったならそのままパラセクトが押し切っていただろうからな」
さやか「フラすけ!」ボンッ ナックラー「グラァ」
宗一郎「ナックラーか…何か作戦があるようだな」
さやか「フラすけ、昨日言ってた作戦のことだけどね……」
ナックラー「……」
さやか「やっぱりとにかく一矢報いること!"あなをほる"だ!」
呆れ顔になりつつも、ナックラーは地面へと潜っていった。
宗一郎「どういうつもりだ……パラセクト、地上に"キノコのほうし"をばら撒くんだ」
さやか「うわまずい!フラすけ出てきちゃ駄目!」
当然地中にいるナックラーには聞こえず、勢いよくパラセクトに向かって飛び出していった。
吹き飛ばされたもののパラセクトに大きなダメージはなく、ナックラーは漂う胞子を思い切り吸い込んでそのまま眠りについてしまった。
さやか「フラすけ起きて!!」
宗一郎「"ギガドレイン"」
眠ったままのナックラーから体力を全部吸い取り、傷も完全回復したところでナックラーは戦闘不能になった。
さやか「くっ…お疲れフラすけ……」シュゥゥン
さやか「もう一回リオすけ!」ボンッ リオル「リ、リオ!」
さやか「"バレットパンチ"!」
バレットパンチを放ち、すかさず距離を取る。
しかしさやかはリオルの様子がおかしいことにすぐに気が付いた。
さやか「どうしたのリオすけ!?フロフロじゃん!」
宗一郎「パラセクトの『ほうし』で毒を浴びたようだな。今だ"ギガドレイン"!」
毒のダメージと今までのダメージが重なり、残り少なかった体力を根こそぎ吸い取られ、リオルはそこでダウンした。
そして、さやかはいよいよ最後のポケモンを繰り出すことになってしまった。
さやか「ミジュかゴー!頑張って!!」ボンッ ダイケンキ「グォー!」
宗一郎「最後は水タイプか。だが油断はしない、"キノコのほうし"」
さやか「させるなミジュか"つばめがえし"!!」
宗一郎「飛行技か…だが惜しかったな、俺のパラセクトは弱点対策にバコウの実を持たせている」
一瞬で距離を詰めパラセクトにアシガタナからの剣撃が炸裂する。
ぐらついてそのまま倒れてしまい、立ち上がることなくダウンしてしまった。
宗一郎「何?おかしい、確かに木の実を持たせたはずなのに……」
さやか「ホントに持ってたんですか?それとも、食べられちゃったんじゃないですかね」
宗一郎「……ナックラーか」
さやか「しっかり一矢報いてくれてたみたいですよ」
まどか「さっき接触した時だね、こっそり"むしくい"してたんだ!」
さやか「イッエース!ただ穴掘ってただけじゃないんですようちのフラすけは!」
宗一郎「さて、これでお互い一対一か」シュパン
宗一郎「トロピウス」ボンッ トロピウス「トロロ~」
さやか「やっぱりトロピウスですか……でも、こっちには必殺の"つばめがえし"があるからね」
宗一郎「果たしてそう簡単に上手くいくかな」
さやか「ミジュか"つばめがえし"!」
宗一郎「"グラスミキサー"」
疾走するダイケンキに緑の竜巻が襲いかかり、フィールド端まで飛ばされてしまった。
トロピウスは上空に飛び上がりその様子を窺っている。
宗一郎「お前のダイケンキの"つばめがえし"、確かに一線級の威力のようだが飛んでいる相手にどうやって攻撃してくるかな」
さやか「なっ…大丈夫、カザミノの時とは違うんだ!ミジュかもう一回"つばめがえし"!!」
再びトロピウスに突撃していく。
今度はグラスミキサーを喰らわないようにかわしつつ距離を詰め、真下から飛び上がって剣先を向ける。
宗一郎「"しぜんのめぐみ"」
燕返しがヒットしたのと同時、トロピウスからセシナの実を使った電気タイプの技が繰り出された。
地面に激突したダイケンキはなんとか立ち上がるが、もはやギリギリの状態である。
さやか「ミジュか!」
さやか(どうしよう…どうすればいいの……考えが甘かった、弱点を付けるだけじゃあ意味がないんだ
せめて遠くても当てられる攻撃があれ、ば……あっ、ぶっつけ本番だけどあれならもしかしていけるかも……)
宗一郎「さあ、止めを刺そうか」
さやか「ミジュか、アシガタナを一回仕舞って!昨日公園でカタナ振った時のこと思い出して!!」
ダイケンキ「ッ!……」
静かにアシガタナを収め、その時を待つ。
宗一郎「どういうつもりだ……構うなトロピウス"グラスミキサー"!」
さやか「今だ!」
神速の抜刀!
アシガタナの剣風は刃となり、グラスミキサーの竜巻を切り裂いてトロピウスに直撃した。
宗一郎「馬鹿な!"エアスラッシュ"だと…!?もう一度"グラスミキサー"!」
さやか「ミジュか!」
再び二つの風が激突!
打ち破ったのはダイケンキのエアスラッシュだった。
二度の直撃を受けたトロピウスは、力なく地面に墜落しそこで戦闘不能となった。
宗一郎「うーむ、最後の最後にやられてしまったか」シュパン
さやか「~~~ッシャー!!!特別メニューゲーーーッット!!!!」
まどか「そっち!?でもおめでとう!」
さやか「ナイスミジュか!正直"エアスラッシュ"使えるかどうか不安だったんだけど良かった良かった」
宗一郎「おめでとう、まさかあんな奥の手があったとはな……おーい、下準備しといてくれ」
ウェイター「了解でーす」
まどか「勿論二人分ですよね?」
宗一郎「ほう……自信ありって感じだな」
まどか「はい!」
さやか「あのあの、あたしまだ貰ってないんですけど…?」
宗一郎「おっと、そうだったな……これがタカサキジムのヴェルデバッジだ」
さやか「ありがとうございます!」
さやかはヴェルデバッジを 手に入れた!
宗一郎「じゃ、ポケモンを用意してくるから少し待ってろ」
10分後、まどかと宗一郎のバトルが始まった。
試合はバシャーモの一方的な試合になるかと思われたが、トロピウスの飛行技に苦戦してなかなか攻めきれなかった。
互いに何度かチェンジをし、最終局面で再び一騎打ちになった。
宗一郎「"エアスラッシュ"!」
まどか「"ブレイズキック"!」
雌雄を決したのは、攻撃を掻い潜って炎の蹴りを撃ち込んだバシャーモだった。
まどか「やったぁー!朝ごはんだーー!」
さやか「って、まどかもやっぱりそうなんじゃん!」
宗一郎「流石に自信ありと言うだけあるな……ほら、お前にもヴェルデバッジだ」
まどか「ありがとうございます!」
まどかは ヴェルデバッジを手に入れた!
これでまどかは四つ、さやかは五つのバッジを手に入れたことになる。
さやか「やーっと朝ごはんですね……もうお腹空き過ぎて死にそうですよ」
宗一郎「任せろ、朝ごはんもちゃんと用意してある」
まどさや「待ってます!」
~七時~
レパ・マチュカが開店する。
客も多くないためウェイター達は帰宅し、店は宗一郎一人で回す。
まどか達の他に入ってきたのは一人の女性のみで、ゆったりとした音楽が作る空間は爽やかな朝にはちょうどいい。
宗一郎「お待たせ、勝者限定特別朝食メニューだ」
まどか「うわぁぁ~~!!!」
さやか「うまそう~~~!!!」
宗一郎「残さず食えよ」
並べられたのは木の実のジャムを使ったサンドイッチやスープ、エッグとキノコの炒め物やモーモーミルクなどなど、普段では食べられないものばかりだ。
当然ポケモン達の分も用意してある。
さやか「それではさっそく」
まどさや「いただきまーす!!」
二人とも夢中になって口に運んだ。
どれをとっても舌が幸せ、今まで食べたどの朝食よりも格別だった。
あっという間に、皿には何も載っていなかったのではないかと思うほど真っ白になっていた。
まどさや「ごちそうさまでした!」
宗一郎「お、ちゃんと残さず食べたようだな」
さやか「もう最高でしたよ!期待以上です!」
宗一郎「そりゃ良かった。だが、まだ最後のデザートが残ってるぞ」
まどか「デザートがあるんですか?」
宗一郎「これだ!」ドンッ
まどか「ば、バケツ!?」
さやか「パフェ!?」
宗一郎「少し朝食は控えめにしてたからな……これが本当の勝者限定メニュー、『バケツパフェ』だ」
文字通り、バケツにパフェがどっぷりと盛られていた。
アイスやプリン、チーゴやモモンの実などの木の実をふんだんに使い、生クリームやチョコたっぷりのまさにデラックスなパフェだ。
特に目を引くのは、頂点に君臨するフルーツだ。
流石の二人も開いた口が塞がらない。
宗一郎「その一番上のフルーツはな、俺のトロピウスについてたものなんだ。なかなか実らない珍しい奴なんだから味わって食えよ」
まどか「これ、一人分ですか…?」
宗一郎「一応一人前なんだが、もう一つ持ってこようか?」
まどか「えっと、私はこれだけあれば十分かと……」
さやか「流石に朝からこんな量を一人で食べたら太っちゃうって……」
宗一郎「そうか?お前らくらいの女の子でも結構一人で食べるやつはいるんだけどな」
さやか「ま、まあ、いただきまーす!」
まどか「いただきまーす!はむっ……」
感想は――
まどか「甘~い…!何これとろけそうだよぉ」
さやか「はぅぅ……とろっとろですなぁ……」
宗一郎「ま、のんびりしていけな」
甘いものは別腹とはよく言ったもので、結局二人ともこれまたすぐに完食してしまった。
しかし流石にこれ以上は限界の様で、食後のココアとコーヒーを飲みほして休憩した後、まどか達は店を出ることにした。
宗一郎「じゃあな、またタカサキに寄った時はいつでも来てくれ。余裕があったらあのバケツパフェも出してやる」
さやか「いいんですか!?じゃあまた来ますね!今度は友達連れてきますよ」
まどか「あんなに美味しいんだったら通常メニューにすればいいんじゃないですか?」
宗一郎「何言ってんだ、採算が合わん…今日はこの後どうするんだ?」
さやか「んー、とりあえず予定もないし急ぐ旅でもないし、観光でもしてく?」
まどか「あ、じゃあ私タカサキランド行ってみたいな。せっかくだから遊んでいこうよ!」
さやか「おっいいね!今日は旅の休養日ってことでパーっと遊ぶか!」
宗一郎「あそこは人気だが、今日は平日ならそんなに人も多くないか。楽しんでこいよ」
まどか「ありがとうございました」
宗一郎「またのご来店をお待ちしています」
ポケモンセンターで回復させ、街の端にある遊園地のタカサキランドに向かった。
宗一郎の言うとおり平日だけあって混んでおらず、数あるアトラクションにもほとんど並ぶことなく乗ることができた。
実は二人とも小学校の遠足で来たことはあったのだが、いつ来ても飽きさせない工夫は目を見張るものだ。
今回はポケモン達がいることもあってか、二人とも昔来た時よりずっと楽しんでいた。
最後は派手なパレードによってフィニッシュ。
この日は幕を降ろした。
息抜きも済んだところで、遊び疲れたまどか達はポケモンセンターに帰るなりすぐに眠りについたのだった。
537 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/05/10(木) 22:27:55.81 TEoAA5lr0 439/548タカサキ編終了
なんだかサクサク進んで怖い
ドシシ(オドシシ)『おみとおし』♀
垂れ目繋がりなだけ
一応さやかの恋心をお見通し…とか?
性格は冷静でただではやられないくらい粘り強い
ラント(ネオラント)『よびみず』♀
同じく垂れ目繋がり
NNは出てないけど他と同じく下三文字を取って
性格は無邪気でおっちょこちょい
―???―
シズル「だ、だからゴメンって言ってるじゃないかぁ……」ヒック
マリア「一度ならず二度までも……幹部ともあろうあなたが、自分に与えられた仕事もまともにこなせないのですか」
シズル「だって……仲間がまだいるなんて思わなかったんだもん」グスッ
マリア「しかも我々の崇高な目的を口外するなど……呆れて物も言えません。まさか他にも洩らしたりしていませんよね…?」
シズル「ないってばぁ……こんなところで嘘吐いてもしょうがないじゃんかぁ」
シャル「まあまあマリアさん、その辺にしといてあげなよ。シズルちゃん泣いてるよ」
普段は強気な態度のシズルはどこへやら、ヤミラミの影に縛られ説教をされ続けたためか、すっかり弱気になって涙ぐんでいた。
隣でステーシーが弁解しようとしているも、マリアの高圧的な態度に積極的になれずおろおろするばかりである。
マリア「はぁ……まあ、もういいです。済んだことですから」
ようやく影から解放され地べたに放り出されると、ガタガタと息を震わせている。
マリア「目的だけならジムリーダーにはまだ何も伝わっていないでしょう。しかし、そろそろ警戒を強めるべきかもしれませんね」
実際はほむらに洗いざらい尋問されてしまっているのだが、当然シズルにその時の記憶はない。
もしもあったのなら、これとは比べ物にならないほどのさらにひどい説教が待っていたことであろう。
ステーシーが姉の心配をしている中、扉をリズムよくノックする音が響いた。
ウィッチ団の中でマリアに対して軽く接することができるのは、ナハトと幹部、そして技術部門担当の彼女だけだ。
マリア「なんですかキルスティン」
エリー「その名前で呼ぶなと!アタイのことはそう、エリーとお呼び……それよりタマゴよタマゴ、全部産まれたわ」
黒髪を赤いリボンでツインテールに結った少女が、右手を胸に当て左手を仰々しく天に仰がせている。
口調も仕草も何かと大げさなのは彼女の趣味であるため、特に気にする必要はない。
シャル「えっと、これで何匹目?」
エリー「150匹目。全く『ハコ』の中が窮屈になって仕方ないわ……」
マリア「では行きましょうか。シズル、ステーシー、反省したら後でナハト様にも謝っておくように」シュゥゥン
シズステ「はぁ~い……」
二人を部屋に残し、残り三人は『ハコ』と呼ばれた部屋に向かう。
『ハコ』という部屋は全部で24あり、彼女たちは『22』と書かれた部屋の扉を開ける。
ハブネーク「シャー」 ハブネーク「プルルル」
エリー「うぅむ、見る人が見ればエロスと狂気に蝕まれた空間ね……これは吐くわ」
シャル「そう?キモかわいいよ」
エリー「やっぱキモいんじゃん」
部屋にはハブネーク達が30匹ほど集められ、所狭しと蠢いている。
確かに人によっては嫌悪感をもたらすかもしれない。
ここは『ハコ』。
タマゴから産まれたポケモンたちが入れられる飼育部屋、悪く言えば隔離部屋である。
一部屋におよそ30匹しか入らないため、部屋が埋まるごとに彼女たちは必要のないポケモンたちを逃がしに出かけているのだ。
たまに下っ端の団員に配ることもあるが、それも新入団員が入ったときなどで極希。
何度も産まされたたくさんのポケモンの中から最も優秀な、選ばれたポケモン一匹のみが、彼女たちの手持ちに加わることを許される。
ステーシーのように一度に大量のポケモンを持っている例外もあるが、ボールに入れられないことや人目に付きやすいこともあって、あまりやる者はいない。
マリア「今回は優秀なポケモンは生まれたのですか?」
エリー「ふふふのふ、アタイにかかれば当然……あの一匹なんかいいんじゃないかしら」ピッ
そう言って彼女が手元の機械をハブネークに向ける。
それはまるでポケモン図鑑のようだが、色は黒く、映し出されるデータも彼女たち独自の基準で数値化されたポケモンの能力だ。
マリア「……なるほど、この能力ならば素晴らしいのではないですか」
シャル「どれどれ……おぉ!文句ないじゃん!このハブネークはあたしが使ってもいい!?」
エリー「どうぞお好きに……流石はアタイと言ったところね」ビッ
マリア「残りは駄目そうですね……では、今手が空いている下っ端にでも逃がしに行かせましょうか」
エリー「さあてお次は何を産ませようかしら……」
シズル「おーいマリアー!」ガチャン
マリア「なんですか?反省し終わったのですか」
シズル「違うよぉ!来ちゃったの!!」ゼェハァ
息を整えながら、少しずつ言葉を紡ごうとする。
ナハト「ハァ~~イ!元気してるー?」
が、そんなものは待とうともせずナハトは平気で彼女の前に出てくるのだった。
マリア「なっ、ナハト様!まだサーカスの公演は終わっていないはずではないですか!」
ナハト「いいのいいの、細かいこと気にしてたら人生楽しくないよー!キャハハッ!」
エリー「ナハト様お久しぶりね……して何用で?」
ナハト「ついにアレがグンマーに来るらしいよ……」
一同「!!!」
マリア「もうですか……随分と早い到着ですね」
エリー「これは想定の範囲外ね……」ゴクリ
ナハト「場所は予定通りマエバシシティの博物館みたいだけどね……来るのは一週間後」
シャル「じゃあ問題ないじゃん!その日はアスナロにテントがあるからすぐに行けるしね」
マリア「しかし大会までは結局手は出せませんし、しばらくやることは変わりませんね」
ナハト「あぁ、それなんだけどね……」
アハハと笑って一言。
ナハト「奪おう」
マリア「……はい?」
ナハト「なぁんかさあ、退屈じゃん?今までだってずっと我慢してきたのに、その上目の前に目的の物が置いてあるのに指咥えて待ってるなんてありえないよね!
ついでにこの際だから私達のこともグンマー中にデデーンと公表しちゃおう!!」
マリア「なっ何を言ってるんですか!大会中に騒ぎを起こすからこそ面白いと言ったのはあなたですよ!!」
ナハト「そうだっけ?忘れちゃった~キャハハッ!!」
マリア「はぁ~……とにかく、そんな大それたことをすればジムリーダーやポケモン協会、四天王も黙ってはいませんよ」
ナハト「なんなのよー、私達が負けると思ってるの?」
シャル「それはないない!」
シズル「あり得ないね!」
マリア「……」ジトッ
シズル「……多分」
ナハト「面白いと思うんだけどなー宣戦布告……」
マリア「宣戦布告も駄目です」
エリー「ただまあ、アタイは奪うことには賛成ね。今のうちに手に入れられるものは手に入れといた方が後々苦労しなくて済むわけよ」キリッ
マリア「あのね、そんな簡単に――」
エリー「簡単じゃないわーッ!一体誰がパソコンに向かってえんやこら解析すると思っとんじゃーい!!大会から作戦決行までどんだけ時間ないと思ってんのよ!!!!」
シャル「あたしもエリーに賛成!奪うくらいならいいんじゃないかな?どうせもうジムリーダーはシズルのおかげで対策を始めてるだろうからね
絶対何か仕掛けてくるはずだよ」
シズル「わ、悪かったってばぁ……」
ナハト「ほらほら皆もこう言ってることだしさ!奪おうよ」
マリア「……分かりました。ナハト様がそう言うのなら」
ナハト「アハハッアッハハハアアハハハハハ!!!そうこなくっちゃね!キャッハハハハハハ!!!」
マリア「さて、そうなると危惧しておかなければならないことがあると思うのですが」
シャル「なになに?」
マリア「暁美ほむら、ですよ」
シズル「…!?」ゾクッ
マリア「…?どうかしましたか?」
シズル「う、うんにゃ、何でもないよ」アセアセ
ナハト「来るだろうね、間違いなく……ま、放っておけばいいんじゃない?」
マリア「よろしいのですか?」
ナハト「クフフ、無駄に決まってるじゃん!私達と取り合おうなんてさ」
シャル「それにしても未だに団長の話信じられないんだよねえ……あんなやつがあたしたちの妨げになるの?」
ナハト「なるなる!そりゃもうすんごい勢いでなるよ!!」
マリア「そこまで分かっていてなお放置しているのは……」
ナハト「当然!!その方が面白くなるに決まってるからね!アハハハハ!!」
マリア「はぁ……そういえばルートからはまだ何の連絡もないですが、美国織莉子も一応危険人物なのでは?」
ナハト「駄目駄目、彼女じゃ役不足だよ……私と同じ舞台に立てるのは、暁美ほむらだけ……
美国織莉子が何か感じてもそこまでの脅威にはならないよ」
エリー(ならなんでルートに監視させてるんだか……)
ナハト「フハハ、なんにしても一週間後にマエバシに行ってくること!!これ決定ね!」
マリア「分かりました、そのように通達を」
ナハト「そうそう、それからジムリーダーのポケモン奪うのはもうなしでいいよ。元々あんまり期待してなかったしね」
シズル「酷いよナハト様ぁ!ボクだって頑張ったんだよ!?」
シャル「来週かあ、楽しみ~!」
ナハト「面白くなってきたー!アハッ!!絶対に奪ってきてね――」
ナハト「『白玉』、『金剛玉』をさ!キャハハ!!」
547 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/05/16(水) 00:58:56.40 Uys00d+Q0 446/548はい
キャリー(バリヤード)『フィルター』♀
詢子のポケモン
バリキャリ→バリヤードのキャリー
ダル(チャーレム)『ヨガパワー』♂
知久のポケモン
なんとなく人型で家事手伝いできそうな奴に
マネネ(マネネ)『ぼうおん』♂
タツヤの友達
ダルとキャリーの子
NN無しなのはタツヤが「マネネ」という言葉を気に入ってるからとかなんとか
548 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/05/16(水) 01:15:29.34 V2ajTnYa0 447/548乙乙
そういえば知久さんのポケモンはシュタゲ統一だよな
549 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/05/16(水) 20:31:40.65 Uys00d+Q0 448/548>>548
「ダル」は元々ヨガ繋がりでダルシムのダルだったんだけど、そういやシュタゲにダルっていたなと思って他のメンバーのNNをそっち関係にしたって感じ
またまたタカサキジムの技書いてなかったので追加
もうここまできたら全ジムの妄想書いちゃる
バシャーモ(ブレイズキック、二度蹴り、高速移動、炎の渦)
ピクシー(歌う、おうふくビンタ、光の壁、目覚ましビンタ)
マラカッチ(ニードルアーム、ミサイルばり、飛び跳ねる、コットンガード)
トゲピー(指をふる、甘える、てんしのキッス、エコーボイス)
ダイケンキ(シェルブレード、燕返し、エアスラッシュ、気合いだめ)
リオル(バレットパンチ、はっけい、スカイアッパー、嫌な音)
ナックラー(穴を掘る、虫食い、噛みつく、砂地獄)
トロピウス(エアスラッシュ、自然の恵み、グラスミキサー、光合成)
パラセクト(キノコの胞子、虫の抵抗、自然の恵み、ギガドレイン)
チェリンボ(くすぐる、自然の恵み、草結び、甘い香り)
ところで書き溜めほっぽり出してポケスペっぽくvs○○を作ってみたから勝手に貼っていく
~十二日目~
存分にタカサキシティを満喫した二人は街を出発して、次の街を目指す。
タカサキシティから北、もしくは南西へ向かうとそれぞれ湖があるが、今回はスルーして西へと向かう。
そこにあるのはヒメナシティ。
浅見サキがジムリーダーを務めるヒメナジムがある街だ。
今回は特に変わったこともなく、拍子抜けするほどあっさりと街に着いた。
―ヒメナシティ―
近くを流れるヒメナ川のせせらぎが心地いい、タカサキシティとは違って静かな街だ。
ヒメナの西にあるイツサトタウンに雰囲気は近いと言える。
まどか達の様な少女が心惹かれるものと言えば、せいぜいテディベアの博物館といったところだろう。
さやか「ようやくヒメナシティ到着!」
まどか「サキさんとやっとバトルができるんだ……頑張らないと!」
さやか「あたしはゆっくり見学させてもらうよん。ファイトまどか!サキさんにまどかの実力を見せつけてやろう!」
まどか「トゲっちもいるから何とかなるよ…ね?」
さやか「大丈夫だいじょぶ!自信もって!」
予想より早く着いたため、昼食はサクッと済ませてすぐにヒメナジムを目指す。
―ヒメナジム―
大きな博物館の横に、そのジムは存在していた。
博物館は名を「アンジェリカベアーズ」というらしく、様々なヒメグマやクマシュンなどをモチーフにしたテディベアが展示されているらしい。
まどか「後で行ってみない?」
さやか「そういうのは勝ってからいいなさいな…せっかくのさやかちゃんのアドバイスを無駄にしないようにね」
まどか「うん、ありがとねさやかちゃ――」
男性「ちくしょーまた負けたー!」ダッ
さやか「うわっと、危ないなぁ……今の挑戦者かな?」
サキ「そうだよ。軽くいなしてやったがね」
ジムの中から懐かしい声が聞こえてくる。
いつかのようなベレー帽にジョッキーのような出で立ちの少女に、まどか達は見覚えがあった。
まどか「サキさん!お久しぶりです」
サキ「まだ一週間も経ってないじゃないか…ま、ついに来たかと言っておこう」
さやか「サキさん酷いですよ!なんでニコさんがジムリーダーだって教えてくれなかったんですか!?」
サキ「え?なんだ、知らなかったのか?知り合いって言ってたからてっきり知ってるものだと」
さやか「普通道で出会った人に、『あなたはジムリーダーですか~?』なんて聞きませんよ……」
サキ「いや悪い悪い……それで、ここまで来たってことはニコには勝ったんだな」
まどさや「バッチリです!」
まどか「それにタカサキジムのヴェルデバッジも手に入れてきましたよ」
サキ「ほう、立花も破ったのか……これは期待できそうだな」
まどか「今日はよろしくお願いしますね」
さやか「まどかファイト!コテンパンにやっちゃえー!」
???「無理無理、サキに敵うわけないじゃん」
声がしたのはジムの中、サキの体に隠れていた小さな体がひょっこりと現れた。
まどかより僅かに高い身長、まどかより僅かに色彩を濃くしたような桃色の長い巻き髪ヘアーの少女は、
大事そうにヒメグマのテディベアを抱えながらサキを擁護する。
サキ「みらい、まどかは強いぞ?戦ったことはないが保証はできる」
みらい「ふーん……そうは見えないけど」ジロジロ
まどか「えっと…はじめまして、鹿目まどかです」
さやか「美樹さやかでーす」
みらい「……若葉みらい……どうせ勝負したって無駄だよ」
さやか「ムッ、なんだよその言い方は!やってみなきゃ分かんないじゃん!」
みらい「いいや分かるね!ボクのサキが負けるはずない!」
さやか「だったらあたしのまどかが負けるわけない!」
さやみら「ぬぬぅ~~……」ガルルルル
サキ「みらい、こないだ危なかったって話をしたじゃないか……」
まどか「私もサキさん相手だとどこまで頑張れるか……」
さやか「絶対勝つんだよまどか!あたし何かこの子ムカつく!」
みらい「サキ負けんな!ボクはこいつにギャフンと言わせたいんだ!」
まどサキ(いや、目的がおかしい……)
さやか「そもそも誰なのアンタ!ジムトレーナーのくせにやたらサキさんに馴れ馴れしいんじゃないの!?」
みらい「ボクをジムトレーナーなんかと一緒にすんな!ボクはサキと同じくプレイアデス星団の団員なんだぞ!」
さやか「ぬぅっ……だからってまどかを舐めないでよね!こっちはサキさんの使うポケモンとかも分かってんだから!」
みらい「分かってるだけでなんとかなるもんじゃないだろ!」
さやか「なんだと年下のくせにぃ!」
みらい「ボクはサキと同い年だ!」
さやか「えっ……待ってよ、あたしら14なんだけどサキさん歳いくつ?」
みらい「14って…ボクより年下じゃないか!そっちこそ生意気だ!」
\ワーワー ギャーギャー/
まどか「……そういえばプレイアデスってなんなんですか?」
サキ「言ってなかったか?グンマーを守る簡単な自警団だよ。まだ少数精鋭だがな」
さやか「とにかくまどかは負けないからね!!」
みらい「サキの方が強いに決まってる!」
まどか「えっと……そろそろジム戦やりますか?」
サキ「そうだな、騒がしくて適わん。じゃあ、私は先に奥に行ってるから待ってるぞ」
みらい「精々頑張ってね~」ベー
さやか「キィー!なんなのあいつ!!」
まどか「さやかちゃん落ち着いてって……私頑張るから」
さやか「頼むよまどか……あいつにまどかの力を思い知らせてやろう……」ゴゴゴゴゴ
まどか(変なプレッシャーかかっちゃうなぁ……)
案内人「やたら騒がしかったな……元気かい?未来のチャンピオン!ここはヒメナジム!電気タイプのエキスパートとしてジムリーダーを務めるのは……
プレイアデス星団のリーダーでもある浅海サキさんでんがな!その痺れるような指令っぷりから『稲妻指揮官』と呼ばれてるぞ!」
まどか「えっ!?サキさんってプレイアデスのリーダーだったんだ」
さやか「今知った……サキさんってなんか大事なとこいっつも抜けてるような気がする……」
案内人「バッジはいくつもっとん?」
まどか「私は4個です」
案内人「なからすげえ!じゃあ使用ポケモンは恐らく4体になるな……気張っていこう!」
さやか「トゲっちは戦えそう?」
まどか「うん!張り切ってるみたい」
さやか「よし、あたしは横の観客席で見てるからしっかりね!」
まどかは一人でジムトレーナー戦を開始した。
考えてみると、一人でジムに挑戦するのはこれが初めてのことである。
電気屋の親父「ビリリダマ、"ころがる"!」
まどか「チャモっち"スカイアッパー"だよ!」
しかしあまり緊張感はなく、客席からのさやかの熱い視線に答えるため必死でバトルを繰り返し、
エレキグループ「エモンガ"エレキボール"」
まどか「トゲっち"エコーボイス"!」
遂にサキと、ついでにみらいが待ちうけるジムの最深部へと辿り着いた。
560 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/05/20(日) 22:25:28.82 la9Z1rRP0 454/548はい
まにゅ~ん(マニューラ)『プレッシャー』♀
キリカの相棒
キリカを擬ポケ化ようなポケモンだしね
性格は織莉子いないと死んじゃう的なキリカと同じく寂しがり
あぼ~ん(アーボック)『いかく』♀
キリカのポケモン
顔の模様が変わるってのは違う自分を望んだキリカのようかなと
性格は腕白らしいよ
えな~ん(ポチエナ)『はやあし』♀
キリカのポケモン
キリカってなんか犬っぽいなって思って…え?ハイエナ?
性格は真面目、必死にキリカの落とし物を探してました
もう一匹いるけど未登場
561 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/05/21(月) 21:49:44.11 APiHUj3D0 455/548はい
ダイアナ(ラルトス→キルリア→サーナイト)『シンクロ』♀
織莉子の相棒
見た目とか未来予知とかまんま織莉子っぽいしね
性格はお父様がいるので割と穏やかな織莉子と同じ
プリンセス(チラーミィ→チラチーノ)『テクニシャン』♀
織莉子のポケモン
見た目とかタネマシンガンやロックブラストで水晶玉っぽく
性格は割と真面目
進化前のチラーミィはキリカの持ってるストラップのモデル
みらい「ようやく来たか……遅いんじゃないの」
さやか「そこ!ジムリーダーでもないんだからこっち来なよ!」
みらい「ふん、言われなくてもサキの邪魔はしないよ」スタスタ
さやか「それにしても、この辺電気ポケモンがいっぱいいるんだね。全部サキさんのポケモン?シママとかパチリスとか、エレキブルまでいるし」
みらい「当然!サキは色々育てて挑戦者に合わせてるもん」
さやか「へぇー、流石サキさんだね」
みらい「でもまだ野生のまんまなやつとかいるらしいけどね。あのマイナンとかまだサキに懐いてないらしくってさ」
さやか「ふーん」
サキ「……では改めて」
サキ「ようこそヒメナジムへ…私がジムリーダーの浅海サキだ。イツ砂漠では世話になったな」
まどか「こちらこそ助けて貰ってありがとうございました」
サキ「あの時私は君にバッジをあげると言った……だが君は拒んだ。その訳、もう一度聞かせてくれるか」
まどか「……私は、ただ見ていることしかできませんでした。だからきっと、
私の実力っていうのはちゃんとサキさんに伝わっていなかったと思うんです……
改めて今、私と正々堂々バトルをしてから、私を…認めてくれませんか?」
サキ「……いいだろう。バトルにおいて指揮系統は非常に大事だが……鹿目まどか、君はどんな指揮を見せてくれるのかな!」
ジムリーダーの 浅海サキが 勝負をしかけてきた!▽
http://www.youtube.com/watch?v=nimknmrG-Cw&feature=related
まどか「カチっち!」ボンッ マラカッチ「マッカララ~」
サキ「エレブー」ボンッ エレブー「エルルル」
まどか「先手必勝だよ!カチっち"タネマシンガン"!」
サキ「"スピードスター"で撃ち落とせ」
撃ち出されたタネは、悉くフィールドの中ほどで撃墜された。
すかさずエレブーはぐるぐるとマラカッチの周りを走り始めた。
サキ「草タイプに電気タイプは相性が悪いな…"ボルトチェンジ"だ」
サキの命令が聞こえても、すぐには攻撃にうつらない。
マラカッチの隙を窺い、チャンスを待っているのだ。
まどか「カチっち後ろに気を付けて!簡単に交代させちゃ駄目だよ!!」
さやか「おっ!まどかのやつ、いつの間にか勉強してるなぁ…図鑑見なくてもどんな技か分かったのか」
みらい「そんなの常識じゃん、トレーナーなら知ってて当たり前でしょ」
さやか「ムカッ…いちいち突っかかったくんなっての……」
エレブー「ッ!」バリィィ マラカッチ「…ッ!」ブンッ
まどか「ナイスだよ"ニードルアーム"!」
サキ「よく見切って攻撃したな…流石と言っておこう」シュパン
まどかの警告を気にしてか、エレブーはマラカッチの右を突いてきた。
電撃を纏って突撃してきたエレブーに、すかさず反応してマラカッチは棘の腕を叩きつけたのだ。
エレブーはその勢いのままサキのもとへと戻り、サキはポケモンを交代する。
サキ「ライボルト!」ボンッ ライボルト「グワーォ」
さやか「あの時のライボルトだ!まどか気を付けてー!!そいつ――」
みらい「アドバイス禁止だ!」
さやか「ぐっ……こればっかりは確かに……」
まどか「あの時のライボルト…カチっち"ニードルアーム"!」
サキ「不用意に近づくのは感心しないな…"ほうでん"!!」
放射状の電撃が放たれ、辺りに強力な磁場が展開される。
マラカッチは攻撃を受けて麻痺状態になってしまい、まさに格好の的である。
サキ「"かえんほうしゃ"」
正面から直撃の火炎放射を受けて、マラカッチはそこで戦闘不能になった。
まどか「カチっち、お疲れ様」シュゥゥン
まどか「電気技が効きにくい相手には炎技が使えるんだ……ピピっちお願い!」ボンッ ピクシー「ピッピピー」
サキ「あの時のピクシーか……ライボルト!」ピシィッ
乗馬鞭の合図で、ライボルトの頭上に雷雲が出現し始めた。
もくもくと雲は増殖を続け、すぐにフィールド全体を覆う巨大なものに変化した。
サキ("ほうでん"を使って磁場を作り上げ"かみなり"のための雷雲を素早く作った……さあ、どうするまどか?)
まどか(あれが図鑑で見たライボルトの頭の上にできるっていう雷雲……)
サキ「来ないのならこっちから行くぞ!ライボルト、強力な"かみなり"をお見舞いしてやれ!」
まどか「"ちいさくなる"!」
ピクシーが小さくなると同時に、雷が襲った。
地面を焦がし音と光の衝撃が広がる。
まどか「……ピピっち…?」
サキ「やったか?」
ピクシー「……フゥー」
まどか「やった!うまくかわしてくれたんだね!」
サキ「ならば"かえんほうしゃ"で狙うんだ!」
まどか「"ひかりのかべ"だよ!」
観客席からは、なにもない場所に突然壁が現れたように見えるだろう。
攻撃は防いだものの、それは遠くからでもピクシーの居場所が分かるということになる。
サキ「残念だったな。いくら小さくなろうと、目の前に壁を貼ってしまえば自分の位置を教えているようなものだぞ!"かみなり"だ!」
まどか「今だよピピっち"テレキネシス"!」
攻撃と同時にライボルトの体が素早く浮き上がり、ピクシーの真上にやってくる。
それはすなわち、雷の軌道上に入ったことになる。
ライボルトは攻撃するはずの自らの雷によって、自身がダメージを受けてしまった。
サキ「しまった!」
まどか「ピピっち"コメットパンチ"!」
小さな影が飛び上がり、元の姿に戻る。
その手に彗星の様な輝く力を込め、ピクシーは思い切り殴りぬけた。
上から叩きつけられるように殴られ、ライボルトは地面に伏しそこでダウンしてしまった。
サキ「よくやったライボルト……私のライボルトの特性が『ひらいしん』でないことを聞いていたのか」シュパン
まどか「ここに来る前にさやかちゃんに聞いておいたんです」
サキ「成程、迂闊だったな……」
サキ「ライチュウ!」ボンッ ライチュウ「ラララライ!」
まどか「ピピっち、もう一回"ちいさくなる"!」
サキ「ライチュウ!」ピシピシィッ
再び鞭の音が鳴り響くと、突然ライチュウから光が発せられ、まどかもピクシーもさやか達も思わず目を瞑る。
ゆっくりと目を開くと、フィールドには小さくなったピクシー以外の影はなかった。
まどか「そんな…消えた!?」
さやか「まどか気を付けて!ライチュウがいたとこになんかあるよ!!」
みらい「おいっ!」
まどか「あれは……穴……"あなをほって"地面に潜ったんだ…!ピピっち逃げて!!」
サキ「残念、ピクシーはそこから動けない」
ピクシー「ピィ……」ギュギュギュン
まどか「っ!?なんでずっと"ちいさくなる"を……ピピっち!」
サキ「"フラッシュ"と同時に"アンコール"もさせてもらったのさ。これでピクシーはその場でずっと小さくなり続ける
いくら小さくなろうと、動けなければ狙うのはわけない!」
真下から槍のように鋭いライチュウの尻尾が、ピンポイントでピクシーに突き刺さる。
見えていない地面の下からでも、ハリーセンの穴に通すような正確さである。
サキ「高く打ち上げてしまえば狙いやすい…"かみなり"だ」
地面からライチュウが飛び出し、ライボルトの作りだした雷雲から雷を呼び寄せた。
それはピクシーにクリティカルヒットし、ピクシーは地面に落ちると同時に気を失い、元の大きさに戻ってしまった。
まどか「ピピっち……ありがとう」シュパン
まどか「トゲっち!」ボンッ トゲピー「トッゲー」
サキ「ほう、新しいポケモンだな。それが君のタマゴから帰ったポケモンか」
まどか「その節はありがとうございました」
サキ「どうも…だが勝負は別だ。ライチュウ"かみなり"!」
まどか「トゲっち"オウムがえし"!」
空中で二つの電撃が交錯し炸裂する。
威力は互角、完璧なコピーだった。
サキ「ムッ…ならば!」ピシィッ ライチュウ「ラーイ!」カッ
まどか「"――"!」 トゲピー「チョゲッ!」ポワァ
再び閃光がほとばしりライチュウの姿は消えた。
しかしオウムがえしはアンコールできなかったのか、トゲピーはどうにか動けるようだ。
サキ「構わんそのまま尻尾で狙い撃て!」
まどか「ピピっち受け止めるんだよ!」
さやか「なっ…まどか正気!?トゲっちのパワーであのライチュウ止められるの!?」
まどか「ティヒヒ、まあ見てて」
サキ「馬鹿な…あの小さな体で受けきれるはずがないというのに何だあの自信は……まあいい、やってしまえライチュウ!」
真下を警戒していたトゲピーの予想を裏切り、後方の地面から飛び出してきた。
そのまま尻尾を鞭のようにトゲピーに振りかざした!
トゲピー「ッ!」ガシッ
サキ「まさかっ!本当に受け止めただと!?」
まどか「トゲっち"オウムがえし"!」
トゲピーは直前にライチュウの繰り出した技、つまり穴を掘る攻撃を繰り出すためせっせと地面を掘り始めた。
一方ライチュウはというと――
ライチュウ「……」zzZ
サキ「眠っている…!?一体いつの間に……」
まどか「さっきライチュウがフラッシュした時ですよ。"あなをほる"前に"あくび"しておいたんです
出てくる頃には眠くなってるだろうから、トゲっちでもどうにかできるかなと思ったんですよ」
サキ「鞭の音で聴き逃したか……近くにいたトゲピーにだけ聞こえていたということか」
眠っているライチュウの腹部めがけたトゲピーの頭突きが地面から炸裂!
ライチュウは戦闘不能となった。
サキ「戻れライチュウ」シュゥゥン
まどか「これでお互い二対二ですよ」
サキ「振り出しか…エレブー!」ボンッ エレブー「エルェー!」
サキ「"かみなりパンチ"!」
まどか「"エコーボイス"!」
エレブー「ブルルルルー!」ブオン トゲピー「ピェー!」ドサー
さやか「嘘!トゲっちの攻撃に構わず突っ込んでくるなんて…!」
サキ「そんな貧弱な攻撃では私のエレブーは倒せんぞ。もう一発"かみなりパンチ"!」
まどか(どうしよう、"オウムがえし"で勝負する…?でも、雷雲を使った"かみなり"と違ってパワーで勝てるとは思えないし……
"あくび"で動きを止める…?でも、"ボルトチェンジ"で交代されたら意味がないし……でもこっちには攻撃方法が……)
まどか「あぁもう!トゲっち"ゆびをふる"!」 トゲピー「チッチッ」チッチッ
サキ「!考えるのを放棄して運頼みか……そのまま攻撃だ!」
トゲピー「トゲッ!」カッ
まどか「……"にらみつける"……」
エレブー「ブー!」バキィッ トゲピー「ピィ!」ズザー
まどか「トゲっち!」
サキ「次の一撃で終わりにしよう…どうしたまどか、こんなものなのか?」
まどか(こうなったらチャモっちで戦うしか……でもサキさん相手にチャモっちだけでどうにかできるのかな……
トゲっちはまだ…ほんのちょっとだけど、頑張ろうとしてる……)
まどか(だったらお願いトゲっち、チャモっちに繋いで!!)
まどか「"ゆびをふる"だよトゲっち!」
サキ「また博打技か!エレブー"かみなりパンチ"!」
トゲピー「チッチッ」チッチッ
トゲピー「ピッ!」ビュォォォォ
エレブーが殴りかかる寸前、トゲピーから猛烈な吹雪が襲いかかった。
拳はトゲピーの目の前で制止し、完全に氷漬けとなったエレブーがそこに出来上っていた。
さやか「やったー!あそこで"ふぶき"を引き当てるまどかとトゲっちの強運!おまけに凍り状態にするなんて、『てんのめぐみ』のおかげだね!」
みらい「あ、あんなの運が良かっただけじゃないか!」
さやか「へへーん、昔の偉い人はこう言ったんだよ……『運も実力のうち』ってね」
サキ「なんて奴だ……あの場面であの大技……」シュパン
まどか「……はっ……はぁ…はぁ……ありがとうトゲっち……私の祈りが通じたんだね」
サキ「こいつが私の切り札だが、覚悟はいいな……撃ち破ってみろ!」ボンッ ゼブライカ「ヒヒーン!」
まどか「ゼブライカ…!サキさんの最後の一匹……トゲっちもう一回"ゆびをふる"!この流れでもう一回お願い!!」
トゲピー「チッチッ」チッチッ
サキ「ゼブライカ!念のため避ける準備をしておくんだ」
トゲピー「チョゲッ!」カッ
ピョンピョン ピョンピョン
まどか「……」
サキ「……」
さやか「……」
みらい「……プッ、アハハハハ!!は、"はねる"だってさ!!!」アハハハ
さやか「あちゃー、滅茶苦茶ツいてると思ったらこれだよ……」
サキ「……"スパーク"」
必死に跳ねまわるトゲピーにゼブライカの攻撃が炸裂し、トゲピーは遂にそこで戦闘不能となった。
まどか「お疲れ様トゲっち……ありがとう」シュゥゥン
さやか「これでいよいよ切り札同士の勝負ってわけだね……」ゴクリ
みらい「……まあ確かに、ここまでやるとは正直思ってなかった……でもサキは負けない!」
まどか「チャモっち!」ボンッ バシャーモ「バッシャー!」
サキ「ほう、あの時のワカシャモか!無事進化できたみたいだな…ならこちらは全力でいくぞ!"スパーク"!!」
まどか「"ブレイズキック"!」
二匹の攻撃が交錯し、フィールドに火花が飛び散る。
お互い一歩も引かず全力をぶつけ合う。
先に押され始めたのは、片足のみで体を支えていたバシャーモだった。
サキ「丁度いい、ゼブライカ"かみなり"!」
まどか「ッ!チャモっち離れて!」
咄嗟に距離を取ったところに、ライボルトの雷雲から強烈な雷が襲いかかる。
バシャーモが飛びのいたのを見て、あろうことかゼブライカはその落雷に自ら飛び込んでいった。
しかしライボルトとは違って平気そうな顔をしている。
サキ「さやかから聞いているんだろうから言わせてもらうが、私のゼブライカは『でんきエンジン』だ
素早さを上げさせてもらったぞ」
さやか「ずるい!自分の攻撃で自分がいい思いするなんて!」
みらい「攻撃になればそれはそれだし、外れても機転を利かせて自分の有利な状況を作り出す!
これもサキの作戦勝ちってやつでしょ」
まどか「速さだったら負けないよ!チャモっち"こうそくいどう"!」
サキ「"スパーク"!」
まどか「"はじけるほのお"!」
バシャーモの攻撃は地面にぶつかり散弾した炎も全てギリギリでかわされ、ゼブライカがスパークで突っ込んでくる。
スピードは僅かにゼブライカの方が速く、バシャーモは逃げきれない!
ゼブライカ「ゼブルルル!」ダッ バシャーモ「ッ!」ゴッ
サキ「ここでもう一度"かみなり"!」
まどか「チャモっち"はじけるほのお"!」
上空に向けて放った炎と雷がぶつかり相殺された。
弾けた炎は辺りに飛び散り、その場で僅かに燃え残っている。
サキ「上手く防いだようだな……ゼブライカ!」ピシィッ
鞭の合図でゼブライカの体が輝き始めた
どうやら充電を開始したらしく、僅かに電気が漏れている。
まどか(多分あれは"じゅうでん"……電気パワーを貯められちゃったらもうチャモっちが耐えられないかもしれない……
でも、ゼブライカは速くなってるから避けられるかどうか……)
まどか(……あれ?そういえば、あそこの"はじけるほのお"で飛び散った火の粉、まだ燃えてる……
――あっ!そうだ!!あそことあそこで…………後はチャモっちが……)
充電が完了したのか、ゼブライカから閃光が走り、バチバチと電気を纏っている。
サキ「"じゅうでん"が完了したようだな……さあまどか、残念だがこれで終わらせる!」
まどか「チャモっち!雷雲に向かって飛びあがって!!」
サキ「何!?どういうつもりだ!?」
バシャーモは怯みつつも、雷雲の電気を帯びて着地する。
まどか「そのまま少しゆっくり目の"はじけるほのお"!!狙いは……右側の燃え残ってる火の粉!」
何のことか分からない顔をしているものの、バシャーモは命令通りスピードの遅い炎を吐き出した。
さやか「あれは……まさかまどかのやつ…!」
サキ「どこを狙っている…おまけにそんな遅い攻撃が当たると思っているのか!"スパーク"!!」
まどか「"こうそくいどう"で回り込んで!」
すかさずバシャーモは加速して背後を取り翻弄し、ゼブライカもスピードで負けじと必死に追う。
まどか「チャモっちそこでストップ!」 バシャーモ「ッ!?」ズザー
バシャーモが停止したのはサキの目の前、ゼブライカの姿と一直線に並んだところだ。
サキ「逃げられないとみたか!突っ込めゼブライカ!今なら"ブレイズキック"に撃ち負けたりしない!」
みらい「サキ危ない!!」
サキ「ん?」
さやか「いっけぇー!」
まどか「もう遅いですよ」
次の瞬間、ゼブライカの背後にバシャーモの放った弾ける炎が炸裂した!
サキ「なっ…何ぃ!?」
まどか「今だよチャモっち"スカイアッパー"!」
よろめくゼブライカに渾身の一撃がヒット!
空高く打ち上げられたゼブライカは力なく落下し、そこで遂に戦闘不能になった。
サキ「馬鹿な…狙いとは全く違う方向からどうして……」
まどか「……ふぅ……勝てたぁ」クテッ
サキ「……よくやったゼブライカ」シュパン
まどか「えへへ、ありがとうチャモっち。雷雲に突っ込ませたりしてごめんね?チャモっちならできるって信じてたよ」
サキ「一体どうやったんだ?教えてくれないか」
まどか「まず、チャモっちが雲に触れて電気を帯びます。それから"はじけるほのお"を出したら、炎にも帯電するんじゃないかと思いました
それから次に狙ったのは火の粉。少しでも技の威力を上げるために火の粉の炎を取りこんだんです」
サキ「それで、どうして軌道がズレたんだ?」
まどか「電気ですよ」
サキ「電気?」
まどか「チャモっちの炎は帯電してて、その電気と一緒に炎が他の電気に吸い寄せられたってことです。えっと、うまく説明できないんですけど……
静電気的な感じ…?になるのかな?」
サキ「……成程。それで電気を溜めこんでいたゼブライカの背後に回ったわけか」
まどか「ついでにサキさんにバレて避けられないように、サキさんの前にチャモっちを行かせました」
サキ「こいつは上手くやられた……流石だよまどか、やはり私の眼は間違ってなかった」
さやか「おめでとまどか!」タッタッタ
まどか「さやかちゃん!私もやっと五個目のバッジゲットだよ!」
みらい「むぅ…さやかの説明が適当すぎてわけ分かんない……」
さやか「あの時のこと覚えてたんだね」
まどか「うん!突然思い出せちゃった、ほむらちゃんがやってたこと」
そう――
炎を帯電させ誘導させるという攻撃は、ほむらが仁美と試合をした時に見せた技術だった。
燃え残った火の粉からアブソルの鬼火をまどかは思い出し、実践に至ったわけである。
サキ「まどか、これを」スッ
まどか「ジァッロバッジ……」
サキ「今度こそ、受け取ってくれるな?」
まどか「……はい」
まどかは ジァッロバッジを手に入れた!
これでさやかと同じく、五つ目のバッジを手に入れた。
旅に出て二週間と経たず、既に半分を超えた。
二人のやる気も俄然燃えあがるというものである。
みらい「サキ~……ボク悔しいよ……」
サキ「そうだな、今回は私の完敗だ。また鍛錬に励まなければな」
さやか「フッフッフ、やはりあたしのまどかの方が強かったということだね!」
みらい「キィー!サキの情けでバッジ貰っただけのくせにぃ!」
さやか「なんだとぉ!?あたしだってやればできるんだからね!」
みらい「じゃあこっちに来い!サキは疲れてるだろうからボクが鉄槌を下してあげる!」
さやか「おう!売られたケンカは買うっきゃないってね!」
まどか「あっ、それ私の台詞……」
みらい「勝負だ!ボクが何が何でもギャフンと言わせる!!」
さやか「上等だかかってこい!」
まどか「ちょっとさやかちゃん……もう行っちゃった……」
サキ「全くもう少し上品になれんもんか……みらいー!私の代わりに叩きのめして構わんぞ!!」
さやか「ちょっとサキさん!?」
みらい「サキ…!ボク頑張るねッ!!!」
まどか「……上品はどこに…?」
サキ「さてまどか、少し話さないか?」
まどか「話、ですか?」
さやかがナックラーを、みらいはヒメグマを繰り出し激しいバトルが始まった。
観客席に座ってからさやかとみらいの試合を眺めつつ応援をしていると、サキが口を開いた。
578 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/05/21(月) 23:05:55.02 APiHUj3D0 472/548はい
ドロレス(ネイティ→ネイティオ)『はやおき』♀
織莉子のポケモン
図鑑だと未来を見通してびくびくしてる的な説明だったので
性格は怖い未来に怯えるほど臆病
カップ(バネブー)『あついしぼう』♀
織莉子のポケモン
水晶玉の代わりに真珠玉で
性格は意外にも生意気なんだとか
二人の出番はいつになるかな…
582 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/05/22(火) 00:48:57.37 5snyrxr+0 473/548危ないまた忘れるところだった
さやかちゃんはお休み
バシャーモ(ブレイズキック、スカイアッパー、高速移動、弾ける炎)
ピクシー(コメットパンチ、光の壁、小さくなる、テレキネシス)
マラカッチ(ニードルアーム、タネマシンガン、コットンガード、わたほうし)
トゲピー(エコーボイス、指をふる、オウムがえし、欠伸)
ゼブライカ(スパーク、先取り、雷、充電)
ライボルト(放電、火炎放射、氷の牙、雷)
エレブー(かみなりパンチ、ボルトチェンジ、スピードスター、けたぐり)
ライチュウ(10万ボルト、アンコール、フラッシュ、穴を掘る)
どんな言葉でも嬉しいよ!
BW2までに頑張らねば
サキ「例の事件から他のジムリーダーに連絡してね。緊急会議を開くことが決定されたんだ」
まどか「会議ですか?」
サキ「例の『Wの組織』の件さ。すでに二人襲われた上にどちらもポケモンを奪われる寸前だった
確かに私の力不足だったこともあるだろうが、それにしてもこれは大問題だ。いつ他の人が狙われるとも限らん」
まどか「佐倉神父も確か警告するってこと言ってましたけど」
サキ「話を聞いた時は、正直あまり真剣ではなかった……だが実際奴と戦ってみてこれは危険だと思った
他に何人いるのか分からないが、実力はジムリーダーと同等といえる」
まどか「シズルちゃんみたいな子が他にも……」
サキ「たまたま一人で襲ってきてくれたからよかったものの、二人以上だとかなりヤバいだろうな
そもそも私達相手に一人でやってくること自体、自信がある証拠だ」
まどか「そうですよね……ジムリーダーと戦えるくらい強いんですよね」
サキ「一応プレイアデスのメンバーも会議には参加してもらおうと思ってる。そもそもジムリーダーのうち三人はプレイアデスだしな」
まどか「そうなんですか?サキさんとニコさんと、あとは……アイリさんかユウリさんのどっちかですか?」
サキ「なんだ、その二人は知ってるのか」
まどか「この間タカサキでたまたま立花さんのお店に来てたんです。立花さんが挨拶しといたほうがいいって」
サキ「成程ね…だが残念ながらその二人じゃないよ。最後の一人はアスナロシティのジムリーダー」
サキ「かずみだ」
まどか「かずみ、さん?」
サキ「あぁ。いつか行くことになるだろうが、かずみは強いぞ?グンマーのジムリーダーの中でも群を抜いて強い」
まどか「そんなにですか?」
サキ「勿論だ。それでいて明るくて正義感も強くて、本当にいい子だよ」
まどか「へぇ……」
サキ「……ま、まあそんなわけだから!まどかに頼みたいことがあるんだ」
まどか「?サキさん顔が少し赤――」
サキ「私のことはどうでもいい!!とにかくまどか、その会議に一緒に出てくれないか!?」
まどか「…ふぇ!?私がですか?」
サキ「もちろんさやかも一緒にだ。君達は私と佐倉神父、どちらの事件にも関わっているし協力してくれた
敵のことにも詳しいだろうし、その後できれば事件解決にも少し協力して貰いたい」
まどか「でも私たち一般人だし……」
サキ「事件解決は、まあ他のジムリーダーが許可しないこともあるだろうし、無理にとは言わない
会議で奴らの話をしてくれるだけでもいいんだ」
『Wの組織』の事件解決……
このまま放っておけば彼女たちによってますます強制的にタマゴを作らされ、野生に追いやられるポケモンの被害は増えていくだろう。
ポケモンたちを粗末に扱う『Wの組織』を、まどかは絶対に許すことができなかった。
まどか「……分かりました。私達にできることなら、なんでも」
サキ「ありがとう。会議は一週間後にマエバシで行われるから、是非頼む」
まどか「でも、今の私じゃ役に立てないと思うんです……」
サキ「…?」
まどか「ジムリーダーより強い人たちがシズルちゃんの仲間にいるんなら、ジムバッジ全部持ってない私なんかじゃまだまだです」
サキ「それは気にしすぎというものだ。ジムリーダーより強い人なんて、はっきり言ってしまえば沢山いる
バッジ全部手に入れた人は当然、四天王にチャンピオンもいる」
まどか「そうかもしれませんけど――」
サキ「君は強くないからといってあいつらを見過ごせるのか?」
まどか「!!」
聞かれるまでもない。
サキ「君は強くなって何を求める?」
まどか「私は……ポケモン達を不幸にするようなあの子達に……あんなやり方絶対間違ってるって、才能だけが強さじゃないって、証明したいんだと思います」
サキ「強さの証明、か……これは人からの受け売りというか、ある人が言ってた言葉なんだが――」
サキ「『確かに何になりたいかは大事だ。だが、それ以上に大事なのは強くなり、得た力で何をするのかではないのか?』ってね」
まどか「何をするのか…?」
サキ「強いだけじゃあ意味がないということかな。その強さで何がしたいのか……まどかははっきりしてるようだな」
まどか「そう、ですね……」
サキ(しかし、才能と言えばまどかもそう…バトルのセンスは相当のものだな……努力もしてきたんだろうが、やはり才能というやつか
『才能だけが強さじゃない』ことの証明……なんともまあ、多少皮肉っぽい話ではあるがな)
サキ「まあとにかく、情報不足だから今すぐに戦う訳でもない…じっくり強くなっていけばいい」
まどか「……はい」
サキ「旅はまだまだこれからじゃないか。明日からも旅を続けるのか?」
まどか「はい。明日は北のクサツタウンに行こうかなって、私は思ってるんですけど」
サキ「そうか……そうだ、つばなの湖には行ったのか?」
まどか「湖?はまだですけど……」
サキ「そいつはもったいないな。中々いい眺めだし、観光客もそうだがトレーナーが集まるから修行場としてもそこそこの人気なんだ」
まどか「へぇ……修行になるんなら、行ってみようかな」
まどかが明日の予定を思案していた頃――
みらい「"きあいパンチ"!」
ツンベアー「グァー!」ゴッ ダイケンキ「ギャフン」ゴハッ
さやか「あぁ!ミジュか!!」
みらい「よっしゃー!サキの仇!!」
さやか「うぅっごめんまどか……せっかくまどかが勝ってくれたのに……こんなやつにぃ!!」ガクッ
二人のバトルは、みらいの勝利という形で決着が付いたようだった。
サキ「どうやら向こうも終わったらしいな」
まどか「さやかちゃん、お疲れ様」
さやか「すまぬまどか……あたしはあいつにギャフンと言わすことができなかったよ……ギャフン」
まどか「わざわざ言わなくても……」
みらい「サーキー!ボク勝ったよ!!これで勝負はおあいこだね」
サキ「目的が変わってないか」
さやか「はぁ……こんなんじゃ駄目だ!もぉぉっと強くならなくちゃ!!」
まどか「だね!」
とりあえず二人で明日のことを話し合う。
さやかも特に反対理由はなく、むしろ修行できるのならと乗り気である。
さやか「そうだ!サキさん、あれまだですよね?」
サキ「あれ?」
さやか「決まってるじゃないですか~、あれといったらジム戦の後のあれですよ~」ウヘヘ
サキ「……あぁ、料理な」ポン
さやか「そうですそれ!さっそくいただいちゃっていいですか!?」
サキ「うちにはない」
さやか「ギャフン!」ズコー
まどか「さやかちゃん大丈夫?」
サキ「いや、先週送ってもらったやつが残ってたか?」
みらい「たぶん博物館の冷蔵庫にあったと思うけど」
さやか「あるんじゃないですか!ビックリしましたよほんとに!!」
みらい「でもさやかはバトルしてないし食べられないじゃん」
さやか「ギャフン!」ズコー
まどか「さやかちゃん大丈夫!?」
サキ「いいじゃないか、さやかもバッジを持ってることだし」
さやか「もう!上げたり落としたりひどい!」
まどか「まあまあ…私もちょっとお腹すいたし、期待してもいいですか?」
ニヤリと笑ってサキは答える。
サキ「当然だ」
―アンジェリカベアーズ―
ジムの隣にある博物館は石で造られている立派な建物だった。
さやか「どういう意味なの?アンジェリカって…ベアーズは分かるけど」
みらい「アンジェリカは『明日葉』…つけてくれたのはかずみだよ」
さやか「かずみ?」
中の受付で出迎えてくれたのはサキの妹という少女だった。
美幸「どうも、妹の浅海美幸です」
みらいと交代で博物館の案内などをやっているらしく、今日は美幸の番というわけだ。
サキ「こないだ届いたあれ、まだ残ってたよね?」
美幸「うん!冷蔵庫にあるはずだよ」
サキ「なら良かった。というわけで、ついて来てくれるか」
まどか「じゃあ早速――」
美幸「ちょっと待って!」ガシッ
まどか「なに?」
美幸「中学生は一人200円です」ニコッ
さやか「お金取るの!?」
商売上手だなーと文句を言いつつも、しぶしぶ払って中に入る。
扉を潜ると、百を超えるテディベアがガラスのショーケースに入れられ、ずらりと並んでいた。
中にはヒメグマやクマシュン系統以外のポケモンのぬいぐるみもある。
サキ「ここだ」
関係者以外立ち入り禁止と書かれ、ギアルの様な歯車が取りつけられたドアを開けると、目の前に巨大な冷蔵庫が姿を現した。
ひんやりとした冷気が溢れだしているのが分かる。
さやか「一体何なんですか?作り置きしてあるやつとか?」
みらい「かずみに作ってもらったお菓子と料理、その詰め合わせ」
まどか「かずみって、アスナロのジムリーダーの?」
サキ「あぁ。私は料理が作れないから定期的に作ってもらったものを送ってもらってるんだ
はっきり言って、そこらの店よりよっぽどうまいぞ」
さやか「早く早く!」ワクワク
ゆっくりと扉が開かれ、中にある袋が取り出された。
ムウマージの顔らしきものがプリントされてあり、まどかの体の半分が隠れてしまうほどの大きなものだ。
サキ「かずみ特性、『カズミックス』だ!」
みらい「みらい様からの粋な差し入れ、とくと受け取れい」
さやか「手柄横取りすんな」
まどか「何が入ってるんだろう……」ゴソゴソ
まどか「わぁお菓子がこんなに!」
さやか「おぉ、それじゃあさっそく」
まどさや「いただきまーす!」
まどか「……」モグモグ
さやか「……」モシャモシャ
まどか「おいしい!本当にお店のよりおいしいかも!」
さやか「ん~疲れた脳内に染み渡りますなあ」
サキ「こんなところで食べるのもなんだし、外に行かないか?」
みらい「さんせー」
博物館入り口付近のベンチに腰を下ろす。
客は一人でいる女性客とカップルのみで、美幸も受付を離れて一緒に座りにきた。
カズミックス入りの袋はまどか達の分とサキ達の分の二つだ。
さやか「しかし、かずみさんってのはとんでもないですね。料理も上手でバトルも強いって完璧じゃん」
サキ「そうでもないだろうさ。きっとかずみにしか分からない苦労もある」
みらい「だからそういう時は私達が助けてあげる番なわけ」
まどか「なんか、いいですね。仲間同士で助け合えるのって」
サキ「なんなら君らも入るか、プレイアデスに」
みらい「えぇー!さやかなんかが入れるわけ!?」
さやか「なんかとは失礼だな君は!」
サキ「そうなると七人をオーバーしてしまうから名前を変えなくなってしまうが……」
まどか「……あの、私は入るつもりはありませんよ」
サキ「フッ…まあ、そう言うとは思ってたよ」
まどか「今は旅を続けるだけですから」
さやか「……ところでさあ、なんか視線を感じない?」
まどか「さやかちゃんも気になってた?」
サキ「……そこにいるのは分かっている!出てこい!」ピシィッ
サキの鞭に驚いたのか、柱の陰からこちらを覗きこんでいた者の正体が光に晒された。
マイナン「……」プルプル
みらい「……あれってジムにいたマイナンじゃない?」
サキ「確かに私のマイナンのようだが、なんでこんなところに?」
さやか「おっ、こっちに来た」
必死で小走りでさやかの足に隠れたかと思うと、ほっぺから火花を散らしてサキを威嚇している。
さやか「ちょっと、なになに?このマイナンサキさんのポケモンじゃないんですか?」
みらい「言ったでしょ、そのマイナンは捕まえたばっかりでまだ先に懐いてないんだよ」
サキ「うーむ、私には近付こうともしなかったんだが……」
手を差し出そうとすると、慌ててさやかの頭に登っていく。
どうしてもサキとは触れ合いたくないらしい。
まどか「さやかちゃん懐かれちゃってるね」ティヒヒ
さやか「なんであたしに……」
みらい「そういえば、さやかとバトルしてる時もずっとこっち見てなかった?」
さやか「そうだっけ?」
みらい「だよ。ずっと火花のボンボン作って応援してたじゃん」
まどか「さやかちゃんのことが気に入ったんじゃない?」
さやか「えぇ!?あたし負けちゃったんだけど、そんな勝負に惹かれるものなの!?」
サキ「勝敗だけがバトルの魅力じゃないさ。私には懐かないで君には懐く、何か理由があったんだろう」
さやか「そうなの?」
マイナン「……」コクコク
さやか「うーん……サキさん、このマイナン、私の旅に連れて行ってもいいですか?」
マイナン「!」
サキ「私は構わんぞ。その方がマイナンも喜ぶだろう」
まどか「良かったねマイナン、さやかちゃん!」
さやか「えへへ…よーし!今日からあんたはあたしのポケモンだよ!」
マイナン「キュー!」バチバチ
みらい「喜んでる…そんなにサキのとこが嫌なのかな……」
さやか「名前決めなきゃなあ……メスみたいだしマイか、かな!よろしく!!」
まどか「よろしくねマイか!」
マイナン「マーイ!」
サキ「さて、私はそろそろ戻るよ。後はよろしくなみらい、美幸」
美幸「うん!」
みらい「案内ならボクに任せてよ!」
サキ「二人とも元気でな。一週間後にまた会おう」
まどか「サキさんもお元気で」
さやか「お菓子ありがとうでーす!」
たっぷりのお菓子を食べた後、挨拶を済ませたサキはジムに戻り、二人は博物館を見て回った。
案内してくれたみらいによると、展示されているテディベアたちは未来と美幸が作ったものが大半らしい。
まどか「私もちょっとだけど裁縫できるんだよ?これでも手芸部だったもん」
というわけで、まどかとみらいが存分にテディベアの魅力に着いて語り合っている間、
さやかは退屈な時間を仲間になったばかりのマイナンと他のポケモン達と一緒に過ごしていたのだった。
結局博物館を出たのは閉館時刻になってからだ。
まどか「バイバイみらいちゃん、またいっぱいお話ししようね」
さやか「次会ったときは必ずあたしが勝ーつ!首を洗って待っているがいい!」
みらい「へへーん、さやかなんかに負けるわけないじゃん」
まどか「またねー」
さやか「サキさんによろしく!」
みらい「おう!」
こうしてこの日は終わりを告げた。
明日目指すのはクサツタウンではなく、つばなの湖だ。
598 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/05/24(木) 23:30:26.95 l0B9NfBJ0 485/548後日談終了
さやかの四匹目!
~十三日目~―つばなの湖―
グンマー地方三大湖の一つ、それがつばなの湖だ。
小高い丘に位置し、湖の底にはかつてこの地を訪れたことのある珍しいポケモンを祭った祠があるという。
山の間から昇る太陽と湖面に映る輝きは実に美しく、多くの人が訪れる観光名所だ。
ヒメナ川と繋がっており、川を上って海からポケモンが迷い込むこともあるため釣りの名所でもある。
こんな風に人が集まってくるため、自然とポケモンバトルに発展することが多く、近年はトレーナーの修行の場として有名になってきた。
さて、そんな場所にやってきた二人もキレイハナよりダンゴロ……もとい、花より団子ということで、景色はそこそこに早速バトルを開始していた。
まどか「チャモっち"ほのおのうず"!」 バシャーモ「シャー!」ゴァァ
さやか「マイか"チャージビーム"!」 マイナン「マイー!」バリィィン
釣り人「うへぇー、あの嬢ちゃんたちつええなあ」
パラソルお姉さん「これは相当な腕利きね」
さやか「いやぁ、なんかすごいことになってるねあたしら」
まどか「ちょっと恥ずかしいね」アハハ
ピクニックガール「二人ならあっちのお姉ちゃんにも勝てるんじゃない?」
まどか「あっちのお姉ちゃん?」
キャンプボーイ「なんか一対一でバトルしてんだよ。まだ誰も勝ててねーんだ……負けたら食いもの置いてけって言われるんだぜ!」
さやか「ほほう、食べ物を賭けてバトルとな……誰だか知らないけど、お昼前にはもってこいの相手じゃん!」
まどか「もうそんな時間なんだ……私もちょっと頑張ってみようかな」
さやか「早速案内してくれたまえ!」
キャンプボーイとピクニックガールに連れていかれた先ではまた一人、山男がバトルに負け、少女の為に昼食用のお弁当を差し出していた。
せっかく嫁さんが作ってくれたのにと嘆いていたが、そんなことは少女にとってはどうでもよかった。
とにかく強い相手を求めていたのだ。
さやか「あれが噂のお姉ちゃんか……よろしい、次のバトルはあたしがあげるよ!」
取り巻きを押しのけ少女の前に名乗り出たさやかは、
さやか「いざ尋常に勝、負……」
杏子「よーしかかってき、な……」
さや杏「…………」
ボールを持って固まった。
さや杏「でええええええぇぇえぇえぇぇぇぇぇ!?」
まどか「さやかちゃーん、早いよぉ……って杏子ちゃん!?なんでここにいるの?」
再開は唐突に、湖の畔でだった。
さやか「あんたかよ食べ物かけてバトルやってる腹ペコ少女は!」
杏子「そんな名乗りした覚えはねーよ!いや、食いもん貰ってんのは事実だけどさ」
ピクニックガール「お姉ちゃん達知り合いなの?」
まどか「うん、そうだよ……こんなところで会うなんて思わなかったけど……」
さやか「ほんとだよ、あんた砂漠で修業してたんじゃないの?」
杏子「いやぁ、水と食糧がなくなったから砂漠のポケセンに泊まってからホテルに来るやつら待ち伏せて片っ端から勝負挑んでたんだけど、
追い出されちまってさ……せっかくだから気分を変えてこっちに来たってわけ」
まどか「じゃあえっと、負けたら食べ物って言うのは…?」
杏子「……金がないんだ」
八重歯をちらりと見せて杏子は笑った。
モモンの実のように、ほんのり頬が赤い。
さやか「はぁ…呆れた、お金なしでどうやって旅するつもりだったのよ」
杏子「いいじゃねーかよこうして生きてるんだから!それより」ボンッ
ゴウカザル「グアキィー!」
杏子「あたしとバトル、やってくれるんだろ?」ニカッ
さやか「ふっふっふ、よかろう!あたしに勝てたならさっき売店で買った、このつばな限定『ナスキャラメル』をくれてやろうではないか!」
杏子「一対一、先にダウンした方が負けだ」
さやか「分かりやすくていいじゃん。あんた相手なら遠慮はいらないよねっ!!」ボンッ ダイケンキ「ダーイ!」
杏子「フタチマルが進化したか……おもしれえ、相性なんか関係ねえ!いくぞザル!」
腹ペコ少女の 佐倉杏子が 勝負をしかけてきた!▽
http://www.youtube.com/watch?v=0dvjo07A91I&feature=related
――――――――
――――
―
さやか「そんな……」ガクッ
杏子「どうやらあたしの勝ちみたいだな」
さやか「ミジュかごめん…あそこで突っ込ませなかったら……」
杏子「そうそう、よく分かってんじゃん。相性がいいからってがむしゃらに突っ込んで勝てると思ったか?
相性がよかろうが悪かろうが、相手を見てどうするか判断する。それがトレーナーだ」
さやか「も…もう一回だ!このまま負けっぱなしでなるもんか!!」
杏子「あたしはいいけど、残念ながら順番待ちのお客様がいるみたいなんでね」
さやか「へ?」
まどか「ズルイよさやかちゃん!次は私の番なんだからね!」
パラソルお姉さん「次私よ!」
釣り人「いや俺だ!」
杏子「おーおー、今日はこんなに御飯が食えるとはな……今日のあたしはついてんな」
まどか「それは私とバトルしてから言ってよね」
杏子「フンッ…威勢がいいのは結構だけど、たまには先輩らしいとこ見せてやんないと――」シュパン
杏子「ね!」ボンッ キュウコン「コーン!」
まどか「チェンジするんだね……チャモっち!」ボンッ バシャーモ「シャモッ!」
杏子「まさかとは思ってたけど、やっぱりあんたも進化してたか……さあ、始めようか!!」
先輩の 佐倉杏子が 勝負をしかけてきた!▽
http://www.youtube.com/watch?v=0dvjo07A91I&feature=related
――――――――
――――
―
まどか「そんな……」ガクッ
杏子「あぶねー…コンの幻覚に惑わされずにきっちり攻撃してこれるかよ普通……」
まどか「ごめんチャモっち…あそこで私が分身を見破ってれば……」
杏子(そんなのまず無理だろ……)
杏子「ま、なんにしてもあんたらにもきっちり払ってもらおうかな」
さやか「うっ……えぇい!持ってけ泥棒こんちくしょー!!」ポイッ
杏子「投げんな!あと泥棒扱いすんじゃねーよ、合意の上だろうが!!」
まどか「私からは……はい」スッ
杏子「…?なんだよ、手だけ出してないでなんか乗せろよ」
まどか「今からお昼ごはんにするつもりなんだけど、一緒に食べない?奢るよ?」
杏子「……そいつはいいな」ガシッ
差し出された手を取り、杏子の食べ物を賭けたバトルは一旦休憩と相成った。
後ろに並んでいた人たちは残念そうだったが、そういえば自分達も昼食をとっていないことを思い出し、渋々散っていった。
まどか「ここは湖の水を使った流しそうめんとかできるらしいよ」
杏子「ほーん、あたしはまどかが奢ってくれるんなら何でもいいさ」
さやか「じゃあそれにしよっ!あたしもそうめん食べたいし」
三人が立ちよったところは、箸が使いかけであったり茹でてない麺が流されたり人が流し台を滑ってきたりと言ったハプニングもなく、
至って普通の流しそうめんが楽しめるところだった。
そんな食事の後、杏子が戦利品のお菓子を食べながら呟いた。
杏子「そういやマミのやつがさ、そろそろ本格的に考えるらしいな」
まどか「マミさんが?」
杏子「なんだ、聞いてないのか?」
さやか「もったいぶらずに教えてよ」
杏子「だから、休学制度だっけ?あれ使ってしばらく学校休んで本格的に修行というか、旅に出ようかなってさ」
さやか「マジで!?じゃああたしらと一緒に旅ができるかもってことじゃん!」
まどか「でもマミさんのパパやママは反対してるって言ってなかったっけ?勉強に勤しみなさい、って言われてるとか」
杏子「今日か明日辺りでその説得をするんだとよ。マミも受験生だしさ、そろそろ進路について悩む時期だろ……
忙しくなる前に、やりたいことやってスッキリしたいんじゃねーの」
まどか「クロマツ大会……だね」
杏子「マミがどんな人生を歩みたいのか知らないけど、やっぱ高校とか行っといた方がいいもんなのかねえ」
さやか「うーん……あたしらも考えなきゃならないよね、いつかは」
まどか「サキさんが言ってた、強くなった後のこと……でも本当はそれで終わりじゃなくって、その強さを維持するか手放すか
そんなことも考えていかなきゃならないんだよね……」
杏子「……しんみりすんなよ!その時になったら考えりゃいいじゃねーか。今は目の前のやることをやる、それでいいだろ」
さやか「だね。考えたって始まらないよ…未来なんて誰にも分かんないんだし」
まどか「誰にもってことはないんじゃない?ほら、イツサトタウンの織莉子さんとか」
さやか「あの人は特別でしょ~……それにしても、なんで杏子にだけ相談してあたしらには何も言ってくれなかったんだろ……ちょっとショック」
杏子「そりゃ簡単だ」
キャンプボーイから巻き上げた…もとい、貰ったRockyにぱくついて答える。
杏子「後輩にウジウジ悩んでる格好悪いところ見せたくなかったんだろ」
まどさや「……あぁ~」
少し納得した二人だった。
杏子「さてと、腹ごしらえも済んだし、あたしはそろそろバトルに戻るよ」
さやか「あたしらもせっかく来たんだし特訓してく?」
まどか「いろんな人とバトルしてみたけど、杏子ちゃん以外にはまだ負けてないんだよね」
杏子「……じゃあさ、あたしがちょっと鍛えてやろうか」
まどか「えっ!?いいの?」
さやか「へぇー、そんなこと言っていいわけ?あたしらはいつかあんただって超える存在……簡単に手を貸していいのかな~?」
杏子「はっ!一度でも勝ってから言ってみろよ……マミばっかりに先輩面させてらんないしね
それに、一つ、あたしとあんたらにゃ決定的な違いがあるからしばらく負けるつもりはないさ」
まどか「違い…?」
杏子「知りたいか?」ニッ
さやか「くっ……べ、別にあんたの助けなんか必要ないんだからね!」プイッ
まどか「私は……教えてもらおうかな」
さやか「ちょっとまどか!負けた相手にアドバイス貰うなんて……」
まどか「そんなこと言ってちゃ駄目だよ。強くなれるんなら、私は努力は惜しまないつもりだよ」
杏子「流石、さやかより筋がいいまどかは話が分かる。分からず屋のさやかは放っておいて特別に鍛えてやるよ」
さやか「……分かった、あたしにも教えてよ」フンッ
杏子「当然、そのつもりだ」ニッ
まどか(うわぁ……なんだろう)
さやか(滅茶苦茶いい笑顔じゃん……)
まどさや(なんか不安になるくらい)
杏子が連れてきたのは湖から少し歩いた砂漠近くの山。
所謂岩石砂漠というもので、岩肌が露出しており、岩タイプのポケモンが多く存在している場所だ。
杏子「おっ、ちゃんと着替えてきたな」
まどか「一応着替えたけど……」
さやか「なんで体操服なわけ?」
杏子「そりゃあ二人もポケモン達と一緒に山を登ってもらうからな」
さやまど「……へ?」
杏子「いいか、お前らに足りないのはトレーナー自身の体力だ。ちょっとここまで歩いてこれたからって体力が付いたと思ったか?
あたしから見たらまだまだだね」
まどか「杏子ちゃんは自信あるの?」
杏子「昔っから親父にバトルは教えてもらってたし、ムクと一緒に遊んでたからな。そこらの一般トレーナーよりはあるつもりさ」
さやか「で、それとバトルと何の関係があるの?」
杏子「トレーナーのモチベーションは当然バトルに影響してくる。疲れてんのにうまく命令できるやつはそうはいねえ
いつどんな状況で戦うことになるか分かんねえからな、走りながらとかポケモンに乗ったままバトルすることだってあるだろうし」
さやか「そんなことあるの?」
杏子「例えばだよ……なんにしても、突っ立ったまんま命令してるうちは半人前さ」
まどか「それで、どんなことするの?」
杏子「この山を登りながらバトルしてこい、二人でな」
さやか「登りながら!?そんなんできるかぁ!」
杏子「だからやるんだろ。先にゴールするか、相手のポケモン全員倒したら余ってる食いもん全部プレゼントだ」
まどか「よ、よーし!頑張ろうね!」
さやか「お…おう!ここまできたらやってやろうじゃんか!杏子に奪われたキャラメルを取り返す!!」
杏子「だから人聞きが悪いこと言うな」
それから二人は走り始めた。
険しい山道は予想以上に厳しく、行く手を遮る。
登るだけでも精一杯の中、さらに二人はポケモンを繰り出し状況を見て命令を下さなければならない。
まどか「はぁはぁ…カチっち、えっと……」
さやか「"はっけい"だぁ!」
リオル「リー!」バキィッ マラカッチ「カッチャ!」グハッ
杏子「遅いぞまどか!敵は待ってくんねーぞ!」
岩に手をかけよじ登る二人を余所に、杏子はムクホークの上から手をメガホン代わりに声をかけている。
さやか「きっつい…山登りが得意なリオすけで正解だったかも……ふぅ……」
杏子「だからってリオルに頼りっぱなしになるな!そいつがやられたら終わりか?違うだろ!」
まどか「"とびはねる"!」
さやか「はぁ…し、しまったあんなに高いとこまで…!」
杏子「気を付けろさやか!来るぞ!」
さやか「か、"カウンター"!」
まどか「"ソーラービーム"!」
マラカッチ「カー…ッチャー!」キィーン リオル「リオー!」チュドーン
さやか「あぁリオすけ!」ゼェハァ
杏子「あーあー、ちゃんと見ないからだ」
さやか「うるさい……高みの見物してるあんたに言われたくない……ハァ…ハァ……」
杏子「文句は登り切ってから聞いてやる!早く次のポケモンを出せ!」
こんな調子で登山を続け、二人とも喉はガラガラ足はガクガク腕はプルプル体はヘトヘトだった。
残るポケモンはまどかがトゲピー、さやかはマイナンのみとなった。
頂上まであと僅かとなった今、先に相手のポケモンを倒すかゴールを目指すかの決断が、勝負の別れ目となるだろう。
杏子「ほらほら、どっちが先にゴールすんだ~?」
さやか(まどかのトゲっちはこういう険しい場所に慣れてないはず……"ゆびをふる"は怖いけど、ここはバトルでケリをつける!)
まどか(さやかちゃんのマイかとまともにバトルしたら勝てるかどうか分からない……だったら、無理せず駆け抜ける…!)
さやか「マイか"でんこうせっか"!」
まどか「来た…!トゲっち"オウムがえし"で逃げるよ!」
岩場をものともせず飛び込んできたマイナンに構わず、まどかとトゲピーはゴールに向かってラストスパートをかけた。
トゲピーは電光石火を真似して素早く岩山を登っていく。
そんな逃げる二人に、後ろからマイナンのスピードスターが襲いかかる。
しかし多少のダメージは無視し、ひたすらに上を目指した。
さやか「だったら…"でんじは"だ!」
マイナン「ママー!」バリバリィ
まどか「あうっ!」 トゲピー「ピー!」
杏子「トゲピーと、ついでにまどかも痺れちまったか……こりゃ勝負あったかな」
さやか「はぁはぁ……悪いねまどか、お先にゴールさせてもら――」
ズズーン
まどか「な、何の音…?」
杏子「あらら……来ちまったようだな、この山の主が」
さやか「主ぃ?」
ズズーン
ボスゴドラ「ゴアアァァァァ!!!」
さやか「ボスゴドラ!?しかもなんか怒ってるっぽい!」
まどか「図鑑だと…山一つを自分の縄張りにしてて荒らした相手は……容赦なく叩きのめす!?」
ボスゴドラ「ギャーオオォオオオオオ!!」
杏子「まどかとトゲピーは麻痺で戦えそうにないとなると、さやかだけか」
さやか「マイかだけじゃ無理だよ!杏子ヘルプ!!」
杏子「いいからやってみろ。ポケモンはトレーナーを信じてるんだぞ、最後は自分の力を信じるしかねーんだ!」
さやか「――ッ!あーもう!マイか"チャージビーム"!」
ボスゴドラ「ゴァァァ!」ゴシャァァ
まどか「きゃぁっ!」
さやか「足場を揺らした!?まさか――」
ガラガラガラ
杏子「山の岩を使った"いわなだれ"だ」
マイナン「ッ!」ササッ
さやか「どこ行くのマイか!?」ダッ
ドッジャーーン
まどか「さやかちゃん!杏子ちゃん、さやかちゃんが!」
杏子「よく見ろ、無事だ」
まどか「え…?」
襲いかかった岩に潰されることなく、さやかとマイナンは岩陰に隠れていた。
とっさにマイナンが逃げ込んだ場所に、さやかもギリギリ入ることができたのだ。
杏子「しょうがねえなぁ……よく考えろよさやか!相手の図体がでかくたって一撃で沈めることだってできるんだぞ!」
さやか「考えろったって簡単に言ってくれるな!」
杏子「ちょっとくらい悪いこと考えたってバチはあたらねーんだぞ」
さやか「いやその理屈はおかし……あぁっ!」
まどか「……あっ!」
何かに気付いたらしく、さやかはこっそりマイナンに命令する。
ボスゴドラはさやか達がまだ平気な顔をしていることに、さらに怒り心頭の様子だ。
杏子「ほらよ、ちょっとだけ手を貸してやる」ボンッ プラスル「プルル!」
さやか「なるほどね、特性『プラス』と『マイナス』か。悪くないじゃん」
杏子「一緒に攻撃してやろうか?」ニッ
さやか「いいや、もう充分のはずだよ」
ボスゴドラ「ッ……ゴォォォドドォォォォオオオォ!!!」ドドドドッ
さやか「マイか、準備できた?」 マイナン「……」コクリ
さやか「いっけぇー!"10まんボルト"ぉぉ!!!」
ズババババババババーン
ボスゴドラ「……キュゥ~~」ドスーン
さやか「イエーイ!ナイスマイか!」パーン
杏子「"わるだくみ"で特攻を上げて、特性『プラス』『マイナス』を持ったポケモンがいればでさらに威力をアップ…大抵のやつは一撃だな」
さやか「"チャージビーム"のおかげでさらに威力アップしてたもんね。こんだけでかいやつでも余裕だよ!」
杏子「さてと、これで邪魔者はいなくなったし後はゴールを……おっ」
さやか「あれ?」
ふと目をやると、先程までそこにいたはずのまどかとトゲピーの姿が見えなかった。
まどか「やっほー!私の勝ちだよー!」
それもそのはず。
すでに二人とも頂上に到達していたのだから。
さやか「えぇー!?なんでぇ!?いつの間に!」
杏子「ん?トゲピーの麻痺が治ってやがるな」
まどか「えへへ、私はまだちょっと痺れてるけど、トゲっちはもう平気だよ。代わりにボスゴドラが痺れてるんじゃないかな?」
さやか「ボスゴドラが?」
ボスゴドラ「……」ビリッ
さやか「そういえばこっちに突っ込んでくる前、一瞬動きが止まってたような……」
杏子「そういやトゲピーって"サイコシフト"使えんのか」
まどか「うん!自分の状態異常を相手に移す技…マイかが攻撃する前にボスゴドラに麻痺を移しといたんだ」
さやか「その隙にゴールしたっていうの!?けしからーん卑怯だぞまどかー!」
まどか「ティヒヒ、悪いこと思いついちゃったから」
杏子「ってなわけで、勝者はまどかだな」
さやか「うぅっ…なんか最近の私いいとこ全然ない気がする……」トホホ
その後すぐにさやかが到着し、いったん休憩に入った。
慣れないことをやった為、二人ともくたくたである。
杏子「さてと、食いもんは後で渡すとして……どうだ?これで少しはあたしとやりあえるくらいには成長したんじゃないの?」
さやか「あぁぁぁ……そうかもね……」
まどか「これ降りるのも大変だよね……ふぅ……」
杏子「帰りもやるか?」
まどさや「やらない!」
杏子「即答かよ…ま、帰りくらいムクに乗せてってやるよ。今日はポケセンでゆっくりしてくか」
さやか「乗せてくれんの?サンキュー……明日はさ、絶対クサツタウンまで行こうよ」
まどか「温泉かぁ……いいね」
杏子「ふーん、温泉ねぇ……あたしもそろそろ場所変えてみるか」
さやか「なに?温泉街で修業でもするの?」
杏子「しねえよ!クサツより北のユウマタウンか近くのみなかみの湖に行ってみようかなってね」
まどか「じゃあ一緒に温泉入る!?皆で入ると楽しいよ!」
杏子「あ、あたしはいいよ別に……」
さやか「なにさぁ、ひょっとして恥ずかしいのぉ?」ニヤニヤ
杏子「う…うっせー!さっさと帰るぞ!」 ムクホーク「クェー!」バササッ
杏子「乗らねーんなら置いてくぞー」
まどか「わぁ待ってよ杏子ちゃん!」
さやか「それだけは勘弁して!」
一同はムクホークに乗って下山し、湖にあるポケモンセンターを目指した。
夕食などを済ませ、まどか、さやか、杏子の順で入浴。
杏子が風呂からあがると、なにやらさやかがマイナンに図鑑を向けてじっと考え込んでいた。
杏子「何熱心に見てんだ?」
まどか「えっとね、さやかちゃんがマイナンの図鑑説明を見てたんだけど……」
さやか「見て、プラスルとマイナンの発する電気は血液の流れをよくしてコリをほぐす効果があるんだって!」
杏子「へー、そいつは初耳だ」
さやか「で、だよ?杏子のプラとあたしのマイかでマッサージしてもらおうよ!」
杏子「マッサージ?んなことできんのかよ、あたしのプラって結構ズボラだからなぁ…細かい作業とか向いてないぞ」
さやか「そこはあたしのマイかにお任せ!慎重で丁寧な作業を心掛けてくれるよ!」
杏子「ふーん」
まどか「明日に疲れが残らないんなら、やってみてもいいんじゃないかなぁって」
杏子「ま、いいんじゃねーの」ボンッ プラスル「スル?」
さやか「よーしマイか、早速お願いね」ボンッ マイナン「イナ!」
まどか「誰からやってみる?」
杏子「あたしはパス。別にそこまで疲れてねーし様子見してからやらせてもらうよ」
さやか「んじゃあまずはあたしからねー、二人ともよろしく」ゴロン
この判断が後に面倒事の引き金になるとは、誰も思っていなかった……
ベッドにさやかが俯きで寝転び、プラスルとマイナンが背中に乗る。
二匹が手を繋いで軽い電気を作り出し、開いている方の手でそっとさやかの背を撫でていく。
さやか「痛たた!もうちょっと弱めの電気でお願い!」
プラマイ「……」バチッ スゥ
さやか「おっ…なんかいい感じかも……」
まどか「……どう?さやかちゃん」
さやか「電気は弱め、撫でる力は強めが丁度いいかも……あっ、そこいいよマイか……ちょっと強めでお願い~」
初めは優しく撫でたり押さえたりし、さやかのツボを探していく。
やがてコツを掴んだのか電気の強弱、押さえる力を調整。
さやか「ひぁっ!」ビクッ
時には尻尾を使って撫でたりもする。
まどか「さ、さやかちゃん大丈夫…?」
さやか「ん…うん、ちょっとびっくりしただけ……」
まどか(なんか……色っぽい声だったなあ……)
そうして徐々に背中、腰、脚へと移っていくごとに、微妙にさやかに変化が訪れる。
さやか「…はぁ……んっ……」
杏子「……大丈夫か?」
さやか「あっ…へい、き……結構、気持ちいいもんだね……んっ」
まどか「へ、へぇー…気持ちいいんだ……」
さやか「んぁっ!」ビクン
まど杏「!?」
さやか「んんっ…はぁ…ぁん……」
まどか(なんだろう…凄くドキドキしてきた……)
杏子(落ち着け、これはただのマッサージ……全然おかしいことなんかない……)
さやか「はっ…はぁっ……こ……今度は、仰向けに…なってみようかな……」ゴロン
まどか「仰向けって……」
さやか「お願いね二人とも」ドキドキ
プラマイ「……」バチッ スススッ
さやか「んぁっ!そこ…強すぎぃ……」
まどか(はわわわ……もうなんだか見てられないよぉ)
杏子「お、おい…もうそろそろいいんじゃないか…?」
さやか「ぁっ…もうちょっと、だけ……もうちょっとだから……」
何がもうちょっとなのか。
さやか「ひゃっ!あっ…あああっ!いいよマイか…気持ちぃ……んぅっ!」
結局まどか達は止めることができず、日を跨ぐまでさやかの甘美な声が部屋中に響き続けたのだった。
~深夜~
さやか「ハァ…ハァ…はぁぁ……」クテン
まどか「お…終わった…?」
さやか「あぁなんかごめん……あたし一人でマッサージされちゃって……」
杏子「マッサージ……そうだよな!ありゃマッサージだったもんな!うん、仕方ない!」コクコク
さやか「なんかこう……燃え尽きた感があるよね」
まどか「へぇそうなんだ」
さやか「…?どうかした?」
まどか「うぅん、なんでもない……なんでもないんだよ、ほんとに」
さやか「?それより、次は誰がやるの?」
杏子「あ、あたしはパス」
まどか「私も、やっぱり今日はいいかなぁって……」
さやか「そう?結構気持ち良かったんだけどなぁ」
果たしてどういう意味の気持ちいいだったのか。
まどか「ほら!もう寝よっ!おやすみ!!」ガバッ
杏子「だ、だな!あたしも寝るからおやすみ!」ガバッ
さやか「ん~?何焦ってんのかよく分かんないけど、おやすみ~」
色々と情熱的な夜は、こうして静かに幕を下ろした。
~十四日目~
さやか「んん~~!実にいい朝だね~」ググッ
まどか「おはようさやかちゃん…早いね……」
さやか「いやぁ~昨日マイかとぷらにしてもらったマッサージが聞いたのかな?体中軽くってさ~」
まどか「よ、良かったね……私は体中ガタガタだよ」
さやか「まどかもやってもらえばよかったのに。気持ち良かったよ?」
まどか「えと、それはやっぱり恥ずかしいかなって……」カァァ
さやか「んん???」
さやか「まあいいや、あたしちょっと朝の散歩してくるね」
まどか「あっ、私も行きたい。朝の湖の景色も綺麗なんだって!」
さやか「杏子…はぐっすりか……いいや、あたしらだけで行っちゃお」
まどか「おはようみんな、お散歩に行くよ」ボボンッ
ポケモンセンターの扉を開くと清々しい空気が二人を包む。
静かな湖畔にはコダックやヤドンが朝の日光浴を始め、水面では浮かぶコアルヒーやスワンナがいまだ眠りに就いている。
山の中からポッポ達の囀りがたまに響くと、バタフリーの群れが遠くまで花の蜜を探しに羽ばたきだす。
さやか達の他にも散歩を楽しもうという者や、絶景の写真を収めようとする者など、早起きは意外と多い。
二人はポケモンたちと一緒に湖の周りを歩き始めた。
まどか「いろんなポケモンがいるんだね」
さやか「昨日は全然気付かなかったなぁ……ま、ボールは持ってきてないし、この空気をぶち壊すのもあれだからゲットは諦めますか」
まどか「そうだね」
パラソルお姉さん「あら、あなた達昨日の……」
まどか「おはようございます。えっと、バトルしてくれた人、ですよね?」
パラソルお姉さん「そうよ。びっくりしたわ、思っていたより何倍も強かったんだもの」
さやか「いやぁそんなに褒めてもらえるなんてねぇ~」アハハ
パラソルお姉さん「でも、私はあなた達の何倍も強い人たちのもとで働いてるから、あの人たちに比べたらまだまだね」
さやか「へぇー…そりゃいつかバトルしてみたいもんですね」
パラソルお姉さん「ふふっ、本当にそんなことになりそうで怖いわ……」
まどか「?」
パラソルお姉さん「じゃあ、私はそろそろ行くわね」
さやか「また会えた時はバトルしてくださいねー!」
パラソルお姉さん「さようなら、鹿目まどかさん、美樹さやかさん」スタスタ
まどか「えっ…?」
さやか「さーてと、散歩の続きといこっか」
まどか「……ねえ、私達自己紹介したっけ?」
さやか「ん~?そういえば……昨日バトルした時かなぁ?」
まどか「そうだっけ……」
さやか「いろんな人とバトルやってたしあんま覚えてないね…まあ、細かいことはいいじゃん!」
まどか「うん……そうだね」
さやか「結構歩いたね~」
まどか「そろそろ杏子ちゃんも起きたかな?」
さやか「一人ぼっちになって泣いてるかもね」プププ
まどか「もう…そろそろ戻ろっか」
さやか「うし!」
そうやって踵を返そうとしたところで、
さやか「およ?」
湖に浮かぶ何かをさやかは見つけた。
さやか「ねえまどか、あれなんだろ?」
まどか「あれ?あれは……白くてちょっと長くて……尻尾がある」
さやか「尻尾?ってことはポケモンかな」
まどか「……何だか様子が変だよ、ぐったりしてる!」
さやか「マジか!ミジュか、ちょっと"なみのり"で近づいてみよう」
ダイケンキ「グォー」バッシャーン
さやか「まどかはここで待ってて、すぐ戻るから。元気ならあたしらが近付いたらなんか反応するはずだし」
さやかはダイケンキの背中に座り、ゆっくりと進んでいく。
しかしそのポケモンは一向に反応を見せず、とうとう正体が分かるまで近づいても動こうとしなかった。
さやか「これは……ジュゴンだ!怪我してるのかな…ミジュかもうちょっと寄せて、背中に乗せて岸まで連れて行こう」
そう言ってジュゴンの体を抱きかかえ、ダイケンキに乗せようとしたのだが、さやかは先に図鑑で確認しておくべきだったのである。
さやか「んぐっ…こいつ重っ…!……ぬぅおりゃぁぁ~~!!!」ググッ
ツルッ
さやか「あっ」
バッシャーン
ジュゴンの体重は120キロほどあるということを。
まどか「さやかちゃん大丈夫!?」
さやか「全然ダメ…ほんとここ最近のあたしいいとこないよ……ヘックシュ!」
まどか「チャモっち軽く暖めてあげて!」
さやか「待ったまどか!あたし一回ポケセン帰るし、こいつも連れて行こうと思う」
まどか「この子ジュゴンだよね?どこか怪我してるの?」
さやか「ここ来るまでにちょっと見てみたんだけど、かなり弱ってるみたい……だからポケセンに預けようと思って
結構重かったからミジュかに水ん中で運んでもらうよ……」
まどか「分かった、じゃあ早くしないとだね」
さやか「そうなんだけど……体が重いよぉ……ハクチュッ」
来た道を戻りポケモンセンターの前まで行くと、杏子が外に出ていた。
こちらに気付き駆け寄ってくると、その異常さに突っ込まずにはいられなかった。
杏子「な、なんださやか?ふざけて湖にでも落ちたのか?」
さやか「訳は後で話すよ……それより、ボール持ってない?この子一回ポケモンセンターに預けたいんだけど」
杏子「この子って…ジュゴンじゃねえか!なんでこんなとこにいるんだ?こいつ元々海のポケモンだろ」
まどか「さっき話してたんだけど、つばなの湖って海に通じてるヒメナ川とも繋がってるっていう話があるでしょ?
だから海から迷い込んだんじゃないかなって」
さやか「もしくは……誰かが逃がしたのか……」
杏子「……とにかく、ボールだな。待ってろ」
まどか「私が見てるから、さやかちゃん着替えてきたら?」
さやか「クシュン……悪いね、そうするよ」
その後杏子の持ってきたボールに入れられ、ジュゴンは預けられた。
待っている間にさやかはシャワーを浴びて着替えると、三人で朝食を済ませた。
そうしてジュゴンが回復したとの連絡が入った。
ジョーイ「これで元気いっぱいよ!きっと慣れない淡水で疲れちゃったのね」
さやか「ありがとうございます」
三人は湖でジュゴンをボールから出した。
まさに水を得た魚のように、力強く泳ぎだした。
まどか「元気になってよかったね」
さやか「ほんとほんと、一時はどうなる事かと思ったよ」
杏子「しかし、どっち道ここじゃあ生きられねーみたいだな……」
さやか「おーい!ジュゴンー!海まで自分で帰れるか―い?」
ジュゴン「ゴーン!」バッシャー
さやか「ははっ、大丈夫みたいだね」
ジュゴン「パウゥゥゥ」パァァァァ
まどか「わぁ……」
杏子「おいおいここは北国じゃねーんだぞ……ま、綺麗だけどさ」
さやか「"オーロラビーム"でオーロラのカーテンだ…!元気でねージュゴーン!」
朝日と湖とオーロラという不思議な光景を目に焼き付け、一同はクサツタウンを目指すために、つばなの湖を出発した。
途中ヒメナシティにも立ち寄ったが、サキもみらいも忙しそうだったため、サキの妹の美幸に挨拶だけして街を離れた。
森を抜け、ほんのり硫黄の香りが立ち込めてくると、そこはグンマー地方屈指の温泉街クサツタウンだ。
―クサツタウン―
辺りを自然に囲まれ、あちらこちらに温泉宿や土産屋が立ち並ぶのがこのクサツタウン。
ホウエンのフエン温泉、カントーナナシマのともしび温泉と並ぶ、名湯と評されるのがこのクサツ温泉だ。
これまた観光客で賑わっており、グンマーだけでなく他の地方からも多くの人が訪れてくる。
午後三時、三人は一旦ポケモンセンターに向かってからすぐさま街へと繰り出した。
この街にはジムがないためまどか達はしばらくのんびりと過ごすつもりだ。
それと、まどかは一つ気になっていることがあった。
さやか「誰にメール?」
まどか「マミさんに。明日最後のジムに挑戦するんだったよね?」
杏子「あぁ、一昨日くらいに電話があってな」
さやか「あんたポケ―タイ持ってたんだ」
杏子「うっせー」
まどか「だから応援のメール……頑張ってください…っと」
さやか「あたしも励ましのメールでも送りますかな」ポチポチ
まどか「マミさんびっくりするかなぁ」
さやか「ふふーん、きっと感動で涙流しちゃうよ」
杏子「そんな程度で泣くかよ」
さやか「分かってないなー杏子は、あの私達の前だとカッコいいマミさんが実は知らないところで涙してるかもしれない!
そのギャップが萌えるんじゃないの」
杏子「はぁ?」
まどか「萌えはわけ分かんないけど、言いたいことは分かるよさやかちゃん!」
さやか「流石まどか話が分かる!」
杏子「ついてけねー……ま、こいつらも元気になったしあたしはそろそろ行くよ」
まどか「行くって…駄目だよ!一緒に温泉入ろうよ!」
杏子「だからあたしはいいって……」
まどか「また食べ物バトルするの?」
杏子「そりゃまあ……金もそんなにないし」
まどか「温泉だよ?入らなきゃ絶対損だよ!!」
杏子「いやだから――」
さやか「もうぐちぐちうっさいっ!まどか右手!」ガシッ
杏子「は?」
まどか「合点!」ガシッ
杏子「おい何すんだ離せ!」
さやか「まずはおやつに屋台でも巡りますかな~」
まどか「私あれ食べたい!マグカルゴが温めた卵!」
杏子「温泉卵じゃねえのかよ!」
さやか「じゃあまずはそこに向かってレッツゴー!」
杏子「引きずんな!あと話聞けお前らーー!!!」ズルズル
まどか「さっきのマミさんの話と似てるけど」ニコッ
杏子「?」
さやか「普段は強気に振る舞ってる奴が温泉で恥ずかしそうにしてる姿って……萌えなんじゃない?」ニコリ
杏子「――!?」ゾクッ
杏子「おい馬鹿離せ!マジでやめろ!!」ジタバタ
まどか「あと昨日鍛えてもらったからそのお礼だよね」ニコニコ
杏子「そっちが本音じゃねーかっ!」
さやか「遠慮しない遠慮しない!ちょっとくらいなら奢るからさー」ニコニコ
杏子「やーーめーーろーーーー!!!」
無理矢理引きずられていた杏子も、色々と見て歩きながらおいしいものを食べているうちに、いつの間にか大人しくなった。
クサツ名物、「ゴーリキーと共同湯もみ体験」が終わったところで、ちょうどまどかのポケ―タイが鳴りだした。
まどか「マミさんからだ!スピーカーにするね」
ピッ
まどか「もしもし?」
マミ『鹿目さん?お久しぶりね』
まどか「はい!何日ぶりですかね」
さやか「マミさーん!あたしも杏子もいるよー!」
杏子「よーマミ、二日ぶりだな」
マミ『やっぱり佐倉さんが一緒だったのね……せっかく二人を驚かせようと思って黙ってたのに、言っちゃうなんてひどいわ』
杏子「口止めされなかったからな」
マミ『今どの街にいるの?』
まどか「今みんなでクサツタウンです。この後みんなで温泉に行こうと思ってるんです」
マミ『あら、いいわね』
さやか「頑張ってマミさん!明日ズバッと勝って一緒に旅しましょうね!」
マミ『っ……そのことなんだけど……』
まどか「えっ…?ひょっとして、許してもらえなかったんですか…?」
マミ『明日もその街で待っててくれる?必ず行くからねっ!』
まどか「はっ、はい!楽しみにしてます!!」
さやか「って自信満々かい!」
まどか「マミさんが来てくれたら心強いです……待ってますから」
杏子「おいマミ!せっかく来るんならバトルするぞ!今度こそ負けねーからな!!」
マミ『えぇ勿論!覚悟しておきなさい』
まどか「じゃあ、また明日」
ピッ
さやか「これで旅も賑やかになるねぇ!四人とかすんごい大所帯じゃん」
杏子「おいあたしを数に入れんなよ!あたしは別に旅をするつもりはねーからな」
さやか「いいじゃん、その方が修行になるんと思うんだけどなぁ」
杏子「あたしにはあたしのやり方があんだよ」
まどか「じゃあそろそろ今日の宿でも――」
<逃げろー!
<また出やがったぞあいつら!! \誰かウサギさん呼んでこーい!/
まどか「ウサギさん!?」
さやか「何が出たんだろ?」
男「やれやれまたか……」
杏子「おいおっさん、一体何事だ?」
男「あんたら観光客?ここんとこ山でポケモン達の数が増えて町まで降りてきちゃ暴れてんのよ
ヤミラミとかバルチャイとかね」
女「だから私達ウサギさんにいっつも頼んでるのよ」
まどか「ウサギさん…!ど、どんな子なんですか!?可愛いんですか!?」
女「可愛いし、ウサギさんとぉっても強いのよ~!なんとかって団体にいるらしいわ」
杏子「なんとかって……」
さやか「せっかくだから見に行ってみようよ!」
まどか「うん!ウサギさんが頑張って戦ってるとこ見てみたい!」
タッタッタ
女「そうそう思いだした!確かプレイアデスとか言う……って、もういなくなってるじゃない」
騒ぎのあった場所に三人が着くと、酷い数のポケモン達が人々に襲いかかり土産屋の食糧を漁ったり民家に侵入したりしていた。
さやか「うわっ、こりゃひどい!」
杏子「なんだこの数……野生のポケモン達にしても結構な数だぞ」
まどか「ウサギさんまだかな……早くしないと大変なことになっちゃう!」
さやか「しゃーない、あたしらでやろう!」
どこで手間取っているのか、ウサギさんとやらはなかなか現れなかったため、まどか達はポケモンをボールから出した。
杏子「あたしはヤミラミとバルチャイをやる。さやかはソルロックとバルキー」
まどか「私はバチュルとメラルバだね…いくよチャモっち!」
三人が戦闘態勢に入った時、可愛らしい声が背後からかけられた。
???「待って下さい、旅の方」
まどか「もしかして……ウサギちゃん!?」クルッ
さやか「落ち着け、ちゃんづけになってる」
???「…?確かに私は宇佐木里美という名前だけど、どうして知ってるの?」
白いドレスの様なワンピースを纏った少女がボールを構えて立っている。
さやか「後で説明しますから先にこいつらどうにかしましょう!!」
里美「そうね!ミミこ!ニャルこ!リーた!」ボボボンッ
ミミロップ「ミミ~」 ニャルマー「ニャーン」 リーシャン「シャンリー」
さやか「おぉ可愛らしいポケモン達!」
杏子「だが、どいつも鍛えられた目をしてやがるな……相当手強いぞ」
まどか「……」
里美「ミミこはあっち、リーたはこっちのこ、ニャルこは私と一緒にこの子ね!」
杏子「リーシャンか…ザルも頼むぞ!」
さやか「ミミロップよろしくね!行くよミジュか!!」
里美「頑張りましょうね!えっと、お名前は?」
まどか「……あっ、鹿目まどかです」
里美「まどかちゃんね…大丈夫?なんだか肩に力が入ってるみたいだけど」
まどか「はい……あの、ウサギさんなんですよね?」
里美「?そうだけど……」
まどか(『ウサギさん』……イメージと違う……)
里美「ニャルこ"みだれひっかき"!」
まどか「えと、チャモっち"ほのおのうず"!」
一匹ずつニャルマーが引っ掻き、周りの敵を炎の渦が取り囲んで一掃していく。
バチュル「バチュチュチュ…」 メラルバ「メバ~」
里美「それいい技ね、他に炎タイプの技はある?」
まどか「一応ありますけど……どうするんですか?」
里美「よーし、ニャルこ"ねこのて"!」
ニャルマー「コニャーン」ササッ
ボァァァァ
まどか「すごい!ウサギさんのニャルマー"ほのおのうず"使えるんですか!?」
里美「違うわ、あれはまどかちゃんのバシャーモの技よ」
まどか「そっか、"ねこのて"って味方のポケモンの技が使える技でしたね!」
里美「うふふ、そういうことよ」
二人とも効率よく技を当てていくが、何せ今回は数が多い。
埒が明かないと思った里美は、いつもの作戦で行くことに決めた。
里美「まどかちゃん、私が合図したら攻撃お願いね!」
まどか「へ?」
里美「ニャルこ、いつものいくよ!」
里美の指示で、ニャルマーは素早く走りだし、バチュルやメラルバ達を一匹ずつ睨んでいく。
睨まれたポケモン達は、どこか恍惚とした表情で黙ってしまった。
まどか「何をしてるんですか?」
里美「暗示をかけてるの…ニャルマーは鋭い目つきで相手を睨むと軽い催眠状態にできるの
それで、簡単な命令を与えることができるのよ」
まどか「"さいみんじゅつ"ですか?」
里美「そう。さあ、そろそろよ……」
ニャルマーが全員に暗示をかけ終わり、ごろにゃーんと甘い声で鳴くと、ポケモン達は一斉にこちらを振り向き列を成した。
里美「来るよまどかちゃん!炎技の準備を!」
まどか「いくよチャモっち!」
里美「今よニャルこ!」
ニャルマー「ニャンパラリ~!」
バチュル「!!」ザッ メラルバ「!!」ザザッ
まどか「チャモっち"ほのおのうず"!」
里美の合図でニャルマーが命令を出し、ポケモン達が二列になってこちらに飛び込んできた。
そこに向かって正面からバシャーモが炎の渦を浴びせ、根こそぎ戦闘不能にしていく。
たまらずバチュルもメラルバも逃げ出していき、いなくなったころにはさやかと杏子の方も終わったようだった。
さやか「こっちは終わったよー!」
杏子「やるじゃねーかリーシャン」
里美「やったね!あなた達強いのね」
まどか「ウサギさんも凄いですね…いつも一人でこんな数のポケモンを相手してるんですか?」
里美「うーん……今まではこんなにたくさんのポケモンが街に下りてくることなんてなかったんだけどね……
何かの原因で生態系が変わっちゃったみたいなの」
まどか「生態系が……」
町長「流石宇佐木さん!いつもありがとうございます」
里美「いえ、どういたしまして」
女「ホント頼りになるわねえ」
里美「また何かあったら呼んで下さいね」
\ワイワイ/ \ガヤガヤ/
さやか「すごい人気だね、ウサギさん」
杏子「厄介事は全部あいつが請け負ってんのか……どっかの自警団みたいだな」
まどか「ウサギちゃんほんわかしてるけどほんとに強かったね」
さやか「確かに…命令なしでもあのミミロップちゃんと対処してたもんね」
町民たちのお礼が終わると、里美は一息ついてこちらに寄って来た。
ポケモン達はほとんど疲れを見せておらず、余裕の表情だ。
里美「あなた達もありがとう!今日は楽に倒せたわ」
さやか「なんのなんの!あたしらにかかれば余裕っスよ!!ジムバッジだって持ってんですから」
里美「そうなの!?なら、トキサダメとかアスナロはもういった?」
まどか「アスナロはまだですね。グンマーはカザミノ、トキサダメ、ヒメナ、タカサキのバッジを持ってます」
里美「ならサキちゃんとニコちゃんと戦ったのよね!二人とも強いからねぇ~」
まどか「二人のこと知ってるんですか?」
さやか「ていうか、その二人のチョイスってことは……」
里美「私達はプレイアデス星団っていう自警団をやってるの!」
「泊まる場所が決まっていないなら今日のお礼をしてあげる」ということで、里美と両親が営んでいるという旅館に案内してもらうことにした。
道中で自己紹介を済ませると、最近のクサツタウンの話をしてくれた。
里美「最近本当に多いの、山からポケモン達が降りてきて食べ物を盗っていったりする事件
バチュルなんて民家のコンセントから電気を吸い取っていくのよ」
まどか「ホントだ、図鑑にそういう術を知ってるって書いてある……」
さやか「最近ってことは、昔はそうでもなかったんですか?」
里美「そうね、ここ数ヶ月くらい特に……そういえば、ヤミラミってこの辺には昔はいなかった気がするけど」
杏子「……どこかから誰かが持ってきた、ってことか」
まどか「!!」
さやか「まさか……」
里美「何の話?」
杏子「サキとかニコから聞いてねーか?」
まどか達が『Wの組織』の話を始めると、里美はやはり聞いたことがあったらしく、真剣に聞いてくれた。
里美「……酷いことするのね、その子たち」
まどか「あの子達が逃がしたポケモンっていう可能性はあると思います」
里美「そうね……今度集まりましょうってサキちゃんから連絡もあったし、一度話し合った方がいいわね」
さやか「あ!それあたしらも参加するんで――」
里美「あっ、着いたわ!ここが私の家で旅館の『マグカルゴ荘』よ」
さやか「って聞いてないし……マイペースな人だなぁ」
―民宿・マグカルゴ荘―
『マグカルゴ荘』という旅館は、外観から廃れ具合が分かるほどに老朽化していた。
一昔前に作られたらしき木造様式の館。
その節々を繋ぎ止めているはずの鉄材は最早その役目を全うできるのか疑問なほど錆びつき、
全体を彩りよく飾っていたはずのペンキは所々剥げ、修復しているような箇所も見受けられる。
杏子には少し懐かしく感じられる、少し寂れた旅館だった。
里美「見ての通りあんまり綺麗じゃないんだけど……」
まどか「そそ、そんなことないと思うなぁ…ぎゃ、逆に味わい深いっていうか……」
さやか「そうそう!敢えて言うならヒンバスみたいな……」
まどか「さやかちゃんそれフォローになってないんじゃ……」
杏子「お前らそのやり取り聞いたことあんぞ」
里美「ゆっくりしていってね」
扉を開けると、中は外ほど古くは見えなかった。
それでも良く見ると、やはり細かいところに時代が感じられた。
玄関で出迎えてくれたのは、堂々と正面で昼寝をしている丸々と太ったブニャットだった。
里美「サレちゃーん!ただいまー!!」ダキッ
ブニャット「……」
里美「お母さーん、お客様連れてきたよー」
女将「あらあら、ようこそいらっしゃいました」
里美「私のポケモン撃退を手伝ってくれたの。そのお礼」
女将「それはわざわざごめんなさいね、どうぞゆっくりしていってください」
さやか「よろしくお願いしまーす!」
手続きを済ませ里美についていく。
案内されたのは三人で泊まるには少し広すぎる部屋だったが、料金は二人分で構わないということで交渉してもらった。
引かれた一人分は、当然杏子の分だ。
里美「まだ時間あるし、夕食までゆっくりしていってね!」
まどか「いいところだねー」
里美「ありがとっ!昔はもうちょっと賑わってたんだけど、近くに『ウルガモス亭』ができてからお客様はあんまり来てくれなくって……」
さやか「『ウルガモス亭』って、来る途中にあったでっかいとこ?」
里美「そうなの……綺麗だし大きいから人気みたいで」
まどか「でも、こういう雰囲気の方が落ちつける……よね」
杏子「まあ、静かではあるな」
里美「そう言ってもらえると嬉しいな……」
さやか「そういえば、なんでここ『マグカルゴ荘』って名前なの?看板ポケモンはあのブニャットみたいだったのに」
里美「それはね、昔この辺にいたマグカルゴをひいおばあちゃんが気に入ってたみたいで、
好きなポケモンの名前を付けたらしいの」
さやか「へぇ―……案外普通」
里美「うっ……ニコちゃんにもおんなじこと言われたよ……」
まどか「……あっ、ここって温泉あるんだよね!どんな感じなの?」
里美「うん!ここの温泉はいいわよ!なんといっても肩こりとかいろんな体の不調に効くし、ポケモンだって元気になるんだから
そうだ!今日は他にお客さんすくないから混浴もできるよ!」
まどか「ここ混浴ぅ!?」カァァ
杏子「どういうことだおい!聞いてねーぞ!!」
さやか「うら若き乙女の柔肌が野獣の様な大衆の目に…!?」
里美「あっ、ごめん。ポケモンとの混浴ができるって意味よ?」
まどさや杏「ズコー」ガクッ
里美「とにかく!うちの温泉をたっぷり堪能していってね」
―女湯・炎の湯―
マグカルゴ荘はその名のタイプが示すような、室内風呂の『炎の湯』と露天風呂の『岩の湯』に分かれており、扉を開けると行き来できるようになっている。
また、シーズン中以外は人が少ないため、ポケモンと混浴もできるとあって知っている人には人気がある。
ちなみに、男湯と女湯はそれぞれ隣り合っている。
三人は夕食までに時間があるため、先に入浴を済ませておくことにした。
まどか「うわー広いね!」
さやか「ほらほらみんな出てこーいっ!」ボボンッ
まどか「チャモっちは残念だね……体は拭いてあげるからね。ピピっちはリボン外さないと」
さやか「あんたらも風呂に入る前にまず体を綺麗にすること!それがエチケットってもんだよ」
まどか「それじゃあいくよー……あれ、杏子ちゃんは?」
さやか「んん?あんた入んないのー?」
杏子「今行くよ……」
ガラッ
杏子「……」キョロキョロ
さやか「まずはミジュかからね~」ゴシゴシ
まどか「チャモっち気持ちいい?」ワシャワシャ
杏子「……あたしも体くらい流してやるか」ボボボンッ
さやか「うぅ~、早く温まりたい!」
杏子「冷静に…普通に……」
まどか「はい!トゲっちで終わり」
トゲピー「トゲェ~」プルプルプル
さやか「全く手こずらせてくれちゃって……」
ナックラー「……」プイッ
杏子「ほら次、バル」
シュバルゴ「フォーン」
さやか「さーて、今度はうちらの番だね」
まどか「今日は特にいっぱい歩いたから汗びっしょりだよ」
しばし、リフレッシュタイム。
まどか「……」ジー
さやか「フンフフーン」ワシャワシャ
まどか「……ま…まだこれから……のはず……」ペタペタ
バシャー
さやか「ぶはぁーさっぱりしたー!あれ、まだ頭洗ってないの?」
まどか「う、うん!私体から洗う派だからっ!」アハハ
さやか「そうだっけ?」
さやか「杏子ー、あたしら先に入らせてもらうよー」
杏子「おー、あたしもすぐ行くよ」ゴシゴシ
さやか「なんだかんだ言って普通っぽいね」ヒソヒソ
まどか「もうちょっと恥ずかしそうにしてるのかと思ったけど……」ヒソヒソ
さやか「さては強がってるな……ぐへへへ、その神秘のベールを"きりばらい"の如く剥ぎ取ってくれるわっ!」
まどか「さやかちゃんもの凄くおじさんっぽいよ」
しかしそんな悪戯心も一旦忘れ、二人とポケモン達は一足先に湯船にゆっくりとダイビングを開始した。
まどさや「はぁぁぁぁぁ~~~~いいお湯ぅぅぅぅ……」
まどか「私クサツタウンに来たの初めてだったからすっごく楽しみだったんだぁ」
さやか「こりゃいいわぁ、旅の疲れが全部吹っ飛んじゃうね」
杏子「どれ、あたしも……」
チャプッ
杏子「おぉ、こりゃ確かに最高だな」
まどか「来てよかったねぇ」
しばし、満喫。
―男湯・岩の湯―
ポケモンコレクター「いい湯だな弟者よ」
理科系の男「全くだな兄者」
ポケモンコレクター「ところで、俺たちの使命を忘れたわけではあるまい?」
理科系の男「まあな……こんなおいしい話があるとは」
ポケモンコレクター「全くだ。女湯の様子を俺たちのレントラーに変な機械とコンタクトをつけて覗かせるだけ
それだけで金が貰えるときたもんだ」
ポケモンコレクター(俺たちは見ることができんのが残念だが)
理科系の男「あの女、いったいどういう目的なんだろうな?」
ポケモンコレクター「さあな……きっと百合畑とかその辺の住人なんだろう」
理科系の男「だがなんでこんな人の少ない宿を選んだんだろうな?今日ここに泊まってるのはJCだけみたいだぞ」
ポケモンコレクター「きっと子供畑とかその辺の住人なんだろう」
理科系の男「そればっかりだな」
ポケモンコレクター「なんにしても、俺たちはここでのんびり湯につかってるだけでいいわけだ」
理科系の男「そうだな。炎の湯より壁が薄い岩の湯に入ってきたときがチャンスだぞレントラー」
レントラー「グルルルル」コクリ
ポケモンコレクター「これでまだまだ自宅警備員を続けられるな」
理科系の男「流石だよな俺ら」
レントラー「ガーオ」
―女湯・炎の湯―
まどか「そういえば、杏子ちゃんって実は髪綺麗だよね」
杏子「そうか?」
さやか「そういえばいつもと違う…あんた、修行とか言って砂漠いる間風呂入ってなかったんじゃないでしょうねえ!」
杏子「馬鹿にすんな!これでも二日に一回はポケセンに言ってたっつーの!」
さやか「かぁーっ…ちょっと聞きましたまどかさん!年頃の女の子としてあり得ない発言ですよ」
まどか「うーん、流石にちょっとね……」
杏子「いいだろ別にっ!こうしてしっかり洗ってきたんだしさ」
さやか「もったいないなあ、こんなにさらさらヘアーの持ち主のくせに」サワサワ
杏子「ちょっ、やめろよ」
さやか「いいじゃん減るもんじゃなしに」
杏子「そういう問題じゃねえ!」
さやか「肌も白くて羨ましい…何で日焼けしてないの!」
杏子「何でって、おか…お袋が肌の手入れは欠かすなって、なんかクリームみたいなの持たせてくれて……」
まどか「杏子ちゃんのお母さんいい人だね!」
さやか「全くだよ、うちの親を見習わせたいくらいだわ」
杏子「そ…そりゃどうも……」
さやか「それにしてもけしからんですなぁ」ツツー
杏子「わひゃっ!」
さやか「おっ?ひょっとして背中弱いのかなぁ」ニヤニヤ
杏子「てめぇ~……いつぞやのお返しって訳かい」
さやか「スキンシップだよ、スキンシップ」
杏子「ったく、温泉ではしゃぐなんてガキかよ……」
まどか「まあまあ、今日は私たちの他に女性のお客さんはいないらしいし」
さやか「むふふ~……うりゃっ!」フニッ
杏子「はぅっ!」
さやか「おやおやぁ、杏子先輩以外とお胸が――」
杏子「ユキ"こおりのつぶて"!!」
ユキメノコ「フゥー」ヒュッ さやか「ヘブゥッ!」ゴハッ
杏子「何しやがんだてめぇ!!」
さやか「ちょっ、タンマタンマ!今のなしでしょうが!!」
杏子「先に手ぇ出してきたのはそっちだろうが!」
さやか「隙あり」スッ
杏子「おっと」パシッ
さやか「……あら?」
杏子「さーてと……さやかの弱点はどこだろうなあ」
さやか「あは、あははは……逃げる!」バシャバシャ
杏子「待ちやがれこのっ!!」バシャモ
まどか「わぷっ…二人とも泳いじゃ駄目だよ」
まどか(杏子ちゃんに比べたら勝て……てないかなぁやっぱり)ペタペタ
―男湯・岩の湯―
こっちだよ~>
待てこらー!>
ポケモンコレクター「来たようだな」
理科系の男「そのようだな兄者」
ポケモンコレクター「ゆけいレントラー!そのあられもない美しく芸術的で可憐な少女の体を凝視しちゃうがいいわッ!」
理科系の男「キモイぞ兄者」
レントラー「ガルル……」パァァ
レントラーの鋭い眼光が二つの湯を隔てている壁を照らす。
レントラーは透視能力を持っており、その目で陰に隠れた獲物も探すことができるのだ。
その見ている景色をコンタクトを通じ、頭に乗せた機械で脳波をキャッチし、送受信している。
要するにまどか達の裸は見られているということだ。
目的など、男二人は知る由もない。
―女湯・岩の湯―
杏子「さやかこらぁ!」
さやか「ストップ杏子ちゃん!!」バッ
杏子「ッ!な、なんだよ」
さやか「走ると危ない」
杏子「今それを言うか……それよか露天風呂もあるなんて、なかなかいいじゃねーか」
さやか「どれ……」チャポン
さやか「ん~~、いいお湯ですなぁ」
杏子「おいおいさやか……自分から逃げるのをやめるとはいい度胸だな」ポン
さやか「それは何かな?このあたしにいやらしいことをしたいってことなのかなぁ」ニヤニヤ
杏子「ばっ!?馬鹿言うな!!」チャプン
さやか「ごめんって杏子~。そんなに怒んなくてもいいじゃん」
杏子「フン……」
まどか「わぁ、露天風呂も広いね!」
さやか「くるしゅうないぞまどか~、こっちへカモーン」
まどか「ウィヒヒ、お邪魔しまーす」
三人揃って景色を眺めながらまた一息。
さやか「いやぁ、それにしても随分長い旅になったよね~」
まどか「まだ二週間くらいなのにね」
さやか「いろいろあったよね…図鑑にポケモン貰って、初めてバトルやって初めてジム戦やって、なんか悪い奴らと戦って……
いろんなポケモンや人に出会って、ちょっとは成長できたかなーって思うよね」
まどか「楽しかったね」
杏子「何言ってんだ、まだまだこれからだろ」
まどか「そうだね……ミタキハラからはあんまり出たこと無かったから、グンマー地方が……
世界がこんなにも広いなんて知らなかったよ」
見るものも聞くものもやることも、何もかも初めてでそれは新鮮なこと。
驚きもしたし興奮もしたし、怒ったこともあった。
世界は広くて、中学生のまどかにはきっと面白いことだらけに違いない。
杏子「うんうん、知らないことばっかりだな……お前のここの柔さとかな!!」ムニィ
さやか「ひゃんっ」///
杏子「……何だ今の」
まどか「……」
さやか「いや、その……突然だから驚いただけっていうか――」
杏子「おりゃ」フニムニィ
さやか「んぁっ」
杏子「……」
さやか「……あはは」
杏子「おらー!」
さやか「やめっ、ちょっと待ったぁー!」
まどか「あぁ、また追いかけっこ始めちゃった……」
―男湯・岩の湯―
今度はこっちの番だー!>
ごめんもう無理だってぇ!>
理科系の男「しかし一体いつまでこうしてればいいんだろうな兄者」
ポケモンコレクター「……」
理科系の男「いい加減茹で上がりそうだからもう出たいんだが」
ポケモンコレクター「……」
理科系の男「俺は先に上がるけど、兄者はまだ入っているのか?」ザバァ
ポケモンコレクター「……」
理科系の男「兄者?」
ポケモンコレクター「ちょっと下半身のイワークがのっぴきならない状態になったから先に上がっててくれ」
理科系の男「最低だな兄者……後キャタピーの間違いじゃないのか?」
ポケモンコレクター「しかしほんと、いつまでレントラーに覗かせればいいんだ」
理科系の男「向こうさんも可哀想にな、まだ子供だって言うのに」
ポケモンコレクター「まさか自分たちの裸がどこかの変態女に見られているとは思うまい」
レントラー「グルルル……」
理科系の男「…?どうしたレントラー、『いかく』なんかして」
ピクシー「ピィ!」バッ
ポケモンコレクター「どっから入ってきたんだこのピクシー」
あれ?ピピっち-!どこ行ったのー?>
ポケモンコレクター「……弟者よ。まさかとは思うがこのピクシー」
理科系の男「珍しく聡明だな兄者。多分女湯にいる子のピクシーだろうな」
ピクシー「ピピッ!」ギリッ
理科系の男「……そして何やら怒ってるみたいだぞ」
ピクシーは身振り手振りでその怒りを表している。
理科系の男「なるほど、つまりそういうことか」
ポケモンコレクター「分かったのか弟者!?」
理科系の男「簡単だ。俺たちが盗撮してることにご立腹らしい」
ピクシー「ッ!」バッ
理科系の男「うわっ!避けろレントラー!」
迷うことなく頭上にある機械を目指して、その小さな拳を突き出してきた。
レントラーはすぐに後退して距離を取り、顔を真っ赤にしているピクシーと対峙する。
ポケモンコレクター「それにしても何で怒ってんだろうな。俺たちの会話が聞こえたのか?」
理科系の男「そりゃそうだろ。ピクシーは一キロ先で落ちた針の音を聞き分けるらしい
あれだけ向こうで騒いでたってそれくらい聞こえるんだろう」
ポケモンコレクター「把握した」
ピクシー「ピピィ!」ババッ
レントラー「ギャルゥ!」サッ
ポケモンコレクター「えぇい鬱陶しい!レントラー"ほうでん"だ!!」
理科系の男「はぁ!?馬鹿か兄者!」
何も考えずに命令した兄のせいで、水浸しの男達はもろにその電撃を喰らってビリビリと痺れて気絶してしまった。
しっかりと光の壁を張りつつ飛びかかったピクシーは被害を最小限に抑えながら、レントラーの脳天に瓦割りをぶち込んだ。
当然機械ごと叩き割っている。
―女湯・岩の湯―
さやか「何か今、隣ですごい音聞こえなかった?」
杏子「ひょっとして、人がいたのか…?」
ピクシー「ピッピピー」ピルルルル
まどか「ピピっち!何で男湯の方から!?」
さやか「まさかピピっちがなんかやっちゃったんじゃないの?」
まどか「そ、そうなの?」
ピクシー「ピィ……」フルフル
まどか「そう?」
ピクシーが今度は他のポケモン達に説明を始めた。
もちろんまどか達は何を話しているのかさっぱり分かっていない。
さやか「一体何を見てきたんだピピっちは……」
杏子「さあな……さてと、あたしはそろそろ出るかな。だいぶ長湯しちまったし」
さやか「あたしも上がろっかな…まどかはどうする?」
まどか「私はピピっちが出るまでもうちょっと待ってるね」
さやか「じゃあお先ねー。帰るよあんたらー」
杏子「ユキ…水風呂が凍っちゃってるじゃねーか……」
二人はさっぱりしたポケモン達の体を拭くため、一旦更衣室に戻っていった。
まどかは一人、自分の四匹の仲間に囲まれながら空を眺めていた。
まどか「綺麗だね……私ね、みんなと一緒になれてよかったよ
ママが言ってたみたいに辛いこともいっぱいあったけど、その分楽しいこともあったもん」
まどか「だから、これからもよろしくね!」
―男湯・岩の湯―
ポケモンコレクター「ん……いったい何が起きたんだ」
理科系の男「おい馬鹿兄者」
ポケモンコレクター「失礼だな弟者」
理科系の男「……まあいいや。それで、どうやらもう彼女たちは出てしまったみたいだな」
ポケモンコレクター「そのようだな……何、必要な映像はもう届いてるだろう」
理科系の男「俺たちも出るか馬鹿兄者」
ポケモンコレクター「なんでそれがデフォルトになってんだ」
湯船から上がり機械を回収し、振り込まれる金を使って何を買おうかと算段しながら服を着る二人。
そうして意気揚々と更衣室を出たところで、
さやか「ちょっとみんな落ち着いてってば!」
杏子「どうしたんだよ一体!」
ポケモン達「……」ジリッ
男達「へ?」
必死に二人に止められるポケモン達に遭遇した。
さやか「何!?この人達がどうかしたの!?」
理科系の男「……なあ兄者。どうやらこのポケモン達……」
ポケモン達「……」ピキピキ
ポケモンコレクター「あぁ。さっきのピクシーからいろいろ聞いたんだろう……」
ポケモン達「……」ゴゴゴゴゴゴゴ
男達「めっちゃ怒ってるッ!!」
さやか「あの、すいません、なんかすんごいいきり立ってて……」
杏子「どうしたんだよお前ら!いつもは勝手に動くことなんてないのに」
ポケモンコレクター「……」
理科系の男「どうする兄者?埒が開かなそうなんだが」
ポケモンコレクター「……」
理科系の男「兄者?」
ポケモンコレクター「まあ待て弟者……こいつらが怒る理由はよく分かる。俺も紳士として生まれたからにはその罰を受けるべきだとも思う」
理科系の男「紳士…キャタピーに"かたくなる"使わせる男が紳士と申したか」
ポケモンコレクター「つまり!ここは場を丸く収めるためにもこいつらの好きなようにやらせるべきではなかろうかッ!
勿論この少女達には罪悪感を持たせぬよう、どこかに行ってもらっておこう」
理科系の男「そうか、そこまでの覚悟があるとはな……頑張れよ兄者」
ポケモンコレクター「お前もだ弟者」ガシッ
理科系の男「おい」
さやか「……あの、話まとまったんでしょうか?」
ポケモンコレクター「あぁ、ロンのモチだよ君たち……すぐ終わるからしばし風呂上がりのモーモーミルクでも飲んできたまえ」チャリーン
理科系の男「羽振りがいいな兄者…そりゃあある意味この子らのおかげで金貰えるからだろうが……」
杏子「はぁ……まあ、奢って貰えるってんならありがたく貰ってくけど」
お金を受け取ると、二人は訝しげながらも一旦売店へと向かっていった。
姿が見えなくなったところで、ポケモン達の怒りはすでに限界寸前まで来ていた。
理科系の男「なあ兄者、本当に俺もやられなきゃ駄目か?」
ポケモンコレクター「当然だッ!俺達は同罪なのだからッ!!」
理科系の男「認めざるを得ないが、なんだろうな……納得いかない」
ポケモンコレクター「さあ来るがいい!俺達はどんな罪も受けようではないか!!」
ポケモン達「……」ドドドドドドド
ポケモンコレクター「OK、フルボッコゲットだぜ」
理科系の男「流石だよな俺ら」
ポケモン達「ゴァァァァァ!!!!!」
男達「ぎぃやああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
さやかと杏子の全ポケモンから集中攻撃を受け、旅館中に叫び声と攻撃音が轟いた。
慌てて更衣室からまどかが、売店からさやかと杏子が、空き部屋の掃除をしていた里美が二階からやって来た。
まどか「な、何かあったの!?」
里美「なになにどうかしたの!?すっごい大きな音がしたけど――ってお客様!?」
ポケモンコレクター「あがが……」ヒクヒク
理科系の男「おうふ……」ピクピク
里美「一体何が…何があったですか!?」
さやか「ちょっとあんたら何かやったの!?」
杏子「おい!人に手を出すとはどういうことだ!!」
ポケモンコレクター「いや、お気になさらず……うちのレントラーが暴走しただけ故」
レントラー「ギャウ!?」
理科系の男「すまんレントラー……今は耐えてくれ……」
さやか「え?それにしては電気攻撃以外も受けてるような……」
ポケモンコレクター「そ、そりゃあまあ色々使えるやつだからな!」
杏子「と、とりあえずお前らボールに戻ってろ」シュパパン
里美「あの、大丈夫ですか?」
理科系の男「ほんと大丈夫なんで……じゃあ俺達はこの辺で……」
まどか「平気ですか?」
ポケモンコレクター「いえいえ、これもバイト料のため……」ボソッ
まどか「え?」
理科系の男「ささささあ!帰るか兄者!」
ポケモンコレクター「おう……」
フラフラになりながら、どうにかレントラーに支えられつつエントランスに向かっていく。
さやかと杏子は絶対何かあったと思い問いただしていたが、男達は頑なに否定しているため結局真相は聞き出せなかった。
ポケモンコレクター「じゃあ、この辺で」
理科系の男「色々とありがとう」
里美「お気をつけて……」
ブニャット「ブニャ~」
騒ぎのせいで旅行気分が少し冷めつつ、三人は自分達の部屋に戻ってきた。
そして戻ってくるなり、さやかと杏子はポケモンを出して座らせた。
さやか「ほんっっっっっとに何にもやってないんだね!?」
ダイケンキ達「……」
杏子「まあ、そこまで言うんなら信じてみるよ……あの二人も何も言わなかったしな」
ゴウカザル達「……」
まどか「えっと、二人とももうその辺で許してあげたら?何があったか誰も見てないんだし」
さやか「ふぅー……そりゃあ、あたしも信じたいけどさ。みんながあんなに怒るなんて絶対何かあったと思うんだよね」
まどか「チャモっち達もあれから落ち着かないんだよね……でもとにかく!せっかくの温泉に来たんだよ?
楽しまなきゃ損だよ!!みんなも何があったのかは分かんないけど、もう忘れよ?ね?」
さやか「まどかは甘いなぁ……ま、そうだね。あんまりカッカしてもしょうがないか」
杏子「チッ……お前らも言葉が話せたらなあ」
まどか「あはは、それはちょっと……」
里美「失礼しまーす」
襖が開き、里美と仲居が夕食の料理を運んできた。
豪華とはいえないが、それでもしっかりと作られ丁寧に盛りつけられた料理の数々はどれも素晴らしいものである。
勿論ポケモン達の分もある。
杏子「おぉー!!うまそーだな!」
さやか「こらっ!お手つき禁止」ペシッ
里美「はい、これで全部よ」
まどか「それじゃあ――」
三人「いただきまーす!!」
しばし料理を堪能し、食事が終わる頃にはいつしかイガイガした気分もどこへやら、まったりとした時間を過ごした。
温泉地での一日目はこうして幕を下ろした。
―???―
『ピピィッ!』
ブツン ザザー
エリー「チチィ、もうちょっと見てみたかったんだけど……ま、こんだけデータが取れれば上出来かな」
どこかの研究室。
ポリゴン、ポリゴン2、ポリゴンZが忙しなく動き回り、様々な機械とコンピュータや薬瓶などに囲まれた薄暗い部屋で、
エリーは画面がプッツリ切れたことを嘆いた。
ちょうどそのタイミングで、ノックの音と共に傘を差した女性が入ってきた。
つばなの湖で、まどか達と会ったあのパラソルお姉さんである。
パラソルお姉さん「ただいま戻りました」
エリー「はいはいおかえりんこ~」
パラソルお姉さん「……言いませんよ」
エリー「真面目すぎるわパトさん。あんた長生きしないわね」フゥ
パトリシア「結構です」
パトさんと呼ばれた彼女は本名をパトリシアという。
傘を閉じ、レインコートを脱いで眼鏡をかけると、黒い制服のような服の上に白衣を羽織って自分の席に探す。
あるにはあったが、彼女がいない間にいくつもの資料が積まれており、せっせと退けなければならず心底うんざりした。
エリーはひたすらパソコンに向い合い、先ほどまでの映像を編集していた。
エリー「いやぁ悪いわね。あんたにいろいろ任せちゃって」
パトリシア「全くです。私日差しは苦手なんですから……それに、私は元々研究員なんですよ!」
エリー「あのシズちゃんの頼みごとなんだからそんくらい聞いてやんなさいよ」
パトリシア「疲れました。まさかタカサキからずっと追いかけることになるなんて……おかげで鹿目まどかと美樹さやかの特性はおおよそ掴めましたけど、
残念ながら佐倉杏子は資料不足ですので、あまりお勧めはできませんが」
エリー「まあ、いんじゃない?それよかたかだか三日四日尾行してただけで疲れるわけ?」
パトリシア「若い子らと、しかもアウトドアな彼女達にずっとくっついていかなければならなかったこの気持ちが分かりますか!?
朝早くからジムに行ってご飯食べたり、興味もない博物館に行ったり、なんとなくバトル挑んだらボコボコにされたり、温泉に浸かったり……
ほんと、酷いものでしたよ」
エリー「んー、待て待て……半分くらい辛くなくね?最後温泉入っただけじゃん!」
パトリシア「と、とにかく!もうこんな雑務させられるのはごめんですから!」
エリー「はいはい。シズルもこれで満足できるんじゃないの」
パトリシア「私達はデータを集めるだけ…実際に作るのはトキサダメの……何とかという博士ですよね?」
エリー「はかせね、はかせ……うん、こりゃ佐倉杏子とやらは無理かのう……
それにしても、真っ裸か……可哀想だからデータの流出がないようにはしてあげるか」
まどかとさやか、二人のデータだけまとめる作業を開始する。
やがて編集が終わりポケータイでシズルを呼び出すと、すぐに現れた。
走ったからなのか興奮しているからなのか、肩で息をしている。
シズル「ギヒヒ…これであいつらに……あいつらに復讐できるってわけだね!マリアに怒られた恨み!!しっかり晴らさせてもらおうじゃん!
ギヒッ、ギヒヒヒーヒャッヒヒヒヒヒ!!!!」
パトリシア「邪魔された恨みじゃないんですね…向こうにしてみれば意味不明な恨まれ方でしょうね」
エリー「ほいよ。ま、宝石奪還計画までのいい暇つぶしになったかな」
パトリシア「いや、頑張ったのは私ですから」
エリー「細かいこと気にしてるから乳が育たんのよ」
パトリシア(人のこと言えないでしょうが……)イラッ
前日談 ~七日目の夜明け前~
突然、湖に一人の少女とギギギアルが現れた。
空が白んできた明け方のことである。
ほむら「……ここは?」
イツ砂漠でシズルとステーシーから情報を聞き出した後のこと。
辺りを見渡せば、ここがほむらの望んでいた目的地でないことはすぐに分かった。
彼女の帰りたかった場所はほむらの家なのだから。
ほむら「湖……確か、みなかみの湖だったかしら?」
ギギギアル「ギギ……」シュン
ほむら「気にしなくていいのよぎあぎあ。まだ慣れてないんだもの」
そうしてもう一度テレポートを使わせようとして、ふと気が付く。
自分の体が、砂漠にいたせいで砂まみれだったことに。
ほむら「ここから東に行ったところにクサツタウンがあったはずよね……髪の毛もゴワゴワしてるし」
結論は既に出ていた。
ほむら「ぐるぐる、クサツタウンに行きましょう。ぎあぎあは帰りのテレポート用にエネルギーを充電しておくこと」ボンッ シュパン
ウォーグル「ピョエー!」バサァ ギギギアル「グギギ……」
目的地を変更し、一行はクサツタウンへと向かう。
―クサツタウン―
のんびり飛行したせいか、到着するころには完全に朝だった。
ウォーグルはほむらを乗せ、まっすぐ一つの旅館を目指す。
ほむら「ありがとうぐるぐる。ここならみんなも温泉に入れるはずよ…幸い今はシーズンから少し外れてるから」
―マグカルゴ荘―
里美「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
ほむら「一人で。あと、ポケモンと一緒に温泉に入れるって聞いたんですけど」
里美「はい!少々お待ち下さいませ」
ブニャット「ウニャ~……」ゴロゴロ
ほむら「相変わらずでっぷりしてるわね、サレ」ナデナデ
里美「あら?ひょっとして以前にもいらしたことが?」
ほむら「いえ、こちらのブニャットが可愛いという評判を聞いていたもので」
里美「そうなんですか!?ありがとうございます!いつの間にかサレちゃんも有名ポケモンなんだね~」ナデナデ
ブニャット「……」
女将「お待たせいたしました。どうぞごゆっくり」
ほむら「ありがとうございます」
女将「うちの温泉は体の不調にオススメですよ。ポケモン達も元気になります」
ほむら「えぇ、そうらしいですね」
―女湯・岩の湯―
ほむら「さてと、体も洗ったし……」チャプン
ほむら「ふぅー……やっぱりいいわね、温泉って」
ほむら「みんなも入っていいそうよ。らんらんは無理だろうけど……」
ギギギアル「ギギィ」バシャン
ほむら(ぎあぎあは錆びたりしないかな…?)
ほむら「ここの効能は健康関連だけみたいね……あの里美って子を見てたらそれだけとは思えないけれど……」
ほむら「……」ペタペタ
ポケモン達「……」ジー
ほむら「そ、それにしても!こんなにいいところなのに人が少ないのって勿体ないわね
まあ、人がたくさん来てあなたたちと入れなくなるのも寂しいけど」
ほむら「……」
ほむら「ここに来れるのも、ひょっとしたら最後かもしれないのよね……」
ほむら「もう、みんなしてそんなに悲しい顔をしないで。せっかくなんだから楽しみましょう」
ほむら「あなたもそんな顔をしないで。あなたのせいだなんて思ってないわ」
ほむら「結局あいつが――」
ほむら「ワルプルギスがいつだって私の前に立ちはだかることになるのね」
ほむら「でも、正体が分かればどうにかなるはず……だから今度こそ」
ほむら「今度こそ決着を付けてみせる…!」
~十五日目~
この日は一日中三人とも落ち着かなかった。
質素ながらも丁寧に作られた朝食を食べ、身支度を済ませて街へと繰り出す。
その間もそわそわして心ここにあらず、気を抜けばフワンテの様に飛んでいきそうな雰囲気だ。
朝からマミにメールを送っておいたのだが、一切の返信がなかったからだ。
まどか「まだかな……」
さやか「ちゃんと送れてるんだけどなぁ……どんだけサプライズ好きなんだあの人は!」
杏子「ほっとけよ。それより昨日食えなかったクサツせんべいが食いてえんだけど」
さやか「あんたって奴は……ま、マミさんなら大丈夫でしょ」
まどか「もうそろそろジム戦やってるかな…頑張ってマミさん…!」
しかしやはり連絡はなく、気がつけば時刻は空が蒼から紅へと変わる頃となっていた。
さやか「……いくら何でも遅すぎない?」
まどか「だよね……」
杏子「あの野郎、まさか本当に――」
ピッ
まどか「…?何の音?」
ピッ ピピッ
さやか「来たーーっ!!!流石マミさん!」ピピッピピピッ
まどか「あっ!図鑑が!?」
杏子「ったく、勿体ぶりやがって」ピピピッピピピピッ
約二週間ぶりに、ポケモン図鑑が共鳴音を発した。
それの意味するところはつまり、三人の図鑑所有者が近くにいることを表している。
「お疲れ様フワーレ」
頭上から懐かしい声が聞こえたと思えば、すぐに図鑑の音が止み、まどか達の目の前に黄金に輝く髪の持ち主が降り立った。
マミ「三人ともお久しぶりね!」
巴マミが、八つのバッジを揃えまどか達に合流したのだった。
―マグカルゴ荘―
里美「おかえりなさい!あら、お友達?」
まどか「えへへ、私たちの先輩なんです」
マミ「初めまして、巴マミです。今日の宿を取りたいんですけど」
里美「かしこまりました。お一人様ですか?」
マミ「いえ、この子達と同じ部屋でお願いしたいんです」
里美「ふふっ、分かりました。すぐにご用意いたしますね」
さやか「もうマミさんホント久しぶりですね!ジムのこととか教えて下さいよー!」
マミ「勿論、あとでゆっくりね」
杏子「おいおい土産話もいいけどさぁ……あたしらが出会ったらまずやること、忘れたとは言わせねーよ?」
マミ「それも荷物置いてからよ。私の70勝目はいただいていくわね」クスッ
杏子「上等だ…天狗になって油断してると、その首貰ってくぜ」
まどか「そういえば、この間は途中で見るのやめちゃったんだよね」
さやか「今度こそじっくり見せてもらおうじゃん」
里美「はい!ごゆっくりどうぞ」
マミ「じゃあ、荷物を置いたら公園で」クルッ
杏子「先に行って待ってるからな……」スタスタ
まどか「どっちが勝つかな」ドキドキ
さやか「バッジ全部手に入れて絶好調のマミさんか、いろいろ修行して鍛えてる杏子か……
まさにハブネークとザングース…アイアントとクイタランってところだね」
~二時間後~―女湯・炎の湯―
杏子「いやぁー昨日より気分よく温泉につかれるって素晴らしいなあ!」
マミ「うぅぅ~~……」
意気揚々と出かけたマミの姿はすでになく、その代わり昨日さやかにいじられて少々バッドだった杏子は鼻歌交じりにご機嫌だった。
公園で試合をした結果は言うまでもなく。
四人で試合後の汗を流しに、温泉に入ることにしたのだった。
さやか「まさかあんたに軍配が上がるとはねぇ」
マミ「自分が恥ずかしいわ……これでクロマツ大会に出られると思って舞い上がって、みんなにいいところ見せようとして……
もうっ!こんなことだから寝首をかかれるんだわ!」
まどか「いや、それはちょっと違うような……」
杏子「ある意味当ってんだろ。まんまとコンに眠らされてそのまま"かえんほうしゃ"でドッカーンだもんな」
マミ「やめてよ!ちゃんと反省してるんだからね!」
まどか「マミさんも凄かったじゃないですか!ほら、進化もしてましたし!」
さやか「まあまあ、終わったことはもういいじゃないですかぁ。せっかく来たんだからのんびりしなきゃ
それに、マミさんの話も聞きたいですって!あたしらもたくさん話したいことありますし」
マミ「はぁ~……そうね、いつまでも格好悪いところ見せられないものね!」
杏子「はいはい、そういうのは飯の時間にしようや。後でたっぷり聞いてやるからさ」
マミ「ふふっ、あなた達がどれだけ成長したのかも聞かせてもらおうかな」
さやか「そりゃあもう成長しまくりですよ!マミさんも~……こことか成長してるんじゃないですかぁ!?」フニィッ
マミ「ひゃんっ!」
さやか「おぉ~……触ったことはないけど、やはり…!」
マミ「待ちなさい美樹さん!!こんなことしてただで済むと思ってないでしょうねえ!」バシャン
さやか「あははは!やっぱりマミさんが一番でしたよー!」バシャバシャ
まどか(……私もいつかは……)ペタペタ
―マグカルゴ荘・一室―
風呂から上がると、すでに里美によって夕食の準備が施されていた。
昨日とはまた違う、趣向を凝らした料理の数々は、来るものを飽きさせない工夫がある。
杏子「おぉー!こんなにあんのか!」
マミ「おいしそうねぇ」
まどか「さやかちゃん大丈夫?」
さやか「シクシク……もうお嫁に行けない……」シクシク
里美「ごゆっくりどうぞ」
杏子「んじゃあさっそく――」
マミ「こら、お手つき禁止」ペシッ
まどか「えぇっと、こういうのはいっつもさやかちゃんがやってくれるんだけど……」
さやか「もうっ!マミさん容赦なさ過ぎです!」
マミ「悪いのは美樹さんでしょ!」
まどか「と、というわけで!さやかちゃんの代わりに私が乾杯の挨拶を」
杏子「何でもいいから早くしてくれ」
まどか「マミさん、ジムバッジ制覇おめでとうございます。これからマミさんが一緒に旅をしてくれるって聞いて、すっごく楽しみです!」
杏子「あたしんときは何も言われなかったなー」ボソッ
さやか「黙ってなさい」ゴスッ
まどか「だから、えぇー……マミさんの祝福と、これからの旅の無事を祈願して……」
四人「かんぱーーい!!!」
それからマミのニビシティでのジム戦の話に始まり、まどかとさやかのジム戦、杏子との再会や『Wの組織』と戦ったことなど――
そして、ほむらの話にもなった。
マミ「そういえば、暁美さんって結構おとなしい子なのね」
さやか「そうっすかぁ?まあ、自分から話しかけにいくようなタイプでもないと思うけど」
マミ「こないだ学校で声をかけたのにスルーされちゃったわ…もうびっくりしちゃった」
まどか「あのほむらちゃんが…?もしかして学校でうまくいってないんじゃ……」
マミ「志築さんだったかしら?彼女と一緒にいる所はよく見るから、何とかやっていけてるとは思うけどね
それにしても雰囲気が全――」
杏子「おい!その暁美ってのは何者なんだよ?」
まどか「昔言ってたもう一人の図鑑所有者だよ。暁美ほむらちゃんっていうの」
杏子「ほむら……ほむらねぇ、そういや覚えてる…確かマミより強いんだっけ?」
マミ「今なら後れを取るつもりは……ないわ!」
さやか「その間はなに?」ボソッ
まどか「杏子ちゃんとのバトル、まだ引きずってるんじゃ……」ヒソヒソ
マミ「コホン…とにかく!負けるつもりはないわ!でも、さっき言ったみたいに学校であんまり話す機会もなくってね
バトルも最初の一回きりなのよね」
杏子「避けられてんのか」
マミ「違うわよ!……たぶん」
さやか「まあまあ、あいつにもいつか会うかもしんないよ。リーグ目指してるみたいだし」
マミ「楽しみね……その時こそリベンジよ……」フフフ
まどか「また会えるかなぁ」
それからも四人は遅くまで話をして、気がつけば誰からともなく眠りについていた。
明日からは六つ目のジムバッジを手に入れるため、いよいよグンマー地方三大都市の一つ、マエバシシティを目指す。
692 : VIPにかわりましてNIPPER... - 2012/06/24(日) 01:43:01.67 8mk50I1l0 548/548ここまで
訳あって今からようやくBW2ができる…
しばらくゲームしてるので次の更新はお待ちを
なんか無理しないでと言ってくれるの人がいてすごい嬉しいんだけど、全然無理なんかしてないよ
書くときはなんだかんだノリノリで書いてるからね
もしお暇な人は俺がしばらくほったらかしにしてるこっちのスレでも読んでてくださいな
まどか「魔法少女の短編集」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1338381521/